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特許7014603コーティング面を備えた無端金属バンド、該無端金属バンドを備えたドライブベルト、ならびに該ドライブベルトを形成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】コーティング面を備えた無端金属バンド、該無端金属バンドを備えたドライブベルト、ならびに該ドライブベルトを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   F16G 5/16 20060101AFI20220125BHJP
   F16H 9/12 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
F16G5/16 B
F16H9/12 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017534231
(86)(22)【出願日】2015-12-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2015025113
(87)【国際公開番号】W WO2016102072
(87)【国際公開日】2016-06-30
【審査請求日】2018-12-07
【審判番号】
【審判請求日】2020-08-19
(31)【優先権主張番号】1041120
(32)【優先日】2014-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨースト ヨハネス コルネリス ヨンカース
(72)【発明者】
【氏名】フランシス マリア アントニウス ファン デル スライス
【合議体】
【審判長】田村 嘉章
【審判官】段 吉享
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-149518(JP,A)
【文献】特開2007-181884(JP,A)
【文献】特開2004-11675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 5/16
F16H 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライブベルト(3)であって、互いに重ねられた複数の無端金属バンド(44)から成る少なくとも1つのセット(31)と、該バンドセット(31)に摺動可能な形式で取り付けられた複数の横断エレメント(32)とを備え、該横断エレメント(32)にはそれぞれ切欠(33)が設けられており、該切欠は、前記バンドセット(31)を収容するために、前記横断エレメント(32)の前側主面(39)と後側主面(38)との間に延在していて、前記切欠(33)の位置で前記横断エレメント(32)には、前記バンドセット(31)の半径方向最も内側の無端金属バンド(44i)の半径方向内側面(51)に接触する、半径方向外側に向けられた支持面(42)が設けられている、ドライブベルト(3)において、
前記無端金属バンド(44)の前記半径方向内側面(51)には、少なくとも部分的に、研磨コーティング(50)が設けられており、すなわち、少なくとも部分的に、研磨特性を有した層が設けられており、前記研磨コーティング(50)は、無段変速機における作動中において、前記横断エレメント(32)が、半径方向外側方向に向かって、前記無端金属バンド(44)の半径方向内側面に対して押し付けられることにより、消費され、前記横断エレメント(32)の前記半径方向外側方向に向けられた支持面(42)を、研削によって凸状に湾曲した形状とするように設計されており、前記ドライブベルト(3)が2つの回転プーリ(1,2)に巻き付けられ、これらに摩擦接触していることを特徴とする、ドライブベルト(3)。
【請求項2】
前記無端金属バンド(44)の前記半径方向内側面(51)は、前記研磨コーティング(50)により完全に被覆されている、請求項1記載のドライブベルト(3)。
【請求項3】
前記研磨コーティング(50)は、1つ以上の隔離されたスポット、バンド、または別の形状で設けられている、請求項1記載のドライブベルト(3)。
【請求項4】
前記研磨コーティングは、潤滑剤に溶解可能な比較的軟質のマトリックス中に埋め込まれた、比較的硬い研磨粒子を含む、請求項1から3までのいずれか1項記載のドライブベルト(3)。
【請求項5】
前記ドライブベルト(3)の前記バンドセット(31)の、前記半径方向最も内側の無端金属バンド(44i)の半径方向外側面(51)と、外側の前記無端金属バンド(44)の半径方向内側面および半径方向外側面とは、ISO規格Ra表面粗さ値0.1ミクロン以下を有する滑らかな表面として設けられている、請求項1から4までのいずれか1項記載のドライブベルト。
【請求項6】
ドライブベルト(3)を使用する方法であって、前記ドライブベルト(3)は、互いに重ねられた複数の無端金属バンド(44)から成る少なくとも1つのセット(31)と、該バンドセット(31)に摺動可能な形式で取り付けられた複数の横断エレメント(32)とを備え、該横断エレメント(32)にはそれぞれ切欠(33)が設けられており、該切欠は、前記バンドセット(31)を収容するために、前記横断エレメント(32)の前側主面(39)と後側主面(38)との間に延在していて、前記切欠(33)の位置で前記横断エレメント(32)には、前記バンドセット(31)の半径方向最も内側の無端金属バンド(44i)の半径方向内側面(51)に接触する、半径方向外側に向けられた支持面(42)が設けられている、請求項1から4までのいずれか1項記載のドライブベルト(3)を使用する方法において、
2つの回転プーリ(1,2)に巻き付けられ、これらに摩擦接触している前記ドライブベルト(3)を無段変速機において作動させ、前記2つの回転プーリにはそれぞれ2つの円錐形のディスク(4,5)が設けられており、該円錐形のディスク(4,5)は、これらディスクの間に周方向のV溝を画定しており、該V溝には、前記ドライブベルト(3)の所定の周方向部分が位置している、ドライブベルト(3)を使用する方法。
【請求項7】
前記研磨コーティング(50)を、作動中に、(機械的)摩耗および/または(化学的)溶解によって消費される、請求項6記載のドライブベルト(3)を使用する方法。
【請求項8】
作動される前は、前記支持面(42)は、前記横断エレメントの前側主面(39)と後側主面(38)との間に、少なくともその主な部分において実質的に直線状に延在している、請求項6または7記載のドライブベルト(3)を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段変速機と共に使用するドライブベルトに関し、前記無段変速機は2つの可変プーリを有していて、各プーリは周方向のV溝を画定している。ドライブベルトには、無端キャリアが設けられていて、このキャリアは典型的には2つのバンドセットから成っており、各バンドセットは少なくとも1つの、しかしながら通常は複数の、相互に重ねられた柔軟な無端の金属バンドを有していて、このドライブベルトにはさらに、無端キャリア上に配置され無端キャリアに対して摺動可能な複数の金属横断エレメントが設けられている。各横断エレメントには、1つ以上の切欠が設けられており、各切欠は、各バンドセットを収容している。このタイプのドライブベルトは、欧州特許出願公開第0014013号明細書により公知である。
【0002】
ドライブベルトおよび/またはドライブベルトの横断エレメントに関して方向を説明する場合、横断エレメントは、図2の正面図で示したような直立位置にあるものと常に仮定する。図2では、ドライブベルトの周方向または長さ方向Lは、図平面に対して直角である。横方向または幅方向Wは図2の平面において左右方向であり、半径方向または高さ方向Hは図2の平面において上下方向である。
【0003】
変速機においてドライブベルトの作動中、横断エレメントは、少なくとも変速機プーリの位置で無端キャリアの内面に対して押し付けられており、この場合、横断エレメントの切欠の底面は、無端キャリアの各バンドセットの半径方向最も内側のバンドの半径方向内側面に密に接触しており、特に摺動摩擦接触している。切欠の底面は、以後、サドル面とも呼ぶ。この技術分野では、横断エレメントの幅方向で見て、すなわち、横断エレメントの前側と後側との間に、凸状の湾曲を備えた前記サドル面を設計することが提案されてきた。このような凸状の湾曲に関して当該技術分野では、横断エレメントと無端キャリアとの間の(ヘルツ)接触応力が低減され、無端金属バンドの(局所的な)曲げ角度および応力が低減され、これによりドライブベルトをより高くかつ/または故障するまでより長く負荷することができ、摩擦損失が減じられるなど、いくつかの作用効果が得られ、これにより作動効率が改善される。
【0004】
しかしながら、現在行われている横断エレメントの製造方法では、横断エレメントは、ベース材料のシートまたはストリップから、同じ前から後ろの方向で、精密打ち抜きのプロセスステップで切り出されるので、このような横断エレメントの切り出しと同時に、サドル面に前記凸状の湾曲を設けることはできない。したがって、当該技術分野では、サドル面を最初に平らな面として切り出した後、このサドル面を凸状に湾曲した形状となるように造り直すいくつかの方法が提案されている。特に例えば、欧州特許出願公開第0231985号明細書、欧州特許出願公開第1366855号明細書、米国特許第4281483号明細書、特開昭61-152362号明細書、特開2014-145423号明細書等で説明されているように、この目的で、当該技術分野ではいくつかの研削法が提案されている。これら公知の研削法は、不都合なことに、横断エレメントの製造の複雑性とコストを高めている。
【0005】
本開示の課題は、横断エレメントのサドル面に凸状の湾曲を設ける公知のプロセスに対して費用対効果のよい代替案を提供することである。
【0006】
本開示によれば、上述した目的は、研磨特性を備えたコーティングを、無端キャリアの半径方向内側に、すなわち無端キャリアのバンドセットの半径方向最も内側のバンドの半径方向内側面に設けることにより実現される。このような研磨コーティングにより、変速機におけるドライブベルトの作動中、横断エレメントが、半径方向外側方向に向かって、無端キャリアバンドの半径方向内側面に対して押し付けられ、これらの間には相対運動または速度差が存在しているという事実と結び付けられることにより、横断エレメントのサドル面が研磨される。このような研磨の程度は、横断エレメントと無端キャリアとの間の接触力に比例し、したがって、変速機におけるドライブベルトの作動中の少なくとも初期は、ドライブベルトの最もきつく湾曲された部分におけるサドル面の前側および後側において最も高い。したがって、無端キャリアの前記研磨コーティングにより、横断エレメントのサドル面は研削されて凸状に湾曲された形状となり、この場合、好適には、この目的のために横断エレメントの製造に含まれるべき付加的なプロセスステップは必要ない。
【0008】
サドル面に前記凸状の湾曲形状が形成されたら、サドル面の研磨を停止する、したがって、サドル面から材料を引き続き除去することを阻止すると好適である。そのために、本開示によれば、無端キャリアの研磨コーティングは消耗品であって、例えば、サドル面との相互作用によってそれ自体摩耗される。別の選択肢は、変速機に適用されている潤滑剤に溶解する研磨コーティングを使用することである。この場合、研磨コーティングは典型的には、(徐々に)溶解可能な比較的軟質のマトリックスに埋め込まれた比較的硬い研磨粒子から成っている。
【0009】
さらに、本開示によれば、サドル面の研磨率が高過ぎないと好適である。研磨率が高過ぎると、研磨された粒子のサイズが大きくなり過ぎ、かつ/または多量過ぎる熱が研磨過程で発生するだろう。さらに、研磨率が高いほど、研磨プロセスの最終結果は予期しにくくなり、一貫性が低くなることが予想される。研磨率は明らかに、部分的には研磨コーティングの特性によって決定される。例えば、コーティングの研磨粒子の硬さ、サイズ、数は全て、このコーティングにより得られる変速機におけるサドル面の研磨率に影響を及ぼすだろう。しかしながら、本開示によれば、研磨コーティングを、半径方向最も内側のバンドの半径方向内側面の一部にのみ設けるということに特に好ましい解決手段が見出された。研磨コーティングは例えば、前記バンドの幅方向に延びる1つ以上のストリップの形で施工されてもよい。
【0010】
さらに、本開示によれば、バンドセットのバンドのその他の表面(すなわち、バンドセットの半径方向最も内側のバンドの前記半径方向内側面ではない面)は比較的滑らかであると好適である。特に、これらのその他の表面は、研磨コーティングも、欧州特許第0014013号明細書により公知であるような表面形状も有しておらず、ドライブベルトに現在普遍的に適用されている。さらに特に、これらその他のバンド表面のISO規格によるいわゆるRa表面粗さの値は、好適には0.1ミクロン以下である。すなわち、サドル面の前記凸状の湾曲形状とは別に、最小のRa粗さ値を備えた比較的滑らかな表面もサドル面のために獲得されていることが観察される。このような滑らかな表面は、半径方向最も内側のバンドに比較的小さい摩擦力しか加えず、この場合、バンドセット自体のバンド間の摩擦も小さいならば好適であることが公知である。
【0011】
上記の新規な考察および技術的概念を、図面を参照してドライブベルトの例示的な実施形態を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】2つのプーリ上を走行するドライブベルトを有した無段変速機を概略的に示す斜視図である。
図2】ドライブベルトの周方向で見た公知のドライブベルトを示す断面図である。
図3】公知のドライブベルトの横断エレメントを幅方向に向けて見た図である。
図4】本開示の根底にある横断エレメントの設計および製造の態様を示す図3の拡大図である。
図5】本開示による、柔軟な無端金属バンドの第1の実施形態を概略的に示す斜視図である。
図6】本開示による、柔軟な無端金属バンドの第2の実施形態を概略的に示す斜視図である。
図7】本開示による、柔軟な無端金属バンドの複数の別の実施形態を概略的に示す斜視図である。
【0013】
図1の無段変速機の概略的な図にはドライブベルト3が示されている。このドライブベルト3は2つのプーリ1,2の上を走行し、無端のバンドセット31を含んでいて、このバンドセットは、バンドセット31の周面にわたって配置された実質的に隣接する横断エレメント32の列を支持している。ドライブベルト3とプーリ1,2とは摩擦接触していて、各プーリ1,2の円錐形のディスク4,5は互いに対して付勢されていて、これによりドライブベルト3にそれぞれクランプ力をかけている。図示した位置では、上のプーリ1は下のプーリ2よりも速く回転する。各プーリ1,2を形成する2つの円錐形のディスク4,5の間の距離を変更することにより、各プーリ1,2上のドライブベルト3のいわゆる走行半径Rを変更することができ、結果として2つのプーリ1,2の間の速度差を所望のように変更することができる。これが変速機の入力軸6と出力軸7との間で動力を伝達する公知の形式であり、これら入力軸6と出力軸7との間には連続的に可変の回転速度比が存在する。
【0014】
図2では、ドライブベルト3が、その周方向Lに面する断面で示されている。この図2には、それぞれ断面図で示された2つのバンドセット31を備えたドライブベルト3の実施形態が示されている。バンドセット31は、ドライブベルト3の複数の横断エレメント32を支持し、かつガイドする。そのうち1つの横断エレメント32が図2に正面図で示されている。ドライブベルト3の横断エレメント32とバンドセット31とは典型的には金属、通常は鋼から製造されている。バンドセット31はドライブベルト3をまとめて保持し、この特別な実施形態では、5つの個別の無端バンド44からそれぞれ成っている。これらの無端バンド44は互いに同心的に重ねられて、バンドセット31を形成している。実際には、バンドセット31はしばしば、5つよりも多くの無端バンド44を有している。横断エレメント32は、バンドセット31の長手方向Lに沿って動く、すなわち摺動することができ、これにより変速プーリ1,2間で力が伝達されるとき、この力は少なくとも部分的に互いに押し付けられ合う、したがってドライブベルト3およびプーリ1,2の回転方向において前進方向で互いに押される横断エレメント32によって伝達される。
【0015】
図3に側面図でも示された横断エレメント32には2つの切欠33が設けられている。これらの切欠は、互いに対向して配置されていて、横断エレメント32の反対側に向かって開かれている。各切欠33は2つのバンドセット31のうちのそれぞれ1つを収容している。横断エレメント32の第1の部分またはボディ部分34は、バンドセット31よりも半径方向内側に、または高さ方向Hで言うならばバンドセット31の下方に延在していて、横断エレメント32の第2の部分またはネック部分35は、両バンドセット31の間かつバンドセット31と同じ(半径方向)高さに位置していて、横断エレメント32の第3の部分またはヘッド部分36はバンドセット31の半径方向外側に、または高さ方向Hで言うならばバンドセット31の上方に延在している。各切欠33の下方側または半径方向内側は、横断エレメント32のボディ部分34のいわゆる支持面42によって画定されている。この支持面42は、半径方向外側に、またはヘッド部分36の全般的な方向で見て上方に向いている。支持面42は、バンドセット31の半径方向内周面に、すなわち、半径方向最も内側のバンド44iの半径方向内側面に接触している、すなわち支持されている。
【0016】
プーリディスク4,5と接触する、横断エレメント32の前記ボディ部分34の横方向側面37は、互いに対して角度Φを成すように方向付けられており、この角度は、これらディスク4,5の間のV字形の角度に少なくともほぼ対応する。
【0017】
ドライブベルト3の周方向Lに向いた横断エレメント32の第1のまたは後側の主面38はほぼ平らであるが、一方、反対側を向いた、横断エレメント32の第2のまたは前側の主面39には、いわゆる揺動または傾動エッジ18が設けられている。高さ方向Hで揺動エッジ18の上方では、横断エレメント32は側面図で見て、ほぼ一定の厚さを有しているが、高さ方向Hで揺動エッジ18の下方では、前記ボディ部分34は、横断エレメント32の底面に向かって先細りしている。揺動エッジ18は通常、横断エレメント32の前側主面39の僅かに丸み付けられた区分の形として設けられている。ドライブベルト3において、プーリ1,2の間で延びているドライブベルト3のまっすぐな部分と、変速プーリ1,2の円錐形のプーリディスク4,5の間に位置するドライブベルト3の湾曲した部分との両方において、横断エレメント32の前側主面39は揺動エッジ18の位置で、隣接する横断エレメント32の後側主面38と接触する。
【0018】
横断エレメント32にはさらに、前側主面39に突出部40と、後側主面38に穴41とが設けられている。ドライブベルト3において隣接する2つの横断エレメント32の突出部40と穴41とは、隣接する横断エレメント32のうちの第1の横断エレメント32の突出部40が、第2の横断エレメント32の穴41に少なくとも部分的に挿入されるように互いに係合する。この場合、前記2つの隣接する横断エレメント32の間の相対的なずれおよび/または回転は、前記突出部40と穴41との間に設けられた隙間に限定される。
【0019】
この技術分野では、横断エレメント32に接触することにより半径方向最も内側のバンド44iに導入される接触応力を制限するために、ドライブベルト3の周方向Lで凸状の湾曲を、横断エレメント32の支持面42に設けることが公知である。このような湾曲の曲率半径Rsは典型的には、プーリ1,2におけるドライブベルト3の最小走行半径R以下であるように適合されている、すなわち選択されている。
【0020】
横断エレメント32は、ドライブベルト3の上記規定した周方向Lで材料を通って動くカッタによってストリップ状のベース材料から切断される。この切断プロセスは、原理的には、支持面42のような、その中に形成された表面に、カッタ移動方向の所定の輪郭、例えばドライブベルト3の周方向Lで前記凸状の湾曲を設けることはできない。したがって、支持面42は、最初は、横断エレメント32の側面図であり、その部分拡大図である図4の左側および真ん中に図示されているように、前記凸状の湾曲なしで形成される。図4の右側に図示された最終製品である横断エレメント32の支持面42の凸状の湾曲部は、したがって、最終製品である横断エレメント32の全製造プロセスにおいてさらなるプロセスステップによって、このさらなるプロセスステップで形づくる必要がある。このようなさらなるプロセスステップのいくつかの例は、主に、特に支持面42の縁部を研削することに関する技術により提供される。
【0021】
本開示によると、横断エレメント32の支持面42を形づくる上記公知のプロセスステップを、横断エレメントの製造プロセス全体から好適には省くことができる。本開示によると、その代わりに、研磨特性を備えたコーティング50が、バンドセット31の半径方向最も内側のバンド44iの半径方向内側面51に施工される。図5ではこのような特徴が、前記最も内側のバンド44iの斜視図で概略的に示されている。
【0022】
このような研磨コーティング50により、変速機におけるドライブベルト3の作動中に、ドライブベルト3の周方向で横断エレメント32とバンドセット31の間に相対運動または速度差が生じるという事実と結び付いて、横断エレメント32のサドル面42は、凸状に湾曲された形状となるように研削される。
【0023】
さらに、本開示によれば、最も内側のバンド44iの特に好適な実施形態では、研磨コーティング50がストリップ状に設けられている。このストリップは、半径方向内側面51の全幅にわたって横断しているが、半径方向内側面51の周方向長さの(小さい)一部分にしか横断していない。最も内側のバンド44iのこの実施形態は図6に示されている。このようなストリップ形状の幅により、サドル面42の研磨率を予め規定することができる。さらに、このようなストリップ形状により、支持面42の摩耗率が過剰にされることなく、前記コーティングとして、より硬いかつ/またはより耐摩耗性のある材料を使用することができる。
【0024】
付加的に、サドル面42の幅に沿ってサドル面42の研磨率が変更されるならば望ましいだろう。例えば、サドル面42と前記最も内側のバンド44iの半径方向内側面との間の接触潤滑を改善するために、サドル面42の側方面は、研磨が少ないか、または全く研磨されない場合もあり得る。全く研磨されない場合、研磨コーティング50は、図7において1つのあり得る実施形態50aとして示されたように、最も内側のバンド44iの幅方向中央部分にしか施工されていなくてもよい。研磨が少ない場合、研磨コーティング50は、図7において2つのあり得る実施形態50bおよび50cとして示されたように、最も内側のバンド44iの幅方向中央部分から軸方向側に向かって狭められる形状で設けられてもよい。選択的に、サドル面42の前記横方向側で特に研磨が必要な場合もある。このような場合、研磨コーティング50は、図7において1つのあり得る実施形態50dとして示されたように、最も内側のバンド44iの幅方向中央部分から軸方向側に向かって広くなる形状で設けられてもよい。さらに別の選択肢は、サドル面42の一方の横方向側が、それぞれ他方の横方向側よりも、より研磨されるというものであるが、このような場合には、研磨コーティング50は、図7において1つのあり得る実施形態50eとして示されたように、最も内側のバンド44iの一方の軸方向側にのみ設けられてもよい。選択的に、研磨コーティング50は、最も内側のバンド44iの全幅にわたって延在していてもよいが、幅方向で先細りしていてもよい。例えば、図7において1つのあり得る実施形態50fとして示されたように、研磨コーティング50は、台形形状で設けられている。
【0025】
本開示は、前記説明の全ておよび添付図面の全ての詳細に加えて、添付の特許請求の範囲の全ての特徴にも関しかつこれらの特徴を含む。請求項における括弧書きの符号は、請求項の範囲を限定するのではなく、単に、それぞれの特徴の拘束しない例として提供されている。請求項に記載された特徴は、場合によって、任意の製品または任意の方法において別々に適用することができるが、これらの特徴の2つ以上のあらゆる組合せを適用することも可能である。
【0026】
本開示によって表された発明は、明細書に明示的に言及された実施形態および/または実施例に限定されるのではなく、その補正、変更および実用的な適用、特に当業者の到達範囲にあるものをも包含する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7