(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】防汚オリゴマー化触媒系
(51)【国際特許分類】
B01J 31/14 20060101AFI20220125BHJP
C07C 2/32 20060101ALI20220125BHJP
C07C 11/08 20060101ALI20220125BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220125BHJP
【FI】
B01J31/14 Z
C07C2/32
C07C11/08
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2017565808
(86)(22)【出願日】2016-06-14
(86)【国際出願番号】 US2016037366
(87)【国際公開番号】W WO2016205194
(87)【国際公開日】2016-12-22
【審査請求日】2019-06-14
(32)【優先日】2015-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】シャイフ,ソエル
(72)【発明者】
【氏名】カワジ,モタズ
(72)【発明者】
【氏名】アル ヤミ,フセイン
(72)【発明者】
【氏名】シュィ,ウェイ
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/087303(WO,A2)
【文献】特開平02-088529(JP,A)
【文献】国際公開第2015/087304(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/087305(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 31/00
C07C 2/00
C07C 11/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンのオリゴマー化に使用され、かつ、ポリマー汚損を低減する触媒系であって、
構造Ti(OR)
4を有し、式中、Rは2~8個の炭素原子を含む分岐または直鎖アルキル基である少なくとも1つのアルキルチタネートと、
構造AlR’
3またはAlR’
2Hを有し、式中、R’は1~20個の炭素原子を含む分岐または直鎖アルキル基である少なくとも1つのアルミニウムアルキル化合物またはアルミノキサン構造と、
ホスホニウムまたはホスホニウム塩、スルホネートまたはスルホン酸塩、スルホニウムまたはスルホニウム塩、
ラクトン、コハク酸無水物、ポリエーテル、
ポリイソブテン-モノ-スクシンイミド及びポリイソブテン-ビス-スクシンイミドのうちの1つ以上から選択される、防汚剤と、を含む、触媒系。
【請求項2】
前記防汚剤が、ホスホニウムまたはホスホニウム塩を含む、請求項1に記載の触媒系。
【請求項3】
前記防汚剤が、テトラアルキルホスホニウムハライド、ホスホニウムマロネート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムハライド、テトラブチルホスホニウムハライド、テトラブチルホスホニウムテトラハロボレート、テトラブチルホスホニウムハライド、テトラブチルホスホニウムヘキサハロホスフェート、及びテトラブチルホスホニウムテトラハロボレートのうちの1つ以上を含む、請求項2に記載の触媒系。
【請求項4】
前記防汚剤が、スルホネートまたはスルホン酸塩を含む、請求項1から3いずれか1項に記載の触媒系。
【請求項5】
前記防汚剤が、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、テトラブチルホスホニウムメタンスルホネート、テトラブチルホスホニウムp-トルエンスルホネート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムp-トルエンスルホネート、3-(ジメチル(オクタデシル)アンモニオ)プロパン-1-スルホネート、3,3’-(1,4-ジドデシルピペラジン-1,4-ジイウム-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1-スルホネート)、及び3-(4-(tert-ブチル)ピリジニオ)-1-プロパンスルホネートのうちの1つ以上を含む、請求項4に記載の触媒系。
【請求項6】
前記防汚剤が、スルホニウムまたはスルホニウム塩を含む、請求項1から5いずれか1項に記載の触媒系。
【請求項7】
前記防汚剤が、環状部分を含むエステルを含む、請求項1から6いずれか1項に記載の触媒系。
【請求項8】
前記防汚剤が、ε-カプロラクトン及び2-フェニルエチルアセテートのうちの1つ以上を含む、請求項7に記載の触媒系。
【請求項9】
前記防汚剤が、無水物を含む、請求項1から8いずれか1項に記載の触媒系。
【請求項10】
前記無水物が、150g/mol~200,000g/molの数平均分子量(Mn)を有する無水物末端処理ポリマーである、請求項9に記載の触媒系。
【請求項11】
前記防汚剤が、150g/mol~200,000g/molの数平均分子量(Mn)を有するポリエーテルを含む、請求項1から10いずれか1項に記載の触媒系。
【請求項12】
前記防汚剤が、長鎖アミン末端処理化合物を含む、請求項1から11いずれか1項に記載の触媒系。
【請求項13】
前記防汚剤が、ポリイソブテン-モノ-スクシンイミド及びポリイソブテン-ビス-スクシンイミドのうちの1つ以上を含む、請求項12に記載の触媒系。
【請求項14】
前記長鎖アミン末端処理化合物が、150g/mol~200,000g/molの数平均分子量(Mn)を有する、請求項12に記載の触媒系。
【請求項15】
1-ブテンを選択的に製造する方法であって、
エチレンを触媒系に接触させて、前記エチレンをオリゴマー化して、1ブテンを選択的に形成させることを含み、前記触媒系が、
構造Ti(OR)
4を有し、式中、Rは2~8個の炭素原子を含む分岐または直鎖アルキル基である少なくとも1つのアルキルチタネートと、
構造AlR’
3またはAlR’
2Hを有し、式中、R’は1~20個の炭素原子を含む分岐または直鎖アルキル基である少なくとも1つのアルミニウムアルキル化合物またはアルミノキサン構造と、
ホスホニウムまたはホスホニウム塩、スルホネートまたはスルホン酸塩、スルホニウムまたはスルホニウム塩、
ラクトン、コハク酸無水物、ポリエーテル、
ポリイソブテン-モノ-スクシンイミド及びポリイソブテン-ビス-スクシンイミドのうちの1つ以上から選択される、防汚剤と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2015年6月19日に出願され、ANTIFOULING CATALYST COMPOSITIONS FOR SELECTIVE ETHYLENE OLIGOMERIZATIONと題する米国仮特許出願第62/181,955号の利益を主張する。
背景
【技術分野】
【0002】
本開示の実施形態は、概して、エチレンオリゴマー化において使用される触媒系に関し、より具体的には、所望されない重合を低減し得るエチレンオリゴマー化において使用される防汚触媒系に関する。
【背景技術】
【0003】
1-ブテン及び1-ヘキセンは、特にポリエチレンの製造のために重要な石油化学製品である。エチレンと、他のα-オレフィン、特に1-ブテン及び1-ヘキセンとの反応は、有用な市販のポリマーである種々の等級の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を形成する。1-ブテンの供給源は、水蒸気分解装置または流動接触分解装置のような炭化水素分解装置の流出物からのブテン分留である。しかしながら、このような流出物から1-ブテンを回収する方法は、プロセスを望ましくないものとし得るいくつかの困難なプロセス工程を必要とする。
【0004】
いくつかの商業的方法は、エチレンを、α-オレフィン、例えば1-ブテン及び1-ヘキセンに選択的にオリゴマー化する。商業的に成功している二量化プロセスは、Institute Francais du Petrole(IFP)によって開発された、Alphabutol(商標)プロセスであり、A.Forestiereらによる、“Oligomerization of Monoolefins by Homogenous Catalysts”、Oil&Science and Technology-Review de l’Institute Francais du Petrole、pages 663-664(Volume 64,Number 6,November 2009)に記載されている。このプロセスでは、エチレンを選択的に1-ブテンにオリゴマー化するためのプロセス流体として、1-ブテンを含有するバブルポイント反応器を使用する。
【0005】
オリゴマー化系には、ポリマー形成という既知の問題がある。長い滞留時間及び高い発熱反応からの不十分な熱除去は、ポリエチレン系残渣の形成をもたらす。長期にわたる汚損の副次的影響は、付着したポリマー残留物を除去するために、プロセスシャットダウンの頻度がより増加し、維持費用がより高くなることである。ポリマー残渣は、層の上に層を形成し、最終的には流体の流れのある場所の開口部及びポートを閉鎖する可能性がある。さらに、反応器の壁に沿ったポリマー被覆物は、反応器系への熱伝達に悪影響を及ぼし得る絶縁体として作用する可能性がある。ポリマーはまた、触媒的活性であり得るか、または反応プロセスを阻害し得る崩壊物も収集する可能性がある。
【0006】
特に困難な問題は、「ホットスポット」の形成である。ホットスポットは、外部冷却が無効であり、触媒活性が高い領域である。それは、プロセスの制御不能を表す。ホットスポットは、重合を含む副反応を促進する触媒的活性物質を含む、収集されたポリマーの領域であり得る。抑制が利かないままにしておくと、ホットスポットは、最終的に冷却能力の喪失、暴走重合反応、またはその両方に起因して、プロセスシャットダウンにつながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、所望のオリゴマー化速度及び反応製造物を形成するための選択性を維持しながら、反応器系の壁及びチューブ上のポリマー汚損を防止するための効果的な方法が絶えず必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、ポリマー汚損を低減し得る触媒系は、少なくとも1つのチタネート化合物と、少なくとも1つのアルミニウム化合物と、防汚剤と、を含むことができる。防汚剤は、ホスホニウムまたはホスホニウム塩、スルホネートまたはスルホン酸塩、スルホニウムまたはスルホニウム塩、環状部分を含むエステル、無水物、ポリエーテル、及び長鎖アミン末端処理化合物のうちの1つ以上から選択することができる。触媒系は、非ポリマーエーテル化合物をさらに含むことができる。
【0009】
別の実施形態によれば、1-ブテンは、エチレンを触媒系と接触させて、エチレンをオリゴマー化して、1-ブテンを選択的に形成することを含み得る方法によって、選択的に製造することができる。触媒系は、少なくとも1つのチタネート化合物、少なくとも1つのアルミニウム化合物、及び防汚剤を含むことができる。防汚剤は、ホスホニウムまたはホスホニウム塩、スルホネートまたはスルホン酸塩、スルホニウムまたはスルホニウム塩、環状部分を含むエステル、無水物、ポリエーテル、及び長鎖アミン末端処理化合物のうちの1つ以上から選択することができる。
【0010】
本開示に記載されている実施形態の追加の特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部はその記載から当業者に容易に明らかになるか、または以下に続く詳細な説明及び特許請求の範囲を含む、記載された実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の1つ以上の実施形態は、所望されない重合によって引き起こされる反応器汚損を低減しながら、1-ブテンまたは1-ヘキセンを形成するためのエチレンの二量化などの、エチレンオリゴマー化を促進するのに利用され得る触媒系を対象とする。これらの触媒系は、本開示において「防汚エチレンオリゴマー化触媒系」または「防汚触媒系」と称されることがある。記載された防汚触媒系は、少なくとも1つのチタネート化合物と、少なくとも1つのアルミニウム化合物と、少なくとも1つの防汚剤と、を含むことができる。防汚触媒系は、1種以上の非ポリマーエーテル化合物をさらに含むことができ、防汚触媒系の成分は、ヘキサンなどの溶媒中で混合することができる。ときには本開示では「汚損」と称される、望ましくない重合を低減させながら、防汚触媒系を使用して、エチレンを選択的にオリゴマー化して、1-ブテンを製造することができる。例えば、流体流れを低減させ、反応器系内の流体が所望の速度で流れるのを完全に遮断するかまたは少なくとも部分的に遮断する、固体ポリエチレン系残渣の形成に起因して、反応器汚損が生じる可能性がある。記載された「防汚エチレンオリゴマー化触媒系」または「防汚触媒系」は、反応中の汚損を完全には排除し得ないことを理解されたい。しかしながら、これらの触媒系は、本開示に記載されているような防汚剤を含まない触媒系と比較して、汚損を低減する。また、本開示の触媒系は、1-ブテンを形成するためのエチレン二量化などのエチレンオリゴマー化反応において有用であるが、他の化学反応の触媒としても有用であり得ると理解されるべきであり、本開示で記載されている防汚触媒系は、エチレンの1-ブテンへの二量化への使用に限定されているとみなされるべきではない。本開示に記載されている防汚剤は、例えば、非チタン系触媒を含む他の触媒系と混合され得ることをさらに理解されたい。
【0012】
本開示において前述のように、記載されている防汚触媒系の実施形態は、本開示に記載の触媒系において触媒として作用し得る1つ以上のチタネート化合物を含み得る。いくつかのチタネート化合物を防汚触媒系に含めることができるが、いくつかの実施形態では、単一のチタネート化合物を防汚触媒系に含めることができる。1つ以上の実施形態では、チタニウム化合物は、アルキルチタネートであってもよい。アルキルチタネートは、構造Ti(OR)4を有していてもよく、式中、Rは分岐または直鎖アルキル基である。1つ以上の実施形態において、各アルキル基は、2~8個の炭素を含んでもよく、各R基は、同じであっても異なっていてもよい。好適なアルキルチタネートは、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート(チタニウムブトキシドまたはテトラブチルオルソチタネートとも称される)、2-テトラエチルヘキシルチタネート、またはそれらの組み合わせを含むことができる。1つ以上の実施形態において、防汚触媒系のチタネート化合物は、テトラ-n-ブチルチタネートからなる。
【0013】
本開示において前にも記載されるように、記載されている防汚触媒系の実施形態は、本開示に記載の触媒系において助触媒として作用し得る1つ以上のアルミニウム化合物を含むことができる。いくつかのアルミニウム化合物を防汚触媒系に含めることができるが、いくつかの実施形態では、単一のアルミニウム化合物を含めることができる。1つ以上の実施形態では、1つ以上のアルミニウムアルキル化合物を、防汚触媒系に含めることができる。アルミニウムアルキル化合物は、AlR’3またはAlR’2Hの構造を有することができ、式中、R’は、1~20個の炭素を含む直鎖もしくは分岐アルカンであるか、またはアルミノキサン構造(つまり、トリアルキルアルミニウム化合物の部分加水分解物)である。アルミニウムアルキル化合物のR’基は、互いに同じであっても異なっていてもよい。例えば、限定するものではないが、好適なアルミニウムアルキル化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリ-イソ-ブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。1つ以上の実施形態において、防汚触媒系のアルミニウム化合物は、トリエチルアルミニウムからなる。
【0014】
本開示に記載されている防汚触媒系は、少なくとも1つの防汚剤を含む。防汚剤は、ポリマー製造による汚損を減少させる触媒系への任意の添加剤であってもよい。想到される防汚剤としては、ホスホニウムまたはホスホニウム塩、スルホネートまたはスルホネート塩、スルホニウムまたはスルホニウム塩、エステル、無水物、ポリエーテル及び長鎖アミン末端処理化合物が挙げられる。本開示で使用されるように、特定の化学的部分に関して命名される防汚剤(例えば、「スルホネート防汚剤」または「ホスホニウム防汚剤」)は、その特定の化学的部分の少なくとも1つを含むが、追加の化学的部分も含むことを理解されたい。例えば、「スルホネート防汚剤」は、スルホネート部分を含む防汚剤であり、「ホスホニウム防汚剤」は、ホスホニウム部分を含む防汚剤である。
【0015】
1つ以上の実施形態では、防汚触媒系は、1つ以上のホスホニウム防汚剤を含む。本開示で使用されるように、ホスホニウム防汚剤は、化学構造#1に示されるホスホニウム構造を含む任意の化合物を含み、式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、他の部分を含み得る化学基を表し、種々のR基は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。一般に、ホスホニウム防汚剤は、ホスホニウムカチオンがアニオン性化合物とイオン結合を形成するホスホニウム塩として、防汚触媒系に導入することができる。本開示で使用されるように、ホスホニウム防汚剤には、ホスホニウム塩または解離したホスホニウムカチオンが含まれる。
【化1】
【0016】
好適なホスホニウム防汚剤としては、テトラアルキルホスホニウム塩が挙げられるが、それに限定されない。例えば、防汚剤としては、テトラアルキルホスホニウムハライド(例えば、テトラブチルホスホニウムハライドなど)、ホスホニウムマロネート(例えば、テトラブチルホスホニウムマロネートなど)、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムハライド(例えば、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムブロミドなど)、テトラブチルホスホニウムハライド(例えば、テトラブチルホスホニウムヨージドなど)、テトラブチルホスホニウムテトラハロボレート(例えば、テトラブチルホスホニウムテトラフルオロボレートなど)、テトラブチルホスホニウムハライド(例えば、テトラブチルホスホニウムクロライドなど)、テトラブチルホスホニウムヘキサハロホスフェート(例えば、テトラブチルホスホニウムヘキサフルオロホスフェートなど)、またはテトラブチルホスホニウムテトラハロボレート(例えば、テトラブチルホスホニウムテトラフルオロボレートなど)を挙げることができる。本開示を通じて使用されるように、ハライドとしては、フッ化物、塩化物、臭化物、またはヨウ化物を挙げることができる(及び「ハロ」としては、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素の元素を挙げることができる)。1つ以上の実施形態において、R基(つまり、R1、R2、R3、及びR4)は、分岐もしくは非分岐アルカン、アルケンま、たはアリールであってもよく、R基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0017】
1つ以上の実施形態では、防汚触媒系は、1つ以上のスルホネート防汚剤を含む。本開示で使用されるように、スルホネート防汚剤は、化学構造#2に示される構造を含む任意の化合物を含み、式中、Rは、他の部分を含み得る化学基を表す。一般に、スルホネート防汚剤は、スルホニウムアニオンがカチオン性化合物とイオン結合を形成するスルホネート塩として、防汚触媒系に導入することができる。本開示で使用されるように、スルホニウム防汚剤は、スルホニウム塩または解離したスルホニウムアニオンを含む。
【化2】
【0018】
好適なスルホネート防汚剤としては、スルホネート塩が挙げられるが、それに限定されない。例えば、スルホネート防汚剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、テトラブチルホスホニウムメタンスルホネート、テトラブチルホスホニウムp-トルエンスルホネート、及びヘキサデシルトリメチルアンモニウムp-トルエンスルホネートを挙げることができるが、それらに限定されない。他の実施形態では、好適な防汚剤は、スルホン酸アンモニウムなどの非塩スルホネート(すなわち、塩として解離しないスルホネート)を含むことができる。防汚剤として好適な非塩スルホネートとしては、例えば、3-(ジメチル(オクタデシル)アンモニオ)プロパン-1-スルホネート、3,3’-(1,4-ジドデシルピペラジン-1,4-ジイウム-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1-スルホネート)、及び3-(4-(tert-ブチル)ピリジニオ)-1-プロパンスルホネートが挙げられるが、それらに限定されない。
【0019】
1つ以上の実施形態では、防汚触媒系は、1つ以上のスルホニウム防汚剤を含む。スルホニウム防汚剤は一般に化学構造#3に示されており、式中、R
1、R
2、及びR
3は他の部分を含み得る化学基を表し、種々のR基(つまりR
1、R
2、及びR
3)は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。一般に、スルホニウム防汚剤は、スルホニウムカチオンがアニオン性化合物とイオン結合を形成するスルホニウム塩として、防汚触媒系に導入することができる。本開示で使用されるように、スルホニウム防汚剤は、スルホニウム塩または解離したスルホニウムカチオンを含む。
【化3】
【0020】
別の実施形態において、防汚剤は、エステル防汚剤または無水物防汚剤を含むことができ、いくつかの実施形態において、エステルまたは無水物防汚剤は、環状部分を含む。環状部分を含有する好適なエステルまたは無水物防汚剤として、ε-カプロラクトン、2-フェニルエチルアセテート、及びポリイソブテニルコハク酸無水物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、エステル部分または無水物部分は、環状部分に含まれる。しかしながら、他の実施形態において、エステルまたは無水物部分は、環状部分とは別個である。環状部分の例としては、環状アルキル及びアリールが挙げられるが、これらに限定されず、原子の環構造を含む任意の化学部分を含むことができる。いくつかの実施形態では、エステルまたは無水物の防汚剤は、150グラム/モル(g/mol)~200,000g/mol(例えば、150g/mol~1,000g/mol、150g/mol~2,000g/mol、150g/mol~3,000g/mol、150g/mol~5,000g/mol、150g/mol~10,000g/mol、150g/mol~50,000g/mol、150g/mol~100,000g/mol、150g/mol~150,000g/mol、1,000g/モル~200,000g/モル、5,000g/モル~200,000g/モル、10,000g/モル~200,000g/モル、50,000g/モル~200,000g/モル、または100,000g/mol~200,000g/mol)の数平均分子量(Mn)を有する、エステルまたは無水物末端処理ポリマーであってもよい。
【0021】
別の実施形態では、防汚剤は、1つ以上のポリエーテル防汚剤を含むことができる。ポリエーテル防汚剤は、エーテル部分を分離する1、2、3、4、またはさらにはそれ以上の炭素を有する炭素鎖を含むモノマー単位を含むことができる。例えば、本開示で想到される1つのポリエーテルは、化学構造#4に示されるものを含み、式中、mは、1~10に等しく(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10、またはさらにいっそう、例えば、mは、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、もしくは少なくとも75に等しく、及び100以下である)、nは、1~50,000である。化学構造4中のRは、水素原子、または分岐もしくは置換を有するかもしくは有しないアルキルを表すことができる。実施形態では、Rは、少なくとも5、少なくとも10、またはさらにいっそうの炭素原子を含むことができる。例えば、好適なポリエーテル防汚剤は、ポリテトラヒドロフラン(m=4)であってもよい。1つ以上の実施形態によれば、ポリエーテル防汚剤は、150グラム/モル(g/mol)~200,000g/mol(例えば、150g/mol~1,000g/mol、150g/mol~2,000g/mol、150g/mol~3,000g/mol、150g/mol~5,000g/mol、150g/mol~10,000g/mol、150g/mol~50,000g/mol、150g/mol~100,000g/mol、150g/mol~150,000g/mol、1,000g/モル~200,000g/モル、5,000g/モル~200,000g/モル、10,000g/モル~200,000g/モル、50,000g/モル~200,000g/モル、または100,000g/mol~200,000g/mol)の数平均分子量(Mn)を有することができる。
【化4】
【0022】
別の実施形態では、防汚剤は、1つ以上の長鎖アミン末端処理防汚剤を含むことができる。1つ以上の実施形態では、長鎖アミン末端処理防汚剤は、150グラム/モル(g/mol)~200,000g/mol(例えば、150g/mol~1,000g/mol、150g/mol~2,000g/mol、150g/mol~3,000g/mol、150g/mol~5,000g/mol、150g/mol~10,000g/mol、150g/mol~50,000g/mol、150g/mol~100,000g/mol、150g/mol~150,000g/mol、1,000g/モル~200,000g/モル、5,000g/モル~200,000g/モル、10,000g/モル~200,000g/モル、50,000g/モル~200,000g/モル、または100,000g/mol~200,000g/mol)の数平均分子量(Mn)を有することができる。好適な長鎖アミン末端処理防汚剤としては、ポリイソブテン-モノ-スクシンイミド及びポリイソブテン-ビス-スクシンイミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
いくつかの実施形態は、単一の化学種である防汚剤を含んでもよいが、他の実施形態では、2つ以上の異なる防汚剤種が防汚剤として存在することができることを理解されたい。実施形態では、同じ種類の2つ以上の異なる防汚剤種が存在することができる。例えば、触媒系は、2つの異なる種類のホスホニウム、2つの異なる種類のスルホネート、2つの異なる種類のスルホニウム、2つの異なる種類のエステル、無水物、2つの異なる種類のポリエーテル、または2つの異なる長鎖アミン末端処理化合物を含むことができる。追加の実施形態では、触媒系は、2つ以上の異なる種類の防汚剤(つまり、ホスホニウムまたはホスホニウム塩、スルホネートまたはスルホン酸塩、スルホニウムまたはスルホニウム塩、環状部分を含むエステル、無水物、ポリエーテル、及び長鎖アミン末端処理化合物のうちの任意の2つ以上)を含むことができる。
【0024】
いくつかの防汚剤種は、2つ以上の種類の防汚剤を含むことができる。例えば、1種類の防汚剤のアニオンと、異なる防汚剤のカチオンと、を有する塩は、一般に2種類の防汚剤を含むことができる。このような防汚剤の例としては、スルホネート及びホスホニウムを含む塩であるテトラブチルホスホニウムメタンスルホネート及びテトラブチルホスホニウムp-トルエンスルホネートが挙げられる。
【0025】
1つ以上の実施形態では、防汚触媒系は、1つ以上の非ポリエーテル化合物を含むことができる。1つ以上のエーテル化合物は、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、テトラヒドロピラン(THP)、またはそれらの組み合わせなどの環状非ポリマーエーテルを含むことができるが、それらに限定されない。本開示で使用される「非ポリマー」エーテルは、1つ以上のエーテルを含むが、長いエーテルポリマー鎖を含まない化合物を指す。通常、これらの非ポリマーエーテルは、1つまたは2つのエーテル部分を含み、10未満のエーテル部分を含む。本開示に記載される防汚触媒系は、すべての実施形態においてエーテル化合物を必要とするわけではないが、防汚剤としてエステルまたは無水物を含む防汚触媒系は、エステルを含まないことに特に適している場合がある。いくつかの防汚剤のエステルまたは酸無水物官能基は、防汚触媒系中のエーテルの官能基を少なくとも部分的に複製または模倣することができ、付加的なエーテル化合物なしで、それらの目的のために十分なエステルまたは無水物を含む防汚触媒系のいくつかの実施形態を提供すると考えられている。
【0026】
防汚触媒系は、少なくとも1つ以上のチタネート化合物と、1つ以上のアルミニウム化合物と、1つ以上の防汚剤と、を含むことができる。1つ以上の実施形態では、全チタネート化合物対全アルミニウム化合物のモル比は、1:10~1:1(例えば、1:10~1:2、1:10~1:3、1:10~1:4、1:10~1:5、1:10~1:6、1:10~1:7、1:10~1:8、1:10~1:9、1:9~1:1、1:8~1:1、1:7~1:1、1:6~1:1、1:5~1:1、1:4~1:1、1:3~1:1、または1:2~1など)であってもよい。
【0027】
1つ以上の実施形態では、全チタネート化合物対全防汚剤のモル比は、1:10~1:0.01(例えば、1:10~1:0.05、1:10~1:0.1、1:10~1:0.3、1:10~1:0.5、1:10~1:0.7、1:10~1:1、1:10~1:2、1:10~1:3、1:10~1:5、1:5~1:0.01、1:3~1:0.01、1:2~1:0.01、1:1~1:0.01、1:0.7~1:0.01、または1:0.3~1:0.01など)であってもよい。
【0028】
1つ以上の実施形態では、全チタネート化合物対全非ポリマーエーテル化合物のモル比は、1:10~1:0(例えば、1:5~1:0、1:3~1:0、1:2~1:0、1:1~1:0、1:0.5~1:0、1:0.3~1:0、1:0.1~1:0、1:10~1:0.1、1:10~1:0.5、1:10~1:1、1:10~1:2、または1:10~1:5など)であってもよい。
【0029】
本開示において先に記載された防汚触媒系の成分のモル比は、チタネート化合物の総量に対する防汚触媒系の各成分の合計量を表しており、ここで、「総」量は、特定の成分の種類(つまり、チタネート化合物、アルミニウム化合物、非ポリマーエーテル化合物、または防汚剤)とみなされ得る防汚触媒系の全種のモル量を指すということを理解されたい。成分の総量は、チタナネート化合物、アルミニウム化合物、非ポリマーエーテル化合物、または防汚剤である2種以上の化学種をそれぞれ含むことができる。
【0030】
本開示の別の実施形態によれば、エチレンを先に記載した防汚触媒系に接触させ、エチレンをオリゴマー化し、1-ブテンを形成させることによって、1-ブテンを製造することができる。1つ以上の実施形態では、エチレン及び防汚触媒系は、反応器に供給され、混合される。反応は、バッチ反応として、または連続撹拌槽反応器プロセスのような連続プロセス反応として、実施することができる。さらなる実施形態によれば、反応器の圧力は5バール~100バールであり、反応器の温度は30セ氏温度(℃)~180℃であってもよい。しかしながら、特に、反応器系の特定の設計ならびに反応物及び触媒の濃度の観点から、これらの範囲外のプロセス条件が想到される。本開示の反応は、主に、エチレンの重合(例えば、100以上のモノマーエチレン単位を含むポリマー)を制限するか、または含まない。実施形態では、ポリマーの形成は、500ppm未満、300ppm未満、またはさらに100ppm未満の反応物に制限される可能性がある。
【0031】
1つ以上の実施形態において、理論に縛られることなく、防汚剤のヘテロ原子は、触媒系において触媒として利用されるチタネート化合物と弱い配位を形成し得ると考えられている。1つ以上の実施形態において、防汚剤のアルキル基または他の比較的長鎖の基は、チタネート化合物の触媒中心へのエチレンのアクセスを防止するためのいくらかの能力を果たすことができる。エチレンのチタネート触媒部位へのアクセスの制限は、エチレンの重合を低減させ、したがって反応器汚損を低減させ得る。
【0032】
1つ以上の実施形態において、防汚剤の触媒系への導入は、1-ブテン形成の触媒活性を大きく低減させずにポリマー形成を抑制することができる。一実施形態では、防汚剤の含有によって、ポリマー形成(汚損)は、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはさらに95%低減される可能性がある。一実施形態では、防汚剤の含有によって、1-ブテンの生産量は、増加する、同等を維持する、または50%、40%、30%、20%、10%、もしくはさらに5%以下で減少する可能性がある。いくつかの実施形態では、防汚剤は、(例えば、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくはさらに95%)ポリマー形成を低減し、1-ブテンの生産量を、増加させる、影響しない、または50%、40%、30%、20%、10%、もしくはさらに5%以下で減少させる可能性がある。百分率基準でのポリマー形成速度及び触媒活性の低減は、防汚剤が存在しない触媒系と比較して、記載された1つ以上の防汚剤を含む触媒系に基づく。
【実施例】
【0033】
防汚触媒系の様々な実施形態は、以下の実施例によってさらに明らかになるであろう。これらの実施例は本質的に例示的なものであり、本開示の主題を限定するものではない。
【0034】
記載された防汚触媒系の防汚効果を評価するために、エチレンオリゴマー化反応を実施し評価した。異なる防汚剤を有するか、または追加の防汚剤を有しない(表1の「比較例」として記載された対照試料として)、複数のサンプル防汚触媒系を配合した。実験のために、チタニウムテトラブトキシド(表1において「Ti」と表示される)と、THFと、トリエチルアルミニウム(「TEAL」と称されることがある)と、防汚剤(表1において「AFA」と表示される)と、を含有する触媒混合物を使用した。各例のTi:AFAのモル比を表1に記載する。実施例中のTi:THF:TEALのモル比は1:6:7.5であった。オリゴマー化実験は、各々が400ミリリットル(mL)の容量を有する8つのオートクレーブ反応器を含んだ装置で実施した。実験実施に先立ち、装置をオイルバキュームポンプで反応器を排気し、160℃に加熱する不活性化処理をした。安定した温度に達した後、装置を窒素で4バールに加圧し、撹拌機を約300rpmの撹拌速度で操作した。次いで、加圧の開始から3分後に、ガス出口バルブを開放して窒素を排気に放出した。ガス放出開始の2分後に、主排気管から真空ポンプへのバルブを開放し、装置を排気した。装置を15分間排気した。次いで、ガス出口バルブを閉じ、装置を再び窒素で加圧した。ポンプ加圧サイクルを、少なくとも30時間実施した。次いで、装置を真空でさらに6~8時間排気した。最後の1時間の間、オートクレーブ反応器を45℃に冷却した。次いで、装置を反応開始まで3バールに加圧した。
【0035】
触媒混合物の成分を含む充填器を調製した。充填器を調製するために、2つのストック溶液をグローブボックス内で調製した。ヘプタンを溶媒として利用し、一定量のヘプタンを使用し、オートクレーブ反応器を名目上充填した。第1の溶液は、90%のヘプタンと混合されたTEAL助触媒を含有していた。第2の溶液は、チタニウムテトラブトキシド触媒と、THFと、10%のヘプタンと混合された防汚剤と、を含有していた。第1の溶液及び第2の溶液を、それぞれ第1の溶液充填器及び第2の溶液充填器に入れた。
【0036】
オリゴマー化実験の実施のために、装置内の圧力を約0.2バールに解放した。TEAL/ヘプタンの第2溶液を有する充填器を反応器に注入した。充填は、エチレンを用いて10バールに充填器を加圧し、充填器と反応器間のバルブを開くことによって実現した。次いで、35バールの圧力で充填ガスとしてエテンを使用して、第2の溶液充填器の内容物を注入した。反応器の目標圧力は23バールに設定した。反応器へのガス投入は、自動的に開始した。反応器内の温度が上昇し、温度を53.5℃の目標値に設定した。エテンの投入開始後、反応を75分間実施した。
【0037】
75分間の反応時間の後、1mLのエタノールの注入で反応を停止させた。反応器から圧力を解放し、温度を20℃に設定した。反応器を開き、バッフル及び撹拌器を含む反応器の内容物を取り出し、75℃の加熱オーブンに1時間定置した。次いで、反応器中の残留物を10重量%硫酸水溶液で洗浄して、触媒残留物を溶解した。残りの固体ポリマーを濾過し、110℃のオーブン中で一晩乾燥させ、秤量した。表1は、各サンプル触媒系を利用した、反応のための二量化活性及びポリマー堆積物の重量を示す。表1の反応データから明らかなように、防汚添加剤の添加は、比較的高い二量化活性を維持しながら、ある程度ポリマー形成を低減させた。
【表1】
【0038】
表1に示されるように、試験したいくつかの防汚剤は、触媒活性を大きく低減することなく、ポリマーの製造を低減させた。表2は、比較例(防汚剤を含んでいない)と防汚添加剤を含んでいる各実施例との間で観察された変化に基づいて、活性の低減及び製造されたポリマーの低減に関するデータを示す。
【表2】
【0039】
表2に示すように、いくつかの防汚剤は、ポリマー形成を抑制する(例えば、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくはさらに95%低減)一方で、活性を大きく低減させない(例えば、50%、40%、30%、20%、10%、もしくはさらに5%の活性の低減、またはさらに活性の増加)。
【0040】
以下の請求項のうちの1つ以上は、用語「where」を移行句として利用することに留意されたい。本技術を定義する目的のために、この用語は、構造の一連の特徴の詳述を導入するために使用されるオープンエンドの移行句として、特許請求の範囲に導入され、より一般的に使用されるオープンエンドのプリアンブル用語「comprising」と同様の方法で解釈されるべきであるということに留意されたい。
【0041】
ある特性に割り当てられた2つの定量値は、その特性の範囲を構成することができ、所与の特性のすべての記載された定量値から形成される範囲のすべての組み合わせが、本開示において想到されるということを理解されたい。
【0042】
本開示の主題を、詳細に及びその特定の実施形態を参照して記載したが、本明細書に開示された様々な詳細は、これらの詳細が、たとえ本明細書に付随する各図面に特定の要素が示されている場合であっても、本明細書に記載された様々な実施形態の本質の構成要素である要素に関係していることを示唆するものではないことに留意されたい。むしろ、本明細書に添付の請求項は、本開示の幅及び本明細書に記載される様々な実施形態の対応する範囲の唯一の表現として解釈されるべきである。さらに、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、修正及び変更が可能であることは明らかであろう。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施の形態1
ポリマー汚損を低減する触媒系であって、
少なくとも1つのチタネート化合物と、
少なくとも1つのアルミニウム化合物と、
ホスホニウムまたはホスホニウム塩、スルホネートまたはスルホン酸塩、スルホニウムまたはスルホニウム塩、環状部分を含むエステル、無水物、ポリエーテル、及び長鎖アミン末端処理化合物のうちの1つ以上から選択される、防汚剤と、を含む、触媒系。
実施の形態2
前記防汚剤が、ホスホニウムまたはホスホニウム塩を含む、実施の形態1に記載の触媒系。
実施の形態3
前記防汚剤が、テトラアルキルホスホニウムハライド、ホスホニウムマロネート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムハライド、テトラブチルホスホニウムハライド、テトラブチルホスホニウムテトラハロボレート、テトラブチルホスホニウムハライド、テトラブチルホスホニウムヘキサハロホスフェート、及びテトラブチルホスホニウムテトラハロボレートのうちの1つ以上を含む、実施の形態2に記載の触媒系。
実施の形態4
前記防汚剤が、スルホネートまたはスルホン酸塩を含む、実施の形態1に記載の触媒系。
実施の形態5
前記防汚剤が、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、テトラブチルホスホニウムメタンスルホネート、テトラブチルホスホニウムp-トルエンスルホネート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムp-トルエンスルホネート、3-(ジメチル(オクタデシル)アンモニオ)プロパン-1-スルホネート、3,3’-(1,4-ジドデシルピペラジン-1,4-ジイウム-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1-スルホネート)、及び3-(4-(tert-ブチル)ピリジニオ)-1-プロパンスルホネートのうちの1つ以上を含む、実施の形態4に記載の触媒系。
実施の形態6
前記防汚剤が、スルホニウムまたはスルホニウム塩を含む、実施の形態1に記載の触媒系。
実施の形態7
前記防汚剤が、環状部分を含むエステルを含む、実施の形態1に記載の触媒系。
実施の形態8
前記防汚剤が、ε-カプロラクトン及び2-フェニルエチルアセテートのうちの1つ以上を含む、実施の形態7に記載の触媒系。
実施の形態9
前記防汚剤が、無水物を含む、実施の形態1に記載の触媒系。
実施の形態10
前記無水物が、150g/mol~200,000g/molの数平均分子量(Mn)を有する無水物末端処理ポリマーである、実施の形態9に記載の触媒系。
実施の形態11
前記防汚剤が、150g/mol~200,000g/molの数平均分子量(Mn)を有するポリエーテルを含む、実施の形態1に記載の触媒系。
実施の形態12
前記防汚剤が、長鎖アミン末端処理化合物を含む、実施の形態1に記載の触媒系。
実施の形態13
前記防汚剤が、ポリイソブテン-モノ-スクシンイミド及びポリイソブテン-ビス-スクシンイミドのうちの1つ以上を含む、実施の形態12に記載の触媒系。
実施の形態14
前記長鎖アミン末端処理化合物が、150g/mol~200,000g/molの数平均分子量(Mn)を有する、実施の形態12に記載の触媒系。
実施の形態15
非ポリマーエーテル化合物をさらに含む、実施の形態1に記載の触媒系。
実施の形態16
前記非ポリマーエーテル化合物が、テトラヒドロフラン、ジオキサン、またはテトラヒドロピランである、実施の形態15に記載の触媒系。
実施の形態17
前記チタネート化合物のうちの少なくとも1つが、アルキルチタネートである、実施の形態1に記載の触媒系。
実施の形態18
前記アルキルチタネートが、構造Ti(OR)
4
を有し、式中、Rは2~8個の炭素原子を含む分岐または直鎖アルキル基である、実施の形態17に記載の触媒系。
実施の形態19
前記アルキルチタネートが、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、または2-テトラエチルヘキシルチタネートから選択される、実施の形態17に記載の触媒系。
実施の形態20
前記アルミニウム化合物のうちの少なくとも1つが、構造AlR’
3
またはAlR’
2
Hを有し、式中、R’は、2~8個の炭素原子を含む分岐または直鎖アルキル基である、実施の形態1に記載の触媒系。
実施の形態21
前記アルミニウム化合物のうちの少なくとも1つが、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリ-イソ-ブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、またはアルミノキサンから選択される、実施の形態1に記載の触媒系。
実施の形態22
全チタネート化合物対全アルミニウム化合物のモル比が、1:10~1:1である、実施の形態1に記載の触媒系。
実施の形態23
全チタネート化合物対全防汚剤のモル比が、1:10~1:0.01である、実施の形態1に記載の触媒系。
実施の形態24
全チタネート化合物対全非ポリマーエーテル化合物のモル比が、1:10~1:0である、実施の形態1に記載の触媒系。
実施の形態25
1-ブテンを選択的に製造する方法であって、
エチレンを触媒系に接触させて、前記エチレンをオリゴマー化して、1ブテンを選択的に形成させることを含み、前記触媒系が、
少なくとも1つのチタネート化合物と、
少なくとも1つのアルミニウム化合物と、
ホスホニウムまたはホスホニウム塩、スルホネートまたはスルホン酸塩、スルホニウムまたはスルホニウム塩、環状部分を含むエステル、無水物、ポリエーテル、及び長鎖アミン末端処理化合物のうちの1つ以上から選択される、防汚剤と、を含む、方法。
実施の形態26
前記防汚剤が、ホスホニウムまたはホスホニウム塩を含む、実施の形態25に記載の触媒系。
実施の形態27
前記防汚剤が、テトラアルキルホスホニウムハライド、ホスホニウムマロネート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムハライド、テトラブチルホスホニウムハライド、テトラブチルホスホニウムテトラハロボレート、テトラブチルホスホニウムハライド、テトラブチルホスホニウムヘキサハロホスフェート、及びテトラブチルホスホニウムテトラハロボレートのうちの1つ以上を含む、実施の形態26に記載の触媒系。
実施の形態28
前記防汚剤が、スルホネートまたはスルホン酸塩を含む、実施の形態25に記載の触媒系。
実施の形態29
前記防汚剤が、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、テトラブチルホスホニウムメタンスルホネート、テトラブチルホスホニウムp-トルエンスルホネート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムp-トルエンスルホネート、3-(ジメチル(オクタデシル)アンモニオ)プロパン-1-スルホネート、3,3’-(1,4-ジドデシルピペラジン-1,4-ジイウム-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1-スルホネート)、及び3-(4-(tert-ブチル)ピリジニオ)-1-プロパンスルホネートのうちの1つ以上を含む、実施の形態28に記載の触媒系。
実施の形態30
前記防汚剤が、スルホニウムまたはスルホニウム塩を含む、実施の形態25に記載の触媒系。
実施の形態31
前記防汚剤が、環状部分を含むエステルを含む、実施の形態25に記載の触媒系。
実施の形態32
前記防汚剤が、ε-カプロラクトン及び2-フェニルエチルアセテートのうちの1つ以上を含む、実施の形態31に記載の触媒系。
実施の形態33
前記防汚剤が、無水物を含む、実施の形態25に記載の触媒系。
実施の形態34
前記無水物が、150g/mol~200,000g/molの数平均分子量(Mn)を有する無水物末端処理ポリマーである、実施の形態33に記載の触媒系。
実施の形態35
前記防汚剤が、150g/mol~200,000g/molの数平均分子量(Mn)を有するポリエーテルを含む、実施の形態25に記載の触媒系。
実施の形態36
前記防汚剤が、長鎖アミン末端処理化合物を含む、実施の形態25に記載の触媒系。
実施の形態37
前記防汚剤が、ポリイソブテン-モノ-スクシンイミド及びポリイソブテン-ビス-スクシンイミドのうちの1つ以上を含む、実施の形態36に記載の触媒系。
実施の形態38
前記長鎖アミン末端処理化合物が、150g/mol~200,000g/molの数平均分子量(Mn)を有する、実施の形態25に記載の触媒系。
実施の形態39
非ポリマーエーテル化合物をさらに含む、実施の形態25に記載の方法。
実施の形態40
前記非ポリマーエーテル化合物が、テトラヒドロフラン、ジオキサンまたはテトラヒドロピランである、実施の形態39に記載の方法。
実施の形態41
前記チタネート化合物のうちの少なくとも1つが、アルキルチタネートである、実施の形態25に記載の方法。
実施の形態42
前記アルキルチタネートが、構造Ti(OR)
4
を有し、式中、Rは2~8個の炭素原子を含む分岐または直鎖アルキル基である、実施の形態41に記載の方法。
実施の形態43
前記アルキルチタネートが、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、または2-テトラエチルヘキシルチタネートから選択される、実施の形態41に記載の方法。
実施の形態44
前記アルミニウム化合物のうちの少なくとも1つが、構造AlR’
3
またはAlR’
2
Hを有し、式中、R’は、2~8個の炭素原子を含む分岐または直鎖アルキル基である、実施の形態25に記載の方法。
実施の形態45
前記アルミニウム化合物のうちの少なくとも1つが、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリ-イソ-ブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、またはアルミノキサンから選択される、実施の形態25に記載の方法。
実施の形態46
全チタネート化合物対全アルミニウム化合物のモル比が、1:10~1:1である、実施の形態25に記載の方法。
実施の形態47
全チタネート化合物対全防汚剤のモル比が、1:10~1:0.01である、実施の形態25に記載の方法。
実施の形態48
全チタネート化合物対全非ポリマーエーテル化合物のモル比が、1:10~1:0である、実施の形態25に記載の方法。