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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】浚渫用構造体
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/88 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
E02F3/88 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018000268
(22)【出願日】2018-01-04
(65)【公開番号】P2019120037
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】518004554
【氏名又は名称】石堂 知司夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】木村 鷹柾
【審査官】皆藤 彰吾
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-10022(JP,U)
【文献】特開2016-118088(JP,A)
【文献】国際公開第2012/104314(WO,A1)
【文献】実開昭62-163559(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に開口する開口部を有する箱状に形成されると共に、前記開口部よりも上側において内部に開口する吸込口を有する本体ケースと、
前記開口部のうち進行方向後側に位置する後側開口縁部から、前記下方に向かうにしたがって進行方向前側に延びる板状の掘込刃と、
前記掘込刃の幅方向両端から少なくとも前記開口部まで延びる一対の側壁部と、
前記開口部のうち進行方向前側に位置する前側開口縁部から、進行方向前側に延びる前側延出部と、
を備える浚渫用構造体。
【請求項2】
前記掘込刃は、その延出方向先端が上下方向に移動可能となるように前記本体ケースに取り付けられている請求項1に記載の浚渫用構造体。
【請求項3】
前記掘込刃は、幅方向に延びる軸線を中心として前記本体ケースに対して回転自在に取り付けられている請求項2に記載の浚渫用構造体。
【請求項4】
前記掘込刃は、前記本体ケース内に延びる平板状に形成され、
前記軸線は、前記本体ケース内において前記掘込刃の延長方向の中途部に位置し、
前記吸込口は、前記掘込刃よりも上方において前記本体ケース内に開口し、
前記開口部よりも上側に位置する前記本体ケースの上部が、前記軸線を中心とする円筒内面を有し、
前記掘込刃のうち前記中途部から前記本体ケースの内側に延びる内側部位の先端が、前記円筒内面に沿って移動する請求項3に記載の浚渫用構造体。
【請求項5】
前記開口部の前記後側開口縁部から、進行方向後側に延びる後側延出部をさらに備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の浚渫用構造体。
【請求項6】
前記開口部が、進行方向における浚渫用構造体の全長の中間よりも進行方向後側に位置する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の浚渫用構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浚渫用構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湖沼(水沼、沼、池)等の水底に集積した放射性物質等の有害物質を除去するために、浚渫装置が用いられている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1には、浚渫装置として、進行方向前側に開口する箱状に形成され、進行方向において下面が上面に対して後退して位置する浚渫用構造体(浚渫用取込口構造体)を用いることが開示されている。また、特許文献1には、浚渫用構造体のうち開口の下面先端に水底にある泥土の表層を削り取る掘込刃を取り付けた構成が開示されている。
この浚渫用構造体は、水底において進行させることで、掘込刃によって削り取られた泥土の表層を開口から取り込む。特許文献1には、上記構成により、泥土の表層を回収する際に、泥土の水中への拡散(泥土の舞い上がり)を抑制することを図ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-118088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の浚渫用構造体では、進行方向前端に配された掘込刃によって泥土の表層を削り取るため、依然として泥土が水中に拡散する(舞い上がる)可能性があり、好ましくない。
また、上記従来の浚渫用構造体は進行方向前側に開口していることで、掘込刃によって削り取られた泥土と共に多くの水が浚渫用構造体の内側に入り込んでしまう。このため、泥土の回収率(水を含む回収量全体に対する泥土の回収割合)が低い、という問題もある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、泥土の水中への拡散をさらに抑制でき、かつ、泥土の回収率を向上できる浚渫用構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る浚渫用構造体は、下方に開口する開口部を有する箱状に形成されると共に、前記開口部よりも上側において内部に開口する吸込口を有する本体ケースと、前記開口部のうち進行方向後側に位置する後側開口縁部から、前記下方に向かうにしたがって進行方向前側に延びる板状の掘込刃と、前記掘込刃の幅方向両端から少なくとも前記開口部まで延びる一対の側壁部と、前記開口部のうち進行方向前側に位置する前側開口縁部から、進行方向前側に延びる前側延出部と、を備える。
【0007】
上記構成の浚渫用構造体を水底において進行させた際には、掘込刃によって削り取られた水底の表層の泥土が、掘込刃上に載せられ、開口部から本体ケース内に回収される。この際、掘込刃によって削られる水底の表層の泥土は、本体ケースよりも進行方向前側に位置する前側延出部によって覆われる。これにより、掘込刃によって削られる水底の表層の泥土が水中で舞い上がることを抑制できる。また、掘込刃の幅方向両端に配された一対の側壁部によって、掘込刃上の泥土が掘込刃の幅方向両端から水中にこぼれて舞い上がることも防止できる。したがって、泥土の水中への拡散を好適に抑制できる。
【0008】
また、上記構成の浚渫用構造体を水底において進行させる際には、本体ケースの開口部が水底側(下方)に向く。また、開口部よりも進行方向前側に位置する水底の表層の泥土が前側延出部によって覆われる。このため、開口部から本体ケース内に水が入り込むことを抑制できる。また、掘込刃の幅方向両端と本体ケースの開口部との隙間が一対の側壁部によって覆われることで、水が本体ケースの開口部との隙間から本体ケース内に入り込むことも防止できる。以上のことから、掘込刃によって削られた泥土と共に本体ケース内に入り込む水の量を減らすことができる。したがって、泥土の回収率を向上できる。
【0009】
前記浚渫用構造体において、前記掘込刃は、その延出方向先端が上下方向に移動可能となるように前記本体ケースに取り付けられてもよい。
【0010】
また、前記浚渫用構造体において、前記掘込刃は、幅方向に延びる軸線を中心として前記本体ケースに対して回転自在に取り付けられてもよい。
【0011】
また、前記浚渫用構造体において、前記掘込刃は、前記本体ケース内に延びる平板状に形成され、前記軸線は、前記本体ケース内において前記掘込刃の延長方向の中途部に位置し、前記吸込口は、前記掘込刃よりも上方において前記本体ケース内に開口し、前記開口部よりも上側に位置する前記本体ケースの上部が、前記軸線を中心とする円筒内面を有し、前記掘込刃のうち前記中途部から前記本体ケースの内側に延びる内側部位の先端が、前記円筒内面に沿って移動してもよい。
【0012】
また、前記浚渫用構造体は、前記開口部の前記後側開口縁部から、進行方向後側に延びる後側延出部をさらに備えてもよい。
【0013】
また、前記浚渫用構造体において、前記開口部が、進行方向における浚渫用構造体の全長の中間よりも進行方向後側に位置してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、泥土の水中への拡散をさらに抑制でき、かつ、泥土の回収率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る浚渫用構造体であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
図2図1のA-A矢視断面図である。
図3図1のB-B矢視断面図である。
図4図1-3の浚渫用構造体を含む浚渫装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1-4を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図4に示すように、この実施形態に係る浚渫用構造体1は、湖沼等の水底WBにおいて進行させることで、水底WBの表層の泥土を浚い取るものである。図1-3に示すように、浚渫用構造体1は、本体ケース2と、掘込刃3と、一対の側壁部4,4と、前側延出部5と、を備える。
以下では、図1において右から左に向かう方向を浚渫用構造体1の進行方向前側として説明し、逆方向を浚渫用構造体1の進行方向後側として説明する。また、図1(a)における上下方向、図1(b)における紙面垂直方向を、上記の進行方向に直交する浚渫用構造体1の幅方向として説明する。また、図1(a)における紙面垂直方向、図1(b)における上下方向を、上記の進行方向及び幅方向に直交する浚渫用構造体1の上下方向として説明する。
【0017】
本体ケース2は、下方に開口する開口部11を有する箱状に形成されている。また、本体ケース2は、開口部11よりも上側において本体ケース2の内部(以下、本体ケース2内とも呼ぶ。)に開口する吸込口12を有する。本実施形態において、吸込口12は後述する掘込刃3よりも上方において本体ケース2内に開口している。吸込口12には、吸込管101の一端が接続される。吸込管101の他端には、図4に示すように、泥土や水を吸引する吸引ポンプ(不図示)や泥土や水を回収する回収容器(不図示)を含む回収部102が接続される。
【0018】
図1-3に示すように、本実施形態の本体ケース2は、開口部11を含むケース底部13と、開口部11よりも上側に位置してケース底部13の上方を覆うケース上部14(本体ケース2の上部)と、を備える。
【0019】
ケース底部13は、任意の形状に形成されてよい。本実施形態のケース底部13は、平板状に形成されている。具体的に、本実施形態のケース底部13は、幅方向を長手方向とし、進行方向を短手方向とする帯板状に形成されている。
開口部11は、ケース底部13の板厚方向に貫通して形成されている。開口部11は、例えばケース底部13の全体に形成されてもよいが、本実施形態ではケース底部13のうち進行方向前側の端部に寄せて形成されている。また、本実施形態の開口部11は、ケース底部13の幅方向全体にわたって形成されている。
【0020】
ケース上部14は、任意の形状に形成されてよい。本実施形態のケース上部14は、幅方向を軸とする円筒内面15を有する。円筒内面15は、幅方向から見て下方に開口する略半円状に形成されている(特に図3参照)。また、ケース上部14は、幅方向における円筒内面15の両端の開口を覆う一対の内側面16,16を有する。本実施形態において、内側面16は幅方向に直交する面となっている。
【0021】
具体的に、本実施形態のケース上部14は、円筒内面15を含む半円筒壁部17と、幅方向(軸方向)における半円筒壁部17の両端部に配されて各内側面16,16を含む一対のケース側壁部18,18と、を備える。半円筒壁部17の周方向の第一端部は、ケース底部13のうち進行方向前側の端部に配され、開口部11のうち進行方向前側(図1において左側)に位置する前側開口縁部21を構成している。半円筒壁部17の周方向の第二端部は、ケース底部13のうち進行方向後側の端部に接続されている。
【0022】
本実施形態における本体ケース2の吸込口12は、ケース上部14に形成されている。具体的に、吸込口12は半円筒壁部17の上端部に形成されている。また、吸込口12は幅方向における半円筒壁部17の中間に位置している。具体的に、本実施形態の吸込口12は、本体ケース2の半円筒壁部17に取り付けられたパッキン19によって構成されている。
【0023】
掘込刃3は、少なくとも本体ケース2の開口部11のうち進行方向後側(図1において右側)に位置する後側開口縁部22から、下方に向かうにしたがって進行方向前側に延びる板状に形成されている。
本体ケース2の下方において進行方向前側に延びる掘込刃3の延出方向先端31(以下、刃先31とも呼ぶ。)は、例えば本体ケース2の開口部11のうち進行方向前側(図1において左側)に位置する前側開口縁部21よりも進行方向前側に位置してよい。本実施形態において、掘込刃3の刃先31は、開口部11の前側開口縁部21から進行方向前側に突出しないように位置する。
【0024】
本実施形態の掘込刃3は、その刃先31が本体ケース2に対して上下方向に移動可能となるように本体ケース2に取り付けられている。掘込刃3は、例えばその全体が上下方向に平行移動するように本体ケース2に取り付けられてよい。本実施形態の掘込刃3は、幅方向に延びる軸線C1(以下、回転軸線C1とも呼ぶ。)を中心として本体ケース2に対して回転自在に取り付けられている。
【0025】
また、本実施形態の掘込刃3は、本体ケース2内にも延びる平板状に形成されている。具体的に、掘込刃3は幅方向を長手方向とする帯板状に形成されている。掘込刃3は、開口部11の幅方向全体にわたって形成されている。
図3に示すように、掘込刃3の回転軸線C1は、本体ケース2内において掘込刃3の延長方向(図3において左下から右上に向かう方向)の中途部に位置する。掘込刃3の回転軸線C1は、例えば掘込刃3の内部に位置してもよいが、本実施形態では掘込刃3の外側に位置している。より具体的に掘込刃3の回転軸線C1は、掘込刃3よりも上方に位置している。
【0026】
より具体的に、本実施形態の回転軸線C1は、進行方向及び上下方向において本体ケース2の開口部11の後側開口縁部22の近くに位置する。このため、本実施形態の掘込刃3には、回転軸線C1が位置する掘込刃3の中途部から本体ケース2の外側に延びる外側部位32と、中途部から本体ケース2の内側に延びる内側部位33と、がある。
【0027】
掘込刃3の外側部位32は、本体ケース2の開口部11の下方に位置する。外側部位32の先端は、前述した掘込刃3の刃先31である。
掘込刃3の内側部位33は、本体ケース2内において開口部11の後側開口縁部22よりも進行方向後側に位置するケース底部13の上方に位置する。内側部位33の先端34は、前述した本体ケース2の円筒内面15の近くに位置する。内側部位33の先端34と本体ケース2の円筒内面15との間隔は、小さい方がより好ましい。ここで、本体ケース2の円筒内面15は掘込刃3の回転軸線C1を中心として形成されている。これにより、掘込刃3を回転させた際には、内側部位33の先端34は本体ケース2の円筒内面15に沿って移動する。
【0028】
図2,3に示すように、一対の側壁部4,4は、掘込刃3の幅方向両端から少なくとも本体ケース2の開口部11まで延びている。すなわち、上下方向において掘込刃3の幅方向両端と本体ケース2の開口部11との隙間が、一対の側壁部4,4によって覆われている。
本実施形態において、各側壁部4,4は、掘込刃3の回転位置に関わらず本体ケース2から離れて位置しないように、開口部11から本体ケース2内に入り込んでいる。また、各側壁部4,4は、本体ケース2内において本体ケース2の各内側面16,16に重ねて配されている。
【0029】
側壁部4は、掘込刃3のうち少なくとも外側部位32に対して設けられればよいが、本実施形態では内側部位33を含む掘込刃3全体に対して設けられている。具体的に、本実施形態の側壁部4は、幅方向から見て掘込刃3の回転軸線C1を中心とする略半円状に形成されている(特に図3参照)。
略半円状に形成された側壁部4の周縁41は、本体ケース2の円筒内面15の近くに位置する。側壁部4,4の周縁41と本体ケース2の円筒内面15との間隔は、小さい方がより好ましい。
【0030】
本実施形態では、掘込刃3を本体ケース2に対して回転自在に取り付ける構造が、幅方向に重なる各側壁部4,4及び各ケース側壁部18,18に挿通される軸用ネジ35及び軸用ネジ35に螺着する軸用ナット36によって構成されている。すなわち、本実施形態では、軸用ネジ35が掘込刃3の回転軸として構成されている。
【0031】
また、本実施形態の浚渫用構造体1は、本体ケース2の下方に位置する掘込刃3の刃先31を上下方向における複数の所定位置に選択的に保持する保持機構6を備える。本実施形態の保持機構6は、本体ケース2に回転自在に取り付けられた掘込刃3を複数の回転位置に選択的に保持する。
具体的に、保持機構6は、幅方向において各側壁部4,4及び各ケース側壁部18,18に貫通する保持用孔61,62と、幅方向に重なる各側壁部4,4及び各ケース側壁部18,18の保持用孔61,62に挿通される保持用ネジ63と、によって構成されている。各側壁部4,4及び各ケース側壁部18,18の保持用孔61,62は、回転軸線C1から径方向に互いに等しい距離だけ離れた位置に形成されている。保持用ネジ63を各側壁部4,4及び各ケース側壁部18,18の保持用孔61,62に挿通させることで、掘込刃3を所定の回転位置に保持できる。
【0032】
さらに、本実施形態では、側壁部4の保持用孔61が回転軸線C1を中心とする周方向に間隔をあけて複数配列されている。保持用ネジ63を、ケース側壁部18の保持用孔62、及び、側壁部4の複数の保持用孔61のいずれか一つに挿通させることで、掘込刃3を複数の回転位置に選択的に保持することができる。
例えばケース側壁部18の保持用孔62が、回転軸線C1を中心とする周方向に間隔をあけて複数配列されても、同様にして、掘込刃3を複数の回転位置に選択的に保持することができる。
【0033】
図1-3に示すように、前側延出部5は、本体ケース2の開口部11の前側開口縁部21から、進行方向前側に延びている。前側延出部5は、開口部11の幅方向全体にわたって形成されている。
【0034】
前側延出部5は、少なくとも開口部11よりも進行方向前側において下方に向く面51(下面51)を有していればよい。前側延出部5の下面51は、少なくとも前側開口縁部21から進行方向前側に延びていればよい。前側延出部5の下面51は、前側開口縁部21に対して上下方向に若干ずれて位置してもよい。本実施形態では、上下方向における前側延出部5の下面51の位置が前側開口縁部21と略一致している。
【0035】
本実施形態における前側延出部5の下面51は、進行方向前側に平行して延びる平坦面領域52を有する。平坦面領域52は、上下方向に直交する面である。
また、前側延出部5の下面51は、進行方向前側に向かうにしたがって上方に延びるように傾斜する傾斜面領域53を有する。本実施形態において、平坦面領域52と傾斜面領域53とは、前側開口縁部21から進行方向前側に順番に配列されている。前側延出部5の下面51は、例えば平坦面領域52及び傾斜面領域53の一方のみを有してもよい。
【0036】
前側延出部5の具体的な形状は任意であってよい。本実施形態の前側延出部5は、上下方向を厚さ方向とする板状に形成されている。前側延出部5のうち平坦面領域52を含む部位は、図1に示すように上方から見た平面視で矩形状に形成されている。前側延出部5のうち傾斜面領域53を含む部位は、平面視で進行方向前側に向かうにしたがって幅寸法が小さくなる形状(図示例では三角形状)に形成されている。
進行方向前側に位置する前側延出部5の先端には、後述する引張機構のロープを括り付けるリング部54が設けられている。
【0037】
図1,3に示すように、本実施形態の浚渫用構造体1は、後側延出部7をさらに備える。後側延出部7は、本体ケース2の開口部11の後側開口縁部22から、進行方向後側に延びている。後側延出部7は、開口部11の幅方向全体にわたって形成されている。
【0038】
後側延出部7は、少なくとも開口部11よりも進行方向後側において下方に向く面71(下面71)を有していればよい。後側延出部7の下面71は、少なくとも後側開口縁部22から進行方向後側に延びていればよい。後側延出部7の下面71は、後側開口縁部22に対して上下方向に若干ずれて位置してもよい。本実施形態では、上下方向における後側延出部7の下面71の位置が後側開口縁部22と略一致している。
【0039】
本実施形態における後側延出部7の下面71は、進行方向後側に平行して延びている。すなわち、後側延出部7の下面71は上下方向に直交する面である。
後側延出部7の具体的な形状は任意であってよい。本実施形態の後側延出部7は板状に形成されている。後側延出部7は、図1に示すように上方から見た平面視で矩形状に形成されている。本実施形態における後側延出部7の一部は、前述した本体ケース2のケース底部13によって構成されている。
【0040】
本実施形態の浚渫用構造体1において、本体ケース2の一部、前側延出部5及び後側延出部7は、図1-3に示すように、上方に開口する浅底のトレー8によって構成されている。トレー8は、トレー底板部81と、トレー底板部81の周縁から上方に延びるトレー周壁部82と、を一体に形成して構成されている。トレー底板部81は、本体ケース2のケース底部13、前側延出部5及び後側延出部7を構成している。トレー周壁部82は、本体ケース2のケース側壁部18を構成している。本体ケース2の半円筒壁部17は、トレー底板部81上に配されている。また、掘込刃3及び一対の側壁部4,4は、軸用ネジ35及び軸用ナット36によってトレー周壁部82に取り付けられている。
【0041】
また、本実施形態の浚渫用構造体1は、吸込口12に接続される吸込管101の一端の部分を進行方向後側から支持する管支持部9を備える。管支持部9は、例えば本体ケース2(ケース上部14)に一体に形成されてもよいが、本実施形態では、トレー8から延びる腕部10の先端に設けられている。
【0042】
本実施形態の浚渫用構造体1において、本体ケース2の開口部11は、進行方向における浚渫用構造体1の全長の中間よりも進行方向後側に位置している。また、掘込刃3も、開口部11と同様に、進行方向における浚渫用構造体1の全長の中間よりも進行方向後側に位置している。浚渫用構造体1の全長は、少なくとも本体ケース2及び前側延出部5を含む長さであればよい。本実施形態における浚渫用構造体1の全長は、進行方向におけるトレー8の長さである。
【0043】
以上のように構成される浚渫用構造体1は、例えば図4に示すように、本体ケース2の開口部11や前側延出部5、後側延出部7の下面51,71が水底WBに対向するように配される。吸込管101を介して浚渫用構造体1(本体ケース2)に接続される回収部102は、湖沼等の水面に浮かぶ台船103上に配される。
【0044】
浚渫用構造体1を水底WBにおいて進行させる構成は、任意であってよいが、本実施形態では浚渫用構造体1を引っ張る引張機構104である。引張機構104は、湖沼等の水辺に配される巻取部105と、巻取部105から浚渫用構造体1まで延びて浚渫用構造体1(例えばリング部54)に取り付けられるロープ106と、を備える。巻取部105によってロープ106を巻き取ることで、浚渫用構造体1を水底WBにおいて進行させることができる。
上記した吸込管101、回収部102、台船103、引張機構104は、浚渫用構造体1と共に、水底WBの表層の泥土を浚い取る本実施形態の浚渫装置100を構成する。
【0045】
次に、本実施形態の浚渫用構造体1を含む浚渫装置100により水底WBの表層の泥土を浚い取る方法の一例について説明する。
浚渫用構造体1を水底WBに配した状態で引張機構104によって浚渫用構造体1を進行方向前側(図4において左方向)に進行させると、水底WBの表層の泥土が、掘込刃3によって削り取られ、掘込刃3上に載せられる。掘込刃3上の泥土は、開口部11から本体ケース2内に回収されると共に、回収部102の吸引ポンプによって本体ケース2内から吸込管101を通って回収部102の回収容器に回収される。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の浚渫用構造体1によれば、掘込刃3の幅方向両端から本体ケース2の開口部11まで延びる一対の側壁部4,4、及び、本体ケース2の開口部11の前側開口縁部21から進行方向前側に延びる前側延出部5を備える。このため、浚渫用構造体1を水底WBにおいて進行させる際には、掘込刃3によって削られる水底WBの表層の泥土が、本体ケース2や掘込刃3よりも進行方向前側に位置する前側延出部5によって覆われる。これにより、掘込刃3によって削られる水底WBの表層の泥土が水中で舞い上がることを抑制できる。また、掘込刃3の幅方向両端に配された一対の側壁部4,4によって、掘込刃3上の泥土が掘込刃3の幅方向両端から水中にこぼれて舞い上がることも防止できる。したがって、泥土の水中への拡散を好適に抑制できる。
【0047】
また、浚渫用構造体1を水底WBにおいて進行させる際には、本体ケース2の開口部11が、進行方向前側ではなく、水底側(下方)に向く。また、開口部11よりも進行方向前側に位置する水底WBの表層の泥土が前側延出部5によって覆われる。このため、開口部11から本体ケース2内に水が入り込むことを好適に抑制できる。また、掘込刃3の幅方向両端と本体ケース2の開口部11との隙間が一対の側壁部4,4によって覆われることで、水が本体ケース2の開口部11との隙間から本体ケース2内に入り込むことも防止できる。以上のことから、掘込刃3によって削られた泥土と共に本体ケース2内に入り込む水の量を減らすことができる。したがって、泥土の回収率(水を含む回収量全体に対する泥土の回収割合)を向上できる。
【0048】
また、本実施形態の浚渫用構造体1によれば、本体ケース2の下方に位置する掘込刃3の刃先31が上下方向に移動可能とされている。特に、本実施形態の浚渫用構造体1では、掘込刃3が本体ケース2に対して回転自在に取り付けられていることで、掘込刃3の刃先31が上下方向に移動可能とされている。このため、掘込刃3によって削り取られる泥土の表層の深さ(厚さ)を簡単に調整することができる。
【0049】
さらに、本実施形態の浚渫用構造体1によれば、本体ケース2に対して回転自在に取り付けられた掘込刃3(特に外側部位32)の幅方向両端から延びる一対の側壁部4,4が、開口部11から本体ケース2内に入り込んでいる。このため、掘込刃3の回転位置に関わらず、一対の側壁部4,4と開口部11との間に隙間が生じることを防止できる。したがって、掘込刃3が本体ケース2に対して回転自在に取り付けられても、掘込刃3上に載った泥土が、一対の側壁部4,4と開口部11との隙間から水中にこぼれて舞い上がることを防止できる。また、水が一対の側壁部4,4と開口部11との隙間から本体ケース2内に入り込むことも防止できる。
【0050】
また、本実施形態の浚渫用構造体1によれば、掘込刃3の内側部位33の先端34が、本体ケース2の上部の円筒内面15に沿って移動するように構成されている。このため、本体ケース2に対する掘込刃3の回転位置に関わらず、掘込刃3の内側部位33の先端34を円筒内面15の近くに位置させることができる。これにより、掘込刃3によって削り取られた泥土が、掘込刃3上に載ったままで本体ケース2内に入り込んだ後、掘込刃3の内側部位33の先端34から本体ケース2内(例えばケース底部13上)にこぼれ落ちることを抑制できる。また、吸込口12が掘込刃3の上方に位置しているため、掘込刃3の内側部位33上に載った泥土を、回収部102の吸引ポンプによって吸込口12から本体ケース2外に効率よく排出することができる。以上のことから、本体ケース2内に回収された泥土が本体ケース2内において滞留することを好適に抑制できる。
【0051】
さらに、本実施形態の浚渫用構造体1によれば、本体ケース2内に位置する側壁部4の部位が、本体ケース2(ケース側壁部18)の内側面16に重ねて配されている。また、幅方向から見て掘込刃3の回転軸線C1を中心とする半円状に形成された側壁部4の周縁41が、本体ケース2の円筒内面15の近くに位置する。これにより、掘込刃3上に載った泥土が、側壁部4と本体ケース2の内側面16との間に入り込んで本体ケース2内に滞留してしまうことも好適に抑制できる。
【0052】
また、本実施形態の浚渫用構造体1によれば、本体ケース2の開口部11の後側開口縁部22から進行方向後側に延びる後側延出部7をさらに備える。このため、浚渫用構造体1を水底WBにおいて進行させる際には、掘込刃3よりも進行方向後側に位置する水底WBが後側延出部7によって覆われる。したがって、掘込刃3よりも進行方向後側において水底WBの泥土が舞い上がることを、後側延出部7によって抑えることができる。すなわち、泥土の水中への拡散をさらに抑制できる。
【0053】
さらに、本実施形態の浚渫用構造体1によれば、水底WBに対向する前側延出部5の下面51が、進行方向前側に向かうにしたがって上方に傾斜する傾斜面領域53を含む。このため、浚渫用構造体1の進行方向前側に水底WBから突出する石等の障害物があっても、神職用構造体の進行に伴って傾斜面領域53が障害物に当たることで、浚渫用構造体1の進行方向前側の部分が浮き上がる。これにより、浚渫用構造体1は障害物を乗り越えることができる。すなわち、浚渫用構造体1が障害物に引っ掛って浚渫用構造体1の進行が妨げられてしまうことを好適に抑制できる。
【0054】
また、本実施形態の浚渫用構造体1によれば、本体ケース2の開口部11は、進行方向における浚渫用構造体1の全長の中間よりも進行方向後側に位置する。このため、浚渫用構造体1を水底WBにおいて進行させた際に、浚渫用構造体1の進行方向前端(前側延出部5の進行方向前端)が水底WBの石に引っ掛る等して浮き上がっても、本体ケース2の開口部11の浮き上がりを小さく抑えることができる。これにより、本体ケース2内に入り込む水の量をさらに減らすことができる。したがって、泥土の回収率の向上をさらに図ることができる。
【0055】
さらに、本実施形態の浚渫用構造体1によれば、掘込刃3は、進行方向における浚渫用構造体1の全長の中間よりも進行方向後側に位置する。このため、浚渫用構造体1を水底WBにおいて進行させた際に、浚渫用構造体1の進行方向前端が水底WBの石に引っ掛る等して浮き上がっても、掘込刃3の刃先31の浮き上がりを小さく抑えることができる。したがって、水底WBの表層を安定して削ることができる。
【0056】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0057】
本発明の浚渫用構造体において、掘込刃(特に本体ケースの下方に位置する外側部位)は、平板状に限らず、例えば湾曲した板状に形成されてもよい。
【0058】
また、本発明の浚渫用構造体において、掘込刃は、例えば本体ケースに対して移動不能に取り付けられてもよいし、例えば本体ケースに一体に形成されてもよい。この場合、一対の側壁部は、例えば本体ケースの開口部の縁部(例えばケース側壁部)に固定されたり、一体に形成されたりしてよい。
【符号の説明】
【0059】
1 浚渫用構造体
2 本体ケース
3 掘込刃
4 側壁部
5 前側延出部
6 保持機構
7 後側延出部
11 開口部
12 吸込口
13 ケース底部
14 ケース上部
15 円筒内面
16 内側面
17 半円筒壁部
18 ケース側壁部
21 前側開口縁部
22 後側開口縁部
31 刃先(掘込刃3の延出方向先端)
32 外側部位
33 内側部位
51 前側延出部5の下面
71 後側延出部7の下面
100 浚渫装置
101 吸込管
102 回収部
103 台船
104 引張機構
C1 回転軸線(軸線)
WB 水底
図1
図2
図3
図4