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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】電極装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/38 20060101AFI20220125BHJP
   G01N 27/403 20060101ALI20220125BHJP
   G01N 27/36 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
G01N27/38
G01N27/403 371Z
G01N27/36 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018052229
(22)【出願日】2018-03-20
(65)【公開番号】P2019164036
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2018050153
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592187534
【氏名又は名称】株式会社 堀場アドバンスドテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】西尾 友志
(72)【発明者】
【氏名】江原 克信
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-241697(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011014897(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0186447(US,A1)
【文献】特開2008-107097(JP,A)
【文献】特表2013-531795(JP,A)
【文献】特開2009-276936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極と、
該内部電極を収容している筐体と、
該筐体内に収容されて、前記筐体に形成された液絡部又は前記筐体の一部若しくは全部を形成している応答ガラスと前記内部電極とを電気的に連絡させる内部液と、
前記筐体の試料と接する表面である試料接触面に紫外線を照射する光源を有し、前記筐体の前記試料接触面を防汚する防汚機構とを具備し、
前記光源が前記筐体の外側に直接若しくは間接的に取り付けられている、又は、前記光源が前記筐体の内部に収容されており、
前記内部電極がその一部を除いて、紫外線を遮断又は吸収する被覆材によって覆われていることを特徴とする電極装置。
【請求項2】
前記筐体及び前記内部液が透光性を有するものであり、前記光源が前記筐体の内部に収容されていることを特徴とする請求項1記載の電極装置。
【請求項3】
前記光源がLEDであることを特徴とする請求項1又は2記載の電極装置。
【請求項4】
前記応答ガラスが二酸化ケイ素を40mol%以上含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の電極装置。
【請求項5】
前記光源が前記液絡部の方向に光を射出するように配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電極装置。
【請求項6】
前記筐体が筒状のものであり、前記光源が、前記液絡部又は前記応答ガラスに対して紫外線を照射する位置に配置され、前記内部電極が、前記光源の位置に対して、前記筐体の前記液絡部又は前記応答ガラスに近い側の端とは反対の端側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電極装置。
【請求項7】
請求項1記載の電極装置と、
前記電極装置からの出力信号を受信し、当該受信した出力信号を所望の情報に変換して出力する情報処理回路とを備える電気化学測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線による防汚機構を備えた電極装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、水質の調査等を目的として、試料のpH等の電気化学的性質を連続モニタリングする場合等には、測定電極や比較電極等の電極装置が長時間試料溶液中に浸され続けることがある。
【0003】
環境水などの試料中には、様々な汚染物質や微生物などが存在しているので、このような試料に長時間浸され続けると、前記電極装置の表面に汚れが付着してしまい、pH測定等の測定精度に悪影響を与える恐れがある。
【0004】
そこで従来、前述したような電極装置においては、例えば、特許文献1に示すように、該電極装置の表面に汚れが付着することを防ぐ目的で、電極装置の試料と接する表面に、汚れを分解する触媒機能を有する二酸化チタンの薄膜をコーティングすることが考えられている。
【0005】
このようなコーティングによって前記電極装置表面への汚れの付着を防ぐためには、前記薄膜に含まれる二酸化チタンの触媒機能を活性化する紫外線を前記薄膜に照射することが必要である。
【0006】
そのため、従来は、前記電極装置とは別個に設けられた光源から前記電極装置の表面に対して紫外線を照射して、前記二酸化チタンコーティングの触媒機能を活性化している。
【0007】
しかしながら、前述したような従来の電極装置では、別個に用意した前記光源を、前記電極装置表面の所望の位置に紫外線を照射できるように配置しなければならず、前記電極装置や前記光源の設置に手間がかかるという問題がある。
【0008】
また、例えば、前記電極装置を流動する試料中に長時間浸して使用する場合等には、試料の流れによって前記電極装置又は前記光源の位置が徐々に変化してしまう恐れもあるので、使用中に前記電極装置又は前記光源の位置を確認又は調節する必要があるなど、メンテナンスに手間がかかるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5121012号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、設置やメンテナンスに手間がかからず、かつ表面に汚れが付着しにくい電極装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明に係る電極装置は、内部電極と、該内部電極を収容している筐体と、該筐体内に収容されて、前記筐体に形成された液絡部又は前記筐体の一部若しくは全部を形成している応答ガラスと前記内部電極とを電気的に連絡させる内部液と、前記筐体の試料と接する表面である試料接触面に紫外線を射出する光源を有し、前記試料接触面を防汚する防汚機構とを具備し、前記光源が前記筐体の外側に直接的若しくは間接的に取り付けられている、又は前記光源が前記筐体の内部に収容されていることを特徴とするものである。
【0012】
このように構成した電極装置によれば、前記光源が前記筐体の外側に直接的若しくは間接的に取り付けられている、又は前記光源が前記筐体の内部に収容されているので、前記光源を別に用意して設置する手間を省くことができる。
また、例えば、流動する試料中であっても手間をかけずに前記筐体の所望の位置に確実に紫外線を照射し続けることができる。
【0013】
紫外線は、前記二酸化チタンなどの薄膜がない場合であっても、紫外線そのものの性質として、前記電極装置の汚れの主な原因である有機物質を分解したり、微生物等を死滅させたりすることができる。
そのため、製造コストを抑えたい場合には、前記筐体の表面に二酸化チタンコーティング等をしない電極装置とすることも可能である。
【0014】
前記筐体及び前記内部液が透光性を有するものであり、前記光源が前記筐体の内部に収容されていることを特徴とする電極装置であれば、たとえ試料が光を通しにくい性質のものである場合でも、前記光源から射出される紫外線を十分な光強度を保ったまま、前記筐体の前記試料接触面に照射することができる。
【0015】
前記応答ガラスが二酸化ケイ素を40%以上含有するものであれば、応答ガラスの耐久性を維持しながら、前記光源からの紫外線を効率よく透過させて、応答ガラスの試料と接する側の表面への汚れの付着をより抑えることができる。
【0016】
前記電極装置が比較電極としての機能を有するものである場合、前記筐体の試料と接する部分に液絡部を設けることが考えられる。
この液絡部が、前記筐体に形成された小さな貫通孔や貫通孔の内部に配置されたセラミック等の多孔質体で形成されている場合には汚れが特に前記液絡部やその周辺に付着しやすい。
前記液絡部やその周辺に汚れが付着して、前記液絡部での試料と前記内部液との間の導通が遮断されてしまうと、pH測定等が正確に行えなくなってしまう。
【0017】
そこで、前記光源が前記液絡部の方向に光を射出するように配置されていれば、前記光源からの紫外線が前記液絡部に照射されやすいので、前記液絡部やその周辺への汚れの付着を抑えることができる。
【0018】
前記筐体が筒状のものであり、前記光源が、前記液絡部又は前記応答ガラスに対して紫外線を照射する位置に配置され、前記内部電極が、前記光源の位置に対して、前記筐体の前記液絡部又は前記応答ガラスに近い側の端とは反対の端側に配置されていれば、前記内部電極が、例えば、銀/塩化銀電極などの紫外線による影響を受けやすい電極であっても、前記光源からの紫外線が前記内部電極に照射されにくいので、紫外線照射による前記内部電極の劣化を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、前記光源が前記筐体の外側に直接的若しくは間接的に取り付けられている、又は前記光源が前記筐体の内部に収容されているので、前記光源を別に用意して設置する手間を省くことができる。
また、例えば、流動する試料中であっても手間をかけずに前記筐体の所望の位置に確実に紫外線を照射し続けることができ、測定精度を保つことができる。
【0020】
紫外線は、前記二酸化チタンなどの薄膜がない場合であっても、紫外線そのものの性質として、前記電極装置の汚れの主な原因である有機物質を分解したり、微生物等を死滅させたりすることができる。
そのため、製造コストを抑えたい場合には、前記筐体の表面に二酸化チタンコーティング等をしない電極装置とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る電気化学測定装置全体を示す模式図。
図2】本実施形態に係る電極装置の端面を示す摸式図。
図3】本発明の他の実施形態に係る電極装置を示す摸式図。
図4】本発明の他の実施形態に係る電極装置を示す摸式図。
図5】本発明の一実施例における実験結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を用いて説明する。
本実施形態に係る電極装置1は、例えば、工業排水や水処理施設からの放流水、河川水や沼湖水などの試料中の、例えば、pHや各種イオン濃度等を測定する電気化学測定装置100に使用されるものである。
【0023】
前記電気化学測定装置100は、例えば、図1に示すように、前述したような試料と接触することにより、試料中のイオン濃度などを電気信号として出力する電極装置1と、該電極装置1からの出力信号を受信して、当該受信した出力信号を所望の情報に変換して出力する情報処理回路21や該情報処理回路21から出力された情報を表示する表示部22等を具備する測定装置本体部2とを備えたものである。
【0024】
前記電極装置1は、この実施形態では、図2に示すように、例えば、pHを測定するためのガラス電極11と、該ガラス電極11の周囲を取り巻くように設けられた比較電極12とを一体に具備する、例えば、その側面に大きな凹凸がないドーム型の複合電極1である。
【0025】
前記ガラス電極11は、例えば、透明なガラス等からなる円筒状のガラス電極筐体111と、該ガラス電極筐体111の内部に収容された測定用内部電極112とを備えている。
前記ガラス電極筐体111は、例えば、ガラス製のガラス電極支持管111aの先端部に半球状に成形された前記応答ガラス111bを溶接などにより気密に接合させることで、これらを一体に形成したものである。
【0026】
前記応答ガラス111b又は前記ガラス電極支持管111aを形成する支持管ガラスは、例えば、シリカを40mol%以上含有するものであれば良い。前記支持管ガラス又は前記応答ガラス111bのシリカ含有量は、40mol%以上であれば良いが、50mol%以上であることが好ましく、60mol%以上であればより好ましい。
より具体的には、前記支持管ガラス又は前記応答ガラス111bは、SiO、Al、LiO、NaO、KOからなる群より選ばれる1種以上の物質を70mol%以上、より好ましくは80mol%以上含有するものである。
前記支持管ガラス又は前記応答ガラス111bは、SiO、Al、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物からなる群より選ばれる1種以上の物質を、80mol%以上、より好ましくは90mol%以上含有するものであれば良い。
前記支持管ガラス又は前記応答ガラス111bは、SiO、Al、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、B、鉛(Pb)の酸化物、Y、La、Ta、ZrO、TiOからなる群より選ばれる1種以上の物質を90mol%以上、より好ましくは95mol%以上含有するものであれば良い。
前記支持管ガラス又は前記応答ガラス111bは、有色の物質である、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅などの遷移金属酸化物の含有量が1mol%以下であり、遷移金属以外の酸化物が99mol%以上を占めるものであることが望ましい。
以上に説明したように、前記支持管ガラス又は前記応答ガラス111bは、透明な金属酸化物などの透明な組成物を95mol%以上、より好ましくは97mol%以上含有するものであれば良い。
【0027】
前記ガラス電極筐体111には、前記測定用内部電極112と前記応答ガラス111bとを電気的に接続させるガラス電極内部液113として、例えば、KCl水溶液等が収容されている。
【0028】
前記測定用内部電極112は、例えば、銀/塩化銀電極であり、この測定用内部電極112が、例えば、リード線LやケーブルK等を介して前記測定装置本体部2と電気的に接続されている。
【0029】
前記測定用内部電極112は、その一部を除いて、紫外線を遮断又は吸収する物質、例えば、樹脂からなるシートや膜等の被覆材によって覆われている。前記被覆材は、前記測定用内部電極112に照射される紫外線の量を減らすことができるものであればよく、その素材などは特に限定されない。また、その覆い方についても、前記被覆材で前記測定用内部電極112の外側を包むようにしても良いし、前記測定用内部電極112の外側に前記被覆材をコーティングする等しても良い。
【0030】
前記測定用内部電極112全体を隙間なく前記被覆材で覆ってしまうと、前記測定用内部電極112と前記ガラス電極内部液113との間の導通が遮断されてしまう恐れがあるので、前記被覆材は、例えば、前記測定用内部電極112の先端部に導通を確保するための孔または開口が形成された筒状のものにしてある。
この孔は前記測定用内部電極112の先端に限らず、前記測定用内部電極112と前記ガラス電極内部液113とが接触することができる位置であれば前記被覆材のどこに形成されていても良い。
【0031】
前記比較電極12は、例えば、前述したような支持管ガラス等からなる円筒状の比較電極筐体121と、該比較電極筐体121の内部に収容された比較用内部電極122と、該比較電極筐体121を厚み方向に貫通して、前記比較電極筐体121の試料と接する表面に開口するように形成された貫通孔、又は該貫通孔と該貫通孔の内部に取り付けられた多孔質セラミックやキャピラリ等とからなる液絡部123とを備えている。
【0032】
本実施形態に係る複合電極では、前記比較電極筐体121が、前記ガラス電極筐体111の外周を取り巻くように配置され、前記ガラス電極筐体111と前記比較電極筐体121とが前記ガラス電極支持管111aと応答ガラス111bとの接続部分近傍で、溶接などにより気密に接続されることにより、前記複合電極の筐体が形成されている。
【0033】
前記応答ガラス111bの先端側は、前記比較電極筐体121の先端部よりも突出するようにしてある。
前記液絡部123は、例えば、前記ガラス電極筐体111と前記比較電極筐体121との接続部分の近傍に形成されている。
【0034】
前記比較用内部電極122は、前記比較電極筐体121の内周面と前記ガラス電極筐体111の外周面との間に形成される空間に収容されている。
また、前記空間には、前記液絡部123を介して、比較用内部電極122と試料とを電気的に接続する比較電極内部液124である、例えば、KCl水溶液等を含有する透明なポリマーゲルが収容されている。
【0035】
前記比較用内部電極122は、例えば、銀/塩化銀電極であり、この比較用内部電極122が、例えば、リード線LやケーブルK等を介して前記測定装置本体部2と電気的に接続されている。
【0036】
前記比較用内部電極122は、前記測定用内部電極112と同様に、紫外線を遮断又は吸収する、例えば、樹脂からなるシートや膜等の被覆材によって覆われている。
前記比較用内部電極122は、前記比較電極内部液124の流動性を抑える樹脂などで更に覆われている。
【0037】
しかして、本実施形態に係る複合電極は、前記比較電極筐体121及び前記ガラス電極筐体111の試料と接する表面である試料接触面に紫外線を照射する防汚機構3をさらに具備している。
該試料接触面とは、この実施形態では、例えば、前記複合電極の前記応答ガラス111bで形成されている先端から、前記液絡部123全体を含む高さまでの前記複合電極筐体の外表面のことを指す。
【0038】
該防汚機構3は、例えば、光源部31と、該光源部31を前記ガラス電極筐体111又は前記比較電極筐体121に間接的に取り付ける取り付け機構32とを備えている。
【0039】
前記光源部31は、紫外線を射出する光源311と、該光源311が取り付けられる基板312と、前記光源311と図示しない電源装置とを接続する接続ライン313とを備えたものである。
【0040】
前記光源311は、例えば、およそ400nm以下、より好ましくは370nm以下の波長の光を射出するLEDチップ(発光ダイオードチップ)である。
前記光源311から射出される光は、その波長がおよそ500nm以下のものであれば良く、例えば、波長が500nm以下の青色光、430以下の紫色光などであっても良い。
【0041】
前記光源311から射出される紫外線としては、この実施形態では、前記ガラス電極筐体111の応答ガラス111bの部分の外表面の位置で、例えば、8mW/cm程度の光が観測できる強度のものを使用している。
より具体的には、前記光源311は、1mM/cm以上15mW/cm以下の光を射出できるものであればよく、より好ましくは、2mW/cm以上12mW/cmの光を射出できるものであれば良い。
【0042】
前記基板312は、例えば、円盤状のセラミック等からなるものである。
この実施形態では、前記基板312の板面が前記ガラス電極筐体111の軸方向に対して垂直になるように配置されており、該基板312の板面のうち、前記応答ガラス111bに近い側の面に前記LEDチップが取り付けられている。
【0043】
前記LEDチップからの光は、例えば、前記基板312の前記LEDチップが取り付けられている面から前記複合電極筐体の前記応答ガラス111bが取り付けられている側の端に向かって照射されるようにしてある。
【0044】
前記取り付け機構32は、例えば、前記接続ライン313を内部に収容する円筒状の接続ライン収容管321と、前記光源部31が前記ガラス電極内部液113に触れないように前記光源部31を覆う被覆管322とを備えているものである。
【0045】
前記接続ライン収容管321は、例えば、ガラスなどからなる円筒状のものであり、該接続ライン収容管321の直径は、この実施形態では、前記基板312の直径よりも小さいものにしてある。
【0046】
前記接続ライン収容管321の一端側の開口部が前記ガラス電極筐体111の内部に充填されている前記ガラス電極内部液113の液面よりから突出するように前記ガラス電極筐体111の内部に配置されている。
【0047】
この接続ライン収容管321の他端側の開口部は、この実施形態では、前記基板312の前記光源311が取り付けられている面とは反対側の面と液密に接合されている。
【0048】
前記被覆管322は、例えば、前述した応答ガラスや支持管ガラス等と同じ組成で構成された透明なガラスなどからなる円筒状のものであり、一端が開口しており、他端が、例えば、前記被覆管322の側周面と同じ素材のガラス板などで液密に閉じられているものである。
【0049】
この被覆管322は、前記基板312の前記光源311が取り付けられている面側から前記接続ライン収容管321の一部、前記光源311及び前記基板312を覆うように配置されている。
【0050】
このとき、前記被覆管322と、前記基板312及び前記接続ライン収容管321との間にできた空間には、樹脂などからなるモールド材323が充填され、該空間から前記ガラス電極内部液113が入り込まないようにしてある。
【0051】
この実施形態では、前記ガラス電極筐体111の内部に押し込まれて固定されたケーブルブッシュBに前記接続ライン収容管321の一部が保持されることによって、前記光源311が前記ガラス電極筐体111に対して間接的に取り付けられている。
【0052】
より具体的には、例えば、前記LEDチップの位置が、前記液絡部123よりも、前記ガラス電極筐体111の前記応答ガラス111bとは反対側の端側に近い位置になるようにしてある。
【0053】
このような防汚機構3を備えた前記複合電極の製造方法は、以下の通りである。
まず、前述したように、前記ガラス電極筐体111の周囲に前記比較電極筐体121を接合し、前記ガラス電極筐体111の内部には前記ガラス電極内部液113を、また、前記比較電極筐体121の内部には前記比較電極内部液124を必要な量だけ充填する。
【0054】
次に、前記ガラス電極筐体111の前記応答ガラス111bで形成されている側の端とは反対側の端から前記接続ライン収容管321や前記被覆管322を取り付けた前記光源部31を、前記ガラス電極筐体111の内部に挿入して固定する。
【0055】
前記測定用内部電極112は、前記ガラス電極筐体111の内周面と、前記接続ライン収容管321との間に挿入されており、該測定用内部電極112と前記測定装置本体部2とを電気的に接続するリード線Lや前記ガラス電極筐体111の開口部に固定されているケーブルブッシュB等を介して前記筐体に取り付けられている。
【0056】
また比較用内部電極122は、前記比較電極筐体121の内周面と前記ガラス電極筐体111の外周面との間に挿入されており、該比較用内部電極122と前記測定装置本体部2とを電気的に接続するリード線Lや前記比較電極筐体121の開口部に固定されているケーブルブッシュB等を介して前記筐体に取り付けられている。
【0057】
前記比較電極筐体121の内周面と前記ガラス電極筐体111の外周面との間には、さらに温度センサTが挿入してある。
前記温度センサT、前記測定用内部電極112及び前記比較用内部電極122は、前記光源部31に対して、前記液絡部123や前記応答ガラス111bが配置されている側の端とは反対の端側であり、前記ガラス電極内部液113又は前記比較電極内部液124にそれぞれの少なくとも一部が浸漬するように配置されている。
【0058】
より具体的には、前記温度センサT、前記測定用内部電極112及び前記比較用内部電極122は、その全体が、前記ガラス電極筐体111や前記比較電極筐体121の長さを2等分する位置よりも、前記ガラス電極筐体111の前記応答ガラス111bや前記液絡部123が配置されている端とは反対側の端側に位置するようにしてある。
より好ましくは、前記温度センサT、前記測定用内部電極112及び前記比較用内部電極122は、その全体が、前記ガラス電極筐体111又は前記比較電極筐体121の長さを3等分する位置よりも、前記ガラス電極筐体111の前記応答ガラス111bや前記液絡部123が配置されている端とは反対側の端側に位置するようにしてある。
【0059】
このように構成された電極装置1によれば、以下のような効果を奏することができる。
前記ガラス電極筐体111や前記比較電極筐体121などの筐体、前記ガラス電極内部液113や前記比較電極内部液124などの内部液、前記取り付け機構32の前記被覆管322が透明な素材からなるものであるので、前記光源311から射出される紫外線を効率よく透過させて前記筐体の試料と接する外表面に照射することができる。
【0060】
前記光源311が前記ガラス電極筐体111の内部に収容されているので、試料が光透過性の低いものであっても、十分な強度の紫外線を前記複合電極筐体の前記試料接触面に照射することができる。
【0061】
特に、前記応答ガラス111bが、シリカを40mol%以上含有するものであるので、紫外線を透過しやすく、前記応答ガラス111bの試料に接する外表面に紫外線を照射しやすい。シリカの含有量が多いと、紫外線の透過率を高く保ちながらガラスの耐久性についても向上させることができる。
【0062】
前記LEDチップからの光は、前記LEDチップの前記基板312と接している面以外の全面から外部に射出され、前記LEDチップが取り付けられている位置が前記液絡部123よりも前記応答ガラス111bが取り付けられている側の端とは反対側に位置しているので、前記LEDチップから射出される紫外線を、前記応答ガラス111bの外表面全体と前記液絡部123全体を含む前記試料接触面全体に照射することができる。
【0063】
前記複合電極がドーム型のものであるので、前記ガラス電極筐体111や前記比較電極筐体121の試料と接する表面に大きな凹凸がなく、前記光源311からの紫外線が照射されにくい部分をできるだけ少なくすることができる。
【0064】
銀/塩化銀電極である前記測定用内部電極112や前記比較用内部電極122等の内部電極が紫外線を吸収する被覆材で覆われているので、前記内部電極への紫外線の照射を抑えて、前記内部電極の塩化銀が銀イオンに変化してしまう銀化反応を抑えることができる。
【0065】
前記比較用内部電極122が、前記比較電極内部液124の流動性を抑える樹脂などで更に覆われているので、前記比較用内部電極122から銀イオンが溶出したとしても、銀イオンが前記比較電極内部液124中に拡散することを防ぐことができる。
その結果、銀イオンが前記液絡部123で析出して前記液絡部123での導通が遮断される恐れをより低減することができる。
【0066】
前記防汚機構3の前記光源部31が、前記光源311としてLEDチップを備えるものであるので、前記光源311の大きさによる取り付け位置などが制限されにくく、前記ガラス電極筐体111の大きさを特別に大きくすることなく、前記筐体の内部に光源部31を配置することができる。
【0067】
前記取り付け機構32が前記被覆管322や、前記接続ライン収容管321を備えているので、前記光源部31に使用されるLEDチップやLEDチップに電源を供給する接続ライン313を前記ガラス電極内部液113中に浸すことなく、前記ガラス電極筐体111の内部に配置することができる。
その結果、水中で使用することができる特別なLEDチップや接続ライン313等を使用しなくても、故障や漏電等の心配をすることなく、市販のLEDチップ等を使用することができる。
【0068】
前記測定用内部電極112及び前記比較用内部電極122は、前記光源部31に対して、前記液絡部123や前記応答ガラス111bが配置されている側の端とは反対の端側に配置されているので、前記光源311から射出される紫外線が前記測定用内部電極112や前記比較用内部電極122に照射されることを抑えることができる。
その結果、紫外線照射による前記測定用内部電極112や前記比較用内部電極122の銀化反応を抑えることができる。
【0069】
前記光源311と測定用内部電極112、前記比較用内部電極122及び前記温度センサTとが十分な距離だけ離れているので、前記光源311が発熱した場合であっても、測定用内部電極112、前記比較用内部電極122及び前記温度センサTへの熱の影響を抑えることができる。
【0070】
本発明は、前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記光源部31を覆う被覆管322は必須の構成ではなく、例えば、図4に示すように、前記接続ライン収容管321が前記接続ライン313と前記光源部31とを覆うものとしてもよい。
前記複合電極は、前述したようなタイプのものに限られず、例えば、図4に示すように、前記応答ガラス111bや前記液絡部123を、前記筐体の外部から容易に着脱可能なものとして取り付けたチップ式のものであっても良い。
【0071】
このようなチップ式の場合には、特に、前記光源部31についても、前記筐体に外部から着脱可能に取り付けられ、外部からの交換が可能なものとしてもよい。
【0072】
具体的には、例えば、前記複合電極が、前記ガラス電極支持管111aの内部と、ドーム状に形成された応答ガラス111bの内部とを連通させる例えば樹脂製の応答ガラスチップ4と、前記比較電極筐体121の内部とその内部が連通する円筒状のカップであり、その壁の一部に前記液絡部123が形成された例えば樹脂製の液絡部チップ5とを備えるものを挙げることができる。
該応答ガラスチップ4及び前記液絡部チップ5は、前記筐体の試料溶液と接する側の端部に、例えば、螺合構造などを介して取り付けられている。
【0073】
この変形例では、前記光源311として水中でも使用できるLEDチップを備えた光源部31を、前記筐体の前記応答ガラスチップ4や、液絡部チップ5と同様に、前記筐体の試料溶液と接する側の端部に取り付けられた、光源支持管6の前記応答ガラス112b及び前記液絡部123側の面に固定している。
前記光源支持管6は、前記取り付け機構32に相当するものであり、例えば、内部に前記接続ライン313を収容しその先端部に前記光源311を取り付けることができる細い円筒状のものである。
【0074】
このように前記光源部31を前記筐体の外部に間接的に取り付けることにより、前述したようなチップ式の複合電極においても、前記応答ガラス111bや前記液絡部123に前記光源311からの紫外線を照射しやすいものとすることができる。
また、前記光源部31を外部から容易に交換することができるので、前記光源部31のメンテナンスを行いやすい。
【0075】
前述したようなチップ式の複合電極の場合であっても、前記筐体や前記応答ガラスチップ4、前記液絡部チップ5等が透明なものであれば、例えば、第1の実施形態で記載したように前記筐体の内部に前記光源部31を配置しても良いことは言うまでもない。
【0076】
前記光源部31は、前記光源311であるLEDチップと前記接続ライン313とが直接接続されているものに限らず、前記光源部31が、ワイヤレス給電式のものであっても良い。
【0077】
具体的には、前記光源部31が、前記LEDチップに内蔵される受信部と、該受信部に無線で電力を送信する送信部とを備えたワイヤレス給電機構をさらに具備するものを挙げることができる。
【0078】
前記ワイヤレス給電機構の前記受信部と前記送信部との間では、例えば、磁界共鳴により電力伝送が行われるので、前記受信部と前記送信部との間の距離は、およそ30cm離れていても、前記LEDチップへの給電が可能である。
【0079】
具体的には、例えば、前記受信部を内蔵したLEDチップを前記ガラス電極筐体111内部に充填された、例えば、ゲル状の前記ガラス電極内部液113中に入れておき、前記送信部を前記測定用内部電極112や前記比較用内部電極122、前記温度センサTなどに接続された前記リード線Lを前記ケーブルKへと接続するコネクタの前記ケーブルK側の部分に取り付けておいても良い。
これ以外にも、前記送信部を前記コネクタの前記筐体側の部分に付けてよいし、前記複合電極を試料中に固定するための電極ホルダの部分等に前記送信部を取り付けておいても良い。
【0080】
このようなワイヤレス給電式の光源部31を採用することにより、例えば、前記接続ライン313をガラス電極や比較電極の筐体内部に挿入しなくても良いので、前記筐体の内部に前記接続ライン313を収容するためのスペースを確保する必要がなく、前記筐体をできるだけコンパクトなものとすることができる。
【0081】
ワイヤレス給電式の前記光源部31の前記LEDチップ、前記基板312及び前記受信部を合わせた受信側部分は、例えば、一辺がおよそ4.5mmの立方体状ものであるので、前記筐体の所望の場所に自由に取り付けることができる。
【0082】
また、前記接続ライン313等が内部液に触れないように工夫する必要もないので、前記電極装置1の製造をより簡単にすることができる。
さらに、ワイヤレス給電式のLEDチップを水中等で使用することも可能であるので、前記LEDチップを内部液に浮かべたり、前記内部液中に単に沈めた状態で使用したりする等、前記光源部31の前記筐体への取り付け方法の自由度を大幅に向上することができる。
【0083】
前述した実施形態では、前記光源部31を間接的に前記筐体に取り付けていたが、前記光源部31を直接前記筐体に取り付けても良い。
前記光源311であるLEDチップは、前記筐体の前記応答ガラス111bで形成されている側の端に向けて取り付けられるものに限らず、紫外線を照射したい場所や用途に合わせていろいろな方向に向けて取り付けることができる。
【0084】
例えば、前記応答ガラス111bの前記ガラス電極内部液113と接する面に、前記光源311であるLEDチップが前記応答ガラス111b側の先端とは反対側を向いて取り付けられていても良い。
【0085】
前記取り付け機構32を構成する、前記被覆管322や前記接続ライン収容管321、光源支持管6などは、前記光源部31を前記筐体に取り付けられるものであれば良く、ガラスなどの剛性を有する素材からなるものに限られず、ゴム状やひも状などの伸縮性や柔軟性を有する素材からなるものであっても良い。
【0086】
前記ガラス電極用内部液113と前記比較電極内部液124とは必ずしも同じものでなくても良く、適宜変更してもかまわない。これら内部液は、前述したようなゲル状のものに限らず、液状のものであっても良い。
前記ガラス電極筐体111は、前述したようにその一部が前記応答ガラス111bで形成されているものに限らず、その全体が前記応答ガラス111bで形成されていても良い。
【0087】
前記光源311を前記比較電極筐体121に取り付けても良い。
また、前記電極装置1は、前述したような複合電極である必要はなく、前記ガラス電極11と前記比較電極12とがそれぞれ独立して前記電極装置1として構成されていても良い。
【0088】
前記試料接触面は、前記電極装置1の表面のうち、試料溶液と接触して汚れが付着する恐れがある表面のことであり、前記実施例に記載したもの以外にも、具体的な例として、例えば、前記複合電極筐体の外表面の一部又は全部、前記ガラス電極筐体の一部又は全部、前記応答ガラスの外表面の一部又は全部、前記液絡部の一部又は全部を含む前記比較電極筐体の外表面の一部又は全部などを挙げることができる。
より具体的には、前記試料接触面とは、前記複合電極の筐体、前記ガラス電極筐体111、前記比較電極筐体121など外表面の全部、これら筐体の前記ケーブルK等によって前記測定装置本体部2と接続されている側とは反対側の先端からその長さの半分程度までの外表面、又はこれら筐体の試料溶液に浸される側の先端からその長さの3分の1程度までの外表面のことを指す。
【0089】
前記光源311から射出される紫外線は、前述したものに限らず、前記応答ガラス111bの外表面で、前記応答ガラス111bの表面に屋外での太陽光と同程度の強度である2mW/cm以上の光を照射できるものであればよい。
実際に、前記光源311から射出される紫外線の強度が、前記応答ガラス111bの外表面の位置で、0.5mW/cm2以上であれば、十分な防汚効果があることが実験で確認できている。
そのため、前記光源311から射出される紫外線の強度は、前記筐体の前記試料接触面において、0.5mW/cm以上であれば十分な防汚効果を発揮できると考えられる。
また、条件によっては照射される紫外線の強度が強すぎることによる、前記測定用内部電極112や前記比較用内部電極122等の内部電極の銀化反応や、電気化学測定への温度影響、気泡の発生などの問題が起こる場合があるので、前記筐体の前記試料接触面に照射される紫外線の強度は0.5mW/cm以上3.5mW/cm以下であることが好ましく、1.0mW/cm以上3.0mW/cm以下であることがより好ましい。
【0090】
前記実施形態では、前記筐体の、例えば、前記試料接触面に、二酸化チタンなどの薄膜をコーティングしていない場合も記載したが、前記試料接触面に二酸化チタンなどをコーティングすれば、二酸化チタンの触媒機能によって発生するヒドロキシラジカルやスーパーオキシドラジカルにより、紫外線では分解できないより幅広い有機物質を分解することができる。
また、前記試料接触面に二酸化チタンコーティングを施しておけば、二酸化チタンの親水効果によって、無機物による汚れも防ぐことができる。
その結果、紫外線照射と二酸化チタンの触媒効果の相乗効果により、前記試料接触面での防汚効果をさらに向上させることができる。
この紫外線と二酸化チタンコーティングの相乗効果を利用すれば、前記光源として短波長の紫外線や高強度の紫外線を射出するものを使用しなくても、十分な防汚効果を発揮できる。
そのため、短波長の紫外線や高強度の紫外線を射出する光源を使用する必要がなく、より安全で前記電極装置の製造コストを削減することもできる。
【0091】
特に、例えば、前記ガラス電極筐体111と前記比較電極筐体121との接合部分などに凹凸が形成されているような場合には、該凹凸部分に前記光源からの紫外線が照射されにくいと思われる。
このように前記筐体の形状によって、前記光源からの紫外線の照射強度が前述したような所定の値未満になる箇所に、二酸化チタンのコーティングを施しておくことによって、防汚効果をより向上させることができる。
この二酸化チタンのコーティングを施す場所としては、例えば、前記試料接触面の一部又は全部、前記筐体の外表面の一部又は全部、前記ガラス電極筐体111と前記比較電極筐体121との接合部分の外表面や前記ガラス電極支持管111aと前記応答ガラス111bとの接続部分の外表面等を挙げることができる。
【0092】
前記比較電極内部液124中に、例えば、KCl顆粒を添加したものを使用する場合には、前記KCl顆粒が自重によって前記比較電極内部液124中の下の方に沈殿してきてしまうことがある。
このような場合、前記光源311から射出された紫外線が、このKCl顆粒によって分散されて、前記筐体の前記試料接触面まで届かない恐れがある。
【0093】
そこで、前記比較電極内部液124に、KCl顆粒を添加する場合には、前記光源311と、該光源311からの紫外線を照射したい前記試料接触面との間に位置する部分には、透明度が高く、かつ前記KCl顆粒を含有するポリマーゲルとは混ざり合わないポリマーゲルを入れておき、それ以外の部分にKCl顆粒を含有するポリマーゲルを充填してもよい。
前記KCl顆粒が前記光源311と、前記試料接触面との間に位置しないようにするには、他にも、例えば、液状の内部液とKCl顆粒を含有するポリマーゲルを重層してもよいし、試料溶液と前記比較用内部電極122との導通を維持することができるブッシュや仕切り板や仕切り膜などを前記比較電極筐体の内部に備えKCl顆粒の位置を調節してもよい。
【0094】
前記LEDチップの形状は、立方体形状や直方体形状のものに限られず、多角柱状のものや円柱状のもの、円錐状や角錐状、半球状、砲弾状などの様々な形状のものなどでも良い。
前記筐体の素材は、透明なガラスからなるものに限られず、透明な樹脂からなるものであっても良いし、特に、前記筐体の外部に前記光源311を取り付けるような場合には、前記筐体が必ずしも透明なものである必要はない。
【0095】
前記電極装置は、pHや各種イオン濃度等を測定するものに限られず、例えば、試料の酸化還元電位や、その他の電気化学的性質を測定するものであっても良い。
前記測定用内部電極112や前記比較用内部電極122は、前述した実施形態では、銀/塩化銀電極を用いたが、これに限らず、用途に応じて他の成分のものを使用しても良い。
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、種々の変形や実施形態の組合せを行ってもかまわない。
【実施例
【0096】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限られるものではない。
この実施例では、堀場製作所製複合電極(#6101)を4本用意し、これら4本の複合電極に以下の(a)~(d)のようにそれぞれ加工した。
【0097】
(a)何も加工しないそのままのもの、(b)二酸化チタンコーティングのみを施したもの、(c)ガラス電極筐体の内部に紫外線を射出する光源を取り付けたもの、及び(d)二酸化チタンコーティングを施し、かつガラス電極筐体の内部に光源を取り付けたもの。
【0098】
(b)と(d)の複合電極については、図5中の両矢印で示した高さまでゾルゲル法で二酸化チタンを3回コーティングした。
(c)と(d)の複合電極については、前記第1の実施形態で詳しく説明したように、波長がおよそ370nmの光を8mW/cm程度の強度で射出するLEDをガラス電極の内部に取り付けた。
なお、この実施例で使用した複合電極に使用されている応答ガラス、及びガラス電極支持管及び比較電極筐体を形成している支持管は、いずれも以下のような性質のものである。
前記応答ガラス及び前記支持管ガラスは、SiO、Al、LiO、NaO、KOからなる群より選ばれる1種以上の物質を80mol%以上含有し、SiO、Al、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物からなる群より選ばれる1種以上の物質を90mol%以上含有し、SiO、Al、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、B、鉛(Pb)の酸化物、Y、La、Ta、ZrO、TiOからなる群より選ばれる1種以上の物質を95mol%以上含有するものである。
前記応答ガラス及び前記支持管ガラスはいずれも、有色の物質であるクロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅などの遷移金属酸化物の含有量が1mol%以下であり、遷移金属以外の酸化物が99mol%以上を占めるものである。
前記応答ガラス及び前記支持管ガラスは透明な金属酸化物などの透明な組成物を97mol%以上含有するものである。
【0099】
これらの4本の複合電極を、化学工場でおよそ1ヶ月間実際に使用した後の写真を図5に示す。
この図5の結果から、紫外線を射出する光源を備えていない(a)と(b)の複合電極では、その試料溶液と接する表面にびっしりと汚れが付着していた。
一方で、紫外線を射出する光源を筐体の内部に取り付けた複合電極(c)と(d)では、2本とも複合電極筐体の表面のうち、紫外線が照射されている部分には汚れがほとんど付着していないことがわかった。
【0100】
この実験結果から、筐体の内部に紫外線を射出する光源を取り付けた複合電極では、二酸化チタンのコーティングがなくても十分な防汚効果を発揮できることがわかった。
この実施例で使用した複合電極は、前記ガラス電極筐体と前記比較電極筐体との接合部分がくびれているタイプのものなので、前記ガラス電極筐体の内部に収容された前記光源からの紫外線が照射されにくい部分(図5中で円で囲んだ部分)があり、この部分については二酸化チタンコーティングの有無でよごれの付着具合に差が生じた。
【0101】
以上の結果から、光源から射出される紫外線が筐体の試料溶液と接する面全体に照射できる場合には、二酸化チタンコーティングなしでも十分に防汚効果を発揮できることがわかった。
一方で、光源から射出される紫外線が届きにくい部分がある形状の電極装置の場合には、二酸化チタンコーティングを併用することが有効であると考えられる。
【符号の説明】
【0102】
100・・・電気化学測定装置
1・・・電極装置
111b・・・応答ガラス
123・・・液絡部
21・・・情報処理回路
3・・・防汚機構
311・・・光源

図1
図2
図3
図4
図5