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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20220125BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220125BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20220125BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20220125BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20220125BHJP
   H01M 50/50 20210101ALI20220125BHJP
   H01M 50/503 20210101ALI20220125BHJP
   H01M 50/51 20210101ALI20220125BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20220125BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20220125BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/6554
H01M10/6557
H01M50/50 101
H01M50/503
H01M50/51
H01M50/204 401H
H01M50/505
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018072518
(22)【出願日】2018-04-04
(65)【公開番号】P2019185927
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 貴文
(72)【発明者】
【氏名】長谷 祐介
(72)【発明者】
【氏名】奥村 素宜
(72)【発明者】
【氏名】菊池 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】寺島 大樹
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-238457(JP,A)
【文献】国際公開第2018/055858(WO,A1)
【文献】特開2012-199045(JP,A)
【文献】特開2004-111309(JP,A)
【文献】特開2012-190675(JP,A)
【文献】特開2011-238468(JP,A)
【文献】特開2007-305425(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107851747(CN,A)
【文献】国際公開第2015/132786(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/613
H01M 10/647
H01M 10/6554
H01M 10/6557
H01M 50/50-50/51
H01M 50/204
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極板の一方の面に正極層が設けられると共に前記電極板の他方の面に負極層が設けられた複数のバイポーラ電極がセパレータを介して一方向に積層された蓄電モジュールを備える蓄電装置であって、
前記蓄電モジュールに対して前記一方向に積層されると共に前記蓄電モジュールに接触させた状態で配置された導電体を備え、
前記導電体は、前記一方向に交差する交差方向の一方側に位置する第1領域と、前記交差方向の他方側に位置する第2領域とを有し、
前記導電体には、前記交差方向に延在し、前記第1領域側から前記第2領域側に向けて冷媒が流通する貫通孔が設けられ、
前記第1領域には、前記導電体と前記冷媒との熱交換を抑制する熱交換抑制部が設けられ、
前記熱交換抑制部は、前記貫通孔の内壁に沿って形成され、
前記第1領域における伝熱性は、前記第2領域における伝熱性より低い、蓄電装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電装置として、例えば特許文献1に記載されている技術が知られている。特許文献1に記載の蓄電装置は、シート状の電極を有する複数の電池要素を積層した複数の蓄電モジュールと、この蓄電モジュール間に設けられた導電体とを備えている。導電体は、蓄電モジュールで発生した熱を放散可能な放熱構造を有しており、放熱部材として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-117105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、導電体の放熱構造として、例えば導電体の内部に冷媒が流通可能な貫通孔を設け、冷媒を流通させることで蓄電モジュールの放熱を行う場合がある。しかしながら、このように貫通孔内に冷媒を流通させる場合、上流側の領域に比べ下流側の領域は冷却されにくく、上流側の領域と下流側の領域との間に温度差が発生する。その結果、温度差に起因する抵抗値のばらつきが発生して電極の一部のみに電流が流れやすくなるので、バイポーラ電極が劣化しやすい。
【0005】
本発明は、電極の温度の均一化を図ることが可能な蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る蓄電装置は、電極板の一方の面に正極層が設けられると共に電極板の他方の面に負極層が設けられた複数のバイポーラ電極がセパレータを介して一方向に積層された蓄電モジュールを備える蓄電装置であって、蓄電モジュールに対して一方向に積層されると共に蓄電モジュールに接触させた状態で配置された導電体を備え、導電体は、一方向に交差する交差方向の一方側に位置する第1領域と、交差方向の他方側に位置する第2領域とを有し、導電体には、交差方向に延在し、第1領域側から第2領域側に向けて冷媒が流通する貫通孔が設けられ、第1領域における伝熱性は、第2領域における伝熱性より低い。
【0007】
この蓄電装置では、導電体の第1領域における伝熱性は、導電体の第2領域における伝熱性より低い。これにより、貫通孔内に冷媒を流通させた場合、第1領域における導電体と冷媒との熱交換は、第2領域における導電体と冷媒との熱交換に比べて抑制される。したがって、第1領域側から第2領域側に向けて冷媒を流通させることにより、第1領域での冷媒の昇温が抑制され、第2領域にも十分な冷却能力を保った状態の冷媒を流通させることができる。その結果、第1領域と第2領域との冷却能力のばらつきが抑制されるので、バイポーラ電極の温度の均一化を図ることができる。
【0008】
第1領域には、導電体と冷媒との熱交換を抑制する熱交換抑制部が設けられていてもよい。この構成によれば、熱交換抑制部の材料及び形状等を調整することにより、第1領域における伝熱性を調整することができる。
【0009】
熱交換抑制部は、貫通孔の内壁に沿って形成されていてもよい。この構成によれば、導電体と蓄電モジュールとの間の導電性を確保しつつ、第1領域における導電体と冷媒との熱交換を抑制し、バイポーラ電極の温度の均一化を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電極の温度の均一化を図ることが可能な蓄電装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る蓄電装置を示す概略断面図である。
図2図1の蓄電装置に含まれる蓄電モジュールを示す概略断面図である。
図3】積層方向から見た導電体及び蓄電モジュールを概略的に示す図である。
図4】交差方向から見た導電体を概略的に示す部分断面図である。
図5】導電体全体が略同一の伝熱性を有する場合のバイポーラ電極の温度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図1図4には、XYZ直交座標系が示される。
【0013】
図1に示される蓄電装置10は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電モジュール12は、例えば、バイポーラ電池である。以下の説明では、そのような蓄電モジュール12として、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0014】
複数の蓄電モジュール12は、金属板等の導電体14を介して積層されて配列体11を形成している。積層方向(Z方向)から見たとき、蓄電モジュール12及び導電体14は、例えば、矩形形状を有する。積層方向から見たとき、導電体14は、蓄電モジュール12よりも小さいが、蓄電モジュール12と同じかそれより大きくてもよい。言い換えれば、導電体14は、積層方向から見たときに蓄電モジュール12が配置される領域内に配置されている。導電体14は、隣り合う蓄電モジュール12と電気的に接続される。これにより、複数の蓄電モジュール12が積層方向に直列に接続されている。
【0015】
導電体14は、蓄電モジュール12の積層方向において両端に位置する蓄電モジュール12の外側にもそれぞれ配置される。すなわち、導電体14は、積層方向において、配列体11の両端にも配置されている。積層方向において、一端に位置する導電体14には正極端子24が接続されており、他端に位置する導電体14には負極端子26が接続されている。正極端子24及び負極端子26は、接続される導電体14と一体であってもよい。正極端子24及び負極端子26は、積層方向に交差する方向(X方向)に延在している。これらの正極端子24及び負極端子26により、蓄電装置10の充放電を実施できる。
【0016】
蓄電装置10は、交互に積層された蓄電モジュール12及び導電体14を積層方向に拘束する拘束部材15を備え得る。拘束部材15は、一対の拘束プレート16,17と、拘束プレート16,17同士を連結する連結部材(ボルト18及びナット20)と、を備える。各拘束プレート16,17と導電体14との間には、例えば、樹脂フィルム等の絶縁フィルム22が配置される。各拘束プレート16,17は、例えば、鉄等の金属によって構成されている。
【0017】
積層方向から見たとき、各拘束プレート16,17及び絶縁フィルム22は、例えば、矩形形状を有する。絶縁フィルム22は、導電体14よりも大きくなっており、各拘束プレート16,17は、蓄電モジュール12よりも大きくなっている。積層方向から見たとき、拘束プレート16の縁部には、ボルト18の軸部が挿通される挿通孔16aが蓄電モジュール12よりも外側となる位置に設けられている。同様に、積層方向から見たとき、拘束プレート17の縁部には、ボルト18の軸部が挿通される挿通孔17aが蓄電モジュール12よりも外側となる位置に設けられている。積層方向から見たときに各拘束プレート16,17が矩形形状を有している場合、挿通孔16a及び挿通孔17aは、拘束プレート16,17の角部に位置する。
【0018】
一方の拘束プレート16は、負極端子26に接続された導電体14に絶縁フィルム22を介して突き当てられ、他方の拘束プレート17は、正極端子24に接続された導電体14に絶縁フィルム22を介して突き当てられている。ボルト18は、例えば、一方の拘束プレート16側から他方の拘束プレート17側に向かって挿通孔16a及び挿通孔17aに通され、他方の拘束プレート17から突出するボルト18の先端には、ナット20が螺合されている。これにより、絶縁フィルム22、導電体14、及び蓄電モジュール12が挟持されてユニット化されると共に、積層方向に拘束荷重が付加される。
【0019】
図2に示されるように、蓄電モジュール12は、複数のバイポーラ電極32が一方向(積層方向)に積層された積層体30を備える。バイポーラ電極32の積層方向から見たとき、積層体30は、例えば、矩形形状を有する。隣り合うバイポーラ電極32間にはセパレータ40が配置され得る。バイポーラ電極32は、電極板34と、電極板34の一方面に設けられた正極層36と、電極板34の他方面に設けられた負極層38と、を含む。積層体30において、一のバイポーラ電極32の正極層36は、セパレータ40を挟んで積層方向に隣り合う一方のバイポーラ電極32の負極層38と対向し、一のバイポーラ電極32の負極層38は、セパレータ40を挟んで積層方向に隣り合う他方のバイポーラ電極32の正極層36と対向している。
【0020】
積層方向において、積層体30の一端には、内側面に負極層38が配置された電極板34(負極側終端電極)が配置され、積層体30の他端には、内側面に正極層36が配置された電極板34(正極側終端電極)が配置される。負極側終端電極の負極層38は、セパレータ40を介して最上層のバイポーラ電極32の正極層36と対向している。正極側終端電極の正極層36は、セパレータ40を介して最下層のバイポーラ電極32の負極層38と対向している。これら終端電極の電極板34はそれぞれ隣り合う導電体14(図1参照)に接続される。
【0021】
蓄電モジュール12は、バイポーラ電極32の積層方向に延在する積層体30の側面30aにおいて電極板34の縁部34aを保持する枠体50を備える。枠体50は、積層体30の側面30aを取り囲むように構成されている。枠体50は、バイポーラ電極32の積層方向から見て、例えば、矩形形状を有している。枠体50は、電極板34の縁部34aを保持する第1樹脂部52と、積層方向から見たときに第1樹脂部52の周囲に設けられた第2樹脂部54とを有する。
【0022】
枠体50の内壁を構成する第1樹脂部52は、各バイポーラ電極32の電極板34の一方面(正極層36が形成される面)から縁部34aにおける電極板34の端面にわたって設けられている。バイポーラ電極32の積層方向から見たとき、各第1樹脂部52は、各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34aの全周にわたって設けられている。隣り合う第1樹脂部52同士は、各バイポーラ電極32の電極板34の他方面(負極層38が形成される面)の外側に延在する面において溶着している。その結果、第1樹脂部52には、各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34aが埋没して保持されている。各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34aと同様に、積層体30の両端に配置された電極板34の縁部34aも第1樹脂部52に埋没した状態で保持されている。これにより、積層方向に隣り合う電極板34,34間には、当該電極板34,34と第1樹脂部52とによって気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。当該内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液からなる電解液(不図示)が収容されている。
【0023】
枠体50の外壁を構成する第2樹脂部54は、バイポーラ電極32の積層方向において積層体30の全長にわたって延在する筒状部である。第2樹脂部54は、バイポーラ電極32の積層方向に延在する第1樹脂部52の外側面を覆っている。第2樹脂部54は、バイポーラ電極32の積層方向に延在する内側面において第1樹脂部52の外側面に溶着されている。
【0024】
電極板34は、例えば、ニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板34の縁部34aは、正極活物質及び負極活物質が塗工されていない未塗工領域となっており、当該未塗工領域が枠体50の内壁を構成する第1樹脂部52に埋没して保持される領域となっている。正極層36を構成する正極活物質の例には、水酸化ニッケルが含まれる。負極層38を構成する負極活物質の例には、水素吸蔵合金が含まれる。電極板34の他方面における負極層38の形成領域は、電極板34の一方面における正極層36の形成領域に対して一回り大きくなっている。なお、電極板34は、導電性樹脂から形成されてもよい。
【0025】
セパレータ40は、例えば、シート状に形成されている。セパレータ40を形成する材料の例には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布及び不織布等が含まれる。また、セパレータ40は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されていてもよい。
【0026】
枠体50(第1樹脂部52及び第2樹脂部54)は、例えば絶縁性の樹脂を用いた射出成形によって矩形に筒状に形成されている。枠体50を構成する樹脂材料の例には、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、及び変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等が含まれる。
【0027】
次に、図1図3、及び図4を参照して、導電体14について詳細に説明する。図1図3、及び図4に示されるように、導電体14は、互いに隣り合う蓄電モジュール12,12の間、又は、蓄電モジュール12と絶縁フィルム22との間に配置されている。つまり、導電体14は、蓄電モジュール12に対して一方向に積層されている。隣り合う蓄電モジュール12,12の間に配置された導電体14は、積層方向の両端面においてそれぞれの蓄電モジュール12に接触している。蓄電モジュール12と絶縁フィルム22との間に配置された導電体14は、積層方向の一方の端面において蓄電モジュール12に接触している。
【0028】
導電体14は、蓄電モジュール12において発生した熱を放出するための放熱板としても機能する。具体的に、導電体14は、導電体14と接触する蓄電モジュール12の接触面12aよりも高い熱伝導性を有している。導電体14は、積層方向に交差する交差方向(Y方向)の一方側に位置する第1領域R1と、交差方向の他方側に位置する第2領域R2とを有している。また、導電体14の内部には、交差方向(Y方向)に延在する複数の貫通孔14aが設けられている。貫通孔14aは、交差方向おいて互いに対向する一方の端面から他方の端面まで連通している。貫通孔14aは、積層方向及び交差方向に交差する方向(X方向)に配列されている。貫通孔14aには、第1領域R1側から第2領域R2側に向けて空気等の冷媒Fが流通される。このように貫通孔14aに冷媒Fを流通させることにより、蓄電モジュール12において発生した熱を効果的に外部に放出できる。なお、蓄電装置10に、貫通孔14aに空気を積極的に流通(循環)させる装置を設けてもよい。
【0029】
導電体14の寸法、導電体14の材質、貫通孔14aの寸法、及び貫通孔14aの数等は、例えば、蓄電装置10の温度が50℃を越えないように適宜調整され得る。導電体14の材質としては、例えばアルミニウムが挙げられる。本実施形態では、交差方向から見た貫通孔14aは矩形形状を有している。なお、交差方向から見た貫通孔14aの形状は矩形形状に限定されず、例えば円形状等、適宜変更可能である。
【0030】
交差方向における第1領域R1の寸法Lは、例えば、交差方向における導電体14の寸法の5%~50%程度とすることができる。本実施形態では、交差方向における第1領域R1の寸法Lは、交差方向における導電体14の寸法の50%である。積層方向及び交差方向に交差する方向(X方向)においては、第1領域R1は導電体14の全体にわたって設けられている。第2領域R2は、導電体14のうち第1領域R1以外の領域である。
【0031】
第1領域R1には、導電体14と貫通孔14a内に流通する冷媒との熱交換を抑制する熱交換抑制部19が設けられている。熱交換抑制部19は、導電体14よりも低い熱伝導性を有する材料によって構成されている。これにより、第1領域R1における伝熱性は、第2領域R2における伝熱性より低くなっている。図4に示されるように、熱交換抑制部19は、第1領域R1内において貫通孔14aの内壁に沿って、貫通孔14aの内壁の全面に形成されている。また、交差方向においては、熱交換抑制部19は、第1領域R1の全体にわたって形成されている。熱交換抑制部19の厚さTは、例えば0.05mm~1mmとすることができる。第1領域R1内における熱交換抑制部19の厚さTは略均一である。なお、熱交換抑制部19の厚さTは特に限定されず、貫通孔14a内を十分な量の冷媒Fが流通可能な範囲で適宜変更可能である。熱交換抑制部19を構成する材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、エポキシ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂又は塗料等を用いることができる。
【0032】
ここで、導電体14の第1領域R1に熱交換抑制部19を形成する方法について説明する。まず、貫通孔14aを有する導電体14を準備する。導電体14は、例えば押出成形等の公知の方法によって製造することができる。次に、熱交換抑制部19となる樹脂材料を液体状に溶融させ、導電体14の第1領域R1を液体状の樹脂材料に浸漬する。このとき、導電体14の外周面をマスキング等によって保護した状態で導電体14を樹脂材料に浸漬する。その後、加熱等によって液体状の樹脂材料を硬化させ、マスキングを取り除く。これにより、第1領域R1内において、貫通孔14aの内壁に沿った熱交換抑制部19が形成される。
【0033】
以上説明したように、蓄電装置10では、導電体14の第1領域R1における伝熱性は、導電体14の第2領域R2における伝熱性より低い。一般的な蓄電装置では、導電体全体が略同一の伝熱性を有しているので、上流側における導電体と冷媒との熱交換によって冷媒の温度が上昇し、下流側にも十分な冷却能力を保った状態の冷媒を流通させることが困難である。このため、上流側の領域に比べて下流側の領域は冷却されにくく、図5に示されるように、上流側の領域と下流側の領域との間に温度差が発生する。その結果、温度差に起因する抵抗値のばらつきが発生してバイポーラ電極の一部のみに電流が流れやすくなるので、バイポーラ電極が劣化しやすい。
【0034】
これに対し、蓄電装置10では、貫通孔14a内に冷媒Fを流通させた場合、第1領域R1における導電体14と冷媒Fとの熱交換は、第2領域R2における導電体14と冷媒Fとの熱交換に比べて抑制される。したがって、第1領域R1側から第2領域R2側に向けて冷媒Fを流通させることにより、第1領域R1での冷媒Fの昇温が抑制され、第2領域R2にも十分な冷却能力を保った状態の冷媒Fを流通させることができる。その結果、第1領域R1と第2領域R2との冷却能力のばらつきが抑制されるので、バイポーラ電極32の温度の均一化を図ることができる。
【0035】
また、第1領域R1には、導電体14と冷媒Fとの熱交換を抑制する熱交換抑制部19が設けられている。これにより、熱交換抑制部19の材料及び形状等を調整することにより、第1領域R1における伝熱性を調整することができる。
【0036】
また、熱交換抑制部19は、貫通孔14aの内壁に沿って形成されている。これにより、導電体14と蓄電モジュール12との間の導電性を確保しつつ、第1領域R1における導電体14と冷媒Fとの熱交換を抑制し、バイポーラ電極32の温度の均一化を図ることができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。例えば、上記の実施形態では、熱交換抑制部19の厚さTが略均一である例について説明したが、熱交換抑制部19の厚さTは均一でなくてもよい。例えば、熱交換抑制部19の厚さTは、第1領域R1側から第2領域R2側に向かうにつれて徐々に薄くなっていてもよい。また、熱交換抑制部19の厚さTは、第1領域R1側から第2領域R2側に向かうにつれて段階的に薄くなっていてもよい。
【0038】
また、上記の実施形態では、熱交換抑制部19が貫通孔14aの内壁に沿って形成されている例について説明したが、熱交換抑制部19が導電性を有する材料によって構成されている場合、積層方向における導電体14の両端面に熱交換抑制部19を形成してもよい。
【0039】
また、上記の実施形態では、熱交換抑制部19によって第1領域R1における伝熱性を低下させる例について説明したが、熱交換抑制部19を用いずに、導電体14に対して熱処理又はショットブラスト加工等を行うことによって第1領域R1における伝熱性を低下させてもよい。
【0040】
また、上記の実施形態では、第1領域R1における伝熱性を低下させる例について説明したが、第2領域R2における伝熱性を向上させることによって、第1領域R1における伝熱性が第2領域R2における伝熱性より低い状態としてもよい。例えば、第2領域R2内において貫通孔14aの内壁面に微細な凹凸を設けて(貫通孔14aの内壁面を粗面化して)導電体14と冷媒Fとの接触面積を増加させることにより、第2領域R2における伝熱性を向上させることができる。
【0041】
また、上記の実施形態では、導電体14の貫通孔14aに冷媒Fとして空気を流通させる例について説明したが、空気に代えて液体の冷媒Fを流通させてもよい。液体の冷媒Fとしては、例えば絶縁油等が挙げられる。この場合、導電体14における放熱性をより高めることができる。また、液体の冷媒Fは、絶縁性を有する物質とする。これにより、例えば、冷媒Fが貫通孔14aから漏れ出した場合であっても、冷媒Fによる短絡を防止することができる。
【0042】
また、上記の実施形態では、蓄電装置10がニッケル水素二次電池である例について説明したが、蓄電装置10はリチウムイオン二次電池であってもよい。この場合、正極活物質は、例えば複合酸化物、金属リチウム、硫黄等である。負極活物質は、例えば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiO(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素等である。
【符号の説明】
【0043】
10…蓄電装置、12…蓄電モジュール、14…導電体、14a…貫通孔、19…熱交換抑制部、30…積層体、32…バイポーラ電極、34…電極板、36…正極層、38…負極層、40…セパレータ、F…冷媒、R1…第1領域、R2…第2領域。
図1
図2
図3
図4
図5