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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】フェンス
(51)【国際特許分類】
   E04H 17/16 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
E04H17/16 102Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018087215
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019190225
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 積水樹脂株式会社が(株)カレントプランに,長谷川雄一及び小川徹の共同発明の「フェンス」に係る製品を販売し,平成29年12月25日に(株)カレントプランへ出荷を行った。
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】小川 徹
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-232264(JP,A)
【文献】特開2008-082028(JP,A)
【文献】特開2010-261260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/00 - 17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をあけて立設された支柱間に取付けられた上下一対の上胴縁及び下胴縁を介してパネルが取付けられ、
前記パネルは、複数の縦桟と、前記縦桟が固定された上下一対の上横桟及び下横桟を備え、
前記縦桟は上横桟及び下横桟の前側に固定されるようになされ、
前記上横桟は、上胴縁の上面部に載置される上横板部と、前記上横板部の支柱側先端部から下方に向けて設けられた引掛け部とを備え、
前記引掛け部は、前記上胴縁部と支柱との間に挿入されるとともに、
前記下横桟は、下胴縁の上面部に対して、前後方向に移動可能に載置される下横板部を有しており、
前記下横板部は平板状に形成されており、該下横板部の先端部は、前記下胴縁と支柱との間に挿入しうる引掛け部を有していない
ことを特徴とするフェンス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅、工場、公共施設等の敷地境界部や隣地境界部に設けられるフェンスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、道路と敷地の境界、敷地同士の境界等を仕切るために、その境界部に沿ってフェンスが取付けられている。前記フェンスは、通常、境界に沿って立設された支柱間にパネルが取付けられたものであり、支柱の側面間に該支柱とパネルとが略同一面上に取付けられる、いわゆる固定柱タイプと、支柱の前面側にパネルが取付けられる、いわゆる自由柱タイプとがある。
【0003】
前記フェンスにおいて、例えば、自由柱タイプの場合は、支柱の前面にパネルを直接固定する場合と、支柱に固定したブラケットや胴縁を介して固定する場合等がある。例えば、特許文献1には、割型一方及び他方の胴縁部材を相互に嵌合自在とした割型胴縁を用い、その割型一方の胴縁部材に多数の縦桟を固定したフェンス本体を形成する一方、支柱に固定したブラケットを介して割型他方の胴縁部材に上記割型一方の胴縁部材を嵌合してフェンス本体を配置した傾斜地用フェンスが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-82028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記のような傾斜地用フェンスにおいては、胴縁部材を嵌合自在な割型胴縁とすることによって、該割型胴縁同士を連結するためのボルトやビス等の連結具が不要となり、部材点数を削減することができるが、当該特許文献の図4図8に示されるような割型胴縁を上下2段用いると、該割型胴縁同士を嵌合させる際に、スナップイン嵌合にしても、スライド嵌合にしても作業者ひとりでは嵌合作業が困難であり、また一旦嵌合させると取り外しは容易ではないので、フェンス本体の仮置作業も困難であった。
【0006】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、作業者がひとりでもパネルの仮置作業が容易になされて施工しやすいフェンスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち本発明に係るフェンスは、間隔をあけて立設された支柱間に取付けられた上下一対の上胴縁及び下胴縁を介してパネルが取付けられ、前記パネルは、複数の縦桟と、前記縦桟が固定された上下一対の上横桟及び下横桟を備え、前記縦桟は上横桟及び下横桟の前側に固定されるようになされ、前記上横桟は、上胴縁の上面部に載置される上横板部と、前記上横板部の支柱側先端部から下方に向けて設けられた引掛け部とを備え、前記引掛け部は、前記上胴縁部と支柱との間に挿入されるとともに、前記下横桟は、下胴縁の上面部に対して、前後方向に移動可能に載置される下横板部を有しており、前記下横板部は平板状に形成されており、該下横板部の先端部は、前記下胴縁と支柱との間に挿入しうる引掛け部を有していないことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記上横桟は、前記上胴縁の上面部に載置される上横板部と、前記上横板部の支柱側先端部から下方に向けて設けられた引掛け部とを備え、前記引掛け部は、前記上胴縁部と支柱との間に挿入されるとともに、前記下横桟は、下胴縁の上面部に対して、前後方向に移動可能に載置される下横板部を有しているので、作業者がひとりであっても、まず、パネルの上横桟を上胴縁の上面部付近に配置し、その後、下横桟を下胴縁の上面部付近に配置することで、上下の胴縁を介して支柱間にパネルを容易に仮固定することができるので、施工性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るフェンスにおいて実施の一形態を示す正面図である。
図2図1の上横桟付近の縦断面図である。
図3図1の下横桟付近の縦断面図である。
図4図1の支柱に対するパネルの取付構造の説明図である。
図5図1の支柱に対するパネルの取付構造の他の説明図である。
図6図1の支柱に対するパネルの取付構造の更に他の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。図1~3は本発明に係るフェンスにおいて実施の一形態を示すものであり、図1は本形態に係るフェンスPの正面図である。
【0011】
図面において、10は設置面に間隔をおいて立設された支柱、20は支柱10の前面に取付けられたパネル、30はパネル20を構成する縦桟、40及び50は縦桟30が固定される上下一対の上横桟及び下横桟、60及び70は支柱10間に取付けられた上下一対の上胴縁及び下胴縁であって、上胴縁60及び下胴縁70を介して支柱10間にパネル20が取付けられている。
【0012】
支柱10は、その下部が設置面に埋設されて適宜間隔をあけて立設されている。支柱10は一般に強度的に安定している鋼管が用いられるが、鋼材以外に他の金属を用いてもよい。他の金属としては、アルミニウム合金、ステンレス合金等を挙げることができる。支柱10の断面形状は、本形態のように、上胴縁60及び下胴縁70が取付けやすい平坦な箇所を有した前面が平坦な角型形状の鋼管が好適に用いられる。なお、支柱10の前側とは、支柱10に対してパネル20が配置される方であり、実施例についてもその様に説明する。
【0013】
パネル20は、左右に間隔をあけて配置された多数の縦桟30が、上下に間隔をあけて配置された上横桟40及び下横桟50によって、その交差部で固定具(図示せず)により固定され縦格子状に形成されている。
【0014】
縦桟30は、一般にはアルミニウムやアルミニウム合金製の角パイプが好適に用いられるが、他の金属を用いてもよく、ステンレス合金や鋼材を用いることができる。隣り合う縦桟30のピッチは特に限定されるものではないが、フェンスPを設置した時に、通行人等が横桟4に足を掛けてパネル20を容易に乗り越えないように、該縦桟30間のピッチは靴が入りにくい方が好ましく、本形態では約50mmとしている。
【0015】
縦桟30の断面形状は、本形態に限定されるものではなく、多角形状の断面でもよく、円形状の断面でもよく、これらを組み合わせた形状でもよく、上横桟40及び下横桟50に固定できればよい。
【0016】
図2図1の上横桟40付近の縦断面図である。上横桟40は、縦桟30を所定の間隔あけて固定するための上縦板部41と、上胴縁60に引っ掛けるための引掛け部42とを備えている。上縦板部41は、本形態では、縦桟30と交差する箇所で固定具としてのリベット31により連結されている。
【0017】
次に、上横桟40と上胴縁60との関係について更に詳しく説明する。上横桟40は、本形態では、薄板を屈曲させて形成した如き形態であって、上縦板部41と、上縦板部41の上端を水平に屈曲して形成された上横板部43と、上横板部43の先端部から下方に向けて設けられた前述の引掛け部42とを備えている。一方、上胴縁60は、本形態では、上横板部43が載置される上面部61と、上面部61の支柱10側の端部から下方に向けて設けられた後面部62とを備えており、支柱10に取付けられている。
【0018】
また、支柱10と上胴縁60との間には、引掛け部42の前後方向の肉厚よりも間隔が広い隙間11が設けられている。これにより、引掛け部42は、上胴縁60の後面部62の奥である隙間11内に配置しても支柱10と干渉することないので、隙間11内に引掛け部42を容易に挿入することができる。引掛け部42を隙間11内に挿入した後は、引掛け部42が上胴縁60の後面部62に引っ掛かって、上横桟40が前側に容易には移動しない状態となる。
【0019】
図3図1の下横桟50付近の縦断面図である。下横桟50は、縦桟30を所定の間隔あけて固定するための下縦板部51と、下胴縁70上に載置される下横板部52とを備えている。下縦板部51は、本形態では、縦桟30と交差する箇所で固定具としてのリベット31により連結されている。
【0020】
次に、下横桟50と下胴縁70との関係について更に詳しく説明する。下横桟50は、本形態では、薄板を屈曲させて形成した如き形態であって、下縦板部51と、下縦板部51の上端を水平に屈曲して形成された下横板部52とを備えた断面略L字状に形成されている。下胴縁70は、本形態では、下横板部52が載置される上面部71と上面部71の支柱10側の端部から下方に向けて設けられた後面部72とを備えており、支柱10に取付けられている。
【0021】
従って、上胴縁60に上横桟40の引掛け部42を引っ掛け、下胴縁70の上面部71に下横桟50の下横板部52を載置することによって、パネル20を上胴縁60、下胴縁70を介して支柱10に仮固定することができる。
【0022】
上横桟40及び下横桟50は、一般には強度的に安定しておりコストの安い鋼板が好適に用いられ、また該鋼板のプレス加工やロールフォーミング等の曲げ加工によって作製される。また、上胴縁60及び下胴縁70も、一般には強度的に安定しておりコストの安い鋼板が好適に用いられ、また該鋼板のプレス加工やロールフォーミング等の曲げ加工によって作製される。
【0023】
次に、支柱10に対する上胴縁60の取付構造について、図2を用いて詳しく説明する。上胴縁60の背面には、支柱10に固定するための取付部材80が取付けられている。取付部材80は、本形態では、縦板状であって、その中央部には支柱10側に開口する溝部81が横方向に沿って設けられて、溝部81から上方に向けて上板部82が設けられ、溝部81から下方に向けて下板部83が設けられた断面ハット状に形成されている。
【0024】
そして、下取付金具13と支柱10との間に上板部82がボルトB1及びナットN1によって固定され、上取付金具12と支柱10との間に下板部83がボルトB1及びナットN2によって固定されている。これにより、支柱10の前側に取付部材80が固定される。
【0025】
取付部材80は、ボルトB3によって上胴縁60の後面部62に固定されている。具体的には、ボルトB3の頭部が取付部材80の溝部81内に収納され、ねじ部が取付部材80及び上胴縁60の後面部62を前後方向に貫通してナットN3が螺着されたものである。なお、上胴縁60は前側が開口しているので、ボルトB3にナットN3を容易に螺着することができる。なお、下胴縁70も取付部材80を用いて同様な構造により支柱10に固定されているので、既に説明した内容と同じ構成要素には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0026】
図4図6は、支柱に対するパネルの取付構造の説明図である。まず、図4に示すように、支柱10に取付部材80を上下二カ所に固定し、更に上下の取付部材80に上胴縁60及び下胴縁70をそれぞれ固定する。そして、支柱10の前面側にパネル20を用意する。
【0027】
続いて、図5に示すように、パネル2の上横桟40を上胴縁60に近づけて、上横桟40の引掛け部42を支柱10と上胴縁60との間の隙間11に挿入する。本形態においては、支柱10と上胴縁60との間には、取付部材80の上板部82と、上板部82を固定する上取付金具12が位置している。上取付金具12は、本形態では、支柱10に固定される固定部12aと、固定部12aから前方に膨出する膨出部12bとを備えており、膨出部12bと支柱10との間に設けられた隙間に上板部82が配置されてボルトB1により固定部12aを固定することによって、上板部82が固定される。
【0028】
上横桟40の引掛け部42を、上胴縁60の後面部62と膨出部12bとの隙間14の間に挿入することで、上横桟40が上胴縁60に引っ掛かった状態となる。そうすると、パネル20の自重により、上横桟40の上横板部43の先端側が上方に持ち上がるように作用し、それに連動して引掛け部42の下端側が支柱側に移動する。このため、隙間14の前後方向の間隔が狭いほど、引掛け部42が膨出部12bに接触または押圧した状態となり、それが抵抗となって前記の作用を抑えることができるので、隙間14の間隔は狭い方が良いが、狭くしすぎると、引掛け部42を隙間14に挿入しにくくなる。
【0029】
また、本形態のように引掛け部42が縦板状に形成されているので、隙間14が狭いと引掛け部42をなるべく傾けないように挿入する必要がある。特に、下横桟50にも引掛け部42と同様な部材を有していると、パネル20をほぼ垂直に保持する必要があり、パネル20の僅かな傾きや上下の引掛け部の僅かな位置ずれによって、引掛け部の下端部が上胴縁60、下胴縁70や上取付金具12に接触しやすく傷や変形等が生じる恐れがある。
【0030】
本形態では、下横桟50は、上横桟40の引掛け部42に相当するものを備えておらず、上横桟40の上横板部43に相当する下横板部52は、下胴縁70の上面部71下胴縁に対して、前後方向に移動可能となされている。
【0031】
これにより、図5に示すようにパネル20の上横桟40側を支柱10側にやや倒して傾けて、上横桟40を上胴縁60に引っ掛けた後に、パネル20を起こして、下横桟50の下横板部52が下胴縁70と干渉せずに上面部71上に載置することができる。すなわち、パネル20を傾けることにより、引掛け部42の支柱10側の面が上取付金具12の膨出部12bの表面に接触する場合があるが、面と面との接触のため、傷等が生じにくい。そして、接触した後にパネルを起こすことによって、引掛け部42の下端部は膨出部12bや上胴縁60に強く接触することなく、引掛け部42を隙間14内にスムーズに挿入することができる。
【0032】
このパネル20の起こす作業により、下横桟50の下横板部52が下胴縁70の上面部71上に載置される。これにより、図6に示すように、パネル20が上胴縁60及び下胴縁70を介して支柱10に仮固定された状態となる。
【0033】
この後、上横桟40と上胴縁60とを固定具によって固定し、下横桟50と上胴縁70とを固定具によって固定することによって、パネル20の取付作業が完了する。本形態では、上横桟40と上胴縁60とを前後方向に貫通するボルト(図示せず)にナット(図示せず)を螺着することによって固定されている。なお、下横桟50と下胴縁70とも同様な固定構造とすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係るフェンスPによれば、支柱10間に取付けた上胴縁60及び下胴縁70にパネル20を取付ける際、パネル20の仮固定作業を容易に実施できるので、パネルの仮固定した状態で、パネル20の位置の微調整が容易にできるので、特に設置距離が長いフェンスに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
10 支柱
11 隙間
12 上取付金具
12a 固定部
12b 膨出部
13 下取付金具
14 隙間
20 パネル
30 縦桟
31 リベット
40 上横桟
41 上縦板部
42 引掛け部
43 上横板部
50 下横桟
51 下縦板部
52 下横板部
60 上胴縁
61 上面部
62 後面部
70 下胴縁
71 上面部
72 後面部
80 取付部材
81 溝部
82 上板部
83 下板部
B1~B4 ボルト
N1~N4 ナット
P フェンス
図1
図2
図3
図4
図5
図6