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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/28 20060101AFI20220125BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20220125BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20220125BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20220125BHJP
【FI】
H01M10/28 Z
H01M50/103
H01M50/184 A
H01M50/186
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018155526
(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公開番号】P2020030947
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】中村 知広
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 伸烈
(72)【発明者】
【氏名】奥村 素宜
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-503651(JP,A)
【文献】特開2018-028978(JP,A)
【文献】特開2018-049743(JP,A)
【文献】特開2020-030959(JP,A)
【文献】特開2020-030950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/28
H01M 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバイポーラ電極の積層体と、当該積層体の積層方向の一端側に配置された負極終端電極とを含んで構成された電極積層体と、
前記電極積層体の側面を囲むように設けられ、隣り合う電極間に内部空間を形成すると共に当該内部空間を封止する封止体と、
前記内部空間に収容されたアルカリ溶液を含む電解液と、を備え、
前記封止体は、隣り合う前記電極間に配置されると共に前記電極の電極板の縁部に結合された枠状の樹脂部を含み、
前記負極終端電極の電極板と前記樹脂部とは、枠状の第1結合領域と、当該第1結合領域の外側を所定の間隔をもって囲む枠状の第2結合領域とによって結合され、
前記第1結合領域と前記第2結合領域との間に余剰空間が形成されている、蓄電モジュール。
【請求項2】
前記電極積層体は、前記負極終端電極の電極板に対して前記積層方向の外側に配置された金属板を更に有し、
前記封止体と前記負極終端電極の前記電極板と前記金属板とによって他の余剰空間が形成されている、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記第1結合領域及び前記第2結合領域において、前記負極終端電極は粗面化されている、請求項1又は2に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電モジュールとして、電極板の一方面に正極が形成され、他方面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えるバイポーラ電池が知られている(特許文献1参照)。バイポーラ電池は、セパレータを介して複数のバイポーラ電極を積層してなる積層体を備えている。積層体の側面には、積層方向に隣り合うバイポーラ電極間を封止する封止体が設けられており、バイポーラ電極間に形成された内部空間に電解液が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-204386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような蓄電モジュールでは、電極積層体の積層方向の一端に、電極積層体の内側に負極が形成された負極終端電極が配置されている。この負極終端電極の電極板についても封止体によって封止されているが、電解液がアルカリ溶液を含んでいる場合、いわゆるアルカリクリープ現象により、電解液が負極終端電極の電極板の表面を伝わり、封止体と当該電極板との間を通って蓄電モジュールの外部に滲み出てしまうことが生じ得る。電解液が蓄電モジュールの外部に漏れ出て拡散すると、例えば蓄電モジュールに接して配置された導電板の腐食や、蓄電モジュールと拘束部材との短絡等が生じるおそれがあり、信頼性を低下させる要因となり得る。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュールの外部に滲み出ることを抑制可能な蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールは、複数のバイポーラ電極の積層体と、当該積層体の積層方向の一端側に配置された負極終端電極とを含んで構成された電極積層体と、電極積層体の側面を囲むように設けられ、隣り合う電極間に内部空間を形成すると共に当該内部空間を封止する封止体と、内部空間に収容されたアルカリ溶液を含む電解液と、を備え、封止体は、隣り合う電極間に配置されると共に電極の電極板の縁部に結合された枠状の樹脂部を含み、負極終端電極の電極板と樹脂部とは、枠状の第1結合領域と、当該第1結合領域の外側を所定の間隔をもって囲む枠状の第2結合領域とによって結合され、第1結合領域と第2結合領域との間に余剰空間が形成されている。
【0007】
この蓄電モジュールでは、負極終端電極の電極板と樹脂部とは、枠状の第1結合領域と、当該第1結合領域の外側を所定の間隔をもって囲む枠状の第2結合領域とによって結合され、第1結合領域と第2結合領域との間に余剰空間が形成されている。この余剰空間は、第1結合領域と第2結合領域との間に形成されているので、アルカリクリープ現象による電解液の移動経路上に位置している。これにより、外部の空気中に含まれる水分が、負極終端電極の電極板と樹脂部との間の隙間から蓄電モジュールの内部に入り込むことを抑制できる。したがって、アルカリクリープ現象の加速条件となる外部の湿度の影響が抑制されるので、電解液が蓄電モジュールの外部に滲み出ることを抑制することができる。
【0008】
電極積層体は、負極終端電極の電極板に対して積層方向の外側に配置された金属板を更に有し、封止体と負極終端電極の電極板と金属板とによって他の余剰空間が形成されていてもよい。この構成によれば、余剰空間に加え、他の余剰空間がアルカリクリープ現象による電解液の移動経路上に設けられている。したがって、電解液が滲み出す起点となる負極終端電極の電極板と樹脂部との間の隙間に、外部の空気中に含まれる水分が入り込むことをより確実に抑制できる。
【0009】
第1結合領域及び第2結合領域において、負極終端電極の電極板は粗面化されていてもよい。この構成によれば、アンカー効果によって、第1結合領域及び第2結合領域における負極終端電極の電極板と樹脂部との結合強度の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュールの外部に滲み出ることを抑制可能な蓄電モジュールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る蓄電装置を示す概略断面図である。
図2図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図3図2の蓄電モジュールの一部を示す拡大断面図である。
図4】積層方向から見た蓄電モジュールを概略的に示す図である。
図5】比較例に係る蓄電モジュールの一部拡大断面図である。
図6】変形例に係る蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図7】第1結合領域及び第2結合領域の変形例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に対してモジュール積層体2の積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
【0014】
モジュール積層体2は、複数(ここでは3つ)の蓄電モジュール4と、複数(ここでは4つ)の導電板5とを含む。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向から見て矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタ等である。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0015】
積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。導電板5は、積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側とにそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向に交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0016】
導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えば積層方向と、正極端子6及び負極端子7の引出方向と、にそれぞれ交差(直交)する方向に沿って延在している。導電板5は、蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能の他、これらの流路5aに冷媒を流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持っている。なお、図1の例では、積層方向から見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さくなっているが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくなっていてもよい。
【0017】
拘束部材3は、モジュール積層体2を積層方向に挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とによって構成されている。エンドプレート8は、積層方向から見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属版である。エンドプレート8におけるモジュール積層体2側の面には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電板5との間が絶縁されている。
【0018】
エンドプレート8の縁部には、モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8によって挟持されてモジュール積層体2としてユニット化されると共に、モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重が付加される。
【0019】
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。図2は、図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。図3は、図2の蓄電モジュールの一部を示す拡大断面図である。図2及び図3に示されるにように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12とを備えている。電極積層体11は、セパレータ13を介して蓄電モジュール4の積層方向Dに沿って積層された複数の電極によって構成されている。これらの電極は、複数のバイポーラ電極14の積層体と、負極終端電極18と、正極終端電極19とを含む。
【0020】
バイポーラ電極14は、一方面15a及び一方面15aの反対側の他方面15bを含む電極板15と、一方面15aに設けられた正極16と、他方面15bに設けられた負極17とを有している。正極16は、正極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される正極活物質層である。負極17は、負極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される負極活物質層である。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの一方に隣り合う別のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの他方に隣り合う別のバイポーラ電極14の正極16と対向している。なお、セパレータ13は、後述の第1封止部21に接するほど積層方向Dに交差する方向に延びていることが好ましい。これにより、電極同士の短絡を抑制することができる。
【0021】
負極終端電極18は、電極板15と、電極板15の他方面15bに設けられた負極17とを有している。負極終端電極18は、他方面15bが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの一端に配置されている。負極終端電極18の電極板15の一方面15aは、電極積層体11の積層方向Dにおける一方の外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電板5(図1参照)と電気的に接続されている。負極終端電極18の電極板15の他方面15bに設けられた負極17は、セパレータ13を介して積層方向Dの一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0022】
正極終端電極19は、電極板15と、電極板15の一方面15aに設けられた正極16とを有している。正極終端電極19は、一方面15aが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの他端に配置されている。正極終端電極19の一方面15aに設けられた正極16は、セパレータ13を介して、積層方向Dの他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。正極終端電極19の電極板15の他方面15bは、電極積層体11の積層方向における他方の外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5(図1参照)と電気的に接続されている。
【0023】
電極板15は、例えば、ニッケル又はニッケルメッキ鋼板といった金属からなる。一例として、電極板15は、ニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板15の縁部15cは、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の他方面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の一方面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0024】
セパレータ13は、例えばシート上に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ13は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0025】
封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって、全体として矩形の筒状に形成されている。封止体12は、電極板15の縁部15cを包囲するように電極積層体11の側面11aに設けられている。封止体12は、側面11aにおいて縁部15cを保持している。封止体12は、電極板15の縁部15cに結合された複数の第1封止部21(樹脂部)と、側面11aに沿って第1封止部21を外側から包囲し、第1封止部21のそれぞれに結合された第2封止部22とを含んでいる。第1封止部21及び第2封止部22は、例えば、耐アルカリ性を有する絶縁性の樹脂である。第1封止部21及び第2封止部22の構成材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)などが挙げられる。
【0026】
第1封止部21は、電極板15の一方面15aにおいて縁部15cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向Dから見て矩形環状をなしている。第1封止部21は、例えば超音波又は熱によって電極板15の一方面15aに溶着され、気密に接合されている。第1封止部21は、例えば積層方向Dに所定の厚さを有するフィルムである。第1封止部21の内側は、積層方向Dに互いに隣り合う電極板15の縁部15c同士の間に位置している。第1封止部21の外側は、電極板15の縁よりも外側に張り出しており、その先端部分は、第2封止部22に保持されている。積層方向Dに沿って互いに隣り合う第1封止部21同士は、互いに離間していてもよく、接していてもよい。
【0027】
電極板15の一方面15aにおける縁部15cと第1封止部21とが重なる領域は、電極板15と第1封止部21との結合領域Kとなっている。結合領域Kにおいて、電極板15の表面は、粗面化されている。粗面化された領域は、結合領域Kのみでもよいが、本実施形態では電極板15の一方面15aの全体が粗面化されている。粗面化は、例えば電解メッキによる複数の突起の形成により実現し得る。一方面15aに複数の突起が形成されうることにより、一方面15aにおける第1封止部21との接合界面では、溶融状態の樹脂が粗面化により形成された複数の突起間に入り込み、アンカー効果が発揮される。これにより、電極板15と第1封止部21との間の結合強度を向上させることができる。粗面化の際に形成される突起は、例えば基端側から先端側に向かって先太りとなる形状を有している。これにより、隣り合う突起の間の断面形状がアンダーカット形状となり、アンカー効果を高めることが可能となる。
【0028】
第2封止部22は、電極積層体11及び第1封止部21の外側に設けられ、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成している。第2封止部22は、例えば樹脂の射出成形によって形成され、積層方向Dに沿って電極積層体11の全長にわたって延在している。第2封止部22は、積層方向Dを軸方向として延在する矩形の筒状(環状)を呈している。第2封止部22は、例えば射出成形時の熱によって第1封止部21の外表面に溶着されている。
【0029】
第1封止部21及び第2封止部22は、隣り合う電極の間に内部空間Vを形成すると共に内部空間Vを封止する。より具体的には、第2封止部22は、第1封止部21と共に、積層方向Dに沿って互いに隣り合うバイポーラ電極14の間に、積層方向Dに沿って互いに隣り合う負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び積層方向Dに沿って互いに隣り合う正極終端電極19とバイポーラ電極14との間をそれぞれ封止している。これにより、隣り合うバイポーラ電極14の間、負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び正極終端電極19とバイポーラ電極14との間には、それぞれ気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。この内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液を含む電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータ13、正極16、及び負極17内に含浸されている。
【0030】
次に、図3及び図4を参照して、負極終端電極18の電極板15と第1封止部21との結合領域Kについて更に詳細に説明する。図3及び図4に示されるように、結合領域Kは、第1結合領域K1と、第2結合領域K2とを含んでおり、負極終端電極18の電極板15と第1封止部21とは第1結合領域K1及び第2結合領域K2によって結合されている。第1結合領域K1及び第2結合領域K2は共に矩形枠状の領域であり、第2結合領域K2は、第1結合領域K1の外側を所定の間隔をもって全体的に囲んでいる。第1結合領域K1と第2結合領域K2との間の領域は、負極終端電極18の電極板15と第1封止部21とが互いに結合されていない領域であり、この領域に余剰空間VCが形成されている。余剰空間VCは、電解液が収容されていない密閉された空間である。積層方向Dから見て、余剰空間VCは、第1結合領域K1と第2結合領域K2との間において、第1封止部21の全周にわたって矩形枠状に形成されている。
【0031】
本実施形態では、第2結合領域K2の幅H2(積層方向Dの直交し、蓄電モジュール4の内側から外側へ向かう方向)は、第1結合領域K1の幅H1より大きくなっている。一例として、第1結合領域K1の幅H1を1mm以上20mm以下、第2結合領域K2の幅H2を1mm以上20mm以下とすることができる。なお、第1結合領域K1の幅H1と第2結合領域K2の幅H2との関係は特に限定されない。例えば、第1結合領域K1の幅H1は第2結合領域K2の幅H2より大きくてもよいし、第1結合領域K1の幅H1と第2結合領域K2の幅H2とは互いに略同一であってもよい。
【0032】
また、第1結合領域K1と第2結合領域K2との間の領域の幅(すなわち、余剰空間VCの幅H3)は、例えば1mm以上10mm以下とすることができる。余剰空間VCの幅H3は、第1結合領域K1の幅H1及び/又は第2結合領域K2の幅H2を変更することによって調整され得る。例えば、第1結合領域K1の幅H1及び第2結合領域K2の幅H2を余剰空間VCの幅H3よりも小さくすることにより、余剰空間VCの幅H3を相対的に大きくすることができる。この場合、余剰空間VCの体積が大きくなるので、仮に外部の空気に含まれる水分が余剰空間VC内に侵入した場合であっても、余剰空間VCの体積に対する水分量の比率が相対的に小さくなるので、侵入した水分による影響を低減できる。反対に、第1結合領域K1の幅H1及び第2結合領域K2の幅H2を余剰空間VCの幅H3よりも大きくすることにより、余剰空間VCの幅H3を相対的に小さくすることができる。この場合、余剰空間VCの体積が小さくなるので、蓄電モジュール4の製造時に余剰空間VC内に含まれる空気の量が少なくなる。これにより、予め余剰空間VC内に含まれる水分量を少なくすることができるので、電解液が負極終端電極18の電極板15と第1封止部21との間から余剰空間VC内に滲み出ることを抑制できる。なお、余剰空間VCの幅H3は、第1結合領域K1の幅H1及び第2結合領域K2の幅H2を変更する方法の他、第1結合領域K1及び第2結合領域K2の位置を幅方向において変更する方法によっても調整され得る。
【0033】
続いて、図5を参照して蓄電モジュール4の作用効果について説明する。図5は、比較例に係る蓄電モジュールの要部拡大断面図である。図5に示されるように、比較例に係る蓄電モジュール100は、負極終端電極18の電極板15と第1封止部21が重なる領域の全体が結合され(すなわち、第1結合領域K1及び第2結合領域K2を有しておらず)、負極終端電極18の電極板15と第1封止部21とが結合されていない余剰空間VCを有していない点で、本実施形態に係る蓄電モジュール4と相違している。
【0034】
蓄電モジュール100では、いわゆるアルカリクリープ現象により、内部空間Vに存在する電解液が負極終端電極18の電極板15の表面を伝わり、結合領域Kにおける電極板15と第1封止部121Aとの間の隙間を通って電極板15の一方面15a側に滲み出ることがある。図4には、アルカリクリープ現象における電解液Lの移動経路を矢印Aで示す。このアルカリクリープ現象は、電気化学的な要因及び流体現象などにより、蓄電装置の充電時及び放電時並びに無負荷時において生じ得る。アルカリクリープ現象は、負極電位、水分、及び電解液Lの通り道がそれぞれ存在することにより生じ、時間の経過とともに進行する。
【0035】
これに対し、本実施形態に係る蓄電モジュール4では、負極終端電極18の電極板15と第1封止部21とは、枠状の第1結合領域K1と、当該第1結合領域K1の外側を所定の間隔をもって囲む枠状の第2結合領域K2とによって結合され、第1結合領域K1と第2結合領域K2との間に余剰空間VCが形成されている。この余剰空間VCは、第1結合領域K1と第2結合領域K2との間に形成されているので、アルカリクリープ現象による電解液の移動経路上に位置している。これにより、外部の空気中に含まれる水分が、負極終端電極18の電極板15と第1封止部21との間の隙間から蓄電モジュール4の内部に入り込むことを抑制できる。したがって、アルカリクリープ現象の加速条件となる外部の湿度の影響が抑制されるので、電解液が蓄電モジュール4の外部に滲み出ることを抑制することができる。
【0036】
また、第1結合領域K1及び第2結合領域K2において、負極終端電極18の電極板15は粗面化されている。これにより、アンカー効果によって、第1結合領域K1及び第2結合領域K2における負極終端電極18の電極板15と第1封止部21との結合強度の向上を図ることができる。したがって、内圧上昇等に起因する負極終端電極18の変形によって、負極終端電極18の電極板15と第1封止部21との間に隙間が形成されることを抑制でき、電解液が蓄電モジュール4の外部に滲み出ることを抑制することができる。
【0037】
次に図6を参照して、変形例に係る蓄電モジュール40について説明する。図6は、変形例に係る蓄電モジュール40の内部構成を示す概略断面図である。蓄電モジュール40は、蓄電モジュール4と同様に、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12とを備えている。電極積層体11は、セパレータ13を介して積層方向Dに沿って積層された複数の電極によって構成されている。これらの電極は、複数のバイポーラ電極14の積層体と、負極終端電極18と、正極終端電極19とを含んでいる。負極終端電極18の電極板15と第1封止部21との結合領域Kは、第1結合領域K1と第2結合領域K2とを含み、第1結合領域K1と第2結合領域K2との間に余剰空間VC(不図示)が形成されている。蓄電モジュール40は、電極積層体11が、金属板20を更に有している点で、蓄電モジュール4と相違している。
【0038】
金属板20は、負極終端電極18の電極板15に対して積層方向Dの外側に配置されている。金属板20は、負極終端電極18の電極板15の一方面15aに対向する他方面20bと、他方面20bの反対側の一方面20aとを有している。金属板20の一方面20a及び他方面20bには、正極活物質及び負極活物質が塗工されておらず、一方面20a及び他方面20bの全面が未塗工領域となっている。すなわち、本実施形態において、金属板20は正極16及び負極17のいずれも設けられていない未塗工電極板である。また、金属板20は、負極終端電極18側に窪むと共に負極終端電極18の電極板15に接触する矩形状の接触部Cを有する。より具体的に、接触部Cにおいて、金属板20の他方面20bは、負極終端電極18の電極板15の一方面15aに接触し、金属板20の一方面20aは導電板5(図1参照)に接触している。これにより、負極終端電極18は、金属板20を介して導電板5と電気的に接続されている。金属板20は、電極板15と同様に、例えば、ニッケル又はニッケルメッキ鋼板といった金属からなる。
【0039】
金属板20の一方面20a及び他方面20bにおける縁部20cと第1封止部21とが重なる領域は、負極終端電極18の電極板15の表面と同様に粗面化されている。粗面化された領域は、縁部20cと第1封止部21が結合した領域のみでもよいが、本実施形態では金属板20の一方面20a及び他方面20bの全体が粗面化されている。金属板20の一方面20a及び他方面20bにおける縁部20cには、それぞれ第1封止部21が結合されている。これにより、第1封止部21と負極終端電極18の電極板15と金属板20とによって、電解液が収容されていない余剰空間VA(他の余剰空間)が形成されている。積層方向Dから見て、余剰空間VAは接触部Cの周囲を囲むように形成されている。また、積層方向Dに沿った断面から見て、余剰空間VAは、第1封止部21側から接触部C側へ向かうにつれて高さ(積層方向Dに沿った寸法)が小さくなる略三角形状をなしている。
【0040】
また、蓄電モジュール40は、電解液が収容されていない別の余剰空間VBを更に有している。別の余剰空間VBは、余剰空間VAよりも積層方向Dの外側に位置している。余剰空間VBは、負極終端電極18の電極板15と第1封止部と第2封止部22とによって形成されている。余剰空間VBは、金属板20の縁部20cの外側を囲むように形成されている。積層方向Dに沿った断面から見て、余剰空間VBは略矩形状をなしている。
【0041】
上記のように、蓄電モジュール40においても、負極終端電極18の電極板15と第1封止部21との結合領域Kは、第1結合領域K1と第2結合領域K2とを含み、第1結合領域K1と第2結合領域K2との間に余剰空間VCが形成されている。この余剰空間VCは、アルカリクリープ現象による電解液の移動経路上に位置しているので、外部の空気中に含まれる水分が、負極終端電極18の電極板15と第1封止部21との間の隙間から蓄電モジュール4の内部に入り込むことを抑制できる。したがって、蓄電モジュール4と同様に、電解液が蓄電モジュール40の外部に滲み出ることを抑制することができる。
【0042】
また、電極積層体11は、負極終端電極18の電極板に対して積層方向Dの外側に配置された金属板20を更に有し、封止体12と負極終端電極18の電極板15と金属板20とによって他の余剰空間VAが形成されている。これにより、余剰空間VCに加え、他の余剰空間VAがアルカリクリープ現象による電解液の移動経路上に設けられている。したがって、電解液が滲み出す起点となる負極終端電極18の電極板15と第1封止部21(封止体12)との間の隙間に、外部の空気中に含まれる水分が入り込むことをより確実に抑制できる。
【0043】
また、蓄電モジュール40では、封止体12と金属板20とによって、他の余剰空間VAよりも積層方向Dの外側に別の余剰空間VBが更に形成されている。これにより、余剰空間VC及び他の余剰空間VAに加え、封止体12と金属板20とによる別の余剰空間VBがアルカリクリープ現象による電解液の移動経路上に更に設けられている。したがって、電解液が滲み出す起点となる負極終端電極18の電極板15と第1封止部21との間の隙間に、外部の空気中に含まれる水分が入り込むことを更に確実に抑制できる。
【0044】
次に、図7を参照して、負極終端電極18の電極板15と第1封止部21との結合領域Kの変形例について説明する。図7は、負極終端電極の電極板と第1封止部との結合領域Kの変形例を概略的に示す図である。図7に示されるように、変形例に係る結合領域K’は、第1結合領域K1の各辺が第2結合領域K2まで延びている点で、結合領域Kと相違している。これにより、余剰空間VCは、8つの空間VC1~VC8に分割されている。空間VC1~VC4は、第1結合領域K1の各辺に平行な方向に延在する空間であり、空間VC5~VC8は、第1結合領域K1の角部と第2結合領域K2の角部との間に位置する空間である。
【0045】
変形例に係る結合領域K’を有する蓄電モジュールにおいても、第1結合領域K1と第2結合領域K2との間の領域に余剰空間VCが形成されているので、蓄電モジュール4と同様の作用効果を得ることができる。また、第1結合領域K1の各辺が第2結合領域K2まで延びている場合、第1結合領域K1を1辺ずつ形成することができる。このように第1結合領域K1を1辺ずつ形成することにより、矩形環状の加熱部を有する接合装置を用いる必要がなくなる(すなわち、直線状の加熱部を有する一般的な接合装置を用いることができる)ので、負極終端電極18の電極板15と第1封止部21との結合、及び余剰空間VCの形成を容易に行うことができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。例えば、上記の実施形態では、負極終端電極18の電極板15と第1封止部21とによって1つの余剰空間VCが形成されている例について説明したが、結合領域Kは、更に多くの枠状の結合領域を含んでいてもよい。例えば、結合領域Kは、第2結合領域K2の外側に、第2結合領域K2を囲む枠状の第3結合領域(不図示)を更に含んでいてもよい。この場合、余剰空間VCの外側に、第2結合領域K2と第3結合領域との間の領域に更に余剰空間を形成することができる。このように、内側の結合領域を全体的に囲む枠状の他の結合領域の数を増やしていくことによって更に多くの余剰空間を形成することができるので、蓄電モジュール4の内部に、外部の空気中に含まれる水分が入り込むことをより確実に抑制できる。
【0047】
また、電極積層体11が金属板20を有する蓄電モジュール40においては、金属板20と第1封止部21との結合領域も、第1結合領域と第2結合領域とを含み、第1結合領域と第2結合領域との間に余剰空間が形成されていてもよい。
【0048】
また、上記の実施形態では、第1結合領域K1及び第2結合領域K2において、負極終端電極18の電極板15が粗面化されている例について説明したが、負極終端電極18の電極板15は粗面化されていなくてもよい。
【0049】
また、正極終端電極19の電極板15の他方面15b側にも矩形枠状の第1封止部21が結合されていてもよい。この第1封止部21も、第2封止部22によって他の第1封止部21と結合され得る。また、正極終端電極19の電極板15の他方面15b側に結合された第1封止部21の縁部と、正極終端電極19の電極板15の一方面15a側の第1封止部21の縁部とは、熱板溶着等によって結合されていてもよい。
【符号の説明】
【0050】
4,40…蓄電モジュール、11…電極積層体、11a…側面、12…封止体、14…バイポーラ電極、15…電極板、15c…縁部、18…負極終端電極、20…金属板、21…第1封止部(樹脂部)、22…第2封止部、D…積層方向、K1…第1結合領域、K2…第2結合領域、V…内部空間、VA…余剰空間(他の余剰空間)、VC…余剰空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7