(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】バッテリー用ナノファイバー電極を作製する方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/02 20060101AFI20220125BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20220125BHJP
H01M 4/42 20060101ALI20220125BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20220125BHJP
H01M 4/52 20100101ALI20220125BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220125BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20220125BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20220125BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20220125BHJP
H01M 10/34 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
H01M4/02 Z
H01M4/04 A
H01M4/42
H01M4/48
H01M4/52
H01M4/62 Z
H01M4/66 A
H01M4/80 Z
H01M10/04
H01M10/34
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018186852
(22)【出願日】2018-10-01
(62)【分割の表示】P 2016501547の分割
【原出願日】2014-03-12
【審査請求日】2018-10-31
【審判番号】
【審判請求日】2020-01-23
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518396080
【氏名又は名称】ウェルスタット バイオカタリシス、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フライディナ、エフゲニア
【合議体】
【審判長】平塚 政宏
【審判官】渡部 朋也
【審判官】粟野 正明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0261502(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0178543(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/02-4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極を提供するステップであり、第1の電極を形成するステップが、
第1のカーボンナノチューブを提供するステップ、
第2のカーボンナノチューブを提供するステッ
プ、
コーティング付きカーボンナノチューブが形成されるように第1のカーボンナノチューブをナノスケール活物質でコーティングするステップ、
コーティング付きカーボンナノチューブ及び第2のカーボンナノチューブの網状構造を形成するステップ、
第1の電解質を提供するステップ、
並びに
放出メカニズムを提供するステップであって、当該放出メカニズムは、コーティング付きカーボンナノチューブからのナノスケール活物質の一部を放出された活物質として放出させ、当該放出された活物質は当該コーティング付きカーボンナノチューブ及び第2のカーボンナノチューブ中の領域に放出され、当該放出された活物質を第2のカーボンナノチューブ上に堆積させる、ステップ、
を含む、第1の電極を提供するステップと、
第2の電解質を提供するステップと、
第2の電極を提供するステップと、
バッテリーが形成されるように第1及び第2の電極を第2の電解質中に設けるステップと
を含み、第1の電解質及び第2の電解質が異なる電解質である、
バッテリーを形成する方法。
【請求項2】
第1のカーボンナノチューブをナノスケール活物質でコーティングするステップが、第1のカーボンナノチューブを電気化学的に活性なナノスケール固体物質でコーティングするステップを含み、
第1のカーボンナノチューブを電気化学的に活性なナノスケール固体物質でコーティングするステップが、第1のカーボンナノチューブを、Ni、Zn、Cd、Fe、Pb、Mn、Co、Ag、Al、又はMgの化合物でコーティングするステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1のカーボンナノチューブを電気化学的に活性なナノスケール固体物質でコーティングするステップが、第1のカーボンナノチューブを、水酸化物、炭酸塩、フッ化物、硫酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩の1種又は複数でコーティングするステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
固体形態の酸化物、水酸化物、又は炭酸塩の1種又は複数を、第1のカーボンナノチューブを提供するステップに、第2のカーボンナノチューブを提供するステップに、又はコーティング付きカーボンナノチューブが形成されるように第1のカーボンナノチューブをナノスケール活物質でコーティングするステップに提供するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
固体形態の酸化物、水酸化物、又は炭酸塩の1種又は複数を提供するステップが、固体形態のMg又はCaの酸化物、水酸化物、又は炭酸塩の1種又は複数を提供するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
固体形態の酸化物、水酸化物、又は炭酸塩の1種又は複数を提供するステップが、固体形態のMg(OH)
2又はCa(OH)
2を提供するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
固体形態の酸化物、水酸化物、又は炭酸塩の1種又は複数を提供するステップが、固体形態の酸化物、水酸化物、又は炭酸塩を、第1のカーボンナノチューブ、第2のカーボンナノチューブ、又は第1のカーボンナノチューブ及び第2のカーボンナノチューブの両方の上に堆積させるステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
固体形態の酸化物、水酸化物、又は炭酸塩の1種又は複数を提供するステップが、
固体形態の酸化物、水酸化物、若しくは炭酸塩の1種若しくは複数を、第1のカーボンナノチューブの表面、若しくはナノスケール活物質の表面に堆積させるステップ、又は
固体形態の酸化物、水酸化物、若しくは炭酸塩の1種若しくは複数と、ナノスケール活物質とを、第1のカーボンナノチューブ上に同時に堆積させるステップ
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
放出メカニズムを提供するステップが、充放電サイクルを提供するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
充放電サイクルを提供するステップが、
コーティング付きカーボンナノチューブを充電するステップであって、コーティング付きカーボンナノチューブからのナノスケール活物質の一部を放出された活物質として放出させる、ステップ、
放電するステップであって、当該放出された活物質を第2のカーボンナノチューブ上に堆積させて、コーティング付きの第2のカーボンナノチューブを形成する、ステップ、並びに
当該コーティング付きカーボンナノチューブ及び当該コーティング付きの第2のカーボンナノチューブの電気化学活性が、当該コーティング付きの第2のカーボンナノチューブ上の放出された活物質と、コーティング付きカーボンナノチューブ上のナノスケール活物質との間で平衡に到達するまで、当該充電ステップと当該放電ステップとを、繰り返すステップ、
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
放出メカニズムを提供するステップが、加熱及び冷却サイクルを提供するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
加熱及び冷却サイクルを提供するステップが、
コーティング付きカーボンナノチューブを加熱するステップであって、コーティング付きカーボンナノチューブからのナノスケール活物質の一部を放出された活物質として放出させる、ステップ、
コーティング付きカーボンナノチューブ、第2のカーボンナノチューブ、及び放出された活物質を冷却するステップであって、当該放出された活物質を第2のカーボンナノチューブ上に堆積させて、コーティング付きの第2のカーボンナノチューブを形成する、ステップ、並びに
当該コーティング付きカーボンナノチューブ及び当該コーティング付きの第2のカーボンナノチューブの電気化学活性が、当該コーティング付きの第2のカーボンナノチューブ上の放出された活物質と、コーティング付きカーボンナノチューブ上のナノスケール活物質との間で平衡に到達するまで、当該加熱ステップと当該冷却ステップとを、繰り返すステップ、
を含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
バッテリーの使用がますます増加するにつれて、消費者は、そのバッテリーからの電荷容量と同様に充放電速度に関して、より良好な性能を望んでいる。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(及び他のナノサイズ物体)は、供給が増大するにつれて、製造においてより一般的になってきている。しかし、カーボンナノチューブをコーティングするための方法は、従来のコーティング技法に限定されていることから、特にコーティングの前にカーボンナノチューブが網状構造化(networked)された場合に、不均一なコーティング特性をもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書では、高速充放電特性(fast charging and discharging properties)をもたらすことができる高電力密度と、増大した容量として反映させることができる高エネルギー密度との両方を有することができる、高速フィブリルバッテリーが提供される。高速充放電特性は、導電性(conductive)ナノファイバー及びナノスケール活物質を利用して集電体と活物質(例えば、ナノスケール活物質)との間の距離が短い電極を得ることによって得ることができる。高電荷容量は、より多くの量の活物質を保持するために、高表面積担体(例えば、ナノファイバー)を利用し、大きな連続した多孔率を有する網状構造が生成されることによって得ることができる。
【0004】
本明細書では、ナノスケール網状構造が形成されるように、1つ又は複数の第2のカーボンナノチューブに電気的に接続された1つ又は複数の第1のカーボンナノチューブであって、1つ又は複数の第2のカーボンナノチューブの少なくとも1つが1つ又は複数の第2のカーボンナノチューブの別のカーボンナノチューブに電気接触している、1つ又は複数の第1のカーボンナノチューブを含む、ナノスケールコーティング付き網状構造(nano-scale coated network)を含む電極も提供される。電極は、ナノスケールコーティング付き網状構造が形成されるように、1つ又は複数の第1のカーボンナノチューブの少なくとも一部を覆い且つ1つ又は複数の第2のカーボンナノチューブは覆わない活物質コーティングをさらに含む。
【0005】
本明細書では、2つの電極と;電解質とを含むバッテリーであって、少なくとも1つの電極がさらに:ナノスケール網状構造が形成されるように、1つ又は複数の第2のカーボンナノチューブに電気的に接続された1つ又は複数の第1のカーボンナノチューブであり、1つ又は複数の第2のカーボンナノチューブの少なくとも1つが1つ又は複数の第2のカーボンナノチューブの別のカーボンナノチューブに電気接触している、1つ又は複数の第1のカーボンナノチューブを含む、ナノスケールコーティング付き網状構造を含むバッテリーも提供される。バッテリーはさらに、1つ又は複数の第1のカーボンナノチューブの部分及び1つ又は複数の第2のカーボンナノチューブの部分を覆うように分布させた活物質コーティングであって、1つ又は複数の第2のカーボンナノチューブのうちの複数が、活物質コーティングの下で他の第2のカーボンナノチューブと電気連絡(electrical communication)している活物質コーティングを含む。
【0006】
本明細書では、ナノスケール網状構造が形成されるように、1つ又は複数の第2のカーボンナノチューブに電気的に接続された1つ又は複数の第1のカーボンナノチューブをさらに含むナノスケールコーティング付き網状構造を含む第1の電極を含む電気化学キャパシターも提供される。電気化学キャパシターは、1つ又は複数の第2のカーボンナノチューブの別のカーボンナノチューブに電気接触している1つ又は複数の第2のカーボンナノチューブの少なくとも1つと;1つ又は複数の第1のカーボンナノチューブの部分及び1つ又は複数の第2のカーボンナノチューブの部分を覆うように分布させた活物質コーティングとを有する。電気化学キャパシターは、活物質コーティングの下で他の第2のカーボンナノチューブに電気連絡している1つ又は複数の第2のカーボンナノチューブのうちの複数;第2の電極;及び電解質も有する。
【0007】
本明細書では、電極の化学的性質が異なる2つの電極を含むバッテリーであって、前記電極のうちの1つがカーボンナノチューブ(CNT:carbon nanotube)をさらに含み、前記CNT含有電極が50%超の気孔率を有するバッテリーも提供される。バッテリーのCNT電極は、25重量%未満のCNTをさらに含む。バッテリーは、周囲条件で、1Cレートで放電した場合に、理論電圧の80%超の高いセル電圧を有し、前記バッテリーは、2Cレートで再充電した場合に、95%超の高い再充電効率を有する。
【0008】
本明細書では、第1の電極を提供するステップであって、第1の電極を形成するステップがさらに:第1のカーボンナノチューブを提供するステップ;第2のカーボンナノチューブを提供するステップ;コーティング付きカーボンナノチューブが形成されるように第1のカーボンナノチューブをナノスケール物質でコーティングするステップとを含む第1の電極を提供するステップを含む、バッテリーを形成する方法も提供される。方法はさらに、コーティング付きカーボンナノチューブ及び第2のカーボンナノチューブの網状構造を形成するステップと;第1の電解質を提供するステップと;第1の電極が形成されるようにナノスケール物質を第1の電解質中で網状構造上に再分布させるステップとを含む。方法はさらに、第2の電解質を提供するステップと;第2の電極を提供するステップと;バッテリーが形成されるように第1及び第2の電極を第2の電解質中に設けるステップとを含み、第1の電解質及び第2の電解質が異なる電解質である。
【0009】
本明細書では、第1の電極を提供するステップであって、第1の電極を形成するステップがさらに:第1のカーボンナノチューブを提供するステップと;第2のカーボンナノチューブを提供するステップと;コーティング付きカーボンナノチューブが形成されるように第1のカーボンナノチューブをナノスケール物質でコーティングするステップとを含む第1の電極を提供するステップを含む、バッテリーを形成する方法も提供される。方法はさらに、コーティング付きカーボンナノチューブ及び第2のカーボンナノチューブの網状構造を第1の電解質中で形成するステップと;第1の電解質を提供するステップと;第1の電極が形成されるようにナノスケール物質を第1の電解質中で網状構造上に再分布させるステップとを含む。方法はさらに、第2の電解質を提供するステップと;第2の電極を提供するステップと;バッテリーが形成されるように第1及び第2の電極を第2の電解質中に設けるステップとを含み、第1の電解質及び第2の電解質が異なる電解質であり、第1の電解質及び第2の電解質が、水性のイオン伝導性(ionically conducitive)電解質を含む。
【0010】
本明細書では、第1の電極を提供するステップであって、第1の電極を形成するステップがさらに:第1のカーボンナノチューブを提供するステップと;第2のカーボンナノチューブを提供するステップと;コーティング付きカーボンナノチューブが形成されるように第1のカーボンナノチューブをナノスケール物質でコーティングするステップとを含む第1の電極を提供するステップを含む、バッテリーを形成する方法も提供される。方法はさらに、コーティング付きカーボンナノチューブ及び第2のカーボンナノチューブの網状構造を形成するステップと;第1の電解質を提供するステップと;第1の電極が形成されるようにナノスケール物質を第1の電解質中で網状構造上に再分布させるステップとを含む。方法はさらに、第2の電解質を提供するステップと;第2の電極を提供するステップと;バッテリーが形成されるように第1及び第2の電極を第2の電解質中に設けるステップとを含み、第1の電解質及び第2の電解質は異なる電解質であり、第2の電解質はさらに、pHレベルが7から12.5の間である電解質を含む。
【0011】
本明細書では、第1のカーボンナノチューブを提供するステップと;第2のカーボンナノチューブを提供するステップと;コーティング付きカーボンナノチューブが形成されるように第1のカーボンナノチューブをナノスケール物質でコーティングするステップとを含む、電極を形成する方法も提供される。方法はさらに、局所バッファー(local buffer)を提供するステップと;コーティング付きカーボンナノチューブ、第2のカーボンナノチューブ、及び局所バッファーの、網状構造を形成するステップと;電解質を提供するステップと;電極が形成されるようにナノスケール物質を電解質中で網状構造上に再分布させるステップとを含む。
【0012】
本明細書では、第1の電極を提供するステップであって、第1の電極を形成するステップがさらに:第1のカーボンナノチューブを提供するステップと;第2のカーボンナノチューブを提供するステップと;コーティング付きカーボンナノチューブが形成されるように第1のカーボンナノチューブをナノスケール物質でコーティングするステップとを含む第1の電極を提供するステップを含む、バッテリーを形成する方法も提供される。方法はさらに、局所バッファーを提供するステップと;コーティング付きカーボンナノチューブ、第2のカーボンナノチューブ、及び局所バッファーの、網状構造を形成するステップと;第1の電解質を提供するステップと;第1の電極が形成されるようにナノスケール物質を第1の電解質中で網状構造上に再分布させるステップとを含む。方法はさらに、第2の電極を提供するステップと;バッテリーが形成されるように第1及び第2の電極を第2に電解質中に設けるステップとを含み、局所バッファーを提供するステップがさらに、固体形態の酸化物、水酸化物、又は炭酸塩を提供するステップを含む。
【0013】
本明細書に組み込まれ且つ一部を構成する添付図面は、本発明の実施形態を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】活物質の担体(support)として使用される、ナノファイバー及び太いファイバーを有するバルク体積(bulk volume)の、概略図である。
【0015】
【
図2】電極を形成することができる、例示的な方法の概略図である。
【0016】
【
図3A】
図2の例示的な方法によって電極を形成するための、例示的な図である。
【
図3B】
図2の例示的な方法によって電極を形成するための、例示的な図である。
【
図3C】
図2の例示的な方法によって電極を形成するための、例示的な図である。
【
図3D】
図2の例示的な方法によって電極を形成するための、例示的な図である。
【
図3E】
図2の例示的な方法によって電極を形成するための、例示的な図である。
【
図3F】
図2の例示的な方法によって電極を形成するための、例示的な図である。
【0017】
【
図3G】
図2の例示的な方法からの電極を使用してバッテリーを形成するための、例示的な図である。
【0018】
【
図4】ナノファイバーの網状構造の、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)画像である。
【0019】
【
図5】ナノファイバー内に活物質を再分布させる前の、表面に活物質を含むナノファイバーのSEM画像である。
【0020】
【
図6】ナノファイバー内に活物質を再分布させた後の、表面に活物質を含むナノファイバーのSEM画像である。
【0021】
【
図7】
図2の例示的な方法のステップの、例示的なフローチャートである。
【0022】
【
図8A】活物質をナノファイバー中に再分布させた場合の、ナノファイバー及び活物質の例示的な図である。
【
図8B】活物質をナノファイバー中に再分布させた場合の、ナノファイバー及び活物質の例示的な図である。
【0023】
【
図9】活物質を再分布させる前及び後の、例示的なナノファイバー-ナノスケール活物質電極に関する充放電の結果の、例示的なグラフ表示である。
【0024】
【
図10】Ni化合物を含有する例示的なナノファイバー-ナノスケール電極に関する放電結果の、例示的なグラフ表示である。
【0025】
【
図11】Zn化合物を含有する例示的なナノファイバー-ナノスケール電極に関する放電結果の、例示的なグラフ表示である。
【0026】
【
図12】個別の電極(separate electrodes)として2回の充放電サイクル、個別の電極として9回の充放電サイクル、及びバッテリーセル(即ち、電極を組み合わせたもの)として18回の充放電サイクル後の、例示的なナノファイバー-ナノスケール電極に関する放電結果の、例示的なグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
下記の詳細な説明は、添付図面に言及する。異なる図面における同じ符号は、同じ又は類似の要素を特定することができる。また、下記の詳細な説明は、本発明の実施形態について述べており、本発明を限定するものではない。代わりに、本発明の範囲は、添付される特許請求の範囲及び均等物によって定義される。
【0028】
A.概説
【0029】
本明細書に記述されるように、高速充放電特性及び高電荷容量を有する高速フィブリルバッテリーは、従来のバッテリーよりも小さいスケールの担体及び活物質を使用することによって提供することができる。より小さいスケールの担体及び活物質を提供することによって、担体と活物質との間の電子輸送距離をより短くすることができ、したがって、より高い充放電速度が得られる。現在、グリッドなどの担体構造は、バッテリー用電極が形成されるよう活物質を保持するのに使用される。グリッドの表面は活物質の層でコーティングされ;層は、通常はより小さい粒子で作製される。グリッドからの電子は、通常はグリッドよりも導電性がかなり低い活物質の層内を移動して、活物質粒子と電解質との間の境界上にある、電気化学反応の実際の場所に到達する。活物質層の抵抗は、バッテリーの速度及び電力特性の制限因子である。活性層の抵抗を低減させるには、通常はこの層に、カーボンブラック、カーボンファイバー、及びナノファイバーなどの導電性材料と、他のタイプの導電性添加剤を添加する。
【0030】
活物質層の抵抗を低減させる別の方法は、活物質層の厚さを低減させることである。活物質層の厚さが所与のグリッド上で低減された場合、活物質の総量も低減されることになり、その結果、バッテリーの容量がより低くなる。厚さが低減された活物質層で同じ容量を維持するために、グリッドの表面積を、例えばナノスケールグリッドを使用することにより増大させてもよい。
【0031】
さらに現行のバッテリーは、高速(即ち、高速充放電特性)及び高容量のためにサイズ(即ち、より高い容量にはより大きいバッテリー)又は可燃性(即ち、より揮発性のあるバッテリーの化学的性質)を犠牲にする傾向がある。速度及び容量に対するトレードオフとしての、重量及び安全性の懸念により、ほとんどのバッテリー設計者は、受け入れ難い妥協につながる望ましくない決断をすることを強いられる(例えば、高速、高容量、軽量バッテリーでの爆発性若しくは可燃性、又はより低い速度、より低い容量、及び/若しくはより重い重量のバッテリーでの安全性)。
【0032】
本明細書では、バッテリーに高速、高容量、軽さ、及び安全性を提供することができる電極が提供される。これらの電極は、追加の重量及び/又は追加の安全性の懸念なしに速度及び容量を増大させるのに、集電体と併せてナノファイバー及びナノスケール活物質の性質を利用することができる。
【0033】
本明細書で使用される集電体という用語は、金属又は他の導電性材料(例えば、炭素)を含むことができ、構造がメッシュ、箔、板、グリッドなどとすることができる。さらに、集電体は電気的に負荷に接続される。集電体に関するさらなる情報は、例えば、参照によりその全体が組み込まれる「Handbook of Batteries and Fuel Cells」、David Linden編、McGraw Hill Inc.、1984に見出すことができる。
【0034】
増大した速度は、ナノファイバー及びナノスケール活物質を利用する高速フィブリルバッテリーを提供することによって、実現することができる。ナノスケール活物質と集電体(例えば、ナノスケール担体材料)との間で短い電気経路を可能にするために、ナノスケール活物質がナノファイバー上に位置付けられた電極を設けることによって、高速充放電特性を実現することができる。理論に拘泥するものではないが、導電性が不十分な活物質の厚さは、充電及び放電の両方の反応速度を制御すると考えられる。活物質の薄層を設けることによって(即ち、導電性ナノスケールファイバー上のナノスケール活物質)、この制約を制御することができ、電子が活物質中を移動しなければならない距離(したがって、この距離を移動する時間)を低減させることができる。高速フィブリルバッテリーは、薄膜バッテリーなどの他の高電力密度バッテリーよりも高い容量を有することもできるが、それはナノスケール導電性担体(即ち、ナノファイバー)が高多孔率であることにより、バッテリーのかなりの部分を活物質にすることが可能だからである。
【0035】
図1は、活物質用担体(support)として使用されるナノファイバー110及びより太いファイバー120を有する、バルク体積(bulk volume)を示す。
図1に示されるように、ナノファイバー110上の活物質の薄層は、同じバルク体積の、より太いファイバー120上の活物質の薄層よりも高い容量を提供する。
【0036】
バッテリーは、電解質中に電極を含む。電極は、アノード及びカソードを含む。放電中、アノード中の化合物又は「活物質」は、酸化反応を受けて1つ又は複数の電子を放出し、一方、カソード中の活物質は、還元反応を受けて自由電子とイオンとを結合させる。活物質のタイプは、2つの電極の化学的性質を持つ半電池電位に基づいて選択することができる。例えば電極は、可能な限り、互いに異なる電位に基づいて選択されてもよい(即ち、標準水素電極(SHE:standard hydrogen electrode)に対し、一方の電極は正電位を有していてもよく他方の電極は負電位を有していてもよい。)。例えばバッテリーは、0.5Vと3Vの間の電位差を有する2つの電極を収容していてもよい。アノード及びカソードは一緒に働いて、それらの化学反応を介して電気エネルギーを提供する。
【0037】
バッテリーの容量は、設計製作因子、例えば包装の重量、集電体及び膜の重量などと同様に、電極のエネルギー密度(即ち、各電極内の活物質が保持することのできるエネルギーの量)に依存し、バッテリーの速度又は電力密度は、エネルギー生成化学反応を実施できる速度(即ち、各電極内の活物質によって、電気エネルギーを提供することができる速度)に依存する。
【0038】
エネルギー密度は、活物質のタイプ及び活物質の量によって決定することができる。この理由のため、特定のタイプの活物質(即ち、化合物)は、特定の用途に対して優れている。例えばリチウムイオンバッテリーは、モバイルデバイス及びコンピューターなどの軽量高性能の用途に使用することができるが、それはこのバッテリーが、これら高性能の用途に望ましいエネルギー密度を有しているからである。鉛-酸(lead-acid)などの他のバッテリーは、より低いエネルギー密度を有し、したがって、そのより高い重量に起因して、軽量高性能の用途で電力供給するのに使用することはできない。一方、より低いコスト、高い信頼性、より低いエネルギー密度の要件の用途、例えば自動車用SLI(始動、点灯、点火(starting、lighting、ignition))バッテリーでは、より低いコスト及び許容される重量によって、鉛-酸バッテリーをリチウムイオンバッテリーよりも望ましいものにすることができる。
【0039】
バッテリーのエネルギー密度の増大は、所与の空間により多くの活物質を提供することによって実現することができる。1つの実現例では、ナノファイバー又は好ましくはナノファイバーの網状構造など、より小さい担体構造を使用することによって、少ない体積を担体に割り当てることができ、且つより多くの体積を活物質に割り当てることができる。同様に、導電性担体を使用して集電体を排除することにより、バッテリーのエネルギー密度を増大させることもできる。
【0040】
参照によりその全てが明らかに組み込まれている、米国特許第6,205,016号と、その分割特許である米国特許第6,491,789号、米国特許第6,031,711号、及び米国特許第6,099,960号に記載されているように、ナノファイバーは、電気化学キャパシター(EC:electrochemical capacitor)で使用することができる。ECは一般に、バッテリーよりも非常に低いエネルギー密度を有する。それらは、通常はイオン伝導性電解質により分離された多孔質電極の間の電場にエネルギーを貯蔵する。したがって電気化学キャパシターは、本質的に表面電荷としてのみエネルギーを貯蔵することができ、一方、それに対してバッテリーは、セル内の化学反応に対応したエネルギーと、反応物のモル当たりの一定数の電子の通過又はファラデーに関連した化学反応に基づく放電エネルギーとを貯蔵する。
【0041】
活物質のエネルギー密度の増大は、導電性担体網状構造全体に活物質を分布させることによって実現することもできる。1つの実現例では、活物質のエネルギー密度の増大は、導電性担体系を活物質でコーティングすることにより行うことができる。例えば
図2に示されるように、高速フィブリル電極は、一実施形態において、例示的な方法200によって提供することができる。
【0042】
B.電極を作製する方法
【0043】
図2は、電極を形成することができる例示的な方法200を示す。
図3A~3Fは、
図2の方法200によって電極を形成するための、例示的な図である。
図3Gは、
図2の方法200からの電極を使用してバッテリーを形成するための、例示的な図である。
【0044】
方法200は、ステップ210で、ナノファイバーを提供するステップを含むことができる。1つの実現例では、ナノファイバーを液体媒体で又は空気などの別の媒体で提供することができる。
【0045】
例えば
図3Aに示されるように、第1のナノファイバー310及び第2のナノファイバー315を、第1の容器320内に提供することができる。ナノファイバー310、315は、同じ又は異なるサイズ(即ち、直径、長さ/直径の比、凝塊サイズなど)のナノファイバーであってもよく、それぞれナノファイバー310及びナノファイバー315内で、又はナノファイバー310とナノファイバー315の間で、同じ又は異なるタイプの材料で形成されてもよい。例えばナノファイバー310及びナノファイバー315は、単層又は多層ナノチューブであってもよく、固体ナノスケールファイバー、フィッシュボーンナノスケールファイバーなどをさらに含んでいてもよい。一実施形態では、ナノファイバー315の1本又は複数のナノファイバーは、ナノファイバー310の1本若しくは複数のナノファイバーと比べて又は他のナノファイバー315の1本若しくは複数のナノファイバーと比べて、同じ又は異なるナノファイバー(及びマイクロファイバー及び/又はマクロファイバー)を含んでいてもよい。
【0046】
さらに、ナノファイバー310、315は、サイズ、形状、又は構造の変動ももたらし得る同じ又は異なるバッチで生成されてもよい。一実施形態では、ナノファイバー310及びナノファイバー315は、それぞれナノファイバー310及びナノファイバー315の各群の中で類似している。一実施形態では、ナノファイバー310及びナノファイバー315は、ナノファイバー310及びナノファイバー315の全体を通してサイズ及び形状が類似していてもよい。ナノファイバー310、315に関する様々な形状、サイズ、及び構造について、以下にさらに論じる。
【0047】
ナノファイバー310、315は、ナノファイバー310、315を自己組織化(即ち、凝集又は凝塊(aggregate or agglomerate))させることができ又は他のナノファイバー310、315から独立したままにする(即ち、ある間隔距離を維持する)ことができる、液体媒体325内に提供されてもよい。一実施形態では、液体媒体325は、水溶液又は電解質などの液体ビヒクルを含むことができる。例えば液体媒体325は、水であってもよい。ナノファイバーの網状構造化に関するさらなる考察は、その全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6099965号、米国特許第7,923,403号、及び米国特許出願公開第2008/0176052(A1)号に見出すことができる。
【0048】
図4は、ナノファイバーの網状構造の、走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図4に示されるように、ナノファイバー310、315は、1つ又は複数の凝集が形成されるように、網状構造化されても絡み合っていてもよい。ナノファイバー310、315のさらなる考察を、以下に示す。
【0049】
方法200は、ステップ220で、第1のナノファイバー310上に活物質を堆積させて、コーティング付きナノファイバーを形成するステップも含むことができる。活物質は、以下にさらに論じるように、電気化学的に活性なナノスケール固体物質など、以下にさらに論じるような、許容エネルギー密度及び電位をバッテリー電極に提供することが可能な任意の材料であってもよい。1つの実現例では、活物質の堆積は、第1のナノファイバー310を第2のナノファイバー315から分離して、第1のナノファイバー310(又は第2のナノファイバー315)のみが活物質の堆積に供されてコーティング付きナノファイバーを形成するようにし、一方、第2のナノファイバー315は、コーティングされていないナノファイバーのままであるようにすることによって、行ってもよい。活物質は、ステップ220でナノファイバーをコーティングするように、第1のナノファイバー310上に堆積させるが、ナノスケール物質などの他の材料を第1のナノファイバー310上に堆積させてもよい。例えば、局所バッファー又は他のナノスケール物質を、以下にさらに論じるように堆積させてもよい。
【0050】
例えば、
図3Bに示すように、第1のナノファイバー310を第2の容器340内に配置することができ、一方、第2のナノファイバー315は第3の容器350内に配置することができる。活物質330は、第2の容器340内で第1のナノファイバー310上に堆積させてもよく、一方、第3の容器350内のナノファイバー315は、活物質330を含まないままであってもよい。活物質330の堆積は、活物質330をナノファイバー310の表面に接着させる任意の方法によって行うことができる。例えば堆積は、化学的又は電気化学的堆積によって液相中で行うことができる。別の例として、堆積は、化学気相成長又は物理気相成長により気相中で行うことができる。1つの実現例では、活物質330は、Ni、Zn、Cd、Fe、Pb、Mn、Co、Ag、Al、又はMgなどの1種又は複数の化合物の、水酸化物、炭酸塩、フッ化物、硫酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩の1種又は複数など、電気化学的に活性なナノスケール固体物質を含んでいてもよい。
【0051】
別の実現例では、活物質の堆積は、局所バッファーの提供と一緒に行ってもよい。局所バッファーは、バッテリーの動作のために提供することができる、中性電解質のpH(即ち、「中性」は、本明細書で論じられる活物質330に関し、7から12.5の間、好ましくは9から11.5の間のpHである。)を緩和し得る添加剤を含むことができる。
【0052】
方法200は、活物質330でコーティングされた第1のナノファイバー310(ステップ210などから)と、まだコーティングされていない第2のナノファイバー315とを、ステップ230で組み合わせるステップも含むことができる。1つの実現例では、活物質330コーティングを有する第1のナノファイバー310及び第2のナノファイバー315は、それらを液体ビヒクル中で一緒に物理的に混合することによって組み合わせてもよい。例えばこれらのファイバーは、混合器、撹拌器、音波処理器、又は超音波処理器を使用するなど、任意の手段によって混合することができる。別の実現例では、これらのファイバーは、混合器、ブレンダー、又はミルなどの任意の手段によって乾燥状態で混合することができ、このミルは、ボールミル又はロッドミル、コロイドミル又はマイクロフルイダイザーなどが含まれるがこれらに限定されない任意の種類の高強度デバイスで、連続的に又はバッチ操作で活物質及びナノファイバーを一緒にミリングすることにより、これらのファイバーを混合することができる。
【0053】
例えば
図3Cに示されるように、第2の容器340からのコーティング330を有するナノファイバー310は、第3の容器350からのコーティングされていないナノファイバー315と組み合わせてもよい。
【0054】
一実施例では、
図3Dに示されるように、コーティング330を有する第1のナノファイバー310及び第2のナノファイバー315は、一緒に網状構造化されて、電気連絡領域(electrical communication area)360を有するナノファイバーの電気伝導性網状構造を形成することができる。活物質330を有する第1のナノファイバー310と第2のナノファイバー315とを組み合わせることによって、第1のナノファイバー310と第2のナノファイバー315との間の導電性を、電気連絡領域360内に提供することができる。理論に拘泥するものではないが、ナノファイバー315同士の電気接触は、活物質330によって妨げられないと考えられる。また、これらの複数の電気接触により、網状構造全体を導電性の高いものにすることができる。
【0055】
例えば、ナノファイバー内に活物質を再分布させる前の、表面に活物質を含むナノファイバーのSEM画像である
図5に示されるように、活物質330を有する第1のナノファイバー310(即ち、活物質330が表面に配置されているナノファイバー310)と第2のナノファイバー315(即ち、活物質330を持たないナノファイバー)との網状構造を提供することができる。
図5に示されるように、活物質330は、第1のナノファイバー310上に存在して、第2のナノファイバー315上には存在していなくてもよい。
【0056】
方法200は、ステップ240で、網状構造の全体にわたって活物質330を再分布させるステップを含むことができる。1つの実現例では、活物質330の再分布は、第2のナノファイバー310の表面の活物質330から第1のナノファイバー315の表面に活物質330を再結晶化することによって行うことができる。別の実現例では、活物質330の再分布は、充放電を介して行ってもよい。
【0057】
例えば
図3Eに示されるように、コーティング付きナノファイバー310からの活物質330は、活物質330を再分布させるため、まだコーティングされていないナノファイバー315の一部に再分布させることができる。有利には、1つの実現例では、コーティング付きナノファイバー310からの活物質330は、コーティング付きナノファイバー310の表面の被覆とまだコーティングされていないナノファイバー315の表面の被覆とを提供することができ、その結果、コーティング付きナノファイバー310及びまだコーティングされていないナノファイバー315に接触するようになり得る電解質が、下にあるナノファイバー310、315のいずれにも接触しないようになる。
【0058】
活物質330をナノファイバー310、315上に直接提供することにより、ナノファイバー310、315と活物質330との間の導電性経路は、その長さを低減させることができ、それにより、得られた電極を通した高い導電速度がもたらされる。
【0059】
1つの実現例では、ナノファイバー内に活物質を再分布させた後の、表面に活物質を含むナノファイバーのSEM画像である
図6に示されるように、コーティング付きナノファイバー310からのコーティングは、第1のコーティング付きナノファイバー310から、まだコーティングされていない第2のナノファイバー315まで、活物質330を分布させることにより、堆積物を有するナノファイバー310、315の広い面積を覆うように動くことができる。
【0060】
1つの実現例が
図7に示されているが、この図は、
図2の方法200のステップ240の例示的なフローチャートであり、
図8Aには、活物質330をナノファイバー310、315中に再分布させた場合の、ナノファイバー310、315及び活物質330が例示的に示される。
図7及び8Aでは、活物質330の再分布は、ステップ240のサブステップ710で、第1の(即ち、コーティング付き)ナノファイバー310及び第2の(即ち、コーティングされていない)ナノファイバー315を含むナノファイバー網状構造810に、電荷を提供することによって行うことができる。電荷を提供することにより、活物質330のいくらかは、放出された活物質820として第1のナノファイバー310から放出することができる。放出された活物質820は、コーティング付きの第1のナノファイバー310及びコーティングされていない第2のナノファイバー315中の領域に放出することができる。
【0061】
第1のナノファイバー310から第2のナノファイバー315に放出された活物質820の再分布は、サブステップ820で行うことができる。放出された活物質820は、第2のナノファイバー315の最も電気化学的に活性な領域、即ち第2のナノファイバー315のコーティングされていない表面であるべき領域上に、堆積することになると考えられる。第2のナノファイバー315のコーティングされていない領域は、放出された活物質820でコーティングされるが、新たにコーティングされた領域は、第2のナノファイバー315のコーティングされていない領域に比べてそれほど電気化学的に活性ではなく、放出された活物質820を引きつけないとも考えられる。最終的に、第2のナノファイバー315のコーティングされていない領域は、コーティングすることができるようになり、第1のナノファイバー310及び第2のナノファイバー315の電気化学活性は、放出された活物質820の再分布から、平衡に到達すべきである。
【0062】
或いは、第2のナノファイバー315上に堆積させるための、放出された活物質820として、コーティング付きの第1のナノファイバー310から活物質330を放出するのに、他のメカニズムを使用することができる。例えば、活物質330を有するコーティング付きナノファイバー310とコーティングされていないナノファイバー315との網状構造は、液体ビヒクル中で繰り返される加熱及び冷却サイクルに供することができる。活物質330は、加熱サイクル中に放出された活物質820として部分的に放出することができ、冷却サイクル中に異なる場所で再度堆積させることができる。
【0063】
次に、ナノファイバー310、315中に活物質330を再分布させた場合の、ナノファイバー310、315及び活物質330の例示的な図である
図8Bに示されるように、第1のナノファイバー310及び第2のナノファイバー315の凝塊又は凝集とすることができるナノファイバー網状構造810は、放出された活物質820に近づきやすくすることができる。コーティング付きナノファイバー網状構造830は、再分布を介してコーティング付きナノファイバー網状構造830が形成されるように、放出された活物質820をコーティングされていない第2のナノファイバー315(及びコーティング付きの第1のナノファイバー310)に付着させることによって、形成されてもよい。1つの実現例では、様々な再分布メカニズムを介した活物質330の数回の再分布を行い、放出された活物質820で、まだコーティングされていない第2のナノファイバー315をコーティングさせてもよい。再分布メカニズムの一例は、再結晶化であってもよい。
【0064】
コーティング付きナノファイバー網状構造830を形成するために活物質330を再分布させることにより、第2のナノファイバー315同士の電気連絡を、コーティング付きナノファイバー網状構造830内に確立することができる。これは、第2のナノファイバー315同士の電気連絡が保存されるように、第2のナノファイバー315がコーティングされる前に行うことができる。電気連絡を保存することにより、第2のナノファイバー315同士の導電性が活物質330によって妨げられず、コーティング付きナノファイバー網状構造830の全体にわたる活物質330の被覆を最適化することができる。
【0065】
理論に拘泥するものではないが、網状構造化前に第1のナノファイバー310及び第2のナノファイバー315をコーティングすると、活物質330によってナノファイバー310、315の間の接合を絶縁させる可能性があり、ナノファイバーが互いに電気連絡するのを妨げる可能性があると考えられる。したがって網状構造の形成ステップは、好ましくはコーティングの前に又はコーティングステップの少なくとも終了前(例えば、再分布が終了する前)である。
【0066】
図9は、活物質330を再分布させる前及び後の、例示的なナノファイバー-ナノスケール活物質電極に関する充放電の結果の、例示的なグラフ表示である。
図9に示されるように、分割され、コーティングされ、網状構造化され、再分布させたナノファイバーは、網状構造形化前にコーティングされたナノファイバーに比べて優れた充放電特性を示す。
図9では、2つの類似サンプル、ナノファイバーがZnCO
3でコーティングされた第1のサンプル、ナノファイバーの2/3がZnCO
3でコーティングされ、1/3がコーティングされていないナノファイバーと混合された第2のサンプルが示される。両方のサンプルを、2Cレート(バッテリーが1/2時間で充放電されると予想される電流)で充放電させた。
図9は、ZnO電解質で飽和させた30%K
2CO
3中でのサイクルを示す。充電曲線は、第1のサンプルではノイズが多いことがわかり、電気接触が不十分であることを示している。一方、第2のサンプルは滑らかである。この結果は、第2のサンプルの放電曲線でのより高い電位に加え、第2のサンプルがより高い電気接触(より低い内部抵抗)を有することを示すように見える。
【0067】
方法200は、ステップ250で、コーティング付きナノファイバー網状構造830から電極を形成するステップを含むことができる。1つの実現例では、コーティング付きナノファイバー網状構造830を電解質で濡らすことができる。次に、濡れたコーティング付きナノファイバー網状構造830をペーストに作製することができ、このペーストを電極に形成することができる。例えば、ペーストを、導電性フィルム、集電体板などの集電体上に押圧してもよい。別の実現例では、コーティング付きナノファイバー網状構造830は、それ自体の集電体とすることができる。
【0068】
さらに
図3Fに示されるように、コーティング付きナノファイバー網状構造830(又は他のコーティング付きナノファイバー網状構造)のペーストを、集電体板370上に提供することができ、リード380を取り付けて電極390を形成することができる。1つの実現例では、コーティング付きナノファイバー網状構造830を、ステップ240で、第1のナノファイバー310及び第2のナノファイバー315を網状構造化するのに使用される電解質と同じ又は異なる電解質で濡らしてもよい。さらにステップ240及びステップ250は、ステップ250で電極を形成し、次いでステップ240で活物質を再分布させ;ステップ240で活物質を再分布させ、次いでステップ250で電極を形成し;ステップ240及び250で電極を形成し活物質を再分布させることを同時に行うなど、任意の順序で行ってもよく、又は追加の介入ステップを含んでもよい。第1及び第2の電解質、又は単一の電解質を、ステップ240及び250で使用してもよい。
【0069】
方法200は、追加の電極を設けるためにステップ210から250までを繰り返すことを含むことができる。1つの実現例では、ステップ210から250までを行ってアノードを形成することができ、次いで異なる活物質を使用して、これらのステップを繰り返すことによりカソードを形成することができる。
【0070】
図3Gは、
図2の方法200からの電極を使用してバッテリーを形成するための、例示的な図である。例えば、
図3Gに示されるように、リード380を有する2つの電極390を、電解質395を有する容器385内に配置して、バッテリーを形成することができる。
【0071】
C.電解質の選択
【0072】
バッテリーの充電/放電速度を増大させる1つの方法は、高速電解質を利用することである。水性電解質は、安全且つ高速とすることができるが、約1ボルトで水が分解する場合には限られた有用性しかない可能性がある。非水性電解質は、より高い電圧に耐えることができるが、通常は、水性電解質よりも導電性が低く(即ち、より遅い)、それと共に可燃性及び爆発性などの安全性に関する問題がある。一実施形態では、電解質は、水性のイオン伝導性電解質を含んでいてもよい。
【0073】
電解質は、選択される電極との適合性に基づいて、選択することができる。多くのバッテリーの化学的性質、特に金属アノードに関するものもまた、電解質への活物質の溶解が遅くなり且つ/又は望ましくない副反応により自己放電が遅くなる。これらを軽減する方法は公知であるが、問題の程度は、活物質の表面積に基本的には比例する。ナノファイバー電極はほとんどのバッテリー電極よりも非常に高い表面積を有するので、多くの公知の方法は、ナノファイバーをベースにした電極に実用的ではないことがわかる。例えば、添加剤、緩和剤などの量は、溶解度を超える可能性があり、又は別の理由により使用するのが実現不可能になる可能性がある。
【0074】
1つの実現例では、電解質は、炭酸塩、水酸化物、リン酸塩、フッ化物、及び/又は硫酸塩を含有していてもよい。例えば、KOH、NaOH、K2CO3、K2SO4、KF、NaF、Na2CO3、K3PO4、及び/又はH2SO4が、本明細書の電解質に含有されていてもよい。
【0075】
1つの実現例では、pH調節-さらにほとんど中性の電解質を使用して-は、溶液を提供してもよい。本明細書で使用される「中性」電解質は、pHレベルが7から12.5の間である電解質を含むことができる。例えば、9から11.5までのバルク(即ち全体)pHレベルを有する電解質は、本明細書で論じられる電極の化学的性質及び電解質と組み合わせて、望ましくない副反応を軽減するのに好ましい。
【0076】
1つの実現例では、局所バッファーを電極に添加して、局所型pH調節を行ってもよい。局所バッファーを提供することにより、活物質の低速溶解などのアノードに関する問題を引き起こす可能性のある苛性電解質(即ち、pHレベルが14よりも高い電解質)を回避することができ;苛性電解質を有する電極と同様な電気化学的な結果が、局所バッファーを有する、中性により近い電解質を使用することにより、達成することができる。局所バッファーを加えることにより、電極-電解質系内の局在領域に、11よりも高い局在化pHを持たせることができ、それにより、中性電解質電極から苛性電解質電極に類似した結果を有する。
【0077】
局所バッファーは、固体のナノスケール形態で提供されてもよい。局所バッファーを固体形態で提供することにより、固体局所バッファーは、電解質中の局所バッファーのバルク溶解度を超える量で、系の局在領域に提供することができる。さらに、局所バッファーは、より大きい粒子よりもさらに容易に、ナノスケールコーティング付き網状構造全体にわたって分布され得るナノスケール粒子の形で提供されてもよく、それにより局所バッファーを、電解質に溶解することなく、pH調節の反応に容易に利用可能にすることができる。好ましくは、局所バッファーを提供することによって、イオンは、全体としてより低いpHのバルクで局所pHが上昇するように、局所領域で水酸化物イオンを提供するのに利用可能になり得る。1つの実現例では、固体形態の酸化物、水酸化物、又は炭酸塩を、局所バッファーとして提供することができる。一例の局所バッファーはMg(OH)2であり、これはある特定の電解質によって溶解されることなく水酸化物イオンを容易に提供することができる。別の例の局所バッファーはCa(OH)2であり、これも、ある特定の電解質によって溶解されることなく水酸化物イオンを容易に提供することができる。
【0078】
局所バッファーは、ナノファイバー上に活物質を堆積させる前、後、又は最中に、局所バッファー固体添加剤をナノファイバー上に堆積させることによって提供されてもよい。例えば、局所バッファーは、ナノファイバーの表面、活物質の表面に堆積させることができ、又は活物質と共に堆積させることができる。
【0079】
1つの実現例では、バルクpHが約11の中性電解質において、網状構造が形成されるようにステップ230で、局所バッファーを:(1)コーティング付きの第1のナノファイバー310(活物質330を堆積させる前又は後);(2)第2のナノファイバー315;(3)コーティング付きの第1のナノファイバー310及び第2のナノファイバー315の両方;並びに/又は(4)第1のナノファイバー310及び第2のナノファイバー315を有する系に、添加してもよく又はこれらの上に堆積させてもよい。
【0080】
水性電解質には、上記の通り、気体の発生を引き起こす望ましくない副反応がある。導電性担体網状構造の露出した表面は、所望の半電池反応を引き起こすのに必要な電圧と大体同じ電圧で、水からの水素の発生又は酸素の発生を触媒する可能性がある。したがって、導電性担体網状構造の表面は、気体の発生が低減するように且つ充放電効率が増大するように活物質で覆うことによって、望ましくは電気化学的に絶縁されてもよい。
【0081】
追加の活物質の堆積によって、気体の発生を低減し又は防止するように、導電性担体網状構造の被覆を実現することができないことがある。本明細書の一実施形態では、活物質330は、好ましくは電解質からコーティング付きナノファイバー網状構造830として網状構造化されるときに、活物質330が電気化学的に第1のナノファイバー310と第2のナノファイバー315とを隔離するように提供されてもよい。より多くの活物質330を堆積させることは、完全な被覆を実現することができないと考えられる。溶液からの結晶化又は堆積は、ナノファイバー310、315に残された剥き出しの表面の被覆を改善するのではなく、既にそこにある活物質330上に、活物質330を優先的に堆積させると考えられる。同じ材料上での結晶形成のエネルギーは、通常、異なる材料上での核形成よりも低く、それにより、既に堆積させた活物質330は、追加の材料330のさらなる堆積に関してより好ましい物質として働くことができる。
【0082】
D.ナノファイバーの選択
【0083】
活物質は一般に機械的支持体をあまり提供しないので、もしある場合には、ナノファイバーの網状構造の形をとるナノファイバーを、電極の活物質の機械的支持体(mechanical support)のために提供することができる。活物質に支持体を提供することに加え、ナノファイバーの網状構造もまた、電気を電極から外部負荷に電気を通すために(即ち、電子に経路を提供するために)使用することができる。ナノファイバーの網状構造は、ランダムな相互貫入網状構造(random interpenetrating network)内にナノファイバーを凝集させることによって形成することができ、このランダムな相互貫入網状構造によって担持される活物質に近づくように電子に経路を提供することができる。
【0084】
さらに、充電及び放電の両方においてバッテリーを高速にするために、活物質をナノファイバーに極めて接近させて(即ち、接触させて)提供することはできない。活物質を担持するナノファイバーの網状構造を提供することにより、活物質とナノファイバーの網状構造内のナノファイバーとの間の距離をゼロに近づけることができ、活物質とナノファイバーの間に電子を容易に流すことができる。
【0085】
「ナノチューブ」、「フィブリル」、及び「カーボンナノチューブ」という用語は、単層(single wall)(即ち、ナノチューブ軸に平行な単一のグラフェン層のみ)若しくは多層(multi-wall)(即ち、ナノチューブ軸に大体平行な複数のグラフェン層)カーボンナノチューブ、又は他のナノスケールサイズのファイバーを指すのに、同義で使用される。それぞれは、例えば多層ナノチューブの場合には1ミクロン未満、0.5ミクロン未満、0.2ミクロン未満、100nm未満、50nm未満、20nm未満;又は例えば単層ナノチューブの場合には5ナノメートル未満の、断面(例えば、縁部を有する角化ファイバー(angular fibers))又は直径(例えば、丸みのついた)を有する細長い構造を指す。他のタイプのカーボンナノチューブも公知であり、例えばフィッシュボーンフィブリル(例えば、グラフェンシートが、ナノチューブ軸に対してヘリンボーンパターン(herringbone pattern)内に配置される。)、「バッキーチューブ」などがある。生成されたとき、カーボンナノチューブは、個別のナノチューブ、ナノチューブの凝集体(即ち、絡み合ったカーボンナノチューブを含む、稠密な微視的粒状構造)、又は両方の混合物の形をとってもよい。これらの配座及び構造のそれぞれは、本明細書で論じられるように「ナノファイバー」として使用されてもよいが、それは活物質を担持するためにそれぞれが電気伝導性の網状構造を形成可能な構造を提供すると考えられるからである。
【0086】
「ナノファイバー」という用語はより広く、ナノチューブ及び他のナノサイズのファイバーであって中空でなくてもよく又はグラフェンシートの定められた向きが不十分なものであってもよく、又は熱分解性炭素の外層で覆われてもよいものを包含する。ナノファイバーに関するさらなる考察は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第5,800,706号及び/又は米国特許第6,099,960号に見出すことができる。
【0087】
ナノファイバーは、様々な形で存在し、金属表面での様々な炭素含有気体の触媒分解を通して調製されてきた。これらには、参照によりその全体が共に本明細書に組み込まれるTennentらの米国特許第6,099,965号及びMoyらの米国特許第5,569,635号に記載されたものが含まれる。
【0088】
一実施形態では、ナノファイバーは、、炭化水素又はCOなどの他のガス状炭素化合物から、担持された又は浮動性の触媒粒子を介して、触媒成長によって作製される。
【0089】
ナノファイバーは、絡み合ったカーボンナノチューブの稠密な微視的粒状構造であってもよく且つバードネスト(「BN:bird nest」)、綿あめ(「CC:cotton candy」)、コーマ糸(「CY:combed yarn」)、又はオープンネット(「ON:open net」)の形態に似ていてもよい、カーボンナノチューブの凝集体として形成されてもよい。ナノファイバーは、平らな担体上で成長させてもよく、このナノファイバーは一端が担体に付着し且つ互いに平行で、「フォレスト」構造を形成する。凝集体はカーボンナノチューブの生成中に形成され、凝集体の形態は、触媒担体の選択により影響を受ける。完全にランダムな内部テクスチャーを有する多孔質担体、例えばヒュームドシリカ又はヒュームドアルミナは、全方向にナノチューブを成長させ、その結果、バードネスト凝集体を形成する。コーマ糸及びオープンネット凝集体は、1つ又は複数の容易に切断可能な平面を有する担体を使用して調製され、例えば鉄又は鉄含有金属触媒粒子は、1つ又は複数の容易に切断可能な表面を有する担体材料上に堆積させ、表面積はグラム当たり少なくとも1平方メートルである。
【0090】
凝集体内の個々のカーボンナノチューブは、特定の方向に配向してもよく(例えば、「CC」、「CY」、及び「ON」凝集体のように)、又は配向していなくてもよい(即ち、異なる方向にランダムに配向し、例えば、「BN」凝集体のように)。カーボンナノチューブの「凝塊」(agglomerates)は、カーボンナノチューブ「凝集体」(aggregates)から構成される。カーボンナノチューブ「凝集体」は、その構造をカーボンナノチューブ「凝塊」で保持する。したがって、例えば「BN」凝塊は、「BN」凝集体を含有していてもよい。
【0091】
「BN」構造は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,456,897号に開示されるように、調製されてもよい。「BN」凝塊は、0.1g/cc超の典型的な密度、例えば0.12g/ccで、緊密充填される。透過型電子顕微鏡法(「TEM」)は、「BN」凝塊として形成されたカーボンナノチューブに関して真の配向がないことを明らかにする。「BN」凝塊を生成するのに使用されるプロセス及び触媒について記述する特許には、参照によりその全体が共に本明細書に組み込まれる米国特許第5,707,916号及び第5,500,200号が含まれる。
【0092】
一方、「CC」、「ON」、及び「CY」凝塊は、より低い密度、典型的には0.1g/cc未満、例えば0.08g/ccを有し、それらのTEMは、ナノチューブの好ましい配向を明らかにする。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,456,897号は、平面担体上に担持された触媒からの、これら配向した凝塊の生成について記述する。「CY」は、総じて、個々のカーボンナノチューブが配向している凝集体を指してもよく、「CC」凝集体は、「CY」凝集体からの、より特異的な低密度の形態である。
【0093】
カーボンナノチューブは、市販の連続カーボンファイバーと区別可能である。例えば、常に1.0ミクロン超であり典型的には5から7ミクロンである連続カーボンファイバーの直径もまた、通常1.0ミクロン未満のカーボンナノチューブの直径よりもはるかに大きい。カーボンナノチューブは、カーボンファイバーよりも非常に優れた強度及び導電性も有する。
【0094】
カーボンナノチューブは、標準的な黒鉛及びカーボンブラックなどの他の炭素形態とは物理的及び化学的にも異なる。標準的な黒鉛は、定義によれば平らである。カーボンブラックは、sp2及びsp3結合の両方の存在によって一般に特徴付けられる、不規則な形状の非晶質構造である。一方、カーボンナノチューブは、ナノチューブの円柱軸に対して実質的に同心円上に配置された、規則的な黒鉛炭素原子の1つ又は複数の層を有する。とりわけこれらの相違は、黒鉛及びカーボンブラックを、カーボンナノチューブの化学的性質の不十分な予測因子(poor predictors)にする。
【0095】
本明細書で使用される「多層ナノチューブ」は、例えばTennentらの米国特許第5,171,560号に記載されるものなど、実質的に直径が一定である実質的に円柱状の黒鉛状ナノチューブであり且つそのc軸が円柱軸に実質的に直交する円柱状の黒鉛状シート又は層を含む、カーボンナノチューブを指す。「多層ナノチューブ」という用語は、「多層ナノチューブ(multi-wall nanotube)」、「多層化ナノチューブ(multi-walled nanotube)」、「多層ナノチューブ(multiwall nanotube)」などを含むがこれらに限定されない前記用語の全ての変形例と同義であることを意味する。
【0096】
本明細書で使用される「単層ナノチューブ」は、例えばMoyらの米国特許第6,221,330号に記載されるものなど、実質的に直径が一定である実質的に円柱状の黒鉛状ナノチューブであり且つそのc軸が円柱軸に実質的に直交する単一の円柱状の黒鉛状シート又は層を含む、カーボンナノチューブを指す。「単層ナノチューブ」という用語は、「単層ナノチューブ(single-wall nanotube)」、「単層化ナノチューブ(single-walled nanotube)」、「単層ナノチューブ(single wall nanotube)」などを含むがこれらに限定されない前記用語の全ての変形例と同義であることを意味する。
【0097】
多層カーボンナノチューブは、容易に官能化され得ることが理解される。ナノチューブを官能化する方法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,203,814号、米国特許第7,413,723号、及び米国特許第6,872,681号で論じられる。そのような官能化多層カーボンナノチューブは、作製されたままの非官能化多層カーボンナノチューブよりも容易に、水性媒体中に分散することができる。
【0098】
一般に、官能的に修飾されたナノチューブは、水性電解質と官能的に修飾されたナノチューブとの副反応を悪化させる可能性がある。しかし、表面上の官能基は、ナノファイバーに活物質330をより良好に接着するのに有益となり得る。1つの実現例では、コーティング付きナノファイバー網状構造830上に活物質を再分布させるステップは、官能基によって助けられてもよい。再分布後、ナノファイバーは、電解質ともはや直接接触しなくなり(ナノファイバーがコーティングされることになるので);したがって副反応を最小限に抑えることができる。ナノファイバー網状構造の導電性は、ナノファイバーの固有の導電性だけでなく網状構造内のファイバーの平均長さ及び空間密度にも依存する。網状構造の抵抗は、交点でのファイバー間抵抗から主に誘導されることが考えられる。
【0099】
E.活物質の選択
【0100】
「活物質」及び「電気活性剤」という用語は、バッテリーで電気エネルギーへの変換のための化学エネルギーを提供する化合物を指すのに、同義で使用される。活物質は、電子の放出又は受容に関与することができる物質であってもよいという点で、電気化学的活物質であってもよい。活物質は、ナノスケールレベルで提供されてもよい。一実施形態では、活物質は、電気化学的活物質のナノスケールサイズの粒子など、電気化学的に活性なナノスケール固体物質であってもよい。
【0101】
バッテリー用の活物質の選択は、エネルギー密度及び電力密度以外の因子に依存する。これらの因子には:コスト、安全性、寿命、信頼性、温度安定性、故障モードなどが含まれるが、これらに限定するものではない。本明細書で提供される実施形態では、任意のバッテリーシステム又は個々の電極の電力密度を改善することができる電極が提供される。しかし、可逆的であることが公知である電極の化学的性質が好ましい。これらには、NiOOH/Ni(OH)2;Zn/ZnOH;Cd/Cd(OH)2;Fe/Fe(OH)2;Pb/Pb(OH)2;Pb/PbSO4;MnO2/Mn2O3;PbO2/PbSO4;Co/Co(OH)2;Ag/AgO;Al/Al2O3;Mg/Mg(OH)2、金属/金属水和物などが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0102】
一実施形態では、活物質は、溶液から、ナノスケールサイズの形態の活物質を堆積させることによって提供されてもよい。一実施形態では、活物質は、ナノファイバー上への堆積後、ナノスケールの固体材料であってもよい。
【0103】
さらに活物質は、適用により、本明細書に記述されるように電極内で電解質からの絶縁をもたらしてもよい。一実施形態では、活物質は、電極内のナノファイバーと電解質との間の相互作用を低減させ又は妨げてもよい。例えば、本明細書に提供される方法を利用することによって、ナノファイバーと電解質との間の副反応を、ナノファイバーを電解質から絶縁する活物質の存在によって低減させることができる。
【0104】
水性電解質は、本明細書に記述されるバッテリーのエネルギー密度をより良好に活用できるので、水性電解質に適合性ある系も好ましい。
【0105】
F.電極の形成
【0106】
本明細書の実施形態では、電極は、2次元シート又はマットの形で作製し又は提供することができる。2次元シートが提供される場合、シートは、集電体と共にデバイスに組み立ててもよい。例えば集電体は、電極に平行に且つ密接に接触して位置合わせされた箔又は導電層の形で提供することができる。電極のスルーシート導電性は、バッテリーの電力密度を制限しないように十分高くなければならない。
【0107】
3次元マットが提供される場合、マットは、所望の厚さを有していてもよい。電極の性能は活物質の厚さと共に変化してもよいが、そのような変動は、種々の活物質に基づいて生じてもよい。
【0108】
一実施形態では、コーティング付きナノチューブ網状構造電極は、それ自体の集電体として機能することができる。この場合、コーティング付きナノチューブ網状構造電極は、その縁部を通して外部負荷に(又はスタック内の他のセルに)接続することができ、その結果、電極平面の方向での導電性(x-y導電性)がセル抵抗に極めて重要なものになる。このセル抵抗は、200ohms-cmより少なくてもよく、より好ましくは100ohms-cm未満、さらにより好ましくは50ohms-cm未満でもよい。
【0109】
G.実施形態
【0110】
一実施形態では、ナノファイバー-MnO2電極をナノファイバー-Zn電極と対にして、バッテリー内に1対の高速フィブリル(ナノファイバー)電極を提供することができる。他の実施形態では、ナノファイバーと、Zn、Co、Cd、Fe、及び/又はPbの化合物とを含む電極を、ナノファイバーと、Niの化合物とを含む電極と対にして、高速フィブリル電極を提供することができる。
【0111】
一実施形態では、ナノファイバー電極は、より多くの活物質を電極内に存在させるため、ナノファイバーよりも多くの活物質を含有していてもよい。例えばナノファイバー電極は、50重量%未満のナノファイバーを含有していてもよい。別の実施例では、ナノファイバー電極は、25重量%未満のナノファイバーを含有していてもよく、これは75重量%超の活物質を含んでいてもよい。
【0112】
一実施形態では、ナノファイバー電極は、沈殿することなく充放電を終了させるのに十分な電解質が得られる、多孔率レベルを有することができる。例えばナノファイバー電極は、気孔率が50から90体積%の網状構造を含有していてもよく、これは沈殿することなく充放電を終了させるのに十分なレベルの電解質を得ることができる。別の実施例として、ナノファイバー電極は、多孔率により活物質に充てることができる電極体積が減少するので、活性成分に充てられる電極体積が増大するように、気孔率が50から80体積%の網状構造を含有していてもよい。
【0113】
一実施形態では、活物質330及び電解質は、ナノファイバー電極と組み合わせた状態で、充放電効率を90%よりも高くすることができるように選択されてもよい。別の実施形態では、活物質330及び電解質は、ナノファイバー電極と組み合わせた状態で、充放電効率を95%よりも高くすることができるように選択されてもよい。例えば、Zn活物質330及びK2CO3電解質を含む電極は、90%超の充放電効率を提供することができる(以下にさらに説明するように)。
【0114】
本明細書の実施形態は、好ましい電極の電気化学的態様について記述していることを理解すべきである。他の成分を、物理的又は電気的性質が変化するように電極用のペースト又はマットに添加してもよい。結合剤と、導電性、サイクル寿命、熱安定性、電荷保持、シェルフライフ、構造的完全性、又は他のパラメーターを改善する添加剤を、用いてもよい。一般に、添加剤の量は、電極のエネルギー又は電力密度を実質的に変化させないよう十分に、少ないものであるべきである。例えば添加剤は、好ましくは、電極の20重量%未満、より好ましくは電極の10重量%未満、さらにより好ましくは電極の5重量%未満で添加されてもよい。添加剤の例は、参照によりその全体が共に組み込まれる米国特許第6,790,559号(例えば、Ni電極への添加剤:活物質利用の場合はフッ化物塩0.1~1%)及び米国特許第6,811,926号(例えば、Zn電極への添加剤:無機ファイバー(アルミナ及びシリカ、2~15%)及び酸化ビスマス(2~10%)、サイクル寿命に関して)に見出すことができる。
【0115】
一実施形態では、エネルギー貯蔵デバイスで非対称電極を使用してもよい。例えば、本明細書で提供されるナノファイバー電極は、既存のバッテリーを修正するために従来の電極と組み合わせてもよい。別の例として、本明細書で提供されるナノファイバー電極は、電気化学キャパシター(即ち、スーパーキャパシター)電極と組み合わせて、既存のスーパーキャパシターを修正してもよい。
【実施例】
【0116】
H.実施例
【0117】
(例1)
電極を作製する方法
【0118】
最初に、活物質330を網状構造形成ステップに導入することができる。この導入は、陰イオンが、活物質330の陽イオンと、例えば難溶性塩NiCO3又はZnCO3のみを形成する、水性電解質中で、ナノファイバーのごく一部への従来の「粗い」堆積によって行ってもよい。難溶性塩は、1g/100g未満であるがゼロよりは大きい溶解度を有する任意の塩であってもよい。一実施形態では、難溶性塩は、ゼロよりも大きく0.1g/100g未満の溶解度を有していてもよい。例えば難溶性塩には、水酸化物、炭酸塩、フッ化物、硫酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩を含めてもよいが、これらに限定するものではない。
【0119】
難溶性塩は、コーティングの任意の再分布をアシストする中間体として提供されてもよい。難溶性塩をナノファイバーの一部の上に前もって堆積させた場合、網状構造形成ステップは、「粗くコーティングされた」及び「プレーンな」(コーティングされていない/堆積させていない)ナノファイバーの両方を含むことができる。
【0120】
上述の方法200を使用して、第1のナノファイバー310、好ましくは非酸化ナノファイバーを、例えばNi(NO3)2又はZnSO4などの易溶性塩を含んでいてもよい液体ビヒクル中に得ることができる。非酸化又は酸化ファイバーを使用してもよい。非酸化及び酸化ファイバーのさらなる考察は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第7,413,723号に見出すことができる。
【0121】
本明細書で使用される易溶性塩は、所望の化学的性質を持つ難溶性化合物を形成することができる任意の可溶性化合物であってもよい。塩化物、硝酸塩、炭酸水素塩、一部の硫酸塩、及びその他の可溶性塩を、方法200の活物質堆積ステップ220で使用してもよい。次に、K2CO3又はKOHなどの反応物を、可溶性塩を含む液体ビヒクルに添加することができ、反応物を可溶性塩と組み合わせて、コーティング付きナノファイバー310上に、対応する難溶性塩を堆積させることができる。この難溶性塩は、上記にて論じたように、方法200のステップ240後、活物質330になることができる。
【0122】
次に、繰り返し充放電を、適切な電解質中にあるコーティング付きナノファイバー310とコーティングされていないナノファイバー315との網状構造に適用して、ナノファイバー310、315の全てを覆うように活物質330を再分布させることにより、コーティング付きナノファイバー網状構造830を形成してもよい。
【0123】
任意選択で「局所バッファー」を、コーティング付きナノファイバー310、コーティングされていないナノファイバー315、又は両方に提供することができる。1つの実現例では、局所バッファーは、難溶性塩(活物質330になる。)と一緒に堆積させることができ、又は難溶性塩を堆積させる前若しくは後に堆積させることができる。
【0124】
1つの実現例では、局所バッファーは、酸化物、水酸化物、又は炭酸塩を含んでいてもよい。例えば、局所バッファーは、Mg又はCaの酸化物、水酸化物、又は炭酸塩を含んでいてもよい。別の例として、局所バッファーは、Mg(OH)2又はCa(OH)2を含んでいてもよい。一実施形態では、局所バッファーはMg(OH)2であってもよく、2つの電極用の活物質は、それぞれNi(OH)2及びZn(OH)2であってもよい。
【0125】
活物質330と局所バッファーとを同時に堆積させることによって、充電回復率%で測定することができる電極性能を、改善することができる。1つの実現例では、局所バッファーは、ナノファイバー310上に活物質330と同時に堆積させてもよく、活物質330の後にナノファイバー310上に堆積させてもよく、ナノファイバー315上に堆積させてもよく、又はコーティング付きナノファイバー310及びナノファイバー315の両方の上に堆積させてもよい。1つの実現例では、局所バッファーは、活物質330の量に対して化学的に均等な20%から100%の量で添加されてもよい。
【0126】
理論に拘泥するものではないが、Mg(OH)2などの局所バッファーは、コーティングされていないナノファイバーの網状構造内に、局所的に増大するpHを生成してもよく、これは結果としてNi(OH)2酸化又はZn(OH)2還元などの半電池反応の性能を改善することができる。Zn側では、高いpHが、水素発生よりもZn還元を助け、一方、Ni側では、局所的に高いpHによって、代わりに使用することができる濃縮された苛性電解質よりも中性の電解質中で、充電プロセスを作用させることが可能になる。
【0127】
さらに、電極の調製に、セル使用のためとは異なる電解質を使用してもよい。一実施形態では、KOHなどの濃縮された苛性電解質(即ち、pHが14よりも大きい。)を、電極の調製に使用することができ、K2CO3などの異なる、より中性の電解質(即ち、pHが7から12の間)を、セル使用のために使用することができる。1つの実現例では、電極組立て用の電解質は、中間体の塩の溶解度に基づいて選択することができ、一方、セル使用のための別の電解質は、活物質の安定性に基づいて選択することができる。例えばNi(OH)2電極は、KOH電極調製電解質溶液から除去され、セル使用のための炭酸塩電解質に移されてもよい。別の実施形態では、K2SO4などの中性電解質を、PbSO4電極の調製に使用してもよく、H2SO4などの異なる電解質を、セル使用のために使用してもよい。
【0128】
(例2)
バッテリーを作製する方法
【0129】
一実施形態では、炭酸塩電解質を含むNi-Znバッテリーが提供される。
【0130】
ナノファイバー及び活物質のNi電極材料は、下記の通り調製した:
a. CC形態ナノファイバー30mgを、Triton X-100(商標)界面活性剤2滴を含む100mlの脱イオン(DI:deionized)水中で、超音波処理した。
b. 懸濁液の1/3を別に取っておいた。
c. 3mM Ni(NO3)2・6H2O及び1.5mM MgCl2を、懸濁液の2/3に溶解した。
d. 4.5mM K2CO3を10mlのDI水に溶解し、懸濁液に1滴ずつ添加して、NiCO3及びMgCO3を沈殿させた。
e. 混合物を沸騰させ、次いで冷却して、MgCO3の沈殿を容易にした。
f. コーティングされていないナノファイバーを含有する、別に取っておいた懸濁液の1/3を、懸濁液の2/3(即ち、NiCO3及びMgCO3沈殿物を含有する懸濁液)に添加し、撹拌し、次いでナイロン膜上に濾過した。
g. 濾過から除かれた、残存する材料を、120℃で乾燥した。
h. 材料は、401mgの重量増加を示し、これは約126mgのMgCO3(1.5mM)及び約275mgのNiCO3(2.3mM)と推定される。
【0131】
Zn電極材料は、下記の通り調製した:
a. 20mgのCCフィブリルを、Triton X-100(商標)界面活性剤2滴を含む100mlのDI水中で、超音波処理した。
b. 懸濁液の1/3を、別に取っておいた。
c. 1.5mM ZnSO4を、懸濁液の2/3に添加し、1.5mM K2CO3(10mlのDI水に溶解した。)で1滴ずつ沈殿させた。
d. 1.5mM MgCl2を懸濁液に添加し、3mM KOH(10mlのDI水に溶解した。)で1滴ずつ沈殿させた。
e. フィブリルの残りの1/3を添加し、十分に撹拌し、ナイロン膜上に濾過した。
f. 材料を120℃で乾燥した。
g. 材料は、225mgの重量増加を示し、これは約87mgのMg(OH)2(1.5mM)及び約138mgのZnCO3(1.1mM)と推定される。
【0132】
Ni電極は、下記の通り調製した:
a. ニッケル材料(40mg→0.21mM Ni、Cレート=5.7mA)を、30%KOHで濡らし、粉砕してペーストにした。
b. ペーストを、集電体として導電性フィルムを有する(ニッケル板により支持されている。)単極セル内に配置した。
c. 電極を、対電極としてPt板を有する状態で、約2Cレートで、30%KOH電解質中で2回充放電させた。2回目の放電によって、理論容量の84%を得た。例示的なナノファイバー-ナノスケールNi電極に関する放電結果の、例示的なグラフ表示である
図10を参照されたい。あと数回繰り返した場合(本明細書では図示せず。)、充放電効率は100%に近づくと考えられ、これは実際に、水分解及び酸素発生の副反応が、このように調製された電極では生じないことを示す。
d. セルから電極を取り出さずに、DI水で濯いだ。
【0133】
Zn電極を、下記の通り調製した:
a. Zn材料(23mg→0.10mM Zn、Cレート=5.5mA)を、電解質(30%K
2CO
3、ZnOで飽和させたもの)で濡らした。
b. 材料を、集電体として導電性フィルムを有する(ニッケル板により支持されている。)単極セル内に配置した。
c. 電極を、対電極としてPt板を有する状態で、2Cレートで1回充放電させた。放電によって、理論容量の94%を得た。例示的なナノファイバー-ナノスケールZn電極に関する放電結果の、例示的なグラフ表示である
図11を参照されたい。
d. Pt板及び参照電極(Ag/AgCl)をセルから除去し、ニッケル電極を代わりにビーカー内に配置した。
e. セルを、最初の6サイクルは2Cレートの定電流で充電し、次いで異なる定電圧で行った。
【0134】
別の設備(fixture)におけるZn-Ni電極は、2Cレートで70%の容量を得た。
図12は、例えば、個別の電極(separate electrodes)として2回の充放電サイクル、個別の電極として9回の充放電サイクル、及びバッテリーセル(即ち、電極を組み合わせたもの)として18回の充放電サイクル後の、ナノファイバー-ナノスケール電極に関する放電結果の、例示的なグラフ表示である。
図12では、1Vのカットオフ電圧付近で、バッテリーが完全に放電されていないことがわかる。完全容量を見るために、2Cレートでの放電後、バッテリーを0.2Cレートで放電させた(カットオフ電圧は1Vに保持した。)。2回目のサイクルでは、完全回復容量が74%であり、9回目のサイクルでは82%であった。しかし、電圧は、1回目のサイクルでの充電効率が十分高くなかったので、低下した。約85%で開始され、10回目のサイクルでは90%に上昇した。追加のサイクルは、個々の充電効率を100%に近づけ得ると考えられる。
【0135】
13回目のサイクル後、充電と放電との間で30分経過させ、その結果を、遅延のない12回目のサイクルの回復容量と比較した。電荷の量は、これら2つのサイクルで同じであった。これら2つのサイクルでの全回復容量間の差は、4%未満であった。
【0136】
14回目のサイクル後、サンプルをバッテリーセル内に配置した。
図12には、バッテリーの放電曲線が2Cレートで示されている。サンプルを移動させる過程で、容量がいくらか失われたようであるが、電圧は予測通りに改善した。
【0137】
上記実施例は、コーティング付きナノファイバーから形成された2つの電極及び比較的中性の電解質を利用する、Ni-Znバッテリーを示す。Ni-Znバッテリーは、活物質のナノスケールの性質に起因した高電力特性、及び選択された電解質での電極の高い安定性を示すことができる。
【0138】
ナノファイバー/NiOOH電極及びナノファイバー/Zn電極は、高速充放電が可能なものを作製することができる。しかし、標準的な30%KOH電解質では、Zn電極が不安定になる可能性があり、亜鉛酸塩イオンとして素早く溶解する可能性がある。この問題を克服するために、より活性ではない30%K2CO3電解質を使用することができる。Znは、過剰なOH-イオンが存在しない状態で、さらにより安定であると予測される。それでも、ヒドロキシルイオンがバッテリーの充電サイクルに使用される可能性がある。
【0139】
アノード側では、水素発生の電位が電解質のpHに直接依存するので、より高いpH、より少ない量のH2が形成される。カソード側では、充電中に酸が形成される可能性があり、これはNi活物質に対する酸の影響を防ぎ又は低減させるために、且つ炭酸塩イオンからCO2ガスへの変換も低減させるために、中和する必要があり得る。OH-イオンを提供するために、Mg(OH)2を活物質に添加することができる。水酸化マグネシウムは、炭酸マグネシウムと同様に、電解質中に溶解されない可能性があり、初期堆積の場所から離れることなく相互に変換されると予測することができる。
【0140】
一実施例のバッテリーでは、このバッテリーは、電極の化学的性質が異なる2つの電極を含んでいてもよい。この実現例では、2つの電極の一方が、カーボンナノチューブなどのナノファイバーを含んでいてもよい。この実現例では、ナノファイバー含有電極は、50%、60%、70%、又は80%超の気孔率を有していてもよい。さらに、ナノファイバー含有電極は、25重量%、20重量%、15重量%、又は10重量%未満のナノファイバーを含んでいてもよい。さらに、バッテリーは、周囲条件で、1Cレートで放電した場合に、理論電圧の80%、85%、90%、又は95%超のセル電圧を有していてもよい。さらにバッテリーは、2Cレートで再充電した場合に、95%、98%、又は99%超の再充電効率を有していてもよい。バッテリーは、pH12.5未満の電解質も含んでもよく、それはK2CO3を含有してもよい。ナノファイバー含有電極は、電極中のナノファイバーとは別に、集電体を含まなくてもよい。さらに、2つの電極は、Ni化合物を含有する電極又はZn化合物を含有する電極であってもよい。
【0141】
本明細書に記述される電極は、バッテリー内で使用されてもよい。電極は、単回使用の再充電できないバッテリー(しばしば、「1次電池」と呼ばれる。)又は多回使用の再充電可能なバッテリー(しばしば、「2次電池」と呼ばれる。)内に設けることができる。電極は、フレキシブルバッテリー又は他のタイプのバッテリー内に設けることもできる。
【0142】
本発明について、その好ましい実施形態を参照しながら詳細に述べてきたが、添付される特許請求の範囲から逸脱することなく、変更及び修正を行うことができ且つ均等物を用いることができることが、当業者には明らかであろう。