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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】液用スリットノズル
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
B05C5/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018211020
(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公開番号】P2020075223
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000107767
【氏名又は名称】スプレーイングシステムスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】須之内 邦明
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-253107(JP,A)
【文献】特開2006-043562(JP,A)
【文献】特開2005-246338(JP,A)
【文献】特表平06-508571(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0222093(US,A1)
【文献】特開2007-125503(JP,A)
【文献】特開2000-033310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C5/00-5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の厚みを有する板状であって横長の第1のプレート2と、この第1のプレート2の内面2aと向い合わされ接合される第2のプレート3とを備え、
前記第2のプレート3の中央部には液剤を内部に供給する孔状の流入部5aが形成され、前記第1のプレート2の内面2aには前記流入部5aからの液剤を貯留する凹状の貯留部2bが形成され、この貯留部2bはほぼくの字状を前記第のプレート2の長さ方向に沿って横向きに配置した形状をなし、中央部から各端部cに向って傾斜したテーパ状の上辺aと、この上辺aの下方に位置し、上辺aよりゆるやかに傾斜したテーパ状の下辺bとを有し、前記上辺aと下辺bとの端部cは結合され、かつ貯留部2bの幅は中央部から各端部cに向って狭く、貯留部2bの深さは各端部cに向って浅く形成され、かつ各端部cには端部cから前記第1、第2のプレート2、3間の先端部に形成されたオリフィス4の端部4aに向って延び、前記液剤を前記端部4aに向って流すようガイドするテーパ部2dが形成されたことを特徴とする液用スリットノズル。
【請求項2】
請求項1記載の液用スリットノズルにおいて、前記第1のプレート2の内面2aに形成された前記貯留部2bの下側に流路8を形成する断面円形の突部9が適間で突設され、かつその下部にオリフィス形成用の突部2cが形成されたことを特徴とする液用スリットノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は道路の表面への液剤の塗布など、比較的高粘度の液体を塗布する場合に用いると好適な液用スリットノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体の表面に処理液を塗布するスリットノズルとしては例えば下記に示すような特許文献1、2が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4619139号
【文献】特許第4315787号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のスリットノズルは、2つのノズル半体を結合した状態で、下方に向かって開口するスリット状吐出口が形成されるスリットノズルにおいて、前記2つのノズル半体のうちの一方には塗布液の第1貯留部が形成され、この第1貯留部に連続する下側にノズル半体の厚み方向を基準として前記第1貯留部よりも浅い第2貯留部が形成され、この第2貯留部に連続する下側に他方のノズル半体との間で下端がスリット状吐出口となるオリフィスを形成する平坦面が設けられ、前記第1貯留部はノズル半体の幅方向の中央部に形成した塗布液供給孔と連通する箇所が最も高く、両端が低くなるように山形に形成され、また前記第2貯留部の下辺はノズル半体の幅方向の中央部が最も低く、両端に行くに従って高くなるV字状傾斜面をなし、更に前記V字状傾斜面の両端の始点は、前記第2貯留部の下辺を直線状にした場合に、最も塗布液の流下量が多くなるように構成されている。
【0005】
特許文献1では、その図1および図2に示されるように、スリットノズル上面の中央部に塗布液給孔6を設けるとともに、エア抜き穴7を設け、かつ内部に第1貯留部4、第2貯留部5を設け、下端のスリット状吐出口10からスプレーするようにしている。
【0006】
また、図3に示されるように、第2貯留部5の下部にV字状傾斜面8を形成し、図6に示されるように、塗布液の流下量分布を長さ方向両端部が多くなる構造としている。
【0007】
特許文献2のスリットノズルを有する装置は、基板を保持する保持台と、所定の処理液を吐出するスリットノズルと、前記スリットノズルを前記基板の表面に沿った略水平方向に移動させる移動手段と、前記スリットノズルに所定の処理液供給源から前記所定の処理液を供給する処理液供給手段とを備え、
前記スリットノズルを前記略水平方向に移動させることによって前記スリットノズルに前記基板の表面を走査させつつ、前記スリットノズルの内部に充填された前記所定の処理液を吐出させることにより、前記所定の処理液を基板に塗布する基板処理装置であって、前記スリットノズルにおいて、
前記処理液供給手段が接続され、前記所定の処理液を前記スリットノズルのマニホールドへと供給する供給口が、前記マニホールドの長手方向の両側端部のうちの少なくとも一方の側端部に設けられており、
前記スリットノズル内部に存在する気体および気体が混入した前記処理液を前記スリットノズルの外部へと排出する排出口が、前記マニホールドの上端部に設けられており、前記排出口が前記供給口よりも高い位置に設けられ、
前記排出口に接続された排出経路と、
前記排出経路の途中に配置され、前記排出経路内の処理液の充填状態および気体混入状態を検知する検知手段と、
前記スリットノズルに対する前記所定の処理液の充填度を判定するとともに、前記所定の処理液への気体の混入度を判定する判定手段、
をさらに備え、
前記排出経路は、光学的に透明であってU字型に曲折された曲折部分を有し、前記曲折部分が上側に向けてられてなる頂点部分を含むセンシング部を備えるとともに、前記スリットノズルからセンシング部に至るまでの間では、前記頂点部分が最も高い位置に位置するように設けられ、
前記検知手段は、前記曲折部分の近傍に配置され、前記頂点部分に対し第1の光ビームを発するとともに、前記第1の光ビームの照射に伴って前記頂点部分から得られる第2の光ビームを受光するものであり、
前記判定手段は、前記検知手段によって受光される前記第2の光ビームの光強度の変動に基づいて、前記充填度を判定するとともに前記気体の混入度を判定するように構成されている。
【0008】
特許文献2のものは、全体として大がかりな設備となっている。また、特許文献2の図3図4に示されるように、スリットノズル4の長さ方向の端部に供給口46a、46bを設けた構造としている。加えて、内部に供給した供給液に混入した気体のエア抜き47を設け、かつスリットノズル内のギャップ41aは直線状とし下端部からスプレーする構造としている。
【0009】
上記特許文献1,2のものは後述する本発明品に比べ構造が複雑である。
【0010】
また、図7に示すように、縮流によりスリットノズル下端からのスプレーが拡がらず、先細スプレーとなる。このため、長尺化すべくスプレーノズルを連結しても連結間のスプレーが途切れ、ムラが生じ、連続したスプレーが得られない、という課題があった。
【0011】
本発明は上記のことに鑑み提案されたもので、その目的とするところは、単品で使用しても広い範囲をスプレーでき、また、より広い範囲をスプレーするためにスプレーノズルを長尺に連結しても連結間のスプレー途切れがなく、かつメンテナンスも軽減した簡易構成の液用スプレーノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の本発明に係る液用スリットノズルは、所定の厚みを有する板状であって横長の第1のプレート2と、この第1のプレート2の内面2aと向い合わされ接合される第2のプレート3とを備え、
前記第2のプレート3の中央部には液剤を内部に供給する孔状の流入部5aが形成され、前記第1のプレート2の内面2aには前記流入部5aからの液剤を貯留する凹状の貯留部2bが形成され、この貯留部2bはほぼくの字状を前記第のプレート2の長さ方向に沿って横向きに配置した形状をなし、中央部から各端部cに向って傾斜したテーパ状の上辺aと、この上辺aの下方に位置し、上辺aよりゆるやかに傾斜したテーパ状の下辺bとを有し、前記上辺aと下辺bとの端部cは結合され、かつ貯留部2bの幅は中央部から各端部cに向って狭く、貯留部2bの深さは各端部cに向って浅く形成され、かつその端部cには端部cから前記第1、第2のプレート2、3間の先端部に形成されたオリフィス4の端部4aに向って延び、前記液剤を前記端部4aに向って流すようガイドするテーパ部2dが形成されたことを特徴とする。
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の液用スリットノズルにおいて、前記第1のプレート2の内面2aに形成された前記貯留部2bの下側に流路8を形成する断面円形の突部9が適間で突設され、かつその下部にオリフィス形成用の突部2cが形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の本発明によれば、第1のプレート2の内面2aにオリフィス4に向って液剤を流す貯留部2bを形成し、貯留部2bの形状を端部cに向って幅を狭くしたテーパ状とし、かつ貯留部2bの中央部がもっとも深く、端部cに向って浅くし、かつ端部cに流れてきた液剤をオリフィス端部4aにガイドするスプレー拡散用のテーパ部2dを形成したため、液剤の流体速度を保った状態でオリフィス4から吐出させるようにし、オリフィス4からのスプレーSは縮流せず拡がってスプレーさせることができる。この場合、高粘度の液剤についてもスプレーを拡げることができる。したがって液用スリットノズルを長さ方向に連結しても連結部分でスプレーが途切れることはなく全域にわたって均一にスプレーすることができる。また、これにより液溜まりや堆積が少なくなるため、メンテナンスが飛躍的に軽減する。
請求項2の本発明によれば、第1のプレート2の内面2aに、対向する第2のプレート3の内面との間に流路形成用の突部9を突設し、かつその下方にオリフィス形成用の突部2cを形成したため、オリフィス4の隙間が一定になり、組み付け時のオリフィス4の寸法調整が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例にかかる液用スリットノズルの外観斜視図。
図2】同上の縦断面図。
図3】液用スリットノズルを構成する一方のプレートの外面側を平面から見た説明図。
図4】他方のプレートの左半分の斜視図。
図5】同右半分の斜視図。
図6】本発明品でのスプレー状態を示す説明図。
図7】従来品でのスプレー状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に沿って本発明の好ましい一実施例を説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施例にかかる液用スリットノズル1の外観斜視図を示す。この液用スリットノズル1は、図示の状態において、横方向に長尺であって所定の厚みを有するほぼ板状の第1のプレート2と、この第1のプレートと一体化されたほぼ同形状の第2のプレート3とを備えている。なお、図示の状態においては、液用スリットノズル1は斜め示しているが、これは第1、第2のプレート2、3のV字状の先端部にオリフィス4が形成されていることが分かるように図示したものである。このオリフィス4は第1、第2の長さ方向全域にわたって形成されている。
【0017】
なお、図1において、5は第2のプレート3のほぼ中央部に形成された液剤供給用の孔、6は第2のプレート3の外面側から挿入された固定ビス、7は他の部材(図示せず)への取付穴である。
【0018】
図2は一体化された第1、第2のプレート2、3の長さ方向の中央部分の側断面を示す。
一体化は、第1のプレート2の内面2aと、第2のプレート3の内面3aとを互いに向い合せて接合させ、第2のプレート3側から挿入した固定ビスの先端部を第1のプレート2側の固定ビス受部6aに螺合し結合している。第2のプレート3のほぼ中央部に設けた孔5は第2のプレート3内の液剤の流入部5aとなり、液剤が内部に供給される。
この流入部5aは第1のプレート内面2a側に形成された凹状の貯留部2bに連通している。凹状の貯留部2bは中央部分の深さが一番深くなっている。そして流入部5aから貯留部2b内に入った液剤は流路8を通ってオリフィス4から外部にスプレーされる。
【0019】
流路8は第1のプレート2の内面2aの下方部分の適位置に長さ方向に沿って適間隔でもって突設された断面ほぼ円形の突部9により形成されている。すなわち突部9の先端面が対向配置された第2のプレート3の内面3aに接合され流路8が形成される。
【0020】
この突部9の突出寸法は液用スリットノズル1の目的や用途等により任意に決定され流路8の隙間幅が設定される。なお、突部9は第2のプレート3の内面3a側に突設しても良い。
【0021】
流路8の隙間よりオリフィス4の隙間が狭くなっている。このオリフィス4の隙間は、第1のプレート2の内面下部に形成された突部2が対向配置された第2のプレート3の内面3a近くに接近して配置されることによって形成される。これらによりオリフィス4の隙間が一定になるため、組み付け時にオリフィス4の寸法調整が不要である。
【0022】
図3は第2のプレート3の外面の正面図である。第のプレート3のほぼ中央部には前述のように液剤を供給する孔5などが設けられている。
【0023】
第2のプレート3の内面側には第1のプレート2が結合され、流入部5aを介して供給された液剤は第2のプレート2側に形成された凹状の貯留部2bに供給される。
【0024】
この貯留部2bはほぼくの字状を第1のプレート2の長さ方向に沿って横向きに配置した形状をなし、中央部から各端部cに向ってテーパ状に傾斜した上辺aと、上辺aの下側に位置し、かつ上辺aに比べゆるやかに傾斜した下辺bとにて形成され、上辺aと下辺bの端部cは弧状に結合されている。上辺aは端部cに向って下方に傾斜し、かつ上辺aと下辺bの幅が端部cに向って次第に狭くなるテーパ状としている。また、貯留部2bの凹状の深さは端部cに向って流路深さが次第に浅くなるように形成されている。
【0025】
図4は第1のプレート2の左半分、図5は第1のプレート2の右半分の一部の斜視図を示す。
【0026】
第1のプレート2の内面の両側部の下方には段状をなすスプレー拡散用のテーパ部2dがそれぞれ形成されている。各テーパ部2dは内側に向って凹状に切り込まれた段部となっており、その上端部は貯留部2bの端部cに位置し、下端部は第1のプレート2の内面下部に突設されたオリフィス形成用の突部2cの上部に位置し、貯留部2bの中央部から端部cに向って流れてきた液剤をオリフィス4の端部4aに向って流すガイドの役割をなす。
【0027】
動作に当たっては、図3において矢印で示すように、流入部5aから貯留部2bに供給された液剤は貯留部2bの下辺bからオリフィス4側へ流れつつ、一部は貯留部2bの端部cに向って流れる。この場合、貯留部2bはテーパ状に形成され、端部cに向って幅狭であり傾斜しているため、液剤の流体速度を保った状態で液剤である流体は吐出され、スプレーSはSaで示すように縮流することなく広がった状態で外部へスプレーさせることができ、単品で使用しても従来のものに比べ広い範囲をスプレーできる。
【0028】
液剤はオリフィス4の全域にわたり均一にスプレーさせることができ、かつ端部4aまで液剤の速度低下を少なくすることができるため、液溜まりおよび堆積しないようにしている。この液溜まりの低減によりメンテナンス頻度が飛躍的に少なくなる。
【0029】
また、スプレーSは縮流せず外側に拡がるので、長尺化のために適宜の連結手段により液用スリットノズル1を長さ方向に複数連結しても連結間のスプレーSの途切れがなく長尺に渡り連続して均一にスプレーさせることができる。
【0030】
なお、貯留部2bの深さも端部cに向って次第に浅くしているため、端部cに向って次第に幅狭としたことと相俟って液剤の流体速度を保った状態で吐出させることができる。
【0031】
図6は本発明品のスプレーSの状態を示す概念図である。スリット長さ100mm、スリット幅0.5mm、水圧0.03MPaでのスプレー状態を示す。図7で示した従来品のように縮流することなく、拡がった状態でのスプレーとなる。
【0032】
本発明は道路工事用液剤塗布用に限らず、食材塗布、エレクトロニクス産業、現像、エッチング、薬液コート、洗浄リンス、顔料、釉薬のコーテイング、洗浄、コーテイングなど多岐にわたる分野に適用し得る。また、特に比較的高粘性の液剤の使用に適する。
【0033】
高粘度の液剤としては、例えば食品産業でのチョコレート、エレクトロニクス産業で使用する現像液、エッチング液、防湿用コーティング液、その他では接着剤などを指す。このような液剤は、これまでのノズルを用いた際、特に縮流となってスプレーが拡がらないが、本発明によればスプレーを拡げることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 液用スリットノズル
2 第1のプレート
2a 第1のプレートの内面
2b 貯留部
2c 突部
2d テーパ部
3 第2のプレート
3a 第2のプレートの内面
4 オリフィス
4a オリフィス端部
5 孔
5a 流入部
6 固定ビス
6a 固定ビス受部
7 取付穴
8 流路
9 突部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7