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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】水加熱システム及び温浴施設
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/00 20220101AFI20220125BHJP
   F24H 1/18 20220101ALI20220125BHJP
   F24H 9/16 20220101ALI20220125BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20220125BHJP
   F25B 29/00 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
F24H1/00 631A
F24H1/00 631J
F24H1/18 B
F24H9/16 Z
F25B1/00 399Y
F25B29/00 371Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018230496
(22)【出願日】2018-12-10
(65)【公開番号】P2020094699
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2020-09-23
(73)【特許権者】
【識別番号】392035972
【氏名又は名称】株式会社ヤマト
(74)【代理人】
【識別番号】100092808
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 亘
(74)【代理人】
【識別番号】100140981
【弁理士】
【氏名又は名称】柿原 希望
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 利明
(72)【発明者】
【氏名】石井 健治
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-139202(JP,A)
【文献】特開2000-161776(JP,A)
【文献】中国実用新案第203880864(CN,U)
【文献】特開2015-121370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00 - 9/20
F25B 1/00
F25B 29/00 - 30/06
F24F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水を溜める温水槽と、
冷媒と水との水熱交換器を備えた水熱源空調設備と、
水を加熱して前記温水槽側へ供給する加熱部と、を有する水加熱システムにおいて、
上流側の低温槽と下流側の高温槽とを有し前記温水槽へ供給する水を貯留する受水槽をさらに備え、
前記加熱部は前記高温槽側から水を給水するとともに、
前記水熱交換器は冷房運転時熱交換により前記高温槽の水との間で熱交換を行って前記高温槽の水を予熱し、前記受水槽に還流することで、前記温水槽へ供給する水加温することを特徴とする水加熱システム。
【請求項2】
高温槽の水温が所定の高温閾値以下の場合に水熱交換器で熱交換された水を前記高温槽に還流し、前記高温槽の水温が前記高温閾値を超えた場合に熱交換された水を低温槽に還流することを特徴とする請求項記載の水加熱システム。
【請求項3】
高温槽の水温が所定の低温閾値以下となった場合に前記高温槽の水を排水する排水機構をさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水加熱システム。
【請求項4】
温水槽が浴槽もしくは貯湯槽である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の水加熱システムと、
利用者が着衣を脱ぎ着する脱衣所と、を備え、
水熱源空調設備が前記脱衣所の空調を行うことを特徴とする温浴施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水熱源空調設備の水熱交換器を用いて水の加温を行う水加熱システム及び、この水加熱システムを用いた温浴施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水を加熱して給湯需要等に供給する水加熱システム(給湯システム)は、家庭用の小型のものから宿泊施設や温浴施設、温水プール等に用いる大型のものまで様々なものが実用化されている。このような水加熱システム、特に温浴施設や温水プール等の多量の湯水を必要とする水加熱システムでは燃料消費も大きく、コスト面及び地球温暖化対策の観点から高効率化及び省エネルギー化が求められている。
【0003】
また、比較的大規模な施設では、外気との熱交換により空調を行う従来の空調設備に替えて、地下水や河川等の水と熱交換を行う水熱源空調設備の使用が増加傾向にある。尚、この水熱源空調設備で熱交換に用いる地下水や河川の水は、外気温の影響を受けにくく年間を通して温度変化が少ない。このため、水熱源空調設備は従来の空調設備と比較して安定的で高効率な熱交換が可能となる。そして、このような水熱源空調設備に関し、例えば下記[特許文献1]には水熱源空調設備の小型化に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-201223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、水加熱システムの高効率化、省エネルギー化に対しては多くの研究開発が行われている。しかしながら、未だ改善の余地はあり、様々なアプローチからの更なる改善が望まれる。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、水熱源空調設備の水熱交換器を用いて水の加温を行うことで消費燃料の削減が可能な水加熱システム及びこれを用いた温浴施設の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1)温水を溜める温水槽10と、冷媒と水との水熱交換器42を備えた水熱源空調設備40と、水を加熱して前記温水槽10側へ供給する加熱部32と、を有する水加熱システムにおいて
上流側の低温槽30bと下流側の高温槽30aとを有し前記温水槽10へ供給する水を貯留する受水槽30をさらに備え、
前記加熱部32は前記高温槽30a側から水を給水するとともに、
前記水熱交換器42は冷房運転時の熱交換により前記高温槽30aの水との間で熱交換を行って前記高温槽30aの水を予熱し、前記受水槽30に還流することで、前記温水槽10へ供給する水を加温することを特徴とする水加熱システム80aを提供することにより、上記課題を解決する。
)高温槽30aの水温が所定の高温閾値以下の場合に水熱交換器42で熱交換された水を前記高温槽30aに還流し、前記高温槽30aの水温が前記高温閾値を超えた場合に熱交換された水を低温槽30bに還流することを特徴とする上記()記載の水加熱システム80aを提供することにより、上記課題を解決する。
)高温槽30aの水温が所定の低温閾値以下となった場合に前記高温槽30aの水を排水する排水機構(排水管26、開閉弁26a)をさらに有することを特徴とする上記()または()に記載の水加熱システム80aを提供することにより、上記課題を解決する。
)温水槽10が浴槽もしくは貯湯槽である上記()乃至()のいずれかに記載の水加熱システム80aと、
利用者が着衣を脱ぎ着する脱衣所12と、を備え、
水熱源空調設備40が前記脱衣所12の空調を行うことを特徴とする温浴施設100を提供することにより、上記課題を解決する
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る水加熱システム及びこれを用いた温浴施設は、水熱源空調設備の熱交換に温水槽へ供給する水もしくは温水槽の水を用いる。これにより、水熱源空調設備が冷房運転する際には、これらの水が加温され、その分、消費燃料の削減が可能となり、燃料コストの低減と省エネルギー化を図ることができる。
特に、水加熱システムが低温槽と高温槽とを備えた受水槽を有する構成では、高温槽内の水の温度が予め設定されている高温閾値を超えた場合に、熱交換した水を低温槽内に還流する。これにより、高温槽内の水の温度の過度の上昇を抑えて水熱交換器における熱交換効率の低下を抑制するとともに、低温槽内の水を予熱して水熱交換器での排熱を余すことなく利用することができる。また、水熱源空調設備が暖房運転して高温槽内の水の温度が低温閾値以下となった場合、排水機構を動作させ高温槽内の水を槽外に排出する。これにより、加熱部の負荷の増大は防止されるとともに、水熱交換器における熱交換効率の低下を抑制することができる。
また、本発明に係る温浴施設では水熱源空調設備を冷房運転の期間が長い脱衣所の空調に用いる。これにより、水熱交換器による水の加温動作を長期間行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る水加熱システムを用いた温浴施設の概略構成図である。
図2加熱システムを用いたスポーツ施設の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る水加熱システム及び温浴施設について図面に基づいて説明する。尚、ここでは本発明に係る水加熱システム80aを、これを備えた温浴施設100を用いて説明を行うが、本発明に係る水加熱システム80aはこれらの施設に限定されるものではなく、水熱源空調設備を備えた如何なる施設の水加熱システム80aに対しても適用が可能である。
【0010】
ここで、図1は本発明に係る水加熱システム80aを温浴施設100に適用した例を示す図である。また、図2は水加熱システム80bをスポーツ施設110に適用した例を示す図である。先ず、本発明に係る水加熱システム80aは、温水を溜める温水槽10と、冷媒と水との水熱交換器42を備えた水熱源空調設備40と、水を加熱して温水槽10側へ供給する加熱部32と、を有している。
【0011】
そして、水熱源空調設備40は、冷媒を圧縮して高温高圧のガス冷媒とする圧縮機44と、前述の水熱交換器42と、冷媒を減圧する膨張弁等の周知の減圧器48と、室内の空気と冷媒との間で熱交換を行って空調を行う室内機46と、冷媒の流路を切り替える四方弁(図示せず)等の周知の部材と、を有している。また、加熱部32としてはボイラ等の周知の加熱手段を用いることができる。
【0012】
そして、温浴施設100に好適な水加熱システム80aは、図1に示すように、上記の構成に加え水源1からの水を貯留する受水槽30を更に有している。尚、水加熱システム80aにおける温水槽10としては利用者が入浴する浴槽や所定の温度の湯が溜められる貯湯槽となる。そして、水加熱システム80aの受水槽30は上流側、即ち水源1側の低温槽30bと、下流側、即ち温水槽10側の高温槽30aとを有しており、これら高温槽30aと低温槽30bとは連通孔30cにより互いに連通している。従って、高温槽30a側の水が減少すると、その分だけ低温槽30b側の水が高温槽30a内に流入し両者の水位は略同等に維持される。
【0013】
また、低温槽30bには水源1から延びた給水配管3が接続し、水源1の水を低温槽30bに適宜補水する。尚、水源1としては水道水を用いても良いが、水温が年間を通じて大きく変化しない井水(地下水)を用いることが最も好ましい。そして、水源1に井水を用いる場合には、給水配管3には井水ポンプ5が接続され、水源1(井戸)の水を随時汲み上げて低温槽30bに補水する。また、低温槽30bには加温を必要としないトイレ等の水需要に槽内の水を供給する供給配管7を設けても良い。
【0014】
また、高温槽30aには槽内の水を加熱部32側に送る加熱配管34と、水熱交換器42側に送る予熱配管20とが接続し、加熱配管34と予熱配管20にはそれぞれ送水ポンプ34a及び22が接続している。また、予熱配管20は水熱交換器42の下流側で2つの還流配管20a、20bに分岐して、これら還流配管20a、20bはそれぞれ高温槽30aと低温槽30bとに接続する。また、還流配管20a、20bには開閉弁24a、24bや3方弁等の流路切替手段が設けられ、この流路切替手段によって水熱交換器42からの水の流路を高温槽30a側と低温槽30b側とで切り替えることができる。また、高温槽30aには槽内の水の温度を取得する水温計等の周知の温度取得手段23が設置される。さらに、高温槽30aには槽内の水を排出する排水管26と、この排水管26を開閉する開閉弁26a等の排水機構を備えている。尚、この排水機構は高温槽30aに直接接続しても良いし、加熱配管34の上流側に設けても良い。
【0015】
また、本発明に係る温浴施設100は、上記の水加熱システム80aと、利用者が着衣を脱ぎ着する脱衣所12と、を有している。そして、本発明に係る温浴施設100では、少なくとも脱衣所12の空調を水熱源空調設備40の室内機46で行う。ここで、一般的な温浴施設100の脱衣所12には浴室からの熱が流入することに加え、湯上りの利用者が体を冷却する観点から冷房運転の期間が通常の室内空調よりも長い。そして、本発明に係る水加熱システム80aは水熱源空調設備40が冷房運転する際に高温槽30aの水を予熱するから、冷房運転の期間が長い脱衣所12の空調に水熱源空調設備40を用いることで、室内空調よりも長期間、予熱動作を行うことができる。
【0016】
次に、本発明に係る水加熱システム80a及びこれを用いた温浴施設100の動作を説明する。先ず、水源1が井戸の場合、井水ポンプ5を動作させ井戸水を低温槽30bに供給する。低温槽30bに供給された水は連通孔30cを通して高温槽30aにも流入し、受水槽30は所定の水位となる。尚、水源1が井戸の場合、供給される水温は年間を通して大きく変動せず、概ね15℃~20℃の範囲にある。
【0017】
また、高温槽30a内の水の温度は温度取得手段23が取得して図示しない制御部に出力する。制御部は温度取得手段23からの水温を受けて、高温槽30a内の水の温度が予め設定されている例えば45℃等の高温閾値以下の場合には、流路切替手段である開閉弁24aを開状態とし、開閉弁24bを閉状態とし、その流路を還流配管20a側とする。
【0018】
次に、水熱源空調設備40が冷房運転すると、圧縮機44が冷媒を圧縮して高温高圧のガス冷媒とし水熱交換器42に送出する。また、これと前後して送水ポンプ22が動作して高温槽30a内の水を予熱配管20を通して水熱交換器42に送出する。そして、水熱交換器42において予熱配管20内の水とガス冷媒とが熱交換して、予熱配管20内の水は加温される。また、ガス冷媒は冷却して凝縮し液冷媒となる。この凝縮した液冷媒は減圧器48で減圧され一部気化した気液二相冷媒となる。そして、この気液二相冷媒は室内機46に送出され、本発明に係る温浴施設100では脱衣所12の空気と熱交換して気化する。この熱交換により冷却した空気は脱衣所12内に送出され、これにより脱衣所12内の冷房が行われる。また、室内機46で気化したガス冷媒は圧縮機44に還流して、再度圧縮吐出される。また、水熱交換器42での熱交換により加温された水は還流配管20aを通って高温槽30aに還流する。これにより、高温槽30a内の水の温度は上昇し、高温槽30a内の水に対する予熱が行われる。
【0019】
また、温水槽10側にて湯水が使用され減少すると、送水ポンプ34aが動作して高温槽30a内の水を加熱配管34を通して加熱部32に送出する。そして、加熱部32において予め設定された例えば60℃の温度に加温され、温水槽10(浴槽もしくは貯湯槽等)に送出される。尚、使用された高温槽30a内の水の減少分は、低温槽30bから連通孔30cを介して補水される。
【0020】
また、温水槽10における湯水の使用量に対して水熱交換器42による予熱能力が大きく、高温槽30a内の水の温度が高温閾値を超えて上昇した場合、制御部はこれを温度取得手段23を介して検知して流路切替手段としての開閉弁24aを閉状態とし、開閉弁24bを開状態とする。これにより、水の流路は還流配管20b側に切り替わり、水熱交換器42で加温された水は低温槽30b内に還流して低温槽30b内の水を予熱するとともに、低温槽30b内の水が高温槽30a側に流入して高温槽30a内の水の温度を下げ過度の温度上昇を抑制する。これにより、水熱交換器42における熱交換効率の低下を防止するとともに、低温槽30b内の水が予熱されることで水熱交換器42での排熱を余すことなく利用することができる。
【0021】
次に、水熱源空調設備40が暖房運転した場合、圧縮機44で圧縮された高温高圧のガス冷媒は室内機46に送出される。そして、本発明に係る温浴施設100では脱衣所12の空気と熱交換し、脱衣所12の空気を加温する。この加温された空気は脱衣所12内に送出され、これにより脱衣所12内の暖房が行われる。また、この熱交換によりガス冷媒は冷却して凝縮し液冷媒となる。この液冷媒は減圧器48で減圧され一部気化した気液二相冷媒となる。そして、この気液二相冷媒は水熱交換器42において予熱配管20内の水と熱交換して気化する。そして、水熱交換器42で気化したガス冷媒は圧縮機44に還流して、再度圧縮吐出される。
【0022】
また、この水熱交換器42における暖房運転時の熱交換により予熱配管20内の水の温度は低下する。そして、この水は還流配管20aを通して高温槽30aに還流し、これにより高温槽30a内の水の温度は低下する。これは、加熱部32の負荷を増大する方向に働く。従って、本発明に係る水加熱システム80aでは、高温槽30a内の水の温度が低下して予め設定された低温閾値以下となった場合、制御部がこれを温度取得手段23を介して検知して排水機構としての開閉弁26aを開状態とし高温槽30a内の水を排水管26を通して槽外に排出する。これにより、高温槽30a内には連通孔30cを通して低温槽30bから水が流入し補水される。これにより、高温槽30a内の水の温度は低温槽30bの水の温度にまで上昇し、加熱部32の負荷の増大を防止するとともに、水熱交換器42における熱交換効率の低下を抑制する。尚、水源1として井水を用いる場合には高温槽30a内の水を排水しても補水コストは小さく、この排水により運転コストが大きく増大することは無い。
【0023】
次に、水加熱システム80bを図2を用いて説明する。尚、図2では運動エリア13と温水槽10としての温水プールを備えたスポーツ施設110を例に説明を行うが、水加熱システム80bはこれに限定されるわけではなく、運動エリア13を備えていない温水プールや循環型の温浴施設等に適用しても良い。この場合、水熱源空調設備40は更衣室や脱衣所、その他の空調を行う。
【0024】
図2に示す水加熱システム80bは、温水プールとしての温水槽10と、水熱源空調設備40と、加熱部32と、を有している。そして、温水プールとしての温水槽10には循環配管50が接続する。また、循環配管50には、この循環配管50内に温水槽10内の湯水を流下させる送水ポンプ50aと、温水槽10内の湯水の温度を取得する温度取得手段51と、フィルタやろ過装置、殺菌装置等の浄水部52と、循環配管50と水熱交換器42とを繋ぐ加温配管56と、前述の加熱部32と、が接続する。また、循環配管50は加温配管56の両端を繋ぐバイパス管58と、このバイパス管58を開閉する開閉弁58aと、を有している。さらに、循環配管50には温水槽10内の湯水を排水する排水管(図示せず)と、水道水を含む水源の水を適宜温水槽10に補水する給水配管(図示せず)と、を有していても良い。
【0025】
また、水加熱システム80bは、クーリングタワー等の周知の熱交換手段60を備えるとともに、加温配管56から分岐して熱交換手段60に接続する熱交換配管62と、この加温配管56もしくは熱交換配管62内に水を流下させる送水ポンプ57と、加温配管56及び熱交換配管62にそれぞれ設けられた流路切替手段としての開閉弁56a、62aと、を有している。尚、流路切替手段は水熱交換器42での熱交換に用いる水の流路を温水槽10側(加温配管56側)と熱交換手段60側(熱交換配管62側)とで切り替えるものであり、この動作が可能であれば3方弁等の周知の部材を用いても良い。
【0026】
また、スポーツ施設110は、上記の水加熱システム80bと、トレーニングジムやエアロビクススタジオ等の運動エリア13と、を有している。そして、スポーツ施設110では、少なくとも運動エリア13の空調を水熱源空調設備40の室内機46で行う。ここで、運動エリア13では運動中の利用者の体を冷却する観点から冷房運転の期間が通常の室内空調よりも長い。そして、水加熱システム80bは水熱源空調設備40が冷房運転する際に温水槽10(温水プール)の水を加温するから、冷房運転の期間が長い運動エリア13の空調に水熱源空調設備40を用いることで、室内空調よりも長期間、加温動作を行うことができる。
【0027】
次に、水加熱システム80b及びこれを用いたスポーツ施設110の動作を説明する。先ず、温水プールとしての温水槽10には所定の温度に加温された湯水が所定量貯留されている。また、このとき水加熱システム80bの送水ポンプ50aが動作して温水槽10内の水を循環配管50内に圧送する。循環配管50内に圧送された温水槽10内の水は、浄水部52において毛髪やゴミ等の夾雑物が除去されるとともに所定の殺菌処理等が施される。また、温度取得手段51は循環配管50内に供給される水の温度を取得して温水槽10内の水の温度として図示しない制御部に出力する。制御部は温度取得手段51からの水温を受けて、温水槽10内の水の温度が予め設定されている例えば30℃等の高温閾値以下で且つ水熱源空調設備40が冷房運転の場合に、開閉弁58aを閉じてバイパス管58を閉塞するとともに、流路切替手段としての開閉弁56aを開状態とし、開閉弁62aを閉状態とする。これにより、浄水部52を通過した水は加温配管56側を流下する。
【0028】
また、水熱源空調設備40が冷房運転すると、圧縮機44が冷媒を圧縮して高温高圧のガス冷媒とし水熱交換器42に送出する。また、前述のように循環配管50内の水は加温配管56を流下し水熱交換器42に送出される。そして、水熱交換器42において加温配管56内の水とガス冷媒とが熱交換して、加温配管56内の水は加温される。また、ガス冷媒は冷却して凝縮し液冷媒となる。この凝縮した液冷媒は減圧器48で減圧され一部気化した気液二相冷媒となる。そして、この気液二相冷媒は室内機46に送出され、スポーツ施設110では運動エリア13の空気と熱交換して気化する。この熱交換により冷却した空気は運動エリア13内に送出され、これにより運動エリア13内の冷房が行われる。また、室内機46で気化したガス冷媒は圧縮機44に還流して、再度圧縮吐出される。また、水熱交換器42での熱交換により加温された水は温水槽10に還流する。これにより、温水槽10としての温水プールの水に対する加温が行われる。
【0029】
また、夏季等において温水槽10内の水の温度が高温閾値を超えた場合、制御部はこれを温度取得手段51を介して検知して流路切替手段としての開閉弁56aを閉状態にするとともに、開閉弁58aを開いてバイパス管58を開状態とする。また、流路切替手段としての開閉弁62aを開状態にするとともに、送水ポンプ57を動作させる。これにより、循環配管50内の水はバイパス管58を流下して加温配管56を経ずに温水槽10に還流する。また、水熱交換器42で熱交換に用いられた水は送水ポンプ57によって熱交換手段60に送られて冷却された後、再度、水熱交換器42での冷媒との熱交換に用いられる。これにより、温水槽10と水熱交換器42とは分離され、温水槽10に対する加温は停止する。
【0030】
尚、水熱源空調設備40が暖房運転する際にも制御部は前述と同様、流路切替手段としての開閉弁56aを閉状態にするとともに、開閉弁58aを開いてバイパス管58を開状態とする。また、流路切替手段としての開閉弁62aを開状態にするとともに、送水ポンプ57を動作させる。これにより、温水槽10と水熱交換器42とは分離され、暖房運転時の水熱交換器42によって冷却した水は熱交換手段60にて温められ、再度水熱交換器42にて冷媒との熱交換に用いられる。
【0031】
さらに、水熱源空調設備40の暖房運転時や温水槽10内の水の温度が水熱交換器42の熱交換による加温のみでは所定の低温閾値に満たない場合、制御部は温度取得手段51を介してこれを検知して加熱部32を動作させる。これにより、循環配管50の水は加熱部32によって加熱され、これにより温水槽10内の水は予め設定された温度範囲に維持される。
【0032】
、水加熱システム80a、80bを備えた施設がコージェネレーション発電設備等を有している場合には、この排熱も高温槽30aもしくは温水槽10の水の加温に用いるようにしても良い。また、加熱部32の余熱を高温槽30aもしくは温水槽10の水の加温にカスケード的に用いるようにしても良い。さらに、施設が冷凍冷蔵設備等を有している場合には、これらの排熱も高温槽30aもしくは温水槽10の水の加温に用いるようにしても良い。
【0033】
以上のように、本発明に係る水加熱システム80a及びこれを用いた温浴施設100は、水熱源空調設備40の熱交換に受水槽30に貯留されている水を用いる。これにより、水熱源空調設備40が冷房運転する際には、水熱交換器42での熱交換により受水槽30の水が予熱され、後段の加熱部32の負荷を軽減することができる。これにより、消費燃料の削減が可能となり、燃料コストの低減と省エネルギー化を図ることができる。
【0034】
また、本発明に係る水加熱システム80a及び温浴施設100は、受水槽30を高温槽30aと低温槽30bとに分け、通常状態では温水槽10側の高温槽30aの水を熱交換に用いて高温槽30a内の水を予熱する。ただし、高温槽30a内の水の温度が予め設定されている高温閾値を超えた場合には、熱交換した水を低温槽30b内に還流する。これにより、高温槽30a内の水の温度の過度の上昇を抑えて水熱交換器42における熱交換効率の低下を抑制するとともに、低温槽30b内の水を予熱して水熱交換器42での排熱を余すことなく利用することができる。
【0035】
さらに、本発明に係る水加熱システム80a及び温浴施設100は、水熱源空調設備40が暖房運転して高温槽30a内の水の温度が低温閾値以下となった場合、排水機構を動作させ高温槽30a内の水を槽外に排出する。これにより、高温槽30a内の水の温度は低温槽30bの水の温度にまで上昇し、加熱部32の負荷の増大を防止するとともに、水熱交換器42における熱交換効率の低下を抑制することができる。
【0036】
また、水加熱システム80b及びこれを用いたスポーツ施設110は、水熱源空調設備40の熱交換に温水槽10(温水プール)の水を用いる。これにより、水熱源空調設備40が冷房運転する際には、水熱交換器42での熱交換により温水槽10の水が加温される。これにより、消費燃料の削減が可能となり、燃料コストの低減と省エネルギー化を図ることができる。また、水加熱システム80b及びスポーツ施設110は、温水槽10内の水の温度が高温閾値を超えて上昇した場合、もしくは暖房運転する場合は水熱交換器42で熱交換に用いる水の流路を熱交換手段60側に切り替える。これにより、温水槽10と水熱交換器42とは分離され、温水槽10に対する加温は停止するとともに、水熱源空調設備40の熱交換は水熱交換器42と熱交換手段60との間で行われる。
【0037】
またさらに、本発明に係る温浴施設100では水熱源空調設備40の室内機46を冷房運転の期間が長い脱衣所12の空調に用いる。これにより、水熱交換器42による加温動作を長期間行うことができる。
【0038】
尚、本例で示した水加熱システム80a、80b、温浴施設100、スポーツ施設110の各部の構成、機構、形状、寸法、動作、配管経路等は一例であるから、特に本例に限定される訳ではなく、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 温水槽
12 脱衣所
13 運動エリア
30 受水槽
30a 高温槽
30b 低温槽
32 加熱部
40 水熱源空調設備
42 水熱交換器
60 熱交換手段
80a、80b 水加熱システム
100 温浴施設
110 スポーツ施設
図1
図2