(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】検出基板およびその製造方法、核酸の検出方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20220125BHJP
C12Q 1/6834 20180101ALI20220125BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220125BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12Q1/6834 Z
C12N15/09 200
(21)【出願番号】P 2018506273
(86)(22)【出願日】2017-07-12
(86)【国際出願番号】 CN2017092594
(87)【国際公開番号】W WO2018099088
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】201611091734.0
(32)【優先日】2016-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】507134301
【氏名又は名称】北京京東方光電科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING BOE OPTOELECTRONICS TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 8 Xihuanzhonglu, BDA, Beijing, 100176, P.R.CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】▲パン▼ ▲風▼春
(72)【発明者】
【氏名】蔡 ▲ペイ▼芝
(72)【発明者】
【氏名】耿 越
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104697969(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0090649(US,A1)
【文献】特開2009-092651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/00
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地基板上に設けられる少なくとも1つの検出ユニットを含む検出基板であって、前記検出ユニットは、
第1電極と、
前記第1電極の前記下地基板から離れる側に設けられ、少なくとも一つの中空構造を含み、前記第1電極と互いに絶縁し、前記第1電極とそれぞれ電圧を印加するように設けられている第2電極と、
少なくとも前記第2電極の前記少なくとも1つの中空構造に設けられ、標的核酸とペアリングするように設けられるリンカーを含むコロイド層とを
含み、
前記第1電極は、前記標的核酸が帯電する極性と相反する極性を有する電圧を印加するように構成され、前記第2電極は、前記標的核酸が帯電する極性と同じ極性を有する電圧を印加するように構成されることを特徴とする検出基板。
【請求項2】
少なくとも1つの前記検出ユニット中の第1電極と第2電極は異なる極性の電圧をそれぞれ印加するように設けられている、請求項1に記載の検出基板。
【請求項3】
前記下地基板に垂直する方向において、前記第1電極は少なくとも前記少なくとも一つの中空構造と重なる、請求項1又は2に記載の検出基板。
【請求項4】
前記第1電極は平面状電極である、請求項1~3のいずれか1項に記載の検出基板。
【請求項5】
前記第2電極は、少なくとも1つのサブ電極ユニットを含み、一つの前記サブ電極ユニットは一つの前記中空構造を囲んで形成する、請求項1~4のいずれか1項に記載の検出基板。
【請求項6】
前記第2電極は電気的に接続している複数のサブ電極ユニットを含む、請求項5に記載の検出基板。
【請求項7】
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられる第1パッシベーション層と、前記第2電極と前記コロイド層との間に設けられる第2パッシベーション層をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の検出基板。
【請求項8】
前記第2パッシベーション層と前記コロイド層の間に設けられるカップリング層をさらに含む、請求項7に記載の検出基板。
【請求項9】
前記カップリング層の材質はシランを含む、請求項8に記載の検出基板。
【請求項10】
前記検出ユニットの数は複数で
あり、異なる検出ユニットの第1電極は互いに離隔され、異なる検出ユニットの第2電極は互いに離隔される、請求項1~9のいずれか1項に記載の検出基板。
【請求項11】
複数の前記検出ユニットはアレイに配置されている、請求項10に記載の検出基板。
【請求項12】
前記コロイド層はゲル層を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の検出基板。
【請求項13】
下地基板上に少なくとも一つの検出ユニットを形成する工程を含む検出基板の製造方法であって、前記検出ユニットを形成する工程は、
第1電極を形成するステップと、
前記第1電極の前記下地基板から遠く離れる側に設けられ、少なくとも一つの中空構造を含み、前記第1電極と互いに絶縁し、前記第1電極とそれぞれ電圧を印加するように設けられている第2電極を形成するステップと、
標的核酸とペアリングするように設けられるリンカーを含むコロイド層を形成するステップとを
含み、
前記第1電極は、前記標的核酸が帯電する極性と相反する極性を有する電圧を印加するように構成され、前記第2電極は、前記標的核酸が帯電する極性と同じ極性を有する電圧を印加するように構成されることを特徴する検出基板の製造方法。
【請求項14】
少なくとも1つの前記検出ユニット中の第1電極と第2電極は異なる極性の電圧をそれぞれ印加するように設けられている、請求項13に記載の検出基板の製造方法。
【請求項15】
前記下地基板に垂直する方向において、前記第1電極は少なくとも前記少なくとも一つの中空構造と
重なり、複数の検出ユニットが設けられ、異なる検出ユニットの第1電極は互いに離隔され、異なる検出ユニットの第2電極は互いに離隔される、請求項13又は14に記載の検出基板の製造方法。
【請求項16】
前記第1電極と前記第2電極との間に第1パッシベーション層を形成するステップ、および、前記第2電極と前記コロイド層との間に第2パッシベーション層を形成するステップを含む、請求項13~15のいずれか1項に記載の検出基板の製造方法。
【請求項17】
さらに、前記第2パッシベーション層と前記コロイド層との間にカップリング層を形成するステップを含む、請求項16に記載の検出基板の製造方法。
【請求項18】
前記コロイド層はゲル層を含む、請求項13~17のいずれか1項に記載の検出基板の製造方法。
【請求項19】
以下の工程を含む核酸の検出方法:
検出基板中の少なくとも1つの検出ユニットを活性ユニットとし、
前記検出基板は、下地基板上に設けられる少なくとも1つの検出ユニットを含み、前記検出ユニットは、
第1電極と、
前記第1電極の前記下地基板から離れる側に設けられ、少なくとも一つの中空構造を含み、前記第1電極と互いに絶縁し、前記第1電極とそれぞれ電圧を印加するように設けられている第2電極と、
少なくとも前記第2電極の前記少なくとも1つの中空構造に設けられ、標的核酸とペアリングするように設けられるリンカーを含むコロイド層とを含む;
前記活性ユニット中の第1電極と第2電極に異なる極性の電圧をそれぞれ印加し、前記活性ユニット中の第1電極に印加する電圧の極性は、前記標的核酸が帯電する極性と相反する;
前記検出基板にライブラリーを通させて、前記活性ユニット中のリンカーと前記ライブラリー中の標的核酸とをペアリングし、且つ増幅して、検出対象である標的核酸を形成する;
検出対象である標的核酸を検出する。
【請求項20】
前記検出基板は複数の検出ユニットを含み、前記活性ユニットを除く検出ユニットの第1電極と第2電極に同一極性の電圧を印加し、前記活性ユニットを除く検出ユニットの第1電極と第2電極に印加される電圧の極性は、前記標的核酸が帯電する極性と同じである、請求項19に記載の核酸の検出方法。
【請求項21】
前記検出ユニットは複数であり、異なる検出ユニットを順次に活性ユニットとし、且つ前記活性ユニットを除く検出ユニットの第1電極と第2電極に前記標的核酸が帯電する極性と同じ極性の電圧を印加し、検出基板に異なるライブラリーを順次に通させて、異なる活性ユニットにおいて増幅と検出を行う、請求項19又は20に記載の核酸の検出方法。
【請求項22】
検出対象である標的核酸を検出する工程は、
前記検出基板と、前記検出対象である標的核酸が結合される少なくとも1種の蛍光標識されたプローブとを接触させるステップと、
前記検出基板上の蛍光シグナルを検出することによって、前記少なくとも1種のプローブが結合される検出対象である標的核酸を識別するステップとを含む、請求項19~20のいずれか1項に記載の核酸の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2016年12月1日に出願された中国特許出願第201611091734.0号の優先権を要求する。ここで、本願の一部として、前記中国特許出願の公開内容の全文を引用する。
【0002】
本発明の少なくとも1つの実施態様は、検出基板およびその製造方法、核酸の検出方法に係る。
【背景技術】
【0003】
遺伝子配列決定技術は現代の分子生物学研究において最も慣用する技術であり、1977年の1代目の遺伝子配列決定からこれまで、遺伝子配列決定技術は相当の発展を遂げ、1代目のsanger配列決定技術、2代目のハイスループット配列決定技術、3代目の一分子配列決定技術、4代目のナノポア配列決定技術があるが、現在の市場主流となっている配列決定技術は依然として2代目のハイスループット配列決定である。
【0004】
2代目のハイスループット配列決定技術は、主にIlluminaの合成によるシーケンシング技術、Thermo Fisherのイオン半導体シーケンシング技術、ライゲーションによるシーケンシング技術およびRocheのピロシーケンシング技術などを含み、その中で、Illuminaは超ハイスループットおよび比較的に長い読み取り長さのメリットを有するため、70%を超える市場シェアを占めている。
【0005】
Illumina配列決定技術は標的DNAを小さい断片に切断した後、その両端に異なるリンカーを加えて、一本鎖DNAライブラリーを構築する。 次いで、一本鎖DNAライブラリーを鋳型として用いてフローセル(flow cell)上でブリッジポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction,PCR)を行い、単一標的DNAの多くのコピーを含むDNA群を数多く生成する;最後に、DNAポリメラーゼ、プライマーおよび蛍光標識された塩基をフローセルに添加し、DNA上に塩基を合成する時に、レーザーによって蛍光シグナルを励起し、且つ相応の光学デバイスによって蛍光シグナルを捕捉し、最終にコンピュータ分析を利用して、光学シグナルを配列決定塩基配列に変換する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の少なくとも1つの実施態様は、検出基板およびその製造方法、核酸の検出方法に関する。検出ユニットの第1電極および第2電極を用いてそれぞれ電圧を印加して標的核酸の増幅および検出を行うことができる。第1電極および第2電極の構造および外観に対する要求は簡単であり、プロセスの難易度を簡略化した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一つの実施態様は、下地基板上に設けられる少なくとも1つの検出ユニットを含む検出基板を提供し、前記検出ユニットは、
第1電極と、
前記第1電極の前記下地基板から離れる側に設けられ、少なくとも一つの中空構造を含み、前記第1電極と互いに絶縁し、前記第1電極とそれぞれ電圧を印加するように設けられている第2電極と、
少なくとも前記第2電極の前記少なくとも1つの中空構造に設けられ、標的核酸とペアリングするように設けられるリンカーを含むコロイド層とを含む。
【0008】
少なくとも1つの前記検出ユニット中の第1電極と第2電極は異なる極性の電圧をそれぞれ印加するように設けられている、本発明の1つの実施態様により提供される検出基板。
【0009】
前記下地基板に垂直する方向において、前記第1電極は少なくとも前記少なくとも一つの中空構造と重なる、本発明の1つの実施態様により提供される検出基板。
【0010】
前記第1電極は平面状電極である、本発明の1つの実施態様により提供される検出基板。
【0011】
前記第2電極は少なくとも1つのサブ電極ユニットを含み、一つの前記サブ電極ユニットは一つの前記中空構造を囲んで形成する、本発明の1つの実施態様により提供される検出基板。
【0012】
前記第2電極は電気的に接続している複数のサブ電極ユニットを含む、本発明の1つの実施態様により提供される検出基板。
【0013】
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられる第1パッシベーション層と、前記第2電極と前記コロイド層との間に設けられる第2パッシベーション層をさらに含む、本発明の1つの実施態様により提供される検出基板。
【0014】
前記第2パッシベーション層と前記コロイド層との間に設けられるカップリング層をさらに含む、本発明の1つの実施態様により提供される検出基板。
【0015】
前記カップリング層の材質はシランを含む、本発明の1つの実施態様により提供される検出基板。
【0016】
前記検出ユニットの数は複数である、本発明の1つの実施態様により提供される検出基板。
【0017】
複数の前記検出ユニットはアレイに配置されている、本発明の1つの実施態様により提供される検出基板。
【0018】
前記コロイド層はゲル層を含む、本発明の1つの実施態様により提供される検出基板。
【0019】
本発明の少なくとも一つの実施態様は、下地基板上に少なくとも一つの検出ユニットを形成するステップを含む検出基板の製造方法を提供し、前記検出ユニットを形成するステップは、
第1電極を形成するステップと、
前記第1電極の前記下地基板から離れる側に設けられ、少なくとも一つの中空構造を含み、前記第1電極と互いに絶縁すし、前記第1電極とそれぞれ電圧を印加するように設けられている第2電極を形成するステップと、
標的核酸とペアリングするように設けられるリンカーを含むコロイド層を形成するステップとを含む。
【0020】
少なくとも1つの前記検出ユニット中の第1電極と第2電極は異なる極性の電圧をそれぞれ印加するように設けられている、本発明の1つの実施態様により提供される検出基板の製造方法。
【0021】
前記下地基板に垂直する方向において、前記第1電極は少なくとも前記少なくとも一つの中空構造と重なる、本発明の1つの実施態様により提供される検出基板の製造方法。
【0022】
前記第1電極と前記第2電極との間に第1パッシベーション層を形成するステップ、および、前記第2電極と前記コロイド層との間に第2パッシベーション層を形成するステップを含む、本発明の1つの実施態様により提供される検出基板の製造方法。
【0023】
さらに、前記第2パッシベーション層と前記コロイド層との間にカップリング層を形成するステップを含む、本発明の1つの実施態様により提供される検出基板の製造方法。
【0024】
前記コロイド層はゲル層を含む、本発明の1つの実施態様により提供される検出基板の製造方法。
【0025】
本発明の少なくとも1つの実施態様はさらに以下のステップを含む核酸の検出方法を提供する。
本発明の実施態様記載のいずれかの検出基板中の少なくとも1つの検出ユニットを活性ユニットとし、前記活性ユニット中の第1電極と第2電極に極性の異なる電圧をそれぞれ印加し、前記活性ユニット中の第1電極に印加する電圧の極性は、前記標的核酸が帯電する極性と相反する;
前記検出基板にライブラリーを通して、前記活性ユニット中のリンカーと前記ライブラリー中の標的核酸とをペアリングし、且つ増幅して、検出対象である標的核酸を形成する;
検出対象である標的核酸を検出する。
【0026】
前記検出基板は複数の検出ユニットを含み、前記活性ユニットを除く検出ユニットの第1電極と第2電極に同一極性の電圧を印加し、前記活性ユニットを除く検出ユニットの第1電極と第2電極に印加される電圧の極性は、前記標的核酸が帯電する極性と同じである、本発明の1つの実施態様により提供される核酸の検出方法。
【0027】
前記検出ユニットは複数であり、順次に異なる検出ユニットを活性ユニットとし、且つ前記活性ユニットを除く検出ユニットの第1電極と第2電極に前記標的核酸が帯電する極性と同じ極性の電圧を印加し、検出基板に異なるライブラリーを順次に通して、異なる活性ユニットにおいて増幅と検出を行う、本発明の1つの実施態様により提供される核酸の検出方法。
【0028】
検出対象である標的核酸を検出するステップは、
前記検出基板と、前記検出対象である標的核酸が結合される少なくとも1種の蛍光標識されたプローブとを接触させるステップと、
前記検出基板上の蛍光シグナルを検出することによって、前記少なくとも1種のプローブが結合される検出対象である標的核酸を識別するステップとを含む、本発明の1つの実施態様により提供される核酸の検出方法。
【0029】
本発明実施態様の技術構成をより明確に説明するために、実施態様の図面について次のように簡単に説明する。明らかに、以下に説明する図面は、本発明の一部の実施態様にしか関わっておらず、本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1a】ナノウェルおよびその製造方法を示す図である。
【
図1b】ナノウェルおよびその製造方法を示す図である。
【
図1c】ナノウェルおよびその製造方法を示す図である。
【
図1d】ナノウェルおよびその製造方法を示す図である。
【
図1e】ナノウェルおよびその製造方法を示す図である。
【
図1f】ナノウェルおよびその製造方法を示す図である。
【
図1g】ナノウェルおよびその製造方法を示す図である。
【
図1h】ナノウェルおよびその製造方法を示す図である。
【
図2a】
図2aは本発明の一実施態様が提供する検出基板の断面図である。
【
図2b】
図2bは標的核酸と本発明の一実施態様が提供する検出基板のリンカーとをペアリングする模式図である。
【
図3a】
図3aは本発明の一実施態様が提供する別の検出基板の平面図である。
【
図3b】
図3bは本発明の一実施態様が提供する検出基板の異なる検出ユニットのパワーアップ状況を示す図である。
【
図3c】
図3cは本発明の一実施態様が提供する検出基板の活性検出ユニットにおける標的核酸が集団になるように増幅する模式図である。
【
図3d】
図3dは本発明の一実施態様が提供する検出基板の検出対象である標的核酸集団の模式図である。
【
図4a】本発明の一実施態様が提供する検出基板の製造方法の模式図である。
【
図4b】本発明の一実施態様が提供する検出基板の製造方法の模式図である。
【
図4c】本発明の一実施態様が提供する検出基板の製造方法の模式図である。
【
図4d】本発明の一実施態様が提供する検出基板の製造方法の模式図である。
【
図4e】本発明の一実施態様が提供する検出基板の製造方法の模式図である。
【
図4f】本発明の一実施態様が提供する検出基板の製造方法の模式図である。
【
図4g】本発明の一実施態様が提供する検出基板の製造方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明実施態様の目的、技術構成、およびメリットをより明確にするように、下記にて、本発明実施態様の図面を組み合わせながら本発明実施態様の技術構成について明確かつ完全に説明する。明らかに、以下に説明する実施態様は、本発明の一部の実施態様に過ぎず、すべての実施態様ではない。以下に説明する本発明の実施態様に基づき、創造的労力を要らない前提下で当業者が得たその他の実施態様は、本発明の保護範囲に属する。
【0032】
別途定義する場合を除き、ここで使用する技術用語または科学技術用語は、本発明が属する分野における一般的な技能を有する者が理解する通常の意味である。本発明で使用される「第一」、「第二」及び類似用語は順序、数量或いは重要性を意味しなく、異なる組成部分を区分するためのものに過ぎない。同様に、「一つ」、「一」或いは「当該」などの類似用語も数量を制限せず、少なくとも一つ存在することを意味する。「Aは、Bを含む」または「Aは、Bを備える」などの類似の表現は、Aという素子または部材が、Bとして列挙された素子または部材、及びその均等物を含むことを意味し、その他の素子または部材を排除するわけではない。「接続」または「連結」などの類似の用語は、物理的または機械的な接続に限らず、電気的な接続も含み、直接でも間接でも構わない。「上」、「下」、「左」、「右」などは相対的な位置関係の表示のみに用いるものであり、記載される対象の絶対的位置が変わった場合、その相対的位置の関係も相応に変化する可能性がある。
【0033】
Illumina配列決定技術において、フローセル(flow cell)チップは、遺伝子配列決定の肝心な部品であり、配列決定スループットを向上させるために、フローセル上でパターン化し、流路上に多くのナノウェルをエッチングする。ナノウェル同士は互いに重なっていないため、蛍光シグナル間に妨害がなく、フローセルの利用率を向上し、それによって配列決定スループットを向上することができる。ナノウェルにおいてPCR増幅および遺伝子配列決定を行うため、ナノウェルの構造に対する要求は非常に厳しく、製造プロセスが複雑になる。
【0034】
図1a―
図1hは、Illuminaナノウェルの製造プロセスを示している。
図1aに示すように、下地基板01上に金属層02をスパッタリングし、当該金属層は犠牲層であり、例えば材質としてCrを用いることができる。次いでフォトレジスト03をスピンコーティングし、フォトリソグラフィ技術を利用して露光し、露光されたフォトレジストを現像して除去し、パターン化されたフォトレジスト030を形成することは
図1bに示される通りである。
図1cに示すように、パターン化されたフォトレジスト030をマスクとして、フォトレジストに保護されない金属をエッチングし、
図1dに示すように、さらにフォトレジストに保護されない下地基板の一部をエッチングする。
図1eに示すように、残りのフォトレジストと金属を剥離して、パターン化された下地基板010を得る。
図1fに示すように、パターン化された下地基板010上にシラン04をスピンコーティングして表面処理し、
図1gに示すように、鋳型DNAとペアリングできるDNAリンカーを備えるゲル05をさらにスピンコーティングし、最後に機械研磨或いは化学研磨を行い、ナノウェル06のみがゲルを有し、DNAペアリングを行えるようにナノウェルの隙間にあるシランおよびゲルを除去し、
図1hに示すナノウェル構造を得る。例えば、下地基板がSi或いはガラスなどであってもよく、ナノインプリント技術を用いてナノウェルを製造することもできる。この方法は製造されたナノウェルの性質に対する要求が高く、且つナノウェルの均一性への要求も高く、下地基板に対するエッチングが比較的に困難である。
【0035】
本発明の少なくとも一つの実施態様は、下地基板上に設けられる少なくとも1つの検出ユニットを含む検出基板を提供し、前記検出ユニットは、
第1電極と、
第1電極の下地基板から離れる側に設けられ、少なくとも一つの中空構造を含み、第1電極と互いに絶縁する第2電極と、
少なくとも第2電極のなくとも1つの中空構造に設けられ、標的核酸とペアリングするように設けられるリンカーを含むコロイド層とを含み、
第1電極と第2電極はそれぞれ電圧を印加するように設けられている。
【0036】
本発明の少なくとも一つの実施態様が提供する検出基板は、検出ユニットの第1電極と第2電極を利用してそれぞれ電圧を印加して標的核酸の増幅(例えばPCR増幅)および検出(例えば配列決定)を行う。例えば、第1電極を用いて標的核酸が帯電する極性と相反する極性の電圧を印加し、第2電極を用いて標的核酸が帯電する極性と同じ極性の電圧を印加することによって、ナノウェルに類似する構造を形成でき、標的核酸は検出ユニット中のリンカーとペアリングでき、それによって標的核酸の増幅および検出を行う可能である。第1電極および第2電極の構造および外観に対する要求は簡単であり、プロセスの難易度を簡略化した。
【0037】
本発明の少なくとも一つの実施態様は、下地基板上に少なくとも一つの検出ユニットを形成するステップを含む検出基板の製造方法を提供し、検出ユニットを形成するステップは、
第1電極を形成するステップと、
第1電極の下地基板から離れる側に設けられ、少なくとも一つの中空構造を含み、第1電極と互いに絶縁する第2電極を形成するステップと、
標的核酸とペアリングするように設けられるリンカーを含むコロイド層を形成するステップとを含み、
第1電極と第2電極はそれぞれ電圧を印加するように設けられている。
【0038】
本発明の少なくとも一つの実施態様が提供する検出基板の製造方法は、第1電極および第2電極の構造および外観に対する要求は簡単であり、製造プロセスも簡単であり、且つ表面研磨処理する必要がない。
【0039】
本発明の少なくとも1つの実施態様はさらに以下のステップを含む核酸の検出方法を提供する。
本発明の少なくとも1つの実施態様が提供するいずれかの検出基板中の少なくとも1つの検出ユニットを活性ユニットとし、活性ユニット中の第1電極と第2電極に極性の異なる電圧をそれぞれ印加し、活性ユニット中の第1電極に印加する電圧の極性は、標的核酸が帯電する極性と相反する;
前記検出基板にライブラリーを通して、活性ユニット中のリンカーとライブラリー中の標的核酸とをペアリングし、且つ増幅して、検出対象である標的核酸を形成する;
検出対象である標的核酸を検出する。
【0040】
本発明の少なくとも1つの実施態様が提供する核酸の検出方法は、異なる領域の第1電極と第2電極のパワーアップ状況を制御でき、それによって異なるライブラリーを異なる領域に導入するように制御し、barcodeを利用してライブラリーを区分する必要がなく、一度でより多くのライブラリーに対して配列決定を行う可能であり、確実なコントロールを実現した。それによって、核酸の検出流れを簡略化し、検出時間を縮め、検出コストを低減できる。
【0041】
以下、いくつかの実施例によって説明する。
【0042】
実施例1
図2aに示すように、本実施例は、下地基板10上に設けられる少なくとも1つの検出ユニット100を含む検出基板1010を提供する。
【0043】
検出ユニット100は、
第1電極11と、
第1電極11の下地基板10から離れる側に設けられ、少なくとも一つの中空構造1300を含み、第1電極11と互いに絶縁する第2電極13と、
少なくとも第2電極13の少なくとも1つの中空構造1300に設けられ、標的核酸18(
図2aに示されず、
図2bを参照)とペアリングするように設けられるリンカー170を含むコロイド層17とを含み、
第1電極11と第2電極13はそれぞれ電圧を印加するように設けられている。例えば
図2bに示すように、リンカー170は標的核酸18の一部とペアリングすることで、その後の標的核酸の増幅を容易にする。コロイド層17はリンカー170を収容するように設けられた。
【0044】
例えば、第1電極11に、標的核酸18が帯びている電気(電荷)と反対の極性の電圧を印加することで、リンカーとペアリングするように標的核酸を引き寄せる。例えば、実験又は環境によって標的核酸18が帯電する極性を確定することができるが、これに限定されるわけではない。例えば、標的核酸18が帯電する極性は環境に関係する。例えば標的核酸18はアルカリ性環境において負電荷を帯びてもよい。例えば標的核酸18はアルカリ性溶液において、リン酸残基が存在するため、負電荷を帯びてもよい。例えば、本実施例において、極性は正と負を含む。例えば、極性が同一であることは、極性が同じく正であるかあるいは同じく負であることを意味する。極性が反対であることは、一方が正で他方が負であることを意味する。
【0045】
本実施例が提供する検出基板は、検出ユニットの第1電極と第2電極を利用してそれぞれ電圧を印加して標的核酸の増幅(例えばPCR増幅)および検出(例えば配列決定)を行うことができる。第1電極および第2電極の構造および外観に対する要求は簡単であり、プロセスの難易度を簡略化した。
【0046】
例えば、標的核酸18は、ペアリングによってゲル材料のリンカー170に付着されてもよく、且つリンカー170は、付着した標的核酸を増幅するために使用され得る。すなわち、標的核酸を、増幅するための鋳型として用いることができる。例えば、リンカー170は、標的核酸18に含まれるリンカーとペアリングすることができる。リンカー170は、プライマーであってもよく、例えば、プライマー核酸であってもよいが、これに限定されるわけではない。例えば、標的核酸18は鋳型核酸と呼ばれてもよい。リンカー170は、通常のリンカーを用いるこができ、通常の方法でコロイド層17中に付着できる。例えば、標的核酸のクローン集団が形成されるように、複数のリンカー170を各検出ユニット100に含ませてもよい。例えば、ブリッジPCR増幅を容易に行うために、2種類のリンカー170を各検出ユニット100に含ませる。例えば、標的核酸18は、一本鎖デオキシリボ核酸(DNA)断片であってもよいが、これに限定されるわけではない。
【0047】
コロイド層17として通常の材料を使用でき、例えば、コロイド層17はゲル層であってもよく、例えば、ゲル層はヒドロゲルを含んでもよい。さらに、例えば、アガロースなどのコロイド状構造、ゼラチンなどのポリマーネットワーク構造、又はポリアクリルアミドなどの架橋ポリマー構造のものを用いることができる。コロイド層の材料として、シランフリーアクリルアミド或いはN-(5-(2-ブロモアセチル)アミノペンチル)アクリルアミド(BRAPA)も挙げられる。なお、コロイド層17の材料は、上記挙げられたものに限定されるわけではない。
【0048】
例えば、少なくとも一つの検出ユニット100中の第1電極11及び第2電極13は、異なる極性の電圧をそれぞれ印加するように配置されている。第1電極11及び第2電極13がそれぞれ異なる極性の電圧を印加する、少なくとも一つの検出ユニット100を活性ユニットと呼ばれてもよい。例えば、
図2bに示すように、第1電極11を用いて標的核酸18が帯電する極性と相反する極性の電圧を印加することにより、第1電極11の、第2電極13の中空構造1300に対応する位置において、標的核酸を引き寄せて、リンカー170を標的核酸18とペアリングできるようにして、一方、第2電極13は標的核酸18が帯電する極性と同じ極性の電圧を印加し、第2電極13に対応する位置において、リンカー170があっても、反発相互作用のため、標的核酸18はそれとペアにならず、それによってナノウェル様構造を形成することができるため、検出基板において、標的核酸18は活性ユニット中のリンカー170とペアリングでき、標的核酸の増幅と検出を行う可能になる。例えば、異なる検出ユニット100は異なる標的核酸と結合できるが、これに限定されるわけではない。
【0049】
例えば、
図2a、
図2bおよび
図3aに示すように、下地基板10に垂直する方向において、少なくとも、第1電極11は少なくとも一つの中空構造1300と重なっている。したがって、中空構造1300に対応する領域において、第1電極11によって印加された電圧は、相反する極性の電圧を有する標的核酸を該検出ユニット100に引き寄せることができるので、それによって該検出ユニット100中のリンカー170と標的核酸18とをペアリングさせる。
図2b及び
図3bに示すように、標的核酸18が負に帯電することを例として説明すると、標的核酸18は負に帯電するため、第1電極11に正電荷を印加し、第2電極13に負電荷を印加することができる。なお、本実施例はこれに限定されるわけではない。
【0050】
例えば、
図3aに示すように、第1電極11は平面状電極であってもよい。平面状電極は形成されやすく、作製が容易である。ただし、第1電極11は、平面状電極に限らず、例えば、第2電極13の中空構造1300のみに対応してもよい。例えば、第1電極11は、第2電極13の中空構造1300に対応する部分を少なくとも含む。すなわち、下地基板10に垂直する方向において、第2電極13は、少なくとも第2電極13によって形成された(に含まれた)少なくとも1つの中空構造1300と重なっている。
【0051】
例えば、
図3aに示すように、第2電極13は少なくとも1つのサブ電極ユニット131を含んでもよく、1つのサブ電極ユニット131は一つの中空構造1300を囲んで形成する。例え、
図3aに示すように、第2電極13は、複数のサブ電極ユニット131を含んでもよく、複数のサブ電極ユニット131は電気的に接続される。異なるサブ電極ユニット131は、共用(共通)の部分を有してもよい。
図3aに示される第2電極13は、異なる位置で異なる幅を有することができるが、これに限定されるわけではない。例えば、第2電極13は、異なる位置で同じ幅を有してもよい。
【0052】
例えば、
図2b、
図3bに示すように、検出基板1010はさらに、第1電極11と第2電極13との間に配置された第1パッシベーション層12と、第2電極13とコロイド層17との間に配置された第2パッシベーション層15とを含む。第1パッシベーション層12及び第2パッシベーション層15は、平面層であってもよいが、これに限定されるわけではない。第1パッシベーション層12を設けることにより、第1電極11と第2電極13とを互いに絶縁することができる。第2パッシベーション層15を設けることにより、コロイド層を容易に形成することができる。例えば、第1パッシベーション層12及び第2パッシベーション層15として、通常の材料を用いることができる。例えば、第1パッシベーション層12及び第2パッシベーション層15として、酸化タンタルを用いることができるが、これに限定されるわけではない。例えば、第1パッシベーション層12および第2パッシベーション層15としては、SiO
x、SiN
x、SiN
xO
y、或いは樹脂などを用いることができる。
【0053】
例えば、
図2aおよび
図3bに示すように、検出基板1010は、さらに第2パッシベーション層15とコロイド層17との間に配置されるカップリング層16を含むことができる。カップリング層16は、コロイド層17を下地基板10により強く付着させることができる。例えば、カップリング層16の材料は、シランを含むが、これに限定されるわけではない。
【0054】
例えば、
図3aに示すように、検出ユニット100の数は複数であってもよい。検出ユニット同士は互いに重なっていないため、検出時の蛍光シグナル間の妨害をなくし、検出基板の利用率を向上でき、それによって配列決定スループットを向上し、ハイスループットな配列決定を達成できる。
図3aは、第1検出ユニット101、第2検出ユニット102及び第3検出ユニット103という3つの検出ユニット100のみを示すが、検出ユニット100の数はこの図面に制限されない。
【0055】
異なる時点で、検出ユニットへのパワーアップ状況に従って、異なる検出ユニットで増幅および検出を行うことができる。例えば、
図3bに示すように、ある時点で、反対の極性の電圧が印加された第1電極11及び第2電極13の検出ユニット(活性ユニット0100、
図3a、3bに示す第1検出ユニット101)において増幅及び検出を行うことができ、一方、標的核酸と同じ極性の電圧が印加された第1電極11及び第2電極13の検出ユニット(非活性ユニット、第2検出ユニット102及び第3検出ユニット103)において、リンカーと標的核酸はペアにならず、増幅は発生しない。異なる時点で、異なる検出ユニット(領域)の第1電極および第2電極のパワーアップ情況を制御でき、それによって異なるライブラリーを異なる領域に導入するように制御し、barcodeを利用してライブラリーを区分する必要がなく、一度でより多くのライブラリーに対して配列決定を行う可能であり、確実なコントロールを実現した。それによって、核酸の検出流れを簡略化し、検出時間を縮め、検出コストを低減できる。
【0056】
図3cに示すように、増幅した後、検出対象である標的核酸の集団180を形成でき、
図3dに示すように、検出対象である標的核酸の集団180は複数の検出対象である標的核酸1800を含むため、その後の検出過程での蛍光シグナルの増強に有利である。なお、検出対象である標的核酸の集団180に含まれる検出対象である標的核酸1800の数は図示のものに制限されず、検出対象である標的核酸1800の形態は図示のものに制限されない。例えば、検出対象である標的核酸1800と標的核酸18は相補的な配列を有することができるが、これに限定されるわけではない。例えば、検出対象である標的核酸1800と標的核酸18は、同じ配列を有してもよい。
【0057】
例えば、複数の検出ユニット100をアレイに配置してもよいが、これに限定されるわけではなく、例えば、他の配置方式を用いてもよい。例えば、複数の検出ユニット100は、ランダムに分布してもよい。例えば、異なる検出ユニット100のコロイド層17中のリンカー170は、同じであっても異なっていてもよく、必要に応じて決定されてもよく、本実施例においてはこれを限定しない。例えば、
図3aに示すように、異なる検出ユニット100の間の領域(間隔領域19)にコロイド層17を設けなくてもよいし、或いは、間隔領域19のコロイド層17を不活性化して、成長中の核酸集団が外部に移ることを阻止できる。それによって、標的核酸18の増幅が検出ユニット100内に制限され、且つ中空構造1300に対応する領域のみにおいて標的核酸18の増幅を行う。
【0058】
例えば、各検出ユニット100の第1電極11と第2電極13は、シグナルをかけやすいように、それぞれの導線に別々に接続してもよい。
【0059】
実施例2
本実施例は、下地基板10上に少なくとも一つの検出ユニット100を形成するステップを含む検出基板1010の製造方法を提供する。
【0060】
検出ユニット100を形成する工程は、
第1電極11を形成するステップと、
第1電極11の下地基板10から離れる側に設けられ、少なくとも一つの中空構造1300を含み、第1電極11と互いに絶縁する第2電極13を形成するステップと、
標的核酸18とペアリングするように設けられるリンカー170を含むコロイド層17を形成するステップとを含み、
第1電極11と第2電極13はそれぞれ電圧を印加するように設けられている。
【0061】
例えば、少なくとも1つの検出ユニット100中の第1電極11と第2電極13は異なる極性の電圧をそれぞれ印加するように設けられている。
【0062】
例えば、下地基板10に垂直する方向において、少なくとも、第1電極11は少なくとも一つの中空構造1300と重なる。
【0063】
例えば、検出基板1010の製造方法はさらに、第1電極11と第2電極13の間に第1パッシベーション層12を形成するステップと、第2電極13とコロイド層17の間に第2パッシベーション層15を形成するステップを含む。
【0064】
例えば、検出基板1010の製造方法はさらに第2パッシベーション層15とコロイド層17の間にカップリング層16を形成するステップを含む。
【0065】
一つの例において、検出基板1010の製造方法は以下のステップを含む。
【0066】
ステップ1:下地基板10上に第1電極11を形成する。例えば、下地基板10上に第1電極11を形成するステップは、下地基板10上に第1電極層を形成し、且つそれをパターン化して第1電極11を形成するステップを含んでもよい。さらに、例えば、下地基板10上に導電層を付着した後、フォトレジストをスピンコーティングし、フォトリソグラフィ技術を利用して露光を行い、現像によって露光されたフォトレジストを除去し、フォトレジストに保護されていない導電層をエッチングし、残りのフォトレジストを剥離して、第1電極を制作するステップを含んでもよい。
【0067】
ステップ2:
図4aに示すように、第1電極11上に第1パッシベーション層12、第2電極層130及びフォトレジスト層140をこの順に形成する。
【0068】
ステップ3:
図4bに示すように、フォトレジスト層140を露光、現像して、パターン化されたフォトレジスト14を形成する。
【0069】
ステップ4:
図4cに示すように、パターン化されたフォトレジスト14をマスクとして、第2電極層130をエッチングして第2電極13を得る。例えば、第2電極の製造方法と第1電極の製造方法とは、パターンが異なる以外に、製造方法が同じであってもよい。
【0070】
ステップ5:
図4dに示すように、パターン化されたフォトレジスト14を剥離する。
【0071】
ステップ6:
図4eに示すように、第2電極13上に第2パッシベーション層15を形成する。
【0072】
ステップ7:
図4fに示すように、第2パッシベーション層15上にカップリング層16を形成する。
【0073】
ステップ8:
図4gに示すように、カップリング層16上に、リンカー170を含有するコロイド層17を形成する(この図に示されていないが、
図2aを参照ください)。
【0074】
例えば、第1電極11及び/又は第2電極13の材質として、透明性導電材料を用いることができ、例えば、導電性金属酸化物が挙げられ、さらに例えば酸化インジウムスズ(ITO)が挙げられる。
【0075】
例えば、下地基板10として、Siやガラスなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。例えば、ナノインプリント技術を用いて検出基板を製造することもできる。
【0076】
本実施例の方法を用いれば実施例1に記載のいずれかの検出基板1010を製造することができる。同じ又は類似な箇所は再度言及しない。
【0077】
実施例3
本実施例は以下のステップを含む核酸の検出方法を提供する。
実施例1記載のいずれかの検出基板1010中の少なくとも1つの検出ユニット100を活性ユニット0100とし、活性ユニット中の第1電極11と第2電極13に極性の異なる電圧をそれぞれ印加し、活性ユニット0100中の第1電極11に印加する電圧の極性は、標的核酸18が帯電する極性と相反し、これに対して、活性ユニット0100中の第2電極13に印加する電圧の極性は、標的核酸18が帯電する極性と同じである;
検出基板1010にライブラリーを通して、活性ユニット中のリンカー170とライブラリー中の標的核酸18とをペアリングし、且つ増幅して、検出対象である標的核酸を形成する(検出対象である標的核酸の集団);
検出対象である標的核酸を検出する。例えば、検出において、合成しながら検出する。例えば、検出後に標的核酸の配列を得ることができる。
【0078】
例えば、検出対象である標的核酸の集団は複数の検出対象である標的核酸を含む。
【0079】
少なくも1種のプローブは、少なくとも1種の検出対象である標的核酸の少なくとも一部と相補する少なくとも1種の核酸を含む。
【0080】
例えば、少なくとも1種のプローブは、複数種の蛍光標識された塩基を含む。例えば、少なくとも1種のプローブは、4種の蛍光標識されたデオキシヌクレオチド三リン酸(deoxy-ribonucleoside triphosphate、dNTP)を含む。
【0081】
例えば、検出基板1010は複数の検出ユニット100を含み、活性ユニット以外の検出ユニット100(非活性ユニット)の第1電極11と第2電極13に同じ極性の電圧を印加する。該同じ極性の電圧の極性は、標的核酸が帯電(電荷)する極性と同じであるため、標的核酸を排斥し、非活性ユニット中のリンカーとペアリングすることを避ける。
【0082】
例えば、検出ユニット100は複数個存在し、異なる検出ユニット100を順次に活性ユニットとし、且つ活性ユニット以外の検出ユニット100の第1電極11と第2電極13に同じ極性の電圧を印加し、検出基板1010に異なるライブラリーを順次に通させて、異なる活性ユニット内で増幅及び検出を行う。
【0083】
例えば、検出対象である標的核酸を検出する工程は、
検出基板1010と、検出対象である標的核酸が結合された少なくとも1種の蛍光標識されたプローブとを接触させるステップと、
検出基板1010上の蛍光シグナルを検出することによって、少なくとも1種のプローブが結合された検出対象である標的核酸を識別するステップとを含む。
【0084】
以下、標的核酸を標的DNA(鋳型DNAまたはDNA鋳型)として、遺伝子配列決定を行うことを例として、検出方法を説明する。標的核酸18が負電荷を帯びることを例として説明する。
【0085】
まず、第1検出ユニット101中の第1電極11を正に帯電させ、第2電極13を負に帯電させ、他の検出ユニットの第1電極11および第2電極13をすべて負に帯電させた後、検出基板1010に第1ライブラリーを通させて、それによって、第1ライブラリー中の標的DNAは第1検出ユニット101中に吸着されて、その中のリンカー170とペアリングする。
【0086】
再度、第2検出ユニット102中の第1電極11を正に帯電させ、第2電極13を負に帯電させ、他の検出ユニットの第1電極11および第2電極13をすべて負に帯電させた後、検出基板1010に第2ライブラリーを通させて、それによって、第2ライブラリー中の標的DNAは第2検出ユニット102中に吸着されて、その中のリンカー170とペアリングする。
【0087】
順次に異なる検出ユニットを活性ユニット(活性ユニットにおいて、第1電極は正電荷を帯び、第2電極は負電荷を帯びる)とし、次いで相応のライブラリーを検出基板1010に通させて、それによって各ライブラリーを互いに分かれるようにして、増幅及び検出しやすいために、異なる検出ユニットでポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction、PCR)を行い、barcodeを利用してライブラリーを区分する必要がなく、配列決定の流れを簡略化し、配列決定の時間を縮め、配列決定のコストを低減できる。
【0088】
本発明の実施例は、検出ユニットの第1電極と第2電極を利用して標的核酸の増幅及び検出を行い、製造プロセス、及び第1電極と第2電極の構造及び外観に対する要求は簡単であり、ハイスループットな配列決定を実現するとともに、プロセスの難易度を簡略化し、且つ表面研磨処理する必要もなく、異なる検出ユニットの第1電極と第2電極のパワーアップ状況を制御でき、それによって異なるライブラリーを異なる領域に導入するように制御し、barcodeを利用してライブラリーを区分する必要がなく、一度でより多くのライブラリーに対して配列決定を行う可能であり、確実なコントロールを実現した。それによって、遺伝子の配列決定の流れを簡略化し、配列決定の時間を縮め、配列決定のコストを低減できる。
【0089】
例えば、以下の方法を用いてライブラリーを構築することができる。超音波を利用して検出対象であるDNAサンプルを小さな断片に切断して、現在では、組立及び一部の特殊的な要求の場合を除き、一般的には長さが200~500bpである配列断片に切断し、且つこれらの小さい断片の両端に異なるリンカーを添加して、一本鎖DNAライブラリーを構築する。例えば、標的核酸18に含まれるリンカーは、リンカー170とペアリングするように配置されることができる。
【0090】
例えば、ライブラリーが構築された後、これらのライブラリー中のDNAは検出基板を通過するときに活性ユニットの表面に付着し、その中のリンカーとペアリングする。各々の検出ユニットの表面には数多くのリンカーが付着してもよく、これらのリンカーはライブラリー構築中にDNA断片の両端に加えられたリンカーとペアリングでき、且つその表面でDNAがブリッジPCR増幅を行えるようにする。
【0091】
例えば、ブリッジPCR増幅および変性において、ブリッジPCRは、検出ユニットの表面に固定されているリンカーを鋳型として、ブリッジ増幅を行う。増幅と変性を絶え間なくリサイクルした結果、最終的に各々のDNA断片はいずれも自分の位置で集中されてビームになり、各々のビームはいずれも単一標的DNAの多数のコピー(検出対象である標的核酸を形成する)を有し、この工程は、配列決定に必要なシグナル要求を満たすように塩基のシグナル強度を拡大することを目的としている。
【0092】
例えば、配列決定の過程において、DNAポリメラーゼ、リンカープライマーおよび塩基特異的に蛍光標識された4種のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(deoxy-ribonucleoside triphosphate、dNTP)を同時に反応系に添加してもよい。これらのdNTPの3’-OHは化学的に保護されるため、一度に1つのdNTPしか添加できない。dNTPが合成鎖に添加された後、全ての未使用の遊離dNTPおよびDNAポリメラーゼは溶出されることになる。次いで、蛍光を励起するための緩衝液を添加し、蛍光シグナルをレーザーによって励起し、且つ光学設備を用いて蛍光シグナルを記録し、最後に、コンピュータ分析によって光学シグナルを配列決定塩基に変換する。このように、蛍光シグナルを記録した後、化学試薬を加えて蛍光シグナルを消光してdNTPの3'-OH保護基を取り出し、次の配列決定反応を行えるようにする。
【0093】
例えば、「ライブラリー」という用語は、検体に関連して使用される場合、異なる化学組成を有する検体の集合を指す。典型的に、ライブラリー中の検体は、属又はクラスの共通的な特徴又は特性を有するが、他の形でいくつかの方面で相違している異なる種であってもよい。例えば、ライブラリーは、核酸配列が異なるが、糖-リン酸主鎖を有する点で類似している核酸種を含むことができる。
【0094】
例えば、「核酸」および「ヌクレオチド」という用語は、当技術分野でのこれらの用法と一致し、天然に存在する種またはその機能的類似物を含むことを意図する。核酸の特に有用な機能的類似物は、配列特異的な方式で核酸にハイブリダイズすることが可能であるか、または、特定のヌクレオチド配列の複製における鋳型として使用することが可能である。天然に存在する核酸は、概して、ホスホジエステル結合を含む主鎖を有する。類似物の構造は、いずれかの主鎖連結を有することが可能である。天然に存在する核酸は、概して、(例えば、デオキシリボ核酸(DNA)から発見される)デオキシリボース糖(deoxyribose sugar)または(例えば、リボ核酸(RNA)から発見される)リボース糖(ribose sugar)を有する。核酸は、当技術分野で知られるこれらの糖部の種々の類似物のいずれかを有する、ヌクレオチドを含むことが可能である。核酸は、天然の、または、非天然のヌクレオチドを含むことが可能である。この点について、天然のデオキシリボ核酸は、アデニン、チミン、シトシンまたはグアニンからなる群から選択した1つまたは複数の塩基を有することが可能であり、リボ核酸は、ウラシル、アデニン、シトシンまたはグアニンからなる群から選択した1つまたは複数の塩基を有することが可能である。核酸またはヌクレオチドに含まれ得る有用な非天然塩基が、当技術分野で知られている。「プローブ」または「標的」という用語は、核酸に関連して用いる場合、核酸の意味識別子として意図するものであり、別途で明確な指示がない限り、核酸の構造または機能を限定するものではない。類似的に、「プローブ」および「標的」という用語は、タンパク質、小分子、細胞等といった他の検体にも適用することが可能である。
【0095】
なお、以下の点を説明する必要がある。
(1)別途に定義されない限り、本発明の実施例および図面において、同一の図面符号は同じ意味を表す。
(2)本発明実施例の図面は、本発明実施例に関する構造のみに係り、他の構造は共通の設計を参照できる。
(3)分かりやすくするために、本発明実施例を示すための図面において、層または領域の厚さは拡大されておる。層、膜、領域または基板などの部品が別の部品の「上」または「下」に位置すると記載される場合、該部品が別の部品の「真上」又は「真下」に位置してもよいし、中間部品が存在してもよい。
(4)矛盾がない場合、本発明の同一実施例および異なる実施例の特徴は、互いに組み合わせることができる。
【0096】
上述は本発明の具体的な実施態様に過ぎず、本発明の保護範囲はこれに限定されるわけではなく、本分野を熟知している当業者は本発明開示の技術範囲内に容易に想到できる如何なる変化や置換は、本発明の保護範囲にカバーされるべきである。従って、本発明の保護範囲は、請求の範囲の保護範囲を基準とするべきである。
【符号の説明】
【0097】
01 下地基板
010 パターン化された下地基板
02 金属層
03 フォトレジスト
030 パターン化されたフォトレジスト
04 シラン
05 ゲル
06 ナノウェル
10 下地基板
11 第1電極
12 第1パッシベーション層
13 第2電極
14 パターン化されたフォトレジスト
15 第2パッシベーション層
16 カップリング層
17 コロイド層
18 標的核酸
19 間隔領域
100 検出ユニット
101 第1検出ユニット
102 第2検出ユニット
103 第3検出ユニット
130 第2電極層
131 サブ電極ユニット
140 フォトレジスト層
170 リンカー
180 標的核酸の集団
1010 検出基板
1300 中空構造
1800 標的核酸