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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】モータ車両のフロントフォーク
(51)【国際特許分類】
   B62K 21/02 20060101AFI20220125BHJP
   B62K 5/05 20130101ALI20220125BHJP
   B62K 5/10 20130101ALI20220125BHJP
【FI】
B62K21/02
B62K5/05
B62K5/10
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2018528321
(86)(22)【出願日】2016-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 IB2016058017
(87)【国際公開番号】W WO2017115273
(87)【国際公開日】2017-07-06
【審査請求日】2019-09-27
(31)【優先権主張番号】102015000088081
(32)【優先日】2015-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラッファエッリ,アンドレア
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特許第5509401(JP,B1)
【文献】特開平03-281490(JP,A)
【文献】特開2004-237791(JP,A)
【文献】特開2003-081165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 21/02
B62K 5/05
B62K 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ車両(12)のフロントフォーク(4)であって、
-第一裏打ち(24)と第一幹部(28)を備え、
-前記第一幹部(28)は第一スライド軸(X-X)に沿って前記第一裏打ち(24)の内側の成形結合を介して軸方向にスライドし、前記第一幹部(28)は円形の断面を備え少なくとも部分的に円筒形で、前記第一スライド軸(X-X)と同軸であり、
-前記第一ロッド(28)と前記第一裏打ち(24)の一方は、車輪(10)の車軸ジャーナルの回転ピン(36)を収容するように構成した一つのハブ(32)に、他方はブラケット(44)を介して操舵カラム(40)に、又はその逆に関連付けられ、
-前記第一裏打ち(24)と回転一体的な第二裏打ち(48)を備え、前記第一スライド軸(X-X)と直交する射影面(P)に対して、前記第一裏打ち(24)の射影エリア(突出部分)は前記第二裏打ち(48)の射影エリア(突出部分)に偏心して収容されるように配置され、
-前記第二裏打ち(48)は前記ハブ(32)又は前記操舵カラム(40)に一体的に取り付けられる、フロントフォーク。
【請求項2】
前記第二裏打ち(48)は、第二スライド軸(Y-Y)に対して円形の断面を備えた円筒成形結合に従って前記第一裏打ち(24)に関連付けられ、前記第二スライド軸(Y-Y)は前記第一スライド軸(X-X)と平行であり、偏心度(52)だけそれから距離を介している、請求項1に記載のモータ車両のフロントフォーク(4)。
【請求項3】
前記第二裏打ち(48)は、前記第一スライド軸(X-X)及び前記第二スライド軸(Y-Y)と平行に前記第一裏打ち(24)に対して軸方向にスライドする、請求項2に記載のモータ車両のフロントフォーク(4)。
【請求項4】
前記第一幹部(28)と前記第二裏打ち(48)は、前記操舵カラム(40)と回転一体的な操舵ブラケット(44)に取り付けられる、前記請求項1から3のいずれかに記載のモータ車両のフロントフォーク(4)。
【請求項5】
前記第二裏打ち(48)は円形の断面を備えた内部の円筒形で、前記第一裏打ち(24)の外側側壁(56)に対して逆形状であり、前記第二裏打ち(48)と前記第一裏打ち(24)の間にスライド軸受け筒(60)が挿置され、前記第一及び第二裏打ち(24、48)の間のシールとして機能する、前記請求項1から4のいずれかに記載のモータ車両のフロントフォーク(4)。
【請求項6】
-前記第一及び第二裏打ち(24、48)は互いに単一部品であり、前記第一スライド軸(X-X)を規定する第一円筒チャンバ(64)と、前記第一スライド軸(X-X)と平行であり、偏心度(52)だけそれから距離を介した第二スライド軸(Y-Y)を規定する第二円筒チャンバ(68)をそれぞれ画定する、
請求項1に記載のモータ車両のフロントフォーク(4)。
【請求項7】
前記幹部(28)は、互いに単一部品で、前記第一円筒チャンバ(64)に少なくとも部分的に挿入され逆形状の第一突起部(72)と、前記第二円筒チャンバ(68)に少なくとも部分的に挿入され逆形状の第二突起部(76)を備え、前記突起部(72、76)は前記偏心度(52)だけ互いに距離を介した前記対応する第一及び第二スライド軸(X-X、Y-Y)に対して対称である、請求項6に記載のモータ車両のフロントフォーク(4)。
【請求項8】
前記第一裏打ち(24)は、関連する前記車輪(10)を取り付けるハブ(32)への取付け脚部(80)と、関連する前記車輪(10)と一体的なブレーキディスク(88)を少なくとも部分的に収容する少なくとも一つの凹部(84)を備える、前記請求項1から7のいずれかに記載のモータ車両のフロントフォーク(4)。
【請求項9】
前記第一裏打ち(24)は、ディスク・ブレーキ・キャリパ(92)の取付け手段(90)を備える、前記請求項1から8のいずれかに記載のモータ車両のフロントフォーク(4)。
【請求項10】
前記ハブ(32)と前記操舵カラム(40)の間に挿置した弾性サスペンション手段(96)を備え、前記ハブ(32)によって支持される関連する前記車輪(10)のサスペンションを形成し、前記第一スライド軸(X-X)に沿って前記第一裏打ち(24)の内側における前記第一幹部(28)の軸方向のスライド運動を制御する、前記請求項1から9のいずれかに記載のモータ車両のフロントフォーク(4)。
【請求項11】
前記弾性サスペンション手段(96)は、前記第一裏打ち(24)及び/又は前記第二裏打ち(48)の内側に配置される、請求項10に記載のモータ車両のフロントフォーク(4)。
【請求項12】
前記弾性サスペンション手段(96)は、前記第一裏打ち(24)及び/又は前記第二裏打ち(48)の外側に少なくとも部分的に配置される、請求項10に記載のモータ車両のフロントフォーク(4)。
【請求項13】
前記弾性サスペンション手段(96)はバネ(98)及び/又はダンパ(100)を備える、請求項10から12のいずれかに記載のモータ車両のフロントフォーク(4)。
【請求項14】
前記第一裏打ち(24)は、前記モータ車両の前輪(10)における車軸ジャーナルの回転ピン(36)に接続され、それを回転状態で支持し、前記第一幹部(28)はブラケット(44)を介して、前記モータ車両の第一操舵カラム(36)に接続される、
請求項1から13のいずれかに記載のフロントフォーク(4)を備えるモータ車両前方キャリッジ(8)。
【請求項15】
請求項14に記載の前方キャリッジ(8)であって、二つの前輪(10´、10´´)を備え、各前輪は請求項1から13のいずれか一項に記載のフロントフォーク(4´、4´´)によって支持される、前方キャリッジ(8)。
【請求項16】
-前端シャーシ(16)と、
-多関節四辺形(102)を介して前記前端シャーシ(16)に機械的に接続される一対の前輪(10´、10´´)を備え、
-前記多関節四辺形(102)は、中央ヒンジ(108)において前記前端シャーシ(16)にヒンジ接続される上側交差部材(104)と下側交差部材(105)を備え、
-前記交差部材(104、105)は、側面ヒンジ(116´、116´´)において横方向端部(110、112)で旋回される支柱(114´、114´´)によって逆側の前記横方向端部(110、112)に共に接続され、各支柱(114´、114´´)は上側端部(120´、120´´)から下側端部(124´、124´´)まで延在し、前記上側端部(120´、120´´)は前記上側交差部材(104)と対向し、前記下側端部(124´、124´´)は前記下側交差部材(105)と対向し、
-前記交差部材(104、105)と前記支柱(114´、114´´)は前記多関節四辺形(102)を画定し、
-各支柱(114´、114´´)は、対応する各車輪(10´、10´´)の対応する第一及び第二操舵軸(Z´-Z´、Z´´-Z´´)の周りで、請求項1から13のいずれかに記載のフロントフォーク(4´、4´´)に回転可能なまま接続される、モータ車両前方キャリッジ(8)。
【請求項17】
前記フロントフォーク(4)のブラケット(44)は、前記多関節四辺形(102)の各支柱(114´、114´´)の前記下側端部(124´、124´´)内で回転可能なまま係合される、請求項16に記載の前方キャリッジ(8)。
【請求項18】
ブラケット(44´、44´´)は対応する各第一幹部(28´、28´´)に固定され、前記フォーク(4´、4´´)の回転を制御し、前記ブラケット(44´、44´´)は更に、相対的操舵ヒンジ(128´、128´´)において前記各支柱(114´、114´´)にヒンジ接続され、前記操舵ヒンジ(128´、128´´)は前記第一及び前記第二操舵軸(Z´-Z´、Z´´-Z´´)を画定する、請求項16又は17に記載の前方キャリッジ(8)。
【請求項19】
操舵タイロッド(130´、130´´)は、前記ブラケット(44´、44´´)と、中央カラム(132)の周りで回転可能なモータ車両ハンドルバーの両方に接続され、前記フロントフォーク(4´、4´´)の操舵回転の制御を実現する、請求項18に記載の前方キャリッジ(8)。
【請求項20】
各フォーク(4´、4´´)は、「C」型ブラケット(136´、136´´)の挿置を介して対応する支柱(114´、114´´)に回転可能なまま接続され、前記「C」型ブラケット(136´、136´´)は互いに整列させた一対のピン(140´、140´´)において各支柱(114´、114´´)にヒンジ接続され、各車輪(10´、10´´)の操舵軸(Z´-Z´、Z´´-Z´´)を画定する、請求項16から19のいずれかに記載の前方キャリッジ(8)。
【請求項21】
前記「C」型ブラケット(136´、136´´)は前記対応するフォーク(4´、4´´)上に係合し、前記対応する支柱(114´、114´´)を取り囲み、前記車輪(10´、10´´)の揺動運動を可能にするために、前記「C」型ブラケット(136´、136´´)と前記フォーク(4´、4´´)の間の接続は、前記第一及び第二スライド軸(X-X、Y-Y)と平行な相対的な軸方向の運動を可能にする、請求項20に記載の前方キャリッジ(8)。
【請求項22】
前記「C」型ブラケット(136´、136´´)の下側枝部(144´、144´´)は前記第二裏打ち(48´、48´´)に一体的に固定され、前記「C」型ブラケット(136´、136´´)の上側枝部(148´、148´´)は前記第一幹部(28´、28´´)と一体的であり、前記「C」型ブラケットの下側及び上側枝部は互いに一体的であり、前記フォーク(4´、4´´)は、揺動運動中、前記第一幹部(28´、28´´)が前記第一裏打ち(24´、24´´)と前記第二裏打ち(48´、48´´)に対して平行移動するように構成される、請求項20又は21に記載の前方キャリッジ(8)。
【請求項23】
前記第一裏打ち(24´、24´´)には軸方向の溝(152´、152´´)を設け、前記第一裏打ち(24´、24´´)と、前記「C」型ブラケット(136´、136´´)の上側枝部(148´、148´´)との間の相対運動を可能にする、請求項22に記載の前方キャリッジ(8)。
【請求項24】
前記「C」型ブラケット(136´、136´´)は、操舵タイロッド(130´、130´´)に更に接続され、中央カラム(132)の周りで回転可能な前記モータ車
両のハンドルバーに機械的に接続される、請求項20から23のいずれかに記載の前方キャリッジ(8)。
【請求項25】
各フォーク(4´、4´´)は、バネ(98´、98´´)及び/又はダンパ(100´、100´´)を設けた内部弾性サスペンション手段(96´、96´´)を備える、請求項16から24のいずれかに記載の前方キャリッジ(8)。
【請求項26】
請求項1から13のいずれかに記載のフロントフォーク(4)及び/又は請求項14から25のいずれかに記載の前方キャリッジ(8)を備えるモータ車両(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ車両のフロントフォーク、モータ車両の前方キャリッジ及び関連のモータ車両に関する。
【背景技術】
【0002】
既知のように、従来、モータ車両の一つ以上の前輪における支持に適したいくつかのフォーク解決策がある。
【0003】
特に、フォークは車輪の回転軸の周りで前輪を回転可能なまま支持し、同時に、関連の操舵軸の周りで操舵動作を伝達する機能を有する。
【0004】
加えて、車輪は揺動軸に沿って関連の揺動運動内で支持され、関連のダンパと共に車輪の関連の振動を可能にしなければならない。
【0005】
従って、前輪のサスペンションは、車両の動的挙動に著しく影響を与える範囲の機能を実行しなければならないことは明らかである。
【0006】
実際、フォークによって支持されるサスペンションは、地面の凸凹を吸収する機能も保証しなければならず、従って、例えば、制動状態等の重い負荷の下でも、フォークの可動部品は互いに自由にスライド可能であり、このような可動部はバネ下質量を制限するために軽量でもあることが必要である。実際、サスペンション及び前方キャリッジの性能を改善し、あらゆる条件で前輪の路面保持及び方向性を改善することによって、アスファルトの凸凹を複製できるのはこの方法だけである。その上、負荷の下でのフォークの変形は常に十分に制御され、サスペンションの必要な滑らかさを保証するだけでなく、運転精度の正しい感覚をユーザに提供しなければならない。実際、フォークが弾性的であるにもかかわらず負荷の下で変形しすぎる場合、ユーザは車両の方向性の感覚を損なう場合があることは明らかである。
【0007】
サスペンションの最善の滑らかさと、操舵輪の正確な方向性及び運転感覚に関連する正確さを常に保証するために、堅牢さの必要性、及びバネ下質量の衝突を互いに低減する必要性があることは明らかである。
【0008】
その結果、フォークのサスペンションの運転/拡張ストローク中、つまり、揺動中、操舵の幾何学及び運動学にリンクして、解決される別の技術的問題がある。
【0009】
実際、揺動運動中の軌跡の可能なバラツキは、操舵感度の実時間のバラツキをもたらし、操作性及び運転精度におけるユーザの信頼性を低減する場合がある。一般に、サスペンションの拡張における典型的な軌跡の増大は操舵感度を低減するが、サスペンションの圧縮における典型的な軌跡の減少は操舵感度を増大させる。このバラツキの理由は、軌跡が、操舵軸に対してタイヤと地面の間で交換される摩擦力に適用可能なアームを表現しているという事実によって与えられる。従って、より小さな軌跡は、操舵の自己復原の傾向、つまり、中心又は直線移動位置に戻る傾向が低下することを暗示し、軌跡が大きくなる場合はその逆になる。
【0010】
運転感覚を改善するために、サスペンションの揺動運動中、従って、車輪の揺動運動中、軌跡のバラツキをうまく制御することが望ましく、この方法では、車輪の感度、従って操舵の感度は変化しなくなる(加速/減速における負荷伝達による不可避なバラツキを除く)。
【0011】
また、従来感じられていた別の必要性は、フォークの製造、組立て及び保守のコスト、従って、前方キャリッジのコストを低減することである。
【0012】
上記の技術的問題は、前方キャリッジに二つの車輪、及び後方に少なくとも一つの車輪を備えた車両、つまり、後方に少なくとも一つの駆動輪、前方に二つの操舵及び傾斜輪、つまり、横揺れ又は傾斜(角度調節)可能な車輪を備えた三輪モータ車両の場合には強調される。
【0013】
これらの車両において、後輪(又は複数の後輪)は運転トルクを提供する目的を有し、従って、牽引可能であるが、対の前輪は車両の方向性を提供する目的を有する。
【0014】
二つの後輪の代わりに二つの前輪を用いると、トルク伝達への差異の挿入を回避できる。この方法では、後方車軸におけるコストと重量の低減を実現する。
【0015】
操舵に加えて、前方キャリッジ内の対の後輪は傾斜及び横揺れも可能にし、この方法では、モータサイクルと同様に、モータ車両はカーブ内で傾斜(傾けることが)できるので、車両は実際のモータサイクルと等価になる。
【0016】
二つの車輪だけを備えたモータ車両に比べて、前方キャリッジ内に対の二つの車輪を備えたこのような車両は、自動車によって提供されるものと同様に、地面上の前輪の二重の支持によって提供されるより大きな安定性を有する。
【0017】
前輪は運動学的機構によって互いに運動学的に接続され、例えば、多関節四辺形の挿入によって、同期的な及び鏡面的な形態で同じ横揺れ及び/又は操舵を保証する。
【0018】
これらの特定の車両において、操舵、軽快さ、柔軟性の制御及び揺動運動中の軌跡の制御における問題は、車両での前輪の動力学上の相互作用によって更に複雑になる。実際、二つの車輪が、例えば、異なる変形及び揺動にさらされ、対称的な挙動を有しない場合、異なる操舵角が生成され、ハンドルバー/操舵に不要なトルクを誘起する可能性がある。ハンドルバーへのこれらのトルクは、車両の前方キャリッジ内での運転者の自信を実質的に低減するだけでなく、車両の動力学性を犠牲にする場合もある。例えば、二つの前輪が互いに著しく異なる二つの操舵角を有する場合、車両はカーブ及び直線内でも、不正確な運動学性を有することになる。例えば、直線方向においてさえ、車両が車輪の間で異なる揺動を誘起する凸凹に遭遇する場合も珍しくないと考えられる。
【0019】
最後に、二つの前輪を備えた車両の場合、車両の動力学性を改善するために、バネ下質量を低減する問題もなおさら重要であると感じられるが、それは、車輪が正確に二つであり、前輪を一つだけ備えたモータ車両の従来の解決策より、前方キャリッジが既に構造的により重くなっているためである。
【発明の概要】
【0020】
上記の問題を解決するために、現在のところ従来技術は、一つ及び二つの前輪の両方を備えたモータサイクルに対して様々なフロントフォーク解決策を採用していた。例えば、より低い裏打ちを有し、車輪を支持する既存の種類のフォーク、及びハンドルバーとの接続用の上側ロッド、並びに裏打ちが上方に配置され、ロッドが下方に配置される反転フォークがある。
【0021】
上で列挙した解決策において、フォークは支持される車輪にまたがって配置される。
【0022】
最後に、支持される車輪にまたがって枝部は配置されないが、車輪の片側に配置されるフォークがある。
【0023】
片持ち梁で車輪を支持するこれらの解決策は、パンクの場合における車輪の交換を容易にするように一般に設計される。
【0024】
これらの解決策は、一つのプッシュ又はプルアームサスペンションを備えた解決策も含む。
【0025】
これらの解決策はより大きな滑らかさという利点を有するが、それは、フォーク裏打ちのスライドもなく、フォークのダイビング時における制動力の高い結合を制限することもなく、アームが転がり軸受け上で旋回されるためである。プルアーム(Vespa)の場合、プロダイブ効果があり、つまり、制動力は、接地点と支点(車輪及びその接地点の瞬間的な回転中心)を接合するラインに沿って、及びこれに対して直交する方向に沿って簡便に分解され、第一のもの(F2)は構造にストレスを与えるが、第二のもの(F1)はサスペンションを圧縮する。
【0026】
プッシュアームの場合、逆の効果を有し、つまり、制動はサスペンションに延在する(アンチダイブ効果)。
【0027】
明らかに、車両が制動時に多少ダイブするという事実は、減速による前方への負荷伝達と上記の効果の組合せに依存する。
【0028】
ダイビング又は拡張効果を補正するために一般に採用される解決策は、第二アームの使用を含み、サスペンションは四辺形になり、接地点の瞬間的な回転中心、従って、力の結合を管理する十分な機会を許容する。
【0029】
最後に、片持ち梁で車輪を支持する二重フォーク解決策も知られている。これらの解決策は、揺動運動中、軌跡の不変性を保証する利点を有する。
【0030】
それにもかかわらず、上記の解決策はいずれも、上述の要件の全てを満たすこと、又は、いずれにせよ、それらの間の最善の妥協策を保証できない。
【0031】
従って、前述の従来技術の解決策はいずれも、安定性、ハンドリング、揺動の滑らかさ、軌跡の不変性、経済的な製造と組立て、及び上記の曲げ剛性の要件を最適化できない。
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
従って、従来技術を参照しながら述べた欠点及び制限を解決する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
この必要性は、請求項1に記載のモータ車両フォークによって満たされる。
【0034】
本発明の更なる特徴及び利点は、実施形態のその好ましく非限定的な例の以降の説明からより理解可能になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施形態によるモータ車両フォークの別個の部品の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態によるモータ車両フォークの別個の部品の斜視図である。
図3】本発明の一実施形態によるモータ車両前方キャリッジの側面図である。
図4図3の断面IV-IVに沿った図3の前方キャリッジの断面図である。
図5図3の矢印V側からの図3の前方キャリッジの側面図である。
図6図3のモータ車両前方キャリッジにおけるフォークの断面図である。
図7】サスペンション拡張構成での本発明の一実施形態による車両前方キャリッジの側面図である。
図8図7の断面VIII-VIIIに沿った図7の前方キャリッジの断面図である。
図9図7の矢印IX側からの図7における前方キャリッジの側面図である。
図10】サスペンションの圧縮構成の図7に対応する図を表す。
図11】サスペンションの圧縮構成の図8に対応する図を表す。
図12】サスペンションの圧縮構成の図9に対応する図を表す。
図13】本発明の一実施形態によるモータ車両の斜視図である。
図14a】本発明の一実施形態によるモータ車両の斜視図である。
図14b】本発明の一実施形態によるモータ車両の斜視図である。
図15】本発明の一実施形態によるモータ車両の平面図である。
図16図14の矢印XVI側からの図14のモータ車両の正面図である。
図17図14の矢印XVII側からの図14のモータ車両の側面図である。
図18図17の断面XVIII-XVIIIに沿った図17のモータ車両の断面図である。
図19】本発明によるモータ車両フォークの平面構成図である。
図20】従来技術のプルアーム前方キャリッジ解決策の側面図を示す。
図21】従来技術のプッシュアーム前方キャリッジ解決策の側面図を示す。
図22】本発明の別の実施形態によるモータ車両前方キャリッジの側面図である。
図23図22の断面XXIII-XXIIIに沿った図22の前方キャリッジの断面図である。
図24図23のXXIVの拡大詳細図である。
図25図22の矢印XXV側からの図22の前方キャリッジの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以降に説明される実施形態の間で共通の要素又は要素の一部は、同じ参照番号と共に指示されるであろう。
【0037】
上の図を参照すると、参照番号4は大域的に、本発明によるモータ車両(バイク)12の前方キャリッジ8におけるフォークの全体概略図を示す。
【0038】
本発明の目的では、用語のモータ車両は広い意味で、少なくとも三つの車輪、つまり、以降でより良く説明されるように、二つの前輪と少なくとも一つの後輪を有する任意のモータサイクルを包含すると考えなければならない。従って、モータ車両の定義は、前方キャリッジに二つの車輪、後方に二つの車輪を有するいわゆる四輪車も含む。
【0039】
モータ車両12は、少なくとも二つの前輪10を支持する前方キャリッジ8から、一つ以上の後輪20を支持する後端18まで延在するフレーム16を備える。
【0040】
モータ車両フロントフォーク4について、これは第一裏打ち24と第一幹部28を備え、第一幹部28は第一スライド軸X-Xに沿って第一裏打ち24の内側の成形結合と共に軸方向にスライドし、第一幹部28は円形の断面を備えた少なくとも部分的に円筒形であり、前記第一スライド軸X-Xと同軸上にある。
【0041】
第一幹部28と第一裏打ち24の一方は、車輪10の車軸ジャーナルの回転ピン36収容するように構成したハブ32に、他方はブラケット44を介して操舵カラム40に、又はその逆に関連付けられる(結合させられる)。
【0042】
単一の前輪10を有する前方キャリッジの場合、操舵カラム40も車両の操舵軸Z-Zを規定する。
【0043】
また、フォーク4は第一裏打ち24と回転一体的な第二裏打ち48を備え、第一スライド軸X-Xと直交する射影面Pに対して、第一裏打ち24の射影エリアが第二裏打ち48の射影エリアに偏心して収容されるように配置される(図19)。
【0044】
「回転一体的」は、フォークの組立て構成において、第一及び第二裏打ちがそれらの間で互いに回転できないことを意味する。
【0045】
第二裏打ち48は、前記ハブ32又は前記操舵カラム40に一体的に取り付けられる。
【0046】
一実施形態によると、第二裏打ち48は、第二スライド軸Y-Yに対して円形の断面を備えた円筒成形結合に従って第一裏打ち24に関連付けられ(結合させられ)、第二スライド軸Y-Yは第一スライド軸X-Xと平行であり、偏心度52だけそれから距離を介している。
【0047】
一実施形態(図1図2図7図12)によると、第二裏打ち48は前記第一及び第二スライド軸X-X、Y-Yと平行に第一裏打ち24に対して軸方向にスライドする。従って、本実施形態において、裏打ちは互いに物理的に分離されているおり、フォーク4の組立て構成において、第一及び第二裏打ち24、48はスライド軸X-X及びY-Yに対して平行移動できるが、互いに回転できない。
【0048】
一実施形態によると、第一幹部28と第二裏打ち48は、操舵カラム40と回転一体的な操舵ブラケット44に取り付けられる。
【0049】
例えば、この取付けは、操舵ブラケット44と、前記第一幹部28及び第二裏打ち48との間に、カバー54を挿置することによって行うことができる。例えば、カバー54は、第一幹部28と第二裏打ち48の強制結合端部に従って収容する台座55を備える(図1図2)。
【0050】
第二シース48は、円形の断面を備えた内的円筒形であり、第一裏打ち24の外側側壁56に対して逆形状(反対の形状)である。
【0051】
好ましくは、第二裏打ち48と第一裏打ち24の間にはスライド軸受け筒60が挿置され、前記裏打ち24、48の間のシールとして機能する。
【0052】
別の実施形態(図3図6)によると、第一及び第二裏打ち24、48は互いに単一部品であり、第一スライド軸X-Xを規定する第一円筒チャンバ64と、第一スライド軸X-Xと平行で、偏心度52だけそれから距離を介した第二スライド軸Y-Yを規定する第二円筒チャンバ68をそれぞれ画定する。
【0053】
例えば、第一幹部28は、互いに単一部品で、第一円筒チャンバ64に少なくとも部分的に挿入される逆形状(反対の形状)の第一突起部72と、第二チャンバ68に少なくとも部分的に挿入される逆形状(反対の形状)の第二突起部76を備え、前記突起部72、76は前記偏心度52だけ互いに距離を介した対応する第一及び第二スライド軸X-X、Y-Yに対して対称である。
【0054】
本発明の可能な実施形態によると、第一裏打ち24は関連の車輪10を取り付けるハブ32への取付け脚部80と、前記関連の車輪10と一体的なブレーキディスク88を少なくとも部分的に収容する少なくとも一つの凹部84を備える。
【0055】
凹部84は好ましくは前記第一スライド軸X-Xと平行に形成し、ブレーキディスク88の部分的な収容を可能にする。
【0056】
好ましくは、第一裏打ち24はディスク・ブレーキ・キャリパ92の取付け手段90を備える。
【0057】
本発明によると、フォーク4は、ハブ32と操舵カラム40の間に挿置される弾性サスペンション手段96を備え、ハブ32によって支持される関連の車輪10のサスペンションを形成し、第一スライド軸X-Xに沿って第一裏打ち24の内側の第一幹部28における軸方向のスライド運動を制御する。
【0058】
一実施形態によると、前記弾性サスペンション手段96は、第一裏打ち24の内側及び/又は第二裏打ち48の内側に配置される。
【0059】
第一裏打ち24及び/又は第二裏打ち48の外側に少なくとも部分的に前記弾性サスペンション手段96を配置することもできる。
【0060】
例えば、前記弾性サスペンション手段96はバネ98及び/又はダンパ100を備える。
【0061】
上記のように、前方キャリッジ8は説明したようなフォーク4を備え、第一裏打ち24は車両前輪10の車軸ジャーナルの回転ピン36に接続され、それを回転状態で支持し、第一幹部28はブラケット44を介して車両の第一操舵カラム36に接続される。
【0062】
また、本発明は、フロントフォーク(前フォーク)4によってそれぞれ支持される二つの前輪10´、10´´を備えた前方キャリッジ8を有する車両への適用が好ましいことを見出している。
【0063】
二つの前輪を有する車両の場合、添え字「´」と「´´」は各車輪10´と10´´の鏡面的な部品を区別するために使用できる。
【0064】
モータ車両前方キャリッジ8は、前端シャーシ16と、多関節四辺形102を介して前端シャーシ16に運動学的に接続される一対の前輪10´、10´´を備える。
【0065】
特に、前記多関節四辺形102は、一対の交差部材、つまり、中央ヒンジ108において前端シャーシ16にヒンジ接続される上側交差部材104と下側交差部材105を備える。
【0066】
上側及び下側交差部材104、105は、側面ヒンジ116´、116´´に応じて横方向端部110、112に対して旋回させる支柱114´、114´´を介して、逆側の前記横方向端部110、112に応じて互いに接続される。
【0067】
各交差部材114´、114´´は、上端120´、120´´から下端124´、124´´まで延在し、上端120´、120´´は上側交差部材104に対向し、下端124´、124´´は下側交差部材105に対向する。上側及び下側交差部材104、105と支柱114´、114´´は、前記多関節四辺形102を画定する。
【0068】
各支柱114´、114´´は、対応する各車輪10´、10´´の対応する第一及び第二操舵軸Z´-Z´、Z´´-Z´´の周りでフロントフォーク4´、4´´に回転可能なまま接続される。
【0069】
各操舵軸Z´-Z´、Z´´-Z´´は、フォーク4´、4´´と対応する支柱114´、114´´の間のヒンジにおいて配置できる。
【0070】
例えば、フォーク4´、4´´の回転を命令可能にするために、対応する各第一幹部28´、28´´へのブラケット44´、44´´の固定を実現できる。前記ブラケット44´、44´´は更に、関連の操舵ヒンジ128´、128´´に対応して各支柱114´、114´´にヒンジ接続される。好ましくは、第一及び第二操舵軸Z´-Z´、Z´´-Z´´を画定する前記操舵ヒンジ128´、128´´は、各支柱114´、114´´の下端124´、124´´に対応して配置される。
【0071】
前記フォーク4´、4´´の操舵回転の命令に関して、これは様々な種類のレバー機構によって実現可能であり、一般にブラケット44´、44´´と、中央カラム132の周りで回転可能なモータ車両のハンドルバーの両方に接続される操舵タイロッド130´、130´´からなる。
【0072】
別の実施形態によると、前方キャリッジ8は多関節四辺形102と前記フォーク4´、4´´を備える。特に、各フォーク4´、4´´は、例えば、「C」型ブラケット136´、136´´を挿置することによって、対応する支柱114´、114´´に旋回可能なように接続される。「C」型ブラケット136´、136´´は、互いに整列させた一対のピン140´140´´において各支柱114´、114´´にヒンジ接続され、各車輪10´、10´´の操舵軸Z´-Z´、Z´´-Z´´を画定する。
【0073】
「C」型ブラケット136´、136´´は対応するフォーク4´、4´´上に係合し、対応する支柱114´、114´´を取り囲む。サスペンション、従って、車輪10´、10´´の揺動運動を可能にするために、「C」型ブラケット136´、136´´とフォーク4´、4´´の間の接続は、前記第一及び第二スライド軸X-X、Y-Yに平行な相対的軸方向の運動を可能にする。
【0074】
例えば、「C」型ブラケット136´、136´´の下側枝部144´、144´´は第二裏打ち48´、48´´に堅固に固定され、「C」型ブラケット136´、136´´の上側枝部148´、148´´は第一幹部28´、28´´と一体的である。「C」型ブラケットの下側及び上側枝部は互いに一体的であり、従って、揺動運動中、第一幹部28´、28´´は第一裏打ち24´、24´´及び第二裏打ち48´、48´´に対して移動する。
【0075】
例えば、第一裏打ち24´、24´´には軸方向の溝152´、152´´を設け、第一裏打ち24´、24´´と、「C」型ブラケット136´、136´´の上側枝部148´、148´´との間の相対運動を可能にする。
【0076】
例えば、各「C」型ブラケット136´、136´´はそれぞれのヒンジ手段138´、138´´を介して対応する操舵タイロッド130´、130´´にヒンジ接続される。
【0077】
好ましくは、明らかに、各フォーク4´、4´´はバネ98´、98´´及び/又はダンパ100´、100´´を設けた内部弾性サスペンション手段96´、96´´を備える。
【0078】
「C」型ブラケット136´、136´´は更に、中央カラム132の周りで回転可能なモータ車両のハンドルバーに運動学的に接続される操舵タイロッド130´、130´´に接続される。
【0079】
説明から理解されるように、本発明は従来技術で提示された欠点を克服できる。
【0080】
好ましくは、本発明は、従来技術の解決策に対して車両の動的挙動を改善する。
【0081】
実際、直線及びカーブの操舵の両方で、二つの車輪は軌跡の正確な制御を維持し、従って、道路の凸凹、及びサスペンションの実際の揺動状態によって操舵効果は誘導されない。
【0082】
サスペンションは、制動及び加速中の動的負荷の作用下でさえ、車輪のガイドにおいて同時に堅固である。
【0083】
その上、本発明は、現在の傾斜三輪又は四輪車両では見出されない運転精度を保証する。実際、運転者は常に、顕著な操舵精度の感覚、つまり、車両の著しく容易な方向性の感覚を有し、湾曲状態でさえ操舵に対して異常な反応を有さない。
【0084】
その上、一つ以上の前輪の片持ち梁サスペンションにもかかわらず、本発明は、非常に堅牢な車輪であり、湾曲を制限された各車輪の揺動に対するガイドを実現でき、高負荷の下(例えば、制動及び/又はコーナリング中)でもガタガタ走らない。
【0085】
従って、本発明によるフォークは、寸法の低減、軽量化、更に高い曲げ剛性を実現する。
【0086】
最後に、本発明によるモータ車両は、二対の前輪の存在により、二つの車輪を備えたモータ車両より優れた高い安定性だけでなく、二つの車輪だけを備えたモータ車両では一般的な顕著なハンドリング及び容易な湾曲を保証できる。
【0087】
これらの種類の車両において、本発明は、質量の低減と、操舵及び傾斜前輪の挙動の鏡面性を獲得できる。
【0088】
実際、前輪の関連のフォークは明らかに、移動中の軌跡の正確な制御、及び湾曲に対する高い耐性を保証するので、車輪を一貫して操舵できるようにし、ハンドルバー上への自己復原トルクを誘導する。従って、運転者は、課された軌道内での運転精度及び信頼性を認識する。また、例えば、車輪が非対称な障害物に遭遇したとき、まっすぐ運転できるので、フォークの挙動は確実になる。その上、明らかに、各車輪をまたぐ既存のフォークの使用を実現する既知の解決策に比べて、バネ下質量が低減される。
【0089】
前輪の片持ち梁支持を備えたフォークは、互いに対の二つの前輪を備えた車両の場合に特に好ましく、実際、対の車輪を備えたこれらの前方キャリッジでは、保守用の空間を低減し、片持ち梁のサスペンションは車輪の保守、分解及び交換を容易にする。
【0090】
当業者は、偶発的な及び特定の必要性を満たすために、上で説明した解決策に様々な修正及び変形を行うことができるが、全ては以降の請求項によって定義されるように本発明の範囲に含まれる。
図1
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