(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】置換アミノピラン誘導体の結晶形
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20220125BHJP
A61K 31/4162 20060101ALI20220125BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220125BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220125BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220125BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
C07D487/04 138
C07D487/04 CSP
A61K31/4162
A61P3/10
A61P13/12
A61P25/00
A61P27/02
(21)【出願番号】P 2018533217
(86)(22)【出願日】2016-12-12
(86)【国際出願番号】 CN2016109388
(87)【国際公開番号】W WO2017107791
(87)【国際公開日】2017-06-29
【審査請求日】2019-06-10
(31)【優先権主張番号】201510999152.1
(32)【優先日】2015-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515309302
【氏名又は名称】スーチュアン ハイスーク ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン, チェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ジェンミン
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/192701(WO,A1)
【文献】特表2014-518266(JP,A)
【文献】特表2014-520802(JP,A)
【文献】大島寛,結晶多形・擬多形の析出挙動と制御,PHARM STAGE,2007年01月15日,Vol.6, No.10,p.48-53
【文献】平山令明編著,有機化合物結晶作製ハンドブック-原理とノウハウ-,丸善株式会社,2008年07月25日,p.17-23,37-40,45-51,57-65
【文献】芦澤一英 他,医薬品の多形現象と晶析の科学,日本,丸善プラネット株式会社,2002年09月20日,p.3-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu-Kα線照射によるX線粉末回折パターンが9.2°±0.2°、12.8°±0.2°、16.2°±0.2°、18.4°±0.2°、20.5°±0.2°及び26.5°±0.2°の2θに特徴的な回折ピークを有することを特徴とする式(I)で示される化合物の結晶形IVの結晶。
【化1】
【請求項2】
Cu-Kα線照射によるX線粉末回折パターンが11.9°±0.2°、12.3°±0.2°、15.2°±0.2°、16.6°±0.2°、18.7°±0.2°及び24.9°±0.2°の2θに特徴的な回折ピークを更に有することを特徴とする請求項1に記載の結晶。
【請求項3】
Cu-Kα線照射によるX線粉末回折パターンが20.1°±0.2°、20.7°±0.2°、21.4°±0.2°、22.3°±0.2°、23.2°±0.2°及び24.6°±0.2°の2θに特徴的な回折ピークを更に有することを特徴とする請求項2に記載の結晶。
【請求項4】
Cu-Kα線照射によるX線粉末回折パターンが3.6°±0.2°、9.9°±0.2°、21.7°±0.2°、24.1°±0.2°、26.0°±0.2°、28.3°±0.2°、30.7°±0.2°及び34.1°±0.2°の2θに特徴的な回折ピークを更に有することを特徴とする請求項3に記載の結晶。
【請求項5】
Cu-Kα線照射によるX線粉末回折パターンが27.2°±0.2°、29.5°±0.2°、30.1°±0.2°、33.0°±0.2°、37.0°±0.2°、38.3°±0.2°及び38.9°±0.2°の2θに特徴的な回折ピークを更に有することを特徴とする請求項4に記載の結晶。
【請求項6】
示差走査熱量測定曲線がTonset=155.82℃、Tpeak=158.57℃、△H=64.44 J/gである吸熱曲線を一本示すか、又は熱重量分析曲線が150℃において1.0%の重量減少を示し、分解温度が222.1℃であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の結晶。
【請求項7】
治療有効量の請求項1~6のいずれか一項に記載の結晶及び薬学的に許容される担体または賦形剤を含む薬物組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の結晶の、糖尿病、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、好ましくはII型糖尿病を予防および/または治療するための薬物の製造における使用。
【請求項9】
請求項7に記載の薬物組成物の、糖尿病、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、好ましくはII型糖尿病を予防および/または治療するための薬物の製造における使用。
【請求項10】
糖尿病がII型糖尿病である請求項8または9に記載の使用。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の結晶の、代謝疾患治療薬の製造における使用。
【請求項12】
請求項7に記載の薬物組成物の、代謝疾患治療薬の製造における使用。
【請求項13】
代謝疾患が糖尿病、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害または糖尿病性腎症である請求項11または12に記載の使用。
【請求項14】
糖尿病がII型糖尿病である請求項13に記載の使用。
【請求項15】
無定形の式(I)で示される化合物又は任意結晶形の式(I)で示される化合物を再結晶又はスラリー化することにより式(I)で示される化合物の結晶形IVの結晶を製造する方法であって、再結晶又はスラリー化溶媒が、
酢酸エチル、イソプロピルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、n-ヘプタン、メタノール、エタノール及び水から選ばれ
る二種以上の混合溶媒である式(I)で示される化合物の結晶形IVの結晶の製造方法。
【化2】
【請求項16】
再結晶又はスラリー化温度が10~80℃である請求項1
5に記載の方法。
【請求項17】
再結晶又はスラリー化温度が10~50℃である請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
再結晶又はスラリー化溶媒が酢酸エチルとn-ヘプタンとの混合溶媒である請求項15
~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
再結晶又はスラリー化溶媒が酢酸エチルとn-ヘプタンとの混合溶媒であり、両者の体積比が1:1~1:3である請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
再結晶又はスラリー化溶媒が酢酸エチルとn-ヘプタンとの混合溶媒であり、両者の体積比が1:2である請求項
19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換アミノピラン誘導体、又はその水和物、溶媒和物の結晶形、及びその製造方法又はその薬物組成物及びそのジペプチジルペプチダーゼ-IV(DPP-IV)阻害剤薬物の製造における用途に係るものである。
【背景技術】
【0002】
ジペプチジルペプチダーゼ-IV(Dipeptidyl Peptidase, DPP-IV, EC3.4.14.5)は、セリンプロテアーゼであり、L-プロリン及びL-アラニンを含有するペプチドのN末端から二番目の位置にN末端ジペプチドを加水分解する。インクレチンの活性を増強することにより、作用を発揮させるのは、非インスリン療法薬物に属するものである。DPP-IV阻害剤には、体重増加及び浮腫等の副作用がない。
【0003】
特許文献1には、構造式が式(I)で示される新規なピラン誘導体である(2R,3S,5R,6S)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-5-(2-(メチルスルホニル)-ピロロ[3,4]ピラゾール-5(2H,4H,6H)-イル)-6-(トリフルオロメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-アミン(以下、化合物Aと略称する)が開示されている。該構造は、DPP-IVに対して良い阻害作用を示し、II型糖尿病の予防および/または治療に有望な可能性がある。
【0004】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(2R,3S,5R,6S)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-5-(2-(メチルスルホニル)-ピロロ[3,4]ピラゾール-5(2H,4H,6H)-イル)-6-(トリフルオロメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-アミン(即ち、以下の化学構造(I)を有する化合物A)の結晶形IVを提供する:
【0007】
【0008】
本発明の結晶形IVは、加工容易、及び結晶容易、処理容易、良好な安定性、高い生物学的利用能、高い圧力安定性及び投薬容易等の長所を有することにより、特に各種の薬物剤形の製造に適する。
【0009】
本発明の結晶形IVは、製薬学上で化合物Aの無定形遊離塩基より優れている。特に、結晶形は、化学及び物理的安定性を増強し、薬理活性成分を含む固体薬物剤形の製造により有利である。
【0010】
本発明の結晶形は、原薬の約5重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、本発明の結晶形は、原薬の約10重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、本発明の結晶形は、原薬の約15重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、本発明の結晶形は、原薬の約20重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、本発明の結晶形は、原薬の約25重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、本発明の結晶形は、原薬の約30重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、本発明の結晶形は、原薬の約35重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、本発明の結晶形は、原薬の約40重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、本発明の結晶形は、原薬の約45重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、本発明の結晶形は、原薬の約50重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、本発明の結晶形は、原薬の約55重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、本発明の結晶形は、原薬の約60重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、本発明の結晶形は、原薬の約65重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、本発明の結晶形は、原薬の約70重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、本発明の結晶形は、原薬の約75重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、本発明の結晶形は、原薬の約80重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、本発明の結晶形は、原薬の約85重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、本発明の結晶形は、原薬の約90重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、本発明の結晶形は、原薬の約95重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、本発明の結晶形は、原薬の約98重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、本発明の結晶形は、原薬の約99重量%~約100重量%で存在する。ある実施形態において、基本的に全ての原薬は、本発明の結晶形であり、即ち、原薬は、基本的に相純粋な結晶である。
【0011】
本発明の化合物Aは、特に断らない限り、化合物Aの無定形態である。
【0012】
本発明の実施形態の一つである無水化合物A(結晶形IV)は、Cu-Kα線照射によるX線粉末回折パターンが9.2°±0.2°、12.8°±0.2°、16.2°±0.2°、18.4°±0.2°、20.5°±0.2°及び26.5°±0.2°の2θに特徴的な回折ピークを有する。
【0013】
その内、該結晶形IVのX線粉末回折パターンは、11.9°±0.2°、12.3°±0.2°、15.2°±0.2°、16.6°±0.2°、18.7°±0.2°及び24.9°±0.2°の2θにも特徴的な回折ピークを有する。
【0014】
更に、結晶形IVのX線粉末回折パターンは、20.1°±0.2°、20.7°±0.2°、21.4°±0.2°、22.3°±0.2°、23.2°±0.2°及び24.6°±0.2°の2θにも特徴的な回折ピークを有する。
【0015】
又更に、結晶形IVのX線粉末回折パターンは、3.6°±0.2°、9.9°±0.2°、21.7°±0.2°、24.1°±0.2°、26.0°±0.2°、28.3°±0.2°、30.7°±0.2°及び34.1°±0.2°の2θにも特徴的な回折ピークを有する。
【0016】
又更に、結晶形IVのX線粉末回折パターンは、実質的に
図10に示されるようなものである。
【0017】
本願に記載の結晶形IVは、その示差走査熱量測定曲線(DSC)がTonset=155.82℃、Tpeak=158.57℃、△H=64.44 J/gである吸熱曲線を一本示す。
【0018】
本願に記載の結晶形IVの示差走査熱量測定曲線(DSC)を
図11に示す。
【0019】
本願に記載の結晶形IVは、その熱重量分析曲線(TGA)が150℃前に1.0%の重量減少を示し、分解温度が222.1℃である。
【0020】
本願に記載の結晶形IVの熱重量分析曲線を
図12に示す。
【0021】
当業者には理解されるように、示差走査熱量測定(DSC)分野において周知されているように、DSC曲線における融解ピークの高さが試料の調製や、計測器の幾何形状に関する多くの要因によるものであり、ピーク位置が実験の具体的条件に対して相対的に不敏感である。その為、ある実施形態において、本発明の結晶化合物の特徴的なピーク位置を有するDSC図は、本願図面に示されるDSC図と実質に同じ性質を有し、誤差許容限界が±3℃である。
【0022】
本発明は、更に、治療有効量の本願に記載の結晶形化合物、及び一種または複数種の薬学的に許容される担体または賦形剤を含む薬物組成物に係るものである。
【0023】
本願に記載の結晶形は、薬物活性成分として、または、活性成分の薬物組成物として、糖尿病、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症を予防および/または治療する薬物の製造に用いることができ、好ましくは、II型糖尿病用薬物の製造に用いる。
【0024】
本発明は、更に、本願に記載の一種または複数種の結晶形化合物A又はその薬物組成物を投薬することを含む代謝疾患の治療方法を開示するものである。
【0025】
本願に開示の粉末X線回折又はDSC図、TGA図及びそれらと実質に同じものも、本発明の範囲に該当する。
【0026】
本発明は、式(I)で示される化合物の結晶形IVの製造方法を提供する。前記の方法において、式(I)で示される化合物の結晶形IVは、無定形の式(I)で示される化合物又は任意の結晶形の式(I)で示される化合物を再結晶又はスラリー化することにより製造されて得られる。エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルカン系溶媒、アルコール系溶媒及び水から選択される一種又は二種以上の混合溶媒を再結晶又はスラリー化溶媒とし、好ましくはエステル系溶媒とアルカン系溶媒との混合物を再結晶又はスラリー化溶媒とする。
【0027】
本発明の式(I)で示される化合物の結晶形IVを製造する一つの実施形態において、酢酸エチル、イソプロピルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、n-ヘプタン、メタノール、エタノール及び水から選択される一種又は二種以上の混合溶媒を再結晶又はスラリー化溶媒とする。
【0028】
本発明の式(I)で示される化合物の結晶形IVを製造する一つの実施形態において、再結晶又はスラリー化温度を10~80℃とし、好ましくは10~50℃とし、さらに好ましくは20~40℃とする。
【0029】
本発明の式(I)で示される化合物の結晶形IVを製造する一つの実施形態において、酢酸エチルとn-ヘプタンとの混合溶媒を再結晶又はスラリー化溶媒とし、両者の体積比を好ましくは1:1~1:3とし、更に好ましくは1:2とする。
【0030】
本発明の式(I)で示される化合物の結晶形IVを製造する一つの実施形態において、結晶を析出させる時、式(I)で示される化合物の結晶形(IV)の結晶種を選択的に添加し、通常の後処理(撹拌、濾過等)をすることにより式(I)で示される化合物の結晶形IVを得ることが出来る。
【0031】
本発明の式(I)で示される化合物の結晶形IVを製造する一つの実施形態において、無定形の式(I)で示される化合物又は任意結晶形の式(I)で示される化合物を100℃以上、好ましくは140℃の温度条件下で処理して式(I)で示される化合物の結晶形(IV)を得る。
【0032】
他に断らない限り、本願の明細書及び請求の範囲に記載の用語は、次の意味を有する。
【0033】
「有効用量」とは、組織、システム又は被験者に生理的又は医学的な反応を発現させる化合物の量を意味し、該量が求めるのは、被治療者に投薬する時、治療される疾患又は病症の一種又は複数種の症状の発生を予防するに足りる化合物の量、又は該症状をある程度に軽減するに足りる化合物の量を含む。
【0034】
「IC50」とは、半数阻害濃度であって、最大阻害効果の半分を示すときの濃度を意味する。
【0035】
本発明の結晶形構造は、当業者の周知の各種分析技術により分析できる。粉末X線回折(XRD)、示差走査熱量測定(DSC)及び/又は熱重量分析(Thermogravimetric Analysis,TGA)を含むが、それらに制限されない。熱重量分析(Thermogravimetric Analysis、TGA)は、熱重量法(Thermogravimetry、TG)ともいう。
【0036】
本発明で使用される粉末X線回折装置(XRD)は、Bruker D8 Advance diffractometer、Cuターゲットの波長が1.54 nmのKα radiation(40 Kv、40 mA)であり、θ-2θゴニオメーター、Moモノクロメータ、Lynxeye検出器、基準物質であるAl2O3、収集ソフトがDiffrac Plus XRD Commanderであり、分析ソフトがMDI Jade 6であり;方法パラメータ:無反射試料板の規格が24.6 mm diameter x1.0 mm Thicknessであり、無反射試料板の製造元がMTI corporationであり、可変温度ホットステージの製造元が上海微図装置科技発展有限会社であり、可変温度ホットステージの試料板が銅板であり、走査角度:3-40°2θ、ステップ:0.02°2θである。
【0037】
本発明で使用される示差走査熱量測定装置(DSC)は、TA Instruments Q200 DSCであり、窒素ガス保護であり、窒素ガス流量が40mL/分間である。
【0038】
本発明で使用される熱重量分析器(TGA)は、TA Instruments Q500 TGAであり、窒素ガス保護であり、窒素ガス流量が40 mL/分間である。
【0039】
当業者には理解されるように、本願に記載の数値及び保護を求める数値は、近似値である。数値内の変化は、装置の校正、装置誤差、結晶の純度、結晶の大きさ、試料の大きさ及び他の要因に起因すると推測される。
【0040】
当業者には理解されるように、本発明の結晶形は、本願に開示の図面に記載の特徴的なスペクトルと完全に同じ特徴的なスペクトルとは限らない。例えば、XRD、DSC、TGAについて、図面に記載のそれらのスペクトルと基本的に同じ又は実質的に同じ特徴的なスペクトルを有する任意の結晶形は、本発明の範囲内に該当するものである。
【0041】
本願に開示の結晶形は、次の通常の結晶形の製造方法により製造できる:
1、試料の清澄溶液を異なる温度下で蓋をせずに、溶媒を乾燥するまで揮発させる揮発実験。
2、試料の過飽和溶液(不溶固体が存在する)を異なる溶媒システムにおいてある温度下で撹拌する結晶スラリー実験。
3、試料を取り、良溶媒に溶解し、貧溶媒を添加し、固体を析出させ、短時間撹拌した直後、濾過処理を行う貧溶媒実験。
4、高温下で一定量の試料を適切な溶媒に溶解させた後直接室温又は低温下で撹拌して晶析させる結晶冷却実験。
5、試料の清澄溶液に異なる種類の高分子材料を添加し、室温下に置いて蓋をせずに、溶媒を乾燥するまで揮発させる高分子テンプレート実験。
6、試料を一定の熱方法結晶条件により処理して、室温まで冷却する熱方法実験。
7、試料を室温下で一定の湿度環境に置く水蒸気拡散実験。
【0042】
本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本願の明細書及び実施例における操作内容を考慮した後、本発明に対して種々の改良及び改変を行えることは、当業者には、明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】化合物Aの結晶形IのCu-Kα線照射によるX線粉末回折パターン。
【
図2】化合物Aの結晶形Iの示差走査熱量測定法(DSC)曲線。
【
図3】化合物Aの結晶形Iの熱重量分析(TGA)曲線。
【
図4】化合物Aの結晶形IIのCu-Kα線照射によるX線粉末回折パターン。
【
図5】化合物Aの結晶形IIの示差走査熱量測定法(DSC)曲線。
【
図6】化合物Aの結晶形IIの熱重量分析(TGA)曲線。
【
図7】化合物Aの結晶形IIIのCu-Kα線照射によるX線粉末回折パターン。
【
図8】化合物Aの結晶形IIIの示差走査熱量測定法(DSC)曲線。
【
図9】化合物Aの結晶形IIIの熱重量分析(TGA)曲線。
【
図10】化合物Aの結晶形IVのCu-Kα線照射によるX線粉末回折パターン。
【
図11】化合物Aの結晶形IVの示差走査熱量測定法(DSC)曲線。
【
図12】化合物Aの結晶形IVの熱重量分析(TGA)曲線。
【
図13】化合物Aの結晶形IVの犬血漿DPP-IV酵素学実験の結果図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の技術方案について、図面及び実施例を参照しながら、詳細に説明する。但し、本発明の保護範囲は、これらに限定されるものではない。
【0045】
実施例において、特に断らない限り、溶液とは、水溶液を意味する。
【0046】
特に断らない限り、一般的に、結晶の実験条件を室温(20-30℃,30-70%RH)とし、溶媒比率を体積比として示す。
【0047】
実施例1 化合物Aの製造:
【0048】
【0049】
第1工程乃至第3工程では、特許出願WO2015/192701を参照して製造する。
【0050】
第4工程:(2R,3S,5R,6S)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-5-(2-(メチルスルホニル)-ピロロ[3,4]ピラゾール-5(2H,4H,6H)-イル)-6-(トリフルオロメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-アミン(化合物A)
(2R,3S,5R,6S)-2-(2,5-difluorophenyl)-5-(2-(methylsulfonyl)pyrrolo[3,4-c]pyrazol-5(2H,4H,6H)-yl)-6-(trifluoromethyl)tetrahydro-2H-pyran-3-amine
0℃下で、窒素雰囲気中、1c(57.5g, 101.6 mmol)をジクロロメタン(345 mL)及びトリフルオロ酢酸(86 mL)に溶解し、添加終了後、室温下で4時間撹拌した。反応終了後、20℃未満で、反応液を粘稠になるまで減圧下で濃縮した。水(600 mL)及びジクロロメタン(80 mL)を添加し、撹拌して、静置分層させた。水相にジクロロメタン(300 mL)を添加し、撹拌しながら、アンモニア水でpH値を9~10に調整し、分層させ、ジクロロメタン(300 mL × 2)で水相を抽出した。有機相を合併し、有機相を水(300 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム乾燥して、濃縮した。シリカカラムクロマトグラフィーにより分離精製(酢酸エチル/メタノール(v/v) = 50:1)し、乾燥するまで回転蒸発して、白色粉末固体である化合物A(37.8 g、収率80%)を得た。XRD、DSC及びTGAを使用して分析した結果、化合物Aは、結晶形Iである。
図1~3に示す。
【0051】
実施例2 化合物Aの結晶形IIの製造
第1方法:50℃下で化合物Aの結晶形I(50 mg)を水(5.0 mL)及びアセトン(2.8 mL)に溶解し、熱時濾過し、濾液を3℃下で2日間撹拌し、濾過し、ケーキを室温下で真空乾燥して、化合物Aの結晶形IIを得た。XRD、DSC及びTGAにより化合物Aの結晶形IIを同定した。同定結果を
図4~6に示す。
【0052】
実施例3 化合物Aの結晶形IIIの製造
第1方法:室温下で化合物Aの結晶形I(50 mg)をテトラヒドロフラン(0.5 mL)に溶解し、濾過して、撹拌しながらメチルシクロヘキサン(5.0 mL)を滴下し、大量の白色固体を析出させ、続いて 10 分間撹拌した後、濾過し、ケーキを室温下で真空乾燥して、化合物Aの結晶形IIIを得た。XRD、DSC及びTGAにより化合物Aの結晶形IIIを同定した。同定結果を
図7~9に示す。
【0053】
実施例4 化合物Aの結晶形IVの製造
第1方法:50℃以下で60 gの化合物Aの結晶形Iを酢酸エチル(480 mL)に溶解し、撹拌しながら、n-ヘプタン(960 mL)を滴下し、滴下終了後、室温に降温し、続いて2時間撹拌した。濾過して、白色固体を得た。XRD、DSC及びTGAにより、白色固体は、化合物Aの結晶形IVであると同定された。各スペクトルを
図10~12に示す。第2方法:化合物Aの結晶形I(50 mg)を熱風式乾燥機に置いて、140℃に昇温し、5分間恒温させて、化合物Aの結晶形IVを得た。各スペクトルは、
図10~12と同じである。
【0054】
第2方法:化合物Aの結晶形I(10 mg)をエタノール(0.5 mL)、メチル-tert-ブチルエーテル(0.5 mL)、n-ヘプタン(0.5 mL)、水/エタノール(1 mL/1 mL)又は水/n-ヘプタン(0.3 mL/0.3 mL)に添加し、懸濁液を得て、室温下で結晶を3日間スラリー化した。スラリー化後の懸濁液を取り、遠心分離して、化合物Aの結晶形IVを得た。各スペクトルは、
図10~12と同じである。
【0055】
第3方法:化合物Aの結晶形I(10 mg)を水/エタノール(1.0 mL/0.5 mL)又はエタノール/n-ヘプタン(0.5 mL/0.1 mL)に添加し、懸濁液を得て、40℃下で結晶を3日間スラリー化した。スラリー化後の懸濁液を取り、遠心分離して、化合物Aの結晶形IVを得た。各スペクトルは、
図10~12と同じである。
【0056】
第4方法:室温下で化合物Aの結晶形I(10mg)をメタノール(0.4 mL)に溶解し、水(2.0 mL)を滴下し、固体が析出するまで撹拌し、遠心分離して、化合物Aの結晶形IVを得た。各スペクトルは、
図10-12と同じである。メタノール-イソプロピルエーテル(0.4mL/5.0mL)からなる良溶媒-貧溶媒溶媒システムについても、この方法を参照して、化合物Aの結晶形IVを得ることが出来る。各スペクトルは、
図10~12と同じである。70℃下でエタノール-n-ヘプタン(0.4mL/4.0mL)からなる良溶媒-貧溶媒溶媒システムについても、この方法を参照して、化合物Aの結晶形IVを得ることができる。各スペクトルは、
図10~12と同じである。
【0057】
第5方法:化合物Aの結晶形I(10 mg)をバイアルに置いて、70℃下で水/エタノール(1.0 mL/0.6 mL)を添加して、清澄液を得て、室温で置いたままにして撹拌し、固体を析出させて、化合物Aの結晶形IVを得た。各スペクトルは、
図10~12と同じである。
【0058】
実施例5 結晶形安定性
1. 化合物Aの結晶形安定性。表1に示す。
【0059】
【0060】
化合物Aの結晶形II、III、IVは、安定性が良い。
【0061】
2. 化合物Aの結晶形I及び結晶形II、III、IVの室温競合実験において、室温下で結晶形の水、エタノール及び水:エタノール(1:1)溶媒中における結晶形安定性を考察した。具体的な内容を表2に示す。
【0062】
【0063】
上記化合物Aの結晶形の競合結晶スラリー実験から分かるように、結晶形IVは、室温下で最も安定的な結晶形です。
【0064】
実施例6 化合物Aの結晶形IVの犬血漿DPP-IV酵素スクリーニング実験
体重及び年齢が近い雄性ビーグル犬(1群3匹)を選択した;実験の前日に8時間断食させたが、断水させなかった。実験の当日に動物の体重を量り、10mg/kg体重の化合物Aの結晶形IVのカプセルを充填・製造した(直接化合物Aの結晶形IVをカプセルシェル内に充填);投薬前0h、及び投薬後0.5、1、2、4、8、12、24、32、48、56、72、80、96、104、120、128、144、152、168、192、216及び240hのそれぞれに1mL採血し、EDTA入り採血管に添加し、2500rpm、低温で15min遠心分離し、血漿を取り出し、2個の1.5mL EP管に充填し、-80℃で保存した。投薬1時間後、動物に飼料を投与した。被試料ごとに40μlの血漿を採取し、10μlのH-Ala-Pro-AFC基質(0.2mM)を添加し、基質未添加のウェルをブランクとし、5min反応させた後、マイクロプレートリーダーで測定した(Excitation=405nM;Emission=535nM)。酵素阻害率の計算式:阻害率%=[1-(化合物の応答値-ブランクウェルの応答値)/(投薬前のウェルの応答値-ブランクウェルの応答値)]*100%。Origin7.5ソフトウェアでプロットした。化合物Aの結晶形IVの血漿DPP-IV酵素に対する阻害率が80%である持続時間を計算した。結果を表3及び
図13に示す。
【0065】
H-Ala-Pro-AFC基質の調製:適量の基質を量り取り、DMSOに溶解し、濃度10mMの溶液を調製した。
【0066】
【0067】
実施例7 化合物Aの結晶形IVの化学安定性の考察
実験条件
試料を取り、下記表4 における考察条件及びサンプリング時刻に従って、影響要因を考察した。考察結果を下記表5に示す。
【0068】
【0069】
実験結果
【0070】
【0071】
結論:高温、高湿、光照射条件のいずれの場合でも、10日間又は60日間になっても、化合物Aは、純度が基本的に変化せず、化学安定性が良好である。