(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】乳製品および加工
(51)【国際特許分類】
A23C 19/068 20060101AFI20220125BHJP
A23C 19/028 20060101ALI20220125BHJP
A23C 19/024 20060101ALI20220125BHJP
A23C 19/032 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
A23C19/068
A23C19/028
A23C19/024
A23C19/032
(21)【出願番号】P 2018552626
(86)(22)【出願日】2016-12-23
(86)【国際出願番号】 NZ2016050206
(87)【国際公開番号】W WO2017111621
(87)【国際公開日】2017-06-29
【審査請求日】2019-07-04
(32)【優先日】2015-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(32)【優先日】2016-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(73)【特許権者】
【識別番号】518224680
【氏名又は名称】フォンテラ コ-オペレイティブ グループ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ パーヤー コカー
(72)【発明者】
【氏名】グレイム ショーン ギリース
(72)【発明者】
【氏名】パラタサ ハブア
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン マリー テイラー
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-517415(JP,A)
【文献】特開昭56-068349(JP,A)
【文献】特開昭63-269944(JP,A)
【文献】特開平05-137504(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0079677(KR,A)
【文献】橋本英夫、根岸晴夫,3.2 モッツァレラチーズ、4.2 一次機能,現代チーズ学,初版第1刷,日本,食品資材研究会,2008年,p.153-169, 291-310
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01J1/00-99/00,
A23C1/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パスタフィラータチーズであって、
少なくとも約60重量%の水分含量と、
最高約
40重量%の無脂肪固形分含有量と、
a)約25~約75mmolの二価カチオン/100gカゼインの全二価カチオン含有量、および
b)約100~約250mMolの一価カチオン/100gカゼインの全一価カチオン含有量、および
c)約150~約300mMolの全カチオン/100gカゼインの全カチオン含有量
を含むミネラル含有量と
を含み、
前記無脂肪固形分が少なくとも約70重量%のタンパク質を含み、前記タンパク質が少なくとも約65重量%のカゼインを含む、
パスタフィラータチーズ。
【請求項2】
パスタフィラータチーズであって、
少なくとも約60重量%の水分含量と、
最高約
40重量%の無脂肪固形分含有量と、
a)100gカゼイン当たり約2840mg未満のカルシウム、および
b)100gカゼイン当たり約145mg未満のマグネシウム、
c)100gカゼイン当たり約16.5μg未満のマンガン、
d)100gカゼイン当たり約13mg未満の亜鉛、
e)100gカゼイン当たり約4.5g未満のナトリウム、
f)100gカゼイン当たり約0.2g未満のカリウム、および
g)100gカゼイン当たり約4g未満のリン酸塩
を含むミネラル含有量と
を含み、前記無脂肪固形分が少なくとも約70重量%のタンパク質を含み、前記タンパク質が少なくとも約65重量%のカゼインを含む、パスタフィラータチーズ。
【請求項3】
一価カチオンと二価カチオンの比率が、少なくとも3.25部の一価カチオン対1部の二価カチオン(mMol/100gカゼインとしての測定)である、請求項1または2に記載のパスタフィラータチーズ。
【請求項4】
約175~約247.5mMolのナトリウムイオン/100gカゼインおよび約2.5~約75mMolのカリウムイオン/100gカゼインを含む、最高約250mMolの全一価カチオン/100gカゼインを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のパスタフィラータチーズ。
【請求項5】
食品上で使用すると、調理されたパスタフィラータチーズが、
i)35%未満の膨れ百分率
ii)20mm未満の最大膨れサイズスコア,
iii)50未満のピザ膨れハンターLスケール色価、
iv)(FRDC-Fonterra Research and Development Centre)修正Schreiber溶融試験で6以下の溶融値、
v)チーズ質量の20%未満の遊離油分、
vi)50cm未満の延伸、および
vii)上記(i)~(vi)の2つ以上の任意の組合せ
の特性を示す、請求項1~4のいずれか一項に記載のパスタフィラータチーズ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のパスタフィラータチーズを製造する方法であって、以下のステップ:
a)i)少なくとも65~99%のカゼイン、および
ii)約25~約75mmolの二価カチオン/100gカゼインの全二価カチオン含有量、および
iii)約100~約250mMolの一価カチオン/100gカゼインの全一価カチオン含有量、および
iv)約150~約300mMolの全カチオン/100gカゼインの全カチオン含有量、および
v)約4.9~約6のpH
を含む、乳タンパク質源を提供するステップと、
b)前記乳タンパク質源を8~50℃の温度で凝固剤に接触させて、ミルクカードを製造するステップと、
c)少なくとも1つの脂質成分を前記カードに混合して、混合物を製造するステップと、
d)前記混合物を約65~約90℃の温度で加熱し機械的に加工して、加熱されたチーズ塊を製造するステップと、
e)前記加熱されたチーズ塊を加工して、パスタフィラータチーズ製品を形成するステップと
を含む、パスタフィラータチーズを製造する方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載のパスタフィラータチーズを製造する方法であって、以下のステップ:
a)i)少なくとも65~99重量%のカゼイン、および
ii)約25~約75mmolの二価カチオン/100gカゼインの全二価カチオン含有量、および
iii)約4.9~約6のpH
を含む乳タンパク質源を提供するステップと、
b)前記乳タンパク質源を8~50℃の温度で凝固剤に接触させて、ミルクカードを製造するステップと、
c)少なくとも1つの脂質成分を前記カードに混合し混合物を製造して、
i)約100~約250mMolの一価カチオン/100gカゼインの全一価カチオン含有量、および
ii)約150~約300mMolの全カチオン/100gカゼインの全カチオン含有量
を得るように、前記一価カチオン含有量を調節するステップと、
d)前記混合物を約65~約90℃の温度で加熱し機械的に加工して、加熱されたチーズ塊を製造するステップと、
e)前記加熱されたチーズ塊を加工して、パスタフィラータチーズ製品を形成するステップと
を含む、パスタフィラータチーズを製造する方法。
【請求項8】
a)i)少なくとも65~99重量%のカゼインおよび約4.9~約6のpHを含む乳タンパク質源を提供するステップと、
ii)前記乳タンパク質源を8~50℃の温度で凝固剤に接触させて、ミルクカードを製造するステップと、
iii)少なくとも1つの脂質成分を前記カードに混合して、混合物を製造するステップと、
iv)前記混合物を約65~約90℃の温度で加熱し機械的に加工して、加熱されたチーズ塊を製造するステップと、
v)前記加熱されたチーズ塊を加工して、第1のパスタフィラータチーズ製品を形成するステップと
を含む加工によって製造された第1のパスタフィラータチーズ製品を提供するステップと、
b)前記第1のパスタフィラータチーズ製品の一価および二価カチオン含有量を判定するステップと、
c)i)少なくとも65~99重量%のカゼインおよび約4.9~約6のpHを含む乳タンパク質源を提供するステップと、
ii)前記乳タンパク質源を8~50℃の温度で凝固剤に接触させて、ミルクカードを製造するステップと、
iii)少なくとも1つの脂質成分を前記カードに混合して、混合物を製造するステップと、
iv)前記混合物を約65~約90℃の温度で加熱し機械的に加工して、加熱されたチーズ塊を製造するステップと、
v)前記加熱されたチーズ塊を加工して、第1のパスタフィラータチーズ製品を形成するステップと
を含む加工によって、第2のパスタフィラータチーズ製品を調製するステップと、
d)前記第1のパスタフィラータの測定値に基づいて、前記カード、前記混合物、前記チーズ塊またはそれらの組み合わせの一価カチオン含有量を調節し、
i)約25~約75mmolの二価カチオン/100gカゼインの全二価カチオン含有量、および
ii)約100~約250mMolの一価カチオン/100gカゼインの全一価カチオン含有量、および
iii)約150~約300mMolの全カチオン/100gカゼインの全カチオン含有量
を有し、少なくとも約60重量%の水分含量を有する、パスタフィラータチーズ製品を製造するステップと
を含む、パスタフィラータチーズを製造する方法。
【請求項9】
前記乳タンパク質源が、全乳、脱脂乳、乳タンパク質濃縮物、乳タンパク質単離物、ホエータンパク質濃縮物、ホエータンパク質単離物またはその任意の2つ以上の任意の組み合わせから選択される、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記乳タンパク質源ミネラル含有量が、濾過、酸添加、または隔離またはそれらの組み合わせによって調節される、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記濾過が、前記乳タンパク質源を少なくとも1つの濾過工程に供して、タンパク質残余分を製造するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
カチオンイオン交換樹脂に接触させるステップを含み、前記樹脂中の
対イオンがナトリウム、カリウムまたはナトリウムおよびカリウムを含み、ナトリウム、カリウムまたはナトリウムおよびカリウムで前記残余分中の少なくとも約15~約30%の二価カチオンを置換する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カチオン樹脂が、ナトリウムカチオン樹脂である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記残余分が、さらなる乳タンパク質源と混合される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記残余分を、添加されたカリウムおよび/またはナトリウムイオンで補充された水からなる透析濾過媒体を用いた限外濾過または精密濾過その双方を含む濾過に供し、追加的なミネラル調節を有する残余分を製造する、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記透析濾過媒体が、特定量の溶解されたカリウムイオンを含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記一価カチオンが調節される、請求項6~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記一価カチオンが、前記カード、前記混合物、前記チーズ塊、またはそれらの組み合わせの中で調節される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記一価カチオンが、1つまたは複数の一価カチオンの除去または1つまたは複数の一価カチオンの添加を通じて調節される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記一価カチオンが、NaClまたはKClの添加を通じて調節される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記カチオン調節が反復的な工程である、請求項6~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記カード、前記混合物、または前記カード、および前記混合物中の前記ナトリウム含有量が、約100~約250mMolのNa/100gカゼインに調節される、請求項6~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記乳タンパク質が、食品等級の酸の添加を通じて酸性化される、請求項6~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記乳タンパク質が、乳酸開始菌の添加を通じて発酵酸性化に供される、請求項6~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記ミルクカードが、好ましくはすり潰しによって粉砕される、請求項6~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記加熱されたチーズ塊を、モツァレラまたはパスタフィラータ混練機/伸張装置内で引き延ばす、請求項6~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記加熱されたチーズ塊が成形されて冷却される、請求項6~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記加熱されたチーズ塊が、前記チーズを冷却して連続シートまたはリボンを形成するキャスティング装置上に載せられる、請求項6~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記キャスティングされたチーズが細断されて、個々の細断チーズ粒子が生成する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記細断チーズ粒子に固結防止剤が添加される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記細断チーズ粒子が、個別急速冷凍(IQF)細断粒子として直ちに凍結される、請求項
29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記溶融チーズ塊が低温押出機に入れられ、前記チーズ塊が押出されて細断物として切断され、直ちに冷凍庫に入れられる、請求項6~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記パスタフィラータチーズが、ベーキング中の水分遊離(離漿)および損失を制限する、請求項6~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記パスタフィラータチーズが冷凍IQF細断として存在する場合、解凍せずにピザに直ちに載せることができ、前記ピザが焼かれて、前記チーズが所望の機能効果の全てを生じることが可能である、請求項6~33のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスタフィラータチーズおよび製造方法、特に高い水分含量を含む、モツァレラなどのパスタフィラータチーズに関する。
【背景技術】
【0002】
モツァレラおよびパスタフィラータチーズは、ピザの上で焼くなど、多くの食品および外食産業の用途に広く使用されている。これらの用途では、細断されて小さな粒子を生じたモツァレラが特に好まれ、それは次に凍結されて「個別急速冷凍」(IQF)チーズになる。
【0003】
伝統的なモツァレラおよびパスタフィラータチーズは、特に水牛乳を用いて製造された場合、高い水分含量で製造され得る。しかし、このようなチーズは、細断したり削ったりするのが困難である。細断が困難であることは、高い水分含量の、または水分含量が55%を顕著に超える、適切なピザチーズの製造を妨げる。
【0004】
伝統的に作られたモツァレラおよびパスタフィラータチーズはまた、ピザなどのベイクド食品において所望の機能性を発達させる前に、少なくとも数週間持続する初期熟成期間を必要とする。これらの機能特性のいくつかとしては、ピザ生地に、所望の溶融特性、延伸、溶融時および冷却中の色、咀嚼虫の柔軟性、膨れ形成、脂肪遊離、水分遊離(離漿)、および蒸発による損失またはピザ生地中への浸透(の排除または制限)を提供することが挙げられる。ひとたび熟成が所望の機能特性を生み出すと、伝統的なモツァレラおよびパスタフィラータチーズは、追加的な老化によりこれらの特徴を急速に失う。したがってベーキング用途のために完全に機能的なモツァレラおよびパスタフィラータチーズの有用な寿命はかなり短い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、改善されたまたは代替のパスタフィラータチーズを提供することである。
【0006】
本明細書では、特許明細書およびその他の文書をはじめとする外部情報源が参照される場合、これは一般に、本発明の特徴を考察するための文脈を提供することを目的とする。特に断りのない限り、そのような情報源への言及は、いかなる管轄においても、かかる情報源が先行技術であること、または当該技術分野における一般常識の一部をなすことを認めるものとして解釈されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
少なくとも約55重量%の水分含量と、
最高約45重量%の無脂肪固形分含有量と、
約25~約75mMolの二価カチオン/100gカゼインの全二価カチオン含有量、または約50~約150meq二価カチオン/100gカゼインの全二価カチオン含有量、および
約100~約250mMolの一価カチオン/100gカゼインの全一価カチオン含有量、または約100~約250meqの一価カチオン/100gカゼインの全一価カチオン含有量、および
約150~約300mMolの全カチオン/100gカゼインの全カチオン含有量を含むミネラル含有量と
を含み、無脂肪固形分が少なくとも約70重量%のタンパク質を含み、タンパク質が少なくとも約65重量%のカゼインを含む、パスタフィラータチーズ。
【0008】
少なくとも約55重量%の水分含量と、
最高約45重量%の無脂肪固形分含有量と、
約2840mg未満のカルシウム/100gカゼイン、または約70mMol未満のカルシウム/100gカゼイン、または約140meq未満のカルシウム/100gカゼイン、および
約145mg未満のマグネシウム/100gカゼイン、または約6.0mMol未満のマグネシウム/100gカゼイン、または12.0meq未満のマグネシウム/100gカゼイン、
約16.5μg未満のマンガン/100gカゼイン、約0.3μmMol未満のマンガン/100gカゼイン、および/または約0.00006meq未満のマンガン/100gカゼイン、
約13mg未満の亜鉛/100gカゼイン、0.2μMol未満の亜鉛/100gカゼイン、および/または0.0004meq未満の亜鉛/100gカゼイン、
約4.5g未満のナトリウム/100gカゼイン、約195mMol未満のナトリウム/100gカゼイン、および/または約195meq未満のナトリウム/100gカゼイン、
約0.2g未満のカリウム/100gカゼイン、約5.0mMol未満のカリウム/100gカゼイン、および/または約5.0meq未満のカリウム/100gカゼイン、および
約4g未満のリン酸塩/100gカゼイン、または795mMol未満のリン酸塩/100gカゼインを含むミネラル含有量と
を含み、無脂肪固形分が少なくとも約70重量%のタンパク質を含み、タンパク質が少なくとも約65重量%のカゼインを含む、パスタフィラータチーズ。
【0009】
さらなる態様では、本発明は、
a)i)少なくとも65~99重量%のカゼイン、および
ii)約25~約75mMolの二価カチオン/100gカゼインの全二価カチオン含有量、または約50~約150meq二価カチオン/100gカゼインの全二価カチオン含有量、および
iii)約100~約250mMolの一価カチオン/100gカゼインの全一価カチオン含有量、または約100~約250meqの一価カチオン/100gカゼインの全一価カチオン含有量、および
iv)約150~約300mMolの全カチオン/100gカゼインの全カチオン含有量、および
v)約4.9~約6のpH
を含む乳タンパク質源を提供するステップと、
b)前記乳タンパク質源を8~50℃の温度で凝固剤に接触させて、ミルクカードを製造するステップと、
c)少なくとも1つの脂質成分を前記カードに混合して、混合物を製造するステップと、
d)前記混合物を約65~約90℃の温度で加熱し機械的に加工して、加熱されたチーズ塊を製造するステップと、
e)前記加熱されたチーズ塊を加工して、パスタフィラータチーズ製品を形成するステップと
を含む、パスタフィラータチーズを製造する方法に関する。
【0010】
さらなる態様では、本発明は、
a)i)少なくとも約65~99重量%のカゼイン、および
ii)約25~約75mMolの二価カチオン/100gカゼインの全二価カチオン含有量、または約50~約150meq二価カチオン/100gカゼインの全二価カチオン含有量、および
iii)約4.9~約6のpH
を含む乳タンパク質源を提供するステップと、
b)前記乳タンパク質源を8~50℃の温度で凝固剤に接触させて、ミルクカードを製造するステップと、
c)少なくとも1つの脂質成分を前記カードに混合し混合物を製造して、
i)約100~約250mMolの一価カチオン/100gカゼインの全一価カチオン含有量、または約100~約250meqの一価カチオン/100gカゼインの全一価カチオン含有量、および
ii)約150~約300mMolの全カチオン/100gカゼインの全カチオン含有量
を得るように、一価カチオン含有量を調節するステップと、
d)前記混合物を約65~約90℃の温度で加熱し機械的に加工して、加熱されたチーズ塊を製造するステップと、
e)前記加熱されたチーズ塊を加工して、パスタフィラータチーズ製品を形成するステップと
を含む、パスタフィラータチーズを製造する方法に関する。
【0011】
さらなる態様では、本発明は、
a)i)少なくとも65~99重量%のカゼインおよび約4.9~約6のpHを含む乳タンパク質源を提供するステップと、
ii)前記乳タンパク質源を8~50℃の温度で凝固剤に接触させて、ミルクカードを製造するステップと、
iii)少なくとも1つの脂質成分をカードに混合して、混合物を製造するステップと、
iv)前記混合物を約65~約90℃の温度で加熱し機械的に加工して、加熱されたチーズ塊を製造するステップと、
v)前記加熱されたチーズ塊を加工して、第1のパスタフィラータチーズ製品を形成するステップと
を含む加工によって製造された、第1のパスタフィラータチーズ製品を提供するステップと、
b)前記第1のパスタフィラータチーズ製品の一価および二価カチオン含有量を判定するステップと、
c)i)少なくとも65~99重量%のカゼインおよび約4.9~約6のpHを含む乳タンパク質源を提供するステップと、
ii)前記乳タンパク質源を8~50℃の温度で凝固剤に接触させて、ミルクカードを製造するステップと、
iii)少なくとも1つの脂質成分をカードに混合して、混合物を製造するステップと、
iv)前記混合物を約65~約90℃の温度で加熱し機械的に加工して、加熱されたチーズ塊を製造するステップと、
v)前記加熱されたチーズ塊を加工して第1のパスタフィラータチーズ製品を形成するステップと
を含む、第2のパスタフィラータチーズ製品を調製するステップと、
d)前記第1のパスタフィラータの測定値に基づいて、前記カード、前記混合物、前記チーズ塊またはそれらの組み合わせの一価カチオン含有量を調節し、
i)約25~約75mmolの二価カチオン/100gカゼインの全二価カチオン含有量、および
ii)約100~約250mMolの一価カチオン/100gカゼインの全一価カチオン含有量、および
iii)約150~約300mMolの全カチオン/100gカゼインの全カチオン含有量
を有するパスタフィラータチーズ製品を製造するステップと
を含む、パスタフィラータチーズを製造する方法に関する。
【0012】
以下の実施形態は、上記の態様のいずれかに関連してもよい。
【0013】
一実施形態では、乳タンパク質は低温殺菌される。
【0014】
一実施形態では、パスタフィラータチーズは、約2.5~約72.5mMolナトリウムイオン/100gカゼインおよび約2.5~約35mMolカリウムイオン/100gカゼインを含む、最高約75mMol/100gカゼインの全一価カチオンを含む。
【0015】
一実施形態では、パスタフィラータチーズは、約175~約247.5mMolナトリウムイオン/100gカゼインおよび約2.5~約75mMolカリウムイオン/100gカゼインを含む、最高約250mMol/100gカゼインの全一価カチオンを含む。
【0016】
一実施形態では、パスタフィラータチーズは細断されて食品で使用される。好ましくは、食品はピザである。
【0017】
一実施形態では、食品上または食品中での使用時に、調理されたパスタフィラータチーズは、
i)35%未満の膨れ百分率、
ii)20mm未満の最大膨れサイズスコア、
iii)50未満のピザ膨れハンターLスケール色価、
iv)(FRDC)修飾Schreiber溶融試験で6未満の溶融値、
v)チーズ質量の20%未満の遊離油分、
vi)50cm未満の延伸、および
vii)上記(i)~(vi)の2つ以上の任意の組合せ
の特徴を示す。
【0018】
一実施形態では、乳タンパク質源は、全脂肪乳、全乳残余分/濃縮物、半脱脂乳、脱脂乳、脱脂残余分/濃縮物、バターミルク、バターミルク残余分/濃縮物およびホエータンパク質残余分/濃縮物;または
1つまたは複数の全脂粉乳、脱脂粉乳、乳タンパク質濃縮物粉末、乳タンパク質単離物粉末、ホエータンパク質濃縮物粉末、ホエータンパク質単離物粉末、およびバターミルク粉末、または再構成されまたは乾燥された単独または組み合わせのミルクから製造されたその他の粉末などの1つまたは複数の粉末
から選択される。
【0019】
一実施形態では、乳タンパク質のミネラル含有量は、濾過、酸添加、および/またはミネラル隔離またはそれらの組み合わせによって改変される。
【0020】
一実施形態では、一価カチオンの含有量は、NaClまたはKClの添加によって調節される。好ましくは、NaClが使用される。
【0021】
いくつかの実施形態では、一価カチオンの含有量は、カード、混合物、チーズ塊またはそれらの混合物中で調節される。
【0022】
一実施形態では、混合物は、100、120、140、160、180、200、220、240または250mMolのNa/100カゼインのナトリウム含有量に調節され、これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい。
【0023】
一実施形態では、カチオン含有量の調節は反復的な工程である。
【0024】
一実施形態では、濾過は、乳タンパク質源を少なくとも1回の濾過工程に供して、タンパク質残余分を製造する工程を含む。
【0025】
一実施形態では、濾過は、乳タンパク質をカチオン交換樹脂と接触させることを含み、樹脂中の対イオンは、ナトリウム、カリウム、またはナトリウムおよびカリウムを含み、残余分中の少なくとも約15~約30%の二価カチオンをナトリウム、カリウム、またはナトリウムおよびカリウムで置換する。
【0026】
一実施形態では、カチオン樹脂はナトリウムカチオン樹脂である。
【0027】
一実施形態では、残余分は、ミネラル調節された残余分を乳タンパク質および/または残余分のさらなる供給源と混合し、規格化されたミネラル含有量を有する混合残余分を製造することによって、さらなるミネラル調節を受ける。
【0028】
乳タンパク質のミネラル含有量が濾過によって改変される実施形態では、添加されたカリウムおよび/またはナトリウムイオンで補充された水からなる透析濾過媒体を用いて、残余分が限外濾過または精密濾過またはその双方を含む濾過に供され、追加的なミネラル調節を受けた残余分が製造される。好ましくは透析濾過媒体は、特定量の溶解されたカリウムイオンを含有する。
【0029】
一実施形態では、乳タンパク質は、食品等級酸の添加を通じて酸性化される。
【0030】
一実施形態では、タンパク質は、乳酸スターター細菌の添加を通じて発酵酸性化に供される。
【0031】
一実施形態では、ミルクカードは粉砕される。粉砕は好ましくはすり潰しによる。
【0032】
一実施形態では、混合物は、ホエータンパク質ゲル粒子の添加を含む。
【0033】
一実施形態では、ホエータンパク質ゲル粒子は、ホエータンパク質溶液から調製される。
【0034】
いくつかの実施形態では、脂質ホエー混合物はエマルションである。
【0035】
いくつかの実施形態では、脂質ホエー混合物は、高速ミキサーで混合される。
【0036】
いくつかの実施形態では、脂質ホエー混合物は、最高100、120、140、160、180または200バールの比較的低圧で均質化され、これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい。
【0037】
一実施形態では、ホエータンパク質溶液と混合物との混合中の温度は、約50℃に維持される。
【0038】
いくつかの実施形態では、脂質源は乳脂質である。好ましくは乳脂質は、クリーム、高脂肪クリーム、または無水乳脂肪から選択される。
【0039】
いくつかの実施形態では、エマルションは、添加された乳化剤の非存在下で調製される。
【0040】
いくつかの実施形態では、GRAS成分などのその他の乳製品が添加される。
【0041】
いくつかの実施形態では、ホエータンパク質溶液と合わせた脂質は、最終チーズ製品中の全脂肪の少なくとも70、75、80、85、90、95または100%に相当し、これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、ホエーおよび脂質の混合物は、少なくとも65、70、75、80または85℃で少なくとも約10、15、20、25、30、35または40秒間加熱され、これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、加熱されたホエータンパク質と脂質のエマルションは、保存に適した低温(例えば4℃)に冷却され、後日使用され得る。
【0044】
代替の実施形態では、加熱されたエマルションは、モツァレラまたはパスタフィラータチーズを製造するための成分の混合物に、成分として熱いうちに直接添加される。
【0045】
一実施形態では、加熱されたチーズ塊は、モツァレラまたはパスタフィラータ混練機/伸張装置で延伸される。
【0046】
一実施形態では、加熱されたチーズ塊は、チーズを冷却して連続シートまたはリボンを形成するキャスティング装置上に載せられる。
【0047】
一実施形態では、キャスティングされたチーズは細断されて、個々の細断チーズ粒子が製造される。
【0048】
一実施形態では、固結防止剤が細断チーズ粒子に添加される。
【0049】
一実施形態では、細断チーズ粒子は、個別急速冷凍(IQF)細断粒子として直ちに凍結される。
【0050】
一実施形態では、溶融チーズ塊は低温押出機に入れられ、チーズ塊は押し出されて細断物として切断され、直ちに冷凍庫に入れられる。
【0051】
一実施形態では、パスタフィラータチーズは、焼成中の水分遊離(離漿)および損失を制限する。
【0052】
一実施形態では、パスタフィラータチーズは、冷凍IQF細断として存在する場合、解凍せずにピザに直ちに載せられ得て、ピザは焼かれて、チーズは所望の機能効果の全てを生じる。
【0053】
「含む(comprising)」という用語は、本明細書および特許請求の範囲における用法では、「少なくとも部分的にそれからなる」ことを意味する。「含む(comprising)」という用語を含む、本明細書および特許請求の範囲における記述を解釈する場合、各記述中のこの用語によって前置きされる特徴以外のその他の特徴もまた存在し得る。「含む(comprise)」および「含む(comprised)」などの関連用語も、同様に解釈されるものとする。
【0054】
本明細書の用法では「および/または」という用語は、「および」または「または」、またはその双方を意味する。
【0055】
本明細書に開示された数字の範囲(例えば、1~10)への言及は、その範囲内の全ての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、および10)、およびその範囲内の任意の範囲の有理数(例えば、2~8、1.5~5.5、および3.1~4.7)への言及も含むことが意図され、したがって、本明細書において明示的に開示される全ての範囲の全ての部分的な範囲が、明示的に開示される。これらは、具体的に意図されるものの例に過ぎず、列挙された最低値と最高値との間の全ての可能な数値の組み合わせは、本出願において類似様式で同様に明示的に記述されていると見なされるべきである。
【0056】
本発明に関連する当業者には、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の構成および異なる実施形態および用途における多くの変更が示唆されるであろう。本明細書中の開示および説明は、純粋に例示的なものであり、限定することは決して意図されない。本発明をここで、単なる例として、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明は、少なくとも約55重量%の水分含量を有する、モツァレラなどの高水分パスタフィラータチーズに関する。チーズは、最高約45重量%の無脂肪固形分含有量を含有し、調節されたミネラル含有量を有して、前記無脂肪固形分は少なくとも約70重量%のタンパク質を含み、前記タンパク質は少なくとも約65重量%のカゼインを含む。
【0059】
調節されたミネラル含有量は、約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70または75mmolの二価カチオン/100gカゼインの全二価カチオン含有量を含み、これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい(例えば、約25~約75、約25~約65、約25~約50、約25~約45、約30~約75、約30~約70、約30~約0、約30~約45、約35~約75、約35~約65、約35~約60、約35~約55、約40~約75、約40~約70、約40~約65、約45~約75、約45~約65、約50~約75、約55~約65、約60~約75、約60~約70、または約65~約75mMolの二価カチオン/100gカゼイン)。
【0060】
調節されたミネラル含有量はまた、約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140または150meqの二価カチオン/100gカゼインの全二価カチオン含有量を含み、これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい(例えば、約50~約150、約50~約130、約50~約110、約50~約80、約60~約150、約60~約140、約60~約10、約60~約100、約70~約150、約70~約130、約70~約120、約70~約110、約80~約150、約80~約130、約80~約100、約90~約150、約90~約140、約90~約120、約100~約150、約100~約140、約110~約150、約110~約130、約120~約150、約120~約140、または約130~約150meqの二価カチオン/100gカゼイン)。
【0061】
調節されたミネラル含有量はまた、約100、120、135、150、165、180、190、195、210、225、240または250mMolの一価カチオン/100gカゼインの全一価カチオン含有量を含み、一価カチオンと二価カチオンの比率が少なくとも約3.25部の一価カチオン対1部の二価カチオン(mMol/100gカゼインとしての測定)であり、これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい(例えば、約100~約250、約100~約190、約100~約195、約100~約135、約120~約250、約120~約210、約120~約190、約120~約165、約120~約135、約135~約250、約135~約225、約135~約195、約135~約150、約150~約250、約150~約240、約150~約195、約150~約180、約165~約250、約165~約225、約165~約180、約180~約250、約180~約210、約180~約195、約195~約250、約195~約225、約210~約250、約210~約240、または約225~約250mMolの一価カチオン/100gカゼイン)。
【0062】
調節されたミネラル含有量はまた、約100、120、135、150、165、180、195、210、225、240または250meq一価カチオン/100gカゼインの全一価カチオン含有量を含み、これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい(例えば、約100~約250、約100~約195、約100~約135、約120~約250、約120~約210、約120~約165、約120~約135、約135~約250、約135~約225、約135~約195、約135~約150、約150~約250、約150~約240、約150~約195、約150~約180、約165~約250、約165~約225、約165~約180、約180~約250、約180~約210、約180~約195、約195~約250、約195~約225、約210~約250、約210~約240、または約225~約250meqの一価カチオン/100gカゼイン)。
【0063】
調節されたミネラル含有量はまた、約150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290または300mMolの全カチオン/100gカゼインの全カチオン含有量を含み、これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい(例えば、約150~約300、約150~約280、約150~約260、約150~約230、約150~約200、約150~約180、約160~約300、約160~約270、約160~約230、約160~約210、約160~約200、約170~約300、約170~約280、約170~約250、約170~約210、約170~約190、約180~約300、約180~約280、約180~約260、約180~約250、約180~約210、約190~約300、約190~約290、約190~約250、約190~約210、約200~約300、約200~約290、約200~約280、約200~約260、約200~約240、約210~約300、約210~約280、約210~約270、約220~約300、約220~約250、約230~約300、約230~約250、約240~約300、約240~約270、約250~約300、約250~約270、約260~約300、約260~約280または約270~約300mMolの全カチオン/100gカゼイン)。
【0064】
調節されたミネラル含有量は、
●約2840mg未満のカルシウム/100gカゼイン、または約70mMol未満のカルシウム/100gカゼイン、または約140meq未満のカルシウム/100gカゼイン、および
●約145mg未満のマグネシウム/100gカゼイン、または約6.0mMol未満のマグネシウム/100gカゼイン、または12.0meq未満のマグネシウム/100gカゼイン、
●約16.5μg未満のマンガン/100gカゼイン、約0.3μmMol未満のマンガン/100gカゼイン、および/または約0.00006meq未満のマンガン/100gカゼイン、
●約13mg未満の亜鉛/100gカゼイン、0.2μMol未満の亜鉛/100gカゼイン、および/または0.0004meq未満の亜鉛/100gカゼイン、
●約4.5g未満のナトリウム/100gカゼイン、約195mMol未満のナトリウム/100gカゼイン、および/または約195meq未満のナトリウム/100gカゼイン、
●約0.2g未満のカリウム/100gカゼイン、約5.0mMol未満のカリウム/100gカゼイン、および/または約5.0meq未満のカリウム/100gカゼイン、および
●約4g未満のリン酸塩/100gカゼイン、または795mMol未満のリン酸塩/100gカゼイン
もまた含む。
【0065】
全一価カチオン含有量は、gナトリウム/100gカゼインに加えてgカリウム/100gカゼインの合計、gナトリウム/100mMolカゼインに加えてmMolカリウム/100gカゼインの合計、および/またはmeqナトリウム/100gカゼインに加えてmeqカリウム/100gカゼインの合計のいずれかとして判定される。
【0066】
全二価カチオン含有量は、gカルシウム/100gカゼインに加えてgマグネシウム/100gカゼインに加えてgマンガン/100gカゼインに加えてg亜鉛/100gカゼイン、mMolカルシウム/100gカゼインに加えてmMolマグネシウム/100gカゼインに加えてmMolマンガン/100gカゼインに加えてmMol亜鉛/100gカゼイン、および/またはmeqカルシウム/100gカゼインに加えてmeqマグネシウム/100gカゼインに加えてmeqマンガン/100gカゼインに加えてmeq亜鉛/100gカゼインの合計のいずれかとして判定される。
【0067】
全カチオン含有量は、gカチオン/100gカゼイン、mMolカチオン/100gカゼイン、および/またはmeqカチオン/100gカゼインのいずれかとして判定される場合、一価カチオンの合計に加えて二価カチオンの合計として判定される。
【0068】
全イオン含有量は、カチオン含有量/100gカゼインに加えてgリン酸塩/100gカゼイン、mMolカチオン含有量/100gカゼインに加えてmMolリン酸塩/100gカゼイン、および/またはmeqカチオン含有量/100gカゼインに加えてmeqリン酸塩/100gカゼインのいずれかとして判定される全カチオン含有量の合計を含む。
【0069】
一実施形態では、パスタフィラータチーズは、約2.5~約72.5mMolナトリウム/100gカゼインおよび約2.5~約35mMolカリウム/100gカゼインを含む、最高約75mMol/100gカゼインの全一価カチオンを含む。
【0070】
一実施形態では、パスタフィラータチーズは、約175~約247.5mMolナトリウム/100gカゼインおよび約2.5~約75mMolカリウム/100gカゼインを含む、最高約250mMol/100gカゼインの全一価カチオンを含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、パスタフィラータチーズは、少なくとも約1、2、2.5、3、4、5、6、7、7.5、8、9、10、11、12、12.5、13、14、15、16、17、17.5、18、19、20、21、22、22.5、23、24、25、26、27、27.5、28、29または少なくとも約30重量%の脂肪を含み、これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい(例えば、約1%~約30%、約5%~約30%、約10%~約30%、約17%~約20%、約20%~約30%、約25%~約30%、約27%~約30%、約27.5%~約30%、約1%~約27.5重量%の脂肪、約5%~約27.5%、約10%~約27.5%、約17%~約27.5%、約17%~約27%、約20%~約25%、約1%~約22重量%の脂肪、約5%~約22%、約10%~約22%、約17%~約22%、約1%~約20%、約5%~約20%、約10%~約20%、約1%~約10%または約1%~約5重量%の脂肪)。
【0072】
いくつかの実施形態では、パスタフィラータチーズは、少なくとも約15、16、17、17.5、18、19、20、21、22、22.5、23、24、25、26、27、27.5、28、29、30、31、32、32.5、33、34、35、36、37、37.5、38、39、40、41、42、42.5、43、44、または約45重量%の無脂肪固形分を含み、これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい(例えば、約15%~約45%、約15%~約44%、約20%~約44%、約25%~約44%、約30%~約44%、約35%~約44%、約15%~約40%、約20%~約40%、約25%~約40%、約30%~約40%、約35%~約40%、約15%~約35%、約20%~約35%、約25%~約35%、約30%~約35%、約15%~約30%、約20%~約30%約25%~約30%、約18%~約28%、約15%~約25%、約20%~約25%、約20%~約23%、または約15%~約20重量%の無脂肪固形分)。
【0073】
一実施形態では、パスタフィラータチーズは低脂肪パスタフィラータチーズである。一実施形態では、低脂肪パスタフィラータチーズは、約1%~約10重量%の脂肪を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、低脂肪パスタフィラータチーズは、
a)約1%~約10重量%の脂肪および約35%~約44重量%の無脂肪固形分、
b)約2.5%~約7.5重量%の脂肪および約37.5%~約42.5重量%の無脂肪固形分、または
c)約5重量%の脂肪および約40重量%の無脂肪固形分
を含む。
【0075】
一実施形態では、パスタフィラータチーズは高脂肪パスタフィラータチーズである。一実施形態では、高脂肪パスタフィラータチーズは、約17%~約27重量%の脂肪を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、高脂肪パスタフィラータチーズは、
a)約17%~約27重量%の脂肪および約18%~約28重量%の無脂肪固形分、
b)約20%~約25重量%の脂肪および約20%~約25重量%の無脂肪固形分、または
c)約25重量%の脂肪および約20重量%の無脂肪固形分
を含む。
【0077】
一実施形態では、パスタフィラータチーズは非常に高脂肪のパスタフィラータチーズである。一実施形態では、非常に高脂肪のパスタフィラータチーズは、約25%~約30重量%の脂肪を含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、高脂肪パスタフィラータチーズは、
a)約25%~約30重量%の脂肪および約15%~約20重量%の無脂肪固形分、
b)約27%~約30重量%の脂肪および約20%~約23重量%の無脂肪固形分、または
c)約27.5重量%の脂肪および約17.5重量%の無脂肪固形分
を含む。
【0079】
パスタフィラータチーズは、チーズを使用する広範囲の食品で使用され得る。本高水分パスタフィラータチーズの利点は、低水分パスタフィラータチーズと比較して、改善された口当たりおよび官能特性である。例えば、本発明のパスタフィラータチーズよりも水分含量が低いパスタフィラータチーズは、ゴム状または噛み応え体験につながる可能性がある。対照的に、本発明の高水分パスタフィラータチーズは、この問題を抱えていない。
【0080】
水分含量のパスタフィラータチーズとしては、ボッコンチーニなどのチーズが挙げられる。ボッコンチーニスタイルのチーズは、半軟質、白色、未熟成のまろやなかチーズで、典型的に、使用前に液体中で保存される。このようなチーズはピザトッピングとして使用されてもよいが、ピザ上のボッコンチーニスタイルのチーズの性能は、典型的にモツァレラに劣る。
【0081】
モツァレラなどのパスタフィラータチーズの人気のある使用法は、ピザトッピングとしての添加である。
【0082】
一実施形態では、食品上または食品中での使用時に、調理されたパスタフィラータチーズは、
i)35%未満の膨れ百分率
ii)20mm未満の最大膨れサイズスコア,
iii)50未満のピザ膨れハンターLスケール色価、
iv)(FRDC)修飾Schreiber溶融試験で6未満の溶融値、
v)チーズ質量の20%未満の遊離油分、
vi)50cm未満の延伸、および
vii)上記(i)~(vi)の2つ以上の任意の組合せ
の特徴を示す。
【0083】
膨れサイズおよび百分率に基づくチーズの性能は、以下のように説明される。チーズピザを上記のように調製して焼く。焼き上がったピザのチーズ表面に形成された膨れを数え、膨れの半径をキャリパーを用いて直接mm単位で測定する。定量化された同一相対直径を有する膨れの数(すなわち、0~5mm、5~10mmなど)および円の面積を求めるための標準方程式を用いて計算された膨れの面積:
A=πr2
式中、A=円の面積
Π=数学関数pi、および
r=円の半径である。
【0084】
各サイズカテゴリー内の膨れの数は、カテゴリー膨れ領域に乗算される。各カテゴリーサイズの膨れ領域を合わせて使用し、チーズ表面全体の膨れ率を計算する。
【0085】
35%未満の膨れ百分率は、許容可能なチーズ性能を示す。35%を超える膨れ百分率は、許容できないチーズ性能を示す。
【0086】
膨れの色に基づくチーズの性能は、以下のように説明される。膨れの色は、典型的に、白色、黄褐色、中濃褐色、黒褐色から黒色に進行する色のブロックからなる調製された標準と比較される。(これらは、白色から様々な色合いの褐色~黒色への色変化を示すことを除いて、National Cheese Institute Cheese Color Standardsに幾分似ている。)
【0087】
代案としては、膨れの色は、ハンターL-a-bスケールなどの適切な比色計とスケールで直接測定され得る。
【0088】
50未満のピザ膨れハンターLスケール色価は、許容可能なチーズ性能を示す。50を超えるピザ膨れハンターLスケール色価は、許容できないチーズ性能を示す。
【0089】
背景色に基づくチーズの性能は、以下のように説明される。上記のようなソースと共にピザ上で焼かれたチーズの色もまた、透明、透明~白色、白色~淡黄色、淡黄色~黄色、および黄色~褐色を示す基準で、調製された色標準と典型的に比較される。この場合も、全体的なピザチーズの色はハンターL-a-bスケールなどの適切な比色計とスケールで直接測定され得る。
【0090】
50未満のピザ膨れハンターLスケール色価は、許容可能なチーズ性能を示す。50を超えるピザ膨れハンターLスケール色価は、許容できないチーズ性能を示す。
【0091】
溶融/溶融性に基づくチーズの性能は、以下のように説明される。様々なチーズ品種の溶融性を測定するための数多くの定量化法が利用できる(Park et al.,1984)。Schreiber溶融試験は元来プロセスチーズ製品、特に「スライス」プロセスチーズ製品で使用するために設計された。しかし、わずかな修正で、モツァレラおよびパスタフィラータチーズの溶融の測定に使用できるようになる。
【0092】
モツァレラおよびパスタフィラータチーズの溶融性を測定するためのSchreiber溶融試験の修正は、以下を含む:
●5±0.05gの解凍したチーズ細断物を秤量し、直径39.5mmの円形にして、ガラス製(100×20mmの薄壁)ペトリ皿の底部にセットし、
●チーズ細断物を溶融塊(厚さ約2mm)に押圧し、
●ペトリ皿のカバーをサンプル上に置き、調製したサンプルを予熱した232℃のオーブンに入れて5分間焼き、
●処理したサンプルをオーブンから取り出して冷却ラック上で30分間冷却し、
●ペトリ皿の蓋をはずし、Schreiber溶融試験チャート(直径39.5mmから始まる一連の同心円を含み、後続の各円の直径が2mm大きいチャート)に皿を載せ、
●同心円上に列挙されているSchreiber融解試験のスコアを報告する(すなわち0から12の順)。
【0093】
これらの技術は、Park,J.,J.R.Rosenau,and M.Peleg.1984.”Comparison of four procedures of cheese meltability evaluation”.J.Food Sci.49:1158-1162,&1170、およびZehren,V,L.,and D.D.Nusbaum,1962.Process Cheese.Cheese Reporter Publishing Co.,Inc.Madison,WIに記載される。
【0094】
(FRDC)修正Schreiber溶融試験で6未満の溶融値は、許容可能なチーズ性能を示す。(FRDC)修正Schreiber溶融試験で6を超える溶融値は、許容できないチーズ性能を示す。
【0095】
遊離油に基づくチーズの性能(脂肪分離)は、以下のように説明される。遊離油(脂肪分離)測定値は、ピザを焼いた後にチーズによって放出される遊離脂肪の量を示す。遊離油は、Kindstedt and Rippe(1990)の方法によって、以下の一連のステップに従って定量的に測定される:
●18gのチーズを20%または50%のPaley-Babcockボトル内に定量的に秤量し、
●ボトルを沸騰水に4.0分間浸漬してチーズを溶融させ、
●各ボトルに57.5℃蒸留水20mLを添加し、調製したサンプルを57.5℃で10分間遠心し、
●十分な量の1:1の水:メタノール溶液を21℃で添加し、ボトルの目盛り付きカラムの上部セクションに液体レベルを上昇させ、ボトルを2分間遠心分離し、
●ボトルを10秒間(周囲温度)で「手で揺すり」、再度2分間遠心分離し、再度10秒間手で揺すり、次にさらに2分間遠心分離し、
●最後に、ボトルを57.5℃の温度に設定した水浴に5分間浸漬し、脂肪柱の表面の表面にglymolを添加し(メニスカスを除去し)、標準Babcockクリーム試験手順によって、脂肪含有量を測定する。
【0096】
遊離油分は、直接、またはチーズ量および/またはチーズ脂肪量当たりの遊離脂肪の百分率として表され得る。
【0097】
20%チーズ質量未満の遊離油分は、許容可能なチーズ性能を示す。20%チーズ質量を超える遊離油分は、許容できないチーズ性能を示す。
【0098】
これらの技術は、Kindstedt,P.S.,and J.K.Rippe.1990.”Rapid quantitative test for free oil(oiling off)in melted Mozzarella cheese”.J.Dairy Sci.73:867-873に記載される。
【0099】
チーズ延伸に基づくチーズの性能は、以下のように説明される。延伸は、典型的に、上記のように正確に調製されて焼かれたチーズピザから直接判定する。オーブンから取り出した直後に、ピザの中央の溶融チーズにフォークを挿入し、溶融チーズを引き延ばすようにフォークを持ち上げる。次にチーズ延伸の長さを、延伸されたチーズが切断するまで、定規を用いてcm単位で測定する。
【0100】
50cm未満の延伸は、許容可能なチーズ性能を示す。50cmを超える延伸は、許容できないチーズ性能を示す。
【0101】
乳清分離に基づくチーズの性能は、以下のように説明される。Guo and Kindstedt(1995)”Age-related changes in the water phase of Mozzarella cheese”.J.Dairy Sci.78:2099-2107は、次のようにして、モツァレラチーズから乳清分離を生じさせる手順を記載する:
●細断された160gのモツァレラを250mLのプラスチック製遠心分離ボトル内に秤量して栓をし、
●25℃で75分間にわたり12,500×gで遠心分離し、
●所望の分析(例えば、タンパク質、ミネラルなど)のために乳清部分を定量的に収集する。
【0102】
咀嚼時の柔軟性は、訓練を受けた感覚性パネルによって現在測定され、上記のようにピザ上で焼いた直後にチーズが評価される。
【0103】
一実施形態では、高水分パスタフィラータチーズは、冷凍IQF細断として存在する場合、解凍せずにピザに直ちに載せられ得て、ピザは焼かれて、チーズは所望の機能効果の全てを生じる。
【0104】
1.製造法
本発明はまた、
b)i)少なくとも65~99%のカゼイン、および
ii)約25~約75mmolの二価カチオン/100gカゼインの全二価カチオン含有量、または約50~約150meq二価カチオン/100gカゼインの全二価カチオン含有量、および
iii)約100~約250mMolの一価カチオン/100gカゼインの全一価カチオン含有量、または約100~約250meqの一価カチオン/100gカゼインの全一価カチオン含有量、および
iv)約150~約300mMolの全カチオン/100gカゼインの全カチオン含有量、および
v)約4.9~約6のpH
を含む乳タンパク質源を提供するステップと、
c)乳タンパク質源を8~40℃の温度で凝固剤に接触させて、ミルクカードを製造するステップと、
d)少なくとも1つの脂質成分をカードに混合して、混合物を製造するステップと、
e)混合物を約65~約90℃の温度で加熱し機械的に加工して、加熱されたチーズ塊を製造するステップと、
f)加熱されたチーズ塊を加工して、パスタフィラータチーズ製品を形成するステップを含む、パスタフィラータチーズを製造する方法にも関する。
【0105】
この方法は、好ましくは、一価カチオン含有量を調節して、
i)約100~約250mMolの一価カチオン/100gカゼインの全一価カチオン含有量、または約100~約250meqの一価カチオン/100gカゼインの全一価カチオン含有量、および
ii)約150~約300mMolの全カチオン/100gカゼインの全カチオン含有量を得るステップを含む。
【0106】
一価を調節するステップは、カード上、混合物上(すなわち、配合タンク内)、チーズ塊上またはそれらの組み合わせで行うことができる。一価カチオン含有量の調節は、特定の一価カチオンを減少させること、または全ての一価カチオンを減少させることであり得る。調節するステップは、特定の一価のカチオン、または存在する全ての一価のカチオンを増加させるステップもまた含む。一例として、NaClの添加が、調節するステップとして実施され得る。KClもまた使用され得るが、NaClが好ましい。
【0107】
本発明は、(パスタフィラータチーズの)製造プラントで実施され得る。例えば、第1段階は、
i)少なくとも65~99重量%のカゼインおよび約4.9~約6のpHを含む乳タンパク質源を提供するステップと、
ii)前記乳タンパク質源を8~50℃の温度で凝固剤に接触させて、ミルクカードを製造するステップと、
iii)少なくとも1つの脂質成分をカードに混合して、混合物を製造するステップと、
iv)前記混合物を約65~約90℃の温度で加熱し機械的に加工して、加熱されたチーズ塊を製造するステップと、
v)前記加熱されたチーズ塊を加工して、第1のパスタフィラータチーズ製品を形成するステップと
によって、パスタフィラータチーズのバッチを製造することである。
ひとたび製品が製造されたら、それを分析して一価および二価の含有量を判定し得る。これらの結果を用いて、パスタフィラータチーズの連続バッチは、所望の含有量、すなわち、
●約25~約75mmolの二価カチオン/100gカゼインの全二価カチオン含有量、または約50~約150meq二価カチオン/100gカゼインの全二価カチオン含有量、および
●約100~約250mMolの一価カチオン/100gカゼインの全一価カチオン含有量、または約100~約250meqの一価カチオン/100gカゼインの全一価カチオン含有量、および
●約150~約300mMolの全カチオン/100gカゼインの全カチオン含有量
を満たすのに必要とされる、一価および二価の含有量を調節することで改変され得る。
【0108】
場合によっては、これは反復的な工程であってもよい。
【0109】
一実施形態では、混合物は、65、70、75、80、85または90℃の温度に加熱されて機械加工される。これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい(例えば、約65~約90、約65~約85、約65~約80、約65~約75、約70~約90、約70~約85、約70~約80、約75~約90、約75~約85、約75~約80、約80~約90、約80~約85、または約85~約90℃)。
【0110】
乳タンパク質源は、広範囲の乳製品に由来し得る。使用される乳製品は、少なくともカゼインを含有する必要がある。例えば、乳タンパク質源は、全脂肪乳、全乳残余分/濃縮物、半脱脂乳、脱脂乳、脱脂残余分/濃縮物、バターミルク、バターミルク残余分/濃縮物、およびホエータンパク質残余分/濃縮物であり得て、または当業者によって理解され得るようにミルクから製造された製品に由来し得る。全脂粉乳、脱脂粉乳、乳タンパク質濃縮物粉末、乳タンパク質単離物粉末、全乳タンパク質粉末、レンネットカゼイン、乳酸カゼイン、カゼイン酸ナトリウム、カゼイン酸カリウム、カゼイン酸カルシウム、ホエータンパク質濃縮物粉末、ホエータンパク質単離物粉末、およびバターミルク粉末、または再構成されまたは乾燥された単独または組み合わせのミルクから製造されたその他の粉末などの1つまたは複数の粉末もまた、出発乳として選択され、または出発乳に添加されてもよい。
【0111】
乳タンパク質源が、生乳などのように脂質分を含む場合、脂質は、遠心分離の使用などを通じて、最初に分離される。この分離は、脂質を実質的に含まない乳タンパク質源をもたらす。クリーム形態の分離された脂質は、後から配合タンク内でチーズ製造工程に組み入れるための高脂肪クリームまたは無水乳脂肪に加工され得る。
【0112】
乳タンパク質のタンパク質および脂肪組成は、標準化として知られている工程によって改変されてもよい。標準化の工程は、特定の最終チーズ組成を達成するために、出発乳の脂肪およびタンパク質組成のばらつきをなくすことを伴う。伝統的に、ミルクの標準化は、出発乳から脂肪(クリーム)のほぼ全てを除去し(分離)、それに既知量のクリームを戻し入れて、出発乳中に所定のタンパク質/脂肪比を得ることによって達成されている。除去される必要がある脂肪(クリーム)の量は、出発乳の脂肪含有量および必要な最終チーズ組成に左右される。好ましくは、出発乳は、少なくとも0.05%の脂肪含有量を有する。より高い脂肪含有量が必要な場合、当業者によって理解されるように、別個のサイドストリームのクリームを添加して、出発乳または最終チーズ製品の脂肪含有量を高めてもよい。それに加えて、または代案として、タンパク質濃度は、UF残余分または粉末濃縮物などのタンパク質濃縮物を出発乳組成物に添加することによって、または当業者によって理解されるようなその他の方法によって改変されてもよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、脂質源が使用されて、乳タンパク質が標準化される。場合によっては、脂質源は、乳タンパク質の脂肪含有源から分離された脂質に由来してもよい。乳タンパク質源が既に実質的に脂質を欠いている場合、脂質標準化源はその他のミルクストリームに由来してもよい。例えば、脂質は、脱脂乳製造の副産物として製造される。
【0114】
いくつかの実施形態では、脂質含有量について標準化された乳タンパク質は、任意選択的に低温殺菌される。低温殺菌は、工程の任意の段階において、任意の液体ストリーム上で、特に出発乳およびクリームストリームで、当該技術分野で公知の標準的な条件下で実施されてもよい。任意選択的にクリームは均質化される。大規模連続処理プラントにおける流体製品の低温殺菌は、典型的に、高温短時間(HTST)工程を使用して、「プレート熱交換器」と称される装置を用いて行われる。ミルクのための最低限の加熱処理は≧72℃で15秒、およびクリームでは≧74.4℃で15秒である。低温殺菌加熱処理は、しばしば最小要件を超える。
【0115】
乳タンパク質は処理されて、ミネラル含有量が調節される。ミネラル含有量の調節は、カゼイン中に存在する特定のカチオン(例えば、カルシウムおよびマグネシウム)の量を減少させ、これらのカチオンをカリウムおよび/またはナトリウムなどのその他のイオンで置換する。
【0116】
ミネラル調節は、酸の添加、イオン交換の使用を通じて、および/またはミネラルキレート剤またはそれらの組み合わせの使用を通じて達成され得る。
【0117】
イオン交換の使用に関して、ミセル中の二価カチオンとの交換のためにミルクに導入される一価カチオンは、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンまたはその双方であるが、ナトリウムおよび/またはカリウムと共に、例えば、水素イオンH+などのその他の一価イオンが含まれてもよい。好ましい実施形態では、一価カチオンは、カゼインミセル中の二価カチオンであるカルシウムCa++、Mg++、Mn++および/またはZn++結合を置換する。
【0118】
イオン交換は、調製されたミルクおよび/または残余分の天然カゼインミセル中の二価カチオンを一価カチオンで交換する方法である。好ましくは、イオン交換は、ミルクおよび/または残余分を、官能化ゲルポリマーまたは樹脂などの適切に荷電されまたは活性化された媒体で処理することで実施される。これらの方法としては、本明細書にその内容全体が参照により援用される、公開されたPCT出願である国際公開第2001/41579号パンフレットおよび国際公開第2001/41578号パンフレット、および米国特許出願第2003/0096036号明細書および米国特許出願第2004/0197440号明細書,で開示されるものが挙げられる。乳タンパク質源は、カチオン交換クロマトグラフィーを用いて、好ましくは、例えば(ナトリウムまたはカリウム形態の)スルホネート基などの強酸性基を保有する樹脂上で、カルシウムの除去によって調製される。好ましくは、カルシウム枯渇を受けた乳材料のpHは、イオン交換処理に先だって、pH6.0~6.5の範囲に調節される。任意の食品用認可済みの酸味料が使用されてもよいが、乳酸源および乳酸源またはクエン酸源が好ましい。酢、酢酸、およびリン酸もまた使用されてもよい。カルシウム枯渇乳製品は、液体成分として使用されてもよく、または乾燥して乾燥成分が製造されてもよい。カルシウム枯渇の程度は、たとえば樹脂の性質および容量、乳材料の性質および量、空間速度(樹脂床体積に対する体積流量の比率)、処理乳と未処理乳の混合、温度、pHなどのクロマトグラフィー条件を変更することによって、変化させてもよい。代案としては、電気透析が、ミルク中で所望のカチオン交換を実施するための別の好ましい手順である。ミルクは、適切な電位に維持された適切なメンブレンシステムで処理される。
【0119】
別の実施形態では、電気透析およびその他の好ましいメンブレン処理が、透析濾過と組み合わされる。透析濾過は、残余分のカゼイン部分の純度を高める。
【0120】
透析濾過はまた、規定量の塩または塩化ナトリウムが水に添加される場合、カゼインミセル中の二価カチオンの一価カチオンによる所望の交換を促進する。
【0121】
さらなる実施形態では、例えば、米国特許出願第2003/0096036号明細書および国際公開第01/41579号パンフレットに記載されるように、低pH限外濾過および/または透析濾過を用いて、二価イオンが除去される。さらなる実施形態では、調理されるべき組成物が、遠心分離され加熱処理された中和カゼインおよびホエータンパク質から調製される。
【0122】
本発明の好ましい実施形態では、カゼインに結合しミセルを二価性に結合する、二価カチオンの少なくとも10%~50%、より好ましくは15%~30%、最も好ましくは15%~25%が、一価カチオンで交換される。好ましくは二価カチオンは、ナトリウムまたはカリウムまたはその双方によって、好ましくはナトリウムによって置換される。
【0123】
カルシウムおよび/またはマグネシウムの除去が、キレート化剤添加の手段による場合、使用される好ましいキレート化剤としては、クエン酸、EDTA、食用リン酸/ポリリン酸、食用酸味料、酒石酸、クエン酸、および酒石酸が挙げられる。好ましいキレート化剤は、食用酸性化剤である。キレート化剤は、限外濾過または透析濾過段階の前、最中または後に、または限外濾過または透析濾過とは独立して、使用されてもよい。
【0124】
酸の添加については、これは、食品に適した酸を乳タンパク質に添加することで達成され得る。代替的に、細菌源(乳酸産生細菌株など)が酸の供給源として使用され得る。
【0125】
イオン交換が用いられる実施形態では、第1の工程は分画工程であり得る。分画は、膜濾過の使用によって達成され得る。例えば、限外濾過を用いて濃縮タンパク質画分を製造することにより。
【0126】
次に、残余分が、適切な樹脂などのイオン交換膜と接触される。一実施形態では、イオン交換工程は、ナトリウムおよび/またはカリウムカチオン交換樹脂を用いて、残余分中の二価カチオンの少なくとも20%をナトリウムおよび/またはカリウムで置換し、それによって二価カチオン対一価カチオン対リン酸の比率が変化する。
【0127】
いくつかの実施形態では、乳タンパク質は、ミネラル調節された乳タンパク質残余分を脱脂乳などの未処理ミルクタンパク質源に、および/または残余分に混合することによって、さらなるミネラル調節を受け、標準化されたミネラル含有量を有する混合残余分が製造される。
【0128】
イオン交換からの残余分は、添加されたカリウムおよび/またはナトリウムイオンで補充された水からなる透析濾過媒体を用いて、限外濾過および/または精密濾過のどちらかなどの濾過によって処理され、追加的なミネラル調節を有する残余分が製造され得る。残余分は、チーズ製造工程の残りの部分で使用される。
【0129】
乳タンパク質は、必要であれば、食品等級の酸を使用して、約4.9~約6のpHに調節される。いくつかの実施形態では、食品等級の酸は、酢酸、クエン酸、乳酸、リン酸、グルコン酸、硫酸、グルコノデルタラクトン、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0130】
いくつかの実施形態では、乳タンパク質は、0、5、10、15、20、25、30または40℃に冷却され、これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい(例えば、約0~約40、約0~約30、約0~約25、約0~約20、約0~約10、約5~約40、約5~約30、約5~約25、約5~約20、5~約15、約10~約40、約10~約30、約10~約20、約10~約15、約15~約40、約15~約30、約15~約25、約15~約20、約20~約40、約20~約30、約20~約25、約25~約40、または約25~約30℃)。
【0131】
いくつかの実施形態では、乳酸スターター細菌が、ミネラル調節された乳タンパク質ストリームに添加される。スターター細菌は、残留ラクトースを発酵させ、乳タンパク質ストリームを酸性化する。
【0132】
チーズ製造工程において標準的であるように、カゼイン凝固酵素がカゼインに添加され、カードが形成される。典型的に、カード形成はレンネットの添加を通じて達成されるが、種々の凝固酵素が知られている。いくつかの実施形態では、カゼイン凝固酵素は、キモシンとしても知られている仔ウシレンネット、またはウシペプシン、ブタペプシン、微生物レンネット、および/または組換え微生物キモシン、および微生物凝固剤から選択される。一般的な微生物レンネットは、リゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)、リゾムコール・プシルス・リンツ(Rhizomucor pusillus Lindt)、およびcryphonoctria parasitica(全て真菌)によって産生され、遺伝子操作された仔ウシレンネットは、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、および/または大腸菌(Escherichia coli)から製造されもよい。
【0133】
いくつかの実施形態では、乳タンパク質源は、約8、10、15、20、25、30、35、40、45または約50℃の温度で凝固剤と接触されて、ミルクカードが生成し、適切な範囲は、例えば、約8~約50℃、約10~約50℃、約20~約50℃、約25~約50℃、約30~約50℃、約8~約40℃、約20~約40℃または約25~約40℃などのこれらの値から選択されてもよい。
【0134】
いくつかの実施形態では、レンネット添加乳タンパク質は、約0.001、0.01、0.5、1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16時間保持され、これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい(例えば、約0.001~約16、約0.001~約15、約0.001~約12、約0.001~約10、約0.001~約8、約0.001~約6、約0.001~約2、約0.001~約1、約0.001~約0.5、約0.001~約0.01、約0.01~約16、約0.01~約15、約0.01~約12、約0.01~約10、約0.01~約8、約0.01~約6、約0.01~約2、約0.01~約1、約0.01~約0.5、約0.5~約16、約0.5~約15、約0.5~約12、約0.05~約10、約0.5~約8、約0.5~約6、約0.5~約2、約0.5~約1、約1~約16、約1~約15、約1~約12、約1~約10、約1~約8、約1~約6、約1~約2、約2~約16、約2~約15、約2~約12、約2~約10、約2~約8、約2~約6、約2~約3、約5~約16、約3~約15、約3~約12、約3~約10、約3~約8、約3~約6、約3~約2、約6~約16、約6~約15、約6~約12、約6~約10、約6~約8、約8~約16、約8~約15、約8~約12、約8~約10、約10~約16、約10~約15、約10~約12、約12~約16、約12~約15、約12~約14、約14~約16時間)。
【0135】
いくつかの実施形態では、処理された乳タンパク質は、pHを約4.85~約6.4、より具体的には、約5.2~約6.0に低下させる酸の添加によって酸性化される。いくつかの実施形態では、pH調節は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15℃の温度で実施される。
【0136】
いくつかの実施形態では、酸は、硫酸、乳酸、クエン酸、および酢酸、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0137】
ひとたびカードが凝固したら、それを調理して離漿させ、次にカードはホエーから分離される。いくつかの実施形態では、カードは、直接蒸気注入によって、約30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50℃に加熱される。いくつかの実施形態では、カードは、約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59または60秒間にわたり加熱が保たれる。
【0138】
いくつかの実施形態では、カードは、酸性化された水で洗浄される。いくつかの実施形態では、カードは、傾斜法分離器を用いて洗浄水から分離される。ホエーおよび引き続く洗浄水の除去は、当該技術分野で脱ホエーおよび/または脱水と称される。
【0139】
いくつかの実施形態では、カード中の目標カルシウム範囲は、約115~約210mMolのCa/kgチーズである。
【0140】
いくつかの実施形態では、洗浄されたカードの目標脂肪含有量は、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30%重量であり、これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい(例えば、約12~約30、約12~約28、約12~約26、約12~約25、約1~約23、約12~約18、約13~約30、約13~約26、約13~約22、約13~約20、約13~約17、約13~約15、約14~約30、約14~約18、約15~約30、約15~約27、約15~約26、約15~約24、約15~約20、約16~約30、約16~約27、約16~約24、約16~約20、約17~約30、約17~約27、約17~約24、約17~約21、約18~約30、約18~約26、約18~約22、約19~約30、約19~約28、約19~約26、約19~約24、約20~約30、約20~約27、約20~約24、約21~約30、約21~約27、約21~約25、約22~約30、約22~約28、約22~約26、約23~約30、約23~約28、約23~約24、約24~約30、約24~約28、約24~約26、約25~約30、約25~約27、または約26~約30重量%)。
【0141】
いくつかの実施形態では、洗浄されたカードのカルシウム含有量は、約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50mMolのCa/100gカゼインであり、これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい(例えば、約40~約50、約40~約48、約40~約47、約40~約43、約41~約50、約41~約49、約41~約47、約41~約45、約42~約50、約42~約47、約42~約46、約43~約50、約43~約48、約44~約50、約44~約48、約44~約46、約45~約50、約45~約48、約45~約47、約46~約50、約46~約48、または約48~約50mMolのCa/100gカゼイン)。
【0142】
チーズカードは、好ましくは粉砕機の使用を通じて粉砕される。好ましくはカード粒子の粒度は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20cmであり、これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい。
【0143】
粉砕されたチーズカードは、様々な成分と混合される。典型的に、これは配合タンク内で行われる。成分には、所望の脂質含有量を達成するための脂質源が含まれる。前述のように、脂質源は、クリーム、高脂肪クリーム、無水乳脂肪、ギー、無塩バター、および加塩バターから選択され得る。この脂質源は、乳タンパク質源から分離されたクリームであり得て、その脂質源は脂質分を含む。
【0144】
配合タンクに添加されるその他の成分としては、塩およびその他のGRAS成分が挙げられる。GRAS成分としては、
vi)脱脂粉乳、脱脂粉乳、バターミルク粉末、乳タンパク質濃縮物、カゼイン、カゼイネート、乾燥甘性ホエー、ホエータンパク質濃縮物、ホエータンパク質単離物、および全乳タンパク質などの乳タンパク質、
vii)着色剤、
viii)香味料、
ix)デンプン、
x)ガムおよび/または親水コロイド、
xi)塩、
xii)酵素、
xiii)乳化剤、
xiv)乳糖などの甘味剤、および
xv)上記の(i)~(viii)の2つ以上の任意の組み合わせ
が挙げられる。
【0145】
一実施形態では、一価カチオンの含有量は、カード、配合タンク、チーズ質量またはそれらの任意の組み合わせへのNaClまたはKClの添加によって調節される。好ましくは、NaClが使用される。
【0146】
一実施形態では、混合物は、100、120、140、160、180、200、220、240または250mMolのNa/100カゼインのナトリウム含有量に調節され、例えば、これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい(約100~約250、約100~約240、約100~約200、約100~約160、約100~約120、約120~約250、約120~約230、約120~約200、約120~約160、約140~約250、約140~約180、約160~約250、約160~約240、約160~約180、約180~約250、約180~約200、約200~約250mMolのNa/100gカゼイン)。
【0147】
ホエータンパク質ゲル粒子の添加
一実施形態では、工程は、ホエータンパク質ゲル粒子の添加を含む。ホエータンパク質ゲル粒子の使用は、パスタフィラータチーズの水保持能力を補佐し得る。
【0148】
ホエータンパク質ゲル粒子は、ホエータンパク質溶液から製造され得る。例えば、約10~約30%のタンパク質含有量のホエータンパク質(WP)溶液は、ホエータンパク質粉末を水中で再構成することによって、または新鮮なホエーストリームを限外濾過することによって得られる。ホエータンパク質溶液は、例えば、NaOHおよび/またはHClなどの希アルカリおよび/または希酸を添加することによって、約6~約8のpHに調節される。
【0149】
いくつかの実施形態では、ホエータンパク質溶液は、脂質源と合わせられる(配合タンクへの添加のために)。いくつかの実施形態では混合物は、脂質とホエーのエマルションであり、それは高速ミキサーで混合されるか、または例えば最高約200バールなどの比較的低圧で均質化される。好ましくは、温度は約50℃に維持され、脂肪の結晶化が回避される。
【0150】
いくつかの実施形態では、脂質源は乳脂質である。好ましくは、乳脂質は、クリーム(典型的に、約30重量%の脂肪含有量を有する)、高脂肪クリーム(典型的に、約75重量%の脂肪含有量を有する)、または無水乳脂肪(典型的に、約99.8重量%の脂肪含有量を有する)から選択される。
【0151】
いくつかの実施形態では、エマルションは、添加された乳化剤の非存在下で調製される。
【0152】
典型的に、例えば、GRAS成分などの任意の他の乳製品が添加され得る。
【0153】
いくつかの実施形態では、ホエータンパク質溶液と合わせられる脂質は、最終チーズ製品中の全脂肪の少なくとも70、75、80、85、90、95または100%に相当し、これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい。
【0154】
ホエーと脂質の混合物は、少なくとも65、70、75、80または85℃で少なくとも約10、15、20、25、30、35または40秒間加熱され、これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい。この加熱工程により、タンパク質は変性してゲルを形成できるようになる。好ましくは、加熱は動的条件下で行われ、タンパク質ゲルをより小型の粒子に破壊するための剪断が提供される。
【0155】
いくつかの実施形態では、加熱されたホエータンパク質と脂質とのエマルションは、低温(例えば、4±2℃)に冷却されて、その後の使用前に冷蔵保存ができるようになる。
【0156】
代替的な実施形態では、加熱されたエマルションは、モツァレラまたはパスタフィラータチーズを製造するための成分混合物に、熱成分として直接添加される。
【0157】
必要とされる加熱されたエマルションの量は、最終チーズの目標水分含量に左右される。当業者は、ホエータンパク質ゲル粒子が多量の水と結合し得ることを理解するであろう。例えば、元のホエータンパク質溶液が15%のタンパク質を含有する場合、ゲル粒子の水分含量は少なくとも約80%になる。したがって、必要とされるエマルションの量は、最終製品中の目標水分および脂肪含有量に左右される。
【0158】
混合物調理および延伸
次に、混合物は調理器に導入され、温度65、70、75、80、85または90℃で調理され、これらの値のいずれかの間で有用な範囲が選択されてもよい(例えば、約65~約90、約65~約85、約65~約70、約70~約90、約70~約85、約70~約75、約75~約90、約75~約80、約80~約90、約80~約85、約85~約90℃)。
【0159】
様々なタイプのチーズ調理器および掻き取り表面熱交換器が、使用され得る。いくつかの実施形態では、調理器は直接蒸気注入を含む。いくつかの実施形態では、この工程を使用して、最終的なパスタフィラータチーズ製品の水分含量を制御する。
【0160】
加熱されたチーズ塊は、機械的な延伸および混練を受けて、延伸されたカードパスタフィラータチーズ製品が製造されてもよい。
【0161】
いくつかの実施形態では、調理され引き延ばされたパスタフィラータは、即時にまたは後時に細断するためのシートとしてキャスティングされ得る。典型的に、キャスティング装置は、チーズを冷却して連続シートまたはリボンを形成する。
【0162】
いくつかの実施形態では、調理されたパスタフィラータは低温で押出され、次に切断される。
【0163】
いくつかの実施形態では、例えば保存要件がある場合、パスタフィラータはブロックとして製造され、凍結され得る。ブロックは、必要に応じて細断処理され得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、冷凍または冷蔵パスタフィラータは細断されて、約1.5~.5mm±1.5mmの深さおよび幅、および約3~約30mm長さの細断物サイズを有する、個々の細断チーズ粒子が製造される。
【0165】
いくつかの実施形態では、固結防止剤が細断チーズ粒子に添加される。いくつかの実施形態では、固結防止剤は、微結晶セルロース(GMPによって制限される量)、粉末セルロース(GMPによって制限される量)、二酸化ケイ素、非晶質(10,000mg/kgまでの量)、ケイ酸マグネシウム、合成(10,000mg/kgまでの量)、アルミノケイ酸ナトリウム(10,000mg/kgまでの量)、カルシウムケイ酸アルミニウム(10,000mg/kgまでの量)、およびケイ酸アルミニウム(10,000mg/kgまでの量)から選択される。
【0166】
いくつかの実施形態では、細断チーズ粒子は直ちに凍結され、個別急速冷凍(IQF)細断粒子シュレッド粒子が製造される。
【0167】
その他の実施形態では、調理されたチーズは、ストリングチーズ、パスタフィラータチーズ、ボッコンチーニまたはバルク形態で包装され、冷蔵温度に冷却される。
【実施例】
【0168】
1.高水分モツァレラおよびパスタフィラータチーズ
全乳をクリーム(約40%脂肪)画分と脱脂乳画分に分離させ、各画分を標準手順によって標準的な温度で低温殺菌した。クリームは、冷蔵温度で一晩保存した。その一方で、およそ1800Lの低温殺菌脱脂乳の温度を10℃に調節した。100mlのFromase XL-750(DSM)微生物凝固剤を調質脱脂乳に完全に混合し、レンネット添加脱脂乳を約6時間にわたり静的に保持した。次に、温度を10℃に維持しながら、十分な量の希硫酸を、インラインスタティックミキサーを用いて迅速添加することにより、処理された脱脂乳を酸性化し、pHを5.4に低下させた。次に、調製した脱脂乳を直接蒸気注入により43℃に加熱し、保持管内で50秒間保持してカゼインを凝固させ、カゼインを調理してチーズカードを形成させた。ホエーを排出し、カード1kgあたり8.3Lの洗浄水を用いて、カードを酸性化水(pH2.6)で洗浄した。傾斜法分離器で洗浄水からカードを取り出し、165mMolのCa/kgの目標カルシウム含有量を有する低脂肪チーズカードベースを製造した。次に、チーズカードを粉砕した。
【0169】
クリームを冷蔵保存から取り出し、標準的な手順を用いてプレート熱交換器内で50℃に加熱し、次に適切な分離器で処理して、高脂肪(または可塑性)クリーム(およそ79~80%脂肪)を製造した。次に10.14kgの粉砕低脂肪チーズカードベース、5.822kgの高脂肪クリーム、および0.57kgの塩(塩化ナトリウム)をBlentech(Rohnert Park,Ca)二軸スクリューレイダウンプロセスチーズ調理器(25kgの総容量)内で合わせた。スクリュー速度を50RPMに設定して、合わせた成分を最初に共に1分間混合し、温度は平均で25℃であった。次に、6.72kgの配合水を配合物に添加して、50RPMのスクリュー速度と25℃の平均温度で混和を継続した。次に、スクリュー速度を90RPMに増加させ、直接蒸気注入により調理を開始した。蒸気注入の速度を3.5分間にわたり比較的一定に保ち、次にさらに3.5分間スイッチオフした。観測された最大温度は、68℃であった。配合物温度が50℃に達したら、スクリュー速度を150RPMに増加させ、蒸気注入をスイッチオフした後に50RPMに減少させた。配合調合物の計算は、直接蒸気注入が水蒸気凝縮物として、完成チーズにさらに1.75kgの水を追加するという推定に基づいていた。したがって、試験配合物は、約25kgの溶融チーズ配合物を生成すべきである。
【0170】
溶融配合物を収集して準備されたチルロールに導入し、それは配合物を冷却して冷却ゲル化モツァレラシートを生成した。冷却したモツァレラシートを低温冷凍庫で急速凍結させ、引き続いて冷凍チーズを細断し、ピザ上で焼くために使用するまで冷凍保存した。
【0171】
表1は、計算されたモツァレラ組成および実際のモツァレラ組成を示す。
【表1】
【0172】
モツァレラの冷凍細断は、製造の5日後にピザ上で焼くことによって試験し、機能性を評価した。最初に、300gの冷凍IQFモツァレラを、あらかじめ90gのソースを加えて調製した直径12インチ(30.5cm)の円形ピザベース上に載せた。調製したピザは、標準的なインピンジャーオーブン内において、250℃で7分間焼いた。新規方法によって製造されたモツァレラの機能的性能は、膨れサイズ、溶融、脂肪分離、延伸、および咀嚼中の軟性の必要な機能性を満たし、またはそれを超える。
【0173】
2.ゲル化ホエータンパク質粒子
塔頂撹拌機を用いて、40部のWPC溶液(20%タンパク質)と60部の高脂肪クリーム(80%脂肪)を55℃で最初に混合することによって、ゲル化ホエータンパク質粒子をエマルションとして製造した。次に、高速ミキサー(UltraTurrax、IKAモデルT25D S2、Global Science,Germany)を用いて、この混合物を15,000RPMで約50℃の温度で2分間処理した。
【0174】
その後、調製した混合物を55℃の水浴中でおよそ20分間予熱し、蠕動ポンプによって水浴に浸漬された銅コイルを通してポンプ輸送した(Easy Load MasterFlex,Model 7518-10,Cole-Palmer Instrument Company,Barrington,IL,USA).コイルを通過する10秒間の滞留時間が、混合物をおよそ80℃の最終温度に加熱するように、水浴温度を85±1℃に維持した。4℃で保存する前に、調製した混合物を室温で放冷し、ゲル化ホエータンパク質粒子を形成させた。
【0175】
次にRapid Visco Analyser(RVA、Newport Scientific Pty Ltd,Warriewood,NSW,Australia)を用いて、ゲル化ホエータンパク質粒子を使用して、低脂肪カード、高脂肪クリーム、逆浸透水、および塩化ナトリウム(NaCl)を含む様々な高水分モツァレラチーズを製造した。
【0176】
対照またはモデルモツァレラチーズ組成物は、21%のタンパク質、23%の脂肪、53%の水分、1.4%のNaCl、80mmol/kgのカルシウム、およびpH5.4からなる。成分を秤量し、RVAキャニスターに入れた。総サンプルサイズは、高脂肪クリーム(約6g)、低脂肪カード(約15g)、水(約8.6g)、およびNaCl(420mg)からなる、30gであった。試験配合物がゲル化ホエータンパク質粒子を含む場合、その他の全ての成分の量を比例的に低下させて乳剤添加の平衡を保った。
【0177】
次に、プロペラ型撹拌器をRAVキャニスター内に挿入し、キャニスターをRVA内に入れた。混合速度を0から800rpmまで連続的に増加させながら、温度を25℃で2分間維持した。次に、温度を2分以内に25℃から70℃に上昇させ、70℃で6分間保持した。サンプルをキャニスターから取り出し、溶融した内容物をプロセスチーズ包装フィルムのシート上に注ぎ、適切なスペーサの間で圧延して冷却し、厚さ2mmのスライスを製造した。
【0178】
表2は、ゲル化ホエータンパク質粒子の0~30パーセント体積分率(Φ)添加で製造されたモデルモツァレラ組成物の計算された組成、および実際の最終水分含量を示す。
【表2】
【0179】
ゲル化ホエータンパク質粒子を含有するチーズサンプルは、4人の訓練されたチーズ専門家によって、良好な水分保持能力を有する質感において一貫していると記載された。
【0180】
3.ホエータンパク質ゲル粒子
新鮮な酸性ホエーを限外ろ過により処理して、ホエータンパク質が全固形分の25%を構成する残余分を製造した。30:70(E1)、35:65(E2)、および40:60(E3)の比率で、ホエータンパク質濃縮物を高脂肪クリーム(脂肪79%)と混合することによって、様々なホエータンパク質ゲル粒子を調製した。調製した配合物は、それぞれ約100kgであった。次に、Ultraturraxを用いて8000回転/分および55℃で10分間混合することによって、それぞれの混合物を別々に処理した。混合物を別々に200バールで均質化し、次に85℃で24秒間加熱した。加熱処理はシェルアンドチューブ熱交換器を用いて実施し、蒸気を含有する加熱チャンバー内の管(コイル)に生成物を供給した。加熱した混合物を室温まで冷却し、ゲル化ホエー粒子を形成させた。次にモデルモツァレラチーズを作製する成分として使用する前の保存のために、粒子を4℃に冷却した。
【0181】
表3は、様々なゲル化ホエータンパク質粒子エマルションの組成を示す。
【表3】
【0182】
モデルモツァレラチーズは、モデルミキサー調理器を使用して作製した。これらのチーズの配合は、約53%の水分、約20~23%のタンパク質、および約23%の脂肪を含む、標準配合の修正であった。ゲル化ホエータンパク質粒子は、通常、チーズ中に水分を保持する能力について試験した。ゲル化ホエータンパク質粒子を添加すると、通常、脂肪が減少して、タンパク質がわずかに減少し、水分含量が増加したモツァレラが製造された。特定のバッチで添加されたゲル化ホエータンパク質粒子の量は、通常、目標の水分を設定することによって決定した。次に、上記の実施例2に記載されているように、その他の添加成分の量を最小限変更した。
【表4】
全ての高水分モツァレラチーズは、pHが5.4、塩分が1.4%であった。
【0183】
対照1は水分53%を生成するように配合し、対照2は添加された水として60%の水分を生成するように配合した。対照2配合物は、一貫性のない質感と多大な遊離乳清を有する質の悪いチーズを生成した。品質不良のために、対照2配合物で製造されたチーズの試験は取り消した。
【0184】
高水分のモツァレラチーズをシートに成型して細断し、使用するまで-18℃で保存した。細断物を使用の2日前に冷凍庫から取り出し、次に4℃で保存した。次に、それぞれを上記のように評価するために、ピザに散布した。
【0185】
これらのピザの評価は、外観および溶融特性に関して、有意差がなかったことを示した。添加されたエマルションを有するチーズは、良好な質感および口当たりおよび風味を有した。
【0186】
これらの実施例は、ゲル化ホエータンパク質粒子の使用が、ピザ用途のための高水分のモツァレラチーズを成功裏に生成したことを実証する。
【0187】
4.比較例
組成物によるモツァレラおよびパスタフィラータチーズの製造を実証する追加的な試験を、伝統的および代替的組成のチーズと比較した。この試験セットは、本発明の組成で製造したチーズ、本発明のパラメータ外の組成で製造したチーズ、および標準的基準チーズサンプルを評価した。
【0188】
本発明の例示的なチーズの試験パラメータ
所望の機能性を提供する組成物をさらに評価する試験で製造されたチーズは、以下のパラメータで製造した:
a)60、63、または65%のいずれかの水分含量、
b)0または4%のどちらかのテクスチャライズされたホエータンパク質含有量、
c)1.50、1.65、または1.85%のいずれかの塩含有量、
d)およそ35~45mMol/100gカゼインの二価カチオン含有量、および
e)およそ140~190mMol/100gカゼインの一価カチオン含有量。
【0189】
脂肪分乾燥物(FDM)は、47.5%で一定に保った。
【数1】
【0190】
したがって、絶対的チーズ脂肪含有量は、水分/全固形分の変化に伴ってFDMを維持するために必要に応じて変化した。
【0191】
タンパク質含有量は、水分/全固形分、脂肪、および塩含有量を補完するために必要に応じて変化し、残留乳塩および偶発的炭水化物(主に有機酸および主に乳酸、および痕跡量の乳糖)を考慮に入れる。
【0192】
二価カチオン含有量は、二価カチオン(主にCaおよびMgであるが、偶発的または痕跡量のZnおよびMnも含む)の除去を促進または制限する手順を用いて、チーズカード製造中に、主に制御した。
【0193】
一価のカチオン含有量は、添加塩(例えば、塩化ナトリウムまたはおそらく塩化カリウム)の含有量を調節することによって主に制御され、これは必要に応じてナトリウム含有量を調節した。一価カチオン含有量を調節するために塩化カリウムもまた添加してもよいが、これらの試験では塩化カリウムは添加しなかった。表5は、本発明を例証する試験チーズの計算された組成を示す。これらのチーズは文字A~Hで識別され、各試験で評価されたパラメータの変化が記述される。
【表5】
【0194】
本発明以外のパラメータで製造された比較チーズの試験パラメータ
比較試験で製造されたチーズは、所望の機能性を提供する本発明のチーズで使用され得るカチオンパラメータ以外の組成物を評価した。これらのチーズは、以下のパラメータで作製した:
●≒61.5±≒0.35、62.0、63、および65%のいずれかの水分含量、
●≒0.8、1.25、または2.25/2.30%のいずれかの塩含有量、
●25から>50mMol/100gカゼインの二価カチオン含有量、および
●80~約125;および>240mMol/100gカゼインの一価カチオン含有量。
【0195】
FDMはこの場合も47.5%で一定に保たれ、絶対的なチーズ脂肪含有量は、水分/全固体含有量の変化と共に、FDMを維持するために必要に応じて変化した。タンパク質含有量は、水分/全固形分、脂肪、および塩含有量を補完するために必要に応じて変化し、残留乳塩および偶発的炭水化物(主に有機および主に乳酸、および痕跡量の乳糖)が配慮された。最後に、比較サンプルのいずれにもテクスチャー化されたホエータンパク質成分は含まれていなかった。
【0196】
二価カチオン含有量は、この場合も、二価カチオン(主にCaおよびMgであるが、痕跡量のZnおよびMnも含む)の除去を促進または制限する手順を用いて、チーズカード製造中に、主に制御した。
【0197】
一価のカチオン含有量は、添加塩(例えば塩化ナトリウム)の含有量を調節することによって主に制御され、これは必要に応じてナトリウム含有量を調節した。表6は、本発明を例証する試験チーズの計算された組成を示す。これらのチーズは、A1およびA6、ならびにB1~B3(国際公開第2003/069982号パンフレットの実施例1~3に由来する)によって同定される。表は、各試験で評価された組成変動を示す。
【表6】
【0198】
標準的基準組成
表7は、参照および比較のための標準的なモツァレラおよび関連チーズの組成を提供する。これらの試験では、これらの組成のチーズは作製しなかった。
【表7】
【表8】
【0199】
発明および比較例のチーズサンプルの製造
ミルクの受領および処理
生全乳を受け取り、クリーム(≒40%脂肪)と脱脂乳に分離した。各画分は、標準的な手順で操作されるプレート熱交換器を用いた高温短時間の手順により、標準温度で別々に低温殺菌した。クリームを冷却し、使用するまで冷蔵温度で保存した。
【0200】
スキムモツァレラチーズチーズ調製
本発明および比較試験双方のチーズカードをJohnson et al.(国際公開第2003/069982A1号パンフレット)の方法によって製造したが、所望の一価および二価のカチオン含有量を生じる任意のチーズ製造手順も許容される。およそ1800Lの低温殺菌脱脂乳をバットに移し、Fromase XL-750微生物凝固剤(DSM,Holland)を用いて固化させた。得られた凝塊を切断し、調理してホエーから分離し、酸性化水(pH2.6)で、カード1kgあたり8.3Lの洗浄水で洗浄し、次に粉砕して、目標のカルシウム含有量が≒165mMolのCa/kgモツァレラカードである低脂肪チーズカードベースを製造した。
【0201】
高脂肪クリーム調製
クリームを冷蔵保存から取り出し、プレート熱交換器を用いて50℃に加熱した。調質クリームを適切な分離器で処理し、≒80%脂肪を有する高脂肪(または可塑性)クリームを製造した。
【0202】
ホエータンパク質ゲルまたはテクスチャライズされたホエータンパク質調製
ホエータンパク質ゲルまたはテクスチャライズされたホエータンパク質粒子を、実施例3のエマルションE2に記載のように調製した。完成した粒子の組成は、水分39.23%、脂肪52.55%、全タンパク質6.70%、カゼイン0.4%、ホエータンパク質/NPN6.3%、CHO/灰分1.52%カルシウム0.08%、ナトリウム0.06%、およびカリウム0.01%であった。調製した粒子中のマグネシウム、マンガン、および亜鉛の量は検出レベル未満であった。
【0203】
チーズ製造
全てのチーズは、Blentech(Rohnert Park,CA)の二軸スクリューレイダウンプロセスチーズ調理器内で、計算量のスキムモツァレラチーズカード、高脂肪クリーム、配合水、および塩(塩化ナトリウム)を合わせることによって製造した。これらの成分を最初に、50rpmのスクリュー速度とおよそ25℃の温度で共に10分間混合した。次に、スクリュー速度を90RPMに増加させ、直接蒸気注入により調理を開始し、配合物温度を5分間で50℃に増加させた。スクリュー速度を150RPMに増加させ、蒸気注入をさらに5分間継続し、混合温度を68℃に増加させた。次に、蒸気の注入を休止し、68℃の最終調理温度で、配合物を最初に150RMPのスクリュー速度で5分間、次に50RPMで最後に5分間混合した。直接蒸気注入は水蒸気凝縮物として追加の水を加えると想定され、試験配合物がおよそ25kgの溶融チーズ配合物を生成できるようにした。
【0204】
試験において、遊離水または遊離乳清を含まない均一で成功裏に乳化された溶融チーズ塊が製造された場合、溶融配合物を収集して、冷却されたチルロール上にキャスティングし、冷却したゲル化モツァレラのシートを製造した。冷却したモツァレラシートを低温冷凍庫で急速凍結させ、引き続いて冷凍チーズを細断し、ピザ上で焼くために使用するまで冷凍保存した。
【0205】
結果
発明のサンプル:チーズ製造
表8は、標準的な分析手順によって判定された、本発明の試験サンプルの組成を示す。全ての本発明の試行チーズ配合物は、調理器内で許容可能に溶融し、全ての脂肪を結合する強力で安定な脂肪エマルション、および水分または乳清に結合する安定なカゼイン構造を生じた。したがって、本発明の試験チーズは全て冷却されたシートに成功裏にキャスティングされ、凍結され、ピザ上での評価のために細断された。表8は、標準的な分析手順によって判定された、本発明の試験サンプルの組成を示す。表7に提示される標準サンプル組成との比較は、水分、一価カチオン、二価カチオン、および全カチオン含有量が、本発明のサンプル中のこれらの成分の組成と大きく異なることを示す。全ての比較チーズの製造は、完全に安定した溶融配合物の生成に失敗した。加熱された溶融サンプルは、同時に多量の遊離乳脂肪および遊離乳清または遊離水を生じた。これらの試験で製造された配合物は、冷却されたシートとしてキャスティングされ得ず、組成分析のための均一なサンプルを提供しなかった。したがって、これらの配合物は直ちに廃棄された。
【表9】
【0206】
ピザ上における焼成分析
冷凍細断モツァレラの機能性は、実施例1に記載の方法を用いて、製造の5日後にピザ上で焼くことによって評価した。表9は、本発明のサンプルのピザ焼成結果を示し、表10は、ピザ焼成後のチーズの評価に用いられる基準を示す。
【表10】
【表11】
【0207】
風味は、以下をはじめとする主要な特徴および/または検出に注目することによって評価される:
●塩味、
●酸度、
●バター風味、
●味の鋭さ、
●酸化された味、
●魚臭、および
●段ボールの味。
【0208】
ピザ上で焼かれた場合の革新的なサンプルの機能性は、ほとんどが、高度に許容可能から優秀の範囲であった。唯一の潜在的な欠陥は、サンプルGの「剥皮/過剰な膨れ」特性において観察された。その他の点では、ピザ焼成試験は、革新的なサンプルによる優れた性能を示した。特に、革新的なサンプルは優れた伸展を有し、しばしば望ましい「セイボリー」風味を有すると判断された。