(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】クロロプレン系重合体ラテックス組成物、該組成物を用いた混合ラテックス組成物、及びその用途
(51)【国際特許分類】
C08L 11/02 20060101AFI20220125BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20220125BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20220125BHJP
C09J 111/02 20060101ALI20220125BHJP
C09J 129/04 20060101ALI20220125BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20220125BHJP
C09D 111/02 20060101ALI20220125BHJP
C09D 129/04 20060101ALI20220125BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20220125BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
C08L11/02
C08L29/04 C
C08K5/29
C09J111/02
C09J129/04
C09J175/04
C09D111/02
C09D129/04
C09D175/04
C08L75/04
(21)【出願番号】P 2018565544
(86)(22)【出願日】2018-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2018002870
(87)【国際公開番号】W WO2018143159
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】P 2017017087
(32)【優先日】2017-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017219203
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】清藤 涯斗
(72)【発明者】
【氏名】小林 直紀
(72)【発明者】
【氏名】萩原 尚吾
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/194612(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C09J 9/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレン系重合体100質量部に対して、界面活性剤成分を固形分で20.5~
95質量部含有することを特徴とするクロロプレン系重合体ラテックス組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤成分中のノニオン系乳化剤の濃度が固形分で20~100質量%であることを特徴とする請求項1に記載のクロロプレン系重合体ラテックス組成物。
【請求項3】
前記ノニオン系乳化剤がケン化度70.0~96.5mol%のポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項2に記載のクロロプレン系重合体ラテックス組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のクロロプレン系重合体ラテックス組成物100質量部に対して、イソシアネート基を官能基として有する硬化剤組成物10~200質量部を混合した混合ラテックス組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の混合ラテックス組成物を含有する接着剤組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の混合ラテックス組成物の硬化物。
【請求項7】
請求項4に記載の混合ラテックス組成物を含有する土木補修・補強材。
【請求項8】
請求項4に記載の混合ラテックス組成物を含有する止水材。
【請求項9】
請求項4に記載の混合ラテックス組成物を含有する剥落防止材。
【請求項10】
請求項4に記載の混合ラテックス組成物を含有する表面被覆材。
【請求項11】
請求項4に記載の混合ラテックス組成物を、被着体に塗布又は注入、又は吹き付けする工程と、
前記混合ラテックス組成物を硬化させる工程と、
を行う土木補修・補強工法。
【請求項12】
請求項4に記載の混合ラテックス組成物を、被着体に塗布又は注入、又は吹き付けする工程と、
前記混合ラテックス組成物を硬化させる工程と、
を行う止水工法。
【請求項13】
請求項4に記載の混合ラテックス組成物を、被着体に塗布又は注入、又は吹き付けする工程と、
前記混合ラテックス組成物を硬化させる工程と、
を行う剥落防止工法。
【請求項14】
請求項4に記載の混合ラテックス組成物を、被着体に塗布又は注入、又は吹き付けする工程と、
前記混合ラテックス組成物を硬化させる工程と、
を行う表面被覆工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロプレン系重合体ラテックス組成物、該組成物を用いた混合ラテックス組成物、該混合ラテックス組成物を含有する接着剤組成物、土木補修・補強材、止水材、剥落防止材、及び表面被覆材、並びに混合ラテックス組成物の硬化物、及び混合ラテックス組成物を用いた土木補修・補強工法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロプレン系重合体をベースとした接着剤は、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等の有機溶剤に溶かす溶剤型が主流のため、環境汚染等の問題が指摘されている。そこで、有機溶剤を使わない、いわゆる水系接着剤の開発が盛んに行われている。
【0003】
しかしながら、従来の水系接着剤は溶剤型をベースにした接着剤に比べ接着強度が低いという課題を抱えている。
【0004】
前述した接着強度を向上させるための技術として2液型接着剤の検討が行われており、例えば、特定のクロロプレン系重合体ラテックスとアクリル系ラテックス又はSBR系ラテックスとアニオン系界面活性剤を特定量含有した主剤と、多価金属塩を硬化剤とした2液分別型からなる接着剤組成物(特許文献1、2参照)が知られている。これらの接着剤はポリウレタンフォームのような柔軟かつ吸水性のある被着体に対しては十分な接着強度を示す。
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1、2記載の接着剤は、コンクリートやモルタルのような硬質な被着体に対しては十分な接着強度が得られなかった。また、主剤のラテックスの安定性が不十分であり、主剤と硬化剤を予め混合させると凝集物が発生することから、2液分別型としての使用に限定される等、実用性にも課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭56-59874号公報
【文献】特開平9-188860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、コンクリートやモルタル等の硬質な被着体に対する接着強度が良好な混合ラテックス組成物を得られるクロロプレン系重合体ラテックス組成物を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、クロロプレン系重合体100質量部に対して、界面活性剤成分を固形分で20.5~100質量部含有する。
本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物では、前記界面活性剤成分中のノニオン系乳化剤の濃度を固形分換算で20~100質量%含有することができる。
更に、本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物では、前記ノニオン系乳化剤として、ケン化度70.0~96.5mol%のポリビニルアルコールを用いることができる。
【0009】
本発明に係る接着剤組成物、土木補修・補強材、止水材、剥落防止材、及び表面被覆材は、前述したクロロプレン系重合体ラテックス組成物に、イソシアネート基を官能基として有する硬化剤組成物を混合した混合ラテックス組成物を含有するものである。
【0010】
また、本発明に係る硬化物は、前述した混合ラテックス組成物を塗布・注入し硬化させてなるものである。
【0011】
本発明では、加えて、前述した本発明に係る混合ラテックス組成物を、被着体に塗布又は注入、又は吹き付けする工程と、
前記混合ラテックス組成物を硬化させる工程と、
を行う、止水工法、剥落防止工法、表面被覆工法等の土木補修・補強工法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クロロプレン系重合体ラテックス組成物として特定量の界面活性剤を含有するため、ラテックスの安定性が低下することなく、該ラテックスを安定的に硬化に供することができる。また、本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックスを用いた混合ラテックス組成物は、コンクリートやモルタル、木材、ガラス、セラミック、鉄や亜鉛や銅等の金属、ポリプロピレンやポリエチレン等のプラスチックなどの硬質な被着体に対して良好な接着強度を発現する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0014】
1.クロロプレン系重合体ラテックス組成物(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物(以下、単に「クロロプレンラテックス」という)について説明する。本実施形態のクロロプレンラテックスは、クロロプレン系重合体に対して特定量の界面活性剤を含有している。本実施形態のクロロプレンラテックスには、粘着付与樹脂、pH調整剤、金属酸化物、可塑剤、老化防止剤、増粘剤、還元剤、消泡剤、充填剤などを含有することもできる。
【0015】
(1)クロロプレン系重合体
本実施形態のクロロプレンラテックスに用いるクロロプレン系重合体は、2-クロロ-1,3-ブタジエン(以下、「クロロプレン」と略す)の単独重合体又はクロロプレンと共重合可能な単量体1種以上とを共重合して得られる共重合体である。
【0016】
本実施形態におけるクロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸及びそのエステル類、メタクリル酸及びそのエステル類等が挙げられ、必要に応じてこれらを2種以上用いてもかまわない。
【0017】
一方、クロロプレン系重合体は、その重合方法の違いにより、硫黄変性クロロプレン系重合体と非硫黄変性クロロプレン系重合体に大別され、非硫黄変性のものは、分子量調整剤の種類によって、更に、メルカプタン変性クロロプレン系重合体とキサントゲン変性クロロプレン系重合体とに分類される。硫黄変性クロロプレン系重合体は、クロロプレンを主成分とする原料単量体と硫黄を共重合し、得られた共重合体をチウラムジスルフィドで可塑化して、所定のムーニー粘度に調整したものである。
【0018】
他方、メルカプタン変性クロロプレン系重合体は、分子量調整剤に、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン及びオクチルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン類を使用することにより得られる。また、キサントゲン変性クロロプレン系重合体は、分子量調整剤に、アルキルキサントゲン化合物を使用することにより得られる。そして、本実施形態のクロロプレンラテックス中のクロロプレン系重合体は、前述した各種クロロプレン系重合体のいずれでもよい。
【0019】
更に、クロロプレン系重合体は、その結晶化速度に基づいて、例えば、結晶化速度が遅いタイプ、結晶化速度が中庸であるタイプ及び結晶化速度が速いタイプなどに分類することもできる。そして、本実施形態のゴム組成物は、前述した各タイプのクロロプレンゴムのいずれを用いてもよく、用途などに応じて適宜選択して使用することができる。
【0020】
クロロプレン系重合体を製造する方法は、特に限定するものではないが、原料単量体を界面活性剤、重合開始剤及び分子量調整剤などの存在下で、一般に用いられる乳化重合法により重合させればよい。
【0021】
また、重合開始剤は、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素及びtert-ブチルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物類のように、一般にクロロプレンの乳化重合に使用される公知の重合開始剤を用いることができる。
【0022】
なお、乳化重合する際の重合温度は、特に限定されるものではないが、生産性及び重合安定性の観点から、0~50℃であることが好ましく、20~50℃であることがより好ましい。また、単量体の最終転化率も、特に限定されるものはないが、生産性の観点から、60~100%の範囲とすることが好ましい。
【0023】
そして、最終転化率が所定の範囲に達した時点で、重合液に重合禁止剤を少量添加して重合反応を停止させることにより、クロロプレンラテックスを製造する事ができる。
【0024】
その際、重合禁止剤としては、例えば、チオジフェニルアミン、4-tert-ブチルカテコール及び2,2-メチレンビス-4-メチル-6-tert-ブチルフェノールなど、通常用いられるものを用いることができる。
【0025】
また、重合反応後のクロロプレンラテックスは、例えば、スチームストリッピング法などによって未反応の単量体を除去することもでき、該ラテックスのpHを調整することもできる。
【0026】
なお、本実施形態におけるクロロプレンラテックスは、特に限定するものではないがクロロプレン(共)重合体のトルエン不溶分が、20~99%であることが望ましい。
【0027】
(2)界面活性剤
本実施形態のクロロプレンラテックスは、クロロプレン系重合体100質量部に対して、界面活性剤を固形分で20.5~100質量部の範囲で含有し、特に、25~95質量部の範囲にあると好ましい。ここで界面活性剤の含有量が20.5質量部未満であると、後述するイソシアネート基を官能基として有する硬化剤組成物(以下、「イソシアネート化合物」という)と混合されたときに直ちに凝集・ゴムの析出が生じ、均一な硬化物が得られないか、得られる硬化物とコンクリートやモルタル等の硬質な被着体に対する接着強度が不良となることがある。また、界面活性剤を100質量部より多く含有していると、粘度が過剰となり、配合・塗布といった作業に支障がでることがある。
【0028】
本実施形態のクロロプレンラテックスは、乳化重合でクロロプレン系重合体を製造する際に用いた界面活性剤を含有するが、重合後のクロロプレンラテックスには追加で界面活性剤を添加する事もできる。すなわち、クロロプレンラテックスに含まれる界面活性剤量は適宜調整が可能である。
【0029】
ここで、界面活性剤とは、水性媒体中でミセル(界面活性剤の集合体)を形成する乳化剤を意味する。本実施形態に用いられる界面活性剤は、特に制限されるものではなく、公知の界面活性剤を使用できるが、例えば、ロジン酸の塩類、脂肪酸の塩類、アルキルベンセンスルホン酸Naなどのアルキルスルホン酸塩、ラウリル硫酸Naなどのアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、セルロース系誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-アセチレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、高級脂肪酸アルカノールアミド、ポリビニルアルコール等のノニオン系乳化剤、アルキルアミン塩、四級アンモニウム塩等のカチオン系乳化剤が挙げられる。
【0030】
[ノニオン系乳化剤]
本実施形態のクロロプレンラテックスでは、必要に応じて、界面活性剤中のノニオン系乳化剤の濃度を、固形分で20~100質量%とすることができる。これにより安定なクロロプレンラテックスを供することができ、該ラテックスは後述するイソシアネート化合物を混合した際に安定的に硬化に資するため、結果として、該硬化物は、コンクリートやモルタル等の硬質な被着体に対して良好な接着強度を発現する。界面活性剤中のノニオン系乳化剤の濃度を20質量%以上とすることで、クロロプレンラテックスの安定性をさらに向上させることができ、後述するイソシアネート化合物の配合量を抑える必要がなくなり、得られる硬化物とコンクリートやモルタル等の硬質な被着体に対する接着強度をさらに高めることができる。
【0031】
ノニオン型の乳化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(以下PVAという)又はその共重合体(例えば、アクリルアミドとの共重合体)、ポリビニルエーテル又はその共重合体(例えば、マレイン酸との共重合体)、ポリビニルピロリドン又はその共重合体(例えば、酢酸ビニルとの共重合体)、あるいは、これら(共)重合体を化学修飾したもの、あるいはセルロース系誘導体(ヒドロキシエチルセルロース)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン- アセチレングリコールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0032】
[ポリビニルアルコール]
本実施形態のクロロプレンラテックスでは、ノニオン系乳化剤として、その一部又は全量をポリビニルアルコールとすることができる。
【0033】
ポリビニルアルコールの種類は、特に限定されるものではないが、クロロプレンラテックスの安定性を一層向上させる観点から、ケン化度70.0~96.5mol%のポリビニルアルコールを含有する事が望ましい。70.0mol%以上96.5mol%以下のケン化度のポリビニルアルコールを使用することで、クロロプレンラテックスの安定性をさらに向上させることができ、後述するイソシアネート化合物の配合量を抑える必要がなくなり、得られる混合ラテックス組成物とコンクリートやモルタル等の硬質な被着体に対する接着強度をさらに高めることができる。
【0034】
また、ポリビニルアルコールの重合度も、特に限定されるものではないが、重合体ラテックス組成物の安定性を一層向上させる観点から、重合度200~4500のポリビニルアルコールを含有することが望ましい。200~4500の重合度のポリビニルアルコールを使用することで、後述するイソシアネート化合物の制限が無くなり、得られる混合ラテックス組成物とコンクリートやモルタル等の硬質な被着体に対する接着強度を高めることが出来る。
【0035】
ここで、ポリビニルアルコールは、ビニルエステル単量体の単独重合体を、又はビニルエステル単量体及びそれと共重合可能な単量体の共重合体を、鹸化させることによって得られる重合体のことである。
【0036】
ビニルエステル単量体としては、特に限定するものではないが、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル及びバーサティック酸ビニルなどが挙げられる。また、これらの中でも特に、重合時の安定性に優れる酢酸ビニルを使用することが望ましい。
【0037】
ポリビニルアルコールの製造時には、必要に応じて、前述した各単量体と共重合可能な他の単量体を共重合させてもよい。その際、共重合可能な単量体としては、特に限定するものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテンなどのオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フタル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和酸類、又はその塩類、アクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩又はその4級塩などのアクリルアミド類、メタクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジアルキルメタクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、2-メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン、グリセリンモノアリルエーテル、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩又はその4級塩などのメタクリルアミド類、炭素数1~18のアルキル鎖長を有するアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミドなどのN-ビニルアミド類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類、トリメトキシビニルシランなどのビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコールなどのアリル化合物、ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物及び酢酸イソプロペニルなどが挙げられる。
【0038】
なお、これらの共重合可能な他の単量体の使用量は、特に限定するものではないが、単量体全量に対して0.001mol%以上20mol%未満であることが望ましい。
【0039】
これらの単量体の重合方法は、特に限定するものではなく、公知のラジカル重合方法を採用することができる。一般には、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコールなどのアルコールを溶媒とする溶液重合により製造されるが、バルク重合や乳化重合や懸濁重合などで製造してもよい。また、バルク重合又は溶液重合を行う場合には、連続重合でも、バッチ重合でもよい。更に、単量体は一括して仕込んでも、分割して仕込んでもよく、あるいは連続的又は断続的に添加してもよい。
【0040】
ラジカル重合において使用する重合開始剤は、特に限定するものではないが、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルパレロニトリル、アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルパレロニトリル)などのアゾ化合物、アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4-トリメチルペンチル-2-パーオキシフェノキシアセテートなどの過酸化物、ジイソプピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのパーカーボネート化合物、t-ブチルパーオキシネオデカネート、α-クミルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシネオデカネートなどのパーエステル化合物、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシバレロニトリルなどの公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。また、重合反応温度は、特に限定するものではないが、通常30~90℃程度の範囲で設定することができる。
【0041】
ポリビニルアルコールを製造する際のケン化条件も特に限定されるものではなく、前述した方法で得られた重合体を、公知の方法でケン化すればよい。一般的には、アルカリ触媒又は酸触媒の存在下で、分子中のエステル部を加水分解することで行うことができる。このとき、重合溶媒であるアルコール中の共重合体の濃度は、特に限定されないが、10~80質量%であることが望ましい。
【0042】
その際使用されるアルカリ触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート及びカリウムメチラートなどのアルカリ金属の水酸化物や、アルコラートなどを用いることができる。また、酸触媒としては、例えば、塩酸及び硫酸などの無機酸水溶液、p-トルエンスルホン酸などの有機酸を用いることができるが、特に水酸化ナトリウムを用いることが望ましい。
【0043】
更に、ケン化反応の温度も、特に限定されないが、10~70℃の範囲であることが好ましい。反応時間は、特に限定されないが、30分~3時間の範囲で行なうことが好ましい。
【0044】
(3)その他の成分
本実施形態のクロロプレンラテックスには、前述した各成分の他に、粘着付与樹脂、pH調整剤、金属酸化物、可塑剤、老化防止剤、増粘剤、還元剤、消泡剤、充填剤を含有する事もでき、これらその他の成分を重合後のクロロプレンラテックスに追加で配合する事もできる。
【0045】
本実施形態のクロロプレンラテックスの粘度としては特に限定されるものではないが、ブルックフィールド社のB型粘度計の6rpm、25℃での粘度が、20~640000mPa・sであることが望ましい。クロロプレンラテックスの粘度をこの範囲とすることで、得られる硬化物のコンクリートに対する接着強度と配合・塗布時の作業性を担保することが出来る。クロロプレンラテックスの粘度は前述した界面活性剤や充填剤等で適宜調整することが出来る。
【0046】
以上詳述したように、本実施形態のクロロプレンラテックスは、特定量の界面活性剤を含有するため、ラテックスの安定性が低下することなく、該ラテックスを安定的に硬化に供する事ができる。また、該硬化物は、コンクリートやモルタル等の硬質な被着体に対して良好な接着強度を発現する。さらに、本実施形態のクロロプレンラテックスは、界面活性剤成分中に特定濃度のノニオン系乳化剤を含有させたり、ノニオン系乳化剤として特定のポリビニルアルコールを用いる事で、前記効果を更に向上させることも可能となる。
【0047】
2.接着剤組成物及びその硬化物(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る接着剤組成物とその硬化物について説明する。本実施形態の接着剤組成物は、前述した第1の実施形態のクロロプレンラテックスに、イソシアネート化合物を混合した混合ラテックス組成物を含有するものであり、硬化物は、この混合ラテックス組成物を塗布・注入し硬化させてなるものである。
【0048】
ここで、イソシアネート化合物の混合量に制限はないが、クロロプレンラテックス100質量部に対して、10~200質量部が好ましい。イソシアネート化合物の量を10質量部以上とすることで、イソシアネート化合物を混合した混合ラテックス組成物を塗布、注入して硬化させた際の硬化が十分に進行し、200質量部以下とすることで、イソシアネート化合物を混合した際に、凝集物が生じることを防止し、均一な硬化物を得ることができ、得られる硬化物とコンクリートやモルタル等の硬質な被着体に対する接着強度をさらに高めることができる。
【0049】
本実施形態におけるイソシアネート化合物は特に限定するものではなく、ジイソシアネート化合物、ジイソシアネート化合物を除くポリイソシアネート化合物、その他、水硬化性のポリウレタン樹脂等が挙げられる。ジイソシアネートおよびポリイソシアネート化合物、その他水硬化性のポリウレタン樹脂は例えばフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4’-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物;ビフェニルトリイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレントリイソシアネート等のトリイソシアネート化合物;これらの重合物等を挙げることができる。また、本実施形態におけるイソシアネート化合物は、前記ジイソシアネート化合物、ジイソシアネート化合物を除くポリイソシアネート化合物、その他、水硬化性のポリウレタン樹脂とポリアミン化合物、多価アルコール、ポリオール化合物等との反応により得られる末端に反応性イソシアネート基を有するプレポリマーの形態で用いることもできる。前記ポリアミン化合物はとしては、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンヘキサミン、ペンタエチレンヘキサミン、シクロヘキシレンジアミン類、ジシクロヘキサシルメタンジアミン類、イソホロンジアミン類、フェニレンジアミン類、トリレンジアミン類、キシリレンジアミン類、ジフェニルメタンジアミン類、トリフェニルメタンポリアミン類、ピペラジン、アミノエチルピペラジン等を挙げることができる。また、前記多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等を挙げることができる。さらに、ポリオール化合物としては、前記多価アルコール類と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド類との付加重合により得られるポリエーテルポリオール化合物;前記多価アルコール類と、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、酒石酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の多塩基酸類との縮合反応により得られるポリエステルポリオール化合物;ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン類の開環重合により得られるポリエステルポリオール化合物;両末端にエポキシ基を有するエポキシ樹脂にモノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類を反応させたエポキシポリオール化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリル酸モノエステル等の水酸基含有重合性モノマーの単独重合体またはそれらの共重合体;前記水酸基含有重合性モノマーと、他の共重合可能なモノマー、例えば(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン等との共重合体;ヒマシ油もしくはその誘導体等を挙げることができる。
【0050】
本実施形態の硬化物は、前述した第1の実施形態のクロロプレンラテックスを用いているため、コンクリートやモルタル等の硬質な被着体に対する接着強度が良好である。より具体的には、コンクリートやモルタル、木材、ガラス、セラミック、鉄や亜鉛や銅等の金属、ポリプロピレンやポリエチレン等のプラスチック等の硬質な被着体に対して良好な接着強度を発現する。特に、後述する実施例で示す通り、湿潤状態の被着体に対しても、十分な接着強度を得ることができる。そのため、該硬化物は地盤の空洞部への充填やコンクリートやモルタルの表面被覆材、ひび割れ、背面への適用、止水材、防水材、剥落防止材、目地部やジョイント部の充填材、振動吸収等の目的で土木補修や補強の用途及び建築への用途に使用する事もできる。
【0051】
3.土木補修・補強工法
前述した混合ラテックス組成物は、その高い接着強度と難燃性を利用して、土木補修・補強工法に用いることができる。土木補修・補強工法としては、例えば、止水工法、剥落防止工法、表面被覆工法、断面修復工法、表面含侵工法、プレバックド工法、ひび割れ注入工法、RC巻き立て工法、鋼板巻き立て工法、炭素繊維補強工法、炭素繊維シート現場接着工法、アラミド繊維シート接着工法、導水工法、鋼板接着工法、縦桁増設工法、裏込め注入工法、埋設ジョイント工法、ポーラスコンクリート舗装、早期交通開放型コンクリート舗装等を上げることが出来る。
【0052】
混合ラテックス組成物は前述の土木補修・補強工法のうち、止水工法に好適である。止水工法とは、農水路の配管や、コルゲート管や、コンクリート構造物などのひび割れ部や隙間から生じる漏水を止水する工法である。例えば、特開第2014-208970号公報のようにコンクリート構造物の裏面と裏面に接する被覆土壌の間に止水材を硬化させることで止水する裏面注入止水工法や、特開第2004-251007号公報のようにコンクリート構造物の漏水亀裂に対し止水材を加圧注入する高圧注入止水工法などが有る。第2の実施形態に関る接着剤組成物の止水工法は特に限定されるものではないが、これら止水工法の止水材として使用することが出来る。
【0053】
また、混合ラテックス組成物は前述の土木補修・補強工法のうち、剥落防止工法に好適である。剥落防止工法とは、コンクリート構造物の施工時に発生するひび割れ等の欠陥と、地震や衝突等によるひび割れや剥離等の損傷と、中性化、塩害、アルカリ骨材反応等に由来する劣化によるコンクリート塊の剥落を防止する工法である。例えば、特開第2014-77287号公報のように、樹脂組成物をコンクリート表面に単層塗布する工法や、特開第2004-18719号公報や特開第2011-52457号公報のように、プライマーを1種類、若しくは2種類使用し、積層体を作製して使用する方法がある。混合ラテックス組成物の剥落防止工法は特に限定されるものではないが、これら剥落防止工法の剥落防止材として使用することが出来る。
【0054】
混合ラテックス組成物を使用した剥落防止工法では、必要に応じて、短繊維、メッシュシート、プライマーを併用しても良い。
【0055】
混合ラテックス組成物は前述の土木補修・補強工法のうち、表面被覆工法に好適である。表面被覆工法とは、コンクリート中の鋼材の腐食現象を外部から保護する目的やコンクリートを保護する目的で塗布する工法であり、例えば、特開第2012-207449号公報のようにポリマーセメントモルタルを表面被覆材として塗布する工法がある。混合ラテックス組成物の表面被覆工法は特に限定されるものではないが、このような表面被覆工法の表面被覆材として使用することが出来る。尚、該接着剤組成物は、単層で使用したり、他の素材と合わせ積層体を作製して使用する工法にも使用できる。
【0056】
本実施形態の土木補修・補強工法は、前述した混合ラテックス組成物を、被着体に塗布又は注入、又は吹き付けする工程と、前記混合ラテックス組成物を硬化させる工程と、を少なくとも行う方法であり。また、本発明の効果を損なわない限り、これらの工程以外に、各工法特有の公知の様々な工程を、自由に選択して行うことができる。
【0057】
混合ラテックス組成物を、被着体に塗布又は注入する方法は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知の方法を自由に採用することができる。例えば、刷毛で塗布する方法、コーキングガンで注入する方法等を挙げることができる。
【0058】
また、混合ラテックス組成物の硬化方法も、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知の方法を自由に採用することができるが、混合ラテックス組成物は、例えば、被着体に塗布又は注入し、成形又は施工した後、その状態で所定時間に亘り放置することで、硬化させることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0060】
<クロロプレンラテックスA~Lの製造>
内容積3リットルの反応器を用い、窒素気流下で、水100質量部、界面活性剤(1)、亜硫酸ナトリウム0.1質量部を仕込み、溶解後、撹拌しながらクロロプレン100質量部とn-オクチルメルカプタン0.3質量部を加えた。過硫酸カリウムを開始剤として用い、40℃で重合し、重合率が100%に達したところでフェノチアジンの乳濁液を加えて重合を停止した。重合停止後、界面活性剤(2)を添加し、クロロプレンラテックスを得た。添加した界面活性剤(1)(2)の種類、純分の添加量は表1及び表2に示す。
【0061】
【0062】
【0063】
なお、表1及び表2に記載した界面活性剤の種類は以下の通りである。
・不均ガムロジン酸カリウム:ロンジスK-25(荒川化学株式会社)
・β―ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩:デモール N(花王株式会社)
・ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル:ノイゲンEA-177(第一工業製薬株式会社)
・ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル:エマルゲンLS-114(花王株式会社)
・ポリビニルアルコールA:クラレポバール PVA-403 ケン化度78.5mol% 重合度300(クラレ株式会社)
・ポリビニルアルコールB:デンカポバール W24 ケン化度80.0mol% 重合度2400(デンカ株式会社)
・ポリビニルアルコールC:クラレポバール PVA-CST ケン化度96.5mol% 重合度1600(クラレ株式会社)
・ポリビニルアルコールD:デンカポバール MP10 ケン化度70.0mol% 重合度1200(デンカ株式会社)
・ポリビニルアルコールE:クラレポバール PVA-103 ケン化度98.0mol% 重合度300(クラレ株式会社)
・ポリビニルアルコールF:クラレポバール LM-10HD ケン化度42.0mol% 重合度500(クラレ株式会社)
・ポリビニルアルコールG:クラレポバール PVA-235 ケン化度89.0mol% 重合度3500(クラレ株式会社)
【0064】
また、表1及び表2に記載されたノニオン系乳化剤の濃度は次の式に従う。
(ノニオン系乳化剤濃度)=(ノニオン系乳化剤合計)÷(界面活性剤合計)×100
【0065】
また、表1及び表2に示されたクロロプレンラテックスの粘度はB型粘度計(ブルックフィールド社製)で25℃、6rpmで測定した時の測定値を示した。
【0066】
<実施例1~15>
表1及び表2のクロロプレンラテックスについて混合ラテックス組成物及び硬化物を作製し、以下の評価を行った。
[せん断接着試験(1)(乾燥面)]
クロロプレンラテックス100質量部に対してイソシアネート化合物を表3及び表4に記載の種類、量で混合した混合ラテックス組成物を作製した後、150g/m2を刷毛を用いてモルタル試験体に塗布し、塗布していないモルタル試験体と直ちに貼り合わせ、接着層としての硬化物を作製した。貼り合せたモルタル試験体は7日間のセットタイムをとった後に、引張り試験機を用いて、温度23度、湿度50%RH、引張り速度2.5mm/minでせん断接着強度を測定した。測定結果は表3及び表4に示し、接着強度が0.05N/mm2以上であると良好である。
【0067】
[せん断接着試験(2)(乾燥面・初期接着)]
クロロプレンラテックス100質量部に対してイソシアネート化合物を表3及び表4に記載の種類、量で混合した混合ラテックス組成物を作製した後、150g/m2を刷毛を用いてモルタル試験体に塗布し、塗布していないモルタル試験体と直ちに貼り合わせ、接着層としての硬化物を作製した。貼り合せたモルタル試験体は10分間のセットタイムをとった後に、引張り試験機を用いて、温度23度、湿度50%RH、引張り速度2.5mm/minでせん断接着強度を測定した。測定結果は表3及び表4に示し、接着強度が0.03N/mm2以上であると良好である。
【0068】
[せん断接着試験(3)(湿潤)]
クロロプレンラテックス100質量部に対してイソシアネート化合物を表3及び表4に記載の種類、量で混合した混合ラテックス組成物を作製した後、150g/m2を刷毛を用いて予め2時間水に浸漬したモルタル試験体に塗布し、塗布していないモルタル試験体と直ちに貼り合わせ、接着層としての硬化物を作製した。貼り合せたモルタル試験体は7日間のセットタイムをとった後に、引張り試験機を用いて、温度23度、湿度50%RH、引張り速度2.5mm/minでせん断接着強度を測定した。測定結果は表3及び表4に示し、接着強度が0.05N/mm2以上であると良好である。
【0069】
【0070】
【0071】
なお、表3及び表4に記載のイソシアネート化合物の種類は以下の通りである。
・ウレタン系硬化剤:ハイセルOH-822N(東邦化学株式会社)
・ジフェニルメタンジイソシアネート:ミリオネートMT(東ソー株式会社)
【0072】
<比較例1及び2>
クロロプレン系重合体100質量部に対して界面活性剤成分が20.5質量部未満のクロロプレンラテックスK100質量部に、イソシアネート化合物を表4に記載の種類、量で配合したが、比較例1は混合して直ぐに凝集物が発生し、せん断接着試験は測定できず、比較例2は接着強度が低かった。
【0073】
<比較例3>
クロロプレン系重合体100質量部に対して界面活性剤成分が100質量部を超えるクロロプレンラテックスLを用いた比較例3は、イソシアネート化合物を配合した際の気泡が激しく、混合の作業を行うことができなかった。
【0074】
<実施例1~15>
表3及び4に示すように、クロロプレン系重合体100質量部に対して界面活性剤成分が15~100質量部のクロロプレンラテックスA~Jを用いた実施例1~15は、モルタル試験体との接着強度が良好であることが分かった。
【0075】
実施例の中で比較すると、クロロプレン系重合体100質量部に対して界面活性剤成分の含有量が95質量部を超えるクロロプレンラテックスBを用いた実施例7や、25質量部未満のクロロプレンラテックスEを用いた実施例10に比べて、界面活性剤成分を25~95質量部の範囲で含有するクロロプレンラテックスA又はGを用いた実施例1及び12の方が、せん断接着試験(1)(乾燥面)、せん断接着試験(2)(乾燥面・初期接着)及びせん断接着試験(3)(湿潤)の全てにおいて優れていることが分かった。この結果から、界面活性剤成分の含有量は、クロロプレン系重合体100質量部に対して25~95質量部の範囲にあると好ましいことが分かった。
【0076】
また、界面活性剤成分中のノニオン系乳化剤の濃度が固形分で20質量%未満のクロロプレンラテックスDを用いた実施例9に比べて、20質量%以上含有するクロロプレンラテックスCを用いた実施例8の方が、せん断接着試験(1)(乾燥面)、せん断接着試験(2)(乾燥面・初期接着)及びせん断接着試験(3)(湿潤)の全てにおいて優れていることが分かった。この結果から、界面活性剤中のノニオン系乳化剤の濃度を、固形分で20~100質量%とすることが好ましいことが分かった。
【0077】
さらに、ノニオン系乳化剤として、ケン化度が96.5mol%を超えるポリビニルアルコール及び70.0mol%未満のポリビニルアルコールを含有するクロロプレンラテックスJを用いた実施例15に比べ、ケン化度70.0~96.5mol%のポリビニルアルコールを含有するクロロプレンラテックスA、C又はGを用いた実施例1、8及び12の方が、せん断接着試験(1)(乾燥面)、せん断接着試験(2)(乾燥面・初期接着)及びせん断接着試験(3)(湿潤)の全てにおいて優れていることが分かった。この結果から、ノニオン系乳化剤として、ケン化度70.0~96.5mol%のポリビニルアルコールを用いることが好ましいことが分かった。
【0078】
加えて、クロロプレン系重合体ラテックス100質量部に対して、硬化剤を200質量部超えて含有する実施例5及び実施例11や、硬化剤の量が10質量未満の実施例6に比べ、硬化剤を10~200質量部の範囲で含有する実施例1~4の方が、せん断接着試験(1)(乾燥面)、せん断接着試験(2)(乾燥面・初期接着)及びせん断接着試験(3)(湿潤)の全てにおいて優れていることが分かった。この結果から、硬化剤の量は、クロロプレン系重合体ラテックス組成物100質量部に対して、10~200質量部の範囲が好ましいことが分かった。