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特許7014789可撓性アーム上に取り付けられたロボットアームの動的補償
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】可撓性アーム上に取り付けられたロボットアームの動的補償
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/16 20060101AFI20220125BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20220125BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
B25J9/16
B25J13/00 Z
B25J13/08 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019523148
(86)(22)【出願日】2017-07-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 AU2017050739
(87)【国際公開番号】W WO2018009986
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-07-10
(31)【優先権主張番号】2016902787
(32)【優先日】2016-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】PCT/AU2017/050731
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】519014855
【氏名又は名称】ファストブリック・アイピー・プロプライエタリー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100211236
【弁理士】
【氏名又は名称】道下 浩治
(72)【発明者】
【氏名】ピバック,マーク
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-521630(JP,A)
【文献】特開2005-283600(JP,A)
【文献】特開昭64-006719(JP,A)
【文献】特開2007-021613(JP,A)
【文献】特開平01-263362(JP,A)
【文献】特開2014-147997(JP,A)
【文献】特開平07-233640(JP,A)
【文献】特表2013-527040(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0120377(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブーム基部から支持されているブームのための制御システムであって、
前記ブームはロボット基部によってそれから取り付けられているロボットアームを有し、
前記ロボットアームは末端効果器を有し、
前記ブームは、前記ロボット基部をプログラムされた場所へ位置決めするために、ブームアクチュエータとインターフェース接続されているブームコントローラによって、前記ブーム基部に対して可動であり、
前記ロボットアームは、前記末端効果器をプログラムされた位置及び向きに位置決めするために、ロボットアームアクチュエータとインターフェース接続されているロボットアームコントローラによって可動であり;
前記制御システムは、前記ロボット基部に近接するオフセットに配置されている第1ターゲットの位置を追跡するための、トラッカーシステムを有し;
前記トラッカーシステムは、前記第1ターゲットの位置を追跡し、データを前記ブームコントローラへ送り、前記ブームアクチュエータを動作させ、前記第1ターゲットを前記オフセットに接近して動的に位置決めさせ、前記ロボット基部を前記プログラムされた場所に接近して位置決めし、そして、
前記トラッカーシステムは、前記末端効果器TCPから工具中心点(TCP)オフセットを持たせて配置されている第2ターゲットの位置及び向きを追跡し、前記ブームコントローラは、前記ブームアクチュエータを低速動的応答で動作させ、
前記トラッカーシステムは、前記第2ターゲットの位置及び向きを追跡し、前記第2ターゲットから導き出された、又は前記第2ターゲット及び前記第1ターゲットから導き出された、データを前記ロボットアームコントローラへ送り、前記ロボットアームアクチュエータを高速動的応答で動作させ、前記末端効果器TCPを前記プログラムされた位置及び向きへ動的に位置決めさせ及び向き付けさせるようにする、制御システム。
【請求項2】
前記第2ターゲットは、前記末端効果器の運動及び姿勢と共に動くように、前記末端効果器TCPから前記TCPオフセットを持たせて配置されている、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記ロボット基部は、前記ブーム基部から離れた、前記ブームの遠隔端に、近接して取り付けられている、請求項1又は請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記ロボット基部及び前記第1ターゲットは、前記ブームの前記遠隔端へ取り付けられたヘッド上に取り付けられている、上記請求項の何れか一項に記載の制御システム。
【請求項5】
前記ヘッドは前記ブームの前記遠隔端へ枢動可能に取り付けられている、請求項4に記載の制御システム。
【請求項6】
前記ヘッドは、前記ブームの前記遠隔端へ水平軸周りに枢動可能に取り付けられている、請求項4に記載の制御システム。
【請求項7】
前記トラッカーシステムは、前記第1ターゲットの位置及び向きを追跡し、データを前記ブームコントローラへ送り、前記ブームアクチュエータを低速動的応答で動作させて、前記第1ターゲットを前記オフセットに接近して位置決めさせ及び向き付けをさせるようにし、前記ロボット基部を前記プログラムされた場所に接近して位置決めする、上記請求項の何れか一項に記載の制御システム。
【請求項8】
前記ヘッドの平衡状態は前記ブームコントローラとは別のコントローラによって制御され、前記ブームコントローラは、前記ブームアクチュエータを動作させて、前記第1ターゲットを3つの直交軸に沿って位置決めする、請求項6又は、請求項4から6のいずれか1項に従属する請求項7に記載の制御システム。
【請求項9】
前記ヘッドの平衡状態の制御は、前記ブームコントローラへ統合され、前記トラッカーシステムは、前記第1ターゲットの位置及び向きを追跡する、請求項6又は、請求項4から6のいずれか1項に従属する請求項7に記載の制御システム。
【請求項10】
前記トラッカーシステムは、前記第1ターゲット用と前記第2ターゲット用との、別々のターゲット追跡デバイスを含む、上記請求項の何れか一項に記載の制御システム。
【請求項11】
前記ロボットアームコントローラは、前記ロボットアームコントローラが前記トラッカーシステムから導き出された位置決めフィードバックデータに応答する第1状態と、前記ロボット基部(ひいては前記ブームの前記遠隔端)に対し参照される事前較正された位置決めデータが依拠される第2状態との間で、制御可能に切り替えられることができ、前記第1状態と前記第2状態との間で切り替えられると、前記ロボットアームコントローラは前記ロボットアームの運動を制御し、前記ロボットアームの運動を減衰させ、前記ロボットアーム及び前記末端効果器の突発運動を回避させる、上記請求項の何れか一項に記載の制御システム。
【請求項12】
前記ブーム基部には、当該ブーム基部を地上に対して動かすための運動装置が設けられている、上記請求項の何れか一項に記載の制御システム。
【請求項13】
前記運動装置は、移動力を組み入れられているか若しくは組み入れられていない車輪付き搬送機又は自己パワー供給式の無限けん引車から選択される、請求項12に記載の制御システム。
【請求項14】
前記運動装置は、前記ブーム基部を水平にするセルフレベリングを組み入れている、請求項13に記載の制御システム。
【請求項15】
前記ブーム基部はアクティブサスペンションシステム上に取り付けられ、前記ブーム基部は前記トラッカーシステムのための第3ターゲットを組み入れ、前記アクティブサスペンションシステムは、前記トラッカーシステムからの、前記第3ターゲットの位置及び向きを読み出したデータに応答して前記ブーム基部の位置及び向きを制御するために、サスペンションアクチュエータとインターフェース接続されているサスペンションコントローラを有する、請求項12又は請求項13に記載の制御システム。
【請求項16】
前記ブーム基部は、アクティブサスペンションシステムと一体の物体へ取り付けられ、前記ブーム基部は前記トラッカーシステムのための第3ターゲットを組み入れ;前記アクティブサスペンションシステムは、前記トラッカーシステムからの、前記第3ターゲットの位置及び向きを読み出したデータに応答して前記ブーム基部の前記物体に対する位置及び向きを制御するために、サスペンションアクチュエータとインターフェース接続されているサスペンションコントローラを有し、前記サスペンションアクチュエータは前記ブーム基部の位置を制御する、請求項12又は請求項13に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性アーム上の末端効果器の制御に関し、厳密には、ブームの様な可撓性アーム上の末端効果器の位置の改善された制御に関する。本発明は、ロボットが広大な区域に亘って作業し高い精密度を必要とする、特定の用途を有している。
【背景技術】
【0002】
次に続く背景の論考は、本発明の理解を促すことのみを目的としている。当該論考は、言及されている資料の何れかが、出願の優先日における、共通の一般知識の一部であったことを同意するものでもなく、自白するものでもない、ことを理解されたい。
【0003】
以下の定義は、本特許明細書全体を通じて使用される用語に適用される。ロボットアームとは、プログラム可能な機械式マニピュレータである。本明細書では、ロボットアームは、多軸関節アーム、平行運動学的ロボット(例えばスチュアートプラットフォームやデルタロボットなど)、球体幾何学形状ロボット、直交座標ロボット(直線的な動きの直交軸ロボット)など、を含む。
【0004】
ブームとは、旋回ブームの様な細長い支持体構造であり、スティック又はディッパーの有無を問わず、伸縮自在要素、伸縮式ブーム、伸縮式多関節ブームの有無を問わない。例としては、クレーンブーム、アースムーバーブーム、トラッククレーンムーブが挙げられ、何れもケーブルに支持された要素又はケーブルブレースされた要素の有無を問わない。ブームは、更に、高架式ガントリー構造、若しくは片持ち式ガントリー、又は制御型引張トラス(ブームは、ブームではなく複数ケーブルに支持された平行運動学的クレーンであることもある(PARシステムズ社、引張トラス―チェルノブイリクレーン参照))を含む場合もあり、又は空間内の位置を移動する他の可動式アームを含む場合もある。
【0005】
末端効果器は、環境と相互作用するように設計された、ロボットアームの端部のデバイスである。末端効果器は、グリッパ、ノズル、サンドブラスタ、スプレイガン、レンチ、磁石、溶接トーチ、切断トーチ、鋸、フライス、ルータカッター、油圧シャーなど、を含み得る。
【0006】
TCPとは工具中心点(tool center point)の略記である。これは、末端効果器又は工具上の場所であって、その位置及びその向きが制御される物体の座標を定義する。それは、通常、運動学的連鎖の遠位端に位置する。運動学的連鎖とは、ロボットアームの基部と末端効果器との間の、リンク仕掛け及びそれらの関節の連鎖をいう。
【0007】
CNCは、コンピュータ/プロセッサ/マイクロコントローラに実行させる事前にプログラムされた一連の機械制御コマンドによる、機械の自動化のために使用される、コンピュータ数値制御(computer numerical control)の略記である。
【0008】
CNC制御システム内の座標変換の適用は、通常、便利な座標系でのプログラミングを許容するように遂行されている。それは、更に、CNCマシニングセンターで万力又は固定具に締め付けられるときの、加工品の位置の誤差の補正を許容するように遂行されている。
【0009】
これらの座標変換は、通常、静的座標シフトを勘案する又は静的誤差を補正する、静的な意味合いで適用されている。
【0010】
ロボット及びCNC機械は、便利な直交座標系でプログラムされており、直交座標をロボット又はCNC機械の姿勢を動かす関節位置へ変換するために、運動学的変換が使用される。
【0011】
TCPに近いロボットアームの末端効果器の位置をリアルタイムで測定することがロボットの精度を高める。これは、探索及び穿孔のために使用されるロボット上の静的末端効果器で遂行されている。これは、プログラムされた位置へ動かし、位置測定を行い、補正ベクトルを計算し、補償ベクトルをプログラムされた位置へ加え、次いでTCPを新しい位置へ動かす、という多段階プロセスによって実現される。このプロセスは、厳格なリアルタイムで行われるわけではなく、静的なロボットアーム姿勢に依拠している。
【0012】
国際公開第2007/076581号は、ブーム及び末端効果器を所望の場所へ又は所望の経路に沿って動かす制御システムを記載している。ブームは、地上に固定されて使用される基部上に、配置されている。基部を有するロボットアームは、ブームの端部へ固定されている。スキャナ-ターゲット測定システムは、ブームの端に配置されたターゲットの実際の位置及び向きを測定している。測定システムは、ターゲットの実際の位置及び向きを、6自由度(x軸、y軸、z軸及びピッチ、ロール、並びにヨー)で測定していて、6自由度はこれ以後「6DOF」とする。ブームの端に配置されたターゲットは、ロボットアームの基部に対して固定されている。制御システムは、次いで、ロボットアームの基部のプログラムされた位置(期待されている位置)と、実際に測定されたロボットアームの基部の位置と、の間の6DOFオフセットを計算し、次いで、末端効果器が正しい位置へ移動されるようにロボットアームの運動学的連鎖へ補正を適用している。ロボットアームは、地上に対する座標系ではなくその基部に対する座標系でプログラムされている。かくして、末端効果器のTCPをプログラムするためには、地上座標内でのそれの6DOF位置を、ブームの先端上に取り付けられたロボットアームの基部座標へ、変換することが必要であった。事実上、行われたことは、末端効果器を制御するためにいつも使用されているサブプログラムで、ロボットアームをプログラムして、ロボットアーム基部座標系に対して、同じ相対位置にレンガを積ませたのである。レンガが所望の場所に積まれるための所望場所にロボットアームが入るようにするために、ブームの先端は、要求される場所に入るようにプログラムされていた。
【0013】
この方法論に係る問題は、プログラムが書かれてしまった後は、作業座標系をシフトさせることができないことである。一般的なCNC座標シフト(例えばG54)はセットアップに使用できない。なぜなら、末端効果器は、地上座標系又は作業座標系でプログラムされていないからである(ブームの先端で動く末端効果器の基部座標系でプログラムされている)。この構成に係る不都合は、地上座標での末端効果器(又は積まれるレンガ)の実際の位置が機械全体を制御しているプログラムでは明らかでないことであった(なぜなら、異なる座標系即ちロボットアーム基部座標系でプログラムされているからである)。
【0014】
国際公開第2007/076581号に記載されている構成は、長尺ブームが静的な基部上に取り付けられていても、いなくても、更には、特にブームが動く車両上に取り付けられているならば、長尺ブームが、重力、風、末端効果器の運動、及びブームの運動のために、撓む問題の解消に向けて長い道のりを進んできた。しかしながら、国際公開第2007/076581号に記載の構成を用いても、末端効果器の位置決めにおける誤差はなおも起こり得て、特にロボットの基部から末端効果器までの距離が増加するにつれて起こり得ることを、発明者は見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】国際公開第2007/076581号
【文献】国際特許出願PCT/AU2017/050731号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、非常に広大な作業空間全体を通して、構造的撓み並びに構造的力学及び風の様な外部干渉を補償するように、末端効果器を、安定させる改善をもたらすことのできる構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
明細書全体を通して、文脈上別段の解釈が必要でない限り、「備える」という語又は「備えている」の様なその変化形は、述べられている整数型又は整数型のグループの包含を示唆するが、但し何れかの他の整数型又は整数型のグループの排除を示唆するものではないことを理解しておきたい。
【0018】
本発明は、位置決めデバイスと測定システムと制御チャネルとのカスケード式システムを使用する。1つの実施形態では、範囲の広い精度に劣るグロスモーションシステムが車両を案内し、車両が広面積の粗いブームの位置決めをサポートし、次いでブームの位置決めが狭小動的補償及び細密なロボット位置決めをサポートし、今度は細密なロボット位置決めがいっそう細密な動的補償及び位置決め機構をサポートする。
【0019】
本発明は、動的座標系、及び機械を動かし末端効果器を安定させる方法を記載している。好適な実施形態では、末端効果器を動かすロボットアームが、ヘッド座標系と、地上座標系又は作業座標系と、を交互して作業することができるように、補償オンと補償オフとを遷移する方法又は遷移を減衰する方法が提供されている。
【0020】
運動学的変換を独立型のソフトウェアとして符号化することが好都合である。これは、CNCカーネルが異なる運動学的連鎖に適応するために修正される必要がないことを意味する。動的座標系を末端効果器ロボット運動学的連鎖の基部として使用することによって、末端効果器は作業座標系でプログラムされることができ、作業座標のオフセットや座標系回転の様な、標準のCNC座標シフト及び変換作業の全てが使えるようになる。
【0021】
ロボットアームの運動学的連鎖の基部についての動的座標系に関し、補償量の概念は抽象的である。ロボットアームの運動学的連鎖の基部がそれのプログラムされた場所にあったのならば、補償量は無いということになり、ロボットアームは第1の姿勢にある。基部がそれの実際の場所にあり、ロボットアームが第1の姿勢にあったのならば、末端効果器は間違った場所に(及び間違った向きに)あることになり、差が補償量となる。
【0022】
発明の1つの態様によれば、アーム基部から支持されているアームのための制御システムが提供されており、前記アームはそれから取り付けられている末端効果器を有し、前記末端効果器は更なるアーム基部によって支持されている更なるアームを有し、そして前記更なるアームはその上に取り付けられている更なる末端効果器を有し、前記アームは、前記末端効果器をプログラムされた場所へ位置決めするために、アームアクチュエータとインターフェース接続されているアームコントローラによって、前記アーム基部に対して可動であり、前記更なるアームは、前記更なる末端効果器をプログラムされた位置に位置決めするために、更なるアームアクチュエータとインターフェース接続されている更なるアームコントローラによって可動であり;前記制御システムは、前記更なるアーム基部又は末端効果器に近接するオフセットに配置されている第1ターゲットの位置を追跡するための、及び前記更なる末端効果器からTCPオフセットを持たせて配置されている第2ターゲットの位置及び向きを追跡するための、トラッカーシステムを有し;前記トラッカーシステムは、前記第1ターゲットの位置を追跡し、データを前記アームコントローラへ送り、前記アームアクチュエータを低速動的応答で動作させて、前記第1ターゲットを前記オフセットに接近して動的に位置決めさせ、前記更なるアーム基部を前記プログラムされた場所に接近して位置決めし、そして、前記トラッカーシステムは前記第2ターゲットの位置及び向きを追跡し、データを前記更なるアームコントローラへ送り、前記更なるアームアクチュエータを高速動的応答で動作させ、前記第2ターゲットを前記プログラムされた位置及び随意的には向きから前記TCPオフセットへ動的に位置決めさせ及び随意的には向き付けさせるようにする。TCPオフセットは、位置データ及び随意的には向きデータによって定義されていてもよい。低速動的応答と高速動的応答との間の差は、アーム及び更なるアームの潜在的慣性に反比例する。更なるアームがアームよりはるかに小さければ、更なるアームは、より小さい潜在的慣性を持っているはずであり、相対的に高速な動的応答で動かされてもよい。
【0023】
前記第2ターゲットは、前記更なる末端効果器の運動及び姿勢と共に動くように、前記更なる末端効果器から前記TCPオフセットを持たせて配置されていることが望ましい。この場合、TCPオフセットは位置及び向きデータによって定義され、前記トラッカーシステムは前記第2ターゲットの位置及び向きを測定する。
【0024】
前記プログラムされた場所「に接近」することによって、更なるアーム基部は、更なる末端効果器がそれのプログラムされたタスクの範囲内に入るように、十分に近くに動かされる、つまり、更なる末端効果器が遂行することになっているタスクが完遂され得るようにするために、更なるアームは、更なる末端効果器を、ある位置へ動かすことができる。動的に位置決めすること及び動的に位置決めし向き付けることによって、更なるアーム基部の位置が撓みのせいで変化していても、それの位置(及び該当する場合には向き、以下を参照)は常に再検討され、アームアクチュエータによって低速動的応答で調節され、更なる末端効果器の位置及び向きもまた常に再検討され、更なるアームアクチュエータによって高速動的応答で調節される、と理解されたい。
【0025】
前記更なるアーム基部は、前記アーム基部から離れた、前記アームの遠隔端に、近接して取り付けられていることが望ましい。
【0026】
前記更なるアーム基部及び前記第1ターゲットは、アームの遠隔端へ取り付けられているヘッド上に取り付けられていることが望ましい。
【0027】
前記ヘッドは、アームの遠隔端へ枢動可能に取り付けられていることが望ましい。
【0028】
前記ヘッドは、アームの遠隔端へ水平軸周りに枢動可能に取り付けられていることが望ましい。
【0029】
前記トラッカーシステムは、前記第1ターゲットの位置及び向きを追跡し、データを前記アームコントローラへ送り、前記アームアクチュエータを低速動的応答で動作させて、前記第1ターゲットを前記オフセットに接近して位置決めさせ及び向き付けをさせるようにし、前記更なるアーム基部を前記プログラムされた場所に接近して位置決めする、ことが望ましい。
【0030】
ヘッドがアームの遠隔端へ枢動可能に取り付けられている場合、ヘッドの平衡状態はアームコントローラとは別のコントローラによって制御されてもよく、その場合、アームコントローラは、アームアクチュエータを動作させて、第1ターゲットを3つの直交軸に沿って位置決めすることだけを必要とする。しかしながら、ヘッドの平衡状態の制御は、アームコントローラへ統合されていてもよく、その場合、第1ターゲットの位置及び向きは追跡されなくてはならない。
【0031】
ヘッドがアームの遠隔端へ多軸機構周りに枢動可能に取り付けられている場合、第1ターゲットの位置及び向きは6自由度で追跡されなくてはならない。第2ターゲットの位置及び向きは6自由度で追跡されなくてはならない。
【0032】
前記トラッカーシステムは、前記第1ターゲット用と前記第2ターゲット用との、別々のターゲット追跡デバイスを含むことが望ましい。
【0033】
前記更なるアームコントローラは、前記更なるアームコントローラが前記トラッカーシステムから導き出された位置決めフィードバックデータに応答する第1状態と、更なるアーム基部(ひいてはアームの遠隔端)に対し参照される事前較正された位置決めデータが依拠される第2状態との間で、制御可能に切り替えられることができ、前記第1状態と前記第2状態との間で切り替えられると、前記更なるアームコントローラは前記更なるアームの運動を制御し、更なるアームの運動を減衰させ、前記更なるアーム及び前記更なる末端効果器の突発運動を回避させる、ことが望ましい。その様な突発運動は、アームへフィードバックされ、アームに反作用的な運動を被らせ得る。
【0034】
前記アーム基部には、前記アーム基部を地上に対して動かすための運動装置が設けられていることが望ましい。運動装置は、移動力を組み入れられている若しくは組み入れられていない車輪付き搬送機又は自己パワー供給式の無限けん引車から選択されてもよい。運動装置は、アーム基部を水平にするセルフレベリングを組み入れていてもよい。
【0035】
前記アーム基部はアクティブサスペンションシステム上に取り付けられ、前記アーム基部は前記トラッカーシステムのための第3ターゲットを組み入れており、前記アクティブサスペンションシステムは、前記トラッカーシステムからの、前記第3ターゲットの位置及び向きを読み出したデータに応答して前記アーム基部の位置及び向きを制御するために、サスペンションアクチュエータとインターフェース接続されているサスペンションコントローラを有する、ことが望ましい。
【0036】
代替的には、前記アーム基部は、アクティブサスペンションシステム上の前記アームよりも大きい慣性を有する物体へ取り付けられ、前記アーム基部は前記トラッカーシステムのための第3ターゲットを組み入れており;前記アクティブサスペンションシステムは、前記トラッカーシステムからの、前記第3ターゲットの位置及び向きを読み出したデータに応答して前記アーム基部の前記物体に対する位置及び向きを制御するために、サスペンションアクチュエータとインターフェース接続されているサスペンションコントローラを有しており、前記サスペンションアクチュエータは、前記アームコントローラが前記アームアクチュエータを動作させるよりも低速な動的応答で前記アーム基部の位置を制御する。
【0037】
本発明の第2の態様によれば、ブーム基部から支持されているブームのための制御システムが提供されており、前記ブームはロボット基部によってそれから取り付けられているロボットアームを有し、前記ロボットアームは末端効果器を有し、前記ブームは、前記ロボット基部をプログラムされた場所へ位置決めするために、ブームアクチュエータとインターフェース接続されているブームコントローラによって、前記ブーム基部に対して可動であり、前記ロボットアームは、前記末端効果器をプログラムされた位置及び向きに位置決めするために、ロボットアームアクチュエータとインターフェース接続されているロボットアームコントローラによって可動であり;前記制御システムは、前記ロボット基部に近接するオフセットに配置されている第1ターゲットの位置を追跡するための、及び前記末端効果器TCPからTCPオフセットを持たせて配置されている第2ターゲットの位置及び向きを追跡するためのトラッカーシステムを有し;前記トラッカーシステムは、前記第1ターゲットの位置を追跡し、データを前記ブームコントローラへ送り、前記ブームアクチュエータを低速動的応答で動作させ、前記第1ターゲットを前記オフセットに接近して動的に位置決めさせ、前記ロボット基部を前記プログラムされた場所に接近して位置決めし、そして、前記トラッカーシステムは、前記第2ターゲットの位置及び向きを追跡し、第2ターゲットから導き出された、又は第2ターゲット及び第1ターゲットから導き出された、データを前記ロボットアームコントローラへ送り、前記ロボットアームアクチュエータを高速動的応答で動作させ、前記末端効果器TCPを前記プログラムされた位置及び向きへ動的に位置決めさせ及び向き付けさせる。TCPオフセットは、位置及び向きデータによって定義されていてもよい。
【0038】
前記第2ターゲットは、前記末端効果器の運動及び姿勢と共に動くように、前記末端効果器TCPから前記TCPオフセットを持たせて配置されていることが望ましい。
【0039】
前記プログラムされた場所「に接近」することによって、ロボット基部は、末端効果器がそれのプログラムされたタスクの範囲内に入るように、十分に近くに動かされる、つまり、末端効果器が遂行することになっているタスクが完遂され得るようにするために、ロボットアームは、末端効果器を、ある位置へ動かすことができる。動的に位置決めすること及び動的に位置決めし向き付けることによって、ロボット基部の位置が撓みのせいで変化していても、それの位置(及び該当する場合には向き、以下を参照)は常に再検討され、ブームアクチュエータによって低速動的応答で調節され、末端効果器の位置及び向きもまた常に再検討され、ロボットアームアクチュエータによって高速動的応答で調節される、と理解されたい。
【0040】
前記ロボット基部は、前記ブーム基部から離れた、前記ブームの遠隔端に近接して取り付けられていることが望ましい。
【0041】
前記ロボット基部及び前記第1ターゲットは、ブームの遠隔端へ取り付けられているヘッド上に取り付けられていることが望ましい。
【0042】
前記ヘッドは、ブームの遠隔端へ枢動可能に取り付けられていることが望ましい。
【0043】
前記ヘッドは、ブームの遠隔端へ水平軸周りに枢動可能に取り付けられていることが望ましい。
【0044】
前記トラッカーシステムは、前記第1ターゲットの位置及び向きを追跡し、データを前記ブームコントローラへ送り、前記ブームアクチュエータを低速動的応答で動作させて、前記第1ターゲットを前記オフセットに接近して位置決めさせ及び向き付けをさせるようにし、前記ロボット基部を前記プログラムされた場所に接近して位置決めする、ことが望ましい。
【0045】
ヘッドがブームの遠隔端へ枢動可能に取り付けられている場合、ヘッドの平衡状態はブームコントローラとは別のコントローラによって制御されてもよく、その場合、ブームコントローラは、ブームアクチュエータを動作させて、第1ターゲットを3つの直交軸に沿って位置決めすることだけを必要とする。しかしながら、ヘッドの平衡状態の制御は、ブームコントローラへ統合されていてもよく、その場合、第1ターゲットの位置及び向きは追跡されなくてはならない。
【0046】
ヘッドがブームの遠隔端へ多軸機構周りに枢動可能に取り付けられている場合、第1ターゲットの位置及び向きは6自由度で追跡されなくてはならない。第2ターゲットの位置及び向きは6自由度で追跡されなくてはならない。
【0047】
前記トラッカーシステムは、前記第1ターゲット用と前記第2ターゲット用との、別々のターゲット追跡デバイスを含むことが望ましい。
【0048】
前記ロボットアームコントローラは、前記ロボットアームコントローラが前記トラッカーシステムから導き出された位置決めフィードバックデータに応答する第1状態と、ロボット基部(ひいてはブームの遠隔端)に対し参照される事前較正された位置決めデータが依拠される第2状態との間で、制御可能に切り替えられることができ、前記第1状態と前記第2状態との間で切り替えられると、前記ロボットアームコントローラは前記ロボットアームの運動を制御し、ロボットアームの運動を減衰させ、前記ロボットアーム及び前記末端効果器の突発運動を回避させる、ことが望ましい。その様な突発運動は、ブームへフィードバックされ、ブームに反作用的な運動を被らせ得る。
【0049】
前記ブーム基部には、前記ブーム基部を地上に対して動かすための運動装置が設けられていることが望ましい。運動装置は、移動力を組み入れられているか若しくは組み入れられていない車輪付き搬送機又は自己パワー供給式の無限けん引車から選択されてもよい。運動装置は、ブーム基部を水平にするセルフレベリングを組み入れていてもよい。その様なセルフレベリングは、車両が横断してゆく地表の起伏によって引き起こされるブーム基部の位置及び向きの変化に対して、ブーム基部ひいてはブームを安定させるためにブーム基部を動かすようになっている方がよい。
【0050】
前記ブーム基部はアクティブサスペンションシステム上に取り付けられ、前記ブーム基部は前記トラッカーシステムのための第3ターゲットを組み入れ、前記アクティブサスペンションシステムは、前記トラッカーシステムからの、前記第3ターゲットの位置及び向きを読み出したデータに応答して前記ブーム基部の位置及び向きを制御するために、サスペンションアクチュエータとインターフェース接続されているサスペンションコントローラを有する、ことが望ましい。
【0051】
代替的には、前記ブーム基部は、アクティブサスペンションシステム上の前記ブームよりも大きい慣性を有する物体へ取り付けられ、前記ブーム基部は前記トラッカーシステムのための第3ターゲットを組み入れ;前記アクティブサスペンションシステムは、前記トラッカーシステムからの、前記第3ターゲットの位置及び向きを読み出したデータに応答して前記ブーム基部の前記物体に対する位置及び向きを制御するために、サスペンションアクチュエータとインターフェース接続されているサスペンションコントローラを有し、前記サスペンションアクチュエータは、前記ブームコントローラが前記ブームアクチュエータを動作させるよりも高速な動的応答で前記ブーム基部の位置を制御する。
【0052】
制御システムは複数のトラッカー構成要素を機械上の様々な位置に含み、よって、トラッカー(又は複数トラッカー)は機械によって支持されている1つ又はそれ以上のトラッカー構成要素に対する照準線(複数の照準線)を有している。
【0053】
機械の制御システムは、特定の姿勢でのトラッカーとトラッカー構成要素との間の最良の照準線が選定されることができるように、照準線を評価するためのアルゴリズムを含んでいることが望ましい。最良の照準線の判定基準は、最も正確な位置及び向きの解(トラッカー又はそれのセンサの姿勢に依存し得る)、トラッカー又はセンサの視野、末端効果器までの距離(近いほど良い)を含み、プログラムされた経路中又は重要動作中の全ての時点で照準線が維持される。
【0054】
前記機械は、前記ロボットアーム上又は前記末端効果器上に支持されている更なるトラッカー構成要素を含み、前記機械は、更なるトラッカー構成要素の位置を測定するための更なるトラッカーシステムを使用し、プログラムされた更なるトラッカー構成要素位置と測定された更なるトラッカー構成要素位置との間の、ずれを補正するためにロボットアーム組立体への更なる補償運動を適用する、ことが望ましい。
【0055】
ブーム基部は車両であってもよく、車両はトラッカー構成要素を車両上の或る位置に含んでいてもよく、又は複数のトラッカー構成要素を車両上の様々な位置に含んでいてもよい。単数又は複数のトラッカー構成要素は、作業空間座標系に対する車両の位置及び向きを求めるために使用されてもよい。単数又は複数のトラッカー構成要素は、動く車両について、車両の位置及び向きを求めるために使用されてもよい。トラッカーシステムは、車両が経路に沿って進む際に、トラッカーターゲットを追跡するために、複数の地上基準を含んでもよい。
【0056】
本発明の構成は、広いサイズの作業空間にわたって、高い動的動き品質及び高い位置精度を実現し得る。これは、長いブーム若しくはタワーの端部に配置されているか、又は長いケーブルトラス上に支持されている、末端効果器のための滑らかな動きをもたらす。本発明の構成は、動く車両によって支持されている、長いブーム又はタワーによって支持される、末端効果器の動きを滑らかにすることができる。
【0057】
これより図面を参照しながら本発明の幾つかの実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】第1の実施形態による本発明の実施形の概略図である。
図2】第2の実施形態による本発明の実施形の概略図である。
図3】本発明の最も広義の実施形態による、ブームの端部の末端効果器の位置を制御するために、インターフェース接続するためのトラッカーシステムの図である。
図4】本発明のより狭義でより好適な実施形態による、ブームの端部の末端効果器の位置を制御するためのインターフェース接続をするための、トラッカーシステムの図である。
図5】末端効果器の安定化が、地上ベースの第1状態と機械ベースの第2状態との間で切り替えられたときの、運動の減衰化の実施形を示すグラフである。
図6】機械ベースの第2状態の動作を示している或る実施形態の動作を示している図である。
図7】地上ベースの第1状態の動作へ切り替えられた図6の実施形態の動作を示している図である。
図8】高速道路/自動車道路に沿って防音壁を築くために使用される、本発明の制御システムを組み入れた移動式レンガ積み機械である実施形態の使用を示している平面図である。
図9】海上のうねりの運動を受ける船から物品を移送するために使用される、浮体式設備へ取り付けられたロボットアーム付きブームの使用を示している側面図である。
図10図9に描かれている実施形態の細部の図である。
図11】海上のうねりの運動を受ける供給船から物品を移送するために使用される、オイルリグへ取り付けられたロボットアーム付きブームの使用を示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明の制御システム及び方法は、発明者によって、自動レンガ積み機械11に関連して開発された。レンガ積み機械のより詳細な説明については、国際特許出願PCT/AU2017/050731号の主題である「車両に組み入れられたレンガ/ブロック積み機械」と題された特許明細書が参照され、その内容を相互参照によってここに援用する。
【0060】
自動レンガ積み機械11は、トラック13の形態をしている車両の周りに構築され、長い伸縮自在ブーム17と伸縮自在スティック19とを備える、全体を符号15で表された伸縮式多関節ブーム組立体を支持する基部を有している。スティック19の遠隔端21へは、積み上げヘッド23の形態をしている末端効果器が取り付けられており、積み上げヘッド23は、レンガ29を操る更なる末端効果器27を動かす6軸ロボットアーム25を支持している。ロボットアーム25はロボット基部31を有しており、ロボット基部31の上方には、6自由度(6DOF)高データレート位置センサ33の形態をしている第1ターゲットが取り付けられていて、位置センサ33は固定地上基準35に対しての6DOF位置座標を制御システムへ提供する。末端効果器27の真上の、ロボットアーム25の端には、6自由度(6DOF)高データレート位置センサ37の形態をしている第2ターゲットが取り付けられていて、位置センサ37は固定地上基準35に対しての6DOF位置座標を制御システムへ提供する。
【0061】
ヘッド23は、スティック組立体19の遠隔端(ブーム15の遠隔端)であって、枢動水平軸38(車両13が何らのねじれもなく安定したレベルにあると仮定した場合に、車両の状態に関して水平である軸)の周りに、支持されている。
【0062】
全体としての実施形態では、車両13はブーム15を支持し、ブーム15はロボットアーム25を支持し、ロボットアーム25は末端効果器27を支持している。ヘッド23がブーム15とロボットアーム25との間で、随意に省略されてもよいが、末端効果器27によって遂行されるタスク、特にレンガ積み用途での接着剤の塗布を考えると、ヘッド23を含む方がより実用的である。
【0063】
車両13は、静止した状態で駐車されていてもよいし、又は支持脚39でジャッキアップされていてもよい。或る代替形として、車両13は、経路に沿って動くように第1CNCチャネルでプログラムされていてもよいし、又は経路に沿って手動で駆動されてもよい。この場合、6自由度(6DOF)高データレート位置センサ41の形態をしている更なる第3のターゲットが提供され、位置センサ41が同じく固定地上基準35に対しての6DOF位置座標を制御システムへ提供する。車両が経路をこの方式で横断してゆく場合、固定地上基準35と同じ型式の複数の固定地上基準が必要になるであろう。代替的に、別の実施形態では、GPSの様な、低データレートかつ低精度の位置センサが利用されることもできるが、高データレートのほうが好ましい。
【0064】
より高速なデータ処理のためには、図2に描かれている様に、それぞれのセンサ33、37、及び41が専用の複数の地上基準35a、35b、35cを有することが望ましい。
【0065】
ブーム15は、ブームの(先端に配置されている)自身の末端効果器のTCPを要求される座標へ動かすために、第2CNCチャネルでプログラムされる。
【0066】
ロボットアーム25は、タスクを行うために、自身の末端効果器27のTCPを動かすように、第3CNCチャネルでプログラムされる。
【0067】
末端効果器27は、極めて高精度な作業のための、細密動的補償機構を、随意に含んでもよい。その様なシステムは、レーザー切断、型彫り、又は3D付加的レーザー溶融加工のための、高パワーレーザーと共に使用されるガルバノミラーを含んでもよい。末端効果器は、細密動的補償機構のTCPを動かすために、第4CNCチャネルでプログラムされる。
【0068】
図4を参照すると、最も好適な実施形態の詳細が示されている。トラック13の形態をしているブーム基部から支持されているブーム15のための制御システムが提供されている。ブーム15は、スティック組立体19の遠隔端において、水平方向枢動軸38周りに、取り付けられているヘッド23を有している。ロボットアーム25は、ロボット基部31によってヘッド23へ取り付けられている。レンガを拾い上げるグリッパを備える末端効果器27は、ピッチ、ロール、及びヨー運動するように、ロボットアーム27の端へ取り付けられている。制御システムは、ヘッド23を、ひいてはロボット基部31をプログラムされた場所へ位置決めするために、ブーム15を車両13に対して動かす、油圧ラム45及び47(並びにトラック車体内の回転機構、図示せず)の形態をしているブームアクチュエータとインターフェース接続されているブームコントローラを含んでいる。制御システムは、更に、前記末端効果器をプログラムされた位置及び向きに位置決めするために、ロボットアームアクチュエータとインターフェース接続されているロボットアームコントローラを含んでいる。トラッカーシステムは、ロボット基部31に近接するオフセットに配置されている第1ターゲット33の位置を追跡するための固定地上基準35aを有している。トラッカーシステムは、末端効果器27のTCPから、TCPオフセットを持たせて配置されている、2つの第2ターゲット49のうちの一方(どちらでもよいが視認できる方)の位置及び向きを追跡するための、固定地上基準35bを有している。トラッカーシステムは、第1ターゲット33の位置を追跡し、データを前記ブームコントローラへ送り、前記ブームアクチュエータを低速動的応答で動作させ、前記第1ターゲット33を前記オフセットに接近して動的に位置決めさせ、前記ロボット基部31を前記プログラムされている場所に接近して位置決めし、末端効果器27が自身の作業を遂行することを要求されている位置の範囲内に入るようにする。ターゲット49は末端効果器27と共に動き、末端効果器は6自由度で動くことができることから、トラッカーシステムは、前記第2ターゲットの位置及び向きの両方を6自由度で追跡し、データをロボットアームコントローラへ送り、前記ロボットラームアクチュエータ(末端効果器を含む)を高速動的応答で動作させ、前記第2ターゲットを前記プログラムされた位置及び向きからの前記TCPオフセットへ動的に位置決めさせ及び向き付けさせる。
【0069】
制御システムは、ロボットアームコントローラの制御を、ロボットアームコントローラがトラッカーシステムから導き出される位置決めフィードバックデータに応答する第1状態と、ロボット基部(ひいてはブームの遠隔端)に対し参照される事前較正された位置決めデータが依拠される第2状態との間で、制御可能に切り替えてもよい。末端効果器27でのロボット基部31に対する運動が図5にトレース51によって表現されていて、ブームへの力学的な構造的影響、風偏、又は車両運動に起因する偏差が示されており、またロボットアームの第2状態位置が符号53で表されている。第1状態と第2状態との間で切り替えられると、前記ロボットアームコントローラは、ロボットアームの運動を制御して、トレース55によって表されている第1状態と第2状態との間の遷移を通してロボットアームの運動を減衰させ又は平滑化して、前記ロボットアーム及び前記末端効果器の突発運動を回避させる。その様な突発運動は、ブームへフィードバックされ、ブームに反作用的な運動を被らせ得る。
【0070】
第1状態と第2状態との間の切り替えは、例えば機械の部分からレンガを取り上げ次いでレンガを地表に対して壁の上に積んでゆく場合に、末端効果器が機械構造に対して制御されると、次は地表に対して制御されるというように交番式に制御されることを必要とする、用途に対処している。図6は、ブームの端からレンガを取り上げている末端効果器27を示している。この構成では、制御システムは第2状態にあり、トラッカーシステムは第1ターゲット33を追跡することのみを必要とする。図7は、レンガを積もうとしている末端効果器27を示している。この構成では、制御システムは第1状態にあり、トラッカーシステムは第1ターゲット33と第2ターゲット37とを追跡しなくてはならない。制御システムは、末端効果器の運動を減衰させるために、約1秒をかけてゆっくりと、第2状態から第1状態へ遷移してゆき、逆もまた同様である。補償がすぐにオンにされたりオフにされたりすると、補償ロボットの姿勢は即座に変化する必要に迫られることになり、極めて大きい力と外乱とをブームに与えてしまう。この課題を克服するには、補償量が、通常は0.2秒から0.5秒(又は大型機械については10秒にも及び若しくは小型機械についてはおそらくミリ秒の桁ほど低く最大で0.1秒に及ぶ)の時間をかけて段階的に要求量へ増加又は減少させるように、オン若しくはオフへ遷移される又は減衰されることが必要である。動的基部座標系の場合、基部座標系をそれのプログラムされている位置から実際の位置へ時間をかけて動かすことによって遷移の効果を実現させることが必要である。適用されることになる補償量が補償ロボットの作業範囲内にあることをチェックすることが重要である。これは、ロボットの姿勢が作業枠内に入るはずであることをチェックすることによって行われる。(計算されて適用される補償量が、末端効果器をそれの作業範囲を越えて動かす場合、又はロボットアームのジャーク、加速度、又は速度の力学的限界を超過する場合、)動的基部座標系の実際の位置及び向きが、ロボットをそれの軸移動の作業範囲を越えた姿勢に又はTCPをロボットアームの作業枠の外に置くことになるか、又は末端効果器のジャーク、加速度若しくは速度の力学的限界を超過してしまうならば、基部動的座標系のプログラムされた場所から実際の場所へのシフト量(又は補償量の適用)が減少されるようにしてもよく、又はシステムがそれの作業範囲内へ戻されるまで動きが保留されるようにしてもよく、及び/又はコントローラ内で警告が発せられるようにしてもよい。
【0071】
動的補償遷移は、補償がオンにされる場合には0から1の間の遷移係数で増分させることによって、又は補償がオフにされる場合には0から1の間の遷移係数で減分させることによって機能し、その結果、それのS字曲線は所望の時間をかけて傾斜してゆくことになり、そのとき各制御サイクルについて以下が行われる、即ち、
先端トラッカーの実際の6DOF座標を測定する。精細ロボットの基部の実際の座標系の6DOF座標を計算する、
遷移係数が1であれば、その場合、精細ロボットの基部の実際の座標系を動的座標系として使用する。
遷移係数が1でないならば、その場合:
ブーム先端のプログラムされている位置を考察し運動学的変換を精細ロボットの基部へ加えることによって、精細ロボットの基部の座標系のプログラムされている位置を決定する。
遷移係数が0であれば、その場合、座標系のプログラムされている位置を動的座標系として使用する。
遷移係数が0から1の間であれば、その場合:
精細ロボットの基部の、プログラムされている座標系から実際の座標系までの、6DOFデルタベクトルを計算する。
6DOFベクトルを遷移係数でスケール調整して、スケーリングされたベクトルを得る、
スケー調整されたベクトルを座標系のプログラムされている位置へ加えて、動的座標系を得る。
精細ロボットがそれの作業範囲内にあることを確約するために、姿勢と力学をチェックする。警告アルゴリズム、保留アルゴリズム、又はスケーリングアルゴリズムへ進む。
遷移係数が1未満であれば、望ましくはS字曲線式を用いて、遷移係数を増加する。
【0072】
前記機械は前記ヘッドへ取り付けられているトラッカー構成要素を含んでおり、前記ヘッドは前記末端効果器を備える前記ロボットアーム組立体を有していて、前記機械はトラッカーシステムを使用してトラッカー構成要素の位置及び向きを測定し、前記測定を使用して前記ロボットアーム組立体について基部座標系の位置及び向きを計算する、ことが望ましい。ロボットアーム末端効果器のTCPは、ヘッドへ固定されている座標系か又は加工品へ固定されている(地表へ固定されている)座標系のどちらかで、タスクを行うようにプログラムされる。プログラミングは、ヘッド座標系又は加工品座標系の間でシフトすることができる。切り替えは、遷移によって行われる。遷移は、以下に解説されている。
【0073】
動的基部座標系へ遷移することは、動的基部座標系を、理論上の完璧な位置及び向きから、実際の位置及び向き(ヘッドへ固定されているトラッカー構成要素の位置及び向きの測定によって得られる)へ、段階的かつ制御されたやり方で、移動することを含む。
【0074】
動的基部座標系から遷移することは、動的基部座標系を、実際の位置及び向き(ヘッドへ固定されているトラッカー構成要素の位置及び向きの測定によって得られる)から、プログラムされている(即ち、理論上の)完璧な位置及び向きへ、段階的かつ制御されたやり方で、動かすことを含む。
【0075】
この構成への最も洗練された数学的手法は、ブームTCPと先端トラッカー中心点とロボットアームの基部の動的座標系とを、一致させ整列させることである。このやり方では、ブームCNCチャネルに設定された運動学的変換は、それのTCPを、先端トラッカー中心点と一致させる。ロボットアームCNCチャネルの運動学的変換は、それの動的基部座標系を、先端トラッカーと一致させる。
【0076】
当業者に理解される様に、ブームTCPがヘッド基部動的座標系と異なる位置及び先端トラッカー中心点と異なる位置にあった場合、ロボットアーム基部動的座標系の理論上の完璧な位置を計算するために数学的変換を使用できる。これは、一致したブームTCPと先端トラッカーCPとロボットアーム基部動的座標系と、に関する上記の概説よりも、複雑で洗練さに欠ける解決策である。
【0077】
制御システムは、動的座標系オフセット又は複数の動的座標系オフセットを用いて、ロボットアームの基部座標系をリアルタイムで地上座標系にシフトさせる。次いで、制御システムは、運動学的変換を用いて、末端効果器を、ロボット基部座標系ではなく、地上座標系のプログラムされた位置に位置決めするために要求される関節位置(角関節又は直線関節)を計算する。
【0078】
広い区域のタスクについては、車両を地上に対して動かすことが必要なこともある。地表に対する車両運動は、自動で制御されることもあれば、事前に計算されたガイドライン内で手動で制御されることもある。何れの場合も、機械基部の場所は、車輪若しくは軌道、チェーン若しくはレール、又は脚部及び足部、の何れかによって、案内され、あまり高精度ではないかもしれない。この場合、多段制御システムが使用され、第1段は車両を大まかに位置決めし、第2段は、ブームを所望の先端場所へ位置決めし、車両の位置及び向き並びにブームの撓みに起因する何らかの誤差を低速で補正し、第3段は、第3段ロボットアーム基部座標系の位置及び向きを測定し、次いで、末端効果器を地上座標系に対して安定させ案内するように精密に位置決めし補償する。測定及び制御の段数は、任意の複数の制御システム、動的座標系、及び測定システムへ拡大されてもよい。安定性のためには、制御の帯域及びモーションシステムの機械的応答速度が車両から末端効果器に向かって増加することが重要である。
【0079】
一部の状況では、末端効果器を、地表に対してではなく動く物体に対して安定させることが必要である。車両座標系及び先端トラッカー座標系の相対位置が動く物体の座標系に対して測定されるならば(逆も然り)、車両と比べ、動く物体は、それが慣性的に固定された座標系では無いことを別にすれば、地表と同等であると見なされ得る。この場合、慣性的に固定された座標系(例えばゆっくりと回転する座標系ではあるが地球又はINS)に対する測定も、動きの力学的限界を観測できるようにするために、行われることが望ましい。
【0080】
制御システムは、自動レンガ積み、精密採鉱、機械加工、ロボット組立、塗装、及び3D印刷の様なタスクに使用することができる。それは、インフラストラクチャーであるパイプライン、鉄道、及び道路の建設のための自動溝開削、自動管埋設並びに高速道路防音壁の様な長尺壁の建築のための、特定の用途を有している。
【0081】
本発明は、浚渫、護岸建設、油田及び風力タービンの保守整備、乗員輸送、船舶間若しくは航空機間の移送若しくは燃料補給、又は、ヘリコプター送電線保守整備若しくはヘリコプターロギングの様な用途のための、空中又は海上に浮いている設備へ適用することができる。
【0082】
発明は、多様な運動学的連鎖及び多様な動的座標系に適用される。発明は、動く機械上にあるブームへ付着されている末端効果器を地表に対して安定させるために特に有用である。機械が動くと、機械の加速度がブームへ力学的な力を与え、ブームはその固有振動数で振れ始める。ブームの端部の補償ロボットが、ブームの動きの振幅よりも大きい振幅を有し、ブーム(及び車両)の固有振動数よりもはるかに速い応答を有している場合、補償ロボットは、車両走行からのバウンドに起因するブームの動きを補正することができる。補償ロボットは、あまり大きな可動域を有しておらず、よって、補償ロボットをそれの利用できる可動域内に引き留めるためにブームの姿勢を補正することも必要である。
【0083】
補償ロボットの作動は力学的な力をブームに与え、それが今度は更にブームを活性化する。ブームの衝動的な動きを最小限にするためには、ブームは剛性であること、そして機械的遊びもバックラッシュも無いことが望ましい。
【0084】
(随意の)動く車両は滑らかに走行することが望ましく、よって、車両が進んでゆく地表は地ならしされていることが望ましく、また車両はサスペンションを有していることが望ましい。サスペンションはセルフレベリング式であることが理想的である。随意に、車両が地表の上を走行するより先に、地表を水平化するように制御可能なブレードを車両に備え付けてもよい。随意に、末端効果器がブレード又はバケットであってもよく、機械が自身の経路を進んでゆくのに先立って地ならしし水平化してもよい。
【0085】
機械及びブームの衝動的な動きを最小限にするために、機械の車両の制御システムが、動きを慎重に制御するために使用される。望ましくは、安定した末端効果器の動作が所望されるときに、動作モードが設定され得る。車両及びブームの動きは、ジャーク、加速度、及び速度が制限されていることが望ましい。電気油圧制御システムでは、電気的パイロットシステムが、利用可能な制御入力を制限するように制御される。サーボ電気システムでは、サーボ力学が、望ましくはCNCチャネル及び軸構成によって、制限される。設定点又はポイント・ツー・ポイント動き制御ではなく、完全CNC経路プランニングが利用されることが望ましい。完全CNC経路プランナーは、制御サイクルごとに(通常はmsごとに)、経路点を計算する。望ましくは、位置、速度、加速度、及びジャークを最適化するために、経路を計算する。ポイント・ツー・ポイント制御は、単純に設定点を所望の端点へ変更するものであり、そのため大きな制御フィードバック誤差値が生じ、フィードバック制御ループは誤差を埋める動きを指令する。
【0086】
車両の位置及び向きの測定値は、6DOF先端トラッカーの測定値から逆算されてもよい(ブームの逆運動学的連鎖を使用する場合、当然ながらブームの撓み又は振動を例えば加速度計によって測定されない限り、考慮に入れることはないが、通常は、動きの振動成分を平滑化するように、厳格にフィルタ処理された先端トラッカー動きを有し得る)。車両の位置及び向きは、機械の車両へ又は掘削機の運転室の様な車両に近い機械の部分へ備え付けられている位置追跡デバイスによって提供されることが望ましい。車両追跡デバイスは、GPS又はトータルステーションターゲットの様な比較的低いデータレート及び低い精度を有しているかもしれないが、レーザートラッカー及びスマート追跡センサの様な高精度センサシステムと一体なら最良の性能が実現されるはずである。
【0087】
ブームの動きは、それの固有振動数よりも著しく小さい帯域幅(1%から10%、10%から20%、30%から50%、又は50%から99%)で制御されて、ブームの動き誤差並びに撓み、及び基部の動き誤差又は運動をゆっくりと補償する。ブームの制御される動きは、ブームの先端の位置を補正することを目的としているが、必ずしもブーム先端の向きを補正することを目的とするわけではない。ブームの制御及び応答は、0.1から1Hz、1Hzから10Hz、又は10Hzから30Hzの帯域幅を有していてもよい。末端効果器補償ロボットは、高い固有振動数(ブーム及び基部と対比して)及び高速な動的応答を有していなくてはならない。補償ロボットは、6DOFで補償し安定させる。先端トラッカーの測定システムは、高いデータレート、望ましくは末端効果器制御システムと同じサーボループ制御レート、250Hzの最小値、好適には1000Hz又はそれ以上(おそらくは10kHz)を有していなくてはならない。データレートが著しく低い場合、動的座標系の位置及び向き(最終的には補償入力をもたらす)は、システムがアクチュエータの力の入力に応答する際に構造的な振動を誘発する可能性がある、段階的な変化を有する。滑らかな変化をもたらすために、段階的な変化がフィルタ処理されるならば、遅延及び動きの遅れが導入されてしまい、末端効果器の位置は正確ではなくなり、地表に対して動揺する可能性がある。
【0088】
動的座標系の連鎖及び、ブームの補正及びロボットによる末端効果器の補正という連鎖、を有する機械は、大きな作業容量に対する、細密な位置及び動き制御を必要とする多くの用途に有用である。
【0089】
以下に、一部の例としての用途が与えられている。
船舶移送
【0090】
船舶対船舶、船舶対オイルリグ、船舶対ガスリグ、又は船舶対風力タービンの、商品、液体、又は人員の移送は、本発明の制御システムに見込まれる用途である。位置保持のために船を安定させることは知られている。ジャイロ又はスラスタを用いて船のロール安定性を図ることも知られている。スラスタを使って船のヨー安定性を図ることは知られている。更に、ブームの様な作業デバイスへ、ヒーブ、ピッチ、ロール、ヨー補償を提供することも知られている。しかしながら、過酷な海上状態での長いブームにとって、既存の補償方法が限界を有していることも知られている。粗いブーム位置決め及び細密な末端効果器位置決め、又は細密位置決めの更なる追加の段が、より広大な海上状態及びより荒れた天候での、より安全な移送、連結、接続解除、及び運行を可能にするはずである。例えば、図9及び図10は、LNGをLNGタンカー57へ移送する、EPSO59(浮体、生産、貯蔵及び積出用の船:Floating, Production, Storage and Offloading vessel)上に取り付けられたブームを示している。ブームは、タンカーへ近づく又は接続することのできる細密位置決めアームを有している。トラッカーは、ブーム先端と細密位置決めアームの先端との、相対位置を測定する。細密位置決めアームがタンカー57と接続又は係合されている場合、制御システムは、受動モード(即ち、積極的な制御無し)へ切り替えられ、そうすると、細密位置決めアームは、これによりブーム先端とタンカーとの間の相対運動を吸収するサスペンションシステムとして機能する。
【0091】
図11を参照すると、描かれている様に、供給船63の甲板上のスチュワートプラットフォーム71によって、オイルリグ若しくはガスリグ65又はFPSO(浮体、生産、貯蔵及び積出用の船)に対して、6自由度で安定化されているプラットフォームは、リグ又はFPSO上の既存のクレーンを使用して、はるかに安全な商品及び人員の移送を可能にするはずである。リグ65上のトラッカー67が船63上のターゲット69を追跡する一方で、船上のトラッカー35aがブーム15の端のターゲット33を追跡する。このデータは、必要に応じ、ブーム15及び末端効果器27を論じられている様に制御するために、リグ上のブームの基部と共に配置されている制御システムへ無線リンク経由で送られ、そして更に、船63の甲板上のスチュワートプラットフォーム71の制御を支援するようにフィードバックされてもよい。これは、大きくて高価な物品を取り扱う場合に特に重要な運用上の利点を提供する。現状では、海上状態が限界に達すると移送は中断されざるを得ない。
【0092】
これは、あらゆる気象条件で、船から船へ又は船から固定された物体へ、移動することを必要とする又は所望する、石油化学、再生可能エネルギー、及び軍事関連のオペレーター(その他の人)のための、多大な利益となる。
長尺建造物
【0093】
高速道路防音壁61の様な長尺建造物は、レンガ積み機械によって築かれることができるが、これまでに特許出願第20169号に記載されている構成の場合、1つの場所から築き、次いで周期的に元の位置に戻し、次の静止場所から築くことが必要である。クリーピング機械から築くことができれば好都合である。これは、元の位置に戻すための損失時間を低減し、より短いブームを持つ、より小型でコンパクトな機械を可能にするはずである。短いブームのトラック搭載型の機械が理想的である。これを容易にするために、図8に示されている様に、複数の固定地上基準35が提供される。
長尺溝掘り
【0094】
地中パイプライン及び地中ケーブルの様なインフラストラクチャーのための長尺溝は、既知の継続溝掘り機械(例えば、ディッチウィッチ(Ditch Witch)社製又はヴァーミヤー(Vermeer)社製など)を用いて掘削されることができ、又は、より広い断面の溝は、掘削機(例えば、キャタピラー(Caterpillar)社製、ボルボ(Volvo)社製、ジョンディア(John Deere)社製、コマツ(Komatsu)社製など)を用いて、掘削されることができる。多くの用途にとって、溝及び管の精密な勾配及び位置が重要であり、例えば下水道管などの場合がそうである。多くの用途にとって、精密な位置を知るということは重要であり、例えば都市では、管、ケーブル、基礎、及び地下鉄や道路のトンネルの様な既存のインフラストラクチャーに損傷を与えることを避けるために重要である。現在のシステムは、掘削の或る程度の制御を許容していて、オペレータへ掘削深度又はバケット位置のフィードバックを提供している。現在のシステムでは、機械(トラック)の基部は静止していなくてはならない。
【0095】
説明されている動的制御システムは、他の方法では現在実現され得ない公差まで精密な掘削を可能にさせる。そのうえ、それは、完全自律運用のための、事前プログラムされた掘削を可能にさせる。しかも、それは、提案されている溝の経路に沿って徐々に進む無限けん引式掘削機の様な継続的に動く機械からの精密掘削を可能にさせる。
地表輪郭削り
【0096】
地面又はコンクリート面をブレード又はバケットで平らにするために、地ならし機、ブルドーザー、ローダー、グレドール、又は自動均し機械を使用することは知られている。機械の特有の設計は、機械の幾何学形状が平らにする行為を提供するために、機械が移動してゆくよりも平坦な面を実現する。バケット又はブレードを事前に定義されている高さ、勾配、又は輪郭に関して維持するために、自動制御を用いて、より正確で高速な結果が実現され得ることが知られている。ブレード又はバケットは、レーザー平面のレベル又は勾配を維持するように、又は、GPS又はトータルステーション測定によって参照される輪郭に整合させるように、自動的に上下動され又はロール軸周りに傾けられる。これらの既知の制御システムは低い帯域幅を有しており、機械は、機械誘導が無くとも、それの特有の設計が、機械が走行してゆくよりも平坦な面を実現させることになるので、正確な結果を実現する。
【0097】
本発明は、極めて複雑な地ならしタスクを完全にプログラム可能なやり方で実現するために、(修正された)掘削機の様な、より複雑な機械構成が、多軸制御型ブレード又はバケットを備え付けられることを可能にする。
採鉱
【0098】
採鉱のために自律式トラックを使用することは知られている。
【0099】
掘削機及びフェースショベルは、現在は、機械オペレータによって操作されている。本技術は、基部運動(トラック基部)及び掘削プログラムを鉱山座標で事前にプログラムすることにより、掘削機及びフェースショベルの自律制御を可能にする。
浚渫
【0100】
浚渫には、艀に搭載された掘削機が使用される。浚渫される水路の深さ、幅、外形、及び場所は、船舶輸送の安全性にとって極めて重要である。浚渫は費用がかかり、したがって、移動させる浚渫土の量を最小限にすることが有利である。浚渫が高精度であるほど、移動させる必要のある浚渫土は少なくなる。
【0101】
艀は浮いているので、掘削機が動くと、艀は、縦揺れや、回転や、移動をする。6DOFでの艀の位置及び向きをリアルタイムで測定することは、バケット位置が、(掘削機の姿勢を測定する既知のセンサを介して)精密に計算されることを可能にし、又は事前にプログラムされている一連の掘削場所へ制御されることすら可能にする。
高所作業プラットフォーム
【0102】
JLG社、スノーケル(Snorkel)社、及びジーニー(Genie)社の様な製造者によって作られている、ブームリフト又はシザースリフト又は垂直方向伸縮式リフトの様な、様々な種類の高所作業プラットフォーム(EWP:elevated work platforms)を使用することは知られている。非常に背の高いブームリフトは大きな振幅で揺れ、作業を困難、危険、又は実施不能にすることが知られている。揺れは、ブームリフトが動作することのできる高さにとっての制限因子である。プラットフォームを上昇させた状態でブームリフト又はEWPを駆動すると、揺れを引き起こし、プラットフォームを不安感のあるもの又は危険なものにしてしまうことが知られている。本発明は、安定したプラットフォームにするための手段を提供して、プラットフォームが、地表に対して、又はプラットフォーム又はEWPが動かされるときの所望の軌跡に対して安定化されるようにする。
ケーブル懸架型ロボット
【0103】
高架式ガントリー又はタワーによって引張支持されているケーブルに懸架されるプラットフォーム上にロボットを支持することは知られている(PARシステムズ社-引張トラス及びチェルノブイリクレーン及び解体ロボット参照)。ケーブルは高い荷重を支持することができるが、構造は低い剛度を有している。横方向の剛度は非常に低い。ロボット及び末端効果器の位置決めの正確度は、追跡構成要素を懸架型プラットフォームへ追加してロボットアームの基部の6DOF位置を提供させることによって大きく改善されるはずである。これは、その様なシステムに、それが行うべきものとして現在採用されている比較的精度の低い解体作業ではなく、高精度な作業を行わせることを可能にする。
高精度用途
【0104】
その様なシステムは、レーザー切断、レーザー型彫り、又は3D付加的レーザー溶融加工のために、高パワーレーザーと共に使用されるガルバノミラーを含んでいてもよい。
【0105】
本発明の範囲はここに説明されている特定の実施形態に限定されないものと理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11