IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフトの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】巻取り機
(51)【国際特許分類】
   B65H 54/34 20060101AFI20220125BHJP
   B65H 54/24 20060101ALI20220125BHJP
   B65H 51/12 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
B65H54/34 F
B65H54/24
B65H51/12 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019538590
(86)(22)【出願日】2018-01-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2018050134
(87)【国際公開番号】W WO2018134048
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-10-12
(31)【優先権主張番号】102017000457.9
(32)【優先日】2017-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ライナルト フォス
(72)【発明者】
【氏名】イェアク シペル
(72)【発明者】
【氏名】マーク-アンドレ ヘアンドルフ
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-188784(JP,A)
【文献】特開2015-164875(JP,A)
【文献】特開2008-297078(JP,A)
【文献】特表2009-524746(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0003037(US,A1)
【文献】国際公開第2008/138827(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 51/12
B65H 54/24
B65H 54/34
B65H 57/00-57/28
D01D 1/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の糸をボビンに巻き取るための巻取り機であって、片持ち式に保持された少なくとも1つの巻取りスピンドル(6.1)に沿って相並んで配置されている複数の巻取り箇所(1.1~1.4)と、糸走路において前記巻取り箇所(1.1~1.4)の上流に配置された複数のヘッド糸ガイド(3.1~3.4)と、前記巻取り箇所(1.1~1.4)のそばで側部に配置されている少なくとも1つのゴデット(11)であって、該ゴデット(11)の回転軸線は前記巻取りスピンドル(6.1)の回転軸線に対して横方向に方向付けられていてかつ前記糸走路において前記ヘッド糸ガイド(3.1~3.4)の上流に配置されたゴデット(11)と、前記ヘッド糸ガイド(3.1~3.4)に前記糸を挿通するための補助装置(14)とが設けられており、前記補助装置(14)は、相並んで形成された複数のガイド溝(16.1~16.4)を備えた挿通糸ガイド(16)を有しており、前記挿通糸ガイド(16)は、駆動手段(19)によってガイド軌道(17)において案内されるようになっており、かつ前記ガイド軌道(17)は、前記ヘッド糸ガイド(3.1~3.4)に沿って延びていて、かつ供給軌道(17.1)および戻り軌道(17.2)を有している、巻取り機において、
前記ヘッド糸ガイド(3.1~3.4)の上における前記供給軌道(17.1)と前記ヘッド糸ガイド(3.1~3.4)の下における前記戻り軌道(17.2)とは、前記挿通糸ガイド(16)の、鉛直に方向付けられたガイド平面(22)を形成しており、かつ前記挿通糸ガイド(16)の前記ガイド平面(22)と前記ヘッド糸ガイド(3.1~3.4)の一列線(21)との間に、1°~15°の範囲の角度αが形成されている
ことを特徴とする、巻取り機。
【請求項2】
前記挿通糸ガイド(16)の前記ガイド溝(16.1~16.4)は、前記ガイド平面(22)に対して平行に方向付けられている、
請求項1記載の巻取り機。
【請求項3】
前記挿通糸ガイド(16)は、自由回転可能に支持されたガイドローラ(25)によって形成されていて、該ガイドローラ(25)の軸線が、前記ガイド平面(22)に対して垂直に方向付けられている、
請求項2記載の巻取り機。
【請求項4】
前記供給軌道(17.1)と前記戻り軌道(17.2)とは、挿通端部(23)において、前記挿通糸ガイド(16)を下降させるための横軌道(17.3)によって互いに接続されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の巻取り機。
【請求項5】
前記ガイド軌道(17)は、それ自体閉じており、かつ前記挿通糸ガイド(16)は、前記糸を挿通するために前記ガイド軌道(17)の周りを循環するように案内される
請求項4記載の巻取り機。
【請求項6】
前記ガイド軌道(17)は、ガイドレール(18)と、前記ガイドレール(18)において案内されるガイドキャリッジ(24)とによって形成されており、前記挿通糸ガイド(16)は、前記ガイドキャリッジ(24)に保持されている、
請求項5記載の巻取り機。
【請求項7】
前記駆動手段(19)は、前記ガイドキャリッジ(24)に結合されたリニア駆動装置(20)によって形成されている、
請求項6記載の巻取り機。
【請求項8】
前記挿通糸ガイド(16)の前記ガイド平面(22)と前記ヘッド糸ガイド(3.1,3.4)の前記一列線(21)との間の前記角度(α)は、前記ゴデット(11)における前記糸の糸間隔の総和と、前記ヘッド糸ガイド(3.1~3.4)の間における間隔の総和との間の関係によって確定可能である、
請求項1から7までのいずれか1項記載の巻取り機。
【請求項9】
前記ゴデット(11)と前記ヘッド糸ガイド(3.1~3.4)とは、最初の糸(2.1)または最後の糸(2.4)が前記ゴデット(11)の周囲において前記ヘッド糸ガイド(3.1~3.4)の前記一列線(22)に対して平行に案内されるように、互いに配置されている、
請求項1から8までのいずれか1項記載の巻取り機。
【請求項10】
前記ヘッド糸ガイド(3.1~3.4)は、回転可能に支持された変向ローラ(13.1~13.4)によって形成されていて、該変向ローラ(13.1~13.4)は、前記糸を案内するために周囲にそれぞれ1つの開放した糸走行溝(26)を有している、
請求項1から9までのいずれか1項記載の巻取り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の、複数の糸をボビンに巻き取るための巻取り機に関する。
【0002】
溶融紡糸プロセスにおいて、糸群として製造された糸は、プロセスの最後において互いに平行にボビンに巻き取られる。そのために複数の巻取り箇所を備えた巻取り機が使用され、巻取り箇所は、機械フレームにおいて片持ち式に保持された巻取りスピンドルに沿って形成されている。巻取りスピンドルは、複数のボビンを収容するために働き、これによってこれらのボビンを同時に巻成することができる。糸の巻重ねは、いわゆる綾巻きにおいて行われるので、巻取り箇所内においてそれぞれ糸は個々に、綾振りユニットを用いて、ボビン表面への乗上げ前に往復案内される。巻取り箇所における糸群の供給および分離は、複数のいわゆるヘッド糸ガイドを介して行われ、これらのヘッド糸ガイドは、巻取り箇所においてそれぞれ綾振りユニットの上流に配置されている。このとき糸群は、通常ゴデットを介してヘッド糸ガイドに供給される。
【0003】
プロセス開始時に糸群の糸を巻取り機の巻取り箇所に挿通できるようにするために、従来技術では基本的に巻取り機の2つの変化形態が公知である。例えば国際公開第2008/138827号(WO 2008/138827 A2)に開示されている第1の変化形態では、糸を挿通するための追加的な補助装置が不要になっている。このような巻取り機では、巻取り機の糸ガイドエレメントまたはゴデット自体が、糸を仕掛けるためおよび分配するための相対運動を実施するために使用される。
【0004】
巻取り機の第2の変化形態では、ヘッド糸ガイドに糸を案内するためおよび挿通するための補助装置が使用される。本発明の出発点であるこのような巻取り機は、例えば国際公開第98/28217号(WO 98/28217 A2)または欧州特許出願公開第2497732号明細書(EP 2497732 A2)に基づいて公知である。このような公知の巻取り機では、補助装置は、相並んで形成された複数のガイド溝を備えた可動の挿通糸ガイドを有している。挿通糸ガイドは、プロセス開始時にサクションガンによって案内された糸を収容し、かつガイド軌道に沿った移動によって個別化し、かつヘッド糸ガイドに引き渡すために使用される。
【0005】
国際公開第98/28217号に基づいて公知の巻取り機では、補助装置は、階段形状に形成されたガイド溝を備えた挿通糸ガイドを使用している。これによって糸を異なった高さで挿通糸ガイドにおいて案内することができる。このとき糸は直線的に、複数のヘッド糸ガイドのそばを通過案内され、これらのヘッド糸ガイドは、異なった高さに配置されていて、これによって糸の引受けおよび個別化を可能にする。しかしながらこの巻取り機には、ヘッド糸ガイドが異なった高さを有していて、ひいては巻取り箇所において異なった綾振り特性を惹起するという欠点がある。
【0006】
これに対して欧州特許出願公開第2497732号明細書に基づいて公知の巻取り機では、糸群を引き受けるためのガイド溝が同じ高さに配置されている挿通糸ガイドが使用される。ヘッド糸ガイドへの糸の個別化および引受けのために、挿通糸ガイドは、供給軌道と戻り軌道とを備えた傾けられたガイド軌道において案内され、このとき挿通糸ガイドがヘッド糸ガイドに対して相対的に軸方向においても移動するようになっている。しかしながらこのような傾けられたガイド軌道は、ガイド手段の引っ掛かりおよび傾倒を惹起する傾向があり、したがって極めて故障しやすい。
【0007】
本発明の課題は、プロセス開始後に糸を挿通するための補助装置を備えた、冒頭に述べた形式の巻取り機を改良して、糸を挿通糸ガイドの単純な移動動作でヘッド糸ガイドに分配することができるようにすることである。
【0008】
この課題を解決する本発明の構成では、ヘッド糸ガイドの上における供給軌道とヘッド糸ガイドの下における戻り軌道とは、挿通糸ガイドの、鉛直に方向付けられたガイド平面を形成しており、かつ挿通糸ガイドのガイド平面とヘッド糸ガイドの一列線(全てのヘッド糸ガイドを通る直線)との間において、1°~15°の範囲における角度が形成されている。
【0009】
本発明の好適な発展形態は、従属請求項の特徴および特徴の組合せによって定義されている。
【0010】
本発明は、補助装置の挿通糸ガイドが、糸群を引き受けるためおよびヘッド糸ガイドへの糸群の分配のために、2つの方向における直線移動によって案内可能である、という特別な利点を有している。これによって迅速かつ再現可能な挿通動作を実施することができる。挿通糸ガイドのガイド平面がヘッド糸ガイドの一列線に対して角度を成して配置されていることによって、ヘッド糸ガイドの間における任意の間隔を橋渡しすることができ、これによって、挿通糸ガイドにおいて案内される糸群の選択的な分配を行うことができる。糸の変位を制限するために、1°~15°の範囲における角度が好適であるということが判明している。
【0011】
特にヘッド糸ガイドへの糸の引渡し時における位置決め精度を改善するために、本発明の特に好適な発展形態では、挿通糸ガイドのガイド溝は、ガイド平面に対して平行に方向付けられている。このように構成されていると、糸を互いに一定の間隔で挿通糸ガイドにおいて案内することができる。
【0012】
このとき特に好適であることが判明している発展形態では、挿通糸ガイドは、自由回転可能に支持されたガイドローラによって形成されていて、該ガイドローラの軸線が、ガイド平面に対して垂直に方向付けられている。このように構成されていると、糸群内における比較的多数の糸をも、ガイド軌道の比較的長い区間にわたって確実に案内することができる。さらに、糸群を比較的大きな糸張力なしに挿通過程中および案内中に挿通糸ガイドにおいて確実に収容するために、汎用のサクションガンを使用することができる。
【0013】
挿通糸ガイドの連続的な移動経過を得るために、さらに別の発展形態では、供給軌道と戻り軌道とは、挿通端部において、挿通糸ガイドを下降させるための横軌道によって互いに接続されている。
【0014】
このとき特に良好であることが判明している、本発明の発展形態によれば、ガイド軌道は、それ自体閉じており、かつ挿通糸ガイドは、糸を挿通するためにガイド軌道の周りを循環するように案内可能である。このように構成されていると、糸の分配時における高い再現可能性を得ることができる。挿通糸ガイドは、それぞれのプロセス開始時にガイド軌道内において連続的にまたは段階的に、糸を捕捉および分配するための異なった位置に導かれることができる。
【0015】
案内軌道における挿通糸ガイドの経路が機械フレームに対して可能な限り一定の関係で行われ得るようにするために、さらに別の発展形態では、ガイド軌道は、ガイドレールと、ガイドレールにおいて案内されるガイドキャリッジとによって形成されており、このとき挿通糸ガイドは、ガイドキャリッジに保持されている。挿通糸ガイドのガイド軌道を実現するためのこのような機械式の装置は、さらに、駆動手段の接続が簡単な形式で可能であるという特別な利点を有している。したがって駆動手段を好ましくはリニア駆動装置によって形成することができ、このリニア駆動装置は、ガイドキャリッジに結合されていて、かつガイドキャリッジをガイドレール内において移動させる。
【0016】
ゴデットの周囲における糸の糸間隔およびヘッド糸ガイドの間における間隔が、ガイド軌道とヘッド糸ガイドの一列線との間における角度の大きさに影響を及ぼすということが判明している。したがって挿通の動作のために最適化された角度を、ヘッド糸ガイドの間における間隔の総和に対する、ゴデットにおける糸の糸間隔の総和の関係から求めることができる。
【0017】
ゴデットとヘッド糸ガイドとの間における糸の同様な変位を得るために、本発明の発展形態では、ゴデットとヘッド糸ガイドとは、最初の糸または最後の糸がゴデットの周囲においてヘッド糸ガイドの一列線に対して平行に案内されるように、互いに配置されている。
【0018】
そのために好ましくは、ヘッド糸ガイドは、回転可能に支持された変向ローラによって形成されていて、該変向ローラは、糸を案内するために周囲にそれぞれ1つの開放した糸走行溝を有している。このように構成されていると、一方ではヘッド糸ガイド内への糸の挿通が容易になり、かつ他方では仕掛け動作中における糸摩擦が最小になる。
【0019】
次に添付の図面を参照しながら本発明に係る巻取り機について詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る巻取り機の1実施形態を概略的に示す側面図である。
図2図1に示された巻取り機に組み込まれた補助装置を概略的に示す平面図である。
図3図2に示された補助装置を概略的に示す側面図である。
図4.1】図2に示された補助装置の1つの作動状況を概略的に示す平面図である。
図4.2】図2に示された補助装置の別の作動状況を概略的に示す平面図である。
図4.3】図2に示された補助装置のさらに別の作動状況を概略的に示す平面図である。
図5.1】図2に示された補助装置の1つの作動状況を概略的に示す側面図である。
図5.2】図2に示された補助装置の別の作動状況を概略的に示す側面図である。
図5.3】図2に示された補助装置のさらに別の作動状況を概略的に示す側面図である。
【0021】
図1には、本発明に係る巻取り機の1実施形態が概略的に側面図で示されている。本発明に係る巻取り機は、本実施形態では、機械フレームに互いに並んで形成されている全部で4つの巻取り箇所1.1~1.4を有している。これらの巻取り箇所1.1~1.4は、片持ち式に保持された巻取りスピンドル6.1に沿って配置されている。巻取り箇所1.1~1.4のそれぞれにおいて、糸群2のそれぞれ1つの糸が供給され、ボビン8に巻き取られる。このとき巻取り箇所1.1~1.4の数および糸群2の糸2.1~2.4の数は、一例である。基本的にこのような巻取り機は、16までの巻取り箇所を相並んで有することができる。
【0022】
巻取り箇所1.1~1.4の構造は、同一に形成されているので、基本的な構造については、巻取り箇所のうちの1つの巻取り箇所1.1を参照して記載する。
【0023】
巻取り箇所1.1は、綾振りユニット4を有しており、この綾振りユニット4によって、供給された糸2.1は綾振り行程内において往復案内される。綾振りユニット4は、例えば、綾振り糸ガイドが綾振り行程内において往復案内されるようになっている反転ねじ軸式綾振り装置(Kehrgewindewellenchangierung)によって形成されていても、または糸を引っ張りながら往復案内する、互いに逆向きに駆動される複数のベーン先端を備えたベーン式綾振り装置(Fluegelchangierung)によって形成されていてもよい。綾振りユニット4の上流には、ヘッド糸ガイド3.1が配置されており、このヘッド糸ガイド3.1は、綾振り平面内におけるいわゆる綾振り三角形の先端を形成している。これによってヘッド糸ガイド3.1は、巻取り箇所1.1への走入部を形成している。
【0024】
巻取り箇所1.1において糸2.1を巻き取るために、巻管9が、駆動される巻取りスピンドル6.1の周囲に緊締されている。このとき巻取りスピンドル6.1は、隣接したすべての巻取り箇所1.1,1.2,1.3,1.4にわたって延びているので、巻取り箇所1.1~1.4のそれぞれにおいて、供給された糸2.1~2.4は同時に巻き取られる。
【0025】
巻取り箇所1.1においてボビン8の表面に糸2.1を仕掛けるために、圧着ローラ5が設けられている。圧着ローラ5は、同様に巻取り箇所1.1~1.4の全長にわたって延びている。糸2.1は、圧着ローラ5の周囲における部分巻掛けの後でボビン8の表面に仕掛けられる。
【0026】
機械フレーム10は、綾振りユニット4、圧着ローラ5、および巻取りスピンドル6.1を収容しかつ固定するために役立つ。巻取りスピンドル6.1は、ボビンタレット7において片持ち式に支持されており、このボビンタレット7は、機械フレーム10に回転可能に保持されている。ボビンタレット7は、巻取りスピンドル6.1に対して180°ずらされて第2の巻取りスピンドル6.2を保持しており、これによって巻取り箇所1.1~1.4における糸の連続的な巻取りを実施することができる。ボビンタレット7および巻取りスピンドル6.1,6.2には、それぞれ駆動装置(ここでは図示せず)が対応配置されている。
【0027】
巻取り箇所1.1~1.4のヘッド糸ガイド3.1~3.4はそれぞれ、自由回転可能に支持された変向ローラ13.1~13.4によって形成されており、これらの変向ローラ13.1~13.4は、回転可能に支持されてローラ保持体27に保持されている。変向ローラ13.1~13.4は、その周囲にそれぞれ1つの開放した糸走行溝26を有しており、これらの糸走行溝26内において、糸2.1~2.4のそれぞれ1つが、部分巻掛けされて案内されている。
【0028】
糸走路においてヘッド糸ガイド3.1~3.4の上流には、ゴデット11が配置されている。ゴデット11は、ゴデット保持体12に保持され、かつここで図示されていない駆動装置に連結されている。ゴデット保持体12は、巻取り箇所1.1~1.4のそばで側部において、巻取りスピンドル6.1の片持ち式の端部に保持されている。このときゴデット保持体12は、機械フレーム10に支持されていてよい。
【0029】
ゴデット11と巻取り箇所1.1~1.4の綾振りユニット4との間には、ヘッド糸ガイド内に糸を挿通するための補助装置14が配置されている。補助装置14は、可動の挿通糸ガイド16を有しており、この挿通糸ガイド16は、ガイド軌道17において案内可能である。ガイド軌道17は、巻取り箇所1.1~1.4に沿って延びている。補助装置14についてさらに説明するために、以下においては図2および図3を参照する。図2には、巻取り機の補助装置14が概略的に平面図で示されており、かつ図3には、巻取り機の補助装置14が概略的に側面図で示されている。
【0030】
したがって図面のうちの1つを特に参照しない場合には、以下の記載は両図に対するものである。
【0031】
挿通糸ガイド16は、本実施形態では、自由回転可能に支持されたガイドローラ25によって形成されている。ガイドローラ25は、その周囲に複数の環状のガイド溝16.1~16.4を有している。このときガイド溝16.1~16.4の数は、糸群2の糸2.1~2.4の数と同一である。ガイドローラ25は、鉛直に方向付けられたガイド平面22に位置しているガイド軌道17において案内されている。
【0032】
ガイド軌道17について説明するために、図3を参照する。ガイド軌道17は、複数の部分から形成されている。第1のガイド部分は、ヘッド糸ガイド3.1~3.4の上に位置している。このガイド部分は、本明細書では供給軌道17.1と呼ばれている。ガイド軌道17の、ヘッド糸ガイド3.1~3.4の下に設けられた別の部分は、戻り軌道17.2と呼ばれている。供給軌道17.1と戻り軌道17.2とは、挿通端部23において横軌道17.3を介して互いに接続されている。反対側に位置している端部において供給軌道17.1と戻り軌道17.2とは、別の横軌道17.4を介して互いに接続されており、これによって閉鎖されたガイド軌道17が形成されている。
【0033】
供給軌道17.1および戻り軌道17.2は、挿通糸ガイド16のガイド平面22に配置されている。そのためにガイド軌道17は、ガイドレール装置18内に形成されており、このときガイドキャリッジ24が挿通糸ガイド16を保持している。ガイドキャリッジ24は、リニア駆動装置20に連結されている。これによってガイドレール装置18、ガイドキャリッジ24、およびリニア駆動装置20は、設けられたガイド軌道17において挿通糸ガイド16を案内する駆動手段19を構成している。ここで強調して述べておくと、本実施形態における駆動手段19の構成は一例である。基本的には、設けられたガイド軌道17において挿通糸ガイド16移動させるためには、他の装置も可能である。
【0034】
図2における図示から分かるように、ガイド溝16.1~16.4を備えたガイドローラ25は、ガイド平面22に対して垂直に方向付けられている。ガイド溝16.1~16.4は、ガイド平面22に対して平行に延びていて、かつ好ましくは糸間隔を有しており、この糸間隔は、ゴデット11の周囲における糸2.1~2.4の糸間隔に等しく相当している。ガイドレール装置18は、挿通糸ガイド16が供給軌道17.1においてはヘッド糸ガイド3.1~3.4の上において、かつ戻り軌道17.2においてはヘッド糸ガイド3.1~3.4の下において案内可能であるように、変向ローラ13.1~13.4のローラ保持体27のそばに配置されている。
【0035】
ヘッド糸ガイド3.1~3.4もしくは変向ローラ13.1~13.4は、一平面に配置されており、このときヘッド糸ガイド3.1~3.4の一列線21(全てのヘッド糸ガイド3.1~3.4を通る直線)とガイド平面22との間には角度αが形成されている。これによってガイドレール装置18は、角度αだけ傾けられた傾斜位置でローラ保持体27に対応配置されている。角度αは、ゴデット11の周囲における糸間隔の総和と、ヘッド糸ガイド3.1~3.4の間における間隔の総和とによって決定的に確定される。通常、角度αは、1°~最大15°の範囲にある。それよりも大きな傾斜角は、糸の変位が許容可能な範囲を超過してしまうので、回避される。
【0036】
本発明に係る巻取り機は、図1において作動状態で示されている。したがって補助装置14は、図1図3における図示においては休止位置にある。糸2.1~2.4がボビン8に連続的に巻き取られる、巻取り機の通常作動中に、挿通糸ガイド16は、戻り軌道17.2の端部における下側の休止位置において保持される。
【0037】
ヘッド糸ガイド3.1~3.4に糸を挿通するための補助装置14の機能を説明するために、以下においては、図4.1~図4.3および図5.1~図5.3を参照する。図4.1~図4.3には、補助装置14の異なった作動状況が平面図で示されており、かつ図5.1~図5.3には、補助装置14の異なった作動状況が側面図で示されている。
【0038】
プロセス開始時に糸群2は、上流に配置されたプロセスユニットおよび図示されたゴデット11に仕掛けるために、サクションガン15によって案内される。このときサクションガン15は、手動で操作員によって案内されても、または自動化されてロボットによって案内されてもよい。糸群2がゴデット11に仕掛けられた後で、糸はサクションガン15によって補助装置14に供給される。糸群2の糸を巻取り箇所1.1~1.4に分配するために、補助装置14のリニア駆動装置20が作動させられる。このとき挿通糸ガイド16は、戻り軌道17.2におけるその休止位置から案内され、かつ横軌道17.4を介して供給軌道17.1に引き渡される。このとき糸2.1~2.4は、ガイドローラ25の周囲におけるガイド溝16.1~16.4によって捕捉される。ガイドローラ25は、供給軌道17.1において案内されたガイドキャリッジ24を介して挿通端部23に案内され、かつ次いで横軌道17.3を介して戻り軌道17.2に導かれる。このときガイドキャリッジ24の移動は、リニア駆動装置20によって段階的に行われても、または連続的に行われてもよい。このとき糸群2はまずヘッド糸ガイド3.1~3.4の上に案内される。ガイドローラ25から走出する糸は、サクションガン15によってヘッド糸ガイド3.1~3.4から離されて保持され、これによって供給軌道17.1から戻り軌道17.2への移行時におけるガイドローラ25の下降によって、糸群2はガイドローラ25によってヘッド糸ガイド3.1~3.4の下に案内されている。これによってガイドキャリッジ24の戻り行程時に、糸は次々とヘッド糸ガイド3.1~3.4に分配されて引き渡される。それぞれ1つの開放した糸走行溝26を備えた変向ローラ13.1~13.4としてヘッド糸ガイド3.1~3.4を形成することによって、挿通糸ガイド16の移動だけによる糸の自動的な引渡しが可能である。糸2.1~2.4の分配および分離は、図4.3および図5.3に示されている。図示された状況において挿通糸ガイド16は、戻り軌道17.2においてその破線で示された休止位置に戻り移動する。糸2.4,2.3は既に変向ローラ13.4,13.3に引き渡されている。戻り軌道17.2における挿通糸ガイド16の進行する移動時に、糸2.2,2.1もまた同様に、そのために設けられた変向ローラ13.2,13.1に引き渡される。これによって巻取り機の巻取り箇所1.1~1.4への糸群の分離が終了する。ここでは図示されていない別の補助装置によって、糸群は、巻管における捕捉および巻付けのために巻取りスピンドルに引き渡される。
図1
図2
図3
図4.1】
図4.2】
図4.3】
図5.1】
図5.2】
図5.3】