(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】AMPA受容体増強薬
(51)【国際特許分類】
C07D 403/10 20060101AFI20220125BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220125BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20220125BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20220125BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220125BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220125BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20220125BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220125BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220125BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20220125BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20220125BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220125BHJP
A61K 31/4155 20060101ALI20220125BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
C07D403/10 CSP
A61P43/00 111
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/28
A61P25/00
A61P25/18
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/02
A61P27/16
A61P11/00
A61P43/00 121
A61K31/4155
A61K45/00
(21)【出願番号】P 2019543832
(86)(22)【出願日】2018-02-09
(86)【国際出願番号】 GB2018050370
(87)【国際公開番号】W WO2018146486
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-02-03
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501125275
【氏名又は名称】ユニバーシティ カレッジ カーディフ コンサルタンツ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】サイモン・ワード
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ベスウィック
(72)【発明者】
【氏名】ルイス・ペニコット
(72)【発明者】
【氏名】トリスタン・ルイヨン
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/148836(WO,A1)
【文献】特表2011-523656(JP,A)
【文献】特表2009-541404(JP,A)
【文献】特表2011-503139(JP,A)
【文献】ACS Medicinal Chemistry Letters,2015年02月11日,6,392-396
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2011年,21,805-811
【文献】British Journal of Pharmacology,2010年,160,181-190
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2010年,20,5753-5756
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2010年,20,6072-6075
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
[式中、
R
1は、C
1~4アルキル及び-(CH
2)
aOR
Aから選択され、ここで、aは、1、2、3及び4から選択される整数であり、R
Aは、
Hであり;
R
2は、-CN、C
1~4アルキル、シクロプロピル、-C
1~4アルキルOC
1~4アルキル及び-(CR
3R
4)
bOHから選択され;
R
3及びR
4はそれぞれ独立に、H及びC
1~4アルキルから選択されるが、ただし、-(CR
3R
4)
bOH基中の少なくとも1個のR
3又はR
4は、C
1~4アルキルであり;
bは、1、2、3及び4から選択される整数であるが;
ただし、R
1及びR
2は両方一緒には、C
1~4アルキルではない]。
【請求項2】
R
1が、C
1~3アルキル
及びヒドロキシメチ
ルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
1が、メチル又はヒドロキシメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R
2が、-CN、C
1~3アルキル、シクロプロピル、-C
1~2アルキルOCH
3及び-CH(CH
3)OHから選択される、例えば、R
2が、メチル、メトキシメチル及び-CH(CH
3)OHから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R
2が、メチル、エチル、イソプロピル及びシクロプロピルから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R
1が、C
1~3アルキル
及びヒドロキシメチ
ルから選択され;
R
2が、-CN、C
1~3アルキル、シクロプロピル、-CH(CH
3)OH及びメトキシメチルから選択されるが;
ただし、R
1がC
1~3アルキルである場合、R
2が、C
1~3アルキル又はシクロプロピルではない、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
R
1が、メチルであり、R
2が、-CN、メトキシメチル及び-CH(OH)CH
3から選択されるか;又は
R
1が
、ヒドロキシメチルであり、R
2が、メチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
a及びbが独立に、1及び2から選択される整数である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
【化2】
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物及び薬学的に許容される添加剤を含む、医薬製剤。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物
を含む医薬。
【請求項12】
AMPA受容体によってモジュレートされる状態を処置する際に使用するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物
を含む医薬。
【請求項13】
抑うつ障害又は気分障害を処置する際に使用するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物
を含む医薬。
【請求項14】
処置抵抗性抑うつ障害を処置する際に使用するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物
を含む医薬。
【請求項15】
認知機能障害を処置する際に使用するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物
を含む医薬。
【請求項16】
認知機能、シナプス可塑性、又は興奮性/抑制性神経伝達のアンバランスのうちの1つ又は複数における改変と関連する中枢神経系障害を処置する際に使用するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物
を含む医薬。
【請求項17】
神経又は神経精神障害と関連する認知機能障害を処置する際に使用するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物
を含む医薬。
【請求項18】
前記障害が、統合失調症、双極性障害、注意欠陥多動障害、抑うつ障害、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病又はパーキンソン病)、神経発生的障害、運動ニューロン疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症)、運動失調、呼吸抑制及び聴力障害から選択される、請求項16又は請求項17に記載の使用のための
医薬。
【請求項19】
統合失調症と関連する認知機能障害を処置する際に使用するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物
を含む医薬。
【請求項20】
追加の治療薬と共に対象に同時投与される、請求項11から19のいずれか一項に記載の使用のための
医薬。
【請求項21】
前記追加の治療薬が、抗精神病薬及び抗うつ薬から選択される、請求項2
0に記載の使用のための
医薬。
【請求項22】
式(IV)の化合物:
【化3】
[式中、R
1は、C
1~4アルキルであり、例えば、R
1は、メチルである]。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本明細書に定義の式(I)の化合物;前記化合物を含む医薬組成物に関する。より詳細には、本発明は、AMPA(α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸)グルタミン酸受容体モジュレーターとして有用である化合物に関する。本発明はまた、詳細には、AMPA受容体の増強が有利である疾患又は状態を処置又は予防する際の、例えば、神経又は神経精神疾患を処置する際の、詳細には、統合失調症等の神経変性障害又は神経精神障害と関連する抑うつ障害、気分障害及び認知機能障害を処置する際の前記化合物の使用及び前記化合物を用いる処置方法に関する。本発明は更に、前記化合物を調製する際に使用される化合物及び中間体を調製するための方法を含む。
【背景技術】
【0002】
グルタミン酸は、哺乳類の脳における興奮性神経伝達物質の主なメディエーターであり、ニューロン間の迅速なポイント-ツー-ポイント(シナプス)コミュニケーションに関係している。グルタミン酸の機能は、3種類の速効性イオンチャネル;カイニン酸、AMPA及びN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)サブタイプによって;また、より調節的な代謝型Gタンパク質共役(mGlu1-8)受容体によって媒介される。
【0003】
AMPA受容体は、4つのサブユニット(GluA1~GluA4)を含む四量体性である(Traynelisら、Glutamate receptor ion channels: structure, regulation, and function;Pharmacol. 2010年、Rev.62、405~496頁)。機能性AMPA受容体は、ホモ-又はヘテロ-テトラマーから形成され得る。天然の受容体は、ほとんど例外なく、ヘテロマー性であり、このことが、ヒト脳における受容体サブユニット組成の多様性につながっている。
【0004】
膜結合チャネルのX線構造の研究は、AMPA受容体が(1)サブユニットの構築に関係していて、かつAMPA受容体機能を調節するいくつかの分子での作用部位であるアミノ末端ドメイン(ATD);(2)グルタミン酸と結合する、2つのポリペプチドセグメントS1及びS2を含むリガンド結合ドメイン(LBD);(3)細孔形成イオンチャネル(pore-forming ion channel)を含有する膜貫通ドメイン(TMD);並びに(4)C末端細胞内ドメインを含むことを示している。様々なサブユニット置換に加えて、複雑性の追加的な積み重ねが、いくつかのスプライスバリアント(flip及びflopバリアント)及び翻訳後修飾のための部位の存在によって生み出される(Seeburgら; RNA editing of brain glutamate receptor channels: mechanism and physiology、Brain Res Rev 26:217~229頁、1998年)。RNA編集によって、正の電荷をもつアルギニン(R)残基が、GluA2サブユニットのM2リエントラントループ(re-entrant loop)においてゲノム的にコードされるグルタミン(Q)にとって代わることとなり、それによって、チャネルを通るCa2+フラックスを制限し、かつ受容体をNa+及びK+に対して本質的に透過性にするが、このことが、成体シナプス機能及び可塑性に重要と考えられる(Sommerら; RNA editing in brain controls a determinant of ion flow in glutamate-gated channels; Cell 105:11~19頁、1991年;及びSeeburgら; Genetic manipulation of key determinants of ion flow in glutamate receptor channels in the mouse. Brain Res 907:233~243頁、2001年)。広範な構造研究が、LBD構築で実施されている(Sobolevskyら、2009、Nature、462:745~756頁)。
【0005】
AMPA受容体は、脳において最も多く発現されるイオンチャネル型グルタミン酸受容体であり、迅速なシナプス伝達の大部分を担っている。AMPA受容体媒介細胞脱分極は、NMDA受容体を介したカルシウム流入及びシナプス可塑性の誘導をもたらす(Derkachら、2007年、Nat. Rev. Neurosci., 8:101~113頁)。
【0006】
シナプス可塑性は、学習及び記憶の基礎となる細胞プロセスである。AMPA受容体はニューロン活性化に応じてシナプスに活発に輸送され、この機能的な関連性は、それらが、長期増強に重要な役割を果たしていることにある(シナプス可塑性の電気生理学的関連性)(Malinowら、Annual Review of Neuroscience Vol. 25:103~126頁、2002年)。
【0007】
グルタミン酸神経伝達の異常は、様々なCNS障害と関連し、グルタミン酸イオンチャネルのカイニン酸、AMPA及び/又はNMDAサブタイプの機能の改変が、治療標的として調査されている。これらのイオンチャネルサブタイプのうち、AMPA受容体は、NMDA受容体と非常に密に相互作用し、それらは一緒に、シナプス可塑性と関連する。
【0008】
AMPAモジュレーターはまた、長期増強、AMPA誘導電流及びニューロンファイヤリングレート(neuronal firing rates)等のin-vivo電気生理学的測定に対する効果をもたらし得る(Hampsonら、Psychopharmacology (Berl)、2009年1月;202(1-3):355~69頁)。行動課題の学習後に(Cammarotaら、Neurobiol. Learn. Mem.、1995年、64、257~264頁)、又は1回の恐怖を誘起する刺激に対する曝露の後に(Liuら、Nature neuroscience 2010、13(2)、223~31)、AMPA受容体発現が増大するとの観察は、学習、記憶及びシナプス可塑性と関連したAMPA受容体の重要性を更に強調している。
【0009】
認知の基礎となるシナプス可塑性におけるAMPA受容体の重要な役割を考慮して、AMPA受容体モジュレーターは、認知機能の強化において有用であると予測される。AMPA受容体モジュレーターはまた、医学的障害と関連する認知機能障害(例えば、精神障害、抑うつ障害又は神経変性障害と関連する認知機能障害)を処置する際に有用であり得る。AMPA受容体モジュレーターは、例えば、統合失調症、アルツハイマー病、双極性障害、注意欠陥多動性障害、うつ病又は不安を処置する際に、詳細には、これらの障害と関連する認知機能障害を処置する際に有用であり得る。
【0010】
AMPA受容体の増強が認知を促進することは示されているが、ある種の化合物によるAMPA増強が、望ましくないけいれん作用及び発作と結びついていることも見出されている(Yamada Exp. Opin. Investig. Drugs 2000、9、765~777頁)。受容体アゴニストを使用してのAMPA受容体の直接的な活性化は、過剰刺激及びけいれん作用の誘導のリスクを増大させる。このことが、神経可塑性を増強し、したがって、様々な神経精神障害を処置する手段として、アロステリック(すなわち、非グルタミン酸結合部位)AMPA受容体増強薬の開発に関する研究につながっている(Kalivasら、Neuropsychopharmacology、2008年;33:2).
【0011】
AMPA受容体のポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)(AMPA-PAM)は、グルタミン酸結合後に、AMPA受容体をその活性な構造で安定させて、シナプス電流の増大、それによるシナプス伝達及び可塑性の促進をもたらす(Mellor、The AMPA receptor as a therapeutic target: current perspectives and emerging possibilities.Future Med. Chem.2010;2:877~891頁;及びO'Neillら AMPA receptor potentiators as cognitive enhancers.Idrugs 2007;10:185~192頁)。ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)は、使用依存性薬物であり、そのままでは、内在性グルタミン酸が放出される場合にしか作用しない。したがって、AMPA受容体のPAM増強は、けいれん等のAMPA増強と関連する望ましくない副作用のリスクを低下させ得る。
【0012】
PAMを使用してのAMPA受容体増強は、受容体についてのリガンド親和性の上昇(Araiら(1996) Neuroreport. 7: 221 1~5頁);受容体脱感作の減少及び受容体非活性化の減少(Araiら (2000) 58: 802~813頁)を含む有益な効果を示しており;in vivoでのLTPの誘導を促進する(Staubliら(1994) Proc Natl Acad. Sci 91: 1 1158-1 1162)。統合失調症等の精神障害の前臨床及び臨床モデルにおける様々なAMPA受容体PAMの有効性が、(Morrowら、Current Opinion in Drug Discovery and Development、2006年、9(5) 571~579頁)に記載されている。
【0013】
人口の約1%が、その一生のどこかの時点で統合失調症に罹患する。妄想及び/又は幻聴等の症状は、既存の薬物療法によってかなり良好に処置され得る。しかしながら、既知の薬物は、無気力、社会的機能障害、及び特に、認知障害を含む疾患の他の症状に対してはほとんど効果を有さない。認知機能障害は、注意、記憶及び問題解決に伴う困難として現れ、「脳霧(brain fog)」を経験する患者をもたらす。これらの主として処置されない症状は、罹患している個体が十分に機能的な「正常な」生活を再開するための巨大な障壁であり続ける。
【0014】
統合失調症において満たされていない臨床上の必要性が認識されたことで、NIH-及びFDAが依頼する、統合失調症における認知機能改善のための測定と治療研究(Measurement and Treatment Research to Improve Cognition in Schizophrenia:MATRICS)構想が開始され、これは、統合失調症関連認知障害(CIAS)を処置するための調節経路を精密にまとめた。統合失調症における認知障害を処置するための多くの治療上のアプローチは、NMDA受容体機能を直接的又は間接的に増大させることを目指してグルタミン酸系に焦点を当てている(Fieldら、2011年、Trends Mol. Med.、17:689~98頁)。NMDA受容体機能を増大させる直接的なアプローチには、グリシントランスポーター1型(GlyT1)阻害薬(例えば、R1678、Roche)が含まれる。間接的なアプローチには、mGluR2ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)、mGluR5 PAM、mGluR2/3アゴニスト(例えば、ポマグルメタッドメチオニル、LY2140023 Lilly)、及びD-アミノ酸オキシダーゼ阻害薬が含まれる。しかしながら、統合失調症及び他のCNS状態を有する対象において認知能力を改善する新たな治療が依然として必要とされている。
【0015】
臨床研究は、ケタミンがうつ病の症状を迅速に、多くの場合にわずか数分で除去することを示している。この所見は、かなりの研究的興味を引き起こしており、それというのも、SSRI等の従来の抗うつ薬は多くの場合に、抗うつ効果を示すまでに数週間、更には数か月かかるためである。当初研究も、ケタミンが、重篤な処置抵抗性うつ病を有する従来は処置困難な患者においても、強力な速効性抗うつ効果をもたらす可能性を有し得ることを示唆している(Bermanら; Antidepressant effects of ketamine in depressed patients; Biol. Psychiatry. 2000;47(4):351~354頁)。しかしながら、ケタミンは、幻覚及び耽溺特性を含むいくつかの副作用を有し、これはおそらく、薬物の乱用をもたらすであろう。したがって、ケタミンがうつ病の処置として広く採用される見込みはない。
【0016】
最近、ケタミンで観察される抗うつ効果がケタミンの代謝産物(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンに起因し得ること、及びこの代謝産物がAMPA受容体増強薬として作用することが見出されている。マウスモデルでは、代謝産物は、少なくとも3日間は持続する迅速な抗うつ薬様効果をもたらす(Zanosら NMDA receptor inhibition-independent antidepressant actions of a ketamine metabolite. Nature、2016年5月4日)。
【0017】
したがって、AMPA受容体増強薬は、例えば、抑うつ障害(例えば、大うつ病性障害、持続性の抑うつ障害(気分変調症)又は物質/医薬品誘発性抑うつ障害)、不安又は双極性障害を処置する際に有用であり得る。AMPA受容体増強薬は、処置抵抗性抑うつ障害を処置する際に、例えば、これに限定されないが、三環系抗うつ薬、MAOI及び/又はSSRIを含む従来の抗うつ薬治療に抵抗性があるうつ病を処置する際に特に有用であり得る。
【0018】
S47445は、下式の三環式AMPA-PAMである:
【0019】
【0020】
S47445は、選択的AMPA-PAMであると記載されており、げっ歯類モデルにおける認知促進作用、更に、神経保護効果を与えることを示している。この化合物は、大うつ病性障害及びアルツハイマー病を処置するための治験中であると述べられている(Bretinら; Pharmacological characterisation of S 47445, a novel positive allosteric modulator of AMPA receptors; PLoS ONE. 2017年;12(9))。
【0021】
Goffinらは、ある種の7-フェノキシ-置換3,4-ジヒドロ-2H-1,2,4-ベンゾチアジアジン1,1-ジオキシドをAMPA-PAMとして記載している(J. Med. Chem.、2018、61 (1)、251~264頁)。
【0022】
WO2009/147167は、ある種のインダン誘導体を開示しており、それらは、AMPA受容体の増強薬として記載されている。
【0023】
WO2007/107539、WO2008/053031、WO2008/148832、WO2008/148836並びにWardら、British Journal of Pharmacology; 160 181~190、2010;及びWardら、J. Med. Chem. 2011、54(1)、78~94は、ピラゾール誘導体を含むある種の化合物をAMPA受容体の増強薬として開示している。
【0024】
WO2010/150192は、ある種のイソプロピルスルホンアミド誘導体をAMPA受容体の増強薬として記載している。この特許出願は、化合物PF-4958242を実施例4として開示している。PF-4958242は、認知促進効果とけいれん誘発活性との間の比較的狭い治療ウィンドウを提供することが報告されている(J. Med Chem 2015、58 (10)、4291~4308)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【文献】WO2009/147167
【文献】WO2007/107539
【文献】WO2008/053031
【文献】WO2008/148832
【文献】WO2008/148836
【文献】WO2010/150192
【文献】WO2017/165877
【文献】WO2008/148836
【非特許文献】
【0026】
【文献】Traynelisら、Glutamate receptor ion channels: structure, regulation, and function;Pharmacol. 2010年、Rev.62、405~496頁
【文献】Seeburgら; RNA editing of brain glutamate receptor channels: mechanism and physiology、Brain Res Rev 26:217~229頁、1998年
【文献】Sommerら; RNA editing in brain controls a determinant of ion flow in glutamate-gated channels; Cell 105:11~19頁、1991年
【文献】Seeburgら; Genetic manipulation of key determinants of ion flow in glutamate receptor channels in the mouse. Brain Res 907:233~243頁、2001年
【文献】Derkachら、2007年、Nat. Rev. Neurosci., 8:101~113頁
【文献】Malinowら、Annual Review of Neuroscience Vol. 25:103~126頁、2002年
【文献】Hampsonら、Psychopharmacology (Berl)、2009年1月;202(1-3):355~69頁
【文献】Cammarotaら、Neurobiol. Learn. Mem.、1995年、64、257~264頁
【文献】Liuら、Nature neuroscience 2010、13(2)、223~31
【文献】Yamada Exp. Opin. Investig. Drugs 2000、9、765~777頁
【文献】Kalivasら、Neuropsychopharmacology、2008年;33:2
【文献】Mellor、The AMPA receptor as a therapeutic target: current perspectives and emerging possibilities.Future Med. Chem.2010;2:877~891頁
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【文献】Araiら(1996) Neuroreport. 7: 221 1~5頁
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【文献】Morrowら、Current Opinion in Drug Discovery and Development、2006年、9(5) 571~579頁
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【文献】Bermanら; Antidepressant effects of ketamine in depressed patients; Biol. Psychiatry. 2000;47(4):351~354頁
【文献】Zanosら NMDA receptor inhibition-independent antidepressant actions of a ketamine metabolite. Nature、2016年5月4日
【文献】Bretinら; Pharmacological characterisation of S 47445, a novel positive allosteric modulator of AMPA receptors; PLoS ONE. 2017年;12(9)
【文献】J. Med. Chem.、2018、61 (1)、251~264頁
【文献】Wardら、British Journal of Pharmacology; 160 181~190、2010
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
AMPA受容体を増強して認知促進効果を与える化合物が依然として必要とされている。望ましい認知促進効果と望ましくない副作用、特にけいれん誘発活性の開始との間に広い治療ウィンドウを有するAMPA受容体の増強薬も必要とされている。
【0028】
本発明の目的は、AMPA受容体を増強する化合物を提供することである。そのような化合物は、これに限定されないが、大うつ病性障害、双極性障害又はアルツハイマー病を処置する際の化合物の使用を含めて、例えば、本明細書に記載のようなグルタミン酸作動性障害と関連する疾患を処置するために有用であり得る。前記化合物は、特に、中枢神経系(CNS)障害と関連する場合に、認知機能及び/又はシナプス可塑性の増強及び/又は興奮性/抑制性神経伝達におけるアンバランスのために有用であり得る。特に、前記化合物は、神経又は神経精神疾患を処置する際に有用であり得る。より詳細には、前記化合物は、神経又は神経精神疾患と関連する認知障害を処置するために有用であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の一態様では、式(I)の化合物を提供する:
【0030】
【0031】
[式中、
R1は、C1~4アルキル及び-(CH2)aORAから選択され、ここで、aは、1、2、3及び4から選択される整数であり、RAは、H又はC1~4アルキルであり;
R2は、-CN、C1~4アルキル、シクロプロピル、-C1~4アルキルOC1~4アルキル及び-(CR3R4)bOHから選択され;
R3及びR4はそれぞれ独立に、H及びC1~4アルキルから選択されるが、ただし、-(CR3R4)bOH基中の少なくとも1個のR3又はR4は、C1~4アルキルであり;
bは、1、2、3及び4から選択される整数であるが;
ただし、R1及びR2は両方一緒には、C1~4アルキルではない]。
【0032】
一実施形態では、R1は、C1~3アルキル及び-(CH2)aORAから選択され、ここで、aは、1、2及び3(例えば、1又は2)から選択される整数であり、RAは、H又はC1~3アルキルである。
【0033】
一実施形態では、R1は、C1~3アルキル、-CH2ORA及び-CH2CH2ORAから選択され、ここで、RAは、H又はメチルである。
【0034】
一実施形態では、R1は、C1~3アルキル、ヒドロキシメチル及びメトキシメチルから選択される。
【0035】
一実施形態では、R1は、メチル、エチル、ヒドロキシメチル及びメトキシメチルから選択される。
【0036】
一実施形態では、R1は、メチル及びヒドロキシメチルから選択される。
【0037】
一実施形態では、R1は、C1~3アルキルであり、例えば、R1は、メチル又はエチルである。
【0038】
一実施形態では、R1は、メチルである。
【0039】
一実施形態では、R1は、-CH2OH、-CH2CH2OH、-CH2OCH3及び-CH2CH2OCH3から選択される。
【0040】
一実施形態では、R1は、-CH2OH及び-CH2CH2OHから選択される。
【0041】
一実施形態では、R1は、-CH2OHである。
【0042】
一実施形態では、R1は、-CH2OCH3及び-CH2CH2OCH3から選択される。
【0043】
一実施形態では、aは、1又は2である。
【0044】
一実施形態では、bは、1又は2である。
【0045】
一実施形態では、bは、1又は2であり;R3及びR4は、それぞれ独立に、H及びC1~2アルキルから選択されるが、ただし、-(CR3R4)bOH基中の少なくとも1個のR3又はR4は、C1~2アルキルである。
【0046】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、式(II)の化合物である:
【0047】
【0048】
式中:
1. R2が、-CN、C1~3アルキル、シクロプロピル、-C1~3アルキルOC1~2アルキル及び-(CR3R4)bOHから選択され、ここで、bが、1、2及び3(例えば、1又は2)から選択される整数であり、R3及びR4が、それぞれ独立に、H及びC1~2アルキルから選択されるが、ただし、-(CR3R4)bOH基中の少なくとも1個のR3又はR4が、C1~2アルキルである;
2. R2が、-CN、C1~3アルキル、シクロプロピル、-C1~2アルキルOC1~2アルキル、-CH(R3)OH及び-CH2CH(R3)OHから選択され、ここで、R3が、メチル又はエチルである;
3. R2が、-CN、C1~3アルキル、-C1~2アルキルOC1~2アルキル、-CH(R3)OH及び-CH2CH(R3)OHから選択され、ここで、R3が、メチル又はエチルである;
4. R2が、-CN、C1~3アルキル、シクロプロピル、-C1~2アルキルOCH3及び-CH(CH3)OHから選択される;
5. R2が、-CN、C1~3アルキル、シクロプロピル、メトキシメチル、-CH(CH3)OCH3及び-CH(CH3)OHから選択される;
6. R2が、-CN、C1~3アルキル及びシクロプロピルから選択される;
7. R2が、-CN、メチル、エチル、イソプロピル、シクロプロピル及び-CH(CH3)OHから選択される;
8. R2が、-CN、メチル、エチル、イソプロピル及び-CH(CH3)OHから選択される;
9. R2が、メチル、エチル、イソプロピル及びシクロプロピルから選択される;及び
10. R2が、メチル、エチル及びイソプロピルから選択される、
式(I)又は(II)の化合物を提供する。
【0049】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、式(III)の化合物である:
【0050】
【0051】
式中:
1. R2が、-CN、シクロプロピル、-C1~3アルキルOC1~2アルキル及び-(CR3R4)bOHから選択され、ここで、bが、1、2及び3から選択される整数(例えば、1又は2)であり、R3及びR4が、それぞれ独立に、H及びC1~2アルキルから選択されるが、ただし、-(CR3R4)bOH基中の少なくとも1個のR3又はR4が、C1~2アルキルである;又は
2. R2が、-CN、シクロプロピル、-C1~2アルキルOC1~2アルキル、-CH(R3)OH及び-CH2CH(R3)OHから選択され、ここで、R3が、メチル又はエチルである;又は
3. R2が、-CN、-C1~2アルキルOC1~2アルキル、-CH(R3)OH及び-CH2CH(R3)OHから選択され、ここで、R3が、メチル又はエチルである;又は
4. R2が、-CN、シクロプロピル、-C1~2アルキルOCH3及び-CH(CH3)OHから選択される;又は
5. R2が、-CN、シクロプロピル、-CH(CH3)OH、-CH(CH3)OCH3、メトキシメチル及び2-メトキシエチルから選択される;又は
6. R2が、-CN、シクロプロピル、メトキシメチル及び-CH(CH3)OHから選択される;又は
7. R2が、-CN、メトキシメチル及び-CH(CH3)OHから選択される。
8. R2が、メトキシメチル及び-CH(CH3)OHから選択される、
式(III)の化合物を提供する。
【0052】
一実施形態では、式中、
R1が、C1~3アルキル、ヒドロキシメチル及びメトキシメチルから選択され;
R2が、-CN、C1~3アルキル、シクロプロピル、-CH(OH)CH3及びメトキシメチルから選択され;
ただし、R1がC1~3アルキルであるとき、R2が、C1~3アルキル又はシクロプロピルではない、式(I)の化合物を提供する。
【0053】
一実施形態では、式中、
R1が、C1~2アルキル及びヒドロキシメチルから選択され;
R2が、-CN、C1~3アルキル、シクロプロピル、-CH(OH)CH3及びメトキシメチルから選択され;
好ましくは、この実施形態では、R1がC1~2アルキルであるとき、R2が、C1~3アルキル又はシクロプロピルではない、式(I)の化合物を提供する。
【0054】
別の実施形態では、式中、
R1が、メチル、ヒドロキシメチル及びメトキシメチルから選択され;
R2が、-CN、メチル、エチル、N-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、メトキシメチル及び-CH(OH)CH3から選択され;
ただし、R1がメチルであるとき、R2が、メチル、エチル、N-プロピル、イソプロピル又はシクロプロピルではない、式(I)の化合物を提供する。
【0055】
別の実施形態では、式中:
R1が、メチル、ヒドロキシメチル及びメトキシメチルから選択され;
R2が、-CN、メチル、エチル、イソプロピル、シクロプロピル、メトキシメチル及び-CH(OH)CH3から選択され;
ただし、R1がメチルであるとき、R2が、メチル、エチル、イソプロピル又はシクロプロピルではない、式(I)の化合物を提供する。
【0056】
別の実施形態では、式中、
R1が、メチルであり、R2が、-CN、メトキシメチル及び-CH(OH)CH3から選択されるか;又は
R1が、メトキシメチル又はヒドロキシメチルであり、R2が、メチルである、式(I)の化合物を提供する。
【0057】
別の実施形態では、
【0058】
【0059】
から選択される、式(I)の化合物を提供する。
【0060】
別の態様では、本発明は、本発明の化合物を医薬として使用するために提供する。
【0061】
別の態様では、本発明は、本発明の化合物及び薬学的に許容される添加剤を含む医薬製剤を提供する。
【0062】
一実施形態では、医薬組成物は、追加の治療薬を含む配合剤であってよい。追加の治療薬は、CNS状態、例えば、神経学的又は精神医学的状態を処置する際に使用される1種又は複数の薬剤、特に、統合失調症及び関連状態等の精神病状態の処置で使用される治療薬であってよい。追加の治療薬は、抑うつ障害(例えば、大うつ病性障害)を処置する際に使用される1種又は複数の薬剤であってよい。本発明の化合物と一緒に使用することができる追加の治療薬を、以下の本発明の詳細な説明において提示する。
【0063】
別の態様では、本発明の化合物を、グルタミン酸作動性障害、特に、AMPA受容体によってモジュレートされるグルタミン酸作動性障害を処置する際に使用するために提供する。
【0064】
別の態様では、本発明の化合物を、AMPA受容体によってモジュレートされる状態を処置する際に使用するために提供する。
【0065】
本発明の化合物の有効量を対象に投与することによって、それを必要とする対象においてAMPA受容体によってモジュレートされる状態を処置する方法も提供する。
【0066】
適切には、本発明の化合物は、AMPA受容体機能が障害されている状態を処置する際に使用するための化合物である。
【0067】
本発明の化合物は、AMPA受容体の増強が有利である状態を処置する際に使用するための化合物であってよい。したがって、本発明の化合物は、対象においてシナプス可塑性を強化する際に使用するための化合物であることがある。本発明の化合物は、対象において興奮性/抑制性神経伝達のアンバランスを処置する際に使用するための化合物であることがある。
【0068】
本発明の化合物は、認知機能、シナプス可塑性、又は興奮性/抑制性神経伝達のアンバランスのうちの1つ又は複数の改変と関連する中枢神経系(CNS)障害を処置又は予防する際に使用するための化合物であることがある。例えば、本発明の化合物は、神経又は神経精神障害、例えば、統合失調症、双極性障害、注意欠陥多動障害(ADHD)、うつ病、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、ダウン症候群並びに他の神経発達障害、筋萎縮性側索硬化症、運動失調、呼吸抑制及び聴力障害(例えば、難聴及び耳鳴り)等の運動ニューロン疾患から選択される状態を含む、本明細書に開示の中枢神経系(CNS)障害のいずれかを処置する際に使用するための化合物であってよい。本発明の化合物は、強迫性障害、嗜癖又は気分障害(大うつ病性障害及び双極性障害を含む)を処置する際に使用するための化合物であることがある。一部の実施形態では、本発明の化合物は、抑うつ障害を処置する、例えば、従来の抗うつ治療に抵抗性を有する抑うつ障害を処置する際に使用するための化合物である。一部の実施形態では、本発明の化合物は、抑うつ障害又は気分障害(例えば、大うつ病性障害、不安障害、重篤気分調節症、快感消失又は自殺念慮(希死念慮))を処置する際に使用するための化合物である。
【0069】
本発明の化合物をまた、対象において認知機能を改変する際に使用するために、詳細には、認知機能を強化するために提供する。より詳細には、本発明の化合物を、認知障害を処置する際に使用するために提供する。更により詳細には、本発明の化合物を、疾患又は状態と関連する認知障害を処置する際に使用するために提供する。本発明の化合物は、精神医学的又は神経性障害、例えば、本明細書に記載の精神医学的又は神経性障害のいずれかと関連する認知障害を処置する際に使用するための化合物であることもある。
【0070】
特定の実施形態では、本発明の化合物を、統合失調症と関連する認知機能障害を処置する際に使用するために提供する。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本出願で使用する用語の定義を以下に示す。本明細書において定義されていない用語はいずれも、当業者がその用語を理解するであろう通常の意味を有する。
【0072】
「本発明の化合物」についての本明細書における言及は、式(I)、(II)及び(III)の化合物を含む本明細書に開示の化合物のいずれかについての言及である。
【0073】
用語「ハロ」は、ハロゲン、周期表の第17族の1種を指す。詳細には、この用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。好ましくは、この用語は、フッ素又は塩素を指す。
【0074】
用語「C1~4アルキル」は、1、2、3又は4個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖炭化水素鎖、例えば、メチル、エチル、N-プロピル、イソ-プロピル、N-ブチル、Sec-ブチル及びtert-ブチルを指す。
【0075】
用語「-(CH2)aORA」は、末端ORA基を担持する-(CH2)a-基を指す。例えば、-CH2OH(「ヒドロキシメチル」とも)、-CH2OMe(「メトキシメチル」とも)、-CH2CH2OH又は-CH2CH2OMe。
【0076】
用語「-C1~4アルキルOC1~4アルキル」は、C1~4アルコキシ基によって置換されているアルキル基を指す。-C1~4アルキルOC1~4アルキル基には、例えば、-CH2OMe、-CH2CH2OMe、-CH(OMe)CH3又は-CH2CH(OMe)CH3が含まれる。
【0077】
R2が-(CR3R4)bOHである場合、基-(CR3R4)bは、-OH基(好ましくは、末端-OH基)を担持し、R3又はR4の少なくとも1個は、-C1~4アルキルである、すなわち、R3及びR4基は、全てがHであることはない。-(CR3R4)bOHの例には、-CH(CH3)OH、-C(CH3)2OH、-CH(CH2CH3)OH及び-CH2CH(CH3)OHが含まれる。
【0078】
本発明は、その化合物が塩を形成し得る限り、本発明の化合物の薬学的に許容される塩を企図している。これらには、化合物の酸付加及び塩基塩が含まれ得る。これらは、化合物の酸付加及び塩基塩であり得る。好適な薬学的に許容される塩は、例えば、「Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties、Selection, and Use」、Stahl and Wermuth (Wiley-VCH、Weinheim、Germany、2002年)に記載されている。塩は、周知されている方法を使用して形成されてもよい。
【0079】
本発明の化合物は、非溶媒和及び溶媒和形態の両方で存在し得る。用語「溶媒和物」は、本発明の化合物と、化学量論的量の1種又は複数の薬学的に許容できる溶媒分子、例えば、エタノールとを含む分子複合体を表すために、本明細書において使用される。用語「水和物」は、前記溶媒が水である場合に使用される。
【0080】
上述の溶媒和物とは対照的に、薬物及びホストが化学量論的又は非化学量論的量で存在するクラスレート、薬物-ホスト包接錯体等の複合体も、本発明の範囲内に包含される。化学量論的又は非化学量論的量で存在してよい2種以上の有機及び/又は無機成分を含有する薬物の複合体も包含される。得られる複合体は、イオン化、部分イオン化、又は非イオン化していてもよい。そのような複合体の総説については、J Pharm Sci、64(8)、1269~1288、Haleblian(1975年8月)を参照されたい。
【0081】
本明細書の下記では、本発明の化合物についての言及は全て、その塩、溶媒和物及び複合体並びにその溶媒和物及び複合体又は塩についての言及を含む。
【0082】
本発明の化合物は、単結晶形態又は結晶形の混合物で存在してもよく、又は非晶質であってもよく、そのような形態の全てが本発明に包含される。したがって、医薬的使用を意図されている本発明の化合物は、結晶質若しくは非晶質生成物として投与することができる。これらは、沈殿、結晶化、凍結乾燥、噴霧乾燥、又は蒸発乾燥等の方法によって、例えば、固体プラグ、粉末、又はフィルムとして得ることができる。マイクロ波又は高周波乾燥を、この目的のために使用することができる。
【0083】
ある種の本発明の化合物は、立体異性体型で存在し得る。本発明が本発明の化合物の全ての光学異性体の使用を包含することは理解されるであろう。化合物が立体中心を有する場合、(R)及び(S)立体異性体の両方が本発明では企図され、立体異性体又はラセミ混合物の等分の混合物が本出願では企図される。化合物が単一の立体異性体である場合、その化合物は、他の鏡像異性体を不純物として更に含有してもよい。したがって、単一の立体異性体は必ずしも、100%の鏡像異性体過剰率(e.e.)を有さないが、おおよそ少なくとも85%のe.e.又はd.eを有し得る。鏡像異性的に純粋な形態は、本発明の特定の態様である。必要な場合に個々の鏡像異性体を調製/単離するための従来の技法には、好適な光学純粋な前駆体からのキラル合成又は例えば、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてのラセミ体(又は塩若しくは誘導体のラセミ体)の分割が含まれる。
【0084】
クロマトグラフィー、典型的にはHPLCを不斉樹脂上で、炭化水素、典型的には、イソプロパノール0~50体積%、典型的には2%~20%及びアルキルアミン0~5体積%、典型的にはジエチルアミン0.1%を含有するヘプタン又はヘキサンからなる移動相と共に使用して、本発明のキラル化合物(及びそのキラル前駆体)を鏡像異性的に濃縮された形態で得ることができる。溶離液を濃縮すると、濃縮混合物が得られる。
【0085】
任意のラセミ体を結晶化させると、2種の異なる種類の結晶が可能である。第1の種類は、等モル量で両方の鏡像異性体を含有する1種の均一な形態の結晶が生じる上記で言及したラセミ化合物(真のラセミ化合物)である。第2の種類は、それぞれ単一の鏡像異性体を含む2種の形態の結晶が等モル量で生じるラセミ混合物又は集合体である。
【0086】
ラセミ混合物中に存在する結晶形の両方は、同一の物理的特性を有するが、それらは、真のラセミ体と比較して、異なる物理的特性を有することがある。ラセミ混合物は、当業者に知られている従来の技法により分離することができる。例えば、「Stereochemistry of Organic Compounds」、E. L. Eliel and S. H. Wilen (Wiley、1994)を参照されたい。
【0087】
本発明はまた、1個又は複数の原子が、同じ原子番号を有するが、天然に通常見出される原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子により置き換えられている全ての薬学的に許容される、同位体標識された式(I)、(II)又は(III)の化合物を含む。
【0088】
本発明の化合物中に包含されるために適している同位体の例には、2H及び3H等の水素、11C、13C、及び14C等の炭素、36Cl等の塩素、18F等のフッ素、123I及び125I等のヨウ素、13N及び15N等の窒素、15O、17O、及び18O等の酸素、32P等のリン、並びに35S等の硫黄の同位体が包含される。
【0089】
ある種の同位体標識された化合物、例えば、放射性同位体を導入されているものは、薬物及び/又は基質の組織分布研究において有用である。放射性同位体のトリチウム、すなわち3H及び炭素-14、すなわち14Cは、導入の容易さ及び検出の迅速な手段であることを考慮すると、この目的のために特に有用である。
【0090】
ジュウテリウム、すなわち2H等のより重い同位体での置換は、より大きな代謝安定性、例えば、インビボ半減期の増大又は投薬量要求の低減から生じるある種の治療的利点をもたらし得るので、場合によっては好ましいことがある。
【0091】
11C、18F、15O、及び13N等の陽電子放出同位体での置換は、基質受容体占有率を調べるための陽電子放出断層撮影法(PET)研究において有用であり得る。
【0092】
当業者に知られている従来の技術によって、又は以前に使用された非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用する記載のプロセスと同様のプロセスによって、同位体標識された化合物を一般的に調製することができる。
【0093】
本発明の化合物のプロドラッグも、本発明の範囲内と企図される。プロドラッグは、対象に投与すると、代謝又は他の化学的プロセスによって変換されて、式(I)、(II)又は(III)の化合物をもたらす、薬物前駆体として作用する化合物である。例えば、-OH基を、エステル又はカルバマートに変換することができ、これらは、対象に投与されると、遊離ヒドロキシル基に再び変換されることとなる。プロドラッグ及びそれらの使用の例は、周知されている(例えば、Bergeら (1977)「Pharmaceutical Salts」、J. Pharm. Sci. 66:1~19)。プロドラッグは、化合物の最終単離及び精製中にその場で、又は別に、精製化合物を好適なエステル化剤と反応させることによって調製することができる。
【0094】
用語「処置すること」、又は「処置」は、緩解等の任意の客観的又は主観的パラメーター;寛解;症状の減少又は損傷、病理若しくは状態が患者により許容可能となること;変性又は減退の速度の減速;変性の最終点が衰弱未満(less debilitating)になること;患者の身体的又は精神的健康の改善を含めて、損傷、疾患、病理又は状態の処置又は寛解における任意の有益な効果を指す。症状の処置又は寛解は、理学的検査、神経精神病学的検査、及び/又は精神医学的評価の結果を含む客観的又は主観的パラメーターに基づき得る。用語「処置すること」及びその語形変化は、損傷、病理、状態、又は疾患の予防を含む。
【0095】
「有効量」は、規定の目的を果たす(例えば、そのために投与されている作用を達成する、疾患を処置する、酵素活性を低下させる、酵素活性を上昇させる、又は疾患若しくは状態の1つ若しくは複数の症状を減少させる)ために十分な量である。「有効量」の例は、疾患の1つの症状又は複数の症状の処置、予防、又は減少に寄与するために十分な量であり、これは、「治療有効量」と称されることもあり得るであろう。1つの症状又は複数の症状の「減少」は、症状の重症度若しくは頻度の減少、又は症状の除去を意味する。薬物の「予防有効量」は、対象に投与した場合に、意図している予防効果を有する、例えば、損傷、疾患、病理若しくは状態の発症(又は再発)を予防する、若しくは遅延させる、又は損傷、疾患、病理若しくは状態、若しくはそれらの症状の発症(又は再発)の可能性を低下させるであろう薬物の量である。完全な予防効果は、1用量の投与によって必ずしも起こらず、一連の用量の投与後に初めて起こり得る。したがって、予防有効量を、1回又は複数の投与で投与してもよい。正確な量は、処置の目的に依存し、当業者であれば、知られている技法を使用して確認することができるはずである(例えば、Lieberman、Pharmaceutical Dosage Forms (1~3巻、1992年); Lloyd、The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); Pickar、Dosage Calculations (1999);及びRemington: The Science and Practice of Pharmacy、20th Edition、2003、Gennaro編、Lippincott、Williams & Wilkinsを参照されたい)。
【0096】
本発明の化合物の治療有効量を初めに、細胞培養アッセイから推定することができる。標的濃度は、本明細書に記載されているか、又は当技術分野で知られている方法を使用して測定されるとおり、本明細書に記載の治療効果を達成できる活性化合物の濃度となるであろう。
【0097】
ヒトで使用するための治療有効量も、知られている方法を使用する動物モデルから決定することができる。例えば、ヒトのための用量を、動物において有効であると見出されている濃度を達成するように製剤化することができる。上記のとおり、化合物有効性をモニターし、投薬量を上に、又は下に調節することによって、ヒトにおける投薬量を調節することができる。上記の方法及び他の方法に基づいて、ヒトにおいて最大有効性を達成するための用量の調節は十分に、当業者の能力の範囲内である。
【0098】
投薬量は、患者の要件及び用いられる化合物に応じて変化し得る。本発明の文脈では、患者に投与される用量は、経時的に患者において有利な治療反応をもたらせば十分であるはずである。用量のサイズはまた、何らかの不利な副作用の存在、性質、及び程度によって決定されることとなる。特定の状況のための適正な投薬量の決定は、専門家の技能の範囲内である。一般に、処置を、化合物の最適な用量よりも少ないわずかな投薬量で開始する。その後、状況下で最適な効果が得られるまで、投薬量を小刻みに増加させる。
【0099】
投薬量及び間隔を個別に調節して、処置される特定の臨床的適応に有効な投与化合物のレベルを得ることができる。これによって、個体の病態の重症度に相応する治療レジメンが得られる。
【0100】
予防又は治療処置レジメンは適切には、重大な毒性をもたらすことなく、かつ特定の患者が示している臨床症状を処置するためになお有効であるものである。投与計画のこの決定は一般に、化合物の効力、相対的生物学的利用能、患者の体重、不利な副作用の存在及び重症度、選択された作用物質の好ましい投与様式及び毒性プロファイル等の因子を考慮することによる、活性な化合物の評価に基づく。
【0101】
理論に束縛されることは望んでいないが、本発明の化合物は、AMPA受容体のポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)として作用することによって、AMPA受容体を増強すると考えられる。「アロステリックモジュレーター」は、受容体でアゴニスト又はインバースアゴニストの作用を間接的にモジュレートする作用物質である。アロステリックモジュレーターは、オルソステリックアゴニスト結合部位のものとは別個の部位に結合する。一般に、アロステリックモジュレーターは、受容体のタンパク質構造内でのコンホメーション変化を誘導する。「ポジティブアロステリックモジュレーター」(PAM)は、標的受容体についてのオルソステリックアゴニストの結合親和性又は機能的有効性を増進することによって、オルソステリックアゴニストの作用の増幅を誘導する。したがって、内在性グルタミン酸が放出された場合に、本発明の化合物は、AMPA受容体の効果を増強すると予測される。本発明の化合物は、それ自体では、チャネル電流に作用をほとんど有さないか、又は有さず、内在性グルタミン酸リガンドの存在下で受容体を介してイオンフラックスを増強することができるだけである。したがって、本発明の化合物は、例えば、(I)グルタミン酸が存在し続けている間、受容体が脱感作する速度を減速させる;及び/又は(II)グルタミン酸の除去後に、受容体が非活性化する速度を減速させる;及び/又は(III)グルタミン酸作動性シナプス電流を強化又は延長することによって、シナプス伝達及び可塑性(例えば、シナプスの長期増強(LTP))を促進することによって、AMPA受容体を増強することができる。好ましい化合物は、空間的及び一過性情報を著しく改悪することなく、AMPA受容体作用を増強する(例えば、認知を強化する)。
【0102】
本発明の化合物は、各LBDの2つの構造ドメインの間で「ヒンジ」として機能する残基によって形成されるGluA2リガンド結合ドメイン(LBD)二量体の二回軸(twofold axis)で結合すると考えられる。この部位で結合するモジュレーターは、クラムシェル二量体(clamshell dimer)をその閉鎖裂溝(closed cleft)グルタミン酸結合構造で安定化させることによって、受容体非活性化を減速させるように、及び/又は二量体の界面を安定させることによって、脱感作を減速させるように作用し得る(Wardら British Journal of Pharmacology; 160 181~190、2010年)。
【0103】
グルタミン酸によるAMPA受容体の活性化は、イオンチャネルの細孔を開き、ナトリウムの内向き流を可能にして、ニューロン膜の脱分極をもたらす。細胞内電荷のこの変化は、Mg2+カチオンをN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体チャネルから放出して、Ca2+がNMDA受容体細孔を介してシナプス後ニューロンへと通過することを可能にし、Ca2+依存性シグナル伝達カスケード、シナプス外AMPA受容体及び高伝導性GluA1ホモマーのシナプス後肥厚への輸送を作動させ、シナプス可塑性の形態の誘導をもたらす(Passafaroら; Subunit-specific temporal and spatial patterns of AMPA receptor exocytosis in hippocampal neurons. Nat Neurosci 4: 917~926、2001年)。
【0104】
本発明の化合物によるAMPA受容体の増強は、試験化合物の存在下でグルタミン酸による受容体の曝露の際の、AMPA受容体を介してのカルシウムイオン流入を測定することによって、評価することができる。そのようなアッセイの1つは、機能性ホモ四量体AMPA受容体を形成するヒトGluR2 flip(GluA2 flip)AMPA受容体サブユニットを発現する細胞を使用する、実施例に記載のカルシウムイオン流入アッセイである。GluA2 flipサブユニットは、皮質及び皮質下脳組織で高度に発現される(Wardら、2010年、同書)。実施例は、本発明の化合物がAMPA受容体の強力な増強薬であることを示している。
【0105】
本発明の化合物は、認知を増強すると予測される。認知に対する効果は、行動認知の既知のモデルを使用して、in-vivoで評価することができる。例えば、Ennaceurら(Behav. Brain Res.1988、31、47~59頁)に記載されているような新規物体認識(NOR)モデル。この試験は、新規なものを探索するラットの生得の性向に依存し、2回の試行を伴う。第1(T1)では、ラットを、2つの同一の物体に短時間(3分)曝露する。遅滞の後に(試行間間隔:ITI)、ラットを、第1相で遭遇した習熟したもののうちの1つ及び追加の新規物体(T2)を備えたチャンバーに戻す。げっ歯類は典型的には、習熟物体よりも新規物体の探索により長い時間を掛け、これは、習熟物体に対するげっ歯類の記憶及び新規物体を探索するその欲求を反映していると解釈される。そのタスクは、新規なものに対するげっ歯類の好みに依存しているので、これは、何らかのルール学習、したがって、事前訓練も必要としない。タスクの難しさを、T1とT2との間の遅滞を大きくすることによって増大させることができる。適切には、本発明の化合物は、経口投与の場合に、NOR試験において10Mg/kg未満の最低有効用量を有する。
【0106】
適切には、本発明の化合物は、望ましい認知促進効果と望ましくない副作用、特に、AMPA受容体の過剰活性化から生じ得るけいれん誘発活性の開始との間に広い治療ウィンドウを提供する。
【0107】
化合物がけいれん作用を誘導する可能性は、様々なモデルを使用して決定することができる。例えば、in-vitroけいれん誘発傾向は、種々の濃度の化合物の潜在的けいれん作用を評価するためのげっ歯類ニューロン電気生理学用海馬スライスを使用して評価することができる。
【0108】
in-vivoでの潜在的なけいれん誘発作用は、例えば、最大電気ショック閾値(MEST)試験を使用して評価することができる。MEST試験では、ラットにおける電流(約60~70mAのCC、持続期間0.1ms)の角膜適用は、強直性及び全強直性間代性発作を誘導する。発作閾値活性を低下させる化合物の可能性を評価するために、試験の30分前に、ラットを化合物、生理食塩水ビヒクル、又は陽性対照としてのピクロトキシンで事前処置する。化合物のけいれん作用を評価するためのモデルは、知られており、例えば、Wardら、J. Med. Chem. 2011、54(1)、78~94頁及びLoscherら Epilepsy Res. 1991、8: 79~84頁に記載されている。
【0109】
適切には、本発明の化合物は、NOR試験における最小有効用量よりも少なくとも50倍多い用量のMEST試験でも、いずれのけいれん誘発活性も示さない。例えば、MEST試験で、NOR試験における最小有効用量よりも75倍多い、又は好ましくは100倍多い用量で、けいれん誘発作用は観察されない。
【0110】
本発明の化合物は適切には、有利な薬物代謝及び薬物動態(DMPK)プロファイル、例えば、低いクリアランス、高い経口生物学的利用能、高い脳透過及び化合物の投与後に妥当な作用持続時間をもたらす半減期を有する。
【0111】
適切には、本発明の化合物は、ラット、イヌ及び/又はヒト肝臓ミクロソームの存在下で、低いin-vitro固有クリアランス(CLi)を示す。例えば、本発明の化合物は好ましくは、ラット及びヒトミクロソーム中で100μL/分/Mg未満のCLiを有する。CLiは、実施例に例示されているもの等の知られている方法を使用して測定することができる。
【0112】
ヒトP-糖タンパク質(P-gp、MDR1)は、血液脳関門で高度に発現されており、P-gp基質についての脳透過に対するバリアをもたらす。高いP-gp流出傾向を有する化合物は、低い血液脳関門の透過を示すことがあり、化合物の低い、治療量以下でもあり得る脳濃度をもたらす。
【0113】
適切には、Fengら(Drug Metabolism and Disposition; The American Society for Pharmacology and Experimental Therapeutics、Vol 36 (2)、2008年、268~275頁)に記載されているようなヒトMDR1をトランスフェクションされたMadin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞株を使用する流出アッセイにおいて測定した場合に、本発明の化合物は、5未満、好ましくは2未満の流出比を示す。本発明の化合物は適切には、例えば、Fengらが記載したPAMPA、アッセイにおいて、高い膜透過性を示す。
【0114】
化合物の生物学的特性を、実施例を含む本明細書に記載の方法を使用して評価することができる。化合物の特性をまた、Wardら 2010年(同書)、例えば、その
図6に記載の方法論及びスクリーニングカスケードを使用して評価することができる。
【0115】
医薬組成物
別の態様では、本発明は、本発明の化合物及び薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物を提供する。
【0116】
好適な医薬組成物を選択及び調製するための従来の手順は、例えば、「Pharmaceuticals - The Science of Dosage Form Designs」、M. E. Aulton、Churchill Livingstone、1988年;及びRemington: The Science and Practice of Pharmacy、20th Edition、Lippincott、Williams and Wilkins、2000年に記載されている。
【0117】
本発明の組成物は、経口使用に(例えば、錠剤、ロゼンジ剤、硬若しくは軟カプセル剤、水性又は油性懸濁剤、乳剤、分散性散剤若しくは顆粒剤、シロップ剤又はエリキシル剤として)、局所使用に(例えば、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、又は水性若しくは油性液剤若しくは懸濁剤として)、吸入による投与に(例えば、微粉散剤又は液体エアロゾルとして)、吹送による投与に(例えば、微粉散剤として)又は非経口投与に(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内若しくは筋肉内投与のための滅菌水性若しくは油性液剤として、又は直腸投与のための坐剤として)好適な形態であってよい。適切には、本発明の化合物を、経口で、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤又は散剤剤形の形態で投与する。
【0118】
本発明の組成物は、当技術分野で周知されている従来の医薬品添加剤を使用して、従来の手順によって得ることができる。したがって、経口使用が意図されている組成物は、例えば、1種又は複数の増量剤、結合剤、着色剤、甘味剤、香味剤及び/又は防腐剤を含有してもよい。剤形を調製するために好適な医薬品添加剤は周知されており、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients、Seventh Edition、Roweらに記載されているとおりである。
【0119】
単一剤形を作製するために1種又は複数の添加剤と組み合わせられる活性成分の量は必然的に、処置を受ける受容者及び特定の投与経路に応じて変化する。例えば、ヒトへの経口投与が意図されている製剤は一般に、例えば、全組成物の約5から約98質量パーセントまで変化してよい適切で簡便な量の添加剤と配合された活性薬剤0.5mg~0.5g(より適切には、0.5~100mg、例えば、1~30mg)を含有する。
【0120】
治療的使用及び用途
本明細書の背景セクションでは、AMPA受容体の増強及びそこから生じると予測される潜在的な治療効果についての情報を提供している。本開示はまた、本発明の詳細な説明の部分であると判断されると理解されたい。
【0121】
本発明の化合物は、AMPA受容体を増強する。したがって、本発明の化合物を、AMPA受容体によってモジュレートされる状態を処置する際に使用するために提供する。
【0122】
適切には、本発明の化合物は、AMPA受容体機能が障害されている状態を処置する際に使用するための化合物である。したがって、本発明の化合物は、AMPA受容体の増強が有利である状態を処置する際に使用するための化合物であってよい。
【0123】
適切には、本発明の化合物は、グルタミン酸作動性神経伝達が機能不全である状態を処置する際に使用するための化合物である。したがって、本発明の化合物は、グルタミン酸機能不全と関連する神経性又は精神医学的状態を処置する際に使用するための化合物であることがある。そのようなグルタミン酸作動性障害は知られており、本明細書に記載の状態の1つ又は複数を含む。
【0124】
本発明の化合物は、認知機能障害を処置する際に使用するための化合物であることがある。認知機能障害は、例えば、老化の結果として、又は疾患若しくは状態の作用として生じ得る。特に、本発明の化合物は、神経精神疾患と関連する認知機能障害を処置する際に使用するための化合物であり得る。
【0125】
本発明の化合物は、認知機能、シナプス可塑性、又は興奮性/抑制性神経伝達のアンバランスのうちの1つ又は複数における改変と関連する中枢神経系(CNS)障害を処置又は予防する際に使用するための化合物であることがある。
【0126】
本発明の化合物は、神経性障害又は神経精神病学的状態と関連する認知機能障害、例えば、グルタミン酸作動性障害と関連する認知機能障害を処置する際に使用するための化合物であることがある。
【0127】
「認知機能障害」又は「認知障害」についての言及は、本明細書では互換的に使用され、これに限定されないが、記憶、推理、問題解決、言語想起、集中、注意、処理速度、実行機能、社会的認知、言語学習、視覚学習及び識別の1つ又は複数を含む知的機能の喪失又は欠陥を指す。
【0128】
本発明の化合物は、認知障害、例えば、注意の欠陥、方向定位、記憶、記憶障害、健忘症、健忘性障害、加齢性認知障害、加齢性記憶障害、言語機能学習障害及び注意障害を処置する際に使用するための化合物であってよい。
【0129】
AMPA受容体モジュレーターは、他の疾患、例えば、抑うつ障害(Quirkら: a novel positive allosteric modulator of AMPA receptors; CNS Drug Rev 8: 255~282頁、2002年;及びO'Neillら、AMPA receptor potentiators: application for depression and Parkinson's disease; Curr Drug Targets 8: 603~620頁、2007年);ハンチントン病(Simmonsら、Up-regulating BDNF with an ampakine rescues synaptic plasticity and memory in Huntington's disease knockin mice. Proc Natl Acad Sci USA 106: 4906~4911頁、2009年);卒中(Dicouら Positive allosteric modulators of AMPA receptors are neuroprotective against lesions induced by an NMDA agonist in neonatal mouse brain. Br Res 970: 221~225頁、2003年)及びパーキンソン病(Blossら、Behavioural and biological effects of chronic S18986, a positive AMPA receptor modulator, during aging. Exp Neurol 210: 109~117頁、2008年)の前臨床モデルにおいて有益であることが示されている。
【0130】
本発明の化合物は、下記に列挙する状態、例えば、下記の5つの箇条書きに列挙されているもののうちの1つ又は複数を処置する際に使用するための化合物であってよい。一部の実施形態では、本発明の化合物は、次の状態の1つ又は複数と関連する認知機能及び/又はシナプス可塑性の強化及び/又は興奮性/抑制性神経伝達認知障害におけるアンバランスの1つ又は複数を処置する際に使用するための化合物であってよい:
・ 精神病及び精神病性障害、例えば、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様疾患、短期反応精神病、小児発症統合失調症、統合失調症的又は統合失調型人格障害等の「統合失調症-スペクトラム」障害、急性精神病、アルコール性精神病、薬物誘導性精神病、自閉症(アスペルガー障害及びレット障害を含む)、せん妄、躁病(急性躁病を含む)、躁うつ病、幻覚、内因性精神病、器質性精神症候群、偏執症及び妄想性障害、産褥期精神病、及びアルツハイマー病等の神経変性疾患と関連する精神病;
・ 物質関連障害;例えば、物質乱用、物質依存、物質中毒、物質禁断症状、アルコール関連障害、アンフェタミン関連障害、大麻関連障害、コカイン関連障害、及びニコチン関連障害、オピオイド関連障害(例えば、オピオイド依存、オピオイド乱用、オピオイド中毒、オピオイド禁断症状又はオピオイド誘導性精神病性障害)から選択される;
・ 神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病;筋萎縮性側索硬化症;運動ニューロン疾患;運動障害;パーキンソン病;パーキンソン病における認知症;ハンチントン病における認知症;神経遮断薬誘導性パーキンソン症候群及び遅発性ジスキネジア;卒中、心停止、肺バイパス、外傷性脳損傷、脊髄損傷又は周産期低酸素症後の神経変性;並びに多発性硬化症及び筋萎縮性側索硬化症等の脱髄疾患から選択される;
・ うつ病、例えば、双極性うつ病(I型及びII型を含む)、単極性うつ病、単発性又は再発性大うつ病エピソード(精神病性特徴、緊張性特徴、憂うつ特徴、非定型特徴(例えば、嗜眠、過食/肥満、睡眠過剰)又は分娩後発症を伴う、又は伴わない)、季節性情動障害及び気分変調症、うつ病関連不安、精神病性うつ病;並びに
・ 外傷後ストレス症候群、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、薬物誘導性障害(例えば、フェンシクリジン、ケタミン、オピエート、大麻、アンフェタミン、解離性麻酔薬、アンフェタミン、コカイン及び他の精神刺激薬によって誘導される障害);ハンチントン舞踏病;遅発性ジスキネジア;ジストニア;ミオクローヌス;痙縮;肥満;卒中;性機能障害;ナルコレプシー及び睡眠障害から生じる他の状態を含む睡眠障害;片頭痛;三叉神経痛、難聴;耳鳴り、眼損傷、網膜障害、黄斑変性;並びに疼痛(急性及び慢性疼痛、激痛、難治性疼痛、神経障害性疼痛、及び外傷後疼痛を含む)から選択される障害。
【0131】
実施形態では、本発明の化合物は、上に列挙した状態のいずれかに関連する認知障害を処置する際に使用するための化合物である。例えば、本発明の化合物は、卒中、アルツハイマー病、ハンチントン病、ピック病、エイズ関連認知症、多発梗塞性認知症、アルコール性認知症、甲状腺機能低下症関連認知症、並びに小脳萎縮及び筋萎縮性側索硬化症等の他の変性障害と関連する認知症、せん妄、うつ病、外傷、頭部外傷、加齢、神経変性、薬物誘導性状態、神経毒剤、自閉症、ダウン症候群、精神病、電気けいれん後処置と関連し、それから生じる認知障害;不安障害(汎発性不安障害、社会不安障害、激昂、緊張、精神病患者における社会的離脱又は引きこもり、パニック障害及び強迫性障害を含む)、物質誘導性持続性認知症、物質誘導性持続性健忘障害又は物質誘導性精神病性障害を処置する際に使用するための化合物であり得る。
【0132】
したがって、一実施形態は、神経性又は神経精神疾患又は状態を処置する際に使用するための本発明の化合物を提供する。例えば、本発明の化合物は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、統合失調症、強迫性障害、嗜癖及び気分障害(大うつ病性障害及び双極性障害を含む)を処置する際に使用するための化合物であってよい。詳細には、本発明の化合物は、任意のそのような状態と関連する認知機能障害を処置する際に使用するための化合物であり得る。
【0133】
特定の実施形態では、統合失調症を処置する際に使用するための本発明の化合物を提供する。例えば、本発明の化合物は、妄想型、解体型(disorganised type)、緊張病型、未分化型及び残存型統合失調症から選択される統合失調症のサブタイプを処置する際に使用するための化合物であり得る。
【0134】
統合失調症に罹患しているヒトにおける前記化合物の認知効果の評価は、知られている方法を使用して、例えば、MATRICSコンセンサス認知バッテリー(MCCB)、統合失調症を有する成人で使用するための標準バッテリー(Buchananら A summary of the FDA-NIMH-MATRICS workshop on clinical trial design for neurocognitive drugs for schizophrenia. Schizophr. Bull. 2005;31(1):5~19頁)を使用して、評価することができる。
【0135】
抑うつ障害
背景のセクションに開示のとおり、ケタミンは、うつ病を処置する際に有効であること、及びケタミンの作用は、ケタミンの代謝産物によるAMPA受容体増強に起因し得ることが示されている。したがって、本発明の化合物は、抑うつ障害、特には大うつ病性障害を処置する際に有用であると予測される。
【0136】
大うつ病性障害(MDD)(臨床的うつ病、大うつ病、単極性うつ病、単極性障害又は再発性うつ病としても知られている)は、疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD-10)において、低い自尊心及び通常は楽しめる活動における興味又は楽しみの喪失を伴う、広汎性及び持続性の気分の落ち込みによって特徴づけられる精神障害として定義される。抑うつ障害はまた、例えば、気分障害を含むうつ病のより穏やかな形態を含む。抑うつ障害は、遺伝性抑うつ障害及び/又は環境若しくは生物学的ストレス因子、例えば、急な人生上の出来事に対する反応、医学的状態の徴候又は症状に起因する逆境又はストレスへの小児期曝露、例えば、対象において疼痛から起こるうつ病によって誘導される、抑うつ障害であり得る。抑うつ障害はまた、他の医学的状態、例えば、精神病性障害、認知障害、摂食障害、不安障害又は人格障害と関連する、又はそれに起因し得る。抑うつ障害は、急性抑うつ障害、再発性抑うつ障害又は慢性抑うつ障害であってよい。
【0137】
実施形態では、本発明の化合物は、大うつ病性障害、気分変調障害(持続性抑うつ障害)、非定型うつ病、メランコリー型うつ病、精神病性うつ病、緊張病型うつ病、分娩後うつ病(PPD)、月経前症候群、月経前不快気分障害(PMDD)、季節性情動障害(SAD)、二重うつ病、抑うつ人格障害(DPD)、再発性短期うつ病(RBD)、小抑うつ障害、双極性障害、双極性うつ病、物質/薬物誘導性抑うつ障害(アルコール誘導性及びベンゾジアゼピン誘導性を含む)、統合失調症後うつ病及び別の医学的状態に起因する、又はそれと関連する抑うつ障害(例えば、認知症、代謝障害、多発性硬化症、がん、慢性疼痛、化学療法及び/又は慢性ストレスに起因する、又はそれと関連するうつ病)から選択される抑うつ障害を処置する際に使用するための化合物である。一部の実施形態では、本発明の化合物は、関連不安成分又は不安障害を有する抑うつ障害を処置する際に使用するための化合物である。例えば、本明細書に記載のとおりの関連不安障害(例えば、パニック障害、広場恐怖症、社会恐怖症、特定恐怖症(例えば、動物又は環境恐怖症)を伴うパニック障害、外傷後苦痛障害、急性ストレス障害、強迫性障害(OCD)及びパニック発作から選択される)を伴う本明細書に記載の抑うつ障害の処置。
【0138】
一部の実施形態では、本発明の化合物は、気分障害を処置する際に使用するための化合物である。気分障害は、患者の気分がうつ病(多くの場合に、関連不安を伴う)及び/又は病的爽快へと変化する状態である。気分障害は、急性又は再発性であり得、多くの場合に、ストレスの高いイベント又は状況によって引き起こされる。気分障害の例には、躁病エピソード(例えば、軽躁病、精神病性症状を伴う躁病又は精神病性症状を伴わない躁病);双極性情動障害(例えば、躁うつ又は躁うつ病、精神病又は反応);抑うつエピソード(例えば、軽度、中度又は重度抑うつエピソード);再発性抑うつ障害;持続性気分障害(例えば、気分循環性障害又は気分変調症);又は快感消失が含まれる。
【0139】
様々な症状が、MDD、例えば、持続性不安又は哀感、無力感、絶望、厭世観、無価値、低エネルギー、情動不安、短気、倦怠、愉快な活動又は趣味における無関心、過眠、過食、食欲喪失、不眠症、自殺を考えること、及び自殺企図等の抑うつ障害及び気分障害と関連する。これらの症状の存在、重症度、頻度、及び持続期間は、場合によって変化する。一部の実施形態では、患者は、これらの症状の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つを有し得る。
【0140】
抑うつ障害又は気分障害に対する本発明の化合物の効果は、知られている方法を使用して評価することができる。例えば、うつ病症状評価尺度等の好適な臨床的スコアリング又は評価システムを使用しての、患者の症状の改善。「うつ病症状評価尺度」との言及は、抑うつ障害において症状及び症状重症度を測定するために利用されるいくつかの標準質問表、医療機器、又は症状評価尺度のいずれか1つを指す。そのような評価尺度は多くの場合に、臨床研究において、研究の入口点から終点までの変化に基づき治療成績を定義するために使用される。うつ病症状評価尺度の例には、これに限定されないが、自己記入式簡易抑うつ症状尺度(QIDS-SRi6)、17項目ハミルトンうつ病評価尺度(HRSDn)、30項目抑うつ症状尺度(IDS-C30)、モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)、又はベックうつ病尺度インベントリが含まれる。そのような評価尺度は、患者自己報告を含むか、又は臨床医により評価されていてよい。
【0141】
一般に、治験経過(開始点から終点まで)にわたって、うつ病評価尺度スコアの50%超の低下が多くの場合に、多くの抑うつ症状評価尺度で有利な応答であると判断されるが、より低い低下%が有益であることもあり、本明細書では企図される。一般に、うつ病の臨床研究における「寛解」は、抑うつ症状評価尺度で特定の数値評価スコア以下を達成することを指す(例えば、HRSD17で7以下;又はQIDS-SRieで5以下;又はMADRSで10以下)。
【0142】
一部の実施形態では、本発明の化合物は、抑うつ状態又は気分障害(例えば、本明細書に記載のとおり)を処置する際に使用するための化合物であり、その際、前記化合物は、抑うつ状態又は気分障害に対して急速な効果を与える。例えば、その際、本発明の化合物は、対象への化合物の投与から1、2、3、4、6、8、12、24又は36時間以内に、状態又は障害に対して臨床的に有意な効果を与える。前記化合物の臨床的効果は、好適な抑うつ症状評価尺度を使用して評価することができる。
【0143】
一部の実施形態では、本発明の化合物は、抑うつ状態又は気分障害(例えば、本明細書に記載のような)を処置する際に使用するための化合物であり、その際、前記化合物は、対象に化合物を投与した後に、状態又は障害に対して持続的な効果を与える。例えば、その際、前記化合物は、状態又は障害に、対象への化合物の投与後に1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間又は12週間持続する臨床的に有意な効果を与える。化合物の臨床的効果は、好適な抑うつ症状評価尺度を使用して評価することができる。
【0144】
一部の実施形態では、本発明の化合物は、処置抵抗性抑うつ障害を処置する際に使用するための化合物である。この実施形態では、抑うつ障害は、本明細書に記載の抑うつ障害のいずれであってもよい。
【0145】
難治性うつ病とときに称される処置抵抗性うつ病(TRD)は、抑うつ障害のための標準的な薬理学的処置に抵抗性がある抑うつ障害に罹患している対象において起こる。抑うつ障害のための標準的な薬理学的処置の例には、三環系抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(MAOI)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)、ケタミン、エスケタミン又は他のNMDAモジュレーター、二重及び三重再取り込み阻害薬、抗不安薬、非定型抗うつ薬及び/又は抗精神病処置が含まれる。TRDはまた、抑うつ障害の非薬理学的処置(例えば、心理療法、電気けいれん療法、迷走神経刺激及び/又は経頭蓋磁気刺激法)に対して抵抗性があるか、又は非応答性である抑うつ障害を有する対象において起こり得る。
【0146】
処置抵抗性対象は、2種、3種又は4種の異なる抗うつ薬等の1つ又は複数の標準的な薬理学的又は非薬理学的処置を受けても、うつ病の1つ又は複数の症状(例えば、持続性の不安又は哀感、無力感、絶望、厭世観)の緩和を経験できない対象と特定され得る。処置抵抗性対象はまた、抑うつ障害のための標準的な薬理学的処置の2コース後に抑うつ症状の50%の減少を経験しない対象であり得る。
【0147】
自殺念慮
一部の実施形態では、本発明の化合物は、自殺念慮を処置する際に使用するための化合物である。自殺行動は、全世界で、傷害及び死の主な原因の1つである。自殺念慮、又は希死念慮は多くの場合に、抑うつ障害及び気分障害と関連しているか、又はそれに起因する。したがって、特定の実施形態では、本発明の化合物を、自殺念慮を処置又は予防する際に使用するために提供する。本発明の化合物は、抑うつ障害又は気分障害を有する対象において自殺念慮を処置又は予防する際に使用するための化合物であることがある。抑うつ状態又は気分障害の例は、本明細書に記載のとおりである。
【0148】
本発明の化合物の効果は、好適な臨床的スコアリングシステム、例えば、自殺念慮の重症度を測定するための好適な自殺念慮評価尺度を使用して評価することができる。そのような自殺念慮症状評価尺度には、これに限定されないが、自殺念慮尺度(SSI)、自殺状態評価表(SSF)、又はコロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)が含まれる。
【0149】
不安
実施形態では、本発明の化合物は、不安障害を処置する際に使用するための化合物である。不安は、持続的で厳しいストレスを個体が感受することで消えない心配又は恐怖の感覚である。不安は典型的には、痙縮、震え、筋肉緊張、頭痛、発汗(例えば、寝汗)、ドライマウス、又は嚥下困難を含む様々な身体的症状を随伴する。一部のヒトはまた、不安なときに、眩暈、早い又は不規則な心拍数、息切れ、呼吸速度の上昇、倦怠、悪心、下痢、又は排尿の頻繁な必要性を報告する。倦怠、イライラした気分、睡眠困難、集中力低下、性的問題、又は悪夢も一般的である。一部のヒトは、ストレスに対してより感受性が高く、したがって、不安障害を発症する可能性が高い。不安発作に圧倒される傾向は、遺伝的素因に、又はある種のストレスに対する以前(例えば、小児期)の曝露により得る。不安はまた、特に慢性疼痛に罹患している患者において、医学的状態、例えば、疼痛によって誘導され得るか、又はそれと関連し得る。
【0150】
不安障害の例には、分離不安障害、選択性緘黙、特定恐怖症、社会不安障害(社会恐怖症)、パニック障害、パニック発作、広場恐怖症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、全般性不安障害、物質/薬物誘導性不安障害、別の医学的障害(例えば、うつ病)による不安障害、他の特定される不安障害、又は詳細不明の不安障害が含まれる。上述のとおり、不安障害は、抑うつ障害と関連し得るか、又はそれに起因し得る。
【0151】
不安障害を処置する際の本発明の化合物の効果は、好適な不安症状評価尺度を使用して評価することができる。そのような尺度は、周知されており、それには例えば、不安における症状及び症状重症度を測定するために利用される標準質問表、医療機器、又は症状評価尺度が含まれる。不安症状評価尺度の例には、これに限定されないが、状態・特性不安尺度(STAI)、ハミルトン不安評価尺度(HAM-A)、ベック不安質問票(BAI)、及び病院不安及びうつ尺度-不安(HADS-A)が含まれる。そのような評価尺度は、患者自己報告又は臨床医の評価を伴い得る。一般に、治験経過(開始点から終点まで)にわたって、不安評価尺度スコアの50%以上の低下が典型的には、有利な応答であると判断されるが、より低い低下が有益であることもあり、企図される。
【0152】
抑うつ障害、気分障害及び不安障害を処置する際の本発明の化合物の効果は、好適な前臨床モデルを使用して評価することもできる。例えば、げっ歯類における強制水泳試験;新規性抑制給餌モデル、学習性無力感モデル又は慢性軽度ストレス及び社会的相互作用モデル。そのようなモデルは周知されており、例えば、Wangら、The Recent Progress in animal models of depression Prog. Neuro-Psychopharm. Biol Psych. 2017年、vol. 77、99~109頁; Duman, Vit. Horm. 2010年、vol. 82、1~21頁又はWO2017/165877に記載されている。
【0153】
呼吸抑制
AMPA受容体増強薬は、前臨床モデルにおいて呼吸抑制を処置する際に有用であることが見出されている(Daiら; A brain-targeted ampakine compound protects against opioid-induced respiratory depression. Eur. J. Pharmacol、2017年、809:122~9頁)。したがって、別の実施形態では、本発明の化合物を、対象において呼吸抑制を処置又は予防する際に使用するために提供する。例えば、本発明の化合物は、呼吸抑制を処置する際に使用することができ、その際、呼吸抑制は、対象に対するアルコール、オピエート、オピオイド(例えば、フェンタニール)、又はバルビツレートの作用と関連する。別の実施形態では、本発明の化合物は、中枢性睡眠無呼吸、卒中誘導性中枢性睡眠無呼吸、閉塞性睡眠無呼吸、パーキンソン病から生じる睡眠無呼吸、先天性低換気症候群、乳児突然死症候群、レット症候群、チェーンストークス呼吸、オンディーヌの呪い、脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、プラダーウイリー症候群、脊髄損傷、外傷性脳損傷又は溺水と関連する状態と関連する呼吸抑制を処置又は予防する際に使用するための化合物である。
【0154】
対象に本発明の化合物の有効量を投与することによって、それを必要とする対象において上述の状態のいずれかを処置する方法も提供する。
【0155】
上述の状態のいずれかのための医薬を製造するための本発明の化合物の使用も提供する。
【0156】
状態の治療で使用するための本発明の化合物の有効量は、対象、特にはヒトにおいて、状態の症状を症候的に軽減させる、又は状態の進行を減速させるために十分な量である。
【0157】
本明細書における「対象」又は「患者」との言及は、例えば、温血哺乳類、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス又はラットを指す。好ましくは、対象は、ヒトである。
【0158】
本発明の化合物の治療上又は予防上の目的での用量のサイズは通常、状態の性質及び重症度、動物又は患者の年齢及び性別並びに投与経路によって、医薬品の周知されている原理に従って変動する。
【0159】
治療上又は予防上の目的での本発明の化合物の使用では、これを一般に、範囲内の1日用量、例えば、0.001mg/体重kg~20mg/体重kg、0.005mg/体重kg~15mg/体重kg又は0.01mg/体重kg~10mg/体重kgから選択される1日用量を与え、必要であれば分割した用量で施与するように投与する。一般に、非経口経路を用いる場合には、より低い用量が投与されることとなる。したがって、例えば、静脈内又は腹腔内投与では、範囲内の用量、例えば、0.001mg/体重kg~1mg/体重kgを一般に使用する。経口投与される1日用量は、例えば、0.1mg~1000mg、0.5mg~1000mg、1mg~500mg又は1mg~250mgから選択される全1日用量であってよい。典型的には、単位剤形は、本発明の化合物約0.5mg~1000mg、例えば、0.5mg~500mgを含有することとなる。
【0160】
併用
本発明の化合物は、単独で投与することができるか、又は対象に、別の治療薬と一緒に同時投与することができる。本発明の化合物を、疾患を処置する際に有用であることが分かっている1種又は複数の他の活性薬物(例えば、CNS状態等の本明細書に記載の疾患又は状態の1つを処置する際に有用である薬物)と同時投与して用いることができる。
【0161】
「同時投与」とは、本発明の化合物を1種又は複数の追加の治療薬の投与と同時に、その前に、又はその後に投与することを意味する。同時投与は、前記化合物及び追加の治療薬の同期又は連続投与を含むことが意図されている。したがって、本発明の化合物を、所望の場合には、他の治療薬と併用することができる。同期投与では、本発明の化合物及び治療薬は、単一の医薬組成物を構成していてもよい。別法では、本発明の化合物及び追加の治療薬は、2つの別々の医薬組成物中に含まれていてもよく、それらを対象に同期で、又は連続して投与することができる。本発明の化合物及び1種又は複数の追加の治療薬を、同じ投与経路を使用して、又は異なる投与経路によって、対象に投与してもよい。例えば、本発明の化合物及び追加の治療薬を、単一の医薬組成物として、又は2つの別々の組成物として経口投与してもよい。別法では、本発明の化合物を対象に経口投与してもよいし、治療薬を、異なる投与経路によって、例えば、非経口投与してもよい。対象への投与は、実質的に同期で、又は連続的に行ってもよい。
【0162】
同時投与は、一方の活性薬剤を、第2の活性薬剤から0.5、1、2、4、6、8、10、12、16、20、24、48時間又は1週間以内に投与することを含む。同時投与は、2つの活性薬剤を同期で、ほぼ同期で(例えば、相互に約1、5、10、15、20、又は30分以内)、又は任意の順序で連続で投与することを含む。
【0163】
追加の治療薬
追加の治療薬は、本明細書に記載の状態のいずれかを処置又は予防する際に使用するために好適な任意の治療薬であってよい。例えば、本発明の化合物が、神経性、精神医学的状態、抑うつ障害又は気分障害を処置する際に使用するための化合物である場合、本発明の化合物を、抗うつ薬、抗精神病薬、アルツハイマー病薬及び抗不安薬から選択される1種又は複数の追加の治療薬と共に同時投与することができる。
【0164】
したがって、本発明の化合物を、次から選択される1種又は複数の追加の治療薬と共に同時投与することができる:
典型的な抗精神病薬、例えば、クロルプロマジン、チオリダジン、メソリダジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、トリフルオペラジン、チオチキシン、ハロペリドール、モリンドン又はロキサピン;
非定型抗精神病薬、例えば、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、アリピプラゾール、ジプラシドン、アミスルプリド、ジプラシドン、パリペリドン又はビフェプルノックス;
抗コリン作動薬、例えば、ベンズトロピン、ビペリデン、プロシクリジン又はトリヘキシフェニジル;
ニコチンアセチルコリンアゴニスト、例えば、イスプロニクリン、バレニクリン及びMEM3454;
コリンエステラーゼ阻害薬、例えば、ドネペジル及びガランタミン
抗ヒスタミン薬、例えば、ジフェンヒドラミン;
ドーパミン作動薬、例えば、アマンタジン;
セロトニン再取り込み阻害薬、例えば、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン又はベンラファキシン;
二重セロトニン/ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、例えば、ベンラファキシン、デスベンラファキシン、デュロキセチン、ミルナシプラン又はレボミルナシプラン;
三重再取り込み阻害薬(セロトニン、ノルエピネフリン、ドーパミン再取り込み阻害薬、SNDRI))、例えば、マジンドール、ネファゾドン又はシブトラミン;ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)再取り込み阻害薬、例えば、レボキセチン;
NK-1受容体アンタゴニスト、例えば、アプレピタント又はマロピタント、
コルチコトロピン放出因子(CRF)アンタゴニスト、
α-アドレナリン受容体アンタゴニスト;
三環系抗うつ薬、例えば、アミトリプチリン、クロミプラミン、イミプラミン、マプロチリン、ノルトリプチリン又はトリミプラミン、ドキセピン、トリミプラミン、ドチエピン、ブトリプチリン、イプリンドール、ロフェプラミン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、アモキサピン又はデシプラミン;
モノアミンオキシダーゼ阻害薬、例えば、イソカルボキサジド、モクロベミド、フェネルジン、セレギリン、又はトラニルシプロミン;
非定型抗うつ薬、例えば、ブプロピオン、リチウム、ネファゾドン、トラゾドン又はビロキサジン;
他の抗うつ薬、例えば、ブプロピオン、ミアンセリン、ミルタザピン又はトラゾドン;
抗不安薬、例えば、ベンゾジアゼピン(例えば、アルプラゾラム又はロラゼパム等)、バルビツレート(例えば、セコバルビタール、メホバルビタール、ペントバルビタール、ブタバルビタール、フェノバルビタール、又はアモバルビタール);
向知性薬、例えば、コリンエステラーゼ阻害薬(タクリン、ドネペジル、リバスチグミン又はガランタミン等;
刺激薬、例えば、メチルフェニデート、アンフェタミン製剤又はペモリン;
気分安定薬、例えば、リチウム、ナトリウムバルプロエート、バルプロ酸、ジバルプロエクス、カルバマゼピン、ラモトリジン、ガバペンチン、トピラマート又はチアガビン;
NMDA受容体アンタゴニスト、例えば、メマンチン、ケタミン及びエスケタミン;
ベンゾジアゼピン、例えば、アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼプ酸塩、ジアゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム又はプラゼパム;並びに
5-HT1A受容体アゴニスト又はアンタゴニスト、例えば、ブスピロン、フレシノキサン、ゲピロン及びイプサピロン。
【0165】
本発明の別の態様では、AMPA受容体によってモジュレートされる状態の同席処置において使用するための本発明の化合物及び別の治療薬を提供する。
【0166】
本発明の化合物と別の治療薬との同時投与は、他の治療薬と関連するマイナスの副作用を予防し又は減少させる際に有利であり得る。例えば、ある種の治療薬は、対象において認知機能に影響を及ぼし得る。したがって、本発明の更なる態様は、本発明の化合物を、対象への別の治療薬の投与から生じる認知機能障害を処置する際に使用するために提供する。
【0167】
これら最後の2つの実施形態では、治療薬は、本明細書に記載の本発明の化合物以外の治療薬のいずれか、例えば、抗精神病薬であってよい。
【0168】
特定の実施形態では、統合失調症を同席処置する際に使用するための本発明の化合物及び別の治療薬を提供し、その際、他の治療薬は、定型抗精神病薬(例えば、クロルプロマジン、チオリダジン、メソリダジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、トリフルオペラジン、チオチキシン、ハロペリドール、モリンドン又はロキサピン)又は非定型抗精神病薬(例えば、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、アリピプラゾール、ジプラシドン、アミスルプリド、ジプラシドン、パリペリドン、ビフェプルノックス又はタルネタント)である。この実施形態では、同席処置は、統合失調症と関連する認知障害の処置を提供する。
【0169】
別の実施形態では、抑うつ状態(例えば、大うつ病性障害)を同席処置する際に使用するための本発明の化合物及び抗うつ薬を提供する。抗うつ薬は、本発明のAMPA受容体モジュレーター以外の任意の抗うつ薬であってよい。例えば、本発明の化合物は、抑うつ障害を同席処置する際に抗うつ薬と共に使用することができ、その際、抗うつ薬は、三環系抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、NMDAモジュレーター、二重又は三重再取り込み阻害薬、抗不安薬及び非定型抗うつ薬から選択される。
【0170】
抑うつ状態(例えば、大うつ病性障害)を同席処置する際に使用するための本発明の化合物及び抑うつ状態の非薬理学的処置も企図する。抑うつ状態の非薬理学的処置は、例えば、心理療法、電気けいれん療法、迷走神経刺激及び/又は経頭蓋磁気刺激法であってよい。
【0171】
本明細書の説明及び特許請求の範囲を通じて、「を含む」及び「を含有する」という語並びにそれらの変形は、「を含むが、これに限定されない」を意味し、それらは、他の部分、添加剤、成分、整数又は工程を排除することを意図したものではない(排除しない)。本明細書の説明及び特許請求の範囲を通じて、単数形は、文脈が別段に要求しない限り、複数形を包含する。詳細には、不定冠詞が使用されている場合、本明細書は、文脈が別段に要求しない限り、複数、更には単数を企図しているものと理解されたい。
【0172】
本発明の特定の態様、実施形態又は実施例と併せて記載されている特徴、整数、特徴、化合物、化学部分又は基は、相互に非適合性でない限り、本明細書に記載の任意の他の態様、実施形態又は例に適用可能であることを理解されたい。本明細書に開示の特徴の全て(任意の添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)、及び/又はそうして開示されている任意の方法又はプロセスの工程の全てを、任意の組み合わせで組み合わせることができるが、ただし、そのような特徴及び/又は工程の少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせは除く。本発明は、いずれの上述の実施形態の詳細にも限定されない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示の特徴の任意の新規の1つ、若しくは任意の新規の組み合わせに、又はそうして開示されている任意の方法又はプロセスの工程の任意の新規の1つ、若しくは任意の新規の組み合わせに及ぶ。
【0173】
読者の注意は、本出願と関連して本明細書と同時に、又は先行して出願されていて、かつ本明細書と共に一般閲覧に対してオープンである全ての書類及び文献に向けられ、そのような書類及び文献全ての内容が、参照によって本明細書に援用される。
【0174】
合成
当業者は、当技術分野で知られている方法の適応が本発明の化合物の製造において適用され得ることが分かるであろう。
【0175】
例えば、当業者は、「Comprehensive Organic Transformations - A Guide to Functional Group Transformations」、RC Larock、Wiley-VCH (1999年以降の版)、「March's Advanced Organic Chemistry - Reactions, Mechanisms and Structure」、MB Smith、J. March、Wiley、(第5版以降)、「Advanced Organic Chemistry, Part B, Reactions and Synthesis」、FA Carey、RJ Sundberg、Kluwer Academic/Plenum Publications、(2001年以降の版)、「Organic Synthesis - The Disconnection Approach」、S Warren (Wiley)、(1982年以降の版)、「Designing Organic Syntheses」S Warren (Wiley) (1983年以降の版)、「Guidebook To Organic Synthesis」RK Mackie and DM Smith (Longman) (1982年以降の版)等の標準的なテキスト及びそれらの参照文献が、ガイドとして直ちにわかるであろう。
【0176】
熟練した科学者は、所与の標的化合物を合成するための反応の最も効率的な順序に関する判断及び技能を行使して、必要に応じて保護基を用いるであろう。これは特に、特定の基質に存在する他の官能基の性質等の因子に依存する。明らかに、関与する化学作用の種類は、前記合成工程で使用される試薬の選択、保護基の必要性及び用いられる種類、並びに保護/脱保護工程を行うための順序に影響を及ぼす。これらの及び他の反応パラメーターは、標準的なテキスト及び本明細書に提供する実施例を参照することによって、当業者には明らかであろう。
【0177】
不安定な官能基は、本発明の化合物の合成中に保護及び脱保護される必要があることがある。これは、例えば、「Protective Groups in Organic Synthesis」TW Greene and PGM Wuts、John Wiley & Sons Inc (1999年)、及びその参照文献に記載されているように、従来の方法によって達成することができる。
【0178】
式(I)の化合物は、ウルマン条件下で式(IV)の化合物を式(V)の化合物とカップリングさせることによって調製することができる:
【0179】
【0180】
[式中、Lgは、好適な脱離基、例えば、ヨードである]。この反応を適切には、塩基、例えば、炭酸カリウム又は炭酸セシウム、ヨウ化銅(I)及びN,N-ジメチルグリシンの存在下で、好適な溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド中で行う。反応を適切には、高温、例えば、約100℃~180℃、適切には約130℃で行う。
【0181】
本発明の化合物は、次の反応スキームに従って調製することができる:
【0182】
【0183】
スキーム1:試薬及び条件:(i)a)NaH(鉱油中60%分散液)、DMF、0℃、30分;b)1-(ブロモメチル)-4-ヨード-ベンゼン、0℃から室温、18時間、91%。
【0184】
【0185】
スキーム2:試薬及び条件:(i)a)MgCl2、ピリジン、トリフルオロ酢酸無水物、DCM、0℃から室温、18時間;b)ヒドラジン一水和物、EtOH、78℃、18時間、(R2=Me、22%;R2=Et、15%;R2=IPR、42%;R2=CPR、3%);(ii)LiAlH4、THF、0℃から室温、24時間、(R2=Me、99%;R2=Et、95%;R2=IPR、94%;R2=CPR、73%);(iii)1-[(4-ヨードフェニル)メチル]ピロリジン-2-オン(2)、N,N-ジメチルグリシン、酸化銅(I)、炭酸セシウム、DMSO、130℃、18時間、(R2=Me、77%;R2=Et、70%;R2=IPR、66%;R2=CPR、63%)。
【0186】
【0187】
スキーム3:試薬及び条件:(i)2,2,2-トリフルオロエチルアミンヒドロクロリド、亜硝酸ナトリウム、DCM:H2O(2:1)、0℃から室温、1週間、70%;(ii)臭素、Et2O、0℃から室温、20時間、93%;(iii)LiAlH4、THF、0℃から室温、24時間、88%;(iv)1-[(4-ヨードフェニル)メチル]ピロリジン-2-オン(2)、N,N-ジメチルグリシン、酸化銅(I)、炭酸セシウム、DMSO、130℃、18時間、48%;(v)NaH(鉱油中60%分散液)、ヨードメタン、THF、0℃から室温、72時間、93%。
【0188】
【0189】
スキーム4:試薬及び条件:(ii)酢酸アンモニウム、(ジアセトキシヨード)ベンゼン、TEMPO、MeCN:H2O(9:1)、室温、18時間、22%。
【0190】
【0191】
スキーム5:試薬及び条件:(i)MNO2、THF、室温、40時間、99%(ii)MeMgBr(Et2O中3M)、THF、0℃から室温、24時間、73%(iii)1-[(4-ヨードフェニル)メチル]ピロリジン-2-オン(2)、N,N-ジメチルグリシン、酸化銅(I)、炭酸セシウム、DMSO、130℃、18時間、64%。
【0192】
本明細書に開示の中間体のうちの数種は、新規であり、本発明の更なる態様を形成する。特定の実施形態では、新規の中間体は、式(IV)の化合物である:
【0193】
【0194】
[式中、R1は、本明細書で定義するとおりである]。適切には、R1は、C1~4アルキルである。式(IV)の特定の化合物は、式(IVa)の化合物である:
【0195】
【実施例】
【0196】
本明細書を通じて、これらの略語は、次の意味を有する:
Aq.=水性 DCM=ジクロロメタン
DMF=N,N-ジメチルホルムアミド DMSO=ジメチルスルホキシド
Et=エチル EtOAc=酢酸エチル
H=時間 HBSS=ハンクス平衡塩溶液
HEPES=4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸
Me=メチル min=分
mol=モル CPr=シクロプロピル
iPr=イソプロピル Rt=保持時間
RT=室温 Sat.=飽和
TEMPO=(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル
THF=テトラヒドロフラン T3P=プロピルホスホン酸無水物
【0197】
溶媒、試薬及び出発物質を市場供給業者から購入し、別段に記載されていない限り、受け取ったまま使用した。反応は全て、別段に述べられていない限り、室温で行った。
【0198】
LCMSデータを、Waters 2695 HPLCで、Waters 2487 UV検出器及びThermo LCQ ESI-MSを使用して記録した。サンプルを、Phenomenex Luna 3μ C18 50mm×4.6mmカラムを介して、0.1%ギ酸によって酸性化させた水及びアセトニトリルを使用して1.5mL/分で溶離し、254nmで検出した。
【0199】
用いた勾配は以下であった:
【0200】
【0201】
NMRも、最終化合物を特徴づけるために使用した。NMRスペクトルを、500MHzで、Varian VNMRS 500MHz分光計(30℃で)で、残留同位体溶媒(CHCl3、δH=7.27ppm、DMSO δH=2.50ppm、MeOH δH=3.31ppm)を内部基準として使用して記録した。化学シフトは百万分率(ppm)で示されている。結合定数(J)は、ヘルツで記録されている。
【0202】
一般手順A:DCM中の塩化マグネシウムの懸濁液(1mol当量)に、適切なケトエステル(1mol当量)を添加した。15分後に、反応混合物を0℃に冷却し、ピリジン(2mol当量)を5~10分かけてゆっくり添加した。0℃での更なる30分後に、トリフルオロ酢酸無水物(1.1mol当量)を滴下添加し、反応温度を室温に加温した。18時間後に、反応を、2M HCl水溶液(10mL)を慎重に添加することによってクエンチした。水層をDCM(3×20mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(30mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、真空中で濃縮して、粗製の黄色の液体を得た。粗製の液体をEtOH中で希釈し、ヒドラジン一水和物(1mol当量)を溶液に添加した。反応混合物を78℃で18時間撹拌した。完了後に、反応混合物を減圧下で濃縮した。粗製の生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0203】
一般手順B:0℃に冷却したTHF中の適切なピラゾールエステル(1mol当量)に、水素化アルミニウムリチウムペレット(1.5mol当量)を添加した。反応物を0℃で30分間撹拌し、次いで、室温に加温し、この温度で終夜撹拌した。完了したら、反応混合物を飽和ロッシェル塩水溶液(15mL)を慎重に添加することによってクエンチし、室温でもう1時間撹拌した。層を分離し、水層をEtOAc(3×20mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(30mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、減圧下で濃縮した。粗製の生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0204】
一般手順C:DMSO中の1-[(4-ヨードフェニル)メチル]ピロリジン-2-オン(2)(1mol当量)、N,N-ジメチルグリシン(1mol当量)、炭酸セシウム(2mol当量)及び酸化銅(I)(0.2mol当量)に、適切なピラゾールを添加した。得られた反応混合物を窒素で5分間脱気し、次いで、130℃で18時間加熱した。完了したら、反応混合物をEtOAc(15mL)で希釈し、ブライン(2×15mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、真空中で濃縮した。粗製の生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0205】
1-[(4-ヨードフェニル)メチル]ピロリジン-2-オン、(2)
【0206】
【0207】
標題化合物を文献手順(Wardら Integration of Lead Optimization with Crystallography for a Membrane-Bound Ion Channel Target: Discovery of a New Class of AMPA Receptor Positive Allosteric Modulators. J. Med. Chem. 2011、54 (1)、78~94頁)に従って合成し、上のスキーム1に図示した;Rf=0.29(ペトロール:EtOAc-1:1); 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 1.91 (p, J = 7.5 Hz, 2H), 2.27 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 3.21 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 4.31 (s, 2H), 7.03 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.69 (d, J = 8.0 Hz, 2H). LCMS: Rt = 0.77分及びES+における生成物、m/z 301.99 [M+H]+.
【0208】
エチル5-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシラート、(7)
【0209】
【0210】
化合物7を、一般手順Aに従って、次の試薬:塩化マグネシウム(732mg、7.7mmol)、アセト酢酸エチル(3)(0.97mL、7.7mmol)、ピリジン(1.24mL、15.4mmol)、トリフルオロ酢酸無水物(1.17mL、8.4mmol)、DCM(10mL)、ヒドラジン一水和物(0.41mL、8.45mmol)及びEtOH(15mL)を使用して合成した。粗製の生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペトロール:EtOAc-1:0~8:2)によって精製して、標題化合物を白色の固体(377mg、22%)として得た;Rf=0.34(ペトロール:EtOAc-8:2); 1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 1.37 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 2.59 (s, 3H), 4.34 (q, J = 7.1 Hz, 2H); LCMS: Rt = 2.70分及びES+における生成物、m/z 223.07 [M+H]+
【0211】
エチル5-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシラート、(8)
【0212】
【0213】
化合物8を、一般手順Aに従って、次の試薬:塩化マグネシウム(647mg、6.8mmol)、エチル3-オキソペンタノアート(4)(1.0mL、6.8mmol)、ピリジン(1.1mL、13.6mmol)、トリフルオロ酢酸無水物(1.04mL、7.5mmol)、DCM(15mL)、ヒドラジン一水和物(0.36mL、7.5mmol)及びEtOH(15mL)を使用して合成した。粗製の生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペトロール:EtOAc-1:0~85:15)によって精製して、標題化合物を白色の固体(243mg、15%)として得た;Rf=0.28(ペトロール:EtOAc-85:15); 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 1.21 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 1.26 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 2.91 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 4.23 (q, J = 7.1 Hz, 2H); LCMS: Rt = 0.59分及びES+における生成物、m/z 237.09 [M+H]+
【0214】
エチル5-イソプロピル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシラート、(9)
【0215】
【0216】
化合物9を、一般手順Aに従って、次の試薬:塩化マグネシウム(590mg、6.2mmol)、エチル4-メチル-3-オキソペンタノアート(5)(1.0mL、6.2mmol)、ピリジン(1.0mL、12.4mmol)、トリフルオロ酢酸無水物(0.95mL、6.8mmol)、DCM(15mL)、ヒドラジン一水和物(0.33mL、6.8mmol)及びEtOH(15mL)を使用して合成した。粗製の生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペトロール:EtOAc-1:0~85:15)によって精製して、標題化合物を白色の固体(652mg、42%)として得た;Rf=0.31(ペトロール:EtOAc-85:15); 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 1.22 - 1.32 (m, 9H), 3.63 (七重線, J = 6.9 Hz, 1H), 4.24 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 13.79 (s, 1H); LCMS: Rt = 2.28分及びES+における生成物、m/z 251.30 [M+H]+
【0217】
エチル5-シクロプロピル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシラート、(10)
【0218】
【0219】
化合物10を、一般手順Aに従って、次の試薬:塩化マグネシウム(1.29g、13.5mmol)、エチル3-シクロプロピル-3-オキソ-プロパノアート(6)(2.0mL、13.5mmol)、ピリジン(2.19mL、27.1mmol)、トリフルオロ酢酸無水物(2.07mL、14.9mmol)、DCM(15mL)、ヒドラジン一水和物(0.72mL、14.9mmol)及びEtOH(15mL)を使用して合成した。粗製の生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペトロール:EtOAc-1:0~8:2)によって精製して、標題化合物を白色の固体(95mg、3%)として得た;Rf=0.35(ペトロール:EtOAc-8:2); 1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 0.86 (q, J = 5.5 Hz, 2H), 1.16 (q, J = 6.3 Hz, 2H), 1.37 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 2.56 (ddd, J = 14.0, 8.6, 5.4 Hz, 1H), 4.35 (q, J = 7.1 Hz, 2H). LCMS: Rt = 3.31分及びES+における生成物、m/z 249.06 [M+H]+
【0220】
[5-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル]メタノール、(11)
【0221】
【0222】
化合物11を、一般手順Bに従って、次の試薬:エチル5-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシラート(7)(580mg、2.61mmol)、水素化アルミニウムリチウム(149mg、3.92mmol)及びTHF(8mL)を使用して合成した。粗製の生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペトロール:EtOAc-1:0~1:1)によって精製して、標題化合物を白色の固体(465mg、99%)として得た;Rf=0.29(ペトロール:EtOAc-1:1;KMnO4); 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 2.26 (s, 3H), 4.35 (d, J = 5.1 Hz, 2H), 4.79 (t, J = 5.1 Hz, 1H), 13.14 (s, 1H); LCMS: Rt = 0.70分及びES+における生成物、m/z 181.12 [M+H]+
【0223】
[5-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル]メタノール、(12)
【0224】
【0225】
化合物12を、一般手順Bに従って、次の試薬:エチル5-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシラート(8)(700mg、2.96mmol)、水素化アルミニウムリチウムペレット(169mg、4.45mmol)及びTHF(15mL)を使用して合成した。粗製の生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペトロール:EtOAc-1:0~1:1)によって精製して、標題化合物を白色の固体(548mg、95%)として得た;Rf=0.35(ペトロール:EtOAc-1:1;リンモリブデン酸); 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 1.19 (t, J = 7.6 Hz, 3H), 2.67 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 4.36 (d, J = 5.1 Hz, 2H), 4.81 (t, J = 5.1 Hz, 1H), 13.18 (s, 1H); LCMS: Rt = 0.60分及びES+における生成物、m/z 195.12 [M+H]+
【0226】
[5-イソプロピル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル]メタノール、(13)
【0227】
【0228】
化合物13を、一般手順Bに従って、次の試薬:エチル5-イソプロピル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシラート(9)(1.3g、5.2mmol)、水素化アルミニウムリチウムペレット(0.30g、7.79mmol)及びTHF(20mL)を使用して合成した。粗製の生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペトロール:EtOAc-1:0~1:1)によって精製して、標題化合物を白色の固体(1.02g、94%)として得た;Rf=0.38(ペトロール:EtOAc-1:1;リンモリブデン酸); 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 1.25 (d, J = 7.1 Hz, 6H), 3.17 (七重線, J = 7.0 Hz, 1H), 4.37 (d, J = 5.0 Hz, 2H), 4.80 (t, J = 5.0 Hz, 1H), 13.17 (s, 1H); LCMS: Rt = 0.88分及びES+における生成物、m/z 209.36 [M+H] +
【0229】
[5-シクロプロピル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル]メタノール、(14)
【0230】
【0231】
化合物14を、一般手順Bに従って、次の試薬:エチル5-シクロプロピル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシラート(10)(90mg、0.36mmol)、水素化アルミニウムリチウムペレット(21mg、0.54mmol)及びTHF(2mL)を使用して合成した。粗製の生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペトロール:EtOAc-1:0~6:4)によって精製して、標題生成物を白色の固体(55mg、73%)として得た;Rf=0.28(ペトロール:EtOAc-6:4;KMnO4); 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 0.80 - 0.85 (m, 2H), 0.92 - 0.98 (m, 2H), 1.98 (tt, J = 8.6, 5.3 Hz, 1H), 4.42 (d, J = 5.0 Hz, 2H), 4.83 (t, J = 4.9 Hz, 1H), 12.97 (s, 1H); LCMS: Rt = 0.85分及びES+における生成物、m/z 207.06 [M+H]+
【0232】
メチル4-メチル-5-(トリフルオロメチル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-3-カルボキシラート、(20)
【0233】
【0234】
DCM(10mL)中のクロトン酸メチル(19)(1.0mL、9.43mmol)に、水(5mL)中の亜硝酸ナトリウム(0.98g、14.1mmol)の溶液を室温で添加した。得られた不均一溶液を0℃に冷却し、2,2,2-トリフルオロエチルアミンヒドロクロリド(1.92g、14.1mmol)を少量ずつ添加した。添加が完了したら、反応混合物を0℃で1時間激しく撹拌し、次いで、室温に加温した。1週間後に、反応物を水(10mL)で希釈し、水層をDCM(3×20mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(30mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、真空中で濃縮して、粗製の油を得た。粗製の生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペトロール:EtOAc-1:0~8:2)によって精製して、標題化合物を透明な油状物(1.41g、70%)として得た;Rf=0.31(ペトロール:EtOAc-8:2); 1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 1.40 (d, J = 7.1 Hz, 3H), 3.51 (p, J = 7.0 Hz, 1H), 3.85 (s, 3H), 3.95 (p, J = 7.1 Hz, 1H), 6.38 (s, 1H); LCMS: Rt = 1.60分における生成物、所望の生成物のm/zは検出されなかった。
【0235】
メチル4-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-カルボキシラート、(21)
【0236】
【0237】
0℃に冷却したジエチルエーテル(100mL)中のメチル4-メチル-5-(トリフルオロメチル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-3-カルボキシラート(20)(8.2g、39.0mmol)に、臭素(2.4mL、46.8mmol)を滴下添加した。得られた混合物を室温に加温し、この温度で20時間撹拌した。完了したら、反応混合物を真空中で濃縮し、オレンジ色の残渣をEtOAc(40mL)に溶解した。有機層を飽和NA2S2O3水溶液(30mL)、飽和NaHCO3水溶液(30mL)及びブライン(30mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、減圧下で濃縮して、黄色の油状物を得た。粗製の黄色の油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペトロール:EtOAc-1:0~85:15)によって精製して、標題化合物をオフホワイト色の固体(7.65g、93%)として得た;Rf=0.26(ペトロール:EtOAc-85:15); 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 2.31 (s, 3H), 3.87 (s, 3H); LCMS: Rt = 0.48分及びES+における生成物、m/z 208.93 [M+H]+
【0238】
[4-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メタノール、(22)
【0239】
【0240】
化合物22を、一般手順Bに従って、次の試薬:メチル4-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-カルボキシラート(21)(400mg、1.92mmol)、水素化アルミニウムリチウムペレット(109mg、2.88mmol)及びTHF(5mL)を使用して合成した。粗製の生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペトロール:EtOAc-1:0~1:1)によって精製して、標題化合物を白色の固体(305mg、88%)として得た;Rf=0.34(ペトロール:EtOAc-1:1); 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 2.05 (s, 3H), 4.46 (d, J = 4.0 Hz, 2H), 5.29 (s, 1H), 13.28 (s, 1H); LCMS: Rt = 1.20分及びES+における生成物、m/z 180.91 [M+H]+
【0241】
4-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-カルボアルデヒド、(27)
【0242】
【0243】
THF(80mL)中の[4-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メタノール(22)(800mg、4.44mmol)に、酸化マンガン(IV)(5.79g、66.6mmol)を室温で添加した。得られた不均一反応混合物をこの温度で40時間撹拌した。完了したら、反応混合物を、セライトのパッドを通して濾過し、真空中で濃縮して、黄色の油状物を得た。粗製の生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペトロール:EtOAc-1:0~8:2)によって精製して、標題化合物を白色の固体(755mg、95%)として得た;Rf=0.33(ペトロール:EtOAc-85:15); 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 2.38 (s, 3H), 9.94 (s, 1H); LCMS: Rt = 1.17分における生成物、及び所望の生成物のm/zは検出されなかった。
【0244】
1-[4-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル]エタノール、(29)
【0245】
【0246】
0℃に冷却したTHF(14mL)中の4-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-カルボアルデヒド(27)(750mg、4.21mmol)に、臭化メチルマグネシウム溶液(ジエチルエーテル中3M)(5.61mL、16.8mmol)を滴下添加した。15分後に、溶液を室温に加温し、更に72時間撹拌した(便宜的に)。完了したら、反応混合物を、飽和塩化アンモニウム水溶液(15mL)の添加によってクエンチした。層を分離し、水層をEtOAc(3×20mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(30mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、減圧下で濃縮して、粗製の白色の固体を得た。粗製の生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペトロール:EtOAc-1:0~6:4)によって精製して、標題化合物を白色の固体(600mg、73%)として得た;Rf=0.32(ペトロール:EtOAc-6:4;KMnO4);1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 1.38 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 2.06 (s, 3H), 4.85 (qd, J = 6.6, 4.0 Hz, 1H), 5.42 (d, J = 3.9 Hz, 1H), 13.19 (s, 1H).
【0247】
(実施例1)
1-[[4-[4-(ヒドロキシメチル)-5-メチル-3-(トリフルオロメチル)ピラゾール-1-イル]フェニル]メチル]ピロリジン-2-オン、(15)
【0248】
【0249】
化合物15を、一般手順Cに従って、次の試薬:[5-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル]メタノール(11)(48mg、0.27mmol)、1-[(4-ヨードフェニル)メチル]ピロリジン-2-オン(2)(80mg、0.27mmol)、N,N-ジメチルグリシン(25mg、0.24mmol)、炭酸セシウム(157mg、0.48mmol)、酸化銅(I)(7mg、0.05mmol)及びDMSO(0.5mL)を使用して合成した。粗製の生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH-1:0~97:3)によって精製して、標題生成物を白色の固体(72mg、77%)として得た;Rf=0.33(EtOAc-100%);1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 1.92 - 1.98 (m, 2H), 2.28 - 2.34 (m, 5H), 3.29 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 4.44 (d, J = 5.3 Hz, 2H), 4.46 (s, 2H), 5.01 (t, J = 5.1 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.51 (d, J = 8.2 Hz, 2H); LCMS: Rt = 1.41分及びES+における生成物、m/z 354.08 [M+H]+
【0250】
(実施例2)
1-[[4-[5-エチル-4-(ヒドロキシメチル)-3-(トリフルオロメチル)ピラゾール-1-イル]フェニル]メチル]ピロリジン-2-オン、(16)
【0251】
【0252】
化合物16を、一般手順Cに従って、次の試薬:1-[(4-ヨードフェニル)メチル]ピロリジン-2-オン(80mg、0.27mmol)(2)、[5-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル]メタノール(12)(52mg、0.27mmol)、酸化銅(I)(8mg、0.05mmol)、N,N-ジメチルグリシン(27mg、0.27mmol)、炭酸セシウム(173mg、0.53mmol)及びDMSO(0.5mL)を使用して合成した。粗製の生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペトロール:EtOAc-1:1~0:1)によって精製して、標題化合物を白色の固体(68mg、70%)として得た;Rf=0.31(EtOAc-100%);1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 7.47 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 5.03 (t, J = 5.0 Hz, 1H), 4.50 - 4.42 (m, 4H), 3.29 - 3.26 (m, 2H), 2.70 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 2.31 (t, J = 8.1 Hz, 2H), 2.01 - 1.91 (m, 2H), 1.00 (t, J = 7.5 Hz, 3H); LCMS: Rt = 0.47分及びES+における生成物、m/z 368.09 [M+H]+
【0253】
(実施例3)
1-[[4-[4-(ヒドロキシメチル)-5-イソプロピル-3-(トリフルオロメチル)ピラゾール-1-イル]フェニル]メチル]ピロリジン-2-オン、(17)
【0254】
【0255】
化合物17を、一般手順Cに従って、次の試薬:1-[(4-ヨードフェニル)メチル]ピロリジン-2-オン(2)(80mg、0.27mmol)、[5-イソプロピル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル]メタノール(13)(55mg、0.27mmol)、酸化銅(I)(8mg、0.05mmol)、N,N-ジメチルグリシン(27mg、0.27mmol)、炭酸セシウム(173mg、0.53mmol)及びDMSO(0.5mL)を使用して合成した。粗製の生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペトロール:EtOAc-1:1~0:1)によって精製して、標題化合物を透明な油状物(67mg、66%)として得た;Rf=0.35(EtOAc-100%);1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 1.24 (d, J = 7.1 Hz, 6H), 1.92 - 2.01 (m, 2H), 2.31 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 2.99 (dt, J = 14.3, 7.1 Hz, 1H), 3.27 - 3.30 (m, 2H), 4.47 (s, 2H), 4.52 (d, J = 4.5 Hz, 2H), 5.03 (t, J = 4.6 Hz, 1H), 7.38 - 7.45 (m, 4H); LCMS: Rt = 0.49分及びES+における生成物、m/z 382.14 [M+H]+
【0256】
(実施例4)
1-[[4-[5-シクロプロピル-4-(ヒドロキシメチル)-3-(トリフルオロメチル)ピラゾール-1-イル]フェニル]メチル]ピロリジン-2-オン、(18)
【0257】
【0258】
化合物18を、一般手順Cに従って、次の試薬:[5-シクロプロピル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル]メタノール(14)(55mg、0.27mmol)、1-[(4-ヨードフェニル)メチル]ピロリジン-2-オン(2)(80.mg、0.27mmol)、N,N-ジメチルグリシン(25mg、0.24mmol)、炭酸セシウム(157mg、0.48mmol)、酸化銅(I)(7mg、0.05mmol)及びDMSO(0.5mL)を使用して合成した。粗製の生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペトロール:EtOAc-1:1~0:1)によって精製して、標題化合物を透明な油状物(63mg、63%)として得た;Rf=0.33(EtOAc-100%)1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 0.55 - 0.60 (m, 2H), 0.79 - 0.84 (m, 2H), 1.91 - 1.99 (m, 3H), 2.32 (t, J = 8.1 Hz, 2H), 3.28 (t, J = 7.1 Hz, 2H), 4.46 (s, 2H), 4.49 (d, J = 4.9 Hz, 2H), 4.96 (t, J = 4.8 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.58 (d, J = 8.4 Hz, 2H); LCMS: Rt = 2.67分及びES+における生成物、m/z 380.11 [M+H]+
【0259】
(実施例5)
1-[[4-[5-(メトキシメチル)-4-メチル-3-(トリフルオロメチル)ピラゾール-1-イル]フェニル]メチル]ピロリジン-2-オン、(24)
【0260】
【0261】
THF(1mL)中の1-[[4-[5-(ヒドロキシメチル)-4-メチル-3-(トリフルオロメチル)ピラゾール-1-イル]フェニル]メチル]ピロリジン-2-オン(23)(70mg、0.20mmol)に、水素化ナトリウム(鉱油中60%分散液)(12mg、0.30mmol)を室温で添加した。15分後に、ヨードメタン(62μL、0.99mmol)を滴下添加し、得られた反応混合物を室温で72時間撹拌した(便宜的に)。完了したら、反応混合物を、ブライン(15mL)の添加によってクエンチした。層を分離し、水層をEtOAc(3×20mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(30mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、減圧下で濃縮して、粗製の黄色の固体を得た。粗製の生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペトロール:EtOAc-1:1~5:95)によって精製して、標題化合物をオフホワイト色の固体(68mg、93%)として得た;Rf=0.29(ペトロール:EtOAc-5:95);1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 1.91 - 2.01 (m, 2H), 2.20 (s, 3H), 2.32 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 3.25 (s, 3H), 3.29 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 4.37 (s, 2H), 4.45 (s, 2H), 7.40 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.55 (d, J = 8.2 Hz, 2H); LCMS: Rt = 3.66分及びES+における生成物、m/z 367.91 [M+H]+
【0262】
出発物質、1-[[4-[5-(ヒドロキシメチル)-4-メチル-3-(トリフルオロメチル)ピラゾール-1-イル]フェニル]メチル]ピロリジン-2-オン、(23)
【0263】
【0264】
を、一般手順Cに従って、次の試薬:[4-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メタノール(22)(48mg、0.27mmol)、1-[(4-ヨードフェニル)メチル]ピロリジン-2-オン(2)(80mg、0.27mmol)、N,N-ジメチルグリシン(25mg、0.24mmol)、炭酸セシウム(157mg、0.48mmol)、酸化銅(I)(7mg、0.05mmol)及びDMSO(0.5mL)を使用して調製した。粗製の生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH-1:0~97:3)によって精製して、標題化合物(23)を白色の固体(45mg、48%)として得た;Rf=0.27(EtOAc-100%);1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 1.91 - 1.98 (m, 2H), 2.19 (s, 3H), 2.31 (t, J = 8.1 Hz, 2H), 3.27 - 3.29 (m, 4H), 4.42 (d, J = 5.3 Hz, 2H), 4.45 (s, 2H), 5.49 (t, J = 5.3 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.62 (d, J = 8.4 Hz, 2H); LCMS: Rt = 2.58分及びES+における生成物、m/z 353.91 [M+H]+
【0265】
(実施例6)
4-メチル-2-[4-[(2-オキソピロリジン-1-イル)メチル]フェニル]-5-(トリフルオロメチル)ピラゾール-3-カルボニトリル、(26)
【0266】
【0267】
アセトニトリル(1.8mL)及び水(0.2mL)中の1-[[4-[5-(ヒドロキシメチル)-4-メチル-3-(トリフルオロメチル)ピラゾール-1-イル]フェニル]メチル]ピロリジン-2-オン(23)(110mg、0.31mmol)に、(ジアセトキシヨード)ベンゼン(221mg、0.68mmol)、TEMPO(2mg、0.02mmol)及び酢酸アンモニウム(96mg、1.25mmol)を添加した。反応混合物を室温で18時間撹拌し、その後、減圧下で濃縮した。反応混合物を水(10mL)で希釈し、酢酸エチル(3×10mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をMgSO4上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペトロール:EtOAc-1:0~0:1)によって精製した。所望の画分を減圧下で濃縮して、標題化合物を淡黄色の油状物(25mg、22%)として得た;Rf=0.48(ペトロール:EtOAc-1:4);1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.67 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.43 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 4.53 (s, 2H), 3.30 (t, J = 7.1 Hz, 2H), 2.47 (t, J = 8.1 Hz, 2H), 2.41 (s, 3H), 2.10 - 1.98 (m, 2H); LCMS: Rt = 2.95分及びES+における生成物、m/z 349.04 (M+H)+
【0268】
(実施例7)
1-[[4-[5-(1-ヒドロキシエチル)-4-メチル-3-(トリフルオロメチル)ピラゾール-1-イル]フェニル]メチル]ピロリジン-2-オン、(31)
【0269】
【0270】
化合物31を、一般手順Cに従って、次の試薬:1-[(4-ヨードフェニル)メチル]ピロリジン-2-オン(2)(80mg、0.27mmol)、1-[4-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル]エタノール(29)(52mg、0.27mmol)、酸化銅(I)(8mg、0.05mmol)、N,N-ジメチルグリシン(27mg、0.27mmol)、炭酸セシウム(173mg、0.53mmol)及びDMSO(0.5mL)を使用して合成した。粗製の生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペトロール:EtOAc-1:1~0:1)によって精製して、標題化合物を白色の固体(63mg、64%)として得た;Rf=0.28(EtOAc-100%);1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 1.36 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 1.96 (dt, J = 15.2, 6.5 Hz, 2H), 2.26 (s, 3H), 2.32 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 3.29 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 4.46 (s, 2H), 4.74 (dt, J = 10.0, 5.0 Hz, 1H), 5.51 (d, J = 3.3 Hz, 1H), 7.39 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.47 (d, J = 8.2 Hz, 2H). LCMS: Rt = 3.17分及びES+における生成物、m/z 350.06 [M-H2O]+
【0271】
生物学的データ
AMPAカルシウムイオン流入アッセイ
グルタミン酸受容体媒介性応答を増強する本発明の化合物の能力を、蛍光カルシウム-インジケーター色素を使用して決定した。
【0272】
ヒトGluR2 flip(未編集)AMPA受容体サブユニットを安定発現するHEK293細胞(GlaxosmithKlineから入手)の集密単層を含む96ウェルプレートを調製した。これらの細胞は、機能性ホモ四量体AMPA受容体を形成する。ウェル中の組織培養培地を廃棄し、ウェルをそれぞれ、細胞株のための標準バッファー(145μM NaCl、5mM KCl、1mM MgCl2、2mM CaCl2、20mM N-[2-ヒドロキシエチル]-ピペラジン-N-[2-エタンスルホン酸(HEPES)、5.5mMグルコース、pH7.3)で3回洗浄した。次いで、プレートを60分間、暗所で、2μM Calcium6色素(Molecular Devices)と共にインキュベートした。インキュベーションの後に、各ウェルをバッファー(80μl)で3回洗浄した。
【0273】
本発明の化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に、10mMのストック濃度で溶解した。これらの溶液をDMSOで更に希釈した。別の化合物プレートに各希釈物(4μl)及びバッファー(200μl)を添加した。アゴニスト刺激薬プレート(グルタミン酸)を、グルタミン酸ナトリウムを水に溶解して100mMの濃度を得ることによって調製した。この溶液をバッファーで希釈して500μMの最終濃度を得、別の96ウェルプレートに分注した(200μl/ウェル)。
【0274】
次いで、細胞プレートを、Flexstation 3(Molecular Devices)等の蛍光イメージングプレートリーダーに移した。ベースライン蛍光を10~240秒の期間にわたって取得し、次いで、標準バッファー溶液中で作製された本発明の化合物を含有する各プレートからの40μlを添加した。40μM~4pMの最終濃度範囲が得られるように、体積を選択した。次いで、蛍光を4分間にわたって読み取った。化合物の活性を、最後の添加後のピーク蛍光を測定することによって決定した。活性は、それらの最大応答(すなわち、40uM超)でシクロチアジドによって誘導される蛍光の増加に対して表すこともできる。
【0275】
固有クリアランス(CLi)
化合物のin-vitro固有クリアランスを、ラット及びヒト肝細胞において、次のアッセイを使用して測定した。
【0276】
0.2%DMSO及び4μM試験物を含有するPBS(pH7)95μL中で希釈されたミクロソーム5μL(20mg/ml、Corning BV)を37℃、1000rpmで振盪してインキュベートし、その後、事前加温しておいたPBS中4mM NADPH100μL(最終濃度:0.5mg/mLミクロソーム、2μM試験物、0.1%DMSO及び2mM NADPH)を添加した。十分に混合した後に、T=0サンプル(40μL)を、2μM内標準(カルベマザピン(Carbemazapine))を含有する氷冷メタノールにすぐにクエンチした。3つの更なるサンプルを3、9及び30分に同様にクエンチした。サンプルを氷上で30分間インキュベートし、その後、4000rpm+で200分間遠心した。上清をLCMS及び試験物:カルベマザピンピーク面積比によって分析して、基質枯渇の速度を決定した。
【0277】
生物学的データ
【0278】
【0279】
【0280】
NORアッセイ
例示化合物のうちの数種を、新規物体認識(NOR)アッセイにおいて試験すると、経口投与後に、10mg/kg未満の最小有効用量を示す。