(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】MALDI質量分析用試料プレート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20220125BHJP
H01J 49/10 20060101ALI20220125BHJP
H01J 49/04 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
G01N27/62 F
H01J49/10
H01J49/04
(21)【出願番号】P 2019544713
(86)(22)【出願日】2018-02-14
(86)【国際出願番号】 KR2018001981
(87)【国際公開番号】W WO2018151556
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2019-08-15
(31)【優先権主張番号】10-2017-0021565
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0018048
(32)【優先日】2018-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502235773
【氏名又は名称】バイオニア コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】キム テマン
(72)【発明者】
【氏名】アン ジョン ロク
(72)【発明者】
【氏名】キム ドフン
(72)【発明者】
【氏名】パク ハン-オ
【審査官】赤木 貴則
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-184137(JP,A)
【文献】特開2015-179617(JP,A)
【文献】特開2007-147656(JP,A)
【文献】特開2014-021048(JP,A)
【文献】特表2003-524193(JP,A)
【文献】特開2006-189391(JP,A)
【文献】特開2008-304369(JP,A)
【文献】特表2007-514173(JP,A)
【文献】国際公開第2014/129625(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0073511(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/62
G01N 33/48-33/98
H01J 49/00-49/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック絶縁板と、
前記プラスチック絶縁板の上面に形成され、表面に試料がローディングされるようにする金属ドットと、
前記プラスチック絶縁板
の下面に接して形成され
る下面金属層と、
前記
プラスチック絶縁板の上面に形成される上面金属層と、を含み、
前記下面金属層は、
前記プラスチック絶縁板を貫通する金属ドットビアを介して前記金属ドットと電気的に連結され、質量分析の際に前記下面金属層を介して前記金属ドットはMALDI質量分析器の試料プレートの電圧印加部と電気的に連結され、
前記上面金属層は、前記金属ドットと離隔して電気的に連結され
ず、
前記上面金属層は、
前記プラスチック絶縁板の側面に位置する側面金属層または前記プラスチック絶縁板を貫通する金属層ビアを介して前記下面金属層と電気的に連結される、MALDI質量分析用試料プレート。
【請求項2】
離隔した前記金属ドット
と前記上面金属層との間に位置し、前記金属ドットの全周に隣接して
前記金属ドットを取り囲む絶縁部を含む、請求項
1に記載のMALDI質量分析用試料プレート。
【請求項3】
前記金属ドットは直径が100μm~5mmである、請求項
1に記載のMALDI質量分析用試料プレート。
【請求項4】
前記金属ドッ
ト、前記
上面金属層
または前記下面金属層は、それぞれ、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)及びこれらの合金のうち選択される何れか一つまたは二つ以上を含む、請求項
1に記載のMALDI質量分析用試料プレート。
【請求項5】
前記プラスチック絶縁板は疎水性の表面性質を有し、前記金属ドットは親水性の表面性質を有する、請求項
1に記載のMALDI質量分析用試料プレート。
【請求項6】
前記金属ドットの表面は、
金属ドットの表面の中心部に位置する試料載置表面部と、
試料載置部の周りを取り囲む疎水性表面部と、を含み、
前記疎水性表面部は前記試料載置表面部より疎水性が大きいものである、請求項
1に記載のMALDI質量分析用試料プレート。
【請求項7】
前記MALDI質量分析用試料プレートは、
前記プラスチック絶縁板の一面に付着され、前記金属ドットの周りを取り囲み、貫通ホールが具備された試料リザーバ基板をさらに含む、請求項
1に記載のMALDI質量分析用試料プレート。
【請求項8】
試料リザーバ基板は貫通ホールへ不活性ガスを排出することができるガス通路が具備されたものである、請求項
1に記載のMALDI質量分析用試料プレート。
【請求項9】
前記試料リザーバ基板は前記プラスチック絶縁板の一面に着脱可能なものである、請求項
8に記載のMALDI質量分析用試料プレート。
【請求項10】
請求項
1に記載のMALDI質量分析用試料プレートの金属ドット上に分析対象試料をローディングし、レーザを照射して試料を着脱及びイオン化させることにより、前記分析対象試料の質量を分析する、MALDI質量分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MALDI質量分析用試料プレートとその製造方法、及びそれを用いたMALDI質量分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,900年代の初めに質量分析法が初めて使用されて以来、多様なイオン化法が発達してきており、一般的にEI(Electron Impact)が標準イオン化方法として広く使用されてきた。しかしながら、この方法は揮発性試料のみに使用することができ、熱に不安定な試料には使用することができないという短所を有しており、その応用は主に有機低分子に限られてきた。
【0003】
このような理由で揮発性がないか、熱安定性のない物質の質量分析のためにCI(Chemical Ionization)、ESI(Electro-Spray Ionization)、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)、FD(Field Desorption)、FAB(Fast Atom Bombardment)、APCI(Atmospheric Pressure Chemical Ionization)、MALDI(Matrix Assisted Laser Desorption Ionization)などの様々なイオン化方法が開発された。
【0004】
その中でもMALDIは、高分子物質に対して試料の分解なしで気化/イオン化が可能な方法であって、一般的に質量が大きく熱に不安定な生体高分子や合成高分子に非常に理想的に適用可能な方法として知られている。
【0005】
MALDIにおいてサンプリング(sampling)の原理は、水滴乾燥法(dried droplet method)と呼ばれるものであって、レーザをよく吸収する物質(matrix)と分析対象物質(analyte)を共に混ぜて溶媒に溶かした後、これを試料プレート(sample plate)に点滴し、溶媒を乾燥してターゲット(target)を作製した後、レーザをターゲットに照射すると、照射されたレーザのエネルギが結晶化したマトリックス(matrix)を介して分析対象物質へ伝達されて分析対象物質をイオン化し、イオン化過程を経た分析対象物質の分子は電場で加速されて飛行時間型質量分析器(TOF-MS;Time-of-Flight Mass Spectrometry)の検出器に到達することになるが、この時、質量対電荷(m/z)比の小さいイオンが質量対電荷比の大きいイオンに比べ、検出器に迅速に到達する原理を用いて分子(イオン)の質量を測定する。
【0006】
MALDIは高分子、タンパク質、ペプチド、DNA(deoxyribonucleic acid)など分子量の大きい物質の分子量の測定が可能であり、一種類の成分ではない様々な種類の成分が混在していても分析可能であり、感度が非常に敏感であるため微量の試料も分析可能であり、分析時間が短いなどの長所がある。
【0007】
しかし、同一のMALDI質量分析器を使用し、同一の分析対象物質に対する質量スペクトルを得るとしても、ターゲットを準備する方法、ターゲットにレーザが到達する位置、使用されたレーザの波長、レーザのパルスエネルギ、レーザが到達する地点(spot)の大きさ、同一の地点にレーザを照射した回数などによって得られる質量スペクトルパターンが同一でないことは既に公知の事実である。このようなスペクトルパターンに対する再現性の欠如は、MALDI質量分析法を用いた基礎研究、精密分析、標準化などにおいて深刻な問題となっている。
【0008】
そこで、MALDIのスペクトルパターンの再現性を改善することができれば、その応用性は大幅に拡大されるものと予想される。
【0009】
MALDI質量分析用試料プレートに対する類似文献としては、韓国登録特許第10-1204342号と韓国公開特許公報第10-2010-0051318号が提示されているが、依然として前述の問題に対する改善が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国登録特許公報第10-1204342号(2012年11月19日)
【文献】韓国公開特許公報第10-2010-0051318号(2010年5月17日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、感度に優れており、MALDI質量スペクトルの再現性に優れたMALDI質量分析用試料プレートを提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、感度に優れており、MALDI質量スペクトルの再現性に優れたMALDI質量分析用試料プレートの製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、感度に優れており、MALDI質量スペクトルの再現性に優れたMALDI質量分析用試料プレートを用いたMALDI質量分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によるMALDI質量分析用試料プレートは、プラスチック絶縁板と、前記プラスチック絶縁板の一面に形成され、表面に試料がローディングされるようにする金属ドットと、を含む。この時、質量分析の際に前記金属ドットはMALDI質量分析器の試料プレートの電圧印加部と電気的に連結されるものであってもよい。
【0015】
本発明の一例によるMALDI質量分析用試料プレートは、前記プラスチック絶縁板の側面、下面、上面またはこれらの面に接して形成される一つまたは二つ以上の金属層をさらに含むことができ、前記金属層は前記金属ドットと電気的に連結されたものであってもよい。この時、質量分析の際に前記金属層を介して金属ドットがMALDI質量分析器の試料プレートの電圧印加部と電気的に連結されるものであってもよい。
【0016】
本発明の一例によるMALDI質量分析用試料プレートは、プラスチック絶縁板と、前記プラスチック絶縁板の一面に形成され、表面に試料がローディングされるようにする金属ドットと、前記プラスチック絶縁板の他面に形成される下面金属層と、前記プラスチック絶縁板を貫通して形成され、前記金属ドットと前記下面金属層と接して電気的に連結される金属ドットビアと、を含むことができる。
【0017】
本発明の一例によるMALDI質量分析用試料プレートは、前記金属ドットが形成されたプラスチック絶縁板の一面に形成される上面金属層をさらに含むことができる。
【0018】
本発明の一例において、前記上面金属層は前記金属ドットと接して電気的に連結されるか、前記金属ドットと離隔して電気的に連結されなくてもよい。具体的な一例として、前記金属層が前記金属ドットと電気的に連結される場合、前記金属ドットが形成されたプラスチック絶縁板の一面は前記金属ドット及び前記上面金属層が離隔してこの間に形成される絶縁部と、前記絶縁部と隣接し、前記金属ドットと前記上面金属層が接して形成される連結部と、を含むことができるか、または前記金属ドットの全周及び前記上面金属層が接することができる。具体的な一例としては、前記金属層が前記金属ドットと電気的に連結されない場合、前記金属ドットが形成されたプラスチック絶縁板の一面は前記金属ドットの全周及び前記上面金属層が離隔し、前記金属ドットの全周に隣接してこれを取り囲む絶縁部を含むことができる。
【0019】
本発明の一例によるMALDI質量分析用試料プレートは、前記プラスチック絶縁板を貫通して形成され、前記上面金属層及び前記下面金属層と接して電気的に連結される金属層ビアをさらに含むことができ、前記金属ドットが形成されたプラスチック絶縁板の一面は前記金属ドットの全周及び前記上面金属層が離隔し、前記金属ドットの全周に隣接してこれを取り囲む絶縁部を含むことができる。
【0020】
本発明の一例によるMALDI質量分析用試料プレートは、プラスチック絶縁板と、前記プラスチック絶縁板の一面に形成される金属ドットと、前記金属ドットが形成されたプラスチック絶縁板の一面に形成され、前記金属ドットと電気的に連結される上面金属層と、前記プラスチック絶縁板の他面に形成される下面金属層と、前記プラスチック絶縁板を貫通して形成され、前記上面金属層及び前記下面金属層と接して電気的に連結される金属層ビアと、を含むことができる。
【0021】
本発明の一例において、前記金属ドットが形成されたプラスチック絶縁板の一面は、前記金属ドット及び前記上面金属層が離隔してこの間に形成される絶縁部と、前記絶縁部と隣接し、前記金属ドットと前記上面金属層が接して形成される連結部と、を含むことができるか、前記金属ドットの全周と前記上面金属層が接するものであってもよい。
【0022】
本発明の一例によるMALDI質量分析用試料プレートは、プラスチック絶縁板と、前記プラスチック絶縁板の一面に形成される金属ドットと、前記金属ドットが形成されたプラスチック絶縁板の一面に形成され、前記金属ドットと電気的に連結される上面金属層と、前記プラスチック絶縁板の側面に形成され、前記上面金属層と接して電気的に連結される側面金属層と、を含むことができる。
【0023】
本発明の一例において、前記金属ドットが形成されたプラスチック絶縁板の一面は、前記金属ドット及び前記上面金属層が離隔してこの間に形成される絶縁部と、前記絶縁部と隣接し、前記金属ドットと前記上面金属層が接して形成される連結部と、を含むことができるか、前記金属ドットの全周と前記上面金属層が接するものであってもよい。
【0024】
本発明の一例によるMALDI質量分析用試料プレートは、前記プラスチック絶縁板の他面に形成され、前記上面金属層と接して電気的に連結される下面金属層をさらに含むことができる。
【0025】
本発明の一例において、前記金属ドットが形成されたプラスチック絶縁板の一面は、前記金属ドットの全周及び前記上面金属層が離隔し、前記金属ドットの全周に隣接してこれを取り囲む絶縁部と、前記プラスチック絶縁板を貫通して形成され、前記金属ドットと前記下面金属層と接して電気的に連結される金属ドットビアと、を含むことができる。
【0026】
本発明の一例において、前記金属ドットは、直径は100μm~5mmであってもよい。
【0027】
本発明の一例において、前記金属ドット及び前記金属層は互いに独立して金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)及びこれらの合金のうち選択される何れか一つまたは二つ以上を含むことができる。
【0028】
本発明の一例において、前記プラスチック絶縁板は疎水性の表面性質を有することができ、前記金属ドットは親水性の表面性質を有することができる。
【0029】
本発明の一例において、前記金属ドットの表面は、金属ドットの表面の中心部に位置する試料載置表面部と、前記試料載置部の周りを取り囲む疎水性表面部と、を含むことができ、前記疎水性表面部は前記試料載置表面部より疎水性が大きいものであってもよい。
【0030】
本発明の一例によるMALDI質量分析用試料プレートは、前記プラスチック絶縁板の一面に付着され、前記金属ドットの周りを取り囲み、貫通ホールが具備された試料リザーバ基板をさらに含むことができる。
【0031】
本発明の一例において、前記試料リザーバ基板は貫通ホールへ不活性ガスを排出することができるガス通路が具備されたものであってもよい。
【0032】
本発明の一例において、前記試料リザーバ基板は前記プラスチック絶縁板の一面に着脱可能な構造を有することができる。
【0033】
本発明の一例によるMALDI質量分析用試料プレートの製造方法は、プラスチック絶縁板の両面に金属薄膜を形成するステップと、前記プラスチック絶縁板を貫通するビアを形成するステップと、前記プラスチック絶縁板の両面の金属薄膜を選択的にエッチングして、一面には金属ドットを形成し、他面には下面金属層を形成するステップと、を含むことができる。この時、前記金属ドットと下面金属層はビアを介して電気的に連結されるものであってもよい。
【0034】
本発明の一例によるMALDI質量分析用試料プレートの製造方法は、プラスチック絶縁板の両面に金属薄膜を形成するステップと、前記プラスチック絶縁板の両面の金属薄膜を選択的にエッチングして、一面には金属ドット及び上面金属層を形成し、他面には下面金属層を形成するステップと、前記プラスチック絶縁板の側面に接する金属薄膜を形成して側面金属層を形成するステップと、を含むことができる。この時、前記金属ドットと前記上面金属層は電気的に連結され、前記上面金属層と前記側面金属層は電気的に連結され、前記側面金属層と前記下面金属層は電気的に連結されるものであってもよい。
【0035】
本発明の一例によるMALDI質量分析用試料プレートの製造方法は、プラスチック絶縁板の両面に金属薄膜を形成するステップと、前記プラスチック絶縁板の両面の金属薄膜を選択的にエッチングして、一面には金属ドット及び上面金属層を形成し、他面には下面金属層を形成するステップと、前記プラスチック絶縁板を貫通する金属ドットビアまたは金属層ビアを形成するステップと、前記プラスチック絶縁板の側面に接する金属薄膜を形成して側面金属層を形成するステップと、を含むことができる。この時、前記金属ドットと前記上面金属層は電気的に連結され、前記上面金属層と前記側面金属層は電気的に連結され、前記側面金属層と前記下面金属層は電気的に連結され、前記金属ドットと前記下面金属層はビアを介して電気的に連結されるものであってもよい。
【0036】
本発明の一例によるMALDI質量分析方法は、本発明によるMALDI質量分析用試料プレートの金属ドット上に分析対象試料をローディングし、レーザを照射して試料を着脱及びイオン化させることにより、前記分析対象試料の質量を分析するものであってもよい。
【発明の効果】
【0037】
本発明によるMALDI質量分析用試料プレートは、プラスチック絶縁板を介して分析対象試料がローディングされる金属ドットと金属配線とを互いに分離して位置させ、これらをビアまたは金属部を介して電気的に連結することにより、ターゲット(金属ドット)にレーザを照射する際に金属母材を使用した試料プレートに対するプレートの内部へ伝達されるエネルギを減少させてターゲットにレーザエネルギを集中させることができ、熱損失を最小化することができる効果がある。
【0038】
これにより、本発明によるMALDI質量分析用試料プレートは、分析対象試料の均質な加熱が可能であり、同一の地点に数回レーザを照射する際に再現性に優れたMALDI質量スペクトルが得られる効果がある。
【0039】
本発明において明示的に言及されていない効果であっても、本発明の技術的特徴により期待される明細書に記載された効果及びその内在的な効果は、本発明の明細書に記載されたものと同じく扱われる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の一態様によるMALDI質量分析用試料プレートの側面に対する断面図である。
【
図2】本発明の一態様によるMALDI質量分析用試料プレートの側面に対する上面図である。
【
図3】本発明の一態様による、金属層を含むMALDI質量分析用試料プレートの側面に対する断面図である。
【
図5】前記MALDI質量分析用試料プレートに対する上面図である。
【
図6】前記MALDI質量分析用試料プレートに対する上面図である。
【
図7】本発明の一態様による、疎水性表面部を有する金属ドットを含むMALDI質量分析用試料プレートの側面に対する断面図である。
【
図8】本発明の一態様による試料リザーバ基板を具備したMALDI質量分析用試料プレートの側面に対する断面図である。
【
図9】本発明の一態様による試料リザーバ基板を具備したMALDI質量分析用試料プレートの側面に対する上面図である。
【
図10】本発明の一態様による、ガス通路が具備された試料リザーバ基板を含むMALDI質量分析用試料プレートの側面に対する断面図及び透視上面図である。
【
図11】本発明の他の一態様による、側面部に側面金属層がさらに具備されたMALDI質量分析用試料プレートの側面に対する断面図である。
【
図12】本発明の他の一態様による、側面部に側面金属層がさらに具備されたMALDI質量分析用試料プレートの上面図である。
【
図13】本発明の他の一態様による、側面部に側面金属層がさらに具備されたMALDI質量分析用試料プレートの上面図である。
【
図14】本発明の一例によるMALDI質量分析用試料プレートの実際のイメージを示したものであって、試料プレートの前面を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付の図面を参照して本発明によるMALDI質量分析用試料プレートとその製造方法、及びそれを用いたMALDI質量分析方法を詳細に説明する。
【0042】
本明細書に記載されている図面は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に本発明の思想が十分に伝達され得るようにするために例として提供されるものである。したがって、本発明は提示される図面に限定されず、他の形態で具体化することもでき、前記図面は本発明の思想を明確にするために誇張して図示されることができる。
【0043】
本明細書で使用される技術用語及び科学用語において、他の定義がない限り、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常的に理解している意味を有し、下記の説明及び添付の図面で本発明の要旨を不明にすると判断される公知の機能及び構成に対する説明は省略する。
【0044】
本明細書で使用される用語の単数形態は、特別な指示がない限り、複数形態も含むものと解釈されることができる。
【0045】
本明細書において特別な言及なしで使用された%の単位は、特別な定義がない限り、質量%を意味する。
【0046】
本明細書において、「電気的に連結」とは、電気的に連結される二つの対象が互いに接触して直接的に連結される場合または二つの対象が別途の連結手段を介して間接的に連結される場合を意味する。
【0047】
本発明によるMALDI質量分析用試料プレートは、プラスチック絶縁板と、前記プラスチック絶縁板の一面に形成され、表面に試料がローディングされるようにする金属ドットと、を含む。この時、質量分析の際に前記金属ドットはMALDI質量分析器の試料プレートの電圧印加部と電気的に連結されるものであってもよい。
【0048】
本発明の一例によるMALDI質量分析用試料プレートは、前記プラスチック絶縁板の側面、下面、上面またはこれらの面に接して形成される一つまたは二つ以上の金属層をさらに含むことができ、前記金属層は前記金属ドットと電気的に連結されたものであってもよい。この時、質量分析の際に前記金属層を介して金属ドットがMALDI質量分析器の試料プレートの電圧印加部と電気的に連結されるものであってもよい。
【0049】
本発明の一例によるMALDI質量分析用試料プレートは、前記金属ドットが形成されたプラスチック絶縁板の一面に形成される上面金属層をさらに含むことができる。
【0050】
本発明の一例において、前記上面金属層は前記金属ドットと接して電気的に連結されるか、前記金属ドットと離隔して電気的に連結されなくてもよい。
【0051】
具体的な一例として、前記金属層が前記金属ドットと電気的に連結される場合、前記金属ドットが形成されたプラスチック絶縁板の一面は前記金属ドット及び前記上面金属層が離隔してこの間に形成される絶縁部と、前記絶縁部と隣接し、前記金属ドットと前記上面金属層が接して形成される連結部と、を含むことができるか、または前記金属ドットの全周と前記上面金属層が接することができる。
【0052】
具体的な一例として、前記金属層が前記金属ドットと電気的に連結されない場合、前記金属ドットが形成されたプラスチック絶縁板の一面は前記金属ドットの全周及び前記上面金属層が離隔し、前記金属ドットの全周に隣接してこれを取り囲む絶縁部を含むことができる。
【0053】
本発明の一例によるMALDI質量分析用試料プレートは、前記プラスチック絶縁板の他面に形成される下面金属層をさらに含むことができる。
【0054】
本発明の一例によるMALDI質量分析用試料プレートは、前記プラスチック絶縁板の側面に形成され、前記上面金属層と接して電気的に連結される側面金属層をさらに含むことができる。
【0055】
本発明の一例によるMALDI質量分析用試料プレートは、前記プラスチック絶縁板を貫通して形成され、前記金属ドットと前記下面金属層と接して電気的に連結される金属ドットビアをさらに含むことができる。
【0056】
本発明の一例によるMALDI質量分析用試料プレートは、前記プラスチック絶縁板を貫通して形成され、前記上面金属層及び前記下面金属層と接して電気的に連結される金属層ビアをさらに含むことができる。
【0057】
以下、より好ましい本発明によるMALDI質量分析用試料プレートに対し、第1態様~第3態様として具体的に説明する。しかし、これは、本発明によるMALDI質量分析用試料プレートをより効果的に説明するために区分するに過ぎず、これにより本発明が特定の態様に制限されて解析されるか、互いに異なる発明として解釈されてはならない。また、各態様に述べられた構成要素が他の態様において別途に説明されなかったとしても、各態様において説明した構成要素は、他の態様にも共有及び適用可能であることは言うまでもない。
【0058】
本発明の一例による第1態様のMALDI質量分析用試料プレートは、
図1及び
図2のように、プラスチック絶縁板と、前記プラスチック絶縁板の一面に形成され、表面に試料がローディングされるようにする金属ドットと、前記プラスチック絶縁板の他面に形成される下面金属層と、前記プラスチック絶縁板を貫通して形成され、前記金属ドットと前記下面金属層と接して電気的に連結される金属ドットビアと、を含むことができる。
【0059】
このように、プラスチック絶縁板を介して分析対象試料がローディングされる金属ドットと下面金属層とを互いに分離して位置させ、これらをビアを介して電気的に連結することにより、ターゲットにレーザを照射する際に金属母材を使用した試料プレートに対するプレートの内部へ伝達される(熱)エネルギを減少させてターゲットにレーザエネルギを集中させることができ、熱損失を最小化することができる。これにより、分析対象試料の均質な加熱が可能であり、同一の地点に数回レーザを照射する際にも再現性に優れたMALDI質量スペクトルが得られる。
【0060】
本発明による第1態様のMALDI質量分析用試料プレートは、
図3のように、前記金属ドットが形成されたプラスチック絶縁板の一面に形成され、前記金属ドットと電気的に連結される上面金属層をさらに含むことができる。前記上面金属層が形成される場合、プラスチック絶縁板の電位は表面電荷などにより決定されるため、周囲の電場を予測することが非常に容易であり、金属ドットの周辺に絶縁体が存在することによる電場(electric field)の不確実性を減らして、金属ドット周囲の電場が歪みなく均一に形成されることを予測することができる。
【0061】
本発明による第1態様のMALDI質量分析用試料プレートにおいて、前記上面金属層は前記金属ドットと接して電気的に連結されるか、前記金属ドットと離隔して電気的に連結されなくてもよい。
【0062】
前記第1態様の具体的な一例として、前記金属層が前記金属ドットと電気的に連結される場合、
図6のように、前記金属ドットが形成されたプラスチック絶縁板の一面は前記金属ドット及び前記上面金属層が離隔してこの間に形成される絶縁部と、前記絶縁部と隣接し、前記金属ドットと前記上面金属層が接して形成される連結部と、を含むことができるか、または前記金属ドットの全周と前記上面金属層が接することができる。非限定的な一例として、前記絶縁部及び前記連結部を含む場合は、
図6に示された一例で説明されることができる。より具体的な例として、前記連結部の広さは前記絶縁部の広さに対して1~20%であってもよい。非限定的な一例として、前記金属ドットの全周と前記上面金属層が接する場合、金属ドットの全周と金属層が当接するか、金属ドットと金属層が一体化したものであってもよい。しかし、これは好ましい一例に過ぎず、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0063】
前記第1態様の他の具体的な一例として、前記金属層が前記金属ドットと電気的に連結されない場合、
図5のように、前記金属ドットが形成されたプラスチック絶縁板の一面は前記金属ドットの全周及び前記上面金属層が離隔し、前記金属ドットの全周に隣接してこれを取り囲む絶縁部を含むことができる。前記絶縁部は金属ドットと離隔してこの周りを取り囲むようにする形態であれば構わなく、例えば、円形であってもよく、その厚さが0.2~20mmであってもよいが、これにその形態及びその大きさが制限されないことは言うまでもない。前記絶縁部は金属ドットと上面金属層の領域を区分する絶縁膜を意味するか、試料プレートの外部に露出されたプラスチック絶縁板の表面を意味し得る。前記絶縁部が試料プレートの外部に露出されたプラスチック絶縁板の表面を意味する場合、上面金属層は下面金属層と電気的に連結されないため、本発明による第2態様のMALDI質量分析用試料プレートは、
図4(上段から下段の順に1番目の図)のように、上面金属層及び下面金属層と接して電気的に連結され、プラスチック絶縁板に貫通して形成される金属層ビアをさらに含むことができる。これを満足する場合、
図5のように上面金属層が金属ドットと接しなくても金属層ビアを介して上面金属層と金属ドットとが互いに電気的に連結されて熱エネルギの伝達は最小化しながらも電圧の印加は容易にすることができる。
【0064】
本発明の一例による第2態様のMALDI質量分析用試料プレートは、
図3(上段から下段の順に2番目の図)、
図4(上段から下段の順に1、2、4番目の図)のように、プラスチック絶縁板と、前記プラスチック絶縁板の一面に形成される金属ドットと、前記金属ドットが形成されたプラスチック絶縁板の一面に形成され、前記金属ドットと電気的に連結される上面金属層と、前記プラスチック絶縁板の他面に形成される下面金属層と、前記プラスチック絶縁板を貫通して形成され、前記上面金属層及び前記下面金属層と接して電気的に連結される金属層ビアと、を含むことができる。
【0065】
すなわち、第2態様のMALDI質量分析用試料プレートは、
図3(上段から下段の順に2番目の図)のように、プラスチック絶縁板を貫通して形成する金属層ビアが上面金属層及び下面金属層と接して電気的に連結され、上面金属層及び金属ドットが電気的に連結された構造を有することができる。この時、上面金属層と金属ドットは電気的に連結された構造を有すれば十分であり、例えば、
図6のように上面金属層と金属ドットが接して電気的に連結された構造であってもよく、
図3(上段から下段の順に1番目の図)のように金属ドット及び上面金属層が前述の金属ドットビアに接して電気的に連結された構造であってもよい。
【0066】
このように、プラスチック絶縁板を介して分析対象試料がローディングされる金属ドットと下面金属層とを互いに分離して位置させ、これらをプラスチック絶縁板に貫通して形成されたビアを介して電気的に連結することにより、ターゲットにレーザを照射する際に金属母材を使用した試料プレートに対するプレートの内部へ伝達される(熱)エネルギを減少させてターゲットにレーザエネルギを集中させることができ、熱損失を最小化することができる。これにより、分析対象試料の均質な加熱が可能であり、同一の地点に数回レーザを照射する際にも再現性に優れたMALDI質量スペクトルが得られる。
【0067】
非限定的な一例として、上面金属層と金属ドットは接して電気的に連結されることができ、例えば、前記金属ドットの全周と前記上面金属層が接するものであってもよく、前記金属ドットが形成されたプラスチック絶縁板の一面は、前記金属ドット及び前記上面金属層が離隔してこの間に形成される絶縁部と、前記絶縁部と隣接し、前記金属ドットと前記上面金属層が接して形成される連結部と、を含むことができる。非限定的な一例として、前記金属ドットの全周と前記上面金属層が接する場合、金属ドットの全周と金属層が当接するか、金属ドットと金属層が一体化したものであってもよい。非限定的な一例として、
図6に示された一例のように、前記連結部の広さは前記絶縁部の広さに対して1~20%であってもよい。しかし、これは好ましい一例に過ぎず、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0068】
本発明の一例による第3態様のMALDI質量分析用試料プレートは、
図11~
図13、
図3(上段から下段の順に3番目の図)及び
図4(上段から下段の順に2、3、4番目の図)のように、プラスチック絶縁板と、前記プラスチック絶縁板の一面に形成される金属ドットと、前記金属ドットが形成されたプラスチック絶縁板の一面に形成され、前記金属ドットと電気的に連結される上面金属層と、前記プラスチック絶縁板の側面に形成され、前記上面金属層と接して電気的に連結される側面金属層と、を含むことができる。
【0069】
前記第3態様では、金属ドットはプラスチック絶縁板の側面部に形成された側面金属層により下面金属層と電気的に連結される。前記側面金属層はプラスチック絶縁板の側面部、具体的にプラスチック絶縁板の側面に接して形成されることができる。具体的に、
図11(上段から下段の順に1番目の図)のように、側面金属層は上面金属層の下面プラスチック絶縁体の側面に接して形成されることができ、
図11(上段から下段の順に2番目の図)のように、上面金属層の側面及びプラスチック絶縁板の側面に接して形成されることもできる。また、
図12のように、側面金属層はプラスチック絶縁板の一側面部に形成されることができ、
図13のように、複数の側面金属層がプラスチック絶縁板の複数の側面部にそれぞれ形成されることもできる。この時、側面金属層の大きさ及び形状は電圧が印加され、電気的に各対象を連結することができる程度であれば制限されず、例えば、板形状、ワイヤー形状など、多様な形状及び大きさを有することができる。一例として、熱エネルギの伝達をより最小化することができる点で、側面金属層はプラスチック絶縁板の全側面に対して0.1~10%、具体的に0.5~5%の面積で形成されることが好ましい。また、熱エネルギの伝達をより最小化することができる点で、多数の側面金属層がプラスチック絶縁板の側面に、より小さい単位の大きさで形成されることが好ましい。しかし、これは好ましい一例に過ぎず、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0070】
このように、プラスチック絶縁板を介して金属ドットと電気的に連結された上面金属層がプラスチック絶縁板の側面部に形成された側面金属層と接して電気的に連結されることにより、ターゲットにレーザを照射する際に金属母材を使用した試料プレートに対するプレートの内部へ伝達される(熱)エネルギを減少させてターゲットにレーザエネルギを集中させることができ、熱損失を最小化することができる。これにより、分析対象試料の均質な加熱が可能であり、同一の地点に数回レーザを照射する際にも再現性に優れたMALDI質量スペクトルが得られる。
【0071】
本発明の一例による第3態様のMALDI質量分析用試料プレートは、場合によって、前記プラスチック絶縁板の他面に形成され、前記上面金属層と接して電気的に連結される下面金属層をさらに含むことができる。
【0072】
本発明の一例による第3態様のMALDI質量分析用試料プレートは、場合によって、前記金属ドットが形成されたプラスチック絶縁板の一面は、前記金属ドットの全周及び前記上面金属層が離隔し、前記金属ドットの全周に隣接してこれを取り囲む絶縁部と、前記プラスチック絶縁板を貫通して形成され、前記金属ドットと前記下面金属層と接して電気的に連結される金属ドットビアと、を含むことができる。
【0073】
第3態様において、下面金属層及び金属ドットビアは金属ドットと他の金属層との電気的連結のために使用されてもよく、このような金属層は電圧印加部との連結のためのものであってもよい。
【0074】
前記第3態様において、金属ドットと電気的に連結された上面金属層に対する連結構造は、これらが電気的に連結されることができる構造であれば構わない。具体的な一例として、
図6のように上面金属層と金属ドットが直接的に接して電気的に連結された構造であってもよく、上面金属層と金属ドットが接することなく他の連結手段を介して間接的な電気的連結構造を介したものであってもよい。前記間接的な電気的連結構造の例として、
図4(上段から下段の順に3番目の図)のように、金属ドットが金属ドットビアと接し、金属ドットビアが下面金属層と接し、下面金属層が側面金属層と接することにより、側面金属層と接する上面金属層によって、上面金属層と金属ドットが間接的に電気的連結された構造であってもよい。
【0075】
前述のように、本発明によるMALDI質量分析用試料プレートにおいて、上面金属層は金属ドットと離隔して位置することもでき、金属ドットと接して位置することができる。非限定的な一例として、上面金属層は金属ドットの全周に接して位置することができ、すなわち、上面金属層と金属ドットとの間にはプラスチック絶縁板または絶縁部が位置せず、一つの金属板(金属ドット+上面金属層)として形成されることもできる。
【0076】
前述のように、本発明は第1~第3態様のような多様な態様を含むことができ、この時、各態様において別途に説明しなかった構成要素があっても、各態様において説明した構成要素は、他の態様にも共有及び適用可能であることは言うまでもない。すなわち、前述の一例によるMALDI質量分析用試料プレートに対する構成要素の組み合わせは、本発明においてより好ましいものであるため具体的に説明したものであり、この他に言及した各構成要素の可能な組み合わせ又は本発明の構成として含まれることは言うまでもない。
【0077】
前記ビアは金属ドットと金属層を電気的に連結するためのものであって、プラスチック絶縁板を貫通する貫通ホールの内部に形成されることができ、金属ドットと金属層を連結することができれば、ビアの直径及び形状は特に限定しない。具体的には、安定的に金属ドットがプラスチック絶縁板の一面に結着されることができるように、金属ドットの直径に対して相対的にビアの直径が小さいことが好ましい。一具体例として、ビアの直径は10μm~1mmであってもよく、より好ましくは50~500μmであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0078】
前記ビアはプラスチック絶縁板を貫通して、金属ドットと下面金属層を電気的に連結することができる形態であれば、特に限定しないが、金属ドットと下面金属層が電気的に連結されるように、プラスチック絶縁板を貫通する貫通ホールの内面が金属でコーティングされるか、または貫通ホールに金属プラグが押し込まれた形態であってもよい。
【0079】
この時、金属コーティングまたは金属プラグは、下面金属層と同一または異なる金属で形成されたものであってもよく、例えば、金属元素物質などであってもよい。より具体的な一例として、ビアは金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)及びこれらの合金などから選択される何れか一つまたは二つ以上を含んで形成されたものであってもよい。また、ビアは優れた電気伝導性を確保しながらも、コストを節減する点で、銅(Cu)または銅合金を含むことが好ましい。しかし、これは好ましい一例に過ぎず、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0080】
前記プラスチック絶縁板は絶縁性を有するプラスチック基板であって、例えば、金属ドット、下面金属層、ビアなどと比較して熱伝達を相対的に減少させるものであれば、特に限定されない。その非限定的な一例として、プラスチック絶縁板は、エポキシ(epoxy)、紙-フェノール樹脂(phenolic resin)、ポリイミド(polyimide、PI)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate、PET)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate、PEN)、ポリメチルメタアクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone、PEEK)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone、PES)、ポリアリレート(polyarylate)または環状オレフィンコポリマー(cyclicolefincopolymer、COC)などの基板であってもよいが、これに制限されるものではない。その厚さは十分な絶縁性を提供しながらも、簡単に変形されない程度の通常的に用いられる試料プレートの厚さ程度であれば十分であり、一具体例として2~5mmであってもよいが、これに制限されるものではない。この時、前記紙-フェノール樹脂基板は、紙の下地にフェノール樹脂を浸透させ、これを数枚重ねて加熱及び圧縮して製造されたものを意味し得る。しかし、これは好ましい一例に過ぎず、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0081】
前記金属ドットは、質量を分析しようとする分析対象試料が実質的にローディングされる部分であって、MALDI分析の際にレーザが照射される地点である。金属ドットは、前記プラスチック絶縁板の一面に要求される形態で形成されることができ、プラスチック絶縁板の一面に金属ドットが一つまたは二つ以上に形成されることができ、金属ドットが複数個で形成される時、周期的及び規則的な配列形態または非周期的及び不規則的な配列形態を有することができる。
【0082】
本発明の一例による前記金属ドット材質は、本発明が属する技術分野において分析対象試料がローディングされるようにする材料であって、電気が通じる伝導性物質であれば特に制限されず、例えば、金属元素物質などであってもよい。非限定的な一例として、前記金属ドットは金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)及びこれらの合金などから選択される何れか一つまたは二つ以上を含むものであってもよいが、本発明が属する技術分野において通常的に使用される他の材料を排除するわけではない。
【0083】
前記金属ドットは前述のように、分析対象試料がローディングされる構成要素であるため、分析対象試料が上手く凝集できるように適正の大きさを有することが好ましく、併せて、分析対象試料と性質が類似しているものが好ましい。
【0084】
一具体例として、金属ドットの直径は100μm~5mm、具体的に100μm~2mm、より具体的に300μm~1mmであってもよい。このような範囲で分析対象試料溶液を点滴してターゲットを形成する際、ターゲットが金属ドットに凝集される効果が優れることができ、金属ドットの大きさが小さいため熱放出が抑制されて熱損失を最小化することができる。
【0085】
併せて、分析対象試料が金属ドットに凝集される効果をさらに高めるために、金属ドットは分析対象試料または分析対象試料溶液と性質が類似しており、プラスチック絶縁板はこれとは反対する性質を有するものが好ましい。
【0086】
非限定的な一例として、分析対象試料溶液が親水性である場合、プラスチック絶縁板または後述の金属層は疎水性の表面性質を有することができ、前記金属ドットは親水性の表面性質を有することが分析対象試料を金属ドットに凝集させることにおいて効果的であり得る。このために、プラスチック絶縁板の製造の際、疎水性を有する高分子を用いてプラスチック絶縁板を製造するか、
図7に示されたように、基板の製造後、その表面を疎水性物質で表面処理して疎水性の表面性質を有するプラスチック絶縁板を製造することができる。逆に、金属ドットの場合、親水性物質でその表面を処理して親水性の表面を有する金属ドットを製造することができる。
【0087】
より好ましい一例として、前記金属ドットの表面は、
図7に示されたように、金属ドットの表面の中心部に位置する試料載置表面部と、前記試料載置部の周りを取り囲む疎水性表面部と、を含むことができ、前記疎水性表面部は前記試料載置表面部より疎水性が大きいものであってもよい。前記試料載置表面部は実際の分析対象試料が載置する部分であって、前記疎水性表面部により分析対象試料が試料載置表面部に凝集できるようにする。前記試料載置表面部の直径は、試料が載置できる程度であれば構わなく、例えば100μm以上であり、金属ドットの直径より小さいものであってもよい。また、
図9に示されたように、前記疎水性表面部は前記上面金属層の表面にも形成されることができる。しかし、これは好ましい一例に過ぎず、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0088】
また、本発明の一例において、上面金属層と金属ドットとの間にプラスチック絶縁板などの絶縁部がある場合に、
図7のように、前記疎水性表面部は前記絶縁部にも位置することができる。
【0089】
本発明の一例において、前記疎水性表面部は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ビニリデンフルオロライド、オクタフルオロブチレン、ペンタフルオロフェニルトリフルオロエチレン、ペンタフルオロフェニルエチレン、これらから誘導された繰り返し単位を含む重合体、フルオロ含有アクリレート重合体及びパーフルオロポリエーテルなどから選択される何れか一つまたは二つ以上を含むフッ素系化合物;アルキルトリクロロシラン、アルキルトリメトキシシラン、アルキルトリエトキシシラン及びジクロロジアルキルシランなどから選択される何れか一つまたは二つ以上を含むアルキル基を有するシラン系化合物;アミン基を有するシラン系化合物及びジメチコン及びメチコンなどから選択される何れか一つ以上を含むシリコン油;超疎水性を示すマンガン酸化物/ポリスチレン(MnO2/PS)ナノ複合体及び亜鉛酸化物/ポリスチレン(ZnO/PS)ナノ複合体などから選択される何れか一つ以上を含む酸化物/高分子ナノ複合体;炭素ナノチューブを含む組成物;及びシリカナノコーティング剤;などから選択される何れか一つまたは二つ以上を含むことができる。しかし、これは好ましい一例に過ぎず、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0090】
非限定的な一例として、分析対象試料溶液が疎水性である場合、前記プラスチック絶縁板または後述の金属層は親水性の表面性質を有することができ、前記金属ドットは疎水性の表面性質を有することが分析対象試料を金属ドットに凝集させることにおいて効果的であり得る。
【0091】
前述のように、分析対象試料が極めて狭い領域に凝集されて高い集積度を有する時、少ない容量の試料としても高い感度で質量分析が可能であり、再現性に優れたMALDI質量スペクトルが得られる。
【0092】
本発明では、金属ドットに電圧が印加されることにより最終的に質量分析が可能であり、この金属ドットに電圧を印加するための多様な公知の方法または後述の方法が使用されることができる。具体的な一例を挙げて説明すれば、MALDI質量分析装備の作動が可能となるように、MALDI質量分析器は試料プレートに電圧を印加するための電圧印加部を含むことができ、この電圧印加部から金属ドットに電圧が印加されるようにすれば構わない。金属ドットに電圧が印加されるようにする具体的手段の例として、前記電圧印加部が本発明によるMALDI質量分析用試料プレートの金属ドットに直接接触して電気的に連結されることもできるが、金属層またはビアに電気的に連結されて電圧印加部が金属ドットに直接連結されないようにすることが好ましい。具体的な一例として、前記電圧印加部が金属ドットビア、金属層ビア、上面金属層、下面金属層及び側面金属層の中から選択される何れか一つまたは二つ以上と直接接触して電気的に連結されることができる。より好ましくは、電圧印加部が金属ドットと電気的に連結された下面金属層と直接連結されることが好ましい。
【0093】
前記金属層は、金属ドットがプラスチック絶縁板の一面に点または円形の形態で形成されるにもかかわらず、MALDI質量分析装備の作動がより円滑に可能となるように前述の構造を介して電気的な連結を提供するものであって、金属層はMALDI質量分析装備のうち試料プレートに電圧を印加するための電圧印加部と接するように設計されたものであってもよい。併せて、実質的な金属ドットとの電気的な連結はビアまたは金属層を介したものであってもよいところ、一例として、下面金属層は下面金属層が形成されるプラスチック絶縁板の面側ビアの一端をカバーするか、側面金属層と接するようにそのパターンが形成されることが好ましい。非限定的な一例として、下面金属層がビアの一端と連結されないか、側面金属層と接しない場合、金属ドットに電圧を印加し難くなることがあり、MALDI質量分析が困難となる恐れがあるため、すなわち、非限定的な一例によれば、下面金属層は試料プレートを質量分析器に挿入分析するステップで試料プレートに電圧を供給する電圧印加部と連結され、ビアを介して金属ドットと連結される構造を有するため、より精密な質量分析及びレーザ照射の回数に応じた温度偏差による再現性の低下を最小化することができる効果がより向上し得る。
【0094】
前記金属層の材質は、電気伝導性に優れると知られているものであれば、特に限定されずに使用することができるが、例えば、金属元素物質などであってもよい。より具体的な一例として、金属層は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)及びこれらの合金などから選択される何れか一つまたは二つ以上を含むことができる。優れた電気伝導性を確保しながらも、コストを節減する点で、金属層は銅(Cu)または銅合金を含むことが好ましい。しかし、これは好ましい一例に過ぎず、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0095】
本明細書で言及される「金属層」は、その形態において制限されず、例えば、膜(plate)形態、具体的にコーティング膜の形態を有することができる。
【0096】
本明細書で言及される「金属ドット」、「金属層」の大きさは、規模に応じて適切に調節されることができるため大きく制限されず、例えば、これらの平均厚さは10μm~200μmであってもよいが、これに本発明が制限されないことは言うまでもない。また、本明細書で言及される「プラスチック絶縁板」の大きさは、規模に応じて適切に調節されることができるため大きく制限されず、例えば、この平均厚さは0.5mm~3mmであってもよいが、これに本発明が制限されないことは言うまでもない。
【0097】
本発明によるMALDI質量分析用試料プレートは、金属ドットの周りと隣接する識別用マーキング領域をさらに含むことができる。前述の絶縁部により試料がローディングされる領域である金属ドット領域が識別されることができ、このような領域の識別が困難であるか、これをさらに補完するために、金属ドットの周りと隣接する識別用マーキング領域がさらに具備されることができる。このマーキング領域は、コーティング、ペインティングなどの公知の多様な方法で行われることができる。
【0098】
本発明の一例によるMALDI質量分析用試料プレートは、
図8~
図10のように、前記プラスチック絶縁板の一面に付着され、前記金属ドットの周りを取り囲む貫通ホールが具備された試料リザーバ基板をさらに含むことができる。この時、試料リザーバ基板は、金属ドットの周りと離隔位置するように金属ドットの周りを取り囲む金属層とは異なり、試料リザーバ基板の貫通ホールの内面と金属ドットの周りとが当接する形態であってもよい。
【0099】
このように、試料リザーバ基板を有することができるため、試料プレートに直接的に分析対象試料溶液を点滴し、金属ドット上に分析対象試料をローディングすることができる長所があり、これにより極めて均一かつ細密に分析対象試料をサンプリングすることができるため、質量分析の際にさらに優れた再現性を確保することができる。
【0100】
本発明の一例において、前記試料リザーバ基板は分析対象試料をローディングしてターゲットを形成した後、質量分析の際に効率的なレーザの照射のためにMALDI質量分析用試料プレートから分離されることが好ましいことから、試料リザーバ基板は前記プラスチック絶縁板の一面に着脱可能なものであってもよい。
【0101】
このように、試料リザーバ基板は、以後MALDI質量分析用試料プレートから分離されるものであるため、所望の形態を有するように製造されたものであれば、特にその材料を限定しなくてもよく、金属、金属酸化物、セラミックスまたは高分子などの如何なる材料を使用しても構わないが、貫通ホールは金属ドットへの分析対象試料の凝集効果を高めるために、その内面が疎水性の表面性質を有することが好ましい。しかし、これは好ましい一例に過ぎず、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0102】
また、前述のように、試料リザーバ基板の貫通ホールは試料リザーバ基板の貫通ホールの内面と金属ドットの周りとが当接する形態であれば、貫通ホール自体の形状は特に限定せず、具体的に例えば、円柱形状または漏斗形状などであってもよい。しかし、これは好ましい一例に過ぎず、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0103】
併せて、本発明の一例による試料リザーバ基板は、
図10のように、貫通ホールへ投入された分析対象試料溶液において溶媒を迅速に乾燥するために、貫通ホールへ不活性ガスを排出することができるガス通路が具備されることができる。ガス通路は貫通ホールへガスを運ぶことができれば、その形状、大きさなどを制限せず、通路の数も制限せず、この一例として前記ガス通路を、
図10の左側の図に示された点線で表示しており、
図10の左側の図は透視上面図であって、試料プレートの上面図であり、示されたガス通路は点線であって透視された状態である。この時、不活性ガスはヘリウム(He)、ネオン(Ne)、窒素(N
2)またはアルゴン(Ar)などであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0104】
また、本発明の一例による試料リザーバ基板は、
図10のように、MALDI質量分析用試料プレートから着脱可能に試料リザーバ基板の内部に磁石が具備されてもよく、この時、磁石は永久磁石を意味するものであってもよい。このために、MALDI質量分析用試料プレートの底面、すなわち、試料リザーバ基板が付着される面の対向面と結着される付着補助装備がさらに具備されてもよく、この付着補助装備も磁石が具備されたものであってもよい。この付着補助装備上にMALDI質量分析用試料プレートを結着させ、付着補助装備に具備された磁石の変位を調節することにより、付着補助装備に具備された磁石と試料リザーバ基板に具備された磁石とが互いに引き付けるか、または引き付けられないように調節して、試料リザーバ基板がMALDI質量分析用試料プレートに着脱または付着するようにすることができる。しかし、これは好ましい一例に過ぎず、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0105】
以下、本発明によるMALDI質量分析用試料プレートの製造方法を詳細に説明する。しかし、これは本発明によるMALDI質量分析用試料プレートの製造方法を一具体例を挙げて効果的に説明するためのものに過ぎず、これにより本発明が特定の態様に制限されて解釈されてはならない。また、後述のMALDI質量分析用試料プレートの製造方法に対する各構成要素が前述のMALDI質量分析用試料プレートの構成要素と共有及び適用可能であることは言うまでもない。
【0106】
本発明の一態様によるMALDI質量分析用試料プレートの製造方法は、プラスチック絶縁板の両面に金属薄膜を形成するステップと、前記プラスチック絶縁板を貫通するビアを形成するステップと、前記プラスチック絶縁板の両面の金属薄膜を選択的にエッチングして、一面には金属ドットを形成し、他面には下面金属層を形成するステップと、を含むことができる。この時、前記金属ドットと下面金属層はビアを介して電気的に連結されるものであってもよい。
【0107】
本発明の一態様によるMALDI質量分析用試料プレートの製造方法は、プラスチック絶縁板の両面に金属薄膜を形成するステップと、前記プラスチック絶縁板の両面の金属薄膜を選択的にエッチングして、一面には金属ドット及び上面金属層を形成し、他面には下面金属層を形成するステップと、前記プラスチック絶縁板の側面に接する金属薄膜を形成して側面金属層を形成するステップと、を含むことができる。この時、前記金属ドットと前記上面金属層は電気的に連結され、前記上面金属層と前記側面金属層は電気的に連結され、前記側面金属層と前記下面金属層は電気的に連結されるものであってもよい。
【0108】
本発明の一態様によるMALDI質量分析用試料プレートの製造方法は、プラスチック絶縁板の両面に金属薄膜を形成するステップと、前記プラスチック絶縁板の両面の金属薄膜を選択的にエッチングして、一面には金属ドット及び上面金属層を形成し、他面には下面金属層を形成するステップと、前記プラスチック絶縁板を貫通する金属ドットビアまたは金属層ビアを形成するステップと、前記プラスチック絶縁板の側面に接する金属薄膜を形成して側面金属層を形成するステップと、を含むことができる。この時、前記金属ドットと前記上面金属層は電気的に連結され、前記上面金属層と前記側面金属層は電気的に連結され、前記側面金属層と前記下面金属層は電気的に連結され、前記金属ドットと前記下面金属層はビアを介して電気的に連結されるものであってもよい。
【0109】
具体的な一例として、MALDI質量分析用試料プレートは、印刷回路基板(PCB;printed circuit board)をベースとして製造されたものであってもよいが、すなわち、前記プラスチック絶縁板に形成される金属層及びビアは印刷回路基板を製造する際に使用される通常的な方法により形成されたものであってもよい。
【0110】
まず、プラスチック絶縁板の両面に金属薄膜を形成するステップについて説明し、この時、プラスチック絶縁板は前述したものと同じ材料から準備されたものであってもよい。
【0111】
本発明において金属薄膜の形成方法は、印刷回路基板(PCB;printed circuit board)工程上、通常的に使用される方法であってもよく、例えば、化学的蒸着、物理的蒸着またはこれらを組み合わせて使用することができる。より具体的な一例として、無電解メッキ、電気メッキ、DCスパッタリング(DC sputtering)、マグネトロンスパッタリング、電子ビーム蒸着法(Ebeam evaporation)、熱蒸着法(Thermal evaporation)、レーザ分子ビーム蒸着法(LMBE、Laser Molecular Beam Epitaxy)、 パルスレーザ蒸着法(PLD、Pulsed Laser Deposition)、真空蒸着法、原子層蒸着法(ALD、Atomic Layer Deposition)及びプラズマ強化化学蒸着法(PECVD、 Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)などから選択される何れか一つまたは二つ以上の方法を並行して金属薄膜を形成することができ、必ずしもこれに限定されるものではない。この時、金属薄膜の厚さは目的に応じて調節可能であり、具体的には、例えば、0.1~30μmであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0112】
次に、前記プラスチック絶縁板を貫通するビアを形成するステップについて説明する。
【0113】
本発明の一例において、ビアはプラスチック絶縁板を貫通して、金属ドットまたは金属層と電気的に連結することができる形態であれば、特に限定しないが、プラスチック絶縁板を貫通する貫通ホールを形成した後、プラスチック絶縁板を貫通する貫通ホールの内面を金属でコーティングするか、または貫通ホールに金属プラグを押し込んで形成されることができる。
【0114】
本発明の一例において、貫通ホールの形成方法は、本発明が属する技術分野において通常的に使用されるものであれば、特に限定せず、例えば、ドリリングまたはLDA(Laser Direct Ablation)方式を使用して形成することができる。
【0115】
本発明の一例において、貫通ホールの内面の金属コーティングは特に限定されるものではないが、無電解メッキ、電気メッキまたはスパッタリングなどの方法により行われることができ、金属プラグの押し込みは伝導性物質を貫通ホールに詰めるか、貫通ホールの形状に製造された金属プラグを貫通ホールに挿入する方法により行われることができるが、電気的連結が可能にその貫通ホールの内面または貫通ホール全体を満たせる方法であれば制限しない。
【0116】
この時、金属コーティングまたは金属プラグは、金属層と同一または異なる金属であってもよく、例えば、金属元素物質などであってもよく、より具体的な一例として、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)及びこれらの合金などから選択される何れか一つまたは二つ以上を含むことができる。好ましく、優れた電気伝導性を確保しながらも、コストを節減する点で、銅(Cu)または銅合金を含むことができる。
【0117】
具体的な一態様として、ビアを形成するための貫通ホールを形成する前に、金属ドットと下面金属層は金属ドットビアを介して電気的に連結されなければならない場合などを含めて、各態様の場合に、金属ドット、金属層及びビアの位置とパターンを予め設計することが好ましい。
【0118】
次に、プラスチック絶縁板の両面の金属薄膜を選択的にエッチングするステップについて説明する。
【0119】
本発明の一例において、金属ドット、金属層などの形成方法はPCB工程の際に使用される方法であれば、特に限定せずに使用することができ、一例として、フォトリソグラフィにより金属ドット、金属層などで設計された領域の金属薄膜をマスキングした後、マスキングされていない領域の金属薄膜をエッチングして金属ドット、金属層などを形成することができる。
【0120】
この時、前述のように、下面金属層、金属ドットの位置及びパターンは電気的連結が可能に予め設計されることが好ましい。例えば、発明による試料プレートは、金属ドット-ビア-下面金属層の連結構造;金属ドット-ビア-下面金属層-側面金属層-上面金属層の連結構造;金属ドット-上面金属層-側面金属層-下面金属層の連結構造;金属ドット-上面金属層-金属層ビア-下面金属層の連結構造;などの多様な態様の連結構造を有することができ、このような多様な態様の連結構造によって金属層、金属ドットの位置及びパターンを適切に設計して試料プレートを製造することができる。
【0121】
本発明の一例において、フォトリソグラフィは通常的な方法により行われることができ、特に限定しないが、金属薄膜上にドライフィルムを付着し、露光及び現像して、金属ドット、金属層で設計された領域をマスキングすることができる。
【0122】
本発明の一例において、エッチング方法は特に限定しないが、乾式エッチング、湿式エッチングまたはこれらを組み合わせて使用することができる。具体的な一例として、乾式エッチングはプラズマエッチングなどであってもよく、湿式エッチングはエッチング液によるエッチングであってもよい。
【0123】
また、金属ドット、金属層などを形成した後、特定の領域のマスキングに使用されたレジストを除去する工程がさらに行われてもよいことは言うまでもない。
【0124】
このように製造されたMALDI質量分析用試料プレートを用いて通常的なMALDI質量分析方法によって、分析試料対象の質量を分析することができる。具体的に、MALDI質量分析用試料プレートの金属ドット上に分析対象試料をローディングし、レーザを照射して試料を着脱及びイオン化させることにより、前記分析対象試料の質量を分析することができる。
【0125】
以上のように、本発明の好ましい態様を説明したが、本発明は多様な変化と変更及び均等物を使用することができ、前記態様を適切に変形して同一に応用可能であることが明確である。したがって、前記の記載内容は、下記の特許請求の範囲の限界により定められる本発明の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0126】
100:プラスチック絶縁板
200:金属ドット
210:試料載置表面部
220:疎水性表面部
300:下面金属層
400(410):金属ドットビア
420:金属層ビア
500(510):上面金属層
520:側面金属層
600:試料リザーバ基板
700:ガス通路
800:磁石
900:疎水性表面部