(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】自動車の運転者支援装置を動作させる方法、運転者支援装置および自動車
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20220125BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220125BHJP
B60W 40/09 20120101ALI20220125BHJP
B60W 50/16 20200101ALI20220125BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20220125BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
B60W30/10
G08G1/16 C
B60W40/09
B60W50/16
B60W60/00
B60W40/04
(21)【出願番号】P 2019563206
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2018060970
(87)【国際公開番号】W WO2018210555
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2019-12-27
(31)【優先権主張番号】102017208159.7
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, D-30165 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン バイダーベック
(72)【発明者】
【氏名】フランツ ペルコーファー
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ グラーフ
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-157408(JP,A)
【文献】特開2008-120288(JP,A)
【文献】特開2015-000722(JP,A)
【文献】特開2012-093969(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0264147(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/10
G08G 1/16
B60W 40/09
B60W 50/16
B60W 60/00
B60W 40/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)の周囲領域のセンサデータ(10)を検出するステップを含み、前記周囲領域内には少なくとも1つの目標車両(6)が存在し、該目標車両(6)は、前記自動車(1)の前方で前記自動車(1)と同じ車線(4)上に位置する、
自動車(1)の運転者支援装置(2)を動作させる方法において、
前記自動車(1)の運転者(13)を表す少なくとも1つの運転者特性(12)を検出するステップと、
前記運転者特性(12)に基づき、前記運転者(13)を予め定められた運転者クラス(14)に割り当てるステップと、
前記運転者(13)の追い越し傾向(16)を表す、運転者クラスに固有の追い越し情報(15)を、該追い越し情報(15)に割り当てられた前記運転者クラス(14)に基づき読み込むステップと、
前記目標車両(6)に対する前記自動車(1)の追い越し過程(20)を評価する、前記運転者支援装置(2)の制御信号(18)を、追い越し情報が割り当てられている複数の基準制御信号(19)から、前記追い越し情報(15)と前記センサデータ(10)とに応じて選択するステップと、
前記制御信号(18)を前記運転者支援装置(2)により出力するステップと
を含
み、
前記追い越し情報(15)を、前記運転者(13)を特徴づける以下の特性、すなわち、指定速度(24)に対する走行速度(23)、または追い越し過程(20)が行われた後に再び車線に復帰するときの安全距離(37)のうちの少なくとも1つを含むトレーニングデータに基づき生成する、
ことを特徴とする、自動車(1)の運転者支援装置(2)を動作させる方法。
【請求項2】
前記追い越し情報(15)を、現在の天候状態(39)および/または現在の時刻および/または現在の曜日に応じて生成する、請求項
1記載の方法。
【請求項3】
前記自動車(1)の少なくとも1つの現在の動作パラメータ(30)を検出し、該動作パラメータ(30)および前記追い越し情報(15)に基づき、前記運転者(13)の追い越し意思(31)を識別し、識別された該追い越し意思(31)に応じて前記制御信号(18)を選択する、請求項1
または2記載の方法。
【請求項4】
前記運転者(13)の現在の生理学的に識別可能な指標(46)を検出し、該指標(46)を複数の基準指標と比較し、該比較に基づき前記運転者(13)の追い越し意思(31)を識別する、請求項1から
3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
現在の生理学的に識別可能な前記指標(46)として、苛立ち度(50)、および/または目の動き(48)、および/または前記運転者(13)から発せられる音(49)の音量、および/または前記運転者(13)から発せられる音(49)の意味論的意味を検出する、請求項
4記載の方法。
【請求項6】
前記センサデータ(10)および前記追い越し情報(15)および/または生理学的に識別可能な前記指標(46)に応じて、前記目標車両(6)に対する前記追い越し過程(20)のための個々の追い越し経路(34)を決定する、請求項
4または
5記載の方法。
【請求項7】
前記追い越し情報(15)を、前記運転者(13)の現在の車両運転に応じて、前記自動車(1)の動作中に適合させる、請求項1から
6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記自動車(1)の動作中に適合された前記追い越し情報(15)を、少なくとも1つの自動車外部の装置(51)に伝送する、請求項
7記載の方法。
【請求項9】
前記制御信号(18)により、前記目標車両(6)に対する前記自動車(1)の前記追い越し過程(20)のための追い越し可能指示(21)または警告指示(22)を、前記運転者支援装置(2)により出力する、請求項1から
8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記目標車両(6)に対する前記自動車(1)の前記追い越し過程(20)を、前記制御信号(18)に基づき少なくとも半自動で実施する、請求項1から
9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
請求項1から
10までのいずれか1項記載の方法を実施するように構成されている、評価ユニット(17)を備えた運転者支援装置(2)。
【請求項12】
請求項
11記載の運転者支援装置(2)を備えた自動車(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の運転者支援装置を動作させる方法に関する。提案される手法によれば、自動車の周囲領域のセンサデータが検出される。周縁領域には少なくとも1つの目標車両が存在する。目標車両は、自動車前方でこの自動車と同じ車線上に位置する。さらに本発明は、相応の方法を実施するように構成された、評価ユニットを備えた運転者支援装置に関する。本発明は、相応の運転者支援装置を備えた自動車にも関する。
【0002】
自動車の運転者支援装置を動作させる方法は従来技術から公知である。つまりたとえば、追い越し過程において運転者を支援する目的で、自動車の今後の追い越し経路を周囲センサデータまたはマップデータに基づき計算し、追い越し経路またはそれに基づく指示を出力することが知られている。
【0003】
本発明の課題は、自動車の追い越し過程をより確実に実施できるようにした方法、運転者支援装置ならびに自動車を提供することにある。
【0004】
この課題は、独立請求項に記載された方法、運転者支援装置ならびに自動車によって解決される。
【0005】
本発明による方法によれば、自動車の運転者支援装置が動作させられる。この方法は以下のステップを実施する。すなわち、
・自動車の周囲領域のセンサデータを検出するステップ。周囲領域内には少なくとも1つの目標車両が存在し、この目標車両は、特に自動車の走行方向で、自動車の前方に位置し、自動車と同じ車線に位置する。ここで重要な着想は、以下のとおりである。すなわち、
・自動車の運転者を表す少なくとも1つの運転者特性を検出するステップ。
・運転者特性に基づき、運転者を特定の運転者クラスに割り当てるステップ。
・運転者の追い越し傾向を表す、運転者クラスに固有の追い越し情報を、追い越し情報に割り当てられた運転者クラスに基づき読み込むステップ。
・目標車両に対する自動車の追い越し過程を評価する、運転者支援装置の制御信号を、追い越し情報が割り当てられている複数の基準制御信号から、追い越し情報とセンサデータとに応じて選択するステップ。
・制御信号を運転者支援装置により出力するステップ。
【0006】
本発明の基礎を成す着想は、運転者クラスに固有の追い越し情報によって、すなわち運転者の個々の走行の仕方を考慮することによって、追い越し過程をより安全に実施できる、ということである。
【0007】
特に追い越し情報は、様々な運転者クラスについてそれぞれ異なるように設けられている。追い越し情報によって、運転者の追い越し傾向もしくは追い越し操作時の運転者の走行傾向が表される。他方、運転者は運転者クラスに割り当てられている。運転者クラスはたとえば、1人の運転者のみを含むことができ、または複数の運転者を含むこともでき、このようにすれば運転者クラスを、複数の運転者の追い越し傾向に関する追い越し情報の一般化として用いることができる。
【0008】
追い越し情報を、特に単位なしの、数値ベクトルとして、または特に単位なしの、1つまたは複数の次元を含む数値行列として、設けることができる。次いで追い越し情報が、基準制御信号に割り当てられている追い越し情報と比較される。特に、最も類似した追い越し情報を有する基準制御信号が選択される。
【0009】
運転者が追い越し過程において自動車をどのように動作させるのか、もしくはどのような走行の仕方で動作させるのか、つまり運転者がどのような追い越し傾向をもっているのかが、追い越し情報を通してわかっている。自動車の動作に対するこのような特別な好みを、以下で説明する特性に基づき数値でマッピングすることができる。それらの特性は、自動車の構成要素の状態のパラメータもしくは値によって表されていることから、数値によっても表現させることができ、追い越し情報を生成するための機械学習に対する基礎とされる。追い越し情報を特に、制御信号を選択するための分類器として設けることができる。
【0010】
基準制御信号の追い越し情報によって特に様々なクラスが設けられており、運転者は比較に基づきそれらのクラスに割り当てられる。特に、各クラスによって異なる制御信号が供給される。したがって1つのクラスはたとえば、最大可能加速度による追い越し、という制御信号を供給する一方、別のクラスはたとえば、最大可能加速度の半分だけで追い越しが行われる制御信号を供給する。
【0011】
自動車の周囲領域が検出され、センサデータが供給される。周囲領域をたとえば、自動車の多種多様な周囲センサによって検出することができ、たとえばカメラ、レーダセンサ、ライダセンサ、レーザスキャナ、超音波センサ、またはこれらのセンサの組み合わせ、によって検出することができる。
【0012】
自動車の前方に目標車両が位置している。したがって自動車は、目標車両に向かって走行している。自動車は目標車両と同じ車線上に位置しており、このため自動車は、目標車両よりも速い速度で目標車両のところを通過するには、目標車両を追い越さなければならない。この状況で周囲領域が検出される。
【0013】
自動車の運転者から、運転者を表す特性が検出される。運転者特性をたとえば、自動車の車内カメラ、車両キーにおけるRFIDチップ(RFID - Radio-Frequency Identification)、または指紋リーダによって検出することができる。このため運転者特性を、運転者を好ましくは一義的に識別する特性とすることができる。
【0014】
運転者特性によって、運転者が予め定められた運転者クラスに割り当てられる。このことは特に、運転者クラスへの運転者特性のマッピングに基づき行われる。運転者クラスは、1人の運転者だけを単独で有することもでき、必ずしも複数の運転者を含まなくてもよい。
【0015】
割り当てられた運転者クラスには、追い越し情報が割り当てられている。追い越し情報は、運転者の追い越し傾向、または運転者が割り当てられている運転者クラスの追い越し傾向を表す。追い越し情報は、好ましくは運転者クラスごとに異なる。このため1つの運転者クラスはたとえば、追い越し過程に関していっそう多くのリスクを伴う運転者を含むことができる一方、別の運転者クラスは、いっそう僅かなリスクしか伴わない運転者を含むことができる。追い越し情報はたとえば、自動車または車両外部の装置の記憶装置から読み込まれる。
【0016】
追い越し情報およびセンサデータに応じて、運転者支援装置の制御信号が選択される。制御信号によって、目標車両に対する自動車の追い越し過程が評価される。ここで評価とは、たとえばリスクもしくはリスクの確率を追い越し過程のために求めることである。ただし評価は、追い越し過程を安全に実施できるのか、または追い越し過程を安全には実施できないのかを判定する、ということを意味するものであってもよい。評価をたとえば、データ分析、データ処理、データ変換、データモデリングの手法を用いて実施することができ、さらに機械学習および人工知能の手法を用いても、たとえばニューラルネットワーク、SVM法(SVM - support vector machine)、ディープラーニング、KNN(KNN - k-nearest-neighbour)、回帰、または同様の手法を用いても、実施することができる。
【0017】
制御信号は運転者支援装置によって出力される。制御信号によって、たとえば視覚的および/または音響的および/または触覚的な指示をトリガすることができる。ただし制御信号によって、少なくとも半自動でもしくは案内されて実施される自動車の追い越し過程をトリガすることもできる。この文脈において少なくとも半自動とは、自動車の操舵および/または自動車の加速が自動的に、すなわち人間の運転者が実質的に介入することなく行われる、ということを意味する。
【0018】
好ましくは、運転者を特徴づける以下の特性のうちの少なくとも1つを含むトレーニングデータに基づき追い越し情報を生成する、ということが考えられる。つまりトレーニングデータは、複数の特性のうちの少なくとも1つを有する。したがってたとえば、指定速度に対する走行速度として、追い越し過程が行われた後に再び車線に復帰するときの安全距離として、または追い越し過程が行われる前の目標車両までの車線逸脱距離として、特性を設けることができる。
【0019】
ただし特性を特に、追い越し過程開始時の自動車の車線逸脱角度によって設けることもできる。車線逸脱角度によって、追い越し過程開始時に自動車が車線に対する横方向運動を車線長手軸線に対しどのような角度で実施するのか、が表される。ただし特性としてたとえば、車線復帰角度、加速プロファイル、自動車の余力の利用度、追い越し過程前または追い越し過程開始時の目標車両に対する距離挙動、加速挙動、ギヤシフト挙動、制動挙動、目標車両に対する接近速度挙動も考えられる。その際に指定速度はたとえば、推奨速度または法定速度制限として設けられている可能性がある。次いで追い越し情報がたとえば、トレーニングデータによる機械学習によって生成される。次いで追い越し情報が運転者クラスに割り当てられ、またはそうではなく運転者クラスが個々の追い越し情報によって生成される。つまり指定速度に対する走行速度によって、運転者が追い越し過程時に、目標車両を追い越す目的でたとえば短時間、指定速度を超えるか否か、に関する情報を形成することができる。次いで、運転者の傾向に応じて制御信号が選択される。
【0020】
ただし、追い越し過程が行われた後に再び車線に復帰する際に運転者が好んで広い安全距離をとりたいのか、または追い越し過程が行われた後に目標車両に対しそれよりも狭い安全距離をとりたいのか、に従って制御信号を選択することもできる。つまり、安全距離が距離限界値を上回っているのかまたは下回っているのか、である。この距離をたとえばメートルの単位で設けることができる。つまり相当数の運転者は、好んで広い安全距離を伴って、したがってたとえば複数の車両長を伴って、目標車両の前方で再び車線に復帰し、他の相当数の運転者にとってはたとえば、安全距離が1台の車両の長さとなればすでに十分である。この場合、1つめのケースでは運転者はたとえば、追い越し傾向の第1のクラスに割り当てられ、2つめのケースでは第2のクラスに割り当てられる。第1のクラスでは好ましくは第1の基準制御信号が設けられており、第2のクラスでは好ましくは、第1の基準制御信号とは異なる第2の基準制御信号が設けられている。
【0021】
目標車両までの車線逸脱距離も、特性として設けることができる。目標車両までの車線逸脱距離は、目標車両のどのくらい手前で自動車が車線を側方に、もしくは少なくとも部分的に横方向の動きを伴って、離れるのかを表す。
【0022】
加速プロファイルも特性として用いることができる。加速プロファイルは、自動車が追い越し過程の様々なフェーズにおいてどのような加速度値で動作させられるのか、を表す。つまり自動車はたとえば、追い越し過程開始時には、追い越し過程終了時よりも強く加速される可能性があり、またはそうではなくこの逆の可能性があり、またはそうではなく自動車は追い越し過程の中程でのみ強く加速される一方、追い越し過程開始時および追い越し過程終了時には、中程のフェーズ中よりも弱くしか加速されない。
【0023】
特性として、加速挙動も設けることができる。加速挙動はたとえば、運転者が自動車をどのように加速するのかを表すことができる。つまりたとえば、アクセスペダルが完全に踏み込まれるかもしれないし、またはそうではなく部分的にしか踏み込まれないかもしれない。このことは、それぞれ異なる余力利用度に対応する。たとえば追い越し過程開始時に、もっと高い回転数領域に到達させる目的で、少なくとも1段だけシフトダウンされる場合もある。したがってギヤシフト挙動も特性として設けることができる。つまり、追い越し過程開始前または追い越し過程中の1段低いギヤ段へのシフトを、たとえば第1のクラスに割り当てることができ、他方、追い越し過程前または追い越し過程中のギヤ段の維持は、第2のクラスに割り当てられる。これらの特性を含むトレーニングデータに基づき追い越し情報を生成することによって、運転者支援装置をより安全に動作させることができる。
【0024】
さらに好ましくは、追い越し情報を現在の天候状態および/または現在の時刻および/または現在の曜日に応じて生成する、ということが考えられる。好ましくは追い越し情報を、現在の交通密度および/または現在の道路カテゴリに応じて生成することもできる。現在の天候状態においてたとえば、雨が降っているのか、雪が降っているのか、外気温が何度であるのか、を予め設定することができ、さらにこの場合にやはり、運転者の追い越し傾向が天候状態に応じてどのような挙動をとるのか、を予め設定することができる。つまりたとえば、車道が濡れているとき、またはそうではなく車道が氷で覆われているときには、車道が乾いているとき、および/または車道が凍っていないときにするであろうよりも希にしか、追い越しを行わない運転者が存在する。
【0025】
さらに追い越し情報を、たとえば現在の時刻に応じて生成もしくはトレーニングすることができる。つまりたとえば、朝早くは仕事に行く途上で、かつ/または夕方は仕事から家に戻る途上で、たとえば仕事時間中に該当するよりも、いっそう多くのリスクを伴って走行し、つまりはいっそう頻繁に追い越しを行う運転者が存在する。たとえばこれとは逆のケースが起こる可能性もあり、したがって仕事時間中のほうが頻繁に追い越しが行われ、それというのもその場合には重要な期日を遵守しなければならないからである。追い越し情報を現在の曜日に応じて生成することも考えられる。つまり、運転者はたとえば平日には、休日または労働日以外に運転者が追い越しを実行するよりも頻繁に追い越しを行う、という可能性がある。交通密度もしくは交通量も、追い越し情報を生成するための特性として利用することができる。つまりたとえば、交通量が少ないときだけしか追い越しを行わない運転者が存在し、それというのもその場合には追い越し状況を一般にいっそう見通しやすいからである。ただしこれとはまったく逆のケースの可能性もあり、したがって交通量が多いときこそ、追い越しによってもっと速く目的地に到着しようと試みられるのである。特性として道路カテゴリを用いることによっても、追い越し情報を生成することができる。道路カテゴリによって1つの道路網内の道路が、道路維持負担義務、設計標準または利用制限に関して分類される。つまり運転者はたとえば幹線道路上では、郊外または地方の道路上で追い越すのとは異なるように追い越しを行う。
【0026】
さらに好ましくは、自動車の現在の動作パラメータを検出し、この動作パラメータおよび追い越し情報に基づき運転者の追い越し意思を識別し、識別された追い越し意思に応じて制御信号を選択する、ということが考えられる。その際に動作パラメータをたとえば、トレーニングデータの特性と一致させることができる。したがってたとえば動作パラメータによって、追い越し情報との類似性を有する特定の距離挙動または特定の加速挙動を検出することができる。この目的で動作パラメータを、追い越し情報と比較することができ、次いでたとえばこの比較に基づき、類似しているまたは類似していないとして分類することができる。動作パラメータが追い越し情報と類似していると見なされたならば、それによってたとえば、運転者に追い越し意思があると逆に推定することができる。識別された追い越し意思に応じて、たとえば制御信号によって、追い越し過程を特定の距離においてリスクなく行えるであろう、という指示を、またはそうではなく、次の道程区間では追い越しの可能性がまったくないことから、現在の追い越しの可能性を利用すべきである、という指示を、運転者に出力することができる。
【0027】
さらに好ましくは、運転者の現在の生理学的に識別可能な指標を検出し、この指標を複数の基準指標と比較し、その際にこの比較に基づき運転者の追い越し意思を識別する、ということが考えられる。生理学的に識別可能な指標によって、運転者の体に関係する挙動が表される。つまりたとえば、運転者は追い越し過程前には通常、追い越し意思のないときに行うであろうよりもしっかりと自動車のハンドルを握る、という可能性がある。そうではなくたとえば、追い越し意思のある運転者は、追い越し意思がないときに行うであろうよりも頻繁にまばたきをする、という可能性もある。追い越し意思を識別することによって、やはり制御信号の選択をそれに応じて行うことができ、自動車をより安全に動作させることができる。
【0028】
さらに好ましくは、現在の生理学的に識別可能な指標として、苛立ち度、および/または目の動き、および/または運転者から発せられる音の音量、および/または運転者から発せられる音の意味論的意味を検出する、ということが考えられる。苛立ち度をたとえば、運転者の額における汗の形成に基づき、またはそうではなく運転者の手のひらの汗の面積に基づき、求めることができる。汗の形成をたとえば自動車のセンサによって、たとえばカメラによって、検出することができる。運転者から発せられる音を、たとえば発言とすることができ、またはそうではなく自動車内の物体への一撃とすることができる。音が運転者の発言であるケースであれば、たとえば発言の意味論的意味を音声認識プログラムによって検出することができる。運転者がたとえば叫んだり、または罵ったりしたケースでは、そのことをたとえば追い越し意思の示唆として評価することができる。このことが有利であるのは、制御信号をやはり追い越し意思に応じて選択できるからである。したがって、追い越し意思が識別されたが、運転者の追い越し傾向を考慮すると追い越しが不可能であるケースでは、運転者にたとえば警告指示を出力することができる。これによってやはり、自動車をより安全に動作させることができる。
【0029】
さらに好ましくは、センサデータおよび追い越し情報および/または生理学的に識別可能な指標に応じて、目標車両に対する追い越し過程のための個々の追い越し経路を決定する、ということが考えられる。つまりたとえば、運転者が普段はのんびりと追い越しを行い、その際に自動車の余力を使い切らないことが追い越し情報を通してわかっている、という可能性がある。したがってたとえば、このケースにおいて余力を使い切ることが追い越し過程成功の前提条件である場合には、目前に迫っている追い越しの可能性に対する指示を運転者に与えることはできない。しかし、自動車の余力を使い切り、基本的にいっそうリスクを厭わない運転者には、このケースにおいて追い越し提案を出力することができる。
【0030】
たとえば、生理学的に識別可能な指標に基づき、運転者が特にリラックスした状態にあることが識別され、それゆえどちらかといえばゆったりとした追い越し操作を前提とすべきである、という可能性もあるし、またはそうではなく運転者が特に緊張して興奮しており、そのため運転者が現在、慎重な行動をとれるとは思われないことから、運転者に追い越し提案が出力されない、という可能性もある。つまりこのことによってやはり、自動車をより安全に動作させることができる。
【0031】
さらに好ましくは、運転者の現在の車両運転に応じて、特にオンライントレーニングを通して、自動車の動作中に追い越し情報を適合する、ということが考えられる。したがって運転者の現在の車両運転が、これには特に自動車の動作パラメータも含まれるが、検出されて、追い越し情報が適合される。この場合、運転者の現在の車両運転をたとえば、追い越し情報の生成に使用されるトレーニングデータの特性を用いて表すこともできる。追い越し情報の適合のために、追い越し情報を絶えず最新の状態で正確に維持することができる。したがって運転者の追い越し傾向が、たとえば時間が経過するにつれて変化する可能性がある。運転者がたとえば年をとり、それによっていっそうリラックスするようになる可能性もあるし、またはそうではなく特定の追い越し状況ではリスクを厭わないことが少なくなる可能性もある。
【0032】
自動車の動作中に追い越し情報を適合することよって、ごく僅かにしか適合されていない最初に存在している追い越し情報を用いてスタートさせることもできる。つまりこの方法を、最初に存在している僅かなトレーニングデータを用いて実施することもできる。その理由は、追い越し情報が継続的に自動車の動作中に適合され、それによって改善されるからである。オンライントレーニングは、分類器が稼働動作中に適合される機械学習法を表す。つまり分類器は、事前にその分類器が自分でクラスに割り当てたトレーニングサンプルを用いてトレーニングされる。これに対し最初のトレーニングデータは通常は手動で、つまり人間の手によって、クラスに割り当てられる。
【0033】
さらに好ましくは、自動車の動作中に適合された追い越し情報を、少なくとも1つの自動車外部の装置に伝送する、ということが考えられる。この場合に自動車外部の装置を、たとえば1つの外部のサーバとして、またはそうではなく複数の外部のサーバとして、構成しておくことができる。したがって適合された追い越し情報を、たとえばいわゆるコンピュータクラウドに、つまりは分散コンピュータネットワークに、伝送することができる。その際にこの装置を、定置型、分散型、または集中型で設けることができる。適合された追い越し情報をこの装置に伝送することによって、他方ではそれらの追い越し情報をさらに別の自動車に送信することができる。追い越し情報の基礎を成すモデルを、適合された追い越し情報によって適合することもできる。このことは、追い越し情報のデータバックアップとしても有利である。つまり追い越し情報がたとえば、自動車の記憶装置から消去される可能性があり、またはそうではなく新車両においてはまだまったく存在していない可能性があり、追い越し情報のデータバックアップを通してリストアすることができる。
【0034】
さらに好ましくは、制御信号により、目標車両に対する自動車の追い越し過程のための追い越し可能指示または警告指示を、運転者支援装置により出力する、ということが考えられる。追い越し可能指示によって、追い越し過程が可能であるというたとえば視覚的および/または音響的および/または触覚的な指示を、自動車の運転者に出力することができる。警告指示によって自動車の運転者に、たとえばやはり視覚的および/または音響的および/または触覚的に、追い越し過程がたとえば現在、特定の区間または特定の期間については実施不可能である、ということが出力され、またはそうではなく、追い越し過程が運転者の追い越し傾向に逆らって進行することになってしまう、つまりたとえば過度に速く加速することになってしまう、またはそうではなく目標車両の前で過度にぎりぎりに車線に復帰することになってしまう、というかたちであるならば実施可能である、ということが出力される。追い越し可能指示および/または警告指示によって、自動車をより安全に動作させることができる。それというのも、不慣れな状況または不快な状況が運転者にもたらされないからである。
【0035】
さらに好ましくは、目標車両に対する自動車の追い越し過程を、制御信号に基づき少なくとも半自動で実施する、ということが考えられる。半自動の追い越しによって、たとえば操舵介入制御および/または加速もしくは制動の介入制御を行うことができる。したがって自動車の運転者は少なくとも半自動の追い越しであっても、運転者の追い越し傾向が考慮されるように、自動車内で行動させられる。ただし追い越し過程を全自動で実施することもでき、この場合には運転者は傍観者または監視者として自動車内にいるだけとなる。このケースであっても、運転者が追い越しを自動車の手動運転時に自分で行っているかのように、自動車が追い越し時に振る舞うのであれば、運転者はいっそう快適に感じることになる。
【0036】
本発明は、評価ユニットを備えた運転者支援装置にも関する。運転者支援装置もしくは運転者支援システムは、本発明による方法を実施するように構成されている。評価ユニットをたとえば、プロセッサを備えた計算ユニットとして構成しておくことができる。評価ユニットはたとえば、内部メモリまたは外部メモリを有することができる。
【0037】
運転者支援装置をたとえば、追い越し支援手段または追い越し提案支援手段または追い越し警告支援手段として構成することができる。
【0038】
本発明はさらに、本発明による運転者支援装置を備えた自動車に関する。この自動車は特に、乗用車として構成されている。特にこの自動車を、少なくとも半自動で動作させることができる。
【0039】
本発明による方法の有利な実施形態を、運転者支援装置および自動車の有利な実施形態と見なすことができる。運転者支援装置および自動車の具体的な構成要素はそれぞれ、個々の方法ステップを実施するように構成されている。
【0040】
本発明のさらなる特徴は、特許請求の範囲、図面ならびに図面の説明から明らかになる。上述の記載において本明細書で挙げた特徴および特徴の組み合わせ、ならびに以下の記載において図面の説明で挙げる、かつ/または図面のみに示されている、特徴および特徴の組み合わせは、それぞれ記載した組み合わせだけでなく、他の組み合わせでも、または単独でも、本発明の範囲を逸脱することなく適用することができる。
【0041】
次に、概略図を参照しながら、本発明の実施例について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】運転者支援装置を備えた本発明による自動車の実施例と目標車両とを1つの車線上で概略的に示す上面図である。
【
図2】車線上の自動車を追い越し経路と共に概略的に示す上面図である。
【
図3】自動車内に座っている運転者を側方から眺めた様子を示す概略図である。
【
図4】運転者支援装置を動作させるための本発明による方法の実施例を示すフローチャートである。
【0043】
図中、同じ要素または機能的に同じ要素には同じ参照符号が付されている。
【0044】
図1には、運転者支援装置2を備えた本発明による自動車1の実施例が示されている。自動車1は車道3上に存在している。この実施例によれば、車道3は車線4と別の車線5とを有する。自動車1は車線4上に位置している。
【0045】
走行方向において自動車1の前方で車線4上に、目標車両6が位置している。目標車両6はたとえば移動しているかもしれないし、そうではなく停止した状態にある可能性もある。
【0046】
車道3をたとえば、自動車1が目標車両6を追い越すことのできる幹線道路、高速道路または他の任意の道路の一部とすることができる。車線4と別の車線5とは、この実施例によれば路面標識7によって分けられている。路面標識7は特に、誘導ラインとして形成されている。車線4は側方で、路面標識7と路端標識8とによって区切られている。路端標識8は特に、車道境界として形成されている。
【0047】
さらに自動車1は周囲センサ9を有する。周囲センサ9をたとえば、カメラ、レーダセンサ、超音波センサ、ライダセンサ、またはレーザスキャナとして構成することができる。自動車1はたとえば、複数の周囲センサ9を有することもできる。周囲センサ9によって、自動車1の周囲領域11のセンサデータ10が検出される。周囲領域11は、自動車1を少なくとも部分的に取り囲んでいる。周囲領域11には、つまりはセンサデータ10にも、目標車両6が少なくとも部分的に含まれている。センサデータ10をたとえば、自動車1の様々な種類の周囲センサ9からのセンサデータを融合することによって供給することもできる。
【0048】
センサデータ10の検出前または検出後、
図3に示されているように、自動車1の運転者13の運転者特性12が検出される。運転者特性12により、運転者13が描写される。運転者特性12をたとえば、(本明細書においてもっと後で説明する)多種多様な手法で運転者13が自身の身元を同定することで、またはそうではなく運転者13であるということが識別されることで、設定しておくことができる。この識別をたとえば、特有の運転スタイルに基づき行うことができる。
【0049】
運転者特性12に基づき、運転者13が1つの運転者クラス14に割り当てられる。この割り当てをたとえば、運転者特性12が個々の運転者クラス14の1つの特性と最も類似している運転者クラス14に運転者が割り当てられる、というようにして行うことができる。
【0050】
運転者クラス14により、運転者13は以下のようにして分類される。すなわち運転者13はここではたとえばリスクを厭わない運転者として、またはそうではなくのんびりとした運転者として、またはそうではなく安全意識が高い運転者として、またはそうではなくゆっくりと走行する運転者として、またはそうではなく速く走行する運転者として、分類される。運転者クラス14にたとえば複数の運転者13を割り当てることができ、つまり運転者クラス14はそれゆえに複数の運転者13についての一般化を表現している。ただし、運転者クラス14が運転者13に固有に設けられており、したがって各運転者クラス14が運転者13のうちの1人だけしか有していない、というようにしてもよい。
【0051】
次いで運転者クラス14に基づき、1つの運転者クラスに固有の追い越し情報15が読み込まれる。特に各運転者クラスは、それぞれ異なる追い越し情報15を有する。追い越し情報15によって、運転者13の追い越し傾向16が表される。ただし運転者クラスに固有の追い越し情報15によって好ましくは、運転者13と同じ運転者クラス14に割り当てられている他の運転者の追い越し傾向も表される。追い越し情報15は、特に運転者支援装置2によって読み込まれる。特にこの読み込みは、運転者支援装置2の評価ユニット17によって行われる。評価ユニット17はたとえば、プロセッサおよびコンピュータ可読記憶装置を有する。
【0052】
次いで追い越し情報15およびセンサデータ10に基づき、運転者支援装置2の制御信号18が選択される。制御信号18は、複数の基準制御信号19から選択される。たとえば運転者支援装置2内に複数の基準制御信号19を記憶させておくことができる。制御信号18によって、目標車両6に対する自動車1の追い越し過程20が評価される。したがってたとえば、追い越し情報15およびセンサデータ10に基づき、運転者13の追い越し意図があるのか、かつ/または追い越しが現時点で可能なのかまたは以降の時点で可能なのか、について評価される。
【0053】
したがってこの評価は特に、センサデータ10に基づくだけでなく、運転者クラスに固有の追い越し情報15にも基づいて実施される。公知の追い越し支援によれば、追い越し過程20の評価は、センサデータ10に基づいてしか実施されない。しかしながら追い越し情報15によって、運転者13の追い越し傾向16もさらに考慮される。
【0054】
各運転者はそれぞれ異なる追い越し傾向16を有するので、追い越し情報15は重要である。ある運転者はたとえば、他の運転者よりもリスクを厭わず、ある運転者は自動車1の余力を完全に使い切る一方、他の運転者は余力の一部しか使わない。
【0055】
最終的に、制御信号18が運転者支援装置2によって出力される。制御信号18によって特に、追い越し可能指示21または警告指示22が出力される。追い越し可能指示21によって運転者13に対したとえば、追い越し過程20がその運転者の追い越し傾向16によって可能である、ということが通報される。警告指示22によって運転者13に対したとえば、追い越し過程20がその運転者の追い越し傾向16によっては不可能である、ということが通報される。
【0056】
ただし制御信号18によって自動車1は追い越し過程20を、追い越し可能指示21または警告指示22の出力を補うかたちで、またはその代替として、少なくとも半自動で実施することができる。つまり、たとえば自動的な操作介入制御および/または自動的な加速もしくは減速を、制御信号によってもたらすことができる。
【0057】
追い越し情報15は特に、運転者13を特徴づける特性を有するトレーニングデータに基づき生成される。この特性をたとえば、指定速度24に対する自動車1の走行速度23とすることができる。この場合、指定速度24はたとえば、車道3の脇に配置された交通標識25に記載されている。
【0058】
ただしこの特性を、加速プロファイル、自動車1の余力の利用、加速挙動、ギヤシフト挙動、制動挙動、目標車両6に対する距離挙動26、目標車両6に対する接近速度挙動27として設けることもできる。
【0059】
とはいえこの特性をたとえば、路面標識と自動車1との間の横方向距離28として設けることもできる。さらにこの特性をたとえば、横方向走行プロファイル29によって設けることもできる。横方向走行プロファイル29によれば、横方向距離28が経時的に記録されて考慮される。横方向走行プロファイル29によってたとえば、目標車両6の先を見渡せるように、運転者13が特定のインターバルで路面標識7に繰り返し近づくように走行している場合を、または路面標識7を短時間だけ越えて走行している場合を、識別することができる。
【0060】
自動車1が目標車両6の後方で走行している間、自動車1の動作パラメータ30が検出される。動作パラメータ30は、自動車1の走行中に現在の検出された追い越し情報の特性を含む。次いで、動作パラメータ30を追い越し情報15と比較することによって、たとえば運転者13の追い越し意思31を識別することができる。したがって動作パラメータ30のうちの1つと追い越し情報15の1つの特性との間の類似性が、類似性限界値よりも類似しているケースであれば、運転者13は追い越し意思31を追い求めており、自動車1によって目標車両6を追い越すことを望んでいる、ということを前提とすることができる。
【0061】
その後、追い越し意思31が識別された結果としてたとえば、追い越し可能指示21を、またはそうではなく警告指示22を、出力することができる。
【0062】
図2には、自動車1が
図1と同様に車道3上で目標車両6の後方に示されている。自動車1は車両長32を有し、目標車両6の後方で距離33をおいて走行している。運転者13により個々に選択された目標車両6までの距離33も、追い越し情報15に含められるトレーニングデータの1つの特性である。
【0063】
次いで、追い越し情報15とセンサデータ10とに応じて、追い越し経路34が決定される。この場合、追い越し経路34は、運転者13の追い越し傾向16に従うならば自動車1が走行するであろう走行経路もしくは走行軌跡である。つまり追い越し経路34によって、運転者13が自動車1を自分で操縦しているときに運転者13が目標車両6をどのように追い越すのかが、予め想定され、ただし、自動車1が少なくとも半自動で動作させられるケースでは、運転者13が追い越し過程20をどの程度快適に感じるかについても、予め想定される。たとえば、追い越し過程20が追い越し傾向16に従うのが望ましいかぎりは、1つの運転者クラス14については追い越し過程20が可能である一方、別の運転者クラス14については追い越し過程20が不可能である、といったことが起こり得る。
【0064】
追い越し経路34によって、追い越し情報15のためのトレーニングデータのさらに別の特性が準備される。
【0065】
つまり特性としてたとえば、車線逸脱角度35が設けられており、これはたとえば、追い越し経路34が路面標識7と交差する個所における路面標識7と追い越し経路34との間の角度を表す。さらに、追い越し過程20を開始するときの自動車1から目標車両6までの車線逸脱距離36によって、特性が設定されている。
図2の実施例によれば、車線逸脱距離36は距離33と等しい。これらに加え、トレーニングデータのさらに別の特性として、追い越し過程20が行われた後、再び車線に復帰するときの安全距離37が設けられている。安全距離37は、必要とされる車線復帰距離38に従い車線復帰時にいわば自発的に保たれる距離であり、その目的は、いまや後ろで走行中の目標車両に安心感を伝えるためであり、またはそうではなく目標車両6が予期せずに加速したケースでは事故を回避するためである。ただし、安全距離37を補うかたちで、またはその代替として、自動車1により必要とされる車線復帰時間も、追い越し情報15のための特性として予め設定することができる。
【0066】
追い越し経路34は特に、運転者13の個々の加速プロファイルと、自動車1の余力を使い切ることに対する運転者13の態勢と、指定速度24に対して選定された走行速度23とに依存する。
【0067】
さらに追い越し情報15の特性として、現在の天候状態39、現在の時刻、現在の曜日、交通密度、または道路カテゴリも、予め設定することができる。たとえば、自動車1の周囲領域11における明るさの度合いも検出することができ、追い越し情報の特性として追い越し情報のトレーニングに含めることができる。つまり運転者はたとえば、昼光のときのほうが夕暮れまたは夜間に走行するよりも、リスクを厭わずに走行をすることができる。
【0068】
図3には、自動車1を部分的に側方から眺めた様子が示されている。自動車1の車内40において、運転者13がシート41に座っている。さらにこの実施例による自動車1は、ハンドル42、ディスプレイユニット43、車内カメラ44、およびスピーカ45を有する。
【0069】
追い越し可能指示21および/または警告指示22を、自動車1の車内40において視覚的および/または触覚的および/または音響的に出力することができる。したがってこの出力をたとえば、シート41のバイブレーション、ハンドル42のバイブレーション、ディスプレイユニット43による表示、またはスピーカ45による音響出力により行うことができる。追い越し可能指示21ならびに警告指示の出力は、情報の再生だけにとどまらず、バイブレーションの目的でシート41もしくはシート41のアクチュエータおよび/またはハンドル42もしくはハンドル42のアクチュエータへの電圧の印加、および/または画素もしくは発光ダイオードをアクティベートする目的でディスプレイユニット43への電圧の印加、を含む。
【0070】
さらに別の実施例によれば、現在の、生理学的に識別可能な運転者13の指標46が検出される。指標46をたとえば、苛立ち、目の動き、叫び声、発汗、またはその他の特有のアクションとして、予め設定しておくことができる。生理学的に識別可能な指標46は、運転者13の体に関係する挙動である。指標46を、追い越し情報15と同様にトレーニングすることができる。指標46と複数の基準指標との比較に基づき、運転者13の追い越し意思31が識別される。
【0071】
指標46をたとえば、車内カメラ44、マイクロフォン47、または特には図示されていない脈拍測定器または呼吸頻度測定器、または同様に特には図示されていない発汗測定器によって、検出することができる。
【0072】
つまり指標46は特に、運転者13の苛立ち度50、および/または運転者13の目の動き48、および/または運転者13から発せられる音49である。ただし、運転者13から発せられる音49の意味論的意味を検出することもできる。したがってたとえば運転者13の発言を、運転者支援装置2の音声認識プログラムによって、罵言として識別することができる。
【0073】
苛立ち度50を、たとえば呼吸頻度に基づき識別することができる。
【0074】
運転者特性12の検出をたとえば、車内カメラ44、マイクロフォン47、シート41のシートセッティング、無線受信機、または指紋リーダによって行うことができる。ただし運転者特性12を、運転者13自身の走行スタイルとしてもよいし、または自動車1の操作部材、特に方向指示器、アクセルペダルまたはブレーキペダル、の特有の操作としてもよい。
【0075】
図4には、方法のフローチャートが示されている。ここでは以下のステップを、様々な順序で実施することができる。ステップS1において、センサデータ10および動作パラメータ30が検出される。つまり一般的に言えば、車両データ、車両信号、センサデータ、さらにたとえばバックエンドデータも、車両外部のサーバによって受信される。ステップS2において、追い越し情報15がトレーニングもしくは学習または分析される。次いでステップS3において、追い越し情報15を準備することができる。追い越し情報15を、たとえば自動車1から自動車外部の装置51へ伝送することもできる。特に追い越し情報が自動車外部の装置51に伝送されるのは、追い越し情報が自動車1の動作中、現在の検出された特性、たとえば動作パラメータ30に含まれている特性、に基づき適合されるときである。次いで自動車外部の装置51から、追い越し情報15をたとえば別の自動車に送信することができる。自動車外部の装置51は、たとえばコンピュータクラウドとして設けられており、これをたとえば定置型、分散型、または集中型で設けることができる。
【0076】
ステップS4において、個々の追い越し経路34が計算される。ステップS5において、追い越し意思31が識別される。
【0077】
追い越し情報15のトレーニングは、好ましくは機械学習および人工知能の方式によって行われ、特にニューラルネットワーク、SVM法(SVM - support vector machine)、ディープラーニング、KNN(KNN - k-nearest-neighbour)、または回帰によって行われる。トレーニングをたとえば、自動車1の内部において、またはそうではなく車両外部の装置51において、行うことができる。
【0078】
追い越し経路34を計算するためのさらに別の入力量としてたとえば、自動車1の重量、自動車1の電動化、自動車1の物理的抵抗、が考慮される。
【0079】
追い越し情報15をたとえば、携行可能な車両キーに格納しておくことができ、またはすでに述べたように車両外部の装置51に格納しておくことができ、このようにすれば運転者13は車両を乗り換えたときに、たとえばレンタカーに乗り換えたときに、追い越し情報をいっしょに持って行くことができる。好ましくは追い越し情報15は運転者クラス14を通して、たとえばそれぞれ異なる装備、特に電動化、を伴う種々の車両への伝送が可能になるように、抽象化もされている。
【0080】
さらに考えられるのは、適合された追い越し情報15を複数の自動車から、いわゆるスウォームデータとして、車両外部の装置51に伝送し、そこからさらに別の自動車に分配することである。このようにすればたとえば、以降に行われる他の運転者の最初の学習を加速させることができる。
【符号の説明】
【0081】
1 自動車
2 運転者支援装置
3 車道
4 車線
5 別の車線
6 目標車両
7 路面標識
8 路端標識
9 周囲センサ
10 センサデータ
11 周囲領域
12 運転者特性
13 運転者
14 運転者クラス
15 追い越し情報
16 追い越し傾向
17 評価ユニット
18 制御信号
19 複数の基準制御信号
20 追い越し過程
21 追い越し可能指示
22 警告指示
23 走行速度
24 指定速度
25 交通標識
26 距離挙動
27 接近速度挙動
28 横方向距離
29 横方向走行プロファイル
30 動作パラメータ
31 追い越し意思
32 車両長
33 距離
34 追い越し経路
35 車線逸脱角度
36 車線逸脱距離
37 安全距離
38 必要とされる車線復帰距離
39 天候状態
40 車内
41 シート
42 ハンドル
43 ディスプレイユニット
44 車内カメラ
45 スピーカ
46 指標
47 マイクロフォン
48 目の動き
49 音
50 苛立ち度
51 自動車外部の装置