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特許7014829電子機器、電子機器における二次電池の残量表示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】電子機器、電子機器における二次電池の残量表示方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20220125BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
H02J7/00 X
H02J7/00 Y
H01M10/48 P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020016937
(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公開番号】P2021125937
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 昌平
(72)【発明者】
【氏名】吉池 洋一
(72)【発明者】
【氏名】角田 昌二
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-223852(JP,A)
【文献】特開2014-134391(JP,A)
【文献】特開2018-170815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池からの電源供給によって出力部にデータの出力を行う電子機器において、
前記二次電池の満充電状態時における端子電圧値に対応する前記二次電池の残量を100%とし、前記電子機器の作動に必要な最低限度の前記端子電圧値に対応する前記二次電池の前記残量を0%として、前記二次電池の前記残量が100%から0%の間における所定残量ごとに前記二次電池の前記端子電圧値が紐づけられ、前記二次電池の異なる消耗状態に対応させた複数種類の残量表示用テーブルが予め記憶されている記憶部と、
前記二次電池の前記端子電圧値を計測する電圧値計測部と、
前記電圧値計測部に、前記二次電池の満充電状態から前記電子機器の作動に必要な最低限度の前記端子電圧値までの間において、所定時間ごとに前記端子電圧値を計測させて計測端子電圧値と前記所定時間の累計値である所定時間累計値とを紐づけした実測値テーブルを作成すると共に前記記憶部に記憶させる処理と、
前記実測値テーブルにおける特定所定時間累計値に紐づけされた前記計測端子電圧値と、前記記憶部に記憶されている複数種類の前記残量表示用テーブルにおける前記特定所定時間累計値に該当する前記所定残量に紐づけられた前記端子電圧値とを比較し、両者の差が最も少ない前記残量表示用テーブルを前記記憶部から抽出すると共に、前記二次電池の残量表示が要求された際において用いられる新規残量表示用テーブルとして選択する処理と、をそれぞれ実行させる動作制御部と、を具備することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記動作制御部は、前記二次電池を満充電状態にした後に、前記実測値テーブルの作成を実行することを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記動作制御部は、前記実測値テーブルの作成時において、前記二次電池から前記電子機器への電力供給量を一定に維持させる処理を実行することを特徴とする請求項1または2記載の電子機器。
【請求項4】
前記特定所定時間累計値は、前記所定時間累計値の最大値の50%に相当する値であることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか一項記載の電子機器。
【請求項5】
前記動作制御部は、前記実測値テーブルにおける特定所定時間累計値に紐づけされた前記計測端子電圧値と、前記記憶部に記憶されている複数種類の前記残量表示用テーブルにおける前記特定所定時間累計値に該当する前記所定残量に紐づけられた前記端子電圧値とを比較し、両者の差が最も少ない前記残量表示用テーブルを前記記憶部から抽出する際、
前記記憶部に記憶されている複数種類の残量表示用テーブルにおいて、前記特定所定時間累計値に該当する前記所定残量に紐づけられた前記端子電圧値が、前記実測値テーブルにおける前記特定所定時間累計値に紐づけされた前記計測端子電圧値未満であり、かつ、前記特定所定時間累計値に紐づけされた前記計測端子電圧値に最も近い前記残量表示用テーブルを前記記憶部から抽出することを特徴とする請求項1~4のうちのいずれか一項記載の電子機器。
【請求項6】
二次電池からの電源供給によって出力部にデータの出力を行う電子機器における前記二次電池の残量表示方法であって、
前記二次電池の満充電状態時における端子電圧値に対応する前記二次電池の残量を100%とし、前記電子機器の作動に必要な最低限度の前記端子電圧値に対応する前記二次電池の前記残量を0%として、前記二次電池の前記残量が100%から0%の間における所定残量ごとに前記二次電池の前記端子電圧値が紐づけられ、前記二次電池の異なる消耗状態に対応させた複数種類の残量表示用テーブルが予め記憶部に記憶されていて、
動作制御部が前記残量表示用テーブルの更新指示を受信すると、電圧値計測部に、前記二次電池の満充電状態から前記電子機器の作動に必要な最低限度の前記端子電圧値までの間において、所定時間ごとに前記端子電圧値を計測させると共に、計測した計測端子電圧値と前記所定時間の累計値である所定時間累計値とを紐づけした実測値テーブルを作成すると共に前記記憶部に記憶させる工程と、
前記動作制御部が、前記実測値テーブルにおける特定所定時間累計値に紐づけられた前記計測端子電圧値と、前記記憶部に記憶されている複数種類の前記残量表示用テーブルにおける前記特定所定時間累計値に該当する前記所定残量に紐づけられた前記端子電圧値とを比較し、両者の差が最も少ない前記残量表示用テーブルを前記記憶部から抽出すると共に、前記二次電池の残量表示が要求された際において用いられる新規残量表示用テーブルとして選択する工程と、
を有することを特徴とする電子機器における二次電池の残量表示方法。
【請求項7】
前記動作制御部は、前記残量表示用テーブルの更新指示を受信するまでの間、前記新規残量表示用テーブルを継続使用することを特徴とする請求項6記載の電子機器における二次電池の残量表示方法。
【請求項8】
前記動作制御部は、前記二次電池を満充電状態にした後に、前記実測値テーブルの作成を行うことを特徴とする請求項6または7記載の電子機器における二次電池の残量表示方法。
【請求項9】
前記動作制御部は、前記実測値テーブルの作成時において、前記二次電池から前記電子機器への電力供給量を一定に維持することを特徴とする請求項6~8のうちのいずれか一項記載の電子機器における二次電池の残量表示方法。
【請求項10】
前記動作制御部は、前記実測値テーブルにおける特定所定時間累計値に紐づけされた前記計測端子電圧値と、前記記憶部に記憶されている複数種類の前記残量表示用テーブルにおける前記特定所定時間累計値に該当する前記所定残量に紐づけられた前記端子電圧値とを比較し、両者の差が最も少ない前記残量表示用テーブルを前記記憶部から抽出する際、
前記記憶部に記憶されている複数種類の残量表示用テーブルにおいて、前記特定所定時間累計値に該当する前記所定残量に紐づけられた前記端子電圧値が、前記実測値テーブルにおける前記特定所定時間累計値に紐づけされた前記計測端子電圧値未満であり、かつ、前記特定所定時間累計値に紐づけされた前記計測端子電圧値に最も近いである前記残量表示用テーブルを前記記憶部から抽出することを特徴とする請求項6~9のうちのいずれか一項記載の電子機器における二次電池の残量表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器、電子機器における二次電池の残量表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池により稼働し、音楽等や映像コンテンツの再生等をするための電子機器において、二次電池の残量を出力部に出力することによって使用者に電子機器の使用可能時間を通知する機能がある。このような電子機器において二次電池の残量を推定する方法としては、例えば特許文献1(特開2016-36215号公報)に開示されているようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-36215号公報(明細書段落0021-0025、図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、二次電池の端子電圧値に対応する残量を紐づけした残量表示用テーブルが予め準備されていて、動作制御部により二次電池の端子電圧値を計測させ、残量表示用テーブルに参照して二次電池の残量を表示する構成が開示されている。しかし、このような残量表示用テーブルは、新品の二次電池を対象として作成されたものであるため、二次電池が消耗すると二次電池の残量を正確に推定することができない課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は、二次電池の消耗状態に応じて最適な残量表示用テーブルを選択可能にすることで、二次電池の正確な残量表示を可能にした電子機器、電子機器における二次電池の残量表示方法の提供を目的としている。
【0006】
上記課題を解決すべく発明者は以下の構成に想到した。すなわち本発明は、二次電池からの電源供給によって出力部にデータの出力を行う電子機器において、前記二次電池の満充電状態時における端子電圧値に対応する前記二次電池の残量を100%とし、前記電子機器の作動に必要な最低限度の前記端子電圧値に対応する前記二次電池の前記残量を0%として、前記二次電池の前記残量が100%から0%の間における所定残量ごとに前記二次電池の前記端子電圧値が紐づけられ、前記二次電池の異なる消耗状態に対応させた複数種類の残量表示用テーブルが予め記憶されている記憶部と、前記二次電池の前記端子電圧値を計測する電圧値計測部と、前記電圧値計測部に、前記二次電池の満充電状態から前記電子機器の作動に必要な最低限度の前記端子電圧値までの間において、所定時間ごとに前記端子電圧値を計測させて計測端子電圧値と前記所定時間の累計値である所定時間累計値とを紐づけした実測値テーブルを作成すると共に前記記憶部に記憶させる処理と、前記実測値テーブルにおける特定所定時間累計値に紐づけされた前記計測端子電圧値と、前記記憶部に記憶されている複数種類の前記残量表示用テーブルにおける前記特定所定時間累計値に該当する前記所定残量に紐づけられた前記端子電圧値とを比較し、両者の差が最も少ない前記残量表示用テーブルを前記記憶部から抽出すると共に、前記二次電池の残量表示が要求された際において用いられる新規残量表示用テーブルとして選択する処理と、をそれぞれ実行させる動作制御部と、を具備することを特徴とする電子機器である。
【0007】
これにより、電子機器における二次電池の残量推定を行う際に用いられる参照用残量表示用テーブルを、複数種類の残量表示用テーブルの中から二次電池の消耗状態にフィットするものを選択することができるので、二次電池の消耗状態にかかわらず正確な残量推定を行うことができる。
【0008】
また、前記動作制御部は、前記二次電池を満充電状態にした後に、前記実測値テーブルの作成を実行することが好ましい。
【0009】
これにより、実測値テーブルの作成を行うにあたり、二次電池の充電状態の条件を一定条件に揃えることができる。
【0010】
また、前記動作制御部は、前記実測値テーブルの作成時において、前記二次電池から前記電子機器への電力供給量を一定に維持させる処理を実行することが好ましい。
【0011】
これにより、実測値テーブルの作成時における二次電池の電力消費状態による計測端子電圧値のばらつきがなくなる。
【0012】
また、前記特定所定時間累計値は、前記所定時間累計値の最大値の50%に相当する値であることが好ましい。
【0013】
これにより、実測値テーブルと残量表示用テーブルの比較を行う際における計測端子電圧値のばらつきを抑えることにより、二次電池の消耗状態により適合する参照用残量表示用テーブルを選択することができる。
【0014】
また、前記動作制御部は、前記実測値テーブルにおける特定所定時間累計値に紐づけされた前記計測端子電圧値と、前記記憶部に記憶されている複数種類の前記残量表示用テーブルにおける前記特定所定時間累計値に該当する前記所定残量に紐づけられた前記端子電圧値とを比較し、両者の差が最も少ない前記残量表示用テーブルを前記記憶部から抽出する際、前記記憶部に記憶されている複数種類の残量表示用テーブルにおいて、前記特定所定時間累計値に該当する前記所定残量に紐づけられた前記端子電圧値が、前記実測値テーブルにおける前記特定所定時間累計値に紐づけされた前記計測端子電圧値未満であり、かつ、前記特定所定時間累計値に紐づけされた前記計測端子電圧値に最も近い前記残量表示用テーブルを前記記憶部から抽出することが好ましい。
【0015】
これにより、さらに正確な二次電池の残量推定を行うことができる。
【0016】
また、他の発明として、二次電池からの電源供給によって出力部にデータの出力を行う電子機器における前記二次電池の残量表示方法であって、前記二次電池の満充電状態時における端子電圧値に対応する前記二次電池の残量を100%とし、前記電子機器の作動に必要な最低限度の前記端子電圧値に対応する前記二次電池の前記残量を0%として、前記二次電池の前記残量が100%から0%の間における所定残量ごとに前記二次電池の前記端子電圧値が紐づけられ、前記二次電池の異なる消耗状態に対応させた複数種類の残量表示用テーブルが予め記憶部に記憶されていて、動作制御部が前記残量表示用テーブルの更新指示を受信すると、電圧値計測部に、前記二次電池の満充電状態から前記電子機器の作動に必要な最低限度の前記端子電圧値までの間において、所定時間ごとに前記端子電圧値を計測させると共に、計測した計測端子電圧値と前記所定時間の累計値である所定時間累計値とを紐づけした実測値テーブルを作成すると共に前記記憶部に記憶させる工程と、前記動作制御部が、前記実測値テーブルにおける特定所定時間累計値に紐づけられた前記計測端子電圧値と、前記記憶部に記憶されている複数種類の前記残量表示用テーブルにおける前記特定所定時間累計値に該当する前記所定残量に紐づけられた前記端子電圧値とを比較し、両者の差が最も少ない前記残量表示用テーブルを前記記憶部から抽出すると共に、前記二次電池の残量表示が要求された際において用いられる新規残量表示用テーブルとして選択する工程と、を有することを特徴とする電子機器における二次電池の残量表示方法がある。
【0017】
これにより、二次電池の消耗状態に応じた参照用残量表示用テーブルを使用することができるので、正確に電子機器の二次電池の残量推定をすることができる。
【0018】
また、前記動作制御部は、前記残量表示用テーブルの更新指示を受信するまでの間、前記新規残量表示用テーブルを継続使用することが好ましい。
【0019】
これにより、従来の残量表示用テーブルを新規残量表示用テーブルに更新した後は、二次電池がさらに消耗するまでの間、新規残量表示用テーブルの更新処理が不要になる。
【0020】
また、前記動作制御部は、前記二次電池を満充電状態にした後に、前記実測値テーブルの作成を行うことが好ましい。
【0021】
これにより、実測値テーブルの作成は二次電池の充電状態を一定の状態に揃えることができる。
【0022】
また、前記動作制御部は、前記実測値テーブルの作成時において、前記二次電池から前記電子機器への電力供給量を一定に維持することが好ましい。
【0023】
これにより、実測値テーブルの作成時における二次電池から電子機器への供給される電力消費状態による計測端子電圧値のばらつきがなくなる。
【0024】
また、前記動作制御部は、前記実測値テーブルにおける特定所定時間累計値に紐づけされた前記計測端子電圧値と、前記記憶部に記憶されている複数種類の前記残量表示用テーブルにおける前記特定所定時間累計値に該当する前記所定残量に紐づけられた前記端子電圧値とを比較し、両者の差が最も少ない前記残量表示用テーブルを前記記憶部から抽出する際、前記記憶部に記憶されている複数種類の残量表示用テーブルにおいて、前記特定所定時間累計値に該当する前記所定残量に紐づけられた前記端子電圧値が、前記実測値テーブルにおける前記特定所定時間累計値に紐づけされた前記計測端子電圧値未満であり、かつ、前記特定所定時間累計値に紐づけされた前記計測端子電圧値に最も近いである前記残量表示用テーブルを前記記憶部から抽出することが好ましい。
【0025】
これにより、さらに正確な二次電池の残量推定を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明における電子機器、電子機器における二次電池の残量表示方法の構成によれば、二次電池の消耗状態に応じて最適な残量表示用テーブルを選択可能にすることで、二次電池の正確な残量を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本実施形態におけるDAISY再生装置(電子機器)の概略構成図である。
図2】本実施形態における複数種類の残量表示用テーブルの内容を示す説明図である。
図3】本実施形態における実測値テーブルの内容を示す説明図である。
図4】本実施形態における二次電池の残量表示を行う際の概略フロー図である。
図5】本実施形態における残量表示用テーブルの更新時の概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本実施形態においては、電子機器の一例として、DAISY(Digital Accessible Information SYstem)規格によるデジタル録音図書データが再生可能なDAISY再生装置100について説明を行う。しかし、本発明の技術的範囲における電子機器はDAISY再生装置100に限定されるものではない。本実施形態におけるDAISY再生装置100は、図1に示すように、二次電池10、記憶部20、出力部30、動作制御部40および電圧値計測部60を具備し、これらが筐体70に収容または装着されている。筐体70にはDAISY再生装置100を操作するための操作ボタン80が所定のレイアウトで配設されている。
【0029】
二次電池10は、DAISY再生装置100への電源供給を行うものである。なおDAISY再生装置100への電源供給は二次電池10のみで行われるものではなく、商用電源からの供給を併用することもできる。また、本実施形態における二次電池10にはニッケル水素バッテリを採用しているが、この他、リチウムイオンバッテリや充電式アルカリ電池およびニッカドバッテリ等に代表される公知の製品を二次電池10として採用することもできる。
【0030】
本実施形態における記憶部20には不揮発性フラッシュメモリが採用されているが、この他にディスク型の記録媒体を用いた構成を採用することもできる。本実施形態における記憶部20には、動作制御プログラムPGM、デジタル録音図書データに代表されるコンテンツCON、残量表示用テーブルRMTが予め記憶されている。なお、本実施形態においては、予め二次電池10の異なる消耗状態(劣化状態)に応じて作成された複数種類の残量表示用テーブルRMTが記憶部20に記憶されていて、その中の1つが既定の残量表示用テーブルRMTに指定されている。既定の残量表示用テーブルRMTは、使用者により残量表示用テーブルRMTの更新指示が発せられるまで、二次電池10の残量の推定を行う際に継続的に使用(参照)されることになる。また記憶部20には、電圧値計測部60によって計測された計測端子電圧値MEE等の計測値データが記憶可能である。
【0031】
本実施形態における出力部30にはスピーカ(音声出力部)が採用されている。出力部30からは動作制御部40により再生されたコンテンツCONの音声が出力される。なお、複数台のスピーカにより出力部30を構成することもできる。
【0032】
本実施形態における動作制御部40は、CPUに代表される演算手段42と記憶部20に記憶された動作制御プログラムPGMとにより構成されている。使用者が任意のタイミングで筐体70の外表面に設けられた操作ボタン80を操作すると、動作制御プログラムPGMが起動し、動作制御プログラムPGMの処理フローに従って演算手段42がDAISY再生装置100の各構成の動作制御を行う。
【0033】
また、操作ボタン80のうち図示しない残量表示ボタンが使用者により操作されると、動作制御プログラムPGM内の二次電池残量表示プログラムPGM2が起動する。すると演算手段42が二次電池残量表示プログラムPGM2の処理フローに基づいて二次電池10の残量RMの推定を行い出力部30に残量RMを出力する処理を実行する。さらに、操作ボタン80のうち図示しない残量表示用テーブル更新ボタンが使用者により操作されると、残量表示用テーブルRMTの更新指示が動作制御部40に送信され、動作制御プログラムPGM内の残量表示用テーブル更新プログラムPGM3が起動する。そして演算手段42が残量表示用テーブル更新プログラムPGM3の処理フローに基づいて残量表示用テーブルRMTの更新処理を実行する。二次電池残量表示プログラムPGM2と残量表示用テーブル更新プログラムPGM3による具体的な処理フローは後で説明する。
【0034】
電圧値計測部60は、二次電池10の端子電圧を計測するものである。電圧値計測部60により計測された端子電圧値は、演算手段42により計測端子電圧値MEEとして記憶部20に記憶される。使用者が筐体70の操作ボタン80のうち残量推定ボタン(図示はせず)を操作すると、演算手段42が電圧値計測部60を作動させて二次電池10の端子電圧値を計測する。また、使用者が操作ボタン80のうち残量表示用テーブル更新ボタン(図示はせず)を操作すると、演算手段42が電圧値計測部60を所定時間ごと(ここでは30秒ごと)に作動させて二次電池10の端子電圧値を計測する。
【0035】
演算手段42は、電圧値計測部60が計測した計測端子電圧値MEEと所定時間の累計値である所定時間累計値(端子電圧値計測開始からの累計時間)を紐づけした実測値テーブルMETとして記憶部20に記憶させる。また、演算手段42は、計測端子電圧値MEEを単独で実測値テーブルMETとして記憶部20に記憶させることもできる。
【0036】
図2は本実施形態における残量表示用テーブルRMTの内容を示す説明図である。残量表示用テーブルRMTは、二次電池10の端子電圧値に対する二次電池10の残量RMが紐づけられたものである。残量表示用テーブルRMTは、二次電池10の残量RMが、満充電状態である100%から電子機器の動作に必要な最低限度の残量である0%までの間を10%間隔で残量範囲を区切り、それぞれの残量範囲に対する端子電圧値の数値が指定されている。
【0037】
なお、本実施形態における残量表示用テーブルRMTは、二次電池10の残量RMを100%から0%の間で10%ごと(所定残量ごと)に区切っているが、5%ごと等の他の所定残量ごとに区切ることもできる。このような残量表示用テーブルRMTは、DAISY再生装置100を実測値テーブルMETの作成時と同一状態にした際における二次電池10の端子電圧値と残量RMの関係を予め実験等により取得した数値が用いられていることが好ましい。
【0038】
本実施形態における残量表示用テーブルRMTは、図2に示すように(1)~(10)の10種類の残量表示用テーブルRMTを有している。ここでは、残量表示用テーブルRMT(1)が既定の残量表示用テーブルRMTとして指定されている。DAISY再生装置100を購入したままの状態で二次電池10の残量推定を行う際は、演算手段42が電圧値計測部60に計測端子電圧値MEEを計測させ、残量表示用テーブルRMT(1)から計測端子電圧値MEE以上かつ最小の端子電圧値を参照させる。残量表示用テーブルRMT(2)~残量表示用テーブルRMT(10)は、残量表示用テーブルRMTの数字が増えるにつれて二次電池10の消耗が進んでいる状態に適合する端子電圧値と残量RMとの対応表になっている。
【0039】
ここで、二次電池10の計測端子電圧値MEEが7.540Vである場合について説明する。演算手段42は、計測端子電圧値MEEである7.540Vと、図2の残量表示用テーブルRMT(1)におけるすべての端子電圧値との差を算出し、算出した差がプラスである端子電圧値のうち最小値である端子電圧値を選択する。ここでは、残量表示用テーブルRMT(1)における端子電圧値7.530Vが選択される。続いて演算手段42は、残量表示用テーブルRMT(1)のテーブルにおいて端子電圧値7.530Vに紐づけされている二次電池10の残量RMを抽出する。ここでは端子電圧値7.530Vに紐づけされた残量50%が抽出される。そして演算手段42は出力部30に二次電池10の推定残量として50%であることを出力させることができる。
【0040】
図3は本実施形態における実測値テーブルMETの内容を示す説明図である。演算手段42は、電圧値計測部60に二次電池10における計測端子電圧値MEEを所定時間ごとに計測させる。そして二次電池10が満充電状態から電子機器の動作に必要な最低限度の残量時の電圧値(以下、終止電圧値ということがある)になるまで計測端子電圧値MEEと所定時間累計値とを紐づけして実測値テーブルMETが作成される。なお、本実施形態では、実測値テーブルMETの作成時における端子電圧値の計測の所定時間を30秒としているが、この所定時間は特に限定されるものではない。このような実測値テーブルMETの作成は、演算手段42が残量表示用テーブル更新ボタンの操作により送信された残量表示用テーブル更新指示(更新コマンド)を受信した際に行われ、作成された実測値テーブルMETは記憶部20に記憶される。
【0041】
演算手段42は、残量表示用テーブル更新指示を受信した後、実測値テーブルMETの作成に先立って二次電池10の充電状態の確認を実行する。二次電池10の充電状態が満充電状態であれば、直ちに実測値テーブルMETの作成処理を実行し、二次電池10の充電状態が満充電状態でなければ、二次電池10を一旦満充電状態にした後に実測値テーブルMETの作成処理を実行することもできる。また、安定した電圧値を得るため、演算手段42は二次電池10を一旦完全放電した後に満充電させることもできる。
【0042】
また、演算手段42は、実測値テーブルMETの作成時において、二次電池10からDAISY再生装置100への供給電力量を所定の電力量に維持させてもよい。実測値テーブルMETの作成時における演算手段42は、実測値テーブルMETの作成に必要ないDAISY再生装置100の各構成への供給電力を遮断する等してDAISY再生装置100への電力供給量が一定に維持されるよう各構成の動作を制御している。
【0043】
次に、二次電池10の残量表示方法について説明する。図4は、本実施形態における二次電池の残量表示を行う際の概略フロー図である。前述したように、使用者がトリガーボタンである残量表示ボタンを操作(S-1)すると、残量表示指示が動作制御部40に送信され、二次電池残量表示プログラムPGM2が起動(S-2)して残量表示フローが開始される。具体的には、演算手段42が残量表示ボタン操作時における二次電池10の端子電圧を計測させて計測端子電圧値MEEを取得すると共に記憶部20に計測端子電圧値MEEを記憶させる(S-3)処理を実行する。
【0044】
続いて演算手段42は、記憶部20に記憶させた計測端子電圧値MEEを既定の残量表示用テーブルRMT(1)から計測端子電圧値MEEよりも小さい端子電圧のうち、最大の端子電圧を抽出させる処理を実行する(S-4)。次に演算手段42は、抽出した端子電圧に紐づけられている残量RMを記憶部20に記憶させる(S-5)処理を実行する。そして、演算手段42は、記憶部20に記憶されている残量表示用テーブルRMTから抽出した二次電池10の残量RMに基づいて出力部30から二次電池10の推定残量を出力(S-6)させる処理を実行して残量推定時の処理が終了(END)する。
【0045】
ここで本実施形態においては、出力部30としてスピーカを用いているので、二次電池10の推定残量の出力も音声により行うことができる。二次電池10の推定残量の出力時に既に出力部30から音声の出力がなされている場合には、演算手段42は、出力中の音声の出力内容に割り込ませて二次電池10の推定残量の出力を出力部30に行わせることもできる。また、演算手段42は、出力部30からのコンテンツCONの出力を一時停止させた後に二次電池10の推定残量の出力を出力部30に所定時間にわたって行わせた後に、一時停止させたコンテンツCONを出力部30に再出力させてもよい。
【0046】
DAISY再生装置100の二次電池10が使用により消耗(劣化)すると、上記のような二次電池10の計測端子電圧値MEEに着目した残量推定結果と、実際の二次電池10における残量RMとの差が大きくなることがある。このような状態において使用者が残量表示用テーブル更新ボタン(図示はせず)を操作すると、動作制御プログラムPGMに含まれる残量表示用テーブル更新プログラムPGM3が起動し、残量表示用テーブルRMTの更新処理が実行される。
【0047】
図5は本実施形態における残量表示用テーブルの更新処理における概略フロー図である。使用者が残量表示用テーブル更新ボタンを操作(SS-1)すると、残量表示用テーブル更新指示が動作制御部40の演算手段42に送信される。残量表示用テーブル更新指示を受信した演算手段42は、残量表示用テーブル更新プログラムPGM3を起動(SS-2)させる。
【0048】
演算手段42は、二次電池10の充電状態が満充電状態であるか否かを判断する(SS-3)。二次電池10が満充電状態でない場合(NO)、演算手段42は二次電池10を満充電になるまで充電する(SS-4)。二次電池10が満充電状態である場合(YES)、演算手段42は電圧値計測部60に30秒ごとに二次電池10の端子電圧を計測させる。そして演算手段42は端子電圧値の計測開始からの経過時間の累計値である所定時間累計値と計測端子電圧値MEEとを対にした実測値テーブルMETとして記憶部20に記憶(SS-5)させる。
【0049】
次に演算手段42は直前に記憶部20に記憶させた計測端子電圧値MEEの値が終止電圧以下か否かを確認(SS-6)する。計測端子電圧値MEEの値が終止電圧(ここでは6V)より大きい場合(NO)、計測端子電圧値MEEの値が終止電圧以下になるまでSS-5の処理を繰り返し実行する。計測端子電圧値MEEの値が終止電圧以下の場合(YES)の場合、演算手段42は電圧値計測部60による二次電池10の端子電圧の計測を終了し、実測値テーブルMETの作成を終了(SS-7)させる。
【0050】
次に演算手段42は、記憶部20に記憶させた実測値テーブルMETにおける特定所定時間累計値として、所定時間の累計値の最大値の50%に該当する所定時間累計値を算出(SS-8)する。この所定時間累計値は、二次電池10を満充電にした状態から終止電圧にするまでに要した時間の半分の時間をあらわしている。
【0051】
次に演算手段42は、特定所定時間累計値に対応する計測端子電圧値MEEを実測値テーブルMETから抽出(SS-9)し、記憶部20に記憶されている既定の残量表示用テーブルRMTにおける特定所定時間累計値に対応する50%残量時に紐づけされた端子電圧値との比較(SS-10)を行う。続いて演算手段42は、実測値テーブルMETから抽出した50%残量時の計測端子電圧値MEE未満であり、かつ、50%残量時の計測端子電圧値MEEに最も近い端子電圧値を50%残量時に含む残量表示用テーブルRMTを記憶部20に記憶された複数種類の残量表示用テーブルRMT(1)~RMT(10)の中から抽出(SS-11)する。さらに演算手段42は、抽出した端子電圧値が含まれている残量表示用テーブルRMTを新規残量表示用テーブルRMT―Nとして選択(SS-12)する。
【0052】
そして演算手段42は、新規残量表示用テーブルRMT―Nの選択が終了すると、残量推定時における残量表示用テーブルRMTの参照先を既存の残量表示用テーブルRMTから新規残量表示用テーブルRMT―Nに変更する処理(SS-13)を完了させる。以上により、残量表示用テーブル更新処理フローが終了(END)する。
【0053】
以上のようにして二次電池10の残量推定時に用いられる残量表示用テーブルRMTの更新が完了すると、次の残量表示用テーブル更新処理フローが開始するまでの間、新規残量表示用テーブルRMT―Nを用いた二次電池10の残量推定が行われる。このように二次電池10の消耗状態に応じて残量表示用テーブルRMTを適宜更新することにより、従来に比較して二次電池10の残量推定の精度を大幅に向上させることができる。
【0054】
以上に説明した本実施形態に基づいて本発明の説明をしたが、本発明の技術的範囲は本実施形態に限定されるものではない。例えば、演算手段42が実測値テーブルMETから50%残量時における計測端子電圧値MEEを抽出しているが、実測値テーブルMETから計測端子電圧値MEEを抽出する際は、50%残量時に限定されるものではない。すなわち演算手段42は、他の残量時(特定所定時間累計値)における計測端子電圧値MEEを実測値テーブルMETから抽出することもできる。
【0055】
また、演算手段42は、残量表示用テーブルRMTにおける50%残量時の端子電圧値から実測値テーブルMETから抽出した計測端子電圧値MEE未満で最も近似する端子電圧値を抽出(SS-11)しているが、この形態に限定されるものではない。演算手段42は、最小二乗法を用いることにより残量表示用テーブルRMTにおける50%残量時の端子電圧値から実測値テーブルMETから抽出した計測端子電圧値MEEに最も近い端子電圧値を抽出する処理を実行してもよい。
【0056】
また、演算手段42は、二次電池10の残量推定時において参照する既存の残量表示用テーブルRMTから新規残量表示用テーブルRMT―Nへの参照先の変更処理を行う形態について説明しているが、この形態に限定されるものではない。演算手段42は記憶部20に記憶されている既存の残量表示用テーブルRMTを消去して新規残量表示用テーブルRMT―Nを既存の残量表示用テーブルRMTとして書き換える処理を実行することもできる。
【0057】
また、動作制御部40は使用者による操作ボタン80の操作後に、電圧値計測部60による端子電圧値の計測を開始させて二次電池10の残量推定を開始する構成を説明しているが、この構成に限定されるものではない。すなわち、動作制御部40はトリガーボタンとしての操作ボタン80の使用者による操作の有無によらず、常に、電圧値計測部60によって二次電池10の端子電圧を計測させておくこともできる。電圧値計測部60による二次電池10の端子電圧の計測処理以降の動作は、上記の実施形態と同様にして行うことができる。
【0058】
また、上記実施形態における出力部30としてはスピーカを採用しているが、出力部30にはスピーカの他にディスプレイモニタ等を採用することもできる。そして、出力部30にディスプレイモニタを採用した場合における二次電池10の残量RMの出力は、使用者が筐体70に設けられたトリガーボタンとしての操作ボタン80を操作した後の所要時間においてのみディスプレイモニタに表示させることもできる。
【0059】
また、演算手段42は、使用者が筐体70に設けられた操作ボタン80を操作した際において既にディスプレイモニタに表示されているコンテンツCONの出力内容に割り込ませるようにして二次電池10の残量RMを表示させることもできる。さらに演算手段42は、ディスプレイモニタに出力されているコンテンツCONを一時停止させた後に、二次電池10の残量RMを所定時間にわたって出力部30に出力させた後、一時停止させたコンテンツCONを出力部30に再出力させてもよい。
【0060】
また、本実施形態においては、コンテンツCONが記憶部20に記憶されている形態について説明しているが、コンテンツCONを記憶させた独立の記録媒体を介してDAISY再生装置100に読み取らせる形態を採用することもできる。すなわちDAISY再生装置100に独立の記録媒体へのアクセス手段が配設された形態を採用することもできる。
【0061】
また、本実施形態においては、計測端子電圧値MEEを記憶部20に記憶させる形態について説明しているが、記憶部20とは独立に設けた副記憶部としての揮発性メモリに記憶させることもできる。
【0062】
さらには、以上に説明した本実施形態の構成に対し、明細書中に記載されている変形例や、他の公知の構成を適宜組み合わせた形態を採用することもできる。
【符号の説明】
【0063】
10 二次電池
20 記憶部
30 出力部
40 動作制御部
42 演算手段
60 電圧値計測部
70 筐体
80 操作ボタン
100 DAISY再生装置(電子機器)
CON コンテンツ
MEE 計測端子電圧値
MET 実測値テーブル
PGM 動作制御プログラム
PGM2 二次電池残量表示プログラム
PGM3 残量表示用テーブル更新プログラム
RM 残量
RMT 残量表示用テーブル
RMT-N 新規残量表示用テーブル
図1
図2
図3
図4
図5