(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】多糖によって架橋されているタンパク質の調製および/または調合物
(51)【国際特許分類】
A61L 27/22 20060101AFI20220125BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20220125BHJP
A61L 27/26 20060101ALI20220125BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20220125BHJP
A61L 27/60 20060101ALI20220125BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
A61L27/22
A61L27/20
A61L27/26
A61L27/54
A61L27/60
A61L27/50 300
(21)【出願番号】P 2020070249
(22)【出願日】2020-04-09
(62)【分割の表示】P 2018106053の分割
【原出願日】2011-11-22
【審査請求日】2020-04-16
(32)【優先日】2010-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513128707
【氏名又は名称】エラスタジェン ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ELASTAGEN PTY LTD
【住所又は居所原語表記】Australian Technology Park,National Innovation Centre,3 Cornwallis Street,Eveleigh,New South Wales 2015,Australia
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ソマー-クヌーセン,ジェンズ
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-518135(JP,A)
【文献】国際公開第2009/073668(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-33/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋
トロポエラスチンマトリクスを含んでおり、当該架橋
トロポエラスチンマトリクスは、
トロポエラスチ
ン、
1つ以上のカルボキシル基を含むヒアルロン酸架橋剤分子、および
上記
トロポエラスチンのアミンと上記ヒアルロン酸架橋剤分子のカルボキシル基との間のアミド結合を含む、少なくとも1つの分子間架橋を含み、
組織内成長を促進するおよび/または組織再生を促進する方法を必要とする患者における当該方法において用いるための薬剤の調製のための、組織適合性を有している組成物。
【請求項2】
注入のために調剤されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
注入針によって注入可能であり、緊密な構造を保持しており、インビボにおける組成物の吸収を遅らせるために十分に架橋されている、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物のひも状物が押出しの間に切れない程度に、針による押出し後における十分な緊密性を保持している、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
上記ヒアルロン酸は、以下の特性:実質的な生体利用性、実質的な生分解性、実質的な生体吸収性または実質的な生分解吸収性の1つ以上を有している、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
約5cm~約30cmの長さまで、18G~31Gの針を通して押出し可能であり、押し出された組成物は、表面支持物なしに実質的にまとまっている、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
上記組織内成長を促進するおよび/または組織再生を促進する方法は、組織を増大させるか、増強するかまたはこれらの組合せの用途において用いられる、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
上記用途は、修復手術;皮膚科手術;眼の手術;形成外科;再建手術;整形外科;血管手術;組織の増強;体腔または欠損の補完;および/または外科手術中に滲出した体積の回復から選択される、請求項
7に記載の組成物。
【請求項9】
局所用途のために調剤されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
上記組織内成長を促進するおよび/または組織再生を促進する方法は、美容術的用途または皮膚科的用途において用いられる、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
上記美容術的用途または皮膚科的用途は、顔のしわの充填;小じわ;年齢を重ねた肌の処置;瘢痕組織;または皮膚の陥没から選択される、請求項1
0に記載の組成物。
【請求項12】
トロポエラスチ
ンおよびヒアルロン酸を含む架橋
トロポエラスチンマトリクスを有し、上記
トロポエラスチンおよびヒアルロン酸は、上記
トロポエラスチンに由来する残基のアミンと上記ヒアルロン酸に由来するカルボキシル基との間に形成される少なくとも1つのアミド結合によって架橋されており、組織内成長を促進するおよび/または組織再生を促進する方法を必要とする患者における当該方法において用いるための、組織適合性を有している組成物。
【請求項13】
注入のために調剤されている、請求項1
2に記載の組成物。
【請求項14】
注入針によって注入可能であり、緊密な構造を保持しており、インビボにおける組成物の吸収を遅らせるために十分に架橋されている、請求項1
3に記載の組成物。
【請求項15】
組成物のひも状物が押出しの間に切れない程度に、針による押出し後における十分な緊密性を保持している、請求項1
2に記載の組成物。
【請求項16】
上記ヒアルロン酸は、以下の特性:実質的な生体利用性、実質的な生分解性、実質的な生体吸収性または実質的な生分解吸収性の1つ以上を有している、請求項1
2に記載の組成物。
【請求項17】
約5cm~約30cmの長さまで、18G~31Gの針を通して押出し可能であり、押し出された組成物は、表面支持物なしに実質的にまとまっている、請求項1
2に記載の組成物。
【請求項18】
上記組織内成長を促進するおよび/または組織再生を促進する方法は、組織を増大させるか、増強するかまたはこれらの組合せの用途において用いられる、請求項1
2に記載の組成物。
【請求項19】
上記用途は、修復手術;皮膚科手術;眼の手術;形成外科;再建手術;整形外科;血管手術;組織の増強;体腔または欠損の補完;または外科手術中に滲出した体積の回復から選択される、請求項
18に記載の組成物。
【請求項20】
局所投与のために調剤されている、請求項1
2に記載の組成物。
【請求項21】
上記組織内成長を促進するおよび/または組織再生を促進する方法は、美容術的用途または皮膚科的用途において用いられる、請求項1
2に記載の組成物。
【請求項22】
上記美容術的用途または皮膚科的用途は、顔のしわの充填;小じわ;年齢を重ねた肌の処置;瘢痕組織;または皮膚の陥没から選択される、請求項2
1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願に対する相互参照〕
本願は、参照によってその全体が本明細書に援用される米国仮特許出願第61/3444,940号(出願日:2010年11月23日)と関連している。
【0002】
本開示は、多糖によって架橋されているタンパク質の調製および/または調合物に関し、当該調製および/または調合物に適用され得る。
【背景技術】
【0003】
現在、移植片を用いて組織を増大または増強することが、医学的用途において行われている。このような移植片の使用が行われている医学的用途は、声帯の再建術から、糞尿失禁症の治療、およびしわの美容治療に至るまで多岐にわたっている。現行の移植片は、ヒアルロン酸、タンパク質(コラーゲン)、重合体(ポリ乳酸)、および生体適合材料(ヒドロキシアパプタイト(hydroxyapaptite))を含んでいる種々の材料から構成されている。
【0004】
例えば、ヒアルロナンまたはヒアルロン酸塩とも呼ばれるヒアルロン酸(“HA”)は、滑液、硝子体液、血管壁、臍帯、および他の結合組織内に存在する天然由来のムコ多糖である。この多糖は、交互に配置されるβ-1-3グルクロニド結合およびβ-1-3グルコサミニド結合によって、交互に配置された状態において互いに結合されているN-アセチル-D-グルコサミン残基およびD-グルクロン酸残基から構成されている。ヒアルロン酸に基づく製品は、例えばBDDEおよびジビニルスルファンなどの化学薬品を含んでいる種々の手法を用いて、架橋されている。それから、架橋ヒアルロン酸は、注入可能に微小化されている(例えば、Restylane(登録商標)およびJuvederm(登録商標))。ヒアルロン酸移植片の作用は、ヒアルロン酸移植片によって組織を増大させ、ヒアルロン酸移植片の内部に水分が保持されることによって、もたらされる。ヒアルロン酸移植片は、徐々に体内に分解吸収される。
【0005】
他の例は、動物またはヒトの組織から抽出したコラーゲン系の移植片であって、さらに架橋され(例えば、グルタルアルデヒド系の架橋(Zyplast(登録商標))またはリボース系の架橋(Evolence(登録商標)))、均質化され、それから生理食塩水に再懸濁されて、移植可能な状態に調製されたコラーゲン系の移植片である。コラーゲン移植片の作用は、ヒアルロン酸移植片の作用と同様に、コラーゲン移植片によって組織を増大させることによって、もたらされる。一方、コラーゲン移植片を使用する場合、移植片への細胞の進入の増大、および新生のコラーゲン材料の産生を可能にする。
【0006】
ポリ乳酸(例えばSculptra(登録商標))および生体材料(例えばRadiesse(登録商標))を用いる手法は、注入用ゲルに粒子材料(一般的には、ヒアルロン酸またはカルボキシメチルセルロースなどの多糖)の懸濁液を作製する手法に基づいていた。粒子材料からなる移植片の作用、粒子体に対する異物反応を生体に生じさせ、これによって、上記粒子体が線維芽細胞に包み込まれることでコラーゲンの生成が行われ、その結果として組織が発達して増大することによって、発揮される。
【0007】
組織の増大物質に対する現行の手法の問題の1つとして、上記組織の増大剤では、全長のタンパク質(または実質的に全長のタンパク質)系の生体材料または全長のタンパク質(または実質的に全長のタンパク質)を取り込んだ生体材料を送達することが不可能になってしまうことがある。体内に自然に存在するタンパク質に似た全長のタンパク質材料(または実質的に全長のタンパク質材料)系の調合物または上記全長のタンパク質材料(または実質的に全長のタンパク質材料)を取り込んだ調合物では、意図した用途の多くにとって望ましいとされる生体適合性レベルおよび自己認識レベルをより維持しやすい。一方で、化学結合法では、一般的に、実質的な分子内架橋が形成され、これにより分子の自然構造が乱されてしまうことがある。また、生成物の注入を可能にするために使用される微粒化技術または均質化技術は、全長のタンパク質分子(または実質的に全長のタンパク質分子)の構造の保持について何ら貢献するものではない。加えて、ヒアルロン酸およびタンパク質を架橋するために使用される化学架橋剤は公知の毒性を有しており、刺激感を与えるか、炎症を引き起こすか、または発癌リスクをもたらすことがある。
【0008】
本開示は、部分的には、タンパク質系またはタンパク質由来の密着生体材料からなる注入用調合物を提供すること、上記調合物に組み込まれたタンパク質残基が全長構造(または実質的に全長構造)を維持することを可能にすること、および上記タンパク質残基を保護して、例えばタンパク質分解に起因する急速な再吸収および/または分解を防止することに関している。また、本開示は、部分的には、針を用いた注入に適しているか、密着構造を維持しているか、または十分に架橋されたことにより生体内で再吸収されるのを遅らせるか、またはこれら特徴の組合せを有している、全長のタンパク質(または実質的に全長のタンパク質)系または全長のタンパク質(または実質的に全長のタンパク質)由来の生体材料に関している。また、本開示は、部分的には、有毒な化学架橋剤を実質的に含まない生体材料に関している。また、本開示は、部分的には、少なくとも1つの架橋タンパク質マトリクスの調製および/または調合を行うための方法、システム、および/またはキットであって、少なくとも1つのタンパク質残基と少なくとも1つの生体分子架橋剤残基を含包し、少なくとも1つのタンパク質分子は、少なくとも1つの生体分子架橋剤によって架橋されて架橋タンパク質マトリクスを形成する方法、システム、および/またはキットも提供する。また、本開示は、部分的には、少なくとも1つの架橋タンパク質マトリクスの調製および/または調合物を行うためのシステムおよび/またはキットであって、少なくとも1つのタンパク質残基と少なくとも1つの多糖残基を含包し、タンパク質分子(実質的に全長のタンパク質の分子または全長のタンパク質の分子)は、多糖架橋剤によって架橋されて少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスを形成するシステムおよび/またはキットも提供する。本明細書に開示されている組成物、方法、システム、および/またはキットの必要性が存在している。
【発明の概要】
【0009】
一部の実施形態において、注入可能な組成物は、少なくとも1つの架橋タンパク質マトリクスであり得、少なくとも1つの当該架橋タンパク質マトリクスは、少なくとも1つのタンパク質残基、および糖を有している少なくとも1つの架橋残基を含んでいる。
【0010】
一部の実施形態において、注入可能な組成物は、水性媒体および/または生理的媒体に実質的に可溶性の組成物であり得る。一部の実施形態において、注入可能な組成物は、水性媒体および/または生理的媒体に実質的に可溶性の組成物、部分的に可溶性の組成物、または実質的に不溶性の組成物であり得る。
【0011】
一部の実施形態において、注入可能な組成物は、実質的に生体利用可能であり得るか、実質的に生分解可能であり得るか、実質的に生体吸収性であり得るか、および/または実質的に生分解吸収性であり得る、糖を有している少なくとも1つの架橋分子に由来する糖を有している少なくとも1つの残基を含み得る。一部の局面において、糖を有している少なくとも1つの上記残基は、少なくとも1つの多糖残基または少なくとも1つのオリゴ糖残基、またはこれらの組合せを含み得る。一部の局面において、注入可能な組成物は、少なくとも1つの多糖を含み得、少なくとも1つの多糖残基は、低い分子量、中程度の分子量、および/または高い分子量の多糖残基を含んでいる。一部の局面において、注入可能な組成物は、約500~約500,000ダルトンの分子量を有している少なくとも1つの多糖残基を含み得る。一部の局面において、注入可能な組成物は、糖を有している少なくとも1つの残基を含んでおり、糖を有している少なくとも1つの当該残基は、正電荷を有している1つ以上の官能基および/または負電荷を有している1つ以上の官能基を含んでいる少なくとも1つのオリゴ糖残基または少なくとも1つの多糖残基を含んでいる。一部の局面において、注入可能な組成物は、ポリアニオン性の少なくとも1つの多糖残基またはポリアニオン性の少なくとも1つのオリゴ糖残基を含み得る。一部の局面において、注入可能な組成物は、ヒアルロン酸、セルロース誘導体、カルボキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシ-プロピルセルロース、カルボキシメチルアミロース、キサンタンガム、グアーガム、α-グルカン、β-グルカン、β-1,4-グルカン、β-1,3-グルカン、アルギン酸塩、カルボキシメチルデキストラン、グリコサミノグリカン誘導体、コンドロイチン-6-硫酸塩、硫酸デルマチン、ヘパリン、硫酸ヘパリン、または生体材料(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、リン酸三カルシウム、1-ヒドロキシアパタイト)、および/またはこれらの薬学的に許容可能な塩、誘導体、および/または組合せの残基に由来するか、または当該残基を含んでいる少なくとも1つの多糖残基を含み得る。一部の局面において、注入可能な組成物は、約0.01%~約30%の濃度において、糖を有している少なくとも1つの残基を含んでいる少なくとも1つの架橋タンパク質マトリクスを含み得る。
【0012】
一部の実施形態において、注入可能な組成物は、全長のタンパク質の残基に由来するか、または当該残基を含んでいる少なくともの1つタンパク質残基を含み得る。一部の局面において、注入可能な組成物は、アミンを有している側鎖残基を含んでいる少なくとも1つのタンパク質残基を含み得、当該側鎖残基は、少なくとも1つのリジン残基および/または少なくとも1つのアルギニン残基を含んでいる。一部の局面において、注入可能な組成物は、トロポエラスチン、エラスチン、アルブミン、コラーゲン、コラーゲン単量体、免疫グロブリン、インスリン、および/またはこれらの誘導体もしくは組合せの残基に由来するか、または当該残基を含んでいる少なくとも1つのタンパク質残基を含み得る。
【0013】
一部の実施形態において、注入可能な組成物は、少なくとも10cmまたは約10cmの長さまで押出し可能な少なくとも1つの架橋タンパク質マトリクスを含み得る。一部の実施形態において、注入可能な組成物は押出し可能な組成物である。一部の実施形態において、注入可能な組成物は、約5cm~約30cmの長さまで押出し可能な組成物である。一部の実施形態において、注入可能な組成物は、約25mg/mlまたは少なくとも約25mg/mlのタンパク質残基を含んでいる少なくとも1つの架橋タンパク質マトリクスを含み得る。一部の実施形態において、注入可能な組成物は、タンパク質残基を約1mg/ml~約250mg/ml含んでいる少なくとも1つの架橋タンパク質マトリクスを含み得る。
【0014】
一部の実施形態において、注入可能な組成物は、(i)活性化剤および/またはカップリング剤;ならびに(ii)修飾剤および/または補助カップリング剤を使用して1つ以上の連結および/または架橋を形成することによって調製されている少なくとも1つの架橋タンパク質マトリクスを含み得る。
【0015】
一部の実施形態において、注入可能な組成物は、治療的(外科処置、美容処置、組織の増大化、失禁の処置、皮膚置換製品、皮膚科、皮膚科手術、眼の手術、リウマチ病学、薬理学、および/または化粧品が挙げられる)に使用され得る。用途に利用し得る。
【0016】
一部の実施形態において、上記組成物を調製する方法が開示されており、当該方法は、糖を有している少なくとも1つの架橋分子によって少なくとも1つのタンパク質分子を架橋することを包含している。一部の実施形態において、組成物を調製する当該方法は、(i)糖を有している少なくとも1つの分子を修飾して、少なくとも1つのタンパク質分子の反応性の化学基に対して補完的な少なくとも1つの反応性の化学基を含めること、(ii)糖を有している修飾された少なくとも1つの上記分子を、少なくとも1つの上記タンパク質分子と組み合わせること、ならびに(iii)糖を有している修飾された少なくとも1つの上記分子および少なくとも1つの上記タンパク質分子の間に少なくとも1つの結合を形成することを包含している。
【0017】
一部の実施形態において、上記組成物を調製する方法は、(i)糖を有している少なくとも1つの分子を修飾して、少なくとも1つの反応性の化学基を含めること、(ii)糖を有している修飾された少なくとも1つの上記分子を、糖を有している修飾された少なくとも1つの上記分子にある反応性基に対して補完的な少なくとも1つの反応性の化学基を含んでいる少なくとも1つのタンパク質分子と組み合わせること、ならびに(iii)糖を有している修飾された少なくとも1つの上記分子および少なくとも1つの上記タンパク質分子の間に少なくとも1つの共有結合を形成することを包含している。
【0018】
一部の局面において、糖を有している修飾された少なくとも1つの上記分子は、反応性のリンカーを含んでいる少なくとも1つの部分を付与することによって調製されている修飾多糖分子を含み得る。当該リンカーは、多糖の固相合成の間にタンパク質分子または修飾タンパク質分子と結合可能である。一部の局面において、少なくとも1つの上記部分は共有結合によって付与され得る。さらに、少なくとも1つの上記部分はスペーサ基を含み得る。さらに、上記スペーサ基は、重合されたエチレンオキシドを含み得る。また、上記スペーサ基は、PEGまたはPEOであり得る。
【0019】
一部の実施形態において、結合は、共有結合性の連結によって形成され得る。さらに、一部の実施形態において、共有結合性の連結は、アミド、オキシム、ヒドラゾン、硫化物、エーテル、アミン(例えば、第2級アミンまたは第3級アミン)、エノールエーテル、チオールエーテル、エステル、トリアゾールおよびジスルフィドからなる群から選択され得る。一部の実施形態において、共有結合性の連結は、アミドまたはヒドラゾンを含み得る。
【0020】
一部の実施形態において、開示されている方法は、ロバストであり得るか、より効率的であり得るか、費用に関して有効であり得るか、簡便であり得るか、および/またはこれらの組合せであり得る。
【0021】
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスは、1つ以上のタンパク質残基または修飾タンパク質残基を含み得る。一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスは、2つの異なるタンパク質残基または修飾タンパク質残基を含み得る。
【0022】
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスは、1つ以上の多糖残基または修飾多糖残基を含み得る。一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスは、2つの異なる多糖残基または修飾多糖残基を含み得る。
【0023】
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスは、注入可能な組成物であり得る。
【0024】
添付の図面は、本開示の種々の実施形態の理解を促している。処理、システム、キット、調製物、精製物またはこれらの組合せの例示的な実施形態は、添付の図面を参照して、例証のみを目的としてさらなる詳細について説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一部の実施形態にしたがって、ヒアルロン酸の典型的な繰返し構造を示す。ヒアルロン酸は、β-D-グルクロン酸-[1,3]-β-D-N-アセチル-グルコサミンの二糖単位からなり、活性化され得、架橋され得るカルボキシル基を二糖単位ごとに含んでいる多糖である。
【
図2】一部の実施形態にしたがって、EDCおよびNHSによって媒介されるカルボン酸塩を含んでいる分子(1)およびアミン(2)との反応を示す。図示されている適切な中間体構造は、1級アミノ基(1)と反応してアミド結合を形成可能なNHS活性化カルボン酸塩の中間体を形成するための修飾剤(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS))から形成されている、O-アシルイソウレアエステルおよびNHSエステルの中間体を含んでいる。
【
図3】一部の実施形態にしたがって、PBSに浸された実施例5の調合物から抽出されたタンパク質のSDS PAGEゲルを示す。SDS PAGEゲルは、以下のレーン:マーカー(レーンM)、上清(レーンAおよびB)、および純粋なTE(レーンTE)を含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の説明は、代表的な特性および特徴を共有し得る種々の実施形態に関連して与えられている。一実施形態の1つ以上の特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせられ得ることが理解される。さらに、一部の実施形態における単一の特徴または複数の特徴の組合せは、さらなる実施形態を構成し得る。
【0027】
本明細書において、単語「含んでいる(comprising)」は、「オープンな」意味(すなわち「含んでいる(including)」の意味)に理解されるべきであり、したがって、「クローズドな」意味(すなわち「のみからなる」の意味)に限定されない。明らかである場合に、対応する意図は、対応する単語「含んでいる(comprise)」、「含まれている」および「含んでいる(comprises)」に適用される。
【0028】
詳細な説明に使用されている見出しは、読み手の参照を容易にするためだけに含められており、本開示または特許請求の範囲の全体に認められる主題を限定するために使用されるべきではない。見出しは、特許請求の範囲の配位の解釈、または特許請求の範囲の減縮に使用されるべきではない。
【0029】
特に明記しない限り、本明細書に使用される技術用語は、当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有している。
【0030】
用語「活性化」は、求核化合物による求核攻撃および/または求核置換に対して、感受性であり得るか、および/または強く影響を受け得る分子の中間体の形態を包含し得る。例えば、一部の実施形態において、カルボキシル基を含んでいる分子(例えば、カルボキシル基を含んでいる、糖を有している分子(例えば、カルボキシル基を含んでいる多糖))は、活性化剤を用いて処理されて活性化中間体(例えば、活性化エステル)を形成する場合に活性化され得、ここで、活性化中間体は、アミンなどの求核化合物による求核攻撃および/または求核置換に対して、感受性であるか、および/または弱く、カルボキシル基を含んでいる分子および求核化合物の間に結合(例えば、アミド結合)を形成し得る。一部の実施形態において、ヒドロキシルを含んでいる分子(例えば、ヒドロキシル基を含んでいる、糖を有している分子(例えば、ヒドロキシル基を有している多糖))は、活性化中間体を形成するための活性化剤(例えば、反応性のエポキシ基またはハロヒドリン基)を用いて処理される場合に活性化され得、ここで、活性化中間体は、化合物(例えばアミン)と反応して、ヒドロキシル基を含んでいる分子および当該化合物の間に結合(例えば、2級アミン結合または3級アミン結合)を形成可能である。
【0031】
用語「アミノ酸」は、ラセミ体であるか、またはD立体配置もしくはL立体配置のいずれかであるα-アミノ酸を指し得る。一部の実施形態において、アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸、または天然に存在しないアミノ酸(例えば、合成的に生成された天然に存在しないアミノ酸)であり得る。アミノ酸表記(例えば、dAla、dSer、dVal)の前にある表記「d」は、当該アミノ酸のD異性体を指す。アミノ酸表記(例えばdlSer)の前にある表記「dl」は、当該アミノ酸のL異性体およびD異性体の混合物を指す。
【0032】
用語「生体適合性」の内容は、特定の状態において適切な宿主応答をともなって機能する材料の能力(例えば、医学的に許容不可能な毒性または生物学的機能に対する障害作用を有していない能力)を包含し得る。
【0033】
用語「生体抱合物」は、少なくとも2つの生体分子、少なくとも2つの生体高分子、ならびに少なくとも1つの生体分子および少なくとも1つの生体高分子のいずれかに由来する抱合物を指し得る。また、生体抱合物は、3つ以上の生体分子、生体高分子またはこれらの組合せに由来する抱合物を包含しており、少なくとも1つの生体分子および/または生体高分子が、2つ以上の生体分子および/または生体高分子に対して抱合されることによって、分子間架橋を有している。また、生体抱合物は、抱合されている個々の要素の間に1つ以上の連結(例えば分子内架橋)を含み得る。一部の実施形態において、生体抱合物は1つ以上の分子間架橋を有し得る(例えば、生体抱合物は、分子間架橋されるのみであり得るか、または主にか、もしくは実質的に分子間架橋され得る)。一部の実施形態において、生体抱合物は1つ以上の分子内架橋を有し得る(例えば、生体抱合物は、分子内架橋されるのみであり得るか、または主にか、もしくは実質的に分子内架橋され得る)。一部の実施形態において、生体抱合物は、分子間架橋および分子内架橋の両方を有し得る。また、生体抱合物は、1つ以上の個々の要素をつなぐ1つ以上の連結の間に1つ以上のスペーサ基を含み得るか、当該スペーサ基は、個々の要素および連結の間にあり得る。例えば、スペーサ基としては、エチレンオキシド部分、エチレンオキシド部分、-(-CH2-CH2-O-)-の繰返し部分に基づく重合体、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、および/またはこれらの誘導体が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0034】
用語「生体分子」は、天然に見られる化合物、天然に見られる化合物の誘導体(すなわち天然に存在する分子)、天然に見られる化合物の、合成的に修飾された類似物、天然に見られる化合物の、遺伝的に改変された類似物、または天然に見られる化合物の、遺伝的に改変された修飾類似物を指す。例えば、生体分子としては、アミノ酸、ペプチド、生理活性ペプチド、遺伝的に改変されたペプチド、タンパク質、糖タンパク質、生理活性タンパク質、部分的に消化されたタンパク質、前活性型のタンパク質、遺伝的に改変されたタンパク質、酵素、抗体、遺伝的に改変された抗体、糖、二糖、三糖、オリゴ糖、多糖、オリゴヌクレオチド、RNA、DNA、ペプチド核酸(PNA)、抗原、オリゴ糖、酵素にとっての基質、核内受容体にとっての基質、および/またはこれらの誘導体もしくは組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
用語「生体高分子」は、天然に存在する化合物、天然に存在する化合物の誘導体、天然に存在する化合物の合成的に修飾された類似物、天然に存在する化合物の、遺伝的に改変された類似物、天然に存在する化合物の、遺伝的に改変された修飾類似物を指し得、ここで、当該生体高分子は、複数の単量体単位から作られ得る。例えば、生体高分子は、ペプチド、ペプチド核酸(PNAs)、オリゴヌクレオチド、RNA、DNA、タンパク質、酵素、抗体、糖タンパク質、三糖、オリゴ糖、多糖および/またはこれらの誘導体としては、が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、生体高分子は、直鎖状もしくは分枝鎖状であり得るか、または特定の三次元デザイン(例えば星形構造またはマトリクス様構造)であり得る。単量体単位の例としては、アミノ酸、アミノ酸誘導体、単糖、二糖、三糖、糖誘導体、PNA単量体、ヌクレオチド、ヌクレオシド、および/またはこれらの誘導体もしくは組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
一部の実施形態において、本明細書に示されている化合物は、キラル中心を含み得る。このようなキラル中心は、R立体配置もしくはL立体配置のいずれか、またはこれらの混合物であり得る。例えば、本明細書に示されている化合物は、鏡像異性的に同質、ジアステレオ異性的に同質、または立体異性的に同質であり得る。一部の実施形態において、本明細書に示されている化合物は、立体異性体の混合物またはジアステレオ異性体の混合物であり得る。例えば、アミノ酸残基の場合、各残基はL体またはD体のいずれかであり得る。例えば、天然に存在する酸残基にとって好ましい立体配置はLである。
【0037】
用語「補完的な反応性基」は、ともに反応させられると、共有結合を形成するそれらの複数の基を表す。例えば、反応性のアミノ基は、アミン反応性を含んでいる部分と直接的に反応して、アミド結合またはアミン結合を形成し得る部分を指す。例えば、反応性のチオール官能基は、スルフィドリル反応性を含んでいる基と直接的に反応して、安定性の高いスルフィド結合を形成し得る部分を指す。例えば、アミノ基は、カルボキシル誘導体に対して補完的な基であり得る。例えば、アミノ基は、ヒドロキシル誘導体に対して補完的な基であり得る。例えば、ヒドラジノ基は、カルボニル誘導体に対して補完的な基であり得る。また、例えば、オキシアミノ基は、カルボニル誘導体に対して補完的な基であり得る。
【0038】
用語「抱合物」は、互いに連結されている少なくとも2つ以上の要素(例えば、互いに連結されている少なくとも2つ以上の生体分子および/または生体高分子)を含んでいる化合物を表す。個々の要素は、1つ以上の共有結合、1つ以上のイオン結合、キレート化、および/またはこれらの結合の混合もしくは組合せによって互いに直接的に結合している。一部の実施形態において、抱合物は、少なくとも2つ以上の生体分子および/または生体高分子を互いに直接的に連結する、個々の要素の間にある複数の直接連結(例えば、複数のイオン結合または共有結合(例えばアミド結合))を含み得る。例えば、抱合物は、第2の要素(例えば多糖)に対して1つ以上の共有結合を介して直接的に連結されて、抱合物(例えばタンパク質-多糖の抱合物)を形成し得る、第1の要素(例えばタンパク質)を含み得る。一部の実施形態において、抱合物は、個々の要素の間にスペーサ基を含み得、当該抱合物は、2つの要素を互いにつなぐために、当該スペーサ基を介した少なくとも2つの連結を含んでいる。例えば、第1の生体分子はスペーサ基と第1の連結を形成し得、第2の生体分子は上記スペーサ基と第2の結合を形成し得る。抱合物は、2つ以上の個々の要素をつなぐ1つ以上の結合の間に1つ以上のスペーサ基を含み得るか、または個々の要素および連結の間にあり得る。例えば、上記スペーサ基としては、グリコール部分、エチレンオキシド部分、“-(-CH2-CH2-O-)-”の繰返し部分から形成されている重合体(例えば、ポリエチレングルコール(PEG)またはポリエチレンオキシド(PEO))、ポリアミン、ポリオール、および/またはこれらの誘導体もしくは組合せが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0039】
用語「架橋タンパク質マトリクス」は、少なくとも1つ以上の分子残基に対する少なくとも1つ以上の架橋を含んでいる、1つ以上のタンパク質残基を指し得、当該少なくとも1つ以上の分子残基は、例えば、1つ以上の生体分子残基および/または1つ以上の生体高分子残基、またはこれらの誘導体もしくは組合せである。
【0040】
用語「残基」は、反応生成物に残っている、分子材料の一部または残存の分子材料を指し得る。例えば、反応生成物(例えば、タンパク質分子および架橋剤の反応に由来する架橋生成物)に残っているタンパク質分子材料の一部は、タンパク質残基と呼ばれる。例えば、反応生成物(例えば、糖を有している分子およびタンパク質分子の反応に由来する架橋生成物)に残っている、糖を有している分子材料の一部は、糖を有している残基と呼ばれる。
【0041】
用語「細針」、「微細なゲージの針」、または「細針注入」は、約25G以下のサイズの針の使用を指し得るが、これに限定されない。より太い針は、本明細書にさらに述べられているような一部の用途に使用され得る。
【0042】
用語「ヒアルロン酸」または「HA」は、ヒアルロン酸、およびヒアルロン酸塩(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム(ナトリウム塩)、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸マグネシウム、およびヒアルロン酸カルシウム)のうちのいずれかを包含し得る。本明細書において、種々の原料から得られるヒアルロン酸が使用され得る。例えば、ヒアルロン酸は、動物組織から抽出され得るか、細菌発酵の生成物として回収され得るか、またはバイオプロセスによって工業的な量において生成され得る。
【0043】
用語「連結」は、互いに連結させられている2つの個々の分子要素の接続または結合を指す。一部の実施形態において、互いに連結されている個々の分子要素としては、生体高分子、修飾生体高分子(生物学的および/または合成的に修飾された生体高分子)、生体分子、修飾生体分子(生物学的および/または合成的に修飾された生体分子)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、2つの生体分子の間における接続もしくは結合、生体分子とスペーサ基との間における接続もしくは結合、2つの生体高分子の間における接続もしくは結合、生体高分子とスペーサ基との間における接続もしくは結合、2つの修飾分子の間における接続もしくは結合、および/またはこれらの誘導体もしくは組合せ。一部の実施形態において、連結は、熱分解、加水分解または両方に対して安定であり得る。一部の実施形態において、連結は生体適合性であり得る。一部の実施形態において、連結は、共有結合、イオン結合および/またはこれらの組合せの形成によって形成され得る。例えば、連結は、1つ以上の共有結合および/または1つ以上のイオン結合の組合せを形成することによって形成され得る。一部の実施形態において、共有連結としては、アミド結合、オキシム結合、ヒドラゾン結合、トリアゾール結合、スルフィド結合、エーテル結合、アミン結合(例えば、2級アミン結合または3級アミン結合)、エノールエーテル結合、エステル結合、ジスルフィド結合、またはこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、アミド結合は、例えば、糖を有している生体分子のカルボン酸基または活性化カルボン酸基と、アミノ酸を含んでいる生体分子(例えば、タンパク質(例えば、リジン残基を含んでいるタンパク質))のアミノ基との間に形成され得る。例えば、一部の実施形態において、アミド結合は、例えば、修飾糖部分(例えば、スペーサ基を用いて修飾されている糖部分)を含んでいる生体分子と、アミノ酸部分を含んでいる生体分子(例えばタンパク質)との間にあり得る。一部の実施形態において、アミド結合は、例えば、糖部分と、修飾アミノ酸部分を含んでいる生体分子(例えば、スペーサ基を用いて修飾されているタンパク質)との間にあり得る。
【0044】
用語「修飾」は、天然に存在する過程、化学合成的な修飾もしくは生物工学など、および/またはこれらの組合せもしくは変形による、分子(例えば、生体分子または生体高分子)および/または当該分子の部分の修飾を指す。一部の実施形態において、上記分子および/または当該分子の部分は、当該分子上にすでに存在しいている部分の変換(例えば、化学合成的な変換処理、および/または天然に存在する過程、付加的な部分の付与、および/またはこれらの組合せもしくは変形)によって修飾され得る。例えば、一部の実施形態において、上記分子に対する部分の付与は、共有結合の形成に基づき得る。一部の実施形態において、例えば、変換された部分を含んでいる修飾分子は、補完的な反応性基と反応して、連結、架橋および/またはこれらの組合せもしくは誘導体を、形成可能またはより形成可能であり得る。一部の実施形態において、例えば、付与された部分を含んでいる分子は、補完的な反応性基と反応して、連結、架橋および/またはこれらの組合せもしくは誘導体を、形成可能またはより形成可能であり得る。一部の実施形態において、変換された部分および/または付着された部分を含んでいる分子は、例えば、反応性基、連結可能な基、スペーサ基、補完的な反応性基、および/またはこれらの組合せもしくは誘導体を含み得る。一部の実施形態において、変換された部分および/または付与された部分を含んでいる分子は、化学合成的な修飾または天然に存在する過程によって形成され得るか、および/または脱保護され得る部分(例えば、反応性基)を含み得、当該化学合成的な修飾または天然に存在する過程は、例えば補完的な反応性基と反応させることによって連結または架橋を形成するための、反応に利用可能である。例えば、一部の実施形態において、修飾分子は、化学基(例えばカルボキシル基)の活性化、スペーサ基の付与、反応性の部分の脱保護および/またはこれらの組合せもしくは変更から入手され得る。
【0045】
本明細書に使用されるとき、多糖の「モル」または「モル濃度(M)」という用語は、重合体に含まれている繰返し単量体単位のモルを示す。
【0046】
用語「多糖」は、例えば、少なくとも3つの糖残基(例えば少なくとも3つの糖単量体繰返し単位)を含んでいる、糖を有している分子を包含し得、少なくとも3つの糖単量体繰返し単位は、例えば、少なくとも3つの単糖繰返し単位、少なくとも3つの二糖繰返し単位、少なくとも3つの三糖繰返し単位、少なくとも3つのオリゴ糖繰返し単位、および/またはこれらの組合せもしくは誘導体である。一部の実施形態において、多糖は、同じか、および/または異なる複数の糖残基(例えば、同じか、および/または異なる複数の糖残基の1つ以上、同じか、および/または異なる複数の糖残基の2つ以上、同じか、および/または異なる複数の糖残基の3つ以上、および/またはこれらの組合せもしくは誘導体)を含み得る。
【0047】
用語「糖を有している分子」は、例えば、単糖、二糖、三糖、オリゴ糖、および/または多糖を有している分子を包含し得る。一部の実施形態において、例えば、糖を有している分子は、単糖、二糖、三糖、オリゴ糖、または多糖を有している単量体繰返し単位を含み得る。一部の実施形態において、糖を有している分子は、同じか、または異なる1つ以上の糖単量体繰返し単位を含み得る。例えば、同じか、または異なる1つ以上の二糖、三糖、および/または多糖単量体繰返し単位を含み得る。
【0048】
一部の実施形態において、糖を有している残基は、(1)オリゴ糖、修飾オリゴ糖、多糖、修飾多糖および/またはこれらの誘導体に由来する糖を有している残基、または(2)糖を有している架橋分子(例えば、オリゴ糖架橋剤、修飾オリゴ糖架橋剤、多糖架橋剤、修飾多糖架橋剤および/またはこれらの誘導体)に由来する糖を有している残基であり得る。
【0049】
用語「タンパク質」、「タンパク質単位」または「タンパク質単量体」は、例えば、全長のタンパク質、実質的に全長のタンパク質、タンパク質断片、生理活性タンパク質、生理活性タンパク質断片、前活性形態のタンパク質、不活性タンパク質、活性部位を有しているタンパク質、結合部位を有しているタンパク質、タンパク質分解性の切断部位を有しているタンパク質、部分的に消化されたタンパク質、部分的に加水分解されたタンパク質、1つ以上の点変異を有しているタンパク質、全長のタンパク質の約50~約99.99%を含んでいるタンパク質、全長のタンパク質におけるアミノ酸の約50%~約99.99%の保存を含んでいるタンパク質を包含し得る。一部の実施形態において、タンパク質としては、例えば、例えば、少なくとも1つの生理活性ペプチドの配列を含んでいるペプチド、少なくとも1つの受容体結合部位を含んでいるペプチド、少なくとも1つのタンパク質分解性の切断部位を含んでいるペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、および/またはこれらの組合せもしくは誘導体が挙げられ得る。
【0050】
一部の実施形態において、タンパク質としては、例えば、少なくとも1つのリジン残基、少なくとも1つのアルギニン残基、少なくとも1つのシステイン残基、少なくとも1つのセリン残基、少なくとも1つのスレオニン残基、少なくとも1つのチロシン残基、少なくとも1つのグルタミン酸残基、少なくとも1つのアスパラギン酸残基、少なくとも1つのプロリン残基および/またはこれらの組合せもしくは誘導体を含んでいるタンパク質が挙げられ得る。一部の実施形態において、上記タンパク質としては、例えば、少なくとも1つの二量体残基(例えば少なくとも1つのシスチン残基)を含んでいるタンパク質が挙げられ得る。
【0051】
一部の実施形態において、タンパク質としては、例えば、少なくとも1つのアミン基を含んでいるタンパク質、少なくとも1つのアミン担持側鎖を含んでいるタンパク質、少なくとも1つのアミン担持アミノ酸残基を含んでいるタンパク質(例えば、少なくとも1つのリジン残基を含んでいるタンパク質)、少なくとも1つのアルギニン残基を含んでいるタンパク質、および/またはこれらの組合せもしくは誘導体が挙げられ得る。例えば、一部の実施形態において、タンパク質としては、アミンに富む領域(リジンリッチ領域またはアルギニンリッチ領域)および/またはこれらの組合せもしくは誘導体を含んでいるタンパク質が挙げられる。一部の実施形態において、タンパク質としては、例えば、ポリ(アミン残基)タンパク質(例えば、ポリリジン、ポリアルギニンおよび/またはこれらの組合せもしくは誘導体)が挙げられる。
【0052】
一部の実施形態において、タンパク質としては、ホモ重合体または共重合体(例えば、アミノ酸残基のホモ重合体または共重合体)が挙げられ得る。例えば、一部の実施形態において、タンパク質としては、リジン残基、アルギニン残基および/またはヒスチジン残基のホモ重合体または共重合体(例えば、リジンリッチ領域を有しているタンパク質)が挙げられ得る。一部の実施形態において、例えば、リジンリッチ領域を含んでいるタンパク質は、少なくとも2つのリジン単位を含んでいる(例えばポリリジン領域を含んでいる(例えば少なくとも5つのリジン単位を含んでいる))。一部の実施形態において、例えば、アルギニンリッチ領域を含んでいるタンパク質は、少なくとも2つのアルギニン単位を含んでいる(例えばポリアルギニン領域を含んでいる(例えば少なくとも5つのアルギニン単位を含んでいる))。一部の実施形態において、少なくとも2つの異なる残基に富む領域を含み得る。例えば、少なくとも1つのリジンリッチ領域および少なくとも1つのアルギニンリッチ領域、および/またはこれらの組合せもしくは誘導体を含んでいるタンパク質を含み得る。一部の実施形態において、タンパク質としては、トロポエラスチン、エラスチン、アルブミン、コラーゲン、複数のコラーゲン単量体、免疫グロブリン、インスリンおよび/またはこれらの誘導体もしくは組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
一部の実施形態において、タンパク質としては、修飾タンパク質またはタンパク質誘導体が挙げられ得る。一部の実施形態において、例えば、修飾タンパク質またはタンパク質誘導体は、天然に存在する過程、化学合成的な修飾および/またはこれらの組合せによって調製されたか、および/または得られたタンパク質であり得る。一部の実施形態において、例えば、修飾タンパク質またはタンパク質誘導体は、天然に存在する過程から調製されたか、および/または得られたタンパク質(例えば、真核細胞、原核細胞および/またはこれらの組合せに存在するタンパク質)であり得る。例えば、一部の実施形態において、天然に存在する過程としては、タンパク質合成、タンパク質分解、加水分解、酵素処理および/または抱合、酸化、還元、グリコシル化、アミノ化、カルボキシル化、アミノ酸残基またはスペーサ基(リンカー基とも呼ばれる)の組込み、アミノ酸残基またはスペーサ基の修飾および/または誘導体化、および/またはこれらの組合せまたは変形が挙げられる。一部の実施形態において、例えば、修飾タンパク質またはタンパク質誘導体は、化学合成的な修飾から調製されたか、および/または得られたタンパク質であり得る。例えば、一部の実施形態において、化学合成的な修飾としては、酸化、還元、抱合、加水分解、アミノ化、エステル化、アミド化、還元的アミノ化、カルボキシル基活性化、カルボキシル基修飾、アミノ酸残基またはスペーサ基(リンカー基とも呼ばれる)の組込み、アミノ酸残基またはスペーサ基の修飾および/または誘導体化、および/またはこれらの組合せが挙げられ得る。一部の実施形態において、修飾タンパク質またはタンパク質誘導体は、固相合成、液相合成および/またはこれらの組合せから調製され得る。一部の実施形態において、修飾タンパク質または修飾タンパク質誘導体は、アミン担持アミノ酸残基に富む領域(リジンリッチ領域)を含んでいるタンパク質から調製され得る。
【0054】
一部の実施形態において、タンパク質残基は、本明細書に開示されているようなタンパク質および/またはその誘導体に由来し得る。
【0055】
用語「スペーサ基」は、例えば、1つ以上の個々の要素をつなぐ(例えばタンパク質および多糖をつなぐ)部分を包含し得る。
【0056】
用語「合成分子」は、天然に由来しない小分子または重合体を指し得る。
例えば、合成分子は、固相合成、液相合成またはこれらの組合せを介した化学修飾によって調製され得る。
【0057】
一部の実施形態は、タンパク質と組み合わせられた場合に共有結合を形成可能な化学基を用いて、糖を有している分子(例えば多糖)を修飾するか、または誘導体化する方法を提供する。多糖は、水および/または食塩水に対して可溶性または十分な可溶性を維持可能なように修飾され得る。多糖の修飾後に残っている反応物の大部分は、例えば沈殿またはろ過によって、除去される。糖を有している修飾分子(多糖)は、それから架橋剤として使用され得る。それから、修飾多糖の溶液は、必要とされている(複数の)タンパク質と混合されて、反応させられ得る。修飾多糖における化学修飾基は、タンパク質と反応して、生体適合材料を形成する。このように生成された生体適合材料は、従来の手法を用いて精製された生体適合材料と比べて、いくつかの特異な特性を有している。分子内架橋を生じる化学物質を用いて架橋したタンパク質から生成された調合物は、典型的に不透明であり、黄色かかった白色または茶色かかった白色に着色されていることが多い。開示されている一部の方法を用いて得られた調合物は、無色透明の調合物である。さらに、化学物質(例えばグルタルアルデヒド)を用いて架橋したタンパク質は、インビボにおける炎症を引き起こし得るか、および/または生成物の生体適合性を低下させ得る、調合物に残っている残留化学物質を有している。開示されている一部の方法を用いて得られた調合物は、そのような任意の残留化学物質を実質的に有していない。
【0058】
化学的な架橋剤または短い架橋分子を用いて生成された調合物は、シリンジまたは針を用いた送達を可能にするために、微小化または均質化を必要とするか;または針による押出しを可能にするための最小レベルに留められる架橋のレベルを必要とする生体適合材料を多くの場合にもたらす。化学物質(例えば、グルタルアルデヒド)を用いて架橋した、過度に架橋されているタンパク質は、微細なゲージの針を通して押し出され得ない。
【0059】
開示されている一部の方法によって生成された調合物は、さらなる処理なしにか、または実質的にさらなる処理なしに、微細なゲージの針を通して押し出され得る。開示されている一部の調合物は、十分に長い(例えば、>10cm、>12cm、>15cm、>18cm、>20cm)材料のひも状物が、材料の切断なしに、針から押し出され得るほどに、針を通した押出し後にさえ十分な密着性を保持している。さらに、本明細書に記載の一部の実施形態を用いれば、架橋剤として修飾多糖を用いた全長のタンパク質に基づく調合物は、微細なゲージの針を通して取り出し可能に十分な柔軟性を依然として保持している、非常に安定な生体適合材料を製造できる柔軟なマトリクス構造をもたらす。
【0060】
(架橋タンパク質マトリクス)
架橋タンパク質マトリクスは、開示されている実施形態において異なり得る。
【0061】
例えば、架橋タンパク質マトリクスは、糖を有している1つ以上の分子(例えば、糖を有している1つ以上の修飾分子)を用いた、1つ以上のタンパク質分子(1つ以上の全長のタンパク質)の架橋から入手され得る。
【0062】
例えば、架橋タンパク質マトリクスは、糖を有している1つ以上の残基を用いて架橋されている1つ以上のタンパク質残基(糖架橋タンパク質、二糖架橋タンパク質、三糖架橋タンパク質、オリゴ糖架橋タンパク質、または多糖架橋タンパク質)を含み得る。
【0063】
架橋タンパク質マトリクスは、例えば、1つ以上の多糖残基に対する1つ以上の連結を介した、1つ以上のタンパク質残基の間における連結を含み得る(例えば、1つ以上のタンパク質残基は、1つ以上の多糖残基に対する1つ以上の連結を介して互いに接続され得るか、または連結され得る)。上記架橋タンパク質マトリクスは、例えば、少なくとも1つの共有結合および/または少なくとも1つのイオン結合、またはこれらの組合せによって、多糖を有している少なくとも1つの残基(例えば、オリゴ糖残基または多糖残基)に連結されている少なくとも1つのタンパク質残基を含み得る。
【0064】
架橋タンパク質マトリクスは、例えば、連結(すなわち1つ以上の架橋(例えば、1つ以上の分子間架橋および/または1つ以上の分子内架橋、またはこれらの混合もしくは組合せ))を含み得る。架橋タンパク質マトリクスは、分子間架橋され得るか、実質的に分子間架橋され得るか、分子内架橋され得るか、実質的に分子内架橋され得るか、および/または分子間架橋されかつ分子内架橋され得る。架橋タンパク質マトリクスは、1つ以上の架橋剤(例えば、糖を有している架橋剤(例えば、多糖または修飾多糖(例えば、ヒアルロン酸または修飾ヒアルロン酸))に由来し得る。例えば、上記架橋タンパク質マトリクスは、1つ以上の架橋剤に由来し得、1つ以上の当該架橋剤は、1つ以上のタンパク質分子に連結し得るか、および/または架橋し得るか、および/または単一の同じタンパク質分子に1つ以上の連結を形成し得る。例えば、上記架橋タンパク質マトリクスは、マトリクス構造(例えば、糖を有している1つ以上の架橋剤残基に連結されているか、および/または架橋されているタンパク質残基のマトリクス)を含み得る。上記架橋タンパク質マトリクスのマトリクス構造は、柔軟性をもたらし得、ここで、架橋タンパク質マトリクス内の架橋度は、もたらされる柔軟性を変更し得る。
【0065】
一部の実施形態において、分子内架橋を実質的に欠いている全長のタンパク質に由来する、本明細書に開示されているような架橋タンパク質マトリクスの使用は、より組織適合性であるか、組織内成長を促進するか、組織再生を促進するか、またはこれらの組合せである調合物を生じ得る。また、このような調合物は、より標準的な所望の構造に再構築され得るか、および/または新たな組織に組み込まれ得る。
【0066】
一部の実施形態において、分子内架橋を実質的に欠いている実質的に全長のタンパク質に由来する、本明細書に開示されているような架橋タンパク質マトリクスの使用は、より組織適合性であるか、組織内成長を促進するか、組織再生を促進するか、またはこれらの組合せである調合物を生じ得る。また、このような調合物は、より標準的な所望の構造に再構築され得るか、および/または新たな組織に組み込まれ得る。
【0067】
本明細書に開示されている他の実施形態は、架橋タンパク質マトリクスのタンパク質残基において一定の度合い分子内架橋を有し得、使用にとって許容可能であるように十分な性質を依然としてもたらし得る。
【0068】
一部の実施形態において、タンパク質残基の構造が架橋処理によって実質的に覆われておらず、かつ実質的に全長のタンパク質に由来する架橋タンパク質マトリクスの使用は、より組織適合性であるか、組織内成長を促進するか、組織再生を促進するか、またはこれらの組合せである調合物を生じ得る。また、このような調合物は、より標準的な所望の構造に再構築され得るか、および/または新たな組織に組み込まれ得る。
【0069】
(架橋度)
一部の実施形態において、糖を有している架橋剤(例えば多糖架橋剤)の可溶性は、多糖の修飾、誘導体化および/または処理の間に特定の割合の化学試薬を使用することによって維持され得る。一部の実施形態において、誘導体化多糖を自己架橋させないために、誘導体化後の処理の間に役立つ予防手段が、必要とされ得る。例えば、誘導体化HAは、残留反応物を除去するために、誘導体化HAの沈殿後に、適度かつ速やかに処理される必要があり得る。一部の実施形態において、誘導体化HAの沈殿、反応物の除去および水溶液への再懸濁は、約30分以内に実施され得る。他の期間が、特定の状況に依存して使用され得る。例えば、誘導体化HAの沈殿、反応物の除去、および水溶液への再懸濁は、少なくとも20分、30分、40分、50分、1時間または2時間以内に実施され得る。
【0070】
また、一部の実施形態において、誘導体化HAの沈殿物を溶解前により小さな部分に分けることは、数時間(例えば、少なくとも1時間、2時間または3時間)を要し得る溶解速度を向上させるために、有用であり得る。いったん溶解されると、一定の期間内(例えば、少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間または24時間)に誘導体化多糖を使用することが、特定の用途において所望され得る。しかし、これは、必須ではなく、特定の調合物および/または用途に依存する。
【0071】
一部の実施形態において、調合物において架橋タンパク質マトリクスを形成するために利用されるタンパク質分子は、当該タンパク質分子を多糖架橋剤によって架橋可能にするために、適切な反応性基にとっての必要条件によって制限され得る。
【0072】
一部の実施形態において、少なくともまたは約50%のタンパク質単量体は、生体分子および/または生体高分子(例えば糖を有している分子(例えば、オリゴ糖、多糖またはこれらの誘導体))を用いて架橋され得る。他の実施形態において、少なくともまたは約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%のタンパク質単量体は、生体分子および/または生体高分子もしくはこれらの誘導体を用いて架橋され得る。一部の実施形態において、タンパク質単量体は、生体分子および/または生体高分子を用いて実質的または完全に架橋され得る。
【0073】
一部の実施形態において、多糖ごとに可能な架橋部位ごとの架橋の数は、少なくとも0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%または50%であり得る。
【0074】
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスまたは複合体に組み込まれていない、結合せずに残っているタンパク質単位またはタンパク質単量体の数は、少なくとも1、3、5、7、9、10、15または20%であり得る。架橋タンパク質マトリクスまたは複合体の形成後に、結合せずに残っているタンパク質単位のパーセンテージを最小化することは、特定の用途において所望される。例えば、20%、15%、10%、7%、5%、3%または1%未満の結合していないタンパク質単位を、架橋後の調合物に有していることは、特定の用途において所望される。結合していないタンパク質単位またはタンパク質単量体に乏しいことは、本開示の特定の用途の利点の1つである。
【0075】
上記パーセンテージは、多くの検討事項(特定の用途のために選択されたタンパク質および化学種が挙げられるが、これらに限定されない)に依存し得る。例えば、トロポエラスチン結合およびリジン結合にとっての、いくつかの用途における可能な部位の数は、上記比率は1~35(すなわち約3%~100%)であるので、典型的に約30~約35である。この組合せに関して、架橋タンパク質マトリクスにとっての好ましいパーセンテージは、1つ以上の生体分子および/または生体高分子(例えば糖を有している分子またはこれらの誘導体)を用いて架橋される、1つ以上のタンパク質分子にある可能な部位の数の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%であり得る。
【0076】
他の検討事項は、糖を有している分子(例えば多糖)の長さ、ならびに活性化反応、誘導体化反応または修飾反応に使用される成分である。例えば、特定の用途では、オリゴ糖または多糖上の1つのカルボキシル基にある1つ以上のカルボン酸基の1%~30%、1%~40%、3%~30%または5%~30%は、活性化剤(例えばNHS)を用いて活性化されて、タンパク質との架橋に利用可能な活性化エステル部位を1%~30%、1%~40%、3%~30%または5%~30%を形成し得る。例えば、特定の用途では、オリゴ糖または多糖上の1つ以上のヒドロキシル基の1%~30%、1%~50%、3%~30%または5%~30%は、活性化剤(例えばアリルグリシジルエーテル)を用いて活性化させ、かつハロゲン化合物(例えば臭素)を用いてさらに修飾して、タンパク質の架橋に利用可能な活性化エポキシまたはハロヒドリン部位を、1%~30%、1%~40%、3%~30%、5%~30%または1%~50%を形成し得る。また、およそ有効である他の成分が使用され得る。他の検討事項は、単量体(すなわち結合していない)として残され得るタンパク質単位のパーセンテージを低く(例えば5%以下に)、維持することで。
【0077】
一部の実施形態において、タンパク質単量体は、上記タンパク質単量体の約40%~約90%が調合物に組み入れられ得る程度に、生体分子および/または生体高分子を用いて架橋し得る。他の実施形態において、タンパク質単量体は、上記タンパク質単量体の約30%~約99%、約40%~約99%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約99%、約80%~約100%または約90%~約100%が、調合物に組み込まれ得る程度に、架橋され得る。
【0078】
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスは、生分解、分解、加水分解および/またはこれらの組合せに対して、許容可能な耐性をある期間にわたって有し得る。一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスを含んでいる調合物は、生分解、分解、熱分解、加水分解および/またはこれらの組合せ対して、許容可能な耐性をある期間にわたって有し得る。架橋タンパク質マトリクスに依存して、上記期間は、少なくとも1カ月間、2カ月間、3カ月間、6カ月間、9カ月間または12カ月間であり得る。また、上記架橋タンパク質マトリクスを含んでいる調合物に依存して、上記期間は、少なくとも1カ月間、2カ月間、3カ月間、6カ月間、9カ月間、または12カ月間であり得る。
【0079】
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスを含んでいる調合物は、1週間~1年にわたって、インビボにおいて許容可能に損なわれずに残り得るか、またはインビボにおいて存続し得る。特定の調合物に依存して、上記期間は異なり得る。例えば、上記架橋タンパク質マトリクスを含んでいる調合物は、少なくとも1週間~4週間、2週間~8週間、1カ月~3カ月、1カ月~6カ月、3カ月~9カ月または6カ月~12カ月、1週間~24カ月、または12カ月~24カ月にわたって存続し得る。一部の実施形態において、上記架橋タンパク質マトリクスを含んでいる調合物は、少なくとも1週間、2週間、4週間、2カ月、3カ月、6カ月、9カ月、12カ月、15カ月、または24カ月にわたってインビボにおいて存続し得る。
【0080】
例えば、一部の実施形態において、架橋タンパク質を含んでいる調合物(0.05ml、0.1ml、0.2ml、または0.5ml、1ml、2mlまたは3mlの移植片)は、約1週間~約2年にわたってインビボにおいて存続し得る。
【0081】
一部の実施形態において、調合物内の架橋タンパク質マトリクス成分は、上記調合物の保管中に、熱分解に対して安定であり得るか、熱分解に耐性であり得るか、加水分解に対して安定であり得るか、加水分解に対して耐性であり得るか、またはこれらの組合せであり得る。例えば、約2℃~8℃の温度の保管において、上記調合物は、少なくとも6カ月、12カ月または24カ月にわたって安定であり得る。調合物の架橋タンパク質マトリクス成分は、調合物を凍結乾燥して適切な温度(例えば、約-10℃より低い)において保管される場合、上記調合物の保管中に、熱分解に対して安定であり得るか、熱分解に耐性であり得るか、加水分解に対して安定であり得るか、加水分解に対して耐性であり得るか、またはこれらの組合せであり得、したがって、数年にわたって安定であり得る。調合物内の架橋タンパク質マトリクス成分は、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、1カ月、2カ月、6カ月または12カ月にわたる室温における調合物の保管中に、熱分解および/または加水分解に対して、安定であり得るか、および/または耐性であり得る。一部の実施形態において、調合物内の架橋タンパク質マトリクス成分は、少なくとも1週間~12カ月、2週間~8カ月、1週間~5週間、または1カ月間~6カ月にわたるにわたる室温における調合物の保管中に、熱分解および/または加水分解に対して、安定であり得るか、および/または耐性であり得る。
【0082】
(同種および異種の架橋タンパク質マトリクス)
架橋タンパク質マトリクスの構造および組成物は、変化し得る。架橋タンパク質マトリクスは、例えば、同種または相同の1つ以上の生体分子を用いて架橋されている、同種または相同の1つ以上のタンパク質残基(例えば、同種の生体高分子)を含み得る。例えば、糖を有している同種の分子。架橋タンパク質マトリクスは、異種または非相同の1つ以上の生体分子残基を用いて架橋されている1つ以上の同種のタンパク質残基(例えば、2つ以上の異なる生体分子残基(例えば異種の生体高分子残基))を含み得る。例えば、異種糖を有している残基。1つ以上または2つ以上の異なる分子(例えば、異なる生体分子または生体高分子、および/またはこれらの誘導体もしくは組合せ)を用いて架橋されているタンパク質。架橋タンパク質マトリクスは、1つ以上の異なる糖を有している残基(1つ以上の異なるオリゴ糖残基もしくは多糖残基、および/またはこれらの組合せ)を用いて、架橋されている1つ以上のタンパク質残基を含み得る。架橋タンパク質マトリクスは、1つ以上の異なる多糖残基の混合物(ヒアルロン酸残基およびカルボキシメチルセルロース残基のブレンドまたは混合物)を用いて、架橋されている1つ以上のタンパク質残基を含み得る。架橋タンパク質マトリクスは、1つ以上の異なる活性化多糖の混合物(活性化ヒアルロン酸および活性化カルボキシメチルセルロースのブレンドまたは混合物)を用いて、1つ以上のタンパク質分子を架橋することによって調製され得る。
【0083】
架橋タンパク質マトリクスとしては、例えば、同種の生体分子残基(例えば糖を有している同種の分子残基(例えば同種の生体高分子残基))を用いて、架橋されている異種タンパク質残基(例えば、2つ以上の異なるタンパク質残基)を含んでいる架橋タンパク質マトリクスが挙げられ得る。架橋タンパク質マトリクスとしては、例えば、異種の生体高分子残基(例えば、2つ以上の異なる生体分子残基(例えば、異種の生体高分子残基(例えば、糖を有している異種の残基)))を用いて、架橋されている異種タンパク質残基(例えば、2つ以上の異なるタンパク質残基)を含んでいる架橋タンパク質マトリクスが挙げられる。架橋タンパク質マトリクスは、分子残基(例えば、生体分子残基、生体高分子残基および/またはこれらの誘導体もしくは組合せ)を用いて、架橋されている1つ以上(例えば2つ以上)の異なるタンパク質残基を含み得る。架橋タンパク質は、糖を有している残基(例えば、オリゴ糖を有している残基または多糖を有している残基)を用いて、架橋されている1つ以上(例えば2つ以上)の異なるタンパク質残基を含み得る。
【0084】
架橋タンパク質マトリクスは、1つ以上の異なる分子残基(例えば1つ以上の異なる生体分子残基、1つ以上の異なる生体高分子残基、および/またはこれらの誘導体もしくは組合せ)を用いて、架橋されている1つ以上(例えば2つ以上)の異なるタンパク質残基を含み得る。例えば、架橋タンパク質マトリクスは、糖を有している1つ以上の異なる残基(例えば、1つ以上の異なるオリゴ糖残基および/または1つ以上の異なる多糖残基(例えば、2つ以上の異なるオリゴ糖残基および/または2つ以上の異なる多糖残基)、またはこれらの混合物もしくは組合せ)を用いて、架橋されている1つ以上(例えば2つ以上)の異なるタンパク質残基を含み得る。
【0085】
架橋タンパク質マトリクスは、1つ以上の異なる分子残基(例えば、1つ以上の異なる生体分子残基、1つ以上の異なる生体高分子残基、および/またはこれらの誘導体もしくは組合せ)を用いて、架橋されているタンパク質残基を含み得る。
例えば、一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスは、糖を有している1つ以上(例えば2つ以上)の異なる残基(例えば、1つ以上(2つ以上)の異なるオリゴ糖残基および/または1つ以上(2つ以上)の異なる多糖残基、またはこれらの混合物もしくは組合せ)を用いて架橋されているタンパク質残基を含み得る。
【0086】
架橋タンパク質マトリクスは、例えば、多糖の各残基につき1つ以上のタンパク質残基(例えば、多糖の各残基につき2つ以上のタンパク質残基)を含み得る。架橋タンパク質マトリクスは、例えば、タンパク質の各残基に対して1つ以上の多糖残基(例えば、タンパク質の各残基に対して2つ以上の多糖残基)を含み得る。一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスは、例えば、タンパク質残基と多糖残基を約2.5%~10%のタンパク質残基に対して、約0.1%~1.5%の多糖残基の割合を含み得る。割合の他の例は、3%~6%のタンパク質残基に対して、0.75%~1.5%の多糖残基、0.1%~6%のタンパク質残基に対して0.1%~1.5%の多糖残基、1%~4%のタンパク質残基に対して0.25%~0.85%の多糖残基、0.5%~15%のタンパク質残基に対して0.1%~3%の多糖残基、少なくとも0.5%のタンパク質残基に対して3%以下の多糖残基、15%以下のタンパク質残基に対して少なくとも0.25%の多糖残基、12%以下のタンパク質残基に対して少なくとも0.01%の多糖残基、または8%以下のタンパク質残基に対して少なくとも1%多糖残基である。他の割合は、使用され得、架橋タンパク質マトリクスを誘導するために使用されるタンパク質分子の、所望の性質および構造に依存する。例えば、より柔軟な調合物において、使用される多糖分子の量は減少され得る。例えば、特定の調合物において、より長い鎖の糖を使用することは、より少ない量の多糖分子の使用を可能にし、許容可能な調合物を依然として可能にし得る。
【0087】
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスは、生体適合性および/または生体利用性の材料を含み得る。例えば、架橋タンパク質マトリクスは、生体適合性および/または生体利用性の材料であり得るか、または当該材料に由来し得る;すなわち、架橋タンパク質マトリクスは、生体適合性および/または生体利用性であり得る。
【0088】
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスは、水溶性架橋剤を含んでいる架橋タンパク質マトリクス、および/または水溶性架橋剤に由来の架橋タンパク質マトリクスであり得る。例えば、架橋タンパク質マトリクスは、糖を有している水溶性の架橋剤(例えば水溶性のオリゴ糖架橋剤)または糖を有している水溶性の修飾架橋剤(例えば、水溶性の修飾オリゴ糖架橋剤)を含んでいるか、または当該架橋剤もしくは修飾架橋剤に由来する架橋タンパク質マトリクスであり得る。また、架橋タンパク質マトリクスは、多糖を有している水溶性の架橋剤または多糖を有している水溶性の修飾架橋剤を含んでいるか、または当該架橋剤もしくは修飾架橋剤に由来する架橋タンパク質マトリクスであり得る。
【0089】
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスは、例えば、生体分子とタンパク質との抱合物、生体高分子とタンパク質との抱合物、またはこれらの組合せを含み得る。例えば、架橋タンパク質マトリクスは、糖を有している分子とタンパク質との抱合物(糖とタンパク質との抱合物、二糖とタンパク質との抱合物、三糖とタンパク質との抱合物、オリゴ糖とタンパク質との抱合物、多糖とタンパク質との抱合物、および/またはこれらの組合せ)を含み得る。
【0090】
(糖を有している分子)
一部の実施形態において、糖を有している分子(例えばオリゴ糖)は、1つ以上の二糖、1つ以上の三糖、2つ以上の二糖、2つ以上の三糖、3つ以上の二糖、3つ以上の三糖、および/またはこれらの組合せもしくは誘導体を含み得る。例えば、オリゴ糖は、少なくともまたは約3、4、5、6、7、8または11の糖残基または糖単位を含み得る。また、上記架橋タンパク質マトリクスを得るために使用されるオリゴ糖は、特定の調合物において、約3~約15、約3~約14、約3~約12、約3~約11、約3~約10、約4~約15、約5~約15または約5~約10の多糖残基または多糖単位を含み得る。
【0091】
一部の実施形態において、多糖は、1つ以上の二糖単位もしくは二糖残基、1つ以上の三糖単位もしくは三糖残基、1つ以上のオリゴ糖、2つ以上の二糖単位もしくは二糖残基、2つ以上の三糖単位もしくは三糖残基、2つ以上のオリゴ糖、3つ以上の二糖単位もしくは二糖残基、3つ以上の三糖単位もしくは三糖残基、3つ以上のオリゴ糖またはこれらの組合せを含み得る。例えば、多糖は、少なくともまたは約25、50、100、200、500、800、1,000、1,200、1,500、2,000、5,000、10,000または20,000の糖単位または糖残基を含み得る。また、上記架橋タンパク質マトリクスを得るために使用される多糖は、特定の調合物において、約25~約5,000、約500~約2,000、約3,000~約5,000、約150~約250、約175~約225、約100~約175、約150~約200または約100~約200の糖残基または糖単位を含み得る。
【0092】
一部の実施形態において、HAは、約100~約300の多糖単位または多糖残基の範囲、例えば約200の糖単位または糖残基において使用され得る。他の実施形態において、HAは、200~20,000の糖単位または糖残基の範囲において使用され得る。他の実施形態において、HAは、500~2,000の糖単位または糖残基の範囲において使用され得る。他の実施形態において、HAは、3,000~5,000の糖単位または糖残基の範囲において使用され得る。他の調合物において、使用されるHAは、少なくともまたは約25、50、75、100、125、150、175、200、500、800、1,000、1,200、1,500、2,000、5,000、10,000または20,000の糖単位または糖残基を含み得る。また、架橋タンパク質マトリクスを得るために使用されるHAは、特定の調合物において、約25~約5,000、約500~約2,000、約3,000~約5,000、約150~約250、約175~約225、約100~約175、約150~約200または約100~約200の糖残基または糖単位を含み得る。
【0093】
糖を有している上記分子(例えば多糖)は、低い分子量、中程度の分子量または高い分子量であり得る。例えば、組成物または調合物は、低い分子量、中程度の分子量または高い分子量の多糖または多糖架橋剤に由来し得る。
【0094】
糖を有している低い分子量の分子は、約25,000ダルトン~約300,000ダルトン(例えば、約50,000ダルトン~約275,000ダルトン、約100,000ダルトン~約250,000ダルトンまたは約50,000ダルトン~約300,000ダルトン)の分子量を有し得る。糖を有している中程度の分子量の分子は、約300,000ダルトン~約900,000ダルトン、約600,000ダルトン~約800,000ダルトン、約500,000ダルトン~約900,000ダルトンまたは約500,000ダルトン~約750,000ダルトンの分子量を有し得る。糖を有している高い分子量の分子は、約900,000ダルトン~約4,000,000ダルトン、約1,000,000ダルトン~約3,500,000ダルトン、約900,000ダルトン~約3,500,000ダルトン、約1,500,000ダルトン~約3,700,000ダルトンまたは約1,250,000ダルトン~約3,000,000ダルトンの分子量を有し得る。また、ここに示されている範囲を組み合わせた分子量を有している多糖を使用することが、意図されている。例えば、約25,000ダルトン~約750,000ダルトン、約50,000ダルトン~約900,000ダルトン、約100,000ダルトン~約750,000ダルトン、または約250,000ダルトン~約500,000ダルトンの分子量を有している多糖が使用され得る。また、他の範囲が選択され得る。
【0095】
一部の実施形態において、低い分子量から中程度の分子量の多糖を使用する能力は、見込まれる製造/処理に基づいてこれらの手法を容易にする。例えば、低い分子量のHAの使用は、HAが修飾され、沈殿され、洗浄されることを可能にし、HAは、架橋剤として容易に使用され得る適度に低い粘性の溶液に留まる。より高い分子量の多糖を用いることは、取扱いの付加的な問題(例えば、混合、曝気などにともなう問題、粘性溶液)をもたらし得るが、一部の実施形態において、広範囲の分子量が、所望される結果を実現するためにっ使用され得る。より高い分子量の多糖を取り扱う手法の1つは、より希釈した溶液を使用することによって、あり得る。例えば、(例えば、1,500,000ダルトンのHAを使用するが、粘度を下げた状態を保つために0.1%の溶液を使用する)。
【0096】
架橋タンパク質マトリクスは、糖を有している残基(例えば多糖残基)を、約0.1%~約15%の濃度において含み得る。一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスは、糖を有している残基を、約0.1%~約10%の濃度、約0.2%~約5%の濃度、約0.25%~約5%の濃度、約0.1%~約3.5%の濃度、約0.20%~約3%の濃度、約0.25%~約3%の濃度、約0.5%~約4%の濃度、約0.5%~約3%の間の濃度、約0.75%~約3.5%の濃度、約1%~約3%の濃度、約1.5%~約3.5%の濃度範囲または約0.2%~約4%の濃度において含み得る。
【0097】
糖を有している分子(例えば多糖)は、少なくともまたは約500ダルトン(例えば、少なくともまたは約5,000ダルトン、10,000ダルトン、25,000ダルトン、50,000ダルトン、100,000ダルトン、150,000ダルトン、200,000ダルトン、250,000ダルトン、300,000ダルトン、500,000ダルトン、750,000ダルトンまたは1,500,000ダルトン)の分子量を有し得る。
【0098】
一部の実施形態において、生体分子または生体高分子などの分子は、少なくとも1つの連結可能な部分(例えば、少なくとも1つの架橋可能な部分(例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミン、チオール、アルコール、アルケン、アルキン、シアノ基またはアジド、および/またはこれらの修飾体、誘導体もしくは組合せ)を含み得る。例えば、一部の実施形態において、生体分子または生体高分子(例えば、タンパク質または糖を有している分子(例えば、オリゴ糖または多糖))は、少なくとも1つの架橋可能な部分を含み得、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミン、チオール、アルコール、アルケン、アルキン、シアノ基またはアジド、および/またはこれらの修飾物、誘導体もしくは組合せなどを含み得る。
【0099】
一部の実施形態において、連結可能な部分(例えば架橋可能な部分)は、連結可能な部分の活性化は、同一および/または第2の分子にある補完的な反応性基との連結を形成するための反応を、可能にするか、および/または容易にするような、活性化可能な部分(例えば、カルボキシル基部分またはヒドロキシル基部分)であり得る。ここで、上記連結は、例えば、同一および/または第2の分子との共有結合であり、上記反応は、例えば、第2の分子(例えば、第2つの生体分子または生体高分子)に対する架橋を形成するための反応である。
【0100】
一部の実施形態において、生体分子または生体高分子などの分子(例えば、糖を有している分子またはタンパク質)は、スペーサ基を含み得、当該スペーサ基は、同一および/または第2の分子(例えば、第2の生体分子または生体高分子)と連結可能である。例えば、一部の実施形態において、スペーサ基は、少なくとも1つ以上の連結可能な部分を含み得、これによって、当該スペーサ基は同一および/または第2の分子と連結可能である。一部の実施形態において、例えば、糖を有している分子またはタンパク質などの分子は、少なくとも1つ以上の連結可能な部分を含んでいるスペーサ基を含み得、これによって、当該分子は、当該スペーサ基にある連結可能な部分によって形成される連結を介して、第2の分子(例えば、第2の生体分子または生体高分子(例えば、タンパク質または糖を有している分子))と連結(例えば架橋)を形成可能である。例えば、一部の実施形態において、糖を有している分子(例えば、オリゴ糖分子、多糖分子または修飾糖分子)は、少なくとも1つ以上の連結可能な部分(カルボキシル基、活性化カルボキシル基または修飾カルボキシル基)を含んでいる、スペーサ基を含み得、これによって、多糖は、オリゴ糖、多糖または修飾多糖にある連結可能な部分によって形成されるアミド結合を介して、第2の分子(例えばタンパク質(例えば、アミンを含んでいるタンパク質))と連結(例えば架橋)を形成可能である。
【0101】
一部の実施形態において、糖を有している分子(例えば、オリゴ糖または多糖)は、負電荷を有している官能基または正電荷を有している官能基(例えば、負電荷を有している官能基または正電荷を有している官能基を含んでいるオリゴ糖;または負電荷を有している官能基または正電荷を有している官能基を含んでいる多糖;および/またはこれらの誘導体もしくは組合せ)であり得る。例えば一部の実施形態において、糖を有している分子(例えば、オリゴ糖または多糖)は、イズロン酸、グルクロン酸またはN-アセチルグルコサミン残基を含み得る。一部の実施形態において、例えば、糖を有している上記分子は、カルボキシル基を含んでいるオリゴ糖またはカルボキシル基を含んでいる多糖(例えばポリカルボン酸含有多糖(例えば、ヒアルロン酸またはカルボキシメチルセルロース))、アミン基を有しているオリゴ糖またはアミン基を有している多糖、および/またはこれらの誘導体を含み得る。
【0102】
(構造特性-直鎖または分枝鎖)
一部の実施形態において、糖を有している分子は、直鎖オリゴ糖、分枝鎖オリゴ糖、直鎖多糖、および/または分枝鎖多糖を含み得る。糖を有している分子としては、ヒアルロン酸(HA)などのオリゴ糖類および/または多糖類、セルロース誘導体(例えば、カルボキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロースカルボキシメチルアミロース(CMA)、キサンタンガム、グアーガム、α-グルカン、β-グルカン、β-1,4-グルカン、β-1,3-グルカン、アルギン酸塩、カルボキシメチルデキストラン、グリコサミノグリカン誘導体、コンドロイチン-6-硫酸塩、デルマチン硫酸、ヘパリン、硫酸ヘパリン、ポリ乳酸(PLA)または生体適合材料(ポリグリコール酸(PGA))、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、リン酸三カルシウム(TCP)、1-ヒドロキシアパタイト(PAH)、および/またはこれらの薬学的に許容可能な塩、誘導体、もしくは組合せが挙げられ得るが、これらに限定されない。糖を有している分子は、直鎖および分枝鎖オリゴ糖および/または多糖を有しているペクチンおよび/またはその誘導体を含み得る。
【0103】
糖を有している分子は、天然に存在する過程、化学合成修飾および/またはこれらの組合せから調製されるか、および/またはから得られる糖を有している分子であり得る。
【0104】
例えば、糖を有している分子としては、真核細胞または原核細胞(例えば、真核細胞または原核細胞を介して生じる、天然に存在する過程またはこの組合せ)から調製されるか、および/または得られる糖を有している分子が挙げられ得る。
【0105】
例えば、糖を有している分子としては、化学合成修飾(固相合成)から調製されるか、および/または得られる糖を有している分子、および/または化学合成修飾(固相合成)に由来する糖を有している分子が挙げられ得る。糖を有している分子は、多糖の固相合成の間に連結剤を組み込む。
【0106】
糖を有している分子は、実質的に可溶性の糖を有している分子を含み得、例えば、完全または部分的に可溶性の糖を有している分子(水溶液および/または生理溶液に対して実質的に可溶性のオリゴ糖または多糖)を包含し得る。
【0107】
糖を有している分子は、例えば、ポリアニオン性の性糖、ポリカチオン性の糖、生体適合性の糖分子、生体利用性の糖、生分解性の糖、生体吸収性の糖、生体分解吸収性の糖またはこれらの組合せを包含し得る。
【0108】
(タンパク質および多糖)
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスは、例えば、上記架橋タンパク質マトリクスのタンパク質残基要素の電子電荷特性に対して補完的な電子電荷特性を有している糖を有している残基要素を含み得る。各要素の電荷補完特性は、当該要素の一体化を補助し得るか、または容易にし得る。各要素の電荷補完特性は、組成物の一般的な全体の特性に付加し得る。架橋タンパク質マトリクスは、電子電荷特性を有している糖を有している残基要素を補完し得る、薬学的および/または生理学的に許容可能な対イオン、タンパク質残基要素の電子電荷特性を補完し得る、薬学的および/または生理学的に許容可能な対イオン、または両方をさらに含み得る。例えば、架橋タンパク質マトリクスは、糖を有しているポリアニオン性の残基要素(正電荷を有しているタンパク質残基と架橋されたポリアニオン性の多糖残基)を含み得る。例えば、架橋タンパク質マトリクスは、糖を有しているポリカチオン性の残基要素(負電荷を有しているタンパク質残基と架橋されたポリカチオン性の多糖残基)を含み得る。
【0109】
(タンパク質および多糖の選択)
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスに含まれているタンパク質要素(トロポエラスチン)の選択は、生じた生体適合材料の製品の機能的な最終的な必要性に基づき得る。例えば、架橋タンパク質マトリクスに含まれているタンパク質残基要素は、タンパク質残基(例えば、アルブミン残基またはコラーゲン残基)を含み得る。一部の実施形態において、生じた生体適合材料の生成物の生理活性に対する終端要求に基づき得る。架橋タンパク質マトリクスに含まれているタンパク質残基要素の選択は、生じた生体適合性材料の製品の最終的な生理活性の要求に基づき得る。一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスに含まれているタンパク質残基要素の選択は、生じた生体適合材料の製品におけるタンパク質残基の組合せを含めるための要求に基づき得る。
【0110】
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクス調合物に含まれているタンパク質残基要素は、組成において異なり得る。例えば、一部の実施形態において、調合物は、25mg/ml~50mg/mlのタンパク質残基および1mg/ml~30mg/mlの多糖架橋剤残基を有し得る。一部の調合物において、架橋タンパク質マトリクス調合物に含まれているタンパク質残基要素は、1mg/ml~200mg/ml、5mg/ml~30mg/ml、20mg/ml~100mg/ml、50mg/ml~200mg/ml、20mg/ml~100mg/ml、25mg/ml~80mg/ml、30mg/ml~60mg/ml、40mg/ml~70mg/mlまたは25mg/ml~65mg/mlであり得る。一部の実施形態において、具体的な用途の条件に基づいて、架橋タンパク質マトリクス調合物に含まれている、タンパク質残基要素の量の好適な範囲、および多糖残基要素の量の好適な範囲は、特定の用途の要求に基づいて異なり得る。
【0111】
(カップリング/抱合/架橋)
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスは、糖を有している分子に対してタンパク質(アミン含有タンパク質)を連結(例えば、カップリングおよび/または架橋)して、アミド結合またはアミン結合を形成することによって調製され得、当該糖を有している分子は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、活性化カルボキシル基、活性化ヒドロキシル基、修飾カルボキシル基または修飾ヒドロキシル基を含んでいる分子(例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、活性化カルボキシル基、活性化ヒドロキシル基、修飾カルボキシル基または修飾ヒドロキシル基を含んでいるオリゴ糖、多糖、および/またはその誘導体)である。例えば、架橋タンパク質マトリクスは、オリゴ糖および/または修飾オリゴ糖に対してタンパク質(アミン残基担持タンパク質)をカップリングおよび/または架橋して、タンパク質およびオリゴ糖の間にアミド結合またはアミン結合を形成することによって調製され得、当該オリゴ糖および/または修飾オリゴ糖は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、活性化カルボキシル基、活性化ヒドロキシル基、修飾カルボキシル基または修飾ヒドロキシル基を含んでいる。例えば、架橋タンパク質マトリクスは、オリゴ糖および/または修飾オリゴ糖に対してタンパク質(アミン残基担持タンパク質)をカップリングおよび/または架橋して、タンパク質およびオリゴ糖の間にアミド結合またはアミン結合を形成することによって調製され得、当該多糖および/または修飾多糖は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、活性化カルボキシル基、活性化ヒドロキシル基、修飾カルボキシル基または修飾ヒドロキシル基を含んでいる。
【0112】
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスの形成は、(1)活性化剤および/またはカップリング剤、ならびに(2)活性化剤および/またはカップリング剤と修飾剤および/または補助カップリング剤との両方のいずれかを使用して、架橋タンパク質のタンパク質要素および架橋タンパク質の第2の分子(例えば、生体分子、生体高分子、スペーサ基またはこれらの誘導体もしくは組合せ)の間に、連結および/または架橋を形成することによって、容易にされ得る。架橋タンパク質マトリクスは、活性化剤および/またはカップリング剤を使用して、連結および/または架橋を形成することによって調製され得る。例えば、架橋タンパク質マトリクスは、カルボキシル基を有しているオリゴ糖または多糖(ヒアルロン酸)の1つ以上のカルボン酸基を活性化剤および/またはカップリング剤を用いて活性化させ、活性化オリゴ糖または活性化多糖を、タンパク質(アミン残基担持タンパク質)に対してカップリングおよび/または架橋させて、オリゴ糖もしくは多糖およびタンパク質の間にアミド結合を形成することによって、調製され得る。例えば、架橋タンパク質マトリクスは、ヒドロキシル基を有しているオリゴ糖または多糖(ヒアルロン酸)の1つ以上のヒドロキシル基を活性化剤および/または結合剤を用いて活性化させ、活性化オリゴ糖または活性化多糖を、タンパク質(アミン残基担持タンパク質)に対して連結および/または架橋させて、オリゴ糖もしくは多糖およびタンパク質の間にアミン結合を形成することによって、調製され得る。
【0113】
(活性化剤/カップリング剤/修飾剤)
一部の実施形態において、活性化剤(カップリング剤とも呼ばれる)としては、ジイミド(例えば、カルボジイミドまたは水溶性カルボジイミド(例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(“EDC”)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドメチオジド(“ETC”)、1-シクロヘキシル-3-(2-)モルホリノエチル)-カルボジイミド(“CMC”)、および/またはこれらの対応する塩もしくは混合物))が挙げられ得るが、これらに限定されない。また、上記活性化剤としては、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス-(ジメチルアミノ)-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェイト(“Bop-試薬”)、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N’,N’-テトラメチルイルウロニウムヘキサフルオロホスフェイト、ブロモ-トリス-(ジメチルアミノ)-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェイト、および/またはこれらの対応するハロゲン化塩もしくは混合物が挙げられ得るが、これらに限定されない。一部の実施形態において、活性化剤(カップリング剤とも呼ばれる)としては、エポキシド(例えばアリルグリシジルエーテル)またはハロアルケン(例えばアリルクロリド)、および/またはこれらの対応する塩または混合物が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0114】
架橋タンパク質マトリクスは、活性化剤および/または結合剤と修飾剤および/または補助結合剤との両方を用いて連結および/または架橋を形成することによって、調製され得る。例えば、架橋タンパク質マトリクスは、(1)カルボキシル基を含んでいるオリゴ糖または多糖(ヒアルロン酸)の1つ以上のカルボン酸基を活性化剤および/またはカップリング剤を用いて活性化させ、(2)活性化オリゴ糖または活性化多糖の1つ以上の活性化カルボン酸基を修飾剤および/または補助カップリング剤を用いて修飾し、(3)修飾オリゴ糖または修飾多糖をタンパク質(アミン残基担持タンパク質)に連結または架橋させて、オリゴ糖もしくは多糖およびタンパク質の間にアミド結合を形成することによって、調製され得る。
【0115】
一部の実施形態において、修飾剤(補助カップリング剤とも呼ばれる)としては、活性化カルボキシル部分および/または活性化ヒドロキシル部分(例えば、多糖にある活性化カルボキシル部分および/または活性化ヒドロキシル部分)の存在下において反応して、より安定であり得るか、および/または求核試薬とより反応可能である修飾された種を形成する試薬が挙げられ得るが、これらに限定されない。例えば、修飾剤または補助カップリング剤としては、N-ヒドロキシ-スクシンイミド(NHS)、N-ヒドロキシスルホスクシンイミド(“sulf-NHS”)、1-ヒドロキシ-ベンゾトリアゾールハイドレイト(“HOBt”)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールモノハイドレイト、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアゾール(HOOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HAT)、4-ニトロフェノール、2-ニトロフェノール、4-ニトロチオフェノール、2-ニトロチオフェノール、ペンタクロロフェノール、ペンタフルオロフェニル、イミダゾール、テトラゾール、4-ジメチルアミノピリジン、ハロゲン化合物、および/または関連する他の化合物が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0116】
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスは、1つ以上のカルボキシル基および/またはヒドロキシル基を有している糖を有している分子(例えば、オリゴ糖または多糖(例えばヒアルロン酸))を活性化剤および/または修飾剤を用いて活性化および/または修飾させ、かつタンパク質と組み合わせて、糖を有している上記分子と上記タンパク質との間に1つ以上の連結および/または架橋(1つ以上のアミド結合またはアミン結合)を形成することによって、調製され得る。
【0117】
架橋タンパク質マトリクスの調製方法は、1つ以上のカルボキシル基および/またはヒドロキシル基を含んでいる糖を有している分子(例えばヒアルロン酸)と活性化剤および/または修飾剤とを混合および/または組合せて糖を有している活性化分子および/または糖を有している修飾分子を形成すること、ならびに糖を有している上記活性化分子および/または糖を有している上記修飾分子をタンパク質と混合および/または組合せて、糖を有している分子およびタンパク質の間に1つ以上の連結および/または架橋(1つ以上のアミド結合またはアミン結合)を形成することを包含し得る。例えば、1つ以上のカルボキシル基および/またはヒドロキシル基を含んでいる、糖を有している上記分子(例えばヒアルロン酸)は、活性化剤(EDCまたはアリルグリシジルエーテル)および/または修飾剤(NHS、HOBtまたはブロミン)を用いて活性化および/または修飾され得る。例えば、糖を有している上記活性化分子および/または糖を有している上記修飾分子は、活性化および/または修飾エステル(例えば、活性化および/または修飾トリアゾールエステル、または活性化および/または修飾N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、活性化および/または修飾エポキシドまたは活性化および/または修飾ハロヒドリンとして、活性化および/または修飾された1つ以上のカルボキシル基および/またはヒドロキシル基を含み得る。1つ以上のカルボキシル基および/またはヒドロキシル基を有している糖を有している分子(例えば、ヒアルロン酸)は、活性化剤(EDCまたはアリルグリシジルエーテル)および/または修飾剤(NHS、HOBtまたはブロミン)を用いて活性化および/または修飾され得、1つ以上のアミン部分を担持する化合物(1つ以上のアミン担持側鎖を有しているタンパク質)と組み合わせるか、混合するか、および/または反応させて、糖を有している上記分子と、1つ以上のアミン部分を担持する上記化合物との間に、1つ以上の連結および/または架橋(アミド結合またはアミン結合)を形成し得る。
【0118】
一部の実施形態において、1つ以上のアミン部分を有している分子(例えば、1つ以上のアミン部分を有しているタンパク質、ペプチドまたはスペーサ基)は、糖を有している分子にある1つ以上のカルボキシル基および/またはヒドロキシル基とカップリングされ得る。例えば、水性環境において、1つ以上のアミン部分を含んでいる上記分子は、1つ以上のカルボキシル基および/またはヒドロキシル基を含んでいるオリゴ糖または多糖(例えば、活性化剤および/または修飾剤を用いて活性化および/または修飾された1つ以上のカルボキシル基および/またはヒドロキシル基を有しているオリゴ糖または多糖)とカップリングされ得る。
【0119】
一部の実施形態において、多糖を修飾するために使用される方法は、架橋されるタンパク質および/または架橋剤として使用される多糖に依存して決定され得る。
例えば、多糖を修飾するために使用される方法は、過ヨウ素酸塩の酸化の使用を包含し得る。多糖を修飾するために使用される方法は、活性化剤(例えばカルボジイミド(例えばEDC))の使用を包含し得る。上記多糖を修飾するために使用される方法は、活性化剤(例えばエポキシド(例えばアリルグリシジルエーテル))の使用を含包含し得る。上記多糖を修飾するために使用される方法は、修飾剤(例えばハロゲン化合物(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)または臭素))の使用をさらに包含し得る。例えば、ヒアルロン酸および/またはカルボキシメチルセルロースは、活化剤(例えばカルボジイミド)を用いて活性化させ得、修飾剤(例えばN-ヒドロキシスクシンイミド)を用いてさらに修飾され得る。例えば、ヒアルロン酸および/またはカルボキシメチルセルロースは、活性化剤(例えばエポキシド)を用いて活性化させ得、修飾剤(例えば臭素)を用いてさらに修飾され得る。
【0120】
(二官能性分子試薬)
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスは、タンパク質を、多官能性試薬(2つ以上の反応部分を含んでいる、糖を有している分子または2つ以上の反応部分を含んでいるスペーサ基)と反応させて、2つ以上の連結または架橋を形成することによって、調製され得る。例えば、多官能性試薬は、同じか、または異なる2つ以上の反応部分(例えば、カルボキシル基および/またはヒドロキシル基の混合物、活性化カルボキシル基および/または活性化ヒドロキシル基の混合物、修飾カルボキシル基および/または修飾ヒドロキシル基の混合物、および/またはこれらの組合せもしくは誘導体)を含み得る。例えば、多官能性試薬上の反応部分のそれぞれは、同じか、または異なる分子の補完的な反応性基に反応性を示し得る。例えば、多官能性試薬の1つ以上の反応部分は、同じか、または異なる分子の補完的な反応性基と反応可能であるために、脱保護(例えば保護基の除去)を必要とし得る。
【0121】
(スペーサ基)
スペーサ基は、1つ以上の個々の要素をつなぐ部分を含み得る。スペーサ基は、1つ以上の分子に連結され得る(例えば、共有結合によってタンパク質に連結され、共有結合によって多糖に連結され、共有結合によってタンパク質と多糖との両方に連結され、および/またはこれらの組合せ)。スペーサ基としては、例えば、グリコール部分、エチレンオキシド部分、-(-CH2-CH2-O-)-の繰返し部分から形成される重合体(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチレンオキシド(PEO))、ポリアミンまたはポリオールが挙げられ得るが、これらに限定されない。スペーサは、熱分解、加水分解または両方に対して安定であり得る。スペーサは、生体適合性、生体利用性、水性媒体および/生理的媒体に対する可溶性および/または実質的な可溶性またはこれらの組合せであり得る。生体分子または生体高分子は、1つ以上のスペーサ基残基(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチレンオキシド(PEO)基)を含み得る。架橋タンパク質マトリクスは、1つ以上のスペーサ基残基(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチレンオキシド(PEO)基)を含み得る。糖を有している分子は、1つ以上のスペーサ基残基(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチレンオキシド(PEO)基)を含み得る。糖を有している上記分子は、反応性基(例えば、タンパク質または修飾タンパク質の一部であり得る補完的な反応性基と反応させられると、共有結合を形成し得る反応性基)を含んでいる1つ以上の部分を含み得る。タンパク質または修飾タンパク質は、反応性基を含んでいる1つ以上の部分(例えば、糖を有している分子の一部であり得る補完的な反応性基と反応させられると、共有結合を形成し得る反応性基)を含み得る。
【0122】
(多糖の修飾度)
一部の実施形態において、1つ以上のカルボキシル基および/またはヒドロキシル基を含んでいる、糖を有している架橋剤(例えば、ヒアルロン酸)は、種々の活性化および/または修飾カルボキシル基および/またはヒドロキシル基と、非活性化および/または非修飾の種々のカルボキシル基および/またはヒドロキシル基とを含めるために、活性化および/または修飾され得る。例えば、糖を有している活性化および/または修飾架橋剤は、少なくともまたは約2%(例えば、少なくともまたは約0.5%、1%、3%、5%、10%、20%、25%、30%または35%)の活性化および/または修飾カルボキシル基および/またはヒドロキシル基を含めるために、活性化および/または修飾され得る。特定の用途において、糖を有している架橋剤は、実質的または完全に活性化および/または修飾させたカルボキシル基および/またはヒドロキシル基を含み得る。一部の実施形態において、糖を有している活性化および/または修飾架橋剤は、約0.5%~約40%、約1%~約30%、約1%~約25%、約3%~約30%または約5%~約25%の活性化および/または修飾カルボキシル基および/または活性化および/または修飾ヒドロキシル基を含めるために、活性化および/または修飾され得る。
【0123】
一部の実施形態において、糖を有している架橋剤の活性化および/または修飾官能基のレベルにおける変化は、糖を有している架橋剤の、生体分子と架橋する能力を上昇させ得るか、および/または低下させ得る。例えば、糖を有している架橋剤の活性化および/または修飾官能基のレベルは、糖を有している架橋剤と生体分子または生体高分子との間に形成される1つ以上の接続の形成を生じさせ得る。活性化および/または修飾官能基を含んでいる、架橋タンパク質の調製に使用される糖を有している架橋剤のレベルの変化は、生体分子または生体高分子と反応可能(タンパク質と連結可能および/または架橋可能)な活性化および/または修飾官能基の数を制御し得るか、または実質的に制御し得、タンパク質を安定化させ得るか、または実質的に安定化させ得る。
【0124】
(押出し)
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスは、針を通して押し出され得る。例えば、架橋タンパク質マトリクスは、微細なゲージの針を通して押し出され得る。架橋タンパク質マトリクスは、十分な密着性を維持し得る(例えば、長いひも状物の材料が切断されずに針から押し出され得る程度に、針を通した押出し後にさえ十分な密着性を維持し得る)。例えば、少なくとも約15cmの長さの材料のひも状物は、切断されずに針から押出され得る。上記架橋タンパク質マトリクスは、柔軟性を有しているマトリクス構造を含み得る。例えば、上記架橋タンパク質マトリクスの柔軟性を有しているマトリクス構造は、細い針から排出されるために十分な柔軟性を維持する安定した生体適合材料の製造を容易にし得る。一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスを含んでいる調合物は、針を通して押し出され得る(例えば、さらなる処理なしに微細なゲージの針を通して押し出され得る)。一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスを含んでいる調合物は、長い材料のひも状物(少なくとも約15cmの長さを有している材料のひも状物)が、切断されずに針から押し出される程度に、針からの押出し後にさえ十分な密着性を維持し得る。一部の実施形態において、調合物は、柔軟なマトリクス構造を有している架橋タンパク質マトリクスを含み得る。例えば、一部の実施形態において、調合物に含まれている架橋タンパク質マトリクスの柔軟なマトリクス構造は、安定な生体適合材料(例えば、柔軟性(例えば、実質的および/または十分な柔軟性)を保持している安定した生体適合材料)の製造を容易にし得、調合物および/または生体適合材料の、針(例えば、微細なゲージの針)を介した排出を可能にし得る。
【0125】
(調製方法)
一部の実施形態において、反応中の多糖の濃度は、約0.1%~約5%(例えば例えば、約0.25%~約3%、約0.5%~約3%または約0.25%~3.5%)であり得る。
【0126】
一部の実施形態において、試薬化学量論は、選択される化学特性および多糖に依存して変化し得る。例えば、HA:EDC:NHSの比率は、1:1:1、1:1:2、1:1:3、1:0.5:2、1:0.5:3であり得る。1:1:1の比率は、可溶性の多糖架橋剤へのNHSの組込みに関して良好な結果を示すと分かっている。
【0127】
一部の実施形態において、多糖および活性化剤のモル比は、少なくとも1:1から少なくとも1:4であり得る。一部の実施形態において、多糖のカルボン酸単位に対する活性化剤のモル比は、約2%~約200%(例えば約5%~約100%)であり得る。一部の実施形態において、修飾剤と活性化剤とのモル比は、約1:1から約3:1(例えば、約1.5:1から約2.5:1(例えば約2:1))であり得る。
【0128】
一部の実施形態において、多糖架橋剤反応物の調製を実施するpHは、少なくとも4、5、6、7、8.0または8.5であり得る。一部の実施形態において、多糖架橋剤の反応物の調製を実施するpHは、約5~約15、約6.5~約9、約7~約8.6であり得る。また、他のpHが採用され得る。
【0129】
一部の実施形態において、活性化、カップリング、および/または架橋の温度範囲は、約15℃~約30℃、20℃~約25℃または室温に管理されている。
【0130】
一部の実施形態において、誘導体化多糖の精製方法および/または単離方法は、ロバストな方法、単純な方法、収率の高い方法またはこれらの組合せであり得る。例えば、当該方法は、開始の多糖に関して、少なくとも40%の単離された誘導体化多糖を生じ得る。他の方法において、収率は、開始の多糖または修飾多糖に関して、少なくとも40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の単離された誘導体多糖である。
【0131】
(治療上の使用)
本明細書に開示されている架橋タンパク質マトリクス組成物、材料、調合物、使用の方法、システム、および/またはキットは、を種々の治療上の背景(ヒトの医学または獣医学(例えば外科処置)が挙げられるが、これらに限定されない)において使用され得る。例えば、本明細書に開示されている架橋タンパク質マトリクス組成物、材料、調合物、使用方法、システム、および/またはキットは、修復手術、美容手術、エステティクス、組織の増大(例えば、失禁または皮膚代替製品)、皮膚科(皮膚科手術)、眼の手術、リウマチ病学、薬理学または美容分野において治療的に使用され得る。他の治療用途は、一般的な手術における止血、神経外科および美容外科の再建手術における神経および血管の再建、整形外科における皮膚、脈管または軟骨移植または移植片の固定(変形性膝関節症(膝の炎症)の治療)、脈管、および美容外科処置を含み得る。
一部の実施形態は、生理活性分子(例えば、細胞または局所的な修復を刺激する成長因子)の送達のためのビヒクルとして有用である。
成長因子を架橋タンパク質マトリクス組成物、材料および/または調合物と組み合わせて局所的に送達することによって、多くの状況(骨形成の促進、整形処置における軟骨修復の促進、病理的創傷状態(慢性潰瘍)の治療)において創傷の治癒および組織の再生を促進させ得、および/または培養下での自己細胞の増殖を介した人工組織の形成の足場として機能させ得る。架橋タンパク質マトリクス組成物、材料、および/または調合物は注入可能であり、一部の実施形態において、こうした特性によって、例えば、不活性生体適合性充填剤(皮膚のしわの充填または口唇復元用の充填剤)として、組織の拡大を引き起こすのに好適である。一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクス組成物、材料、および/または調合物は、体腔または体内の欠損を埋める補完材として有用である。一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクス組成物、材料、および/または調合物は、美容薬剤、形成手術、手術中(眼科手術)に放出された体積の回復、および/または健康または傷害組織(皮膚)への局所適用(例えば、美容科および/または皮膚科における局所適用)にとって有用である。一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクス組成物、材料、および/または調合物は、顔のしわや細かい線の充填、年齢を重ねた肌、瘢痕組織、および/またはリポジストロフィなどの皮膚上のくぼみの治療に有用である。
【0132】
一部の実施形態は、タンパク質(例えば、1つ以上の安定化されたタンパク質(例えば生理活性タンパク質)を送達するために利用される生理活性タンパク質)を安定化させるために使用され得る。
【0133】
一部の実施形態は、全体に分散させた薬剤活性物質を含み得、薬剤送達システムとして有用であり得る。一部の実施形態は、例えば、タンパク質、成長因子、酵素、薬剤、生体高分子、生体適合性合成重合体、および/またはこれらの組合せ、誘導体もしくは変形物を含み得る。
【0134】
(特性;安定性)
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスは次に挙げる特性の少なくとも1つ以上を含み得るが、これらに限定されない:注入可能性、生体適合性、実質的な生体適合性、安定性、実質的な安定性、生理活性の維持、生理活性の実質的な維持、生理活性立体構造の維持、弾性または実質的な弾性の提供、弾性率係数、粘性係数、構造の剛性または実質的な剛性の提供、耐熱性または実質的な耐熱性、熱分解に対する耐性または実質的な耐性、生分解に対する耐性または実質的な耐性、生分解性を有してよいこと、異物反応または顕著な異物反応(すなわち自己認識)を引き起こさないこと、少なくとも約25%の純度レベルを有していること、押出し可能性、針を通した押出し可能性、微細なゲージの針を通した押出し可能性。
【0135】
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクス、組成物、材料、および/または調合物は、糖を有している分子を含み得、糖を有している上記分子は、次に挙げる特性の少なくとも1つを備えるが、これに限定されない:実質的な可溶性、水溶解性、水溶液および/または緩衝水溶液に対する実質的な溶解性、生理可溶性、実質的な生理可溶性、注入可能性、生体適合性、実質的な生体適合性、安定性、実質的な安定性、生理活性の維持、生理活性の実質的な維持、生理活性立体配座の維持、生分解に対する耐性または実質的な耐性、生分解性を有してよいこと、異物反応または顕著な異物反応(すなわち、自己認識)を引き起こさないことまたは少なくとも約25%の純度レベルを有していること。
【0136】
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクス組成物、材料、および/または調合物は、次に挙げる特性の少なくとも1つを備えるかまたは含んでよいが、これに限定されない:注入可能性、生体適合性、実質的な生体適合性、安定性、実質的な安定性、生理活性の維持、生理活性の実質的な維持、生理活性立体配座の維持、弾性または実質的な弾性の提供、弾性係数、粘性係数、構造の剛性または実質的剛性の提供、耐熱性または実質的な耐熱性、熱分解に対する耐性または実質的な耐性、生分解に対する耐性または実質的な耐性、生分解性を有してよいこと、異物反応または顕著な異物反応(すなわち、自己認識)を引き起こさないこと、少なくとも約25%の純度レベルを有していること、押出し可能性、針を通して押出し可能であること、または微細なゲージの針を通して押出し可能であること。
【0137】
一部の実施形態は、約500Pa~約50Pa、約450Pa~約100Pa、約400Pa~約125Pa、約400Pa~約150Paまたは約385Pa~約150Paの弾性係数を有し得る。上記弾性係数は、使用される濃度および要素に応じて変化する。例えば、1%HAを用いて架橋されている4%トロポエラスチンマトリクス生成物に関しては、弾性係数/貯蔵弾性係数は、種々の周波数範囲にわたって約80Pa~100Paにおいて安定であり、約5Pa~10Paから始まって増大する角周波数において徐々に増大する損失弾性係数に支配される。
【0138】
一部の実施形態において、25Gの針を通して押出しを行った場合に得られる、支持物の無い状態で実質的に密着してまとまりを維持する押出し可能な長さは、少なくとも約5cm、少なくとも約10cm、少なくとも約12cm、少なくとも約15cm、少なくとも約18cm、少なくとも約20cmまたは少なくとも約25cmであり得る。一部の実施形態において、25Gの針を通して押出しを行った場合に得られる、支持物の無い状態で密着してまとまりを維持する押出し可能な長さは、少なくとも約5cm、少なくとも約10cm、少なくとも約12cm、少なくとも約15cm、少なくとも約18cm、少なくとも約20cmまたは少なくとも約25cmであり得る。
【0139】
一部の実施形態において、27Gの針を通して押出しを行った場合に得られる、支持物の無い状態で実質的に密着してまとまりを維持する押出し可能な長さは、少なくとも約5cm、少なくとも約10cm、少なくとも約12cm、少なくとも約15cm、少なくとも約18cm、少なくとも約20cmまたは少なくとも約25cmであり得る。一部の実施形態において、27Gの針を通して押出しを行った場合に得られる、支持物の無い状態で密着してまとまりを維持する押出し可能な長さは、少なくとも約5cm、少なくとも約10cm、少なくとも約12cm、少なくとも約15cm、少なくとも約18cm、少なくとも約20cmまたは少なくとも約25cmであり得る。
【0140】
一部の実施形態において、30Gの針を通して押出しを行った場合に得られる、支持物の無い状態で実質的に密着してまとまりを維持する押出し可能な長さは、少なくとも約5cm、少なくとも約10cm、少なくとも約12cm、少なくとも約15cm、少なくとも約18cm、少なくとも約20cmまたは少なくとも約25cmであり得る。一部の実施形態において、30Gの針を通して押出しを行った場合に得られる、支持物の無い状態で密着してまとまりを維持する押出し可能な長さは、少なくとも約5cm、少なくとも約10cm、少なくとも約12cm、少なくとも約15cm、少なくとも約18cm、少なくとも約20cmまたは少なくとも約25cmであり得る。
【0141】
一部の実施形態において、31Gの針を通して押出しを行った場合に得られる、支持物の無い状態で実質的に密着してまとまりを維持する押出し可能な長さは、少なくとも約5cm、少なくとも約10cm、少なくとも約12cm、少なくとも約15cm、少なくとも約18cm、少なくとも約20cmまたは少なくとも約25cmであり得る。一部の実施形態において、31Gの針を通して押出しを行った場合に得られる、支持物の無い状態で密着してまとまりを維持する押出し可能な長さは、少なくとも約5cm、少なくとも約10cm、少なくとも約12cm、少なくとも約15cm、少なくとも約18cm、少なくとも約20cmまたは少なくとも約25cmであり得る。
【0142】
一部の実施形態において、微細なゲージの針を通して押出しを行った場合に得られる押出し可能な長さは、少なくとも約5cm、少なくとも約10cm、少なくとも約12cm、少なくとも約15cm、少なくとも約18cm、少なくとも約20cmまたは少なくとも約25cmであり得る。一部の実施形態において、押出し可能な長さは、約5cm~約30cm、約10cm~約20cm、約10cm~約15cmまたは約15cm~約30cmの範囲であり得る。一部の実施形態において、微細なゲージの針を通して押出しを行った場合に得られる、支持物の無い状態で実質的に密着してまとまりを維持する押出し可能な長さは、少なくとも約5cm、少なくとも約10cm、少なくとも約12cm、少なくとも約15cm、少なくとも約18cm、少なくとも約20cmまたは少なくとも約25cmであり得る。一部の実施形態において、微細なゲージの針を通して押出しを行った場合に得られる、支持物の無い状態で密着してまとまりを維持する押出し可能な長さは、少なくとも約5cm、少なくとも約10cm、少なくとも約12cm、少なくとも約15cm、少なくとも約18cm、少なくとも約20cmまたは少なくとも約25cmであり得る。一部の実施形態において、支持物の無い状態で実質的に密着してまとまりを維持する押出し可能な長さは、約5cm~約30cm、約10cm~約20cm、約10cm~約15cmまたは約15cm~約30cmの範囲であり得る。
【0143】
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスの組成物、材料、および/または調合物は、生成物のタンパク質要素で安定させたものであり得る。上記架橋タンパク質マトリクスの組成物、材料、および/または調合物の安定性は、全長のタンパク質残基要素と架橋残基要素(多糖残基要素)とを組み合わせた結果得たものであり得る。一部の実施形態において、最終材料の特性は、多糖残基要素(開始多糖分子要素)の粘度と関係無く決定したものであり得る。上記架橋タンパク質マトリクスの組成物、材料、および/または調合物は、生成物の架橋残基要素(糖含有架橋残基など;例えば、多糖架橋残基)で安定させたものであり得る。
【0144】
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスの組成物、材料、および/または調合物は、生体適合性の架橋タンパク質残基を含み得る。
【0145】
一部の実施形態において、架橋タンパク質マトリクスの組成物、材料、および/または調合物は、シリンジ内への組込みに好適なものであり得る。
【0146】
一部の実施形態において、微細なゲージの針を使用し得る。例えば、25G、27G、29G、30Gまたは31Gの針を使用し得る。しかし、一部の実施形態をより太いゲージの針と一緒に使用し得、例えば、20G~25G、15G~25G、10G~20Gまたは10G~15Gなどの針と一緒に使用し得る。一部の実施形態において、特定の体積量の材料および/またはその混合物または変更材料を送達するという要望に従い、注入する材料に応じて針のサイズを決定し得、例えば、注入する材料の種類および/または濃度に応じて針のサイズを決定しよい。一部の実施形態において、開示の製材に針を通した押出し後に十分な密着性を保持させるような微細なゲージの針の使用が可能になり、これによって、15cmを超える長さの材料のひも状物を途切れさせることなく針から押出すことが可能になる。例えば、一部の実施形態において、15cmを超える長さの材料のひも状物を途切れさせることなく25G、27G、29Gまたは30Gの針から押出すことが可能である。
【0147】
特定の用途(例えば、膀胱頸部などの膨張効果を狙った用途)では、18G,19G、20G、21G、22Gまたは23Gの針を使用し得る。特定の用途では、針の長さがより長い(通常の場合では数インチ)ため上記針の内部を流動する材料がより大きな抵抗を受けることから、より太い針を使用し得る。特定の用途では、注入量を数ミリリットル増やし得、例えば、少なくとも1.5ml、少なくとも2ml、少なくとも2.5ml、少なくとも3mlまたは少なくとも4ml増やし得る。注入量のより少ない特定の用途(例えば、“スレッド”術、小しわのしわ埋め術または薄く皮膚を増大させる増大術)では、使用する注入量をより少量にし得、例えば、2ml未満、1.5ml未満、1.0ml未満、0.75ml未満、0.5ml未満または0.1ml未満の量であり得る。一般的には、これらの用途では、より短くて細いゲージの針を使用し、例えば、1/2インチの長さの29G、30Gまたは31Gの針を使用する。
【0148】
具体的な用途および/または調合物に応じて、使用する針のゲージおよび長さを変更し得る。例えば、より構造的持続性の高い組織支持物を提供するために使用する高誘導体化レベルの調合物(例えば、可能な部位の20%~30%を修飾し、多糖およびタンパク質の含有量がそれぞれ1.5%および5%の調合物)の場合では、一般的には、短くてより太い針を(1/2または1インチの長さの27Gまたは25Gの針)使用して注入する。他の例は、低誘導体化レベル(約5%)で低HA(1%未満)および/または低タンパク質(3%未満)の調合物であり、一般的には、31Gなどの微細なゲージの針を通して上記調合物を送達する。
【0149】
一部の実施形態において、支持物を設置せずに押出し材料を押出し得、通常は、初期平面から垂直方向に押出すかまたは上記垂直方向に対して45°の角度で押出し得る。押出し材料の密着したスレッドを形成可能な特徴は、皮中に移植片をマトリクスまたは格子状に通して構造支持物を提供する用途にとって特に魅力的になる。
【0150】
他の送達方法を使用し得、例えば、カニューレ、カテーテル、可塑性の重合体カテーテル、および/または無針シリンジを使用し得る。
【0151】
一部の実施形態において、本明細書に開示されている方法および/または架橋タンパク質マトリクスの組成物、材料、および/または調合物の利点の少なくとも1つは、得られる材料の調合物に含まれているタンパク質の量が制限要因にならないことである。例えば、架橋タンパク質マトリクスに含まれているタンパク質残基の含有量は、本願に開示した以外のタンパク質の架橋方法(グルタルアルデヒドなどの架橋剤)を使用した場合では架橋材料の濃度が高くなり過ぎることによって針からの押出し時の抵抗を高めてしまうようなタンパク質残基の含有量と比較して、約35mg/mlまたは約40mg/ml多い量を含み得る。タンパク質残基に分子内架橋、分子間架橋、および/またはこれらの組合せを実施され得る。タンパク質残基に実質的な分子間架橋を行ってよい。またはタンパク質残基に分子間架橋のみを実施され得る。架橋タンパク質マトリクスの調合物は、より高い弾力性を有している調合物および/または高タンパク質濃度の注入に適した調合物であり得る。
【0152】
本明細書に開示されている架橋タンパク質マトリクスの組成物、材料、および/または調合物をキットまたはパッケージに使用し得る。一部の実施形態において、キットまたはパッケージは、架橋タンパク質マトリクスの組成物を予め充填しておいたシリンジと、適切なサイズの針または針送達システムの一式(針ローラーボール型システム、自動注入ペン型システムまたはメソセラピー注入銃型システム)とを備えている。また、上記パッケージまたはキットは、付属組成物の注入用の取扱説明書を備えていてもよい。
他の実施形態において、キットまたはパッケージは、少なくとも1つのシリンジと、少なくとも1つの独立した容器(使用する組成物を入れた水薬瓶またはアンプル)と、多針と、上記キットの使用説明書とを備えていてもよい。
【実施例】
【0153】
以下の実例およびプロトコルは、本開示の一部の実施形態として、これらの利点を証明するために与えられている。上記実例およびプロトコルは、例証を目的として与えられており、明細書または続く特許請求の範囲を限定することを意図されていない。
【0154】
(EDCおよびNHSを用いたヒアルロン酸(HA)の誘導体のための手順)
1.1%(おそらく2%以下)の終濃度までHAを水に溶解させる。
2.誘導体化されるHAのgにつき1gのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を加える。
3.HAのgつき1gの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)を加える。
4.十分な撹拌(約10~20分間)によって反応物を完全に溶解させる。
5.20~25℃において60分にたって反応させる。
6.1%の終濃度までNaClを加える。
7.2倍体積のイソプロパノール(IPA)の添加によって、誘導体化HAを沈殿させる。
8.ろ過、穏やかな遠心または適切な他の方法によって、沈殿させた誘導体化HAを回収し、上清を捨てる。
9.回収した誘導体化HAに対して穏やかに圧力を加えて、過剰な液体を除去する。
10.沈殿させた誘導体化HAを60%のIPAにおいて洗浄する。
11.洗浄液を除去し、捨てる。
12.回収した誘導体化HAに対して穏やかに圧力を加えて、過剰な液体を除去する。
13.回収した誘導体化HAの重量を計る。
14.ステップ1において溶解させたHAの初期の量に基づいて2.5%の終濃度まで、回収した誘導体化HAを滅菌水に溶解させる。
15.NHS誘導体化の量を分析する(化学修飾およびUV分析に基づいて)。
16.溶解させた誘導体HAの濃度を分析する(化学修飾およびUV分析または乾燥重量に基づいて)。
17.誘導体化HAの濃度を2%(20mg/ml)に調整する。
18.誘導体化HAを無菌ろ過する。
【0155】
注:ステップ7~14は、可能な限り素早く実施されるべきであり、これらのステップに合計して30分未満が許容される(が、沈殿させたHAの実際の溶解はより長くかかり得る)。
【0156】
(架橋タンパク質マトリクスの調製のための手順)
1.タンパク質を、100mg/mlの終濃度まで滅菌PBSに溶解させ、ろ過滅菌する。
2.タンパク質濃度を分析する(例えばUV分析に基づいて)。
3.少しも気泡を導入することなく十分な混合/撹拌のもとに、等体積の20mg/mlの誘導体化HAを、100mg/mlのタンパク質と混合する。
4.30~60分にわたって放置してゲル化させる(20~25℃)。
5.シリンジに充填する。
【0157】
以下は、続く複数の実施例に使用された共通の手順である。
【0158】
〔実施例1〕
(カルボジイミドおよびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いた可溶性のヒアルロン酸架橋剤の生成のための概略図)
ヒアルロン酸(HA)は、β-D-グルクロン酸-[1 3]-β-D-N-アセチル-グルコサミンの二糖単位からなる多糖である。HAの理想的な構造は
図1に示されている。
【0159】
図に示すように、HAは、二糖単位ごとに1つのカルボキシル基を含んでおり、本明細書に開示されている架橋手法の少なくとも1つに利用され得るのは、この官能基である。この架橋手法において、HAの上記カルボキシル基およびタンパク質の遊離アミノ基の間における化学共有結合が形成される。これは、HAを、カルボジイミド(例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC))と反応させ、活性なo-アシルイソウレアエステルを形成することによってなされる。この化合物は、求核試薬(例えば1級アミノ基)と反応性であり、また、不安定であり、好適な任意の反応性基の非存在下の水において素早く加水分解する。このため、活性なo-アシルイソウレアエステルから、より安定な中間体の活性エステルを形成することが、多くの場合に好ましく、化合物(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)またはスルホ-N-ヒドロキシスクシンイミド(スルホ-NHS))を用いた縮合反応によってもたらされ得る。これは、タンパク質由来の1級アミン基とそれから反応させて、非常に安定なアミド結合を形成し得るNHS活性化HAの形成をもたらす。これらの反応の概略は、
図2に示されている。
【0160】
この手法の主な利点の1つは、タンパク質と混合される前にHAが誘導体化され、最終的な調合物における残余の誘導体化試薬の存在を制限し得るまたは回避し得ることである。過剰試薬の除去のための主な手法は、水混和性の有機溶媒(例えば、イソプロピルアルコール(IPA)またはエタノール)を用いた沈殿、その後の水/溶媒の混合物を用いた洗浄または適切な分子量カットオフを有している半透膜を用いたダイアフィルトレーションのいずれかである。誘導体化HAは、いったん精製されると、適切な緩衝液(例えば、水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS))に溶解され、それから、タンパク質と混合されて、HAのNHS活性化カルボン酸および当該タンパク質のアミノ基の間における反応を介して、架橋された調合物を形成し得る。この手法において、HAは、実質的にタンパク質にとっての架橋剤になる。生じた調合物の特性は、上記タンパク質が短い架橋剤を用いて架橋されている場合またはHAがタンパク質の非存在下において短い架橋剤によって架橋されている場合の調合物と異なると予想される。
【0161】
〔実施例2〕
(異種二機能性の試薬アリルグリシジルエーテル(AGE)を用いた可溶性のヒアルロン酸架橋剤の生成のための概略図)
この手法は、HAを用いてタンパク質を架橋するための2段階手法を可能にする異種二機能性の試薬を用いて、ヒアルロン酸の誘導体化することに基づいている。本実施例において選択された方法は、アリルグリシジルエーテル(AGE)の利用であり、強アルカリ条件においてオキシシラン基がHAのヒドロキシル基と反応すると安定なエーテル結合を形成するAGEの初期の組込みが生じる。このように組み込まれたアリル基は、それからハロゲン化合物(例えば臭素)との反応によってハロヒドリンに変換され得る。これらのハロヒドリンは、それから、安定な2級アミン結合を形成することによって、1級アミン基を介してタンパク質と反応し得る。ハロヒドリンおよび1級アミン基の間における反応は、高いpH値において効率的に生じるが、一部の反応は、pH8.5~9を超えると生じ始める。
【0162】
【0163】
HAを用いたタンパク質の架橋のための反応スキームは、以上に示されている。HA=ヒアルロン酸、R=O-CH2-CH(OH)-CH2-O-CH2、AGE=アリルグリシジルエーテル、Pr=タンパク質。
【0164】
〔実施例3〕
(多糖架橋剤Aの調製)
本実施例において、5mlの1%の低分子量ヒアルロン酸溶液、1mlのH2O、100mgのNHS(Sigma)、および100mgのEDC(Sigma)を混合し、1時間にわたって室温において反応させた。それから、誘導体化ヒアルロン酸を、2倍体積のIPAを用いて沈殿させ、短く圧力を加えて水および溶媒を減らし、66%のエタノールを用いて洗浄し、室温において4mlのリン酸緩衝生理食塩水(Sigma)に再び溶解させた。誘導体化HAは1時間以内に完全に溶解した。水分分析器を用いて誘導体化HAの濃度を測定し、それから、誘導体化HAを、タンパク質架橋における使用前に2%の溶液まで希釈した。すべての調製物は無菌であり、可能な場合に実験を層流フードにおいて実施した。
【0165】
〔実施例4〕
(多糖架橋剤Bの調製)
本実施例において、5mlの1%のカルボキシメチルセルロース溶液、1mlのH2O、100mgのNHS(Sigma)、100mgのEDC(Sigma)を混合し、1時間にわたって室温において反応させた。それから、誘導体化カルボキシメチルセルロースを、2倍体積のIPAを用いて沈殿させ、短く圧力を加えて水および溶媒を減らし、66%のエタノールを用いて洗浄し、室温において4mlのリン酸緩衝生理食塩水(Sigma)に再び溶解させた。すべての調製物は無菌であり、可能な場合に実験を層流フードにおいて実施した。
【0166】
〔実施例5〕
(多糖架橋剤Cの調製)
本実施例において、4mlの2%のHAを、0.5mlの10MのNaOHおよび0.5mlのAGEと混合し、1時間にわたって室温において反応させた。それから、溶液を1mlの9Mの酢酸を用いて中和し、40mgのNaClを加え、2倍体積のIPAを用いて沈殿させた。沈殿物を、60%のIPAを用いて洗浄し、ろ紙においてパッドドライし、それから3mlの水に再び溶解させた。それから、臭素水を用いて(250μLを加えたが、完全な変換に必要な量は200μL~250μLである)、組み込まれたアリル基を変換させた。余分の臭素を除去するために、溶液を、30mgのNaClに続いて2倍体積のIPAの添加によって、再び沈殿させた。沈殿物を、60%のIPAを用いて洗浄し、ろ紙においてパッドドライし、それから2mlの水に再び溶解させた。0.5mlの溶液を使用して、水分分析器において誘導体化HAの終濃度を調べた。乾物の含量は2.59%とわかった。誘導体化HAを、タンパク質架橋における使用前に2%の溶液まで希釈した。
【0167】
〔実施例6〕
(rhトロポエラスチン1を用いたタンパク質系調合物の調製)
本実施例において、リン酸緩衝生理食塩水における200mg/mlのrhトロポエラスチン(Elastgen)溶液の250μLを、250μLのリン酸緩衝生理食塩水と混合し、それから実施例3の500μLのヒアルロン酸架橋剤を加えた。混合物を十分に混合し、気泡を除去するために短時間の遠心分離を行った。材料を室温において30分にわたって放置して、調剤した。それから、調合物を、層流フードにおいて無菌の1mlシリンジに充填した。このように作製された調合物のすべては、10~20cmの長さの緊密な繊維として、微細なゲージの31Gの針を通して押出し可能な安定した材料の性質を示した。
【0168】
〔実施例7〕
(ウシ血清アルブミン(BSA)を用いたタンパク質に基づく調合物の調製)
本実施例において、リン酸緩衝生理食塩水(Sigma)における200mg/mlのBSA溶液の250μLを、250μLリン酸緩衝生理食塩水と混合し、それから、実施例3の500μLのヒアルロン酸架橋剤を加えた。混合物を十分に混合し、気泡を除去するために短時間の遠心分離を行った。材料を、30分にわたって室温において放置して、調剤した。このように作製された調合物は、10~20cmの長さの緊密な繊維として、微細なゲージの31Gの針を通して押出し可能な安定した材料の性質を示した。
【0169】
〔実施例8〕
(rhHSAを用いたタンパク質系調合物の調製)
本実施例において、リン酸緩衝生理食塩水(Sigma)における組換えHSA(Sigma)の20mg/ml溶液を、等体積の実施例3のヒアルロン酸架橋剤と混合した。混合物を十分に混合し、それから、気泡を除去するために短時間の遠心分離を行った。材料を、30分にわたって室温において放置して、調剤した。これは、微細なゲージの31Gの針を通して押出し可能な、穏やかに架橋された無色透明のHSA調合物を生じた。
【0170】
〔実施例9〕
(rhトロポエラスチン2を用いたタンパク質に基づく調合物の調製)
本実施例において、リン酸緩衝生理食塩水における100mg/mlのrhトロポエラスチン(Elastagen)溶液の500μLを、実施例5の500μLの2%のヒアルロン酸架橋剤とpH8.5において混合した。混合物を十分に混合し、気泡を除去するために短時間の遠心分離を行った。材料を、12時間にわたって室温において放置して、調剤した。作製された調合物は、HA架橋されたトロポエラスチンの、無色透明の安定したマトリクス調合物であった。
【0171】
〔実施例10〕
(調合物における単量体含有量の評価)
本実施例において、実施例6において作製した調合物の分取物をPBSに浸し、生じた上清をSDS-PAGEによって分析した(結果のゲルは
図3に示す)。
【0172】
ローディング:PBSに浸した、実施例6において作製した調合物
レーンM:マーカー。
レーンAおよびB:上清。
TEレーン:純粋なTE。
【0173】
ゲルから明らかなように、HA-TE試料から単量体は抽出されなかった。
【0174】
〔実施例11〕
(調合物流体力学の評価)
本実施例において、実施例6において作製された調合物のせん断流における流体力学的な挙動を、円錐および平面の形状を利用しているHaake RS150流動計を用いて調べた。35mm/1°のチタニウム円錐体を、25℃に維持された温度を有している試験に使用した。
【0175】
変化する角周波数を有している、振幅の小さい振動性のせん断流に対する調合物の応答は、0.1~100rad/秒の角周波数の範囲において、貯蔵弾性率(G’)によって決定される。この範囲の全体にわたって、貯蔵弾性率は、角周波数の変化に対して相対的に非感受性であった。定常せん断流において、歪みは、200Pa以下の応力の場合に線形に増大する。この値を超えると、加えられる応力の小さな変化は、歪みの著しい増大を導いた。せん断粘度をせん断速度に対してプロットすると、流体は、低いせん断速度において約260Paの一定の粘度を示した。しかし、粘度は、約0.4/秒のせん断速度を超えるせん断速度の上昇にともなって急速に低下した。
【0176】
実施例6において作製されたタンパク質に基づく調合物の流体力学的な性質は、微細な針による押出しを可能にするために後から微小化される非架橋の多糖、および短い架橋剤(例えば、BDDE)を用いた多糖生成物と顕著に異なる。これらの多糖生成物は、粘性流体によって近い挙動を示し、試験した複数の同じ周波数の全体にわたって、損失弾性率(G’’)からのそれらの流体力学的な性質に対するより大きな寄与を有している。実施例6において作製された調合物の複素弾性率の相対的に一定な値は、多糖に基づく生成物に対する特定の相違点をもたらす。
【0177】
さらなる実施形態または例が、以下に示されている。
【0178】
実施形態1.少なくとも1つの架橋タンパク質マトリクスを含んでおり、少なくとも1つの当該架橋タンパク質マトリクスは、
(i)少なくとも1つのタンパク質残基、および
(ii)糖を有している少なくとも1つの残基を含んでいる、組成物。
【0179】
2.注入可能な組成物である、実施形態1に記載の組成物。
【0180】
3.カニューレ、カテーテル、柔軟性ポリマーのカテーテル、針付きシリンジまたは針なしシリンジによって送達される、実施形態1または2に記載の組成物。
【0181】
4.少なくとも10cmの長さまで押出し可能である、実施形態1~3の1つ以上に記載の組成物。
【0182】
5.約5cm~約30cmの長さまで、18G~31Gの針を通して押出し可能であり、押し出された組成物は、表面支持物なしに実質的にまとまっている、実施形態1~4の1つ以上に記載の組成物。
【0183】
6.少なくとも5cm、10cm、12cm、15cm、18cm、20cmまたは25cmの長さまで、25Gの針を通して押出し可能である、実施形態1~5の1つ以上に記載の組成物。
【0184】
7.少なくとも10cm、15cm、20cmまたは25cmの長さまで、微細なゲージの針を通して押出し可能である、実施形態1~6の1つ以上に記載の組成物。
【0185】
8.微細なゲージの針を通して押し出される場合に、少なくとも5cm~30cm、10cm~20cmまたは15cm~30cmの長さまで、さらなる表面支持物なしに押出し可能であり、押し出された組成物は、実質的に緊密であり、実質的にまとまっている、実施形態1~7の1つ以上に記載の組成物。
【0186】
9.中程度のゲージを通して押し出される場合に、少なくとも10cm、15cm、20cmまたは25cmの長さまで、物理的な追加の支持物なしに押出し可能であり、押し出された組成物は、実質的に緊密であり、実質的にまとまっている、実施形態1~8の1つ以上に記載の組成物。
【0187】
10.太いゲージの針を通して押し出される場合に、少なくとも10cm、15cm、20cmまたは25cmの長さまで、さらなる表面支持物なしに押出し可能であり、押し出された組成物は、実質的に緊密であり、実質的にまとまっている、実施形態1~9の1つ以上に記載の組成物。
【0188】
11.少なくとも10cm、20cmまたは30cmの長さまで、垂直から少なくとも45°の角度において、さらなる表面支持物なしに押出し可能であり、材料の緊密な繊維を形成している、実施形態1~10の1つ以上に記載の組成物。
【0189】
12.押し出された組成物は、材料の緊密な繊維を形成している、実施形態1~11の1つ以上に記載の組成物。
【0190】
13.実質的なさらなる処理なしに押し出され得る、実施形態1~12の1つ以上に記載の組成物。
【0191】
14.実質的なさらなる処理なしに微細なゲージの針を通して押し出され得、押し出された場合に、さらなる物理的な支持物なしに実質的に緊密であり、実質的にまとまっている、実施形態1~13の1つ以上に記載の組成物。
【0192】
15.組成物のひも状物が押出しの間に切れない程度に、針による押出し後における十分な緊密性を保持している、実施形態1~14の1つ以上に記載の組成物。
【0193】
16.10cm、12cm、15cm、18cmまたは20cmを超える組成物のひも状物が、組成物のひも状物の切断なしに針から押し出され得る程度に針による押出し後における十分な緊密性を保持している、実施形態1~15の1つ以上に記載の組成物。
【0194】
17.少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスは、全長のタンパク質残基を含んでいる、実施形態1~16の1つ以上に記載の組成物。
【0195】
18.少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスは、実質的に全長のタンパク質残基を含んでいる、実施形態1~17の1つ以上に記載の組成物。
【0196】
19.針を通して取り出され得る程度に、実質的に柔軟である、実施形態1~18の1つ以上に記載の組成物。
【0197】
20.微細なゲージの針を通した取出しを可能にするために十分な柔軟性を有している、実施形態1~19の1つ以上に記載の組成物。
【0198】
21.全長または実質的に全長の保持を少なくとも1つの上記タンパク質残基に可能にさせており、少なくとも1つの上記タンパク質残基は、急速な吸収または分解から保護されている、実施形態1~20の1つ以上に記載の組成物。
【0199】
22.全長または実質的に全長の保持を少なくとも1つの上記タンパク質残基に可能にさせており、注入針によって注入可能であり、緊密な構造を保持しており、インビボにおける組成物の吸収を遅らせるために十分に架橋されている、実施形態1~21の1つ以上に記載の組成物。
【0200】
23.少なくとも1つの上記タンパク質残基は、実質的に全長であり、分子内架橋を実質的に欠いている、実施形態1~22の1つ以上に記載の組成物。
【0201】
24.組織適合性を有しているか、組織内成長を促進するか、組織再生を促進するかまたはこれらの組合せである、実施形態1~23の1つ以上に記載の組成物。
【0202】
25.標準的な所望の構造に再構築され得、新たな組織に組み込まれ得る、実施形態1~24の1つ以上に記載の組成物。
【0203】
26.糖を有している少なくとも1つの上記残基は、水または生理食塩水における可溶性または実質的な可溶性を維持している、実施形態1~25の1つ以上に記載の組成物。
【0204】
27.糖を有している少なくとも1つの上記残基は、水性媒体または生理学的媒体に、実質的に可溶である、実施形態1~26の1つ以上に記載の組成物。
【0205】
28.少なくとも1つの上記架橋タンパク質残基は、実質的に分子間架橋されている、実施形態1~27の1つ以上に記載の組成物。
【0206】
29.糖を有している少なくとも1つの上記残基は、以下の特性:実質的な生体利用性、実質的な生分解性、実質的な生体吸収性または実質的な生分解吸収性の1つ以上を有している、実施形態1~28の1つ以上に記載の組成物。
【0207】
30.糖を有している少なくとも1つの上記残基は、少なくとも1つの糖残基、少なくとも1つのオリゴ糖残基またはこれらの組合せを含んでいる、実施形態1~29の1つ以上に記載の組成物。
【0208】
31.少なくとも1つの上記多糖残基は、低い分子量の多糖残基、中程度の分子量の多糖残基、高い分子量の多糖残基またはこれらの組合せを含んでいる、実施形態1~30に記載の組成物。
【0209】
32.少なくとも1つの上記多糖残基は、約50,000~約275,000ダルトンの分子量を有している、実施形態1~31の1つ以上に記載の組成物。
【0210】
33.少なくとも1つの上記多糖残基は、ヒアルロン酸、セルロース誘導体、カルボキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシ-プロピルセルロースカルボキシメチルアミロース、キサンタンガム、グアールガム、α-グルカン、β-グルカン、β-1,4-グルカン、β-1,3-グルカン、アルギン酸塩、カルボキシメチルデキストラン、グリコサミノグリカン誘導体、コンドロイチン-6-硫酸、デルマチン硫酸(dermatin sulfate)、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、リン酸三カルシウムまたは1-ヒドロキシアパタイト、それらの薬学的に許容可能な塩、それらの誘導体またはこれらの組合せの残基に由来するかまたは当該残基を含んでいる、実施形態1~32の1つ以上に記載の組成物。
【0211】
34.少なくとも1つの上記多糖残基は、ヒアルロン酸の残基に由来するかまたは当該残基を含んでいる、実施形態1~33の1つ以上に記載の組成物。
【0212】
35.少なくとも1つの上記多糖残基は、カルボキシメチルセルロースの残基に由来するかまたは当該残基を含んでいる、実施形態1~34の1つ以上に記載の組成物。
【0213】
36.少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスは、糖を有している少なくとも1つの残基を、約0.01%~約30%の濃度において含んでいる、実施形態1~35に記載の組成物。
【0214】
37.少なくとも1つの上記タンパク質残基は、アミンを有している側鎖残基を含んでおり、当該側鎖残基は、少なくとも1つのリジン残基、少なくとも1つのアルギニン残基またはこれらの組合せを含んでいる、実施形態1~36の1つ以上に記載の組成物。
【0215】
38.少なくとも1つの上記タンパク質残基は、トロポエラスチン、エラスチン、アルブミン、コラーゲン、コラーゲン単量体、免疫グロブリン、インスリン、それらの誘導体もしくは組合せの残基に由来するかまたは当該残基を含んでいる、実施形態1~37の1つ以上に記載の組成物。
【0216】
39.少なくとも1つの上記タンパク質残基の量は、約1mg/ml~約200mg/mlである、実施形態1~38の1つ以上に記載の組成物。
【0217】
40.少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスは、生理活性タンパク質残基を含んでいる、実施形態1~39の1つ以上に記載の組成物。
【0218】
41.少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスは、天然に存在するヒトタンパク質と実質的に同一の合成タンパク質の残基に由来するかまたは当該残基を含んでいる、実施形態1~40の1つ以上に記載の組成物。
【0219】
42.少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスは、安定化されたタンパク質の残基に由来するかまたは当該残基を含んでいる、実施形態1~41の1つ以上に記載の組成物。
【0220】
43.少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスは、細胞外タンパク質に由来するかまたは当該細胞外タンパク質を含んでいる、実施形態1~42の1つ以上に記載の組成物。
【0221】
44.上記細胞外タンパク質は、トロポエラスチン、エラスチン、コラーゲンまたはそれらの誘導体である、実施形態1~43の1つ以上に記載の組成物。
【0222】
45.少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスは、糖を有している少なくとも1つの上記残基を約0.1%~約5%の濃度において含んでいる、実施形態1~44の1つ以上に記載の組成物。
【0223】
46.少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスは、約0.1%~約6%の糖を有している少なくとも1つの上記残基に対して、約0.1%~約1.5%の少なくとも1つの上記タンパク質残基の割合を含んでいる、実施形態1~45の1つ以上に記載の組成物。
【0224】
47.少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスは、約0.1%~約6%の、糖を有している少なくとも1つの上記残基に対して、約0.1%~約1.5%の少なくとも1つの上記タンパク質残基の割合を含んでおり、当該糖を有している残基は多糖残基を含んでいる、実施形態1~46の1つ以上に記載の組成物。
【0225】
48.少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスは、糖を有している架橋分子の少なくとも1つから調製されており、当該架橋分子は、少なくとも5%、10%、20%または25%の活性化カルボキシル基および/または活性化ヒドロキシル基、修飾カルボキシル基および/または修飾ヒドロキシル基またはこれらの組合せを含んでいる、実施形態1~47の1つ以上に記載の組成物。
【0226】
49.少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスは、糖を有している架橋分子の少なくとも1つから調製されており、当該架橋分子は、少なくとも5%の活性化カルボキシル基および/または活性化ヒドロキシル基、修飾カルボキシル基および/または修飾ヒドロキシル基またはこれらの組合せを含んでいる、実施形態1~48の1つ以上に記載の組成物。
【0227】
50.少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスは、5%未満の単量体のタンパク質残基を含んでいる、実施形態1~49の1つ以上に記載の組成物。
【0228】
51.少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスは、1%未満の単量体のタンパク質残基を含んでいる、実施形態1~50の1つ以上に記載の組成物。
【0229】
52.外科処置、エステティクス、組織の増大、失禁の処置、皮膚置換製品、皮膚科、皮膚科手術、化粧品またはこれらの組合せの少なくとも1つにおいて、治療的に採用される、実施形態1~51の1つ以上に記載の組成物。
【0230】
53.皮膚科において治療的に採用される、実施形態1~52の1つ以上に記載の組成物。
【0231】
54.皮膚科手術において治療的に採用される、実施形態1~53の1つ以上に記載の組成物。
【0232】
55.美容術、皮膚科またはこれらの組合せにおいて、局所用途として治療的に採用される、実施形態1~54の1つ以上に記載の組成物。
【0233】
56.皮膚科において治療的に局所用途として適用される、実施形態1~55の1つ以上に記載の組成物。
【0234】
57.顔のしわの処置、顔のしわの充填、小じわの処置、年齢を重ねた肌の処置、瘢痕化した組織の処置または皮膚の陥没の処置またはこれらの組合せにおいて使用される、実施形態1~56の1つ以上に記載の組成物。
【0235】
58.実質的に生理活性を有しているタンパク質残基の局所的な堆積物の移植に利用される、実施形態1~57の1つ以上に記載の組成物。
【0236】
59.実質的に生理活性を有しているタンパク質残基の局所的な堆積物の移植に利用される、実施形態1~58の1つ以上に記載の組成物。
【0237】
60.実質的な生理活性を有しているタンパク質残基の遅延放出堆積物の移植に利用される、実施形態1~59の1つ以上に記載の組成物。
【0238】
61.少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスは、生体分子および/または生体高分子を用いて架橋されている少なくとも1つの上記タンパク質残基を少なくとも90%、95%、98%または99%含んでおり、上記生体分子および/または生体高分子は、糖を有している少なくとも1つの上記残基を含んでいる、実施形態1~60の1つ以上に記載の組成物。
【0239】
62.少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスは、架橋生体分子または架橋生体高分子またはこれらの組合せを用いて実質的に架橋されている少なくとも1つの上記タンパク質残基を含んでいる、実施形態1~61の1つ以上に記載の組成物。
【0240】
63.少なくとも1つの上記多糖残基に対する架橋の数は、少なくとも1つの上記多糖残基に対する可能な架橋部位の数の少なくとも5%、10%、15%、20%または25%であり得る、実施形態1~62の1つ以上に記載の組成物。
【0241】
64.少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスに組み込まれていない、結合せずに残っているタンパク質ユニットの数は、少なくとも1%、3%、5%または7%であり得る、実施形態1~63の1つ以上に記載の組成物。
【0242】
65.20%、15%、10%または7%未満の上記タンパク質ユニットは、少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスに組み込まれておらず、結合せずに残っている、実施形態1~64の1つ以上に記載の組成物。
【0243】
66.上記タンパク質単量体は、当該タンパク質単量体の約90%~約100%が組成物に組み込まれ得るように架橋され得る、実施形態1~65の1つ以上に記載の組成物。
【0244】
67.少なくとも1つの上記タンパク質残基は、全長のタンパク質または実質的に全長のタンパク質に由来し、上記タンパク質残基の構造は、糖を有している少なくとも1つの上記残基によって実質的に覆われていない、実施形態1~66の1つ以上に記載の組成物。
【0245】
68.糖を有している少なくとも1つの上記残基によって実質的に覆われていない構造を有している少なくとも1つの上記タンパク質残基を含んでおり、より生体適合性であり得るか、組織内成長を促進し得るかまたは組織再生を促進させ得るかまたはこれらの組合せであり得る、実施形態1~67の1つ以上に記載の組成物。
【0246】
69.糖を有している少なくとも1つの上記残基によって実質的に覆われていない構造を有している少なくとも1つの上記タンパク質残基を含んでおり、より標準的な所望の構造に再構築され得るか、および/または新たな組織に組み込まれ得る、実施形態1~68の1つ以上に記載の組成物。
【0247】
70.糖を有している少なくとも1つの可溶性の分子によって、少なくとも1つのタンパク質を架橋することを含包している、実施形態1~69の1つ以上に記載の組成物を、調製する方法。
【0248】
実施形態71.少なくとも1つの架橋タンパク質マトリクスを含んでいる組成物を調製する方法であって、
少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスは、
(i)少なくとも1つのタンパク質残基、および
(ii)糖を有している少なくとも1つの残基を含んでおり、
上記架橋することは、
(i)糖を有している少なくとも1つの上記分子を修飾して、少なくとも1つの反応性の化学基を含めること、
(ii)糖を有している修飾された少なくとも1つの上記分子を、糖を有している修飾された少なくとも1つの上記分子にある上記化学基に対して補完的な、反応性の化学基を含んでいる少なくとも1つ上記タンパク質と組み合わせること、ならびに
(iii)糖を有している修飾された少なくとも1つの上記分子および少なくとも1つの上記タンパク質の間に少なくとも1つの結合を形成することを包含している、方法。
【0249】
72.少なくとも1つの反応性の上記化学基は、少なくとも1つの上記タンパク質と組み合わせられるときに、共有結合を形成可能な化学基である、実施形態70または71に記載の方法。
【0250】
73.少なくとも1つの上記結合は共有結合である、実施形態70~72の1つ以上に記載の方法。
【0251】
74.糖を有している修飾された少なくとも1つの上記分子は、水および/または生理食塩水において、可溶性であるかまたは実質的に可溶性である、実施形態70~73の1つ以上に記載の方法。
【0252】
75.糖を有している修飾された少なくとも1つの上記分子は、水または生理食塩水における可溶性または実質的な可溶性を維持している、実施形態70~74の1つ以上に記載の方法。
【0253】
76.糖を有している少なくとも1つの上記分子は、カルボキシル基および/またはヒドロキシル基を含んでいる、実施形態70~75の1つ以上に記載の方法。
【0254】
77.糖を有している少なくとも1つの上記分子は、カルボキシル基および/またはヒドロキシル基を活性化させることによって修飾される、実施形態70~76の1つ以上に記載の方法。
【0255】
78.糖を有している修飾された少なくとも1つの上記分子の沈殿および/またはろ過によって、糖を有している修飾された少なくとも1つの上記分子を精製して、未反応の修飾反応物を除去するかまたは実質的に除去することをさらに含包している、実施形態70~77の1つ以上に記載の方法。
【0256】
79.糖を有している修飾された少なくとも1つの上記分子は、糖を有している修飾された少なくとも1つの上記分子を少なくとも1つの上記タンパク質と組み合わせられるときに、架橋剤として使用される、実施形態70~78の1つ以上に記載の方法。
【0257】
80.糖を有している修飾された少なくとも1つの上記分子の溶液は、少なくとも1つの上記タンパク質と混合されて、少なくとも1つの上記架橋タンパク質マトリクスを形成する、実施形態70~79の1つ以上に記載の方法。
【0258】
81.実施形態1~69の1つ以上に記載の組成物を注入することを含包している、使用の方法。
【0259】
82.ヒトまたは動物の医薬;外科処置;修復手術;美容手術;エステティクス;組織の増大;皮膚科手術;眼の手術;リウマチ学;薬理学;美容の分野、一般的な外科処置における止血;再建手術にける神経および血管の再建、神経外科;形成外科;整形外科における皮膚、血管または軟骨の移植組織または移植片の固着;膝の変形性関節症の処置;血管手術;細胞または生理活性分子(例えば、局所的な修復を刺激するための成長因子)の送達用のビヒクル;創傷治癒および組織再生を促進するかまたは骨形成を増進するための、上記架橋タンパク質マトリクス組成物との組合せにおける成長因子の局所送達;整形外科処置における軟骨組織の修復の刺激;病理学的な外傷状態(例えば慢性潰瘍)の処置;培養における自家細胞の増殖を介して人口組織を生成するための足場としての役割;形成外科における組織の増強(例えば、皮膚のひだの充填または口唇の再建);体腔または欠損の補完;審美医薬(aesthetic medicine);または外科手術(例えば、眼の手術)中に滲出した体積の回復の少なくとも1つにおいて、上記注入は、組織を増大させるか、増強するかまたはこれらの組合せのために用いられる、実施形態81に記載の方法。
【0260】
83.実施形態1~69の1つ以上に記載の組成物を局所的に適用することを包含している、使用の方法。
【0261】
84.局所的な上記適用は、美容術;皮膚科;顔のしわの充填;小じわ;年齢を重ねた肌の処置;瘢痕組織;または皮膚の陥没の少なくとも1つにおいて、健全な組織または損傷した組織に対して実施される、実施形態83に記載の方法。
【0262】
85.実施形態1~69の1つ以上に記載の組成物を投与するための、キット。
【0263】
本開示は特定の実施形態との関連において説明されており、本開示は、開示されている実施形態に限定されず、種々の変形および等価な構成を網羅していると意図されていることが理解される。また、本明細書に記載の種々の実施形態は、他の実施形態と合わせて実施され得、例えば、一実施形態の局面は、他の実施形態の局面と組み合わせて、さらなる他の実施形態を実現し得る。さらに、実施形態の独立した特徴または構成要素のそれぞれは、さらなる実施形態を構成し得る。