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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】試験室
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20220125BHJP
   F25B 21/02 20060101ALI20220125BHJP
   F25B 27/00 20060101ALI20220125BHJP
   F25B 39/00 20060101ALI20220125BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
F25B1/00 331D
F25B1/00 396C
F25B1/00 397C
F25B1/00 321A
F25B1/00 101F
F25B1/00 304L
F25B1/00 101E
F25B21/02 A
F25B27/00 L
F25B1/00 321R
F25B39/00 B
F25B49/02 510A
F25B49/02 510F
【請求項の数】 1
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020088418
(22)【出願日】2020-05-20
(62)【分割の表示】P 2017209944の分割
【原出願日】2017-10-31
(65)【公開番号】P2020125902
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2020-05-27
(31)【優先権主張番号】16196746.8
(32)【優先日】2016-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517381603
【氏名又は名称】バイス テヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ハーク
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス タイヒマン
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-149566(JP,A)
【文献】特開2003-269809(JP,A)
【文献】特開平06-094310(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0344397(EP,A2)
【文献】特開2007-183126(JP,A)
【文献】特開平04-024447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 21/02
F25B 27/00
F25B 41/37
F25B 39/00
F25B 41/34
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物質を受容する環境に対して密封可能な断熱された試験空間と、前記試験空間の温度を制御する温度制御装置と、を具備する、空調を実施する試験室であって、
前記試験空間内では前記温度制御装置によって-20°Cから+180°Cの範囲の温度を実現可能であり、
前記温度制御装置は、冷媒と、伝熱体(12)と、圧縮機(13)と、凝縮器(14)と、膨張体(15)とを有する冷却サイクル(11)を有する冷却装置(10)を具備する、試験室において、
前記冷却サイクルは内部伝熱体(24)を具備し、
前記内部伝熱体は、流れ方向にて前記膨張体の上流であって前記凝縮器の下流で前記冷却サイクルの高圧側(18)に接続され、
前記冷媒は、前記冷却装置の調整可能な補足冷却部に連結される前記内部伝熱体によって冷却可能であり、
前記内部伝熱体(24)は、前記冷却サイクル(11)の調節可能な外部補足冷却部及び調節可能な内部補足冷却部(25)に連結され、
前記冷却サイクル(11)では、少なくとも1つの調節可能な第2の膨張体(28)を有する第1のバイパス(27)が実現され、
前記第1のバイパスは、流れ方向にて前記内部伝熱体(24)の上流であって前記凝縮器(14)の下流で前記冷却サイクルに接続され、
前記第1のバイパスは調節可能な内部補足冷却部(25)として実現され、
前記内部伝熱体(24)は、流れ方向にて前記圧縮機(13)の上流であって前記伝熱体(12)の下流で前記冷却サイクル(11)の低圧側(19)に接続され、
前記第1のバイパス(27)は冷媒用バック噴射装置(31)を形成し、
前記第1のバイパスは、バック噴射弁(32)を介して前記内部伝熱体の低圧側(50)に接続され、
前記調節可能な第2の膨張体(28)から冷媒を前記バック噴射弁に供給することができ、
少なくとも1つの別の膨張体(38)を有する別のバイパス(35)が前記冷却サイクル(11)で実現され、
前記別のバイパスは、前記冷媒の吸引ガス温度及び/又は吸引ガス圧力を前記圧縮機の上流の前記冷却サイクルの低圧側(19)で調節できるように、及び/又は前記冷却サイクルの前記高圧側(18)と低圧側との間の圧力差を補正できるように、前記流れ方向にて前記圧縮機の下流であって前記凝縮器(14)の上流で、前記圧縮機(13)に橋絡される、
ことを特徴とする試験室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調を実施する試験室に関する。この試験室は、被検物質を受け入れるために周囲環境に対して密封可能であり、断熱された試験空間と、試験空間の温度を制御する温度制御装置とを備える。温度制御装置によって試験空間で実現可能な温度範囲を-20°Cから+180°Cとする。この温度制御装置は、冷媒、伝熱体、圧縮機、凝縮器及び膨張体からなる冷却サイクルを有する冷却装置を備える。
【背景技術】
【0002】
そのような試験室は、対象物、特に装置の物理的特性及び/又は化学的特性を試験するために用いられることが多い。このため、-50°Cから+180°Cの範囲の温度を設定可能な温度試験室又は気候試験室が知られている。気候試験室では、装置、厳密にいうと被検物質を所定期間さらすことになる所望の気候条件をさらに設定可能である。そのような試験室は、所要の供給ラインを用いて建物に接続すればよい移動式装置として定期的又は部分的に実現され、温度及びコンディショニングを制御するのに必要なあらゆる構造用部品を備える。試験対象の被検物質を受け入れる試験空間の温度を試験空間内の空気循環ダクトで定期的に制御する。空気循環ダクトは、空気循環ダクト又は試験空間を通って流れる空気を加熱又は冷却する熱交換器がそれぞれ配置される試験空間に空気処理空間を形成する。この目的のために、ファン又は換気装置が試験空間内に存在する空気を吸引し、空気循環ダクトによってその空気を、対応する熱交換器に移動させる。このため、被検物質の温度を制御することができ、さらには被検物質を所定の温度変化にさらすこともできる。試験間隔には、温度を試験室の最高温度と最低温度とに繰り返し交互に到達させることができる。
【0003】
冷却サイクルで循環する冷媒は、上記の温度範囲内の冷却サイクルで使用できるようなものである必要がある。法規定のため、冷媒は、大気圏のオゾン層破壊にも地球温暖化にも実質的に寄与するものであってはならない。このため、フッ素化ガスも塩素化物質も冷媒として使用できない可能性がある。これが、自然冷媒、厳密に言うと気体がその代わりに適格である理由である。さらに、冷媒は、必要になる可能性のある安全対策のために試験室の充填、輸送又は操作が複雑にならないように、可燃性であってはならない。可燃性冷媒を使用した場合にはこのほか、その使用に付随する前向きな対策が要求されることになるため、冷却サイクルの作成コストがさらにかさむことになる。可燃性であるということは、この状況では、冷媒には放熱状態の下で大気中の酸素に反応する特徴があることを意味する。冷媒は、欧州規格EN2のファイアークラス(fire class)Cのほか、DIN378クラスA2、A2L及びA3に分類される場合に特に、可燃性である。
【0004】
さらに、冷媒はかなり低いCO2相当量を含む、即ち、かなり低い温室効果係数又は地球温暖化係数(GWP)を有する必要がある。この相当量は、放出された時点の冷媒を介して環境を間接的に損傷することを防ぐために、できるだけ低くする必要がある。GWPは、二酸化炭素を比較数量として用いて、所定の量の温室効果ガスがどの程度地球温暖化に寄与するかを示す。この数値は、比較のために規定されている所定の期間、20年間にわたっての平均温熱効果を表す。相対的なCO2相当量又はGWPを定義するため、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書、審査報告書、付録8.A、表8.Aを参照する。
【0005】
低GWP、例えば2500未満の冷媒の不利な点としては、このような冷媒には、試験室に適した温度範囲では比較的高いGWPを有する冷媒と比較して、部分的に著しく冷凍能力の低いところがある点が挙げられる。
【0006】
このため、本発明の目下の目的は、温度が少なくとも-30°Cに到達可能であり、環境に配慮した冷媒を使用して操作可能であることが求められる試験室を提示することである。
【0007】
この目的は、請求項1の構成要件を有する試験室によって達成される。
【発明の概要】
【0008】
本発明による空調を実施する試験室は、被検物質を受容する環境に対して密封可能な断熱された試験空間と、試験空間の温度を制御する温度制御装置とを備える。試験空間内では温度制御装置によって-20°Cから+180°Cの範囲の温度を実現可能である。温度制御装置は、冷媒、伝熱体、圧縮機、凝縮器及び膨張体を有する冷却サイクルを有する冷却装置を備える。冷却サイクルは内部伝熱体を備え、内部伝熱体は、流れ方向にて膨張体の上流であって凝縮器の下流で冷却サイクルの高圧側に接続され、冷媒は、冷却装置の調整可能な補足冷却部に連結される内部伝熱体によって冷却可能である。
【0009】
本発明による試験室では、試験空間の環境との温度交換が側壁、床壁及び天井壁の断熱を介して大部分阻止される。伝熱体は、冷却サイクルで循環する冷媒が伝熱体を通って流れるように、冷却サイクルに接続されるか一体化される。冷却サイクルの伝熱体は、試験空間内か試験空間の空気処理空間に配置可能であり、これとは別に、冷却装置が2つのカスケード接続された冷却サイクルを備える場合には、冷却装置の別の冷却サイクルに連結可能である。伝熱体は、この別の冷却サイクルのための凝縮器として機能する。冷却装置は、圧縮機のほか、圧縮冷媒のための凝縮器をさらに備える。この凝縮器は、冷媒の流れ方向にて圧縮機の下流に配置される。圧縮後に高圧状態に置かれて原則として気体状態の圧縮冷媒は、凝縮器で凝縮された後、原則として液体状態である。この液体冷媒は膨張体を介して流れ続ける。膨張体では、冷媒が圧力降下の後、膨張して順々に気化する。この過程では、冷媒は伝熱体を通って流れ、これによって冷却される。その後、気体冷媒は、圧縮機によって再び吸引され、圧縮される。膨張体とは、少なくとも膨張弁、スロットル、絞り弁をはじめとする、流体ラインの適切な狭窄部(constriction)であると理解される。
【0010】
本発明では、内部伝熱体を、流れ方向にて膨張体の上流であって凝縮器の下流で冷却サイクルの高圧側に接続するか、冷却サイクルに一体化することを目的とする。このため、凝縮器によって液化された冷媒は、凝縮器から内部伝熱体を通って膨張体に流れる。この過程では、冷媒は内部伝熱体によって冷却できる。冷却装置の調整可能な補足冷却部に連結されている内部伝熱体がこの冷却を発生させる。調整可能な補足冷却部は、内部伝熱体によって冷媒をさらに冷却又は過冷却できるようにするものであれば、可能な限りあらゆる種類の冷却装置であってもよい。これにより、特に、比較的低いGWPを有する冷媒の低い冷凍能力を補うことが可能になる。補足冷却部は調整が可能であるため、必要に応じて、冷媒の過冷却状態に合わせて補足冷却部を調整することができる。この過冷却は、過冷却のタイプによっては、冷凍能力に関わる能力の変動の影響を受けるため、望まない温度の変動又は冷媒の所定の温度からの温度のずれが発生しないように、補足冷却部を冷却装置の要求に合わせて制御することによって能力のこのような変動を調節することも可能になる。このため、全体としては、環境に配慮した冷媒を用いて操作した場合に、試験室の低い冷凍能力を補うことができる。
【0011】
温度制御装置によって、-60°Cから+180°C、好ましくは-80°Cから+180°Cの範囲の温度を試験空間内で実現できる。-30°Cから+180°C、好ましくは-42°Cから+180°Cの範囲の温度を少なくとも目的とする。
【0012】
試験空間内の+60°Cを超えて+180°Cまでの範囲の温度を温度制御装置によって低下させることができることが重要である。冷媒は、試験空間の比較的高い温度によって、伝熱体で強く加熱される。これが、冷却サイクルを、その構造に関して、冷却サイクルの少なくとも低圧側にて、この温度範囲まで加熱された冷媒に合わせて技術的に調節できる理由である。さもなければ、そのように加熱された冷媒を、冷却サイクルの高圧側で理想的に使用することはできなくなる。
【0013】
冷媒は、20年間を基準として2500未満、好ましくは500未満、特に好ましくは100未満の相対的CO2相当量を含むことができるため、環境に及ぼす害はわずかにすぎない。さらに、冷媒は可燃性であることもない。これにより、冷媒の可燃性に関する安全対策を特に考慮する必要がないため、試験室と、特に冷却サイクルを低コストで実現できるようになる。その結果、冷媒は、ファイアークラスC及び/又は冷媒安全グループA1に割り当てられることがない。さらにまた、運搬の形態とは無関係に運搬前に試験室に冷媒を充填することができるため、試験室の輸送又は運搬が促進される。可燃性冷媒を用いると、試験室は、設置場所での設置開始時点にしか充填できない可能性がある。また、試験空間で点火源とともに不燃性冷媒を使用することが可能になる。試験空間の伝熱体の領域にて引火する可能性のある空気を検知するセンサが必要ない。そのようなセンサは耐熱性ではないことが多い。
【0014】
試験室の一実施形態では、伝熱体は試験空間に配置できる。その結果、伝熱体はこのほか、ファンによって循環させられる空気が伝熱体に接触できるように、試験空間の空調空間に配置できる。このため、冷却装置によって、試験空間の伝熱体を介して、一定量の循環空気を試験空間から直接冷却することが可能になる。その結果、試験室は冷却サイクルを単一の独立した冷却サイクルとして備えることができる。その結果、冷却サイクルは試験空間に直接接続される。
【0015】
試験室の別の実施形態では、伝熱体は、冷却装置の別の冷却サイクルにカスケード接続する伝熱体を形成できる。このため、試験室は、少なくとも2つの冷却サイクルを備えることができるようになる。1つは、冷却装置の第1の段階を実現する冷却サイクルであり、もう1つは、試験空間に直接接続され、冷却装置の第2の段階を実現する冷却サイクルである。その結果、カスケード接続伝熱体又は伝熱体はこのほか、このもう1つの冷却サイクルのための凝縮器として機能する。試験室のこの実施形態では、その結果、試験空間にて特に低い温度を実現できる。
【0016】
このもう1つの冷却サイクルは、別の冷媒、別の圧縮機、別の伝熱体、別の凝縮器及び別の膨張体を備えることができる。この別の伝熱体は、試験空間に配置することができる。このもう1つの冷却サイクルは、この別の凝縮器によって冷却サイクルのカスケード接続伝熱体に連結することができる。その結果、冷却装置は、連続して切り替わる2つのサイクルを備えることになり、いわゆるコールドカスケード(cold cascade)として実現される。
【0017】
温度制御装置は、試験空間に加熱器及び加熱伝熱体を有する加熱装置を備えることができる。加熱装置は、例えば、加熱伝熱体を介して試験空間の温度上昇を可能にするように加熱伝熱体を加熱する電気抵抗加熱器であってもよい。伝熱体及び加熱伝熱体が、試験空間を循環する空気を冷却又は加熱する制御装置によって系統的に制御可能である場合、上記の温度範囲の温度を温度制御装置によって試験空間内で実現できる。これに関連して、被検物質又は被検物質の操作条件に関係なく、試験間隔に試験空間で±1K、好ましくは±0.3K~±0.5Kの一時的な温度安定性を達成できる。これに関連して、試験間隔とは、被検物質が原則的に安定した温度又は気候条件にさらされている全試験期間を示す期間であると理解される。加熱伝熱体は、冷媒を流すことができ、電気抵抗加熱器の発熱体を備える共用の伝熱体を形成するように、冷却サイクルの伝熱体と組み合わすことができる。凝縮器は、空気冷却器又は冷水器又はもう1つ別の冷却液を有するようにできる。一般に、凝縮器は任意の適切な流体を用いて冷却できる。凝縮器に発生する熱負荷は、完全に液化するように冷媒を凝縮することができるように、空気冷却器又は冷水器を介して消散することが必要である。
【0018】
また、均圧化装置を冷媒用冷却サイクルに配置でき、冷媒の温度が冷却サイクル内で20°Cに維持されている場合に、40バール未満、好ましくは25バール未満の圧力を冷却サイクル内で達成できる。別の冷却サイクルが存在するのであれば、その冷却サイクルもそのような均圧化装置を備えることができる。冷却サイクルには比較的大きな温度差が存在することがあるため、均圧化装置がこのような差を補正することができれば、特に有利である。このため、温度のきわめて大きな変動、その結果としての冷媒の体積の変化を、均圧化装置を介して、冷媒の対応する膨張係数に従って補正することができる。均圧化装置は、例えば、冷却サイクルの低圧側に接続される冷媒タンクであってもよい。
【0019】
特に、温度制御装置が稼働していない場合、即ち、冷媒の冷却の停止が要求されていない場合に温度制御装置が本質的に安全であるように、均圧化装置を実現できることを目的とすることができる。このほか、実験の準備を整えるために試験室を移送する前にはすでに冷却サイクルを充填した状態にすることができる。
【0020】
また、内部伝熱体は、冷却サイクルの調節可能な外部補足冷却部及び/又は調節可能な内部補足冷却部に連結できる。外部補足冷却部とは、内部伝熱体を冷却するために冷却サイクルから独立している装置からエネルギーを付与する補足冷却部として理解される。内部補足冷却部とは、内部伝熱体を冷却するために冷却サイクルのエネルギー又は冷凍能力を、冷却サイクルに一体化される装置を介して、使用する補足冷却部として理解される。冷却サイクルの内部補足冷却部では、その結果、圧縮機、伝熱体及び凝縮器を除いて、外部補足冷却部と同じように冷却サイクルに外部から追加エネルギーが供給されることはない。
【0021】
調節可能な外部補足冷却部は、冷却装置の凍結段階の再供給又は外部冷却水管として実現可能である。この再供給又は冷却水管は、内部伝熱体に接続できる。単純な実施形態では、外部補足冷却部は、内部伝熱体に単に連結される冷却水管である。冷却水管は、必要に応じて、この例では別の外部の冷却装置によって冷却される。試験室が少なくとも2つの冷却サイクルを備えている場合であれば、冷却装置の第2の段階、厳密にいえば凍結段階、厳密にいえば冷却装置の別の冷却サイクルは内部伝熱体を介して形成されるか、内部伝熱体に接続される。
【0022】
これとは別に、調節可能な外部補足冷却部は、ペルチェ素子又は加熱管として実現可能である。その結果、内部伝熱体は、例えば、ペルチェ素子又は加熱管が固定された冷却サイクルの管部分から形成可能である。
【0023】
別の実施形態によれば、調節可能な内部補足冷却部は、内部伝熱体に接続できる吸収式冷凍機として実現可能である。吸収式冷凍機は、圧縮機の廃熱を利用して駆動可能である。圧縮機の廃熱は、圧縮機、例えば、冷却サイクルの高圧側の圧縮機又は管部分から凝縮器に直接消散させることができる。その結果、吸収式冷凍機の冷却サイクルも内部伝熱体を通して形成することができる。
【0024】
有利な実施形態によれば、調節可能な内部補足冷却部は、流れ方向にて膨張体の下流に配置される冷却サイクルの再供給として実現可能である。この再供給は内部伝熱体に接続可能である。冷却サイクルの高圧側の管部分を、例えば、全体的に再供給するか膨張体の下流のバイパスの形態で再供給するか、あるいは、膨張体自体が流れ方向にて膨張体の上流の冷却サイクルの管部分を冷却するように内部伝熱体を通って形成することができる。
【0025】
特に有利な実施形態によれば、少なくとも1つの調節可能な第2の膨張体を有する第1のバイパスを冷却サイクル内で実現できる。第1のバイパスは、流れ方向にて内部伝熱体の上流であって凝縮器の下流で冷却サイクルに接続することができる。第1のバイパスは、調節可能な内部補足冷却部として実現可能である。その結果、冷媒は、流れ方向にて膨張体の上流の第1のバイパスで少なくとも部分的に偏向可能である。冷媒は、第2の膨張体によって減圧され、その結果、冷却される。その結果、この冷媒は、膨張体の上流の冷媒を冷却するために使用することができる。このように実現された内部補足冷却部は、内部補足冷却部が常に冷却装置の操作要求に合わせて調節することができるように、特に第2の膨張体を介して制御することができる。
【0026】
また、内部伝熱体は、流れ方向にて圧縮機の上流であって伝熱体の下流で冷却サイクルの低圧側に接続可能である。第1のバイパスは冷媒用バック噴射装置を形成することができる。第1のバイパスはバック噴射弁を介して内部伝熱体の低圧側に接続可能であり、冷媒を調節可能な第2の膨張体からバック噴射弁に供給することができる。このため、伝熱体から導入される冷媒は、低圧側の内部伝熱体に供給可能であり、伝熱体で加熱された冷媒は、比較的低い温度を有する冷媒を付加することによって第1のバイパスから冷却することができる。冷媒は、例えば、冷却サイクルの管部分の単純なT字部品として実現可能なバック噴射弁を介して第1のバイパスから付加される。温度を、バック噴射装置を介して内部伝熱体の低圧側にて、内部伝熱体の高圧側よりも低く設定できるため、第2の膨張体を制御することがこの場合には特に有利である。これは、試験空間の温度が60°Cを超え、その結果、伝熱体からの冷媒が加熱される場合には、特に有利になる可能性がある。
【0027】
バック噴射弁は、内部伝熱体の伝熱部分の4分の1~2分の1、好ましくは3分の1を過ぎた位置で、流れ方向、厳密に言えば、吸引ガス塊の流れ方向に内部伝熱体に接続することができる。この目的のために、内部伝熱体は、過冷却部分の一形態として実現することができる。
【0028】
任意で、内部伝熱体の低圧側を、調節可能な第2の膨張体の流れ方向の下流側の第1のバイパスに接続することができ、冷媒を調節可能な第2の膨張体から内部伝熱体に供給することができる。内部伝熱体は、流れ方向にて圧縮機の上流であって伝熱体の下流で冷却サイクルの低圧側に接続することができ、冷媒を内部伝熱体の低圧側から圧縮機に供給することができる。その結果、伝熱体によって加熱された冷媒は、内部伝熱体を通って直接導入されることはないが、第1のバイパスによって冷却された冷媒のみが導入される。第2の膨張体を介して冷却された、厳密に言えば温度が低下させられた冷媒は、内部伝熱体を通って送られた後、伝熱体から圧縮機に至る冷却サイクルの管部分に供給することができる。その結果、内部伝熱体の冷凍能力をさらにいっそう正確に制御することができる。
【0029】
また、少なくとも第3の膨張体を有する第2のバイパスを冷却サイクル内で実現することができる。第2のバイパスは、流れ方向にて凝縮器の下流であって内部伝熱体の上流で膨張体に橋絡され、冷媒の吸引ガス温度及び/又は吸引ガス圧力を圧縮機の上流の冷却サイクルの低圧側で制御することができるように、冷媒を第3の膨張体を介して供給する。これによって、とりわけ、圧縮機が過熱して損傷する可能性を防ぐことができる。その結果として、第3の膨張体を起動することによって第2のバイパスを介して圧縮機の上流に供給される気体冷媒を、依然として液体状態の冷媒を付加することによって冷却できる。第3の膨張体は、圧縮機の上流の冷却サイクルの圧力センサ及び/又は温度センサに連結される制御装置を介して作動することができる。吸引ガス温度を第2のバイパスを介して30°C以下に設定することができる場合であれば、特に有利である。冷媒はこのほか、圧縮機の動作期間を制御できるように供給することができる。一般に、圧縮機を頻繁に起動したり停止したりする場合であれば有利である。圧縮機が依然として一度に長期間にわたって動作している場合であれば、圧縮機の耐用年数を延ばすことができる。例えば、圧縮機が自動的に停止するのを遅延させ、圧縮機の動作期間を延ばすために、冷媒を第2のバイパスを介して膨張体又は凝縮器を通り過ぎて導入することができる。
【0030】
少なくとも別の膨張体を有する別のバイパスを冷却サイクル内で実現することができる。この別のバイパスは、圧縮機の上流の冷却サイクルの低圧側で冷媒の吸引ガス温度及び/又は吸引ガス圧力を制御することができる方法及び/又は冷却サイクルの高圧側と低圧側との間の圧力差を補正することができる方法で、流れ方向にて圧縮機の下流であって凝縮器の上流で圧縮機に橋絡することができる。この別のバイパスは、調節可能な又は制御可能な弁、例えば、電磁弁を補助的に備えることができる。この別の膨張体を介して高圧側と低圧側との間を接続することによって、このように圧縮された気体冷媒が、設置した膨張体が停止した場合に、冷却サイクルの高圧側から低圧側に次第に流れるのを確実にすることができる。このため、膨張体が閉じていても、高圧側と低圧側との間で圧力を次第に補正することが保証される。高圧側から低圧側に流れる冷媒のあふれた分が冷却装置の正常な動作に及ぼす影響が最小限になるように、この別の膨張体の断面を調整することができる。それでもなお、圧縮機の上流の気体冷媒を、この別のバイパスを介して液体冷媒を付加することによって冷却することを目的としてもよい。
【0031】
内部伝熱体は、過冷却部分又は伝熱体、特に板状熱交換器として実現することができる。過冷却部分は、冷却サイクルの互いに隣接して配置される2つのみの管部分によって実現することができる。
【0032】
膨張体は、スロットル及び電磁弁を備えることができ、冷媒をこのスロットル及びこの電磁弁を介して供給することができる。スロットルは調節可能な弁又は毛細管であってもよく、この弁又は毛細管を介して冷媒を電磁弁によって導入することができる。電磁弁は、制御装置によって作動することができる。
【0033】
また、温度制御装置は、冷却サイクルの少なくとも1つの圧力センサ及び/又は少なくとも1つの温度センサを有する制御装置を備えることが可能であり、電磁弁を測定された温度又は圧力に従って制御装置によって作動することができる。制御装置は、センサからのデータセットを加工して電磁弁を制御するデータ加工手段を備えることができる。例えば、対応するコンピュータプログラムを介して、冷却装置の機能を使用した冷媒に合わせて調節することもできる。また、制御装置は、試験室又は被検物質を、試験室の危機的であるか望まない動作状態を介して損傷することから保護するために、必要に応じて、動作の混乱を表示し、試験室の遮断を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
下記では、本発明の好適な実施形態を添付図面を参照してさらに記載する。
図1】冷却装置の第1の実施形態の概略図。
図2】冷却装置の第2の実施形態の概略図。
図3】冷却装置の第3の実施形態の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、冷媒が循環可能な冷却サイクル11を有する冷却装置10の概略図である。冷媒は、20年間を基準として2500未満の相対的CO2相当量を含む。また、冷却装置10は、ここでは図示しない試験空間に配置されるか、ここでは図示しない別の冷却サイクルに接続される伝熱体12と、圧縮機13と、凝縮器14と、膨張体15とを備える。膨張体15は、スロットル16及び電磁弁17から形成される。冷却サイクル11は、冷媒の流れ方向に圧縮機13から膨張体15に延びる高圧側18のほか、膨張体15から圧縮機13に延びる低圧側19を備える。圧縮機13から凝縮器14への管部分20では、冷媒は気体であり、比較的高い温度である。圧縮機13によって圧縮された冷媒は、冷却サイクル11の凝縮器14に流れる。この気体冷媒は凝縮器14で液化される。冷媒の流れ方向では、伝熱体12は、冷却サイクル11の凝縮器14の後に置かれる。このため、冷媒は、凝縮器14と膨張体15との間の冷却サイクル11の管部分21では液体状態で存在する。膨張体15の下流で膨張する冷媒によって、伝熱体12は冷却される。冷媒は、膨張体15と伝熱体12との間の管部分22で気体状態に推移し、管部分23を介して伝熱体12から圧縮機13に導かれる。
【0036】
冷却サイクル11では、内部伝熱体24を管部分21の冷却サイクル11の高圧側18にさらに接続する。内部伝熱体24は調節可能な補足冷却部25に連結される。また、内部熱交換器24は、過冷却部分26として実現される。このため、熱が管部分21と管部分23との間で伝達されるように、管部分23は管部分21の方に導かれるように組み立てられている。
【0037】
調節可能な内部補足冷却部25は、調節可能な第2の膨張体28を有する第1のバイパス27によって形成される。第1のバイパス27は、管部分29と併せて管部分21の分岐を構成し、第2の膨張体28の下流の管部分30と併せて冷媒用バック噴射装置31を形成する。特に、管部分30は、バック噴射弁32によって、過冷却部分26の領域で管部分23に接続される。バック噴射弁32は、冷媒の流れ方向にて過冷却部分26の長さの3分の1を過ぎた位置で過冷却部分26に接続される。内部補足冷却部25の制御が、スロットル33及び電磁弁34を備える第2の膨張体28によって可能になる。第2の膨張体28によって、冷媒の温度を低下させることが可能になり、その低温の冷媒を、過冷却部分26又は対応する管部分23にて、その部分を流れる比較的暖かい冷媒に導入できる。これにより、過冷却部分26の膨張体15の上流にある管部分21を流れる冷媒は冷却される。高圧側18で液化された冷媒のこのいわゆる過冷却によって、GWPが2500を超える冷媒よりも低い冷凍能力を有する冷媒の冷凍能力を補うことが可能になる。それでも、試験空間の温度が60°Cを超える場合に特に、冷媒の導入を制御することによって、伝熱体12から流れる冷媒の変動する可能性のある温度を補正することができる。
【0038】
また、スロットル36及び電磁弁37を有して第3の膨張体38を形成する第2のバイパス35を冷却サイクル11に配置する。第2のバイパス35の管部分39及び40は、圧縮機13が停止した場合に第3の膨張体38を介して高圧側18と低圧側19との間で圧力が徐々に補正されるように、圧縮機13に橋絡される。また、冷媒の吸引ガス温度及び/又は吸引ガス圧力を、電磁弁37を介して、圧縮機13の上流の冷却サイクル11の低圧側19で調節できる。
【0039】
図2は、図1の冷却装置と比較して、凝縮器44と伝熱体45との間の管部分43を有する冷却サイクル42を備える冷却装置41を図示する。冷却サイクル42では、熱交換器46として実現される内部伝熱体47が配置される。第2の膨張体32を有する第1のバイパス48が、管部分43の上流の伝熱体46に至るまでに分岐し、内部伝熱体47の低圧側50の伝熱体46に直接接続される。第1のバイパスは、管部分51及び52と、低圧側50から、流れ方向にて圧縮機55の上流の管部分54に至る管部分43と、から形成される。
【0040】
図3は、冷却サイクル57と、この例では図2の冷却装置とは反対側に設けられる別の膨張体59を有する別のバイパス58と、を有する冷却装置56を図示する。この別の膨張体59はこのほか、スロットル60及び電磁弁61を備える。この別のバイパス58は、凝縮器63の下流であって内部伝熱体64の上流で、圧縮機62に、冷却サイクル57の高圧側65から低圧側66に向かって橋絡される。このため、バイパス58は、圧縮機62の上流の吸引ガス温度を制御するために用いることができる。
【0041】
また、圧力センサ67及び温度センサ68は冷却サイクル57での使用を意図したものである。圧力センサ67を用いて、凝縮器の下流の管部分69にて冷媒圧力を測定することができ、温度センサ68を用いて、膨張体71の下流の管部分70にて冷媒温度を測定することができる。特に、ここではこれ以上は示されない制御装置によって、圧力に従って冷媒の温度を制御することを目的とする。
図1
図2
図3