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  • 特許-グリス除去装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】グリス除去装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/12 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
B66B7/12 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020124929
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2020-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 竜希
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-130275(JP,U)
【文献】特開2019-064806(JP,A)
【文献】特開2019-210099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープが巻き掛けられるシーブに対向するスクレーパを備え、
前記スクレーパは、シーブ溝に巻き掛けた前記ロープと、前記シーブ溝の外面とに対向する掻き出し片を有し、前記ロープ及び前記シーブから食み出たグリスを除去するグリス除去装置であって、
前記スクレーパの前記掻き出し片は、前記シーブ溝の溝壁の内面と外面とに各々対向する溝壁用凹部と、ロープの側面に対向するロープ用凹部とを備えるグリス除去装置
【請求項2】
ロープが巻き掛けられるシーブに対向するスクレーパと、前記スクレーパを支持する支持部材を備え、
前記スクレーパは、シーブ溝に巻き掛けた前記ロープと、前記シーブ溝の外面とに対向する掻き出し片を有し、前記ロープ及び前記シーブから食み出たグリスを除去するグリス除去装置であって、
前記支持部材は前記シーブの台座から立設してあり且つ前記掻き出し片で掻き出したグリスの飛散を防止するグリス飛散防止部が設けてあるグリス除去装置。
【請求項3】
前記スクレーパの前記掻き出し片は、前記シーブ溝に前記ロープが巻き掛けを開始する位置に設けてある請求項1又は2に記載のグリス除去装置。
【請求項4】
前記スクレーパの前記掻き出し片は、前記シーブの外側において、前記シーブの回転中心を通る水平線上又は前記水平線に対して上向きに角度を形成している請求項に記載のグリス除去装置。
【請求項5】
前記シーブは前記シーブ溝の溝壁を隣り合わせにして複数設けてあり、前記スクレーパは、前記各シーブ毎の前記掻き出し片を一体に設けてある請求項1又は2に記載のグリス除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、グリス除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の機械設備において、シーブにロープを巻き掛けたものがある。この種の機械設備として、例えば、エレベータの調速機では、乗りかごの昇降に連動するロープをシーブに巻き掛けている。
そして、シーブとロープとの間の潤滑を図るため、ロープにグリスが塗布され或いはロープに含浸させたグリスが滲み出るようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-210099号公報
【文献】特開2015-89848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、長期間に亘って駆動するとシーブやロープにグリスが堆積することがあり、このように堆積したグリスは機械設備に悪影響を与えるという問題があった。
そこで、ロープが巻き掛けられるシーブおいて、シーブやロープにグリスが堆積するのを防止できるグリス除去装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態は、ロープが巻き掛けられるシーブに対向するスクレーパを備え、前記スクレーパは、シーブ溝に巻き掛けた前記ロープと、前記シーブ溝の外面とに対向する掻き出し片を有し、前記ロープ及び前記シーブから食み出たグリスを除去するグリス除去装置である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】調速機の概略を示す正面図である。
図2図1に示す調速機の斜視図である。
図3図1に示すスクレーパ及びその周囲部分を示す斜視図である。
図4図3に示すスクレーパ及びその周囲部分を示す平面図である。
図5】掻き出し片の変形例を示す平面図である。
図6】スクレーパの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態に係るエレベータの調速機1について、添付図面を参照して説明するが、まず図1図4を参照して第1実施形態について説明する。
図1に示すように、調速機1は、シーブ3と、シーブ3に巻き掛けられるロープ5と、シーブ3に近接して設けたリミットスイッチ7と、グリス除去装置9とを備えている。
尚、図1及び2で示す符号4はカバーである。
調速機1は、シーブ3の回転速度が過速状態になると、フライングウエイト(図示せず)が遠心力により外方に作動して、リミットスイッチ7の動作片7aに当接係合して、作動するものである。
ロープ5は、エレベータの乗りかご(図示せず)に連動して駆動される無端ベルトであり、上下方向に駆動されている。図2に示すように、ロープ5は、台座11に形成されている穴11aを通してシーブ3に巻き掛けられている。
また、ロープ5には、グリスが含侵されており、グリスが駆動によりロープ5から浸み出すようになっている。
【0008】
シーブ3は、台座11から立設された支持体13に回転軸3aを支持されており、巻き掛けられたロープ5の駆動により回転自在にされている。
シーブ3にはロープ5を巻き掛けるシーブ溝15が形成されている。
図1に示すように、ロープ5は、シーブ3の回転軸3aを含む水平線H上の一端側であるロープ巻き掛け開始部3bから巻き掛けが開始され、水平線H上の他端側のロープ巻き出し部3cから巻き出されており、シーブ3の上半分に巻き掛けられる。
リミットスイッチ7は、ロープ巻き出し部3c側に設けてある。
尚、図2図4では、ロープ5は、シーブ3との巻き掛け部分を省略して、一部を切断して示している。
【0009】
図4に示すように、シーブ溝15は、対向する溝壁15a、15aを有し、溝壁15a、15aの互いに対向する内面17、17間にロープ5が巻き掛けられている。溝壁15a、15aの各内面17、17は溝底15bに向けて互いに間隔を狭くする傾斜面になっている。
溝壁15a、15aの各内面17と反対側の外面19(図3参照)は、垂直方向の平坦面としてある。
【0010】
図1及び図2に示すように、グリス除去装置9は、シーブ3のロープ巻き掛け開始部3bに近接して設けてあり、スクレーパ21と、スクレーパ21を支持する支持部材23とを備えている。
スクレーパ21には、本体部21aと掻き出し片と21bを一体に設けてあり、本体部21aが支持部材23に支持されている。このスクレーパ21は、鋼板であるが、硬質樹脂材製でも良い。
図1に示すように、掻き出し片21bは、ロープ巻き掛け開始部3bの位置で、シーブ3の水平線Hの線上に設けているが、水平線Hに対して2~3度が上向に角度を形成しても良い。
【0011】
図3及び図4に示すように、掻き出し片21bは、シーブ3の対向する各溝壁15a、15aに対応する溝壁用凹部25と、ロープ5の側面に対向するロープ用凹部27とが設けてある。
各溝壁用凹部25には、シーブ3の溝壁15aがそれぞれ挿入されており、溝壁15aの内面17と対向する溝壁内面対向部25aと、溝壁15aの外面19と対向する溝壁外面対向部25cとが形成されている。
ロープ用凹部27は、2つの溝壁用凹部25、25間に設けてあり、ロープ5の側面に沿う円弧形状を成している。
尚、掻き出し片21bの溝壁用凹部25とロープ用凹部27との縁は、対応する溝壁15a、15a及びロープ5との間に1~2mmの間隔を空けている。
【0012】
図1及び図2に示すように、支持部材23は、シーブ3の近傍で台座11に立設されており、上端をシーブ3の水平線H(図1参照)の位置に合わせてある。支持部材23の上端には、スクレーパ21の本体部21を溶接等により固定してある。
支持部材23は、鋼板製であり水平断面がコ字形状の壁面を有し、コ字の開口をシーブ3側に向けおり、支持部材23の3つの壁面は、スクレーパ21により掻き出されたグリスが周囲に飛散するのを防止するグリス飛散防止部23aとしてある。
【0013】
次に、グリス除去装置9の作用について説明する。
図1及び図2に示すように、ロープ5が駆動されると、ロープ5が巻き掛けられたシーブ3がロープ5と共に矢印R方向に回転する。
シーブ3のロープ巻き掛け開始部3bでは、スクレーパ21の掻き出し片21bが、ロープ5と、シーブ溝15の外面19に対向して設けているので、ロープ5及びシーブ溝15の外面に食み出たグリスを一緒に掻き取り、除去する。
【0014】
より詳しくは、図3に示すように、スクレーパ21では、溝壁用凹部25にはシーブ3の対向する各溝壁15aが挿入されおり、ロープ用凹部27がロープ5の側面に対向しているので、各溝壁15aの内面17と外面19から食み出したグリスと、ロープ5の側面から食み出したグリスを同時に掻き取り、除去する。
【0015】
次に、グリス除去装置9の効果について説明する。
実施形態によれば、グリス除去装置9は、ロープ5のみならず、ロープ5を巻き掛けるシーブ溝15の外面19に溢れて食み出したグリスを除去するから、ロープ5及びシーブ3でグリスが堆積するのを防止できる。
【0016】
スクレーパ21の掻き出し片21bは、シーブ3において、ロープ巻き掛け開始部3bに設けて、ロープ5がシーブ3に巻きかかるときにシーブ3とロープ5から食み出したグリスを掻き出しているので、シーブ溝15からグリスが堆積する前に効果的にグリスを除去することができる。
掻き出し片21bには、シーブ3の溝壁15aを挿入する溝壁用凹部25と、ロープ5の側面に沿うロープ用凹部27が形成されているから、シーブ3とロープ5のそれぞれに堆積するグリスの除去効率が良い。
掻き出し片21bには、その先端に凹み状の溝壁用凹部25とロープ用凹部27を形成するだけであるから、製造が容易である。
スクレーパ21の支持部材23はグリス飛散防止部23aが形成されているから、掻き出されたグリスの飛散を防止できる。
【0017】
以下に実施形態の変形例を説明するが、以下に説明する変形例において、上述した第1実施形態と同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付することによりその部分の詳細な説明を省略し、以下の説明では第1実施形態と主に異なる点を説明する。
図5(a)~(f)には、スクレーパ21の掻き出し片21bの各種変形例を示している。
(a)は、溝壁用凹部25及びロープ用凹部27をそれぞれ矩形にしている。
(b)は、2つの溝壁用凹部25を形成する山型の凸部29間をロープ用凹部27としてあり、凸部の頂部をロープ5に対向させている。
(c)は、ロープ用凹部27を2つの曲線31で形成している。
(d)は、ロープ用凹部27を2つの直線33でV字形状に形成している。
(e)は、ロープ用凹部27を2つの円弧35で形成している。
(f)は、ロープ用凹部27を、窪み37を形成した山状凸部39としている。
【0018】
図6に示す変形例では、シーブ3が溝壁15aを隣り合わせにして複数設けてあり、スクレーパ21は、前記各シーブ3の掻き出し片21bを一体に設けた構成としている。
この変形例では、複数のシーブ3について、一つのスクレーパ21で、上述した実施の形態と同様の効果を同時に得ることができる。
【0019】
上述した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0020】
3…シーブ、5…ロープ、15…シーブ溝、15a…溝壁、17…溝壁の内面、19…外面、21…スクレーパ、21b…掻き出し片、25…溝壁用凹部、27…ロープ用凹部、H…水平線。
【要約】
【課題】ロープが巻き掛けられるシーブおいて、シーブやロープにグリスが堆積するのを防止できるグリス除去装置を提供する。
【解決手段】グリス除去装置は、ロープが巻き掛けられるシーブに対向するスクレーパを備え、スクレーパは、シーブ溝に巻き掛けたロープと、シーブ溝の外面とに対向する掻き出し片を有し、ロープ及びシーブから食み出たグリスを除去するものであり、スクレーパの掻き出し片は、シーブ溝にロープが巻き掛けを開始する位置に設けてある。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6