(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】ボールねじの予圧低下の検出方法
(51)【国際特許分類】
F16H 25/22 20060101AFI20220125BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20220125BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
F16H25/22 K
F16H25/22 A
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
(21)【出願番号】P 2020148164
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2020-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】596016557
【氏名又は名称】上銀科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】林 育新
【審査官】筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/090479(WO,A1)
【文献】特開2008-097361(JP,A)
【文献】特表2019-535957(JP,A)
【文献】国際公開第2009/104676(WO,A1)
【文献】特開2015-230097(JP,A)
【文献】特開2018-194303(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0229125(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/22
G01H 17/00
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のボールねじのナットにおいて循環部材に接近している箇所に配置されている第1の感知ユニット、および該第1の感知ユニットと通信するコンピュータ装置を用いて、該第1の感知ユニットが前記循環部材のボールの振動に関連する振動信号を感知して、該コンピュータ装置へ周期的に発信することによって実施されるボールねじの予圧低下の判定方法であって、
前記コンピュータ装置により、受信した少なくとも1つの振動信号に基づいて、該少なくとも1つの振動信号に対応する第1の時間領域データを取得するステップ(A)と、
前記コンピュータ装置により、前記ステップ(A)において取得した前記第1の時間領域データに基づいて、前記第1の時間領域データに対応する少なくとも1つのサブ周波数領域データを取得するステップ(B)と、
前記コンピュータ装置により、前記ステップ(B)において取得した各前記サブ周波数領域データに基づいて、少なくとも1つの対応する前記サブ周波数領域データに関連する第1の特徴ベクトルを取得するステップ(C)と、
前記コンピュータ装置により、前記ステップ(C)において取得した各前記第1の特徴ベクトルと、複数の振動に関連する基準ベクトルと、予圧に関連する感知範囲と、に基づいて、予圧の判定結果を取得するステップ(D)と、
前記コンピュータ装置により、前記ステップ(D)において取得した前記予圧の判定結果に基づいて、前記ボールねじの予圧が低下したか否かを判定するステップ(E)と、を含
み、
前記コンピュータ装置は前記ナットに設置されている第2の感知ユニットとさらに通信し、該第2の感知ユニットは、前記ナットが前記ボールねじのねじ軸に沿う移動方向の慣性力に関連する慣性力信号を感知して、該前記コンピュータ装置へ周期的に発信し、
前記ステップ(E)の後に、
前記ボールねじの予圧が低下したと判定すると、前記コンピュータ装置により、受信した少なくとも1つの慣性力信号に基づいて、該少なくとも1つの慣性力信号に対応する少なくとも1つの第2の時間領域データを取得するステップ(H)と、
前記コンピュータ装置により、前記ステップ(H)において取得した各前記第2の時間領域データに基づいて、前記第2の時間領域データに関連する第2の特徴ベクトルを取得するステップ(I)と、
前記コンピュータ装置により、前記ステップ(I)において取得した前記第2の特徴ベクトルと、複数の慣性力に関連する基準ベクトルと、バックラッシュに関連する感知範囲と、に基づいて、バックラッシュの判定結果を取得するステップ(J)と、
前記コンピュータ装置により、前記ステップ(I)において取得した前記バックラッシュの判定結果に基づいて、前記ボールねじのバックラッシュが発生したか否かを判定するステップ(K)と、をさらに含む、
ことを特徴とするボールねじの予圧低下の判定方法。
【請求項2】
前記ステップ(B)は、
前記コンピュータ装置により、前記第1の時間領域データに対して、包絡処理を行ない、包絡処理済みの第1の時間領域データを取得するステップ(B1)と、
前記コンピュータ装置により、前記ステップ(B1)において取得した前記包絡処理済みの第1の時間領域データに基づいて、前記ボールねじが移動するときの等速度期間に関連する目標第1の時間領域データを取得するステップ(B2)と、
前記コンピュータ装置により、前記ステップ(B2)において取得した前記目標第1の時間領域データに基づいて、少なくとも1つのサブ周波数領域データを取得するステップ(B3)と、をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のボールねじの予圧低下の判定方法。
【請求項3】
前記ステップ(B3)は、
前記コンピュータ装置により、前記ステップ(B2)において取得した前記目標第1の時間領域データに基づいて、少なくとも1つのサブ時間領域データを取得するステップ(B31)と、
前記コンピュータ装置により、前記ステップ(B31)において取得した各前記サブ時間領域データに対して、フーリエ変換を行ない、少なくとも1つの対応する前記サブ時間領域データに対応するサブ周波数領域データを取得するステップ(B32)と、を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載のボールねじの予圧低下の判定方法。
【請求項4】
前記ステップ(D)は、
前記コンピュータ装置により、前記ステップ(C)において取得した各前記第1の特徴ベクトルに対して、各前記第1の特徴ベクトルが各前記振動に関連する基準ベクトルとの第2の候補距離を計算するステップ(D1)と、
前記コンピュータ装置により、前記ステップ(D1)において該第2の候補距離が計算された各前記第1の特徴ベクトルに対して、各前記第1の特徴ベクトルに対応する各前記第2の候補距離のうちに、距離がもっとも短い第2の目標距離を取得するステップ(D2)と、
前記コンピュータ装置により、前記第2の目標距離および予圧に関連する感知範囲に基づいて、予圧の判定結果を取得するステップ(D3)と、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のボールねじの予圧低下の判定方法。
【請求項5】
前記ステップ(C)においては、
各前記第1の特徴ベクトルは、対応する前記サブ周波数領域データの尖度を示す特徴ベクトルと、対応する前記サブ周波数領域データの最大ピーク値を示す特徴ベクトルと、対応する前記サブ周波数領域データの総エネルギーを示す特徴ベクトルと、の少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のボールねじの予圧低下の判定方法。
【請求項6】
前記コンピュータ装置には、振動に関連する複数の第1の訓練特徴ベクトルおよび複数の第2の訓練特徴ベクトルが記憶されており、
前記ステップ(D)の前に、
前記コンピュータ装置により、該複数の第1の訓練特徴ベクトルに基づいて、教師なし学習アルゴリズムを用いて、対応するデータ空間における複数の振動に関連する基準ベクトルを取得するステップ(F)と、
前記コンピュータ装置により、前記複数の振動に関連する基準ベクトルおよび前記複数の第2の訓練特徴ベクトルに基づいて、予圧に関連する感知範囲を取得するステップ(G)と、をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のボールねじの予圧低下の判定方法。
【請求項7】
前記ステップ(F)においては、
前記教師なし学習アルゴリズムは、クラスタリングアルゴリズムを含み、
各前記振動に関連する基準ベクトルは、前記クラスタリングアルゴリズムから取得された複数の振動に関連するクラスタが対応する中心のベクトルを含む、
ことを特徴とする請求項6に記載のボールねじの予圧低下の判定方法。
【請求項8】
前記ステップ(F)においては、
前記教師なし学習アルゴリズムは、自己組織化写像のアルゴリズムを含み、
各前記振動に関連する基準ベクトルは、前記自己組織化写像のアルゴリズムから取得された更新回数が予め設定された回数よりも大きいすべてのニューロンが対応するベクトルを含む、
ことを特徴とする請求項6に記載のボールねじの予圧低下の判定方法。
【請求項9】
前記ステップ(G)は、
前記コンピュータ装置により、前記コンピュータ装置に記憶されている各前記第2の訓練特徴ベクトルに対して、各前記第2の訓練特徴ベクトルが、各前記振動に関連する基準ベクトルとの第1の候補距離を計算するステップ(G1)と、
前記コンピュータ装置により、前記ステップ(G1)において該第1の候補距離が計算された各前記第2の訓練特徴ベクトルに対して、各前記第2の訓練特徴ベクトルに対応する各前記第1の候補距離のうちで、距離がもっとも短い第1の目標距離を取得するステップ(G2)と、
前記コンピュータ装置により、前記ステップ(G2)において取得した前記第1の目標距離に基づいて、予圧の検出範囲を取得するステップ(G3)と、をさらに含む、
ことを特徴とする請求項6に記載のボールねじの予圧低下の判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじが予圧低下状態になったか否かを検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじとは、らせん状の溝を設けているねじ軸と、当該らせん状の溝に入れられている複数のボールと、ねじ軸に該複数のボールを介して螺合されているナットと、ボールを無限循環するための循環部材と、を備え、直線運動を回転運動に変換するかまたは回転運動を直線運動に変換することができ、直線方向の精密な位置決め、或いは、力を増幅する場合に使用されるものである。現在、多くの分野で利用されている。
【0003】
しかし、ボールねじの使用時間が長くなるにつれて、ボールねじの予圧が減少する。ボールねじの予圧が不足すると、ボールねじのナットが往復移動している際に振動が発生することに伴い、当該ボールねじ内でバックラッシュが発生して、そして当該ボールねじを設けた工作機械の精度に悪影響を及ぼす。
【0004】
なお、特許文献1には、従来のボールねじの予圧の検出方法が開示されている。該ボールねじの予圧の検出方法は、以下の(a)~(f)の各ステップを含む。
(a)ボールねじを設けた工作機械が作動すると、振動信号を生成する。
(b)該振動信号から等速度移動に対応する複数の信号部分を取得する。
(c)各信号部分に対してフィルタリングを行なう。
(d)当該複数の信号部分に基づいて、テストサンプルを生成する。
(e)当該テストサンプルと、予め設定された基準サンプルと、の類似度を計算する。
(f)当該類似度が閾値よりも大きい場合に、ボールねじに予圧を与えていると判定する一方で、当該類似度が閾値よりも小さい場合に、ボールねじに予圧を与えていないと判定する。
【0005】
これによって、ボールねじに予圧を与えているか否かを検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献において、ボールねじに予圧を与えているか否かを検出して、予圧がなくなる場合にバックラッシュが発生すると判断することを開示しているが、従来の技術では、ボールねじがバックラッシュがまだ発生していない程度の予圧低下の状態を検出することができない。そこで、ボールねじのバックラッシュを予防することができないので、従来のボールねじの予圧に関する検出方法に対して改善する余地がある。
【0008】
よって、本発明は上記問題点に鑑みて、上記欠点を解決できるボールねじの予圧低下の検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための手段として、本発明は、所定のボールねじのナットにおいて循環部材に接近している箇所に配置されている第1の感知ユニット、および該第1の感知ユニットと通信するコンピュータ装置を用いて、該第1の感知ユニットが前記循環部材のボールの振動に関連する振動信号を感知して、該コンピュータ装置へ周期的に発信することによって実施されるボールねじの予圧低下の判定方法であって、以下の(A)~(E)の各ステップを含むことを特徴とするボールねじの予圧低下の判定方法を提供する。
(A)前記コンピュータ装置により、受信した少なくとも1つの振動信号に基づいて、該少なくとも1つの振動信号に対応する第1の時間領域データを取得する。
(B)前記コンピュータ装置により、前記ステップ(A)において取得した前記第1の時間領域データに基づいて、前記第1の時間領域データに対応する少なくとも1つのサブ周波数領域データを取得する。
(C)前記コンピュータ装置により、前記ステップ(B)において取得した各前記サブ周波数領域データに基づいて、少なくとも1つの対応する前記サブ周波数領域データに関連する第1の特徴ベクトルを取得する。
(D)前記コンピュータ装置により、前記ステップ(C)において取得した各前記第1の特徴ベクトルと、複数の振動に関連する基準ベクトルと、予圧に関連する感知範囲と、に基づいて、予圧の判定結果を取得する。
(E)前記コンピュータ装置により、前記ステップ(D)において取得した前記予圧の判定結果に基づいて、前記ボールねじの予圧が低下したか否かを判定する。
【発明の効果】
【0010】
上記構成により、本発明に係るボールねじの予圧低下の検出方法において、少なくとも1つの振動信号から取得した少なくとも1つの第1の特徴ベクトルと、複数の振動に関連する基準ベクトルと、予圧に関連する感知範囲と、に基づいて、予圧の判定結果を取得することによって、ボールねじの予圧が低下したか否かを判定することができる。
【0011】
よって、ボールねじにバックラッシュがまだ発生していない程度の予圧低下の状態を検出することができ、ボールねじのバックラッシュを予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るボールねじの予圧低下の検出方法の実施形態を実施するためのボールねじの予圧低下の検出システムを説明するブロック図である。
【
図2】該ボールねじの予圧低下の検出システムにおける第1の感知ユニットと第2の感知ユニットとの配置位置が示される模式図である。
【
図3】該実施形態に係る予圧に関する訓練プロセスを説明するフローチャートである。
【
図4】該実施形態に係るバックラッシュに関する訓練プロセスを説明するフローチャートである。
【
図5】本発明に係るボールねじの予圧低下の検出方法の実施形態のステップS70~ステップS77を説明するフローチャートである。
【
図6】該実施形態のステップS78~ステップS85を説明するフローチャートである。
【
図7】該実施形態の振動に関するサブ周波数領域データを取得するためのステップS710~ステップS714を説明するフローチャートである。
【
図8】該実施形態の慣性力に関連する第2の特徴ベクトルを取得するためのステップS790~ステップS792を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るボールねじの予圧低下の検出方法を実施するシステムについて図面を参照して説明する。
【0014】
図1及び
図2を参照して本発明に係るボールねじの予圧低下の検出方法を実施するためのボールねじの予圧低下の検出システム100を説明する。ここで、
図1は本発明に係るボールねじの予圧低下の検出方法の実施形態を実施するためのボールねじの予圧低下の検出システム100を説明するブロック図であり、また、
図2は該ボールねじの予圧低下の検出システムにおける第1の感知ユニット2と第2の感知ユニット3との配置位置が示される模式図である。
【0015】
図1に示されるように、本発明に係るボールねじの予圧低下の検出方法を実施するためのボールねじの予圧低下の検出システム100は、コンピュータ装置1、および、いずれも所定のボールねじ4に配置されていてコンピュータ装置1と通信する第1の感知ユニット2と第2の感知ユニット3、を備えている。
【0016】
第1の感知ユニット2は、
図1及び
図2に示されるように、所定のボールねじ4のナット41において循環部材43に接近している箇所に配置されており、且つ循環部材43のボール44の振動に関連する振動信号を感知して、該コンピュータ装置1へ周期的に発信する。また、第2の感知ユニット3は、
図1及び
図2に示されるように、ナット41に設置されており、且つナット41がボールねじ4のねじ軸42に沿う移動方向の慣性力に関連する慣性力信号を感知して、該コンピュータ装置1へ周期的に発信する。
【0017】
なお、本実施形態では、該ボールねじ4は、
図2に示されるように、外部循環式ボールねじであるが、ここではそれに限定されず、例えば、内部循環式ボールねじやエンドキャップ循環式ボールねじなどの他の種類のボールねじであってもよい。
【0018】
さらに、
図2に示されるように、ボールねじ4が外部循環式ボールねじである場合に、第1の感知ユニット2と第2の感知ユニット3とは、それぞれ上記したボールねじ4における箇所、即ち、循環部材43に接近している箇所およびナット41の外表面に配置されている。
【0019】
勿論、ここで第1の感知ユニット2と第2の感知ユニット3とは、設置箇所がそれらの箇所に限定されず、上記した振動信号および慣性力信号を感知することができるよう、ボールねじ4の種類によって同一の箇所、或いは、他の異なる箇所に設置され得る。
【0020】
なお、本実施形態では、第1の感知ユニット2と第2の感知ユニット3とは、加速度計(Accelerometer)であるが、ここではそれに限定されず、他の実施形態において例えば、変位計や速度計であってもよい。更に言うと、該第1の感知ユニット2は、有効な周波数帯域が0.1Hz~5Hzの範囲をカバーする必要があり、該第2の感知ユニット3は、ねじ軸42の回転速度の周波数の10倍の周波数帯域(例えば、0.1Hz~250Hz)の範囲をカバーする必要があり、且つデジタル解像度が20bitである。
【0021】
コンピュータ装置1は、
図1に示されるように、第1の感知ユニット2および第2の感知ユニット3と通信するための通信モジュール11と、記憶モジュール12と、検出結果を表示するための表示モジュール13と、通信モジュール11と記憶モジュール12と表示モジュール13とに電気的に接続されている処理モジュール14と、を備えている。
【0022】
記憶モジュール12には、振動に関連する複数の第1の訓練特徴ベクトルと複数の第2の訓練特徴ベクトル、および、慣性力に関連する複数の第3の訓練特徴ベクトルと複数の第4の訓練特徴ベクトルが予め記憶されている。
【0023】
その中で、各振動に関連する訓練特徴ベクトル(即ち、第1、2の訓練特徴ベクトル)においては、対応する周波数領域データの尖度(Kurtosis)を示す訓練特徴ベクトルと、対応する周波数領域データの最大ピーク値を示す訓練特徴ベクトルと、対応する周波数領域データの総エネルギーを示す訓練特徴ベクトルと、の少なくとも1つが含まれるが、それに限定されない。
【0024】
一方で、各慣性力に関連する訓練特徴ベクトル(即ち、第3、4の訓練特徴ベクトル)においては、当該訓練特徴ベクトルが対応する周波数領域データのピーク・ピーク値を示す訓練特徴ベクトルと、当該訓練特徴ベクトルが対応する周波数領域データの最大ピーク値を示す訓練特徴ベクトルと、当該訓練特徴ベクトルが対応する周波数領域データにおける最大ピーク値の絶対値と最小ピーク値の絶対値との総和の平均を取るものを示す訓練特徴ベクトルと、の少なくとも1つが含まれるが、それに限定されない。
【0025】
<ボールねじの予圧低下の検出方法>
以下、本発明に係るボールねじの予圧低下の検出方法について図面を参照して説明する。
【0026】
図3~
図8を参照して本発明に係るボールねじの予圧低下の検出方法を説明する。ここで、
図3は該実施形態に係る予圧に関する訓練プロセスを説明するフローチャートであり、
図4は該実施形態に係るバックラッシュに関する訓練プロセスを説明するフローチャートである。
【0027】
また、
図5は本発明に係るボールねじの予圧低下の検出方法の実施形態のステップS70~ステップS77を説明するフローチャートであり、
図6は該実施形態のステップS78~ステップS85を説明するフローチャートであり、
図7は該実施形態の振動に関するサブ周波数領域データを取得するためのステップS710~ステップS714を説明するフローチャートであり、
図8は該実施形態の慣性力に関連する第2の特徴ベクトルを取得するためのステップS790~ステップS792を説明するフローチャートである。
【0028】
本発明に係るボールねじの予圧低下の検出方法の実施形態は、コンピュータ装置1と第1の感知ユニット2と第2の感知ユニット3とを用いて、該第1の感知ユニット2が循環部材43のボール44の振動に関連する振動信号を感知して、該コンピュータ装置1へ周期的に発信し、そして場合によって、該第2の感知ユニット3が、ナット41がボールねじ4のねじ軸42に沿う移動方向の慣性力に関連する慣性力信号を感知して、該コンピュータ装置1へ周期的に発信することによって実施される。
【0029】
ボールねじの予圧低下の検出方法の実施形態は、予圧の訓練プロセス(
図3を参照)と、バックラッシュの訓練プロセス(
図4を参照)と、予圧低下の判定プロセス(
図5~
図8を参照)と、を含んでいる。
【0030】
予圧の訓練プロセスは、
図3に示されるように、以下のステップS50~ステップS53を含む。
【0031】
ステップS50において、コンピュータ装置1の処理モジュール14により、振動に関連する複数の第1の訓練特徴ベクトルに基づいて、教師なし学習アルゴリズム(unsupervised learning algorithm)を用いて、対応するデータ空間における複数の振動に関連する基準ベクトルを取得する。
【0032】
具体的には、該教師なし学習アルゴリズムが、クラスタリングのアルゴリズム(例えば、k-means clustering)を含む場合に、各振動に関連する基準ベクトルは、クラスタリングアルゴリズムから取得された複数の振動に関連するクラスタが対応する中心のベクトルを含む一方で、該教師なし学習アルゴリズムが、自己組織化写像(SOM、略称:Self- Organizing Map)のアルゴリズムを含む場合に、各振動に関連する基準ベクトルは、自己組織化写像のアルゴリズムから取得された更新回数が予め設定された回数よりも大きいすべてのニューロンが対応するベクトルを含むが、それに限定されない。
【0033】
次のステップにおいては、コンピュータ装置1の処理モジュール14により、複数の振動に関連する基準ベクトルおよび複数の第2の訓練特徴ベクトルに基づいて、予圧に関連する感知範囲を取得する。上記したものについて、以下のステップS51~ステップS53でより詳しく説明する。
【0034】
ステップS51において、処理モジュール14により、コンピュータ装置1の記憶モジュール12に記憶されている各第2の訓練特徴ベクトルに対して、各第2の訓練特徴ベクトルが各振動に関連する基準ベクトルとの第1の候補距離を計算する。なお、本実施形態では、各第1の候補距離を計算するために、ユークリッド距離(Euclidean distance)を使用するが、ここではそれに限定されない。
【0035】
ステップS52において、処理モジュール14により、ステップS51において該第1の候補距離が計算された各第2の訓練特徴ベクトルに対して、各第2の訓練特徴ベクトルに対応する各第1の候補距離のうちで、距離がもっとも短い第1の目標距離を取得する。
【0036】
ステップS53において、処理モジュール14により、ステップS52において取得した第1の目標距離に基づいて、予圧の検出範囲を取得する。
【0037】
なお、本実施形態では、該第1の目標距離を正規分布(normal distribution)とするとともに、該第1の目標距離に対応する95%の信頼区間(confidence interval、略称:CI)を予圧の検出範囲とする。勿論、ここではそれに限定されない。
【0038】
バックラッシュの訓練プロセスは、
図4に示されるように、以下のステップS60~ステップS63を含む。
【0039】
ステップS60において、コンピュータ装置1の処理モジュール14により、慣性力に関連する複数の第3の訓練特徴ベクトルに基づいて、他の教師なし学習アルゴリズムを用いて、対応するデータ空間における複数の慣性力に関連する基準ベクトルを取得する。
【0040】
具体的には、該他の教師なし学習アルゴリズムは、クラスタリングアルゴリズムを含む場合に、各慣性力に関連する基準ベクトルは、クラスタリングアルゴリズムから取得された複数の慣性力に関連するクラスタが対応する中心のベクトルを含む一方で、該他の教師なし学習アルゴリズムは、自己組織化写像のアルゴリズムを含む場合に、各慣性力に関連する基準ベクトルは、自己組織化写像のアルゴリズムから取得された更新回数が予め設定された回数よりも大きいすべてのニューロンが対応するベクトルを含むが、それに限定されない。
【0041】
ステップS61において、処理モジュール14により、コンピュータ装置1の記憶モジュール12に記憶されている各第4の訓練特徴ベクトルに対して、各第4の訓練特徴ベクトルが、各慣性力に関連する基準ベクトルとの第3の候補距離を計算する。なお、本実施形態では、各第3の候補距離を計算するために、ユークリッド距離を使用するが、ここではそれに限定されない。
【0042】
ステップS62において、処理モジュール14により、ステップS61において該第3の候補距離が計算された各第4の訓練特徴ベクトルに対して、各第4の訓練特徴ベクトルに対応する各第3の候補距離のうちで、距離がもっとも短い第3の目標距離を取得する。
【0043】
ステップS63において、処理モジュール14により、ステップS62において取得した第3の目標距離に基づいて、バックラッシュの検出範囲を取得する。
【0044】
なお、本実施形態では、該第3の目標距離を正規分布とするとともに、該第3の目標距離に対応する95%の信頼区間を予圧の検出範囲とする。勿論、ここではそれに限定されない。
【0045】
予圧低下の判定プロセスは、
図5および
図6に示されるように、以下のステップS70~ステップS85を含む。
【0046】
ステップS70において、コンピュータ装置1の処理モジュール14により、第1の感知ユニット2から受信した少なくとも1つの振動信号に基づいて、該少なくとも1つの振動信号に対応する第1の時間領域データを取得する。
【0047】
ステップS71において、処理モジュール14により、ステップS70において取得した第1の時間領域データに基づいて、第1の時間領域データに対応する少なくとも1つのサブ周波数領域データを取得する。
【0048】
より具体的には、
図7に示されるように、ステップS71は、以下のように説明されるステップS710~ステップS714をさらに含む。
【0049】
ステップS710において、処理モジュール14により、第1の時間領域データに対して、包絡処理(Envelope)を行ない、包絡処理済みの第1の時間領域データを取得する。なお、包絡処理については、本発明の技術分野に関する周知技術に属すので、ここで更なる詳細な記載がなくても、同業者であれば、上記の内容に基づいて利用できると考えられる。
【0050】
ステップS711において、処理モジュール14により、ステップS710において取得した包絡処理済みの第1の時間領域データに基づいて、ボールねじ4が移動するときの等速度期間に関連する目標第1の時間領域データを取得する。
【0051】
ここで、該ボールねじ4が移動するときの等速度期間は、予め設定されたボールねじ4の移動を制御するモーターの回転速度から推知され得る。
【0052】
ステップS712において、処理モジュール14により、ステップS711において取得した目標第1の時間領域データに基づいて、少なくとも1つのサブ時間領域データを取得する。
【0053】
なお、本実施形態では、処理モジュール14は、予め設定された同じ長さの時間間隔によって、当該目標第1の時間領域データを分割して、少なくとも1つのサブ時間領域データを取得する。そして、各サブ時間領域データは、同じ長さの時間間隔に対応する。
【0054】
これに対して、他の実施形態において、処理モジュール14は、目標第1の時間領域データに基づいて、予め設定された他の同じ長さの時間間隔によって、当該目標第1の時間領域データを結び付けて、少なくとも1つの他のサブ時間領域データを取得する。そして、各他のサブ時間領域データは、他の同じ長さの時間間隔に対応する。
【0055】
ステップS713において、処理モジュール14により、各サブ時間領域データに対して、バンドパスフィルタリング(bandpass filtering)を行ない、バンドパスフィルタリング済みのサブ時間領域データを取得する。
【0056】
要するに、該バンドパスフィルタリング済みのサブ時間領域データが残す周波数の範囲は、ねじ軸42の回転速度の周波数の10倍の周波数帯域の範囲内にあり、そこで、第1の感知ユニット2が感知できる周波数の範囲が、ねじ軸42の回転速度の周波数の10倍の周波数帯域の範囲内のみをカバーする場合に、このステップS713を実行する必要がなく、後述するステップS714へ進む。
【0057】
ステップS714において、処理モジュール14により、バンドパスフィルタリング済みの各サブ時間領域データに対して、フーリエ変換(Fourier Transform)を行ない、バンドパスフィルタリング済みのサブ時間領域データに対応するサブ周波数領域データを取得する。
【0058】
ステップS72において、処理モジュール14により、ステップS71において取得した各サブ周波数領域データに基づいて、少なくとも1つの対応するサブ周波数領域データに関連する第1の特徴ベクトルを取得する。
【0059】
なお、各第1の特徴ベクトルは、当該第1の特徴ベクトルが対応するサブ周波数領域データの尖度を示す特徴ベクトルと、当該第1の特徴ベクトルが対応するサブ周波数領域データの最大ピーク値を示す特徴ベクトルと、当該第1の特徴ベクトルが対応するサブ周波数領域データの総エネルギーを示す特徴ベクトルと、の少なくとも1つを含むが、それに限定されない。
【0060】
次のステップにおいては、処理モジュール14により、ステップS72において取得した各第1の特徴ベクトルと、複数の振動に関連する基準ベクトルと、予圧に関連する感知範囲と、に基づいて、予圧の判定結果を取得する。上記したものについて、以下のステップS73~ステップS75でより詳しく説明する。
【0061】
ステップS73において、処理モジュール14により、ステップS72において取得した各第1の特徴ベクトルに対して、各第1の特徴ベクトルが各振動に関連する基準ベクトルとの第2の候補距離を計算する。
【0062】
ステップS74において、処理モジュール14により、ステップS73において該第2の候補距離が計算された各第1の特徴ベクトルに対して、各第1の特徴ベクトルに対応する各第2の候補距離のうちで、距離がもっとも短い第2の目標距離を取得する。
【0063】
ステップS75において、処理モジュール14により、第2の目標距離、および各第1の特徴ベクトルがボールねじ4の予圧低下が発生したことを示すか否かを判定するための予圧に関連する感知範囲に基づいて、予圧の判定結果を取得する。
【0064】
なお、本実施形態では、該処理モジュール14は、第2の目標距離に対して平均を取って、振動に関する平均値を取得し、そして当該振動に関する平均値を該予圧に関連する感知範囲内にあるか否かを判定して、予圧の判定結果とし、或いは、第2の目標距離に対して最頻値(mode)を取って、振動に関する最頻値を取得し、そして当該振動に関する最頻値を該予圧に関連する感知範囲内にあるか否かを判定して、予圧の判定結果とする。ここではそれに限定されない。
【0065】
ステップS76において、処理モジュール14により、ステップS75において取得した予圧の判定結果に基づいて、ボールねじ4の予圧が低下したか否かを判定する。
【0066】
ここで、ボールねじ4の予圧が低下しておらず、例えば、振動に関する平均値が予圧に関連する感知範囲内にあると判定されると、後述するステップS77へ進む。これに対し、ボールねじ4の予圧が低下し、例えば、振動に関する平均値が予圧に関連する感知範囲外にあると判定されると、後述するステップS78へ進む。
【0067】
ステップS77において、処理モジュール14がボールねじ4の予圧が低下していない情報を示す信号を生成して、表示モジュール13により当該ボールねじの予圧低下なしの情報を表示する。
【0068】
ステップS78において、ボールねじ4の予圧が低下したと判定すると、処理モジュール14が、第2の感知ユニット3から受信した少なくとも1つの慣性力信号に基づいて、該少なくとも1つの慣性力信号に対応する少なくとも1つの第2の時間領域データを取得する。
【0069】
なお、各慣性力信号に対応する第2の時間領域データは、いずれもボールねじ4のナット41がねじ軸42に対する1つの往復周期に対応する。各往復周期とは、該ナット41がねじ軸42において初期位置から最終位置へ移動し、そして該最終位置から該初期位置へ戻ることを指す。より好ましくは、各第2の時間領域データは、ボールねじ4が対応する往復周期における加速度期間または減速度時間のみをカバーする。
【0070】
ステップS79において、処理モジュール14により、ステップS78において取得した各第2の時間領域データに基づいて、第2の時間領域データに関連する第2の特徴ベクトルを取得する。
【0071】
なお、各慣性力に関連する第2の特徴ベクトルにおいては、当該第2の特徴ベクトルが対応する第2の時間領域データのピーク・ピーク値を示す特徴ベクトルと、当該第2の特徴ベクトルが対応する第2の時間領域データの最大ピーク値を示す特徴ベクトルと、当該第2の特徴ベクトルが対応する第2の時間領域データにおける最大ピーク値の絶対値と最小ピーク値の絶対値との総和を平均するものを示す特徴ベクトルと、の少なくとも1つが含まれるが、それに限定されない。
【0072】
より具体的に言うと、
図8に示されるように、ステップS79は、以下のように説明されるステップS790~ステップS792をさらに含む。
【0073】
ステップS790において、処理モジュール14により、ステップS78において取得した各第2の時間領域データに対して、包絡処理を行ない、包絡処理済みの第2の時間領域データを取得する。
【0074】
ステップS791において、処理モジュール14により、ステップS790において取得した包絡処理済みの第2の時間領域データに対して、ローパスフィルタリング(low pass filtering)を行ない、ローパスフィルタリング済みの第2の時間領域データを取得する。
【0075】
また、該ローパスフィルタリング済みの第2の時間領域データが残す周波数範囲は、0.1Hz~5Hzの範囲内にあり、そこで第2の感知ユニット3が感知できる周波数範囲は、0.1Hz~5Hzの範囲内のみをカバーする場合に、上記したステップS791におけるローパスフィルタリングを行なう必要がなく、後述するステップS792へ進む。
【0076】
ステップS792において、処理モジュール14により、ステップS791において取得したローパスフィルタリング済みの第2の時間領域データに基づいて、ローパスフィルタリング済みの第2の時間領域データに対応する第2の特徴ベクトルを取得する。
【0077】
次のステップにおいては、コンピュータ装置1の処理モジュール14により、ステップS79において取得した第2の特徴ベクトルと、複数の慣性力に関連する基準ベクトルと、バックラッシュに関連する感知範囲と、に基づいて、バックラッシュの判定結果を取得する。上記したものについて、以下のステップS80~ステップS82でより詳しく説明する。
【0078】
ステップS80において、処理モジュール14により、ステップS79において取得した第2の特徴ベクトルに対して、各第2の特徴ベクトルが各慣性力に関連する基準ベクトルとの第4の候補距離を計算する。
【0079】
ステップS81において、処理モジュール14により、ステップS80において該第4の候補距離が計算された各第2の特徴ベクトルに対して、各第2の特徴ベクトルに対応する各第4の候補距離のうちで、距離がもっとも短い第4の目標距離を取得する。
【0080】
ステップS82において、処理モジュール14により、第4の目標距離、および各第2の特徴ベクトルがボールねじ4のバックラッシュが発生したことを示すか否かを判定するためのバックラッシュに関連する感知範囲に基づいて、バックラッシュの判定結果を取得する。
【0081】
なお、本実施形態では、該処理モジュール14は、第4の目標距離に対して平均を取って、慣性力に関する平均値を取得し、そして当該慣性力に関する平均値を該バックラッシュに関連する感知範囲内にあるか否かを判定して、バックラッシュの判定結果とし、或いは、第4の目標距離に対して最頻値を取って、慣性力に関する最頻値を取得し、そして当該慣性力に関する最頻値を該バックラッシュに関連する感知範囲内にあるか否かを判定して、バックラッシュの判定結果とする。勿論、ここではそれに限定されない。
【0082】
ステップS83において、処理モジュール14により、ステップS79において取得したバックラッシュの判定結果に基づいて、ボールねじ4のバックラッシュが発生したか否かを判定する。
【0083】
ここで、ボールねじ4のバックラッシュが発生していない、例えば、慣性力に関する平均値がバックラッシュに関連する感知範囲内にあると判定すると、後述するステップS84へ進む。これに対し、ボールねじ4のバックラッシュが発生した、例えば、慣性力に関する平均値がバックラッシュに関連する感知範囲外にあると判定すると、後述するステップS85へ進む。
【0084】
ステップS84において、処理モジュール14がボールねじ4のバックラッシュが発生していない情報を示す信号を生成して、表示モジュール13によりボールねじ4の予圧が低下した情報のみ表示する。
【0085】
ステップS85において、処理モジュール14がボールねじ4のバックラッシュが発生した情報を示す信号を生成して、表示モジュール13により当該ボールねじ4のバックラッシュが発生した情報を表示する。
【0086】
これによって、該実施形態のボールねじの予圧低下の検出方法を実施することができる。
【0087】
総括すると、本発明に係るボールねじの予圧低下の検出方法において、少なくとも1つの振動信号から取得した少なくとも1つの第1の特徴ベクトルと、複数の振動に関連する基準ベクトルと、予圧に関連する感知範囲と、に基づいて、予圧の判定結果を取得することによって、ボールねじ4の予圧が低下したか否かを判定することができる。
【0088】
したがって、該ボールねじ4の予圧低下の検出方法によれば、ボールねじ4の予圧が低下したか否かを判定すること、およびボールねじ4のバックラッシュが発生したか否かを判定することによって、ボールねじ4の予圧が低下していないこと、ボールねじ4の予圧が低下した状態でボールねじ4のバックラッシュがまだ発生していないこと、ボールねじ4の予圧低下とボールねじ4のバックラッシュとの両方が発生したこと、の3つの状態を検出することができる。よって、ボールねじ4のバックラッシュを予防させることができる。
【0089】
上記においては、本発明の全体的な理解を促すべく、多くの具体的な詳細が示された。しかしながら、当業者であれば、一またはそれ以上の他の実施形態が具体的な詳細を示さなくとも実施され得ることが明らかである。
【0090】
以上、本発明の好ましい実施形態及び変化例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係るボールねじの予圧低下の検出方法は、ボールねじの予圧低下を検出することによってボールねじのバックラッシュを予防させることができる。そのため、産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0092】
100 ボールねじの予圧低下の検出システム
1 コンピュータ装置
11 通信モジュール
12 記憶モジュール
13 表示モジュール
14 処理モジュール
2 第1の感知ユニット
3 第2の感知ユニット
4 ボールねじ
41 ナット
42 ねじ軸
43 循環部材
44 ボール
S50~S53 ステップ
S60~S63 ステップ
S70~S85 ステップ
S710~S714 ステップ
S790~S792 ステップ
【要約】
【課題】ボールねじが予圧低下状態になったか否かを検出することができるボールねじの予圧低下の検出方法を提供する。
【解決手段】受信した振動信号に基づいて該振動信号に対応する第1の時間領域データを取得し、取得した第1の時間領域データに基づいて第1の時間領域データに対応するサブ周波数領域データを取得し、取得した各サブ周波数領域データに基づいて対応するサブ周波数領域データに関連する第1の特徴ベクトルを取得し、取得した各第1の特徴ベクトルと複数の振動に関連する基準ベクトルと予圧に関連する感知範囲とに基づいて予圧の判定結果を取得し、取得した予圧の判定結果に基づいてボールねじの予圧が低下したか否かを判定する。
【選択図】
図5