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特許7014892テストステロンエステルトリグリセリド製剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】テストステロンエステルトリグリセリド製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/568 20060101AFI20220125BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220125BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20220125BHJP
   A61P 5/26 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
A61K31/568
A61K47/10
A61K47/44
A61P5/26
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020511291
(86)(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 US2018048856
(87)【国際公開番号】W WO2019046582
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-04-20
(31)【優先権主張番号】62/552,190
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502142703
【氏名又は名称】アンタレス・ファーマ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】オング,シャオウェイ
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-516433(JP,A)
【文献】特表2008-537960(JP,A)
【文献】特表2017-518294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0287203(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61P 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非経口投与用の医薬製剤であって、エナント酸テストステロン、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含んでなる抗酸化剤、及びゴマ油を含んでなる医薬的に許容される担体を含んでな、前記医薬製剤。
【請求項2】
医薬的に許容される担体が、LLL、OLL、OOL、OOO、PLL、POL、POO、及びSOLから選択されるトリグリセリドを含む、請求項1の医薬製剤。
【請求項3】
エナント酸テストステロンの濃度が50mg/mL~200mg/mLである、請求項の医薬製剤。
【請求項4】
BHTの濃度が0.01%~0.1%である、請求項の医薬製剤。
【請求項5】
BHTの濃度が0.1mg/mL~1mg/mLである、請求項の医薬製剤。
【請求項6】
非経口投与用の光安定性医薬製剤であって、エナント酸テストステロン、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含んでなる抗酸化剤、及びゴマ油を含んでなる医薬的に許容される担体を含んでなり、
該製剤の光安定性は、該製剤の作製後30~60日の間に、利用可能なエナント酸テストステロンの濃度を測定して、それを該製剤の初期エナント酸テストステロン濃度と比較することによって評価される、前記医薬製剤。
【請求項7】
非経口投与用の光安定性医薬製剤であって、エナント酸テストステロン、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含んでなる抗酸化剤、及びゴマ油を含んでなる医薬的に許容される担体を含んでなり、
該製剤の光安定性は、該医薬製剤を200ワット時/mのUV光と120万ルクス時以上の可視光暴露へ暴露し、利用可能なエナント酸テストステロンの濃度を測定して、それを該製剤の初期エナント酸テストステロン濃度と比較することによって評価される、前記医薬製剤。
【請求項8】
医薬的に許容される担体が、LLL、OLL、OOL、OOO、PLL、POL、POO、及びSOLから選択されるトリグリセリドを含む、請求項6又は7の光安定性医薬製剤。
【請求項9】
エナント酸テストステロンの初期濃度が50mg/mL~200mg/mLである、請求項6又は7の光安定性医薬製剤。
【請求項10】
BHTの濃度が0.01%~0.1%である、請求項6又は7の光安定性医薬製剤。
【請求項11】
BHTの濃度が0.1mg/mL~1mg/mLである、請求項6又は7の光安定性医薬製剤。
【請求項12】
利用可能なエナント酸テストステロンの濃度が、初期エナント酸テストステロン濃度の少なくとも66.8%~75.0%である、請求項6~11のいずれか1項の光安定性医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2017年8月30日に出願した米国仮特許出願第62/552,190号の利益を請求するものであり、その全体が本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、概して、テストステロンエステルトリグリセリド製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
テストステロンは、主要な男性ホルモンであって、アナボリックステロイドである。男性では、テストステロンが精巣及び前立腺のような男性生殖組織の発達に重要な役割を担って、筋量及び骨量の増加といった2次性徴と体毛の発育を増進させる。エナント酸テストステロンは、テストステロンのヘプタン酸誘導化エステルであり、したがってテストステロンのプロドラッグである。エナント酸テストステロンは、遊離のテストステロンより極性が低く、非経口投与すると脂質相よりゆっくり吸収されることによって、テストステロンの持続的なin vivo送達をもたらす。したがって、エナント酸テストステロンは、より長い時間間隔、例えば1~4週の間隔で投与することができる。
【発明の概要】
【0004】
1つの態様では、本発明は、式1:
【0005】
【化1】
【0006】
のテストステロンエステル、抗酸化剤、及び式2:
【0007】
【化2】
【0008】
の1以上のトリグリセリド、が含まれる医薬的に許容される担体が含まれる医薬製剤に関するものであり、式中:Rは、アルキル又はアルケニル置換基であり;R、R、及びRのそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及びステアリン酸のような脂肪酸に対応するアシル基である。いくつかの態様では、Rは、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、シクロペンチルエチル、又はこれらの不飽和類似体である。いくつかの態様では、テストステロンエステルは、エナント酸テストステロン、シピオン酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、又はウンデカン酸テストステロンである。いくつかの態様では、該医薬製剤は非経口投与用である。いくつかの態様では、テストステロンエステルはエナント酸テストステロンである。いくつかの態様では、トリグリセリドは、LLL、OLL、OOL、OOO、PLL、POL、POO、又はSOLの1つである。いくつかの態様では、医薬的に許容される担体には、植物油が含まれる。いくつかの態様では、植物油はゴマ油である。いくつかの態様では、抗酸化剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸及びその塩、ビタミンE、ナイアシンアミド、メチオニン、モノチオグリセロール、二亜硫酸ナトリウム、システイン、亜ジチオン酸ナトリウム、ゲンチジン酸、及び/又はグルタミン酸一ナトリウムの1以上である。
【0009】
1つの態様では、本発明は、エナント酸テストステロン、ゴマ油、及びBHTが含まれる医薬製剤に関する。1つの態様では、本発明は、エナント酸テストステロン、ゴマ油、及びトコフェロールが含まれる医薬製剤に関する。いくつかの態様では、該医薬製剤は非経口投与用である。
【0010】
1つの態様では、本発明は、式3:
【0011】
【化3】
【0012】
のテストステロンエステル付加物に関するものであり、式中:Rは、それぞれの独立した出現時に同じでも異なってもよいアルキル又はアルケニル置換基であり;Rは、不飽和脂肪酸に対応するアシル基であり;Gは、グリセロール、モノグリセリド、又はジグリセリド残基であり;nは、1、2、又は3であり;そしてテストステロン残基は、Rのアリル炭素又は2重アリル炭素へ連結する。いくつかの態様では、テストステロンエステル付加物は、式4:
【0013】
【化4】
【0014】
を有する。いくつかの態様では、Rは、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、シクロペンチルエチル、及び/又はこれらの不飽和類似体の1つである。いくつかの態様では、Rはヘキシルである。
【0015】
いくつかの態様では、本発明は、式5~式9:
【0016】
【化5-1】
【0017】
【化5-2】
【0018】
のいずれか1つのテストステロンエステル付加物に関するものであり、式中、R及びRのそれぞれは、独立して、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及びステアリン酸から成る群より選択される脂肪酸に対応するアシル基である。
【0019】
いくつかの態様では、本発明は、式10:
【0020】
【化6】
【0021】
のテストステロンエステル付加物に関する。
いくつかの態様では、本発明は、式11:
【0022】
【化7】
【0023】
のテストステロンエステル付加物に関する。
さらに別の態様では、本発明は、上記のテストステロン付加物と組み合わせてもよい、上記のテストステロンエステル製剤に関する。このような付加物は、少なくとも、製剤安定性の目的に有用であり得る。いくつかの態様では、このような付加物は、テストステロンエステル製剤をタグ付け、同定、又は立証するのに有用であり得る。
【0024】
したがって、いくつかの態様では、本発明は、式1のテストステロンエステル、式2の1以上のトリグリセリドが含まれる医薬的に許容される担体、及び式3~式11のいずれか1つのテストステロンエステル付加物が含まれる医薬製剤に関するものであり、式中:Rは、アルキル又はアルケニル置換基であり;R、R、及びRのそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及びステアリン酸から成る群より選択される脂肪酸に対応するアシル基である。いくつかの態様では、Rは、それぞれの独立した出現時に、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、シクロペンチルエチル、及び/又はこれらの不飽和類似体から成る群より選択される。いくつかの態様では、該医薬製剤は非経口投与用である。いくつかの態様では、テストステロンエステルは、エナント酸テストステロン、シピオン酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、又はウンデカン酸テストステロンである。いくつかの態様では、テストステロンエステルはエナント酸テストステロンである。いくつかの態様では、トリグリセリドは、LLL、OLL、OOL、OOO、PLL、POL、POO、及びSOLの1つである。いくつかの態様では、医薬的に許容される担体には植物油が含まれる。いくつかの態様では、該医薬製剤には抗酸化剤がさらに含まれる。いくつかの態様では、抗酸化剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸及びその塩、ビタミンE、ナイアシンアミド、メチオニン、モノチオグリセロール、二亜硫酸ナトリウム、システイン、亜ジチオン酸ナトリウム、ゲンチジン酸、及び/又はグルタミン酸一ナトリウムの1以上である。
【0025】
そのような態様では、本発明の付加物の濃度は、0.000mg/mlと該製剤のテストステロンエステルの濃度の間であり得る。1つの態様では、本発明は、エナント酸テストステロン、ゴマ油、BHT、及び式3~式11の1以上のテストステロン付加物が含まれる医薬製剤に関する。
【0026】
いくつかの態様では、付加物は式10を有する。いくつかの態様では、付加物は式11を有する。いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は、50mg/mL~200mg/mLである。いくつかの態様では、BHTの濃度は、0.01%~0.1%、又は0.1mg/mL~1mg/mLである。いくつかの態様では、テストステロンエステル付加物の濃度は、エナント酸テストステロンの濃度より小さい。いくつかの態様では、テストステロンエステル付加物の総濃度は、エナント酸テストステロンの濃度より小さい。いくつかの態様では、該医薬製剤は非経口投与用である。
【0027】
1つの態様では、本発明は、式1のテストステロンエステル、抗酸化剤、及び式2の1以上のトリグリセリドが含まれる医薬的に許容される担体が含まれる、安定性テストステロンエステル医薬製剤に関するものであり、式中:Rは、アルキル又はアルケニル置換基であり;R、R、及びRのそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及び/又はステアリン酸のような脂肪酸に対応するアシル基であり;そして該製剤のストレス(例えば、光)安定性は、該製剤の作製後30~60日の間に、利用可能なテストステロンエステルの濃度を測定して、それを該製剤の初期テストステロンエステル濃度と比較することによって評価される。
【0028】
いくつかの態様では、該医薬製剤は非経口投与用である。
1つの態様では、本発明は、式1のテストステロンエステル、抗酸化剤、及び式2の1以上のトリグリセリドが含まれる医薬的に許容される担体が含まれる、光安定性テストステロンエステル医薬製剤に関するものであり、式中:Rは、アルキル又はアルケニル置換基であり;R、R、及びRのそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及び/又はステアリン酸のような脂肪酸に対応するアシル基であり;そして該製剤の光安定性は、該製剤の作製後30~60日の間に、利用可能なテストステロンエステルの濃度を測定して、それを該製剤の初期テストステロンエステル濃度と比較することによって、そして式3~式11のいずれか1つの1以上のテストステロンエステル付加物の該製剤中の任意の存在を検出してその濃度を測定することによって評価される。いくつかの態様では、該医薬製剤は非経口投与用である。
【0029】
1つの態様では、本発明は、式1のテストステロンエステル、抗酸化剤、及び式2のトリグリセリドが含まれる医薬的に許容される担体が含まれる、光安定性テストステロンエステル医薬製剤に関するものであり、式中:Rは、アルキル又はアルケニル置換基であり;R、R、及びRのそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及び/又はステアリン酸のような脂肪酸に対応するアシル基であり;そして該製剤の光安定性は、該医薬製剤を200ワット時/mのUV光と120万ルクス時以上の可視光暴露へ暴露し、利用可能なテストステロンエステルの濃度を測定して、それを該製剤の初期テストステロンエステル濃度と比較することによって評価される。いくつかの態様では、該医薬製剤は非経口投与用である。
【0030】
1つの態様では、本発明は、式1のテストステロンエステル、抗酸化剤、及び式2のトリグリセリドが含まれる医薬的に許容される担体が含まれる、光安定性テストステロンエステル医薬製剤に関するものであり、式中:Rは、アルキル又はアルケニル置換基であり;R、R、及びRのそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及び/又はステアリン酸のような脂肪酸に対応するアシル基であり;そして該製剤の光安定性は、該医薬製剤を200ワット時/mのUV光と120万ルクス時以上の可視光暴露へ暴露し、利用可能なテストステロンエステルの濃度を測定し、それを該製剤の初期テストステロンエステル濃度と比較して、式3~式11のいずれか1つのテストステロンエステル付加物の該製剤中の存在を検出してその濃度を測定することによって評価される。いくつかの態様では、該医薬製剤は非経口投与用である。
【0031】
1つの態様では、本発明は、光安定性テストステロンエステル医薬製剤に関するものであり、ここで、利用可能なテストステロンエステルの該製剤中の濃度は、該製剤中の初期テストステロンエステル濃度の少なくとも66.8%~75.0%である。いくつかの態様では、該医薬製剤は非経口投与用である。
【0032】
いくつかの態様では、本発明は、式3~式11のいずれか1つのテストステロンエステル付加物が含まれる光安定性テストステロンエステル医薬製剤に関するものであり、ここで、テストステロンエステル付加物の該製剤中の濃度は、利用可能なテストステロンエステルの該製剤中の濃度より小さい。いくつかの態様では、該医薬製剤は非経口投与用である。
【0033】
1つの態様では、本発明は、式1のテストステロンエステル、及び式2の1以上のトリグリセリドが含まれる医薬的に許容される担体が含まれるテストステロンエステル医薬製剤の光安定性を測定する方法に関するものであり、該方法には、該製剤中の初期テストステロンエステル濃度を測定し、次いで、ある期間後に、利用可能なテストステロンエステルの該製剤中の濃度を測定し、そしてこの2つの濃度を比較する工程が含まれ、ここで、Rは、アルキル又はアルケニル置換基であり;R、R、及びRのそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及び/又はステアリン酸のような脂肪酸に対応するアシル基である。いくつかの態様では、該方法には、該医薬製剤を200ワット時/mのUV光と120万ルクス時以上の可視光暴露へ暴露する工程がさらに含まれる。いくつかの態様では、該医薬製剤には、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸及びその塩、ビタミンE、ナイアシンアミド、メチオニン、モノチオグリセロール、二亜硫酸ナトリウム、システイン、亜ジチオン酸ナトリウム、ゲンチジン酸、及び/又はグルタミン酸一ナトリウムのような抗酸化剤がさらに含まれる。いくつかの態様では、該期間は30~60日の間である。いくつかの態様では、該方法には、式3~式11のいずれか1つのテストステロンエステル付加物の該医薬製剤中の存在を検出してその濃度を測定する工程がさらに含まれる。
【0034】
上述の概要、並びに本発明の態様についての以下の詳細な説明は、添付の図面と一緒に読めば、よりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、UV(242nm)クロマトグラムの重なり:対照試料(青)及び光ストレス試料(ピンク)を図示する。
図2図2は、粗生成物ミックスのストレス処理後のクロマトグラムを図示する。
図3図3は、精製画分1のクロマトグラムを図示する。
図4図4は、精製画分2のクロマトグラムを図示する。
図5図5は、精製画分3のクロマトグラムを図示する。
図6図6は、精製画分4のクロマトグラムを図示する。
図7図7は、画分1からの精製生成物のH NMRスペクトルを図示する。
図8図8は、画分1からの精製生成物のH NMRスペクトルを図示し;この拡大NMRスペクトルは、精製画分1の主要成分である分子のプロトンの分裂パターンを示す。
図9図9は、画分1からの精製生成物の13C NMRスペクトルを図示し;ケトンカルボニル(C=O)炭素に特徴的な205~220ppmでの13Cピークの非存在は、エナント酸テストステロンのカルボニル炭素が、例えば、-C-O-C-結合の形成によって、改変していることを示唆する。
図10図10は、画分1からの精製生成物の拡大13C NMRスペクトル(130~175ppm)を図示する。
図11図11は、画分1からの精製生成物の拡大13C NMRスペクトル(2~84ppm)を図示する。
図12図12は、画分1からの精製生成物の13C DEPT NMRスペクトルを図示する。
図13図13は、精製画分1のMRMトランジション1304>1304、1306>1306、1706>1706、及び1704>1704におけるMSスペクトルを図示する。
図14図14は、衝突エネルギー=90eVを使用する、m/z=1304のMS2スペクトルを図示する。
図15図15は、衝突エネルギー=90eVを使用する、m/z=1306のMS2スペクトルを図示する。
図16図16は、質量スペクトル(光ストレス試料、領域1、CADにおいて約9.8分でのメジャー応答)を図示する;提案実験式:C80124(質量誤差:-1.9ppm)。
図17図17は、質量スペクトル(光ストレス試料、領域1、CADにおいて約10.4分でのマイナー応答)を図示する。
図18図18は、抽出イオンクロマトグラム(XIC)(光ストレス試料、m/z 626)を図示する。
図19図19は、対照試料、領域2の質量スペクトルを図示する。
図20図20は、光ストレス試料、領域2の質量スペクトルを図示する。
図21図21は、光ストレス試料のXIC(m/z 933(青)、935(ピンク)、及び937(オレンジ))を図示する。
図22図22は、対照試料、領域3の質量スペクトルを図示する。
図23図23は、100試料、領域3の質量スペクトルを図示する。
図24図24は、光ストレス試料のXIC(m/z 901(青)、903(ピンク)、905(オレンジ)、907(緑)、及び909(水色))を図示する。
図25図25は、光ストレス試料のXIC(m/z 1302(青)、1304(ピンク)、1306(オレンジ)、1308(緑)、及び1310(水色))を図示する。
図26図26は、光ストレス試料のXIC(m/z 1702(青)、1704(ピンク)、1706(オレンジ)、及び1708(緑色))を図示する。
図27図27は、対照試料、領域4の質量スペクトルを図示する。
図28図28は、光ストレス試料、領域4の質量スペクトルを図示する。
図29図29は、光ストレス試料のXIC(m/z 1782(青)及び1758(ピンク))を図示する。
図30図30は、対照試料とICH光分解試料の例示のクロマトグラム(荷電化粒子検出-CAD;ピンク=ストレス;黒=対照)を図示する。
図31図31は、トコフェロールのクロマトグラム(UV)を図示する。
図32図32は、トコフェロールのクロマトグラム(CAD)を図示する。
図33図33は、対照試料のクロマトグラム(UV 242nm)を図示する。
図34図34は、対照試料のクロマトグラム(CAD)を図示する。
図35図35は、光暴露試料のクロマトグラム(UV 242nm)を図示する。
図36図36は、光暴露したトコフェロール含有試料のクロマトグラム(UV 242nm)を図示する。
図37図37は、重畳(superimposed)クロマトグラム(対照試料-黒、トコフェロール含有試料-青(242nm))を図示する。
図38図38は、重畳クロマトグラム(対照試料-黒、トコフェロール含有試料-緑(CAD))を図示する。
図39図39は、重畳クロマトグラム(光暴露試料-赤、対照試料-黒(UV))を図示する
図40図40は、重畳クロマトグラム(光暴露試料-黒、対照試料-茶(CAD))を図示する。
図41図41は、重畳クロマトグラム(光暴露試料-黒、試料+トコフェロール-青(UV))を図示する。
図42図42は、重畳クロマトグラム(光暴露試料-黒、試料+添加剤-緑(CAD))を図示する。
図43図43は、重畳クロマトグラム(対照試料-黒、光暴露試料-青)を図示する。
図44図44は、重畳クロマトグラム(対照試料-黒、試料+トコフェロール-緑)を図示する。
図45図45は、重畳クロマトグラム(対照試料-黒、試料+トコフェロール-緑)を図示する。
図46図46は、重畳クロマトグラム:TEピーク(対照試料-黒、試料+トコフェロール-緑、試料-青)を図示する。
【0036】
上に同定した図面は、本願に開示した態様を説明するが、考察において注目されるように、他の態様も考慮される。この開示は、代表例によって例示の態様を提示するものであって、限定するものではない。当業者は、本願に開示される態様の諸原理の範囲及び精神に該当する数多くの他の改変及び態様を考案することができる。
【発明の詳細な説明】
【0037】
本発明は、テストステロンエステル製剤、テストステロンエステル付加物、テストステロンエステル製剤と任意にテストステロンエステル付加物の複合剤、及びテストステロンエステル付加物のin-situでの製造又は形成を制御する方法に関する。
【0038】
定義
他に定義されなければ、本明細書に使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において言及されるすべての特許及び公表物は、その全体が本明細書に援用される。
【0039】
本明細書に使用されるように、「~を投与する(administer)」、「投与(administration)」、又は「~を投与すること(administering)」という用語は、(1)本開示にしたがって、医療従事者若しくはその委任代理人のいずれかによるか又は彼/彼女の指示の下に提供すること、与えること、投薬すること、及び/又は処方すること、及び/又は(2)本開示にしたがって、被験者、例えばヒトが含まれる哺乳動物によって投入すること、服用すること、又は消費することに言及する。
【0040】
本明細書に使用されるような、「同時投与」、「~を同時投与すること」、「~と組み合わせて投与される」、「~と組み合わせて投与すること」、「同時の(simultaneous)」、及び「同時の(concurrent)」という用語には、医薬有効成分及び/又はそれらの代謝産物がともに被験者において同時に存在するように、該被験者に2種以上の医薬有効成分を投与することが含まれる。同時投与には、別々の組成物での同時投与、別々の組成物での異なる時間での投与、又は2種以上の医薬有効成分が存在する組成物での投与が含まれる。いくつかの態様では、別々の組成物での同時投与と、2種の薬剤が存在する組成物での投与が好ましい。
【0041】
「有効量」又は「治療有効量」という用語は、疾患治療が含まれるがこれに限定されない、企図される適用をもたらすのに十分な、本明細書に記載されるような化合物又は化合物の組合せの量を意味する。治療有効量は、企図される適用(in vitro又はin vivo)、又は治療される被験者及び疾患状態(例えば、被験者の体重、年齢、及び性別)、その疾患状態の重症度、投与の方式等に依拠して変動し得るものであり、それは当業者によって容易に決定され得る。この用語は、標的細胞において特定の応答(例えば、血小板接着及び/又は細胞遊走の減少)を誘発する用量にも適用される。具体的な用量は、その用量を投与すべき被験者、選択された特定の化合物、遵守すべき投与計画、該化合物が他の化合物と組み合わせて投与されるかどうか、投与の時機、それが投与される組織、及び該化合物が運搬される物的送達システムに依拠して変動するものである。
【0042】
「治療効果」には、その用語が本明細書に使用されるように、治療上の利益及び/又は予防上の利益が含まれる。予防上の効果には、疾患又は病態の出現を遅らせるか又はそれを消失させること、疾患又は病態の症状の発現を遅らせるか又はそれを消失させること、疾患又は病態の進行を遅延、休止、又は逆転させること、あるいはこれらのあらゆる組合せが含まれる。
【0043】
本明細書に使用されるように、「~を治療する(treat)」、「治療(treatment)」及び/又は「~を治療すること(treating)」という用語は、疾患、障害、病理学的状態、又はそれらの症状を治癒、改善、安定化、及び/又は制御することを意図した、疾患、障害、病理学的状態、又はそれらの症状の管理に言及する場合がある。疾患、障害、又は病理学的状態の制御に関して、より具体的には、「~を制御する」には、本明細書に記載される方法に対する応答によって評価されるような、病態進行のないことが含まれる場合があり、そのような応答は、完全(例えば疾患を消失させる)であるか又は部分的(例えば、病態に関連した症状を減らすか又は改善する)であり得る。本明細書に使用されるように、「~を予防する(prevent)」、「~を予防すること(preventing)」、及び/又は「予防(prevention)」という用語は、疾患、障害、又は病理学的状態を発症させるリスクを低下させることに言及し得る。
【0044】
「医薬的に許容される塩」という用語は、当該技術分野において公知の多様な有機及び無機対イオンより誘導される塩を表す。医薬的に許容される酸付加塩は、無機酸及び有機酸とともに生成され得る。塩が誘導され得る好ましい無機酸には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、及びリン酸が含まれる。塩が誘導され得る好ましい有機酸には、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、及びサリチル酸が含まれる。医薬的に許容される塩基付加塩は、無機塩基及び有機塩基とともに生成され得る。塩が誘導され得る無機塩基には、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、及びアルミニウムが含まれる。塩が誘導され得る有機塩基には、例えば、一級、二級、及び三級アミン、天然に存在する置換アミンが含まれる置換アミン、環式アミン、及び塩基性イオン交換樹脂が含まれる。具体例には、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びエタノールアミンが含まれる。いくつかの態様では、医薬的に許容される塩基付加塩は、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩より選択される。「共結晶」という用語は、当該技術分野で公知の多くの共結晶生成体より誘導される分子錯体を表す。塩とは異なり、共結晶は、典型的には、共結晶と薬物との間の水素移動が関与せず、その代わり、水素結合、芳香環スタッキングのような分子間相互作用、又はその結晶構造中の共結晶生成体と薬物との間の分散力が関与する。
【0045】
「医薬的に許容される担体」又は「医薬的に許容される賦形剤」又は「生理学的に適合した」担体又は担体媒体(carrier medium)には、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、並びに不活性成分が含まれると企図される。当該技術分野では、そのような医薬的に許容される担体又は医薬的に許容される賦形剤の医薬有効成分への使用はよく知られている。ある慣用の医薬的に許容される担体又は医薬的に許容される賦形剤が医薬有効成分と不適合である場合を除けば、本発明の治療用組成物におけるその使用が考慮される。他の薬物のような追加の医薬有効成分も、本明細書に記載の組成物及び方法に組み込むことができる。
【0046】
「プロドラッグ」は、生体内での化学的又は代謝的プロセスによる活性化合物への変換によってその薬理作用が生じる、本明細書に記載される化合物の誘導体を表す。プロドラッグには、アミノ酸残基、又は2個以上(例えば、2個、3個、又は4個)のアミノ酸残基のポリペプチド鎖がアミド結合又はエステル結合を介してテストステロンエステルの遊離のアミノ基、ヒドロキシル基、又はカルボン酸基へ共有結合している化合物が含まれる。アミノ酸残基には、限定されないが、通常は1文字又は3文字の記号によって表記される20種の天然に存在するアミノ酸が含まれるだけでなく、例えば、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、デスモシン、イソデスモシン、3-メチルヒスチジン、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、シトルリン、ホモシステイン、ホモセリン、オルニチン、及びメチオニンスルホンも含まれる。追加タイプのプロドラッグも考慮される。例えば、遊離のカルボキシル基を、アミド又はアルキルエステル(例えば、メチルエステル、及びアセトキシメチルエステル)として誘導化することができる。本発明に利用されるようなプロドラッグエステルには、酢酸エステル、ピバル酸エステル、炭酸メチル、安息香酸エステル等を生成するための当業者に公知の手法を利用して、本発明の方法の化合物の1以上のヒドロキシルを、アルキル、アルコキシ、又はアリールで置換したアシル化剤と反応させることによって形成されるエステル類と炭酸エステル類が含まれる。さらなる例として、Advanced Drug Delivery Reviews, 1996, 19, 115 に概説されるように、限定されないが、ヘミコハク酸エステル、リン酸エステル、ジメチルアミノ酢酸エステル、及びホスホリルオキシメチルオキシカルボニルが含まれる基を使用して、遊離のヒドロキシル基を誘導化することができる。ヒドロキシル基の炭酸エステルプロドラッグ、スルホン酸エステルプロドラッグ、スルホン酸エステル、及び硫酸エステルと同様に、ヒドロキシル基とアミノ基のカルバミン酸エステルプロドラッグも含まれる。遊離のアミンも、アミド、スルホンアミド、又はホスホンアミドへ誘導化することができる。ここに述べたプロドラッグ部分のすべてが、限定されないが、エーテル、アミン、及びカルボン酸の官能性が含まれる基を取り込み得る。さらに、生体内で変換されて生理活性剤(例えば、テストステロンエステル及び/又はテストステロン)を提供することができるいずれの化合物も、本発明の範囲内のプロドラッグである。当該技術分野では、様々な形態のプロドラッグがよく知られている。(a)「実践医化学(The Practice of Medicinal Chemistry)」 Camille G. Wermuth et al.(アカデミック・プレス、1996);(b)「プロドラッグの設計(Design of prodrugs)」 H. Bundgaard 監修(エルゼビア、1985);(c)医薬品設計及び開発教程(A Textbook of Drug Design and Development)」 P. Krogsgaard-Larson と H. Bundgaard 監修(ハーウッド・アカデミック・パブリッシャーズ、1991)には、プロドラッグとプロドラッグ誘導体についての包括的な説明が記載されている。一般的には、改善された薬物吸収を得るために薬物の生体膜への浸透を改善するため、薬物の作用時間を延長するため(プロドラッグからの親薬物の持続放出、薬物の初回通過代謝の減少)、薬物作用を標的指向させるため(例えば、臓器又は腫瘍の標的化、リンパ球標的化)、薬物の水溶性を改変させるか又は改善するため(例えば、静脈内調製品及び点眼剤)、薬物の局所送達を改善するため(例えば、皮膚及び眼への薬物送達)、薬物の化学/酵素安定性を改善するため、又は標的外の薬物作用を減少させるため、そしてより一般的には、本発明において利用される化合物の治療効果を改善するために、プロドラッグを設計することができる。
【0047】
他に述べなければ、本明細書に図示される化学構造には、1以上の異性体濃縮原子の存在においてのみ異なる化合物が含まれると企図される。例えば、1個以上の水素原子が重水素又はトリチウムに置換されている化合物、又は1個以上の炭素原子が13C-濃縮炭素又は14C-濃縮炭素に置換されている化合物も、本発明の範囲内にある。
【0048】
本明細書に使用されるように、3文字のコードを使用してトリグリセリドに言及することができ、各文字が特定の脂肪酸を表す。個別の脂肪酸、置換基脂肪酸、置換された脂肪酸、又は脂肪酸ラジカルを、それらの1文字イニシャルによって言及することができる。例えば、米国薬局方協会[The United States Pharmacopeial Convention](2015)、「ゴマ油」を参照のこと。例えば、脂肪酸ラジカルは、リノール(L)、オレイン(O)、パルミチン(P)、及びステアリン(S)と表記することができ、トリグリセリドの一般的な略語は、トリリノレイン(LLL)、1,2-ジリノレオイル-3-オレオイル-rac-グリセロール(OLL)、1,2-ジリノレオイル-3-パルミトイル-rac-グリセロール(PLL)、1,2-ジオレオイル-3-リノレオイル-rac-グリセロール(OOL)、1-パルミトイル-2-オレオイル-3-リノレオイル-rac-グリセロール(POL)、トリオレイン(OOO)、1-リノレオイル-2-オレオイル-3-ステアロイル-rac-グリセロール(SOL)、1,2-ジオレオイル-3-パルミトイル-rac-グリセロール(POO)等である。必要な場合、脂肪酸の1文字コードに下線を施し、異なる実体について記載する1文字コードから脂肪酸ラジカル(下線を施した)を識別することができる。例えば、オレイン酸の「」を酸素の「O」と識別することができる。
【0049】
本明細書において、例えば、分子量又は化学式のような物理的又は化学的特性について記載するために範囲が使用される場合、範囲とその中の具体的な態様のあらゆる組合せ及び副組合せが含まれることが企図される。ある数値又は数値範囲に言及する場合の「約」という用語の使用は、その言及される数値又は数値範囲が実験的変動性の範囲内(又は統計学的実験誤差の範囲内)にある概数であるため、その数値又は数値範囲が変動し得ることを意味する。この変動性は、典型的には、記載の数値又は数値範囲の0%~15%、0%~10%、0%~5%等である。
【0050】
本明細書に使用されるように、「約」という用語は、量、寸法、処方、パラメータ、形状、並びに他の量及び特徴が正確ではなく、正確である必要もないが、所望されるように、概数であるか、及び/又はより大きいか又はより小さい場合があることを意味し、許容誤差、変換係数、四捨五入、測定誤差等、及び当業者に公知の他の要因を反映している。一般に、量、寸法、処方、パラメータ、形状、又は他の量若しくは特徴は、そのように明確に記載されるかどうかにかかわらず、「約」又は「概数」である。
【0051】
「~を含んでなる(comprising)」、「本質的に~から成る(consisting essentially of)」、及び「~から成る(consisting of)」という移行句(transitional terms)は、添付の特許請求の範囲の原形及び補正形において使用される場合、記載されない追加の特許請求要素又は工程がある場合は何がその請求項の範囲から排除されるかに関して、請求項の範囲を定義するものである。「~を含んでなる」という用語は、包含的又は非限定的(open-ended)であることを企図しており、追加の非記載の要素、方法、工程、又は材料を排除しない。「~から成る」という用語は、請求項において特定されるもの以外のあらゆる要素、工程、又は材料(この場合は、特定の材料に通常付随する不純物)を排除する。「本質的に~から成る」という用語は、請求項の範囲を、特定の要素、工程、又は材料、及び請求項に係る発明の基本的で新規な特徴に実質的には影響しないものに限定する。本発明を具現化する、本明細書に記載されるすべての化合物、組成物、製剤、及び方法は、代替態様では、「~を含んでなる」、「本質的に~から成る」、及び「~から成る」という移行句のいずれかによってより具体的に定義することができる。「~を含んでなる」という用語(及び、「~を含む(comprise)」、又は「~を有している(having)」、又は「~が含まれる(including)」のような関連用語)には、例えば、記載の特徴「から成る」か又は「から本質的に成る」あらゆる物質組成、方法、又はプロセスの態様のような態様が含まれる。
【0052】
「アルキル」は、炭素原子と水素原子だけから成り、不飽和性を含有しない、1~10個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖基(例えば、(C1-10)アルキル又はC1-10アルキル)を表す。それが本明細書に現れるときはいつでも、「1~10」のような数値範囲は所与の範囲中の各整数を表し、例えば、「1~10個の炭素原子」は、そのアルキル基が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子等から、最大10個の炭素原子から成り得ることを意味するが、この定義には、数値範囲が具体的に表記されない「アルキル」という用語の出現も含まれると企図される。典型的なアルキル基には、決して限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、イソブチル、ter-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、セプチル、オクチル、ノニル、及びデシルが含まれる。アルキル部分は、例えば、メチル(Me)、エチル(Et)、n-プロピル(Pr)、1-メチルエチル(イソプロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)、及び3-メチルヘキシルのように、分子の残りへ単結合によって結合する場合がある。本明細書において他に具体的に述べなければ、アルキル基は、独立して、ヘテロアルキル、アシルスルホンアミド、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキサメート、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、トリメチルシラニル、-OR、-SR、-S(O)-(ここで、tは1又は2である)、-OC(O)-R、-N(R、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)N(R、-C(O)N(R、-N(R)C(O)OR、-N(R)C(O)R、-N(R)C(O)N(R、N(R)C(NR)N(R、-N(R)S(O)(ここで、tは1又は2である)、-S(O)OR(ここで、tは1又は2である)、-S(O)N(R(ここで、tは1又は2である)、又はPO(R(ここで、それぞれのRは、独立して、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルである)である置換基の1以上によって置換されてもよい。アルキル部分は、飽和又は不飽和のいずれでも、分岐鎖、直鎖、又は環状であり得る。
【0053】
「アルケン」又は「アルケニル」部分は、少なくとも2個の炭素原子と少なくとも1つの炭素-炭素2重結合から成る基を表し、「アルキン」部分は、少なくとも2個の炭素原子と少なくとも1つの炭素-炭素3重結合から成る基を表す。
【0054】
「アルケニル」は、炭素原子と水素原子だけから成り、少なくとも1つの2重結合を含有し、2~10個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖ラジカル(即ち、(C2-10)アルケニル又はC2-10アルケニル)を表す。それが本明細書に現れるときはいつでも、「2~10」のような数値範囲が所与の範囲中の各整数を表し、例えば、「2~10個の炭素原子」は、そのアルケニル基が、2個の炭素原子、3個の炭素原子等から、最大10個の炭素原子から成り得ることを意味する。アルケニル部分は、例えば、エテニル(即ち、ビニル)、プロプ-1-エニル(即ち、アリル)、ブト-1-エニル、ペント-1-エニル、及びペンタ-1,4-ジエニルのように、分子の残りへ単結合によって結合する場合がある。本明細書において他に具体的に述べなければ、アルケニル基は、独立して、アルキル、ヘテロアルキル、アシルスルホンアミド、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキサメート、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、トリメチルシラニル、-OR、-SR、-S(O)-(ここで、tは1又は2である)、-OC(O)-R、-N(R、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)N(R、-C(O)N(R、-N(R)C(O)OR、-N(R)C(O)R、-N(R)C(O)N(R、N(R)C(NR)N(R、-N(R)S(O)(ここで、tは1又は2である)、-S(O)OR(ここで、tは1又は2である)、-S(O)N(R(ここで、tは1又は2である)、又はPO(R(ここで、それぞれのRは、独立して、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルである)である置換基の1以上によって置換されてもよい。
【0055】
「アルケニル-シクロアルキル」は、-(アルケニル)シクロアルキルラジカルを表し、ここで、アルケニル及びシクロアルキルは、本明細書に開示される通りであり、アルケニル及びシクロアルキルにそれぞれ適した置換基として記載された置換基の1以上によって置換されてもよい。
【0056】
「シクロアルキル」は、炭素と水素のみを含有する、単環式又は多環式のラジカルを表し、飽和でも一部不飽和でもよい。シクロアルキル基には、3~10個の環原子を有する基(即ち、(C3-10)シクロアルキル又はC3-10シクロアルキル)が含まれる。それが本明細書に現れるときはいつでも、「3~10」のような数値範囲は所与の範囲中の各整数を表し、例えば、「3~10個の炭素原子」は、そのシクロアルキル基が、3個の炭素原子等から、最大10個の炭素原子から成り得ることを意味する。シクロアルキル基の実例には、限定されないが、以下の部分が含まれる:シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ノルボルニル等。本明細書において他に具体的に述べなければ、シクロアルキル基は、独立して、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アシルスルホンアミド、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキサメート、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、トリメチルシラニル、-OR、-SR、-S(O)-(ここで、tは1又は2である)、-S(O)-(ここで、tは1又は2である)、-OC(O)-R、-N(R、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)N(R、-C(O)N(R、-N(R)C(O)OR、-N(R)C(O)R、-N(R)C(O)N(R、N(R)C(NR)N(R、-N(R)S(O)(ここで、tは1又は2である)、-S(O)OR(ここで、tは1又は2である)、-S(O)N(R(ここで、tは1又は2である)、又はPO(R(ここで、それぞれのRは、独立して、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルである)である置換基の1以上によって置換されてもよい。
【0057】
「シクロアルキル-アルケニル」は、-(シクロアルキル)アルケニルラジカルを表し、ここで、シクロアルキル及びアルケニルは、本明細書に開示される通りであり、シクロアルキル及びアルケニルにそれぞれ適した置換基として記載された置換基の1以上によって置換されてもよい。
【0058】
「アシル」は、(アルキル)-C(O)-、(アリール)-C(O)-、(ヘテロアリール)-C(O)-、(ヘテロアルキル)-C(O)-、及び(ヘテロシクロアルキル)-C(O)-基を表し、ここで、該基は、カルボニル官能基を介して親構造へ結合している。Rラジカルがヘテロアリール又はヘテロシクロアルキルであれば、このヘテロ環又は鎖の原子は、鎖又は環の原子の総数に寄与する。本明細書において他に具体的に述べなければ、アシル基のアルキル、アリール、又はヘテロアリール部分は、独立して、アルキル、ヘテロアルキル、アシルスルホンアミド、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキサメート、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、トリメチルシラニル、-OR、-SR、-S(O)-(ここで、tは1又は2である)、-OC(O)-R、-N(R、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)N(R、-C(O)N(R、-N(R)C(O)OR、-N(R)C(O)R、-N(R)C(O)N(R、N(R)C(NR)N(R、-N(R)S(O)(ここで、tは1又は2である)、-S(O)OR(ここで、tは1又は2である)、-S(O)N(R(ここで、tは1又は2である)、又はPO(R(ここで、それぞれのRは、独立して、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルである)である置換基の1以上によって置換されてもよい。
【0059】
「エステル」は、式:-COORの化学基を表し、ここで、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を介して結合する)、及びヘテロ脂環式(環炭素を介して結合する)から成る群より選択される。当業者には、エステルを作製するための手順及び特定基は公知であり、その全体が本明細書に援用される、Greene and Wuts,「有機合成の保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ、ニューヨーク州ニューヨーク(1999)のような影響力の大きい情報源に容易に見出すことができる。本明細書において他に具体的に述べなければ、エステル基は、独立して、アルキル、アシルスルホンアミド、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキサメート、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、トリメチルシラニル、-OR、-SR、-S(O)-(ここで、tは1又は2である)、-OC(O)-R、-N(R、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)N(R、-C(O)N(R、-N(R)C(O)OR、-N(R)C(O)R、-N(R)C(O)N(R、N(R)C(NR)N(R、-N(R)S(O)(ここで、tは1又は2である)、-S(O)OR(ここで、tは1又は2である)、-S(O)N(R(ここで、tは1又は2である)、又はPO(R(ここで、それぞれのRは、独立して、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルである)である置換基の1以上によって置換されてもよい。
【0060】
「フルオロアルキル」は、上に定義されるような1以上のフルオロラジカルによって置換される、上に定義されるようなアルキルラジカル、例えば、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1-フルオロメチル-2-フルオロエチル等を表す。フルオロアルキルラジカルのアルキル部分は、アルキル基について上に定義されるように置換されてもよい。
【0061】
「異性体」は、同じ分子式を有する異なる化合物である。「立体異性体」は、原子の空間における配置のされ方のみが異なる、即ち異なる立体化学的配置を有する異性体である。「エナンチオマー」は、互いに重ね合わせることができない鏡像である、1対の立体異性体である。1対のエナンチオマーの1:1混合物は、「ラセミ」混合物である。「(±)」という用語は、ラセミ混合物を適宜表記するために使用される。「ジアステレオ異性体」は、少なくとも2個の不斉原子を有するが、互いに鏡像ではない立体異性体である。絶対立体化学は、カーン・インゴルド・プレローグ(Cahn-Ingold-Prelog)のR-Sシステムにしたがって特定される。ある化合物が純粋なエナンチオマーである場合、各キラル炭素での立体化学は、(R)又は(S)のいずれかによって特定することができる。その絶対配置が未知である分割化合物は、ナトリウムD線の波長で平面偏光を回転させる方向(右旋性又は左旋性)に依拠して(+)又は(-)と表記することができる。本明細書に記載される化合物のあるものは1個以上の不斉中心を含有するので、エナンチオマー、ジアステレオマー、及び他の立体異性形態を生じる可能性があり、これらは、(R)又は(S)のような絶対立体化学の用語で定義することができる。本発明の化学成分、医薬組成物、及び方法には、ラセミ混合物、光学的に純粋な形態、及び中間混合物が含まれる、そのようなすべての可能な異性体が含まれると意図される。光学活性のある(R)及び(S)-異性体は、キラルシントン又はキラル試薬を使用して製造し得るか又は慣用の技術を使用して分割し得る。本明細書に記載される化合物がオレフィン2重結合又は他の幾何学的非対称中心を含有して、他に特定されない場合、この化合物には、E-幾何異性体とZ-幾何異性体がともに含まれると企図される。
【0062】
「部分」は、分子の特定セグメント又は官能基を表す。化学部分は、分子に埋もれているか又はそれに付帯している化学成分としてしばしば認識される。
「互変異性体」は、互変異性化によって相互変換する、構造的に異なる異性体である。「互変異性化」は、異性化の1形態であって、プロトトロピック(prototropic)又はプロトンシフトの互変異性化が含まれ、これは、酸-塩基化学の一部とみなされている。「プロトトロピック互変異性化」又は「プロトンシフト互変異性化」には、結合次数の変化、しばしば単結合と隣接2重結合の相互変換が伴うプロトンの移動が含まれる。互変異性化が可能である(例えば溶液中で)場合、互変異性体の化学平衡に到達することが可能である。互変異性化の例は、ケト-エノール互変異性化である。ケト-エノール互変異性化の具体例は、ペンタン-2,4-ジオンと4-ヒドロキシペント-3-エン-2-オンの互変異性体の相互変換である。別の互変異性化の例は、フェノール-ケト互変異性化である。フェノール-ケト互変異性化の具体例は、ピリジン-4-オールとピリジン-4(1H)-オンの互変異性体の相互変換である。
【0063】
「置換された(substituted)」は、言及される基が、例えば、アシル、アルキル、アルキルアリール、シクロアルキル、アラルキル、アリール、炭水化物、炭酸エステル(carbonate)、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキサメート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロ、カルボニル、エステル、チオカルボニル、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、オキソ、ペルハロアルキル、ペルフルオロアルキル、リン酸エステル(phosphate)、シリル、スルフィリル、スルホニル、スルホンアミジル、スルホキシル、スルホネート、尿素、一置換及び二置換アミノ基を含めたアミノ、並びにこれらの保護化誘導体より個別にそして独立して選択される1以上の追加の基、ラジカル、又は部分を結合させることを意味する。置換基自体も置換される場合があり、例えば、シクロアルキル置換基は、それ自体、その環炭素の1以上にハロゲン化物の置換基を有する場合がある。「置換されてもよい(optionally substituted)」という用語は、特定の基、ラジカル、又は部分による任意の置換を意味する。
【0064】
詳細な説明
製剤
1つの態様では、本発明は、式1:
【0065】
【化8】
【0066】
のテストステロンエステル、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物、共結晶、又はプロドラッグ、抗酸化剤、及び式2:
【0067】
【化9】
【0068】
の1以上のトリグリセリドが含まれる医薬的に許容される担体が含まれる医薬製剤に関するものであり、式中:Rは、アルキル又はアルケニル置換基であり;R、R、及びRのそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及びステアリン酸のような脂肪酸に対応するアシル基である。いくつかの態様では、Rは、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、シクロペンチルエチル、又はこれらの不飽和類似体である。いくつかの態様では、テストステロンエステルは、エナント酸テストステロン、シピオン酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、又はウンデカン酸テストステロンである。いくつかの態様では、テストステロンエステルはエナント酸テストステロンである。
【0069】
【化10】
【0070】
本製剤では、他の薬物、特にα,β-不飽和ケトン部分のある薬物、例えば、コルチゾン又はヒドロコルチゾンも使用し得る。いくつかの態様では、他の様々な有効成分を本製剤に含めることができる:例えば、ベンゼストロール、ブロパレストロール、クロロトリアニセン、ジエンストロール、ジエチルスチルべストロール、ジプロピオン酸ジエチルスチルべストロール、ジメストロール、ホスフェストロール、ヘキソエストロール、メタレンストリル、及びメテストロールのような非ステロイド性エストロゲン類;及びコルポルモン、結合型エストロゲンホルモン、エキレニン、エキリン、エストラジオール、17-β-エストラジオール、エストリオール、エストロン、エチニルエストラジオール、安息香酸エストラジオール、17-β-シピオン酸エストラジオール、リン酸ポリエストラジオール、メストラノール、モクセストロール、ミタトリエンジオール、キネストラジオール、キネストロールのようなステロイド性エストロゲン類;アリルエストレノール、アナゲストン、酢酸クロマルジノン、酢酸デルマジノン、デメゲストン、デソゲストレル、ジメチステロン、ドロスピレノン、ジドロゲステロン、エチニルエストレノール、エチステロン、エチノジオール、二酢酸エチノジオール、酢酸フルオロゲストン、ゲストデン、カプロン酸ゲストノロン、ハロプロゲステロン、17-ヒドロキシ-16-メチレン-δ-プロゲステロン、17-α-ヒドロキシプロゲステロン、カプロン酸17-α-ヒドロキシゲステロン、リネストレノール、メドロゲストン、メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、メレンゲストロール、ノルエチンドロン、酢酸ノルエチンドロン、ノルエチノドレル、ノルゲステロン、ノルゲスチメート、ノルゲストレル、ノルゲストリエノン、19-ノルプロゲステロン、ノルビニステロン、ペンタゲストロン、プロゲステロン、天然プロゲステロン、プロメゲストン、キンゲストロン、トレンゲストンのようなプロゲストゲン類;ボルデノン、クロキソテストステロン、フルオキシメステロン、メスタノロン、メステロノロン、17-メチルテストステロン、17-β-シピオン酸テストステロン、エナント酸テストステロン、ニコチン酸テストステロン、フェニル酢酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、17-α-メチルテストステロン3-シクロペンチルエノールエーテル、ノルエタンドロロン、ノルメタンドロン、オキサンドロロン、オキシメステロン、オキシメトロン、プラステロン、スタノロン、スタノロゾール、テストステロン、及び/又はチオメステロンのようなアンドロゲン類。活性薬剤は、抗ホルモンでもよい。例えば、この医薬活性剤には、限定されないが、エストロゲン、アンドロゲン、又はプロゲストゲン、タモキシフェン、4-OHタモキシフェンのような抗エストロゲン、抗プロゲストゲン、及び抗アンドロゲンが含まれ得る。概して、本発明の製剤には、非経口投与に適したどの薬物も使用することができる。
【0071】
本発明の製剤には、非経口投与に適した、トリグリセリド、ジグリセリド、及び/又はモノグリセリドを含めたどのグリセリドも使用することができる。いくつかの態様では、トリグリセリドは、LLL、OLL、OOL、OOO、PLL、POL、POO、又はSOLの1つである。1つの態様では、トリグリセリドには、SSL、SLS、LLS、LSL、MML、MLM、MML、LLM、SSM、SMS、MMM、SSS、及びLLLも含まれ得る。長鎖、中鎖、短鎖、及び混合長鎖のトリグリセリドを使用することができる。トリグリセリドには、公知脂肪酸の残基、又は他のより短鎖の飽和又は不飽和酸の残基を含めたトリグリセリドも含まれる。脂肪酸には、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエラジン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、及び/又はセロチン酸が含まれる。脂肪酸は、本明細書に記載される製剤中に、トリグリセリド、ジグリセリド、又はモノグリセリドの残基部分として主に存在するが、独立した脂肪酸も、本製剤の一部であり得る。本明細書に記載されるすべてのトリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、及び/又は脂肪酸が、テストステロンエステル、例えば、エナント酸テストステロンとともに本明細書に記載の付加物を形成することができる。
【0072】
いくつかの態様では、医薬的に許容される担体には、植物油が含まれる。いくつかの態様では、植物油はゴマ油である。植物油又は非植物油を含めた他の油剤、例えば、ヒマシ油、綿実油、大豆油、及び/又はヒマワリ油も使用することができる。概して、本発明の製剤には、非経口投与に適したどの油剤も使用することができる。
【0073】
本発明の製剤には、非経口投与に適したどの抗酸化剤も使用することができる。いくつかの態様では、抗酸化剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸及びその塩、ビタミンE、ナイアシンアミド、メチオニン、モノチオグリセロール、二亜硫酸ナトリウム、システイン、亜ジチオン酸ナトリウム、ゲンチジン酸、及び/又はグルタミン酸一ナトリウムの1以上である。
【0074】
1つの態様では、本発明は、エナント酸テストステロン、ゴマ油、及びBHTが含まれる医薬製剤に関する。1つの態様では、本発明は、エナント酸テストステロン、ゴマ油、及びトコフェロールが含まれる医薬製剤に関する。
【0075】
製剤中に包含されてもよい付加物
別の態様では、本発明は、式3:
【0076】
【化11】
【0077】
のテストステロンエステル付加物に関するものであり、式中:Rは、それぞれの独立した出現時に同じでも異なってもよいアルキル又はアルケニル置換基であり;Rは、不飽和脂肪酸に対応するアシル基であり;Gは、グリセロール、モノグリセリド、又はジグリセリド残基であり;nは、1、2、又は3であり;そして、テストステロン残基は、Rのアリル炭素又は2重アリル炭素へ連結する。
【0078】
このような付加物は、本明細書に記載されるもののような付加物を単独で作製及び製剤化した後で分離しても、他の構成成分と組み合わせて製剤化してもよい。
式3の付加物は、意図的に作製し得るか、又はα,β-不飽和ケトン部分と不飽和アシル残基を有するグリセリド、例えば、モノ、ジ、又はトリグリセリドが含まれる、本明細書に記載の医薬製剤において、様々な条件の下で予想外又は予測外に生成する場合がある。いくつかの態様では、本発明は、式3の単離テストステロンエステル付加物、又は本明細書に記載のいずれかの式の単離テストステロンエステル付加物に関する。
【0079】
いくつかの態様では、本明細書に記載の付加物の形成をもたらす条件は、ストレッサー条件と称され、限定されないが、光への暴露、及び/又は酸化雰囲気への暴露、例えば、酸素への暴露、及び/又は当該技術分野で公知のストレッサー条件への暴露が含まれる。エナント酸テストステロン(TE)のようなテストステロンエステルは、α、β-不飽和ケトン部分が含まれる薬物の例であって、ゴマ油は、不飽和アシル部分、例えば、2重結合及び/又はリノレオイル側鎖のようなホモ共役2重結合を含有するトリグリセリドが含まれる油剤の例である。特定の理論に束縛されることを望まずに言えば、本明細書に記載の付加物は、α,β-不飽和ケトン化合物、例えばテストステロン誘導体の、炭化水素鎖、例えば、脂肪酸に含まれる炭化水素鎖への付加の結果として作製され得るか又は出現し得て、付加は2重結合に隣接して出現する。
【0080】
いくつかの態様では、本明細書に記載される付加物は、自動酸化の結果として作製され得るか又は出現し得る。特定の理論に束縛されることを望まずに言えば、不飽和アシル部分と側鎖は、酸素、光、又は光及び酸素の存在下で自動酸化を受けやすい。これら側鎖の自動酸化により、過酸化水素基、例えばリノレオイル過酸化水素物が、フリーラジカル、例えばリノレオイルフリーラジカルとペルオキシラジカル、例えばリノレオイルペルオキシラジカルとともに生成する(スキーム5)。リノレオイルフリーラジカル及びリノレオイルペルオキシラジカルは反応性に富むため、自動酸化は、自己触媒的な連鎖反応となる。
【0081】
TGの混合物の酸化の程度は、過酸化物価(PV)と呼ばれるUSP試験によって測定することができる。過酸化物価は、1kgの油脂あたりの過酸化酸素の量(ミリ当量のO/kgの油脂)として定義される。一般的に言えば、TGの混合物のPVは、薬物を含有するかしないかにかかわらず、経時的に増加し、混合物中のTGが経時的に酸化されることを示す。特定の理論に束縛されることを望まずに言えば、TGがα,β-不飽和ケトン部分の存在下に酸化される場合、そのケトン部分は、ペルオキシ部分に結合した炭素原子と反応して、本明細書に記載の様々な付加物をもたらす可能性がある。
【0082】
いくつかの態様では、テストステロンエステル付加物は式4を有する。いくつかの態様では、Rは、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、シクロペンチルエチル、及び/又はこれらの不飽和類似体の1つである。いくつかの態様では、Rはヘキシルである。
【0083】
【化12】
【0084】
いくつかの態様では、本発明は、式5~式9:
【0085】
【化13-1】
【0086】
【化13-2】
【0087】
のいずれか1つのテストステロンエステル付加物に関するものであり、式中、R及びRのそれぞれは、独立して、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及びステアリン酸から成る群より選択される脂肪酸に対応するアシル基である。
【0088】
いくつかの態様では、本発明は、式10:
【0089】
【化14】
【0090】
のテストステロンエステル付加物に関する。
いくつかの態様では、本発明は、式11:
【0091】
【化15】
【0092】
のテストステロンエステル付加物に関する。
本明細書に記載の付加物は、他の様々な式を有する可能性がある。特定の理論に束縛されることを望まずに言えば、脂肪酸鎖の2重結合の幾何学は、付加物形成プロセス後も概して保存されるが、いくつかの態様では、その幾何学は変化する可能性がある。また、特定の理論に束縛されることを望まずに言えば、付加は、アリル及び2重アリルの位置で概して生じるが、付加は他の位置、例えばホモアリルの位置でも生じる可能性がある。したがって、以下の式12~式16:
【0093】
【化16-1】
【0094】
【化16-2】
【0095】
の付加物が形成される可能性があり、式中:Gは、グリセロール、モノグリセリド、又はジグリセリド残基であり;nは、1、2、又は3である。
以下の式17~式22:
【0096】
【化17-1】
【0097】
【化17-2】
【0098】
の位置異性体の付加物も形成される可能性があり、式中:、及びは、それぞれの脂肪酸アシル基に対応し;テストステロン残基は、脂肪酸側鎖に沿った可能な位置で連結する。
【0099】
いくつかの態様では、本明細書に記載のテストステロンエステルトリグリセリド付加物は、製剤中のある割合の初期テストステロンエステルが、本明細書に記載の様々な条件の下である期間にわたってその付加物へ変換される場合に、作製又は形成される可能性がある。
【0100】
いくつかの態様では、テストステロンエステルのトリグリセリドとの付加物へ変換される、製剤中の初期テストステロンエステル、例えばエナント酸テストステロンの割合は、約0.001%未満、約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.009%、約0.01%、約0.015%、約0.02%、約0.025%、約0.03%、約0.035%、約0.04%、約0.045%、約0.05%、約0.055%、約0.06%、約0.065%、約0.07%、約0.075%、約0.08%、約0.085%、約0.09%、約0.095%、約0.1%、約0.15%、約0.2%、約0.25%、約0.3%、約0.35%、約0.4%、約0.45%、約0.5%、約0.55%、約0.6%、約0.65%、約0.7%、約0.75%、約0.8%、約0.85%、約0.9%、約0.95%、約1%であるか、又は約1%より多い。
【0101】
いくつかの態様では、テストステロンエステルのトリグリセリドとの付加物へ変換される、製剤中の初期テストステロンエステル、例えばエナント酸テストステロンの割合は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、又は約50%である。
【0102】
いくつかの態様では、約1時間後、約2時間後、約3時間後、約4時間後、約5時間後、約6時間後、約7時間後、約8時間後、約9時間後、約10時間後、約11時間後、約12時間後、約13時間後、約14時間後、約15時間後、約16時間後、約17時間後、約18時間後、約19時間後、約20時間後、約21時間後、約22時間後、約23時間後、約24時間後、約1日後、約2日後、約3日後、約4日後、約5日後、約6日後、約7日後、約8日後、約9日後、約10日後、約15日後、約20日後、約25日後、約30日後、約35日後、約40日後、約45日後、約50日後、約55日後、約60日後、約90日後、約120日後、約180日後、約1週間後、約2週間後、約3週間後、約4週間後、約5週間後、約6週間後、約7週間後、約8週間後、約9週間後、約10週間後、約1ヶ月後、約2ヶ月後、約3ヶ月後、約4ヶ月後、約5ヶ月後、約6ヶ月後、約7ヶ月後、約8ヶ月後、約9ヶ月後、約10ヶ月後、約11ヶ月後、約12ヶ月後、約18ヶ月後、約36ヶ月後、約1年後、約2年後、約3年後、約4年後、約5年後、又は約6年後に、ある割合の初期テストステロンエステル、例えばエナント酸テストステロンは、テストステロンエステルのトリグリセリドとの付加物へ変換される。
【0103】
いくつかの態様では、ある割合の初期テストステロンエステル、例えばエナント酸テストステロンは、通常の保存条件の間、例えば充填済シリンジ(PFS)又はバイアル中での保存の間に、テストステロンエステルのトリグリセリドとの付加物へ変換される。いくつかの態様では、PFSは、環境光へ暴露され得るか、又は、例えばあらゆるタイプの段ボール箱のような不透明容器において遮光され得る。いくつかの態様では、ある割合の初期テストステロンエステル、例えばエナント酸テストステロンは、増光条件、例えば、200ワット時/mと120万ルクス時以上の可視光暴露の下で、エナント酸テストステロンのトリグリセリドとの付加物へ変換される。いくつかの態様では、医薬製剤を環境光、又は環境光への暴露に等しいUV光及び/又は可視光の量へ、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約15日間、約20日間、約25日間、約30日間、約35日間、約40日間、約45日間、約50日間、約55日間、約60日間、約90日間、約120日間、約180日間、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約1ヵ月間、約2ヶ月間、約3ヶ月間、約4ヶ月間、約5ヶ月間、約6ヶ月間、約7ヶ月間、約8ヶ月間、約9ヶ月間、約10ヶ月間、約11ヶ月間、約12ヶ月間、約18ヶ月間、約36ヶ月間、約1年間、約2年間、約3年間、約4年間、約5年間、約6年間、又は他の期間の間暴露した後で、該医薬製剤中のある割合の初期テストステロンエステル、例えばエナント酸テストステロンは、テストステロンエステルのトリグリセリドとの付加物へ変換される。
【0104】
付加物のin-situでの形成を制御又は阻害すること
本明細書に記載のテストステロンエステルトリグリセリド付加物の創出又は形成は、該製剤へ抗酸化剤を添加することによって、制御され得るか又はその形成をin-situで阻害することができる。
【0105】
したがって、ある態様では、概して、本発明は、エナント酸テストステロンの注射用医薬製剤のようなテストステロンエステル製剤への、抗酸化剤(ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)のような)の添加と、それによって本発明の付加物のin-situでの製造又は創出を制御することに関する。
【0106】
このような制御は、薬物製剤の光安定性を改善することができる。特別な理論に制限されずに言えば、付加物のin-situでの形成を制御する本発明が奏効するのは、一部は、製剤品の経年劣化(aging)及び/又は光への暴露の間に、過酸化脂質の形成が阻害されるからである。過酸化物形成、例えば過酸化脂質形成の阻害は、製剤品がその最終形態になる前の諸成分へも適用される。本発明は、光ストレス下で形成される重要な生成物を同定すること、及び様々な経年劣化条件下でのテストステロンエステル製剤中のテストステロンエステル濃度の低下について少なくとも部分的に説明する生成物にも関する。
【0107】
理論によって束縛されることを望まずに言えば、BHTは、本発明の付加物の製造又は創出の間、フリーラジカルスカベンジャーとして作用する。それは、スキーム6に示されるように、BHTラジカルを産生しながら、水素原子を供与してペルオキシラジカルを過酸化水素物へ変換し、そしてTGラジカルをTGへ変換することによって、TGの自動酸化を停止させる。BHTラジカルは、一度形成されると、その大きなtert-ブチル基によりきわめて大きな立体障害が創出され、非対合電子を有する酸素原子が反応を可能にするために必要な他の分子との接触をなし得ないため、それ以上反応することができない。BHTラジカルの形成は、ラジカル連鎖反応、例えばトリグリセリドの自動酸化、より具体的には、不飽和トリグリセリド側鎖の自動酸化を停止させるのである。
【0108】
トリグリセリド含有油の酸化は、0.06~0.07%の抗酸化剤(例えばBHT)の存在下で有効にも制御又は阻害することができる。いくつかの態様では、TG酸化を約0.01%~約0.1%のBHT、又は他の好適な抗酸化剤、例えばトコフェロールの存在下で阻害することができる。他の態様では、約0.05%~約0.5%のBHT、又は他の好適な抗酸化剤の存在下でTG酸化を阻害することができる。本明細書に記載されるように、トリグリセリドの混合物の過酸化物価(PV)レベルは、該混合物へ抗酸化剤を添加することによって、時間が経っても、抗酸化剤無しのPVレベルおよそ70~80と比較して低いレベル、例えば<12で維持することができる。製剤中のPVレベルは、製剤の作製後様々な期間の後に、例えば、約1ヶ月後、約2ヶ月後、約3ヶ月後、約4ヶ月後、約5ヶ月後、約6ヶ月後、約7ヶ月後、約8ヶ月後、約9ヶ月後、約10ヶ月後、約11ヶ月後、約12ヶ月後、約18ヶ月後、又は約36ヶ月後に決定することができる。
【0109】
利用可能なテストステロンエステルの濃度についての代替的な測定法は、抗酸化剤の非存在下及び存在下で分解を測定することであり、抗酸化剤の添加は、分解レベルの低下をもたらす。いくつかの態様では、特定の製剤へ抗酸化剤を添加することによって、ある一定期間にわたる付加物の形成が、抗酸化剤を添加しない製剤中で同様の期間に出現する形成と比較して、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%低下する。
【0110】
いくつかの態様では、本発明は、式1のテストステロンエステル、式2の1以上のトリグリセリドが含まれる医薬的に許容される担体、及び式3~式22のいずれか1つのテストステロンエステル付加物が含まれる医薬製剤に関するものであり、式中:Rは、アルキル又はアルケニル置換基であり;R、R、及びRのそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及びステアリン酸から成る群より選択される脂肪酸に対応するアシル基である。いくつかの態様では、Rは、それぞれの独立した出現時に、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、シクロペンチルエチル、及び/又はこれらの不飽和類似体から成る群より選択される。いくつかの態様では、テストステロンエステルは、エナント酸テストステロン、シピオン酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、又はウンデカン酸テストステロンである。いくつかの態様では、テストステロンエステルはエナント酸テストステロンである。いくつかの態様では、トリグリセリドは、LLL、OLL、OOL、OOO、PLL、POL、POO、及びSOLの1つである。いくつかの態様では、医薬的に許容される担体には植物油が含まれる。いくつかの態様では、医薬製剤には抗酸化剤がさらに含まれる。いくつかの態様では、抗酸化剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸及びその塩、ビタミンE、ナイアシンアミド、メチオニン、モノチオグリセロール、二亜硫酸ナトリウム、システイン、亜ジチオン酸ナトリウム、ゲンチジン酸、及び/又はグルタミン酸一ナトリウムの1以上である。
【0111】
式3~式22のいずれか1つのテストステロンエステル付加物は、典型的には、予測不能であるか又は制御されたin-situでの創出の結果として、又はそのような付加物を製剤中に意図的に導入することの結果として、本明細書に記載の製剤のいずれかに場合によっては存在し得る。この付加物の製剤中の濃度はどんな濃度でもあり得るが、それは、概して、経過時間中のどの所与の瞬間でも、対応するテストステロンエステルの製剤中の濃度未満であろう。
【0112】
安定した製剤
1つの態様では、本発明は、式1のテストステロンエステル、抗酸化剤、及び式2の1以上のトリグリセリドが含まれる医薬的に許容される担体が含まれる光安定性テストステロンエステル医薬製剤に関するものであり、式中:Rは、アルキル又はアルケニル置換基であり;R、R、及びRのそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及び/又はステアリン酸のような脂肪酸に対応するアシル基であり;そして該製剤の光安定性は、該製剤の作製後30~60日の間に、利用可能なテストステロンエステルの濃度を測定して、それを該製剤の初期テストステロンエステル濃度と比較することによって評価される。
【0113】
1つの態様では、本発明は、式1のテストステロンエステル、抗酸化剤、及び式2の1以上のトリグリセリドが含まれる医薬的に許容される担体、及び場合によっては本発明の付加物が含まれる、光安定性テストステロンエステル医薬製剤に関するものであり、式中:Rは、アルキル又はアルケニル置換基であり;R、R、及びRのそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及び/又はステアリン酸のような脂肪酸に対応するアシル基である。
【0114】
該製剤の光安定性は、該製剤の作製後30~60日の間に、利用可能なテストステロンエステルの濃度を測定して、それを該製剤の初期テストステロンエステル濃度と比較することによって、及び式3~式22のいずれか1つの1以上のテストステロンエステル付加物の該製剤中の存在を検出してその濃度を測定することによって評価される。
【0115】
本明細書に記載のあらゆる製剤の光安定性は、初期製剤の作製後のどの時点でも評価し得る。例えば、光安定性は、約1時間後、約2時間後、約3時間後、約4時間後、約5時間後、約6時間後、約7時間後、約8時間後、約9時間後、約10時間後、約11時間後、約12時間後、約13時間後、約14時間後、約15時間後、約16時間後、約17時間後、約18時間後、約19時間後、約20時間後、約21時間後、約22時間後、約23時間後、又は約24時間後に評価し得る。
【0116】
光安定性は、約1日後、約2日後、約3日後、約4日後、約5日後、約6日後、約7日後、約8日後、約9日後、約10日後、約15日後、約20日後、約25日後、約30日後、約35日後、約40日後、約45日後、約50日後、約55日後、約60日後、約90日後、約120日後、又は約180日後にも評価し得る。
【0117】
光安定性は、約1週間後、約2週間後、約3週間後、約4週間後、約5週間後、約6週間後、約7週間後、約8週間後、約9週間後、又は約10週間後にも評価し得る。光安定性は、約1ヶ月後、約2ヶ月後、約3ヶ月後、約4ヶ月後、約5ヶ月後、約6ヶ月後、約7ヶ月後、約8ヶ月後、約9ヶ月後、約10ヶ月後、約11ヶ月後、約12ヶ月後、約18ヶ月後、又は約36ヶ月後にも評価し得る。光安定性は、約1年後、約2年後、約3年後、約4年後、約5年後、約6年後にも、又は初期製剤の作製から何年後でも評価し得る。
【0118】
1つの態様では、本発明は、式1のテストステロンエステル、抗酸化剤、及び式2のトリグリセリドが含まれる医薬的に許容される担体が含まれる光安定性テストステロンエステル医薬製剤に関するものであり、式中:Rは、アルキル又はアルケニル置換基であり;R、R、及びRのそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及び/又はステアリン酸のような脂肪酸に対応するアシル基であり;そして、該製剤の光安定性は、該医薬製剤を200ワット時/mのUV光と120万ルクス時以上の可視光暴露へ暴露し、利用可能なテストステロンエステルの濃度を測定し、それを該製剤の初期テストステロンエステル濃度と比較することによって評価される。
【0119】
1つの態様では、本発明は、式1のテストステロンエステル、抗酸化剤、及び式2のトリグリセリドが含まれる医薬的に許容される担体が含まれる光安定性テストステロンエステル医薬製剤に関するものであり、式中:Rは、アルキル又はアルケニル置換基であり;R、R、及びRのそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及び/又はステアリン酸のような脂肪酸に対応するアシル基であり;そして、該製剤の光安定性は、該医薬製剤を200ワット時/mのUV光と120万ルクス時以上の可視光暴露へ暴露し、利用可能なテストステロンエステルの濃度を測定し、それを該製剤の初期テストステロンエステル濃度と比較して、式3~式22のいずれか1つのテストステロンエステル付加物の該製剤中の存在を検出してその濃度を測定することによって評価される。
【0120】
本明細書に記載の製剤の光安定性は、該医薬製剤を200ワット時/mのUV光と120万ルクス時以上の可視光暴露へ暴露することによって評価されるが、どの光暴露値も使用し得る。例えば、光安定性は、該医薬製剤を、環境光への暴露と同等のUV光及び/又は可視光の量へ、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、又は同程度暴露した後に決定し得る。
【0121】
光安定性は、医薬製剤を環境光への暴露と同等のUV光及び/又は可視光の量へ、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約15日間、約20日間、約25日間、約30日間、約35日間、約40日間、約45日間、約50日間、約55日間、約60日間、約90日間、約120日間、又は約180日間、又は同程度暴露した後でも決定し得る。
【0122】
光安定性は、医薬製剤を環境光への暴露と同等のUV光及び/又は可視光の量へ、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約1ヶ月間、約2ヶ月間、約3ヶ月間、約4ヶ月間、約5ヶ月間、約6ヶ月間、約7ヶ月間、約8ヶ月間、約9ヶ月間、約10ヶ月間、約11ヶ月間、約12ヶ月間、約18ヶ月間、約36ヶ月間、約1年間、約2年間、約3年間、約4年間、約5年間、約6年間、又はいずれかの好適な期間の間暴露した後でも決定し得る。
【0123】
1つの態様では、本発明は、光安定性テストステロンエステルに関するものであり、利用可能なテストステロンエステルの濃度は、初期テストステロンエステル濃度の少なくとも66.8%~75.0%である。いくつかの態様では、利用可能なテストステロンエステルの濃度は、初期製剤が作製された後のどの時点でも、初期テストステロンエステル濃度の少なくとも約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%である。
【0124】
いくつかの態様では、本発明は、式3~式22のいずれか1つのテストステロンエステル付加物が含まれる光安定性テストステロンエステルに関するものであり、ここで、テストステロンエステル付加物の製剤中の濃度は、初期製剤の作製後のどの時点でも、利用可能なテストステロンエステルの濃度より小さい。
【0125】
1つの態様では、本発明は、式1のテストステロンエステル、及び式2の1以上のトリグリセリドが含まれる医薬的に許容される担体が含まれるテストステロンエステル医薬製剤の光安定性を測定する方法に関するものであり、該方法には、該製剤中の初期テストステロンエステル濃度を測定し;ある期間後に、利用可能なテストステロンエステルの該製剤中の濃度を測定し;そしてこの2つの濃度を比較する工程が含まれ、ここで、Rは、アルキル又はアルケニル置換基であり;そしてR、R、及びRのそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及び/又はステアリン酸のような脂肪酸に対応するアシル基である。いくつかの態様では、該方法には、該医薬製剤を、200ワット時/mのUV光と120万ルクス時以上の可視光暴露へ暴露することがさらに含まれる。光安定性は、該医薬製剤を、環境光へある期間の間、又は環境光への暴露と同等のUV光及び/又は可視光の量へある期間の間暴露した後でも決定し得る。いくつかの態様では、該医薬製剤には、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸及びその塩、ビタミンE、ナイアシンアミド、メチオニン、モノチオグリセロール、二亜硫酸ナトリウム、システイン、亜ジチオン酸ナトリウム、ゲンチジン酸、及び/又はグルタミン酸一ナトリウムのような抗酸化剤がさらに含まれる。いくつかの態様では、該期間は30~60日の間である。いくつかの態様では、該方法には、式3~式22のいずれか1つのテストステロンエステル付加物の該医薬製剤中の存在を検出してその濃度を測定することがさらに含まれる。
【0126】
利用可能なテストステロンエステルの製剤中の濃度を測定することは、初期製剤の作製後どの時点でも評価し得る。例えば、利用可能なテストステロンエステルの該製剤中の濃度は、約1時間後、約2時間後、約3時間後、約4時間後、約5時間後、約6時間後、約7時間後、約8時間後、約9時間後、約10時間後、約11時間後、約12時間後、約13時間後、約14時間後、約15時間後、約16時間後、約17時間後、約18時間後、約19時間後、約20時間後、約21時間後、約22時間後、約23時間後、又は約24時間後に評価し得る。
【0127】
利用可能なテストステロンエステルの該製剤中の濃度は、約1日後、約2日後、約3日後、約4日後、約5日後、約6日後、約7日後、約8日後、約9日後、約10日後、約15日後、約20日後、約25日後、約30日後、約35日後、約40日後、約45日後、約50日後、約55日後、約60日後、約90日後、約120日後、又は約180日後にも評価し得る。
【0128】
利用可能なテストステロンエステルの該製剤中の濃度は、約1週間後、約2週間後、約3週間後、約4週間後、約5週間後、約6週間後、約7週間後、約8週間後、約9週間後、又は約10週間後にも評価し得る。光安定性は、約1ヶ月後、約2ヶ月後、約3ヶ月後、約4ヶ月後、約5ヶ月後、約6ヶ月後、約7ヶ月後、約8ヶ月後、約9ヶ月後、約10ヶ月後、約11ヶ月後、約12ヶ月後、約18ヶ月後、又は約36ヶ月後にも評価し得る。光安定性は、初期製剤の作製から約1年後、約2年後、約3年後、約4年後、約5年後、約6年後、又は何年後でも評価し得る。
【0129】
利用可能なテストステロンエステルの該製剤中の濃度は、該医薬製剤を、環境光へ、又は環境光への暴露と同等のUV光及び/又は可視光の量へ、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、又は同程度暴露した後でも決定し得る。
【0130】
利用可能なテストステロンエステルの該製剤中の濃度は、該医薬製剤を、環境光へ、又は環境光への暴露と同等のUV光及び/又は可視光の量へ、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約15日間、約20日間、約25日間、約30日間、約35日間、約40日間、約45日間、約50日間、約55日間、約60日間、約90日間、約120日間、又は約180日間、又は同程度暴露した後でも決定し得る。
【0131】
利用可能なテストステロンエステルの該製剤中の濃度は、該医薬製剤を、環境光へ、又は環境光への暴露と同等のUV光及び/又は可視光の量へ、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約1ヶ月間、約2ヶ月間、約3ヶ月間、約4ヶ月間、約5ヶ月間、約6ヶ月間、約7ヶ月間、約8ヶ月間、約9ヶ月間、約10ヶ月間、約11ヶ月間、約12ヶ月間、約18ヶ月間、約36ヶ月間、約1年間、約2年間、約3年間、約4年間、約5年間、約6年間、又はいずれかの好適な期間の間暴露した後でも決定し得る。
【0132】
医薬組成物
いくつかの態様では、本明細書に記載のテストステロンエステルの濃度は、例えば、本明細書に記載n医薬製剤の100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、0.001%、0.0009%、0.0008%、0.0007%、0.0006%、0.0005%、0.0004%、0.0003%、0.0002%、又は0.0001%(w/w、w/v、又はv/v)未満である。
【0133】
いくつかの態様では、本明細書に記載のテストステロンエステルの濃度は、本明細書に記載の医薬製剤の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、19.75%、19.50%、19.25%、19%、18.75%、18.50%、18.25%、18%、17.75%、17.50%、17.25%、17%、16.75%、16.50%、16.25%、16%、15.75%、15.50%、15.25%、15%、14.75%、14.50%、14.25%、14%、13.75%、13.50%、13.25%、13%、12.75%、12.50%、12.25%、12%、11.75%、11.50%、11.25%、11%、10.75%、10.50%、10.25%、10%、9.75%、9.50%、9.25%、9%、8.75%、8.50%、8.25%、8%、7.75%、7.50%、7.25%、7%、6.75%、6.50%、6.25%、6%、5.75%、5.50%、5.25%、5%、4.75%、4.50%、4.25%、4%、3.75%、3.50%、3.25%、3%、2.75%、2.50%、2.25%、2%、1.75%、1.50%、1.25%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、0.001%、0.0009%、0.0008%、0.0007%、0.0006%、0.0005%、0.0004%、0.0003%、0.0002%、又は0.0001%(w/w、w/v、又はv/v)より高い。
【0134】
いくつかの態様では、本明細書に記載のテストステロンエステルの濃度は、本明細書に記載の医薬製剤の約0.0001%~約50%、約0.001%~約40%、約0.01%~約30%、約0.02%~約29%、約0.03%~約28%、約0.04%~約27%、約0.05%~約26%、約0.06%~約25%、約0.07%~約24%、約0.08%~約23%、約0.09%~約22%、約0.1%~約21%、約0.2%~約20%、約0.3%~約19%、約0.4%~約18%、約0.5%~約17%、約0.6%~約16%、約0.7%~約15%、約0.8%~約14%、約0.9%~約12%、又は約1%~約10%(w/w、w/v、又はv/v)の範囲である。
【0135】
いくつかの態様では、本明細書に記載のテストステロンエステルの濃度は、本明細書に記載の医薬製剤の約0.001%~約10%、約0.01%~約5%、約0.02%~約4.5%、約0.03%~約4%、約0.04%~約3.5%、約0.05%~約3%、約0.06%~約2.5%、約0.07%~約2%、約0.08%~約1.5%、約0.09%~約1%、約0.1%~約0.9%(w/w、w/v、又はv/v)の範囲である。
【0136】
いくつかの態様では、本発明の医薬組成物において提供される、テストステロンエステル、トリグリセリド、及び/又は抗酸化剤のような活性及び/又は不活性医薬成分のそれぞれの量は、本明細書に記載の医薬製剤中、10g、9.5g、9.0g、8.5g、8.0g、7.5g、7.0g、6.5g、6.0g、5.5g、5.0g、4.5g、4.0g、3.5g、3.0g、2.5g、2.0g、1.5g、1.0g、0.95g、0.9g、0.85g、0.8g、0.75g、0.7g、0.65g、0.6g、0.55g、0.5g、0.45g、0.4g、0.35g、0.3g、0.25g、0.2g、0.15g、0.1g、0.09g、0.08g、0.07g、0.06g、0.05g、0.04g、0.03g、0.02g、0.01g、0.009g、0.008g、0.007g、0.006g、0.005g、0.004g、0.003g、0.002g、0.001g、0.0009g、0.0008g、0.0007g、0.0006g、0.0005g、0.0004g、0.0003g、0.0002g、又は0.0001g以下である。
【0137】
いくつかの態様では、本発明の医薬組成物において提供される、テストステロンエステル、トリグリセリド、及び/又は抗酸化剤のような活性及び/又は不活性医薬成分のそれぞれの量は、本明細書に記載の医薬製剤中、0.0001g、0.0002g、0.0003g、0.0004g、0.0005g、0.0006g、0.0007g、0.0008g、0.0009g、0.001g、0.0015g、0.002g、0.0025g、0.003g、0.0035g、0.004g、0.0045g、0.005g、0.0055g、0.006g、0.0065g、0.007g、0.0075g、0.008g、0.0085g、0.009g、0.0095g、0.01g、0.015g、0.02g、0.025g、0.03g、0.035g、0.04g、0.045g、0.05g、0.055g、0.06g、0.065g、0.07g、0.075g、0.08g、0.085g、0.09g、0.095g、0.1g、0.15g、0.2g、0.25g、0.3g、0.35g、0.4g、0.45g、0.5g、0.55g、0.6g、0.65g、0.7g、0.75g、0.8g、0.85g、0.9g、0.95g、1g、1.5g、2g、2.5g、3g、3.5g、4g、4.5g、5g、5.5g、6g、6.5g、7g、7.5g、8g、8.5g、9g、9.5g、又は10gより多い。
【0138】
本発明による活性医薬成分のそれぞれは、広い投与量範囲にわたって有効である。例えば、ヒト成人の治療において、投与量は、独立して、1日あたり0.01~1000mg、0.5~100mg、1~50mgの範囲であり、5~40mg/日は、使用し得る投与量の例である。50~200mg/週の有効投与量も、使用し得る投与量の例である。1つの態様では、毎週の有効投与量は約50mgである。1つの態様では、毎週の有効投与量は約100mgである。1つの態様では、毎週の有効投与量は約150mgである。1つの態様では、毎週の有効投与量は約200mgである。1つの態様では、毎週の有効投与量は約250mgである。
【0139】
正確な投与量は、投与の経路、該化合物が投与される形態、治療すべき被験者の性別及び年齢、治療すべき被験者の体重、並びに担当医の選択及び経験に依拠するものである。テストステロンエステル、例えばエナント酸テストステロンの臨床的に確立された投与量も適宜使用されてよい。
【0140】
いくつかの態様では、製剤中のテストステロンエステル付加物の量、例えば製剤中のテストステロンエステルの量、例えばエナント酸テストステロンの量に対するエナント酸テストステロン付加物の量は、約0.001%(w/w)未満、約0.001%(w/w)、約0.002%(w/w)、約0.003%(w/w)、約0.004%(w/w)、約0.005%(w/w)、約0.006%(w/w)、約0.007%(w/w)、約0.008%、(w/w)約0.009%(w/w)、約0.01%(w/w)、約0.015%(w/w)、約0.02%(w/w)、約0.025%(w/w)、約0.03%(w/w)、約0.035%(w/w)、約0.04%(w/w)、約0.045%(w/w)、約0.05%(w/w)、約0.055%(w/w)、約0.06%(w/w)、約0.065%(w/w)、約0.07%(w/w)、約0.075%(w/w)、約0.08%(w/w)、約0.085%(w/w)、約0.09%(w/w)、約0.095%(w/w)、約0.1%(w/w)、約0.15%(w/w)、約0.2%(w/w)、約0.25%(w/w)、約0.3%(w/w)、約0.35%(w/w)、約0.4%(w/w)、約0.45%(w/w)、約0.5%(w/w)、約0.55%(w/w)、約0.6%(w/w)、約0.65%(w/w)、約0.7%(w/w)、約0.75%(w/w)、約0.8%(w/w)、約0.85%(w/w)、約0.9%(w/w)、約0.95%(w/w)、約1%(w/w)であるか、又は約1%(w/w)より多い。
【0141】
いくつかの態様では、テストステロンエステルの全体レベルに対するテストステロンエステル付加物の定量の下限は0.1%である。いくつかの態様では、テストステロンの全体レベルに対するテストステロン付加物の定量の下限は0.1%である。
【0142】
いくつかの態様では、製剤中のテストステロンエステル付加物の量、例えば製剤中のテストステロンエステルの量、例えばエナント酸テストステロンの量に対するエナント酸テストステロン付加物の量は、約1%(w/w)、約2%(w/w)、約3%(w/w)、約4%(w/w)、約5%(w/w)、約6%(w/w)、約7%(w/w)、約8%(w/w)、約9%(w/w)、約10%(w/w)、約11%(w/w)、約12%(w/w)、約13%(w/w)、約14%(w/w)、約15%(w/w)、約16%(w/w)、約17%(w/w)、約18%(w/w)、約19%(w/w)、約20%(w/w)、約21%(w/w)、約22%(w/w)、約23%(w/w)、約24%(w/w)、約25%(w/w)、約26%(w/w)、約27%(w/w)、約28%(w/w)、約29%(w/w)、約30%(w/w)、約31%(w/w)、約32%(w/w)、約33%(w/w)、約34%(w/w)、約35%(w/w)、約36%(w/w)、約37%(w/w)、約38%(w/w)、約39%(w/w)、約40%(w/w)、約41%(w/w)、約42%(w/w)、約43%(w/w)、約44%(w/w)、約45%(w/w)、約46%(w/w)、約47%(w/w)、約48%(w/w)、約49%(w/w)、又は約50%(w/w)である。
【0143】
いくつかの態様では、製剤中の任意のエナント酸テストステロン付加物の濃度は、0.000mg/mL~25mg/ml、0.005mg/mL~25mg/mL、0.025mg/mL~37.5mg/mL、0.05mg/mL~50mg/mL、0.075mg/mL~62.5mg/mL、0.1mg/mL~75mg/mL、0.125mg/mL~100mg/mL、0.175mg/mL~125mg/mL、0.2mg/mL~175mg/mL、0.25mg/mL~200mg/mL、又は0.275mg/mL~250mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は、0.005mg/mL~100mg/mLである。
【0144】
いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約0.005mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約0.0075mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約0.01mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約0.0125mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約0.015mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約0.0175mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約0.02mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約0.0225mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は約0.0250mg/mLである。
【0145】
いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約0.05mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約0.075mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約0.1mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約0.125mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約0.15mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約0.175mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約0.2mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約0.225mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は約0.250mg/mLである。
【0146】
いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約0.5mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約0.75mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約1mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約1.25mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約1.5mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約1.75mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約2mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約2.25mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約2.50mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約2.75mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は約3mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約3.25mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は約3.50mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約3.75mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は約4mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約4.25mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は約4.50mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロン付加物の濃度は約4.75mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は約5mg/mLである。
【0147】
いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は50mg/mL~200mg/mLである。いくつかの態様では、BHTの濃度は0.01%~0.1%である。いくつかの態様では、BHTの濃度は0.1mg/mL~1mg/mLである。いくつかの態様では、トコフェロールの濃度は0.1%~5%である。
【0148】
いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は、5mg/mL~50mg/mL、25mg/mL~75mg/mL、50mg/mL~100mg/mL、75mg/mL~125mg/mL、100mg/mL~150mg/mL、125mg/mL~200mg/mL、175mg/mL~250mg/mL、200mg/mL~350mg/mL、250mg/mL~400mg/mL、又は275mg/mL~500mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は50mg/mL~200mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は約50mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は約75mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は約100mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は約125mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は約150mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は約175mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は約200mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は約225mg/mLである。いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は約250mg/mLである。
【0149】
いくつかの態様では、BHTの濃度は、0.01%~0.025%、0.015%~0.05%、0.035%~0.075%、0.05%~0.085%、0.06%~0.095%、又は0.075%~0.1%である。いくつかの態様では、BHTの濃度は、0.075%~0.15%、0.1%~0.25%、又は0.15%~0.5%である。いくつかの態様では、BHTの濃度は、0.01%~0.1%である。いくつかの態様では、BHTの濃度は、0.1mg/mL~1mg/mL、0.25mg/mL~0.5mg/mL、0.35mg/mL~0.75mg/mL、0.5mg/mL~1.5mg/mL、又は1mg/mL~5mg/mLである。いくつかの態様では、トコフェロールの濃度は、0.1%~1%、0.25%~2.5%、1%~10%である。いくつかの態様では、トコフェロールの濃度は0.1%~5%である。
【0150】
1つの態様では、本発明は、エナント酸テストステロン、ゴマ油、BHT、及び式3~式22の1以上のテストステロン付加物が含まれる医薬製剤に関する。いくつかの態様では、付加物は式10を有する。いくつかの態様では、付加物は式11を有する。いくつかの態様では、エナント酸テストステロンの濃度は、50mg/mL~200mg/mL、又は5mg/mL~500mg/mLである。いくつかの態様では、BHTの濃度は、0.01%~0.1%、0.01%~1%、0.1mg/mL~1mg/mL、又は0.1mg/mL~10mg/mLである。いくつかの態様では、テストステロンエステル付加物の濃度は、エナント酸テストステロンの濃度より小さい。いくつかの態様では、テストステロンエステル付加物の総濃度は、エナント酸テストステロンの濃度より小さい。
【0151】
100mg/ml、150mg/ml、及び200mg/mlのテストステロンエステル(例えばエナント酸テストステロン)の製剤を、0.07~1.0%の抗酸化剤(例えばBHT)を含有し、場合によっては本発明の付加物がさらに含まれるUSP油剤(例えばゴマ油)においてそれぞれ製剤化することができる。
【0152】
他のテストステロン又はテストステロン誘導体の付加物
本開示は、モノ、ジ、及び/又はトリグリセリドとのテストステロンエステル付加物に限定されるものではなく、モノ、ジ、及び/又はトリグリセリドとテストステロンの付加物を含めた、モノ、ジ、及び/又はトリグリセリドとのあらゆるテストステロン誘導体付加物も含まれる。本明細書に記載のテストステロンエステル付加物を発生、作製、制御、又は使用するすべての方法及び条件は、他のテストステロン又はテストステロン誘導体の付加物にも等しく適用可能である。
【0153】
いくつかの態様では、本発明は、式23:
【0154】
【化18】
【0155】
のテストステロン又はテストステロン誘導体の付加物に関するものであり、式中:Rは、それぞれの出現時に独立して、水素、又は本明細書に記載されるか若しくは当該技術分野で知られている、テストステロンに適した置換基であり;Rは、不飽和脂肪酸に対応するアシル基であり;Gは、グリセロール、モノグリセリド、又はジグリセリド残基であり;nは、1、2、又は3であり;そしてテストステロン残基は、Rのアリル炭素又は2重アリル炭素へ連結する。
【0156】
いくつかの態様では、このテストステロン又はテストステロン誘導体の付加物は、式24:
【0157】
【化19】
【0158】
を有し、式中:Rは、それぞれの出現時に独立して、水素、又は本明細書に記載されるか若しくは当該技術分野で知られている、テストステロンに適した置換基であり;Gは、グリセロール、モノグリセリド、又はジグリセリド残基であり;nは、1、2、又は3である。
【0159】
いくつかの態様では、本発明は、式25~式29:
【0160】
【化20-1】
【0161】
【化20-2】
【0162】
のいずれか1つのテストステロン又はテストステロン誘導体の付加物に関するものであり、式中:Rは、それぞれの出現時に独立して、水素、又は本明細書に記載されるか若しくは当該技術分野で知られている、テストステロンに適した置換基であり;R及びRのそれぞれは、独立して、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及びステアリン酸から成る群より選択される脂肪酸に対応するアシル基である。
【0163】
注射用の医薬組成物
いくつかの態様では、テストステロンエステル、例えばエナント酸テストステロンのような医薬有効成分又は医薬有効成分の組合せと、注射に適した医薬賦形剤とを含有する、注射用の医薬組成物を提供する。
【0164】
本発明の組成物を注射による投与用に取り込み得る形態には、ゴマ油、コーン油、綿実油、又はピーナッツ油、並びにエリキシル剤、マンニトール、デキストロースを含む、水性又は油性の懸濁液剤若しくは乳液剤、又は滅菌水溶液剤、及び類似の医薬担体が含まれる。
【0165】
生理食塩水中の水溶液剤も注射用に慣用的に使用される。エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール(及びこれらの好適な混合物)、シクロデキストリン誘導体、及び植物油も利用してよい。適正な流動性は、例えば、分散液の場合は必要とされる粒径の維持のためにレシチンのようなコーティング剤の使用によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌性及び抗真菌性の保存薬又は保存剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、及びチメロサールによってもたらすことができる。
【0166】
滅菌注射用溶液剤は、医薬有効成分又は医薬有効成分の組合せを必要量で、上に列挙したような他の様々な成分とともに必要に応じて適正な溶媒に取り込み、次いで濾過滅菌をすることによって調製される。一般的に、分散液剤は、基本分散媒体を含有する滅菌媒体中に、様々な滅菌済み有効成分と、上に列挙したものの中で必要とされる他の成分とを取り込むことによって調製される。滅菌注射用溶液剤の調製用の滅菌散剤の場合、ある望ましい調製法は、先に滅菌濾過したその溶液から有効成分+追加の所望成分の散剤を生じる、真空乾燥及び凍結乾燥の技術である。
【0167】
医薬有効成分若しくは医薬有効成分の組合せ、又はそれらの医薬組成物の投与は、該化合物の作用部位への送達を可能にするどんな方法によっても有効になり得る。これらの方法には、経口経路、十二指腸内経路、非経口注射(静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、皮内、血管内、腹腔内の注射又は注入が含まれる)、局所(例えば経皮適用)、直腸投与、カテーテル若しくはステントによる局所送達によるか、又は吸入を介した方法が含まれる。医薬有効成分又は医薬有効成分の組合せは、脂肪組織内又は髄腔内に投与することもできる。
【0168】
キット
本発明は、キットも提供する。キットには、医薬有効成分又は医薬有効成分の組合せ(好適な包装に単独で又は組み合わせて)と、使用説明書、臨床試験の考察、及び副作用のリストが含まれ得る文書とが含まれる。このようなキットには、学術的な参考文献、添付文書、臨床試験結果、及び/又は上記の事柄の要約といった情報も含めてよく、これらは、本組成物の活性及び/又は利点を示すか又は立証し、及び/又は投薬、投与、副作用、薬物相互作用、又は医療提供者に有用な他の情報について記載する。このような情報は、様々な試験、例えば、in vivoモデルを包含する実験動物を使用した試験、及びヒト臨床試験に基づく試験の結果に基づくことができる。該キットは、別の医薬有効成分をさらに含有してよい。選択される態様では、医薬有効成分又は医薬有効成分の組合せは、キットの別々の容器中の別々の組成物として提供される。選択される態様では、医薬有効成分又は医薬有効成分の組合せは、キットの容器内に単一組成物として提供される。当該技術分野では、使用に適した包装品及び付属品(例えば、液体調製品用の計量カップ、空気への暴露を最小限にするためのフォイルラッピング等)が知られており、このキットに含めてよい。本明細書に記載のキットは、医師、看護師、薬剤師、標準処方当局者(formulary officials)等が含まれる医療提供者へ提供、販売、及び/又は促進され得る。選択される態様では、キットは、消費者へ直接販売されてもよい。
【0169】
いくつかの態様では、本発明は、治療有効量の医薬有効成分(例えばテストステロンエステル)又は医薬有効成分の組合せ、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物、共結晶、若しくはプロドラッグが含まれる組成物が含まれるキットを提供する。これらの組成物は、典型的には医薬組成物である。該キットは、医薬有効成分又は医薬有効成分の組合せを同時又は別々に共投与するためのものである。
【0170】
いくつかの態様では、本発明は、治療有効量のテストステロンエステルを単独で、又は医薬有効成分又は医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物、共結晶、又はプロドラッグと組み合わせて、抗酸化剤と組み合わせた油剤中に包含する組成物が充填済シリンジ(PFS)又はバイアルに含まれるキットを提供する。いくつかの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、透明である。該キットには、充填済シリンジ又はバイアルを光から保護するのに適した包装材料が含まれる。いくつかの態様では、これに自動注入装置が含まれる。他の態様では、これに、注射に先立って薬物の点検を可能にする視界窓付きの自動注入装置が含まれる。さらに他の態様では、自動注入装置は、薬物への光アクセスを防ぐためにカートン内にある。
【0171】
充填済シリンジ又はバイアルには、単回用量又は頻回用量が含まれ得る。いくつかの態様では、頻回用量が含まれる充填済シリンジ又はバイアルは、単回用量だけが含まれる充填済シリンジ又はバイアルより大きい、即ち容積が大きい。いくつかの態様では、本明細書に記載のテストステロンエステルトリグリセリド付加物は、充填済シリンジ又はバイアルにおいて、通常の保存の間に、及び/又は様々な光量への暴露時に形成される。いくつかの態様では、充填済シリンジ又はバイアルの表面積対容積比は、充填済シリンジ又はバイアルの容積が大きくなるにつれて小さくなる。特定の理論に束縛されることを望まずに言えば、いくつかの態様では、本明細書に記載のテストステロンエステルトリグリセリド付加物は、光へ暴露されるテストステロンエステル製剤を含有する充填済シリンジ又はバイアルの表面積がより大きくなると、より高量で及び/又は加速されて形成される。特定の理論に束縛されることを望まずに言えば、いくつかの態様では、本明細書に記載のテストステロンエステルトリグリセリド付加物は、光へ暴露されるテストステロンエステル製剤を含有する充填済シリンジ又はバイアルの容積がより大きくなると、より低量で及び/又はより低速で形成される。特定の理論に束縛されることを望まずに言えば、いくつかの態様では、本明細書に記載のテストステロンエステルトリグリセリド付加物は、光へ暴露されるテストステロンエステル製剤を含有する充填済シリンジ又はバイアルの表面積対容積比がより大きいと、より高量で及び/又は加速されて形成される。特定の理論に束縛されることを望まずに言えば、いくつかの態様では、本明細書に記載のテストステロンエステルトリグリセリド付加物は、光へ暴露されるテストステロンエステル製剤を含有する充填済シリンジ又はバイアルの表面積対容積比がより小さいと、より低量で及び/又はより低速で形成される。
【0172】
いくつかの態様では、保管時又は光への暴露時に保存されるテストステロンエステルの製剤中の初期量の割合は、より大容量の充填済シリンジ又はバイアルにおいてより高い。いくつかの態様では、保管時又は光への暴露時に保存されるテストステロンエステルの製剤中の初期量の割合は、表面積対容積比がより高い充填済シリンジ又はバイアルと比較して、表面積対容積比がより低い充填済シリンジ又はバイアルにおいてより高い。いくつかの態様では、保管時又は光への暴露時に保存されるテストステロンエステルの製剤中の初期量の割合は、単回用量の充填済シリンジ又はバイアルと比較して、頻回用量の充填済シリンジ又はバイアルにおいてより高い。
【0173】
1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、約50mgのテストステロンエステルが含まれる製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、約75mgのテストステロンエステルが含まれる製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、約100mgのテストステロンエステルが含まれる製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、約125mgのテストステロンエステルが含まれる製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、約150mgのテストステロンエステルが含まれる製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、約175mgのテストステロンエステルが含まれる製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、約200mgのテストステロンエステルが含まれる製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、約225mgのテストステロンエステルが含まれる製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、約250mgのテストステロンエステルが含まれる製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、約275mgのテストステロンエステルが含まれる製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、約300mgのテストステロンエステルが含まれる製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、25mg又は50mgのテストステロンエステルの頻回用量が含まれる製剤で充填される。
【0174】
1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約0.1mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約0.2mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約0.3mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約0.4mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約0.5mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約0.6mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約0.7mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約0.8mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約0.9mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約1mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約1.1mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約1.2mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約1.3mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約1.4mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約1.5mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約1.6mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約1.7mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約1.8mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約1.9mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約2mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約2.1mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約2.2mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約2.3mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約2.4mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約2.5mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約2.6mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約2.7mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約2.8mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約2.9mLの製剤で充填される。1つの態様では、充填済シリンジ又はバイアルは、テストステロンエステルが含まれる約3mLの製剤で充填される。
【0175】
そのようなキットには、学術的な参考文献、添付文書、臨床試験結果、及び/又は上記の事柄の要約等といった情報も含めてよく、これらは、本組成物の活性及び/又は利点を示すか又は立証し、及び/又は投薬、投与、副作用、薬物相互作用、又は医療提供者及び/又は患者に有用な他の情報について記載する。このような情報は、該医薬成分を光から保護するために、充填済シリンジ又は充填済シリンジと自動注入装置をカートン内に留めることを使用者に教唆する場合がある。治療有効量のテストステロンエステルを単独で、又は医薬有効成分又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物、共結晶、又はプロドラッグと組み合わせて、抗酸化剤と組み合わせた油剤中に包含する組成物が充填済シリンジ又は自動注入装置中の充填済シリンジに含まれるキットの場合、充填済シリンジ又は自動注入装置が使用前に光保護包装材料の外に有り続けることが許容され得る時間は、抗酸化剤を含有しない類似調製品より増加し得て、この情報は、キットに提供される情報に反映され得る。
【0176】
いくつかの態様では、本発明は、(1)治療有効量の医薬有効成分(例えばテストステロンエステル)、又は医薬有効成分の組合せ、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物、共結晶、若しくはプロドラッグが含まれる組成物、及び(2)患者にテストステロンエステル投与が必要であるかどうかを判定するための診断試験が含まれるキットを提供する。
【0177】
投与量と投与計画
テストステロンエステルの投与量のような、本発明の方法を使用して投与される医薬組成物の量は、被験者、例えば治療されるヒト又は哺乳動物、障害又は病態の重症度、投与の速度、医薬有効成分の特質(disposition)、及び処方医の裁量に依存するものである。有効な治療レベルを達成するには、ヒトへの投与について50~100mg/週の範囲の投与量が十分であり得る。時には、所望される治療レベルを達成するために、50~100mg/週の投与量が数週にわたって必要とされる場合がある。しかしながら、有効投与量は、単回用量又は分割用量において、約0.001~約100mg/kg(体重)/日の範囲、例えば約1~約35mg/kg/日である。70kgのヒトであれば、これは、約0.05~7g/日、例えば約0.05~約2.5g/日に相当するだろう。いくつかの事例では、上述の範囲の下限未満の投与量レベルが十分以上であり得る一方で、他の症例では、なおより多くの用量が、例えばそのようなより多くの用量を1日を通して投与するためにいくつかの低用量へ分割することによって、有害な副作用を引き起こすことなく利用され得る。医薬組成物及び医薬有効成分の投与量は、mg/kg(体重)又はmg/m(体表面積)の単位で提供され得る。
【0178】
いくつかの態様では、医薬組成物又は医薬有効成分は頻回用量で投与される。ある態様では、医薬組成物は頻回用量で投与される。投薬は、1日あたり、1回、2回、3回、4回、5回、6回、又は6回より多くてもよい。投薬は、月1回、2週に1回、週1回、又は隔日1回でもよい。他の態様では、医薬組成物は1日あたり約1回~1日あたり約6回で投与される。いくつかの態様では、医薬組成物は1日1回投与される一方、他の態様では、医薬組成物は1日2回投与され、他の態様では、医薬組成物は1日3回投与される。
【0179】
医薬有効成分の投与は、必要である限り継続してよい。選択される態様では、医薬組成物は1、2、3、4、5、6、7、14、又は28日より長い間投与される。他の態様では、医薬組成物は1、2、3、4、5、6、7、14、又は28週より長い間投与されることが必要とされる。いくつかの態様では、医薬組成物は28、14、7、6、5、4、3、2、又は1日より短い間投与される。いくつかの態様では、医薬組成物は、例えば、慢性的な影響の治療のために、継続ベースで慢性的に投与される。いくつかの態様では、医薬組成物の投与は、約7日より短い間継続される。さらに他の態様では、投与は、約6、10、14、28日、2ヶ月、6ヶ月、又は1年より長い間継続される。いくつかの症例では、継続的な投薬が達成されて必要な限り維持される。
【0180】
いくつかの態様では、本明細書に開示の医薬有効成分の有効投与量は、約1mg~約500mg、約10mg~約300mg、約20mg~約250mg、約25mg~約200mg、約50mg~約200mg、約10mg~約200mg、約20mg~約150mg、約30mg~約120mg、約10mg~約90mg、約20mg~約80mg、約30mg~約70mg、約40mg~約60mg、約45mg~約55mg、約50mg~約100mg、約48mg~約52mg、約50mg~約150mg、約60mg~約140mg、約70mg~約130mg、約80mg~約120mg、約90mg~約110mg、約95mg~約105mg、約150mg~約250mg、約160mg~約240mg、約170mg~約230mg、約180mg~約220mg、約190mg~約210mg、約195mg~約205mg、又は約198mg~約202mgの範囲である。いくつかの態様では、本明細書に開示の医薬有効成分の有効投与量は、約25mg未満、約50mg未満、約75mg未満、約100mg未満、約125mg未満、約150mg未満、約175mg未満、約200mg未満、約225mg、又は約250mg未満である。いくつかの態様では、本明細書に開示の医薬有効成分の有効投与量が、約25mgより多い、約50mgより多い、約75mgより多い、約100mgより多い、約125mgより多い、約150mgより多い、約175mgより多い、約200mgより多い、約225mgより多い、又は約250mgより多い。
【0181】
いくつかの態様では、本明細書に開示の医薬有効成分の有効投与量は、約0.01mg/kg~約200mg/kg、又は約0.1~100mg/kg、又は約1~50mg/kgの範囲である。いくつかの態様では、医薬有効成分は、50、60、70、80、90、100、150、又は200mg BIDを含めた、10~200mg BIDの投与量で投与される。いくつかの態様では、医薬有効成分は、1、5、10、15、25、50、75、100、150、200、300、400、又は500mg BIDを含めた、10~500mg BIDの投与量で投与される。
【0182】
いくつかの事例では、上述の範囲の下限未満の投与量レベルが十分以上であり得る一方で、他の症例では、なおより多くの用量が、例えばそのようなより多くの用量を1日を通して投与するためにいくつかの低用量へ分割することによって、有害な副作用を引き起こすことなく利用され得る。当業者に理解されるように、実際に投与される投与量は、治療される病態、レシピエントの年齢、健康状態、及び体重、もしあれば同時治療のタイプ、並びに治療の頻度に依存するものである。さらに、有効投与量は、該化合物の生理活性をバイオアッセイにて測定し、それにより投与すべき適正投与量を確定する、定型的な実証的活性試験に基づいて、当業者によって決定され得る。
【0183】
医薬有効成分の組合せの有効量を、直腸経路、頬内経路、鼻腔内経路、及び経皮経路、動脈内注射、静脈内、腹腔内、非経口的、筋肉内、皮下、皮内、経口的、局所的による、又は吸入剤としての投与を含めた類似した有用性を有する薬剤の受容された投与形式のいずれによって、単回用量又は頻回用量のいずれかで投与し得る。
【0184】
いくつかの態様では、本明細書に記載の組成物には、本明細書に記載の化合物を投与するための制御放出、持続放出、又は延長放出の治療剤形がさらに含まれ、これは、ある組成物の形成において該化合物を好適な送達システムへ組み込むことを伴う。この剤形は、該化合物の血流中の有効濃度が延長された時間にわたって維持され、その血中濃度が相対的に一定なままで、治療結果を改善し、及び/又は副作用を最小化することができるようなやり方で、該化合物の放出を制御する。加えて、制御放出システムであれば、該化合物の血漿レベルのピーク値トラフ値変動を最小にするであろう。
【0185】
本明細書では、本発明に関連する技術水準について記載するためにいくつかの特許文献及び非特許文献が引用される。これら文献のそれぞれの全開示内容は、本明細書に援用される。
【0186】
以下の実施例は、本発明についてさらに詳細に説明する。これらの実施例は、例示の目的のためにのみ提供されるものであり、決して本発明を限定するものとみなしてはならない。
【実施例
【0187】
実施例1: 光誘発ストレス後のテストステロン-ゴマ油混合物に見出されるエナント酸テストステロン-トリグリセリド付加物の構造同定
UV/VISストレス処理のICH推奨法にしたがって、ゴマ油中200mg/mLのエナント酸テストステロンに照射することによって、光ストレス誘発生成物を生成した。ストレス処理の最後に、分析用カラム:Synergi Max-RP 80A(150×4.6mm、4μm)を使用して、移動相Aをアセトニトリル/水(90/10(v/v))、移動相Bを100%エタノールとして、粗生成物のアリコートをクロマトグラフ処理した。この結果を図2に図示する。初期の結果は、図1に示されるように、エナント酸テストステロン-トリグリセリド付加物が溶出されるのは領域3のピークであって、領域4ではないことを示唆した。
【0188】
次いで、分取用カラム:Synergi Max-RP 80A,AXIA Packed New Column(250×21.2mm、4μm)及び移動相としてエタノールを使用する分取用クロマトグラフィーシステムを使用して、この粗生成物を精製した。領域3をいくつかの画分で回収した。各画分について、上記の分析用カラム:Synergi Max-RP 80A(150×4.6mm、4μm)を使用するクロマトグラフィー条件を使用して試験した。精製画分のクロマトグラムを図3図6に示す。これら画分のそれぞれを濃縮して過剰なエタノール溶媒を除去し、濃縮した精製生成物を得た。画分1と画分2は、画分3又は画分4より高純度であった。画分1由来の精製生成物が最も高純度であったため、この精製生成物をエナント酸テストステロン構造同定試験に使用した。これら精製生成物より蒸発後に回収した量を表1に収載する。
【0189】
【表1】
【0190】
構造同定試験には、NMR分析が含まれた。図7は、画分1からの精製生成物のH NMRスペクトルを示す。図8は、画分1からの精製生成物のH NMRスペクトルを図示し;この拡大NMRスペクトルは、精製画分1の主要成分である分子のプロトンの分裂パターンを示す。図9は、画分1からの精製生成物の13C NMRスペクトルを示し;ケトンカルボニル(C=O)炭素に特徴的な205~220ppmでの13Cピークの非存在は、エナント酸テストステロンのカルボニル炭素が、例えば-C-O-C-結合の形成によって、変化したことを示唆する。図10は、画分1からの精製生成物の拡大13C NMRスペクトル(130~175ppm)を示す。図11は、画分1からの精製生成物の拡大13C NMRスペクトル(2~84ppm)を示す。図12は、画分1からの精製生成物の13C DEPT NMRスペクトルを示す。
【0191】
この構造同定試験には、LC-UV結合型質量分析法がさらに含まれた。精製画分1のアリコートをエタノールで10μg/mLに希釈し、Synergi Max-RP 80A(150×4.6mm、4μm)を使用し、移動相Aをアセトニトリル/水(90/10(v/v))、移動相Bを100%エタノールとして勾配操作する、LC-UVシステム結合型API 4000質量分析計へ注入した。このクロマトグラフィー条件の下で、m/z=1304>1304、1306>1306、1704>1704、及び1706>1706の4つのMRMトランジションについて同時にモニターした。これらのMRMトランジションを選択したのは、第1に、OLLとOOLがゴマ油に存在する2つの主要トリグリセリド(TG)であるからである。OLLは、ゴマ油中のトリグリセリドの約13~30%を構成して、OOLは、他の約14~25%を構成する。第2に、リノレオイル脂肪酸側鎖には2つのホモ共役2重結合があって、2つの2重結合の間に位置するC-Hが付加物生成を受け易いからである。OLLとOOLの分子量に基づくと、これら2つの分子は、1個のエナント酸テストステロン(TE)及び溶液中に豊富にあるナトリウム原子とともに付加物を形成すると、それぞれおよそ1304と1306にモノアイソトピック質量を有する。2個のTE分子がOLLとOOLに結合すると、モノアイソトピック質量は、それぞれ1704と1706になろう(表2)。そして第3に、MRMモードを使用するスクリーニングは感度を向上させるからである。
【0192】
【表2】
【0193】
1個のTEとの付加物について1304、1306に等しく、2個のTEとの付加物について1704、1706に等しいモノアイソトピック質量を有する分子を探索した。この結果は、トランジションウィンドウ:1304>1304と1306>1306のそれぞれに顕著なピークが観測されることを示した。加えて、トランジションウィンドウの1704>1704と1706>1706にはより強度が小さいピークが検出された(図13)。
【0194】
衝突エネルギー90eVでのポジティブイオン化の下で、10μg/mLの試料をMS2へ処した場合、1304と1306のイオンは断片化して、類似の生成物イオンを形成した。m/z=1304である分子は、703.8と1023.5を生成し(図14)、m/z=1306である分子は、704と1023.8を生成した(図15)。追加のMSデータを図16図29に提示する。図16は、質量スペクトル(光ストレス試料、領域1、CADにおいて約9.8分でのメジャー応答)を示す;提案実験式:C80124(質量誤差:-1.9ppm)。図17は、質量スペクトル(光ストレス試料、領域1、CADにおいて約10.4分でのマイナー応答)を示す。図18は、抽出イオンクロマトグラム(XIC)(光ストレス試料、m/z 626)を示す。図19は、対照試料、領域2の質量スペクトルを示す。図20は、光ストレス試料、領域2の質量スペクトルを示す。図21は、光ストレス試料のXIC(m/z:933(青)、935(ピンク)、及び937(オレンジ))を示す。図22は、対照試料、領域3の質量スペクトルを図示する。図23は、100試料、領域3の質量スペクトルを示す。図24は、光ストレス試料のXIC(m/z 901(青)、903(ピンク)、905(オレンジ)、907(緑)、及び909(水色))を示す。図25は、光ストレス試料のXIC(m/z 1302(青)、1304(ピンク)、1306(オレンジ)、1308(緑)、及び1310(水色))を示す。図26は、光ストレス試料のXIC(m/z 1702(青)、1704(ピンク)、1706(オレンジ)、及び1708(緑))を示す。図27は、対照試料、領域4の質量スペクトルを示す。図28は、光ストレス試料、領域4の質量スペクトルを示す。図29は、光ストレス試料のXIC(m/z 1782(青)及び1758(ピンク))を示す。
【0195】
この付加物についてのH NMR及び13C NMR試験は、HRMS試験と相俟って、画分1中の付加物は2種の主要成分:エナント酸テストステロンとOLLとの付加物(付加物A)及びエナント酸テストステロンとOOLとの付加物(付加物B;スキーム1)の混合物であることを示唆している。これらの提案構造は、OLL及びOOLとそれぞれ形成され、m/z=1304及びm/z=1306をそれぞれ有するエナント酸テストステロンナトリウム付加物と一致している。付加物Aの提案構造は、OLLと形成されるエナント酸テストステロンナトリウム付加物と一致しており、m/z=1023.8を有する生成物イオンを生成する、付加物Aの有りそうな断片化経路についても記載する(スキーム2)。付加物Bの提案構造は、OOLと形成されるエナント酸テストステロンナトリウム付加物と一致している(スキーム3)。
【0196】
【化21】
【0197】
【化22】
【0198】
【化23】
【0199】
H NMRと13C NMRの両方のスペクトルにおいて、付加物Aと付加物Bのほとんどのシグナルが重なっている(図7図12)。ここでは簡略化のために、例として付加物A(OLL+TE)のみを帰属決定して示す(スキーム4)。
【0200】
【化24】
【0201】
1H NMR: δ 0.85 (m, 3H, H17’), 0.9 (m, 15H, H17, H17”, H18, Hi, Hq), 1.3 (m, 67 H, H3, H4, H5, H6, H14, H15, H16, H3’, H4’, H5’, H6’, H11’, H12’, H13’, H14’, H15’, H16’, H3”, H4”, H5”, H6”, H14”,H15”, H16”, Hx, Hy, Hz, He, Hf, Hg, Hh, Hm, Hn, Ho, Hr), 1.61 (m, 8H, H2, H2’, H2”, Hw), 2.0 (m, 16H, H7, H7’, H7”, H10, H10’, H13, H13”, Hd,), 2.32 (m, 10 H, H1, H1’, H1”, Hv, Hs), 2.77 (m, 2H, H10), 4.15 (m, 3H), 4.30 (m, 3H), 5.32(m, 2H), 5.36 (m, 10H, H8, H9, H11, H12, H8’, H9’, H11’, H12’, H8”, H9”)
13C NMR: δ 14.3 (C17, C17’, C17”, C18), 22.71 (C16, C16’, C16”, Cz), 22.79 (C2, C2’, C2”, Cw), 22.90, 25.06, 25.29, 25.84, 27.41, 27.44, 27.80, 29.02, 29.27, 29.34, 29.39, 29.54, 29.70, 29.74, 29.84, 29.88, 29.92, 30.66, 31.68, 31.74, 32.12, 32.75, 34.24, 34.41, 62.31 (Ca, Cc), 69.09 (Cb), 128.10, 128.28, 128.45, 129.92, 130.23, 130.44, 173.04, 173.46, 174.13.
結論を言うと、ゴマ油中のエナント酸テストステロンの混合物を光照射によるストレス処理(ICHガイドラインに特定されるような)した後に、新しい付加物が形成された。この付加物を分取用HPLCで精製して過剰溶媒を蒸発させ、精製画分1(正味重量:587mg)を得た。H NMR及びC13 NMRのデータによれば、精製画分1には、2種の主要付加物、即ち、OLL+TE+Na(付加物A)及びOOL+TE+Na(付加物B;スキーム1)が含まれる。プロトンNMRデータに基づくと、この2種の付加物の純度(m/z=1304とm/z=1306の合算)は、およそ86%である。質量スペクトルデータは、この2種の付加物イオンが同じイオン化条件下でほぼ等しい強度を有することを示した。同等のイオン化エネルギーを仮定すると、この2種の付加物は、この画分においてほぼ50:50の混合物として存在した。故に、精製画分1は、所与のTE-ゴマ油生成物において不純物として存在し得るOLL+TE+Na付加物又はOOL+TE+Na付加物について評価するのに有用であり得る。
【0202】
実施例2: Xyosted医薬品における光分解について評価するためのHPLC-MS法の方法開発の概要
Xyosted医薬品(Drug Product)におけるエナント酸テストステロン(TE)の光分解産物は、初期開発レベルのHPLC法では検出し得なかった。これらの方法は、順相から逆相に及ぶカラム極性、様々な炭素鎖長、及び水性ベースの移動相から純粋に有機溶媒ベースの移動相に及ぶ異なる溶離力の移動相の多重的な組合せで構成された。光分解産物は、典型的には低分子(極性と非極性の両方)が出現するクロマトグラフィーにおいて検出されなかったため、光分解産物は、九分通りTE分子の分解生成物ではないが、TE分子とトリグリセリド類(TG)(ゴマ油の主要成分である)との付加物であると仮定された。
【0203】
方法開発の主たる挑戦課題の1つは、光分解された医薬品試料を溶かすHPLC適合溶媒の同定であった。医薬品のICH光条件への暴露後には、アッセイにおいておよそ60~90%の減少が観測されたため、実質的な分解が起きたと結論された。この光分解された医薬品試料は、予備的HPLC法において使用される試料希釈液、即ち、DMF/ACN:80/20に完全には溶解せず、DMSOのような、よく使用される他の数種の高可溶化溶媒にも十分には溶解しなかった。試験した数多くの溶媒の中で、この光分解医薬品を完全に溶解することができた唯一の溶媒は、アルコール類(例えばエタノール又はイソプロパノール)であった。したがって、溶出性の移動相としてエタノールを選択した。方法の最適化に続いて、光強制分解に使用される最終の最適化HPLC条件を表3に示す。
【0204】
【表3】
【0205】
ICH光条件へ暴露した非保護化充填済シリンジ(PFS)中のTE注射液と対照(即ち、ICH光条件へ暴露しない同じ医薬品試料)のクロマトグラム例を、図1には242nmでのUV検出で、図30には荷電化粒子検出(CAD)で示す。加えて、光ストレス試料と対照試料の両方について、表3に収載したのと同じ条件であるが質量分析法(MS)検出を加えて、クロマトグラフ処理した。このMS結果に基づいた、図1図30に示されるピークについてのピーク同定を表4に要約する。
【0206】
【表4】
【0207】
HPLC法の安定性表示能力は、しばしば、活性ピークのピーク純度と質量バランス(これは、検定量と全不純物量の和である)に基づいて決定される。主要ピークのピーク純度については先に実証されており、表3の方法を使用する光分解産物の検出は、光分解産物がこのクロマトグラムではかなり後半に溶出されるため、この評価を変えなかった。安定性表示能力について評価するために質量バランスを使用するには、不純物の相対応答因子(RRF)を決定し得て、その不純物の大多数が正確に定量し得るように、十分に特徴付けられた真正の不純物標準品が必要である。
【0208】
あるいは、HPLC法の安定性表示能力は、クロマトグラフィーと検出の包含性に基づいて評価することができる。提案されたHPLC法では、その勾配プログラムが70%エタノール/27%水/3%アセトニトリルから100%エタノールに及び、医薬品だけでなく、TE-TG付加物を含めたすべての疎水性ゴマ油成分を溶出することが可能であるため、すべての光分解産物が検出される。加えて、普遍的な検出(CAD及びMS)を使用して、UV発色団が弱い潜在的な分解産物を検出し得ることを確実にした。
【0209】
実施例1に記載したように、TE+TG付加物に対応する、22.5~24分の保持時間(RT)での画分を分取用HPLCによって単離し、MS及びNMRにより、2種の主要なTE-TG付加物をTE-OLL及びTE-OLLとして同定した。これらTE-TG付加物の構造は、スキーム1に示すように、TGのリノレオイル脂肪酸側鎖上の2つのホモ共役2重結合間、即ちC11位に近接して位置するメチレン基にて、TEのA環上のカルボニル基と反応することによって形成されると推測された。
【0210】
USPによるゴマ油のTG組成を表5に示す。スキーム1に示す光分解に基づくと、潜在的な光分解産物は、TEとリノレオイル脂肪酸を含有するTGとの間の付加物、即ち、TE-OLL、TE-OOL、TE-LLL、TE-POL、TE-PLL、及びTE-SOLであり、OLL及びOOLがゴマ油で報告された2つの主要TG成分であるため、TE-OLL及びTE-OOLが優勢な分解産物である。他の分解産物には、2個のTE分子と2つのリノレオイル脂肪酸鎖を含有する1個のTG分子との付加物、又は3個のTE分子と3つのリノレオイル脂肪酸鎖を含有する1個のTG分子と間の付加物も含まれ得る。
【0211】
【表5】
【0212】
TE-TG付加物のクロマトグラフィー分離の準備として、LC-MS法の限度試験を開発して、2種の主要分解産物、即ちTE-OLL及びTE-OOLについて選択的に評価した。この新しいLC-MS法でのMS検出に必要とされるいくつかのマイナー修飾を加えて、表1に示すクロマトグラフィー条件を採用した。
【0213】
実施例3: テストステロンエステルトリグリセリド製剤の光分解に対する抗酸化剤の効果
ゴマ油は、Xyostedエナント酸テストステロン(TE)注射用医薬品の媒体である。ゴマ油は、様々なトリグリセリド(TG)より構成されており、米国薬局方(USP)グレードのゴマ油のTG組成が表5に示されている。リノレオイル側鎖のような、ホモ共役2重結合を含有する側鎖を有するTGは、酸素、又は光及び酸素の存在下で自動酸化を受け易い。リノレオイル側鎖の自動酸化は、スキーム5に示すように、リノレオイルヒドロペルオキシドを、リノレオイルフリーラジカル及びリノレオイルペルオキシラジカルとともに産生する。リノレオイルフリーラジカル及びリノレオイルペルオキシラジカルはが反応性であるため、自動酸化は自己触媒的な連鎖反応である。
【0214】
【化25】
【0215】
スキーム5において、「In・」は、連鎖反応を開始させる分子種を表し、O又は光であり得る。工程において形成されるリノール酸フリーラジカルは2重アリルであることに注目されたい。一度形成されると、このラジカルは、工程において分子状酸素と反応してリノール酸ペルオキシラジカルを生成し、これは工程において別のリノール酸分子より水素原子を抜き取り、それがリノール酸のヒドロペルオキシドと新たなリノール酸フリーラジカルを生成し、それによってこの連鎖反応が伝播される。TGの酸化の程度は、過酸化物価(PV)と呼ばれるUSP試験によって測定することができる。過酸化物価は、1キログラムの油脂あたりの過酸化酸素の量(ミリ当量のO/kgの油脂)として定義される。表6に示すように、Xyosted医薬品のPVは経時的に増加し、医薬品中のゴマ油(又はTG)が経時的に酸化されることを示した。
【0216】
【表6】
【0217】
ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)は、フリーラジカルスカベンジャーとして作用する、公知の抗酸化剤である。それは、スキーム6に示すように(R・は、リノレオイルフリーラジカル又はリノレオイルペルオキシラジカルであり得る)、BHTラジカルを産生しながら、水素原子を供与し、ペルオキシラジカルをヒドロペルオキシドへ変換してTGラジカルをTGへ変換することによって、TGの自動酸化を停止させる。
【0218】
【化26】
【0219】
一度形成されると、BHTラジカルは、その大きなtert-ブチル基が多大な立体障害を創出し、不対電子を有する酸素原子が反応を可能にするのに必要とされる他の分子との接触をなし得ないため、さらに反応することができない。BHTラジカルの形成がラジカル連鎖反応(例えば、スキーム5における自動酸化)を停止させるのである。表6に示すように、25℃/60% RHで24ヶ月間保存した場合、ゴマ油の酸化は、BHT無しでのPVレベルおよそ70~80と比較して、0.06~0.07%のBHTの存在下で、PVレベルが非常に低いレベル(即ち、<12)に維持されたので、効果的に阻害された。
【0220】
当該医薬品のICH光条件への暴露、即ち、200ワット時/m以上のUV光暴露及び120万ルクス時以上の可視光暴露を含めた暴露の後、測定値は、50mg/0.5mL濃度のTE製剤では100%から42.8%へ、100mg/0.5mL濃度のTE製剤では100%から63.4%へ減少した。したがって、この低下は、全体でおよそ37~57%の光分解を示している(表7)。しかしながら、表7に示されるように、光分解は、0.06~0.07%BHTの存在下では、50mg/0.5mL濃度製剤及び100mg/0.5mL濃度製剤でそれぞれおよそ42%及びおよそ32%低下した。
【0221】
【表7】
【0222】
抗酸化剤としてトコフェロールを使用して、同様の結果を得た。50mg/0.5mLの試料を利用して、10μLのトコフェロールの有無で、1×ICH光条件へ暴露した(表8、図31図46)。この医薬品に約2%の(±)-α-トコフェロールを添加すると、1×ICH光条件への暴露後に光分解が約62.3%~約47.2%低下した。
【0223】
【表8】
【0224】
本発明のいくつかの態様について上に記載及び/又は例示してきたが、当業者には、先述の開示より、様々な他の態様が明らかであろう。故に、本発明は、記載及び/又は例示された特定の態様に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲及び精神より逸脱すること無く、多くの変更及び改変が可能である。
本願は以下の発明を包含する。
[項目1] 非経口投与用の医薬製剤であって、式1:
【化1】
のテストステロンエステル、抗酸化剤、及び式2:
【化2】
のトリグリセリドを含んでなる医薬的に許容される担体を含んでなり、
式中:
は、アルキル又はアルケニル置換基であり;
、R 、及びR のそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及びステアリン酸から成る群より選択される脂肪酸に対応するアシル基である、
前記医薬製剤。
[項目2] R が、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、シクロペンチルエチル、及びこれらの不飽和類似体から成る群より選択される、項目1の医薬製剤。
[項目3] テストステロンエステルが、エナント酸テストステロン、シピオン酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、又はウンデカン酸テストステロンである、項目1の医薬製剤。
[項目4] テストステロンエステルがエナント酸テストステロンである、項目1の医薬製剤。
[項目5] トリグリセリドが、LLL、OLL、OOL、OOO、PLL、POL、POO、及びSOLから成る群より選択される、項目1の医薬製剤。
[項目6] 医薬的に許容される担体が植物油を含む、項目1の医薬製剤。
[項目7] 植物油がゴマ油である、項目6の医薬製剤。
[項目8] 抗酸化剤が、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸及びその塩、ビタミンE、ナイアシンアミド、メチオニン、モノチオグリセロール、二亜硫酸ナトリウム、システイン、亜ジチオン酸ナトリウム、ゲンチジン酸、並びにグルタミン酸一ナトリウムから成る群より選択される、項目1の医薬製剤。
[項目9] テストステロンエステルがエナント酸テストステロンであり、医薬的に許容される担体がゴマ油を含み、そして抗酸化剤がBHTである、項目1の医薬製剤。
[項目10] エナント酸テストステロンの濃度が50mg/mL~200mg/mLである、項目9の医薬製剤。
[項目11] BHTの濃度が0.01%~0.1%である、項目10の医薬製剤。
[項目12] BHTの濃度が0.1mg/mL~1mg/mLである、項目10の医薬製剤。
[項目13] 式3:
【化3】
のテストステロンエステル付加物であって、
式中:
は、それぞれの独立した出現時に同じでも異なってもよいアルキル又はアルケニル置換基であり;
は、不飽和脂肪酸に対応するアシル基であり;
Gは、グリセロール、モノグリセリド、又はジグリセリド残基であり;
nは、1、2、又は3であり;そして
テストステロン残基は、R のアリル炭素又は2重アリル炭素へ連結する、
前記テストステロンエステル付加物。
[項目14] 式4:
【化4】
を有する、項目13のテストステロンエステル付加物。
[項目15] R が、それぞれの独立した出現時に、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、シクロペンチルエチル、及びこれらの不飽和類似体から成る群より選択される、項目13のテストステロンエステル付加物。
[項目16] R がヘキシルである、項目13のテストステロンエステル付加物。
[項目17] 式5、式6、式7、式8、又は式9:
【化5-1】
【化5-2】
を有し、
式中、R 及びR のそれぞれは、独立して、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及びステアリン酸から成る群より選択される脂肪酸に対応するアシル基である、
項目13のテストステロンエステル付加物。
[項目18] 式10:
【化6】
を有する、項目13のテストステロンエステル付加物。
[項目19] 式11:
【化7】
を有する、項目13のテストステロンエステル付加物。
[項目20] 非経口投与用の医薬製剤であって、式1のテストステロンエステル、式2のトリグリセリドを含んでなる医薬的に許容される担体、及び任意に項目13~19のいずれか1項のテストステロンエステル付加物を0.000mg/ml~25mg/mlの濃度で含んでなり、式中:
は、アルキル又はアルケニル置換基であり;そして
、R 、及びR のそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及びステアリン酸から成る群より選択される脂肪酸に対応するアシル基である、
前記医薬製剤。
[項目21] R が、それぞれの独立した出現時に、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、シクロペンチルエチル、及びこれらの不飽和類似体から成る群より選択される、項目20の医薬製剤。
[項目22] テストステロンエステルが、エナント酸テストステロン、シピオン酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、又はウンデカン酸テストステロンである、項目20の医薬製剤。
[項目23] テストステロンエステルがエナント酸テストステロンである、項目20の医薬製剤。
[項目24] トリグリセリドが、LLL、OLL、OOL、OOO、PLL、POL、POO、及びSOLから成る群より選択される、項目20の医薬製剤。
[項目25] 医薬的に許容される担体が植物油を含む、項目20の医薬製剤。
[項目26] 抗酸化剤をさらに含んでなる、項目20の医薬製剤。
[項目27] 抗酸化剤が、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸及びその塩、ビタミンE、ナイアシンアミド、メチオニン、モノチオグリセロール、二亜硫酸ナトリウム、システイン、亜ジチオン酸ナトリウム、ゲンチジン酸、並びにグルタミン酸一ナトリウムから成る群より選択される、項目26の医薬製剤。
[項目28] テストステロンエステルがエナント酸テストステロンであり、医薬的に許容される担体がゴマ油を含み、抗酸化剤がBHTであり、そしてテストステロン付加物が式10を有する、項目26の医薬製剤。
[項目29] 式11のテストステロンエステル付加物をさらに含んでなる、項目28の医薬製剤。
[項目30] テストステロンエステルがエナント酸テストステロンであり、医薬的に許容される担体がゴマ油を含み、抗酸化剤がBHTであり、そしてテストステロンエステル付加物が式11を有する、項目26の医薬製剤。
[項目31] エナント酸テストステロンの濃度が50mg/mL~200mg/mLである、項目26の医薬製剤。
[項目32] BHTの濃度が0.01%~0.1%、又は0.1mg/mL~1mg/mLである、項目28の医薬製剤。
[項目33] 式10のテストステロンエステル付加物の濃度が、エナント酸テストステロンの濃度より小さい、項目28又は29の医薬製剤。
[項目34] 式11のテストステロンエステル付加物の濃度が、エナント酸テストステロンの濃度より小さい、項目29又は30の医薬製剤。
[項目35] 非経口投与用の光安定性テストステロンエステル医薬製剤であって、式1のテストステロンエステル、抗酸化剤、及び式2のトリグリセリドを含んでなる医薬的に許容される担体を含んでなり、式中:
は、アルキル又はアルケニル置換基であり;そして
、R 、及びR のそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及びステアリン酸から成る群より選択される脂肪酸に対応するアシル基であり、
該製剤の光安定性は、該製剤の作製後30~60日の間に、利用可能なテストステロンエステルの濃度を測定して、それを該製剤の初期テストステロンエステル濃度と比較することによって評価される、前記医薬製剤。
[項目36] 非経口投与用の光安定性テストステロンエステル医薬製剤であって、式1のテストステロンエステル、抗酸化剤、及び式2のトリグリセリドを含んでなる医薬的に許容される担体を含んでなり、式中:
は、アルキル又はアルケニル置換基であり;そして
、R 、及びR のそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及びステアリン酸から成る群より選択される脂肪酸に対応するアシル基であり、
該製剤の光安定性は、該製剤の作製後30~60日の間に、利用可能なテストステロンエステルの濃度を測定して、それを該製剤の初期テストステロンエステル濃度と比較することによって、及び項目13~19のいずれか1項のテストステロンエステル付加物の該製剤中の存在を検出してその濃度を測定することによって評価される、前記医薬製剤。
[項目37] 非経口投与用の光安定性テストステロンエステル医薬製剤であって、式1のテストステロンエステル、抗酸化剤、及び式2のトリグリセリドを含んでなる医薬的に許容される担体を含んでなり、式中:
は、アルキル又はアルケニル置換基であり;そして
、R 、及びR のそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及びステアリン酸から成る群より選択される脂肪酸に対応するアシル基であり、
該製剤の光安定性は、該医薬製剤を200ワット時/m のUV光と120万ルクス時以上の可視光暴露へ暴露し、利用可能なテストステロンエステルの濃度を測定して、それを該製剤の初期テストステロンエステル濃度と比較することによって評価される、前記医薬製剤。
[項目38] 非経口投与用の光安定性テストステロンエステル医薬製剤であって、式1のテストステロンエステル、抗酸化剤、及び式2のトリグリセリドを含んでなる医薬的に許容される担体を含んでなり、式中:
は、アルキル又はアルケニル置換基であり;そして
、R 、及びR のそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及びステアリン酸から成る群より選択される脂肪酸に対応するアシル基であり、
該製剤の光安定性は、該医薬製剤を200ワット時/m のUV光と120万ルクス時以上の可視光暴露へ暴露し、利用可能なテストステロンエステルの濃度を測定し、それを該製剤の初期テストステロンエステル濃度と比較して、項目13~19のいずれか1項のテストステロンエステル付加物の該製剤中の存在を検出してその濃度を測定することによって評価される、前記医薬製剤。
[項目39] 利用可能なテストステロンエステルの濃度が、初期テストステロンエステル濃度の少なくとも66.8%~75.0%である、項目35~38のいずれか1項の光安定性テストステロンエステル医薬製剤。
[項目40] テストステロンエステル付加物の該製剤中の濃度が、利用可能なテストステロンエステルの濃度より小さい、項目36又は38の光安定性テストステロンエステル医薬製剤。
[項目41] 式1のテストステロンエステル、及び式2のトリグリセリドを含んでなる医薬的に許容される担体を含んでなるテストステロンエステル医薬製剤の光安定性を測定する方法であって:
該製剤の初期テストステロンエステル濃度を測定し;
期間の経過後に、利用可能なテストステロンエステルの該製剤中の濃度を測定し;そして
この2つの濃度を比較する、
ことを含み、
ここで:
は、アルキル又はアルケニル置換基であり;そして
、R 、及びR のそれぞれは、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、リノレン酸、及びステアリン酸から成る群より選択される脂肪酸に対応するアシル基である、
前記方法。
[項目42] 該医薬製剤を、200ワット時/m のUV光と120万ルクス時以上の可視光暴露へ暴露することをさらに含んでなる、項目41の方法。
[項目43] 該医薬製剤が、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸及びその塩、ビタミンE、ナイアシンアミド、メチオニン、モノチオグリセロール、二亜硫酸ナトリウム、システイン、亜ジチオン酸ナトリウム、ゲンチジン酸、並びにグルタミン酸一ナトリウムから成る群より選択される抗酸化剤をさらに含む、項目42の方法。
[項目44] 該期間が30~60日の間である、項目42の方法。
[項目45] 項目13~19のいずれか1項のテストステロンエステル付加物の該医薬製剤中の存在を検出してその濃度を測定することをさらに含んでなる、項目42の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図17
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図19
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図25
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図32
図33
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図41
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