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特許7014930アースバケット認識システム及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】アースバケット認識システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E02D 23/00 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
E02D23/00 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021183469
(22)【出願日】2021-11-10
【審査請求日】2021-11-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】亀井 聡
(72)【発明者】
【氏名】進藤 匡浩
(72)【発明者】
【氏名】菊池 耕生
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特許第6915181(JP,B1)
【文献】特開2017-008565(JP,A)
【文献】特開2019-071592(JP,A)
【文献】特開2015-229826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 23/00
E02D 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーソンの作業室内にあるアースバケットの姿勢を認識するアースバケット認識システムにおいて、
前記作業室内にあるセンサの位置から取得対象までの距離情報を示す点群データを取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記ケーソンの作業室内の点群データから、前記ケーソンの作業室内にあるアースバケットの点群データを抽出する抽出手段と、
前記抽出手段で抽出されたアースバケットの点群データを3次元空間上の座標データに座標変換する変換手段と、
前記3次元空間上の円筒の側面を示す方程式を満たす座標の集合からなる数学モデルと、前記変換手段によって座標変換された座標データとを重ね合わせたときの誤差に基づいて、前記アースバケットの姿勢を認識する認識手段とを備えること
を特徴とするアースバケット認識システム。
【請求項2】
前記認識手段は、前記数学モデルと、前記座標データとを重ね合わせたときの誤差がより小さくなるように、前記数学モデルを3次元空間上の座標軸を中心に回転させて補正をし、補正した前記数学モデルと、前記座標データとを重ね合わせたときの誤差を算出することを繰り返すこと
を特徴とする請求項1に記載のアースバケット認識システム。
【請求項3】
前記認識手段は、前記数学モデルと、前記座標データとを重ね合わせたときの誤差がより小さくなるように、前記座標データを3次元空間上の座標軸を中心に回転させて補正をし、前記数学モデルと、補正した前記座標データとを重ね合わせたときの誤差を算出することを繰り返すこと
を特徴とする請求項1又は2に記載のアースバケット認識システム。
【請求項4】
前記認識手段は、前記数学モデルと前記座標データとを重ね合わせたときの誤差が最小になるときの前記数学モデル又は前記座標データを補正するために3次元空間上の座標軸を中心に回転させた角度に基づいて、前記アースバケットの姿勢を認識すること
を特徴とする請求項2又は3に記載のアースバケット認識システム。
【請求項5】
前記認識手段は、前記数学モデルと、前記座標データとを重ね合わせたときの誤差がより小さくなるように、前記数学モデルを3次元空間上で並進させて補正をし、補正した前記数学モデルと、前記座標データとを重ね合わせたときの誤差を算出することを繰り返すこと
を特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のアースバケット認識システム。
【請求項6】
前記認識手段は、前記数学モデルと、前記座標データとを重ね合わせたときの誤差がより小さくなるように、前記座標データを3次元空間上で並進させて補正をし、前記数学モデルと、補正した前記座標データとを重ね合わせたときの誤差を算出することを繰り返すこと
を特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載のアースバケット認識システム。
【請求項7】
前記認識手段は、前記数学モデルと前記座標データとを重ね合わせたときの誤差が最小になるときの前記数学モデル又は前記座標データを補正するために3次元空間上で並進させた位置に基づいて、前記アースバケットの姿勢を認識すること
を特徴とする請求項5又は6に記載のアースバケット認識システム。
【請求項8】
前記取得手段は、予め前記アースバケットが取り除かれた前記作業室内の抽出用点群データを取得し、
前記抽出手段は、前記アースバケットがある前記作業室内の点群データから、前記取得手段によって取得された抽出用点群データを削除することにより、前記アースバケットの点群データを抽出すること
を特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載のアースバケット認識システム。
【請求項9】
前記取得手段は、前記ケーソンの作業室内を撮像し、
前記抽出手段は、前記取得手段によって取得された点群データから、前記アースバケットの色を参照し、前記取得手段によって撮像された画像にある前記色の位置に応じた前記点群データを抽出することにより、前記アースバケットの点群データを抽出すること
を特徴とする請求項1~8の何れかに1項に記載のアースバケット認識システム。
【請求項10】
ケーソンの作業室内にあるアースバケットの姿勢を認識するアースバケット認識プログラムにおいて、
前記作業室内にあるセンサの位置から取得対象までの距離情報を示す点群データを取得する取得ステップと、
前記取得ステップによって取得された前記ケーソンの作業室内の点群データから、前記ケーソンの作業室内にあるアースバケットの点群データを抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップで抽出されたアースバケットの点群データを3次元空間上の座標データに座標変換する変換ステップと、
前記3次元空間上の円筒の側面を示す方程式を満たす座標の集合からなる数学モデルと、前記変換ステップによって座標変換された座標データとを重ね合わせたときの誤差に基づいて、前記アースバケットの姿勢を認識する認識ステップとをコンピュータに実行させること
を特徴とするアースバケット認識プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーソンの作業室内にあるアースバケットを認識するアースバケット認識システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁や建物の基礎、シールドトンネルの発進立坑などの地下構造物を構築する工法として、ニューマチックケーソン工法が知られている。ニューマチックケーソン工法は、ケーソンの本体下部に作業室を設け、その中に圧縮空気を送って高気圧状態にし、掘削作業が行なわれている。この高気圧作業室は、高気圧状態であるため、作業員が立ち入ることができる時間が制限されている。このためニューマチックケーソン工法において、水中や高気圧下の工事においては、作業効率の向上や作業環境の安全性の観点から、地上からの遠隔操作によって施工を行なう無人化施工が採用されている。また、このような無人化施工では、高気圧作業室内に設けられた監視カメラによって撮影された高気圧作業室内の作業状況の画像を、高気圧作業室から離れた陸上の安全な遠隔作業室に設置されたモニタに表示し、オペレータがこの画面を見ながら掘削機等の作業機械を遠隔操作し、施工を行なっている。
【0003】
また、遠隔にいる作業者であっても実現場環境を把握しやすくなるように、監視カメラによって撮影された作業状況の画像から、作業室内における表示対象を抽出する遠隔施工管理システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の開示技術によれば、ケーソンの作業室内を撮像し、表示装置が、作業室外において用いられ利用者が装着可能であり撮像された画像を表示し、表示制御部が、利用者の姿勢に応じて、作業室内における表示対象となる領域の位置を変更して表示装置に表示させる。これにより、オペレータがあたかも実現場にいるような感覚で、安全な遠隔操作室から作業することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-71592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したニューマチックケーソン工法において、ケーソンの作業室内で掘削機によって掘削した土砂は、ケーソンの作業室内で一か所に山積みにされる。山積みにされた土砂は、土砂を輸送するために地上からワイヤーによって吊るされたアースバケットへ、掘削機を用いて詰め込まれる。掘削機によって土砂を詰め込まれたアースバケットは、地上へと引っ張り上げられ、アースバケットに詰め込まれた土砂は、地上へと輸送される。これらの一連の作業によって、ケーソンの作業室内で掘削機によって掘削した土砂を地上へと輸送することができる。
【0007】
ところで、ケーソンの作業室内でのアースバケットの姿勢は、例えばアースバケットが置かれた地面の傾きや形状等によって大きく変わる。例えば、アースバケットが傾斜のある地面に置かれた場合、アースバケットは、地面の傾斜に応じて傾く。傾いたアースバケットに土砂を詰め込むためには、アースバケットの傾きに応じて、掘削機の位置及び角度を調節し、掘削機を遠隔操作する必要がある。即ち、掘削機を用いて、アースバケットに土砂を詰め込む作業を遠隔操作する場合、アースバケットの姿勢に応じて、掘削機を精度よく操作することが求められる。このため、アースバケットの姿勢を正確に認識する必要がある。
【0008】
一方、特許文献1では、アースバケットの傾きの角度等を正確に推測する方法が記載されていない。このため、特許文献1の開示技術ではアースバケットの姿勢を正確に認識できないという問題点があった。
【0009】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、アースバケットの姿勢を正確に認識するためのアースバケット認識システム及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係るアースバケット認識システムは、ケーソンの作業室内にあるアースバケットの姿勢を認識するアースバケット認識システムにおいて、前記作業室内にあるセンサの位置から取得対象までの距離情報を示す点群データを取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記ケーソンの作業室内の点群データから、前記ケーソンの作業室内にあるアースバケットの点群データを抽出する抽出手段と、前記抽出手段で抽出されたアースバケットの点群データを3次元空間上の座標データに座標変換する変換手段と、前記3次元空間上の円筒の側面を示す方程式を満たす座標の集合からなる数学モデルと、前記変換手段によって座標変換された座標データとを重ね合わせたときの誤差に基づいて、前記アースバケットの姿勢を認識する認識手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
第2発明に係るアースバケット認識システムは、第1発明において、前記認識手段は、前記数学モデルと、前記座標データとを重ね合わせたときの誤差がより小さくなるように、前記数学モデルを3次元空間上の座標軸を中心に回転させて補正をし、補正した前記数学モデルと、前記座標データとを重ね合わせたときの誤差を算出することを繰り返すことを特徴とする。
【0012】
第3発明に係るアースバケット認識システムは、第1発明又は第2発明において、前記認識手段は、前記数学モデルと、前記座標データとを重ね合わせたときの誤差がより小さくなるように、前記座標データを3次元空間上の座標軸を中心に回転させて補正をし、前記数学モデルと、補正した前記座標データとを重ね合わせたときの誤差を算出することを繰り返すことを特徴とする。
【0013】
第4発明に係るアースバケット認識システムは、第2発明又は第3発明において、前記認識手段は、前記数学モデルと前記座標データとを重ね合わせたときの誤差が最小になるときの前記数学モデル又は前記座標データを補正するために3次元空間上の座標軸を中心に回転させた角度に基づいて、前記アースバケットの姿勢を認識することを特徴とする。
【0014】
第5発明に係るアースバケット認識システムは、第1発明~第4発明の何れか一つにおいて、前記認識手段は、前記数学モデルと、前記座標データとを重ね合わせたときの誤差がより小さくなるように、前記数学モデルを3次元空間上で並進させて補正をし、補正した前記数学モデルと、前記座標データとを重ね合わせたときの誤差を算出することを繰り返すことを特徴とする。
【0015】
第6発明に係るアースバケット認識システムは、第1発明~第5発明の何れか一つにおいて、前記認識手段は、前記数学モデルと、前記座標データとを重ね合わせたときの誤差がより小さくなるように、前記座標データを3次元空間上で並進させて補正をし、前記数学モデルと、補正した前記座標データとを重ね合わせたときの誤差を算出することを繰り返すことを特徴とする。
【0016】
第7発明に係るアースバケット認識システムは、第5発明又は第6発明において、前記認識手段は、前記数学モデルと前記座標データとを重ね合わせたときの誤差が最小になるときの前記数学モデル又は前記座標データを補正するために3次元空間上で並進させた位置に基づいて、前記アースバケットの姿勢を認識することを特徴とする。
【0017】
第8発明に係るアースバケット認識システムは、第1発明~第7発明の何れか一つにおいて、前記取得手段は、予め前記アースバケットが取り除かれた前記作業室内の抽出用点群データを取得し、前記抽出手段は、前記アースバケットがある前記作業室内の点群データから、前記取得手段によって取得された抽出用点群データを削除することにより、前記アースバケットの点群データを抽出することを特徴とする。
【0018】
第9発明に係るアースバケット認識システムは、第1発明~第8発明の何れか一つにおいて、前記取得手段は、前記ケーソンの作業室内を撮像し、前記抽出手段は、前記取得手段によって取得された点群データから、前記アースバケットの色を参照し、前記取得手段によって撮像された画像にある前記色の位置に応じた前記点群データを抽出することにより、前記アースバケットの点群データを抽出することを特徴とする。
【0019】
第10発明に係るアースバケット認識プログラムは、ケーソンの作業室内にあるアースバケットの姿勢を認識するアースバケット認識プログラムにおいて、前記作業室内にあるセンサの位置から取得対象までの距離情報を示す点群データを取得する取得ステップと、前記取得ステップによって取得された前記ケーソンの作業室内の点群データから、前記ケーソンの作業室内にあるアースバケットの点群データを抽出する抽出ステップと、前記抽出ステップで抽出されたアースバケットの点群データを3次元空間上の座標データに座標変換する変換ステップと、前記3次元空間上の円筒の側面を示す方程式を満たす座標の集合からなる数学モデルと、前記変換ステップによって座標変換された座標データとを重ね合わせたときの誤差に基づいて、前記アースバケットの姿勢を認識する認識ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
第1発明~第9発明によれば、本発明のアースバケット認識システムは、3次元空間上の円筒の側面を示す方程式を満たす座標の集合からなる数学モデルと、座標データとを重ね合わせたときの誤差に基づいて、アースバケットの姿勢を認識する。これによって、アースバケットの位置や傾きを認識することが可能となり、掘削機を用いて、アースバケットに土砂を詰め込む作業を遠隔操作する場合、アースバケットの姿勢に応じて、掘削機を精度よく操作することができる。
【0021】
特に、第2発明によれば、本発明のアースバケット認識システムは、数学モデルと、座標データとを重ね合わせたときの誤差が小さくなるように、円筒の軸方向に対する3次元空間上の座標軸との角度を補正し、補正した数学モデルと、座標データとを重ね合わせたときの誤差を算出する。これによって、アースバケットの姿勢により近い数学モデルとの誤差の算出が可能となり、より精度よくアースバケットの姿勢を認識することができる。
【0022】
特に、第3発明によれば、本発明のアースバケット認識システムは、数学モデルと、座標データとを重ね合わせたときの誤差が小さくなるように、円筒の軸方向に対する3次元空間上の座標軸との角度を補正し、数学モデルと、補正した座標データとを重ね合わせたときの誤差を算出する。これによって、アースバケットの姿勢により近い座標データとの誤差の算出が可能となり、より精度よくアースバケットの姿勢を認識することができる。
【0023】
特に、第4発明によれば、本発明のアースバケット認識システムは、数学モデルと座標データとを重ね合わせたときの誤差が最小になるときの円筒の軸方向に対する3次元空間上の座標軸との角度に基づいて、アースバケットの姿勢を認識する。これによって、アースバケットの姿勢をより正確に認識することが可能となり、掘削機を用いて、アースバケットに土砂を詰め込む作業を遠隔操作する場合、アースバケットの姿勢に応じて、掘削機をさらに精度よく操作することができる。
【0024】
特に、第5発明によれば、本発明のアースバケット認識システムは、数学モデルと、座標データとを重ね合わせたときの誤差が小さくなるように並進させて補正し、補正した数学モデルと、座標データとを重ね合わせたときの誤差を算出する。これによって、アースバケットの姿勢により近い数学モデルとの誤差の算出が可能となり、より精度よくアースバケットの姿勢を認識することができる。
【0025】
特に、第6発明によれば、本発明のアースバケット認識システムは、数学モデルと、座標データとを重ね合わせたときの誤差が小さくなるように、3次元空間上で並進させて補正し、数学モデルと、補正した座標データとを重ね合わせたときの誤差を算出する。これによって、アースバケットの姿勢により近い座標データとの誤差の算出が可能となり、より精度よくアースバケットの姿勢を認識することができる。
【0026】
特に、第7発明によれば、本発明のアースバケット認識システムは、数学モデルと座標データとを重ね合わせたときの誤差が最小になるときの3次元空間上で並進させた位置に基づいて、アースバケットの姿勢を認識する。これによって、アースバケットの姿勢をより正確に認識することが可能となり、掘削機を用いて、アースバケットに土砂を詰め込む作業を遠隔操作する場合、アースバケットの姿勢に応じて、掘削機をさらに精度よく操作することができる。
【0027】
特に、第8発明によれば、本発明のアースバケット認識システムは、アースバケットがある作業室内の点群データから、抽出用点群データを削除することにより、アースバケットの点群データを抽出する。これによって、2種類の点群データから、アースバケットの点群データを正確に抽出することが可能となり、より精度よくアースバケットの姿勢の認識ができる。
【0028】
特に、第9発明によれば、本発明のアースバケット認識システムは、点群データから、アースバケットの色を参照し、画像にある色の位置に応じた点群データを抽出することにより、アースバケットの点群データを抽出する。これによって、画像と点群データから、アースバケットの点群データを正確に抽出することが可能となり、より精度よくアースバケットの姿勢の認識ができる。
【0029】
第10発明によれば、本発明のアースバケット認識プログラムは、3次元空間上の円筒の側面を示す方程式を満たす座標の集合からなる数学モデルと、座標データとを重ね合わせたときの誤差に基づいて、アースバケットの姿勢を認識する。これによって、アースバケットの位置や傾きを認識することが可能となり、掘削機を用いて、アースバケットに土砂を詰め込む作業を遠隔操作する場合、アースバケットの姿勢に応じて、掘削機を精度よく操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、ニューマチックケーソン工法の主要設備を示す縦断面図である。
図2図2は、本発明に係る作業機の一例である掘削機の側面図である。
図3図3は、掘削機における制御系統を示すブロック図である。
図4図4は、発明を適用したアースバケット認識システムの全体構成を示すブロック図である。
図5図5は、本発明を適用したアースバケット認識システムの動作についてのフローチャートである。
図6図6は、抽出用点群データを用いた、アースバケットの点群データの抽出方法の一例を示す図である。
図7図7は、画像と点群データを用いて、アースバケットの点群データの抽出方法の一例を示す図である。
図8図8は、数学モデルの一例を示す図である。
図9図9は、数学モデルと、座標データとを用いて、アースバケットの姿勢を認識する手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明に係る作業機の一例である掘削機が用いられるニューマチックケーソン工法の主要設備の一例を示す図である。ニューマチックケーソン工法は、掘削設備E1、艤装設備E2、排土設備E3、送気設備E4及び予備・安全設備E5を用いて、鉄筋コンクリート製のケーソン1を地中に沈下させていくことにより、地下構造物を構築するように構成されている。
【0032】
掘削設備E1は、例えば、掘削機100(以下、ケーソンショベル100という)と、土砂自動積込装置11と、地上遠隔操作室13とを備える。ケーソンショベル100は、ケーソン1の底部に設けられた作業室2内に設置される。土砂自動積込装置11は、ケーソンショベル100により掘削された土砂を円筒状のアースバケット31に積み込む。地上遠隔操作室13は、ケーソンショベル100の作動を地上から遠隔操作する遠隔操作装置12を備える。
【0033】
艤装設備E2は、例えば、マンシャフト21と、マンロック22(エアロック)と、マテリアルシャフト23と、マテリアルロック24(エアロック)とを備える。マンシャフト21は、作業者が作業室2へ出入りするために地上と作業室2とを繋ぐ円筒状の通路であり、例えば、螺旋階段25が設けられている。マンロック22は、マンシャフト21に設けられ地上の大気圧と作業室2内の圧力差を調節する二重扉構造の気密扉である。マテリアルシャフト23は、土砂自動積込装置11により土砂が積み込まれたアースバケット31を地上に運び出すために地上と作業室2とを繋ぐ円筒状の通路である。マテリアルロック24は、マテリアルシャフト23と、材料等を搬出入するためのマテリアルシャフト23に設けられた地上の大気圧と作業室2内の圧力差を調節する二重扉構造の気密扉である。マンロック22およびマテリアルロック24は、作業室2内の気圧が変化することを抑えて作業者やアースバケット31を作業室2へ出入りさせることが可能になるように構成されている。
【0034】
排土設備E3は、例えば、アースバケット31と、キャリア装置32と、土砂ホッパー33とを備える。アースバケット31は、ケーソンショベル100により掘削された土砂が積み込まれる有底円筒状の筒容器である。キャリア装置32は、アースバケット31を、マテリアルシャフト23を介して地上まで引き上げて運び出す装置である。土砂ホッパー33は、アースバケット31およびキャリア装置32により地上に運び出された土砂を一時的に貯めておく設備である。
【0035】
送気設備E4は、例えば、空気圧縮機42と、空気清浄装置43と、送気圧力調整装置44と、自動減圧装置45とを備える。空気圧縮機42は、送気管41およびケーソン1に形成された送気路3を介して作業室2内に圧縮空気を送る装置である。空気清浄装置43は、空気圧縮機42により送り込む圧縮空気を浄化する装置である。送気圧力調整装置44は、作業室2内の気圧が地下水圧と等しくなるように空気圧縮機42から作業室2内へ送る圧縮空気の量(圧力)を調整する装置である。自動減圧装置45は、マンロック22内の気圧を減圧する装置である。
【0036】
予備・安全設備E5は、例えば、非常用空気圧縮機51と、ホスピタルロック53とを備える。非常用空気圧縮機51は、空気圧縮機42の故障又は点検などの時に空気圧縮機42に代わって作業室2内に圧縮空気を送ることが可能な装置である。ホスピタルロック53は、作業室2内で作業を行った作業者が入り、当該作業者の身体を徐々に大気圧に慣らしていくための減圧室である。
【0037】
次に、本発明に係るケーソンショベル100について図2図3を用いて説明する。ケーソンショベル100は、図2に示すように、例えば、走行体110と、ブーム130と、バケットアタッチメント150とを備える。走行体110は、作業室2の天井部に設けられた左右一対の走行レール4に取り付けられ、左右の走行レール4に懸下された状態で走行レール4に沿って走行移動する。ブーム130は、走行体110の旋回フレーム121に上下方向に揺動可能に枢結される。バケットアタッチメント150は、ブーム130の先端部に取り付けられる。
【0038】
走行体110は、走行フレーム111と、旋回フレーム121と、走行ローラ113とを備える。旋回フレーム121は、走行フレーム111の下面側に旋回自在に設けられる。走行ローラ113は、走行フレーム111の上面側前後に、設けられている前後左右の4個のローラである。走行体110は、前後左右の走行ローラ113を回転駆動させて左右の走行レール4に沿って走行移動するように構成されている。
【0039】
ブーム130は、例えば、基端ブーム131と、先端ブーム132と、伸縮シリンダ133と、起伏シリンダ134とを備える。基端ブーム131は、旋回フレーム121に起伏自在又は上下方向に揺動自在に取り付けられる。先端ブーム132は、基端ブーム131に入れ子式に組み合わされ、構成される。伸縮シリンダ133は、基端ブーム131内に設けられている。起伏シリンダ134は、基端ブーム131の左右に2個設けられている。ブーム130は、伸縮シリンダ133を伸縮させると、基端ブーム131に対して先端ブーム132が長手方向に移動し、これによりブーム130が伸縮するように構成されている。2個の起伏シリンダ134の基端部は基端ブーム131の左右側部にそれぞれ回動自在に取り付けられている。
【0040】
バケットアタッチメント150は、ベース部材151と、バケット152と、バケットシリンダ153とを備える。ベース部材151は、先端ブーム132に取り付けられる。バケット152は、ベース部材151の先端部に上下揺動自在に取り付けられる。バケットシリンダ153は、ベース部材151に対してバケット152を上下揺動させるように構成される。
【0041】
コントロールユニット165は、図3に示すように、メインコントローラ165aと、走行体用コントローラ165bと、ブーム・バケット用コントローラ165cとを備える。また、コントロールユニット165は、ケーソンショベル100と、遠隔操作装置12と接続されていてもよい。コントロールユニット165は、遠隔操作装置12に内蔵されていてもよい。メインコントローラ165aは、走行体用コントローラ165bと、ブーム・バケット用コントローラ165cとに接続され、遠隔操作装置12からの操作信号を受けて、その操作信号に応じた駆動制御信号を走行体用コントローラ165bと、ブーム・バケット用コントローラ165cとに出力する。走行体用コントローラ165bは、メインコントローラ165aから出力された駆動制御信号に応じて、走行体110を駆動させるように構成されている。メインコントローラ165aおよび走行体用コントローラ165bは、走行体110の旋回フレーム121に配設されている。ブーム・バケット用コントローラ165cは、メインコントローラ165aから出力された駆動制御信号に応じて、ブーム130及びバケットアタッチメント150を駆動させるように構成されている。ブーム・バケット用コントローラ165cは、ブーム130の基端ブーム131の側部に配設されている。
【0042】
ケーソンショベル100は、図3に示すように、走行体位置センサ201と、旋回角度センサ202と、ブーム起伏角度センサ203と、ブーム伸長量センサ204と、バケット揺動角度センサ205と、外界センサ206とを備える。走行体位置センサ201は、走行体110が走行レール4の何処の位置に位置しているかを検出する。旋回角度センサ202は、走行フレーム111に対する旋回フレーム121の旋回角度を検出する。ブーム起伏角度センサ203は、旋回フレーム121に対するブーム130の起伏角度を検出する。ブーム伸長量センサ204は、ブーム130の伸長量を検出する。バケット揺動角度センサ205は、ブーム130又はバケットアタッチメント150のベース部材151に対するバケット152の揺動角度を検出する。外界センサ206は、走行体110に設けられて作業室2内の掘削地面までの距離、地面の形状などの情報を取得する。また、ケーソンショベル100は、遠隔操作装置12と、コントロールユニット165と通信を行い、各センサ201~206で得たデータを、遠隔操作装置12と、コントロールユニット165とに送信してもよい。
【0043】
走行体位置センサ201は、例えば、走行体110の走行フレーム111に配設されたレーザセンサによって構成される。走行体位置センサ201は、レーザ光を走行レール4の端部又は作業室2の壁部に向けて照射して走行レール4の端部又は作業室2の壁部において反射して戻ってくるまでの時間を測定する。走行体位置センサ201は、この時間に基づいて走行レール4の端部又は作業室2の壁部から走行体110までの距離を検出する。旋回角度センサ202は、例えば、走行体110の旋回フレーム121に配設された光学式のロータリーエンコーダによって構成される。旋回角度センサ202は、走行フレーム111に対する旋回フレーム121の旋回量を電気信号に変換する。旋回角度センサ202は、その信号を演算処理して旋回フレーム121の旋回方向及び位置を含める旋回角度を検出する。なお、走行体位置センサ201及び旋回角度センサ202は一例を説明したもので、走行体の二次元的な位置を検出する他のセンサ、旋回フレーム121の旋回角度を検出する他のセンサをそれぞれ用いてもよい。
【0044】
ブーム起伏角度センサ203は、例えば、起伏シリンダ134のシリンダボトムの側部に配設されたレーザセンサによって構成される。ブーム起伏角度センサ203は、レーザ光を旋回フレーム121に向けて照射して旋回フレーム121において反射して戻ってくるまでの時間を測定する。ブーム起伏角度センサ203は、この時間に基づいて起伏シリンダ134の伸長量を検出し、その起伏シリンダ134の伸長量に基づいて旋回フレーム121に対するブーム130の起伏角度又は起伏位置を検出する。ブーム起伏角度センサ203も一例を説明したものであり、光学式ロータリーエンコーダ、ポテンショメータなどによりブーム130の起伏角を直接検出する他のセンサを用いてもよい。
【0045】
ブーム伸長量センサ204は、例えば、ブーム130の基端ブーム131に配設されたレーザセンサによって構成される。ブーム伸長量センサ204は、レーザ光を先端ブーム132の先端部に取り付けられたバケットアタッチメント150のベース部材151に向けて照射してベース部材151において反射して戻ってくるまでの時間を測定する。ブーム伸長量センサ204は、この時間に基づいて、ブーム130の伸長量として基端ブーム131に対する先端ブーム132の伸長量を検出する。ブーム伸長量センサ204も一例を説明したものであり、ブーム伸縮とともに伸縮するケーブルの伸長量を直接測定する他のセンサを用いてもよい。
【0046】
バケット揺動角度センサ205は、例えば、バケットシリンダ153の油路に配設された流量センサによって構成される。バケット揺動角度センサ205は、バケットシリンダ153に供給される作動油の流量を検出し、その流量の積分値を算出する。バケット揺動角度センサ205は、この流量積分値に基づいてバケットシリンダ153のピストンロッドの伸長量を求め、そのバケットシリンダ153の伸長量に基づいて、バケットアタッチメント150のベース部材151又はブーム130に対するバケット152の揺動角度又は揺動位置を検出する。バケット揺動角度センサ205も一例を説明したものであり、光学式ロータリーエンコーダ、ポテンショメータなどによりバケット152の揺動角度を直接検出他のセンサや、レーザセンサによりバケットシリンダ153の伸長量を求める他のセンサを用いてもよい。
【0047】
外界センサ206は、例えば、走行体110の旋回フレーム121に配設されたRGB‐Dセンサによって構成される。外界センサ206は、掘削地面のRGB画像又はカラー画像および距離画像又は点群データを取得し、それらの画像に基づいて掘削地面までの距離情報、掘削地面の形状情報又はアースバケット31を含める作業室内2の点群データ70を取得する。外界センサ206は、RGB‐Dセンサの他の例として、ステレオカメラや超音波距離計、レーザセンサなどを用いてもよい。
【0048】
走行体位置センサ201、旋回角度センサ202、ブーム起伏角度センサ203、ブーム伸長量センサ204、バケット揺動角度センサ205及び外界センサ206により検出されたそれぞれの情報は、コントロールユニット165のメインコントローラ165aに送信される。メインコントローラ165aは、走行体位置測定部211と、バケット位置測定部212と、地盤形状測定部213とを備える。
【0049】
走行体位置測定部211は、走行体位置センサ201により検出された走行レール4の端部又はは作業室2の壁部から走行体110までの距離情報と、当該走行レール4が作業室2内の何処の位置に設けられた走行レールであるかという情報とを用いて、走行体110が作業室2内のどこに位置しているかを算出する。また、走行レール4が作業室2内の何処の位置に設けられた走行レールであるかという情報は、走行体110が取り付けられた走行レール4の情報であり、走行体110が取り付けられたときに走行体位置測定部211に設定されてもよい。また、走行体位置センサ201による距離情報の検出を周囲複数箇所に対して検出することにより、走行体110の天井内における二次元的な位置又は走行体110の向きを含む位置を検出してもよい。
【0050】
バケット位置測定部212は、旋回角度センサ202により検出された走行フレーム111に対する旋回フレーム121の旋回方向及び位置を含める旋回角度と、ブーム起伏角度センサ203により検出された旋回フレーム121に対するブーム130の起伏角度又は起伏位置と、ブーム伸長量センサ204により検出されたブーム130の伸長量と、バケット揺動角度センサ205により検出されたブーム130に対するバケット152の揺動角度又は揺動位置とを用いて、走行体110の走行フレーム111に対するバケット152の位置を算出する。
【0051】
地盤形状測定部213は、走行体位置測定部211により求められた作業室2内における走行体110の位置と、旋回角度センサ202により検出された走行フレーム111に対する旋回フレーム121の旋回方向および位置を含める旋回角度とを用いて、旋回フレーム121に設けられた外界センサ206の位置と、外界センサ206により距離情報を取得する方向と、外界センサ206により距離情報を取得する掘削地面の位置とを算出する。
【0052】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図4は、本発明を適用したアースバケット認識システム6の全体構成を示すブロック図である。アースバケット認識システム6は、ニューマチックケーソン工法に使用されるアースバケット31の姿勢を認識する。アースバケット認識システムは、上述した外界センサ206と、外界センサ206を備えるケーソンショベル100に接続された遠隔操作装置12と、遠隔操作装置12に接続された上述したコントロールユニット165を備えている。
【0053】
遠隔操作装置12は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)等を始めとした電子機器で構成されているが、PC以外に、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末等、他のあらゆる電子機器で具現化されるものであってもよい。外界センサ206から入力されたデータに基づいて、遠隔操作装置12は、アースバケット31の姿勢を認識してもよい。遠隔操作装置12は、抽出部80と、抽出部80に接続された変換部81と、変換部81に接続された認識部82とを備える。
【0054】
抽出部80は、外界センサ206から入力されたデータから、アースバケット31の点群データ72を抽出する。抽出部80は、抽出した点群データを変換部81に出力する。
【0055】
変換部81は、抽出部80から入力された点群データを3次元空間上の座標データに座標変換する。変換部81は、座標変換した座標データを認識部82に出力する。
【0056】
認識部82は、変換部81から入力された座標データと、3次元空間上の円筒の側面を示す方程式を満たす座標の集合からなる数学モデルとを重ね合わせたときの誤差に基づいて、アースバケット31の姿勢を認識する。
【0057】
次に、本発明を適用したアースバケット認識システム6の動作について図5を用いて、説明をする。ステップS11において、図6に示すように外界センサ206は、アースバケット31を含める作業室2内の点群データ70を取得する。点群データは、3次元空間上の位置情報をもつ点の集まりからなるデータである。位置情報は、位置を特定し得る情報であり、例えば3次元空間上の座標又は距離情報のことを指す。距離情報は、対象までの距離を示す情報である。
【0058】
まず、外界センサ206は、例えば図6のように、作業室2内に設けられた外界センサ206の位置から取得対象までの距離情報を示す点群データを取得するRGB‐Dセンサを用いて、アースバケット31を含める作業室2内の点群データ70を取得する。また、外界センサ206は、キャリア装置32がアースバケット31を、マテリアルシャフト23を介して地上まで引き上げて作業室2から運び出すことによって、アースバケット31が取り除かれた作業室2内の点群データである抽出用点群データ71を取得してもよい。この抽出用点群データ71、上述したアースバケット31を含める作業室2内の点群データ70を取得したときのRGB‐Dセンサの位置やRGB‐Dセンサの角度や方向と、同じRGB‐Dセンサの位置やRGB‐Dセンサの角度や方向を用いて、取得したものであることが好ましいが、この限りではない。
【0059】
また、外界センサ206は、図7のように、アースバケット31を作業室2内の何れとも異なる色に着色し、上述したアースバケット31を含める作業室2内の点群データ70を取得し、それと同時に画像73を撮像してもよい。このとき、例えばRGB‐Dセンサを用いることで、アースバケット31を含める作業室2内の点群データ70を取得したときのRGB‐Dセンサの位置やRGB‐Dセンサの角度や方向と、同じRGB‐Dセンサの位置やRGB‐Dセンサの角度や方向を用いて、画像73を同時に撮像することが可能となる。外界センサ206は、取得したアースバケット31を含める作業室2内の点群データ70、抽出用点群データ71及び撮像した画像73を抽出部80に出力する。
【0060】
次に、ステップS12において、抽出部80は、外界センサ206から入力された点群データ及び画像73からアースバケット31の点群データ72を抽出する。抽出部80による抽出の方法として、例えば図6のように、アースバケット31を含める作業室2内の点群データ70と、抽出用点群データ71とを用いてもよい。この場合、例えば図6のように、上述したアースバケット31を含める作業室2内の点群データ70から上述した抽出用点群データ71を削除することでアースバケット31の点群データ72を抽出してもよい。
【0061】
また、抽出部80による他の抽出方法として、図7のように、作業室2内の何れとも異なる色に着色したアースバケット31を含める作業室2内の点群データ70と、上述した点群データ70と同時に撮像された画像73を用いてもよい。この場合、例えば、上述した画像73内のアースバケット31に着色した色と同一の色を抜き出し、抜き出した画像73の位置と同じ位置に当たる点群データ70を、アースバケット31の点群データ72として抽出してもよい。抽出部80は、抽出したアースバケット31の点群データ72を変換部81に出力する。
【0062】
また、ステップS12において、アースバケット31の点群データを抽出する前に、点群データ70から、アースバケット31の点群データを含まない範囲における点群データを除去しておいてもよい。点群データの除去は、外界センサ206の位置情報と、マテリアルシャフト23に吊るされたアースバケット31の位置情報から、点群データ70に含まれるアースバケット31の点群データの範囲を特定し、その範囲外の点群データを除去することで行ってもよい。これによって、アースバケット31の点群データを繰り返し抽出する場合にかかる時間を短くすることが可能となる。
【0063】
また、ステップS12及びステップS11の開始のタイミングは、ユーザが遠隔操作装置12に認識命令を行ったタイミングの他に、キャリア装置32から信号を入力されることで認識を開始してもよい。この場合、キャリア装置32の荷重系の値を参照し、認識の開始のタイミングを決定してもよい。これによって、認識が必要な時に、自動的にアースバケット31の姿勢の認識を開始することができる。
【0064】
次に、ステップS13において、変換部81は、入力されたアースバケット31の点群データ72を、3次元空間上の座標データに座標変換する。座標データは、例えば、3次元空間上のx軸、y軸、z軸のそれぞれの座標軸からの距離などの3つの変数で位置を示すデータである。変換部81は、座標変換した座標データを認識部82に出力する。
【0065】
次に、ステップS14において、認識部82は入力された座標データと、数学モデルとを重ね合わせたときの誤差に基づいて、アースバケット31の姿勢を認識する。数学モデルは、3次元空間上の円筒の側面を示す方程式を満たす座標の集合からなるモデルである。アースバケット31の姿勢は、アースバケット31が基準位置からどれだけ並進したか及び水平からアースバケット31がどれだけ回転したかを指す。
【0066】
数学モデルについて、図8を用いて説明する。図8のように、垂直に交わるxyz軸の3次元空間上で、xy面に平行な底面を有し、原点を底面の中心とする円筒を基準円筒90とする。xyz軸を軸とする3次元空間を、角度θだけビッチ回転(y軸回転)させた後、角度φだけロール回転(x軸回転)させたとき、x軸、y軸、z軸が変化したものをそれぞれx′軸、y′軸、z′軸とする。ヨー回転(z軸回転)については、円筒を回転しても変わらないため、考慮する必要がない。垂直に交わるx′軸、y′軸、z′軸の3次元空間上で、x′y′面に平行な底面を有し、上述した原点からさらにx方向、y方向、z方向にそれぞれX、Y、Zだけ並進させた点を底面の中心とする円筒を一般化円筒91とする。
【0067】
数学モデルは、例えば式(1)のような基準円筒90の側面の基本方程式を満たす座標の集合である。
【数1】
rは認識の対象となるアースバケット31の半径を表す定数であり、hは上述したアースバケット31の軸方向の長さを表す定数である。
【0068】
一般化円筒91上の点(x′、y′、z′)は、基準円筒90上の点(x、y、z)を用いて、式(2)のように表される。
【数2】
この一般化円筒91上の点(x′、y′、z′)を、座標データと仮定し、座標データをx方向、y方向、z方向に並進させ、座標軸を回転させ、上述した数学モデルと比較することで、アースバケット31の姿勢を認識する。
【0069】
この式(1)で表される数学モデルと、座標データとして点(xp、yp、zp)を用いて、図9で示すような手順で、アースバケット31の姿勢を認識する。アースバケット31の認識は、例えば誤差関数を示す式(3)を用いて、座標データの点(xp、yp、zp)と、数学モデルを重ね合わせたときの誤差Eが最小となるX、Y、Z、θ、φの5変数を求めることによって可能となる。
【数3】
具体的な手順としては、まずステップS17において、X、Y、Z、θ、φの5つの変数を仮変数として、仮変数を設定する。次にステップS18において、例えば上述したような仮変数と式(3)を用いて、誤差Eを算出する。
【0070】
次にステップS19において、先ほど算出した誤差Eに基づいて、誤差Eがより小さくなるように仮変数を補正する。ステップS19で仮変数を補正した後、再びステップS17に戻り、ステップS18で誤差Eを算出する。上記の手順を繰り返すことで、誤差Eが最小となるような仮変数を算出する。最も誤差が小さかった時の仮変数をアースバケット31の姿勢としてもよい。例えば、式(4)のように誤差Eをそれぞれ算出したとすると、最小の誤差Eはt回目に補正をした仮変数であるから、t回目に補正した仮変数をアースバケット31の姿勢としてもよい。例えば誤差Eが最小となったときの仮変数がそれぞれX=Y=Z=2cm、θ=φ=5degであったならば、アースバケット31は、基準点からx方向、y方向、z方向にそれぞれ2cmずれた位置を底面の中心として、基準円筒90の状態から、5degビッチ回転し、5degロール回転した姿勢であると認識できる。
【数4】
【0071】
最小の誤差Eを算出する方法として、例えば式(5)のように、最初の仮変数をX=Y=Z=θ=φ=0として、目的関数を誤差Eとした最急降下法で計算を行ってもよい。また、式(5)において、Zを求める方法として、例えば座標データの最下点を0として、θ=φからZを推測してもよい。また、例えばθ=0のとき、Z=rcosφとなることから、Zを推定してもよい。
【数5】
【0072】
また、数学モデル及びアースバケット31が円筒であることから、ヨー回転を無視することが可能なことにより、繰り返し計算を行う場合にかかる計算時間を短くすることができる。
【0073】
また、アースバケット31が、マテリアルシャフト23に吊るされていることから、ビッチ回転及びロール回転がほとんど起こらないため、初期姿勢の推測が容易なことから、繰り返し計算を行う場合にかかる計算時間を短くすることができる。
【0074】
また、アースバケット31が、マテリアルシャフト23に吊るされていることから、アースバケット31はマテリアルシャフト23の直下にあることが推測できる。このため、X及びYの並進の初期姿勢の推測が容易なことから、繰り返し計算を行う場合にかかる計算時間を短くすることができる。
【0075】
上述した理由により、Z方向のみ,アースバケットの底面あるいは上面を認識して,正確に推定する必要がある。この場合、座標データのうち最もz座標の高い点をアースバケット31の上面と推定することで、繰り返し計算を行う場合にかかる計算時間を短くすることができる。
【0076】
これらの方法によって、上述した計算方法は、X、Y、Z、θ、φの5変数からなる5自由度の計算を繰り返し行う必要があることから、計算に時間を要することが想定されるが、これらの方法によって、格段に計算を高速化することが可能となる。
【0077】
上述したアースバケット31の姿勢の認識方法では、数学モデルを基準円筒90、座標データを一般化円筒91として、一般化円筒91の変数を補正することにより、座標データを補正することによって、アースバケット31の姿勢を認識する。また、数学モデルを一般化円筒91、座標データを基準円筒90として、上述したアースバケット31の姿勢の認識方法を行うことにより、数学モデルを補正することによって、アースバケット31の姿勢を認識してもよい。
【0078】
認識部82は、認識したアースバケット31の姿勢がユーザに認識できるように出力してもよい。これによって、ユーザは、アースバケット31の姿勢を認識できるようになり、アースバケット31に土砂を詰め込む作業を遠隔操作する場合、アースバケット31の姿勢に応じて、ケーソンショベル100を精度よく操作することが可能となる。
【符号の説明】
【0079】
1 ケーソン
2 作業室
3 送気路
4 走行レール
6 アースバケット認識システム
11 土砂自動積込装置
12 遠隔操作装置
13 地上遠隔操作室
21 マンシャフト
22 マンロック
23 マテリアルシャフト
24 マテリアルロック
25 螺旋階段
31 アースバケット
32 キャリア装置
33 土砂ホッパー
41 送気管
42 空気圧縮機
43 空気清浄装置
44 送気圧力調整装置
45 自動減圧装置
51 非常用空気圧縮機
53 ホスピタルロック
70 アースバケットを含める作業室内の点群データ
71 抽出用点群データ
72 アースバケットの点群データ
73 画像
80 抽出部
81 変換部
82 認識部
90 基準円筒
91 一般化円筒
100 ケーソンショベル
110 走行体
111 走行フレーム
113 走行ローラ
121 旋回フレーム
130 ブーム
131 基端ブーム
132 先端ブーム
133 伸縮シリンダ
134 起伏シリンダ
150 バケットアタッチメント
151 ベース部材
152 バケット
153 バケットシリンダ
165 コントロールユニット
165a メインコントローラ
165b 走行体用コントローラ
165c ブーム・バケット用コントローラ
201 走行体位置センサ
202 旋回角度センサ
203 ブーム起伏角度センサ
204 ブーム伸長量センサ
205 バケット揺動角度センサ
206 外界センサ
211 走行体位置測定部
212 バケット位置測定部
213 地盤形状測定部
【要約】
【課題】アースバケットの姿勢を正確に認識するためのアースバケット認識システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】ケーソンの作業室内にあるアースバケットの姿勢を認識するアースバケット認識システムにおいて、前記作業室内にあるセンサの位置から取得対象までの距離情報を示す点群データを取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記ケーソンの作業室内の点群データから、前記ケーソンの作業室内にあるアースバケットの点群データを抽出する抽出手段と、前記抽出手段で抽出されたアースバケットの点群データを3次元空間上の座標データに座標変換する変換手段と、前記3次元空間上の円筒の側面を示す方程式を満たす座標の集合からなる数学モデルと、前記変換手段によって座標変換された座標データとを重ね合わせたときの誤差に基づいて、前記アースバケットの姿勢を認識する認識手段とを備えることを特徴とする。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9