IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フツクス ペトロループ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

<>
  • 特許-空洞部保護用防食剤及びその使用 図1
  • 特許-空洞部保護用防食剤及びその使用 図2
  • 特許-空洞部保護用防食剤及びその使用 図3
  • 特許-空洞部保護用防食剤及びその使用 図4
  • 特許-空洞部保護用防食剤及びその使用 図5
  • 特許-空洞部保護用防食剤及びその使用 図6
  • 特許-空洞部保護用防食剤及びその使用 図7
  • 特許-空洞部保護用防食剤及びその使用 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】空洞部保護用防食剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C09D 167/08 20060101AFI20220125BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20220125BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20220125BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220125BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220125BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20220125BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20220125BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20220125BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220125BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
C09D167/08
C09D5/08
C09D7/20
C09D7/61
C09D7/63
C09D7/65
B05D5/00 Z
B05D3/00 D
B05D7/24 303E
B05D7/24 303B
B05D7/24 302W
B05D7/24 303A
B05D1/02 Z
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2021506540
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2019000303
(87)【国際公開番号】W WO2020126063
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-02-05
(31)【優先権主張番号】18000979.7
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301002646
【氏名又は名称】フツクス ペトロループ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】FUCHS PETROLUB SE
【住所又は居所原語表記】Friesenheimer Strasse 17, D-68169 Mannheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アーヒム ロシュ
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/058851(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/103551(WO,A2)
【文献】特表平08-503987(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107151376(CN,A)
【文献】特表平02-500450(JP,A)
【文献】特開平01-092267(JP,A)
【文献】特開平05-195261(JP,A)
【文献】特開平11-222565(JP,A)
【文献】特開平01-215866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B05D 5/00
B05D 3/00
B05D 7/24
B05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞部保護用防食剤であって、前記防食剤の全質量を基準としてそれぞれ、
ベースフルード40~50質量%、
アルキド樹脂3~10質量%、
スルホネート及び/又はサリチレート成分10~20質量%、
フィラー15~25質量%、
乾燥剤触媒0.003~0.007質量%からなる
ベース組成物を有し、
かつ、さらに前記防食剤のレオロジー特性の調節のために、前記防食剤の全質量を基準としてそれぞれ、
層状ケイ酸塩1~5質量%
及び/又は
エステルワックス及び/又はパラフィンワックス1~8質量%
を有し、
ここで、前記防食剤は、アミン系防食剤成分又はアミン系バインダー成分及び皮張り防止剤を有していない、
前記空洞部保護用防食剤。
【請求項2】
前記ベース組成物がさらに、前記防食剤の全質量を基準としてそれぞれ、
0.5~5質量%の、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩並びにリン酸ジルコニウム及び酸化亜鉛を有する群から選択されている、アルカリ性の酸捕捉剤成分を有し;及び/又は
0.1~5質量%の、ゼオライトを含む、アルデヒド用の吸着剤、及びアミドを含む、アルデヒドを変換するための反応性成分から選択されている、臭気捕捉剤成分を有し、
及び/又は
0.001~0.05質量%の、着色剤添加剤を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の防食剤。
【請求項3】
前記ベース組成物がさらに、前記防食剤の全質量を基準としてそれぞれ、
1~3質量%の、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩並びにリン酸ジルコニウム及び酸化亜鉛を有する群から選択されている、アルカリ性の酸捕捉剤成分を有し;及び/又は
0.5~2.5質量%の、ゼオライトを含む、アルデヒド用の吸着剤、及びアミドを含む、アルデヒドを変換するための反応性成分から選択されている、臭気捕捉剤成分を有し、
及び/又は
0.01質量%の、着色剤添加剤を有する
ことを特徴とする、請求項2に記載の防食剤。
【請求項4】
前記アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が、それらのホスフェート、炭酸塩、ケイ酸塩、水酸化物、酸化物、又はスルホネートであることを特徴とする、請求項2又は3に記載の防食剤。
【請求項5】
前記アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が、過塩基性スルホネートであることを特徴とする、請求項4に記載の防食剤。
【請求項6】
前記のアルカリ性の酸捕捉剤成分が酸化亜鉛であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の防食剤。
【請求項7】
前記着色剤添加剤が蛍光着色剤添加剤であることを特徴とする、請求項2から6までのいずれか1項に記載の防食剤。
【請求項8】
前記防食剤が、前記層状ケイ酸塩の割合に依存して、少なくとも1個のカルボニル基及び/又はヒドロキシル基を有する少なくとも1種の極性膨潤剤成分を有し、ここで、前記極性膨潤剤成分は、水、短鎖アルコール、エステル及びケトン並びにそれらの混合物を有する群から選択されており、
前記の少なくとも1種の極性膨潤剤成分の割合は、前記層状ケイ酸塩の質量を基準として、10~30質量%の範囲内で
とを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の防食剤。
【請求項9】
前記極性膨潤剤成分は、水、メタノール、エタノール、プロピレンカーボネート、及びアセトン、並びにそれらの混合物を有する群から選択されていることを特徴とする、請求項8に記載の防食剤。
【請求項10】
前記の少なくとも1種の極性膨潤剤成分の割合は、前記層状ケイ酸塩の質量を基準として、17~23質量%の範囲内であることを特徴とする、請求項8又は9に記載の防食剤。
【請求項11】
前記防食剤が、前記層状ケイ酸塩の割合に依存して、前記防食剤の全質量を基準としてそれぞれ、
0.019~1.33質量%の、膨潤剤成分、及び
0.005~0.07質量%の、水
を有することを特徴とする、請求項8から10までのいずれか1項に記載の防食剤。
【請求項12】
前記防食剤が、前記層状ケイ酸塩の割合に依存して、前記防食剤の全質量を基準としてそれぞれ、
0.19~0.95質量%の、膨潤剤成分、及び
0.01~0.05質量%の、水
を有することを特徴とする、請求項11に記載の防食剤。
【請求項13】
前記膨潤剤成分がプロピレンカーボネートであることを特徴とする、請求項11又は12に記載の防食剤。
【請求項14】
- 前記ベースフルードが、無極性溶剤であるか、又は水、メタノール、エタノール、他の短鎖アルコール、アセトン並びにそれらの混合物を含む群から選択されている極性溶剤であり;及び/又は
- 前記アルキド樹脂が、臭気及び放出の少ない、低粘度で、水混和性ではなく、かつ自然乾燥型のアルキド樹脂であり;及び/又は
- 前記スルホネート及び/又はサリチレート成分が、過塩基性カルシウムスルホネート、過塩基性マグネシウムスルホネート及び過塩基性カルシウムサリチレート及びそれらの混合物を含む群から選択されており;及び/又は
- 前記フィラーが、炭酸塩、二酸化ケイ素、ケイ酸塩、硫酸塩、酸化物又はそれらの混合物を含む群から選択されており、及び/又は
- 前記乾燥剤触媒が、重金属ベースの錯体であり;及び/又は
- 前記層状ケイ酸塩が、三層構造を持つ層状ケイ酸塩であるか、又は三層構造を持つ層状ケイ酸塩を有する混合物であり;及び/又は
- 前記エステルワックス及び/又はパラフィンワックスが、65~90℃の範囲内の滴点を有する
ことを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の防食剤。
【請求項15】
前記無極性溶剤が、5~40mm /sの範囲内の動粘度(40℃)を有するグループII基油、グループIII基油又はグループIV基油であることを特徴とする、請求項14に記載の防食剤。
【請求項16】
前記無極性溶剤が、10~30mm /sの範囲内の動粘度(40℃)を有するグループII基油、グループIII基油又はグループIV基油であることを特徴とする、請求項15に記載の防食剤。
【請求項17】
前記アルキド樹脂は長油性であり、かつ少なくとも98%の不揮発分を有し、かつ500~12000mPasの動的粘度(20℃)を有することを特徴とする、請求項14から16までのいずれか1項に記載の防食剤。
【請求項18】
前記アルキド樹脂は1000~6000mPasの動的粘度(20℃)を有することを特徴とする、請求項17に記載の防食剤。
【請求項19】
前記スルホネート及び/又はサリチレート成分が、チキソトロピックな過塩基性カルシウムスルホネートであることを特徴とする、請求項14から18までのいずれか1項に記載の防食剤。
【請求項20】
前記フィラーが炭酸カルシウムであることを特徴とする、請求項14から19までのいずれか1項に記載の防食剤。
【請求項21】
前記乾燥剤触媒が鉄ベースの錯体であることを特徴とする、請求項14から20までのいずれか1項に記載の防食剤。
【請求項22】
前記の三層構造を持つ層状ケイ酸塩はモンモリロナイト及びヘクトライトから選択されており、かつ前記混合物はベントナイト及びスメクタイトから選択されていることを特徴とする、請求項14から21までのいずれか1項に記載の防食剤。
【請求項23】
前記エステルワックス及び/又はパラフィンワックスが70~80℃の範囲内の滴点を有することを特徴とする、請求項14から22までのいずれか1項に記載の防食剤。
【請求項24】
前記エステルワックスがひまわりワックスであることを特徴とする、請求項14から23までのいずれか1項に記載の防食剤。
【請求項25】
構成部品の空洞部保護用の請求項1から24までのいずれか1項に防食剤の使用であって、前記防食剤のレオロジー特性が、塗布温度及び構成部品温度に依存して、前記層状ケイ酸塩及び前記エステルワックス及び/又はパラフィンワックスの予め定めることのできる/予め定められた割合によって調節される、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空洞部保護用防食剤及びその使用に関する。
【0002】
技術水準からは、殊に、車両運転の過程で水もしくは湿った塩含有周囲空気にさらされている車体空洞部及び自動車両の車台を、防食剤で腐食から保護すべきことは公知である。自動車両における、腐食から保護すべきである空洞部は、例えば、サイドシル、ピラー、ドア内に及びフェンダーもしくはホイールハウスに存在する。
【0003】
空洞部をシールするためには、良好なクリープ能力を有する空洞部保護剤が該空洞部へ導入され、この保護剤は隙間及び溝にも浸透して、部品を覆って又は該空洞部表面全体を覆って耐久撥水性保護層を形成する。その際に、前記の液状保護剤は、例えば、流出開口部を通して挿入されたスプレーランス又は別個の開口部中の特別なスプレーノズルを用いて該空洞部へ噴霧注入され、かつ該隙間及び溝中へのクリープを起こす。ある程度の時間の後に、前記の液状保護剤は凝固し、そのためには、場合により加温が、形成された防食膜の安定化のために必要である。
【0004】
その際に、自動車両の生産プロセスにおいて、迅速な凝固が必要であるので、該空洞部をシールするのに続くプロセス工程中に、空洞部保護剤が出て行かず、一方では、構成部品の汚染、ひいては、おそらく該構成部品の塗装前又は前記の完成した車両の引き渡し前に実施すべきである、費用のかかる清浄作業の原因となりうる。他方では、出て行く空洞部保護剤は、清浄費用が高まることに加えて、労働者の事故の危険が高まることと結び付いている、屋内床の汚染をまねきうる。
【0005】
さらに、硬化された保護剤により形成される保護膜は、構成部品運動を、又は温度次第の熱膨張の結果としての該空洞部の体積変化を、補償するために、ある程度の可とう性及び流動性を有するべきである。
【0006】
溶剤又は水による希釈を伴わない、いわゆるフルソリッドワックスは、熱活性な添加剤を含有していてよく、該添加剤は、例えば、低い軟化点を有する固形のポリマー又はワックスからなる分散された粒子である。該空洞部への噴霧注入及び分配後に、該構成部品は、高められた温度条件にさらされ、それにより、前記の熱活性な添加剤は全部又は部分的に溶解する。その冷却後に、該空洞部保護剤はゲル化するので、後続のプロセス工程中にもはや流れ出ることができないのに対して、実際の硬化は、後での化学架橋反応により行われる。
【0007】
特開2009-208015号公報(JP 2009 208 015)には、車体の防錆処理が記載されており、そのような垂れ落ち防止添加剤である加温型チクソ剤を含有するワックスを、該車体の防錆処理部位に塗布し、その際に、加熱により液化したワックスを該車体の狭隘部へ浸透させ、増粘させ、かつ冷却する。該ワックスのさらなる加熱は、その後もはや粘度低下をもたらさないので、該ワックスは該狭隘部中に残留する。
【0008】
独国特許出願公開第102008011489号明細書(DE 10 2008 011 489 A1)からは、加温せずに凝固する、空洞部保護剤が公知である。この空洞部保護剤に、架橋性成分(アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、OH官能基を有する天然及び合成の油及び樹脂、酸化ワックス及びペトロラタム、好ましくはひまし油)が、架橋性成分が混合された前記のすぐ使用できる空洞部保護剤を基準として5~15質量割合の量で混合される。該架橋性成分(アミン、過酸化物、イソシアネート、好ましくはジイソシアネート)は、0.1~10質量割合の量で存在するので、該空洞部保護剤は、該自動車構成部品へ浸透させ、かつ過剰の空洞部保護剤を該自動車構成部品から滴り落とした後に、凝固してゲル状の稠度になり、ついで硬化する。母体となる空洞部保護剤は、その際に、防食添加剤、例えばカルシウムスルホネート、酸化的架橋性バインダー、例えばアルキド樹脂、柔軟剤、例えば鉱油、充填剤、例えばタルク、レオロジー添加剤、例えば無機増粘剤、例えばベントナイト、同様に防食に寄与する有機又は無機塩基、例えばトリエチレンジアミン、該バインダーの酸化的硬化用の触媒、例えばマンガン塩、及びさらなる添加剤、例えば放置する際に皮が形成されるのを防止するために、例えば2-ブタノンオキシムを有していてよい。
【0009】
独国特許出願公開第4240810号明細書(DE 42 40 810 A1)には、ワックス、ワックス状化合物、乾性油又はアルキド樹脂をベースとするコーティング剤が開示されており、これらの流出挙動は、ポリマー粉末と可塑剤との混合物により改善され、これらは、高められた温度でゲル化する。比較例1からのコーティング剤は、固形分約60%及び80mPasの粘度を有し、かつ樹脂溶液及びミリングペーストからなり、これらは互いに均質に混合される:
該樹脂溶液中に、
23.6部 ビニルトルエン/スチレン/インデンからなる炭化水素樹脂
4.0部 酸化ペトロラタム、酸価50
4.0部 マイクロパラフィンワックス及びスラックワックスの混合物、凝固点約65℃
1.1部 酸性アルキル-アリール-ポリグリコールエーテルホスフェート
2.2部 脂肪酸アルカノールアミドの混合物
33.1部 ホワイトスピリット135/180
及び該ミリングペースト中に、
8.0部 鉱油中の過塩基性カルシウムスルホネート(例えば、Exxon社のPCA 11507)
3.0部 ホワイトスピリットを添加したカルシウムスルホネート-炭酸カルシウム複合体
9.4部 工業用ホワイト油
6.0部 沈降チョーク
1.7部 マグネシウムモンモリロナイト
3.0部 ホワイトスピリット135/180
0.9部 n-プロパノール
【0010】
空洞部保護用防食剤のための他の組成物は、欧州特許第2865723号明細書(EP 2 865 723 B1)に記載されている。該防食剤は、加温せずに塗布及び凝固することができ、かつ揮発性有機化合物を含有しない。この組成物は、VOCフリーの溶剤、鉱油、エステル及びそれらの組み合わせからなるベースフルード25~40質量%、並びにポリエステル樹脂19~25質量%、それらの凝固点に関して相違する少なくとも2種の固形パラフィンからなるワックス混合物7.0~11.0質量%、アルカリ金属及びアルカリ土類金属スルホネート、サリチレート、羊毛脂及びそれらの組み合わせから選択される防食添加剤12.0~18質量%、フィラー15~25質量%及び、皮張り防止剤、乾燥剤及び着色剤を含む添加剤又は添加剤混合物0.4~0.6質量%からなる。この防食剤は、最適化されたレオロジーを有するので、例えば撹拌による、せん断後に、定義された低い粘度を有するので、室温でも塗布することができる。該防食剤が、該塗布後に塗膜として該構成部品上に静止する場合に、該粘度は再び明らかに増加し、その際に、こうして達成される流出抑制は、該ワックス混合物及びスルホネートにより決定される。
【0011】
該防食膜の安定化のために、双方の場合に、すでに温かい構成部品、又は該空洞部保護後に加温されることになる構成部品上では、加温は必要ないが、しかし、これらは、熱活性な垂れ落ち防止添加剤を有する従来のフルソリッドワックスに比べて特有の改善をもたらさない―反対に、加温された構成部品の場合の流出抑制は、それどころかむしろ劣悪化されうる。
【0012】
この技術水準から出発して、本発明の課題は、改良された空洞部保護剤を提供することである。
【0013】
この課題は、請求項1の特徴を有する防食剤によって解決される。
【0014】
さらに、独立請求項5の特徴と共に、塗布温度又は構成部品温度から独立して最適な塗膜形成を可能にする、前記の構成部品の空洞部保護用の防食剤の使用が開示される。
【0015】
好ましい実施態様は、従属請求項において説明されている。
【0016】
該空洞部保護用防食剤の第1の実施態様によれば、該防食剤は、該防食剤のレオロジー特性の調節のために該防食剤の全質量を基準として、層状ケイ酸塩1~5質量%及び/又はエステルワックス及び/又はパラフィンワックス1~8質量%を含有するベース組成物を有する。その際に、該防食剤の粘度への影響が該温度からほぼ独立しているが、しかし該防食剤にチキソトロピック特性を付与する、該層状ケイ酸塩は、大体において温度から独立した、該防食剤についての塗膜安定化及び流出抑制、すなわち塗布したての、まだ架橋されていない塗膜の改善された熱安定性を提供する。これに反して該エステルワックス及び/又はパラフィンワックスは、その粘度が温度に依存しており、かつその溶解限度を上回るかもしくはその透明点を下回って降伏点を有し、温度に依存した塗膜硬化を引き起こし、かつ熱作用が完了した後のその塗膜安定性を改善する。
【0017】
したがって、該防食剤の予定される塗布温度及びその際に又はその後に発生する構成部品温度に応じて、層状ケイ酸塩及びエステルワックス/パラフィンワックスの割合の変動により、最適化された流出挙動及びゲル化挙動に調節することができ、その際に、選択的に、層状ケイ酸塩又はエステルワックス/パラフィンワックス又は双方の成分は、以下のベース組成物を有する防食剤において示された割合の範囲内で、使用することができる。該ベース組成物は、該組成物の本発明による第1の実施態様によれば、ベースフルード40~50質量%、アルキド樹脂3~10質量%、スルホネート及び/又はサリチレート成分10~20質量%、フィラー15~25質量%及び該乾燥挙動もしくは硬化挙動を制御するための乾燥剤触媒0.003~0.007質量%を有する。全ての割合の記載は、該防食剤の全質量を基準としている。乾燥剤触媒の市販の供給形態は、しばしば溶剤中に溶解して存在し、その際に、溶液中の多様な濃度の該乾燥剤触媒が販売される。該防食剤中で、0.003~0.007質量%(すなわち30~70ppm)の該乾燥剤触媒の所望の割合を達成するために、例えば1%の作用物質含有率を有する乾燥剤触媒溶液の割合は、該防食剤に関して0.3~0.7質量%の範囲内である。該乾燥剤触媒溶液が、例えば10%の作用物質含有率を有する場合には、該溶液の割合は、該防食剤に関して0.03~0.07質量%の範囲内である。
【0018】
有利に、この空洞部保護用防食剤は、架橋性成分も有していないか又は僅かな割合のみの架橋性成分を有する、塗膜として塗布された空洞部保護剤の安定化を、加温して並びに加温せずに可能にするという課題を解決するので、その凝固特性は、任意の構成部品温度に合わせることができる。さらに、該防食剤は、該臭気放出及び該防食に関して改善された特性を有する。
【0019】
つまり、本発明による防食剤は、それに関して、該防食剤を加温せずともゲル化させるのに、技術水準において必要とされるような、高い配量での架橋性成分を不要にする。さらに、本発明による防食剤は、アミン系防食剤成分又はアミン系バインダー成分を含有していない。アミン、イソシアネート及びジイソシアネートを放棄することにより、臭気及び放出は、明らかに改善もしくは低下される。
【0020】
本発明による防食剤は、層状ケイ酸塩及びエステルワックス/パラフィンワックスの割合の変動により、冷間使用の際の塗膜形成に最適化することができ、その際に、その塗膜安定性を目的とした、該構成部品の加温が不必要であり、並びに温度に依存した垂れ落ち防止効果を備えることができ、該効果は、加温された構成部品への塗布も可能にするか、もしくは後続の熱作用の際の塗膜安定性に不利な影響を及ぼさない。本発明による防食剤は、該構成部品が冷たいか、短時間加温されるか、又は持続的に温かいかとは独立して、これら双方の要件を満たすことができる。
支持されるのは、該ベース組成物の成分による該レオロジー的挙動の最適化である:該成分であるフィラー及びスルホネートは、該温度とは独立して該粘度に影響を及ぼし、その際に、該スルホネートは、該防食剤のチキソトロピーに寄与するので、該防食剤の粘度は、せん断応力下で明らかに低下し、かつ静止状態で粘稠な該防食剤は、例えば撹拌により、せん断が行われた後に、その噴霧に適した粘度を有する。したがって、該防食剤の粘度は、塗膜として該構成部品表面上に塗布が行われ、かつ隙間への浸透が行われた後に、数秒~数分以内に再び、その樹脂硬化が行われる前に、漏出又は滴りがその温度とは独立して防止されるように増加する。
【0021】
これに反して該ベースフルード及び前記の未反応アルキド樹脂は、ニュートン流体として、温度に依存した粘度を有し、かつ隙間及び亀裂への、該媒体の必要とされる浸透並びに該中空体内部への流展を該噴霧塗布後に引き起こすための、該防食剤の粘度の下限を表す。塗布と時間がずれて、架橋され、重合されたアルキド樹脂は、降伏点をもたらし、その際に、該熱安定性の効果がすでに>3質量%の樹脂濃度で現れる。その使用者の特有の要件に応じて、該防食剤のレオロジー特性は、意図的に調節することができる。
【0022】
該アルキド樹脂割合の低下は、該防食剤のより少ない放出及び改善された臭気と、同時に改善された防食作用とを引き起こし、該防食作用はそのうえいっそう該エステルワックスによってさらに改善される。
【0023】
技術水準に比べて明らかに低下されたアルキド樹脂割合は有利に、さらに改善された防食に寄与し、かついっそう少ない放出負荷及び臭気負荷を引き起こす。もはや制約されてのみか又は全くワックス状の非粘着性構造を達成することができないので、その塗膜稠度に関する該樹脂濃度の低下による欠点に対して、一方では、同じ放出の場合により高い濃度で使用することができるか、又は同じ濃度の場合により少ない放出を生じる、特に放出の少ないアルキド樹脂の使用により、打ち消される。他方では、そのレオロジー特性に影響を与えるその他の添加剤(スルホネート、フィラー、層状ケイ酸塩及びエステルワックス/パラフィンワックス)は、前記の安定化させる成分である樹脂の低下を受け止める。
【0024】
該アルキド樹脂の低下された割合により、有利に、皮張り防止剤を本発明による防食剤において不必要にすることができる、それというのも、アルキド樹脂3~10質量%を有する該防食剤は、皮張りを示さないからである。有利に、しばしばオキシムを含む皮張り防止剤の省略により、該臭気負荷は、本発明による防食剤によってさらに低下される。
【0025】
さらに、該防食剤のさらなる実施態様における該ベース組成物は、該臭気及び該放出のさらなる低下のために、該防食剤の全質量を基準として0.5~5質量%、好ましくは1~3質量%のアルカリ性の酸捕捉剤成分を有していてよい。前記のアルカリ性の酸捕捉剤成分は、該防食剤のより少ない放出及び改善された臭気に加えて、有機酸の結合により、明らかに改善された防食作用を同時に引き起こす。前記のアルカリ性の酸捕捉剤成分は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩、好ましくはそれらのホスフェート、炭酸塩、ケイ酸塩、水酸化物、酸化物、及びスルホネート、それらの中では好ましくは過塩基性スルホネート、並びにリン酸ジルコニウム及び酸化亜鉛を有する群から選択することができ、その際に、酸化亜鉛が特に好ましく、これは、有機酸、例えば短鎖カルボン酸の臭気及び放出を減らす結合に加えて、有利に、改善された防食にも寄与する。示された酸捕捉剤成分の他のものも、防食特性を有していてよく、それらの中では、例えば、炭酸塩及びスルホネートも、該防食剤の特定の実施態様において、フィラーもしくはスルホネート成分としても使用される。したがって、例えば過塩基性スルホネートが酸捕捉剤成分として選択される実施態様において、該酸捕捉剤成分の割合は、該防食剤中に含まれる該フィラー/スルホネート成分と足すことができるが、しかしそうするには及ばない―該ベース組成物の該フィラー及び該スルホネート成分の酸捕捉剤特性はすでに、上記で示された範囲内で十分でありうる。これが当てはまらない場合には、フィラー/スルホネート成分の割合を、該酸捕捉剤成分についての割合と足すことができるので、そうすると該ベース組成物は、アルカリ性の酸捕捉剤特性を有するフィラー10.5~40質量%もしくはアルカリ性の酸捕捉剤特性を有するスルホネート成分5.5~35質量%を有することができる。
【0026】
さらに、該防食剤のさらなる実施態様における該ベース組成物は、該臭気及び該放出のさらなる低下のために、該防食剤の全質量を基準として0.1~5質量%、好ましくは0.5~2.5質量%の臭気捕捉剤成分を有していてよい。それらは、例えば、アルデヒド用の吸着剤、例えばゼオライト、又はアルデヒドを変換するための反応性成分、例えばアミド、例えばマロンアミド、であってよい。
【0027】
代替的又は付加的に、該ベース組成物は、該防食剤中に0.001~0.05質量%、好ましくは0.01質量%の割合で存在する、着色剤添加剤を有していてよい。該着色剤添加剤は、該防食剤の塗布の際及び塗布された塗膜の光学検査を容易にし、その際に、蛍光着色剤添加剤が好ましいこともあるので、該光学検査は、該蛍光着色剤添加剤の励起のための対応する(UV)光源の利用を含む。
【0028】
好ましい実施態様において、該防食剤は、該層状ケイ酸塩の割合に依存して、少なくとも1個のカルボニル基及び/又はヒドロキシル基を有する少なくとも1種の極性膨潤剤成分を有していてよい。膨潤剤成分は、この場合に、該層状ケイ酸塩の膨潤を促進する薬剤であると理解される。該極性膨潤剤成分は、水、短鎖アルコール、例えばメタノール及びエタノール、エステル、例えばプロピレンカーボネート及びケトン、例えばアセトン、並びにそれらの混合物を有する群から選択されている。前記の少なくとも1種の極性膨潤剤成分の割合は、その際に、該層状ケイ酸塩の割合を基準として、10~30質量%の範囲内、好ましくは17~23質量%の範囲内であってよい。特に好ましいのは、該層状ケイ酸塩の割合を基準として、19%の有機膨潤剤化合物、すなわち短鎖アルコール、エステル又はケトン、及び1~5%の水を有する、膨潤剤成分の混合物である。
【0029】
特に好ましいこの実施態様において、層状ケイ酸塩0.1~7質量%を有する、本発明による防食剤は、該層状ケイ酸塩の割合に依存して、該防食剤の全質量を基準として、0.019~1.33質量%の膨潤剤成分を、該層状ケイ酸塩用の膨潤剤として、並びに該防食剤の全質量を基準として水0.005~0.07質量%を、該層状ケイ酸塩の分解のために有していてよく、その際に、水道水で十分である。膨潤剤成分として、好ましくは、ほぼ無臭の溶剤であるプロピレンカーボネートを使用することができる。しかし、該層状ケイ酸塩中のインターカレーションのために代替的な膨潤剤成分はこの場合に、アセトン、メタノール又はエタノール又は他の短鎖アルコールであってもよい。
【0030】
さらなる実施態様において、層状ケイ酸塩1~5質量%を含有する本発明による防食剤は、該層状ケイ酸塩の割合に依存して、該防食剤の全質量を基準として、0.19~0.95質量%の膨潤剤成分並びに該防食剤の全質量を基準として、0.01~0.05質量%の水を、該層状ケイ酸塩の分解のために有していてよい。
【0031】
例えば、該膨潤剤成分の割合は、殊に、該層状ケイ酸塩割合の19%及び該水の割合は、該層状ケイ酸塩割合の1~5%であってよい。したがって、該防食剤は、層状ケイ酸塩が含まれていない場合に、膨潤剤成分及び水を有していない。
【0032】
ベースフルードとして、本発明による防食剤は、無極性溶剤を有していてよく、該溶剤は、好ましくはグループIII基油、すなわち、水素化された高イソパラフィン系炭化水素(C20~50)を有する接触水素異性化され、かつ脱ろうされた中性基油であってよく、該基油は、5~40mm/s、好ましくは10~30mm/s、殊に10~20mm/sの範囲の動粘度(40℃)を有する。代替的に、相応する動粘度(40℃)を有するグループII又はグループIV基油もベースフルードとして使用することができる。好ましいのは、その際に、その温度に依存して該粘度のわずかな変化のみを示す、100を超える粘度指数を有する基油である。異なる基油の混合物を使用することもできる。
【0033】
しかし、代替的に、ベースフルードとして、極性溶剤、例えば水、メタノール、エタノール、他の短鎖アルコール、アセトン又は上記のものの混合物、例えばメタノール/水混合物又はエタノール/水混合物を使用することもできる。該ベースフルードのため並びに該膨潤剤成分のために、水、メタノール、エタノール、他の短鎖アルコール、アセトン又は上記のものの混合物、例えばメタノール/水混合物又はエタノール/水混合物が選択される場合には、選択される極性溶剤の割合は、該ベースフルード及び該膨潤剤成分についてのそれぞれ示された割合の合計の範囲内であってよく、すなわち、ベースフルード及び膨潤剤成分として同じ極性溶剤が選択される場合には、該極性溶剤の割合は、ベースフルードと膨潤剤成分との合計に相当する。
本発明による防食剤において使用されるアルキド樹脂は、好ましくは、臭気及び放出の少ない、低粘度で、水混和性ではなく、かつ自然乾燥型のアルキド樹脂である。好ましくは、少なくとも98%の不揮発分及び500~12000mPas、好ましくは1000~6000mPasの動的粘度(20℃)を有する、長油性アルキド樹脂を使用することができる。
【0034】
スルホネート又はサリチレート成分として、好ましくは、防食並びに構造粘性に寄与する、チキソトロピックな過塩基性カルシウムスルホネートを使用することができる。代替的又は付加的に、防食を改善する他のスルホネート、例えば非晶質の過塩基性カルシウムスルホネート又はマグネシウムスルホネート又は非晶質の過塩基性カルシウムサリチレート又は上記のものの混合物を選択することもできる。
【0035】
該フィラーは、炭酸塩、二酸化ケイ素、ケイ酸塩、硫酸塩及び酸化物から選択されていてよい。使用できる炭酸塩は、例えば、炭酸カルシウム、殊に天然の、沈降炭酸カルシウム、例えばチョーク、並びにドロマイト及び炭酸バリウムを含む。二酸化ケイ素は、非晶質又は結晶質の形で、例えば石英、クリストバライト、けいそう土、熱分解シリカ、沈降シリカ、合成シリカ又はガラス粉として、使用することができる。充填剤としてのケイ酸塩は、タルク、パイロフィライト、クロライト、カオリン、雲母、長石、ウォラストナイト、スレート粉、角閃石、パーライト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムカルシウム又はケイ酸アルミニウムナトリウムから選択することができる。適した硫酸塩は、例えば、硫酸バリウム又は硫酸カルシウムである。充填剤としての酸化物は、二酸化チタン、酸化アルミニウム、例えばコランダム、水酸化Al、水酸化Mg及び酸化Mgから選択されていてよい。特に好ましい実施態様において、フィラーとして、炭酸カルシウムを、例えば硫酸カルシウムに比較してより少ない溶解度及びより少ない腐食性に基づいて、選択することができる。さらに、炭酸カルシウムは、ほとんど酸捕捉剤として有効ではないので、前記のアルカリ性の酸捕捉剤成分との重複はない。
【0036】
該乾燥剤触媒は、コバルト、マンガン、鉛又は亜鉛をベースとする、重金属ベースの錯体であってよく;しかし、好ましくは、鉄ベースの錯体が乾燥剤触媒として本発明による防食剤において使用され、該錯体は、少ない使用量でも良好な乾燥活性を示し、かつ変色をまねかない。適した重金属ベースの乾燥剤触媒錯体、例えば前記の鉄ベースの錯体は、通常の供給形態で、溶剤、例えばプロピレングリコール中に存在する。このことは、特に好ましくは使用される鉄ベースの触媒錯体溶液にも当てはまり、該溶液は、Borchers GmbH、独国ランゲンフェルトの名称Borchi(登録商標) Oxy-Coatで入手可能である。そこでは、溶液中に存在する有効な鉄錯体(CAS-No. 478945-46-9)が多様な濃度で販売されるので、その配量は、それぞれの供給形態における該鉄錯体の濃度に依存する。本発明による防食剤中の前記の有効な錯体の所望の―及び特に好ましい―濃度が例えば0.005%(すなわち50ppm)である場合には、この含有率は、選択的に1%濃度の触媒-錯体溶液0.5%によるか又は10%濃度の触媒-錯体溶液0.05%により、達成することができる。より高濃縮された触媒-錯体溶液の使用は、その際に好ましい、それというのも、これにより、該供給形態に含まれる該溶剤による該組成物の粘度低下を制限することができるからである。
【0037】
該レオロジーの調節に使用される層状ケイ酸塩は、殊に、三層構造を持つ層状ケイ酸塩であるか又は三層構造を持つ層状ケイ酸塩を有する混合物であってよい。好ましい、三層構造を持つ層状ケイ酸塩は、モンモリロナイト又はヘクトライトであってよく、かつ好ましい混合物は、モンモリロナイト60~80%を含有するベントナイトであってよい。該ベントナイト中のさらなる随伴鉱物は、石英、雲母、長石、黄鉄鉱又はカルサイトでもあってよい。さらに、スメクタイトを、三層構造を持つ層状ケイ酸塩を有する混合物として使用することができる。スメクタイトは、同様に主にモンモリロナイトからなるが、石英ダスト及びカルサイトダストも含有する。
【0038】
モンモリロナイト及びヘクトライトは、ケイ酸塩及びゲルマン酸塩の鉱物クラスからの粘土鉱物である。モンモリロナイトは、化学組成(Na,Ca)0,3(Al,Mg)Si10(OH)・nHOを有するケイ酸アルミニウムナトリウムである。ヘクトライトは、化学組成Na0.3(Mg,Li)Si10(OH)を有するケイ酸マグネシウムリチウムである。
【0039】
該層状ケイ酸塩に代替的又は付加的に使用されるエステルワックス及び/又はパラフィンワックスは、65~90℃、好ましくは70~80℃の範囲内の滴点を有していてよい。例示的なエステルワックスは、ひまわりワックスであってよい。
【0040】
本発明による、構成部品の空洞部保護用の防食剤の本発明による使用は、該防食剤のレオロジー特性が、予め定められた塗布温度及び予め定められた構成部品温度に依存して、該層状ケイ酸塩及び該エステルワックス及び/又はパラフィンワックスの予め定めることのできるかもしくは予め定められた割合により、調節されることを意図する。層状ケイ酸塩を含有するが、ワックスを含有しない、本発明による防食剤は、該塗布温度及び該基材温度もしくは構成部品温度に依存していないか又は単にほとんど依存しておらず、かつ該層状ケイ酸塩の割合により決定される流出挙動を示し、その際に、より高い割合の層状ケイ酸塩は、より強い流出抑制をもたらす。ワックスを含有するが、層状ケイ酸塩を含有しない、本発明による防食剤の場合に、該流出挙動は、該塗布温度並びに該構成部品温度に依存する:同じ又は類似の温度を有する構成部品上への、冷間塗布の場合に、すなわち該防食剤を加温しない場合に、ワックス含有防食剤は、数分後に流出抑制が始まる流出挙動を示し、それに対して、加温された構成部品上への該ワックス含有防食剤の冷間塗布は、明らかに遅延された流出抑制を有する流出挙動をもたらす。これに反して、冷たい、すなわち加温されない構成部品上への該ワックス含有防食剤の温間塗布の場合に、垂れ落ち防止効果が現れる、すなわち流出抑制は、塗布直後に始まる。層状ケイ酸塩並びにワックスを含有する、本発明による防食剤は、確かに該ワックス含有防食剤のように、該塗布温度及び該構成部品温度に依存しているが、改善された流出抑制を有する流出挙動を示し、その際に、より高い割合の層状ケイ酸塩は、より強い流出抑制をもたらす。
【0041】
本発明による防食剤のレオロジー的に有効なさらなる成分である、ベースフルード、フィラー、アルキド樹脂を用いて、これらの成分の比の相応する選択により、所望の応用技術的なレオロジー的挙動に調節することができる:噴霧/隙間への浸透後の後流動、噴霧性、該塗膜の熱安定性、該塗膜の機械的安定性等。有利に、この際に、該ベース組成物は、予め製造して用意することができ、かつワックス及び/又は層状ケイ酸塩の割合の添加により、該防食剤の所望のレオロジー的挙動を調節することができる。
【0042】
さらなる実施態様並びにこれらの及びさらなる実施態様と結び付いている利点のいくつかは、添付の図面に関しての以下の詳細な説明によって、明らかにかつよりよく理解できるようになる。これらの図面は、本発明の実施態様の概略図に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】貯蔵及び塗布中に、時間に依存して、本発明による防食剤B8の粘度を、従来の防食剤V1と比較して示す線図、
図2】20℃の塗布温度及び20℃の基材温度での、従来の防食剤V1と比較した、本発明による多様な防食剤B2、B8、B9、B3及びB4の流出試験の写真画像、
図3】20℃の塗布温度及び60℃の基材温度での、従来の防食剤V1と比較した、本発明による防食剤B2、B8、B9、B3及びB4の流出試験の写真画像、
図4】60℃の塗布温度及び20℃の基材温度での、従来の防食剤V1と比較した、本発明による防食剤B2、B8、B9、B3及びB4の流出試験の写真画像、
図5】従来の防食剤V1を用いた塩水噴霧試験の一連の4つの写真画像及び本発明による防食剤B5を用いた塩水噴霧試験の一連の8つの画像、
図6】従来の防食剤V1と比較した、本発明による防食剤B5、B6及びB9のアルデヒド放出についての線図、
図7】従来の防食剤V1と比較した、本発明による防食剤B5、B6及びB9の酸放出についての線図、
図8】従来の防食剤V1と比較した、本発明による防食剤B5、B6及びB9のTVOC放出についての線図。
【0044】
本発明による防食剤は、熱作用なしに硬化することができる従来の冷間塗布できる防食剤に比べて、改善された防食及び明らかに低下された放出及び臭気負荷を有する。さらにまた、本発明による防食剤は、その空洞部へ該防食剤が塗膜の形成のために塗布される構成部品への持続する又は一時的な熱作用も、その塗膜安定性又は硬化が不利な影響を受けることなく、可能にする。本発明による防食剤において調節されるレオロジー特性は、その噴霧性及び一時的な加温後にゲル化する能力(垂れ落ち防止;Drop Stopp)を引き起こす、粘度及び流動挙動を提供する。第1表は、前記のそれぞれの成分の幅広い及び好ましい割合範囲を有する本発明による防食剤の組成を示す。最初の5つの成分であるベースフルード、アルキド樹脂、スルホネート成分、フィラー及び触媒は、該防食剤の使用の際に予定される構成部品温度及び/又は塗布温度に依存して、選択的に層状ケイ酸塩及び/又はエステルワックス/パラフィンワックスが示された割合で供給されるベース組成物を形成して、本発明による防食剤を得る。前記の割合の記載はそれぞれ、該防食剤100質量%を基準としている。
【0045】
第1表:本発明による防食剤の成分
【表1】
【0046】
本発明による防食剤中の該アルキド樹脂の割合は、放出及び臭気を低下させ、かつ該防食を改善するために、明らかに低下されている、それというのも、より高い樹脂割合は、優れた防食に一般に有害であるからである。しかし、そのように低い割合のアルキド樹脂は、殊に架橋性成分が使用されないので、これが、該レオロジー的挙動への影響を有する、本発明による防食剤のさらなる成分により補償されなかった場合には、ほとんど又は全くワックス状の非粘着性構造を有していない、遅くなった塗膜形成及びより軟らかい塗膜稠度をもたらすかもしれない。その際に、該防食剤の粘度への影響がほとんどその温度に依存していない、層状ケイ酸塩、フィラー及びスルホネート成分は、改善された塗膜安定性を引き起こし、かつその流出を防止するのに対して、その粘度が温度に依存しているエステルワックスは、垂れ落ち防止挙動を引き起こし、かつその塗膜硬さを改善する。未反応のアルキド樹脂及びベースフルードは、温度に依存した粘度を有し、かつ該防食剤の噴霧性及び隙間へのその浸透を引き起こし、その際に、該アルキド樹脂は、時間がずれて、架橋もしくは重合により降伏点をもたらすので、塗布された塗膜は熱安定になり、かつ十分な塗膜硬さを有する。
【0047】
該臭気負荷及び放出を減少させるためには、本発明による防食剤において、臭気及び放出が少なく、さらにまた低粘度であり、水混和性ではなく、かつ自然乾燥型であるアルキド樹脂が使用される。好ましくは、使用されるアルキド樹脂は、長油性であり、かつ少なくとも98%の不揮発分を有する。その動的粘度(20℃)は、500~12000mPas、好ましくは1000~6000mPasの範囲内である。
【0048】
適したアルキド樹脂は、例えば、WorleeKyd(登録商標) SD 8300(Vdyn(20℃、100s-1、C35/1°) 3000~6000mPas)、WorleeKyd(登録商標) VP-W 2733/00(Vdyn(20℃、100s-1、C35/1°) 3000~5000mPas)又はWorleeKyd(登録商標) RS 2174(Vdyn(20℃、100s-1、C35/1°) <750mPas)であり、これらはWorlee-Chemie GmbH、独国クリンゲンベルク・アム・マインから入手可能である。さらに適したアルキド樹脂は、例えば、Bremar(登録商標) RK 5949(Vdyn(20℃、100s-1、C35/1°) 1500~3000mPas)、Bremar(登録商標) RK 6389(Vdyn(20℃、100s-1、C35/1°) 1000~2000mPas)、Bremar(登録商標) RK 6520(Vdyn(20℃、100s-1、C35/1°) 3000~6000mPas)、Rokralux(登録商標) RK 6739(Vdyn(20℃、100s-1、C35/1°) 1000~2000mPas)、Bremar(登録商標) RK 7046(Vdyn(20℃、100s-1、C35/1°) 1500~3000mPas)、Bremar(登録商標) RK 7047(Vdyn(20℃、100s-1、C35/1°) 2000mPas)、これらはRobert Kraemer GmbH & Co. KG、独国ラシュテーデから入手可能、又はSynthalat(登録商標) QL 4724(Vdyn(23℃) 8000~12000mPas)、これはSynthopol Chemie、独国ブクステフーデから入手可能、である。
【0049】
該ベースフルードは、同様に、臭気/放出並びに粘度に関して選択される。したがって、該ベースフルードは好ましくは、VOCフリーかつ芳香族フリーの溶剤から選択され、該溶剤は、5~40mm/s、好ましくは10~30mm/s、例えば10~20mm/sの動粘度(40℃)及び少なくとも100の粘度指数(VI)、ひいては該粘度の低い温度依存性のみを有する。好ましくは、このためには、グループIII油、場合によりグループIV油も、ベースフルードとして使用することができる。適したグループIII基油は、例えば、Neste N. V.、ベルギー国ベリンゲンの、Nexbase(登録商標) 3043(動粘度(40℃)=20mm/s、VI≧121)又はNexbase(登録商標) 3030(動粘度(40℃)=12mm/s、VI≧100)である。もちろん、異なる基油の混合物もベースフルードとして使用することができる。代替的に、さらに、ベースフルードとして、極性溶剤、例えば水、メタノール、エタノール、他の短鎖アルコール又はアセトン又は上記のものの混合物、例えばメタノール/水混合物又はエタノール/水混合物を使用することができる。
【0050】
以下の例示的な組成物におけるチキソトロピックなスルホネート成分は、過塩基性カルシウムスルホネートであり、これは例えば、PCAS、仏国ロンジュモーの名称Arcot(登録商標) 645、 Holland Chemicals、米国バー・リッジのSulfogel(登録商標) 180/200A/280、380、又はSoltex、米国ヒューストンのThixoCal(登録商標) 2000で、入手可能である。
【0051】
チキソトロピックな過塩基性カルシウムスルホネートに代替的に、防食成分として、非晶質過塩基性カルシウムスルホネート、例えば、Lanxess、独国ケルンのCalcinate(登録商標)もしくはHybase(登録商標) OTS、OR、C300、C400、C400C、313、非晶質過塩基性マグネシウムスルホネート、例えば、LanxessのHybase(登録商標) M 400又は非晶質過塩基性カルシウムサリチレート、例えば、LanxessのHybase(登録商標) S-170D、S-200、S-270D、MS100も使用できる。しかしながら、これらは構造粘性に寄与しない、それというのも、これらはチキソトロピック特性を有していないからである。
【0052】
フィラーもしくは顔料として、本発明による防食剤の以下の例示的な組成物において、炭酸カルシウム(例えば、Omya GmbH、独国のOmyacarb(登録商標) 2-AL)が使用され、これは、従来使用される硫酸カルシウムに比べて改善された防食特性を、とりわけ該炭酸塩のより少ない溶解度のため及び該硫酸塩のより高い腐食性のために、有する。しかしながら、充填剤もしくは顔料として、さらなるアルカリ土類金属炭酸塩、異なる形の二酸化ケイ素及びケイ酸塩、硫酸塩及び酸化物を含む、多数の公知の他の物質も使用できる。
【0053】
着色剤添加剤として、好ましくは、蛍光性光学増白剤、例えば、Ciba、スイス国バーゼルのTinopal(登録商標) OBを使用することができる。
【0054】
形成される塗膜の乾燥時間の制御のために、乾燥剤として、該アルキド樹脂の自動酸化を触媒する金属ベースの触媒が使用される。適した触媒は、重金属ベースの触媒であってよい。公知の乾燥剤は、コバルト、マンガン及びジルコニウムベースのオクトエート及びナフテネートを含む。さらなる公知の乾燥剤は、鉛、マンガン、コバルト、亜鉛の重金属酸化物並びにたいてい不飽和脂肪酸の金属石けんである。しかし、好ましくは、乾燥剤として、鉄錯体が使用され、これは、Bochers GmbH、独国ランゲンフェルトの名称Borchi(登録商標) Oxy-Coatで溶剤中に溶解されて入手可能である。
【0055】
該アルキド樹脂の硬化の際に放出されるアルデヒド及びカルボン酸は、本発明による防食剤中で酸捕捉剤成分及び臭気捕捉剤成分により結合される。前記のアルカリ性の酸捕捉剤成分は、放出された主に短鎖のカルボン酸の結合により、臭気及び放出を減少させるだけではなく、そのために防食特性も有し、すなわちその防食を改善する。好ましいアルカリ性の酸捕捉剤成分は、酸化亜鉛であり、例えば、Borchers GmbH、独国ランゲンフェルトのBayoxide(登録商標) Z Activeとして入手可能である。さらなる酸捕捉剤成分は、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、ホスフェート、炭酸塩、ケイ酸塩、リン酸ストロンチウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、リン酸ジルコニウム並びに過塩基性ナトリウムスルホネート(例えば、Lubrizol、米国ウィクリフのLubrizol(登録商標) 5318 A)又は過塩基性カルシウムスルホネート(例えば、Lanxess、独国ケルンのCalcinate(登録商標) OR)を含む。
【0056】
生じるアルデヒドを吸着するための臭気捕捉剤成分として、短鎖カルボン酸も吸着する、ゼオライト(Zeochem(登録商標) AG、スイス国リューティのZeoflair(登録商標) 100)、又は該アルデヒドを反応により変換するために反応性成分、例えばアミド、例えばマロンアミドを、使用することができる。
【0057】
本発明による防食剤の粘度を高めるために新しいまだ未架橋の塗膜の熱安定性の改善に使用される層状ケイ酸塩は、殊に、三層構造を持つ層状ケイ酸塩、例えばモンモリロナイト又はヘクトライトを含む。特に好ましくは、異なる粘土鉱物の混合物、好ましくは、主成分としてモンモリロナイト60~80%を含有する、ベントナイトを使用することができる。ベントナイト中に含まれるさらなる鉱物は、石英、雲母、長石、黄鉄鉱又はカルサイトをも含む。ベントナイトに代替的に、主成分が同様にモンモリロナイトである、スメクタイトも使用することができる。
【0058】
本発明による防食剤における使用に適したベントナイトの一例は、Elementis Specialties, Inc.、米国ハイツタウンの名称Baragel (登録商標) 3000で入手可能である、処理された有機変性ベントナイトである。該層状ケイ酸塩の分解のために、本発明による防食剤に、製造プロセスの際に蒸発する水、及び膨潤剤、例えばプロピレンカーボネートを添加することができ、これは、該層状ケイ酸塩と層間複合体を形成し、ひいては該分解を促進する。水(水道水で十分である)及び膨潤剤の割合は、その結果として、該防食剤中の該層状ケイ酸塩の割合に依存する。
【0059】
本発明による組成物において使用することができるベントナイトのさらなる例は、Baragel(登録商標) 10、Bentone(登録商標) 34である。同じように、テトラアルキルアンモニウム-ベントナイトを腐食抑制剤と共に有する添加剤Nykon(登録商標) 77を、層状ケイ酸塩として本発明による組成物において使用することができ、しかしその際に、プロピレンカーボネート以外の膨潤剤成分が好ましい、それというのも、該添加剤はさらに亜硝酸ナトリウムを含有し、これはプロピレンカーボネートと反応して窒素酸化物及び二酸化炭素を形成するかもしれないからである。使用できる層状ケイ酸塩としてのスメクタイトの例は、Baragel(登録商標) 20であり、これは、有機変性スメクタイト粘土鉱物である。ヘクトライトをベースとする、適した層状ケイ酸塩は、例えば、Baragel(登録商標) 24、Bentone(登録商標) 27、Bentone(登録商標) 38、並びにLaponit(登録商標) EP、RD、RDS、S482及びLaponite(登録商標) SL25である。挙げた全ての例は、Elementis Specialties, Inc.、米国ハイツタウンから入手可能である。
【0060】
該防食の改善のため及び(冷却する際の)潜在的な熱作用による該塗膜の安定化のために使用できるパラフィンワックスは、例えば、マイクロワックス、例えばSasolwax 3279(溶融範囲76~82℃)又はパラフィンワックス、フィッシャー-トロプシュワックス、例えばSasolwax C80M(軟化点>70℃を有する)又は異なるパラフィンワックスの混合物であってよい。
【0061】
KWパラフィンワックスの代わりに、本発明による防食剤は、該防食の改善のため及び(冷却する際の)潜在的な熱作用による該塗膜の安定化のために、好ましくは、天然ワックス、好ましくは再生可能原料をベースとする天然ワックスである、エステルワックス又はエステルワックス混合物を有していてよい。天然ワックスの主成分は、脂肪酸と長鎖の脂肪族第一級アルコールとのエステルであり、かつ主に抽出により取得される。好ましいエステルワックスは、例えば、74~80℃の滴点を有するC42~C60エステル(C20~C28脂肪酸でエステル化されたC20~C32脂肪アルコール)を主に含有するひまわりワックスであってよい。ひまわりワックスは、例えば、Kahl & Co.KG、独国トリッタウの名称Kahlwax 6607 L、又はKosterKeunen Holland BV、蘭国ブラーデルのSunflower Waxで入手可能である。
【0062】
以下に、本発明による防食剤の利点及び該レオロジー的挙動の調節可能性が、実施例に基づいて、技術水準からの従来の防食剤の比較例に対比して説明される。
【0063】
第2表:欧州特許第2865723号明細書(EP 2 865 723 B1)による防食剤の組成物の比較例1(V1)
【表2】
【0064】
第3表:本発明による組成物についての例B2、B3及びB4
【表3】
【0065】
第4表:本発明による組成物についての例B5、B6及びB7
【表4】
【0066】
第5表:本発明による組成物についての例B8及びB9
【表5】
【0067】
第6表:本発明による組成物B2~B9の簡単な説明
【表6】
【0068】
図1は、多様なワックスのワックス混合物が改善された流出抑制を引き起こす、従来の組成物V1に対して、該熱安定性の改善のために層状ケイ酸塩を有する、本発明による防食剤B8のレオロジー的挙動を説明する。図1からは、双方の組成物、本発明によるB8及び従来のV1が、チキソトロピックな挙動を示すことが明らかになる:その動的粘度は、せん断応力で明らかに低下されるので、該組成物は室温でも噴霧することができる。その噴霧後に、該粘度は、該せん断応力が弱まるために、隙間への浸透が行われる間に数秒以内に再び増加し、かつ流出抑制が始まってから、数時間後に該樹脂硬化が開始する。本発明による組成物B8と、従来の組成物V1との相違は、静止段階とせん断段階との明らかにより大きな粘度差にあり、その際に、本発明による組成物B8の静止粘度は、従来の組成物V1よりも明らかに大きいのに対して、せん断粘度は、類似の範囲内にあるので、本発明による組成物B8は、従来の組成物V1と全く同じように良好に噴霧でき、かつ隙間へ浸透することができる。これに反して、本発明による組成物B8は、塗布が行われた後の該粘度のより高い上昇に基づき、明らかにより少ない流出傾向を有する。
【0069】
図2~4において、多様な塗布温度及び基材温度での従来の防食剤V1及び本発明による多様な防食剤(B2、B8、B9、B3及びB4)の流出試験の3つの写真画像が示されている。各画像には、付属しているスケールが示されている。
【0070】
該レオロジー的挙動を決定するための流出試験の実施は、次の工程を含む:
1.予め定められた量、例えば200gの、それぞれの防食剤(V1、B2、B8、B9、B3、B4)が、予め定められた塗布温度T(ここでは20℃)で予め定められた回転数(ここでは300分-1)で撹拌される。
2.水平な位置の基材、例えば金属薄板が、予め定められた基材温度T(ここでは20℃又は60℃)で用意される。
3.ピペット又は適した他の試料採取装置を用いて、それぞれの防食剤の予め定められた体積(ここでは200μl)がそれぞれ採取され、かつ前記の水平な試料薄板表面上に垂直に適用される。
4.該試料薄板は、予め定められた期間(ここでは7秒)後に、その水平な薄板位置から垂直な薄板位置へ起こされる。
5.該防食剤の流出が、観察及び/又は測定される。
6.予め定められた流出時間(ここでは10分)後に、写真画像が撮影される。
【0071】
各試料薄板上で、該スケールの左側に従来の組成物V1の試料が、かつ該スケールの右側に本発明による防食剤のそれぞれ5つの試料(左から右へ)B2、B8、B9、B3及びB4が適用されており、それらの組成は上記で挙げられている。従来の組成物V1は、まず第一に、ベースフルード(合計で33.49質量%)、アルキド樹脂(22質量%)及びワックス(合計で9質量%)の割合が、ベースフルード45~49.5質量%、アルキド樹脂6質量%及びワックス0~5質量%及び/又は層状ケイ酸塩0~4質量%を有する本発明による組成物とは相違するのに対して、スルホネート成分(15~16質量%)及びフィラー(20~25.4質量%)の割合は類似している。
【0072】
本発明による組成物相互の主な相違は、まず第一に、層状ケイ酸塩及びワックスの多様な割合にある:B2は、層状ケイ酸塩を含有しないが、パラフィンワックス1.5質量%を含有し、そのうえいくらかより高い割合のベースフルード(Nexbase 3030)を有し、その粘度及び粘度指数は、本発明による他の組成物のベースフルード(Nexbase 3043)の粘度及び粘度指数よりもいくらか小さい。組成物B8は、層状ケイ酸塩1.2質量%を含有するが、しかしワックスを含有しておらず、B9は、層状ケイ酸塩4質量%を含有するが、ワックスを含有しておらず、B3は、層状ケイ酸塩1質量%及びエステルワックス2質量%を含有し、かつB4は、層状ケイ酸塩0.4質量%及びエステルワックス5質量%を含有する。
【0073】
予め定められた塗布温度T(20℃又は60℃)及び薄板温度T(20℃又は60℃)は、各画像のもとで示されている:図2の画像において、該金属薄板は、20℃の温度Tを有し、その際に、該防食剤V1、B2、B8、B9、B3、B4は、T=20℃で適用された。図3における画像では、該金属薄板は、20℃の温度Tを有し、かつ該防食剤V1、B2、B8、B9、B3、B4は、T=60℃で適用された。図4における画像では、該試料薄板は、60℃の温度Tを有し、その際に、該V1、B2、B8、B9、B3、B4はまたしてもT=20℃で適用された。該流出挙動の評価のために、それぞれ該試料薄板上に示されているスケールを考慮することができる。
【0074】
ワックスを含有していない組成物B8及びB9の流出距離は、相互に相違するが、3つ全ての実験(図2、3及び4)における組成物B8又はB9の流出挙動は、それぞれ類似しており、その際に、組成物B8は、7.5~10cmの流出距離を示し、かつ組成物B9は、2.5cm未満の流出距離を示すことが明らかになる。層状ケイ酸塩を有する、前記のワックスフリーの組成物B8及びB9の流出挙動は、該塗布温度T又は該薄板温度Tに大体において依存していない。それとは異なり、ワックスを含有する組成物B2、B3、B4並びに比較例V1は、多様な塗布温度T及び薄板温度Tで多様な流出挙動を示す。
【0075】
図2及び4は、該ワックス含有組成物B2、B3、B4及びV1の流出挙動が、変わらない塗布温度T=20℃で、該基材温度に依存していることを示す。その際に、エステルワックス(溶融範囲74~80℃)5質量%及び層状ケイ酸塩0.4質量を含有する組成物B4の流出挙動は、パラフィンワックス(溶融範囲76~82℃)1.5質量%で明らかにより少ないワックスを含有するが、層状ケイ酸塩を含有しない組成物B2の流出挙動に類似する:例えば、基材温度T=20℃(図2)で、組成物B2及びB4の流出距離は、約17.5cmである。したがって、より高いワックス割合で増加する流出傾向は、層状ケイ酸塩の添加により補償することができる。9質量%のよりいっそう高いワックス割合にもかかわらず12.5~15cmの範囲内の比較例V1のいくらかより短い流出距離は、その明らかにより低い割合のベースフルードに起因されうる。これに反して本発明による組成物B3は、ワックス2質量%でB2と類似のワックス割合を有するが、そのうえなお層状ケイ酸塩1質量%を含有し、これはB2に比べて改善された流出抑制を引き起こし、並びにワックスを有していないが、層状ケイ酸塩1.2質量%でB3と類似の層状ケイ酸塩割合を有するB8の流出距離の範囲内であるB3についての約10cmの流出距離を示す。したがって、20℃の同じ基材温度及び塗布温度T、Tで、該流出挙動は、該ワックス割合によるよりもむしろ、該層状ケイ酸塩割合により影響を受ける。
【0076】
基材及び塗布の多様な温度T、Tで、該ワックス割合は、より大きな役割を果たす。基材温度T=60℃(図4)及び塗布温度T=20℃で、層状ケイ酸塩を含有しないかもしくはわずかにのみ含有する、本発明による組成物B2及びB4並びに比較組成物V1は、見たところでは流出抑制を示さない;その際に、37.5cmを上回る流出距離が、該試料薄板全体に広がり、すなわち該試料は、10分の実験期間中に該試料薄板から滴り落ちている。これに反して、1質量%の層状ケイ酸塩割合を有する試料B3は、―殊に、類似のワックス割合を有するが、層状ケイ酸塩を有していないB2と比較して―約20cmの流出距離を有する改善された流出抑制を示す。しかし、そのために、B3の流出距離は、B3に類似して1.2質量%で層状ケイ酸塩割合を有するが、ワックスを有していない組成物B8の流出距離よりも約10cm明らかに長い。
【0077】
高められた塗布温度T=60℃を有する組成物V1、B2、B8、B9、B3、B4が、冷たい薄板T=20℃上へ適用される場合には(図3)、前記のワックスなしの組成物B8及びB9は、7.5~10cm(B8)及び2.5cm未満(B9)の流出距離を有する他の2つの実験におけるのと同じ流出挙動を示し、その際に、生じる流出抑制は、該層状ケイ酸塩割合に依存している。該ワックス含有組成物V1、B2、B3、B4は、B2を除いて、見たところでは直ちに始まる流出抑制を示し、すなわち、塗布後に流出せずに凝固する。そして、1.5質量%で最も少ないワックス割合を有する組成物B2は、単に2.5cm未満の短い流出距離を示し、すなわち、ここでも流出抑制は塗布直後に始まる。この実験において、該ワックス含有組成物の場合にいわゆる垂れ落ち防止効果が生じ、その際に、該防食剤中に存在するワックスが、高められた塗布温度により溶解して存在するので、急冷のやり方で比較的冷たい薄板上での塗布の際に、迅速な凝固もしくはゲル形成となる。
【0078】
該流出試験は、本発明による防食剤の流出挙動が、層状ケイ酸塩及びワックスの割合により、その用途において予定される基材温度及び塗布温度に意図的に調節することができることを示す。層状ケイ酸塩を含有し、かつワックスを含有しない防食剤が、ほぼ温度から独立した流出挙動を有するのに対して、ワックスを有する防食剤は、20℃の同じ基材温度及び塗布温度T、Tで、該ワックス割合によるよりもむしろ、該層状ケイ酸塩割合により影響を受ける流出挙動を示す。これに反して加温された基材上での冷間塗布の場合に、より高いワックス割合は、明らかにより劣悪な流出挙動をまねくが、しかしこれは、層状ケイ酸塩の添加により少なくとも部分的に補償することができる。層状ケイ酸塩なしの組成物は、加温された基材上での冷間塗布を用いるこの塗布の状況において、流出抑制をわずかに示すないし示さない。これに反して加温された基材もしくは薄板上での塗布の場合に、該防食剤のワックス含有組成物の塗布温度は、前記のそれぞれの組成物中の層状ケイ酸塩及びワックスの割合よりも、該流出挙動へのより少ない影響を有する、それというのも、この際に、該ワックス含有組成物は、垂れ落ち防止効果を示すのに対して、ワックスなしの組成物の場合の流出抑制は、本質的に該層状ケイ酸塩割合に依存しているからである。
【0079】
例えば、本発明による防食剤のレオロジー的に有効な成分は、以下の構造付与剤へ分類することができる:
- その粘度が温度又はせん断に依存しない、ニュートン流体(例えばベースフルード)、そのためには、100よりも大きい、好ましくは120よりも大きい、高い粘度指数を有するグループIII基油が好ましい;
- せん断に依存した粘度を有するが、その温度の影響を有していない無機成分(例えば炭酸カルシウム充填剤);
- 短期間の温度処理の際に実質的な粘度変化なしに、強くせん断に依存した粘度を条件付ける、構造粘性成分としての活性化された(分解された)層状ケイ酸塩;
- 熱作用が終わった後に温度に依存した塗膜硬化及び改善された塗膜安定性のために温度に依存した粘度を有するパラフィンワックス及び/又はエステルワックス;
- 未反応の出発成分としてむしろニュートン挙動を示すが、重合後に該粘度の強い上昇を伴う構造粘性をもたらす、(化学的に)反応性の成分(例えばアルキド樹脂)、その際に、この効果は、前記の物理的効果に比較して明らかな時間的遅れ(1~3日)を伴って生じる。
【0080】
これらの構造付与剤の比の相応する選択により、所望の応用技術的なレオロジー的挙動に調節することができる:噴霧/隙間への浸透後の後流動、噴霧性、該塗膜の熱安定性、該塗膜の機械的安定性等。
【0081】
したがって、構成部品の空洞部が防食剤でシールされるべき各生産過程のために、生じる温度条件に合わされた防食剤を用意することができるので、該防食剤は最適に噴霧することができ、かつ隙間へ浸透することができ、それから、形成された塗膜がゲル化し始め、かつ硬化するので、後続のプロセス工程において、防食剤は、ついで生じる温度から独立して、該構成部品からもはや出て行かない。使用者、例えば自動車製造業者の特有の要件に応じて、該防食剤のレオロジー特性を意図的に調節することができる。通例、使用者である自動車製造業者は、90~105℃での塗膜安定性を要求する。約70℃までの熱安定性を引き起こすのは、該ワックス割合(溶解/ゲル化による)であり、より高い温度では、塗布された塗膜は、前記の重合されたアルキド樹脂により安定化される。
【0082】
図5は、従来の組成物V1(第2表)に比べて、本発明による防食剤B5の改善された防食特性(第4表参照)を説明する。該腐食試験のために、塩水噴霧試験をDIN EN ISO 9227 NSSに従って実施した。基材として、薄鋼板Q-Blech R46が選択され、これらは、それぞれの防食剤V1及びB5の50μmのコーティング厚さでコーティングされた。
【0083】
図5における上列は、塩水噴霧試験1008h、1176h、1344h及び1512h後の、該組成物V1でコーティングされた薄板の4つの画像を示す。すでに1176h後に、明らかな腐食現象を確認することができる。1512h後に、V1でコーティングされた薄板は、平面的な腐食を示すので、該試験を終了した。その下列において、本発明による組成物B5でコーティングされた薄板の8つの画像が示されている。そこでは、1512h後に依然として腐食は現れなかった。塩水噴霧試験2016hから、腐食現象が該薄板の左縁部で生じるが、2520h及び2856h後に中程度にのみ増加する。平面を覆う腐食は、本発明による防食剤B5でコーティングされた薄板の場合に該塩水噴霧試験において3024h後にはじめて生じる。双方の組成物B5、V1は、15.66もしくは15.0質量%で匹敵する割合の過塩基性カルシウムスルホネートを防食成分として有するので、この明らかな相違は、驚くべきことであり、同様に防食に寄与するワックスを合計で9質量%有し、それどころかエステルワックス5質量%を有するB5よりもいっそう多くワックスを含有するV1はなおさらである。本発明による組成物B5の防食の重大な改善は、明らかに低下されたアルキド樹脂割合(22質量%の代わりに6質量%)、硫酸カルシウム(V1において20.0質量%で使用される)の代わりに代替的に使用されるフィラーである炭酸カルシウム(24.56質量%)と一緒にアルカリ性の酸捕捉剤成分としての酸化亜鉛2質量%の添加により、達成される。本発明による防食剤のさらなる例を用いるさらなる試験系列の画像は図示されていない。しかし、全ての例についての腐食試験が、類似して良好な結果となることが分かった。その際に、塩水噴霧試験ISO 9227 NSSにおける保護期間のおよそ2倍となることが明らかとなる。
【0084】
図6~8は、本発明による防食剤B5、B6及びB9(第4表及び第5表参照)と比較した、従来の防食剤V1(第2表参照)の放出(ISO 16000-3による放出測定)についての線図を示す。該臭気及び揮発性有機化合物、例えばアルデヒド及び短鎖有機酸の放出を減らすために、明らかに低下された割合のアルキド樹脂(従来の組成物V1における22質量%に比べて本発明による例における6質量%)並びに本発明による全ての例における皮張り防止剤の放棄が寄与する。
【0085】
さらに、本発明による組成物において放出の少ないアルキド樹脂、例えば、少なくとも98質量%の不揮発分割合を有するWorleeKyd(登録商標) SD 8300(B5、B6)又は100質量%の固形分を有するBremar(登録商標) RK 7046(B9)が使用され、それに対して、従来の防食剤において、アルキド樹脂、例えばSynolac(登録商標)が使用され、これらは単に50~75質量%の不揮発分を有し、かつ溶剤、例えばキシレン、ホワイトスピリット中に存在する。
【0086】
このことは、明らかにTVOC放出(total volatile organic compounds、すなわち揮発性有機化合物の合計)に表れており、これらは、図8において、本発明による防食剤B5、B6及びB9と比較した、従来の防食剤V1についての柱状図に作図されている:従来の組成物V1は、2.977μg/gで、本発明による組成物B5(367μg/g)、B6(258μg/g)及びB9(167μg/g)の6倍を上回るTVOC放出を示し、すなわち本発明による組成物B5、B6もしくはB9は、V1を基準として該放出の12%、8.7%もしくは5.6%しか有していない。本発明による組成物の多様な放出値は、一方では、それ以外は同じ組成物B5に比べてB6における臭気捕捉剤としての吸着剤(ZEOflair(登録商標))の添加に、及び他方では、B9における代替的なアルキド樹脂(WorleeKyd(登録商標) SD 8300の代わりにBremar(登録商標) RK 7046)に起因されうる。
【0087】
該アルデヒド放出及び該アルキド樹脂の硬化の際に形成される有機酸の放出についての結果も、従来の組成物V1に比べて、本発明による例組成物B5、B6及びB9について明らかな低下を示す。
【0088】
図6における柱状図は、それぞれ比較組成物V1及び例組成物B5、B6及びB9についてのC1~C2アルデヒド、C3~C5アルデヒド、C6~C9アルデヒド及びC>3を有するアルデヒドの合計に細分される、アルデヒド放出を示す。確かに、すでにV1も、該C1及びC2アルデヒドの場合に10.2μg/gで低い放出を有するが、しかし、それを本発明による組成物B5(4.6μg/g)、B6(4.4μg/g)及びB9(2.3μg/g)はなお下回る。よりいっそう明らかには、該C3~C5アルデヒドについての放出の低下は、V1については104.7μg/gから、V1を基準として、B5、B6及びB9については22%、20%及び16%の結果に、及び該C6~C9アルデヒドについては、V1については304μg/gから、V1を基準として、B5、B6及びB9については28%、23%及び15%の結果になる。まとめると、C>3を有するアルデヒドの放出が、V1については410.2μg/gから、V1を基準として、かろうじて30%(B5については118.6μg/g)、23%(B6については92.4μg/g)もしくは16%(B9については64μg/g)に、低下される。技術水準からの比較組成物V1に比べて該アルデヒド放出の明らかな低下は別として、B6における該吸着剤の添加及びB9における代替的なアルキド樹脂の使用が、さらなる低下をもたらし、その際に、そのより大きな低下が、前記の代替的なアルキド樹脂の使用により達成されることが明らかになる。
【0089】
類似のことを図7における柱状図が示し、該図において、該酸放出が、それぞれ比較組成物V1及び例組成物B5、B6及びB9についてのC1~C2酸、C3~C6有機酸、該C1~C9有機酸の合計及び全ての有機酸の合計に細分されている。すでにV1について1.9μg/gの該C1及びC2酸の低い放出値は、本発明による例B5、B6及びB9により、0.2μg/g(B5)、0.09μg/g(B6)及び0.1μg/g(B9)に低下させることができる。前記のC3~C6を有する有機酸については、前記のC1~C9を有する酸及び同定された全ての有機酸についてと同じように、より明らかな放出低下が分かる。V1によるC3~C6有機酸の放出139μg/gに比べて、本発明による例組成物B5、B6及びB9については6.87μg/g(5%)、6μg/g(4.3%)及び1.1μg/g(0.8%)しか測定されない(V1値を基準としたパーセントデータ)。類似の様子は、該C1~C9有機酸について明らかになり、それらについて、V1については144.9μg/gの値及びB5、B6及びB9については8.17μg/g、6.3μg/g及び2.3μg/gの値が測定され、これは、該V1値を基準として、5.6%、4.3%及び1.6%に相当する。同定された全ての有機酸については、V1については165.4μg/gの値及びB5、B6及びB9については9.3μg/g、8.9μg/g及び8.4μg/gの値が測定され、これは、該V1値を基準として、5.6%、5.4%及び5.1%に相当する。
【0090】
該C1~C2酸の場合に、吸着剤ZEOflair(登録商標)を含有する組成物B6で、最も少ない放出が達成されるが、B5及びB6に比較して代替的なアルキド樹脂を有するB9よりもごくわずかにのみ少ない。そのさらなる酸放出、殊に該C3~C6酸、しかしC1~C9酸に関しても、例組成物B6は、吸着剤なしの例組成物B5よりも少ない放出を示し、かつ前記の代替的なアルキド樹脂を有する例組成物B9は、よりいっそう明らかに低下された放出値を示すのに対して、本発明による3種の組成物B5、B6及びB9についての同定された全ての有機酸の全放出は、類似の範囲内にある。したがって、確かに、B9における前記の代替的なアルキド樹脂の使用は、例B5及びB6のアルキド樹脂よりも有機酸>C9のより高い放出をまねくが、これらのより長鎖であまり揮発性でない成分の放出はその臭気についてあまり関連していない。
【0091】
B6とは、臭気捕捉剤成分として反応試剤マロンアミドが吸着剤ZEOflair(登録商標)の代わりに使用されることのみによって相違する、例組成物B7は、B6と類似の放出結果を示し、そのために、これらはここでは別々に提示及び説明されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8