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特許7014932大型等軸晶のアルミニウム合金インゴットのアレイ噴射式付加製造装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】大型等軸晶のアルミニウム合金インゴットのアレイ噴射式付加製造装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 23/00 20060101AFI20220125BHJP
   B22D 21/04 20060101ALI20220125BHJP
   B22F 10/20 20210101ALI20220125BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220125BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220125BHJP
【FI】
B22D23/00 E
B22D21/04 A
B22F10/20
B33Y30/00
B33Y10/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021509862
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 CN2018122252
(87)【国際公開番号】W WO2020098065
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】201811363977.4
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507190994
【氏名又は名称】上海交通大学
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI JIAO TONG UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】800 Dongchuan Rd.,Minhang District,Shanghai,200240,P.R.CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チアオ
(72)【発明者】
【氏名】スン、パオトー
(72)【発明者】
【氏名】トン、チン
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108788102(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108405863(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105499578(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0100772(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 23/00
B22D 21/00-21/06
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準気圧チャンバー内に設置され、放出機構を備える液態アルミニウム噴射機構と、前記液態アルミニウム噴射機構の下方に位置し、前記標準気圧チャンバー内に設置される可動冷却凝固機構と、制御機構と、を備え、
前記制御機構は、前記放出機構に引き上げ命令を送信し、前記可動冷却凝固機構に三次元移動命令を送信し、前記液態アルミニウム噴射機構内のアルミニウム溶湯を予め設定された経路に沿って連続的な流れで前記可動冷却凝固機構の表面に噴射し、急冷凝固でインゴットを形成するように構成され、前記放出機構は、前記制御機構と接続され、前記アルミニウム溶湯の噴射速度を制御するために設けられ、
前記液態アルミニウム噴射機構は、アルミニウム溶湯チャンバーと、前記アルミニウム溶湯チャンバーの底部に設置されるアレイ状に配置されるノズルを備え、
前記アレイ状に配置されるノズルの行の間隔及び列の間隔は、300mmよりも小さく設定され、前記ノズルの口径は、0.2mm~30mmであり、
各ノズルの行方向における移動距離は、前記ノズルの列の間隔と同じであり、各ノズル列方向における移動距離は、前記ノズルの行の間隔と同じであり、
前記可動冷却凝固機構は、前記アレイ状に配置されるノズルと真正面に対向するように設置されている冷却凝固テーブルと、前記冷却凝固テーブルの下方に鉛直方向移動可能に設置される二次元移動機構と、引き下げ装置と、を備え、
前記二次元移動機構及び前記引き下げ装置は、それぞれ前記制御機構と接続され、二次元移動命令及び鉛直方向への移動命令を受信して三次元移動を実現するように構成され、
前記放出機構は、前記アレイ状に配置されるノズルに対応するように設置される封止ロッドと、前記封止ロッド及び前記制御機構と接続され、放出命令を受信して、前記アレイ状に配置されるノズルを開放するように前記封止ロッドを引き上げる引き上げ装置と、を備える
ことを特徴とする大型等軸晶のアルミニウム合金インゴットのアレイ噴射式付加製造装置。
【請求項2】
前記標準気圧チャンバーには、前記制御機構と接続され、内部の気圧を調節する真空ポンプが接続され、
前記標準気圧チャンバーは、その内部に不活性ガスを導入し保護するために、不活性ガス源と接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記アルミニウム溶湯チャンバーに、前記制御機構と接続されるチャンバー内ヒーターがさらに設置される
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記アレイ状に配置されるノズルの外部に、ノズルヒーターがさらに設置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記冷却凝固テーブルの内部に冷却液流路が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記制御機構は、移動制御ユニット及び統合制御ユニットを備え、
前記移動制御ユニットは、前記統合制御ユニットと接続され、前記可動冷却凝固機構の移動情報を伝送するように構成され、
前記統合制御ユニットは、それぞれ前記放出機構及び真空ポンプと接続され、前記放出機構の動作及び前記真空ポンプの開閉の情報を伝送し、前記二次元移動機構と接続され、前記二次元移動機構の移動情報を伝送し、前記引き下げ装置と接続され、前記引き下げ装置の移動情報を伝送するように構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金分野に関し、具体的に、大型等軸晶のアルミニウム合金インゴットのアレイ噴射式付加製造装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半連続鋳造は、産業で通常使用される大型アルミニウム合金インゴットの製造方法であり、主にホットトップ鋳造とダイレクトチル鋳造を含んでいる。ホットトップ鋳造の利点は、鋳造時に液面が安定であるが、インゴットの中心に比較的に深いサンプが形成され、凝固組織に大きな柱状晶領域が含まれ、インゴットの中心からエッジ部にわたってマクロ偏析が顕著となり、比較的に大きい内部応力が残留された。このため、インゴットが亀裂しやすく、歩留まりが低いので、高合金アルミニウム合金インゴットの生産に適しない。ダイレクトチル鋳造の利点は、インゴットの中心位置のサンプの深さを大幅に小さくすることができ、さらにインゴットのマクロ偏析と内応力を低減させることができるが、鋳造時に液面が不安定になり、モールドパウダが巻き込まれやすく、柱状晶領域の生成も避けることが困難である。したがって、通常のプロセスで均質性に優れた大型インゴットを製造することは極めて困難である。
【0003】
付加製造は、アルミニウム溶湯の大範囲の凝固による鋳造方法の代わりに、微小エリアの連続溶融及び積み上げで大きなインゴットを製造するものであり、サンプの形成を防ぐことができるとともに、冷却速度が速くなり等軸晶の組織の形成に寄与できるので、通常の鋳造方法による一連の欠陥を解消した。従来の代表的な方法として、スプレーフォーミング及び選択的レーザー再溶融方法がある。スプレーフォーミングで無マクロ偏析のインゴットを製造することができるが、製造されたアルミニウムインゴットは、気孔率が高く、組織が緻密でなく、酸化が顕著である。選択的レーザー再溶融方法は、上記の問題が発生せず、凝固組織が比較的に理想的であるが、製造効率が低く、製造時間が長く、コストが高く、大型インゴットの量産に適用することは困難である。従来の技術において、帯電金属液滴を磁気的制御して直接に堆積して成形する金属微小液滴付加製造方法があるが、金属液滴成形の効率が低く、大型インゴットの生産に適用することが不可能である。現在、負圧により大きな体積の溶融液を噴射し、安定且つ連続的に金属液柱を形成し、急冷凝固して、大型、異形の無偏析等軸晶組織のインゴットを製造する方法が開示されていない。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、従来技術の課題を鑑みてなされたものであり、大型等軸晶のアルミニウム合金インゴットのアレイ噴射式付加製造装置及び方法を提出する。したがって、負圧により、大きな体積の溶融液を噴射し、安定且つ連続的に金属液柱を形成し、さらに、複数のノズルをアレイ状に配置することにより、大きな体積のアルミニウム溶湯が、数十ひいては数百の連続的な流れに均一に分散され、下方の急冷凝固テーブルの三次元移動と協働して、薄いアルミニウム溶湯層を幅広く展開させ、連続的な凝固により、インゴットを形成することができる。この方法は、生産効率が高く、超大型のアルミニウム金属インゴットを製造することができ、凝固組織が等軸晶となり、無マクロ偏析となる。
【0005】
本発明は、以下の技術方案で実現される。
【0006】
本発明は、標準気圧チャンバー内に設置され、アレイ状に配置されるノズルを備える液態アルミニウム噴射機構と、液態アルミニウム噴射機構の下方に位置し、標準気圧チャンバー内に設置される可動冷却凝固機構と、制御機構とを備え、制御機構は、放出機構に引き上げ命令を送信し、可動冷却凝固機構に三次元移動命令を送信し、液態アルミニウム噴射機構内のアルミニウム溶湯を予め設定された経路に沿ってアレイ状の連続的な流れで可動冷却凝固機構の表面に噴射し、急冷凝固でインゴットを形成するように構成される。
【0007】
前記標準気圧チャンバーには、制御機構と接続され、内部の気圧を調節する真空ポンプが接続される。
【0008】
前記標準気圧チャンバーは、その内部に不活性ガスを導入し保護するために、不活性ガス源と接続される。
【0009】
前記液態アルミニウム噴射機構は、制御機構と接続され、アルミニウム溶湯の噴射の開閉を制御するための放出機構と、アルミニウム溶湯チャンバーと、アルミニウム溶湯チャンバーの底部に設置されるアレイ状に配置されるノズルを備える。
【0010】
前記放出機構は、アレイ状に配置されるノズルに対応するように設置される封止ロッドと、封止ロッド及び制御機構と接続され、放出命令を受信して、アレイ状に配置されるノズルを開放するように封止ロッドを引き上げる引き上げ装置を備える。
【0011】
前記アルミニウム溶湯チャンバーに、制御機構と接続されるチャンバー内ヒーターがさらに設置される。
【0012】
前記アルミニウム溶湯チャンバーに液位計が設置される。
【0013】
前記アルミニウム溶湯チャンバーの一側に、アルミニウム溶湯を流入させるために、シャッターを備える液体流入タンクが設けられる。
【0014】
前記アルミニウム溶湯チャンバーの外部に保温構造が設けられる。
【0015】
前記アレイ状に配置されるノズルの外側に、ノズルヒーターがさらに設置される。
【0016】
前記可動冷却凝固機構は、アレイ状に配置されるノズルと真正面に対向するように設置されている冷却凝固テーブルと、冷却凝固テーブルの下方に鉛直方向移動可能に設置される二次元移動機構と、引き下げ装置と、を備え、二次元移動機構及び引き下げ装置は、それぞれ制御機構と接続され、二次元移動命令及び鉛直方向への移動命令を受信して三次元移動を実現するように構成される。
【0017】
鉛直方向への移動は、二次元移動機構の下部に設置された引き下げ装置により実現される。
【0018】
前記冷却凝固テーブルの内部に冷却液流路が設けられている。
【0019】
前記制御機構は、移動制御ユニット及び統合制御ユニットを備え、移動制御ユニットは、統合制御ユニットと接続され、可動冷却凝固機構の移動情報を伝送するように構成され、統合制御ユニットは、それぞれ放出機構及び真空ポンプと接続され、放出機構の移動及び真空ポンプの開閉の情報を伝送し、二次元移動機構と接続され、二次元移動機構の移動情報を伝送し、引き下げ装置と接続され、引き下げ装置の移動情報を伝送するように構成される。
【0020】
本発明の上記の装置による大型等軸晶のアルミニウム合金インゴットのアレイ噴射式付加製造方法は、以下のステップを含む。
【0021】
ステップ1において、封止ロッドを最下位に移動させ、ノズルがオフ状態となるようにし、チャンバー内ヒーターを起動して、アルミニウム溶湯の温度になるように予め加熱して、その温度を維持し、さらに、入口シャッターを開き、アルミニウム溶湯をアルミニウム溶湯チャンバーに流入させ、液位計でアルミニウム溶湯が予め設定された高さとなることを検出するとき、入口シャッターを閉じて、ノズルヒーターを起動してノズルを予め加熱し、そして、密閉冷却凝固チャンバーを密閉し、真空ポンプを起動して密閉冷却凝固チャンバに対して真空排気を行い、真空度が要求に満足した後、真空ポンプを停止させ、予め設定された圧力となるように不活性ガスを導入する。
【0022】
ステップ2において、冷却水を導入し、そして移動制御ユニットにより引き下げ装置を制御して、ノズルから冷却凝固テーブルまでの距離を予め設定された距離となるように調節し、その後、二次元移動装置を起動して、ノズルが冷却凝固テーブルに対して周期的に往復移動するように駆動し、さらに、引き上げ装置を起動し、封止ロッドを引き上げてアルミニウム溶湯がノズルに入るようにし、そして、真空ポンプを起動して密閉冷却凝固チャンバの圧力が標準気圧より小さくなるように排気し、アルミニウム溶湯が、密閉冷却凝固チャンバに形成された負圧により、ノズルを介して安定に液柱に形成されて噴射され、そして、冷却凝固テーブルに噴射され、インゴットが形成され、インゴットの製造が開始した後、引き下げ装置を制御して冷却凝固テーブルを下へ移動させ、インゴットの製造において、アルミニウム溶湯を消耗し続けており、アルミニウム溶湯チャンバーにおけるアルミニウム溶湯の液面が警戒水位まで低下すると、入口シャッターを開き、安定なレベルとなるようにアルミニウム溶湯を補填して、再び入口シャッターを閉じる。
【0023】
ステップ3において、インゴットの製造が完了した後、封止ロッドでアルミニウム溶湯のノズルからの流出を遮断し、二次元移動装置及び引き下げ装置を停止させ、ヒータの電源をオフにし、インゴットが冷却された後、冷却水の導入を遮断し、製造が完了する。
【0024】
技術的効果
本発明は、従来技術に比べて、負圧により、大きな体積の溶融液を噴射し、安定且つ連続的に金属液柱を形成し、さらに、複数のノズルをアレイ状に配置することにより、大きな体積のアルミニウム溶湯が、数十ひいては数百の連続的な流れに均一に分散され、下方の急冷凝固テーブルの三次元移動と協働して、薄いアルミニウム溶湯層を幅広く展開させ、連続的な凝固により、インゴットを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による構成模式図である。
図2】ノズルの構成模式図である。
図3】ノズル液柱の移動経路の模式図である。
図4】実施例1の金属組織の写真である。
図5】実施例1の金属組織の写真である。
図6】実施例2の金属組織の写真である。
図7】実施例2の金属組織の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施例1
図1に示すように、本実施例による大型等軸晶のアルミニウム合金インゴットのアレイ噴射式付加製造装置は、入口シャッター1、ガイドタンク2、アルミニウム溶湯3、保温層4、ガス進入管5、不活性ガス6、ノズルヒーター7、ブロック板8、冷却凝固テーブル9、二次元移動装置10、ガイドレール11、支持テーブル12、引き上げ装置13、封止ロッド14、チャンバー内ヒーター15、アルミニウム溶湯チャンバー16は、ノズル17、液位計18、インゴット19、冷却水管20、密閉冷却凝固チャンバ21、移動制御ユニット22、引き下げ装置23、真空ポンプ24及び統合制御ユニット25を備える。
【0027】
前記アルミニウム溶湯チャンバー内の圧力は、標準気圧に保たれ、密閉冷却凝固チャンバは、完全に密閉される。圧力Pは、真空ポンプ24と吸気管により調節される。インゴットの製造において、圧力Pは、標準気圧よりも小さくする。
【0028】
図2に示すように、前記ノズル17は、アレイ状に配置され、その行の間隔がW(W<300mm)、その列の間隔がL(L<300mm)、その口径がD(0.2mm<D<30mm)に設定される。
【0029】
前記二次元移動装置10は、冷却凝固テーブルのX、Yの2つの水平方向に沿う移動を駆動する。移動速度が、v(v<1000mm/s)に設定され、2つの方向における最大ストロークが、それぞれX(X<1m)、Y(Y<1m)に設定される。冷却凝固テーブルの移動により、冷却凝固テーブルに対するノズル液柱の移動経路が図3のようになるが、このような移動経路に限定されない。また、ノズル液柱の移動経路において、隣接するパスの間隔がd(d<30mm)に設定される。図2及び図3に示すように、1つのパスにおけるノズルの移動距離は、ノズルの列の間隔Lと同じであり、当該ノズルの移動の全幅は、ノズルの行の間隔Wと同じである。
【0030】
前記引き下げ装置13は、冷却凝固テーブルの鉛直方向に沿う移動を実現するためのものである。その移動速度がv1(v1<50mm/s)に設定され、その合計の移動距離がZ(Z<5m)に設定される。
【0031】
本実施例による大型等軸晶のアルミニウム合金インゴットのアレイ噴射式付加製造方法は、以下のステップを含む。
【0032】
ステップ1
封止ロッドを最下位に移動させ、ノズルがオフ状態となるようにする。そして、チャンバー内ヒーターを起動して、アルミニウム溶湯の温度T1(T1>600℃)になるように予め加熱して、その温度を維持する。さらに、入口シャッターを開き、アルミニウム溶湯をアルミニウム溶湯チャンバーに流入させ、液位計でアルミニウム溶湯が予め設定された高さとなることを検出するとき、入口シャッターを閉じて、ノズルヒーターを起動してノズルをT2(T2>500℃)の温度となるまで予め加熱する。そして、密閉冷却凝固チャンバを密閉し、真空ポンプを起動して密閉冷却凝固チャンバに対して真空排気を行う。真空度が要求に満足した後、真空ポンプを停止させ、ガス進入管を介してP1(P1=標準気圧)の圧力となるように不活性ガスを導入する。
【0033】
ステップ2
冷却水を導入し、そして移動制御ユニットにより引き下げ装置を制御して、ノズルから冷却凝固テーブルまでの距離をH(H<50cm)となるように調節する。その後、二次元移動装置を起動して、ノズルが冷却凝固テーブルに対して図2のように周期的に往復移動するように駆動する。さらに、引き上げ装置を起動し、封止ロッドを引き上げてアルミニウム溶湯がノズルに入るようにする。そして、真空ポンプを起動して密閉冷却凝固チャンバの圧力がP2(P2<標準気圧)となるまで排気する。アルミニウム溶湯が、密閉冷却凝固チャンバに形成された負圧により、ノズルを介して安定に液柱に形成されて噴射される。そして、冷却凝固テーブルに噴射され、インゴットが形成される。インゴットの製造が開始した後、v1(v1<50mm/s)の速度で引き下げ装置を制御し、ノズルからインゴットの表面までの高さが常にHとなるように、冷却凝固テーブルを下へ移動させる。インゴットの製造において、アルミニウム溶湯を消耗し続けており、アルミニウム溶湯チャンバーにおけるアルミニウム溶湯の液面が警戒液位まで低下すると、入口シャッターを開き、安定なレベルとなるようにアルミニウム溶湯を補填して、再び入口シャッターを閉じる。
【0034】
ステップ3
インゴットの製造が完了した後、封止ロッドでアルミニウム溶湯のノズルからの流出を遮断し、二次元移動装置及び引き下げ装置を停止させ、ヒータの電源をオフにする。インゴットが冷却された後、冷却水の導入を遮断し、製造が完了する。
【0035】
上記の方法で7050アルミニウム合金インゴットを製造する。アルミニウム溶湯の温度を680℃に、ノズルの口径を8mmに、冷却凝固テーブルの水平方向における移動速度を300mm/sに、アレイ状に配置されるノズル噴射面積を2m×5mに、インゴットの厚さを0.5mに設定し、40分間を経て、2m×5m×0.5mの大きなインゴットを製造した。図4に示すように、当該インゴットは、凝固組織が緻密で、無マクロ偏析となり、平均粒径が60~80μmとなる等軸晶からなる。図5は、半連続鋳造で形成されたインゴットの結晶粒組織である。図面から分かるように、本方法で製造されたインゴットの結晶粒組織が著しく微細化された。
【0036】
実施例2
本実施例は、実施例1と同様の方法でAl-4.5Cuアルミニウム合金インゴットを製造する。アルミニウム溶湯の温度を700℃に、ノズルの口径を6mmに、冷却凝固テーブルの水平方向における移動速度を260mm/sに、アレイ状に配置されるノズルの噴射面積を2m×5mに、インゴットの厚さを0.8mに設定し、60分間を経て、2m×5m×0.8mの大きなインゴットを製造した。当該インゴットは、組織が緻密で、無マクロ偏析となり、平均粒径が60~90μmとなる等軸晶からなる。インゴットの断面に沿う中心線の1/4の箇所と1/2の箇所の金属組織の写真は、それぞれ図6図7に示される。
【0037】
当業者は、本発明の原理と主旨から逸脱しない範囲内で、上記の具体的な実施例に対して、異なる方法でその一部を調整することができる。本発明の保護範囲は、上記の具体的な実施例に限定されず、特許請求の範囲に準ずる。その範囲内の各実施形態は、すべて本発明に属する。
【符号の説明】
【0038】
1…入口シャッター
2…ガイドタンク
3…アルミニウム溶湯
4…保温層
5…ガス進入管
6…不活性ガス
7…ノズルヒーター
8…ブロック板
9…冷却凝固テーブル
10…二次元移動装置
11…ガイドレール
12…支持テーブル
13…引き上げ装置
14…封止ロッド
15…チャンバー内ヒーター
16…アルミニウム溶湯チャンバー
17…ノズル
18…液位計
19…インゴット
20…冷却水管
21…密閉冷却凝固チャンバ
22…移動制御ユニット
23…引き下げ装置
24…真空ポンプ
25…統合制御ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7