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特許7014939光制御徐放性ゲル触媒を使用してCr(VI)を効率的に還元する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】光制御徐放性ゲル触媒を使用してCr(VI)を効率的に還元する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20220207BHJP
   B01J 31/04 20060101ALI20220207BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20220207BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20220207BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20220207BHJP
   C02F 1/70 20060101ALI20220207BHJP
   A62D 3/37 20070101ALI20220207BHJP
   C01G 37/00 20060101ALN20220207BHJP
【FI】
B01J35/02 J
B01J31/04 M
B01J37/04 102
B01J37/03 Z
B01J37/10
C02F1/70 B
A62D3/37
C01G37/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021132097
(22)【出願日】2021-08-14
【審査請求日】2021-08-14
(31)【優先権主張番号】202011470081.3
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515190906
【氏名又は名称】南京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】劉福強
(72)【発明者】
【氏名】宋麗
(72)【発明者】
【氏名】邱易行
(72)【発明者】
【氏名】馮悦峰
(72)【発明者】
【氏名】李愛民
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-312888(JP,A)
【文献】GALCERA, T. et al.,Journal of Photochemistry and Photobiology, A: Chemistry,1988年,45,pp.249-259
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F
A62D 3/00
B01J
C08J
JSTChina(JDreamIII)
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
S1:
1)ポリアクリル酸ナトリウムヒドロゲルの調製:ポリアクリル酸と架橋剤を水に溶解
して溶液Aを調製し、氷水浴下で溶液Aにアルカリ溶液を加えて溶液Bを調製し、溶液B
を不活性ガスでパージした後開始剤を加えて溶液Cを調製し、溶液Cを30~70℃に加
熱して0.5~12時間架橋反応させて、ポリアクリル酸ナトリウムヒドロゲルを調製し

2)光制御徐放性デュアルネットワークヒドロゲルの調製:1)で調製されたポリアク
リル酸ナトリウムヒドロゲルをFe(III)溶液に入れ、20~50℃条件下で0.5
~8時間二次架橋反応させて、光制御徐放性デュアルネットワークヒドロゲルを調製する

光制御徐放性デュアルネットワークヒドロゲル触媒を調製するステップと、
S2:S1で調製された光制御徐放性デュアルネットワークヒドロゲルを使用して、Cr
(VI)を還元するステップと、
を含むことを特徴とする光制御徐放性ゲル触媒を使用してCr(VI)を効率的に還元す
る方法。
【請求項2】
S1:
1)ポリアクリル酸ナトリウム/ポリビニルアルコール/ポリアクリルアミドヒドロゲ
ルの調製:重量%で22~25%のポリアクリル酸ナトリウム、5~8%ポリビニルアル
コール、3~5%のアクリルアミドと、残りの脱イオン水と混合し、50~70℃に加熱
して0.5~2時間攪拌し続けた後、5~10℃に冷却して、高エネルギー電子ビームを
照射してマトリックスゲルを得て、UV光開始剤を加えて30~50℃条件下でUV光を
1~2時間照射して、ポリアクリル酸ナトリウム/ポリビニルアルコール/ポリアクリル
アミドヒドロゲルを調製し、
2)光制御徐放性トリプルネットワークヒドロゲルの調製:1)で調製されたポリアク
リル酸ナトリウム/ポリビニルアルコール/ポリアクリルアミドヒドロゲルをFe(II
I)溶液に入れ20~50℃条件下で0.5~8時間二次架橋反応させて、光制御徐放性
デュアルネットワークヒドロゲルを調製する、
光制御徐放性トリプルネットワークヒドロゲル触媒を調製するステップと、
S2:S1で調製された光制御徐放性トリプルネットワークヒドロゲルを使用して、Cr
(VI)を還元するステップと、
を含むことを特徴とする光制御徐放性ゲル触媒を使用してCr(VI)を効率的に還元す
る方法。
【請求項3】
S1に記載の架橋剤はN,N―メチレンビスアクリルアミド、グルタルアルデヒド、エピ
クロロヒドリンのいずれか1つまたは混合物であり、溶液A中のポリアクリル酸と架橋剤
のモル比が50~400:1になるように制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の
方法。
【請求項4】
S1に記載のアルカリ溶液は水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのいずれか1つまたは混
合物であり、溶液B中のポリアクリル酸とアルカリのモル比が1:1~10になるように
制御し、不活性ガスは窒素、アルゴン、ヘリウムのいずれか1つまたは混合物であり、前
記不活性ガスのパージ時間は5~60分である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法
【請求項5】
S1に記載の開始剤は過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムのいずれ
か1つまたは混合物であり、溶液C中のポリアクリル酸と開始剤のモル比が200~50
0:1になるように制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
S1に記載のUV光開始剤は2―ヒドロキシ―4―(2―ヒドロキシエトキシ)―2―メ
チルプロピオフェノンであり、濃度が1~1.5mol/Lである、ことを特徴とする請
求項2に記載の方法。
【請求項7】
S1の2)に記載のFe(III)溶液は、塩化第二鉄、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄のいず
れか1つまたは混合物であり、濃度が0.1~10mol/Lである、ことを特徴とする
請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Cr(VI)処理の技術分野に関し、具体的に光制御徐放性ゲル触媒を使用し
てCr(VI)を効率的に還元する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気めっき、鉱業、ステンレス鋼生産などの産業活動で生産されるCr(VI)は、ます
ます顕著な環境問題になって、現在、ほとんどの産業は処理に化学還元法を使用し、その
中で、硫酸第一鉄は一般的に使用される還元剤の1つであるが、Fe(II)の利用率が
低く、鉄スラッジが多く、リサイクルできないなどの問題があり、したがって、Fe(I
I)の利用率を改善し、鉄スラッジの生成量を減らすことが急務である。Fe(II)酸
化副反応はFe(II)還元Cr(VI)の過程にも存在し、かつ副反応の反応順序はよ
り高いため、したがって、Fe(II)の濃度は、副反応の反応速度により大きな影響を
与える。このため、Fe(II)濃度を調整し、副反応の反応速度を低下させることによ
り、Fe(II)の利用率を向上させる上で重要な役割を果たしている。
【0003】
徐放性とは、物理的または化学的方法によって有効成分の放出速度を遅らせることを指し
、現在、主に医療分野で使用されている。その中で、光制御徐放は通常、材料の感光性を
使用して有効成分を定量的に放出し、その主な利点は、有効成分の有効期間を延長し、徐
放により利用率を高めることができることである。
【0004】
従来技術において、いくつかの文献は、Fe(III)-カルボキシル錯体が、紫外線下
でのリガンド-金属電荷移動メカニズムに基づいて、Fe(II)を放出することができ
ることを指摘しているが、Fe(III)-カルボキシル錯体に基づく現在の研究は、主
に均一系に焦点を当て、大量の鉄泥やクロムのリサイクルの難しさの問題はまだ効果的に
解決されていないため、Cr(VI)を還元するための触媒として、経済的で環境に優し
い不均一徐放性材料を調製する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、光制御徐放性ゲル触媒を使用してCr(VI)を効率的に還元する方法を提供
する。
【0006】
本発明の技術的解決策は、光制御徐放性ゲル触媒を使用してCr(VI)を効率的に還元
する方法を提供し、それは、
S1:光制御徐放性デュアルネットワークヒドロゲル触媒を調製するステップと、具体的
に、
1)ポリアクリル酸ナトリウムヒドロゲルの調製:ポリアクリル酸と架橋剤を水に溶解し
て溶液Aを調製し、氷水浴下で溶液Aにアルカリ溶液を加えて溶液Bを調製し、溶液Bを
不活性ガスでパージした後開始剤を加えて溶液Cを調製し、溶液Cを30~70℃に加熱
して0.5~12時間架橋反応させて、ポリアクリル酸ナトリウムヒドロゲルを調製し、
2)光制御徐放性デュアルネットワークヒドロゲルの調製:S1で調製されたポリアクリ
ル酸ナトリウムヒドロゲルをFe(III)溶液に入れ、20~50℃条件下で0.5~
8時間二次架橋反応させて、光制御徐放性デュアルネットワークヒドロゲルを調製し、
S2:S1で調製された光制御徐放性デュアルネットワークヒドロゲルを使用して、Cr
(VI)を還元するステップと、を含む。
【0007】
改善として、光制御徐放性ゲル触媒を使用してCr(VI)を効率的に還元する方法は、
S1:光制御徐放性トリプルネットワークヒドロゲル触媒を調製するステップと、具体的
に、
1)ポリアクリル酸ナトリウム/ポリビニルアルコール/ポリアクリルアミドヒドロゲル
の調製:重量%で22~25%のポリアクリル酸ナトリウム、5~8%ポリビニルアルコ
ール、3~5%のアクリルアミドと、残りの脱イオン水と混合し、50~70℃に加熱し
て0.5~2時間攪拌し続けた後、5~10℃に冷却して、高エネルギー電子ビームを照
射してマトリックスゲルを得、UV光開始剤を加えて30~50℃条件下でUV光を1~
2時間照射して、ポリアクリル酸ナトリウム/ポリビニルアルコール/ポリアクリルアミ
ドヒドロゲルを調製し、
2)光制御徐放性トリプルネットワークヒドロゲルの調製:S1で調製されたポリアクリ
ル酸ナトリウム/ポリビニルアルコール/ポリアクリルアミドヒドロゲルをFe(III
)溶液に入れ20~50℃条件下で0.5~8時間二次架橋反応させて、光制御徐放性デ
ュアルネットワークヒドロゲルを調製し、
S2:S1で調製された光制御徐放性トリプルネットワークヒドロゲルを使用して、Cr
(VI)を還元するステップと、を含む。
【0008】
本発明の一側面として、S1に記載の架橋剤はN,N―メチレンビスアクリルアミド、グ
ルタルアルデヒド、エピクロロヒドリンのいずれか1つまたは混合物であり、溶液A中の
ポリアクリル酸と架橋剤のモル比が50~400:1になるように制御する。
【0009】
本発明の一側面として、S1に記載のアルカリ溶液は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム
のいずれか1つまたは混合物であり、溶液B中のポリアクリル酸とアルカリのモル比が1
:1~10になるように制御し、不活性ガスは窒素、アルゴン、ヘリウムのいずれか1つ
または混合物であり、前記不活性ガスのパージ時間は5~60分である。
【0010】
本発明の一側面として、S1に記載の開始剤は過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過
硫酸ナトリウムのいずれか1つまたは混合物であり、溶液C中のポリアクリル酸と開始剤
のモル比が200~500:1になるように制御する。
【0011】
本発明の一側面として、S1に記載のUV光開始剤は2―ヒドロキシ―4―(2―ヒドロ
キシエトキシ)―2―メチルプロピオフェノンであり、濃度が1~1.5mol/Lであ
る。
【0012】
本発明の一側面として、S2に記載のFe(III)溶液は、塩化第二鉄、硝酸第二鉄、
硫酸第二鉄のいずれか1つまたは混合物であり、濃度が0.1~10mol/Lである。
【発明の効果】
【0013】
従来技術と比較して、本発明は以下の有益な効果を有する。
1)本発明では、結合した金属イオンとカルボン酸塩の配位効果および配位子-金属電荷
移動メカニズムを使用して、Fe(III)の高効率濃縮およびFe(II)の光制御徐
放を実現し、Fe(II)の酸化副反応速度を遅くすることで、Fe(II)の利用率を
高め、鉄スラッジの生成量を減らし、高効率で低消費量にすることができる。
2)現在の一般的な鉄還元試薬およびほとんどの粉末触媒と比較して、本発明は、還元剤
の利用率が低く、均一反応等における粉末触媒の分離・回収が困難であるという問題を解
決し、二次汚染を避けるためにリサイクルすることができる。
3)本発明は、汚染制御の分野で初めて光制御徐放性デュアルネットワークヒドロゲルを
適用し、Cr(VI)の効率的な還元の新しい方法を提供する。
4)本発明の全体的な方法は単純であり、Cr(VI)を処理するときのより良い除去率
を有し、幅広く普及するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1中の光制御徐放性デュアルネットワークヒドロゲルの走査型電子顕微鏡写真である。
図2】本発明の実験例1)のCr(VI)除去効果図である。
図3】本発明の実験例3)の繰り返し使用性能図である。
図4】本発明の実験例4)のヒドロゲル性能の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施例1:
光制御徐放性ゲル触媒を使用してCr(VI)を効率的に還元する方法は、
S1:光制御徐放性デュアルネットワークヒドロゲル触媒を調製するステップと、具体的
に、
1)ポリアクリル酸ナトリウムヒドロゲルの調製:15mLのAAと0.15gのN,N
―メチレンビスアクリルアミドを50mLの超純水に溶解して溶液Aを調製し、8.84
gの水酸化ナトリウムを25mLの超純水にゆっくりと溶解して溶液Bを調製し、氷水浴
下で、溶液Bを溶液Aにゆっくりと加えて溶液Cを調製し、溶液Cを窒素で10分間パー
ジし、そして、1gの過硫酸アンモニウムを20mLの超純水に溶解して溶液Dを調製し
、4mLの溶液Dを溶液Cに加え、均一に攪拌して40℃で1時間架橋反応させて、ポリ
アクリル酸ナトリウムヒドロゲルを調製し、
2)光制御徐放性デュアルネットワークヒドロゲルの調製:S1で調製されたポリアクリ
ル酸ナトリウムヒドロゲルを50mLの初期濃度1mol/Lの硝酸第二鉄溶液に加えて
25℃で2時間二次架橋反応させて、図1に示すような光制御徐放性デュアルネットワー
クヒドロゲルを調製し、
S2:S1で調製された光制御徐放性デュアルネットワークヒドロゲルを使用して、Cr
(VI)を酸性および光照射条件下で還元するステップと、を含む。
【0016】
実施例2:実施例1と異なり、
S1の1)では、N,N―メチレンビスアクリルアミドの質量を0.68gとし、水酸化
カリウムの質量を12.39gとし、窒素パージ時間を30分とし、過硫酸アンモニウム
の質量を1.26gとし、架橋反応温度を30℃とし、架橋反応時間を12時間とし、S
1中の2では、硝酸第二鉄溶液濃度を10mol/Lとし、架橋反応温度を20℃とし、
架橋反応時間を8時間とする。
【0017】
実施例3:実施例1と異なり、
S1の1)では、N,N―メチレンビスアクリルアミドの質量を0.08gとし、窒素パ
ージ時間を60分とし、過硫酸アンモニウムの質量を0.50gとし、架橋反応温度を7
0℃とし、架橋反応時間を0.5時間とし、S1の2)では、硝酸第二鉄溶液濃度を0.
1mol/Lとし、架橋反応温度を40℃とし、架橋反応時間を0.5時間とする。
【0018】
実施例4:実施例1と異なり、
S1の1)では、N,N―メチレンビスアクリルアミドの質量を0.30gとし、窒素パ
ージ時間を20分とし、過硫酸アンモニウムの質量を0.75gとし、架橋反応温度を5
0℃とし、架橋反応時間を4時間とし、S1の2)では、硝酸第二鉄溶液濃度を2mol
/Lとし、架橋反応温度を30℃とし、架橋反応時間を3時間とする。
【0019】
実施例5:実施例1と異なり、
S1の1)では、架橋剤としてグルタルアルデヒドを使用し、その使用質量を0.44g
とし、窒素パージ時間を5分とし、過硫酸カリウムの質量を1.49gとし、架橋反応温
度を30℃とし、架橋反応時間を8時間とし、S1の2)では、硝酸第二鉄溶液の濃度を
5mol/Lとし、架橋反応温度を30℃とし、架橋反応時間を0.5時間とする。
【0020】
実施例6:実施例5と異なり、
S1の1)では、グルタルアルデヒドの質量を0.05gとし、窒素パージ時間を15分
とし、過硫酸カリウムの質量を0.60gとし、架橋反応温度を60℃とし、架橋反応時
間を1時間とし、S1の2)では、Fe(III)溶液として塩化第二鉄溶液を使用し、
その濃度を10mol/Lとし、架橋反応温度を40℃とし、架橋反応時間を8時間とす
る。
【0021】
実施例7:実施例1と異なり、
S1の1)では、架橋剤としてエピクロロヒドリンを使用し、その使用質量を0.41g
とし、水酸化ナトリウムの質量を88.35gとし、アルゴンパージ時間を20分とし、
過硫酸ナトリウムの質量を1.315gとし、架橋反応温度を30℃とし、架橋反応時間
を2時間とし、S1の2)では、Fe(III)溶液として硫酸第二鉄溶液を使用し、そ
の濃度を10mol/Lとし、架橋反応温度を50℃とし、架橋反応時間を6時間とする
【0022】
実施例8:実施例1と異なり、
S1の1)では、N,N―メチレンビスアクリルアミドの質量を0.20gとし、ヘリウ
ムパージ時間を30分とし、過硫酸カリウムの質量を1.25gとし、架橋反応温度を3
0℃とし、架橋反応時間を3時間とし、S1の2)では、硝酸第二鉄溶液の濃度を1mo
l/Lとし、架橋反応温度を30℃とし、架橋反応時間を4時間とする。
【0023】
実施例9:
光制御徐放性ゲル触媒を使用してCr(VI)を効率的に還元する方法は、
S1:光制御徐放性トリプルネットワークヒドロゲル触媒を調製するステップと、具体的
に、
1)ポリアクリル酸ナトリウム/ポリビニルアルコール/ポリアクリルアミドヒドロゲル
の調製:22.20gのポリアクリル酸ナトリウム、7.80gのポリビニルアルコール
、5.00gのアクリルアミドおよび65mlの脱イオン水を混合し、50℃に加熱して
0.5時間攪拌し続け、そして5℃に冷却し、高エネルギー電子ビームを照射して、マト
リックスゲルを得、次にUV光開始剤を加えて30℃条件下でUV光を1時間照射して、
ポリアクリル酸ナトリウム/ポリビニルアルコール/ポリアクリルアミドヒドロゲルを調
製し、ただし、高エネルギー電子ビームの線量率を15kGy/回とし、線量を60kG
yとし、
2)光制御徐放性トリプルネットワークヒドロゲルの調製:S1で調製されたポリアクリ
ル酸ナトリウム/ポリビニルアルコール/ポリアクリルアミドヒドロゲルを50mLの初
期濃度10mol/Lの硫酸第二鉄溶液に加え、20℃条件下で0.5時間二次架橋反応
させて、光制御徐放性デュアルネットワークヒドロゲルを調製し、
S2:S1で調製された光制御徐放性トリプルネットワークヒドロゲルを使用して、Cr
(VI)を、酸性および光照射条件下で還元するステップと、を含む。
【0024】
実施例10:実施例9と異なり、
S1:光制御徐放性トリプルネットワークヒドロゲル触媒を調製し、具体的に、
1)ポリアクリル酸ナトリウム/ポリビニルアルコール/ポリアクリルアミドヒドロゲル
の調製:重量%で23.00gのポリアクリル酸ナトリウム、6.05gのポリビニルア
ルコール、4.85gのアクリルアミドおよび66mlの脱イオン水を混合し、60℃に
加熱して1.0時間攪拌し続け、そして8℃に冷却し、高エネルギー電子ビームを照射し
てマトリックスゲルを得、次にUV光開始剤を加え40℃条件下でUV光を1.5時間照
射して、ポリアクリル酸ナトリウム/ポリビニルアルコール/ポリアクリルアミドヒドロ
ゲルを調製し、
2)光制御徐放性トリプルネットワークヒドロゲルの調製:S1で調製されたポリアクリ
ル酸ナトリウム/ポリビニルアルコール/ポリアクリルアミドヒドロゲルを60mLの初
期濃度1mol/Lの硝酸第二鉄溶液に加え、40℃条件下で4時間二次架橋反応させて
、光制御徐放性デュアルネットワークヒドロゲルを調製する。
【0025】
実施例11:実施例9と異なり、
S1:光制御徐放性トリプルネットワークヒドロゲル触媒を調製し、具体的に、
1)ポリアクリル酸ナトリウム/ポリビニルアルコール/ポリアクリルアミドヒドロゲル
の調製:重量%で24.95gのポリアクリル酸ナトリウム、6.05gのポリビニルア
ルコール、5.00gのアクリルアミドおよび64mlの脱イオン水を混合し、70℃に
加熱して2時間攪拌し続け、そして10℃に冷却し、高エネルギー電子ビームを照射して
マトリックスゲルを得、次にUV光開始剤を50℃条件下でUV光を2時間照射して、ポ
リアクリル酸ナトリウム/ポリビニルアルコール/ポリアクリルアミドヒドロゲルを調製
し、
2)光制御徐放性トリプルネットワークヒドロゲルの調製:S1で調製されたポリアクリ
ル酸ナトリウム/ポリビニルアルコール/ポリアクリルアミドヒドロゲルを50mLの初
期濃度1.5mol/Lの硝酸第二鉄溶液に加え、50℃条件下で8時間二次架橋反応さ
せて、光制御徐放性デュアルネットワークヒドロゲルを調製する。
【0026】
実験例:
実施例1~11に記載の方法を使用してCr(VI)に対して模擬実験を実行し、具体的
な実験は以下のとおりである。
1)2組の0.8gの実施例1で調製されたヒドロゲルを取り、初期濃度100μmol
/L、初期pH3.0の50mLのCr(VI)溶液に入れ、それぞれ暗所での吸着およ
び500Wキセノンランプ下で光触媒処理を継続的に実行し、定期的にサンプルを採取し
てCr(VI)濃度を測定し、図2に示すようなCr(VI)除去性能結果を得、結果は
、処理時間が60分に達すると反応が遮断されることを示した。
2)それぞれ2組の0.8gの実施例1~11で調製されたヒドロゲルを取り、初期濃度
100μmol/L、初期pH3.0の50mLCr(VI)溶液に入れ、それぞれ暗所
での吸着および500Wキセノンランプ下で光触媒処理を50分間実行し、定期的にサン
プルを採取してCr(VI)濃度を測定し、表1のCr(VI)除去性能結果を得た。
表1:実施例1~11Cr(VI)除去性能結果
【0027】
【0028】
結論:本実施例1~11の方法を使用すると、Cr(VI)を効果的に還元することがで
き、Cr(VI)の除去率が光触媒条件下で90%以上に達し、特に実施例9~11の方
法による除去率がより優れた。
3)実施例1の実験組を基に、触媒の再利用性能を検証するために、実施例1で使用され
たヒドロゲルを水で洗浄して同様な方法によって実験を行って、図3に示すような再利用
性能結果を得、5回再利用してもヒドロゲルによるCr(VI)の除去率が顕著な低下が
なかった。
4)ポリアクリル酸ヒドロゲルと配合したFe(III)の相乗効果を検証するために、
ポリアクリル酸ヒドロゲルを光触媒とする実験を比較例1にして、光触媒としてのポリア
クリル酸ヒドロゲルと実施例1で調製された光制御徐放性デュアルネットワークヒドロゲ
ル光触媒の触媒性能の差を比較し、具体的な調製方法は実施例1のS1の1)と同様であ
り、図4に示すような性能比較を得、図から分かるように、単一なポリアクリル酸ヒドロ
ゲルは、Cr(VI)の除去性能が非常に弱い。
【要約】      (修正有)
【課題】光制御徐放性ゲル触媒を使用してCr(VI)を効率的に還元する方法を提供する。
【解決手段】ポリアクリル酸ナトリウムヒドロゲルを調製し、調製したポリアクリル酸ナトリウムヒドロゲルをFe(III)溶液に入れて二次架橋反応を行い光制御徐放性デュアルネットワークヒドロゲルを調製し、この光制御徐放性ゲル触媒を使用してCr(VI)を還元する方法である。
【効果】ヒドロゲル触媒の調製プロセスが簡単で、安定性が高く、容易に分離して再利用でき、効率的かつ低消費な光制御徐放性を持ち、Cr(VI)を除去するときに高い除去率を有し、幅広い応用の見通しがある。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4