(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】車両用ドア
(51)【国際特許分類】
B60N 3/00 20060101AFI20220126BHJP
A47C 16/00 20060101ALI20220126BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
B60N3/00 C
A47C16/00 Z
B60J5/04 Z
(21)【出願番号】P 2017162768
(22)【出願日】2017-08-25
【審査請求日】2020-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】三上 俊介
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-131614(JP,U)
【文献】実開平03-000243(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0195006(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/00
A47C 16/00
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗降用開口を開閉するための車両用ドアであって、
前記車両用ドアが開かれたときの前記乗降用開口に、被支持者の胴体を支持するための支持部材と、
ドア本体と、
前記支持部材を前記ドア本体に対して移動可能とする可動機構と、を備え、
前記支持部材は、複数の部位において車両に着脱可能に固定されており、
前記支持部材は、被支持者を支持する本体部と、該本体部の第一端部と、該第一端部とは反対側の第二端部とを備え、
該第二端部は、前記可動機構と反対側の端部であり、車両と係合可能に構成されており、
前記支持部材の前記第二端部は、車両と係合される係合部を備え、
該係合部は車両に設けられる被係合部に着脱可能に係合され、
前記被係合部は、前記車両用ドアを閉じたときに前記車両用ドアを車両に固定するためのものであり、
前記係合部は、前記被係合部に着脱可能に係合されることを特徴とする車両用ドア。
【請求項2】
車両の乗降用開口を開閉するための車両用ドアであって、
前記車両用ドアが開かれたときの前記乗降用開口に、被支持者の胴体を支持するための支持部材と、
ドア本体と、
前記支持部材を前記ドア本体に対して移動可能とする可動機構と、を備え、
前記支持部材は、複数の部位において車両に着脱可能に固定されており、
前記支持部材は、被支持者を支持する本体部と、該本体部の第一端部と、該第一端部とは反対側の第二端部とを備え、
該第二端部は、前記可動機構と反対側の端部であり、車両と係合可能に構成されており、
前記支持部材の前記第二端部は、車両と係合される係合部を備え、
該係合部は車両に設けられる被係合部に着脱可能に係合され、
前記ドア本体の車両内側には、車両幅方向外側に窪んだ格納部が設けられており、
前記支持部材は前記格納部に格納され、
前記格納部は、前記係合部と係合可能なロック部材を備え、
該ロック部材は、第1状態と第2状態との間で切り替え可能であり、
前記第1状態で前記支持部材が前記格納部に格納された場合、前記係合部は前記ロック部材と係合せず、
前記第2状態で前記支持部材が前記格納部に格納された場合、前記係合部は前記ロック部材と係合することを特徴とする車両用ドア。
【請求項3】
車両の乗降用開口を開閉するための車両用ドアであって、
前記車両用ドアが開かれたときの前記乗降用開口に、被支持者の胴体を支持するための支持部材と、
ドア本体と、
前記支持部材を前記ドア本体に対して移動可能とする可動機構と、を備え、
前記支持部材は、複数の部位において車両に着脱可能に固定されており、
前記支持部材は、被支持者を支持する本体部と、該本体部の第一端部と、該第一端部とは反対側の第二端部とを備え、
該第二端部は、前記可動機構と反対側の端部であり、車両と係合可能に構成されており、
前記車両用ドアはドアヒンジによって車両に対して回動可能に取り付けられ、
前記可動機構はヒンジ部であり、
前記ドアヒンジの軸中心は前記ヒンジ部の軸中心と一致することを特徴とする車両用ドア。
【請求項4】
車両の乗降用開口を開閉するための車両用ドアであって、
前記車両用ドアが開かれたときの前記乗降用開口に、被支持者の胴体を支持するための支持部材と、
ドア本体と、
前記支持部材を前記ドア本体に対して移動可能とする可動機構と、を備え、
前記支持部材は、複数の部位において車両に着脱可能に固定されており、
前記支持部材は、被支持者を支持する本体部と、該本体部の第一端部と、該第一端部とは反対側の第二端部とを備え、
該第二端部は、前記可動機構と反対側の端部であり、車両と係合可能に構成されており、
前記車両用ドアは車両に対してスライド可能に取り付けられ、
前記可動機構は、前記支持部材を前記ドア本体に対してスライド可能に取り付けるスライド機構であり、
前記支持部材は前記第一端部と前記第二端部との間に延出しており、前記支持部材の延出方向の長さは、前記車両用ドアが閉位置から開位置に移動する際に前記ドア本体の前端部が車両前後方向において移動する距離よりも長く、前記ドア本体の車両前後方向の長さよりも短いことを特徴とする車両用ドア。
【請求項5】
前記可動機構はヒンジ部であり、
前記第一端部は、前記ヒンジ部と前記第二端部の間に配置されることを特徴とする
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両用ドア。
【請求項6】
前記可動機構は、前記支持部材が前記乗降用開口を跨ぐ使用位置と、該使用位置とは異なる位置との間で移動可能としていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車両用ドア。
【請求項7】
前記第一端部は前記可動機構に取り付けられており、前記第二端部は前記使用位置において車両と係合されることを特徴とする請求項6に記載の車両用ドア。
【請求項8】
前記支持部材の前記第二端部は、車両と係合される係合部を備え、
該係合部は車両に設けられる被係合部に着脱可能に係合されることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の車両用ドア。
【請求項9】
前記被係合部は、前記乗降用開口よりも車両の前後方向において外側にあることを特徴とする請求項8に記載の車両用ドア。
【請求項10】
前記被係合部は、前記車両用ドアを閉じたときに前記車両用ドアを車両に固定するためのものであり、
前記係合部は、前記被係合部に着脱可能に係合されることを特徴とする請求項8又は9に記載の車両用ドア。
【請求項11】
前記ドア本体の車両内側には、車両幅方向外側に窪んだ格納部が設けられており、
前記支持部材は前記格納部に格納されることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の車両用ドア。
【請求項12】
前記格納部は、前記係合部と係合可能なロック部材を備え、
該ロック部材は、第1状態と第2状態との間で切り替え可能であり、
前記第1状態で前記支持部材が前記格納部に格納された場合、前記係合部は前記ロック部材と係合せず、
前記第2状態で前記支持部材が前記格納部に格納された場合、前記係合部は前記ロック部材と係合することを特徴とする請求項11に記載の車両用ドア。
【請求項13】
前記支持部材の上端部は、車両に設けられるシートクッションの上面部よりも上方に配置されることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の車両用ドア。
【請求項14】
前記支持部材の上端部は、前記車両用ドアに設けられるドアの窓部の窓枠部の下端部よりも下方に配置されることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の車両用ドア。
【請求項15】
前記支持部材の下端部は、車両のホイールハウスの上端よりも上方に配置されることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の車両用ドア。
【請求項16】
前記車両用ドアはドアヒンジによって車両に対して回動可能に取り付けられ、
前記可動機構はヒンジ部であり、
前記ドアヒンジの軸中心は前記ヒンジ部の軸中心と一致することを特徴とする請求項1、2、4のいずれか一項に記載の車両用ドア。
【請求項17】
前記車両用ドアは車両に対してスライド可能に取り付けられ、
前記可動機構は、前記支持部材を前記ドア本体に対してスライド可能に取り付けるスライド機構であり、
前記支持部材は前記第一端部と前記第二端部との間に延出しており、前記支持部材の延出方向の長さは、前記車両用ドアが閉位置から開位置に移動する際に前記ドア本体の前端部が車両前後方向において移動する距離よりも長く、前記ドア本体の車両前後方向の長さよりも短いことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアに係り、特に、車室の外から車内に荷物などを置く作業を行う作業者の胴体などを支持することが可能な車両用ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
車室の外から車内に荷物を置く作業や、車室の外から車内のチャイルドシートに子供を着座させる作業を行う時には、車両の乗員などの作業者は、車両の乗降用開口を通じて作業を行う必要がある。
【0003】
特許文献1には、車両の乗員が使用するアームレストに関し、アームレストを車両の乗降部から退避した格納位置と、乗降部へ延出した使用位置との間で変位可能に構成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のアームレストは、乗員の乗降時に乗降部へと延出するように変位可能であるが、その用途は乗員の腕部を支持するためのものであり、作業者が車室の外から荷物などを置く作業を行う際に用いられるものではない。
【0006】
したがって、作業者が車室の外から荷物などを車内に置く作業を行う際に、作業者の胴体などを支持する技術が望まれている。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車室の外から車内に荷物などを置く作業を行う際に、作業者の胴体などを支持することが可能な車両用ドアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明の車両用ドアによれば、車両の乗降用開口を開閉するための車両用ドアであって、前記車両用ドアが開かれたときの前記乗降用開口に、被支持者の胴体を支持するための支持部材と、前記支持部材を前記ドア本体に対して移動可能とする可動機構と、を備え、前記支持部材は、複数の部位において車両に着脱可能に固定されており、前記支持部材は、被支持者を支持する本体部と、該本体部の第一端部と、該第一端部とは反対側の第二端部とを備え、該第二端部は、前記可動機構と反対側の端部であり、車両と係合可能に構成されており、前記支持部材の前記第二端部は、車両と係合される係合部を備え、該係合部は車両に設けられる被係合部に着脱可能に係合され、前記被係合部は、前記車両用ドアを閉じたときに前記車両用ドアを車両に固定するためのものであり、前記係合部は、前記被係合部に着脱可能に係合されることにより解決される。
【0009】
また、前記課題は、本発明の車両用ドアによれば、車両の乗降用開口を開閉するための車両用ドアであって、前記車両用ドアが開かれたときの前記乗降用開口に、被支持者の胴体を支持するための支持部材と、ドア本体と、前記支持部材を前記ドア本体に対して移動可能とする可動機構と、を備え、前記支持部材は、複数の部位において車両に着脱可能に固定されており、前記支持部材は、被支持者を支持する本体部と、該本体部の第一端部と、該第一端部とは反対側の第二端部とを備え、該第二端部は、前記可動機構と反対側の端部であり、車両と係合可能に構成されており、前記支持部材の前記第二端部は、車両と係合される係合部を備え、該係合部は車両に設けられる被係合部に着脱可能に係合され、前記ドア本体の車両内側には、車両幅方向外側に窪んだ格納部が設けられており、前記支持部材は前記格納部に格納され、前記格納部は、前記係合部と係合可能なロック部材を備え、該ロック部材は、第1状態と第2状態との間で切り替え可能であり、前記第1状態で前記支持部材が前記格納部に格納された場合、前記係合部は前記ロック部材と係合せず、前記第2状態で前記支持部材が前記格納部に格納された場合、前記係合部は前記ロック部材と係合することにより解決される。
【0010】
また、前記課題は、本発明の車両用ドアによれば、車両の乗降用開口を開閉するための車両用ドアであって、前記車両用ドアが開かれたときの前記乗降用開口に、被支持者の胴体を支持するための支持部材と、ドア本体と、前記支持部材を前記ドア本体に対して移動可能とする可動機構と、を備え、前記支持部材は、複数の部位において車両に着脱可能に固定されており、前記支持部材は、被支持者を支持する本体部と、該本体部の第一端部と、該第一端部とは反対側の第二端部とを備え、該第二端部は、前記可動機構と反対側の端部であり、車両と係合可能に構成されており、前記車両用ドアはドアヒンジによって車両に対して回動可能に取り付けられ、前記可動機構はヒンジ部であり、前記ドアヒンジの軸中心は前記ヒンジ部の軸中心と一致することにより解決される。
【0011】
また、前記課題は、本発明の車両用ドアによれば、車両の乗降用開口を開閉するための車両用ドアであって、前記車両用ドアが開かれたときの前記乗降用開口に、被支持者の胴体を支持するための支持部材と、ドア本体と、前記支持部材を前記ドア本体に対して移動可能とする可動機構と、を備え、前記支持部材は、複数の部位において車両に着脱可能に固定されており、前記支持部材は、被支持者を支持する本体部と、該本体部の第一端部と、該第一端部とは反対側の第二端部とを備え、該第二端部は、前記可動機構と反対側の端部であり、車両と係合可能に構成されており、前記車両用ドアは車両に対してスライド可能に取り付けられ、前記可動機構は、前記支持部材を前記ドア本体に対してスライド可能に取り付けるスライド機構であり、前記支持部材は前記第一端部と前記第二端部との間に延出しており、前記支持部材の延出方向の長さは、前記車両用ドアが閉位置から開位置に移動する際に前記ドア本体の前端部が車両前後方向において移動する距離よりも長く、前記ドア本体の車両前後方向の長さよりも短いことにより解決される。
このとき、前記可動機構はヒンジ部であり、前記第一端部は、前記ヒンジ部と前記第二端部の間に配置されると好適である。
【0012】
また、上記の構成において、前記可動機構は、前記支持部材が前記乗降用開口を跨ぐ使用位置と、該使用位置とは異なる位置との間で移動可能としているとよい。
上記の構成では、支持部材を車両の乗降用開口を跨ぐ使用位置(第二位置)と、車両の乗降用開口を跨がない非使用位置(例えば、第一位置)との間で移動させることが可能となる。
【0013】
また、上記の構成において、前記第一端部は前記可動機構に取り付けられており、前記第二端部は前記使用位置において車両と係合されるとよい。
上記の構成では、支持部材を車両の乗降用開口を跨ぐ使用位置(第二位置)に配置した場合、支持部材の第一端部と第二端部の両端部が車両(車体)やドア本体によって支持される。したがって、被支持者である作業者が車室の外から荷物などを車内に置く作業を行う際に、作業者の胴体などを支持部材によって安定して支持することが可能となる。
【0014】
また、上記の構成において、前記支持部材の前記第二端部は、車両と係合される係合部を備え、該係合部は車両に設けられる被係合部に着脱可能に係合されるとよい。
上記の構成では、支持部材の第二端部の係合部が車両に設けられた被係合部と係合されることで、支持部材を車両の乗降用開口を跨ぐ第二位置に配置した際の支持部材の安定性を向上させることが可能となる。
【0015】
また、上記の構成において、前記被係合部は、前記乗降用開口よりも車両の前後方向において外側にあるとよい。
上記の構成では、支持部材の車体との固定において、係合部と被係合部が係合する位置が乗降用開口よりも車両前後位置において外側であるため、支持部材の荷重を車両で受けやすくすることが可能となる。
【0016】
また、上記の構成において、前記被係合部は、前記車両用ドアを閉じたときに前記車両用ドアを車両に固定するためのものであり、前記係合部は、前記被係合部に着脱可能に係合されるとよい。
上記の構成では、支持部材の係合部と係合する車両の被係合部として、車両用ドアを閉じたときに車両に固定するための被係合部であるストライカを利用することで、被係合部を別途設ける必要がなく、部品の数を削減することが可能となる。
【0017】
また、上記の構成において、前記ドア本体の車両内側には、車両幅方向外側に窪んだ格納部が設けられており、前記支持部材は前記格納部に格納されるとよい。
上記の構成では、支持部材を用いない時には車両用ドアの内側に設けられた窪みである格納部に格納することで、支持部材によって占有される車室内の空間を小さくすることが可能となる。
【0018】
また、上記の構成において、前記格納部は、前記係合部と係合可能なロック部材を備え、該ロック部材は、第1状態と第2状態との間で切り替え可能であり、前記第1状態で前記支持部材が前記格納部に格納された場合、前記係合部は前記ロック部材と係合せず、前記第2状態で前記支持部材が前記格納部に格納された場合、前記係合部は前記ロック部材と係合するとよい。
上記の構成では、ロック部材を第2状態(ロック状態)にすると支持部材が格納された状態が維持されるが、ロック部材を第1状態(アンロック状態)にすると車両用ドアの開閉とは無関係に支持部材が乗降用開口を跨ぐ第二位置に位置する状態が維持されるため、閉じた車両用ドアを開く際に支持部材を使用位置である第二位置に移動させる手間を省略することが可能となる。
【0019】
また、上記の構成において、前記支持部材の上端部は、車両に設けられるシートクッションの上面部よりも上方に配置されるとよい。
上記の構成では、適切な高さ位置で被支持者の胴体などを安定して支持することが可能となる。
【0020】
また、上記の構成において、前記支持部材の上端部は、前記車両用ドアに設けられるドアの窓部の窓枠部の下端部よりも下方に配置されるとよい。
上記の構成では、適切な高さ位置で被支持者の胴体などを安定して支持することが可能となる。
【0021】
また、上記の構成において、前記支持部材の下端部は、車両のホイールハウスの上端部よりも上方に配置されるとよい。
上記の構成では、適切な高さ位置で被支持者の胴体などを安定して支持することが可能となる。
【0022】
また、上記の構成において、前記車両用ドアはドアヒンジによって車両に対して回動可能に取り付けられ、前記可動機構はヒンジ部であり、前記ドアヒンジの軸中心は前記ヒンジ部の軸中心と一致するとよい。
上記の構成では、車両用ドアの開閉状態に影響されずに、支持部材を、乗降用開口を跨がない位置、例えば、格納位置である第一位置と、乗降用開口を跨ぐ位置、例えば、使用位置である第二位置との間で回動させて移動させることが可能となり、さらに可動機構であるヒンジ部が占有する空間を小さくすることが可能となる。
【0023】
また、上記の構成において、前記車両用ドアは車両に対してスライド可能に取り付けられ、前記可動機構は、前記支持部材を前記ドア本体に対してスライド可能に取り付けるスライド機構であり、前記支持部材は前記第一端部と前記第二端部との間に延出しており、前記支持部材の延出方向の長さは、前記車両用ドアが閉位置から開位置に移動する際に前記ドア本体の前端部が車両前後方向において移動する距離よりも長く、前記ドア本体の車両前後方向の長さよりも短いとよい。
上記の構成では、スライド式の車両用ドアに支持部材を設けたときに、支持部材を車両の乗降用開口を跨ぐ第二位置に配置した際に、支持部材が車両に適切に支持される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の支持部材によれば、支持部材を車両の乗降用開口を跨ぐ第二位置に配置した場合、支持部材の複数の部位が車両によって支持される。したがって、被支持者である作業者が車室の外から荷物などを車内に置く作業を行う際に、作業者の胴体などを支持部材によって安定して支持することが可能となる。
本発明の車両用ドアによれば、支持部材を車両の乗降用開口を跨ぐ第二位置に配置した場合、支持部材の第一端部と第二端部の両端部が車両又はドア本体によって支持される。したがって、被支持者である作業者が車室の外から荷物などを車内に置く作業を行う際に、作業者の胴体などを支持部材によって安定して支持することが可能となる。
また、本発明の車両用ドアによれば、支持部材を車両の乗降用開口を跨ぐ使用位置と、車両の乗降用開口を跨がない非使用位置との間で移動させることが可能となる。
また、本発明の車両用ドアによれば、支持部材の第二端部の係合部が車両に設けられた被係合部と係合されることで、支持部材を車両の乗降用開口を跨ぐ第二位置に配置した際の支持部材の安定性を向上させることが可能となる。
また、本発明の車両用ドアによれば、支持部材の車体との固定において、係合部と被係合部が係合する位置が乗降用開口よりも車両前後位置において外側であるため、支持部材の荷重を車両で受けやすくすることが可能となる。
また、本発明の車両用ドアによれば、支持部材の係合部と係合する車両の被係合部として、車両用ドアを閉じたときに車両に固定するための被係合部であるストライカを利用することで、被係合部を別途設ける必要がなく、部品の数を削減することが可能となる。
また、本発明の車両用ドアによれば、支持部材を用いない時には車両用ドアの内側に設けられた窪みである格納部に格納することで、支持部材によって占有される車室内の空間を小さくすることが可能となる。
また、本発明の車両用ドアによれば、ロック部材を第2状態(ロック状態)すると支持部材が格納された状態が維持され、ロック部材を第1状態(アンロック状態)にすると車両用ドアの開閉とは無関係に支持部材が乗降用開口を跨ぐ第二位置に位置する状態が維持されるため、閉じた車両用ドアを開く際に支持部材を使用位置である第二位置に移動させる手間を省略することが可能となる。
また、本発明の車両用ドアによれば、適切な高さ位置で被支持者の胴体などを安定して支持することが可能となる。
また、本発明の車両用ドアによれば、車両用ドアの開閉状態に影響されずに、支持部材を格納位置である第一位置と使用位置である第二位置との間で回動させて移動させることが可能となり、さらに可動機構であるヒンジ部が占有する空間を小さくすることが可能となる。
また、本発明の車両用ドアによれば、スライド式の車両用ドアに支持部材を設けたときに、支持部材を車両の乗降用開口を跨ぐ第二位置に配置した際に、支持部材が車両に適切に支持される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用ドアの胴体支持部材が格納位置(第一位置)にあるときの車両用ドアの外観図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る車両用ドアの胴体支持部材が使用位置(第二位置)にあるときの車両用ドアの外観図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る車両用ドアの胴体支持部材が使用位置(第二位置)にあるときに作業者が荷物を車内に置く作業を行う際の様子を示す説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る車両用ドアの格納部に設けられたロック部材がアンロック状態(第1状態)にあるときの模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る車両用ドアの格納部に設けられたロック部材がロック状態(第2状態)にあるときの模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る車両用ドアの制御系統図を示すブロック図である。
【
図7】本発明の実施形態の変形例に係る車両用ドアの胴体支持部材が格納位置(第一位置)にあるときの説明図である。
【
図8】本発明の実施形態の変形例に係る車両用ドアの胴体支持部材が使用位置(第二位置)にあるときの説明図である。
【
図9】本発明の実施形態の変形例に係る車両用ドアの胴体支持部材を着脱するときの説明図である。
【
図10】本発明の実施形態の変形例に係る胴体支持部材を取り付ける前の乗り降り用開口の外観図である。
【
図11】本発明の実施形態の変形例に係る胴体支持部材を取り付けた後の乗り降り用開口の外観図である。
【
図12】本発明の実施形態の変形例に係る胴体支持部材の高さ調整を行う際の説明図である。
【
図13】本発明の実施形態の変形例に係る胴体支持部材の外観図である。
【
図14】本発明の実施形態の変形例に係る胴体支持部材の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、
図1乃至
図14を参照しながら、本発明の実施の形態(以下、本実施形態)に係る支持部材及び車両用ドアについて説明する。本実施形態に係る車両用ドアとして、車両の後部側面に設けられる車両用ドアを例に挙げて説明することとするが、車両の後部側面に設けられる車両用ドアに限定されるものではなく、車両の前部側面に設けられる車両用ドアであってもよい。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0027】
以下の説明中、「前後方向」とは、車両の乗員から見たときの前後方向(車両前後方向)を意味し、車両の走行方向と一致する方向である。
「車両幅方向」とは、車両の横幅方向を意味し、車両の乗員から見たときの左右方向と一致する。
また、「上下方向」とは、車両の高さ方向を意味し、車両を正面から見たときの上下方向と一致している。
【0028】
[1.車両用ドアの構成]
本実施形態に係る車両用ドアDは、車両の乗降用開口50を開閉するためのドアであり、車両用ドアDを開いた状態において、
図1に図示した外観を有している。
図1の車両用ドアDは、ドアヒンジ13によって車両に対して車両幅方向外側へと開くように回動可能に取り付けられたヒンジ式のドアであり、車両の後部に設けられる例を示している。
【0029】
車両用ドアDは、車両用ドアDを閉じたときに乗降用開口50を閉鎖するドア本体10と、被支持者を支持するための、特に被支持者の胴体を支持するための胴体支持部材(支持部材)20と、及び胴体支持部材20をドア本体10に対して相対的に移動可能に連結するヒンジ部24aを主な構成要素として有する。車両用ドアDは、ドア本体10の車両前後方向における端部であるドア前端部14とドア後端部15を備えており、ドア前端部14でドアヒンジ13によって車体に取り付けられている。車両用ドアDは、ドア本体10の車室側に設けられたドアノブ12またはドア本体10の車両外側に設けられた不図示のドアノブを操作することで乗降用開口50を開閉する。
【0030】
車両用ドアDのドア後端部15には、車両用ドアDを閉じたときに車両用ドアDを車両に対して固定するためのドアキャッチ15aが設けられている。ドアキャッチ15aは、車両に設けられたストライカ51に着脱可能に係合される。車両用ドアDを閉じたときに、ドアキャッチ15aとストライカ51が係合することで車両用ドアDが閉じた状態で車両に固定される。ドア本体10の車両内側には、車両幅方向外側に窪んだ格納部11が設けられており、胴体支持部材20は
図1に示す格納位置(非使用位置、非使用状態)において、格納部11に格納される。格納部11のドア後端部15に近い位置には、胴体支持部材20を格納部11に固定するためのロック機構としての胴体支持部材用キャッチ16が設けられている。また、ロックスイッチ17は、胴体支持部材用キャッチ16を操作するためのスイッチであり、胴体支持部材20を格納部11に固定するか否かを選択する際に操作される。なお、車両用ドアDは、胴体支持部材20および胴体支持部材20に関連する部分を除き、公知の構成を採用している。
【0031】
[2.胴体支持部材の概要]
図1及び
図2を参照しながら、本実施形態に係る車両用ドアDに備えられている胴体支持部材20について説明する。
図1は胴体支持部材20がドア本体10の格納部11に格納された格納位置(第一位置)にある状態を示しており、
図2は胴体支持部材20が乗降用開口50を跨ぐ使用位置(第二位置)にある状態を示している。
【0032】
図2に示すように、胴体支持部材20は略直方体形状であり、作業者などの被支持者の胴体を支持する本体部21と、本体部21の車両前後方向における前方の端部である第一端部24と、本体部21の車両前後方向における後方の端部、つまり第一端部24とは反対側の端部である第二端部25とを備えている。また、本体部21の第一端部24と第二端部25の間の上下方向における上面は上端部22である、下面は下端部23である。
【0033】
胴体支持部材20の第一端部24はヒンジ部24aを介してドア本体10及び車両(車体)に着脱可能に連結されており、胴体支持部材20は第一端部24(ヒンジ部24a)を回動軸として回動可能である。つまり、胴体支持部材20は、乗降用開口50を跨がない位置、例えば、ドア本体10の格納部11に格納される格納位置(第一位置)と、乗降用開口50を跨ぐ使用位置(第二位置)との間で回動可能であるように可動機構としてのヒンジ部24aによって、車両用ドアDのドア本体10及び車両(車体)に着脱可能に連結されている。
図2に示すように、使用位置(第二位置)における胴体支持部材20は、車両を側面から見たときに乗降用開口50の前端と後端を跨ぐように配置される。
【0034】
胴体支持部材20の第二端部25は車両のストライカ51(被係合部)と係合される係合部25aを備えている。係合部25aはストライカ51と着脱可能に係合される構造を有していればよく、例えば、車両用ドアDのドアキャッチ15aと同様の公知のドアキャッチ構造を採用すればよい。
図2に示す使用位置において、胴体支持部材20の第二端部25に設けられた係合部25aは、車両のストライカ51と係合する。
【0035】
使用位置における胴体支持部材20の第二端部25はストライカ51を介して車両(車体)に係合して固定される。したがって、胴体支持部材20の第一端部24と第二端部25の両端部が車両(車体)やドア本体10に支持されることになる。このように
図2に示す使用位置において両端部(複数部位)が車両(車体)やドア本体10によって支持された胴体支持部材20によれば、被支持者である作業者が車室の外から荷物などを車内に置く作業を行う際に、作業者の胴体などを胴体支持部材20によって安定して支持することが可能となる。
【0036】
また、被係合部(ストライカ51やヒンジ部24a)は、乗降用開口50よりも車両の前後方向において外側にあるとよい。このように構成することで、胴体支持部材20の車体との固定において、係合部(第一端部24や第二端部25)と被係合部が係合する位置が乗降用開口50よりも車両前後位置において外側となるため、胴体支持部材20の荷重を車両で受けやすくすることが可能となる。
【0037】
ここで、胴体支持部材20の上端部22は、車両に設けられるシートクッション52の座面である上面部52aよりも上下方向において上方の位置に配置され、かつ、車両用ドアDに設けられるドアノブ12やドアの窓部Wの窓枠部Waの下端部Wbよりも上下方向において下方である位置に配置されている。つまり、胴体支持部材20の上端部22は、上下方向において、ドアノブ12またはドアの窓部の窓枠部Waの下端部Wbとシートクッション52の上面部52aとの間の位置に配置されている。また、胴体支持部材20の下端部23は、車両のホイールハウス53の上端53aよりも上下方向において上方である位置に配置されている。
図2に示す使用位置(第二位置)において、胴体支持部材20がこのような位置に配置されるように構成されているので、被支持者である作業者が車室の外から荷物などを車内に置く作業を行う際、作業者の胴体を適切な高さ位置で安定して支持することが可能となる。
【0038】
また、車両用ドアDはドアヒンジ13によって車両に対して回動可能に取り付けられているが、可動機構であるヒンジ部24aの軸中心と、ドアヒンジ13の軸中心と一致する。したがって、車両用ドアDの開閉に影響されずに、胴体支持部材20を、乗降用開口50を跨がない位置、例えば、格納位置(第一位置)と、乗降用開口50を跨ぐ位置、例えば、使用位置(第二位置)との間で回動させて移動させることが可能となり、さらにヒンジ部24aが占有する空間を小さくすることが可能となる。
【0039】
[3.胴体支持部材の使用方法]
以下、本実施形態に係る車両用ドアDに設けられた胴体支持部材20の使用方法について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、胴体支持部材20が乗降用開口50を跨ぐ使用位置(第二位置)配置された状態を示しており、被支持者である作業者Hが荷物Bを車室内に置く作業を行う際の様子を示す説明図である。
【0040】
作業者Hは荷物Bを両手で持ったり、腕に抱えたりして、シートクッション52の上面部52aに置く作業を行う。このとき、作業者Hは腰を曲げることで、乗降用開口50を通じて上半身を車室内へと移動させるが、使用位置にある胴体支持部材20の本体部21に胴体Haを預けることが可能である。したがって、乗降用開口50を跨ぐ位置に配置された胴体支持部材20がない場合と比較して、腰を曲げて前傾姿勢をとった作業者Hの胴体Ha、特に腰部に掛かる荷重を胴体支持部材20へと分散させることが可能となる。
【0041】
作業者Hが重たい荷物Bをシートクッション52の上面部52aに置く作業を行う場合や、シートクッション52の上面部52aに搭載されたチャイルドシートに子供を着座させる作業を行う場合において、本実施形態に係る車両用ドアDに設けられた胴体支持部材20は、
図2及び3に示す使用位置(第二位置)において、その両端部(第一端部24及び第二端部25)が車両(車体)やドア本体110に直接的または間接的に支持されているため、作業者Hは胴体Haを胴体支持部材20に預けることが可能である。
【0042】
また、胴体支持部材20の上端部22が上下方向においてドアノブ12とシートクッション52の上面部52aとの間の位置に配置され、胴体支持部材20の下端部23が上下方向において車両のホイールハウス53の上端53aよりも上方である位置に配置されているため、被支持者である作業者Hの胴体Haを適切な高さ位置で安定して支持することが可能となる。
【0043】
さらに、胴体支持部材20は乗車時にアームレストとして使用することも可能である。
【0044】
[4.胴体支持部材のロック機構]
図1及び2に示すように、本実施形態に係る車両用ドアDのドア本体10の車両内側には、車両幅方向外側に窪んだ格納部11が設けられており、格納位置(第一位置)に配置される胴体支持部材20が格納される。格納部11には胴体支持部材用キャッチ16が設けられており、格納された胴体支持部材20を格納位置に固定することが可能である。
【0045】
図4及び
図5は、格納部11に設けられた胴体支持部材用キャッチ16の構造を示す模式図である。胴体支持部材用キャッチ16は、格納部11に対して、変位可能に設けられたロック部材19を有している。
図4はロック部材19が非作動状態であるアンロック状態(第1状態)にあるときの配置を示し、
図5はロック部材19が作動状態であるロック状態(第2状態)にある時の配置を示している。ロック部材19はロックスイッチ17の操作によって作動するアクチュエータ19aによって第1状態(アンロック状態)と第2状態(ロック状態)との間で変位可能であるように構成されている。
【0046】
図4に示すアンロック状態(第1状態)のロック部材19は格納部11に対して退避した位置に存在しており、この状況では格納部11に格納された格納位置(第一位置)にある胴体支持部材20の第二端部25に設けられた係合部25aとロック部材19は係合しない。したがって、アンロック状態(第1状態)では、胴体支持部材20は格納部11に固定されることなく、車両用ドアDを開く場合に車両用ドアDの動きと胴体支持部材20の動きを独立させることが可能となる。
【0047】
図5に示すロック状態(第2状態)のロック部材19は格納部11に対して突出した位置に存在しており、格納部11に格納された格納位置(第一位置)にある胴体支持部材20の第二端部25に設けられた係合部25aと係合している。したがって、ロック状態(第2状態)における胴体支持部材20は格納部11に固定されるため、車両用ドアDを開く場合に車両用ドアDの動きに胴体支持部材20の動きを追従させることが可能となる。
【0048】
車両用ドアDが閉じているときに、ロックスイッチ17を操作してロック部材19を
図4に示すアンロック状態(第1状態)にすると、胴体支持部材20の動作が車両用ドアDの開閉動作とは独立したものとなるため、閉じている車両用ドアDを開く際に、胴体支持部材20が使用位置である第二位置に維持される。したがって、車両用ドアDを開いたときに、胴体支持部材20が車両用ドアDと一緒に移動してしまうことがないため、胴体支持部材20を使用位置(第二位置)へと移動させる手間を省略することが可能となる。
【0049】
また、胴体支持部材20を使用する意図がない場合、車両用ドアDが閉じているときに、ロックスイッチ17を操作してロック部材19を
図5に示すロック状態(第2状態)にすると、胴体支持部材20の格納状態(格納位置)が維持され、胴体支持部材20の動作が車両用ドアDの開閉動作に追従したものとなるため、車両用ドアDを開いたときに、胴体支持部材20が乗降用開口50を跨ぐ使用位置(第二位置)に残ってしまうことが防止される。
【0050】
なお、
図6に示すように、上述したアクチュエータ19aは、制御装置の一例であるECU(Electric Control Unit)18によって制御される。すなわち、ロックスイッチ17を操作してオンの状態にすると、ECU18はロック部材19が
図4に示すアンロック状態(第1状態)となるようにアクチュエータ19aを駆動し、ロックスイッチ17を操作してオフの状態にすると、ECU18はロック部材19が
図5に示すロック状態(第2状態)をなるようにアクチュエータ19aを駆動する。
【0051】
したがって、作業者Hがロックスイッチ17を操作することで、ロック部材19を第1状態と第2状態との間で切り替え可能であるため、閉じている車両用ドアDを開放する際に、胴体支持部材20が使用位置(第二位置)に位置する状態を維持することができたり、胴体支持部材20が格納位置(第一位置)に位置する状態を維持したりすることが制御可能となる。
【0052】
[5.変形例]
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。以下においては、
図7及び8に基づいて、車両用ドアの変形例について説明する。
図7及び8に示す本発明の実施形態の変形例に係る車両用ドアは、スライド式の車両用ドアである。
【0053】
本実施形態の変形例に係る車両用ドアD2は、車両の乗降用開口50を開閉するためのドアである。変形例の車両用ドアD2は不図示のドアスライドによって車両に対してスライド可能に取り付けられたスライド式のドアであり、車両の後部側面に設けられる例を示している。
図7及び8は、車両用ドアD2を開いた状態において、胴体支持部材200の位置がわかるように示した説明図である。
【0054】
車両用ドアD2は、車両用ドアD2を閉じたときに乗降用開口50を閉鎖するドア本体110、被支持者の胴体を支持するための胴体支持部材200、及び胴体支持部材200をドア本体110に対して相対的に移動可能に連結するスライド機構111aを主な構成要素として有する。車両用ドアD2は、ドア本体110の車両前後方向における端部であるドア前端部113とドア後端部114を備えている。車両用ドアD2は、ドア本体110の車室側に設けられたドアノブ112またはドア本体110の車両外側に設けられた不図示のドアノブを操作することで乗降用開口50を開閉することが可能となっている。
【0055】
車両用ドアD2のドア前端部113には、車両用ドアD2を閉じたときに車両用ドアD2を車両に対して固定するためのドアキャッチ113aが設けられている。ドアキャッチ113aは、車両に設けられたストライカ51に着脱可能に係合される。車両用ドアD2を閉じたときには、ドアキャッチ113aとストライカ51が係合することで車両用ドアD2が車両に固定される。ドア本体110の車両内側には、車両幅方向外側に窪んだ格納部11が設けられており、胴体支持部材200は格納位置(非使用位置、非使用状態)において、格納部111に格納される。格納部111のドア後端部114に近い位置には、胴体支持部材200を格納部111に固定するためのロック機構としての胴体支持部材用キャッチ115が設けられている。また、ロックスイッチ116は、胴体支持部材用キャッチ115を操作するためのスイッチであり、胴体支持部材200を格納部111に固定するか否かを選択する際に操作される。なお、車両用ドアD2は、胴体支持部材200および胴体支持部材200に関連する部分を除き、公知の構成を採用している。
【0056】
図7及び
図8を参照しながら、本実施形態の変形例に係る車両用ドアD2に備えられている胴体支持部材200について説明する。
図7は胴体支持部材200がドア本体110の格納部111に格納された格納位置(第一位置)にある状態を示しており、
図8は胴体支持部材200が乗降用開口50を跨ぐ使用位置(第二位置)にある状態を示している。
【0057】
図8に示すように、胴体支持部材200は略直方体形状であり、作業者などの被支持者の胴体を支持する本体221と、本体221の車両前後方向における後方の端部である第一端部224と、本体部21の車両前後方向における前方の端部、つまり第一端部224とは反対側の端部である第二端部225とを備えている。また、本体部21の第一端部224と第二端部225の間の上下方向における上面は上端部222であり、下面は下端部223である。
【0058】
胴体支持部材200の第一端部224はスライド機構111aを介してドア本体110に着脱可能に取り付けられており、胴体支持部材200は格納部111の長手方向、つまり車両前後方向にスライド可能である。つまり、胴体支持部材200は、乗降用開口50を跨がない位置、例えば、ドア本体110の格納部111に格納される格納位置(第一位置)と、乗降用開口50を跨ぐ使用位置(第二位置)との間でスライド可能であるように可動機構としてのスライド機構111aによって、車両用ドアD2のドア本体110に着脱可能に連結されている。スライド機構111aは、胴体支持部材200をスライド可能にドア本体110に連結な可能なものであれば、その構造は特に限定されるものではない。
【0059】
胴体支持部材200の第二端部225は車両のストライカ51(被係合部)と係合される係合部225aを備えている。係合部225aはストライカ51と着脱可能に係合される構造を有していればよく、例えば、車両用ドアD2のドアキャッチ113aと同様の公知のドアキャッチ構造を採用すればよい。
図8に示す使用位置において、胴体支持部材200の第二端部225に設けられた係合部225aは、車両のストライカ51と係合する。
【0060】
使用位置における胴体支持部材200の第二端部225はストライカ51を介して車両(車体)に係合して固定される。したがって、胴体支持部材200が第一端部224においてドア本体110を介して車両(車体)に間接的に支持され、第二端部225において車両(車体)に直接的に支持されるため、胴体支持部材200は両端部で車両(車体)に直接的または間接的に支持されることになる。このように
図8に示す使用位置において胴体支持部材200は両端部が支持されているため、被支持者である作業者が車室の外から荷物などを車内に置く作業において、作業者の胴体を安定して支持することが可能となる。
【0061】
ここで、
図8に示すように、胴体支持部材200の本体221の長手方向における長さ、具体的には、第一端部224と第二端部225の間の距離(L
S)は、車両用ドアD2が閉じている閉位置(閉鎖位置)から最も開放された開位置(開放位置)に移動する際にドア本体110のドア前端部113が車両前後方向において移動する距離(L
M)よりも長く、ドア前端部113とドア後端部114の間の車両前後方向の距離で定義されるドア本体110の車両前後方向の長さ(L
D)よりも短い。つまり、胴体支持部材200の長さ(L
S)は、L
M<L
S<L
Dの関係が成立するように設計されており、胴体支持部材200を
図8に示す使用位置(第二位置)としたときに適切に車両に支持される。
【0062】
胴体支持部材200の上端部222は、車両に設けられる不図示のシートクッションの座面である上面部よりも上下方向において上方に配置され、かつ、車両用ドアD2に設けられるドアノブ112よりも上下方向において下方である位置に配置されている。つまり、胴体支持部材200の上端部222は、上下方向において、ドアノブ112とシートクッションの上面部との間の位置に配置されている。また、胴体支持部材200の下端部223は、不図示の車両のホイールハウスの上端部よりも上下方向において上方である位置に配置されている。使用位置において、胴体支持部材200がこのような位置に配置されるように構成されているので、被支持者である作業者が車室の外から荷物などを車内に置く作業において、作業者の胴体を適切な高さ位置で安定して支持することが可能となる。
【0063】
本実施形態の変形例に係る車両用ドアD2のドア本体110の車両内側に設けられた格納部111には胴体支持部材用キャッチ115が設けられており、格納された胴体支持部材200を格納位置に固定することが可能である。
【0064】
格納部111に設けられた胴体支持部材用キャッチ115は、
図4及び5に示したロック部材19と同様の機能を有する変位可能なロック部材を有している。本実施形態の変形例に係るロック部材の構造は、ロック部材19の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
本実施形態の変形例に係るロック部材は、ロックスイッチ116の操作によって作動する不図示のアクチュエータによってアンロック状態(第1状態)とロック状態(第2状態)との間で変位可能であるように構成されている。アンロック状態(第1状態)のロック部材は格納部111に対して退避した位置に存在しており、格納部111に格納された格納位置(第一位置)にある胴体支持部材200の第一端部224に設けられた係合部224aと不図示のロック部材は係合しない。したがって、アンロック状態(第1状態)では、胴体支持部材200は格納部111に固定されることなく、車両用ドアD2を開く場合に車両用ドアD2の動きと胴体支持部材200の動きを独立させることが可能となる。
【0066】
ロック状態(第2状態)の不図示のロック部材は格納部111に対して突出した位置に存在しており、格納部111に格納された格納位置(第一位置)にある胴体支持部材200の第一端部224に設けられた係合部224aと係合している。したがって、ロック状態(第2状態)における胴体支持部材200は格納部111に固定されるため、車両用ドアD2を開く場合に車両用ドアD2の動きに胴体支持部材200の動きを追従させることが可能となる。
【0067】
車両用ドアD2が閉じているときに、ロックスイッチ116を操作してロック部材をアンロック状態(第1状態)にすると、胴体支持部材200を車両用ドアD2の開閉動作とは独立したものとなるため、閉じている車両用ドアD2を開く際に、胴体支持部材200が使用位置である第二位置に維持される。したがって、車両用ドアD2を開いたときに、胴体支持部材200が車両用ドアD2と一緒に移動してしまうことないため、胴体支持部材200を使用位置(第二位置)へと移動させる手間を省略することが可能となる。
【0068】
また、胴体支持部材200を使用する意図がない場合、車両用ドアD2が閉じているときに、ロックスイッチ116を操作してロック部材をロック状態(第2状態)にすると、胴体支持部材200の格納状態(格納位置)が維持され、胴体支持部材200の動作が車両用ドアD2の開閉動作に追従したものとなるため、車両用ドアD2を開いたときに、胴体支持部材200が乗降用開口50を跨ぐ使用位置(第二位置)に残ってしまうことが防止される。
【0069】
ロックスイッチ17やロックスイッチ116を車両用ドアに設けた例を示したが、ロックスイッチを設ける位置は、車両の乗員が操作可能な位置であればよく、車両用ドア以外の場所に設けることも可能である。また、ロックスイッチを1つのみではなく、複数設けることも可能である。
【0070】
さらに、
図9に示すように、胴体支持部材を車両から着脱可能に構成してもよい。具体的には、胴体支持部材20の第一端部24にヒンジ部24aを設け、胴体支持部材20の第一端部24(ヒンジ部24a)及び第二端部25を車両から取り外し可能に構成すればよい。このように構成することで、胴体支持部材20を車両や車両用ドアに対して着脱可能なものとすることが可能となる。
【0071】
また、
図10乃至12に示すように、胴体支持部材を車両に対して高さ調整可能に構成してもよい。
図10は胴体支持部材を取り付ける前の乗降用開口50の外観図であり、
図11は、胴体支持部材20Xを取り付けた後の乗降用開口の外観図である。車両には、被係合部26aとストライカ51が設けられている。
図11に示すように、胴体支持部材20Xの第一端部24が被係合部26aと係合し、第二端部25がストライカ51と係合するようにして、胴体支持部材20Xが乗降用開口50を跨ぐ位置に取り付けられる。そして、胴体支持部材20Xの高さは、
図12に実線で示す位置と、点線で示す位置との間で調整可能となる。
【0072】
図13に示すように、高さ調整可能な胴体支持部材20Xは、本体部21の中に公知のヘッドレストピラーと同様の構造を有するピラー部26を備え、ピラー部26に沿って上下方向に高さを調整することが可能となっている。また、胴体支持部材20Xの高さ位置は、公知のヘッドレストと同様の構造で維持(ロック)されるように構成されており、解除ボタン27を押すことでロックが解除され、高さ位置の調整を行うことが可能となる。ピラー部26及び解除ボタン27は胴体支持部材20Xの両端部にそれぞれ設けられており、高さの調整を行う際には、2つの解除ボタン27を同時に押すことで両端部のロックが解除する。
【0073】
また、
図14に示す高さ調整可能な胴体支持部材20Yのように、車両のドアヒンジと係合するフック状の引っ掛け26Yを設け、胴体支持部材20Yを着脱する際には、解除ボタン27を押すことで、ロックが解除可能としてもよい。車両のドアヒンジについては、車種毎に形状が異なるため、引っ掛け26Yを横向きにするか、縦向きにするかは車両毎に事前に確認することで対応すればよい。
【0074】
以上、本実施形態に係る車両用ドアを、車両の後部側面に設けられる車両用ドアを例として説明した。本実施形態に係る車両用ドアは、車両の後部側面に設けられる車両用ドアに限定されるものではなく、車両の前部側面に設けられる車両用ドアとしても利用可能である。また、1台の車両に対し、本実施形態に係る胴体支持部材を備える車両用ドアを複数設けることも可能であり、車両における左右の後部側面、左右の前部側面における任意の車両用ドアを選択して、本実施形態に係る胴体支持部材を備える車両用ドアを設けることが可能である。さらに、1台の車両がヒンジ式とスライド式の車両用ドアを両方備える場合、ヒンジ式の車両用ドアには
図1及び2に示す回動可能な胴体支持部材を備える車両用ドアDを採用し、スライド式の車両用ドアには
図7及び8に示すスライド可能な胴体支持部材を備える車両用ドアD2を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
C 車両
50 乗降用開口
51 ストライカ(被係合部)
52 シートクッション
52a 上面部
53 ホイールハウス
53a 上端
26a 被係合部
D 車両用ドア
10 ドア本体
11 格納部
12 ドアノブ
13 ドアヒンジ
14 ドア前端部
15 ドア後端部
15a ドアキャッチ
16 胴体支持部材用キャッチ
17 ロックスイッチ
18 ECU(制御装置)
19 ロック部材
19a アクチュエータ
W 窓部
Wa 窓枠部
Wb 下端部
20 胴体支持部材(支持部材)
21 本体部
22 上端部
23 下端部
24 第一端部
24a ヒンジ部(可動機構)
25 第二端部
25a 係合部
H 作業者
Ha 胴体
B 荷物
D2 車両用ドア
110 ドア本体
111 格納部
111a スライド機構(可動機構)
112 ドアノブ
113 ドア前端部
113a ドアキャッチ
114 ドア後端部
115 胴体支持部材用キャッチ
116 ロックスイッチ
200 胴体支持部材
221 本体
222 上端部
223 下端部
224 第一端部
224a 係合部
225 第二端部
225a 係合部
20X,20Y 胴体支持部材(支持部材)
21 本体部
24 第一端部
25 第二端部
26 ピラー部
26Y 引っ掛け
27 解除ボタン