(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/04 20060101AFI20220126BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20220126BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20220126BHJP
A63B 23/00 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
B60N2/04
B60N2/90
A47C7/62 Z
A63B23/00 F
(21)【出願番号】P 2017198829
(22)【出願日】2017-10-12
【審査請求日】2020-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2016225445
(32)【優先日】2016-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 和也
(72)【発明者】
【氏名】樫野 竜太
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛
(72)【発明者】
【氏名】小島 志織
(72)【発明者】
【氏名】大森 一樹
(72)【発明者】
【氏名】溝井 健介
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/021497(WO,A1)
【文献】特開2014-133479(JP,A)
【文献】特開2001-277913(JP,A)
【文献】特開2003-235917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 7/62
A63B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者が座る部位である座部を少なくとも備えるシートであって、
前記座部には、前記着座者を支持しつつ揺動可能に揺動部材が配設されており、
該揺動部材は、前記着座者を支持する側の反対側の部位を基準として、少なくとも一方向と該一方向の逆方向に揺動可能に、前記シートの一部に支持されており、
前記揺動部材を付勢する付勢部材と、
前記揺動部材を揺動させるように作用する作用部材と、
該作用部材を制御する作用部材制御装置と、
前記付勢部材の変位量を検出する検出部と、を備え、
前記作用部材制御装置は、前記検出部からの信号に基づき、前記着座者の重心位置を算出する演算部を有することを特徴とするシート。
【請求項2】
着座者が座る部位である座部と、前記着座者が凭れかかる背凭れと、を少なくとも備えるシートであって、
前記背凭れには、前記着座者を支持しつつ揺動可能に揺動部材が配設されており、
該揺動部材は、前記着座者を支持する側の反対側の部位を基準として、少なくとも一方向と該一方向の逆方向に揺動可能に、前記シートの一部に支持されており、
前記揺動部材を付勢する付勢部材と、
前記揺動部材を揺動させるように作用する作用部材と、
該作用部材を制御する作用部材制御装置と、
前記付勢部材の変位量を検出する検出部と、を備え、
前記作用部材制御装置は、前記検出部からの信号に基づき、前記着座者の重心位置を算出する演算部を有することを特徴とするシート。
【請求項3】
着座者が座る部位である座部を少なくとも備えるシートであって、
前記座部には、前記着座者を支持しつつ揺動可能に揺動部材が配設されており、
該揺動部材は、前記着座者を支持する側の反対側の部位を基準として、少なくとも一方向と該一方向の逆方向に揺動可能に、前記シートの一部に支持されており、
前記シートの一部に、前記揺動部材の揺動の支点となる支点部を備え、
前記揺動部材における前記着座者を支持する側の反対側の部位は、前記支点部を中心に揺動可能に支持されており、
前記揺動部材は、平面部と曲面部とから成る略円錐状であり、
前記平面部が前記着座者を支持する側に位置していることを特徴とするシート。
【請求項4】
着座者が座る部位である座部と、前記着座者が凭れかかる背凭れと、を少なくとも備えるシートであって、
前記背凭れには、前記着座者を支持しつつ揺動可能に揺動部材が配設されており、
該揺動部材は、前記着座者を支持する側の反対側の部位を基準として、少なくとも一方向と該一方向の逆方向に揺動可能に、前記シートの一部に支持されており、
前記シートの一部に、前記揺動部材の揺動の支点となる支点部を備え、
前記揺動部材における前記着座者を支持する側の反対側の部位は、前記支点部を中心に揺動可能に支持されており、
前記揺動部材は、平面部と曲面部とから成る略円錐状であり、
前記平面部が前記着座者を支持する側に位置していることを特徴とするシート。
【請求項5】
前記作用部材制御装置は、
前記揺動部材による揺動に伴って前記着座者に加わる負荷が適当かを判断する負荷判断部を有し、
該負荷判断部は、前記演算部が算出した重心位置の移動状態から前記着座者に加わる負荷が適当かを判断することを特徴とする請求項1又は2に記載のシート。
【請求項6】
背凭れとしてのシートバックと、
該シートバックに連結した前記座部としてのシートクッションと、
前記着座者を支持可能に前記シートバックに設けられた可動支持部材と、
該可動支持部材を制御する支持部材制御装置と、を備え、
前記可動支持部材は、前記着座者を支持することによって前記揺動部材の揺動を制限し、
前記支持部材制御装置は、前記可動支持部材の位置を調整する調整部を有し、
該調整部は、
車両の停車時には、前記着座者を支持しない位置に前記可動支持部材の位置を調整し、
前記車両が所定の速度変化以上に加速又は減速して走行している場合は、前記着座者を支持する位置に前記可動支持部材の位置を調整し、
前記車両が前記所定の速度変化の範囲内で走行している場合は、前記車両の停車時と前記車両が前記所定の速度変化以上に加速又は減速して走行している場合との間の位置に前記可動支持部材の位置を調整することを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項7】
前記可動支持部材は、シート前方に伸長可能な伸長部材であり、
前記調整部は、前記可動支持部材の前記シートバックからの伸長位置を調整することを特徴とする請求項
6に記載のシート。
【請求項8】
前記作用部材制御装置は、前記作用部材を介して、前記車両の停車時には前記揺動部材を大きく揺動させ、
前記車両が前記所定の速度変化以上に加速又は減速して走行している場合には前記揺動部材を揺動させず、
前記車両が前記所定の速度変化の範囲内で走行している場合には前記揺動部材を小さく揺動させるように制御することを特徴とする請求項
6又は
7に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに係り、特に、着座者の運動のための負荷を着座者に与えることが可能なシートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば乗物用のシートにおいては、長時間の人が着座した場合であっても着座者の負荷を軽減可能な快適な座り心地のシートが普及している。一方で、乗物の普及によって、人の運動不足が問題となっている。
このような問題を解消するため、特許文献1には、トレーニング装置を一体的に備える車両用シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のシートに設けられたトレーニング装置は、腕部や脚部を鍛えるものであり、体幹を鍛える装置ではなかった。ここで、体幹とは、人間の胴体部分で、骨盤、背骨、肋骨、肩甲骨とその周囲を取り巻く表層、深層の筋肉を指すものである。
体幹を鍛えることができれば、(1)血流を上げ基礎代謝が向上することで脂肪の蓄積を防ぐことができ、(2)椎間板に加わる負荷を軽減することで腰痛を緩和でき、(3)腹横筋の筋力による矯正によって姿勢を正しくできる、というメリットがある。
【0005】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、座りながら体幹を鍛える運動を行うことが可能なシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明のシートによれば、着座者が座る部位である座部を少なくとも備えるシートであって、前記座部には、前記着座者を支持しつつ揺動可能に揺動部材が配設されており、該揺動部材は、前記着座者を支持する側の反対側の部位を基準として、少なくとも一方向と該一方向の逆方向に揺動可能に、前記シートの一部に支持されており、前記揺動部材を付勢する付勢部材と、前記揺動部材を揺動させるように作用する作用部材と、該作用部材を制御する作用部材制御装置と、前記付勢部材の変位量を検出する検出部と、を備え、前記作用部材制御装置は、前記検出部からの信号に基づき、前記着座者の重心位置を算出する演算部を有することにより解決される。
上記構成によれば、着座者は、少なくとも一方向に揺動可能に座部に配設された揺動部材を有するシートに座ることで、座りながら体幹を鍛える運動を行うことができる。特に、乗物用シートの場合は、運転しながら当該運動を行うことができる。
上記構成によれば、シートが付勢部材を更に備えることで、揺動部材の揺動動作を着座者の運動に好適なものに調整することができる。
上記構成によれば、シートが、作用部材と、演算部を有する作用部材制御装置と、検出部と、を備えることで、高価なカメラなどを用いず、付勢部材の変位量から、着座者の重心位置を簡単に算出することができる。
【0007】
また、前記課題は、本発明のシートによれば、着座者が座る部位である座部と、前記着座者が凭れかかる背凭れと、を少なくとも備えるシートであって、前記背凭れには、前記着座者を支持しつつ揺動可能に揺動部材が配設されており、該揺動部材は、前記着座者を支持する側の反対側の部位を基準として、少なくとも一方向と該一方向の逆方向に揺動可能に、前記シートの一部に支持されており、前記揺動部材を付勢する付勢部材と、前記揺動部材を揺動させるように作用する作用部材と、該作用部材を制御する作用部材制御装置と、前記付勢部材の変位量を検出する検出部と、を備え、前記作用部材制御装置は、前記検出部からの信号に基づき、前記着座者の重心位置を算出する演算部を有することにより解決される。
上記構成によれば、着座者は、少なくとも一方向に揺動可能に背凭れに配設された揺動部材を有するシートに座ることで、座りながら体幹を鍛える運動を行うことができる。特に、乗物用シートの場合は、運転しながら当該運動を行うことができる。
上記構成によれば、シートが付勢部材を更に備えることで、揺動部材の揺動動作を着座者の運動に好適なものに調整することができる。
上記構成によれば、シートが、作用部材と、演算部を有する作用部材制御装置と、検出部と、を備えることで、高価なカメラなどを用いず、付勢部材の変位量から、着座者の重心位置を簡単に算出することができる。
【0008】
また、前記課題は、本発明のシートによれば、着座者が座る部位である座部を少なくとも備えるシートであって、前記座部には、前記着座者を支持しつつ揺動可能に揺動部材が配設されており、該揺動部材は、前記着座者を支持する側の反対側の部位を基準として、少なくとも一方向と該一方向の逆方向に揺動可能に、前記シートの一部に支持されており、前記シートの一部に、前記揺動部材の揺動の支点となる支点部を備え、前記揺動部材における前記着座者を支持する側の反対側の部位は、前記支点部を中心に揺動可能に支持されており、前記揺動部材は、平面部と曲面部とから成る略円錐状であり、前記平面部が前記着座者を支持する側に位置していることにより解決される。
上記構成によれば、着座者は、少なくとも一方向に揺動可能に座部に配設された揺動部材を有するシートに座ることで、座りながら体幹を鍛える運動を行うことができる。特に、乗物用シートの場合は、運転しながら当該運動を行うことができる。
上記構成によれば、支点部を中心に揺動部材を簡単な構成で揺動させることができる。
上記構成によれば、簡易な構成で略円錐状の揺動部材を揺動させることができる。
また、前記課題は、本発明のシートによれば、着座者が座る部位である座部と、前記着座者が凭れかかる背凭れと、を少なくとも備えるシートであって、前記背凭れには、前記着座者を支持しつつ揺動可能に揺動部材が配設されており、該揺動部材は、前記着座者を支持する側の反対側の部位を基準として、少なくとも一方向と該一方向の逆方向に揺動可能に、前記シートの一部に支持されており、前記シートの一部に、前記揺動部材の揺動の支点となる支点部を備え、前記揺動部材における前記着座者を支持する側の反対側の部位は、前記支点部を中心に揺動可能に支持されており、前記揺動部材は、平面部と曲面部とから成る略円錐状であり、前記平面部が前記着座者を支持する側に位置していることにより解決される。
上記構成によれば、着座者は、少なくとも一方向に揺動可能に背凭れに配設された揺動部材を有するシートに座ることで、座りながら体幹を鍛える運動を行うことができる。特に、乗物用シートの場合は、運転しながら当該運動を行うことができる。
上記構成によれば、支点部を中心に揺動部材を簡単な構成で揺動させることができる。
上記構成によれば、簡易な構成で略円錐状の揺動部材を揺動させることができる。
【0009】
また、前記作用部材制御装置は、前記揺動部材による揺動に伴って前記着座者に加わる負荷が適当かを判断する負荷判断部を有し、該負荷判断部は、前記演算部が算出した重心位置の移動状態から前記着座者に加わる負荷が適当かを判断すると好ましい。
上記構成によれば、作用部材制御装置が揺動部材による揺動に伴って着座者に加わる負荷が適当か否かを判断する負荷判断部を有することで、着座者に加わっている負荷が高い又は低いと判断したら、負荷を調整して適当な負荷となるように、揺動部材の揺動を調整することができる。
【0010】
また、前記課題は、本発明のシートによれば、着座者が座る部位である座部を少なくとも備えるシートであって、前記座部には、前記着座者を支持しつつ揺動可能に揺動部材が配設されており、該揺動部材は、前記着座者を支持する側の反対側の部位を基準として、少なくとも一方向と該一方向の逆方向に揺動可能に、前記シートの一部に支持されており、前記揺動部材を揺動させるように作用する作用部材を備え、前記揺動部材は、一部に凹部を有していることにより解決される。
上記構成によれば、着座者は、少なくとも一方向に揺動可能に座部に配設された揺動部材を有するシートに座ることで、座りながら体幹を鍛える運動を行うことができる。特に、乗物用シートの場合は、運転しながら当該運動を行うことができる。
【0011】
また、前記凹部は、前記揺動部材の中央部を介して、左右に形成されていると好ましい。
また、前記揺動部材は、上部クッション材と、該上部クッション材の下に配置される下部クッション材と、該下部クッション材の下に配置される支持部と、を有し、前記凹部は、前記支持部に形成され、前記下部クッション材において、前記凹部と対向する位置に穴が形成されていると好ましい。
【0012】
また、前記課題は、本発明のシートによれば、着座者が座る部位である座部を少なくとも備えるシートであって、前記座部には、前記着座者を支持しつつ揺動可能に揺動部材が配設されており、該揺動部材は、前記着座者を支持する側の反対側の部位を基準として、少なくとも一方向と該一方向の逆方向に揺動可能に、前記シートの一部に支持されており、前記揺動部材を揺動させるように作用する作用部材と、前記シートの一部に、前記揺動部材の揺動の支点となる支点部と、を備え、前記揺動部材における前記着座者を支持する側の反対側の部位は、前記支点部を中心に揺動可能に支持されており、前記揺動部材の上に前記着座者のヒップポイントが位置しており、前記ヒップポイントの反対側に、前記支点部が位置していることにより解決される。
上記構成によれば、着座者は、少なくとも一方向に揺動可能に座部に配設された揺動部材を有するシートに座ることで、座りながら体幹を鍛える運動を行うことができる。特に、乗物用シートの場合は、運転しながら当該運動を行うことができる。
また、前記揺動部材は、前記ヒップポイントから前記揺動部材の前端までの距離が、前記ヒップポイントから前記揺動部材の後端までの距離よりも、前後方向において長いと好ましい。
【0013】
また、前記課題は、本発明のシートによれば、着座者が座る部位である座部を少なくとも備えるシートであって、前記座部には、前記着座者を支持しつつ揺動可能に揺動部材が配設されており、該揺動部材は、前記着座者を支持する側の反対側の部位を基準として、少なくとも一方向と該一方向の逆方向に揺動可能に、前記シートの一部に支持されており、前記揺動部材を揺動させるように作用する作用部材と、前記揺動部材を支えているクッションパッドを有することにより解決される。
上記構成によれば、着座者は、少なくとも一方向に揺動可能に座部に配設された揺動部材を有するシートに座ることで、座りながら体幹を鍛える運動を行うことができる。特に、乗物用シートの場合は、運転しながら当該運動を行うことができる。
また、前記揺動部材は、上面視で略五角形状に形成されていると好ましい。
また、前記座部としてのシートクッションを備え、前記揺動部材の左右の端部は、前記シートクッションの側部と上下方向にオーバーラップするように位置していると好ましい。
【0014】
また、背凭れとしてのシートバックと、該シートバックに連結した前記座部としてのシートクッションと、前記着座者を支持可能に前記シートバックに設けられた可動支持部材と、該可動支持部材を制御する支持部材制御装置と、を備え、前記可動支持部材は、前記着座者を支持することによって前記揺動部材の揺動を制限し、前記支持部材制御装置は、前記可動支持部材の位置を調整する調整部を有し、該調整部は、車両の停車時には、前記着座者を支持しない位置に前記可動支持部材の位置を調整し、前記車両の加速又は減速時には、前記着座者を支持する位置に前記可動支持部材の位置を調整し、前記車両が略一定の速度で走行中には、前記車両の停車時と加速又は減速時との間の位置に前記可動支持部材の位置を調整するようにしてもよい。
上記構成によれば、車両の走行状態に応じて着座者を支持する範囲を変えることができる。つまり、着座者の運転状態に応じて、体幹を鍛える運動を着座者に適切に行わせることができる。
【0015】
また、前記可動支持部材は、シート前方に伸長可能な伸長部材であり、前記調整部は、前記可動支持部材の前記シートバックからの伸長位置を調整するようにしてもよい。
上記構成によれば、伸長部材と調整部とから成る簡単な構成で、伸長部材の伸長位置を調整部が調整することで、着座者は好適に運動することが可能となる。
【0016】
また、前記揺動部材を揺動させるように作用する作用部材と、該作用部材を制御する作用部材制御装置と、を更に備え、該作用部材制御装置は、前記作用部材を介して、前記車両の停車時には前記揺動部材を大きく揺動させ、前記車両の加速又は減速時には前記揺動部材を揺動させず、前記車両が略一定の速度で走行中には前記揺動部材を小さく揺動させるように制御すると好ましい。
上記構成によれば、作用部材と作用部材制御装置を備えて、自ら揺動部材を動かすだけでなく、自動的に揺動部材を動かして運動を行うことが可能となる。さらに、車両の状況に合わせて揺動部材の揺動状態を変化させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、着座者は、シートに座りながら体幹を鍛える運動を行うことができる。
また、本発明によれば、揺動部材の揺動状態を自在に制御することができる。
さらに、揺動部材の揺動動作を着座者の運動に好適なものに調整することができる。
また、付勢部材の変位量から、着座者の重心位置を簡単に算出することができる。
また、着座者に加わっている負荷が高い又は低いと判断したら、負荷を調整して適当な負荷となるように、揺動部材の揺動を調整することができる。
また、支点部を中心に揺動部材を簡単な構成で揺動させることができる。
また、簡易な構成で略円錐状の揺動部材を揺動させることができる。
また、車両の走行状態に応じて着座者を支持する範囲を変えることで、体幹を鍛える運動を着座者に適切に行わせることができる。
また、着座者は好適に運動することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートを示す斜視図である。
【
図2】シートクッションに設けられた骨盤運動機器及びダンパを示す平面図である。
【
図3】シートクッションに設けられた骨盤運動機器及びダンパを示す側面図である。
【
図6】車両の各状態毎の検知対象、骨盤の運動、及びシートバックの支持状態を示す図である。
【
図7】骨盤運動機器の動作の制御フローを示す図である。
【
図8】変形例に係るシートクッション及び骨盤運動機器を示す平面図である。
【
図10】骨盤運動機器を取り外した状態のシートクッションを示す平面図である。
【
図14】骨盤運動機器の第2支持部及び偏心軸部の底面図である。
【
図16】他の変形例に係るシートクッション及び骨盤運動機器を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0020】
また、以下では、本実施形態に係る乗物用シートとして、車両用シートSを例に挙げて説明することとする。ただし、本発明は、車両以外の乗物にも適用可能であり、例えば、船舶や航空機、産業用機械等にも適用可能である。さらには、本発明は、乗物用シート以外の事務用の椅子等の少なくとも座部を有するシートに適用可能である。
なお、以下における「上下」、「左右」、「前後」の各方向は、車両用シートSに着座する着座者Hから見た「上下」、「左右」、「前後」に一致する。
【0021】
<全体構成について>
まず、本実施形態に係る車両用シートSの全体構成について、
図1を主に参照して概説する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用シートSを示す斜視図である。
車両用シートSは、着座者H(
図6参照)の臀部を支持する座部であるシートクッション1と、背凭れであるシートバック2と、シートクッション1に配設された骨盤運動機器3と、シートバック2に配設されたエアセル8と、から主に構成されている。
【0022】
シートクッション1は、
図2に示すシートフレームFと、クッションパッド1aと、クッションパッド1aを覆ってシートフレームFに固定される表皮1bと、から主に構成されている。
シートバック2は、シートクッション1の後端部に取り付けられており、シートクッション1と同様に、不図示のシートフレームと、クッションパッド2aと、表皮2bと、から主に構成されている。
【0023】
骨盤運動機器3は、詳細については後述するが、着座者Hの体幹を鍛えるための機器であり、その下側の一部がシートクッション1の内部に配設されており、着座者Hの臀部を支持しつつ、着座者Hの骨盤部分を揺動させる揺動部材である。
エアセル8は、詳細については後述するが、膨張(伸長)して着座者Hの腰部分を押圧支持するための伸長部材及び可動支持部材であり、アクチュエータ4Bによって膨出及び収縮可能にシートバック2に配設されている。
【0024】
<骨盤運動機器周りの構成について>
骨盤運動機器3周りの構成について、
図2及び
図3を参照して説明する。
図2は、シートクッション1に設けられた骨盤運動機器3及びダンパ5を示す平面図、
図3は、その側面図である。
骨盤運動機器3は、略円錐状に形成されており、平面部3aと曲面部3bとから構成されており、
図2に示すように、平面部3aが着座者Hを支持する側に位置するように配設されており、平面視において略円形状である。
このように、骨盤運動機器3が略円錐状に形成されていることで、着座者Hの臀部に接触する面を広く確保しつつ、シートクッション1の内部の占有スペースを小さく抑えることが可能である。
【0025】
骨盤運動機器3の上面には、着座者Hとの接触面を大きくして、着座者Hを安定支持するための2つの溝3cが形成されている。この2つの溝3cは、平面視において略楕円形状に形成されており、着座者Hの骨盤の下端部に沿うように、車両用シートSの幅方向に長尺側が向けられており、車両用シートSの幅方向に並んで形成されている。
【0026】
骨盤運動機器3は、支点部4sを基準として、水平面内における前後方向、左右方向を含む360度全方向において下方に傾動(揺動)可能に支持されている。さらに、骨盤運動機器3は、水平面内において、支点部4sを中心として、時計回り及び反時計回りに回動(揺動)可能にアクチュエータ4Aに支持されている。
【0027】
つまり、骨盤運動機器3は、前後方向、左右方向を含む360度全方向に傾動することで、着座者Hの腰部に対し、鉛直面内における支点部4sを中心とした回動運動であるスイング運動をさせる。さらに、骨盤運動機器3は、時計回り及び反時計回りに回動することで、着座者Hの腰部に対し、水平面内における支点部4sを通る鉛直軸を中心とした回動運動であるツイスト運動をさせる。
【0028】
骨盤運動機器3がシートクッション1に揺動可能に配設されていることで、アクチュエータ4Aを動作させなくても、着座者Hは、自発的に腰を動かすことにより、座りながら体幹を鍛える運動を行うことができる。着座者Hは、車両を運転しながら、あまり意識することなく腹横筋を強化することができる。
【0029】
シートクッション1には、骨盤運動機器3に付勢力を付加して、骨盤運動機器3の傾動方向の揺動速度を減衰させる部材として、エアシリンダーであり付勢部材に相当するダンパ5が配設されている。
具体的には、シートクッション1におけるシート幅方向両側には、シートフレームFを構成するサイドフレーム1dが設けられている。このサイドフレーム1dに4個のダンパ5が取り付けられている。
ダンパ5は、
図2及び
図3に示すように、支点部4sよりも上方、且つダンパ5の前側がシートフレームFを構成するパンフレーム1cの後ろ側とシート幅方向に交差するように配設されている。また、ダンパ5は、骨盤運動機器3の上下の中央部分から、四方に放射字状に延出しており、その延出先でサイドフレーム1dに固定されている。
【0030】
ダンパ5から骨盤運動機器3に加わる付勢力によって、骨盤運動機器3の傾動方向の揺動速度を遅くすることができる。このため、骨盤運動機器3上に着座する着座者Hのバランスを急激に崩すことを防止して、骨盤運動機器3の揺動速度を着座者Hの運動に適したものにできる。
なお、ダンパ5の数は4個であると、四方から骨盤運動機器3にバランス良く付勢力を加えることができるため好適であるが、更に複数個設けるようにしてもよい。また、骨盤運動機器3に付勢力を付加する付勢部材としては、ダンパ5の代わりにスプリングを用いてもよい。
【0031】
骨盤運動機器3は、アクチュエータ4Aの支点部4sを支点として揺動可能にアクチュエータ4Aに支持されている。この支点部4sは、骨盤運動機器3における着座者Hを支持する上面側の反対側である下側に配置されている。具体的には、骨盤運動機器3において、着座者Hの臀部を支持する側にある平面部3aがある側に対して反対側の曲面部3bの下端側が、支点部4sを中心に骨盤運動機器3が揺動可能となるように支持されている。
そして、アクチュエータ4Aは、後述する制御装置10(
図4参照)による制御によって駆動し、骨盤運動機器3に作用し、骨盤運動機器3を揺動させる作用部材としての機能を有する。
【0032】
<制御構成について>
次に、制御装置10に関する制御構成について
図4及び
図5を主に参照して説明する。
図4は、制御装置10に関わる部品の構成図、
図5は、制御装置10の機能図である。
車両用シートSは、アクチュエータ4Aが骨盤運動機器3を揺動させることによって、着座者Hの支持状態を敢えて不安定にするように、アクチュエータ4Aを制御する作用部材制御装置としての制御装置10を備える。ここで、骨盤運動機器3を揺動させて不安定な支持状態とするのは、着座者Hがバランスを取ろうと動くことによって、その体幹を鍛えることができるためである。
【0033】
制御装置10は、ROM10a、RAM10b及びCPU10cから構成されて、バッテリ等の電源Pから電力を供給されて動作する。
また、車両用シートSは、4個のダンパ5の変位を検出する検出部としての変位センサ6を備える。制御装置10は、変位センサ6から発信される信号を受信して、4個のダンパ5の変位、つまり、骨盤運動機器3の揺動状態を検出する。
また、車両用シートSは、シートクッション1における着座者Hの重心位置を測定するためのシートウェイトセンサ11を備える。例えば、シートウェイトセンサ11は、車両用シートSの下部に設けられる左右のスライド用レールの前方と後方にそれぞれ設けることとする。これにより、4つのシートウェイトセンサ11により計測される荷重から、車両用シートSの着座者Hの重心位置を測定することができる。
制御装置10は、記録部としてのROM10aに記録された着座者Hの運動状態に係るプログラムに基づいて、骨盤運動機器3の揺動状態に応じて、アクチュエータ4Aを介して骨盤運動機器3を揺動させる。
【0034】
具体的には、制御装置10は、着座者Hの重心位置を算出する演算部10dと、着座者Hに加わる負荷が適当か否かを判断する負荷判断部10eと、を有する。
演算部10dは、変位センサ6から得られる各ダンパ5の変位量に係る信号から着座者Hの重心位置を算出するものである。
負荷判断部10eは、演算部10dが算出した重心位置とROM10aに記録されたプログラムを処理することにより、着座者Hの重心位置の移動による運動によって着座者Hに加わる負荷が適当か否かを判断する。
【0035】
制御装置10は、アクチュエータ4Aを制御することによって骨盤運動機器3を揺動させた後に、演算部10dが算出した重心の移動量や移動速度に係る移動状態に応じて、アクチュエータ4Aから骨盤運動機器3に加える荷重を変化させる。具体的には、負荷判断部10eが骨盤運動機器3の元の状態への復元するのが早いと判断したときに、制御装置10は、骨盤運動機器3を揺動させた後に着座者Hが骨盤運動機器3を復元させる際に抗力となる荷重を大きくする。詳細には、制御装置10は、骨盤運動機器3を揺動させる際にアクチュエータ4Aから骨盤運動機器3に加える荷重を大きくするようにアクチュエータ4Aを制御する。
【0036】
このようにして、負荷判断部10eが着座者Hに加わっている負荷が高い又は低いと判断したときに、制御装置10は、負荷を調整して適当な負荷となるように、骨盤運動機器3の揺動を調整することができる。つまり、着座者Hの骨盤運動機器3に基づいてスイング運動及びツイスト運動に対する慣れに対して、骨盤運動機器3から着座者Hに加わる負荷を効果的に調整することができる。
【0037】
また、制御装置10は、支持部材制御装置にも相当し、エアセル8を膨張・収縮させるためのアクチュエータ4Bも制御する。エアセル8についての詳細については後述する。
制御装置10は、エアセル8の制御装置10による制御に関わる部材として、アクセルポジションセンサ7、加速度センサ9及びアクチュエータ4Bに接続されており、エアセル8の膨張・収縮の状態を調整する調整部10fを有する。
【0038】
<エアセルについて>
次に、エアセル8の制御について
図4及び
図5に加えて、
図6を参照して説明する。
図6は、車両の各状態毎の検知対象、骨盤の運動、及びシートバック2の支持状態を示す図である。
上記のように、骨盤運動機器3の揺動に伴って、着座者Hの臀部が揺動することになる。しかし、着座者Hが車両の運転に集中するために、着座者Hの臀部の揺動を制限する必要があることが考えられる。このように、着座者Hの臀部の揺動を制限する手段として、シートバック2側から膨出して着座者Hの腰部を支持するエアセル8が設けられている。
エアセル8は、着座者Hの腰部にあてがわれることで、腰部を介して臀部の揺動を抑制するものであり、コンプレッサ等からなるアクチュエータ4Bによって膨出可能にシートバック2に配設されている。
そして、制御装置10は、アクチュエータ4Bを制御してエアセル8の膨出量及び収縮量を調整する調整部10fを有する。
【0039】
車両の運転中において、着座者Hの脊椎を構成するもののうち、胸椎周り及び仙骨周りの後方からの支持が必要なことが、車両運転時の車両用シートSにおける耐圧分布から認められている。そして、腰椎周りに関しては必ずしも後方からの支持が必要ではない。そこで、少なくとも停車時及び巡航時においては、エアセル8によって腰椎周りの支持をせずに、着座者Hの骨盤を揺動させることによって、体幹のうち腹横筋を鍛えることが可能となる。
このように、制御装置10の調整部10fは、アクチュエータ4Bを制御することにより、車両の走行状態に応じて、エアセル8が膨出(伸長)する位置を変え、エアセル8が着座者Hを支持する範囲を変える。このため、制御装置10は、体幹を鍛える運動を車両の状態に応じて適切に着座者Hに行わせることができる。
次に、調整部10fを有する制御装置10による、各車両の状態におけるアクチュエータ4Bの制御について説明する。
【0040】
(停車時におけるエアセルの制御)
車両が停車しているときには、着座者Hが運動したとしても運転に関わることがないため、骨盤運動機器3による揺動を制限する必要がない。
停車状態においては、制御装置10の調整部10fによるアクチュエータ4Bの制御によって、エアセル8は、アクチュエータ4Bに密着して収縮した状態となっており、着座者Hの腰部の後方に大きな空間が形成されている。
このとき、着座者Hの腰部にエアセル8が触れず、腰部の支持をしないことで、着座者Hは、骨盤運動機器3上でスイング運動及びツイスト運動をすることが可能となる。
【0041】
制御装置10の調整部10fは、車両が停車していないときに、エアセル8の収縮状態を解除、つまりエアセル8をシート前方に膨出させるようにアクチュエータ4Bを制御する。具体的には、制御装置10は、アクセルポジションセンサ7からの信号によってアクセルペダルがオンになったことを検出したときに、車両が停車していないと判断して調整部10fを上記のように機能させる。
【0042】
(加速・減速時におけるエアセルの制御)
車両が加速又は減速しているときには、安定した運転を可能にするため、骨盤運動機器3による揺動を制限する。
加速又は減速している状態においては、制御装置10の調整部10fによるアクチュエータ4Bの制御によって、エアセル8は、アクチュエータ4Bから膨出した状態となっており、着座者Hの腰部にあてがわれている。
このとき、着座者Hの腰部にエアセル8があてがわれることで、着座者Hは、骨盤運動機器3上でのスイング運動及びツイスト運動の双方が制限されることとなる。
【0043】
制御装置10の調整部10fは、加速度センサ9からの信号によって、所定の速度以上に車両が加速し、又は減速していると判断したときに、エアセル8をシート前方に膨出(伸長)させるように、アクチュエータ4Bを制御する。
【0044】
(巡航時におけるエアセルの制御)
車両が巡航(略一定の速度で走行)しているときには、安定した運転を可能にしつつ、着座者Hの運動を可能とするため、骨盤運動機器3による揺動を一定程度制限する。
巡航している状態においては、制御装置10の調整部10fによるアクチュエータ4Bの制御によって、エアセル8は、加速・減速時の膨出量よりも小さい量でアクチュエータ4Bから膨出した状態となっている。この状態におけるエアセル8の位置は、着座者Hがツイスト方向に運動しようとしたときにエアセル8に当たる位置であり、停車時のエアセル8の位置と加速又は減速時のエアセル8の位置との間の位置にある。
つまり、着座者Hがツイスト方向に運動しようとしたときにエアセル8に当たることで、着座者Hは、骨盤運動機器3上でのツイスト運動が制限されて、スイング運動のみを行うことが可能となる。
【0045】
制御装置10の調整部10fは、加速度センサ9及び変位センサ6からの信号によって、所定の速度変化の範囲内で車両が走行していると判断したときに、エアセル8をシート前方に所定量だけ膨出(伸長)させるように、アクチュエータ4Bを制御する。
【0046】
また、制御装置10は、上記の停車時、加速又は減速時、及び巡航時に応じて、アクチュエータ4Aを制御して骨盤運動機器3を揺動させるようにしてもよい。
具体的には、制御装置10は、車両の停車時に、骨盤運動機器3が大きく揺動して、着座者Hにツイスト運動及びスイング運動をさせるように、アクチュエータ4Aを制御する。また、制御装置10は、車両の加速又は減速時には、骨盤運動機器3を揺動させず、着座者Hにツイスト運動及びスイング運動をさせないように、アクチュエータ4Aを制御する。さらに、制御装置10は、車両の巡航時に、骨盤運動機器3が小さく揺動して、着座者Hにスイング運動をさせるように、アクチュエータ4Aを制御する。
このようにすることで、車両の走行状態に合わせて着座者Hは自ら腰部を動かすだけでなく、骨盤運動機器3により揺動状態を変化させて、自動的に運動を行うことが可能となる。
【0047】
なお、骨盤運動機器3の揺動を制限する不図示のロック機構を設けて、着座者Hが運動を要しないときは、骨盤運動機器3をシートクッション1に確実に固定できるようにしてもよい。また、骨盤運動機器3をシートクッション1から着脱可能としてもよい。このようにすれば、体幹を鍛えずに、体を休めたいとき等には、骨盤運動機器3を取り外して、着座者Hの気分に応じた快適な着座が可能となる。
【0048】
ここで、
図7を参照しながら、制御装置10による骨盤運動機器3の動作の制御フローについて説明する。
図7に示されるように、制御装置10は、シートウェイトセンサ11により測定した着座者Hの重心位置が所定範囲にある場合(S1:Yes)、すなわち着座者Hの着座姿勢が正常である場合には、S2の処理に進む。
【0049】
S2において、制御装置10は、車両の加速度が0である場合(S2:Yes)、すなわち車両が加速していない場合には、S3の処理に進む。
【0050】
S3において、制御装置10は、車両の速度が0である場合(S3:Yes)、すなわち車両が停車している場合には、骨盤運動機器3をツイストモードで動作させる(S4)。
なお、上記のツイストモードとは、
図6における「ツイスト・スイング」の動作を実行するモードである。
【0051】
そして、制御装置10は、動作解除の条件が満たされない場合には(S5:No)、ツイストモードでの動作を継続し、動作解除の条件が満たされる場合には(S5:Yes)、骨盤運動機器3の動作を停止させる(S6)。
なお、上記の動作解除の条件とは、S1、S2、S3のいずれかの条件がNoと判定されることである。
【0052】
また、S1において、シートウェイトセンサ11により測定した着座者Hの重心位置が所定範囲にない場合には(S1:No)、制御装置10は骨盤運動機器3の動作を停止させる(S6)。なお、骨盤運動機器3の動作が既に停止した状態である場合には、その状態を維持することとする。
【0053】
また、S2において、車両の加速度が0でない場合(S2:No)、すなわち車両が加速している場合には、制御装置10は骨盤運動機器3の動作を停止させる(S6)。
【0054】
また、S3において、車両の速度が0でない場合(S3:No)、すなわち車両が一定速度で巡行している場合には、制御装置10は、骨盤運動機器3をスイングモードで動作させる(S7)。
なお、上記のスイングモードとは、
図6における「スイング」の動作を実行するモードである。
【0055】
そして、制御装置10は、動作解除の条件が満たされない場合には(S8:No)、ツイストモードでの動作を継続し、動作解除の条件が満たされる場合には(S8:Yes)、骨盤運動機器3の動作を停止させる(S6)。
なお、上記の動作解除の条件とは、S1、S2、S3のいずれかの条件がNoと判定されることである。
【0056】
そして、制御装置10は、骨盤運動機器3の処理を終了しない場合(S9:No)、すなわち骨盤運動機器3によるトレーニング処理を継続する場合には、S1に戻り、処理を終了する場合(S9:Yes)には、処理を終える。
【0057】
<その他の構成について>
上記実施形態においては、骨盤運動機器3を備えるものが車両用シートSである例を説明したが、船舶、航空機、産業機械等の乗物用シートであってもよく、さらには、事務椅子等を含んだシートがこれを備えるようにしてもよい。
【0058】
上記実施形態において、骨盤運動機器3は、支点部4sを基準として、360度全方向に向かって下方に傾動可能に、且つ水平面内において、支点部4sを基準として、時計回り及び反時計回りに回動可能にアクチュエータ4Aに支持されているものとして説明した。
このような構成によれば、着座者Hの体幹を構成する各種筋肉を満遍なく運動させるのに好適であるが、本発明に係る揺動部材は、このような構成に限定されない。例えば、一方向と一方向の逆方向とにのみ、つまり仮想的な平面内において傾動可能にアクチュエータ4Aに支持させるようにしてもよい。
【0059】
さらに、揺動部材は、傾動機能のみを保持して、水平面内における時計回り及び反時計回りの回動機能を排除してもよく、また、時計回り及び反時計回りの回動機能のみ保持して、傾動機能を排除するようにしてもよい。
このように、揺動部材の揺動を制限することで、着座者Hの支持の安定性を高めることができる。
【0060】
また、骨盤運動機器3の揺動の支点である支点部4sは、アクチュエータ4Aに設けられているものとして説明したが、このような構成に限定されず、パンフレーム1cその他のシートクッション1を構成する部材のいずれかの部材の一部を支点部としてもよい。
【0061】
また、上記実施形態に係る車両用シートSにおいては、骨盤運動機器3を揺動させるアクチュエータ4A及び制御装置10を備えるものとして説明した。車両用シートSは、アクチュエータ4A及び制御装置10を備えることで、着座者Hの骨盤部分に基づく姿勢を意図的に崩して、その姿勢を正すようにする体幹の運動を引き起こせる点で好適である。しかしながら、本発明は、アクチュエータ4A及び制御装置10を備えないものとして、着座者Hの自発的な動作によって骨盤運動機器3を揺動させてもよい。このようにすれば、アクチュエータ4A及び制御装置10を備えない分、コストを低減することができる。
【0062】
また、上記実施形態に係る車両用シートSにおいては、骨盤運動機器3がシートクッション1に配設されている構成について説明したが、本発明はこのような構成に限定されず、骨盤運動機器3がシートバック2に配設されている構成であってもよい。具体的には、骨盤運動機器3が、シートバック2の前面側に配設されて、着座者Hの腰部を後ろ側から揺動可能に支持する構成であってもよい。
【0063】
なお、車両用シートSは、エアセル8及びアクチュエータ4Bを備えることで、各運転状態に応じて、着座者Hの支持状態を変更できる。しかしながら、運転状態にそもそも成り得ず、さらに着座者Hの支持状態の調整が不要である場合、例えば、事務椅子等のシートにおいては、エアセル8及びアクチュエータ4Bを備えるものでなくてもよい。
なお、骨盤運動機器3は、略円錐状に形成されたものであるが、略球状に形成されていてもよい。
【0064】
なお、着座者Hの腰部を支持して伸長する部材は、エアセル8に限定されず、板状の支持部材を有して前後方向に動作可能なランバーサポート等、前後方向に伸縮して、伸長時に着座者Hの腰部に当接可能に構成されるものであればよい。
【0065】
(車両用シートSの変形例)
次に、
図8乃至
図16を参照しながら、車両用シートSの変形例について説明する。なお、車両用シートSの変形例においては、上記の実施形態とシートクッション21及び骨盤運動機器23の構成において相違するため、以下ではシートクッション21と骨盤運動機器23を中心に説明する。
【0066】
図8に示されるように、車両用シートSのシートクッション21の上部に骨盤運動機器23が取り付けられる。ここで着座者Hは骨盤運動機器23の上に着座することとなる。すなわち、骨盤運動機器23の上に着座者HのヒップポイントHPが位置するようになっている。
【0067】
そして、
図8に示されるように、骨盤運動機器23のサイズは、ヒップポイントHPから前端までの距離がL1、後端までの距離がL2、右端までの距離がW1、左端までの距離がW2となる。なお、上記のL1、L2、W1、W2は所定規格の3次元人体模型に基づいて定めることとしてよい。具体的には、一例としてL1は184mm、L2は130mm、W1は205mm、W2は205mmとする。
また、骨盤運動機器23の左右の端部は、シートクッション21の側部21Aと上下方向にオーバーラップするように位置している。
【0068】
図9には、シートクッション21の骨格をなすシートクッションフレーム30を示している。
図10に示されるように、シートクッションフレーム30は、シート幅方向左右に配される一対のサイドフレーム31と、パイプフレーム33と、第1パンフレーム32と、第2パンフレーム34を備える。
【0069】
サイドフレーム31は、シート前後方向に延出する板状の金属部材である。左右のサイドフレーム31の前端には、第1パンフレーム32を架設し、左右のサイドフレーム31の後端には、パイプフレーム33を取り付ける。これにより、シートクッションフレーム30は上面視において略矩形の枠状体をなす。
【0070】
そして、第1パンフレーム32の後部32Aと、パイプフレーム33に対して、第2パンフレーム34を架設するように取り付ける。
第2パンフレーム34は、シート前後方向の中央部が下方に沈み込むように形成された金属製の板状体である。
そして、
図9に示されるように、第2パンフレーム34は、後部取付部34A、傾斜部34B、骨盤運動機器取付部34C、傾斜部34D、前部取付部34Eを有する。
【0071】
後部取付部34Aは、パイプフレーム33と当接し、パイプフレーム33に取り付けられる。後部取付部34Aには、取付用孔36が形成されており、取付用孔36にビス等の締結具を通してパイプフレーム33と後部取付部34Aとを固定する。
なお、後部取付部34Aは、パイプフレーム33の上方に位置する。
【0072】
傾斜部34Bは、後部取付部34Aと骨盤運動機器取付部34Cとの接続部である。ここで、傾斜部34Bは、後方から前方に向けて、下方に傾斜している。
【0073】
骨盤運動機器取付部34Cは、骨盤運動機器23を取り付ける部分である。骨盤運動機器取付部34Cは、第1パンフレーム32及びパイプフレーム33よりも下方に位置する。これにより、骨盤運動機器23の設置スペースを広く取ることができる。
また、骨盤運動機器取付部34Cには、左右に取付用孔35が形成されており、この取付用孔35にビス等の締結具を通して骨盤運動機器23と骨盤運動機器取付部34Cとを固定する。
【0074】
傾斜部34Dは、骨盤運動機器取付部34Cと前部取付部34Eとの接続部である。ここで、傾斜部34Dは、後方から前方に向けて、上方に傾斜している。
【0075】
前部取付部34Eは、第1パンフレーム32の後部32Aと当接し、第1パンフレーム32に取り付けられる。前部取付部34Eには、取付用孔37が形成されており、取付用孔37にビス等の締結具を通して第1パンフレーム32と前部取付部34Eとを固定する。
なお、前部取付部34Eは、第1パンフレーム32の後部32Aの上方に位置する。
【0076】
図10に示されるように、車両用シートSのシートクッション21は、左右の側部21Aの間に位置する中央部に開口部21Bが形成されている。
開口部21Bからは第2パンフレーム34の骨盤運動機器取付部34Cが露出し、骨盤運動機器取付部34Cに骨盤運動機器23が取り付けられる。
また、開口部21Bの前端には開口カバー部21Cが取り付けられており、骨盤運動機器23を取り外した際には、開口カバー部21Cにより開口部21Bを被覆することができる。
【0077】
次に、
図11乃至
図15を参照しながら、骨盤運動機器23の構成について説明する。
図11に示されるように、骨盤運動機器23は上面が略五角形状に構成される。
図12に示されるように、骨盤運動機器23は、表皮40、上部クッション材41、下部クッション材42、第1支持部43、第2支持部44、偏心軸部45、基部46、及びモータ47を主な構成要素とする。
【0078】
骨盤運動機器23の上部に設けられる座部は、表皮40、上部クッション材41、下部クッション材42、第1支持部43により構成される。
具体的には、
図12及び
図13に示されるように、第1支持部43の上に下部クッション材42を配置し、下部クッション材42の上に上部クッション材41を配置して、それらを表皮40により被覆することにより上記の座部を構成する。
【0079】
第1支持部43は、例えば樹脂製のプレートであり、骨盤運動機器23の上面の形状と略同形状に形成される。
図11及び
図12に示されるように、第1支持部43の中央部には凹部43Aが左右に二箇所形成される。この凹部43Aは、着座者Hの坐骨結節部に対向する部分である。
【0080】
下部クッション材42は、上部クッション材41に比べて硬めのクッション材である。下部クッション材42において、凹部43Aと対向する位置には穴が形成されており、この穴には上部クッション材41の下方突出部41Aが入り込んでいる。
【0081】
上部クッション材41は、下部クッション材42の上に配置される、下部クッション材42よりも柔らかいクッション材である。上述したように上部クッション材41において凹部43Aと対向する部分には下方に突出した下方突出部41Aが形成されており、下方突出部41Aが下部クッション材42に形成された穴を通じて凹部43Aに当接している。
このように上部クッション材41に下方突出部41Aを設けたことにより、坐骨結節部のクッション性を高めることができ、着座感を向上できる。
【0082】
表皮40は、例えばクロスや革である。表皮40は、シートクッション21の表皮と同材料を使うこととしてもよいし、異材料を使うこととしてもよい。
【0083】
次に、骨盤運動機器23の下部の構成について説明する。骨盤運動機器23の下部は、主に基部46、モータ47、偏心軸部45、第2支持部44を有する。
【0084】
図12及び
図15に示されるように、基部46は、ベースプレート部46A、第1端部保持部46B、第2端部保持部46C、ボス48及びスクリュー軸49を有する。
ベースプレート部46Aには、モータ47が取り付けられ、モータ47の駆動に応じて、スクリュー軸49が回転するように動力の伝達が行われる。
また、基部46には、複数のボス48が左右に形成されている。ボス48は、第2パンフレーム34の取付用孔35と対向する位置に配置され、ボス48の中心の開口を通じてビス等の締結具を用いて、基部46と第2パンフレーム34とが固定される。
【0085】
図12に示されるように、基部46の上には、第2支持部44と偏心軸部45が配置される。
図12及び
図14に示されるように、偏心軸部45は、偏心軸部45は、構造物の重心(質量の中心)が剛心(剛性の中心)から離れている。具体的には、偏心軸部45は、円柱形の第1端部45A、スクリュー軸49と係合する歯車45B、円柱形の第2端部45C、及び第1端部45A、歯車45B及び第2端部45Cを貫く偏心軸45Dを有する。
第1端部45Aは、基部46の第1端部保持部46Bにより保持され、第2端部45Cは基部46の第2端部保持部46Cにより保持される。
【0086】
また、
図12及び
図14に示されるように、第2支持部44は、第1支持部43を支持するプレート部44Aと、プレート部44Aの下面側に形成された偏心軸保持部44B及び端部保持部44Cを備える。
プレート部44Aは、僅かに湾曲し、第1支持部43の左右の凹部43Aをカバーする程度のサイズに構成される。
偏心軸保持部44Bは、プレート部44Aの中央部分から下方に突出し、偏心軸部45の偏心軸45Dが貫通する貫通孔を有する。
そして、第2支持部44の端部保持部44Cには、偏心軸部45の第1端部45Aが保持される。
【0087】
モータ47の駆動によりスクリュー軸49が回動すると、スクリュー軸49の回動に応じて歯車45Bが回り、偏心軸45Dが回転する。上述したように、偏心軸部45は、構造物の重心(質量の中心)が剛心(剛性の中心)から離れている。そのため、偏心軸45Dの回転に応じて、偏心軸45Dに連結された第2支持部44が偏心運動(ツイスト、スイング)を行う。
また、第2支持部44が上記の偏心運動を行うことで、第2支持部44に支持される骨盤運動機器23の座部(表皮40、上部クッション材41、下部クッション材42、第1支持部43)に偏心運動を行わせることができる。
【0088】
また、骨盤運動機器23の上面の形状は
図8に示した例に限定されない。例えば、
図16に示す骨盤運動機器123のように、上面のうち、特に前方側の形状を円弧状に構成してもよい。このように構成することで、骨盤運動機器123の動作を停止した場合に、骨盤運動機器123の向きによらず前部の形状が変わらないようにすることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 シートクッション(座部)
1a クッションパッド
1b 表皮
1c パンフレーム
1d サイドフレーム
2 シートバック(背凭れ)
2a クッションパッド
2b 表皮
3 骨盤運動機器(揺動部材)
3a 平面部
3b 曲面部
3c 溝
4A アクチュエータ(作用部材)
4B アクチュエータ
4s 支点部
5 ダンパ(付勢部材)
6 変位センサ(検出部)
7 アクセルポジションセンサ
8 エアセル(可動支持部材、押圧部材)
9 加速度センサ
10 制御装置(作用部材制御装置、支持部材制御装置)
10a ROM(記録部)
10b RAM
10c CPU
10d 演算部
10e 負荷判断部
10f 調整部
11 シートウェイトセンサ
21 シートクッション
21A 側部
21B 開口部
21C 開口カバー部
23 骨盤運動機器(揺動部材)
30 シートクッションフレーム
31 サイドフレーム
32 第1パンフレーム
32A 後部
33 パイプフレーム
34 第2パンフレーム
34A 後部取付部
34B 傾斜部
34C 骨盤運動機器取付部
34D 傾斜部
34E 前部取付部
35 取付用孔
36 取付用孔
37 取付用孔
40 表皮
41 上部クッション材
41A 下方突出部
42 下部クッション材
43 第1支持部
43A 凹部
44 第2支持部
44A プレート部
44B 偏心軸保持部
44C 端部保持部
45 偏心軸部
45A 第1端部
45B 歯車
45C 第2端部
45D 偏心軸
46 基部
46A ベースプレート部
46B 第1端部保持部
46C 第2端部保持部
47 モータ
48 ボス
49 スクリュー軸
123 骨盤運動機器(揺動部材)
F シートフレーム
H 着座者
P 電源
S 車両用シート(シート)
HP ヒップポイント