(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20220126BHJP
A61Q 3/02 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q3/02
(21)【出願番号】P 2018557645
(86)(22)【出願日】2017-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2017043458
(87)【国際公開番号】W WO2018116798
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2016245293
(32)【優先日】2016-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 襟香
(72)【発明者】
【氏名】白川 有悟
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-108309(JP,A)
【文献】特開2000-142788(JP,A)
【文献】特開2016-065000(JP,A)
【文献】特開平10-036226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A45D 8/00- 8/40
A45D 24/00-31/00
A45D 42/00-97/00
C08F 2/00- 2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)~(C)成分を
含み、前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対し、45~155質量部である、爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物:
(A)成分:(メタ)アクリロイル基を有する化合物;
(B)成分:光開始剤;
(C)成分:平均粒子径3~21μmの(メタ)アクリルポリマー粒子。
【請求項2】
前記(C)成分の(メタ)アクリルポリマー粒子の平均粒子径が5~14μmである、請求項1に記載の爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が、(メタ)アクリレートオリゴマーおよび/または(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項1または2に記載の爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)成分が、前記(メタ)アクリレートモノマーを含み、
該(メタ)アクリレートモノマーが多環式シクロアルキル基を含む、請求項3に記載の爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)成分が、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)成分100質量部に対し、
前記(C)成分
の含有量が、100~130質量部である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(C)成分が、ポリメチルメタクリレート粒子である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項9】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物を爪または人工爪上に塗布して塗膜を形成後、エネルギー線を照射して前記塗膜を硬化することを含む、爪または人工爪の被覆方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爪の被覆に適した光硬化性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ネイル分野では光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーを含む光硬化性樹脂組成物(UVネイルジェル)が用いられている。これらUVネイルジェルは、刷毛等を用いて樹脂を爪に塗布した後、光を照射して硬化させることにより爪を装飾して化粧する用途で使用される。これにより、艶が美しく、爪との密着性が高い爪化粧膜を得ることができる。また近年ではUVネイルジェルによって爪にアートを施すなどしてファッションを楽しむ女性が増えており、デザインの一つとして、艶がないマットコートが形成可能な(光沢が抑制された)UVネイルジェルが求められている。そして、このようなマットコートを実現する手法の一つとして、光硬化性樹脂組成物に充填剤を添加することによって硬化膜表面に凹凸を作り、艶をなくすという手法が挙げられる。
【0003】
特開2010-075366号公報(米国特許出願公開第2010/074855号明細書に対応)にはラジカル重合性不飽和二重結合と抗菌性基を有する化合物と、充填剤としての抗菌性フィラーおよびメタクリル酸エステル系ポリマーと、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物と、重合開始材と、を含む抗菌性人工爪組成物が開示されている。
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、上記文献に開示された抗菌性人工爪組成物によれば、得られる硬化物に艶があり、マットコートを施すことができなかった。またマットコートを形成するために充填剤等を樹脂組成物に混合すると、当該樹脂組成物が白く濁ってしまったり、粘度が高くなってしまい作業性が低下したりする等の問題があり、マットコートの形成が可能なUVネイルジェルを実現することは困難であった。
【0005】
本発明は、上記の状況に鑑みてされたものであり、透明性かつ作業性に優れたマットコート形成可能な爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0006】
本発明者は、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、以下に説明する特定の(A)~(C)成分を含む爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物によって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、上記諸目的は、以下の各形態によって達成できる。
【0007】
本発明の要旨を以下に説明する。
【0008】
本発明の第一の実施態様は、下記の(A)~(C)成分を含む、爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物である:
(A)成分:(メタ)アクリロイル基を有する化合物;
(B)成分:光開始剤;
(C)成分:平均粒子径3~21μmの(メタ)アクリルポリマー粒子。
【0009】
本発明の第二の実施態様は、前記(C)成分の(メタ)アクリルポリマー粒子の平均粒子径が5~14μmである、第一の実施態様に記載の爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物である。
【0010】
本発明の第三の実施態様は、前記(A)成分が、(メタ)アクリレートオリゴマーおよび/または(メタ)アクリレートモノマーを含む、第一の実施態様または第二の実施態様のいずれかに記載の爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物である。
【0011】
本発明の第四の実施態様は、前記(A)成分が、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、第一の実施態様から第三の実施態様のいずれかに記載の爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物である。
【0012】
本発明の第五の実施態様は、前記(A)成分100質量部に対し、(C)成分が45~155質量部である、第一の実施態様から第四の実施態様のいずれかに記載の爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物である。
【0013】
本発明の第六の実施態様は、前記(C)成分が、ポリメチルメタクリレート粒子である、第一の実施態様から第五の実施態様のいずれかに記載の爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物である。
【0014】
本発明の第七の実施態様は、第一の実施態様から第六の実施態様のいずれかに記載の爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物の硬化物である。
【0015】
本発明の第八の実施態様は、第一の実施態様から第七の実施態様のいずれかに記載の爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物を爪または人工爪上に塗布して塗膜を形成後、エネルギー線を照射して前記塗膜を硬化することを含む、爪または人工爪の被覆方法である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を説明する。本発明の一形態に係る爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物(以下、単に「光硬化性樹脂組成物」とも称する)は、下記の(A)~(C)成分を含む:
(A)成分:(メタ)アクリロイル基を有する化合物;
(B)成分:光開始剤;
(C)成分:平均粒子径3~21μmの(メタ)アクリルポリマー粒子。
【0017】
上記構成を有する光硬化性樹脂組成物は、良好な透明性を有し、また、比較的低い粘度を有するため、作業性にも優れる。さらに、当該光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物は、マット性(低い光沢性)を有する。
【0018】
このメカニズムの詳細は不明であるが、(C)成分として含まれる粒子の材料種((メタ)アクリルポリマー)および平均粒子径(平均粒子径3~21μm)が光硬化性樹脂組成物の透明性や作業性(粘度)、硬化物のマット性(低い光沢性)に影響していると推測される。特に、(C)成分として含まれる粒子の平均粒子径が3μm未満であると、硬化物の光沢性が高くなってしまい、十分なマット性が得られない(艶消し効果が得られない)。また、平均粒子径が21μmを超えると、均一なマットコートを形成することができない。これに対し、(C)成分として含まれる粒子の平均粒子径が3~21μmであると、優れたマット性(低い光沢性)を有する均一なマットコートを形成することができる。また、(C)成分の材料種を(メタ)アクリルポリマーとすることにより、優れた透明性に加え、塗布に適した粘度を有する(作業性に優れる)光硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0019】
したがって、本発明によれば、透明性および作業性に優れ、かつマットコートの形成が可能な光硬化性樹脂組成物が提供される。さらに本発明によれば、400nmといった長波長の光源で硬化させた場合であっても上記と同様の効果を得ることができる。したがって、本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、マットコートの形成が可能なUVネイルジェルの用途においても好適に使用される。なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、当該メカニズムの正誤が本発明の技術的範囲に影響することはない。
【0020】
以下、本発明に係る光硬化性樹脂組成物について、詳細を説明する。なお、本明細書において、「X~Y」は、その前後に記載される数値(XおよびY)を下限値および上限値として含む意味で使用し、「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は、室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行う。
【0021】
[爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物]
<(A)成分>
本発明に係る光硬化性樹脂組成物に含まれる(A)成分は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。なお、(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、(メタ)アクリロイル基を(メタ)アクリロイルオキシ基の形態として有していてもよい。本明細書において、「(メタ)アクリロイル」との語は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方を包含する。よって、例えば、「(メタ)アクリロイル基」との語は、アクリロイル基(H2C=CH-C(=O)-)およびメタクリロイル基(H2C=C(CH3)-C(=O)-)の双方を包含する。また、同様に、「(メタ)アクリル」との語は、アクリルおよびメタクリルの双方を包含する。よって、例えば、「(メタ)アクリル酸」との語は、アクリル酸およびメタクリル酸の双方を包含する。
【0022】
(A)成分は、(メタ)アクリロイル基を1個以上有する化合物であれば、特に制限されず、カルボキシ基、リン酸基、水酸基等、さらにその他の官能基を有していてもよい。
【0023】
(A)成分としての(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、良好な硬化速度および作業性(塗布時における適度な流動性)を得るという観点から、(メタ)アクリロイル基を1個以上有するオリゴマーまたはモノマーであると好ましい。なお、本明細書中、「オリゴマー」とは、モノマー単位((メタ)アクリレートモノマー以外のモノマー単位を含む)が2~数十程度繰り返された重合体をいう。好ましくは、「オリゴマー」は、重量平均分子量が、1,000以上、100,000以下であるものであると好ましい。
【0024】
(A)成分としてのオリゴマーの重量平均分子量は、好ましくは1,000~100,000であり、より好ましくは2,000~30,000であり、特に好ましくは3,000~20,000である。かような範囲であれば、低い粘度を保持しつつ、硬化物の耐久性を良好にすることができる。なお、本明細書において、重量平均分子量は、標準物質としてポリスチレンを用いたゲルろ過クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)で測定された値を採用する。
【0025】
(A)成分は、25℃雰囲気下で液体(液状)である(すなわち、流動性を有する)ことが好ましい。具体的には、塗布する際の作業性を良好にするために、EHD型回転粘度計を用いて測定される25℃における粘度が50Pa・s以下であると好ましく、40Pa・s以下であるとより好ましい(下限:1mPa・s)。
【0026】
また、(A)成分は、以下で詳説する(B)成分との相溶性が良好であるものが好ましく用いられる。
【0027】
良好な硬化速度、高い透明性を得るという観点から、本発明における(A)成分としては、(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートモノマーなどの化合物を用いると好ましい。すなわち、(A)成分は、(メタ)アクリレートオリゴマーおよび/または(メタ)アクリレートモノマーを含むと好ましい。さらには、(A)成分は、(メタ)アクリレートオリゴマーおよび/または(メタ)アクリレートモノマーであると好ましい。
【0028】
以下、(A)成分として好ましく用いられる(メタ)アクリレートオリゴマーおよび(メタ)アクリレートモノマーについて説明する。(メタ)アクリレートオリゴマーを添加すると、爪または人工爪に対する密着性の向上、光硬化性樹脂組成物(塗膜)の硬化性および強度の向上効果が得られる。一方、(メタ)アクリレートモノマーを添加すると、光硬化性樹脂組成物の粘度を下げることができる。よって、これらの利点を得るために、(A)成分は、(メタ)アクリレートオリゴマーおよび(メタ)アクリレートモノマーの両方を含むと好ましい。
【0029】
((メタ)アクリレートオリゴマー)
(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリロイル基を1個以上有するオリゴマーであれば、特に制限されない。一分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基の数は特に制限されないが、良好な硬度を有する硬化物を得る目的から、1~10個であると好ましく、2~8個であるとより好ましい。
【0030】
(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、好ましくは、1,000~100,000であり、より好ましくは2,000~30,000であり、特に好ましくは3,000~20,000である。かような範囲であれば、低い粘度を保持しつつ、硬化物の耐久性を良好にすることができる。
【0031】
(メタ)アクリレートオリゴマーの具体例としては、特に制限されないが、分子内にエステル結合を有するエステル(メタ)アクリレートオリゴマー(エステル結合を主骨格に有する(メタ)アクリレートオリゴマー)、エーテル基を有するエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー(エーテル結合を主骨格に有する(メタ)アクリレートオリゴマー)、ウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(ウレタン結合を主骨格に有する(メタ)アクリレートオリゴマー)などが挙げられる。上記(メタ)アクリレートオリゴマーは、市販品または合成品のいずれを使用してもよい。また、(メタ)アクリレートオリゴマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。さらに、その他オリゴマーを組み合わせて使用することもできる。
【0032】
特に、光硬化性樹脂組成物およびその硬化物の爪への密着性と耐久性の観点から、(A)成分は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含んでいると好ましい。さらに、同様の観点から、(A)成分としての(メタ)アクリレートオリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであるとより好ましい。
【0033】
エステル結合を有するエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオールと多価カルボン酸との反応によりエステル結合を形成し、その後、得られたエステル化合物の未反応の水酸基に対し、分子内に水酸基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物または(メタ)アクリル酸を付加することにより合成できるが、当該(メタ)アクリレートオリゴマーの合成方法は、この方法に限定されるものではない。市販品の具体例としてはアロニックス(登録商標)M-6100、M-6200、M-6250、M-6500、M-7100、M-7300K、M-8030、M-8060、M-8100、M-8530、M-8560、M-9050(東亞合成株式会社製)や、UV-3500BA、UV3520TL、UV-3200B、UV-3000B(日本合成化学工業株式会社製)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0034】
エーテル結合を有するエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーは、脂肪族系のポリエーテルポリオールの水酸基や、ビスフェノールなどの芳香族系のポリエーテルポリオールの水酸基に対し、分子内に水酸基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物または(メタ)アクリル酸を付加させることにより合成できるが、当該(メタ)アクリレートオリゴマーの合成方法は、この方法に限定されるものではない。市販品の具体例としてはUV-6640B、UV-6100B、UV-3700B(日本合成化学工業株式会社製)や、ライトアクリレート(登録商標)3EG-A,4EG-A、9EG-A、14EG-A、PTMGA-250、BP-4EA、BP-4PA,BP-10EA、ライトエステル4EG、9EG,14EG(共栄社化学株式会社製)や、EBECRYL(登録商標)3700(ダイセル・サイテック株式会社製)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0035】
ウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオールとポリイソシアネートとの反応によりウレタン結合を形成し、未反応のイソシアネート基に対し、分子内に水酸基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物または(メタ)アクリル酸を付加させることにより合成できるが、当該(メタ)アクリレートオリゴマーの合成方法は、この方法に限定されるものではない。市販品の具体例としてはAH-600、AT-600、UA-306H、UF-8001G(共栄社化学株式会社製)や、RUA-071、RUA-003VE、RUA-075、RUA-048(亜細亜化学工業株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
また、上記(A)成分としての(メタ)アクリレートオリゴマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
((メタ)アクリレートモノマー)
(メタ)アクリレートモノマーは、(メタ)アクリロイル基を1個以上有するモノマーであれば、特に制限されない。一分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基の数は特に制限されないが、良好な硬度を有する硬化物を得る目的から、1~5個であると好ましく、1~3個であるとより好ましく、1個であると特に好ましい。
【0038】
光硬化性樹脂組成物を低粘度化し、塗布する際の作業性を向上させるために、(メタ)アクリレートモノマーの分子量は、1,000未満であると好ましく、さらに好ましくは500以下である。上記分子量は、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)法等、公知の方法で測定できる。また、NMR等の方法によりその構造を特定し、当該構造に基づき計算を行うことにより分子量を特定することもできる。
【0039】
(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、特に制限されないが、1官能、2官能、3官能の((メタ)アクリロイル基を1~3個有する)(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマーなどが挙げられる。上記(メタ)アクリレートモノマーは、市販品または合成品のいずれを使用してもよい。また、(メタ)アクリレートモノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。さらに、その他モノマーを組み合わせて使用することもできる。
【0040】
1官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例としては、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性ブチル(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性フェノキシ(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
1官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーには、酸性基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーも挙げられる。特に、分子内に(メタ)アクリロイル基を有するカルボン酸やリン酸などを指す。分子内に(メタ)アクリロイル基を有するカルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、3-(メタ)アクリロイルオシプロピルコハク酸、4-(メタ)アクリロイルオシブチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオシエチルマレイン酸、3-(メタ)アクリロイルオシプロピルマレイン酸、4-(メタ)アクリロイルオシブチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオシエチルヘキサヒドロフタル酸、3-(メタ)アクリロイルオシプロピルヘキサヒドロフタル酸、4-(メタ)アクリロイルオシブチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオシエチルフタル酸、3-(メタ)アクリロイルオシプロピルフタル酸、4-(メタ)アクリロイルオシブチルフタル酸などが、分子内に(メタ)アクリロイル基を有するリン酸としては、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
2官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例としては、1、3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレ-ト、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイドサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロイルイソシアヌレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
3官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(PO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(ECH)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
(メタ)アクリルアミドモノマーの具体例としては、ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
(メタ)アクリレートモノマーは、脂環式構造を有すると好ましい。本明細書中、「脂環式構造を有する」とは、炭化水素の環状構造を有することを意味する。脂環式構造の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロへキシル基、等の単環式シクロアルキル基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環式シクロアルケニル基;ヒドロナフチル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ノルボルニル基、メチルノルボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の多環式シクロアルキル基;ジシクロペンテニル基、ジシクロペンテニルオキシエチル基等の多環式シクロアルケニル基;等が挙げられるが、これらに制限されない。
【0046】
上記脂環式構造は、一分子中に1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。上記のなかでも、本発明の効果を得られやすくするという観点から、(A)成分としての(メタ)アクリレートモノマーは、脂環式構造として、多環式シクロアルキル基を含んでいると好ましい。すなわち、(A)成分としての(メタ)アクリレートモノマーは、多環式シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含むと好ましい。
【0047】
かような多環式シクロアルキル基を含む(メタ)アクリレートモノマーとしては、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。なかでも、優れた硬度を有する硬化物が得られるため、(A)成分は、イソボルニル(メタ)アクリレートを含んでいると好ましい。
【0048】
爪または人工爪に対する密着性、耐久性を向上させると共に、十分な硬化速度を得るという観点から、また、良好な作業性を確保するという観点から、(A)成分において、(メタ)アクリレートオリゴマーおよび(メタ)アクリレートモノマーの両方を含むことが好ましい。すなわち、(A)成分は、(メタ)アクリレートオリゴマーおよび(メタ)アクリレートモノマーを含むと好ましい。このように、上記オリゴマーおよび上記モノマーの双方が含まれる場合において、上記オリゴマーおよび上記モノマーの比率(質量比)は特に制限されないが、オリゴマー:モノマーの比率(質量比)が、50:50~95:5であることが好ましく、55:45~80:20であることがより好ましい。(メタ)アクリレートオリゴマーを含むことで、光硬化性樹脂組成物およびその硬化物の爪または人工爪に対する密着性や耐久性が向上する。さらに、かような効果は、当該オリゴマーを(メタ)アクリレートモノマーと同等以上の質量比で含むことで、より顕著となる。
【0049】
さらに、(A)成分は、ウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーおよび(メタ)アクリレートモノマーを含むと好ましく、ウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーおよび1官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含むとより好ましく、ウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーおよび脂環式構造を有する1官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含むと特に好ましい。この際、ウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと各(メタ)アクリレートモノマーとの比率(質量比)も特に制限されないが、上記「オリゴマー:モノマーの比率」と同様の範囲内であると好ましい。
【0050】
<(B)成分>
本発明に係る光硬化性樹脂組成物に含まれる(B)成分は、光開始剤(光重合開始剤)である。光開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線等のエネルギー線の照射によりラジカル種を発生するラジカル系光開始剤、カチオン種を発生するカチオン光開始剤、アニオン種を発生するアニオン光発生剤が挙げられるが、その中でもラジカル系光開始剤が好ましい。
【0051】
(B)成分のラジカル系光開始剤の具体的としては、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4′-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホフィンオキサイド類;等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの中でも、(B)成分は、アセトフェノン類およびアシルホフィンオキサイド類から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。また、これらは1種単独で使用してもよいし、また、複数の(B)成分を組み合わせて使用することもできる。
【0052】
本発明に係る光硬化性樹脂組成物における(B)成分の含有量(2種以上含む場合は、その合計量)は、(A)成分100質量部に対し、(B)成分が2~25質量部であると好ましく、4~15質量部であるとより好ましく、8質量部以上15質量部未満であると特に好ましい。(A)成分100質量部に対し(B)成分が2質量部以上、さらに、4質量部以上、8質量部以上である場合は、光硬化性をより良好に維持することができる。一方、(A)成分100質量部に対し(B)成分が25質量部以下、さらに、15質量部以下、15質量部未満である場合は、保存時に増粘すること無く、保存安定性をより良好にすることができる。
【0053】
(B)成分は、光硬化性をより向上させ、かつ着色をより抑制するとの観点から、可視光型光開始剤を含むと好ましく、さらに、可視光型光開始剤および当該光開始剤以外の光開始剤(非可視光型光開始剤)の両方を含むとより好ましい。可視光型光開始剤および非可視光型光開始剤を用いる場合は、可視光型光開始剤が(B)成分全体に対して70質量%以下で含まれることが好ましい(下限:0質量%超)。上記範囲内とすることで硬化物の黄変をより抑制することができる。同様の観点から、可視光型光開始剤が(B)成分全体に対して60質量%以下で含まれることがより好ましい。一方、可視光型光開始剤が(B)成分全体に対して50質量%以上で含まれることが好ましい。上記範囲内とすることで、光硬化性樹脂組成物の光硬化性がより向上する。
【0054】
ここで、可視光型光開始剤とは、可視光領域(波長400~800nm、好ましくは波長400~500nmの範囲)で吸収極大を有する光開始剤であり、公知のものが使用できるが、主にリン原子を含むアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤が挙げられる。具体例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイドやビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、非可視光型光開始剤は、上記可視光型光開始剤以外の光開始剤であり、公知の紫外光型光開始剤等が使用できる。
【0055】
<(C)成分>
本発明に係る光硬化性樹脂組成物に含まれる(C)成分は、平均粒子径が3~21μmである(メタ)アクリルポリマー粒子である。(C)成分は充填剤として機能しうる成分であり、光硬化性樹脂組成物のマット性(低い光沢性)に寄与する。
【0056】
(C)成分としての(メタ)アクリルポリマー粒子の平均粒子径が3~21μmの範囲内であることにより、十分な艶消し効果が得られると共に、塗布時の作業性が向上する。よって、均一なマットコートを形成することができる。特に、平均粒子径を3μm以上とすることにより、十分に光沢の抑制されたマットコートを形成することができる。また、平均粒子径を21μm以下とすることにより、光硬化性樹脂組成物の粘度が小さくなり、特に塗布を行う際の作業性が良好となる。その結果、均一なマットコートを形成することができる。
【0057】
なお、本明細書中、「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定機で粒度分布を測定することにより求められる、積算体積50%粒子径の値をいう。
【0058】
十分なマット性(艶消し効果)を得ると共に、塗布時の作業性を向上させ、均一なマットコートを形成するという観点から、(C)成分としての(メタ)アクリルポリマー粒子の平均粒子径は、4μm~15μmであると好ましく、4μm超~15μm未満であるとより好ましく、5~14μmであると特に好ましく、6~10μmであると最も好ましい。
【0059】
(C)成分は、室温(25℃)で固体であると好ましく、さらに、その形状は、球状であることが好ましい。ここで、「球状」とは必ずしも完全な球体である必要はなく、基本的な形状が球体のものをすべて含む。
【0060】
(C)成分としての(メタ)アクリルポリマー粒子は、(メタ)アクリルポリマーを含む粒子であればよく、他のポリマーを含んでいてもよいが、高い透明性を得る観点から、(C)成分としての(メタ)アクリルポリマー粒子は、(メタ)アクリルポリマー以外のポリマーを含んでいないことが好ましい。すなわち、(メタ)アクリルポリマー粒子は、実質的には、(メタ)アクリルポリマーのみからなることが好ましい。
【0061】
(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量は、好ましくは、100,000を超えて11,000,000以下である。かような範囲であれば、(A)成分に対して良好な分散性を発揮し、光硬化性樹脂組成物の粘度を低減しつつ、硬化物の耐久性を良好にすることができる。
【0062】
(メタ)アクリルポリマー粒子を構成する(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルを原料とするポリマーであればよい。かようなポリマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの重合体、(メタ)アクリル酸エステルとその他のラジカル重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0063】
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、ベンジル(メタ)アクリレート、4-ビフェニル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、4-クロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、4-シアノベンジル(メタ)アクリレート、シアノメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、3,5-ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、2-ナフチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-アリロキシエチル(メタ)アクリレート、プロパルギル(メタ)アクリレート等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。特に透明性の観点から、(C)成分の(メタ)アクリルポリマー粒子を構成するポリマーは、メタクリル酸エステルの重合体が好ましく、メチル(メタ)アクリレートの重合体がより好ましく、メチルメタクリレートの重合体が特に好ましい。すなわち、(C)成分は、ポリメチル(メタ)アクリレート粒子であると好ましく、ポリメチルメタクリレート粒子であるとより好ましい。
【0064】
その他のラジカル重合性モノマーとしては(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、(メタ)アクリロニトリル類、ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0065】
上記(メタ)アクリルポリマー(粒子)は、市販品または合成品のいずれを使用してもよい。(メタ)アクリルポリマー(粒子)は、(メタ)アクリル酸エステルおよび必要に応じて用いられる他のラジカル重合性モノマーを、懸濁重合等の公知の方法により(共)重合させることにより得ることができる。市販品の具体例としてはアートパール(登録商標)GR-400、GR-600、GR-800、J-6PF、J-7PY、J-7P、SE-006T、SE-010T、SE-020T、G-400、G-800(根上工業株式会社製)や、ガンツパール(登録商標)GM-0600、GMP-0820(アイカ工業株式会社製)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0066】
本発明に係る光硬化性樹脂組成物における(C)成分の含有量(2種以上含む場合は、その合計量)は、(A)成分100質量部に対し、(C)成分が45~155質量部であると好ましく、55~150質量部であるとより好ましく、100~130質量部であると特に好ましい。(A)成分100質量部に対し(C)成分が45質量部以上、さらには、55質量部以上、100質量部以上である場合は、十分なマット性(低い光沢性)を有するマットコートを形成することができる。一方、(A)成分100質量部に対し(C)成分が155質量部以下、さらには、150質量部以下、130質量部以下である場合は、光硬化性樹脂組成物の粘度が小さくなり、特に塗布を行う際の作業性が良好となる。
【0067】
<任意成分>
本発明に対し、本発明の目的を損なわない範囲で、上記(A)~(C)成分の他、充填剤、導電性フィラー、シランカップリング剤、可塑剤、消泡剤、顔料、防錆剤、レベリング剤、分散剤、レオロジー調整剤、難燃剤等の添加剤を使用することができる。
【0068】
(充填剤)
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、硬化物の弾性率、流動性などの改良を目的として、保存安定性を阻害しない程度の充填剤をさらに含んでいてもよい。かような充填剤の具体例としては、無機質粉体(無機充填剤)、(C)成分以外の有機質粉体(有機充填剤)等が挙げられる。
【0069】
無機質粉体の充填剤(無機充填剤)としては、ガラス、フュームドシリカ、アルミナ、マイカ、セラミックス、シリコーンゴム粉体、炭酸カルシウム、窒化アルミ、カーボン粉、カオリンクレー、乾燥粘土鉱物、乾燥珪藻土、カオリン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは、それぞれ単独で用いることも、また二種以上を混合して用いても良い。無機質粉体(無機充填剤)の含有量(2種以上含む場合は、その合計量)は、(A)成分100質量部に対し、0.1~200質量部程度が好ましい。
【0070】
なかでも、フュームドシリカは、光硬化性樹脂組成物の粘度調整または硬化物の機械的強度を向上させる目的で配合されうる。好ましくは、ジメチルシラン、トリメチルシラン、アルキルシラン、メタクリロキシシラン、オルガノクロロシラン、ポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシラザンなどで表面処理したヒュームドシリカなどが用いられる。フュームドシリカの市販品としては、例えば、アエロジル(登録商標)R972、R972V、R972CF、R974、R976、R976S、R9200、RX50、NAX50,NX90、RX200、RX300、R812、R812S、R8200、RY50、NY50、RY200S、RY200、RY300、R104、R106、R202、R805、R816、T805、R711、R7200等(日本アエロジル株式会社製)が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは、それぞれ単独で用いることも、また二種以上を混合して用いても良い。
【0071】
(C)成分以外の有機質粉体の充填剤(有機充填剤)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネートが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは、それぞれ単独で用いることも、また二種以上を混合して用いても良い。有機質粉体(有機充填剤)の含有量(2種以上含む場合は、その合計量)は、(A)成分100質量部に対し、0.1~200質量部程度が好ましい。
【0072】
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、さらに、導電性フィラーを含んでいてもよい。例えば金、銀、白金、ニッケル、パラジウムおよび有機ポリマー粒子に金属薄膜を被覆したメッキ粒子が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは、それぞれ単独で用いることも、また二種以上を混合して用いても良い。
【0073】
(シランカップリング剤)
本発明に対し、シランカップリング剤を添加してもよい。シランカップリング剤としては、例えばγ-クロロプロピルトリメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは、それぞれ単独で用いることも、また二種以上を混合して用いても良い。密着性付与剤の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.05~30質量部が好ましく、より好ましくは0.2~10質量部である。
【0074】
[爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物の製造方法]
本発明の光硬化性樹脂組成物の製造方法は、特に制限されず、従来公知の方法により製造することができる。例えば、(A)成分~(C)成分、および任意で添加される成分(任意成分)について、それぞれ所定量を秤量し、順序は問わず逐次または同時に混合釜に添加した後、プラネタリミキサー等の混合手段を使用して混合することにより、本発明の光硬化性樹脂組成物を得ることができる。このとき、製造条件は特に制限されないが、粘度が高くなってしまうことを抑制する目的から、遮光条件下で行うと好ましい。また、特に(A)成分の重合を抑制し、得られる光硬化性樹脂組成物の粘性を低く維持するという観点から、混合温度は、10~50℃の温度とすると好ましく、また、混合時間は、0.1~5時間が好ましい。
【0075】
[爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物の用途]
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、透明性および作業性にも優れる。さらに、当該組成物によれば、均一なマットコートの形成が可能である。したがって、本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、爪または人工爪に対し、光沢を抑えた質感のネイルカラー・アートを施す際に有用である。したがって、本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、爪または人工爪被覆用光硬化性組成物であることが好ましい。したがって、筆や刷毛などを用いて塗布する作業を行う際、作業性を良好にするという観点から、光硬化性樹脂組成物の粘度は、25℃において100Pa・s以下であると好ましく、50Pa・s以下であるとより好ましく、50Pa・s未満であるとさらにより好ましく、45Pa・s以下であると特に好ましく、30Pa・s以下であると最も好ましい。一方、粘度の下限は特に制限されないが、塗布後の硬化をより行いやすくするという観点から、3Pa・s以上であると好ましい。光硬化性樹脂組成物の粘度は、具体的には、実施例に記載の方法により測定される値を採用する。なお、上記組成物の粘度は、上記(A)~(C)成分の材料種および含有量を適宜選択することにより調整できる。
【0076】
[硬化物および硬化物の製造方法]
本発明の他の形態は、上記光硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物(光硬化性樹脂組成物の硬化物)である。ここで、硬化物の具体例としては、ネイルカラー・アートに用いるトップコートが挙げられる。
【0077】
光硬化性樹脂組成物の硬化物(例えば、トップコート等)の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。なかでも、光硬化性樹脂組成物を、エネルギー線を用いて硬化させる方法が好ましい。すなわち、本発明は、光硬化性樹脂組成物をエネルギー線で硬化する、硬化物の製造方法もまた提供する。
【0078】
硬化物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。一例として、爪(地爪)上、または予め形成された人工爪(ネイルチップ)上に、本発明に係る光硬化性樹脂組成物を塗布した後にエネルギー線(光等)を照射して硬化させる方法が挙げられる。また、他の例としては、本発明に係る光硬化性樹脂組成物を所望の形状に成形した後にエネルギー線(光等)を照射して硬化させる方法であってもよい。
【0079】
硬化する際に用いるエネルギー線照射装置としては、特に制限されないが、市販のUVランプ、LEDランプ等を使用することができる。エネルギー線の照射時間としては、特に制限されないが、LEDランプを用いる場合、エネルギー線の照射時間は、5~120秒であると好ましく、10~30秒であるとより好ましい。また、UVランプを用いる場合、15~120秒であることが好ましく、20~100秒であることがより好ましく、20~70秒であることが特に好ましい。また、積算光量としては、5~60kJ/m2であることが好ましい。なお、硬化に際しては、必要に応じて、複数回のエネルギー線照射を行ってもよい。
【0080】
[爪または人工爪の被覆(装飾)方法]
本発明の他の形態は、上記光硬化性樹脂組成物を爪または人工爪上に塗布して塗膜を形成後、エネルギー線を照射して前記塗膜を硬化することを含む、爪または人工爪の被覆方法である。なお、本明細書において、「爪または人工爪上に塗布する」とは、人間の爪(地爪)または人工爪(ネイルチップ)の表面に直接に塗布する形態や、人間の爪または人工爪の表面に形成された、単独または複数の他の層の最表面に塗布する形態を含む。
【0081】
すなわち、本発明の好ましい実施形態は、下記の(A)~(C)成分を含む、爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物を爪(地爪)または人工爪上に塗布して塗膜を形成後、エネルギー線を照射して前記塗膜を硬化させることを含む、爪または人工爪の被覆方法である:
(A)成分:(メタ)アクリロイル基を有する化合物;
(B)成分:光開始剤;
(C)成分:平均粒子径3~21μmの(メタ)アクリルポリマー粒子。
【0082】
光硬化性樹脂組成物の塗布方法や塗膜(塗布された光硬化性樹脂組成物)の硬化方法は特に制限されず、当業者に公知の手法により行うことができる。本発明に係る爪または人工爪の被覆方法の好ましい一例を以下に示すが、本発明に係る方法はこの方法に限定されるものではない。本発明の光硬化性樹脂組成物を直接爪に塗布する場合には、塗膜の密着性を向上させるために、必要に応じて、以下の操作を行うと好ましい。すなわち、光硬化性樹脂組成物を塗布する前に、爪の表面をファイル(やすり)等でサンディングを実施すると好ましい。その後、エタノールを主成分とする爪専用溶剤で埃、油分、水分などを取り除くと好ましい。次いで、筆や刷毛などで硬化前の状態で厚さ100~300μmの塗膜を形成するように、爪上または人工爪上に本発明の光硬化性樹脂組成物を塗布する。また、予め形成された他の層(ベースコート、カラーUVネイルジェルの硬化膜)の上に塗布しても良い。なお、塗布の際に事前にプライマーを使用しても良い。上記のように光硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成した後、当該塗膜にエネルギー線を照射し、上記塗膜(塗布された光硬化性樹脂組成物)を硬化させる。硬化する際の照射装置としては、特に制限されないが、市販のUVランプ、LEDランプ等を使用することができる。エネルギー線の照射時間としては、特に制限されないが、LEDランプを用いる場合、エネルギー線の照射時間は、5~120秒であると好ましく、10~30秒であるとより好ましい。また、UVランプを用いる場合、15秒~120秒であることが好ましく、20~100秒であることがより好ましく、指への影響を考慮すると、20~70秒であることが特に好ましい。また、積算光量としては、5~60kJ/m2であることが好ましい。なお、硬化に際しては、必要に応じて、複数回のエネルギー線照射を行ってもよい。なお、硬化に際しては、必要に応じて、複数回のエネルギー照射を行ってもよい。
【実施例】
【0083】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細の説明をするが、本発明の範囲がこれら実施例に限定されるものではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
【0084】
<光硬化性樹脂組成物の調製>
以下の各成分を表1に示す割合(単位:質量部)で量りとり、25℃環境、遮光条件下で、プラネタリーミキサーを用いて60分間混合し、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0085】
<(A)成分>
a1:ウレタンアクリレートオリゴマー(RUA-075、亜細亜化学工業株式会社製、重量平均分子量4,600、25℃における粘度30Pa・s)
a2:イソボルニルアクリレート(IBXA、大阪有機化学工業株式会社製、25℃における粘度7.7mPa・s)
<(B)成分>
b1:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Suncure84、Chemark Chemical社製)
b2:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド(SPEEDCURE TPO、LAMBSON社製)
<(C)成分>
c1:球状ポリメチルメタクリレート粒子(アートパールGR-600、平均粒子径10μm、根上工業株式会社製)
c2:球状ポリメチルメタクリレート粒子(アートパールGR-400、平均粒子径15μm、根上工業株式会社製)
c3:球状ポリメチルメタクリレート粒子(アートパールGR-800、平均粒子径6μm、根上工業株式会社製)
c4:球状ポリメチルメタクリレート粒子(アートパールJ-6PF、平均粒子径4μm、根上工業株式会社製)
<(C)成分の比較例>
c’1:球状ポリメチルメタクリレート粒子(アートパールGR-300、平均粒子径22μm、根上工業株式会社製)
c’2:球状ポリメチルメタクリレート粒子(アートパールJ-4PY、平均粒子径2.2μm、根上工業株式会社製)
c’3:球状ポリウレタン粒子(アートパールC-300、平均粒子径22μm、根上工業株式会社製)
c’4:球状ポリウレタン粒子(アートパールC-600、平均粒子径10μm、根上工業株式会社製)
c’5:沈降シリカ(ACEMATT3600、平均粒子径5μm、エボニックデグサジャパン社製)
c’6:フュームドシリカ(Alu C805、平均粒子径13nm、エボニックデグサジャパン社製)
c’7:フュームドシリカ(RM-50、平均粒子径40nm、エボニックデグサジャパン社製)
c’8:フュームドシリカ(TT-600、平均粒子径40nm、エボニックデグサジャパン社製)
c’9:フュームドシリカ(#200、平均粒子径12nm、エボニックデグサジャパン社製)
c’10:シリチン(アクティジルMAM、平均粒子径3.5μm、株式会社テスコ製)
c’11:シリチン(アクティジルVM56、平均粒子径1.5μm、株式会社テスコ製)
c’12:シリチン(シリチンZ86、平均粒子径1.5μm、株式会社テスコ製)
c’13:シリチン(シルフィットZ91、平均粒子径2μm、株式会社テスコ製)
c’14:タルク(タルクCS、平均粒子径7μm、丸尾カルシウム株式会社製)
表1の実施例、比較例において行った評価の試験方法は下記の通りである。
【0086】
<透明性確認>
透明なガラス製のスクリュー瓶(肉厚1.3mm)に液深さ20mmになるように、実施例および比較例に係る光硬化性樹脂組成物をそれぞれ注いだ。フォントサイズ10のMSゴシック体(全角)黒色で印刷された「ThreeBond」の文字を上記ガラス瓶(スクリュー瓶)の下に置いて真上から、目視にて光硬化性樹脂組成物の透明性を確認した。その結果を、「透明性」として以下の表1に示す。本評価では、カラー等の他の硬化膜(例えば、カラーネイル)の色味が損なわれないために、光硬化性樹脂組成物越しに文字が見えること(以下の評価基準で「〇」であること)が好ましい。
【0087】
(評価基準)
〇:「ThreeBond」の文字が識別可能;
×:「ThreeBond」の文字が識別不可能。
【0088】
<作業性確認>
実施例および比較例に係る光硬化性樹脂組成物を、それぞれ0.5mL採取して、測定用カップに吐出した。以下の測定条件で、EHD型粘度計(東機産業株式会社製)にて粘度測定を行った。ネイルアートを施術する際の取り扱いの容易性を考慮して、光硬化性樹脂の粘度を、作業性として判断した。その結果を「作業性(Pa・s)」として以下の表1に示す。爪の被覆(装飾)時において、光硬化性樹脂組成物の流動の抑制や塗布のしやすさなどの作業性の観点から、当該組成物の粘度は50Pa・s未満であると実用的であり、一方、50Pa・s以上であると、実用的でないと判断される。また、上記組成物の粘度が50Pa・s未満であると、刷毛等により爪に塗布する際に均一に塗布しやすくなる。なお、表1中、「測定不可」とは、以下の測定条件での測定限界を超えたことを示す。
【0089】
(測定条件)
コーンローター:3°×R14
回転速度:10rpm
測定時間:5分
測定温度:25℃(恒温槽により温度制御した)。
【0090】
<マットコート(光沢性)の確認>
実施例および比較例に係る光硬化性樹脂組成物を、それぞれ、人工爪(合成樹脂)に対し、未硬化の状態で厚さがおよそ300μmとなるよう刷毛で塗布した。その後、ネイル用UVランプ(定格電圧:100~110V 50~-60Hz、消費電力:36W、波長:350~400nm)を60秒照射して光硬化性樹脂組成物を硬化させ、未硬化部分をウェスに染み込ませたイソプロピルアルコール(IPA)を用いてふき取った。また、同様にネイル用LEDランプ(定格電圧:240V 50~60Hz、消費電力:30W、波長:400~410nm)を10秒照射して光硬化性樹脂組成物を硬化させ、未硬化部分をウェスに染み込ませたIPAを用いてふき取った。さらにLEDライト(消費電力:6W)を硬化物に照射し、マットコート(硬化物の光沢性)を下記の評価基準に従い、目視により視認して判断した。その結果を「マットコート」として以下の表1に示す。十分なマット性(低い光沢性)を得るためには、以下の評価基準において、「〇」または「△」であると好ましく、「〇」であると特に好ましい。
【0091】
(評価基準)
○:ランプの種類に依存せずに均一な硬化膜が形成でき、硬化物に映るライトの光が全ての面でにじみ、光の輪郭がはっきりしない;
△:ランプの種類に依存せずに均一な硬化膜が形成でき、硬化物に映るライトの光が一部の面でにじむ;
×:ランプの種類に依存せずに均一な硬化膜が形成できない。または硬化物に映るライトの光が全くにじまず、光の輪郭がはっきりしている。
【0092】
【0093】
表1の実施例に係る光硬化性樹脂組成物は、透明性および作業性に優れ、マットコートの形成が可能な光硬化性樹脂組成物であることが分かる。なお、実施例2、5および7では硬化物において全体的にはライトの光がにじんでいるものの、一部にじまない箇所が見られた。
【0094】
比較例1で充填剤として使用しているc’1は平均粒子径が21μmを上回っている(平均粒子径=22μm)ため塗布時に充填剤に偏りができてしまい、均一なマットコートの硬化膜が形成できないことが確認された。また、比較例2で充填剤として使用しているc’2は平均粒子径が3μmを下回っている(2.2μm)ため硬化膜表面に艶(光沢)があり、マットコートを形成できないことが確認された。これに対し、実施例1、5~7で充填剤として使用しているc1~c4は、平均粒子径が本発明の範囲(3~21nmの範囲)内にあり、十分なマット性(低い光沢性)を得ることができた。
【0095】
さらに比較例3では充填剤を添加していない((C)成分を含んでいない)ため、マットコートが形成できなかった(光沢性の高い硬化物が得られた)。比較例4、5では(C)成分の代わりに球状ポリウレタン粒子を使用しているが、ベース樹脂との相溶性が悪く増粘してしまい作業性が劣ることが分かった。比較例6~16は、本発明の(C)成分に該当しない充填剤を添加しているが、少量の充填剤でもマットコートを発現する以前に白く濁ってしまい透明性が失われてしまう結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の光硬化性樹脂組成物光硬化性は、透明性および作業性に優れ、マットコートの形成が可能な爪または人工爪用光硬化性樹脂組成物であるので、ネイル(ネイルアート)分野で広く使用することができる。特に、本発明に係る光硬化性樹脂組成物は透明性および艶消し効果に優れるため、マットな質感を与えるためのトップコートとしても有用である。さらに本発明に係る光硬化性樹脂組成物によれば、400nmといった長波長の光源で硬化させた場合であっても上記と同様の効果を得ることができる。したがって、本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、マットコートの形成が可能なUVネイルジェルとして好適に使用される。
【0097】
本出願は、2016年12月19日に出願された日本国特許出願第2016-245293号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として組み入れられている。