(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】プリフォームはんだ及びその製造方法、並びにはんだ継手の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 35/14 20060101AFI20220126BHJP
B23K 35/26 20060101ALI20220126BHJP
C22C 13/00 20060101ALI20220126BHJP
B23K 35/40 20060101ALI20220126BHJP
C22C 19/03 20060101ALI20220126BHJP
C22C 13/02 20060101ALI20220126BHJP
C22C 12/00 20060101ALN20220126BHJP
C22C 28/00 20060101ALN20220126BHJP
【FI】
B23K35/14 Z
B23K35/26 310A
B23K35/26 310C
B23K35/26 310D
C22C13/00
B23K35/40 340G
C22C19/03 G
C22C13/02
C22C12/00
C22C28/00 B
(21)【出願番号】P 2021059319
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2021-03-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】小賀 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智揮
(72)【発明者】
【氏名】立花 芳恵
(72)【発明者】
【氏名】吉川 俊策
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/021664(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/047293(WO,A1)
【文献】特開2009-039769(JP,A)
【文献】国際公開第2007/032429(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/125991(WO,A1)
【文献】特開2004-247742(JP,A)
【文献】特開2018-174163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00-35/40
C22C 13/00-13/02
C22C 19/03
C22C 12/00
C22C 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Snを含む第1金属と、Ni及びFeを含む合金からなる第2金属と、を含有
し、
前記第1金属の融点が、250℃以下であり、
前記第2金属における合金の融点が、250℃超であり、
前記第1金属中のSnの含有量が、前記第1金属の総質量に対して、20質量%以上100質量%以下であり、
前記第2金属中のNiの含有量が、前記第2金属の総質量に対して、80質量%以上99質量%以下であり、
前記第2金属中のFeの含有量が、前記第2金属の総質量に対して、1質量%以上20質量%以下であり、
前記第2金属の粒径が、0.1~1000μmであり、
前記第2金属の含有量は、前記第1金属と前記第2金属との合計の含有量に対して、5~70質量%である、プリフォームはんだ。
【請求項2】
連続相である第1の相と、前記第1の相に分散している第2の相と、を備えた金属組織を有し、
前記第1の相は、Snを含
む金属により構成され、
前記第2の相は、Ni及びFeを含む合金
により構成され、
前記第1の相を構成する前記金属の融点が、250℃以下であり、
前記第2の相を構成する前記合金の融点が、250℃超であり、
前記第1の相を構成する前記金属中のSnの含有量が、前記金属の総質量に対して、20質量%以上100質量%以下であり、
前記第2の相を構成する前記合金中のNiの含有量が、前記合金の総質量に対して、80質量%以上99質量%以下であり、
前記第2の相を構成する前記合金中のFeの含有量が、前記合金の総質量に対して、1質量%以上20質量%以下であり、
前記合金の粒径が、0.1~1000μmであり、
前記第2の相を構成する前記合金の含有量が、前記第1の相を構成する前記金属と、前記第2の相を構成する前記合金との合計の含有量に対して、5~70質量%であり、
前記第1の相には、金属の結晶粒界が存在している、プリフォームはんだ。
【請求項3】
前記金属組織中のSnとNiとの金属間化合物の含有量が、前記金属組織の総質量に対して、0質量%以上70質量%以下である、請求項
2に記載のプリフォームはんだ。
【請求項4】
Snを含む第1金属粉末と、Ni及びFeを含む合金からなる第2金属粉末とを混合して、金属粉末混合物を調製する混合工程、及び、
前記金属粉末混合物を圧延して、プリフォームはんだを作製する圧延工程
を含
み、
前記第1金属粉末の融点が、250℃以下であり、
前記第2金属粉末における合金の融点が、250℃超であり、
前記第1金属粉末中のSnの含有量が、前記第1金属粉末の総質量に対して、20質量%以上100質量%以下であり、
前記第2金属粉末中のNiの含有量が、前記第2金属粉末の総質量に対して、80質量%以上99質量%以下であり、
前記第2金属粉末中のFeの含有量が、前記第2金属粉末の総質量に対して、1質量%以上20質量%以下であり、
前記第1金属粉末の粒径が、0.1~1000μmであり、
前記第2金属粉末の粒径が、0.1~1000μmであり、
前記混合工程で、前記第1金属粉末と前記第2金属粉末とを、前記第1金属粉末を30~95質量部、及び前記第2金属粉末を5~70質量部の割合で混合する、プリフォームはんだの製造方法。
【請求項5】
請求項
4に記載のプリフォームはんだの製造方法により製造されたプリフォームはんだを使用して、対象物間に接合部位を形成する、はんだ継手の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリフォームはんだ及びその製造方法、並びにはんだ継手の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、炭化ケイ素(SiC)等を用いたパワー半導体素子の動作環境の高温化に伴い、はんだ継手が250~280℃程度に達することがある。このため、このような高温条件での動作時に、溶融しない高温はんだが求められている。
【0003】
上記はんだ継手の作製には、はんだ付け材料として、各種のはんだペーストが用いられている。例えば、はんだペーストとしては、低温焼結が可能なAgペースト、欧州連合によるRoHS指令に対応したTLP(Transient Liquid Phase)ペーストが挙げられる。
TLPペーストは、2種類のはんだ粉末を含有するペーストである。TLPペーストにおいては、加熱時にはんだ粉末同士が高融点の化合物を形成するため、はんだ継手が再加熱されたとしても再溶融を抑制することができる。このようなTLPペーストとして、例えば、Cuボール及びSnはんだボールを、フラックスを介して分散させたペースト、が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
あるいは、上記はんだ継手の作製には、はんだ付け材料として、プリフォームはんだを用いた接合方法が使用されている。
プリフォームはんだとは、はんだを、スクエア形状、リボン形状、ディスク形状等の様々な形状に加工したものである。
このようなプリフォームはんだとして、例えば、はんだ合金からなる金属粉末と、Cuからなる金属粉末との混合体を加圧成形してなる成形はんだが提案されている(特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-254194号公報
【文献】特開2020-55032号公報
【文献】特開2020-142300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたような、フラックスを含有するはんだペーストは、はんだ粉末の溶融時にフラックスが揮発して、空隙が溶融はんだ中に留まり、凝固時にボイドが大量に発生しやすい、という問題がある。特に、凝固時に、高融点の化合物が形成されるTLPペーストでは、流動性が低下し、空隙が外部に放出され難くなる。
前記のようなボイドの発生を抑える方法として、加熱条件を調整することが考えられるものの、例えば加熱温度を高くして流動性を高くしたとしても、半導体素子への熱的損傷が懸念される。一方、加熱温度を低くして加熱時間を長くしたとしても、流動性が改善しないために空隙の放出が困難であり、ボイドの発生は避けられない。
【0007】
TLPペーストにおいては、加熱時に、はんだ粉末の表面に強固な酸化膜が形成され、この酸化膜が、フラックスにより還元されずに残存することがある。このため、はんだ粉末同士が融着し難くなり、溶融はんだ中に空隙を巻き込み、ボイドが発生してしまうことがある。
これに対し、前記の酸化膜を還元するために、フラックスに高活性な還元剤を添加することが考えられるものの、仮に高活性な還元剤を添加したとしてもはんだ溶融時に還元ガスを巻き込み、還元ガスを含んだポーラスなはんだ継手となり、結果として接合強度が低下してしまう。このため、はんだ継手にクラックが発生しやすくなり、信頼性が劣ってしまう。
【0008】
また、はんだペーストにおいては、はんだ粉末がフラックスに均一に分散するように、はんだ粉末の粒径を小さくすることもある。しかしながら、はんだ粉末の粒径が小さいほど、粉末の比表面積が大きくなるために、はんだ粉末が酸化しやすくなり、ボイドの発生が顕著になる傾向がある。
【0009】
特許文献2、3に記載されたプリフォームはんだを用いた場合では、パワー半導体素子の高温条件(250℃以上)でのはんだ接合の際における、ボイドの発生を抑える効果が弱く、はんだ接合部の接合強度が不充分である。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、はんだ接合の際にボイドの発生がより抑制されたプリフォームはんだ及びその製造方法、並びにそのプリフォームはんだを使用したはんだ継手の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するため、以下の手段を採用する。
【0012】
[1] Snを含む第1金属と、Ni及びFeを含む合金からなる第2金属と、を含有する、プリフォームはんだ。
【0013】
[2] 前記第2金属の含有量は、前記第1金属と前記第2金属との合計の含有量に対して、5~70質量%である、[1]に記載のプリフォームはんだ。
【0014】
[3] 前記第2金属の粒径が、0.1~1000μmである、[1]又は[2]に記載のプリフォームはんだ。
【0015】
[4] 連続相である第1の相と、前記第1の相に分散している第2の相と、を備えた金属組織を有し、前記第1の相は、Snを含み、前記第2の相は、Ni及びFeを含む合金からなり、前記第1の相には、金属の結晶粒界が存在している、プリフォームはんだ。
【0016】
[5] 前記金属組織中のSnとNiとの金属間化合物の含有量が、前記金属組織の総質量に対して、0質量%以上70質量%以下である、[4]に記載のプリフォームはんだ。
【0017】
[6] Snを含む第1金属粉末と、Ni及びFeを含む合金からなる第2金属粉末とを混合して、金属粉末混合物を調製する混合工程、及び、前記金属粉末混合物を圧延して、プリフォームはんだを作製する圧延工程を含む、プリフォームはんだの製造方法。
【0018】
[7] 前記混合工程で、前記第1金属粉末と前記第2金属粉末とを、前記第1金属粉末を30~95質量部、及び前記第2金属粉末を5~70質量部の割合で混合する、[6]に記載のプリフォームはんだの製造方法。
【0019】
[8] 前記第2金属粉末の粒径が、0.1~1000μmである、[6]又は[7]に記載のプリフォームはんだの製造方法。
【0020】
[9] 前記第1金属粉末の粒径が、0.1~1000μmである、[6]~[8]のいずれか一項に記載のプリフォームはんだの製造方法。
【0021】
[10] 前記第2金属粉末中のNiの含有量が、前記第2金属粉末の総質量に対して、80~99質量%である、[6]~[9]のいずれか一項に記載のプリフォームはんだの製造方法。
【0022】
[11] 前記第2金属粉末中のFeの含有量が、前記第2金属粉末の総質量に対して、1~20質量%である、[10]に記載のプリフォームはんだの製造方法。
【0023】
[12] 前記第1金属粉末の融点が、250℃以下である、[6]~[11]のいずれか一項に記載のプリフォームはんだの製造方法。
【0024】
[13] [6]~[12]のいずれか一項に記載のプリフォームはんだの製造方法により製造されたプリフォームはんだを使用して、対象物間に接合部位を形成する、はんだ継手の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、はんだ接合の際にボイドの発生がより抑制されたプリフォームはんだ及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、シェア強度が高められたはんだ継手の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】プリフォームはんだの一実施形態における、厚さ方向の断面を示すSEM像(倍率300倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(プリフォームはんだ:第1実施形態)
本発明に係るプリフォームはんだの一実施形態は、Snを含む第1金属と、Ni及びFeを含む合金からなる第2金属と、を含有するものである。
【0028】
<第1金属>
第1金属は、Snを含む。
Snは延展性に優れるため、Snを含む第1金属は、塑性変形により第1金属間の空隙を消失させることができる。また、Snを含む第1金属は、はんだ付け材料として濡れ性等の一般的な性能を担保することができる。
【0029】
第1金属は、Sn以外の金属を含んでもよい。すなわち、第1金属は、Sn単体であってもよいし、Sn以外の金属とSnとが混合したものであってもよいし、Sn以外の金属とSnとが合金化したものであってもよいし、Snを含む合金とこれ以外の金属とが混合したものであってもよい。
第1金属が含んでもよいSn以外の金属としては、例えばAg、Cu、In、Bi、Ni、Ge、P、Co、Ga、Zn、Sb、Pb、Au、Al、Pt、Pd、Fe、Mn、Zrが挙げられる。これらのSn以外の金属は、1種を含んでもよいし、2種以上を含んでもよい。
第1金属は、前述の金属の他に不可避的不純物を含んでもよい。不可避的不純物を含んでいる場合であっても、本発明の効果に影響することはない。
【0030】
第1金属の融点は、250℃以下であることが好ましく、232℃以下がより好ましく、116~200℃がさらに好ましい。
第1金属の融点が、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、はんだの濡れ性を確保しやすくなる。
【0031】
本明細書でいう「金属の融点、又は金属粉末の融点」とは、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点のことをいう。第1金属の融点は、例えば、日立ハイテクサイエンス社製のDSC7020を使用して測定することができる。第2金属の融点は、例えば、NETZSCH社製のDSC404-F3Pegasusを使用して測定することができる。
【0032】
第1金属中のSnの含有量は、第1金属の総質量に対して、好ましくは20質量%以上100質量%以下である。Snの特性が充分に発揮されるためには、第1金属中のSnの含有量が、第1金属の総質量に対して、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%である。
【0033】
<第2金属>
第2金属は、Ni及びFeを含む合金からなる。
第2金属における合金は、Ni及びFeを含み、融点が第1金属に比べて高いものであり、プリフォームはんだ内に分散していることが好ましい。
第2金属における合金の融点は、250℃超であることが好ましく、300℃以上がより好ましく、500~1500℃がさらに好ましい。
第2金属における合金の融点が、前記の好ましい範囲の下限値超であると、はんだ継手の高温化をより図りやすくなる。
【0034】
第2金属における合金は、Ni及びFe以外の金属を含んでもよい。すなわち、第2金属は、NiとFeとの合金であってもよいし、NiとFeとこれら以外の金属との合金であってもよいし、これらの中でも、NiとFeとの合金であることが好ましい。
第2金属が含んでもよいNi及びFe以外の金属としては、例えばAg、Cu、In、Bi、Ge、P、Co、Ga、Zn、Sb、Pb、Au、Al、Pt、Pd、Mn、Zrが挙げられる。これらのNi及びFe以外の金属は、1種を含んでもよいし、2種以上を含んでもよい。
第2金属は、前述の金属の他に不可避的不純物を含んでもよい。不可避的不純物を含んでいる場合であっても、本発明の効果に影響することはない。
【0035】
第2金属中のNiの含有量は、第2金属の総質量に対して、好ましくは80質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは85質量%以上95質量%以下である。
第2金属中のFeの含有量は、第2金属の総質量に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上15質量%以下である。
第2金属中のNi及びFeの含有量が、前記の好ましい範囲であると、金属間化合物がより早い段階で形成され、ボイドの発生を抑制することができる。
【0036】
第1実施形態に係るプリフォームはんだにおいて、第2金属は、粒径が0.1~1000μmであることが好ましく、1~100μmがより好ましく、5~50μmがさらに好ましい。
第2金属の粒径が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、濡れ性を確保しやすくなり、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、金属間化合物をより形成しやすくなる。
【0037】
本明細書でいう「金属の粒径、又は金属粉末の粒径」とは、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて体積基準で測定した場合の平均粒径をいう。
【0038】
第1実施形態に係るプリフォームはんだにおいて、第1金属と第2金属との混合比は、接合性とシェア強度との両立の観点から、第2金属の含有量が、第1金属と第2金属との合計の含有量に対して、5~70質量%であることが好ましく、10~50質量%がより好ましく、20~30質量%が特に好ましい。
第2金属の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、Sn溶融時のボイドの発生が抑えられやすくなる。また、はんだ接合部の耐熱性がより向上する。前記の好ましい範囲の上限値以下であると、金属間化合物形成によるポーラス組織の生成が抑制されることでボイドの発生が抑えられ、シェア強度が保たれやすくなる。特に、はんだ接合部内部の微小ボイドの発生が抑えられやすくなる。
【0039】
第1実施形態に係るプリフォームはんだにおいては、第1金属と第2金属との金属間化合物を含有していないか、又はその含有量が非常に少ないことが好ましい。このようなプリフォームはんだであると、はんだ接合の際にボイドの発生がよりいっそう抑制されやすくなる。
【0040】
(プリフォームはんだ:第2実施形態)
図1は、本発明に係るプリフォームはんだの一実施形態における、厚さ方向の断面を示すSEM像(倍率300倍)である。なお、
図1のSEM像は、圧延法により製造したプリフォームはんだにおける圧延方向と平行の断面の観察像である。
図1に示す、プリフォームはんだ1は、連続相である第1の相10と、第1の相10に分散している第2の相20と、を備えた金属組織を有する。
第1の相10は、Snを含む。第1の相10には、金属の結晶粒界15が存在している。第2の相20は、Ni及びFeを含む合金からなる。
【0041】
プリフォームはんだ1において、第1の相10は、連続相であり、Snを含む金属により構成される。Snを含む金属及びその含有量等についての説明は、前述の<第1金属>と同様である。
また、第1の相10には、Snを含む金属結晶の間に結晶粒界15が存在している。
【0042】
プリフォームはんだ1において、第2の相20は、第1の相10に分散している。
第2の相20は、Ni及びFeを含む合金により構成される。Ni及びFeを含む合金、その粒径及びその含有量等についての説明は、前述の<第2金属>と同様である。
【0043】
プリフォームはんだ1において、第1の相10を構成するSnを含む金属と、第2の相20を構成するNi及びFeを含む合金との混合比は、接合性とシェア強度との両立の観点から、第2の相20を構成する合金の含有量が、第1の相10を構成する金属と、第2の相20を構成する合金との合計の含有量に対して、5~70質量%であることが好ましく、10~50質量%がより好ましく、20~30質量%が特に好ましい。
第2の相20を構成する合金の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、Sn溶融時のボイドの発生が抑えられやすくなる。また、はんだ接合部の耐熱性がより向上する。前記の好ましい範囲の上限値以下であると、金属間化合物形成によるポーラス組織の生成が抑制されることでボイドの発生が抑えられ、シェア強度が保たれやすくなる。
【0044】
プリフォームはんだ1を構成する金属組織は、第1の相10と、第2の相20とを備える一方、第1の相10と第2の相20との間に、金属間化合物を含む第3の相が存在しないか、又はその存在割合が低いことを特徴とする。
プリフォームはんだ1は、前記金属組織中のSnとNiとの金属間化合物の含有量が少なく、前記金属組織の総質量に対して、0質量%以上70質量%以下であることが好ましく、0質量%以上30質量%以下がより好ましく、0質量%が最も好ましい。
プリフォームはんだ1においては、前記金属組織中のSnとNiとの金属間化合物の含有量が、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、はんだ接合の際にボイドの発生がよりいっそう抑制されやすくなる。
【0045】
上述した第1実施形態又は第2実施形態に係るプリフォームはんだの形状としては、スクエア形状、リボン形状、ディスク形状、ワッシャー形状、チップ形状、ワイヤ形状等が挙げられる。
【0046】
上述した第1実施形態又は第2実施形態に係るプリフォームはんだの製造には、公知の製造方法を使用することができ、例えば溶融法、圧延法を適用することができる。これらの中でも、本実施形態に係るプリフォームはんだの製造には、特に、SnとNiとの金属間化合物の生成を抑えられやすく、大径のボイド発生を抑制でき、ボイド発生量が少なく生じにくいことから、圧延法を適用することが好ましい。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係るプリフォームはんだは、Snを含む第1金属と、Ni及びFeを含む合金からなる第2金属と、により構成されるものである。
本実施形態に係るプリフォームはんだにおいては、従来用いられているTLPペースト等と異なり、フラックスを使用していないため、高温条件下でボイドが発生しにくい。
【0048】
加えて、本実施形態に係るプリフォームはんだにおいては、第2金属として、Ni及びFeを含む合金を採用しているため、ボイドの発生がより抑制され、特に高温条件(250℃以上)でのはんだ接合の際にボイドの発生をより抑制することができる。このような効果が得られる理由は定かではないが以下のように推測される。
リフロー中、Ni及びFeを含む合金は、Snを含む第1金属と反応して、金属間化合物Ni3Sn4を生成する。
一方、Ni及びFeを含む合金に代えてCuを用いた場合、リフロー中、Cuは、Snを含む第1金属と反応して、金属間化合物Cu6Sn5(Cu3Sn)を生成する。
Ni及びFeを含む合金を用いた場合と、Cuを用いた場合とを比べると、消費されるSn量が異なる。また、金属間化合物の生成が、本実施形態の方が速い可能性がある。すなわち、本実施形態においては、リフロー中、Snの量を多く使用し、かつ、Snを速く消費するため、Snの溶融挙動が抑制される。
加えて、Ni及びFeを含む合金からなる第2金属の含有量を多くしていくと、接合部位における金属間化合物Ni3Sn4の含有量(面積%)が増加する傾向にある。これにはFeが寄与し、Feの作用によって、金属間化合物がより多く生成するようになる。Ni及びFeを含む合金を用いた場合では、金属間化合物Ni3Sn4にFeが入る化合物が形成されている。金属間化合物中のFeの有無は、分析箇所でばらつき、必ずFeを含む化合物になる訳ではないが、プリフォームはんだ中にFeが単独では存在していないと考えられる。
前記のように、Snの溶融挙動を抑制し、金属間化合物が生成することにより、本実施形態に係るプリフォームはんだにおいては、ボイドの発生がより抑制され、特に高温条件(250℃以上)でのはんだ接合の際にボイドの発生をより抑制することができる。
【0049】
(プリフォームはんだの製造方法)
本発明に係るプリフォームはんだの製造方法の一実施形態は、Snを含む第1金属粉末と、Ni及びFeを含む合金からなる第2金属粉末とを混合して、金属粉末混合物を調製する混合工程、及び、前記金属粉末混合物を圧延して、プリフォームはんだを作製する圧延工程を含む製造方法である。
【0050】
第1金属粉末:
本実施形態で用いる、第1金属粉末を構成する金属は、Snを含む金属である。Snを含む金属についての説明は、前述の<第1金属>と同様である。
第1金属粉末の融点は、250℃以下であることが好ましく、232℃以下がより好ましく、116~200℃がさらに好ましい。
第1金属粉末の融点が、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、はんだの濡れ性を確保しやすくなる。
【0051】
第1金属粉末中のSnの含有量は、第1金属粉末の総質量に対して、好ましくは20質量%以上100質量%以下である。Snの特性が充分に発揮されるためには、第1金属粉末中のSnの含有量が、第1金属粉末の総質量に対して、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%である。
【0052】
第1金属粉末は、粒径が0.1~1000μmであることが好ましく、1~100μmがより好ましく、5~50μmがさらに好ましい。
第1金属粉末の粒径が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、濡れ性を確保しやすくなり、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、金属間化合物をより形成しやすくなる。
【0053】
第2金属粉末:
本実施形態で用いる、第2金属粉末を構成する金属は、Ni及びFeを含む合金であり、融点が第1金属粉末に比べて高いものである。Ni及びFeを含む合金についての説明は、前述の<第2金属>と同様である。
第2金属粉末における合金の融点は、250℃超であることが好ましく、300℃以上がより好ましく、500~1500℃がさらに好ましい。
第2金属粉末の融点が、前記の好ましい範囲の下限値超であると、はんだ継手の高温化をより図りやすくなる。
【0054】
第2金属粉末中のNiの含有量は、第2金属粉末の総質量に対して、好ましくは80質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは85質量%以上95質量%以下である。
第2金属粉末中のFeの含有量は、第2金属粉末の総質量に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上15質量%以下である。
第2金属粉末中のNi及びFeの含有量が、前記の好ましい範囲であると、金属間化合物がより早い段階で形成され、ボイドの発生を抑制することができる。
【0055】
第2金属粉末は、粒径が0.1~1000μmであることが好ましく、1~100μmがより好ましく、5~20μmがさらに好ましい。
第2金属粉末の粒径が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、濡れ性を確保しやすくなり、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、金属間化合物をより形成しやすくなる。
【0056】
[混合工程]
混合工程では、前記の第1金属粉末と第2金属粉末とを混合して、金属粉末混合物を調製する。
両者を混合する際の配合比は、前記第1金属粉末を30~95質量部、及び前記第2金属粉末を5~70質量部の割合で混合することが好ましく、前記第1金属粉末を50~90質量部、及び前記第2金属粉末を10~50質量部の割合で混合することがより好ましく、前記第1金属粉末を70~80質量部、及び前記第2金属粉末を20~30質量部の割合で混合することが特に好ましい。
両者を混合する際の配合比を、前記の好ましい範囲とすることで、ボイドの発生が抑えられ、シェア強度が保たれやすくなり、また、はんだ接合部の耐熱性がより向上する。
【0057】
[圧延工程]
圧延工程では、前記混合工程で調製した前記金属粉末混合物を圧延し、所望の形状に成形してプリフォームはんだを作製する。
金属粉末混合物を圧延する方法には、公知の圧延方法を使用することができ、例えば、双ロール式の圧延機などを用いて加工すればよい。圧延回数、金属粉末混合物に加える圧延荷重については、目的とするプリフォームはんだの所望の形状、厚さに応じて適宜設定すればよい。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係るプリフォームはんだの製造方法においては、第1金属粉末と第2金属粉末とを混合して、金属粉末混合物を調製する混合工程、及び圧延工程を含む。前記混合工程において、第2金属粉末としてNi及びFeを含む合金を採用し、かつ、前記金属粉末混合物を圧延して加工するため、金属組織中のSnとNiとの金属間化合物の生成が抑えられ、はんだ接合の際にボイドの発生がより抑制されたプリフォームはんだを容易に製造することができる。
本実施形態に係るプリフォームはんだの製造方法は、上述した第1実施形態又は第2実施形態に係るプリフォームはんだを製造する方法として有用である。
【0059】
本発明に係るプリフォームはんだの製造方法は、上述した実施形態に限定されず、例えば、上記の混合工程及び圧延工程に加え、その他工程をさらに含む実施形態でもよい。
【0060】
また、本発明に係るプリフォームはんだの製造方法は、上述した実施形態に限定されず、前記第1金属粉末及び前記第2金属粉末以外の金属粉末(以下これを「第3金属粉末」ともいう)を用いてもよい。
前記第3金属粉末は、前記第1金属粉末及び前記第2金属粉末と組成が異なれば、特に組成の制限は無く、Cu、Ag、Al、Niの各単体金属からなる粉末、又はこれら単体金属の2つ以上の元素で形成された合金が好ましい。
第3金属粉末は、粒径が0.1~1000μmであることが好ましく、1~100μmがより好ましく、5~50μmがさらに好ましい。
第3金属粉末を構成する金属は、1種を含んでもよいし、2種以上を含んでもよい。
【0061】
(はんだ継手の製造方法)
本発明に係るはんだ継手の製造方法の一実施形態は、上述した(プリフォームはんだの製造方法)により製造されたプリフォームはんだを使用して、対象物間に接合部位を形成する製造方法である。
かかる製造方法を適用して接合する対象物は、特に限定されるものではない。例えば、かかる製造方法を適用することで、半導体素子と基板とを接合することができる。
半導体素子としては、炭化ケイ素(SiC)チップ、Siチップ等が挙げられる。
基板としては、回路基板、セラミックス基板、メタル基板、DCB(Direct Copper Bonding)基板等が挙げられる。基板上の電極は、例えば、Cu電極、又はCu電極上にSnめっき、Niめっき、Ni-Auめっき、Ni-Pdめっき若しくはNi-Pd-Auめっきのいずれかが処理されたものでもよい。
なお、接合の際に、プリフォームはんだにおいて接合面となる一方もしくは両方の面、半導体素子の接合面、又は基板の接合面に、フラックスを予め塗布しておいてもよい。
【0062】
半導体素子と基板とを接合する際の温度は、例えば120℃以上400℃以下が好ましく、200℃以上400℃以下であってもよいし、250℃以上400℃以下であってもよいし、本実施形態のはんだ継手の製造方法は、高温条件(250℃以上)での接合に有用である。
【0063】
対象物を接合する際の雰囲気は、窒素雰囲気でもよいし、還元雰囲気でもよい。
窒素雰囲気の場合、接合する際に加える圧力を、好ましくは0.1MPa以上10MPa以下に調整する。このように窒素雰囲気下で、対象物を接合することにより、ボイドの発生を抑える効果が高められる。
還元雰囲気の場合、無加圧で、対象物を接合することが可能である。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係るはんだ継手の製造方法においては、リフロー中に、Ni及びFeを含む合金と、Snを含む第1金属とが反応して、金属間化合物を生成するため、はんだ接合部の耐熱性がより向上する。加えて、はんだ接合部におけるボイドの発生がより抑制されるため、シェア強度が高められたはんだ継手を製造することができる。
本実施形態に係るはんだ継手の製造方法は、特に、パワー半導体素子のような高温条件での動作時に、溶融しない高温はんだが求められる用途に有用である。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本実施例では、以下に示す金属粉末を用いた。
金属粉末の粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて、平均粒径を体積基準で測定した。
金属粉末の融点は、第1金属粉末については日立ハイテクサイエンス社製のDSC7020を使用し、第2金属粉末についてはNETZSCH社製のDSC404-F3Pegasusを使用し、示差走査熱量測定(DSC)により測定した。
【0066】
第1金属粉末:
Sn100質量%の金属粉末(Sn100質量%粉)粒径10μm、融点232℃
Sn100質量%の金属粉末(Sn100質量%粉)粒径20μm、融点232℃
Sn100質量%の金属粉末(Sn100質量%粉)粒径30μm、融点232℃
Sn100質量%の金属粉末(Sn100質量%粉)粒径35μm、融点232℃
Sn42質量%とBi58質量%との合金からなる金属粉末(Sn42Bi58質量%粉)、粒径10μm、融点139℃
Sn48質量%とIn52質量%との合金からなる金属粉末(Sn48In52質量%粉)、粒径10μm、融点116℃
【0067】
第2金属粉末:
Ni90質量%とFe10質量%との合金からなる金属粉末(Ni-10質量%Fe粉)、粒径10μm
Ni99質量%とFe1質量%との合金からなる金属粉末(Ni-1質量%Fe粉)、粒径10μm
Ni80質量%とFe20質量%との合金からなる金属粉末(Ni-20質量%Fe粉)、粒径10μm
【0068】
第3金属粉末:
Cu100質量%の金属粉末(Cu100質量%粉)粒径10μm
Ni100質量%の金属粉末(Ni100質量%粉)粒径10μm
Fe100質量%の金属粉末(Fe100質量%粉)粒径10μm
【0069】
<はんだ付け材料の製造>
上記の第1金属粉末、第2金属粉末及び第3金属粉末をそれぞれ作製した。これらの金属粉末を用いて、各例のはんだ付け材料を製造した。
【0070】
(実施例1)
混合工程:
第1金属粉末として粒径10μmのSn100質量%粉を88質量部と、第2金属粉末として粒径10μmのNi-10質量%Fe粉を12質量部とを撹拌して、金属粉末混合物を調製した。
圧延工程:
次に、調製した金属粉末混合物を、双ロール圧延機のホッパーに導入し、圧延回数を1回とし、圧延荷重が約20kNになるようにして、帯状の圧延材を得た。このようにして得られた圧延材を、プレス機で打ち抜いて、厚さ0.15mm、5mm×5mmのスクエア形状のプリフォームはんだを作製した。
【0071】
作製した実施例1のプリフォームはんだについて、電子顕微鏡(日本電子社製、JSM-7000F)を使用し、印加電圧15kVの条件で、厚さ方向の断面観察(倍率300倍)を実施した。
この結果、実施例1のプリフォームはんだは、
図1に示したSEM像と同様の形態、すなわち、連続相である第1の相と、第1の相に分散している第2の相と、を備えた金属組織を有し、第1の相には、金属の結晶粒界が存在している形態であることが確認された。
【0072】
(実施例2~17)
表1、2に示すように、第1金属粉末と第2金属粉末とを所定の混合比で用いた以外は、実施例1と同様にして、混合工程、圧延工程を順次行うことにより、厚さ0.15mm、5mm×5mmのスクエア形状のプリフォームはんだを作製した。
【0073】
(比較例1)
第1金属粉末として粒径10μmのSn100質量%粉を88質量部と、第2金属粉末として粒径10μmのNi-10質量%Fe粉を12質量部とを撹拌して、金属粉末混合物を調製した。
次に、この金属粉末混合物を88.5質量部と、以下に示すフラックスを11.5質量部とを混合して、はんだペーストを調製した。
【0074】
フラックス(組成):ロジン46質量%、溶剤32質量%、チキソ剤8質量%、活性剤14質量%。
【0075】
(比較例2~4)
表2に示すように、第1金属粉末と第3金属粉末とを所定の混合比で用いた以外は、実施例1と同様にして、混合工程、圧延工程を順次行うことにより、厚さ0.15mm、5mm×5mmのスクエア形状のプリフォームはんだを作製した。
【0076】
<はんだ継手の製造>
作製した各例のプリフォームはんだを、厚さが0.5mmであり50mm×50mmであるCu基板に搭載し、そのプリフォームはんだ上に、厚さが0.4mmであり5mm×5mmのSi基板を搭載して、はんだ付けを行った。
その後、ピーク温度を250℃とし、冷却速度を2℃/secとするプロファイルで、ギ酸雰囲気にて、無加圧で、又は加圧しながら、リフロー炉にてはんだ付けを行い、はんだ継手を作製した。
実施例1、4、5、11~13、16、17、比較例1~4の各プリフォームはんだを用いた場合、無加圧ではんだ付けを行い、はんだ継手を作製した。
実施例2、3、6~10、14、15の各プリフォームはんだを用いた場合、加圧しながらはんだ付けを行い、はんだ継手を作製した。
【0077】
<評価>
作製したはんだ継手について、接合部位における金属間化合物、第1金属の各含有量及びボイド率、並びにシェア強度を、以下のようにしてそれぞれ測定した。これらの測定、評価の結果を表1、2に示した。
【0078】
[接合部位における金属間化合物及び第1金属の各含有量、ボイド率の測定]
作製したはんだ継手について、電子顕微鏡(日本電子社製、JSM-7000F)により、断面SEM写真を撮影した。その断面SEM写真において、上下部材を除く、プリフォームはんだで接合された箇所を全体として、ボイド率(面積%)を算出した。
また、西華デジタルイメージ株式会社の画像解析ソフトウェア「Scandium」を用い、接合部位における金属間化合物の含有量、Snの含有量、Biの含有量及びInの含有量(それぞれ面積%)を、コントラストから算出した。
なお、接合部位における金属間化合物の含有量、Snの含有量、Biの含有量、Inの含有量及びボイド率の各面積%の合計を、100面積%とした。
【0079】
[シェア強度の測定]
作製したはんだ継手について、せん断強度測定装置(レスカ社製、STR-1000)により、6.0mm/min、250℃の条件で、接合部位におけるシェア強度(N)を測定した。
測定されたシェア強度が、1.0N以上のものを「○」、1.0N未満のものを「×」と判定した。
【0080】
【0081】
【0082】
表1、2に示した結果から、本発明を適用した実施例1~17のプリフォームはんだは、比較例1のペースト及び比較例2~4のプリフォームはんだに比べて、ボイド率が低い値であり、250℃の高温条件で、はんだ接合の際にボイドの発生をより抑制できることが確認できる。
加えて、これら実施例1~17のプリフォームはんだを使用して形成した、はんだ継手は、シェア強度が高められていることも確認できる。
【符号の説明】
【0083】
1 プリフォームはんだ、
10 第1の相、
15 結晶粒界、
20 第2の相
【要約】
【課題】はんだ接合の際にボイドの発生がより抑制されたプリフォームはんだ及びその製造方法、並びにそのプリフォームはんだを使用したはんだ継手の製造方法を提供する。
【解決手段】Snを含む第1金属と、Ni及びFeを含む合金からなる第2金属と、を含有する、プリフォームはんだを採用する。あるいは、連続相である第1の相10と、第1の相10に分散している第2の相20と、を備えた金属組織を有し、第1の相10は、Snを含み、第2の相20は、Ni及びFeを含む合金からなり、第1の相10には、金属の結晶粒界15が存在している、プリフォームはんだ1を採用する。
【選択図】
図1