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特許7014996植物の栽培施設の管理システムおよび管理方法
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  • 特許-植物の栽培施設の管理システムおよび管理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】植物の栽培施設の管理システムおよび管理方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/18 20060101AFI20220126BHJP
   A01G 7/02 20060101ALI20220126BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20220126BHJP
   A01G 9/12 20060101ALI20220126BHJP
   A01G 24/50 20180101ALI20220126BHJP
【FI】
A01G9/18
A01G7/02
A01G7/00 601A
A01G9/12 A
A01G24/50
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017243580
(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公開番号】P2019106965
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】藤田 穣
(72)【発明者】
【氏名】村山 浩
【審査官】佐藤 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-124167(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0229463(US,A1)
【文献】特開2006-197871(JP,A)
【文献】特開2011-019438(JP,A)
【文献】特開2005-312391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00-7/02
A01G 9/00-9/08
A01G 9/12
A01G 9/14-9/26
A01G 24/00
A01G 31/00-31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
茎が斜め方向に誘引される複数の植物が、設定された領域を囲うように栽植された栽培施設の管理システムにおいて、
前記領域内に、二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置と、
前記複数の植物から所定距離内に設置された照度センサと、
前記栽培施設内に設置され、前記照度センサで検出された照度が所定値未満のときには連続で運転し、前記検出された照度が所定値以上のときには所定時間ごとの間欠運転を行うファンと
を備えることを特徴とする植物の栽培施設の管理システム。
【請求項2】
前記領域内を照明する補光装置をさらに備える
ことを特徴とする請求項に記載の植物の栽培施設の管理システム。
【請求項3】
茎が斜め方向に誘引される複数の植物が、設定された領域を囲うように栽植された栽培施設の管理システムにおいて、
前記領域内に、二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置と、
前記領域内を照明する補光装置と、
前記複数の植物から所定距離内に設置された照度センサと、
前記栽培施設内の空気を循環させるファンと、
前記照度センサで検出された照度が所定値未満であると判定すると、前記二酸化炭素供給装置を休止させ、前記補光装置を消灯させつつ、前記ファンを連続運転させ、前記照度センサで検出された照度が所定値以上になったと判定すると、前記二酸化炭素供給装置により前記領域内に二酸化炭素を供給させ、前記補光装置を点灯させるとともに、前記ファンを所定時間ごとの間欠運転に切り替える制御装置と
を備えることを特徴とする植物の栽培施設の管理システム。
【請求項4】
前記栽培施設は、長方形の袋に土壌が収容され、2つの長辺を上側および下側にして地面に立てて前記領域を囲うように複数並べられた袋培地を備え、この袋培地に前記植物が栽植されている
ことを特徴とする請求項1~3いずれか1項に記載の植物の栽培施設の管理システム。
【請求項5】
前記領域は、東西方向よりも南北方向に長い形状で形成される
ことを特徴とする請求項1~いずれか1項に記載の植物の栽培施設の管理システム。
【請求項6】
茎が斜め方向に誘引される複数の植物が、設定された領域を囲うように栽植された栽培施設に設置された、前記領域内に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置と、前記領域内を照明する補光装置と、前記複数の植物から所定距離内に設置された照度センサと、前記栽培施設内の空気を循環させるファンとに接続された制御装置が、
前記照度センサで検出された照度が所定値未満であると判定すると、二酸化炭素供給装置を休止させ、前記補光装置を消灯させつつ、前記ファンを連続運転させ、
前記照度センサで検出された照度が所定値以上になったと判定すると、前記二酸化炭素供給装置により前記領域内に二酸化炭素を供給させ、前記補光装置を点灯させるとともに、前記ファンを所定時間ごとの間欠運転に切り替える
ことを特徴とする植物の栽培施設の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の光合成を促進させるために二酸化炭素(CO2)供給装置を設置した植物の栽培施設の管理システムおよび管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの植物の栽培施設には、光合成に不可欠なCO2を供給するためのCO2供給装置が設置されている。CO2供給装置は、植物の畝に沿って設置された管の複数の穴からCO2を放出することで、栽培施設内にCO2を供給している。CO2供給装置から栽培施設内にCO2を供給することにより、植物の光合成が促進される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-19438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、植物の施設栽培における栽培方式の1つとして、ハイワイヤー誘引栽培がある。ハイワイヤー誘引栽培は、成長に伴って茎の誘引が必要なトマト等の栽培に用いられる。具体的には、軒高が高い施設の梁下の高い位置に地面と平行に誘引線を張り、この誘引線から誘引紐を所定間隔で垂らし、この誘引紐に植物の茎を固定することで植物を直立方向に誘引する栽培方式である。ハイワイヤー誘引栽培を行うことで、茎長が長い植物であっても植物体全体に光が当たりやすくなる。
【0005】
しかし、ハイワイヤー誘引栽培が行われる植物は、成長の効率を上げるために地面に近い下部の葉が摘葉されるため、施設内の低い位置は空気が通りやすい状態になり、CO2供給装置によりCO2を供給してもすぐに拡散されてしまう。そのため、植物の光合成を有効に促進させるためには大量のCO2を供給して施設内全体のCO2濃度を高める必要があり、コストや手間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、栽培施設内の植物の光合成を効率よく促進させるための植物の栽培施設の管理システムおよび管理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の植物の栽培施設の管理システムは、茎が斜め方向に誘引される複数の植物が、設定された領域を囲うように栽植された栽培施設において、前記領域内に、二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置と、前記複数の植物から所定距離内に設置された照度センサと、前記栽培施設内に設置され、前記照度センサで検出された照度が所定値未満のときには連続で運転し、前記検出された照度が所定値以上のときには所定時間ごとの間欠運転を行うファンとを備えることを特徴とする。
【0008】
また本発明の植物の栽培施設の管理方法は、茎が斜め方向に誘引される複数の植物が、設定された領域を囲うように栽植された栽培施設に設置された、前記領域内に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置と、前記領域内を照明する補光装置と、前記複数の植物から所定距離内に設置された照度センサと、前記栽培施設内の空気を循環させるファンとに接続された制御装置が、前記照度センサで検出された照度が所定値未満であると判定すると、二酸化炭素供給装置を休止させ、前記補光装置を消灯させつつ、前記ファンを連続運転させ、前記照度センサで検出された照度が所定値以上になったと判定すると、前記二酸化炭素供給装置により前記領域内に二酸化炭素を供給させ、前記補光装置を点灯させるとともに、前記ファンを所定時間ごとの間欠運転に切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の栽培施設の管理システムおよび管理方法によれば、栽培施設内の植物の光合成を効率よく促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態による栽培施設の管理システムを搭載した栽培施設を横から見た状態を示す図である。
図2】一実施形態による栽培施設の管理システムを搭載した栽培施設を上から見た状態を示す図である。
図3】一実施形態による栽培施設の管理システム内の制御装置で実行される処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態として、トマトを栽培する施設に適用する管理システムについて図1および図2を参照して説明する。図1は、本実施形態による栽培施設管理システム1を搭載した栽培施設Xを横から見た状態を示す図であり、図2は、上から見た状態を示す図である。
【0012】
栽培施設Xは、内部の地面上に、所定領域Aを囲うように並べて設置された袋培地101~114を備える。各袋培地101~114は、植物苗を栽植する土壌が長方形の袋に収容されたものである。これらの袋培地101~114の長方形の2つの長辺を上側および下側にして地面上に立てて領域Aを囲うように設置することで、地面上に枡形状が形成される。
【0013】
また、栽培施設X内の梁下の高い位置、例えば地面から200~220cm程度の高さ位置に、袋培地101~114の位置に対応するように、誘引線20が設置される。誘引線20には、所定間隔で複数の誘引紐301~314が固定され、下方に垂直に垂らされる。
【0014】
各袋培地101~114の上面には、それぞれ2つのトマト苗101a、101b・・・114a、114bが栽植される。栽植されたトマト苗101a~114bは、その成長に伴って、適宜異なる高さ位置で異なる誘引紐301~314に茎がクリップ止めされることで、栽植位置から地面に対して斜め45度程度の方向に誘引される。
【0015】
例えば、トマト苗101aは、栽植位置からT1の高さ位置で誘引紐301にクリップ止めされ、T2の高さ位置で誘引紐302にクリップ止めされ、T3の高さ位置で誘引紐303にクリップ止めされることで、地面に対して45度になるように茎が誘引される。同様にして、他のトマト苗101b~114bもそれぞれ、成長に伴って茎が誘引される。
【0016】
このように茎が斜め方向に誘引されることで、トマトのように茎が7~8mと長く伸びる作物であっても、3~4mの軒高の栽培施設で栽培することが可能になる。また、トマト苗は、ある程度の長さに成長すると地面に近い下部の老化した葉が摘葉されるが、斜め方向に誘引されることにより、地面に近い部分まで領域Aが葉で囲われた状態になる。また、葉がついている部分に関しても、直立方向に誘引するよりも斜め方向に誘引したほうが葉が密集した状態になるめ、袋培地101~114で形成された枡形状の上部にトマト苗101a~114bの葉が壁状に形成され、さらに高さの高い枡形状になる。
【0017】
また、栽培施設XにはCO2供給装置40が設置される。当該CO2供給装置40には管41が接続されており、図2に示すように、管41が領域A内を通るように地面上に設置される。この管41には複数の穴が空けられており、CO2供給装置40の稼動によりこれらの複数の穴から領域A内にCO2が供給され、トマト苗101a~114bの光合成が促進される。
【0018】
また、領域A内には補光装置50が設置される。補光装置50は、光合成に寄与する周波数の光を照射する照明装置で構成される。補光装置50が点灯して領域A内が照明されることにより、トマト苗101a~114bの光合成がさらに促進される。
【0019】
また、栽培施設X内の上部にはファン61、62が設置される。ファン61、62が稼動することにより、栽培施設X内の空気が循環され、トマト苗101a~114bの光合成がさらに促進される。図1においては、栽培施設X内にファンが2台設置された状態を示しているが、この台数には限定されず、栽培施設の大きさや栽植する植物の種類等により、1台または3台以上にしてもよい。
【0020】
また、栽培施設Xの近傍には、照度センサ70が設置される。照度センサ70は、日の出から日の入りまでの間、太陽光による照度を検出する。図1においては、照度センサ70を栽培施設X内の壁面に設置した状態を示しているが、この場所には限定されず、栽培施設X内の植物体から所定距離内であれば、栽培施設Xの外部に設置してもよい。
【0021】
また、栽培施設Xの外部には、上述したCO2供給装置40、補光装置50、ファン61、62、および照度センサ70に接続された制御装置80が設置される。制御装置80で実行される処理について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0022】
まず、日の出前であり、照度センサ70で検出された照度値が所定値(例えば、2000lx)未満であると判定すると、CO2供給装置40を休止させ、補光装置50を消灯させつつ、ファン61、62を連続運転させる(S1)。そして、日の出時刻が経過し、照度センサ70で検出された照度値に基づいて、太陽光による照度が所定値以上になったと判定すると(S2の「YES」)、ステップS3に移行する。ステップS3では、CO2供給装置40を稼動させて管41から領域AへのCO2供給を開始させるとともに、補光装置50を点灯させ、ファン61、62を所定時間ごとの間欠運転に切り替える(S3)。ファン61、62の間欠運転は、例えば、1分ごとにON/OFFを切り替えることで実行される。
【0023】
領域A上には、上述したように枡形状の空間が形成されており、またファン61、62が連続運転から間欠運転に切り替えて空気の対流が抑えられるため、CO2供給装置40から供給されたCO2は拡散され難くなり、領域A内はCO2濃度が高い状態が保たれる。ここで、ファン61、62を完全に停止させて空気の対流を止めると、かえってトマト苗101a~114bの光合成が抑制されてしまう。そのため、ファン61、62を間欠運転に切り替えることで、光合成に必要な空気の対流を起こしつつ、過度なCO2の拡散を防止することができ、供給されたCO2がトマト苗101a~114bの光合成に有効に利用される。また、トマト苗101a~114bは、上述したように斜め誘引により葉が密集するように栽植されているため領域Aの内側の葉には太陽光が当たり難くなるが、補光装置50が点灯することで照度が補われ、光合成が促進される。
【0024】
そして、日の入り近くになり、照度センサ70で検出された照度値に基づいて、太陽光による照度が所定値未満になったと判定すると(S4の「YES」)、ステップS1に戻る。ステップS1に戻ると、翌日の日の出まで、CO2供給装置40を休止させるとともに補光装置50を消灯させ、ファン61、62を連続運転に切り替えて運転させる。
【0025】
以上の実施形態によれば、栽培施設内でCO2供給装置により供給されたCO2を効率よく植物の光合成に利用させることができるため、CO2の供給量を従来よりも少なくしても植物の成長を有効に促進させることができる。また、上述した実施形態では、トマト苗で囲われた空間は空気が拡散し難くなっているため、栽培施設内の温度が高温になり側窓を開けても、供給したCO2は継続して有効に光合成に利用される。
【0026】
上述した実施形態において、領域Aを東西方向よりも南北方向に長い形状で形成し、この領域Aを囲うように袋培地101~114を並べることで、東西方向から差し込む太陽光がなるべく多くの植物体に当たるようにしてもよい。
【0027】
なお、上述した実施形態においては、袋培地に栽植したトマト苗を用いる場合について説明したが、対象とする作物はトマトに限定されず、成長に伴って茎の誘引処理を行う植物であれば、当該システムの適用対象とすることが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 栽培施設管理システム
20 誘引線
40 二酸化炭素(CO2)供給装置
41 管
50 補光装置
61,61 ファン
70 照度センサ
80 制御装置
101~114 袋培地
101a~114b トマト苗
301~314 誘引紐
図1
図2
図3