(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20220126BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220126BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20220126BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20220126BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20220126BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20220126BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/013
C08K5/29
C09D163/00
C09J163/00
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2018006500
(22)【出願日】2018-01-18
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】田村 賢
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/029993(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/021531(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0085200(US,A1)
【文献】国際公開第2009/075252(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/141347(WO,A1)
【文献】特開平11-256013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00
C08K 3/013
C08K 5/29
C09D 163/00
C09J 163/00
H01L 23/29
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、
(B)エステル構造含有ポリチオール化合物、及び
(C)分子量が150~13000であるカルボジイミド
を含む樹脂組成物
(但し、はんだを有する導電材料を除く)。
【請求項2】
前記樹脂組成物中の前記カルボジイミドの含有量が、前記樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合に、0.01~50質量%である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
さらに(E)無機充填材を含む、請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機充填材の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量部とした場合に、1~70質量部である、請求項3記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機充填材が、シリカ、炭酸カルシウム、タルクおよびマイカから成る群より選択される少なくとも1種を含む、請求項3又は4記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物中のエポキシ基とチオール基の当量比(エポキシ基/チオール基)が、0.50~10.0である、請求項1~5のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項7】
さらに(D)硬化促進剤を含む、請求項1~6のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記硬化促進剤が潜在性硬化促進剤である、請求項7記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記潜在性硬化促進剤が、アミン化合物のエポキシアダクト、アミン化合物の尿素アダクト、及びエポキシアダクトの水酸基にイソシアナート化合物を付加反応させた化合物、からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項8記載の樹脂組成物。
【請求項10】
一液型の樹脂組成物である、請求項1~9のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項記載の樹脂組成物を含む接着剤。
【請求項12】
カメラモジュールの構成部材間の接着用である、請求項11記載の接着剤。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項記載の樹脂組成物を含む封止剤。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか1項記載の樹脂組成物を含むコーティング剤。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか1項記載の樹脂組成物を熱硬化させてなる、硬化物。
【請求項16】
請求項15に記載の硬化物を含む、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリチオール化合物を硬化剤として用いたエポキシ樹脂組成物は、低温硬化性、速硬化性が良好であるため、接着剤、封止剤、コーティング剤等、様々な用途に使用されている。ポリチオール化合物の中でもエステル構造含有ポリチオール化合物は、合成が容易であり、安価に製造可能なことからしばしば用いられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許文献1:特開平11-256013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エステル構造含有ポリチオール化合物は、エステル構造が加水分解を受けやすいため、エステル構造含有ポリチオール化合物を含有するエポキシ樹脂組成物においても耐湿性に関して改善の余地があった。そこで、本発明の課題は、耐湿性に優れる、エステル構造含有ポリチオール化合物を含有するエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の事項を含んでいる。
〔1〕(A)エポキシ樹脂、
(B)エステル構造含有ポリチオール化合物、及び
(C)分子量が150~13000であるカルボジイミド
を含む樹脂組成物。
〔2〕前記樹脂組成物中の前記カルボジイミドの含有量が、前記樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合に、0.01~50質量%である、前記〔1〕記載の樹脂組成物。
〔3〕さらに(E)無機充填材を含む、前記〔1〕又は〔2〕記載の樹脂組成物。
〔4〕前記無機充填材の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量部とした場合に、1~70質量部である、前記〔3〕記載の樹脂組成物。
〔5〕前記無機充填材が、シリカ、炭酸カルシウム、タルクおよびマイカから成る群より選択される少なくとも1種を含む、前記〔3〕又は〔4〕記載の樹脂組成物。
〔6〕前記樹脂組成物中のエポキシ基とチオール基の当量比(エポキシ基/チオール基)が、0.50~10.0である、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項記載の樹脂組成物。
〔7〕さらに(D)硬化促進剤を含む、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項記載の樹脂組成物。
〔8〕前記硬化促進剤が潜在性硬化促進剤である、前記〔7〕記載の樹脂組成物。
〔9〕前記潜在性硬化促進剤が、アミン化合物のエポキシアダクト、アミン化合物の尿素アダクト、及びエポキシアダクトの水酸基にイソシアナート化合物を付加反応させた化合物、からなる群より選択される少なくとも1種を含む、前記〔8〕記載の樹脂組成物。
〔10〕一液型の樹脂組成物である、前記〔1〕~〔9〕のいずれか1項記載の樹脂組成物。
〔11〕前記〔1〕~〔10〕のいずれか1項記載の樹脂組成物を含む接着剤。
〔12〕カメラモジュールの構成部材間の接着用である、前記〔11〕記載の接着剤。
〔13〕前記〔1〕~〔10〕のいずれか1項記載の樹脂組成物を含む封止剤。
〔14〕前記〔1〕~〔10〕のいずれか1項記載の樹脂組成物を含むコーティング剤。
〔15〕前記〔1〕~〔10〕のいずれか1項記載の樹脂組成物を熱硬化させてなる、硬化物。
〔16〕前記〔15〕に記載の硬化物を含む、電子部品。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、保存安定性、低温硬化性、耐湿性に優れる、エステル構造含有チオールを含有するエポキシ樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)エステル構造含有ポリチオール化合物、及び(C)分子量が150~13000であるカルボジイミドを含有する。
本実施形態によれば、分子量が150~13000であるカルボジイミドを使用することによって、安価なエステル構造含有ポリチオール化合物を硬化剤として用いた場合であっても、優れた耐湿性を有する樹脂組成物を得ることができる。すなわち、エステル構造含有チオールを用いつつも、優れた耐湿性を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0008】
本実施形態に係る樹脂組成物は、「一液型」の樹脂組成物であることが好ましい。「一液型」の樹脂組成物とは、硬化剤とエポキシ樹脂とが予め混合した組成物であって、熱を加えることによって硬化する性質を有する組成物を意味する。
【0009】
以下に、(A)~(C)の各成分について詳述する。
【0010】
[(A):エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有するものであれば特に限定されるものではない。好ましくは、エポキシ樹脂としては、平均して1分子当り2以上のエポキシ基を有する樹脂が用いられる。
エポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、カテコール、レゾルシノールなどの多価フェノールやグリセリンやポリエチレングリコールなどの多価アルコールとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;p-ヒドロキシ安息香酸、β-ヒドロキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエステル;更にはエポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、環式脂肪族エポキシ樹脂、その他ウレタン変性エポキシ樹脂;等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0011】
これらの中でも、エポキシ樹脂としては、高耐熱性及び低透湿性を保つ等の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びジシクロペンタジエン構造を有するエポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、及びジシクロペンタジエン構造を有するエポキシ樹脂、からなる群から選ばれる少なくとも一種がより好ましい。
【0012】
エポキシ樹脂は、液状であっても、固形状であっても、液状樹脂と固形状樹脂の両方を用いてもよい。ここで、「液状」及び「固形状」とは、25℃でのエポキシ樹脂の状態である。塗工性、加工性、接着性の観点から、使用するエポキシ樹脂全体の少なくとも10質量%以上が液状であるのが好ましい。
【0013】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、50~1000g/eq、好ましくは100~500g/eq、より好ましくは150~300g/eqである。ここで、エポキシ当量とは、1当量のエポキシ基あたりのエポキシ樹脂の質量であり、JIS K7236(2009)に準拠して測定することができる。
【0014】
液状エポキシ樹脂の具体例として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828EL」、「jER827」、)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER807」)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER152」)ナフタレン型2官能エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032」、「HP-4032D」)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂/ビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ZX-1059」)、水素添加された構造のエポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX-8000」)、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製「PB-3600」)がある。中でも高耐熱であり低粘度である三菱ケミカル社製の「jER828EL」「jER827」、「jER807」および「ZX-1059」が好ましく、「jER828EL」がより好ましい。また、固形エポキシ樹脂の具体例として、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4700」)、ジシクロペンタジエン型多官能エポキシ樹脂(DIC社製「HP-7200」)、ナフトール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ESN-475V」)、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3000H」、「NC-3000L」、三菱ケミカル社製「YX-4000」)などが挙げられる。
【0015】
好適なエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂/ビスフェノールF型エポキシ樹脂混合物(新日鉄住金化学社製「ZX-1059」)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER152」)、及びジシクロペンタジエン型多官能エポキシ樹脂(DIC社製「HP-7200」)等が挙げられる。
【0016】
樹脂組成物中の(A)成分であるエポキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合に、例えば、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、例えば、95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、特に好ましくは75質量%以下、最も好ましくは70質量%以下である。
【0017】
[(B):エステル構造含有ポリチオール化合物]
エステル構造含有ポリチオール化合物としては、分子内にエステル構造、及び2個以上のチオール基を含む化合物であれば特に限定されない。
エステル構造含有ポリチオール化合物は、好ましくは、3官能~6官能化合物(1分子中のチオール基の個数が3~6である化合物)であることが好ましい。
【0018】
エステル構造含有ポリチオール化合物は、樹脂組成物中のエポキシ基とチオール基の当量比(エポキシ基/チオール基)が、0.50~10.0となるような量で含まれていることが好ましい。より好ましくは、当量比(エポキシ基/チオール基)は、0.75~5.0、より好ましくは0.80~2.0である。
尚、チオール基の当量とは、1当量のチオール基あたりのエステル構造含有ポリチオール化合物の質量である。
【0019】
(A)成分であるエポキシ樹脂の含有量を100質量部とした場合、(B)成分であるエステル構造含有ポリチオール化合物の含有量は、例えば、1~200質量部、好ましくは5~150質量部、より好ましくは50~100質量部である。
【0020】
エステル構造含有ポリチオール化合物としては、例えば、ポリオールとメルカプト有機酸との部分エステル、完全エステルが挙げられる。ここで、部分エステルとは、ポリオールとカルボン酸とのエステルであって、ポリオールのヒドロキシ基の一部がエステル結合を形成しているもの、完全エステルとは、ポリオールのヒドロキシ基が全てエステル結合を形成しているものを意味する。前記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトール等が挙げられる。前記メルカプト有機酸としては、例えば、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸(例:3-メルカプトプロピオン酸)、メルカプト酪酸(例:3-メルカプト酪酸、4-メルカプト酪酸)等のメルカプト脂肪族モノカルボン酸;ヒドロキシ酸とメルカプト有機酸とのエステル化反応によって得られるチオール基およびカルボキシ基を含有するエステル;メルカプトコハク酸、ジメルカプトコハク酸(例:2,3-ジメルカプトコハク酸)等のメルカプト脂肪族ジカルボン酸;メルカプト安息香酸(例:4-メルカプト安息香酸)等のメルカプト芳香族モノカルボン酸;等が挙げられる。前記メルカプト脂肪族モノカルボン酸の炭素数は、好ましくは2~8、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4、特に好ましくは3である。前記メルカプト有機酸の中で、炭素数が2~8のメルカプト脂肪族モノカルボン酸が好ましく、メルカプト酢酸、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプト酪酸および4-メルカプト酪酸がより好ましく、3-メルカプトプロピオン酸がさらに好ましい。
【0021】
ポリオールとメルカプト有機酸との部分エステルの具体例としては、トリメチロールプロパン ビス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン ビス(3-メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパン ビス(3-メルカプトブチラート)、トリメチロールプロパン ビス(4-メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール トリス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトール トリス(3-メルカプトプロピオナート)、ペンタエリスリトール トリス(3-メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール トリス(4-メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール テトラキス(4-メルカプトブチラート)等が挙げられる。
【0022】
ポリオールとメルカプト有機酸との完全エステルの具体例としては、エチレングリコール ビス(メルカプトアセテート)、エチレングリコール ビス(3-メルカプトプロピオナート)、エチレングリコール ビス(3-メルカプペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート)トブチラート)、エチレングリコール ビス(4-メルカプトブチラート)、トリメチロールプロパン トリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン トリス(3-メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパン トリス(3-メルカプトブチラート)、トリメチロールプロパン トリス(4-メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール テトラキス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオナート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトブチラート)、ペンタエリスリトール テトラキス(4-メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3-メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3-メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(4-メルカプトブチラート)等が挙げられる。好ましくは、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオナート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトブチラート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3-メルカプトプロピオナート)及びトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオナート)からなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0023】
また、エステル構造含有ポリチオール化合物として、例えば、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン等を使用することもできる。
【0024】
[(C)カルボジイミド]
(C成分)であるカルボジイミドとしては、分子量が150~13000であり、分子内に「-N=C=N-」構造を有する化合物であれば、特に限定されない。
カルボジイミドの分子量は、好ましくは170以上、より好ましくは185以上、更に好ましくは200以上である。このような範囲であれば、耐湿性の向上に加え、良好な保存安定性が得られる。
また、カルボジイミドの分子量は、好ましくは8000以下、好ましくは6000以下、より好ましくは5000以下、更に好ましくは4000以下である。このような範囲であれば、より優れた耐湿性が得られる。
なお、本明細書において、カルボジイミドがポリマーである場合、カルボジイミドの分子量とは、「質量平均分子量」を意味するものとする。
ここで、カルボジイミドの質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の質量平均分子量であり、具体的には、カルボジイミドのポリスチレン換算の質量平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0025】
カルボジイミドとしては、モノカルボジイミド、ポリカルボジイミドおよび環状カルボジイミドの何れも使用可能であるがポリカルボジイミドがより好ましい。カルボジイミドの質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の質量平均分子量であり、具体的には、カルボジイミドのポリスチレン換算の質量平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0026】
モノカルボジイミドとしては、例えば、下記式(I)で表されるような化合物を用いることができる。
(式I) RA-N=C=N-RB
式中、RA及びRBは、独立に、C1~C18アルキル基、C5~C18シクロアルキル基、又はアリール基を表す。アリール基は、C1~C18アルキル基、ニトロ基、アミノ基及びヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも一種の置換基により置換されていてもよい。
具体的なモノカルボジイミドとしては、N,N’-ジ-o-トルイルカルボジイミド、N,N’-ジフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N’-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’-ビス(プロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’-ジオクチルデシルカルボジイミド、N-トリイル-N’-シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジ-2,2-ジ-tert-ブチルフェニルカルボジイミド、N-トリイル-N’-フェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、およびN,N’-ジ-p-トルイルカルボジイミドなどが挙げられる。尚、これらのうち、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ビス(プロピルフェニル)カルボジイミド及びビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド、が好ましい。
【0027】
ポリカルボジイミドとしては、例えば、特許5693799号に記載された化合物を用いることができる。具体的には、当該文献に記載された化合物とは、下記式で表されるカルボジイミド化合物である。
(式):R2-(-N=C=N-R1-)m-R3
上式中、式中、R1は、同一であるか、または異なって、2価の芳香族基および/または脂肪族基を表す。
【0028】
R1が芳香族基の場合、R1は、少なくとも1個の炭素原子を有する脂肪族置換基および/または脂環式置換基および/または芳香族置換基で置換されていてもよい。ここで、これらの置換基は、ヘテロ原子を有してもよく、またこれらの置換基は、カルボジイミド基が結合する芳香族基の少なくとも1つのオルト位に置換してもよい。
【0029】
R2は、C1~C18アルキル、C5~C18シクロアルキル、アリール、C7~C18アラルキル、-R4-NH-COS-R5、-R4COOR5、-R4-OR5、-R4-N(R5)2、-R4-SR5、-R4-OH、R4-NH2、-R4-NHR5、-R4-エポキシ、-R4-NCO、-R4-NHCONHR5、-R4-NHCONR5R6または-R4-NHCOOR7である。
【0030】
R3は、-N=C=N-アリール、-N=C=N-アルキル、-N=C=N-シクロアルキル、-N=C=N-アラルキル、-NCO、-NHCONHR5、-NHCONHR5R6、-NHCOOR7、-NHCOS-R5、-COOR5、-OR5、エポキシ、-N(R5)2、-SR5、-OH、-NH2、-NHR5である。
【0031】
R4は、2価の芳香族基および/または脂肪族基を表す。
【0032】
R5およびR6は、同一であるか、または異なって、C1~C20アルキル、C3~C20シクロアルキル、C7~C18アラルキル、オリゴ/ポリエチレングリコール類および/またはオリゴ/ポリプロピレングリコール類である。
【0033】
R7は、R5の前記定義の1つを有するか、またはポリエステル基もしくはポリアミド基である。
【0034】
mは2以上の整数である。
【0035】
ポリカルボジイミドとしては、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(N,N’-ジ-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリイソプロピルフェニレン-2,4-カルボジイミド)、などが挙げられる。これらのうち、ポリ(1,3,5-トリイソプロピルフェニレン-2,4-カルボジイミド)が好ましい。
ポリカルボジイミドとしては、市販品を用いても良く、例えば、脂肪族ポリカルボジイミド(日清紡ケミカル社製「エラストスタブH-01」)、カルボジイミド変性イソシアネート(日清紡ケミカル社製「カルボジライトV-05」)などが挙げられる。これらのうち、カルボジイミド変性イソシアネート(日清紡ケミカル社製「カルボジライトV-05」)が好ましい。
環状カルボジイミドとしては、特許5856924号に記載の環状カルボジイミドなどが挙げられる。
【0036】
また、樹脂組成物中の(C)カルボジイミドの含有量は、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合に、0.01~50質量%であることが好ましく、0.1~35質量%であることがより好ましい。
【0037】
[(D):硬化促進剤]
本実施形態に係る樹脂組成物は、好ましくは、硬化促進剤を含有する。
【0038】
硬化促進剤としては、潜在性硬化促進剤が好ましく使用される。潜在性硬化促進剤は、特に一液型の樹脂組成物とする場合に重要な成分であり、常温(20℃±15℃(JISZ8703))ではエポキシ樹脂の硬化に寄与せず、加熱時にエポキシ樹脂の硬化を促進させる機能を有する添加剤である。
【0039】
潜在性硬化促進剤としては、液状潜在性硬化促進剤、固体分散型潜在性硬化促進剤のどちらでも使用可能であるが、固体分散型潜在性硬化促進剤がより好ましく使用される。
【0040】
液状潜在性硬化促進剤とは常温でエポキシに可溶な液体であり、常温では活性はないが、加熱することでエポキシ樹脂の硬化促進剤として機能する化合物である。
液状潜在性硬化促進剤としては、例えば、イオン液体が挙げられるがこれに限定されるものではない。
イオン液体を構成するカチオンとしては、例えば、イミダゾリウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピラゾニウムイオン、グアニジニウムイオン、ピリジニウムイオン等のアンモニウム系カチオン;テトラアルキルホスホニウムカチオン等のホスホニウムカチオン;トリエチルスルホニウムイオン等のスルホニウムカチオン等が挙げられる。
またイオン液体を構成するアニオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物系アニオン:メタンスルホンイオン等のアルキル硫酸系アニオン:トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロホスホン酸イオン、トリフルオロトリス(ペンタフルオロエチル)ホスホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、トリフルオロ酢酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン等の含フッ素化合物系アニオン:フェノールイオン、2-メトキシフェノールイオン、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールイオン等のフェノール系アニオン:アスパラギン酸イオン、グルタミン酸イオン等の酸性アミノ酸イオン:グリシンイオン、アラニンイオン、フェニルアラニンイオン等の中性アミノ酸イオン:N-ベンゾイルアラニンイオン、N-アセチルフェニルアラニンイオン、N-アセチルグリシンイオン、N-アセチルグリシンイオン等のN-アシルアミノ酸イオン:ギ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N-メチル場尿酸、安息香酸イオン等のカルボン酸系アニオンが挙げられる。
【0041】
固体分散型潜在性硬化促進剤とは、常温ではエポキシ樹脂に不溶の固体であり、加熱することにより可溶化し、エポキシ樹脂の硬化促進剤として機能する化合物である。
【0042】
固体分散型潜在性硬化促進剤として、例えば、常温で固体のイミダゾール化合物、および固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
前記常温で固体のイミダゾール化合物としては、例えば、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ベンジル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2-メチルイミダゾリル-(1))-エチル-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2′-メチルイミダゾリル-(1)′)-エチル-S-トリアジン・イソシアヌール酸付加物、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール-トリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール-トリメリテイト、N-(2-メチルイミダゾリル-1-エチル)-尿素、N,N′-(2-メチルイミダゾリル-(1)-エチル)-アジボイルジアミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤の好適な例としては、アミン化合物のエポキシアダクト、アミン化合物の尿素アダクト、及びエポキシアダクトの水酸基にイソシアナート化合物を付加反応させた化合物、からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0045】
前記アミン化合物のエポキシアダクトの製造原料の一つとして用いられるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、カテコール、レゾルシノールなど多価フェノール、またはグリセリンやポリエチレングリコールのような多価アルコールとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;p-ヒドロキシ安息香酸、β-ヒドロキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエステル;4,4′-ジアミノジフェニルメタンやm-アミノフェノールなどとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルアミン化合物;更にはエポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィンなどの多官能性エポキシ化合物やブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートなどの単官能性エポキシ合物;等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0046】
前記固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤の製造原料として用いられるアミン化合物は、エポキシ基と付加反応しうる活性水素を分子内に1以上有し、かつ1級アミノ基、2級アミノ基および3級アミノ基の中から選ばれた官能基を少なくとも分子内に1以上有するものであればよい。このような、アミン化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、n-プロピルアミン、2-ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、4,4′-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタンのような脂肪族アミン類;4,4′-ジアミノジフェニルメタン、2-メチルアニリンなどの芳香族アミン化合物;2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾリン、2,4-ジメチルイミダゾリン、ピペリジン、ピペラジンなどの窒素原子が含有された複素環化合物;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
また、この中で特に分子内に3級アミノ基を有する化合物は、優れた硬化促進能を有する潜在性硬化促進剤を与える原料であり、そのような化合物の例としては、例えば、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジ-n-プロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、N-メチルピペラジンなどのアミン化合物や、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどのイミダゾール化合物のような、分子内に3級アミノ基を有する1級もしくは2級アミン類;2-ジメチルアミノエタノール、1-メチル-2-ジメチルアミノエタノール、1-フェノキシメチル-2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、1-ブトキシメチル-2-ジメチルアミノエタノール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-フェニルイミダゾリン、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N-β-ヒドロキシエチルモルホリン、2-ジメチルアミノエタンチオール、2-メルカプトピリジン、2-ベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、4-メルカプトピリジン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸、N,N-ジメチルグリシン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸、N,N-ジメチルグリシンヒドラジド、N,N-ジメチルプロピオン酸ヒドラジド、ニコチン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジドなどのような、分子内に3級アミノ基を有するアルコール類、フェノール類、チオール類、カルボン酸類およびヒドラジド類;等が挙げられる。
【0048】
前記のエポキシ化合物とアミン化合物を付加反応せしめ潜在性硬化促進剤を製造する際に、さらに分子内に活性水素を2以上有する活性水素化合物を添加することもできる。このような活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、フェノールノボラック樹脂などの多価フェノール類、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類、アジピン酸、フタル酸などの多価カルボン酸類、1,2-ジメルカプトエタン、2-メルカプトエタノール、1-メルカプト-3-フェノキシ-2-プロパノール、メルカプト酢酸、アントラニル酸、乳酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
前記固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤の製造原料として用いられるイソシアネート化合物としては、例えば、n-ブチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネートなどの単官能イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどの多官能イソシアネート化合物;更には、これら多官能イソシアネート化合物と活性水素化合物との反応によって得られる、末端イソシアネート基含有化合物;等も用いることができる。このような末端イソシアネート基含有化合物の例としては、トルイレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応により得られる末端イソシアネート基を有する付加化合物、トルイレンジイソシアネートとペンタエリスリトールとの反応により得られる末端イソシアネート基を有する付加化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
また、前記固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤の製造原料として用いられる尿素化合物として、例えば、尿素、チオ尿素などが挙げられるが、これらに限定されるものでない。
【0051】
固体分散型潜在性硬化促進剤は、例えば、上記の製造原料を適宜混合し、常温から200℃の温度において反応させた後、冷却固化してから粉砕するか、あるいは、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の溶媒中で反応させ、脱溶媒後、固形分を粉砕することにより容易に得ることが出来る。
【0052】
固体分散型潜在性硬化促進剤として市販されている代表的な例としては、例えば、アミン-エポキシアダクト系(アミンアダクト系)としては、「PN-23」(味の素ファインテクノ社製)、「アミキュアPN-H」(味の素ファインテクノ社製)、「ハードナーX-3661S」(エー・シー・アール社製)、「ハードナーX-3670S」(エー・シー・アール社製)などが挙げられ、また、尿素型アダクト系としては、「FXR-1081」(T&K TOKA社製)、「フジキュアFXR-1000」(T&K TOKA社製)、「フジキュアFXR-1030」(T&K TOKA社製)などが挙げられる。また、イミダゾール変性マイクロカプセル体である「ノバキュアHX-3721」(旭化成社製)、「HX-3722」(旭化成社製)、「ノバキュアHX-3742」(旭化成社製)も挙げられる。
【0053】
(A)成分であるエポキシ樹脂の含有量を100質量部とした場合、(D)成分である硬化促進剤の含有量は0.1~100質量部であることが好ましく、0.5~50質量部であることがより好ましく、1.0~30質量部がさらに好ましい。
【0054】
[(E):無機充填材]
本実施形態に係る樹脂組成物は、好ましくは、無機充填材を含有する。無機充填材を使用することにより、耐湿性を更に向上させることができる。
【0055】
無機充填材(E)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発性分を100質量部としたとき、例えば1~70質量部、より好ましくは5~60質量部、更に好ましくは10~50質量部である。
【0056】
無機充填材の平均粒径は、例えば、平均粒径が0.1~100μm、好ましくは0.5~40μm、より好ましくは1.0~30μmである。
無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、堀場製作所製LA-500等を使用することができる。
【0057】
無機充填材としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、及びジルコン酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
無機充填材は、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、マイカからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、シリカを含むことがより好ましい。
【0058】
[(F):その他]
更に、本実施形態に係る樹脂組成物は、さらに、優れた保存安定性を実現させるために、ホウ酸エステル化合物、チタン酸エステル化合物、アルミネート化合物、ジルコネート化合物、イソシアネート化合物、カルボン酸、酸無水物及びメルカプト有機酸から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
【0059】
前記ホウ酸エステル化合物としては、例えば、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリ-n-プロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリ-n-ブチルボレート、トリペンチルボレート、トリアリルボレート、トリヘキシルボレート、トリシクロヘキシルボレート、トリオクチルボレート、トリノニルボレート、トリデシルボレート、トリドデシルボレート、トリヘキサデシルボレート、トリオクタデシルボレート、トリス(2-エチルヘキシロキシ)ボラン、ビス(1,4,7,10-テトラオキサウンデシル)(1,4,7,10,13-ペンタオキサテトラデシル)(1,4,7-トリオキサウンデシル)ボラン、トリベンジルボレート、トリフェニルボレート、トリ-o-トリルボレート、トリ-m-トリルボレート、トリエタノールアミンボレート等が挙げられる。
【0060】
前記チタン酸エステル化合物としては、例えば、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトライソプロプルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート等が挙げられる。
【0061】
前記アルミネート化合物としては、例えば、トリエチルアルミネート、トリプロピルアルミネート、トリイソプロピルアルミネート、トリブチルアルミネート、トリオクチルアルミネート等が挙げられる。
【0062】
前記ジルコネート化合物としては、例えば、テトラエチルジルコネート、テトラプロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラブチルジルコネート等が挙げられる。
【0063】
前記イソシアネート化合物としては、例えば、n-ブチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、2-クロロエチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、p-クロロフェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2-エチルフェニルイソシアネート、2,6-ジメチルフェニルイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4‘-ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0064】
前記カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸等の飽和脂肪族一塩基酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和脂肪族一塩基酸、モノクロル酢酸、ジクロル酢酸等のハロゲン化脂肪酸、グリコール酸、乳酸等の一塩基性オキシ酸、グリオキザル酸、ブドウ酸などの脂肪族アルデヒド酸及びケトン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸等の脂肪族多塩基酸、安息香酸、ハロゲン化安息香酸、トルイル酸、フェニル酢酸、けい皮酸、マンデル酸等の芳香族一塩基酸、フタル酸、トリメシン酸等の芳香族多塩基酸等が挙げられる。
【0065】
前記酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水ドデシニルコハク酸、無水マレイン酸、メチルシクロペンタジエンと無水マレイン酸の付加物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の脂肪族又は脂肪族多塩基酸無水物等、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロリメリット酸等の芳香族多塩基酸無水物等が挙げられる。
【0066】
前記メルカプト有機酸としては、例えば、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酪酸、メルカプトコハク酸、ジメルカプトコハク酸などのメルカプト脂肪族モノカルボン酸、ヒドロキシ有機酸とメルカプト有機酸とのエステル化反応によって得られるメルカプト脂肪族モノカルボン酸、メルカプト安息香酸などのメルカプト芳香族モノカルボン酸等が挙げられる。
【0067】
(F)成分としては、これらのうち、汎用性・安全性が高く、保存安定性を向上させる観点より、ホウ酸エステル化合物が好ましく、トリエチルボレート、トリ-n-プロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリ-n-ブチルボレートがより好ましく、トリエチルボレートがさらに好ましい。(F)成分の含有量は、樹脂の保存安定性が高まりさえすれば特に制限は無いが、(A)成分のエポキシ樹脂の含有を100質量部とした場合、(F)成分の含有量が0.001~50質量部であることが好ましく、0.05~30質量部であることがより好ましく、0.1~10質量部であることがさらに好ましい。
【0068】
以上説明した本実施形態に係る樹脂組成物は、従来公知の方法に準じて行うことができる。すなわち、例えば、各種混合機で各成分を混合することにより、本実施形態に係る樹脂組成物を調製することができる。
【0069】
また、本実施形態に係る樹脂組成物が一液型の樹脂組成物である場合、その硬化方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、樹脂組成物を加熱することで硬化することができる。加熱は、例えば、60~150℃、好ましくは、70~120℃、より好ましくは80~100℃の温度で、例えば、1~120分、好ましくは、3~60分、より好ましくは5~40分の時間、行うことが適当である。
【0070】
本実施形態に係る樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の分野で常用されている充填材、希釈剤、溶剤、顔料、可撓性付与剤、カップリング剤、酸化防止剤、チクソトロピー性付与剤、分散剤等の各種添加剤を加えることが出来る。
【0071】
本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、機能性製品に使用できる。その機能性製品としては、例えば、接着剤、注型剤、シーリング剤、封止剤、繊維強化用樹脂、コーティング剤または塗料等が挙げられる。
好適には、本実施形態に係る樹脂組成物は、好適には、CCM、HDD、半導体素子、集積回路などの電子部品の製造時に使用する接着剤として用いられ、より好適には、カメラモジュールの構成部材間の接着用接着剤として用いられる。そのような構成部材として、例えば、銅及びニッケルなどの金属部材;LCP(液晶ポリマー)、ポリアミド及びポリカーボネートなどのプラスチック部材が挙げられる。本実施形態に係る樹脂組成物は、これら金属部材及びプラスチック部材から選択される同種又は異種部材を接着するための接着剤として、好適である。
【0072】
本実施形態に係る樹脂組成物によれば、例えば、121℃及び100%RHの環境下に24時間放置した後に、30%以上のせん断接着強度維持率を得ることができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載中の「部」は「質量部」を意味する。
【0074】
1.原材料
[(A)成分]
(A1)ZX-1059:新日鉄住金化学社製 ビスフェノールA型エポキシ樹脂/ビスフェノールF型エポキシ樹脂混合物 エポキシ当量(EPW)165g/eq
(A2)jER152:三菱ケミカル社製 フェノールノボラック型エポキシ樹脂 エポキシ当量(EPW)177g/eq
(A3)HP-7200:DIC社製 ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂 エポキシ当量(EPW)258g/eq
【0075】
[(B)成分]
(B1)PE1:昭和電工社製「カレンズMT」 ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチラート)、チオール当量136g/eq
(B2)PEMP:SC有機化学社製 ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート)、チオール当量122g/eq
(B3)DPMP:ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオナート)、チオール当量131g/eq
(B4)TMTP: トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオナート)、チオール当量140g/eq
【0076】
[(C)成分]
(C1)スタバクゾール I パウダー:ランクセス社製 N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、分子量360
(C2)スタバクゾール P:ランクセス社製 ポリ(1,3,5-トリイソプロピルフェニレン-2,4-カルボジイミド)、質量平均分子量3000~4000
(C3)カルボジライト V-05:日清紡ケミカル社製 カルボジイミド変性イソシアネート、質量平均分子量800
(C4)N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド:和光純薬工業社製、分子量206
(C5)ジイソプロピルカルボジイミド:和光純薬工業社製、分子量126
(C6)スタバクゾール P100:ランクセス社製 芳香族ポリカルボジイミド、質量平均分子量15000以上
【0077】
[(D)成分]
(D1)PN-23:味の素ファインテクノ社製 イミダゾール基含有変性ポリアミン(固体)
(D2)FXR-1081:T&K TOKA社製 尿素結合含有変性ポリアミン 固形タイプ
(D3)HX-3722:旭化成社製 イミダゾール変性マイクロカプセル体
【0078】
[(E)無機充填材]
(E1)SO-C5:アドマテックス社製 シリカ 粒径1.3~1.7μm
(E2)ホワイトンB:白石カルシウム社製 炭酸カルシウム 平均粒径3.6μm
(E3)タルクMS:日本タルク社製 タルク 平均粒径14.0μm
(E4)マイカC-1000:Imerys Mica Kings Mountain社製 マイカ 平均粒径26.0μm
【0079】
[(F)その他]
(F1)TEB:純正化学社製 トリエチルボレート
【0080】
2.評価試験
(1)保存安定性
測定対象の樹脂組成物をプラスチック製密閉容器に25℃にて7日間保管した。保管前後において、E型粘度計RE-80U(東機産業社製、ローター:3°×R9.7)により、25℃、20rpmで樹脂組成物の粘度を測定し、初期粘度からの増粘率を7日後の粘度/初期粘度により算出した。
<評価基準>
◎:2.0倍未満
〇:2.0倍以上、3.0倍未満
×:3.0倍以上
【0081】
(2)低温硬化性
JIS C6521に準じてホットプレート式ゲル化試験機GT-D(日新科学社製)により、測定対象の樹脂組成物が90℃で糸を引かなくなった時間を測定した。具体的には、約0.5gの組成物を90℃に予め加熱しておいたホットプレート式ゲル化試験機上に置き、ストップウォッチを始動し、先端幅5mmのへらで、接触円運動を繰り返し、ゲル化するまでの時間を測定した。
<評価基準>
◎:10分未満
〇:10分以上、30分未満
×:30分以上
【0082】
(3)せん断接着試験
JIS K-6850に準じて、90℃の熱循環式オーブン内で30分、測定対象の樹脂組成物を硬化させ、樹脂組成物により接着された試験片を作成した。試験片としては、軟鋼板(SPCC、大佑機材社製)をアセトン脱脂し、エンドレスベルト#120で研磨したものを用いた。得られた試験片のせん断接着強度を、万能試験機(ティー・エス・イー社製、AC-50KN-CM)を用いて測定した(測定環境:温度25℃/湿度60%、引張速度;5mm/min)。
【0083】
(4)耐湿試験
(3)と同様の手順で試験片を作製し、試験片を121℃、100%RHの条件に設定された高度加速寿命試験装置(エスペック社製)に24時間放置したのち、得られた試験片について、万能試験機にて、耐湿試験後せん断接着強度を測定した。
さらに、高温高湿環境下が接着強度に与える影響を評価するため、接着強度維持率を算出した。接着強度維持率は、初期のせん断接着強度と耐湿試験後のせん断接着強度の値から、以下のようにして算出した。
[接着強度維持率(%)]=[耐湿試験後のせん断接着強度]/[初期のせん断接着強度]×100
<評価基準>
◎:30%以上
〇:15%以上、30%未満
×:15%未満
【0084】
3.実施例および比較例
表1~表4の上欄に示す配合で各成分を混合して、実施例1~22及び比較例1~5に係る樹脂組成物を調製した。
【0085】
尚、実施例1~22については、(A)成分、(C)成分、(E)成分を3本ロールミルにより混合し、そこへ(D)成分、(F)成分を添加してさらにミキサーにより混合し、そこへ(B)成分を添加してミキサーにより十分に分散した後、静置脱泡して調製した。なお、調製作業は25℃で行い、トータルの混合時間は30分であった。
【0086】
比較例1~5についても、表1~表4の配合に基づき、同様に調整した。
【0087】
実施例1~22及び比較例1~5の樹脂組成物を前述の評価試験に供した結果を、表1~表4に示す。
【0088】
表1~表4から、実施例1~22の結果の通り、本発明の樹脂組成物は、低温硬化性に優れ、保存安定性も良好であり、更に、優れた耐湿性を示すことがわかる。これに対し、比較例1~5の樹脂組成物は、本発明の樹脂組成物のような高いレベルの性能を有していないことがわかる。
また、比較例1及び比較例2を比較例5と比較すると、比較例1及び比較例2の方が低温硬化性に優れるものの、耐湿性(接着強度維持率)に劣っている。即ち、(B)エステル構造含有ポリチオール化合物を使用した場合、優れた低温硬化性が得られるものの、耐湿性が悪化してしまう。
これに対して、実施例1乃至22を比較例1及び比較例2と比較すると、耐湿性が改善されている。即ち、(C)カルボジイミドを添加することにより、耐湿性が改善されることが理解できる。
更に、比較例3及び4を実施例1~22と比較すると、カルボジイミドを添加した場合であっても、その分子量を150~10000の範囲に設定することにより、保存安定性が向上することが理解できる。
尚、実施例1~22の中でも、実施例17及び実施例22が、保存安定性、低温硬化性及び耐湿性の観点から特に良好な結果であった。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】