IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ネウロリーフ リミテッドの特許一覧

特許7015025高インピーダンスを有する頭部の領域に電気刺激を経皮的に与えるための方法およびデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】高インピーダンスを有する頭部の領域に電気刺激を経皮的に与えるための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20220126BHJP
【FI】
A61N1/36
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018553474
(86)(22)【出願日】2017-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-25
(86)【国際出願番号】 IB2017052045
(87)【国際公開番号】W WO2017178946
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-03-30
(31)【優先権主張番号】62/322,498
(32)【優先日】2016-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517086993
【氏名又は名称】ネウロリーフ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ベルソン,ロン
(72)【発明者】
【氏名】マッツァ,ヤニフ
(72)【発明者】
【氏名】ダル,アミット
(72)【発明者】
【氏名】コヘン,アミール
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/141213(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0173493(US,A1)
【文献】特表2009-513248(JP,A)
【文献】特表2010-536481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
A61N 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって使用されるように適合される頭部装着デバイスであって、前記頭部装着デバイスが、
前記頭部装着デバイスが装着されるとき、前記ユーザの頭皮に係合し、休止時間によって区切られる定電流正位相のストリークを含む正位相トレーンを備える平衡パルスを前記ユーザの頭皮に送給するように構成される、少なくとも1対の電極であって、前記正位相トレーンのすぐ後に、休止時間によって区切られる定電流負位相のストリークを含む、負位相トレーンが続き、前記正位相および前記負位相のそれぞれは、前記ユーザの頭部に所定の電荷量を提供することを目的としており、前記正位相トレーンの中の前記正位相の間の前記休止時間の累積時間と前記正位相の累積時間との間の第1の時間比率、および前記負位相トレーンの中の前記負位相の間の前記休止時間の累積時間と前記負位相の累積時間との間の第2の時間比率のそれぞれが、所定の閾値比率より小さい、電極と、
前記頭部装着デバイスが前記ユーザによって装着され、そして前記パルスの伝達の間、前記頭皮の皮膚に係合し、前記正位相および前記負位相によって送給された電荷の量を監視するように適合される少なくとも1つのセンサと、
前記少なくとも2つの電極に機能的に関連付けられ、コンプライアンス電圧を有する電子回路と、
前記電極に指示を提供するために前記電極に機能的に関連付けられ、前記少なくとも1つのセンサから入力を受信するために前記少なくとも1つのセンサを備えた処理装置であって、前記処理装置は、
(a)前記少なくとも1つのセンサから入力を受信し、
(b)前記受信された入力において、前記正位相および前記負位相の1つ以上によって送給された電荷の減少を識別し、
(c)前記電荷の減少の識別の際に、
I.前記第1の時間比率および前記第2の時間比率のそれぞれが、前記所定の閾値比率より少ないとき、前記正位相トレーンおよび前記負位相トレーンのうち少なくとも1つの中の少なくとも1つの前記休止時間の時間を増大させるように前記電極に前記平衡パルスを変化させる指示を前記電極に提供し、
II.前記第1の時間比率および前記第2の時間比率のそれぞれが、前記所定の閾値比率以上であるとき、前記電極によって送給された前記平衡パルスの電圧を増大させ、前記少なくとも1つの前記休止時間の時間を所定の最小休止時間値まで減少させ、かつ
(d)
前記所定の電荷量が、前記正位相および前記負位相のそれぞれによって提供されるまで、または
前記第1の時間比率および前記第2の時間比率のうち少なくとも1つが、前記所定の閾値比率に達し、前記電極によって送給された前記平衡パルスの電圧が、前記コンプライアンス電圧より小さいかまたは等しい所定の電圧閾値に達するまで、
段階(a)~(c)を繰り返す
ようにプログラムされた、処理装置と、
を備える、デバイス。
【請求項2】
前記処理装置が、前記電極に少なくとも1つの前記正位相または少なくとも1つの前記負位相の位相幅を変化させる指示を前記電極に提供するようにさらにプログラムされる、請求項に記載のデバイス。
【請求項3】
前記頭部の領域が、前記頭部の毛髪で覆われた領域であり、前記電極が、前記頭部装着デバイスが装着されるとき、前記頭部の前記毛髪で覆われた領域に係合するように構成される、請求項1または請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記電極が、前記頭部の前記領域の中の前記頭部神経に前記電気刺激を送給するように構成されるように、前記頭部の前記領域が、頭部神経を備える、請求項1乃至のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記少なくとも1つのセンサが、前記正位相および前記負位相のそれぞれの提供された波形を監視するように構成され、前記処理装置が、前記正位相および前記負位相ごとに、前記提供された波形が、意図された波形と同一であるかどうかを識別するように、および前記提供された波形が前記意図された波形と同一ではない場合に、前記電荷の減少を識別するように構成される、請求項1乃至のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記処理装置が、
前記第1の時間比率および前記第2の時間比率のうち少なくとも1つを変化させることと、
前記正位相トレーンの中の前記正位相の数を変更することと、
前記負位相トレーンの中の前記負位相の数を変更することと、
前記正位相および前記負位相のうち少なくとも1つの振幅を変更することと、
のうち少なくとも1つのための指示を前記電極に提供するように構成される、請求項1乃至のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記少なくとも1つのセンサが、
前記電子回路のインピーダンスを監視することであって、前記処理装置が、前記インピーダンスがインピーダンス閾値を超えていることを識別するように構成されることと、
前記電極によって送給される電圧を監視することであって、前記処理装置が、前記電圧が上側電圧閾値に達していることを識別するように構成されることと、
のうち少なくとも1つを行うように構成される、請求項1乃至のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記処理装置が、前記所定の電荷量が、前記正位相および前記負位相のそれぞれによって提供され、前記段階(d)が完了したことを識別した後、前記処理装置が、
少なくとも、前記少なくとも1つのセンサからの付加的な入力を受信し、前記正位相および前記負位相によって送給される前記電荷の変化、および正位前記相および前記負位相が提供されている状態の変化の少なくとも1つを識別し、かつ
前記状態の変化の識別の後に、前記段階(c)および(d)を繰り返す
ように構成される、請求項1乃至のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記処理装置と機能的に関連付けられたユーザインターフェースであって、前記付加的な入力には、前記ユーザインターフェースを介して前記ユーザによって提供される入力がさらに含まれる、ユーザインターフェースと、
前記処理装置と機能的に関連付けられ、前記電極に隣接した区域の状態を感知するように構成されたセンサであって、前記付加的な入力には、前記センサから前記処理装置に提供される信号がさらに含まれ、前記信号が、前記電極に隣接する区域における感知された状態の変化を示す、センサと、
のうち少なくとも1つをさらに備える、請求項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記デバイスが、前記処理装置と機能的に関連付けられたユーザ通知モジュールをさらに備え、前記第1の時間比率および前記第2の時間比率のうち少なくとも1つが、前記所定の閾値比率に達し、前記電極によって送給された前記平衡パルスの前記電圧が、前記所定の電圧閾値に達した後、前記処理装置が、前記電気刺激の付与を終了し、前記ユーザ通知モジュールが、治療が終了されたことを前記ユーザに通知する、請求項1乃至のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記電極が、前記正位相トレーンおよび前記負位相トレーンの送給の前に、正位相およびその直後に続く負位相を備え、前記正位相および前記負位相が、前記ユーザの頭部に所定量の電荷を提供することを目的としている、平衡単一定電流パルスを送給するように構成され、
前記処理装置が、
前記正位相トレーンおよび前記負位相トレーンの送給の前に、
前記単一パルスの送給の間に、前記電子回路のインピーダンスが、所定のインピーダンス閾値に達したことと、
前記平衡単一定電流パルスを送給するのに必要な電圧が、上側電圧閾値に達したことと、
のうち少なくとも1つを識別するように構成される、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部領域、詳細には、毛髪で覆われた頭部領域などの高インピーダンスを有する区域に電気刺激を与えるための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、頭部領域に電気刺激を与えるための装置および方法に関する。開示される装置は、末梢神経および脳神経の刺激、脳領域の経頭蓋刺激で、およびさまざまな身体パラメータを感知するために使用され得る。
【0003】
頭部領域の末梢神経および脳神経は、慢性的疼痛、偏頭痛、緊張性頭痛、群発性頭痛、線維筋痛、欝状態、外傷後ストレス障害(PTSD:Post-Traumatic Stress Disorder)、不安、ストレス、双極性障害、精神分裂症、強迫性障害(OCD:Obsessive Compulsive Disorder)、不眠症、癲癇、注意欠陥障害(ADD:Attention Deficit Disorder)、注意欠陥過活動性障害(ADHD:Attention Deficit Hyperactivity Disorder)、パーキンソン病、アルツハイマー病、肥満症、多発性硬化症、脳卒中、および外傷性脳損傷(TBI:Traumatic Brain Injury)などのさまざまな状態を治療するために、刺激される場合がある。後頭神経および三叉神経の解剖学的構造などの、頭部領域の末梢神経および脳神経の解剖学的構造、および青斑核および大縫線核などの脳幹領域への、ならびに視床および前方帯状皮質などのより高度な脳領域へのそれらの突起は、このような状態を治療するためにこれらの神経を刺激するとき、有利であり得る。
【0004】
後頭、眼窩上、滑車上、頬骨側頭、および耳介側頭の神経枝などの、頭部領域の表在神経の神経刺激は、侵襲的または非侵襲的に与えられ得る。電流を、毛髪を介して伝送する課題の故に、後頭神経(大後頭枝、小後頭枝、および第3後頭枝)などの、毛髪で覆われた領域の下にある頭部神経の刺激は、通常、埋め込まれたまたは経皮的神経刺激器を使用して実行される。このようなデバイスは、頭皮の下に挿入され、したがって、毛髪および頭皮によって形成された高インピーダンス障壁を迂回する電極を含む。しかしながら、埋込式の神経刺激は、依然として、感染、出血、または皮下の液貯留を含む合併症、ならびに埋め込まれた導線の遊走および破損、およびパルス発生器故障などの、ハードウェア関連の故障を高い割合で伴う、侵襲的で、高コストな処置である。非侵襲的技術を用いて、後頭神経枝などの頭部神経を経皮刺激することは、侵襲的処置と関連付けられる危険性および費用を伴わずに、埋め込まれた刺激装置の便益と同様の臨床的便益を実現する見込みがある。
【0005】
頭部、具体的には毛髪に覆われた領域に、電流を非侵襲的に与えることは、数多くの課題を提起する。毛髪および頭皮は、下にある神経に電流を伝送することを困難にする高インピーダンス障壁を作り出す。電流に対する、頭皮および頭蓋骨の骨膜の高い感覚鋭敏度、ならびに頭皮組織の皮膚脆弱性は、頭部神経を非侵襲的に刺激することを試みながら、付加的に考慮すべき問題である。
【0006】
組織に提供される電流と、組織のインピーダンスと、電流を提供するのに必要とされる電圧との間の関係は、オームの法則、V=I・Zによって特徴付けられ、上式において、V(電圧)は、頭部の上に置かれる2つの電極の間の電位差であり、Zは、毛髪および頭皮組織のインピーダンスであり、I、インピーダンスを貫いて流れる電流である。したがって、電圧は、大体において、インピーダンスまたは抵抗に対して実質的に比例して増大する。
【0007】
大後頭神経などの神経の非侵襲的刺激は、かなりの電流振幅(3~15mA)を必要とし、毛髪および頭皮と関連付けられる高インピーダンスに因って、高電圧レベル(150V以下)が、毛髪および頭皮を通じて電流を伝送するために必要とされ得る。このような高電圧レベルは、それらが、頭皮組織に損傷を与え、ユーザにとって不快である可能性があり、かつ/または、エネルギーの消費において浪費的である可能性があり、その結果、十分な治療時間を可能にするためには、大きい電池が必要とされる場合があるので、不利である。
【0008】
インピーダンスレベルは、人々の間でかなり異なっており、時間と共に変化する傾向がある。以下のいくつかの因子が、インピーダンスレベルに影響を及ぼしていると特定された:
非動的因子、または人々の間の違いに関係した因子であって、以下を含む。:
・ 頭皮の容量性/抵抗性特性、例えば、抵抗性構成要素は、一部の人々では5KΩであり得、他の人では、20KΩに達する場合もあり得る。
・ 毛髪の型、例えば、油性毛髪は、乾燥毛髪より水分の吸収が少ない傾向があり、それによって乾燥毛髪より高インピーダンスを有する。
・ 毛髪の量および密度、例えば、密度の高い毛髪ほど、刺激電極と頭皮との間により高いインピーダンス障壁を生み出す。
治療間で、および/または同じ人に対する特定の治療の間、変化する可能性がある、動的な因子であって、以下を含む。:
・ 電極を取り付けるときのユーザの技量によって、またはユーザの位置の変化によって影響を受ける可能性がある、刺激電極と頭皮との間の近接性および接触の質。例えば、ユーザが、仰臥位であり、自分の頭部の重量が、後頭電極を表面に押し当てるとき、刺激電極は頭皮に、より接近していることになり、結果的にインピーダンスはより低くなる。
・ 毛髪による電極の導電性媒体の吸収。例えば、水、食塩水、またはそれを通して電流を強化するために電極に塗布される導電性ゲルなどの導電性媒体は、ユーザの毛髪によって漸進的に吸収される可能性があり、したがって、電流に対する毛髪の抵抗を減少させ、それによって、電極と頭皮との間の導電率を増大させる。
・ 治療の所要時間、環境条件等によって影響を受ける可能性がある、導電性媒体の脱水。
・ 例えばヘッドセットの調整によって、ユーザの位置によってなど、電極を頭皮に向かって押している電極上に加えられる圧力。
【0009】
インピーダンスに対する変動、および具体的には、電極-頭皮インターフェースにおけるインピーダンスの動的な変動は、不都合なことに、目標とする神経または脳領域の効果的および均質な刺激を実現する能力に影響を及ぼす可能性があり、デバイスを作動させるとき、ユーザの持続的な注意および高い技量を必要とする場合がある。
【0010】
したがって、頭部領域の、具体的には毛髪によって覆われる区域での、効果的な非侵襲的神経刺激のためのシステムおよび方法であって、組織を監視し、出力信号をユーザの特性および経時的な変化に適合させるシステムおよび方法に対する必要性の存在が、認識されており、それらのシステムおよび方法を有していれば、非常に有利となる。このようなシステムおよび方法が、頭皮組織への損傷ならびにユーザにとっての不快感を回避し、安全および頑強な様式で動作すれば、特に有利となる。
【発明の概要】
【0011】
本発明のいくつかの教示によれば、ユーザの頭部の領域に電気刺激を経皮的に与えるための方法が、提供されており、方法は、
(a) 少なくとも2つの電極をユーザの頭皮の表面と係合させることであって、電極は、コンプライアンス電圧を有する電子回路と機能的に関連付けられている、電極を頭皮と係合させることと、
(b) 休止時間によって区切られる定電流正位相のストリークを含む正位相トレーンを含む平衡パルスを、係合した電極を介して送達することであって、正位相トレーンのすぐ後に、休止時間によって区切られる定電流負位相のストリークを含む負位相トレーンが続き、正位相および負位相のそれぞれは、ユーザの頭部に所定の電荷量を提供することを目的としており、
正位相トレーンの中の正位相の間の休止時間の累積時間と正位相の累積時間との間の第1の時間比率、および負位相トレーンの中の負位相の間の休止時間の累積時間と負位相の累積時間との間の第2の時間比率のそれぞれが、所定の閾値比率より小さく、
正位相および負位相が、共通位相幅wを有し、
正位相トレーンの中および負位相トレーンの中のすぐ次の後続位相との間の休止時間が、共通休止時間値rtを有する、
平衡パルスを係合した電極を介して送達することと、
(c) 正位相および負位相の1つのまたは複数によって送達される電荷量の減少を識別するために、正位相および負位相によって送達された電荷量を監視することと、
(d) 減少を識別すると、即座に、共通休止時間値rtを適合させることと、
(e) (b)~(d)の段階を
監視したことによって、所定の電荷量が、正位相および負位相のそれぞれによって提供されたことが示される、または
第1の時間比率および第2の時間比率の少なくとも1つが、所定の閾値比率に達し、平衡パルスの電圧が、所定の電圧閾値に達するまで、
繰り返すことと、
を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1の時間比率および第2の時間比率のそれぞれが、所定の閾値比率より少ないとき、適合させることは、共通休止時間値を増大させることを含み、第1および第2の時間比率のそれぞれが、所定の閾値比率以上であるとき、適合させることは、電極によって提供される電圧を増大させること、および共通休止時間値を所定の最小休止時間値まで減少させることを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、適合させることは、共通位相幅を適合させることをさらに含む。
【0014】
本発明のいくつかの教示によれば、ユーザの頭部の領域に電気刺激を経皮的に与えるための方法が、提供されており、方法は、
(a) 少なくとも2つの電極をユーザの頭皮の表面と係合させることであって、電極は、コンプライアンス電圧を有する電子回路と機能的に関連付けられている、電極を頭皮と係合させることと、
(b) 休止時間によって区切られる定電流正位相のストリークを含む正位相トレーンを含む平衡パルスを、係合した電極を介して送達することであって、正位相トレーンのすぐ後に、休止時間によって区切られる定電流負位相のストリークを含む負位相トレーンが続き、正位相および負位相のそれぞれは、ユーザの頭部に所定の電荷量を提供することを目的としており、正位相トレーンの中の正位相の間の休止時間の累積時間と正位相の累積時間との間の第1の時間比率、および負位相トレーンの中の負位相の間の休止時間の累積時間と負位相の累積時間との間の第2の時間比率のそれぞれは、所定の閾値比率より小さい、平衡パルスを係合した電極を介して送達することと、
(c) 正位相および負位相の1つのまたは複数によって送達される電荷量の減少を識別するために、正位相および負位相によって送達された電荷量を監視することと、
(d) 低下を識別すると、即座に、正位相トレーンおよび負位相トレーンの少なくとも1つの中の少なくとも1つの休止時間を適合させることと、
(e) (b)~(d)の段階を、
監視したことによって、所定の電荷量が、正位相および負位相のそれぞれによって提供されたことが示される、または
第1の時間比率および第2の時間比率の少なくとも1つが、所定の閾値比率に達し、平衡パルスの電圧が、所定の電圧閾値に達するまで、
繰り返すことと、
を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、正位相トレーンの中の正位相は、共通位相幅wを有する。いくつかの実施形態では、負位相トレーンの中の負位相は、共通位相幅wを有する。いくつかの実施形態では、正位相トレーンの中の正位相および負位相トレーンの中の負位相は、共通位相幅wを有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、正位相トレーンの中のすぐ次の後続位相の間の休止時間は、共通休止時間値rtを有する。いくつかの実施形態では、負位相トレーンの中のすぐ次の後続位相の間の休止時間は、共通休止時間値rtを有する。いくつかの実施形態では、正位相トレーンの中、および負位相トレーンの中のすぐ次の後続位相の間の休止時間は、共通休止時間値rtを有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、第1および第2の時間比率のそれぞれが、所定の閾値比率より少ないとき、適合させることは、少なくとも1つの休止時間の時間を増大させることを含み、第1および第2の時間比率のそれぞれが、所定の閾値比率以上であるとき、適合させることは、電極によって提供される電圧を増大させること、および少なくとも1つの休止時間の時間を所定の最小休止時間値まで減少させることを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1および第2の時間比率のそれぞれが、所定の閾値比率より少ないとき、適合させることは、各休止時間の時間を増大させることを含み、第1および第2の時間比率のそれぞれが、所定の閾値比率以上であるとき、適合させることは、電極によって提供される電圧を増大させること、および各休止時間の時間を所定の最小休止時間値まで減少させることを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、適合させることは、少なくとも1つの正位相または少なくとも1つの負位相の位相幅を適合させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、位相幅を適合させることは、各正位相および各負位相の位相幅を適合させることを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、正位相トレーンの時間は、負位相トレーンの時間とは異なる。いくつかの実施形態では、正位相の累積時間は、負位相の累積時間とは異なる。いくつかの実施形態では、正位相トレーンの中の正位相の間の休止時間の累積時間は、負位相トレーンの中の負位相の間の休止時間の累積時間とは異なる。
【0021】
いくつかの実施形態では、正位相トレーンの中の正位相の数は、負位相トレーンの中の負位相の数とは異なる。いくつかの実施形態では、正位相トレーンの時間は、負位相トレーンの時間と等しい。いくつかの実施形態では、正位相の累積時間は、負位相の累積時間と等しい。
【0022】
いくつかの実施形態では、正位相トレーンの中の正位相の間の休止時間の累積時間は、負位相トレーンの中の負位相の間の休止時間の累積時間と等しい。
【0023】
いくつかの実施形態では、正位相トレーンの中の正位相の数は、負位相トレーンの中の負位相の数と等しい。
【0024】
いくつかの実施形態では、頭部の領域は、頭部の毛髪で覆われた領域である。いくつかの実施形態では、係合させることは、頭部の毛髪で覆われた領域で電極を係合させることを含む。いくつかの実施形態では、頭部の領域は、電気刺激が、頭部の領域の中の頭部神経に送達されるように、頭部神経を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、係合させることは、少なくとも2つの電極および電子回路を含むヘッドセットを、少なくとも2つの電極が、頭皮の表面に係合するように、ユーザの頭部上に装着することを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、所定の閾値比率は、0.4~1.2、0.5~1、または0.55~0.75の範囲である。いくつかの実施形態では、所定の閾値比率は、0.6である。
【0027】
いくつかの実施形態では、正位相トレーンの中、および負位相トレーンの中の各休止時間の時間は、最小休止時間の時間に少なくとも等しい。いくつかの実施形態では、最小休止時間の時間は、5μsecである。
【0028】
いくつかの実施形態では、正位相のそれぞれ、および負位相のそれぞれの位相幅は、最大位相幅以下である。いくつかの実施形態では、最大位相幅は、600μsec以下、400μsec以下、200μsec以下、100μsec以下、または50μsec以下である。
【0029】
いくつかの実施形態では、監視することは、電極によって実行される。
【0030】
いくつかの実施形態では、監視することは、電極外部の少なくとも1つのセンサによって実行され、センサは、ユーザの頭皮の皮膚に係合しており、電子回路と機能的に関連付けられている。
【0031】
いくつかの実施形態では、監視することは、正位相および負位相ごとに、提供された波形が、意図された波形と同一であるかどうかを識別するために、提供された波形を正位相および負位相ごとに監視することを含み、提供された波形が意図された波形と同一でない場合に、電荷の減少が、識別される。
【0032】
いくつかの実施形態では、適合させることは、第1の時間比率および第2の時間比率の少なくとも1つを適合させることを含む。いくつかの実施形態では、適合させることは、第1の時間比率および第2の時間比率を適合させることを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、適合させることは、正位相トレーンの中の正位相の数を変更することをさらに含む。いくつかの実施形態では、適合させることは、負位相トレーンの中の負位相の数を変更することをさらに含む。いくつかの実施形態では、適合させることは、正位相および負位相の少なくとも1つの振幅を変更することをさらに含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、監視することは、電子回路が電極のインピーダンスを測定することをさらに含み、適合させることは、インピーダンスがインピーダンス閾値を超えていることを識別すると行われる。
【0035】
いくつかの実施形態では、監視することは、電極によって送給された電圧を監視することをさらに含み、適合させることは、電圧が上側電圧閾値に達していることが識別されると行われる。いくつかの実施形態では、上側電圧閾値は、コンプライアンス電圧である。
【0036】
いくつかの実施形態では、方法は、監視することの後に、所定の電荷量が、正位相および負位相のそれぞれによって提供されており、そして段階(e)が完了していることを示すこと、加えて、正位相および負位相によって送給された電荷の変化を識別するために、正位相および負位相によって送給された電荷量を監視することをさらに含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、変化は、正位相および負位相が提供される状態の変化を示す。いくつかの実施形態では、状態の変化には、少なくとも2つの電極の間で測定されたインピーダンスの変化が含まれる。
【0038】
いくつかの実施形態では、付加的に監視することが、周期的に実行される。
【0039】
いくつかの実施形態では、付加的に監視することが、断続的に実行される。
【0040】
いくつかの実施形態では、付加的に監視することは、ユーザからの表示を受け取ったことに応えて実行される。いくつかの実施形態では、表示には、不快感または痛みの表示が含まれる。
【0041】
いくつかの実施形態では、付加的に監視することは、湿度センサから、電極に隣接する区域における湿度の変化を示す信号を受け取ったことに応えて実行される。
【0042】
いくつかの実施形態では、付加的に監視することは、温度センサから、電極に隣接する区域における温度の変化を示す信号を受け取ったことに応えて実行される。
【0043】
いくつかの実施形態では、付加的に監視することは、加速度計から、ユーザの位置、電極の位置、および電極に加えられた圧力の少なくとも1つの変化を示す信号を受け取ったことに応えて実行される。
【0044】
いくつかの実施形態では、付加的に監視することは、圧力センサから、電極に加えられた圧力の変化を示す信号を受け取ったことに応えて実行される。
【0045】
いくつかの実施形態では、方法は、付加的に監視することによって状態の変化を識別した後に、方法の段階(d)および(e)を繰り返すことをさらに含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、方法は、第1の時間比率および第2の時間比率が所定の閾値比率に達し、電圧が所定の電圧閾値に達した後に、電気刺激の付与を終了すること、および治療が終了されたことをユーザに通知することをさらに含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、方法は、段階(a)の後、そして段階(b)の前に、
正位相およびその直後に続く負位相を含む平衡単一定電流パルスを、係合された電極を介して送給することであって、正位相および負位相は、ユーザの頭部に所定量の電荷を提供することを目的としている、定電流パルスを送給することと、
単一パルスの送給の間に電子回路のインピーダンスが、所定のインピーダンス閾値に達したことを識別することと、をさらに含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、方法は、段階(a)の後、そして段階(b)の前に、
正位相およびその直後に続く負位相を含む平衡単一定電流パルスを、係合された電極を介して送給することであって、正位相および負位相は、ユーザの頭部に所定量の電荷を提供することを目的としている、定電流パルスを送給することと、
単一定電流パルスを送給するのに必要とされる電圧が、上側電圧閾値に達したことを識別することとをさらに含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、上側電圧閾値は、電子回路のコンプライアンス電圧である。
【0050】
本発明のいくつかの教示によれば、頭部装着デバイスが提供されており、頭部装着デバイスは、
頭部装着デバイスが装着されるとき、ユーザの頭皮に係合し、休止時間によって区切られる定電流正位相のストリークを含む正位相トレーンを含む平衡パルスをユーザの頭皮に送給するように構成される、少なくとも1対の電極であって、正位相トレーンのすぐ後に、休止時間によって区切られる定電流負位相のストリークを含む、負位相トレーンが続き、正位相および負位相のそれぞれは、ユーザの頭部に所定の電荷量を提供することを目的としており、
正位相トレーンの中の正位相の間の休止時間の累積時間と正位相の累積時間との間の第1の時間比率、および負位相トレーンの中の負位相の間の休止時間の累積時間と負位相の累積時間との間の第2の時間比率のそれぞれは、所定の閾値比率より小さく、
正位相および負位相が、共通位相幅w1を有し、そして、
正位相トレーンの中のすぐ次の後続位相と、負位相トレーンの中のすぐ次の後続位相との間の休止時間が、共通休止時間値rt1を有する、少なくとも1対の電極と、
頭部装着デバイスがユーザによって装着され、そしてパルスの伝達の間、ユーザの頭皮の皮膚に係合し、正位相および負位相によって送給された電荷量を監視するように適合される少なくとも1つのセンサと、
少なくとも2つの電極に機能的に関連付けられ、コンプライアンス電圧を有する電子回路と、
電極に指示を提供するために電極に機能的に関連付けられ、センサから入力を受信するために少なくとも1つのセンサを備えた処理装置であって、処理装置は、
(a)少なくとも1つのセンサから入力を受信する、
(b)受信された入力において、正位相および負位相の1つまたは複数によって送給された電荷の減少を識別する、
(c)低下を識別すると、即座に、共通休止時間値を適合させる入力を電極に提供する、および
(d)段階(a)~(c)を、
所定の電荷量が、正位相および負位相のそれぞれによって提供される、または
第1の時間比率および第2の時間比率の少なくとも1つが、所定の閾値比率に達し、平衡パルスの電圧が、所定の電圧閾値に達するまで、繰り返す
ようにプログラムされた、処理装置と、
を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、処理装置は、
第1および第2の時間比率のそれぞれが、所定の閾値比率より少ないとき、共通休止時間値を増大させる入力を電極に提供し、
第1および第2の時間比率のそれぞれが、所定の閾値比率以上であるとき、電極によって提供される電圧を増大させ、共通休止時間値を、所定の最小休止時間値まで減少させる入力を電極に提供するようにさらにプログラムされる。
【0052】
いくつかの実施形態では、処理装置は、共通位相幅を適合させる入力を電極に提供するようにさらに構成される。
【0053】
本発明のいくつかの教示によれば、頭部装着デバイスが提供されており、頭部装着デバイスは、
頭部装着デバイスが装着されるとき、ユーザの頭皮に係合し、休止時間によって区切られる定電流正位相のストリークを含む正位相トレーンを含む平衡パルスをユーザの頭皮に送給するように構成される、少なくとも1対の電極であって、正位相トレーンのすぐ後に、休止時間によって区切られる定電流負位相のストリークを含む、負位相トレーンが続き、正位相および負位相のそれぞれは、ユーザの頭部に所定の電荷量を提供することを目的としており、正位相トレーンの中の正位相の間の休止時間の累積時間と正位相の累積時間との間の第1の時間比率、および負位相トレーンの中の負位相の間の休止時間の累積時間と負位相の累積時間との間の第2の時間比率のそれぞれは、所定の閾値比率より小さい、少なくとも1対の電極と、
頭部装着デバイスがユーザによって装着され、そしてパルスの伝達の間、頭皮の皮膚に係合し、正位相および負位相によって送給された電荷量を監視するように適合される少なくとも1つのセンサと、
少なくとも2つの電極に機能的に関連付けられ、コンプライアンス電圧を有する電子回路と、
電極に指示を提供するために電極に機能的に関連付けられ、センサから入力を受信するために少なくとも1つのセンサを備えた処理装置であって、処理装置は、
(a)少なくとも1つのセンサから入力を受信する、
(b)受信された入力において、正位相および負位相の1つまたは複数によって送給された電荷の減少を識別する、
(c)低下を識別すると、即座に、正位相トレーンおよび負位相トレーンの少なくとも1つの少なくとも1つの休止時間を適合させる入力を電極に提供する、および
(d)段階(a)~(c)を
所定の電荷量が、正位相および負位相のそれぞれによって提供される、または
第1の時間比率および第2の時間比率の少なくとも1つが、所定の閾値比率に達し、平衡パルスの電圧が、所定の電圧閾値に達するまで、繰り返す
ようにプログラムされた、処理装置と、
を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、電極は、正位相トレーンの中の正位相が、共通位相幅wを有するパルスを送給するように構成される。いくつかの実施形態では、電極は、負位相トレーンの中の負位相が、共通位相幅wを有するパルスを送給するように構成される。いくつかの実施形態では、電極は、正位相トレーンの中の正位相および負位相トレーンの中の負位相が、共通位相幅wを有するパルスを送給するように構成される。
【0055】
いくつかの実施形態では、電極は、正位相トレーンの中のすぐ次の後続位相の間の休止時間が、共通休止時間値rtを有するパルスを送給するように構成される。いくつかの実施形態では、電極は、負位相トレーンの中のすぐ次の後続位相の間の休止時間が、共通休止時間値rtを有するパルスを送給するように構成される。いくつかの実施形態では、電極は、正位相トレーンの中、および負位相トレーンの中のすぐ次の後続位相の間の休止時間が、共通休止時間値rtを有するパルスを送給するように構成される。
【0056】
いくつかの実施形態では、処理装置は、
第1および第2の時間比率のそれぞれが、所定の閾値比率より少ないとき、少なくとも1つの休止時間の時間を増大させる入力を電極に提供し、
第1および第2の時間比率のそれぞれが、所定の閾値比率以上であるとき、電極によって提供される電圧を増大させ、少なくとも1つの休止時間の時間を所定の最小休止時間値まで減少させる入力を電極に提供するようにさらにプログラムされる。
【0057】
いくつかの実施形態では、処理装置は、
第1および第2の時間比率のそれぞれが、所定の閾値比率より少ないとき、各休止時間の時間を増大させる入力を電極に提供し、
第1および第2の時間比率のそれぞれが、所定の閾値比率以上であるとき、電極によって提供される電圧を増大させ、各休止時間の時間を所定の最小休止時間値まで減少させる入力を電極に提供するようにさらにプログラムされる。
【0058】
いくつかの実施形態では、処理装置は、少なくとも1つの正位相または少なくとも1つの負位相の位相幅に適合させる入力を電極に提供するようにさらにプログラムされる。いくつかの実施形態では、処理装置は、各正位相および各負位相の位相幅に適合させる入力を電極に提供するようにさらにプログラムされる。
【0059】
いくつかの実施形態では、電極は、正位相トレーンの時間が、負位相トレーンの時間とは異なるパルスを送給するように構成される。いくつかの実施形態では、電極は、正位相の累積時間が、負位相の累積時間とは異なるパルスを送給するように構成される。いくつかの実施形態では、電極は、正位相トレーンの中の正位相の間の休止時間の累積時間が、負位相トレーンの中の負位相の間の休止時間の累積時間とは異なるパルスを送給するように構成される。
【0060】
いくつかの実施形態では、電極は、正位相トレーンの中の正位相の数が負位相トレーンの中の負位相の数とは異なるパルスを送給するように構成される。いくつかの実施形態では、電極は、正位相トレーンの時間が負位相トレーンの時間と等しいパルスを送給するように構成される。いくつかの実施形態では、電極は、正位相の累積時間が負位相の累積時間と等しいパルスを送給するように構成される。
【0061】
いくつかの実施形態では、電極は、正位相トレーンの中の正位相の間の休止時間の累積時間が、負位相トレーンの中の負位相の間の休止時間の累積時間と等しいパルスを送給するように構成される。いくつかの実施形態では、電極は、正位相トレーンの中の正位相の数が、負位相トレーンの中の負位相の数と等しいパルスを送給するように構成される。
【0062】
いくつかの実施形態では、デバイスは、ユーザの頭部上に装着されるように適合された本体部材をさらに含み、電極およびセンサが、本体部材の内面に載置されている。
【0063】
いくつかの実施形態では、頭部の領域は、頭部の毛髪で覆われた領域である。いくつかの実施形態では、電極は、頭部装着デバイスが装着されるとき、頭部の毛髪で覆われた領域に係合するように構成される。いくつかの実施形態では、電極が、頭部の領域の中の頭部神経に電気刺激を送給するように構成されるように、頭部の領域は、頭部神経を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、所定の閾値比率は、0.4~1.2、0.5~1、または0.55~0.75の範囲である。いくつかの実施形態では、所定の閾値比率は、0.6である。
【0065】
いくつかの実施形態では、電極は、正位相トレーンの中、および負位相トレーンの中の各休止時間の時間が、最小休止時間の時間と、少なくとも等しいパルスを送給するように構成される。いくつかの実施形態では、最小休止時間の時間は、5μsecである。
【0066】
いくつかの実施形態では、電極は、正位相のそれぞれおよび負位相のそれぞれの位相幅が、最大位相幅以下であるパルスを送給するように構成される。いくつかの実施形態では、最大位相幅は、600μsec以下、400μsec以下、200μsec以下、100μsec以下、または50μsec以下である。
【0067】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのセンサは、電極の少なくとも1つである。
【0068】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのセンサは、電極の外部にあり、電子回路と機能的に関連付けられている。
【0069】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのセンサは、正位相および負位相のそれぞれの提供された波形を監視するように構成され、処理装置が、正位相および負位相ごとに、提供された波形が、意図された波形と同一であるかどうかを識別するように、および提供された波形が意図された波形と同一ではない場合に、電荷の減少を識別するように構成される。
【0070】
いくつかの実施形態では、処理装置は、第1の時間比率および第2の時間比率の少なくとも1つを適合させる指示を電極に提供するように構成される。いくつかの実施形態では、処理装置は、第1の時間比率および第2の時間比率を適合させる指示を電極に提供するように構成される。
【0071】
いくつかの実施形態では、処理装置は、正位相トレーンの中の正位相の数を変更する指示を電極に提供するように構成される。いくつかの実施形態では、処理装置は、負位相トレーンの中の負位相の数を変更する指示を電極に提供するように構成される。いくつかの実施形態では、処理装置は、正位相および負位相の少なくとも1つの振幅を変更する指示を電極に提供するように構成される。
【0072】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのセンサは、電子回路のインピーダンスを監視するように構成され、処理装置は、インピーダンスがインピーダンス閾値を超えていることを識別するように構成される。
【0073】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのセンサは、電極によって送給される電圧を監視するように構成され、処理装置は、電圧が上側電圧閾値に達していることを識別するように構成される。いくつかの実施形態では、上側電圧閾値は、コンプライアンス電圧である。
【0074】
いくつかの実施形態では、処理装置が、所定の電荷量が、正位相および負位相のそれぞれによって提供され、段階(d)が完了したことを識別した後に、処理装置は、少なくとも、少なくとも1つのセンサからの付加的な入力を受信し、正位相および負位相によって送給される電荷の変化、および正位相および負位相が提供されている状態の変化の少なくとも1つを識別するように構成される。
【0075】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのセンサは、少なくとも2つの電極の間のインピーダンスの変化を測定し、測定値を付加的な入力として処理装置に提供するように構成される。
【0076】
いくつかの実施形態では、デバイスは、処理装置および少なくとも1つのセンサの少なくとも1つと機能的に関連付けられ、周期的に付加的な入力を提供するために少なくとも1つのセンサを起動させるように構成されたタイマをさらに含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、デバイスは、処理装置と機能的に関連付けられたユーザインターフェースをさらに含み、付加的な入力には、ユーザインターフェースを介してユーザによって提供される入力が含まれる。いくつかの実施形態では、付加的な入力には、ユーザによって提供される不快感または痛みの表示が含まれる。
【0078】
いくつかの実施形態では、デバイスは、処理装置と機能的に関連付けられ、電極に隣接した区域の湿度を感知するように構成された湿度センサをさらに含み、付加的な入力には、湿度センサから処理装置に提供される信号が含まれ、信号が、電極に隣接する区域における湿度の変化を示す。
【0079】
いくつかの実施形態では、デバイスは、処理装置と機能的に関連付けられ、電極に隣接した区域の温度を感知するように構成された温度センサをさらに含み、付加的な入力には、温度センサから処理装置に提供される信号が含まれ、信号が、電極に隣接する区域における温度の変化を示す。
【0080】
いくつかの実施形態では、デバイスは、処理装置と機能的に関連付けられ、ユーザの位置および電極の位置の少なくとも1つを感知するように構成された加速度計をさらに含み、付加的な入力には、加速度計から処理装置に提供される信号が含まれ、信号が、ユーザの位置、電極の位置、および電極に加えられた圧力の少なくとも1つの変化を示す。
【0081】
いくつかの実施形態では、デバイスは、処理装置と機能的に関連付けられ、電極に加えられた圧力を感知するように構成された圧力センサをさらに含み、付加的な入力には、圧力センサから処理装置に提供される信号が含まれ、信号が、電極に加えられた圧力の変化を示す。
【0082】
いくつかの実施形態では、処理装置は、状態の変化を識別した後に、段階(c)および(d)を繰り返すようにさらに構成される。
【0083】
いくつかの実施形態では、デバイスは、処理装置と機能的に関連付けられたユーザ通知モジュールをさらに含み、第1の時間比率および第2の時間比率の少なくとも1つが、所定の閾値比率に達し、電圧が、所定の電圧閾値に達した後、処理装置が、電気刺激の付与を終了し、ユーザ通知モジュールが、治療が終了されたことをユーザに通知する。
【0084】
いくつかの実施形態では、電極は、正位相トレーンおよび負位相トレーンの送給の前に、正位相およびその直後に続く負位相を含み、正位相および負位相が、ユーザの頭部に所定量の電荷を提供することを目的としている、平衡単一定電流パルスを送給するように構成され、処理装置は、正位相トレーンおよび負位相トレーンの送給の前に、電子回路のインピーダンスが、単一パルスの送給の間に所定のインピーダンス閾値に達したことを識別するように構成される。
【0085】
いくつかの実施形態では、電極は、正位相トレーンおよび負位相トレーンの送給の前に、正位相およびその直後に続く負位相を含み、正位相および負位相が、ユーザの頭部に所定量の電荷を提供することを目的としている、平衡単一定電流パルスを送給するように構成され、処理装置は、正位相トレーンおよび負位相トレーンの送給の前に、単一定電流パルスを送給するのに必要な電圧が、いくつかの実施形態では電子回路のコンプライアンス電圧である、上側電圧閾値に達したことを識別するように構成される。
【0086】
本発明は、添付の図面に関連させながら、ほんの一例として本明細書に記載される。これより、図面を詳細に参照するに当たり、示される詳細は、本発明の一例として、好適な実施形態を例証的に検討するためのものにすぎず、本発明の原理および概念上の態様についての、最も有用で、理解し易い記述であると考えられるものを提供するために提示されていることを強調しておく。この点に関して、本発明の構造細部を、本発明を基礎的に理解するのに必要とされるものよりもさらに詳細に示そうとする試みは、なされておらず、この記述を図面と併せて理解することで、本発明のいくつかの形が実際に具現化され得る方法が当業者には明らかとなろう。図面の全体を通じて、類似の参照符号文字は、必ずしも同一の要素ではなく、類似の機能性を意味するために使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1A】本明細書における教示の実施形態による、神経刺激用の発明システムの実施形態についての概略ブロック図である。
図1B】本明細書における教示による、外部データ源と通信するヘッドセットの形をした、図1Aの発明システムの実施形態の斜視図の概略図である。
図2図1Aのシステムを使用して、本明細書における教示による、高インピーダンスを有する頭部領域を神経刺激するための方法の実施形態の流れ図である。
図3】本明細書における教示による、図2の方法を個人用にカスタマイズするための方法の実施形態の流れ図である。
図4A-C】異なるインピーダンスを経験するとき、本明細書における教示の実施形態によって伝送されるパルスの概略図であり、図4Aは、基準インピーダンス状態下のパルスによって提供された電流を図示し、図4Bは、高インピーダンス状態下のパルスによって提供された電流を図示し、および図4Cは、高インピーダンス状態下のパルスを提供する電極上の電圧を図示する。
図5A-C】本明細書における教示の実施形態による、正位相の位相トレーンおよび負位相の位相トレーンを含むパルスの概略図であり、それぞれの図は、請求項2の方法の異なる段階に対応しており、図5Aは、十分な電荷を提供する位相トレーンパルスを図示し、図5Bは、図5Aの位相トレーンパルスに類似しているが、十分な電荷を提供しない位相トレーンパルスを図示し、および図5Cは、十分な電荷を提供し、位相の間により長い休止時間を有する、第2の位相トレーンパルスを図示する。
図6A】提供されるパルスを変更した後の、電圧および錯感覚の変化を示す実験結果を含む表を図示し、実験結果は、図1Aのシステムおよび図2の方法を使用して取得されている。
図6B-C】パルスが変化した結果としての電圧の変化、およびパルスが変化した結果としての錯感覚の変化についての図式的なグラフィック表示を提示し、図6Bおよび図6Cに関するデータは、図6Aの表から取り出されている。
【発明を実施するための形態】
【0088】
末梢神経および/または脳神経の刺激、脳領域の経頭蓋刺激のために、そして組織を監視し、電気刺激信号をユーザの特性および経時的な変化に適合させながら、身体パラメータを感知するために、頭部領域に電気刺激を与える、システムおよび方法が、本明細書に記載される。システムおよび方法は、頭皮組織への損傷ならびにユーザにとっての不快感を回避しながら、効果的な電気刺激を確実にし、安全および丈夫な様式で動作する。
【0089】
本発明の方法は、偏頭痛、および緊張性頭痛、群発性頭痛、線維筋痛、欝状態、外傷後ストレス障害(PTSD)、不安、強迫性障害(OCD)、不眠症、癲癇、注意欠陥過活動性障害(ADHD)、パーキンソン病、アルツハイマー病、肥満症、多発性硬化症、外傷性脳損傷(TBI)および脳卒中などのさまざまな状態を治療するために、本発明の方法によって電気刺激を与えるためのプラットホームとして機能する、頭部に装着される構造物を使用して適用され得る。
【0090】
刺激電極と頭皮との間の接触の質は、神経刺激の提供における基本的な態様である。このような接触および結果として生じる導電率が必ずしも最適ではないという事実から、発明者は、ユーザの皮膚の保全性、快適性を維持し、かつ適切な神経刺激を確実にしながら、例えば毛髪の存在、湿度の不足等に起因した導電率の低下またはインピーダンスの増加を補償するための方法を開発した。
【0091】
純粋知覚神経の電気刺激は、錯感覚の感覚を神経の分布に沿って放散することを誘発する。関連性のある解剖学的区域における錯感覚の存在は、効果的な神経興奮が行われていることを表している。反対に、刺激の間、神経の分布沿いの錯感覚がないことは、極端に低い強度、不十分な電流密度または電荷などの、不適切な刺激パラメータに因って、または不適切な電極位置または高インピーダンスなどの他の理由に因って、効果的な神経興奮に達することができないことを反映している可能性がある。
【0092】
錯感覚を誘発することは、同様に痛みの治療における重要な因子である。「ゲートコントロール説」によれば、錯感覚の知覚によって表される大きい感覚Aβ神経繊維の活性化は、結果として小直径侵害受容AδおよびC線維の抑制につながり、それによって、痛みの知覚を妨げる。したがって、神経刺激治療の間、錯感覚をユーザが知覚することを維持することが望ましい。いくつかの本発明の態様は、電流が、組織に加えられる電圧を十分に低く保ちながら、電極から標的組織まで適切に、かつ効果的に送給されることを確実にすることを目指している方法および技術に関する。
【0093】
次に、本明細書における教示の実施形態による、神経刺激用の発明システムの実施形態についての概略ブロック図である図1Aを参照する。
【0094】
見られるように、神経刺激用システム100は、少なくとも2つの刺激電極102を含むことができ、いくつかの実施形態では、少なくとも2つの感知電極104をさらに含むことができ、電極102および104は共に、電子回路106と機能的に関連付けられる。刺激電極102は、以下に記載されるように、それに電流を送給するように、ユーザの頭皮の皮膚に係合するように適合される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の感知電極104は、ユーザの皮膚に係合するように適合されることができ、例えば脳波(EEG:Electroencephalogram)、皮膚伝導反応(SCR:Skin Conductance Response)、インピーダンスプレチスモグラフ(IPG:Impedance Plethysmograph)、筋電計(EMG:Electromyograph)などの、ユーザの身体部分の少なくとも1つの電気的パラメータを感知するように構成され得る。
【0095】
本明細書における教示の特徴によれば、システム100、そして特に電子回路106は、適切な方法を用いて、経頭蓋直流刺激(tDCS:Transcranial Direct Current Stimulation)、経頭蓋交流刺激(tACS:Transcranial Alternating Current Stimulation)、および経頭蓋不規則雑音刺激(tRNS:Transcranial Random Noise Stimulation)などの経頭蓋電気刺激を与えるのに好適であり得る。
【0096】
見られるように、電子回路106は、マイクロコントローラ108、高電圧回路110、刺激回路112、内部電源114、高周波(RF)送受信機116、アナログ信号処理回路118、充電回路122と電気的に関連付けられる充電式電池120、加速度計126、温度センサ128、圧力センサ130、および湿度センサ132の1つまたは複数を含むセンサアレイ124、およびユーザインターフェース134のいずれか1つまたは複数を含むことができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、電子回路106は、内部電源114に電気的接続される充電式電池120と電気的に関連付けられ、充電式電池120によって電力を供給され得る。いくつかの実施形態では、内部電源114は、次に刺激回路112に電気的に接続される高電圧回路110に電力を提供する。充電回路122は、充電式電池120と電気的に関連付けられ、充電器140などの外部電源と連動することができる。高電圧回路110は、1から150Vの範囲の電圧の電流を刺激回路112に提供する。
【0098】
いくつかの実施形態では、刺激回路112は、マイクロコントローラ108から情報および/または命令を受信する。刺激回路112は、刺激電極102を介してユーザの神経組織に電気刺激パルスを提供するように構成される。
【0099】
刺激回路112は、二相性荷電平衡電気パルス、単相性電気パルス、および/または直流刺激を作り出すように構成され得る。
【0100】
記載された好適な実施形態のさらなる別の特徴によれば、刺激回路112は、0~60mA、0~40mA、0~20m、または0~15mAの強度範囲内の電気刺激を作り出すように構成され得る。
【0101】
記載された好適な実施形態のさらなる別の特徴によれば、刺激回路112は、10~1000μsec、50~600μsec、100~500μsecの時間の刺激パルスを作り出すように構成され得る。
【0102】
記載された好適な実施形態のさらなる別の特徴によれば、刺激回路112は、1~20,000Hz、1~10,000Hz、1~500Hz、10~300Hz、10~250Hz、20~180Hz、30~180Hz、または40~100Hzの周波数の刺激パルスを作り出すように構成され得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、電子回路106は、回路112に類似した2つ以上の高電圧回路(図示せず)を含むことができ、各高電圧回路は、1~150V、1~120V、1~100Vの電圧の電流を刺激電極102の少なくとも2つに提供する。いくつかの実施形態では、電子回路106は、少なくとも2つの単離された出力チャネル(図示せず)を含むことができ、各出力チャネルは、刺激電極102の少なくとも2つに出力を提供する。
【0104】
いくつかの実施形態では、電子回路106は、刺激電極102から電圧または電流のレベル情報を収集し、収集された情報をマイクロコントローラ108に提供するフィードバックおよび測定回路142をさらに含む。マイクロコントローラ108は、図2および図3に関して本明細書で開示されている方法によって、提供されたフィードバックを使用して、刺激回路112を介して刺激電極102の電圧および電流レベルを監視および制御する。いくつかの実施形態では、マイクロコントローラ108は、例えば音声式または触覚式の表示を提供することによって、ユーザを警告することができる、または、図2を参照しながら以下に記載されるように、緊急事態の場合、またはシステムが不正確に機能する場合、刺激用電流の提供を停止させることができる。
【0105】
いくつかの実施形態では、マイクロコントローラ108は、刺激回路112にさまざまなパターンでおよび/またはさまざまな期間にわたって電流を出力するように指示することができ、および/または図2を参照しながら以下に記載されるように、電流振幅、パルス周波数、位相時間、および刺激回路によって出力される電流の振幅などの、さまざまな刺激パラメータに関して刺激回路112に指示することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、マイクロコントローラ108は、刺激回路112に複数の活性電極対ごとに異なるパターンを有する出力信号を提供するように指示することができる。例えば、刺激回路112は、ある対の電極を50Hzのパルス周波数および300μsecの位相時間で刺激し、別の対の電極を100Hzのパルス周波数および200μsecの位相時間で刺激することができる。いくつかの実施形態では、いずれの時にも、マイクロコントローラ108は、1対の電極だけを活性化することができ、電極の組合せを活性化することができ、および/またはいくつかの電極を同時に、順次、または、交互に活性化することができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、いくつかの電極102は、出力として、交流信号を提供することができ、他方で、他の電極102は、出力として直流を提供することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの電極102は、出力として提供される電流の型を、交流と直流の間で交互に切り替えることができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、脳の特定の領域の興奮が、脳のその領域の上に配置される電極の有極性に基づいて決定される直流刺激の間、少なくとも1つの電極102は、マイクロコントローラ108によって、陽極または正荷電電極であるように割り当てられることができ、少なくとも1つの他の電極102は、陰極または負荷電電極であるように割り当てられることができる。
【0109】
いくつかの実施形態では、図2を参照しながら以下に記載されるように、マイクロコントローラ108によって決定される、または割り当てられる刺激パターン、ならびに電極102からおよび/または感知電極104から受信したフィードバックデータは、マイクロコントローラ108の中、またはそれと関連付けられる揮発性または不揮発性メモリ(図示せず)の中に保存されることができる。いくつかの実施形態では、図3を参照しながら以下に記載されるように、保存された刺激パターンを使用して、ユーザ用に個人的にカスタマイズされた神経刺激プロトコルを作成することができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、電子回路106は、感知電極104などの1つまたは複数のセンサから、脳波(EEG)信号、皮膚伝導反応(SCR)信号、インピーダンスプレチスモグラフ(IPG)信号、筋電計(EMG)信号、または他の生体信号などの、アナログ信号入力を受信するように構成されることができ、生体信号は、神経刺激信号を受信している組織のインピーダンス、組織に提供された電荷等を表すことができる。感知電極104から受信されたアナログ信号入力は、アナログ信号処理回路118によって処理されることができ、そこからマイクロコントローラ108に伝送され得る。いくつかの実施形態では、電子回路106は、ユーザの近接度またはその特性を感知するように適合された付加的なセンサから、デジタル入力、アナログ入力、または他の入力を受信するように構成され得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の刺激パラメータは、以下に記載されるように、1つまたは複数の付加的なセンサから受信された入力に因って、マイクロコントローラ108によって変更され得る。
【0111】
いくつかの実施形態では、加速度計126または何らかの他の適切な方位センサは、ユーザの頭部またはシステム100(および特にそこにおいてユーザの頭部に係合する部分)の角度位置を感知するように構成されることができ、それによって、マイクロコントローラ108は、ユーザの状態および/またはシステムの状態の変化を識別すること、および刺激電極102によって提供されたパルスを調整する、または適合させることができるようになる。例えば、ユーザの位置の変化は、結果的に、電極に加えられる圧力の変化をもたらす場合があり、したがって、以下に記載されるように、電極がユーザの皮膚に近接する程度を変化させ、その結果として、システムのインピーダンスを変化させて、電極を介して組織に与えられるパルスを適合させることが必要となる。
【0112】
いくつかの実施形態では、温度センサ128は、システム100の、または刺激電極102付近の温度を感知するように構成されることができ、それによって、マイクロコントローラ108は、ユーザの状態および/またはシステムの状態の変化を識別すること、および刺激電極102によって提供されたパルスを調整する、または適合させることができるようになる。例えば、ユーザまたは電極102付近の温度上昇は、結果的に、電極、またはそれに適用される伝導性材料のより急速な脱水をもたらす場合があり、したがって、以下に記載されるように、システムのインピーダンスを増加させ、電極を介して組織に与えられるパルスを適合させることが必要となる。
【0113】
いくつかの実施形態では、圧力センサ130は、電極102付近のユーザの頭部に加えられた圧力または電極102に直接加えられた圧力を感知するように構成されることができ、それによって、マイクロコントローラ108は、ユーザの状態および/またはシステムの状態の変化を識別すること、および刺激電極102によって提供されたパルスを調整する、または適合させることができるようになる。例えば、電極をユーザの頭皮に向かって押している電極102に加えられた圧力量の増加は、電極と頭皮との間の距離、いくつかの場合では、電極と目標神経との間の距離を減少させることが予想され、それによって、以下に記載されるように、システムのインピーダンスを減少させ、電極を介して組織に与えられるパルスを適合させることが必要となる、またはそれが可能になる。
【0114】
いくつかの実施形態では、湿度センサ132は、システム100または刺激電極102付近の湿度または水分レベルを感知するように構成されることができ、それによって、マイクロコントローラ108が、ユーザの状態および/またはシステムの状態の変化を識別すること、および刺激電極102によって与えられるパルスを調整するまたは適合させることを可能にすることができる。例えば、電極102付近で感知された湿度の減少は、電極、またはそれに適用される伝導性材料の脱水を示す場合があり、したがって、以下に記載されるように、システムのインピーダンスを増加させ、電極を介して組織に与えられるパルスを適合させることが必要となる。
【0115】
いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース134は、痛みの表示、不快感の表示、または錯感覚の減少もしくは消失の表示などのユーザが感じている感覚の表示をユーザから受信するように構成され得る。ユーザが感じる感覚の変化についてのユーザからのこのような表示は、マイクロコントローラ108が、刺激電極102によって与えられるパルスを調整するまたは適合させることを可能にすることができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、RF送受信機116は、マイクロコントローラ108が、携帯電話、タブレット、コンピュータ、またはクラウドベースのデータベースなどの外部デバイス150のインターフェースと、無線周波数を経由して通信することを可能にすることができる。RF送受信機116は、例えば図3を参照しながら以下に記載されるように、システム100によって与えられる神経刺激を個人化するために、デジタル情報をマイクロコントローラ108に伝送することができ、デジタル情報をマイクロコントローラ108から受信することができる。
【0117】
デバイス150のインターフェースは、インターネットからなど、容易にアクセスすることができるリソースからダウンロード可能であり得るソフトウェアアプリケーションを備えることができる。インターフェースは、例えばアクティブ刺激チャネル、刺激強度、実行プログラム、治療時間、バッテリの状態、およびRF通信状態に関する情報を含む、システム100の状態、ならびに電極接触質、および頭部上での適切なまたは不適切なシステムの位置合せに関する警報などのさまざまな警報についてのそれらの表示を、例えばディスプレイを経由してユーザに提供することができる。さらに、インターフェースは、日々の刺激時間、刺激の間使用された刺激パラメータ、用いられた治療プログラムに関する情報などの、使用ログおよび/またはリポートを、例えばディスプレイを経由してユーザに提供することができる。インターフェースは、さらに、ヘッドセットに含まれる、または関連付けられるセンサから受信される未処理または処理済みの情報を、ユーザに表示することができる、または別の方法で提供することができる。
【0118】
いくつかの実施形態では、システムは、外部デバイス150のインターフェースを介して遠隔操作で制御され得る。例えば、外部インターフェースは、そのユーザが、システムを起動または停止させること、刺激を開始または休止すること、1つまたは複数のチャネルに対する刺激強度を調整すること、および治療プログラムを選択することを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、マイクロプロセッサ108によって収集された情報は、クラウドベースのポータルなどの遠隔地に、外部インターフェースを介して伝送されることができ、例えば、図3を参照しながら以下に記載されるように、情報は、保存され得る、または分析および/または監視され得る。
【0119】
次に、本明細書における教示による、外部データ源と通信するヘッドセットの形をした、図1Aの発明システム100の実施形態の斜視図の概略図である図1Bを参照する。
【0120】
見られるように、ヘッドセット160は、図1Aのシステム100を実装することができ、それぞれが、後方部材166で終端している、中間部材とも呼ばれ得る1対の可撓性アーム部材164に連結された前方部材162を含むように構成され得る。前方部材162、可撓性アーム部材164、および後方部材166は一緒に、ヘッドセット本体を形成する。
【0121】
いくつかの実施形態では、各後方部材166は、クロージャ機構168で終端しているテーパエンドを有する終端部分を備える。
【0122】
前方部材162は、1つまたは複数の前方電極システム172をその内側面上に含有するように構成されることができ、それぞれの後方部材166は、1つまたは複数の後方電極システム174をその内側面上に含有するように構成されることができ、電極システム172および174は、図1Aの刺激電極102を実装している、または図1Aの刺激電極102と類似している。電極システム172および174のそれぞれは、電極基部および使い捨て電極ユニットを備えることができ、それらは、いくつかの実施形態では、全てが「HEADSET FOR TREATMENT AND ASSESSMENT OF MEDICAL CONDITIONS」という名称の、米国特許出願公開第2015/0374971号、AU2015227382、EP2981326、CN105188835、WO2014/141213、およびIL241026、および本発明の発明者によって出願された、「HEADSET FOR NEUROSTIMULATION AND SENSING OF BODY PARAMETERS」という名称のWO2016/042499に記載されるように、構造化され、機能性を有することができ、これらの特許出願公開を、本明細書において完全に説明されたように、参照により援用する。
【0123】
いくつかの実施形態では、電極システム172は、三叉神経枝の上の頭部の眼窩上領域に、それらを刺激するために位置付けられるように適合された前方電極を備えることができる、または脳の前頭および前頭前野領域の経頭蓋刺激に適切な電極であることができる。
【0124】
いくつかの実施形態では、電極システム174は、後頭神経枝の上の頭部の後頭領域に、それらを刺激するために位置付けられるように適合された後方電極を備えることができる、または脳の後頭領域の経頭蓋刺激に適切な電極であることができる。
【0125】
いくつかの実施形態では、電極システム172および174の1つまたは複数は、図1Aの感知電極104に類似しており、例えば脳波(EEG)、皮膚伝導反応(SCR)、インピーダンスプレチスモグラフ(IPG)、筋電計(EMG)等などの、上記ユーザの身体部分の少なくとも1つの電気的パラメータを感知するように構成された感知電極を備えることができる。
【0126】
ヘッドセット160は、電極システム172および174の構造および/または機能性に類似した構造および/または機能性を有する付加的な電極を含むことができることを理解されたい。電極システム172および/または174は、特定の神経もしくは神経セット、特定の脳領域を刺激するのに、または特定のパラメータを感知するのに適しているように、取り除かれる、またはヘッドセット160上の他の位置に移動され得ることをさらに理解されたい。例えば、電極システム174は、可撓性アーム部材164に沿うように移動され得る。別の例としてヘッドセット160は、アーム部材164上に位置付けられる電極システムを1対だけ含むことができ、その電極は、電極システム172および174が取り除かれることができる一方で、ヘッドセットが装着されるとき、毛髪の下に配置されるように構成され得る。
【0127】
前方部材162は、図1Aの電池120に類似した電池などの電力源177、および電極システム172および174に、導線(図示せず)によって電気的に結合されるように構成され得る、図1Aの電子回路106に類似する電子回路176を含有するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、導線の少なくとも一部は、アーム部材164を介して後方電極システム174まで延びている。
【0128】
いくつかの実施形態では、電子回路176および/または電池177は、ヘッドセット160の外部にあってもよい、および/またはヘッドセット160と遠隔操作で通信してもよい。
【0129】
図1Aを参照しながら上文において検討されたように、電子回路176は、刺激回路、マイクロプロセッサ、充電回路、およびユーザインターフェースを含むことができる。
【0130】
いくつかの実施形態では、ヘッドセット160は、外部の電子回路および/または刺激回路につながっていて、それによって、電流を外部の刺激因子から電極システム172および/または174に伝送するように構成され得る。いくつかの実施形態では、ヘッドセット160は、身体のさまざまな区域に位置付けられ得る少なくとも1つの外部電極につながっているように構成され得る。いくつかの実施形態では、ヘッドセット160は、ヘッドセット160上に配置されたセンサからの信号を外部プロセッサに伝送するために、外部の電子回路およびプロセッサにつながっているように構成され得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、電池177は、前方部材162の中に配置されることができ、特定の実施形態によれば、充電器を前方部材162上に位置付けられる充電ポート178に差し込むことによって、再充電され得る。
【0132】
前方部材162は、その外面上に、図1Aのユーザインターフェース134に類似している場合もあるユーザ制御部およびインターフェース180を含むように、さらに構成され得る。いくつかの実施形態における、その前述の、後方部材166またはアーム164などの、ヘッドセット160の他の部分は、ユーザインターフェース180を含むように構成され得る。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース180または付加的なユーザインターフェース(図示せず)は、ヘッドセット160の外部にあってもよく、図1Aを参照しながら上文において説明されたように、有線通信または無線通信を使用して、遠隔操作でヘッドセット160と通信することができる。
【0133】
電子回路176およびユーザインターフェース180は、ヘッドセット160の中に含まれる電極を制御および/または活性化するように構成され得る。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース180は、少なくとも2対の電極、いくつかの実施形態では、2対より多い電極を制御および/または活性化するように構成される。したがって、いくつかの実施形態では、刺激回路および/またはユーザインターフェース180は、特定の電極の活性化、または特定の対の電極もしくは電極のチャネルの活性化、ならびに活性電極によって供給される電流の強度、または活性電極の他の刺激パラメータの強度の調整、および痛みについてのユーザ表示、不快感についてのユーザ表示、または錯感覚の減少もしくは増加についてのユーザ表示などの、ユーザ表示の提供を可能にするように構成される。いくつかの実施形態では、電極のいかなるサブセットも、同時に活性化されることができ、いくつかの実施形態では、特定のサブセットが、例えば電子回路176の製造の間に、あらかじめ定義される。いくつかのこのような実施形態では、ユーザインターフェース180は、特定の電極、または特定のチャネルの制御だけでなく、電極の活性サブセットの制御も可能にする。
【0134】
いくつかの実施形態では、ユーザ制御部およびインターフェース180は、前方電極システム172によって提供される刺激の強度をそれぞれ増大、減少させるための1対の前方強度ボタン181aおよび181bと、後方電極システム174によって提供される刺激の強度をそれぞれ増大、減少させるための1対の後方強度ボタン182aおよび182bとを含む。ユーザ制御部およびインターフェース180は、ヘッドセット160の中に含まれる電極ごとに、類似の強度ボタンを含むことができることを理解されたい。
【0135】
ユーザ制御部およびインターフェース180は、電子回路176を活性化および動作不能化するための、ならびにヘッドセット160の動作のモード間で変更するためのモード変更ボタン184をさらに含むことができる。例えば、ヘッドセット160は、休眠モード、保守モード、および治療モードなどの多数の事前設定された動作モードを有することができ、ボタン184を繰り返して操作することで、ヘッドセットをオン、オフすることに加えて、これらのモード間の切り替えをすることができる。
【0136】
例えば、ユーザが、痛み、不快感、または錯感覚の減少についてのユーザ表示を提供することができる、ユーザ表示ボタンは、ユーザ制御部およびインターフェース180の一部を構成してもよく、前方部材162の外面上に配置され得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、ユーザ制御部およびインターフェース180は、ヘッドセットの活性化、ヘッドセットの運転停止、インターフェース180上のボタンを押していること、刺激モードを変更していること等を示す、ヘッドセット180の使用についての音声表示をユーザに提供するためのスピーカまたはブザーなどの、音声要素(図示せず)をさらに含むことができる。
【0138】
上文において説明したように、電子回路およびユーザインターフェースは、ヘッドセット160の中に含まれる電極を制御および/または活性化するように構成される。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェースは、少なくとも2対の電極、いくつかの実施形態では、2対より多い電極を制御および/または活性化するように構成される。したがって、いくつかの実施形態では、刺激回路および/またはユーザインターフェースは、特定の電極の活性化、または特定の対の電極もしくは電極のチャネルの活性化、ならびに活性電極によって供給される電流の強度、または活性電極の他の刺激パラメータの強度の調整を可能にするように構成される。いくつかの実施形態では、電極のいかなるサブセットも、同時に活性化されることができ、いくつかの実施形態では、特定のサブセットが、例えば電子回路の製造の間に、あらかじめ定義される。いくつかのこのような実施形態では、ユーザインターフェースは、特定の電極、または特定のチャネルの制御だけでなく、電極の活性サブセットの制御も可能にする。
【0139】
いくつかの実施形態では、電子回路176は、図1Aの送受信機116と類似の送受信機196を含み、この送受信機は、携帯電話、タブレットコンピュータ等などの、ヘッドセット160の外部の、図1Aの外部デバイス150に類似した通信デバイス197と遠隔操作で通信するように構成される。通信デバイス197は、さらに、その中にデータを保存する、またはそのデータを読み出すための、参照符号198で示されるクラウドベースの保存場所などの遠隔保存場所と通信することができる。例えば、いくつかの実施形態では、特定のユーザで使用される特定の刺激プロトコルに関するデータは、実質的には図3を参照しながら以下に記載されるように、刺激プロトコルを特定のユーザ用に個人化することを容易にするために、通信デバイス197を介して、送信器196からクラウドベースの保存場所198に、その中に保存するために伝送されることができ、将来、クラウドベースの保存場所から読み出されることができる。別の例として、基準データは、図3を参照しながら以下に記載されるように、刺激プロトコルを個人化することを容易にするために、例えば通信デバイス197を介して、クラウドコンピューティング保存場所198から送受信機196に伝送され得る。
【0140】
次に、図1Aのシステムを使用して、本明細書における教示による、高インピーダンスを有する頭部領域を神経刺激するための方法についての実施形態の流れ図である図2を参照する。
【0141】
最初に、段階200では、マイクロコントローラ108は、刺激回路112に、ユーザの頭皮面に係合している刺激電極102を介して、それぞれが単一正位相および単一負位相を有する1つまたは複数の電気的に平衡単一パルスを提供するように指示する。基準インピーダンス状態の下で提供されるこのようなパルスの例は、パルス400として図4Aに図示される。いくつかの実施形態では、パルスは、0~60mA、0~40mA、0~20m、または0~15mAの強度範囲を有することができる。いくつかの実施形態では、パルスは、10~2000μsec、100~1600μsec、200~1400μsec、または300~1000μsecの時間を有することができる。いくつかの実施形態では、パルスは、1~20,000Hz、1~10,000Hz、1~500Hz、10~300Hz、10~250Hz、20~180Hz、30~180Hz、または40~100Hzの範囲の周波数を有することができる。
【0142】
段階202では、マイクロコントローラ108は、パルスを提供するために電極によって必要とされる電圧が、所定の閾値または上側電圧閾値に達したかどうかを連続的に、周期的に、または断続的に評価する。閾値は、回路106のコンプライアンス電圧と等しくてもよく、またはその一部分、もしくはいくらかのパーセントであってもよい。いくつかの実施形態では、閾値は、コンプライアンス電圧の60%~70%である。
【0143】
いくつかの実施形態では、パルスを提供するために電極によって必要とされる電圧を評価した後に、またはそれとともに同時的に、段階204では、マイクロコントローラ108は、システムのインピーダンスが、所定のインピーダンス閾値に達したかどうかを評価する。これは、例えばパルスが相対的に低電流で提供される場合に、電圧閾値に達していない場合であっても、所定のインピーダンスに達しているときには、適切である。いくつかの実施形態では、インピーダンス閾値は、8KΩより大きい、10KΩより大きい、または12KΩより大きい場合がある。
【0144】
電圧が電圧閾値に達しておらず、インピーダンスがインピーダンス閾値に達していなかった場合、マイクロコントローラ108は、刺激回路112に、段階200で、刺激電極102を介して、平衡単一パルスを提供し続けるように指示する。
【0145】
システムの電圧が、パルスを提供するのに不十分であるとき、またはシステムのインピーダンスが、あまりに高い場合には、オームの法則によれば、電極によって提供される電流は、満充電が組織に提供されることを可能にするのには不十分であることを理解されたい。図4Bは、高インピーダンス状態の下で単一パルス400によって提供される電流の例を図示し、見られ得るように、パルスの正位相は、パルスが、提供されるように意図された電荷を提供しないように、参照符号410で示される時点でカットされ始める。図4Cは、高インピーダンス状態の下での電極102上の電圧を図示し、見られるように、電極によって必要とされる電圧は、上側電圧閾値に達するまで、上昇する。図示した実施形態では、上側電圧閾値は、システムのコンプライアンス電圧である。図4Bおよび図4Cを比較すると、パルスがカットされるようになる時点410(図4B)は、コンプライアンス電圧に達した時間に一致していること(図4C)が示されている。
【0146】
したがって、段階202における評価が、電圧が電圧閾値に達したと判定した場合、および/または段階204における評価が、インピーダンスがインピーダンス閾値に達したと判定した場合、電極102によって提供されるパルスは、カットされる。結果的に段階206では、マイクロコントローラ108は、刺激回路112に、電極102を介して提供されるパルスを変更して、図5Aに示されるパルスに類似した位相トレーンパルスにするように指示する。図5Aを同様に参照すると、現在電極102によって提供されるパルスは、正位相トレーン502およびその直後に続く負位相トレーン508を含む平衡パルス500であることが見られる。正位相トレーン502は、休止時間506によって区切られる定電流正位相504のストリークを含み、負位相トレーン508は、休止時間512によって区切られる定電流負位相510のストリークを含む。正位相504および負位相510のそれぞれは、所定量の電荷を提供することを目的としている。「所定量の電荷」という用語は、意図された量の電荷と等しい量の電荷、ならびに意図された電荷量とは、15%以下、10%以下、5%以下、3%以下、または1%以下だけ異なっている量の電荷に関するものであることを理解されたい。
【0147】
発明者は、図4Aの単一パルスから、図5Aの位相トレーンパルスへの移行は、毛髪および組織層などの、電極の下にある層のインピーダンスの減少をもたらし、結果的に、必要電荷を提供するのに必要とされる電圧の減少をもたらすことを発見した。したがって、図5Aに示されるように、504位相および510位相のそれぞれの中で、パルスは完全であり、意図された量の電荷、または意図された量の電荷から15%以下、10%以下、5%以下、3%以下、または1%以下だけ外れている量の電荷が、ユーザの頭皮に提供される。
【0148】
正位相504間の休止時間506の累積時間drt と正位相504の累積時間d との間の時間比率trは、所定の比率より小さいことが、本明細書における教示に特有の特徴である。同様に、負位相510間の休止時間512の累積時間drt と負位相510の累積時間d との間の時間比率trは、所定の閾値比率より小さい。いくつかの実施形態では、所定の閾値比率は、0.4~1.2、0.5~1、または0.55~0.75の範囲である。いくつかの実施形態では、実施例1で以下に説明されるように、所定の閾値比率は、0.6である。
【0149】
図5Aの実施形態などのいくつかの実施形態では、正位相504および負位相510は、共通位相幅wを有する。しかしながら、他の実施形態では、正位相504は、負位相510の共通位相幅wとは異なる場合もある共通位相幅wを有することができる。さらに他の実施形態では、正位相は、共通位相幅を有する必要はなく、そして、負位相は、共通位相幅を有する必要もない。本明細書、および後に続く特許請求の範囲の目的として、「共通位相幅」という用語は、等しい位相幅に関するものであるが、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下の相互偏差を備えた位相幅をさらに含むことを理解されたい。
【0150】
いくつかの実施形態では、すぐ次の後続正位相504との間の休止時間506およびすぐ次の後続負位相510との間の休止時間512は、共通休止時間値rtを有する。他の実施形態では、すぐ次の後続正位相504の間の休止時間506は、すぐ次の後続負位相510の間の休止時間512の共通休止時間値rtとは異なる場合がある、共通休止時間値rtを有する。さらに他の実施形態では、休止時間506は、共通休止時間値を有する必要はなく、そして、休止時間512は、共通休止時間値を有する必要はない。本明細書、および後に続く特許請求の範囲の目的として、「共通休止時間値」という用語は、等しい休止時間値に関するものであるが、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下の相互偏差を備えた休止時間値をさらに含むことを理解されたい。
【0151】
いくつかの実施形態では、正位相トレーン500の時間は、負位相トレーン508の時間と等しいが、それが、必ずしも等しい必要はない。いくつかの実施形態では、正位相504の累積時間d は、負位相510の累積時間d と等しいが、それが、必ずしも等しい必要はない。いくつかの実施形態では、正位相504の間の休止時間506の累積時間drt は、負位相510の間の休止時間512の累積時間drt と等しいが、それが、必ずしも等しい必要はない。
【0152】
正位相トレーン502の中の正位相504の数、および負位相トレーン508の中の負位相510の数は、2~30の範囲である。いくつかの実施形態では、正位相トレーン502の中の正位相504の数は、負位相トレーン508の中の負位相510の数と等しいが、それが、必ずしも等しい必要はない。
【0153】
いくつかの実施形態では、各休止時間506または512の時間は、少なくとも5μsecである。いくつかの実施形態では、各正位相504および各負位相510の位相幅は、600μsec以下、400μsec以下、300μsec以下、200μsec以下、100μsec以下、または50μsec以下である。
【0154】
図2に戻ると、段階206で位相トレーンパルスに移行した後、移行の結果は、ユーザの頭皮に十分な電荷を提供しながらも、必要な電圧が最低であるパルスに達しようとする試みにおいて評価される。したがって、段階208では、マイクロコントローラ108は、十分な電荷が、正位相504および負位相510のそれぞれによって提供されているかどうかを評価または監視する。電荷は、それが意図された電荷と等しい場合、またはそれが、意図された電荷から、15%以下、10%以下、5%以下、3%以下、または1%以下だけ外れている場合に、十分とみなされることを理解されたい。
【0155】
いくつかの実施形態では、位相によって提供される電荷は、いくつかの実施形態では、刺激電極102と同じ電極である場合もある、電極104を感知することによって監視される。いくつかの実施形態では、電荷は、例えばセンサアレイ124の中のセンサなどの、回路106と機能的に関連付けられる、刺激電極102および感知電極104の外部にある付加的なセンサによって監視される。
【0156】
いくつかの実施形態では、電荷は、位相に提供された波形が意図された波形と同一であるのか、または、意図された波形から、最大で15%、最大で10%、最大で5%、最大で3%、または最大で1%だけ外れているのかを識別するために、それぞれの提供された位相の波形を監視することによって監視される。いくつかの実施形態では、頭皮に提供される電荷の減少、または電荷が不十分であることは、提供された波形が、許容偏差を超えて意図された波形と異なっていること、特に、提供された波形が、位相の終了に向けて、降下しているまたは「カット」されていることによって示される。加えて、不十分な電荷が提供される状況にある図5Aの位相トレーンパルス500を示す図5Bを参照すると、正位相504aの波形は、終了部では直角を形成していない、または不完全であることが見られ、このことは、位相504aによって頭皮に提供されている電荷が、意図された電荷より少ないことを示している。
【0157】
段階208では、例えば、パルスの波形は、図5Bに示される波形に類似していると判定することによって、不十分な電荷が、提供されていると判定される場合、段階210では、マイクロコントローラ108は、正位相の間の休止時間の累積時間drt と正位相の累積時間d との間の時間比率trと、負位相の間の休止時間の累積時間drt と負位相の累積時間d との間の時間比率trとが、所定の閾値比率より小さいかどうかを評価する。換言すると、段階210では、マイクロコントローラ108は、パルスの中の累積的な休止時間が、最大許容休止時間より少ないのか、または最大許容休止時間と等しいのかを評価する。
【0158】
段階210で、マイクロコントローラ108が、最大許容休止時間に、達していないと判定する場合、段階212では、マイクロコントローラ108は、刺激回路112に、提供されたパルスの中の少なくとも1つの休止時間を更新するように指示する。最大許容休止時間に、達していないという事実に因り、マイクロコントローラは、正位相トレーンの中および/または負位相トレーンの中の少なくとも1つの休止時間を増大させることによって、パルスを更新する。
【0159】
いくつかの実施形態では、マイクロコントローラ108は、刺激回路112に、正位相トレーンの中の休止時間の全ておよび/または負位相トレーンの中の休止時間の全てを増大させることによってパルスを更新するように指示する。いくつかの実施形態では、マイクロコントローラ108は、刺激回路112に、正位相トレーンの共通休止時間値rt、負位相トレーンの共通休止時間値rt、またはパルスの共通休止時間値rtを増大させるように指示する。
【0160】
図5Cは、位相の間の共通休止時間を増大した後の、図5Aおよび図5Bの位相トレーンパルス500を図示する。図5Cに見られるように、場合によっては、休止時間を増大した後、パルス波形は、再び「完全」であり、期待される量の電荷が、パルスによって、ユーザの頭皮に提供される。
【0161】
段階210で、最大許容休止時間に達した場合、段階214では、マイクロコントローラ108は、電極によって提供される電圧が、システムのコンプライアンス電圧、またはその所定の部分もしくはパーセントなどの、所定の電圧閾値に達したかどうかを評価する。
【0162】
段階214で、マイクロコントローラ108が、電圧閾値に達したと判定した場合、これは、休止時間を増大させることができない(段階210での判定に因って)ことと、電圧を増大させることができない(段階214での判定に因って)こととを意味している。したがって、おそらく、電極102とユーザの頭皮との間の不良な電気接触、またはシステムの中に別の不具合が存在していると思われ、段階216では、マイクロコントローラ108は、このような不具合または不良な電気接触の表示を、例えばユーザインターフェース134を介してユーザに提供することができる。その後、治療は中断される。
【0163】
あるいは、段階214で、マイクロコントローラ108が、電圧閾値に達していないと判定した場合、段階218では、マイクロコントローラ108は、刺激回路112に、電極102によって加えられる電圧を増大させるように指示し、続いて、段階212では、提供されたパルスの少なくとも1つの休止時間を更新する。いくつかの実施形態では、最大許容休止時間に達したという事実に因って、マイクロコントローラ108は、刺激回路112に、正位相トレーンおよび/または負位相トレーンの中の休止時間の少なくとも1つを減少させることによってパルスを更新するように指示する。
【0164】
いくつかの実施形態では、マイクロコントローラ108は、正位相トレーンの中の全ての休止時間および/または負位相トレーンの中の全ての休止時間を減少させることによって、刺激回路112に、パルスを更新するように指示する。いくつかの実施形態では、マイクロコントローラ108は、刺激回路112に、正位相トレーンの共通休止時間値rt、負位相トレーンの共通休止時間値rt、またはパルスの共通休止時間値rtを減少させるように指示する。
【0165】
いくつかの実施形態では、段階218で電圧を増大し、段階212で休止時間を減少した後、位相トレーンパルスは、図5Aに示される波形を有する。
【0166】
いくつかの実施形態では、マイクロコントローラ108によって、または刺激回路112によって減少されるどのような休止時間も、いくつかの実施形態では5μsec以上である最小休止時間に減少される。
【0167】
いくつかの実施形態では、休止時間に対する変更は、マイクロコントローラ108が、正位相504間の休止時間506の累積時間drt と正位相504の累積時間d との間の時間比率trと、負位相510間の休止時間512の累積時間drt と負位相510の累積時間d との間の時間比率trとの一方または両方を変更するように刺激回路112に指示することによって実行されることを理解されたい。
【0168】
いくつかの実施形態では、段階212では、マイクロコントローラ108は、刺激回路112に、パルスの付加的な特性を適合させるように指示することができる。いくつかの実施形態では、段階212では、マイクロコントローラ108は、刺激回路112に、正位相トレーンの中の正位相の数および/または負位相トレーンの中の負位相の数を適合させるようにさらに指示することができる。いくつかの実施形態では、段階212では、マイクロコントローラ108は、刺激回路112に、正位相の1つまたは複数の位相幅、または正位相の共通位相幅wを適合させるようにさらに指示することができる。いくつかの実施形態では、段階212では、マイクロコントローラ108は、刺激回路112に、負位相の1つまたは複数の位相幅、または負位相の共通位相幅wを適合させるようにさらに指示することができる。いくつかの実施形態では、マイクロコントローラ108は、刺激回路112に、正位相の1つまたは複数および/または負位相の1つまたは複数の振幅を適合させるようにさらに指示することができる。
【0169】
段階212において、マイクロコントローラ108によって加えられる休止時間に対する変更の後、マイクロコントローラ108は、段階208では、十分な電荷が、パルスの各位相によって提供されるか否かを評価し続け、休止時間および/または電圧に対する付加的な更新が、加えられ得る。
【0170】
段階208が発現した場合は必ず、マイクロコントローラ108が、十分な電荷が、パルスの各位相によってユーザの頭皮に提供されていると判定する場合、段階220では、マイクロコントローラ108は、刺激回路112に、確立されたようにパルスを提供し続けるように指示する。
【0171】
次いで、段階222では、マイクロコントローラ108は、付加的な監視が必要であるという表示を待つ。そうした表示が提供されると、マイクロコントローラは、段階208に戻って、パルスが十分な電荷を提供しているかどうかを査定し、フローは、前述のようにそこから再開される。それ以外の場合、マイクロコントローラは、確立されたパルスを提供し続ける。
【0172】
いくつかの実施形態では、表示は、マイクロコントローラ内部表示、例えば10分毎、5分毎、または3分毎に提供される、例えば周期的な監視に関する時間表示である。一部のこのような実施形態では、付加的な監視は、治療の最初の部分では、より頻繁に実行される場合があり、その場合、一旦システムが平衡状態に達すると、治療の後半段階では頻繁には実行されなくなる。
【0173】
他の実施形態では、表示は、マイクロコントローラ外部の構成要素から受信され得る。例えば、表示は、ユーザインターフェース134を介して、ユーザによって提供される不快感、痛み、または錯感覚が減少したことについての表示であってもよい。
【0174】
いくつかの実施形態では、表示は、システムの変化を感知しているセンサによって提供され得る。例えば、マイクロコントローラ108は、センサアレイ124の一部を構成している湿度センサから、付加的な監視を必要とする、電極102付近の湿度の変化を表示する信号を受信することができる。別の例としてマイクロコントローラ108は、センサアレイ124の一部を構成している温度センサから、付加的な監視を必要とする、電極102付近の温度の変化を表示する信号を受信することができる。さらなる例として、マイクロコントローラ108は、センサアレイ124の一部を構成している圧力センサから、付加的な監視を必要とする、電極102に加えられる圧力の変化を表示する信号を受信することができる。さらに別の例として、マイクロコントローラ108は、センサアレイ124の一部を構成している加速度計から、付加的な監視が必要であることを示し得る、ユーザの位置または電極の位置の変化を表示する信号を受信することができる(例えば、ユーザが仰臥位であったけれども、今は立っている場合、電極に加えられる圧力は、少なくなり、インピーダンスを増大させる可能性がある)。
【0175】
システム内の信号伝達の品質を評価するために(段階208において)、パルスの位相によって提供される電荷の評価を、オームの法則に因って、電荷の評価と等価的である、システムのインピーダンスの評価に取り代え得ることを理解されたい。このような実施形態では、電極102の間で測定されたインピーダンスが、所定のインピーダンス閾値を上回ってある場合、提供されたパルスの中の休止時間、および/または提供されたパルスの電圧は、更新される。いくつかの実施形態では、インピーダンス閾値は、8KΩより大きい、10KΩより大きい、または12KΩより大きい場合がある。
【0176】
次に、本明細書における教示による、図2の方法を個人化するための方法の実施形態についてのフローチャートである図3を参照する。
【0177】
段階300で見られるように、最初に、特定のユーザ用の治療モデルを生成するためのデータが、取得される。いくつかの実施形態では、データは、サーバに基づくまたはクラウドベースの遠隔データベースから取得されることができる。いくつかの実施形態では、データは、年齢、体重、および毛髪種類などの患者の特性、および治療中の刺激強度、達したインピーダンスレベル、達した電圧レベル、電圧/インピーダンスの変化、および/または治療時間などの以前の治療の間に収集された数値など、ユーザに関する特定情報に基づくことができる。
【0178】
続いて、段階302では、治療モデルは、取得されたデータによって修正されたデフォルト値に基づいて生成される。いくつかの実施形態では、治療モデルは、湿度センサによって特定される湿度情報、温度センサによって特定される温度情報、加速度計によって特定される位置情報等が含まれ得る、システム内のセンサ(例えばセンサアレイ124内のセンサ)によって特定されるようなシステムの現在状態に関する情報などの、現下に収集された治療データを考慮する。さらに、システムは、ユーザが、例えばユーザインターフェース134を介して、システムの現在状態に関する入力を提供すること、および治療モデルを生成するのにこの入力を使用することを可能にし得る。例えば、ユーザは、皮膚刺激または過剰な皮膚紅斑が発生したことを表示することができ、このことを使用して、この特定のユーザ用の治療モデルを更新することができる。
【0179】
段階304では、システムのマイクロコントローラは、合理的な電圧および位相の間の短い休止時間を使用する一方で、特定のユーザの頭皮に十分な電荷を提供するために必要とされる、電圧および/またはパルスの形についての予測を生成する。段階306では、予測は、図2の方法による治療を開始するのに使用され、予測された電圧が、治療の最初の電圧として使用される。
【0180】
段階308では、治療の間および/または治療の後、ユーザの頭皮に十分な電荷、および/またはこのような電荷を提供するために使用される実波形のパラメータ(例えば正位相および負位相の数、正位相および負位相のそれぞれの長さ、位相の間の休止時間の長さ等)を提供するために必要とされる実電圧は、マイクロコントローラによって記録され、それとともに関連付けられるメモリの中に保存される。
【0181】
いくつかの実施形態では、記録されたデータは、段階310で見られるように、遠隔サーバに置かれるまたはクラウドベースの、遠隔データベースに伝送されることができる。データは、いくつかの実施形態では、ユーザの識別番号または名前などの、特定のユーザの少なくとも1つの識別子と関連付けられた、またはユーザによって使用されるデバイスの少なくとも1つの識別子と関連付けられた遠隔データベースの中に保存されることができ、その結果、そのデータが、次の治療セッションで、例えば段階300で取得されたデータとして、容易に使用され得るようになる。
【0182】
次に、上記記載と共に、非限定的な様式で本発明を例示する以下の例を参照する。
【0183】
実施例
図1Bのシステムおよび図2の方法を用いて、10人のユーザが、治療された。
【0184】
治療には、大後頭神経の刺激が含まれた。図1Bに示されているものと類似のヘッドセットが、後方電極が、毛髪の下で、外後頭隆起のレベルで左右の大後頭神経枝の上に置かれるように、各ユーザの頭部上に置かれた。
【0185】
電気的に平衡パルスの形をした刺激は、5mAの定電流、および80Hzの周波数で加えられた。
【0186】
ベースラインラウンドでは、提供された正位相および負位相は、図4Aに関して上文に記載されたように、それぞれが、400μsecの位相時間を有する単一位相であった。電圧レベルは、記録された。ユーザは、神経分布領域で感じられた錯感覚の強度に留意するように求められ、この強度が、ベースライン強度とみなされ、10のスコアが与えられた。
【0187】
治療の各後続のラウンドでは、パルスには、図5Aに関して上文に記載されたように、正位相トレーンおよび負位相トレーンが含まれた。正位相トレーンおよび負位相トレーンのそれぞれにおける、刺激位相、すなわち「オン時間」の累積時間は、400のμsecのままであった。各ラウンドでは、各位相トレーンの中の累積的な休止時間は、増大され、パルスを提供するのに必要とされる電圧に生じた変化が、記録された。さらに、ユーザは、神経分布領域で感じられた錯感覚に、10は、ベースライン錯感覚であり、1は、ごくわずかな錯感覚である、1~10のスコアを与えるように求められた。
【0188】
結果は、提供されたパルスの累積的な休止時間を変更した後の、電圧および錯感覚の変化を含む表を図示している図6Aにまとめられている。
【0189】
表600には、タイトル行602、第1のベースライン行604、およびそれぞれが、治療の単一ラウンドに関連している複数の治療行606が含まれる。行のそれぞれは、複数の列608に分けられ、複数の列608には、
治療のそのラウンドの中の正位相トレーンおよび負位相トレーンのそれぞれの中の累積的な休止時間をμsecで示している列608aと、
累積的な位相時間に対する休止時間の累積的な長さのパーセント、すなわち、換言すると、正位相トレーンおよび負位相トレーンごとの、「オンタイム」に対する「オフタイム」のパーセントを示しており、-例えば、累積的な休止時間が100μsecであり、上述したように、全てのラウンドにおける各位相トレーンの中の累積的な位相時間が、400μsecである場合には、カラム608bに示されるパーセントは、25%である、列608bと、
カラム608aに明記された所与の休止時間を考慮して、十分な電荷を提供するために必要とされる平均電圧を示すカラム608cと、
ベースライン電圧に対する、平均電圧の減少パーセントを示すカラム608dと、
治療ラウンドに関してユーザによって提供された平均的錯感覚スコアを示しているカラム608eと、が含まれる。
【0190】
図6Bおよび図6Cは、図6Aに示された結果について図式的なグラフィック表示を提供している。具体的には、図6Bは、異なる治療ラウンドにおいてパルス波形に変化が生じた結果として、電圧に生じた変化を図示し、図6Cは、各パルスラウンドにおけるパルス波形に変化が生じた結果として、経験した錯感覚に生じた変化を図示する。
【0191】
表600をより詳細に見ると、累積的な休止時間が増大するにつれて、ユーザの頭皮に十分な電荷を提供するために必要とされる電圧ならびにユーザによって経験される錯感覚は、減少することが示されている。表600の最下行606hを特に見ると、パルスを提供するのに必要な電圧は、累積的な休止時間が累積的な位相時間の2倍である長さであるとき、67%程度だけ減少しており、ユーザによって経験される錯感覚は、あるとしても、ユーザがごくわずかな錯感覚を感じているに過ぎない点まで全面的に減少していることが見られる。
【0192】
図6Cに示されるように、ユーザによって経験される錯感覚(y軸)は、位相時間全体に対する休止時間全体のパーセントすなわち換言すると、「オンタイム」全体に対する「オフタイム」全体のパーセント(x軸)に対して描かれている。見られるように、グラフは、最初に区間620aで減少し、次いで、区間620bでは横ばい状態であり、続いて、区間620cでは、1のスコアに到達するまで、実質的に直線的に減少する。
【0193】
見られるように、参照符号622aによって図6Cの中に表示される、最も大きな休止時間パーセントを有している横ばいの位置では、ユーザは、大きな錯感覚(8の平均スコアを付される)を依然として経験している。この例では、この点は、60%の休止時間パーセントである、すなわち累積的な休止時間および累積的な位相時間の間の0.6の比率である。
【0194】
次に図6Bを見ると、十分な電荷を提供するのに必要とされる電圧の電圧ベースラインに対する減少パーセント(y軸)は、位相時間全体に対する休止時間全体のパーセント、すなわち換言すると、「オンタイム」全体に対する「オフタイム」全体のパーセント(x軸)に対して描画されている。休止時間パーセントにおいて、図6Cの点622aに対応している点622bでは、ユーザの頭皮に十分な電荷を提供するのに必要な電圧は、ベースライン電圧よりおよそ25%低い。
【0195】
例示した結果によれば、識別された60%の休止時間パーセントは、ユーザが神経分布領域において有意なレベルの錯感覚を感じ続ける一方で、このパーセントが、ユーザの頭皮に十分な電荷を提供するために、必要とされる電圧をかなり減少させるので、休止時間閾値として特に適切であり、このことは、望ましいことを理解されたい。
【0196】
本明細書、および後に続く特許請求の範囲の節で使用されるように、用語「または」は、包括的なものとみなされており、したがって、「AすなわちB」という語句は、群「A」、「B」のいずれか、および「AおよびB」を意味している。
【0197】
本明細書、および後に続く特許請求の範囲の節で使用されるように、「パルス」という用語は、例えば電極を介して与えられる、または電極によって感知される電気信号に関するものである。
【0198】
本明細書、および後に続く特許請求の範囲の節で使用されるように、「位相」という用語は、ゼロ振幅から始まり、より高振幅に変化して、ゼロ振幅に戻る電流を有するパルスまたはその一部に関するものである。
【0199】
本明細書、および後に続く特許請求の範囲の節で使用されるように、「正位相」という用語は、正方向に流れる電流を提供する位相に関するものである。
【0200】
本明細書、および後に続く特許請求の範囲の節で使用されるように、「負位相」という用語は、負方向に流れる電流を提供する位相に関するものである。
【0201】
本明細書、および後に続く特許請求の範囲の節で使用されるように、「平衡パルス」という用語は、正部分および負部分の大きさ、すなわち電荷が、等しい、または相互の15%以内、10%以内、5%以内、3%以内、または1%以内であるように、少なくとも1つの正位相を含む正部分および少なくとも1つの負位相を含む負部分を含むパルスに関するものである。
【0202】
本明細書、および後に続く特許請求の範囲の節で使用されるように、「位相トレーン」という用語は、同じ種類または大きさ、または同じ方向の2つ以上の連続的な位相を含むパルスに関するものである。例えば、正位相トレーンは、2つ以上の連続的な正位相を含み、負位相トレーンは、2つ以上の連続的な負位相を含む。位相トレーンを画定して、連続的な位相を識別するとき、位相トレーンにおいて最低電荷位相の電荷の30%以下の電荷を有する、反対方向のいかなる位相も、ノイズとみなされ、無視される。例えば、2つの正位相、次いで非常に小さく短い負位相、次いで付加的な位相を含むパルスは、小さく短い負位相は、無視されるので、正位相トレーンとみなされる。
【0203】
本明細書、および後に続く特許請求の範囲の節で使用されるように、「位相トレーンパルス」という用語は、少なくとも1つの正位相トレーンおよび少なくとも1つの負位相トレーンを含むパルスに関するものである。
【0204】
本明細書、および後に続く特許請求の範囲の節で使用されるように、「平衡位相トレーンパルス」という用語は、少なくとも1つの正位相トレーンおよび少なくとも1つの負位相トレーンを含む、平衡パルスに関するものである。
【0205】
本明細書、および後に続く特許請求の範囲の節で使用されるように、「単一パルス」という用語は、単一正位相および/または単一負位相を含み、位相トレーンを含んでいないパルスに関するものである。
【0206】
明確にするために、別々の実施形態のコンテクストにおいて記載されている、本発明の特定の特徴は、さらに、組み合わせて、単一実施形態の中に提供され得ることも理解されたい。これとは反対に、簡潔にするために、単一実施形態のコンテクストにおいて記載されている、本発明のさまざまな特徴は、さらに、別々にまたは何らかの適切な副次的組み合せで提供され得る。同様に、1つまたは複数の特定の請求項に従属している請求項の内容は、通常他の明示されていない請求項に従属している場合もある、または、その内容と、その間に何らかの特定の明白な不適合性なく、組み合わされる場合もある。
【0207】
本発明は、その特定の実施形態に関連して記載されてきたが、当業者には、多くの代替案、修正、および変型例が明らかであることは明白である。したがって、添付の請求の範囲の精神および広範な範囲の中に入る、全てのこのような代替案、修正、および変型例を包含するように意図されている。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C