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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】井戸のストレーナ部の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   E03B 3/15 20060101AFI20220126BHJP
【FI】
E03B3/15
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021128432
(22)【出願日】2021-08-04
【審査請求日】2021-08-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514266378
【氏名又は名称】東京ファシリティーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151390
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 淨宗
(72)【発明者】
【氏名】中谷 博宜
(72)【発明者】
【氏名】井上 正義
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-016626(JP,A)
【文献】特開平05-031306(JP,A)
【文献】特開2001-193106(JP,A)
【文献】特表2004-501303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 3/15
B08B 3/00-3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
井戸の内部に加圧送水することで、該井戸の内部に圧入された水がストレーナ部の内側から外側へと圧出されて該井戸に設置されているストレーナ部の付着物を除去する方法であって、該井戸の内部にその関連機器を設置したままの状態で、井戸の開口部用蓋部材で該井戸の開口部を閉鎖し、該井戸からの揚水を停止した上で、該井戸の内部への加圧送水の実施とその休止を交互に複数回繰り返して該ストレーナ部の付着物を除去することを特徴とする井戸のストレーナ部の洗浄方法。
【請求項2】
請求項1に記載した井戸のストレーナ部の洗浄方法であって、前記井戸の内部への加圧送水の圧力を加圧送水装置において2kgf/cm2以上であって10kgf/cm2以下とし、該加圧送水を実施する時間を1回につき5分間とし、該加圧送水を休止する時間を1回につき2ないし3分間とし、該加圧送水の実施と休止を交互に2ないし3回繰り返すことを特徴とする井戸のストレーナ部の洗浄方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載した井戸のストレーナ部の洗浄方法であって、前記井戸の内部への加圧送水につき、前記井戸の開口部用蓋部材に設けられている加圧送水管口に取り付けた加圧送水管を介してこれを行うことを特徴とする井戸のストレーナ部の洗浄方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載した井戸のストレーナ部の洗浄方法であって、前記井戸の内部への加圧送水につき、該井戸を形成するケーシングの側面に設けられている加圧送水管口に取り付けた加圧送水管を介してこれを行うことを特徴とする井戸のストレーナ部の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、井戸に設置されているストレーナ部に付着する砂、泥、微生物といった各種の物質を除去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
まず、ボーリング工事によって設置される一般な井戸(1)の構造について説明する。井戸(1)は、図6に図示するように、ボーリング工事等で掘削した井戸穴(2)の内部にケーシング(3)及びストレーナ(4)が設置されているとともに、井戸穴(2)の内壁とケーシング(3)及びストレーナ(4)の外壁との間には砂利(5)が詰められている。ケーシング(3)は取水を所望する帯水層以外の深さに設置する筒状の部材であって、地下水がケーシング(3)を介して井戸の内部に流入しないように、ケーシング(3)には取水孔が設けられていない。これに対して、ストレーナ(4)は取水を所望する帯水層に設置する筒状の部材であって、取水を所望する帯水層に所在する地下水がストレーナ(4)を介して井戸(1)の内部へと流入するように、ストレーナ(4)には取水孔が設けられている。尚、ストレーナ(4)はスクリーンとも呼称されている。ストレーナ(4)の外周面には、井戸(1)の内部に砂等の井戸水以外の物質が流入しないように、更に網状の部材で形成された井戸用ネット(6)を被せることもある。図では、井戸用ネット(6)は、ストレーナ(4)にだけ被せられているが、ケーシング(3)とストレーナ(4)の双方に被せられることもある。本願では、ストレーナ(4)とそれを覆う井戸用ネット(6)を合わせてストレーナ部(S)と呼称する。砂利(5)も井戸(1)の内部に砂等の井戸水以外の物質が流入しないように、井戸水を濾過するために用いられる。そして、井戸の開口部(7)から内部へと吊り下げる等して井戸の内部に揚水ポンプ(8)を設置するとともに、揚水ポンプ(8)に適当な長さの揚水管(9)を連結することで、井戸(1)内の地下水を汲み上げるのである。揚水管(9)には揚水バルブ(10)が装着されており、揚水量の調節を行うことができるようになっている。更に、井戸(1)の汚損を防止するといった目的で、その開口部(7)の周囲が井戸用カバー(11)によって覆われることもある。
【0003】
ここで、ストレーナ部(S)はその外部から内部へと地下水が流入する際に、砂等がその内部に流入することを防止できる。しかしながら、井戸(1)を設置する場所やストレーナ部(S)が位置する深さにおける地質等により多少の差異はあるものの、特にストレーナ(4)の取水孔や井戸用ネット(6)に砂、泥、微生物といった各種の物質が付着することがある。そうすると、該付着物によって該取水孔が閉塞したり井戸用ネット(6)が目詰まりしたりして、地下水がストレーナ部(S)の内部に流入しなくなる結果、井戸(1)の揚水量が減少したりひいては皆無になったりしてしまうという問題があった。
【0004】
そこで、上記のような問題を解決すべく、井戸(1)の内部へと加圧送風ないし加圧送水を実施することで、井戸のストレーナ部(S)における各種の付着物を除去してこれを洗浄する方法が提案されている。即ち、ストレーナの内部に開口する洗浄用パイプを予め設けておき、該洗浄用パイプから気体ないし液体を噴出させることでストレーナ部の付着物を除去する方法(例えば、下記の特許文献1を参照)、先端に超高圧回転噴射ノズルを設けた超高圧水ホースを井戸のケーシング管内に吊り下げ、該ケーシング管のストレーナに超高圧回転噴射ノズルから超高圧水を噴射させながら回転させ、該ストレーナに付着している各種の付着物を除去する方法(例えば、下記の特許文献2を参照)、井戸のパイプの上端開口部につき、ポンプの送水管の連結部を設けた閉塞盤で密閉し、ポンプを作動して井戸パイプ内に20Kg/cm以上の圧力水を圧入させ、続いてピストンを挿入して急激な昇降を繰返して加圧吸引を行うことを特徴とする井戸の再活法(例えば、下記の特許文献3を参照)等が提案されている。
【0005】
上記のような井戸のストレーナ部の洗浄方法によれば、井戸の内部に圧入された風や水がストレーナ部の内側から外側へと圧出される。そうすることで、ストレーナ部の付着物が剥がれて、該取水孔が開放されたり井戸用ネットの目詰まりが解消されたりすることで、再び地下水がその内部に流入し得るようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-31306号公報
【文献】特開2001-193106号公報
【文献】特開昭60-16626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記のような従来技術に係る井戸のストレーナ部の洗浄方法では、井戸の内部へと一定の圧力をもって加圧送風ないし加圧送水するところ、ストレーナ部の付着物の粘性が高いといった理由から強固に付着していると、このような方法ではこれを十分に除去できないことがあった。
【0008】
そこで、本願発明が解決しようとする第1の課題は、井戸の内部に加圧送水することでストレーナ部の付着物を除去するための井戸のストレーナ部の洗浄方法につき、ストレーナ部の付着物を十分に除去することができる方法を提供することにある。
【0009】
また、上記の場合、送水する圧力を高めて井戸の内部へと加圧送水すれば、井戸内に圧入された水が更に高い圧力を持ってストレーナ部の内側から外側へと圧出されることになるため、該付着物を除去し易くなるとも考えられる。しかしながら、過度に圧力を高めて加圧送水すると、揚水ポンプといった該井戸の内部に設置されている関連機器を損傷させるおそれがある。そのため、従来技術に係る井戸のストレーナ部の洗浄方法にあっては、該井戸の内部に設置されている関連機器をいったん撤去してから、該井戸の内部に加圧送水してストレーナ部の付着物を除去し、該関連機器を該井戸の内部に再度設置していたため、その作業が煩雑であった。
【0010】
そこで、本願発明が解決しようとする第2の課題は、井戸の内部に加圧送水することでストレーナ部の付着物を除去するための井戸のストレーナ部の洗浄方法につき、該井戸の内部に設置されている関連機器を設置したままにして該井戸の内部に加圧送水を行ってストレーナ部の付着物を除去する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、上記の各課題を解決するために提案されたものであり、以下の構成を有するものである。以下では、本願発明の構成を理解することを補助するために、本願に添付した図面に表示した番号及び符号をあわせて記載する。
【0012】
請求項1に係る井戸のストレーナ部の洗浄方法は、井戸(1)の内部に加圧送水することで、井戸(1)の内部に圧入された水が井戸(1)に設置されているストレーナ部(S)の内側から外側へと圧出されてストレーナ部(S)の付着物を除去する方法であって、井戸(1)の内部にその関連機器を設置したままの状態で、井戸の開口部用蓋部材(12)で井戸の開口部(7)を閉鎖し、井戸(1)からの揚水を停止した上で、井戸(1)の内部への加圧送水の実施とその休止を交互に複数回繰り返してストレーナ部(S)の付着物を除去する方法である。
【0013】
請求項2に係る井戸のストレーナ部の洗浄方法は、請求項1に記載した井戸のストレーナ部の洗浄方法であって、前記加圧送水はその圧力を加圧送水装置(15)において2kgf/cm2以上であって10kgf/cm2以下とし、該加圧送水を実施する時間を1回につき5分間とし、該加圧送水を休止する時間は1回につき2ないし3分間とし、該加圧送水の実施と休止を交互に2ないし3回繰り返す方法である。
【0014】
請求項3に係る井戸のストレーナ部の洗浄方法は、請求項1又は2に記載した井戸のストレーナ部の洗浄方法であって、前記井戸(1)の内部への加圧送水につき、井戸の開口部用蓋部材(12)に設けられている加圧送水管口(12a)に取り付けた加圧送水管(13)を介してこれを行う方法である。
【0015】
請求項4に係る井戸のストレーナ部の洗浄方法は、請求項1又は2に記載した井戸のストレーナ部の洗浄方法であって、井戸(1)の内部への加圧送水につき、井戸(1)を形成するケーシング(3)の側面に設けられている加圧送水管口(3a)に取り付けた加圧送水管(13)を介してこれを行う方法である。
【発明の効果】
【0016】
本願発明に係る井戸のストレーナ部の洗浄方法は、前記の通りの構成であるから、以下のような効果を奏することができる。
【0017】
まず、請求項1に記載した井戸のストレーナ部の洗浄方法は、前記のように、井戸(1)の内部への加圧送水の実施とその休止を交互に複数回繰り返すものであるところ、加圧送水の実施によりストレーナ部(S)が膨張するのに対し、加圧送水の休止によりストレーナ部(S)が収縮することになる。このようにストレーナ部(S)が膨張と収縮を繰り返すことにより、ストレーナ部(S)の付着物が剥がれ易くなるとともに、剥がれ易くなったストレーナ部(S)の付着物は井戸(1)の内部に圧入された水がストレーナ部(S)の内側から外側へと圧出されることで十分に除去されるのである。よって、請求項1に記載した井戸のストレーナ部の洗浄方法は、井戸の内部に加圧送水することでストレーナ部の付着物を除去するための井戸のストレーナ部の洗浄方法につき、ストレーナ部の付着物を十分に除去することができる方法を提供するという本願発明が解決しようとする第1の課題を解決することができる。
【0018】
また、請求項1に記載した井戸のストレーナ部の洗浄方法は、上記のように、ストレーナ部(S)が膨張と収縮を繰り返すことにより、ストレーナ部(S)の付着物が剥がれ易くなるから、それほど圧力を高めて加圧送水する必要はないため、井戸(1)の関連機器を井戸(1)の内部に設置したままにしておいても、加圧送水により損傷するおそれは低減している。よって、請求項1に記載した井戸のストレーナ部の洗浄方法は、井戸の内部に加圧送水することでストレーナ部の付着物を除去するための井戸のストレーナ部の洗浄方法につき、該井戸の内部に設置されている関連機器を設置したままにして該井戸の内部に加圧送水を行ってストレーナ部の付着物を除去する方法を提供するという本願発明が解決しようとする第2の課題を解決することができる。
【0019】
特に、本願発明の発明者が本願発明に係る井戸のストレーナ部の洗浄方法を実施して得た知見によれば、前記加圧送水の圧力は加圧送水装置(15)において2kgf/cm2以上であって10kgf/cm2以下であり、前記加圧送水を実施する時間は1回につき5分間であり、前記加圧送水を休止する時間は1回につき2ないし3分間であり、該加圧送水の実施と休止を交互に2ないし3回繰り返すことにより、ストレーナ部(S)の付着物を十分に除去し得るとともに、井戸(1)の内部に設置してある機器に故障は生じなかった。よって、請求項2に記載した井戸のストレーナ部の洗浄方法は、本願発明が解決しようとする第1及び第2の課題を解決するのに好適である。
【0020】
また、井戸(1)の内部への加圧送水につき、井戸の開口部用蓋部材(12)に設けられている加圧送水管口(12a)に取り付けた加圧送水管(13)を介してこれを行う方法、およびケーシング(3)の側面に設けられている加圧送水管口(3a)に取り付けた加圧送水管(13)を介してこれを行う方法によれば、簡便に井戸のストレーナ部を洗浄することができることから、請求項3又は4に記載した井戸のストレーナ部の洗浄方法は、本願発明が解決しようとする第1及び第2の課題を解決するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本願発明に係る井戸のストレーナ部の洗浄方法の一実施形態を示した概略構造図である。
図2図1に記載した本願発明の一実施形態に係る井戸のストレーナ部の洗浄方法の作用効果説明図である。
図3図1に記載した本願発明の一実施形態に係る井戸のストレーナ部の洗浄方法に用いる井戸の開口部用蓋部材の斜視図である。
図4図1とは異なる実施形態に係る本願発明に係る井戸のストレーナ部の洗浄方法を示した概略構造図である。
図5図4に記載した本願発明の一実施形態に係る井戸のストレーナ部の洗浄方法に用いる井戸の開口部用蓋部材の斜視図である。
図6】一般的な井戸の構造を示した概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願発明の一実施形態に係る井戸のストレーナ部の付着物を除去する方法につき、添付図面に基づいて、これを説明する。
【0023】
本願発明に係る井戸のストレーナ部の付着物を除去する方法を実施する井戸(1)は、一般に、図1に図示するように、試錐工事で掘削した井戸穴(2)の内部にそれぞれ管状のケーシング(3)及びストレーナ(4)が設置されているとともに、井戸穴(2)の内壁とケーシング(3)及びストレーナ(4)の外壁との間には砂利(5)が詰められている。ケーシング(3)ないしストレーナ(4)の外周面には井戸用ネット(6)を被せることもある。そして、井戸(1)の内部には揚水ポンプ(8)が設置されているとともに、揚水ポンプ(8)に揚水管(9)が連結されている。また、揚水管(9)には揚水バルブ(10)が装着されており、揚水量の調節を行うことができるようになっている。更に、井戸の開口部(7)は井戸用カバー(11)で覆われることがある。もっとも、本願発明に係る井戸のストレーナ部の付着物を除去する方法は、上記のような一般的な井戸に限らず、ストレーナ部(S)を備えている井戸であればこれを実施することができる。
【0024】
井戸(1)を設ける場所やストレーナ部(S)が位置する深さの地質等により多少の差異はあるものの、特にストレーナ(4)の取水孔や井戸用ネット(6)に砂、泥、微生物といった各種の物質が付着してしまう。そうすると、該付着物によって該取水孔が閉塞したり井戸用ネット(6)が目詰まりしたりして、地下水がストレーナ部(S)の内部に流入しなくなる結果、井戸(1)の揚水量が減少したりひいては皆無になったりしてしまうという問題が生じる。そこで、このような問題を解消ないし予防すべく、本願発明に係る井戸のストレーナ部の洗浄方法を実施するのである。
【0025】
本願発明に係る井戸のストレーナ部の洗浄方法は、井戸(1)の内部に加圧送水することで、井戸(1)の内部に圧入された水がストレーナ部(S)の内側から外側へと圧出されてストレーナ部(S)の付着物を除去する方法であって、井戸(1)の内部にその関連機器を設置したままの状態で、これを実施することができるものである。
【0026】
まず、図1に図示するように、井戸の開口部用蓋部材(12)で井戸の開口部(7)を閉鎖する。井戸の開口部用蓋部材(12)は、井戸の開口部(7)を閉鎖し得る形状及び大きさを備えている。即ち、図3では、井戸の開口部用蓋部材(12)はその全体的な形状が平面視正円状の平板であるが、井戸の開口部(7)の形状に合わせて、その形状を適宜変更することができる。井戸の開口部用蓋部材(12)はその材質を問わないが、井戸(1)は水気の多い場所であるから、そのような場所であっても容易に錆びることがなく、また、井戸(1)の内部に加圧送水を行っても容易に損傷することがない程度の強度を備えたステンレスなどの材料で形成するのが好適である。
【0027】
井戸の開口部用蓋部材(12)には、加圧送水管(13)を取り付けるための加圧送水管口(12a)が設けられている。即ち、図3では、井戸の開口部用蓋部材(12)に上方に伸びる管状の部位を設けるとともに、その上端部に加圧送水管(13)を螺着するためのネジ部を設けることにより、加圧送水管口(12a)を形成している。また、井戸の開口部用蓋部材(12)には、井戸(1)の内部から地下水を揚水するための揚水管(9)を取り付けるための揚水管口(12b)が設けられている。即ち、図3では、井戸の開口部用蓋部材(12)に上方と下方にそれぞれ伸びる管状の部位を設けるとともに、その内部に揚水管(9)を螺着するためのネジ部を設けることにより、揚水管口(12b)を形成している。もっとも、加圧送水管口(12a)と揚水管口(12b)は、それぞれ加圧送水管(13)と揚水管(9)とを取り付けることができれば、このような態様に限定されるものではない。
【0028】
図1では、井戸の開口部(7)に鍔付きの配管接手(14)を設置した上で、井戸の開口部用蓋部材(12)を複数のボルトで配管接手(14)に螺着させているが、井戸の開口部用蓋部材(12)を井戸の開口部(7)に設置する手段は、特にこれに限定されるものではない。また、井戸の開口部用蓋部材(12)は、本願発明に係る井戸のストレーナ部の洗浄方法を実施する際にその都度井戸の開口部(7)に着脱してもよいが、井戸の開口部(7)に常時設置しておいてもよい。尚、井戸の開口部用蓋部材(12)を井戸の開口部(7)に常時設置しておく場合、揚水管(9)は揚水管口(12b)に常時取り付けておくことができる。また、本願発明に係る井戸のストレーナ部の洗浄方法を実施するとき以外は、加圧送水管口(13)は各種の栓部材で閉塞しておくのがよい。
【0029】
井戸の開口部用蓋部材(12)を用いることで、井戸の開口部(7)を閉鎖して加圧送水が井戸の開口部(7)から溢れ出ないようにし、井戸(1)の内部の圧力を高めることができるため、本願発明に係る井戸のストレーナ部の洗浄方法を好適に実施することができる。また、加圧送水管口(12a)に加圧送水管(13)を取り付けることにより、本願発明に係る井戸のストレーナ部の洗浄方法を簡便に実施することができ、好適である。
【0030】
次に、図1に図示するように、加圧送水管口(12a)に加圧送水管(13)を取り付ける。具体的には、加圧送水管(13)の端部を加圧送水管口(12a)の上端部に螺着する。また、揚水管(9)に接続している揚水バルブ(10)は、井戸(1)の内部の地下水を減少させることがないよう、また、加圧送水の圧力を減ずることがないよう、これを閉鎖して井戸(1)からの揚水を停止しておく。そして、加圧送水管(13)を介して地上から井戸(1)の内部への加圧送水の実施とその休止を交互に複数回繰り返す。具体的には、加圧送水管に接続した加圧送水装置(15)を操作することによって、加圧送水の実施とその休止を行うのである。ここで、加圧送水装置(15)としては、各種公知の送水用エンジンポンプを用いることができる。
【0031】
そうすると、図2に図示するように、加圧送水の実施によりストレーナ部(S)が膨張するのに対し、加圧送水の休止によりストレーナ部(S)が収縮することになる。ストレーナ部(S)がこのような膨張と収縮を繰り返すことにより、ストレーナ部(S)の付着物が剥がれ易くなるとともに、剥がれ易くなった該ストレーナ部の付着物は井戸の内部に圧入された水がストレーナ部(S)の内側から外側へと圧出されることで十分に除去される。また、ストレーナ部(S)が膨張と収縮を繰り返すことにより、ストレーナ部の付着物が剥がれ易くなるから、それほど圧力を高めて加圧送水する必要はないため、揚水ポンプ(8)といった井戸の関連機器を井戸(1)の内部に設置したままにしておいても、加圧送水により損傷するおそれが低減されている。
【0032】
特に、本願発明の発明者が本願発明に係る井戸のストレーナ部の洗浄方法を実施して得た知見によれば、前記加圧送水の圧力は加圧送水装置(15)において2kgf/cm2以上であって10kgf/cm2以下であり、前記加圧送水を実施する時間は1回につき5分間であり、前記加圧送水を休止する時間は1回につき2ないし3分間であり、該加圧送水の実施と休止を交互に2ないし3回繰り返すことにより、ストレーナ部(S)の付着物を十分に除去し得るとともに、井戸(1)の内部に設置してある機器に故障は生じなかった。
【0033】
上記のようにしてストレーナ部(S)を洗浄した後、加圧送水口(12a)から加圧送水管(13)を取り外すとともに、加圧送水管(13)に接続した加圧送水装置(15)の撤去などを行う。また、揚水管(9)に接続している揚水バルブ(10)を開いて、井戸(1)からの揚水を再開する。
【0034】
以上が本願発明の一実施形態に係る井戸のストレーナ部の付着物を除去する方法についての説明である。以下に本願発明の別の実施形態に係る井戸のストレーナ部の付着物を除去する方法について説明する。尚、本願発明の別の実施形態に係る井戸のストレーナ部の付着物を除去する方法は、下記の事項以外、前記の本願発明の一実施形態に係る井戸のストレーナ部の付着物を除去する方法についての説明と同一である。
【0035】
特に井戸の開口部(7)の面積が小さい場合、自ずから井戸の開口部用蓋部材(12)の大きさも小さくなるところ、このような場合は井戸の開口部用蓋部材(12)に加圧送水管口(12a)と揚水管口(12b)とを設けることが困難である。
【0036】
そこで、図4及び5に図示するように、井戸の開口部用蓋部材(12)には揚水管口(12b)のみを設けて、これを井戸の開口部(7)に設置する。一方、ケーシング(3)の地表面上に露出している部分の側面に加圧送水管口(3a)を設ける。具体的には、ケーシング(3)の側面に開口部を設けるとともに、管状の部材を水平方向に突設する。加圧送水管口(3a)に加圧送水管(13)を接続し、これを介して井戸(1)の内部に加圧送水を行うのである。
【符号の説明】
【0037】
1 井戸
2 井戸穴
3 ケーシング
3a 加圧送水管口
4 ストレーナ
5 砂利
6 井戸用ネット
7 開口部
8 揚水ポンプ
9 揚水管
10 揚水バルブ
11 井戸用カバー
12 開口部用蓋部材
12a 加圧送水管口
12b 揚水管口
13 加圧送水管
14 配管接手
15 加圧送水装置
S ストレーナ部
【要約】
【課題】井戸の内部に加圧送水することでストレーナ部の付着物を除去するための井戸のストレーナ部の洗浄方法につき、該井戸の内部に設置されている関連機器を設置したままにして、該ストレーナ部の付着物を十分に除去することができる方法及びそれに用いる井戸の開口部用蓋部材を提供する。
【解決手段】井戸1の内部に加圧送水することで、井戸1の内部に圧入された水がストレーナ部Sの内側から外側へと圧出されてストレーナ部Sの付着物を除去する方法であって、井戸1の内部にその関連機器を設置したままの状態で、井戸の開口部用蓋部材12で井戸の開口部7を閉鎖し、井戸1からの揚水を停止した上で、井戸1の内部への加圧送水の実施とその休止を交互に複数回繰り返してストレーナ部Sの付着物を除去する井戸のストレーナ部の洗浄方法、及びこれに用いる井戸の開口部用蓋部材12である。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6