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  • 特許-安全帯のストラップ巻取装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】安全帯のストラップ巻取装置
(51)【国際特許分類】
   A62B 35/00 20060101AFI20220207BHJP
【FI】
A62B35/00 K
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017205194
(22)【出願日】2017-10-24
(65)【公開番号】P2019076371
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000106287
【氏名又は名称】サンコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】増田 亘宏
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-513656(JP,A)
【文献】実用新案登録第2588015(JP,Y2)
【文献】登録実用新案第3008656(JP,U)
【文献】特開昭58-206764(JP,A)
【文献】特開2011-149247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランヤードのストラップ(2)を巻き取る巻取ドラム(11)がブラケット(21)により回動自在に支持され、前記巻取ドラム(11)の回転に伴い発生する遠心力で前記巻取ドラム(11)側のロック爪(15)が外方向へ揺動し、前記ロック爪(15)の先端部と前記ブラケット(21)側の係合部とが係合して、前記ストラップ(2)の繰り出しがロックされる遠心カム式のロック機構を有する安全帯のストラップ巻取装置において、
前記ブラケット(21)は、金属製の板材から成り、その折り曲げにより一対の側板部(21a,21b)が連結部(21c)を介して連なった二股状の形状とされ、
前記ブラケット(21)の一方の側板部(21a)には、前記連結部(21c)側に位置し前記巻取ドラム(11)のフランジ(13)から離れて前記ロック爪(15)が収まる空間を形成する部分と、前記連結部(21c)の反対側に位置し前記フランジ(13)に沿うように接近する部分との間に、幅方向の両側縁にわたる2か所での折り曲げにより、遠心力で外方向へ揺動した状態の前記ロック爪(15)の先端の回転軌跡(R)より内径側の範囲に位置するように、前記ロック爪(15)の先端部との係合部となる段差部(21d)が設けられ、
前記巻取ドラム(11)の高速回転に伴い、前記ロック爪(15)が爪軸(14)を中心として揺動し、前記ロック爪(15)の先端側に対して前記爪軸(14)を挟んで反対に位置する末端側が前記巻取ドラム(11)を軸支するドラム軸(10)に当接した状態で、前記ロック爪(15)の先端が前記回転軌跡(R)上を回転し、
その後、前記ロック爪(15)の先端部と前記段差部(21d)とが係合して、前記巻取ドラム(11)の回転が停止することを特徴とする安全帯のストラップ巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高所作業時に作業員が墜落阻止のために装着する安全帯用のストラップ巻取装置であって、遠心カム式のロック構造を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場等の高所で作業を行う作業員が装着する安全帯には、ランヤードのストラップを巻き取るストラップ巻取装置が取り付けられることがある。このストラップ巻取装置として、ストラップの先端のフックを作業場所の構造物に係止した状態で、作業員が誤って落下し、ストラップが急速に繰り出され始めたとき、ストラップの繰り出しが直ちにロックされ、落下距離を最小限に抑えられるロック機構付きのものが知られている。
【0003】
このロック機構には、巻取ドラムがブラケット等の固定部材に回動自在に支持され、巻取ドラムの回転に伴い発生する遠心力で巻取ドラム側に設けられたロック爪が外方向へ揺動し、ロック爪の先端部と固定部材側の止め板に形成された係合部とが係合して、ストラップの繰り出しがロックされる遠心カム式のものがある(下記特許文献1参照)。
【0004】
また、ドラム支持枠等の固定部材側にロック爪がシーソー状に揺動自在に設けられ、巻取ドラムの回転に伴い、ロック爪の一端部を巻取ドラム側の爪車の歯状に突出した係合部が打撃し、ロック爪の他端部がばねの付勢力で復帰する前に係合部に係合して、ストラップの繰り出しがロックされる打撃式のものもある(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】登録実用新案第3008656号公報
【文献】特開2011-149247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記いずれのロック機構においても、ロック爪と係合する止め板や爪車を他の構造部材に固定するために、複数の固定ピンをかしめる工程が発生し、結果としてストラップ巻取装置の製造コストが嵩む傾向にあった。
【0007】
そこで、この発明は、部品の締結工程を削減して、製造コストを抑制できるロック機構を備えたストラップ巻取装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明は、ランヤードのストラップを巻き取る巻取ドラムがブラケットにより回動自在に支持され、前記巻取ドラムの回転に伴い発生する遠心力で前記巻取ドラム側のロック爪が外方向へ揺動し、前記ロック爪の先端部と前記ブラケット側の係合部とが係合して、前記ストラップの繰り出しがロックされる遠心カム式のロック機構を有する安全帯のストラップ巻取装置において、
前記ブラケットには、遠心力で外方向へ揺動した状態の前記ロック爪の先端の回転軌跡より内径側の範囲に位置するように、前記ロック爪の先端部との係合部となる段差部が設けられているものとしたのである。
【0009】
また、前記ブラケットは、金属製の板材から成り、その折り曲げにより前記段差部が形成されているものとしたのである。
【0010】
また、前記段差部は、前記ブラケットの前記ロック爪が収まる空間を形成する部分と前記巻取ドラムの側面に沿う部分との間に形成されているものとしたのである。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る遠心カム式のロック機構を備えたストラップ巻取装置では、巻取ドラムを回動自在に支持するブラケットに形成した段差部を、巻取ドラムの回転に伴い遠心力で外方向へ揺動したロック爪の先端部が係合する係合部として利用するので、別途部品を締結する工程を削減でき、製造コストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明に係るストラップ巻取装置を備えたランヤード全体を示す正面図
図2】同上のストラップ巻取装置の(2A)ケースの内部を表す正面図、(2B)縦断側面図
図3】同上のロック機構のロック爪に遠心力が作用した状態における(3A)ロック前の概略正面図、(3B)ロック時の概略正面図
図4】同上のロック機構の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1に示すように、この発明に係るロック機構を備えたストラップ巻取装置1は、ドラム軸10を中心として、アラミド繊維等の高強度繊維を用いたストラップ2を巻き取るための巻取ドラム11がブラケット21により回動自在に支持され、巻取ドラム11とブラケット21がケース31に内蔵されたものとなっている。
【0015】
ストラップ巻取装置1には、ストラップ2の繰出し方向と反対側に、安全帯に連結するための連結金具3が取り付けられ、ストラップ2の先端側には、ショックアブソーバ4を介しフック5が取り付けられて、ランヤードを構成している。
【0016】
図2乃至図4に示すように、巻取ドラム11は、巻芯の両側のフランジ12b,13間にストラップ2を巻き取るものであり、巻取ドラム11の一側のフランジ13の外面に、ドラム軸10の近傍に位置する爪軸14を中心としてロック爪15が内外方向へ揺動自在に設けられ、ロック爪15は、爪ばね16により内方向へ付勢されている。
【0017】
ブラケット21は、機械構造用炭素鋼等の金属製の板材をプレス加工により折り曲げて形成され、一対の側板部21a,21bが連結部21cを介して連なった二股状の形状とされている。
【0018】
一方の側板部21aには、巻取ドラム11のフランジ13から離れてロック爪15が収まる空間を形成する部分と、フランジ13に沿うように接近してケース31の内側突出部に固定される部分との間に段差部21dが設けられている。
【0019】
段差部21dは、ストラップ2が巻取ドラム11からゆっくりと繰り出されている状態では、ロック爪15の先端部が干渉しない部分に位置している(図2(2A)参照)。
【0020】
一方、ストラップ2が巻取ドラム11から急速に繰り出されて、巻取ドラム11が高速で回転し、ロック爪15が遠心力で外方向へ揺動したときには、ロック爪15の先端部が段差部21dに係合するように、段差部21dは、ロック爪15の先端の回転軌跡Rより内径側の範囲に位置している(図3(3A)参照)。
【0021】
巻取ドラム11の他側のフランジ12bの外側には、巻取ドラム11にストラップ2が巻き取られる方向の回転力を付与するためのゼンマイばねが内蔵されたばねケース18が設けられている。
【0022】
なお、巻取ドラム11を軸支するドラム軸10は、ブラケット21の一対の側板部21a,21bにそれぞれ形成された軸穴21e,21fに挿通することにより、ブラケット21に係止されている(図4参照)。
【0023】
また、ケース31は、表カバーと裏カバーに2分割され、図示省略したねじの締め付けにより、表カバーと裏カバーが結合一体化されている(図2(2B)参照)。
【0024】
上記のようなストラップ巻取装置1を備えた図1に示すようなランヤードを使用して高所作業を行う場合には、作業員が装着した安全帯に連結金具3を連結し、フック5を作業場所の構造物に係止する。
【0025】
このような状態で作業者が誤って高所から落下すると、ストラップ2が巻取ドラム11から急速に繰り出され始め、巻取ドラム11が高速で回転する。
【0026】
そして、図3(3A)に示すように、巻取ドラム11の回転に伴い発生する遠心力により、ロック爪15が爪ばね16の引張力に抗して外方向へ揺動し、ロック爪15の末端側がドラム軸10に当接した状態で、ロック爪15の先端が回転軌跡R上を回転する。
【0027】
その後、図3(3B)に示すように、ロック爪15の先端部とブラケット21の段差部21dとが係合すると、巻取ドラム11の回転が停止し、ストラップ2の繰り出しがロックされるので、作業員の落下距離が最小限に抑えられる。
【0028】
上記のような遠心カム式のロック機構を有するストラップ巻取装置1では、巻取ドラム11を回動自在に支持するブラケット21に形成した段差部21dを、巻取ドラム11の回転に伴い遠心力で外方向へ揺動したロック爪15の先端部が係合する係合部として利用するので、従来のストラップ巻取装置のように、ブラケット21に別途部品を締結する工程が不要となり、製造コストを抑制できる。
【0029】
なお、このストラップ巻取装置1は、作業者の両肩から両腿へ巻き掛けられるハーネス型安全帯への連結用のランヤード(図1参照)のほか、連結金具3等を適宜変更して、作業者の胴にのみ巻き付けられる胴ベルト用のランヤードにも適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 ストラップ巻取装置
2 ストラップ
3 連結金具
4 ショックアブソーバ
5 フック
10 ドラム軸
11 巻取ドラム
12b,13 フランジ
14 爪軸
15 ロック爪
16 爪ばね
18 ばねケース
21 ブラケット
21a,21b 側板部
21e,21f 軸穴
21c 連結部
21d 段差部
31 ケース
R 回転軌跡
図1
図2
図3
図4