(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】貝殻処理装置および貝殻処理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/40 20220101AFI20220126BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20220126BHJP
B09B 3/60 20220101ALI20220126BHJP
【FI】
B09B3/00 303Z
B09B5/00 Z ZAB
B09B3/00 A
(21)【出願番号】P 2017209163
(22)【出願日】2017-10-30
【審査請求日】2020-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】517306640
【氏名又は名称】株式会社下瀬微生物研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下瀬 眞一
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-122684(JP,A)
【文献】特開2007-319738(JP,A)
【文献】特開2003-080209(JP,A)
【文献】国際公開第2001/068563(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00ー5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貝殻を含む処理対象物を密閉容器に収容し、減圧下において所定の温度範囲に加熱しながら撹拌するとともに、微生物を利用して貝殻の有機成分を分解させ、減容した乾燥物を得る減圧発酵乾燥装置と、
前記減圧発酵乾燥装置によって得られた乾燥物を、細粒物とそれよりも大きい大粒物とにふるい分けるふるい分け装置と、を備えた貝殻処理装置であって、
前記細粒物が貯留容器に貯留されるとともに、前記大粒物が前記密閉容器に投入されることで、前記減圧発酵乾燥装置による大粒物に対する再度の減圧発酵乾燥処理が行われ、
再度の減圧発酵乾燥処理によって得られた乾燥物を、前記ふるい分け装置によって細粒物とそれよりも大きい大粒物とにふるい分ける、再度のふるい分けが行われ、
前記大粒物に対する再度の減圧発酵乾燥処理、および前記再度のふるい分けが予め設定された設定回数、繰り返し行われた後、ふるい分けられた大粒物を外部に排出するように構成されていることを特徴とする貝殻処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の貝殻処理装置において、
前記細粒物は、粒径の上限値が2~5mmであることを特徴とする貝殻処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の貝殻処理装置において、
前記ふるい分け装置の上流側には、前記減圧発酵乾燥装置によって得られた乾燥物の中から金属を除去する除去装置が設けられていることを特徴とする貝殻処理装置。
【請求項4】
貝殻を含む処理対象物を密閉容器に収容し、減圧下において所定の温度範囲に加熱しながら撹拌するとともに、微生物を利用して貝殻の有機成分を分解させ、減容した乾燥物を得る減圧発酵乾燥工程と、
前記減圧発酵乾燥工程によって得られた乾燥物を、細粒物とそれよりも大きい大粒物とにふるい分けるふるい分け工程と、
前記大粒物を前記密閉容器に投入することで、前記大粒物に対する再度の減圧発酵乾燥処理を行う再処理工程と、
前記再処理工程によって得られた乾燥物を、細粒物とそれよりも大きい大粒物とにふるい分ける、再度のふるい分け工程と、
前記大粒物に対する前記再処理工程、および前記再度のふるい分け工程が予め設定された設定回数、繰り返し行われた後、ふるい分けられた大粒物を外部に排出する工程と、を含むことを特徴とする貝殻処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧発酵乾燥による貝殻処理装置および貝殻処理方法に関する。本発明において、「貝殻」とは、ホタテ、カキ、アコヤガイ、アワビ、ハマグリ、アサリ、サザエ、シジミ等のうち少なくとも1つの貝の貝殻を言う。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばホタテ、カキ等の貝殻は、廃棄物として大量に野積みされており、野積みによる悪臭が、地方自治体における産廃処理問題の1つとなっている。このため、貝殻を大量に処理し、しかも、処理後の貝殻を有効に再利用できる技術の開発が望まれている。貝殻を大量に処理する手法としては、例えば破砕装置を用いた処理が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年では、家畜用の飼料等のカルシウム添加物として貝殻を再利用することも検討されているが、この場合、貝殻を処理する際に、処理対象物に混入される異物(例えばプラスチック、金属等)を確実に除去する必要がある。例えばホタテの場合、処理対象物に混入される異物としては、ホタテを吊るすためのプラスチック紐や、金具などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-137215号公報
【文献】特開2007-319738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、破砕装置を用いて貝殻を処理する場合、異物も細かく粉砕されるため、例えばプラスチック等のような金属以外の異物を、破砕処理後に除去することは困難である。このため、例えば特許文献1に記載されているように、破砕処理の前段階の処理として、貝殻の洗浄処理等による貝殻と異物の事前選別が必要になるといった問題がある。
【0006】
本発明は、上述したような実情を考慮してなされたもので、例えばホタテ、カキ等の貝殻を大量に処理することが可能であり、しかも、異物を確実かつ容易に除去することが可能な貝殻処理装置および貝殻処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、貝殻を含む処理対象物を密閉容器に収容し、減圧下において所定の温度範囲に加熱しながら撹拌するとともに、微生物を利用して貝殻の有機成分を分解させ、減容した乾燥物を得る減圧発酵乾燥装置と、前記減圧発酵乾燥装置によって得られた乾燥物を、細粒物(粒径が例えば2~5mm)とそれよりも大きい大粒物とにふるい分けるふるい分け装置と、を備えた貝殻処理装置であって、前記細粒物が貯留容器に貯留されるとともに、前記大粒物が前記密閉容器に投入されることで、前記減圧発酵乾燥装置による大粒物に対する再度の減圧発酵乾燥処理が行われるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の貝殻処理装置によれば、例えばホタテ、カキ等の貝殻を大量に処理することができ、しかも、処理後の細粒物(貝殻粉)を肥料や、家畜の飼料、凍結防止剤(融雪剤)、土壌改良剤等の添加物として有効に再利用することができる。詳細には、減圧発酵乾燥装置により、貝殻を効率良く乾燥させるとともに、微生物を利用して貝殻の有機成分の分解を促進することができ、悪臭成分も分解することができる。また、こうして得られた乾燥物を、ふるい分け装置によって、粒径の小さい細粒物と、それよりも大きい大粒物とにふるい分けることによって、この細粒物(貝殻粉)の粒度、粒形、含水率などが均一になり、悪臭の発生も抑制されることから、肥料や、家畜の飼料、凍結防止剤、土壌改良剤等の添加物に適したものとなる。
【0009】
さらに、得られた細粒物(貝殻粉)には、微生物が含まれているため、野積みされた貝殻に、細粒物を散布することも効果的である。つまり、細粒物に含まれる微生物によって悪臭成分が分解され、未処理の貝殻が野積みされている場合であっても周囲環境を悪化させないといったメリットがある。
【0010】
これに加え、減圧発酵乾燥装置において減圧発酵乾燥された貝殻(乾燥物)は、主に細粒物として分別されることになり、発酵乾燥によって均質化が促進され、肥料や、家畜の飼料、凍結防止剤、土壌改良剤等の添加物として有効に再利用することができる。ここで、処理対象物には、事前選別等の前処理を行わない場合、貝殻以外に、例えばプラスチックや金属などの異物が混入しているが、プラスチックや金属は、減圧発酵乾燥装置による減圧発酵乾燥処理では微生物によって分解されないため、大粒物に分別される。したがって、事前選別等の前処理を行わなくても、処理対象物に混入しているプラスチック等の異物を細粒物(貝殻粉)から確実かつ容易に除去することができる。
【0011】
また、細粒物および大粒物に分けるに際して、減圧発酵乾燥装置によって処理した乾燥物は、処理前に比べると水分が少ないことから、ふるい分けがしやすいというメリットがある。より好ましくは、大粒物に対する再度の減圧発酵乾燥処理を複数回繰り返し行うことである。こうすると、微生物による分解が不十分な乾燥物は、比較的大きな塊になりやすいことから、大粒物として分別されるようになる。そのような大粒物は、減圧発酵乾燥装置において再処理されることで、さらに微生物による分解が促進され、細粒物となる。よって、この細粒物のみを肥料や、家畜の飼料、凍結防止剤、土壌改良剤等の添加物として再利用すればよい。
【0012】
本発明において、前記ふるい分け装置の上流側には、前記減圧発酵乾燥装置によって得られた乾燥物の中から金属を除去する除去装置が設けられていることが好ましい。こうすると、除去装置によって、処理対象物に混入している金属を細粒物(貝殻粉)から確実かつ容易に除去することができる。
【0013】
また、本発明は、貝殻処理方法であって、貝殻を含む処理対象物を密閉容器に収容し、減圧下において所定の温度範囲に加熱しながら撹拌するとともに、微生物を利用して貝殻の有機成分を発酵させ、減容した乾燥物を得る減圧発酵乾燥工程と、前記減圧発酵乾燥工程によって得られた乾燥物を、細粒物とそれよりも大きい大粒物とにふるい分けるふるい分け工程と、前記大粒物を前記密閉容器に投入することで、前記大粒物に対する再度の減圧発酵乾燥処理を行う再処理工程とを含むことを特徴とする。この場合、前記再処理工程を複数回繰り返し行うことが好ましい。このような本発明の貝殻処理方法によれば、上述した本発明の貝殻処理装置と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る貝殻処理装置および貝殻処理方法によれば、例えばホタテ、カキ等の貝殻を大量に処理することができ、しかも、処理後の細粒物(貝殻粉)を肥料や、家畜の飼料、凍結防止剤、土壌改良剤等の添加物として有効に再利用することができる。また、処理対象物の中に混入しているプラスチックや金属などの異物は、減圧発酵乾燥処理されても微生物による分解がされないため、大粒物に分別される。したがって、事前選別等の前処理を行わなくても、処理対象物に混入しているプラスチック等の異物を細粒物から確実かつ容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る貝殻処理装置の概略構成を示す平面図である。
【
図4】
図1の貝殻処理装置の減圧発酵乾燥装置を模式的に示す概略構成図である。
【
図5】
図1の貝殻処理装置の磁選機を模式的に示す概略構成図である。
【
図6】
図1の貝殻処理装置の運転手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る貝殻処理装置1の概略構成を示す平面図、
図2は、貝殻処理装置1の正面図、
図3は、貝殻処理装置1の側面図である。
【0017】
図1~
図3に示すように、貝殻処理装置1は、貝殻投入装置2と、減圧発酵乾燥装置3と、排出コンベア4と、振動ふるい機5とを備えている。貝殻処理装置1は、貝殻を含む処理対象物(原材料)を貝殻投入装置2によって減圧発酵乾燥装置3に投入し、投入された貝殻に対して減圧発酵乾燥装置3によって減圧発酵乾燥処理を実行し、減圧発酵乾燥装置3の減圧発酵乾燥処理により得られた乾燥物を振動ふるい機5によって分別し、分別された細粒物を貯留容器に貯留するとともに、分別された大粒物に対して減圧発酵乾燥装置3の減圧発酵乾燥処理を繰り返し行うように構成されている。
【0018】
図1、
図3では、例えば建屋100内に設置された状態の貝殻処理装置1を示しており、建屋100内の所定位置に、貝殻投入装置2と、減圧発酵乾燥装置3と、排出コンベア4と、振動ふるい機5とが設置されている。なお、
図1、
図3では、建屋100の壁、屋根、シャッター等を2点鎖線で示している。また、
図1では、振動ふるい機5によって分別された細粒物が、内部に貯留された貯留容器61を2点鎖線で示しており、複数の貯留容器61が、建屋100内の空きスペースに整列した状態で保管されている。以下、貝殻処理装置1に備えられる各機器について説明する。
【0019】
貝殻投入装置2は、投入用箱21に収容された貝殻(処理対象物)を減圧発酵乾燥装置3の投入口30aに供給するものである。貝殻投入装置2は、例えば反転式の投入装置として構成されている。投入用箱21は、例えば保管倉庫などから、フォークリフトF等によって貝殻投入装置2の所定位置まで搬送される。貝殻投入装置2の所定位置にセットされた投入用箱21は、図示しない電動モーター等の駆動によって、上下方向に延びる1対のレール22,22に沿って上方へ持ち上げられる。投入用箱21は、1対のレール22,22の上端部まで上昇すると、1対のレール22,22間に設けられた水平軸23まわりに回転し、投入用箱21が上下反転する。この投入用箱21の反転動作に伴って、投入用箱21内に収容された貝殻(処理対象物)が、減圧発酵乾燥装置3の投入口30aに投入されるようになっている。
【0020】
減圧発酵乾燥装置3は、例えば特許文献2などに記載されているように公知のものであり、処理対象の貝殻を減圧下において所定の温度範囲に加熱しながら撹拌するとともに、微生物を利用して貝殻の有機成分を分解させ、減容した乾燥物を得るものである。この減圧発酵乾燥装置3によって処理された乾燥物は、後述する振動ふるい機5(ふるい分け装置)によって、細粒物とそれよりも大きい粒径の大粒物とにふるい分け(分別)されるようになっている。
【0021】
減圧発酵乾燥装置3は、
図4に模式的に示すように、貝殻投入装置2によって供給される貝殻を収容する密閉容器として、内部を大気圧以下に保持するように気密に形成された略円筒状のタンク(耐圧タンク)30を備えている。このタンク30の周壁部には、加熱ジャケット31が設けられ、蒸気発生ボイラー7から加熱用蒸気が加熱ジャケット31に供給されるようになっている。なお、蒸気発生ボイラー7から供給される蒸気の温度は、例えば140℃程度が好ましい。
【0022】
また、加熱ジャケット31に取り囲まれるようにして、タンク30の内部にはその長手方向(
図4の左右方向)に延びる撹拌シャフト32が設けられている。撹拌シャフト32は、電動モーター32aによって所定の回転速度で回転される。撹拌シャフト32には、その軸方向に離間して複数の撹拌板32bが設けられており、これら撹拌板32bによって、貝殻が撹拌されるとともに、発酵乾燥終了後には貝殻がタンク30の長手方向に送られるようになっている。
【0023】
タンク30の長手方向中央の上部には、貝殻投入装置2から供給される貝殻の投入口30aが設けらており、この投入口30aから投入された貝殻が、加熱ジャケット31によって加熱されながら、撹拌シャフト32の回転によって撹拌される。そして、所定時間経過した後、処理後の貝殻(乾燥物)がタンク30の下部に設けられた排出部30bから排出される。なお、電動モーター32aの代わりに、油圧モーターを用いてもよい。
【0024】
タンク30の上部には、加熱された貝殻から発生する蒸気を凝縮部33へ案内する案内部30cが突設されている。本実施形態では、案内部30cが2つ設けられており、各案内部30cは、投入口30aを挟んでタンク30の長手方向の両側に1つずつ配置されている。凝縮部33は、一対のヘッド33aによって支持された複数の冷却管33bを備えており、これら複数の冷却管33bと、クーリングタワー8との間には、冷却水経路80が設けられている。本実施形態では、凝縮部33は、タンク30の長手方向に沿って平行に延びており、投入口30aおよび案内部30cの後方側に凝縮部33が配置されている。
【0025】
そして、凝縮部33において冷却管33b内を流通し、高温の蒸気との熱交換によって温度が上昇した冷却水は、
図4に模式的に矢印で示すように冷却水経路80を流通してクーリングタワー8の受水槽81に流入する。クーリングタワー8には、その受水槽81から冷却水を汲み上げる汲み上げポンプ82と、汲み上げた冷却水を噴射するノズル83とが設けられている。このノズル83から噴射された冷却水は、流下部84を流下する間にファン85からの送風を受けて温度が低下し、再び受水槽81に流入するようになっている。
【0026】
クーリングタワー8で冷却された冷却水は、冷却水ポンプ86によって送水され、冷却水経路80によって凝縮部33に送られて、再び複数の冷却管33b内を流通する。そして、上述のようにタンク30の内部で発生した蒸気との熱交換によって温度が上昇した後に、再び冷却水経路80を流通して、クーリングタワー8の受水槽81に流入する。つまり、冷却水は凝縮部33とクーリングタワー8との間の冷却水経路80を循環する。
【0027】
上述のように循環する冷却水の他に、クーリングタワー8では、加熱された貝殻から発生する蒸気が凝縮部33において凝縮した凝縮水も注水される。なお、図示しないが凝縮部33の下方に、高温の蒸気と熱交換することによって生成した凝縮水が集められるようになっている。また、凝縮部33には連通路35を介して真空ポンプ36が接続され、タンク30内を減圧するようになっている。
【0028】
すなわち、真空ポンプ36の作動によって、連通路35を介して凝縮部33から空気および凝縮水が吸い出され、さらに連通路34および案内部30cを介してタンク30内の空気および蒸気が吸い出される。こうして、凝縮部33からは凝縮水が真空ポンプ36に吸い出され、この真空ポンプ36から導水管によって、クーリングタワー8の受水槽81に導かれる。
【0029】
こうしてクーリングタワー8の受水槽81に導かれた凝縮水は、冷却水と混ざり合って上述のように汲み上げポンプ82に汲み上げられ、ノズル83から噴射された後に、流下部84を流下しながら冷却される。なお、凝縮水には、タンク30内の貝殻に添加されたものと同じ微生物が含まれており、この凝縮水に含まれる臭気成分等が分解されているので、臭気はタンク外部へ発散しないようになっている。
【0030】
上記構成の減圧発酵乾燥装置3の作動について説明すると、タンク30内に収容された貝殻は、加熱ジャケット31に供給される加熱用蒸気によって加熱されながら、撹拌シャフト32の回転に伴い撹拌される。そして、タンク30内を取り囲む加熱ジャケット31による外側からの加熱と、撹拌シャフト32などによる内側からの加熱とを受けて、タンク30内に収容された貝殻が効果的に昇温されるとともに、撹拌シャフト32によって貝殻が撹拌される。加えて、真空ポンプ36の作動によって減圧されているため、タンク30内では沸点が低下し、水分の蒸発が早まり、微生物によって貝殻の有機成分の分解が促進される。
【0031】
なお、減圧発酵乾燥装置3による減圧発酵乾燥工程では1工程(1サイクル)が、例えば2時間であることが好ましく、先ず30分かけて貝殻の有機成分を分解させることとなる。タンク30内を-0.06~-0.07MPa(ゲージ圧;以下、ゲージ圧は省略する)に減圧すると、タンク30内の水分温度は76~69℃(飽和蒸気温度)に維持される。その結果、貝殻は、後述する微生物によって、発酵、分解が促進される。
【0032】
次に、1.5時間かけて発酵中の貝殻を乾燥させることになる。そのために、タンク30内を-0.09~-0.10MPaにさらに減圧すると、タンク内の水分温度は46~42℃(飽和蒸気温度)に維持され、貝殻の乾燥は十分に促進される。そして、そのような乾燥処理を行う際に、タンク30内の貝殻に添加する微生物としては、例えば特許文献2に記載されているように、複数種類の土着菌をベースとし、これを予め培養した複合有効微生物群が好ましく、通称、SHIMOSE 1/2/3群がコロニーの中心になる。
【0033】
なお、SHIMOSE 1は、FERM BP-7504(経済産業省産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1-3)に、2003年3月14日に国際寄託されたもの)である。また、SHIMOSE 2は、FERM BP-7505(SHIMOSE 1と同様に国際寄託されたもの)、塩に耐性を有するピチアファリノサ(Pichiafarinosa)に属する微生物であり、SHIMOSE 3は、FERM BP-7506(SHIMOSE 1と同様に国際寄託されたもの)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)に属する微生物である。
【0034】
排出コンベア4は、減圧発酵乾燥装置3によって減圧発酵乾燥処理された処理後の乾燥物を、振動ふるい機5へ向けて搬送するものである。つまり、排出コンベア4によって、減圧発酵乾燥装置3のタンク30下部の排出部30bから排出される乾燥物を、排出部30bよりも高い位置に設けられた振動ふるい機5まで搬送する。排出コンベア4の途中には、磁選機41が設けられており、この磁選機41によって、乾燥物に含まれている金具や、鉄片等の金属が除去される。
【0035】
磁選機41は、
図5に概略を示すように、例えば吊り下げ式のもので、排出コンベア4上に吊り下げられている。磁選機41は、排出コンベア4によって搬送される乾燥物の中から金具や、鉄片等の磁性物(黒丸で示す)を磁石によって吸着し、プーリ41a間を移動するベルト41bによって連続的に排出容器41cへ排出するように構成されている。
【0036】
振動ふるい機5は、減圧発酵乾燥装置3から排出され、排出コンベア4によって搬送された乾燥物を、細粒物とそれよりも大きい粒径の大粒物とにふるい分けるものである。振動ふるい機5には、所定の大きさの網目を有する金網51と、金網51を振動させる振動モーター52とを備えている。振動ふるい機5は、複数(例えば4つ)のコイルばね53によって下台54に支持されている。また、金網51が斜め下方に向けて傾斜した状態で設けられており、金網51の一端側(
図3の左端側)が、他端側(
図3の右端側)よりも低い位置に設けられている。本実施形態では、細粒物が、例えば5mm以下の粒径の乾燥物となっており、細粒物の粒径の上限値(5mm)に対応するように、金網51の網目が、5mm×5mmの大きさに設定されている。なお、細粒物の粒径(5mm以下)は一例であって、細粒物の粒径の上限値が2~5mmであれば他の値であってもよい。言い換えれば、細粒物の粒径は、例えば5mm以下であることが好ましく、さらには、粒径が、例えば2mm以下であることがより好ましい。
【0037】
このように、振動ふるい機5は、コイルばね53によって下台54に対しフローティング支持されているので、振動モーター52の駆動により、排出コンベア4から金網51に供給された乾燥物が、細粒物とそれよりも大きい粒径の大粒物とにふるい分けられる。具体的には、細粒物は、金網51の網目を通過して、下方に落下し、振動ふるい機5の下方に配置された貯留容器61に一時的に貯留される。所定量の細粒物が貯留容器61に蓄積されると、貯留容器61が交換され、新たな貯留容器61に細粒物が蓄積される。所定量の細粒物が蓄積された貯留容器61は、建屋100内の空きスペースに保管される。
【0038】
一方、大粒物は、金網51の網目を通過できないため、金網51の傾斜面に沿って転がりながら一端側(前方側)へ移動し、振動ふるい機5の前方下方に配置された貯留容器62に一時的に貯留される。貯留容器62に蓄積された大粒物は、フォークリフトF等により貝殻投入装置2に搬送され、再度貝殻投入装置2により投入口30aから減圧発酵乾燥装置3に投入され、減圧発酵乾燥装置3による大粒物に対する再度の減圧発酵乾燥処理が行われる。つまり、大粒物は、細粒物に比べて微生物による分解が進んでいないことから、大粒物を再度、減圧発酵乾燥装置3に投入して、再度発酵乾燥させることにより、細粒物として得られるようにしている。減圧発酵乾燥装置3への大粒物の再投入は、1ロットの処理対象物に対する減圧発酵乾燥処理の終了後に行われる。本実施形態では、このような大粒物に対する再度の減圧発酵乾燥処理が複数回繰り返し行われる。
【0039】
次に、貝殻処理装置1の運転手順(貝殻処理方法の手順)について、
図6のフローチャートを参照して説明する。
図6に示すように、本発明の実施形態に係る貝殻処理方法は、減圧発酵乾燥工程と、ふるい分け工程と、再処理工程とを少なくとも含んでいる。なお、本実施形態では、貝殻と異物との事前選別等の前処理や、破砕装置による貝殻の破砕処理が不要になっている。
【0040】
まず、ステップS1において、貝殻を含む処理対象物を減圧発酵乾燥装置3に投入する。この際、減圧発酵乾燥装置3のタンク30の投入口30aの蓋を開いて、貝殻投入装置2によって投入用箱21に収容された貝殻を投入口30aから投入する。そして、投入口30aの蓋を閉じて、タンク30内を大気圧状態で密閉する。
【0041】
次に、蒸気発生ボイラー7から加熱用蒸気をタンク30(加熱ジャケット31など)に供給する。そして、真空ポンプ36を作動させて、凝縮部33から空気および凝縮水を吸い出す。これにより、連通路34、案内部30cを介してタンク30内が減圧され、水の沸点が降下することにより、蒸発が促進され、その潜熱によってタンク30内の温度が低下する。
【0042】
これにより、自然放熱に比べてタンク30内の温度をいち早く低下させることができ、処理時間の短縮が図られる。そうしてタンク30内の温度がある程度低下すると、ステップS2に進んで、真空ポンプ36の作動を停止するとともに、この真空ポンプ36と凝縮部33との間の連通路35の大気開放バルブ(図示省略)を開く。
【0043】
こうすると、大気開放バルブから連通路35に外気が流入し、凝縮部33、連通路34、案内部30cおよびタンク30内が速やかに大気圧になる。また、その際の気体の流れによって、凝縮部33やクーリングタワー8に残存している微生物の一部がタンク30内に持ち込まれることになる。また、タンク30内が大気圧になっているため、投入口30aを開いて所定の微生物を投入することも考えられる。
【0044】
このようにしてステップS2において、タンク30内の貝殻に所定の微生物を添加した後に、大気開放バルブを閉じてタンク30内を密閉する。そして、ステップS3において、タンク30内を減圧下で加熱して、その内部に収容した貝殻の有機成分の発酵、乾燥を促進する(減圧発酵乾燥工程)。すなわち、蒸気発生ボイラー7から加熱用蒸気を供給し、タンク30内を加熱する。
【0045】
そうして加熱用蒸気によってタンク30内を加熱するとともに、撹拌シャフト32を所定の回転速度(例えば、8rpm程度)で回転させ、さらに、真空ポンプ36の作動によってタンク30内を減圧し、これにより、タンク30内の温度が微生物の活動至適環境となり、微生物による貝殻の有機成分の分解が好適に促進される。なお、撹拌シャフト32の回転速度(8rpm)は一例であって、貝殻の有機成分の分解が可能であれば他の値であってもよい。
【0046】
このようにしてタンク30内の温度および圧力を維持しつつ、所定の時間(例えば2時間くらい)が経過した場合、真空ポンプ36および蒸気発生ボイラー7の運転を停止する一方、撹拌シャフト32を逆回転させ、タンク30の排出部30bの蓋を開いて、タンク30から乾燥物を排出する。このとき、タンク30から排出される乾燥物は減容されている。
【0047】
次に、ステップS4において、排出コンベア4によって、タンク30から排出される乾燥物を振動ふるい機5へ搬送し、振動ふるい機5の作動によって、乾燥物を細粒物とそれよりも大きい粒径の大粒物とにふるい分ける(ふるい分け工程)。つまり、上述したように、発酵乾燥させ、減容したことによって乾燥物は、ふるい分けに適したものになっており、これを排出コンベア4によって搬送し、振動ふるい機5に投入する。なお、排出コンベア4による搬送途中において、磁選機41によって金属の除去が行われる。
【0048】
ふるい分け工程によってふるい分けられた細粒物(貝殻粉)は、貯留容器61に一時的に貯留される(ステップS5)。一方、細粒物以外の大粒物は、貯留容器62に一時的に貯留されるが、減圧発酵乾燥工程を予め設定した設定回数(例えば5回)、繰り返したか否かをステップS6で判定し、否定判定(NO)の場合には、ステップS3に戻る。つまり、細粒物以外の大粒物を減圧発酵乾燥装置3に再投入し、大粒物に対する減圧発酵乾燥工程を設定回数、繰り返し行う(再処理工程)。減圧発酵乾燥装置3への大粒物の再投入は、1ロットの処理対象物に対する減圧発酵乾燥工程およびふるい分け工程が終了した後に行われる。そして、ステップS6で肯定判定(YES)の場合には、貯留容器62に貯留された大粒物は主にプラスチック等であるので、減圧発酵乾燥装置3に再投入せず、外部へ排出する(ステップS7)。なお、減圧発酵乾燥工程を繰り返す設定回数(5回)は一例であって、貝殻の種類や、1ロット当たりの貝殻の量に応じて適宜変更することが可能である。
【0049】
以上説明したように、本実施形態では、減圧発酵乾燥装置3により得られた乾燥物を振動ふるい機5によって分別し、分別された大粒物に対して減圧発酵乾燥装置3による再処理を行うので、例えばホタテ、カキ等の貝殻を大量に処理することができ、しかも、処理後の細粒物(貝殻粉)を肥料や、家畜の飼料、凍結防止剤(融雪剤)、土壌改良剤等の添加物として有効に再利用することができる。この点について以下に説明する。
【0050】
すなわち、減圧発酵乾燥装置3により、貝殻を効率良く乾燥させるとともに、微生物を利用して貝殻の有機成分の分解を促進することができ、悪臭成分も分解することができる。また、こうして得られた乾燥物を、振動ふるい機5によって、粒径の小さい細粒物と、それよりも大きい大粒物とにふるい分けることによって、この細粒物(貝殻粉)の粒度、粒形、含水率などが均一になり、悪臭の発生も抑制されることから、肥料や、家畜の飼料、凍結防止剤、土壌改良剤等の添加物に適したものとなる。さらに、得られた細粒物(貝殻粉)には、微生物が含まれているため、野積みされた貝殻に、細粒物を散布することも効果的である。つまり、細粒物に含まれる微生物によって悪臭成分が分解され、未処理の貝殻が野積みされている場合であっても周囲環境を悪化させないといったメリットがある。
【0051】
これに加え、減圧発酵乾燥装置3において減圧発酵乾燥された貝殻(乾燥物)は、主に細粒物として分別されることになり、発酵乾燥によって均質化が促進され、肥料や、家畜の飼料、凍結防止剤、土壌改良剤等の添加物として有効に再利用することができる。ここで、処理対象物には、事前選別等の前処理を行わない場合、貝殻以外に、例えばプラスチックや金属などの異物が混入しているが、プラスチックや金属は、減圧発酵乾燥装置3による減圧発酵乾燥処理では微生物によって分解されないため、大粒物に分別される。したがって、事前選別等の前処理を行わなくても、処理対象物に混入しているプラスチック等の異物を細粒物(貝殻粉)から確実かつ容易に除去することができる。
【0052】
また、細粒物および大粒物に分けるに際して、減圧発酵乾燥装置3によって処理した乾燥物は、処理前に比べると水分が少ないことから、ふるい分けがしやすいというメリットがある。より好ましくは、大粒物に対する再度の減圧発酵乾燥処理を複数回繰り返し行うことである。こうすると、微生物による分解が不十分な乾燥物は、比較的大きな塊になりやすいことから、大粒物として分別されるようになる。そのような大粒物は、減圧発酵乾燥装置3において再処理されることで、さらに微生物による分解が促進され、細粒物となる。よって、この細粒物のみを肥料や、家畜の飼料、凍結防止剤、土壌改良剤等の添加物として再利用すればよい。
【0053】
また、本実施形態では、振動ふるい機5の上流側に、減圧発酵乾燥装置3によって得られた乾燥物の中から金属を除去する磁選機41が設けられているので、磁選機41によって、処理対象物に混入している金属を細粒物(貝殻粉)から確実かつ容易に除去することができる。
【0054】
今回、開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。本発明の技術的範囲は、前記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【0055】
上述した貝殻投入装置2は一例であって、その他の構成の貝殻投入装置によって、貝殻を減圧発酵乾燥装置3に投入してもよい。例えば搬送コンベア等を用いて、貝殻を減圧発酵乾燥装置3に投入してもよい。また、上述した磁選機41は一例であって、吊り下げ式以外の磁選機を用いてもよい。例えばプーリ式、ドラム式などの磁選機を用いてもよく、あるいは、アルミなどの非鉄金属も取り除くことが可能な渦電流型の磁選機を用いてもよい。また、上述した振動ふるい機5は一例であって、その他の構成のふるい分け装置によって、乾燥物のふるい分け処理を行ってもよい。
【0056】
図6に示す貝殻処理装置1の運転手順は一例であって、他の手順によって貝殻処理装置1を運転してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、減圧発酵乾燥による貝殻処理装置および貝殻処理方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 貝殻処理装置
3 減圧発酵乾燥装置
30 タンク(密閉容器)
41 磁選機(除去装置)
5 振動ふるい機(ふるい分け装置)
61 貯留容器