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特許7015051ブルーミング抑制剤及びこれを用いたゴム組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】ブルーミング抑制剤及びこれを用いたゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 91/00 20060101AFI20220126BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20220126BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20220126BHJP
   C08K 5/151 20060101ALI20220126BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
C08L91/00
C08K5/10
C08K5/06
C08K5/151
C08L21/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018024383
(22)【出願日】2018-02-14
(65)【公開番号】P2019137814
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000195616
【氏名又は名称】精工化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】八巻 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤島 雄介
【審査官】長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-222830(JP,A)
【文献】特開2006-199884(JP,A)
【文献】特開2008-201827(JP,A)
【文献】特開2004-307812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00-21/02
C08L 71/00-71/14
C08L 91/00-91/08
C08K 3/00- 3/40
C08K 5/00- 5/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然油脂の硬化物と、
グリセリン脂肪酸エステルと、
下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、及び下記一般式(3)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物(X)と
含むブルーミング抑制成分を含有し、
前記ブルーミング抑制成分の含有割合が、90質量%以上であり、
ゴム成分と、加硫促進剤、過酸化物、脂肪酸、及び脂肪酸金属塩からなる群より選択される少なくとも一種の架橋系添加剤と、を含有するゴム材料に用いられる、ブルーミング抑制剤。
O(RO)H (1)
(一般式(1)中、Rは、炭素数18~22のアルキル基またはアルケニル基を表し、前記アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状、分枝鎖状及び環状のいずれでも良く、Rは、炭素数2~4のアルキレン基であり、nは平均付加モル数を意味し、1~である。)
【化1】
【化2】
(一般式(2)及び(3)中、Rは、それぞれ独立して炭素数7~17のアルキル基またはアルケニル基を表し、前記アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状、分枝鎖状及び環状のいずれでも良く、l、m、nは平均付加モル数を意味し、それぞれ独立して1~8の整数を示し、l+m+nは3~16である。)
【請求項2】
前記ブルーミング抑制成分中、天然油脂の硬化物の配合割合は、50~70質量%であり、及びグリセリン脂肪酸エステルの合計の配合割合は15~45質量%であり、前記一般式(1)~(3)で表される化合物の合計の配合割合は7.5~50質量%である(但し、各成分の合計の配合割合は、100質量%である)、請求項1に記載のブルーミング抑制剤。
【請求項3】
前記化合物(X)は、少なくとも、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、または、これらの両方を含むものである、請求項1または2に記載のブルーミング抑制剤。
【請求項4】
前記天然油脂の硬化物は、ヒマシ硬化油及び菜種硬化油の少なくとも一方である、請求項1~3のいずれか一項に記載のブルーミング抑制剤。
【請求項5】
グリセリン脂肪酸エステルは、HLBが10以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のブルーミング抑制剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のブルーミング抑制剤と、
加硫促進剤、過酸化物、脂肪酸、及び脂肪酸金属塩からなる群より選択される少なくとも一種の架橋系添加剤並びにゴム成分を含むゴム材料と、を含有する、ゴム組成物。
【請求項7】
前記ブルーミング抑制剤の配合量は、前記ゴム材料中の前記ゴム成分100質量部に対して、0.5~5.0質量部である、請求項6に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルーミング抑制剤及びこれを用いたゴム組成物に関する。更に詳しくは、含有成分のブルーム(析出)が抑制されたゴム製品を得ることができるブルーミング抑制剤及びこれを用いたゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、架橋ゴムは、耐熱性や圧縮永久歪などの機械物性に優れているため、多くの工業製品に用いられている。この架橋ゴムは、一般的に、所定のポリマーに、加硫促進剤、過酸化物、脂肪酸、脂肪酸金属塩などの架橋系添加剤を配合することで当該ポリマーに架橋構造を形成させて製造される。
【0003】
ここで、架橋ゴムとなるポリマーの中でも、特に天然ゴムやイソプレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム等のポリマーは、加硫促進剤や過酸化物の残渣、脂肪酸、または、脂肪酸金属塩との相溶性が悪いため、この架橋ゴムを原料にゴム製品を製造すると、加硫促進剤等の架橋系添加剤がゴム製品の表面にブルーム(析出)してゴム製品の外観が悪くなるという問題がある。
【0004】
そこで、この問題を解決する方法として以下の方法が報告されている。(1)加硫促進剤を使用する場合には、多品種の加硫促進剤を少量ずつ添加する方法や、多品種の加硫促進剤があらかじめ混合された混合促進剤を使用する方法が用いられている。(2)過酸化物架橋を使用する場合には、ブルーミング防止剤を使用すること(例えば、特許文献1参照)や、残渣がブルームしないような過酸化物を使用すること(例えば、特許文献2参照)等の方法が知られている。(3)脂肪酸や脂肪酸金属塩がブルームすることを防止する方法として、高温で形状加工した後に急速冷却する方法(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-199884号公報
【文献】特開2007-031507号公報
【文献】特開2006-328153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のブルーミング防止剤は、ゴム製品の外観の改善効果が不十分であった。また、過酸化物架橋を使用する場合にはブルーミングを防止する効果が確認できるものの、架橋系添加剤の種類が変わると、十分にブルーミングを防止できない場合がある。このことは、上記方法(特許文献2,3)のいずれにも該当し、上記全ての架橋系添加剤に対してもブルーミングを防止できるものではなかった。
【0007】
そのため、加硫促進剤、過酸化物、脂肪酸、脂肪酸金属塩などのいずれの架橋系添加剤に対してもそのブルーム(析出)も良好に抑制できるブルーミング抑制剤及びこれを用いたゴム組成物の開発が切望されていた。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明のブルーミング抑制剤は、ゴム製品の表面に、加硫促進剤、過酸化物、脂肪酸、脂肪酸金属塩などの架橋系添加剤がブルームすることを抑制できる。本発明のゴム組成物は、ゴム製品の表面に、加硫促進剤、過酸化物、脂肪酸、脂肪酸金属塩などの架橋系添加剤がブルームすることが抑制されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下に示すブルーミング抑制剤及びゴム組成物が提供される。
【0010】
[1] 天然油脂の硬化物と、
グリセリン脂肪酸エステルと、
下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、及び下記一般式(3)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物(X)と、
を含むブルーミング抑制成分を含有し、
前記ブルーミング抑制成分の含有割合が、90質量%以上であり、
ゴム成分と、加硫促進剤、過酸化物、脂肪酸、及び脂肪酸金属塩からなる群より選択される少なくとも一種の架橋系添加剤と、を含有するゴム材料に用いられる、ブルーミング抑制剤。
O(RO)H (1)
(一般式(1)中、Rは、炭素数18~22のアルキル基またはアルケニル基を表し、前記アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状、分枝鎖状及び環状のいずれでも良く、Rは、炭素数2~4のアルキレン基であり、nは平均付加モル数を意味し、1~である。)
【0011】
【化1】
【0012】
【化2】
(一般式(2)及び(3)中、Rは、それぞれ独立して炭素数7~17のアルキル基またはアルケニル基を表し、前記アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状、分枝鎖状及び環状のいずれでも良く、l、m、nは平均付加モル数を意味し、それぞれ独立して1~8の整数を示し、l+m+nは3~16である。)
【0013】
[2] 前記ブルーミング抑制成分中、天然油脂の硬化物の配合割合は、50~70質量%であり、及びグリセリン脂肪酸エステルの合計の配合割合は15~45質量%であり、前記一般式(1)~(3)で表される化合物の合計の配合割合は7.5~50質量%である(但し、各成分の合計の配合割合は、100質量%である)、前記[1]に記載のブルーミング抑制剤。
【0014】
[3] 前記化合物(X)は、少なくとも、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、または、これらの両方を含むものである、前記[1]または[2]に記載のブルーミング抑制剤。
【0015】
[4] 前記天然油脂の硬化物は、ヒマシ硬化油及び菜種硬化油の少なくとも一方である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のブルーミング抑制剤。
【0016】
[5] グリセリン脂肪酸エステルは、HLBが10以下である、前記[1]~[4]のいずれかに記載のブルーミング抑制剤。
【0017】
[6] 前記[1]~[5]のいずれかに記載のブルーミング抑制剤と、
加硫促進剤、過酸化物、脂肪酸、及び脂肪酸金属塩からなる群より選択される少なくとも一種の架橋系添加剤並びにゴム成分を含むゴム材料と、を含有する、ゴム組成物。
【0018】
[7] 前記ブルーミング抑制剤の配合量は、前記ゴム材料中の前記ゴム成分100質量部に対して、0.5~5.0質量部である、前記[6]に記載のゴム組成物。
【発明の効果】
【0019】
本発明のブルーミング抑制剤は、ゴム製品に含まれる、加硫促進剤、過酸化物、脂肪酸、脂肪酸金属塩などの架橋系添加剤が、当該ゴム製品の表面にブルームすることを抑制するという効果を奏するものである。
【0020】
本発明のゴム組成物は、ゴム製品の原料であり、製造されたゴム製品の表面に、加硫促進剤、過酸化物、脂肪酸、脂肪酸金属塩などの架橋系添加剤がブルームすることが抑制され、架橋系添加剤のブルームが生じ難いものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0022】
(1)ブルーミング抑制剤:
本発明のブルーミング抑制剤は、ゴム成分と、加硫促進剤、過酸化物、脂肪酸、及び脂肪酸金属塩からなる群より選択される少なくとも一種の架橋系添加剤と、を含有するゴム材料に添加して用いられるものである。そして、このブルーミング抑制剤は、化合物(X)と天然油脂の硬化物とを含むブルーミング抑制成分を含有し、このブルーミング抑制成分の含有割合が、90質量%以上のものである。そして、化合物(X)は、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、グリセリン脂肪酸エステル、及び、クエン酸オクタデシルからなる群より選択される少なくとも一種の化合物である。
O(RO)H (1)
(一般式(1)中、Rは、炭素数12~22のアルキル基またはアルケニル基を表し、上記アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状、分枝鎖状及び環状のいずれでも良く、Rは、炭素数2~4のアルキレン基であり、nは平均付加モル数を意味し、1~15である。)
【0023】
【化3】
【0024】
【化4】
【0025】
一般式(2)及び(3)中、Rは、それぞれ独立して炭素数7~17のアルキル基又はアルケニル基を表し、上記アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状、分枝鎖状及び環状のいずれでも良く、l、m、nは平均付加モル数を意味し、それぞれ独立して1~8の整数を示し、l+m+nは3~16である。
【0026】
このようなブルーミング抑制剤によれば、加硫促進剤、過酸化物、脂肪酸、脂肪酸金属塩などの架橋系添加剤がゴム製品の表面にブルーム(析出)することが抑制される。つまり、本発明のブルーミング抑制剤を配合することによって、「架橋系添加剤がブルームして外観が汚染されること」が防止されるように改善されたゴム製品を作製することができる。
【0027】
(1-1)ブルーミング抑制成分:
ブルーミング抑制成分は、上述の通り化合物(X)と天然油脂の硬化物とを含む成分のことである。このようなブルーミング抑制成分を所定量含有することによって、ゴム成分に対する架橋系添加剤の相溶性が向上し、架橋系添加剤のブルームを抑制することができる。そのため、特にタイヤなどの黒色のゴム製品における外観を良くすることができる。つまり、本発明のブルーミング抑制剤を添加することにより、作製されるゴム製品における架橋系添加剤のブルームに起因する外観の汚染を改善することができる。
【0028】
(1-1a)化合物(X):
化合物(X)は、上述の通り、一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、グリセリン脂肪酸エステル、及び、クエン酸オクタデシルからなる群より選択される少なくとも一種の化合物である。
【0029】
(一般式(1)で表される化合物)
一般式(1)で表される化合物は、一般式(1)中のRが、炭素数12~22のアルキル基または炭素数12~22のアルケニル基であり、炭素数15~20のアルキル基が好ましく、炭素数18のアルキル基が更に好ましい。
【0030】
一般式(1)で表される化合物は、一般式(1)中のRが、炭素数2~4のアルキレン基であり、炭素数2~3のアルキレン基が好ましく、炭素数2のアルキレン基が更に好ましい。なお、Rは、1種に限らず、2種以上であってもよい。
【0031】
一般式(1)中のnは、架橋系添加剤との相溶性が良好になるという観点から1~15であり、1~10であることが好ましく、1~6であることが更に好ましい。
【0032】
(一般式(2)で表される化合物)
一般式(2)で表される化合物は、一般式(2)中のRが、炭素数7~17のアルキル基または炭素数7~17のアルケニル基であり、これらのうち、炭素数11~17のアルキル基またはアルケニル基が好ましい。
【0033】
一般式(2)で表される化合物は、一般式(2)中、l、m、nは1~8の整数を示し且つl+m+nは3~16であり、更には、l+m+nは6~12であることが好ましい。
【0034】
(一般式(3)で表される化合物)
一般式(3)で表される化合物は、一般式(3)中のRが、炭素数7~17のアルキル基または炭素数7~17のアルケニル基であり、これらのうち、炭素数11~17のアルキル基またはアルケニル基が好ましい。
【0035】
一般式(3)で表される化合物は、一般式(3)中、l、m、nは1~8の整数を示し且つl+m+nは3~16であり、更には、l+m+nは6~12であることが好ましい。
【0036】
なお、化合物(X)は、少なくとも、一般式(2)で表される化合物、一般式(3)で表される化合物、または、これらの両方を含むものであることが好ましく、一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物の両方を含むものであることが更に好ましい。このように、化合物(X)が、少なくとも、一般式(2)で表される化合物、一般式(3)で表される化合物、または、これらの両方を含むものであると、より良好にゴム製品におけるブルーミング(ゴム製品に含まれる成分がその表面に析出することに起因する外観の汚染)が抑制される。
【0037】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノグリセリンモノカプリレート、モノグリセリンモノ・ジカプリレート、モノグリセリンジカプリレート、ジグリセリンモノカプリレート、デカグリセリンモノカプリレート、モノグリセリンモノカプリレート、モノグリセリンモノラウレート、ジグリセリンラウレート、テトラグリセリンモノラウレート、ヘキサグリセリンモノラウレート、デカグリセリンモノラウレート、デカグリセリンラウレート、ペンタグリセリンモノミリステート、デカグリセリンモノミリステート、モノグリセリンモノステアレート、モノグリセリンモノ・ジステアレート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンステアレート、ジグリセリンモノ・ジステアレート、テトラグリセリンステアレート、テトラグリセリンモノステアレート、テトラグリセリントリステアレート、テトラグリセリンペンタステアレート、ペンタグリセリンモノステアレート、ペンタグリセリンヘキサステアレート、ヘキサグリセリンモノステアレート、ヘキサグリセリンジステアレート、ヘキサグリセリントリステアレート、デカグリセリンステアレート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンジステアレート、デカグリセリントリステアレート、デカグリセリンペンタステアレート、デカグリセリンデカステアレート、モノグリセリンモノオレート、モノグリセリンモノ・ジオレート、ジグリセリンオレート、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンモノ・ジオレート、テトラグリセリンモノオレート、テトラグリセリンペンタオレート、ペンタグリセリンモノオレート、ペンタグリセリントリオレート、ヘキサグリセリンモノオレート、ヘキサグリセリンペンタオレート、デカグリセリンオレート、デカグリセリンモノオレート、デカグリセリンペンタオレート、デカグリセリンデカオレート、モノグリセリンモノベヘネート、モノグリセリンモノ・ジベヘネート、デカグリセリンヘプタベヘネート、デカグリセリンドデカベヘネート、デカグリセリンオクタエルケート、モノグリセリンモノ12-ヒドロキシステアレート、テトラグリセリンリシノレート、ペンタグリセリンリシノレート、ヘキサグリセリンリシノレート、ポリグリセリンポリリシノレートなどを挙げることができる。なお、本発明においては、化合物(X)には、グリセリン脂肪酸エステルとして上記化合物を1種または2種以上含んでいてもよい。
【0038】
グリセリン脂肪酸エステルは、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)が10以下であることが好ましい。このような条件を満たすものを用いると、架橋系添加剤との相溶性が向上するため、架橋系添加剤のブルームに起因するゴム製品の外観の汚染が生じ難くなる。なお、「HLB」は、親水性と親油性のバランスを現した指標である。
【0039】
(1-1b)天然油脂の硬化物:
天然油脂の硬化物としては、例えば、ヒマシ硬化油(12-ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド)、大豆硬化油、菜種硬化油、牛脂硬化油などを挙げることができる。ここで、天然油脂の硬化物の中でも、ヒマシ硬化油、菜種硬化油を用いることが好ましい。なお、天然油脂の硬化物には、上記各成分が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0040】
ブルーミング抑制成分中、天然油脂の硬化物の配合割合は、50~95質量%であることが好ましい。更に、グリセリン脂肪酸エステル及びクエン酸オクタデシルの合計の配合割合は0~45質量%であることが好ましい。更に、一般式(1)~(3)で表される化合物の合計の配合割合は、0~50質量%であることが好ましい。但し、各成分の合計の配合割合は、100質量%である。ここで、上述したように、一般式(2)で表される化合物、一般式(3)で表される化合物、または、これらの両方を含むものであることが好ましいので、一般式(1)~(3)で表される化合物の合計の配合割合は、0質量%超であることがより好ましい。このような配合割合を満たすと、更に良好なブルーミング抑制効果が得られる。
【0041】
本発明のブルーミング抑制剤におけるブルーミング抑制成分の含有割合は、90質量%以上であり、95質量%以上であることが好ましい。ブルーミング抑制成分の含有割合が90質量%未満であると、十分なブルーミング抑制効果が得られない。
【0042】
(1-2)ゴム材料:
本発明のブルーミング抑制剤は、ゴム材料に添加して用いられることによって、得られるゴム製品におけるブルーミング抑制効果を発揮する。ここで、本明細書において、本発明のブルーミング抑制剤とゴム材料とを含むものがゴム組成物であり、このゴム組成物を原料にしてゴム製品を製造することができる。なお、ゴム材料には、ゴム成分と架橋系添加剤とが含まれる。
【0043】
(1-2a)ゴム成分:
ゴム成分は、タイヤ、ゴムマット等のゴム製品の主たる原料となるものである。このゴム成分は特に制限はないが、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ポリサルファイドゴム、フッ素ゴムなどを挙げることができる。なお、これらのゴム成分は、1種で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
(1-2b)架橋系添加剤:
架橋系添加剤は、加硫促進剤、過酸化物、脂肪酸、及び脂肪酸金属塩からなる群より選択される少なくとも一種のことである。これらは、架橋ゴムの製造に際してポリマーに架橋構造を形成させるために用いられるものであり、従来公知のものである。本発明のブルーミング抑制剤は、加硫促進剤、過酸化物、脂肪酸、及び脂肪酸金属塩のいずれのブルームも抑制することができる。
【0045】
(2)ゴム組成物:
本発明のゴム組成物は、本発明のブルーミング抑制剤と、加硫促進剤、過酸化物、脂肪酸、及び脂肪酸金属塩からなる群より選択される少なくとも一種の架橋系添加剤並びにゴム成分を含むゴム材料と、を含有するものである。
【0046】
このようなゴム組成物は、当該ゴム組成物を原料にゴム製品を製造した場合に、このゴム製品に含まれる、加硫促進剤、過酸化物、脂肪酸、脂肪酸金属塩などの架橋系添加剤が表面にブルームすることが抑制されるものである。
【0047】
なお、ゴム材料は、上述した本発明のブルーミング抑制剤において説明したゴム材料と同様のものを挙げることができる。
【0048】
ブルーミング抑制剤の配合量は、ゴム材料中のゴム成分100質量部に対して、0.5~5.0質量部であることが好ましく、1.0~4.0質量部であることが更に好ましく、1.5~2.5質量部であることが特に好ましい。ブルーミング抑制剤の配合量を上記範囲とすることによって、ゴム成分に対する架橋系添加剤の相溶性を更に向上させることができ、架橋系添加剤のブルームを良好に抑制することができる。ブルーミング抑制剤の配合量が下限値未満であると、ゴム成分に対する架橋系添加剤の相溶性を十分に向上させることができないため、架橋系添加剤のブルーム量が増加してしまうおそれがある。ブルーミング抑制剤の配合量が上限値超であると、このブルーミング抑制剤自体が過剰にブルームしてしまうおそれがある。
【0049】
本発明のゴム組成物は、ゴム材料及びブルーミング抑制剤以外に、その他の成分を更に含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、老化防止剤、補強剤、充填剤、可塑剤、軟化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、防菌・防かび剤、着色剤等を挙げることができる。
【実施例
【0050】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例1~5、14、15、参考例6~13、16、比較例1~9)
(1)ブルーミング抑制剤の作製:
表1及び表2に示す試料を予め混合してブルーミング抑制剤を作製した。
【0052】
(2)ゴム材料(加硫促進剤を含むもの)の作製:
エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム100部、酸化亜鉛5部、ステアリン酸1部、FEFカーボンブラック60部、パラフィンオイル30部、を1.7Lのバンバリーミキサーで4分間混練を行った。これに硫黄1部、加硫促進剤として商品名「サンセラーCM」(三新化学工業社製)2質量部、商品名「サンセラーPZ」(三新化学工業社製)1質量部を直径約24cmの2本ロールを用いて添加し、更に混練を行ってゴム材料を得た。
【0053】
(3)ゴム組成物の作製及び評価:
このゴム材料に、作製したブルーミング抑制剤を、2本ロールを用いて添加し、更に混練を行って未加硫のゴム組成物を得た。なお、ブルーミング抑制剤の配合量を表1、表2に示す。表1、表2に示すブルーミング抑制剤の配合量は、ゴム材料中のゴム成分100質量部に対する配合量(質量部)を示す。
【0054】
この未加硫のゴム組成物をプレス加硫して、厚さ2.0mmの加硫ゴムシート(ゴム製品)を得た。この加硫ゴムシートを用いてブルーム量の評価及び外観評価試験を行った。
【0055】
(ブルーム量)
加硫ゴムシート(縦150mm×横150mm)を20℃で28日間放置し、その後、その表面に析出しているブルーミング物(析出物)を削って採取し、ブルーミング物の量を測定した。そして、比較例1、8、16におけるブルーミング物の量(ブルーム量)を基準値「100」として、各実施例及び比較例の「ブルーム量」を算出した。結果を表1、表2に示す。
【0056】
(外観評価試験)
得られた加硫ゴムシートを用いて外観評価試験を行った。具体的には、得られた加硫ゴムシートを、40℃で28日間放置し、その後、目視による外観の観察(表1~表6中、「外観」と示す)と、光沢度を測定して基準に対する比率(以下、「光沢度の比」と記す場合がある)の算出を行った。結果を表1、表2に示す。
【0057】
「外観の観察」の評価は、以下の通りとした。加硫促進剤や過酸化物の残渣、ステアリン酸等のブルームによる加硫ゴムシートの表面の汚染が認められない場合を「5」とし、加硫ゴムシートの表面の汚染がほとんど認められない場合を「4」とし、加硫ゴムシートの表面に汚染が少し認められるが、許容できる場合を「3」とし、加硫ゴムシートの表面に汚染が認められ、許容できない場合を「2」とし、加硫ゴムシートの表面の汚染が著しいか或いは加硫ゴムシートの表面にムラが認められる場合を「1」とした。
【0058】
光沢度の比は、比較例1,8,16における光沢度の数値を基準値「100」として、その比率を算出したときの値を示している。この光沢度の比は、数値が高い程、良好ということになる。なお、光沢度の比の算出に用いる光沢度は、グロスチェッカ(堀場製作所製)を用いて測定した。
【0059】
なお、表1~表6中、「(A)成分」は、「天然油脂の硬化物」に該当することを示す。また、「(B)成分」は、「グリセリン脂肪酸エステル、または、クエン酸オクタデシル」に該当することを示す。また、「(C)成分」は、「一般式(1)で表される化合物」に該当することを示す。また、「(D)成分」は、「一般式(2)で表される化合物、一般式(3)で表される化合物、または、これらの混合物」に該当することを示す。
【0060】
なお、各成分の詳細は、以下の通りである。
【0061】
(A)成分:
ヒマシ硬化油(12-ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド):ケイエフ・トレーディング社製
菜種硬化油(ステアリン酸トリグリセリド):横関油脂社製
ヒマシ油(リシノール酸トリグリセリド):ケイエフ・トレーディング社製
【0062】
(B)成分:
サンソフト No.750-C:ラウリン酸グリセリル、HLB 5.3、太陽化学社製
サンソフト Q-10D-C:モノカプリン酸ジグリセリン、HLB 9.5、太陽化学社製
サンソフト Q-12S-C:モノラウリン酸デカグリセリン、HLB 15.5、太陽化学社製
クエン酸オクタデシル:シグマ アルドリッチ ジャパン社製
【0063】
(C)成分:
ノニオン K-204:上記式(1)において、RがC1225、RがC、nが4、日油社製
ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル:一般式(1)において、RがC1837、RがC、nが2、和光純薬工業社製
ポリオキシエチレン(10)ドコシルエーテル:一般式(1)において、RがC2245、RがC、nが2、和光純薬工業社製
ノニオン E-215:一般式(1)において、RがC1835、RがC、nが15、日油社製
エマルゲン LS-110:一般式(1)において、RがC12~C14の混合物、RがCとCのブロック共重合体、nが10(CとCの合計)、花王社製
EMALEX 1805:一般式(1)において、RがC1837(分岐)、RがC、nが5、日本エマルジョン社製
【0064】
(D)成分:
レオドール TW-L106:一般式(2)において、RがC1123、l、m及びnの合計が6である化合物と、一般式(3)において、RがC1123、l、m及びnの合計が6である化合物との混合物、花王社製
レオドール TW-O106V:一般式(2)において、RがC1733、l、m及びnの合計が6である化合物と、一般式(3)において、RがC1733、l、m及びnの合計が6である化合物との混合物、花王社製
【0065】
その他:
リケスター EW-200:アジピン酸ペンタエリスリトールポリマーのステアレート、理研ビタミン社製
ブレンマー AE-400:ポリエチレングリコールモノアクリレート、日油社製
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
(実施例17~21、30、31、参考例22~29、32、比較例10~19)
(1)ブルーミング抑制剤の作製:
表3及び表4に示す試料を予め混合してブルーミング抑制剤を作製した。
【0069】
(2)ゴム材料(過酸化物を含むもの)の作製:
エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム100部、酸化亜鉛5部、ステアリン酸1部、FEFカーボンブラック60部、パラフィンオイル30部、を1.7Lのバンバリーミキサーで4分間混練を行った。これに過酸化物として商品名「パーブチルP-40」(日油社製)5質量部を直径約24cmの2本ロールを用いて添加し、更に混練を行ってゴム材料を得た。
【0070】
(3)ゴム組成物の作製及び評価:
このゴム材料に、作製したブルーミング抑制剤を、2本ロールを用いて添加し、更に混練を行って未加硫のゴム組成物を得た。なお、ブルーミング抑制剤の配合量を表3、表4に示す。表3、表4に示すブルーミング抑制剤の配合量は、ゴム材料中のゴム成分100質量部に対する配合量(質量部)を示す。
【0071】
この未加硫のゴム組成物をプレス加硫して、厚さ2.0mmの加硫ゴムシート(縦150mm×横150mm)を得た。この加硫ゴムシートを用いて、実施例1~5、14、15、参考例6~13、16、比較例1~7と同様にして、ブルーム量の評価及び外観評価試験を行った。結果を表3、表4に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
(実施例33~37、46、47、参考例38~45、48、比較例20~28)
(1)ブルーミング抑制剤の作製:
表5及び表6に示す試料を予め混合してブルーミング抑制剤を作製した。
【0075】
(2)ゴム材料(脂肪酸、脂肪酸金属塩を含むもの)の作製:
天然ゴム100質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸3質量部、FEFカーボンブラック50質量部、ナフテンオイル10質量部を1.7Lのバンバリーミキサーで3.5分間混練を行った。これに硫黄2質量部と、加硫促進剤として商品名「サンセラーCM」(三新化学工業社製)1質量部を直径24cmの2本ロールを用いて添加し、更に混練を行ってゴム材料を得た。
【0076】
(3)ゴム組成物の作製及び評価:
このゴム材料に、作製したブルーミング抑制剤を、2本ロールを用いて添加し、更に混練を行って未加硫のゴム組成物を得た。なお、ブルーミング抑制剤の配合量を表5、表6に示す。表5、表6に示すブルーミング抑制剤の配合量は、ゴム材料中のゴム成分100質量部に対する配合量(質量部)を示す。
【0077】
この未加硫のゴム組成物をプレス加硫して、厚さ2.0mmの加硫ゴムシート(縦150mm×横150mm)を得た。この加硫ゴムシートを用いて、実施例1~5、14、15、参考例6~13、16、比較例1~7と同様にして、ブルーム量の評価及び外観評価試験を行った。結果を表5、表6に示す。
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】
【0080】
表1~表6の結果から、実施例1~5、14、15、17~21、30、31、33~37、46、47のブルーミング抑制剤は、比較例1~22のブルーミング抑制剤に比べて、含有成分のブルームが抑制されたゴム製品を得ることができることが分かる。具体的には、実施例1~5、14、15、17~21、30、31、33~37、46、47のブルーミング抑制剤が含まれるゴム組成物を原料に製造したゴム製品は、「ブルーム量」が80以下であり、「外観」の評価が3以上であり、「光沢度の比」が150以上であり、良好な結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のブルーミング抑制剤は、タイヤなどのゴム製品を作製する材料であるゴム組成物に配合されてブルームを抑制するブルーミング抑制剤として採用することができる。また、本発明のゴム組成物は、タイヤなどのゴム製品を作製する材料として採用することができる。