(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/26 20060101AFI20220126BHJP
H01Q 19/24 20060101ALI20220126BHJP
H01Q 1/50 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
H01Q9/26
H01Q19/24
H01Q1/50
(21)【出願番号】P 2018158661
(22)【出願日】2018-08-27
【審査請求日】2021-02-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度~平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「IoT推進のための横断技術開発プロジェクト/超低消費電力データ収集システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】村田 眞司
(72)【発明者】
【氏名】鴫原 亮
(72)【発明者】
【氏名】野口 啓介
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-092802(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2007-0099422(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0149293(US,A1)
【文献】特開2016-119836(JP,A)
【文献】特開昭49-127545(JP,A)
【文献】韓国登録特許第1021934(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第106207422(CN,A)
【文献】韓国公開特許第2007-0042742(KR,A)
【文献】特開2004-328365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00-25/04
H02J 50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3本以上の第1導体であって、各第1導体は、受信する電波の周波数における自由空間波長における半波長に対応する長さを有する本体部と、前記本体部の一端に接続される第1接続部と、前記本体部の他端に接続される第2接続部とを有し、空間的に隣り合うように配置される3本以上の第1導体と、
前記3本以上の第1導体の本体部に囲まれる空間内に位置し、第1給電点から延在し、前記3本以上の第1導体の第1接続部に接続される第1素子と、前記第1給電点と平衡端子を構成する第2給電点から延在し、前記3本以上の第1導体の第2接続部に接続される第2素子とを有し、各第1導体と折返しダイポールアンテナを構成する第2導体と、
前記第1給電点及び前記第2給電点に接続される整流回路と
を含む、電力変換装置。
【請求項2】
前記整流回路から前記第2導体及び前記3本以上の第1導体を見たインピーダンスが、10kΩ以上である、請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1導体は、10本以下である、請求項1又は2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記3本以上の第1導体の各々の本体部の第1線幅をr1、前記第2導体の線幅をr2とすると、r1/r2≧1である、請求項1乃至3のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1導体及び前記第2導体の幅rは、受信する電波の周波数をF(MHz)とすると、(0.33×F)/1000<rである、請求項1乃至4のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記3本以上の第1導体の本体部同士の間隔hは、受信する電波の周波数における電気長をλeとすると、λe/30<h<λe/12である、請求項1乃至5のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第2導体の前記第1素子及び前記第2素子は、直線状に延在しており、
各第1導体において、前記第1接続部は、前記第2導体の延在方向に対して所定角度の方向に延在し、前記本体部は、前記第2導体に沿って延在し、前記第2接続部は、前記第2導体の延在方向に対して前記所定角度で延在する、請求項1乃至6のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第1導体の本体部は、前記第2導体に平行である、請求項7記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記所定角度は90度である、請求項7又は8記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記3本以上の第1導体は、前記第1導体の本体部の延在方向から見て、前記第2導体を中心として、同一円周上に等角度で配置される、請求項7乃至9のいずれか一項記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板の一主面に、平衡二線型のアンテナ、平衡二線線路、整流回路、直流出力部を形成し、整流回路は、直流遮断用キャパシタと、ショットキーバリアダイオードと、平滑用キャパシタを含んでおり、ショットキーバリアダイオードと平滑用キャパシタとの間隔を、受信するマイクロ波の波長をλgとして、λg/22.5~λg/14としたレクテナ装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のレクテナ装置は、周囲の電波強度が弱い場合に、十分な発電電圧を得るのが難しかった。その理由のひとつは、従来のレクテナ装置のインピーダンスが十分に大きくなかったためである。
【0005】
そこで、十分に大きなインピーダンスを有する電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態の電力変換装置は、3本以上の第1導体であって、各第1導体は、受信する電波の周波数における自由空間波長における半波長に対応する長さを有する本体部と、前記本体部の一端に接続される第1接続部と、前記本体部の他端に接続される第2接続部とを有し、空間的に隣り合うように配置される3本以上の第1導体と、前記3本以上の第1導体の本体部に囲まれる空間内に位置し、第1給電点から延在し、前記3本以上の第1導体の第1接続部に接続される第1素子と、前記第1給電点と平衡端子を構成する第2給電点から延在し、前記3本以上の第1導体の第2接続部に接続される第2素子とを有し、各第1導体と折返しダイポールアンテナを構成する第2導体と、前記第1給電点及び前記第2給電点に接続される整流回路とを含む。
【発明の効果】
【0007】
十分に大きなインピーダンスを有する電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態の折返しダイポールアンテナ100を含む電力変換装置300を示す図である。
【
図2】4個のエレメント110を含む折返しダイポールアンテナ100の構成を示す図である。
【
図4】折返しダイポールアンテナ100のシミュレーション結果を示す図である。
【
図5】折返しダイポールアンテナ100における本体部111の半径r1とエレメント120の半径r2との比r1/r2に対するステップアップ比n
2の特性を示す図である。
【
図6】折返しダイポールアンテナ100における本体部111及びエレメント120の半径rに対するステップアップ比n
2の特性を示す図である。
【
図7】折返しダイポールアンテナ100における間隔hに対するステップアップ比n
2の特性を示す図である。
【
図8】折返しダイポールアンテナ100のシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】ダイポールアンテナ100の各部の寸法を示す図である。
【
図10】実施の形態の折返しダイポールアンテナ100M1を含む電力変換装置300M1を示す図である。
【
図11】実施の形態の折返しダイポールアンテナ100M2を含む電力変換装置300M2を示す図である。
【
図12】折返しダイポールアンテナ100M3の構成を示す図である。
【
図13】折返しダイポールアンテナ100M4の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の電力変換装置を適用した実施の形態について説明する。
【0010】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態の折返しダイポールアンテナ100を含む電力変換装置300を示す図である。
【0011】
電力変換装置300は、折返しダイポールアンテナ100と整流回路200とを含む。電力変換装置300は、折返しダイポールアンテナ100が受信した電波の高周波電力を整流回路200で直流電力に変換して出力する。
【0012】
折返しダイポールアンテナ100は、誘導性のインピーダンス特性を有する。このため、電力変換装置300は、折返しダイポールアンテナ100、及び整流回路200の他にフィルタを含まなくても、容量性のインピーダンスを示す整流回路200と折返しダイポールアンテナ100とのインピーダンス整合を取ることができる。以下、この詳細について説明する。
【0013】
折返しダイポールアンテナ100は、N個のエレメント110と、1個のエレメント120とを有する。Nは3以上の整数である。すなわち、折返しダイポールアンテナ100は、3個以上のエレメント110を含む。
【0014】
図1では、折返しダイポールアンテナ100は、一例として、銅製の金属棒を組み合わせることによって作製されている。しかしながら、折返しダイポールアンテナ100は、銅以外の金属製であってもよく、また、基板等の表面に金属箔をパターニングすることによって作製されてもよい。
【0015】
エレメント110は、本体部111と接続部112、113とを有する。エレメント110は、第1導体の一例である。N個のエレメント110は、エレメント120の中心軸Cを中心軸とする仮想的な円筒の外周面上に本体部111の中心軸が位置するように、かつ、隣り合う本体部111同士の円周方向における角度θが等しくなるように配置されている。すなわち、N個のエレメント110は、本体部111がエレメント120の中心軸Cを中心軸とする仮想的な円筒の外周面上に等間隔で配置されるように、配列されている。
【0016】
N個のエレメント110は、互いに等しい構成を有するため、ここでは1個のエレメント110について説明する。
【0017】
本体部111は、端部111A及び111Bを有する。接続部112は、端部111Aとエレメント120の端部122Aとを接続し、接続部113は、端部111Bとエレメント120の端部122Bとを接続する。
【0018】
本体部111は、端部111A及び111Bを両端として、細長い円柱状のエレメント120の中心軸Cに平行に延在している。本体部111は、エレメント120と平行に配置されている。
【0019】
本体部111の長さLは、折返しダイポールアンテナ100が受信する電波の自由空間波長λ0の約半波長(約λ0/2)に対応する長さに設定される。これは、エレメント110が折返しダイポールアンテナ100の全長(エレメント120の中心軸方向の端から端までの長さ)に対応する部分だからである。
【0020】
ここで、電波の自由空間波長λ0の半波長(λ0/2)に対応する長さとは、厳密に電波の自由空間波長λ0の半波長(λ0/2)には限らず、折返しダイポールアンテナ100として機能させるための調整において、半波長(λ0/2)よりも少し短くされる場合の長さを含む意味である。
【0021】
また、エレメント110の本体部111の素子幅(円柱形状の直径)は、エレメント120の素子幅(円柱形状の直径)よりも太くされており、本体部111の半径はエレメント120の半径より大きく形成されている。折返しダイポールアンテナ100では、エレメント120の素子幅に対するエレメント110の素子幅でインピーダンスが決まる。エレメント120の素子幅よりもエレメント110の素子幅を太くすることにより、折返しダイポールアンテナ100のインピーダンスを増大させることができる。
【0022】
なお、エレメント110、120が基板の表面の金属箔で構成される場合には、エレメント110の本体部111の厚さに対する素子幅が、エレメント120の厚さに対する素子幅よりも太くされていればよい。
【0023】
エレメント120は、エレメント120A及び120Bを有する。エレメント120は、第2導体の一例である。
【0024】
エレメント120Aは、給電点121A及び端部122Aを有する。エレメント120Aは、第1素子の一例である。給電点121Aは、第1給電点の一例である。端部122Aは、第1端部の一例である。エレメント120Aは、エレメント110の本体部111に平行である。給電点121Aは、整流回路200の端子201に接続される。
【0025】
エレメント120Bは、給電点121B及び端部122Bを有する。エレメント120Bは、第2素子の一例である。給電点121Bは、第2給電点の一例であり、エレメント120の中心軸Cに垂直な軸を対称軸として、給電点121Aと点対称になる位置に配置されている。端部122Bは、第2端部の一例である。
【0026】
給電点121A及び121Bは、平衡端子の一例である。給電点121A及び121Bには、整流回路200の端子201、202が接続される。給電点121A及び121Bと整流回路200の端子201、202との間は、例えば、最短距離で銅箔パターン等により接続すればよい。
図1では、給電点121A及び121Bと整流回路200の端子201、202との接続部を2本の破線で示す。
【0027】
エレメント120Bは、エレメント110の本体部111に平行である。給電点121Bは、整流回路200の端子202に接続される。
【0028】
エレメント120Bは、平面視において、給電点121A及び121Bの対称軸に対して、エレメント120Aと線対称になるように配置されている。エレメント120Bの長さは、エレメント120Aの長さと等しい。端部122Aから122Bまでの長さは、1000MHzにおける電気長λeの1/2(λe/2)である。この長さは、給電点121A及び121Bの間隔を含む長さであり、換言すれば、端部122Aと端部122Bとの間の距離である。
【0029】
整流回路200は、インピーダンスが高いため、整流回路200の容量性のインピーダンスと、折返しダイポールアンテナ100の誘導性のインピーダンスとを整合させるには、折返しダイポールアンテナ100のインピーダンスを高くする必要がある。
【0030】
このため、エレメント110の素子幅が、エレメント120の素子幅よりも太くなるようにしている。折返しダイポールアンテナ100のインピーダンスと、整流回路200のインピーダンスとを共役整合させることにより、整流回路200での整流効率を増大させることができる。
【0031】
整流回路200は、端子201、202、キャパシタ211、212、213、214、ダイオード221、222、223、224、及び出力端子231、232を含む。整流回路200は、一例として、コッククロフト・ウォルトン型の整流回路である。
【0032】
端子201には、キャパシタ211、212が直列に接続されており、端子202には、キャパシタ213、214が直列に接続されている。また、ダイオード221、222、223、224は、
図1に示すように、キャパシタ211、212、213、214の間でたすき掛け状に接続されている。
【0033】
整流回路200は、折返しダイポールアンテナ100から入力される高周波電力を直流電圧に変換して、出力端子231、232から出力する。このような整流回路200のインピーダンスはダイオード221、222、223、224の端子間容量の影響で容量性である。
【0034】
また、本実施例の折返しダイポールアンテナ100は、誘導性のインピーダンス特性を有するため、電力変換装置300にはフィルタを設けていないが、フィルタを設けてもよい。その場合には、折返しダイポールアンテナ100のインピーダンスは必ずしも誘導性とする必要はなく、抵抗性、あるいは、容量性であってもよい。
【0035】
図2は、4個のエレメント110を含む折返しダイポールアンテナ100の構成を示す図である。
図2には、エレメント110の本体部111及び接続部112と、エレメント120とをを示す。
【0036】
ここで、本体部111の端部111A及び111Bの間の長さ(外寸)を150mm、給電点121A、121Bの間隔を5mm、給電点121Aから端部122Aまでの長さを72.5mm、給電点121Bから端部122Bまでの長さを72.5mmとしてシミュレーションを行った。
【0037】
図3は、シミュレーション結果を示す図である。
図3(A)には、本体部111の半径r1とエレメント120の半径r2を0.125mmに固定して、本体部111の表面とエレメント120の表面の間隔(最短距離)hを2mmから12mmまで変化させた場合の給電点121A、121Bから見た折返しダイポールアンテナ100MのインピーダンスR
0(Ω)を示す。
【0038】
図3(A)に示すように、間隔hが狭まるにつれてインピーダンスR
0(Ω)が大きくなることが分かった。このシミュレーション条件で10kΩ以上にするには、間隔hが約2.5mm以下にすればよいことが分かった。なお、従来の構成でも5kΩ程度インピーダンスのアンテナを得る事は可能であった為、実施例においては10kΩ以上のインピーダンスのアンテナを得る事を想定した。
【0039】
図3(B)には、本体部111の表面とエレメント120の表面の間隔(最短距離)hを6mmに固定し、かつ、エレメント120の半径r2を0.125mmに固定した条件で、本体部111の半径r1とエレメント120の半径r2との比r1/r2を変化させた場合のインピーダンスR
0(Ω)を示す。
【0040】
インピーダンスR0が10kΩ以上になるのは、本体部111の半径r1とエレメント120の半径r2との比r1/r2が1.3以上の場合であることが分かった。
【0041】
なお、ここでは、エレメント110が4個の場合のシミュレーション結果について説明したが、エレメント110が異なっても、同様の傾向が見られることを確認することができた。
【0042】
図4は、折返しダイポールアンテナ100のシミュレーション結果を示す図である。折返しダイポールアンテナ100が1000MHzの電波を受信する条件において、エレメント110の本体部111のY軸方向の長さL、本体部111の半径r1、エレメント120の半径r2、本体部111とエレメント120との間隔hを
図4に示すような2種類の値に設定したところ、給電点121A、121Bから見た折返しダイポールアンテナ100のインピーダンスR
0(Ω)とバンド幅BWは、
図4に示すような結果になった。なお、バンド幅BWは、VSWRが2以下になる部分の帯域を1000MHzに対する百分率として示す。
【0043】
例1のサンプルと例2のサンプルとの違いは、エレメント120の半径r2であり、例1では0.5mm、例2では0.125mmである。
【0044】
例1のインピーダンスR0は、12.0K(Ω)であり、バンド幅BWは2.5%であり、例2のインピーダンスR0は、24.1K(Ω)であり、バンド幅BWは1.8%であった。このように、エレメント120の半径r2が太い方が、インピーダンスR0が小さくなる傾向を示すことが分かった。また、エレメント120の半径r2が太い方が、バンド幅BWが狭くなる傾向を示すことが分かった。
【0045】
図5は、折返しダイポールアンテナ100における本体部111の直径r1とエレメント120の直径r2との比r1/r2に対するステップアップ比n
2の特性を示す図である。ここで、本体部111の長さLを150mm、間隔hを2mmとした。また、折返しダイポールアンテナ100が受信する電波は1000MHzとした。
【0046】
ここで、ステップアップ比n2とは、一般的なダイポールアンテナのインピーダンスに対する折返しダイポールアンテナ100のインピーダンスR0の比(増大分)を表す。ここでは、ステップアップ比n2が137のときに、インピーダンスR0が10kΩになることとする。
【0047】
直径r1とエレメント120の直径r2との比r1/r2を振ったところ、
図5に示すように、比r1/r2が1以上のときに、ステップアップ比n
2が137以上になることが分かった。また、比r1/r2が4までは増加するが、それ以上になると減少傾向を示すことがわかった。
【0048】
なお、ここでは受信する電波が1000MHzである場合のシミュレーション結果について説明したが、電波の周波数が異なっても、同様の傾向を示すことが確認できた。
【0049】
図6は、折返しダイポールアンテナ100における本体部111及びエレメント120の半径rに対するステップアップ比n
2の特性を示す図である。ここでは、本体部111の半径r1とエレメント120の半径r2とが等しく、ともに半径rとして示す。ここで、本体部111の長さLを150mm、間隔hを6mmとした。なお、折返しダイポールアンテナ100が受信する電波は1000MHzとした。
【0050】
半径rを振ったところ、
図6に示すように、半径rの増大に伴ってステップアップ比n
2が増大する特性が得られた。すなわち、半径rの増大に伴って折返しダイポールアンテナ100のインピーダンスR
0が増大することが分かった。
【0051】
インピーダンスR0が10kΩ以上になるには、ステップアップ比n2が137以上であればよいため、半径rが0.33mm以上であればよいことが分かった。0.33mmは、1000MHzにおける電気長λeの1/90である。
【0052】
なお、ここでは受信する電波が1000MHzである場合のシミュレーション結果について説明したが、電波の周波数が異なっても、同様の傾向を示すことが確認できた。
【0053】
このため、折返しダイポールアンテナ100が受信する電波の周波数をF(MHz)として半径rを式で表すと、(0.33(mm)×F(MHz))/1000(MHz)<r(mm)となる。以上より、半径rは、(0.33×F)/1000<rであればよいことが分かった。
【0054】
図7は、折返しダイポールアンテナ100における間隔hに対するステップアップ比n
2の特性を示す図である。ここで、本体部111の長さLを150mm、半径r1、r2をともに0.125mmとした。なお、折返しダイポールアンテナ100が受信する電波は1000MHzとした。
【0055】
間隔hは、折返しダイポールアンテナ100におけるエレメント120とエレメント110の本体部111との間隔(最短距離)である。
【0056】
間隔hを1mmから12mmまで振ったところ、ステップアップ比n2が137以上300未満になるのは、間隔hが1mmから2.5mmの範囲であった。このため、間隔hが1mmから2.5mmの範囲であることが好ましいことが分かった。
【0057】
1000MHzにおける1mmは電気長λeの1/30に相当し、2.5mmは電気長λeの1/12に相当する。このため、間隔hは、λe/30≦h≦λe/12であればよいことが分かった。
【0058】
なお、ここでは受信する電波が1000MHzである場合のシミュレーション結果について説明したが、電波の周波数が異なっても、同様の傾向を示すことが確認できた。このため、1000MHz以外の周波数であっても、間隔hは、λe/30≦h≦λe/12であればよい。
【0059】
図8は、折返しダイポールアンテナ100のシミュレーション結果を示す図である。折返しダイポールアンテナ100が1000MHzの電波を受信する条件において、エレメント110の本体部111のY軸方向の長さL、本体部111の半径r1、エレメント120の半径r2、本体部111とエレメント120との間隔hを
図8の例3に示すような値に設定したところ、給電点121A、121Bから見た折返しダイポールアンテナ100のインピーダンスR
0(Ω)は32.0kΩ、バンド幅BWは0.5%であった。
【0060】
図4に示す例1、2よりも本体部111の半径r1とエレメント120の半径r2が太いが、主に本体部111の半径r1を太くしたことによって、エレメント110とエレメント120の結合が増えて、
図4に示す例1、2よりもインピーダンスR
0が大きくなったものと考えられる。
【0061】
折返しダイポールアンテナ100を920MHzと2.45GHzの電波を受信する構成にすると、各部の寸法は、
図9のようになる。
【0062】
本体部111M-1~111M-4の端部111MA、111MB間の長さLは、920MHzでは163mm、2.45GHzでは61mm、給電点121A、121Bの間隔wfは、920MHzでは5.4mm、2.45GHzでは2mm、本体部111M-1~111M-4の半径r1は、920MHzでは0.135mm、2.45GHzでは0.05mm、本体部111M-1、111M-2とエレメント120との間隔hは、920MHzでは6.5mm、2.45GHzでは2.44mmとなった。なお、本体部111M-1と111M-4との間隔、及び、本体部111M-2と111M-3との間隔は、ともに2hである。
【0063】
以上のように、実施の形態によれば、エレメント120の周囲に配置した3個(3本)以上のエレメント110を含むことにより、給電点121A、121Bから見たインピーダンスが非常に大きい折返しダイポールアンテナ100が得られた。これは、エレメント110の本数を増やすことによって、エレメント120との結合が増大したためである。
【0064】
したがって、実施の形態によれば、十分に大きなインピーダンスを有する電力変換装置300を提供することができる。
【0065】
なお、以上では、折返しダイポールアンテナ100のエレメント110の本体部111同士の円周方向における角度θが等しい形態について説明したが、必ずしも等間隔ではなくてもよい。ただし、3本以上のエレメント110とエレメント120との結合を増大させる観点からは、3本以上のエレメント110は、本体部111が同一平面上に(二次元的に)配置されるのではなく、3次元的に配置されることが好ましい。
【0066】
また、以上では、エレメント110の接続部112、113が本体部111に対して90度の角度で接続されており、かつ、エレメント120に対して90度の角度で接続される形態について説明した。しかしながら、接続部112、113は、90度以外の角度で本体部111又はエレメント120に接続される構成であってもよい。
【0067】
また、接続部112、113は、直線状ではなく湾曲していてもよい。また、本体部111も直線状には限られず、例えば端部111A、111B側が湾曲しているような形状であってもよい。
【0068】
また、接続部112、113は、本体部111の端部111A、111Bよりも中央側にオフセットした位置で、本体部111に接続されていてもよい。同様に、接続部112、113は、エレメント120の端部122A、122Bよりも中央側にオフセットした位置で、エレメント120に接続されていてもよい。
【0069】
また、
図1のようにN個のエレメント110がある場合に、1個のエレメント110の接続部112、113がエレメント120の端部122A、122Bに接続され、残りのN-1個のエレメント110の接続部112、113は、1個のエレメント110の接続部112、113を介して、エレメント120の端部122A、122Bに接続されていてもよい。
【0070】
また、以上では、エレメント110の数Nが3以上である形態について説明したが、エレメントの数Nの上限は、10であってもよい。エレメント110が10本あれば、エレメント110と十分に高い結合が得られており、また、10本までにしておいた方が製造が容易だからである。また、エレメント110が10本の場合の放射効率は、エレメント110が3本の場合の放射効率の約80%であり、実用性を考慮した場合の実質的な下限であり、これ以上増やすと、放射効率がさらに低下するからである。
【0071】
なお、折返しダイポールアンテナ100は、以下で
図10乃至
図13に示すように変形してもよい。
【0072】
図10は、実施の形態の折返しダイポールアンテナ100M1を含む電力変換装置300M1を示す図である。
図10(A)は分解図を示し、
図10(B)は組み立てた状態を示す。以下では、XYZ座標系を用いて説明する。
【0073】
電力変換装置300M1は、折返しダイポールアンテナ100M1と整流回路200とを含む。折返しダイポールアンテナ100M1は、基板130A、130Bに実装されており、基板130A、130Bの表面に形成される金属箔によって構成される点が
図1の折返しダイポールアンテナ100と異なる。
【0074】
基板130A、130Bは、例えば、テフロン(登録商標)基板又はPPE(Polyphenylene Ether: ポリフェニレンエーテル)基板のように誘電体損失の低い基板である。また、基板130A、130Bは、テフロン基板又はPPE基板に限らず、例えばFR-4(Flame Retardant type 4)規格の配線基板やその他の形式の基板やフレキシブル基板であってもよい。
【0075】
基板130Aは、XY平面に平行であり、Z軸方向の厚さを有する。基板130Aは、Y軸負方向側の端部のX軸方向の幅の中心に設けられる切り欠き部131Aと、Y軸正方向側の端部のX軸方向の幅の中心に設けられる切り欠き部132Aとを有する。
【0076】
基板130Bは、YZ平面に平行であり、X軸方向の厚さを有する。基板130Bは、Y軸負方向側からY軸正方向側にわたって、Z軸方向の幅の中心においてX軸方向に貫通するスリット131Bを有する。スリット131BのY軸方向の長さは、基板130Aの切り欠き部131A及び132Aの間の長さに対応している。また、スリット131BのZ軸方向の幅は、基板130AのZ軸方向の厚さに対応している。なお、基板130A、130Bの厚さは、一例として、0.5mmである。
【0077】
折返しダイポールアンテナ100M1は、4個のエレメント110と、1個のエレメント120とを有する。
図1と同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。また、4個のエレメント110を区別する場合には、110-1~110-4と称す。
【0078】
エレメント110-1、110-3とエレメント120とは、基板130AのZ軸正方向側の表面に設けられている。エレメント110-1、110-3とエレメント120とは、一例として、基板130Aの表面に設けられた銅箔をパターニングすることによって作製される。
【0079】
エレメント110-1、110-3とエレメント120は、エレメント110-1及び110-3の接続部112同士を接続するとともに、接続部113同士を接続した矩形環状のパターンのX軸方向の幅の中心に、エレメント120の端部122A及び122Bを接続するようにパターニングすることによって作製される。
【0080】
矩形環状のエレメント110-1及び110-3の接続部112同士の接続点(切り欠き部132Aのそばに位置する部分)には、エレメント120の端部122Aが接続され、エレメント110-1及び110-3の接続部113の接続点(切り欠き部131Aのそばに位置する部分)同士には、エレメント120の端部122Bが接続される。
【0081】
エレメント110-2、110-4は、基板130BのX軸正方向側の表面に設けられている。エレメント110-2、110-4は、エレメント110-2及び110-4の接続部112同士を接続するとともに、接続部113同士を接続した矩形環状にパターニングされる。
【0082】
エレメント110の線幅w1は、素子幅を示し、線幅w1は
図1及び
図2に示すエレメント110の本体部111の半径r1の2倍に相当する。同様に、エレメント120の線幅w2は、素子幅を示し、線幅w2は
図1及び
図2に示すエレメント120の半径r2の2倍に相当する。
なお、エレメント110-1~110-4の厚さは、一例として、18μmである。
【0083】
基板130A、130Bの平面視でのサイズは、互いに等しく、それぞれ、エレメント110-1及び110-3の矩形環状のパターンと、エレメント110-2及び110-4の矩形環状のパターンとを配置できるサイズであればよい。
【0084】
このようにエレメント110-1、110-3とエレメント120を設けた基板130Aを基板130Bのスリット131Bの内部に挿入し、基板130Aの切り欠き部131Aを基板130Bのスリット131BのY軸負方向側の端部に係合させた状態で、切り欠き部132Aをスリット131Bに挿入すれば、
図10(B)に示すように基板130A及び130Bを組み付けることができる。
【0085】
なお、エレメント120の端部122Aと、エレメント110-2及び110-4の接続部112同士の接続点との電気的な接続を確保するために、この部分をはんだで接合してもよい。同様に、エレメント120の端部122Bと、エレメント110-2及び110-4の接続部113同士の接続点との電気的な接続を確保するために、この部分をはんだで接合してもよい。
【0086】
なお、前記折返しダイポールアンテナ100においては
図6に示したようにインピーダンスR
0が10kΩ以上になるには、ステップアップ比n
2が137以上であればよいため、半径rが0.33mm以上とすればよく、0.33mmは、1000MHzにおける電気長λeの1/90に相当する。ところで、電気長λeは、基板130A、130Bに設けられるエレメント110、120のような伝送媒体中を伝送される電磁波の波長であり、基板130A、130Bの比誘電率等によって短縮率が異なる。この短縮率によって電気長λeのλeの1/90は短縮される。よって本実施の形態の折返しダイポールアンテナ100M1の小型化が可能となる。
【0087】
図11は、実施の形態の折返しダイポールアンテナ100M2を含む電力変換装置300M2を示す図である。
図11(A)は分解図を示し、
図11(B)は組み立てた状態を示す。以下では、XYZ座標系を用いて説明する。
【0088】
折返しダイポールアンテナ100M2は、
図10に示す折返しダイポールアンテナ100M1から基板130Bを取り除いた構成を有する。この場合には、エレメント110-2、110-4は、針金のように剛性のある金属部材で構成すればよい。また、エレメント110-2、110-4は、例えば、図示しない筐体の内面等に形成される金属箔等であってもよい。
【0089】
また、
図12に示す折返しダイポールアンテナ100M3のような構成であってもよい。折返しダイポールアンテナ100M3は、直方体状の筐体130Mの6面のうち、形状が等しい4つの面のうちの1つの中央部に整流回路200を設け、形状が等しい4つの面の境界になる4辺に、エレメント110Mの円柱状の本体部111M-1~111M4を配置した構成を有する。4本の本体部111M-1~111M4は、
図10の接続部112、113に対応する4本の接続部112M、113Mによって接続されている。
【0090】
本体部111M-1~111M4のうち、本体部111M-1、111M-2は、本体部111M-3、111M-4よりもエレメント120に近い構成になる。
【0091】
また、
図13(A)に示すダイポールアンテナ100M4のように、3本のエレメント110Mとエレメント120とフレキシブル基板150に設け、
図13(B)に示すように円柱状に丸めてもよい。
【0092】
以上、本発明の例示的な実施の形態の電力変換装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0093】
100、100M1、100M2、100M3、100M4 折返しダイポールアンテナ
110、110M、120、120A、120B エレメント
111、111M-1~111M4 本体部
112、113 接続部
121A、121B 給電点
122A、122B 端部
200 整流回路
300 電力変換装置