(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】角栓除去剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/60 20060101AFI20220126BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220126BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20220126BHJP
A61K 35/60 20060101ALI20220126BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220126BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
A61K8/60
A61Q19/00
A61K31/711
A61K35/60
A61P17/00
A61K8/98
(21)【出願番号】P 2019143563
(22)【出願日】2019-08-05
【審査請求日】2021-02-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598043054
【氏名又は名称】日生バイオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩志
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 弥生
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-244402(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0047254(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0027986(KR,A)
【文献】特開2007-291062(JP,A)
【文献】特開2008-063315(JP,A)
【文献】特開2009-167150(JP,A)
【文献】国際公開第2007/013411(WO,A1)
【文献】特開平07-258061(JP,A)
【文献】特表平08-509000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00- 90/00
A61K 31/33- 33/44
A61K 35/00- 35/768
A61K 36/06- 36/068
A61P 1/00- 43/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量が2,000,000以下であるDNAを有効成分として含み、
前記分子量が2,000,000以下であるDNAが、分子量669,000以下の画分を10~100%含むDNAである、角栓除去剤。
【請求項2】
有効成分が白子処理物である、請求項1に記載の角栓除去剤。
【請求項3】
白子処理物が、白子から抽出したDNA若しくは該DNAの加水分解物又は白子の加水分解物である、請求項2に記載の角栓除去剤。
【請求項4】
有効成分の含有量が0.001~5質量%である、請求項1~3の何れか1項に記載の角栓除去剤。
【請求項5】
分子量が2,000,000以下であるDNAが、分子量12,000以下の画分を10~100%含むDNAである、請求項1~4の何れか1項に記載の角栓除去剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角栓除去剤に関し、さらに詳しくは、DNA(デオキシリボ核酸)を有効成分として含む角栓除去剤に関する。
【背景技術】
【0002】
「肌のケア」で特に重要な部分である表皮は、主にケラチノサイト(角化細胞)からなり、基底層、有棘層、顆粒層、角層という4層構造となっている。表皮中のケラチノサイトが分裂すると、最も内部にある基底層から、より表面の層に移動し、一番外側にとどまって角質層を形成し、いわゆる角質として剥がれ落ちる。ケラチノサイトが新しく生まれ、角質となって剥がれ落ちるまで、通常28日間を要する。この周期を表皮のターンオーバーと称する。
【0003】
角質は、硬タンパク質の一種であるケラチンの別称である。これが皮脂腺から分泌された皮脂と毛穴中で凝固して角栓となり、それが酸化して黒くなった状態が毛穴の黒ずみである。すなわち、角栓は毛穴につまった汚れということができる。
【0004】
角栓が諸種の肌トラブルと肌の美観を損なう原因となっていることは広く知られている。表皮のターンオーバーを整え、肌を健やかに保つためには、角栓の除去が欠かせないことは常識となっており、諸種の角栓除去剤や角栓除去作用をもつ化粧料が提案され、販売されている。
【0005】
しかしながら、市場の角栓除去剤に比べ化粧料や溶剤などによる刺激性がなく、より安全で使いやすく、角栓除去作用に優れた日常的に用いることができる角栓除去剤が求められている。
【0006】
ここで、安全で効果の優れた機能性食品として用いられているDNA(デオキシリボ核酸)は、肌状態(水分量、皮脂量、皮溝密度、しわ、しみ、そばかす等)の改善効果を有することが知られている(特許文献1、2)。しかしながら、角栓除去作用について、本発明者の知る限り、報告はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-291062号公報
【文献】特開2008-63315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、肌への親和性に優れて刺激がなく、より安全で使いやすく、角栓除去作用に優れ、日常的に用いることができる角栓除去剤(角栓溶解剤)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、安全で効果の優れた機能性食品として用いられている魚類の精巣(白子)由来のDNA(デオキシリボ核酸)が優れた角栓溶解作用を有することを見出した。本発明はかかる知見に基づいて成し遂げられたものである。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0010】
(1)分子量が2,000,000以下であるDNAを有効成分として含んでなる角栓除去剤。
(2)有効成分が白子処理物である、(1)に記載の角栓除去剤。
(3)白子処理物が、白子から抽出したDNA若しくは該DNAの加水分解物又は白子の加水分解物である、(2)に記載の角栓除去剤。
(4)有効成分の含有量が0.001~5質量%である、(1)~(3)の何れかに記載の角栓除去剤。
(5)分子量が2,000,000以下であるDNAが、分子量12,000以下の画分を10~100%含むDNAである、(1)~(4)の何れかに記載の角栓除去剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、有効成分であるDNAが優れた角栓溶解作用を有するので、表皮の角栓を良好に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例で用いた高分子DNA(DNA-Na)の分子量分布を示す図である。図の横軸は保持時間(分)、縦軸は紫外領域(波長260nm)の吸光度である。図中の分子量目安12,000はチトクロームCの溶出位置である。
【
図2】実施例で用いた加水分解DNA(加水分解DNA-Na)の分子量分布を示す図である。図の横軸は保持時間(分)、縦軸は紫外領域(波長260nm)の吸光度である。図中の分子量目安12,000はチトクロームCの溶出位置である。
【
図3】実施例で用いた水溶性核タンパク質(白子エキスDNA-Na)の分子量分布を示す図である。図の横軸は保持時間(分)、縦軸は紫外領域(波長260nm(上段)又は280nm(下段))の吸光度である。図中、分子量目安12,000はチトクロームCの溶出位置である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明は、以下の記載内容に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。また、有効成分の含有量(%)は特に明記しない限り質量パーセント(wt%)である。
【0014】
本発明の角栓除去剤は、DNA(デオキシリボ核酸)を有効成分として含むものである。ここで、DNAは5炭糖(デオキシ-D-リボース)、リン酸及び塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン)からなるものであれば如何なる分子量のものであってもよい。よって、DNAは塩基数が1以上、すなわち平均分子量が約330以上であればよい。
【0015】
本発明において、DNAは、動物、植物、微生物等の如何なる生物体、その臓器や器官(以下、単に「生物体」ということがある。)に由来するものであればよく、また合成DNAであってもよい。
【0016】
生物体としては、特にDNAを多く含むことや水産加工上の廃棄物を有効利用できるといった観点から、サケ(鮭)、マス(鱒)、タラ(鱈)といった魚類の精巣(以下「白子」ということがある。)が特に好ましい。
【0017】
DNAは、生物体(例えば白子)を適当な方法で処理した処理物であることが好ましい。ここで、処理には、生物体からのDNA抽出、精製、分解などが含まれる。また、生物体(例えば白子)そのものを分解して水溶性とすることも含まれる。
【0018】
DNAの分子量は特に限定されず、生物体から抽出されたDNAの分子量程度でも、それ以下でもよい。具体的には、分子量が2,000,000以下である画分を10~100%含有することが好ましく、分子量が700,000以下、好ましくは669,000以下である画分を10~100%含有することがより好ましく、分子量が12,000以下である画分を10~100%含有することがより好ましく、分子量が5000以下である画分を10~100%含有することがさらに好ましい。
【0019】
本発明において、DNAとしては、魚類の精巣(白子)の処理物(以下「白子処理物」ということがある。)が特に好ましい。白子処理物としては、例えば、白子から抽出したDNA(以下「高分子DNA」ということがある。)、該高分子DNAを加水分解処理したもの(以下「加水分解DNA」ということがある。)、白子そのものを加水分解処理したもの(以下「水溶性核タンパク質」ということがある。)等が挙げられる。
【0020】
これら白子処理物は、例えば、特開2003-325149号公報、特開2004-16143号公報、特開2005-245394号公報、特開2016-204340号公報などに記載の方法に準じて調製することができる。
【0021】
本発明において、高分子DNAは、例えば、魚類の精巣(白子)から皮、筋、血管等を必要に応じて除去した後、さらに必要に応じて精製して油分除去や粗砕し、粗砕した魚類の精巣にDNAが分解しない条件下でタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)処理を行い、酵素処理した溶液にアルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど)を加えて、DNAをDNA塩(DNAナトリウム塩)として沈殿させ、この沈殿物を回収する。もしくは酵素処理した溶液に酸(塩酸、りん酸、クエン酸など)を加え、DNAを沈殿させ、この沈殿物を回収し、水酸化ナトリウムで中和して、必要に応じて乾燥することでDNA塩(DNAナトリウム塩)を得ることができる。なお、塩はナトリウム塩に限られるものではなく、食品や化粧品として使用可能な塩であればよく、例えばカリウム塩又はカルシウム塩であってもよい。また、DNAは塩ではなく、遊離体であってもよい。
【0022】
高分子DNAは、分子量が2,000,000以下である画分を10~100%含有することが好ましく、分子量が700,000、好ましくは669,000以下である画分を10~100%含有することがより好ましい。
【0023】
本発明において、加水分解DNAは、上記で得られた高分子DNA(塩)を、ヌクレアーゼ等の核酸分解酵素を用いて加水分解することにより得ることができる。加水分解処理に使用するヌクレアーゼとしては、例えば、アオカビ由来のヌクレアーゼを使用することができる。
【0024】
加水分解は、例えば、65℃前後に調整した温水に、上記DNA塩(DNAナトリウム塩)を原料として投入し、撹拌後、さらに70℃に加温し、ヌクレアーゼを加えて反応させることで行うことができる。加水分解処理時の温度としては、60~75℃が好ましく、70℃がより好ましい。
【0025】
得られた加水分解処理物を、例えば凍結乾燥させることで、粉末状の加水分解DNAを得ることができる。上記の手法による加水分解DNAは、通常、ナトリウム塩の状態で得ることができる。なお、塩は、ナトリウム塩に限られるものではなく、食品や化粧品として使用可能なものであればよく、例えばカリウム塩、又はカルシウム塩であってもよい。また、加水分解DNAは塩ではなく、遊離体であってもよい。
【0026】
加水分解DNAは、分子量が12,000以下である画分を10~80%含有することが好ましく、分子量が5,000以下である画分を10~80%含有することがより好ましい。
【0027】
本発明において、水溶性核タンパク質は、例えば、上記魚類の精巣(白子)から皮、筋、血管等を必要に応じて除去した後、さらに必要に応じて精製して油分除去や粗砕し、続いてプロテアーゼ及びヌクレアーゼでの処理を行うことより調製することができる。
【0028】
用いるプロテアーゼの性質に特に制限はないが、トリプシン等のセリンプロテアーゼが好ましい。セリンプロテアーゼは、アルギニン及びリジンのカルボキシル側でペプチド結合を選択的に加水分解するので、アルギニンを多く含むプロタミンの加水分解に適している。
【0029】
また、用いるヌクレアーゼの性質に特に制限はないが、例えば5’にリン酸基を残して切断するヌクレアーゼ等が好ましく、ある程度の熱安定性を備えることが好ましい。これらプロテアーゼやヌクレアーゼは、市販品を適宜選択して用いればよい。
【0030】
これらの酵素処理物は、そのまま、或いは必要に応じて噴霧乾燥等により粉体の形態で、本発明における水溶性核タンパク質として用いることができる。また、必要であればさらに精製して使用することもできる。
水溶性核タンパク質には白子由来DNAの加水分解物と白子由来核タンパク質(プロタミン)の加水分解物が含まれる。
【0031】
水溶性核タンパク質中のDNAの含有量は、通常1~80%、好ましくは10~50%、より好ましくは26~36%である。
【0032】
水溶性核タンパク質の分子量等は特に制限されないが、DNAとして、分子量5000以下、好ましくは3000以下の画分を50~100%程度まで含むように低分子化されたものが好ましい。なお、分子量分布は、下記GPC分析(波長260nmにおける吸光度)に基づく値である。
有効成分(DNA)の分子量の下限は、前記のとおり特に限定されず、分子量が約330以上(塩基数1以上)であればよく、分子量330以上の画分を0.1~100%、分子量1,000以上の画分を10~100%程度を含むものが好ましい。
【0033】
なお、本発明における分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)で試料を分子量に基づいて分別した後にUV検出器によって定量することにより行うことができる。
【0034】
これら白子処理物は、1種を単独で用いてもよく、2種又は3種を組合せて用いてもよい。
【0035】
本発明の角栓除去剤において、有効成分(DNA)の含有量は、好ましくは0.001~1%、より好ましくは0.001~0.5%、さらに好ましくは0.01~0.2%である。
【0036】
本発明の角栓除去剤は、有効成分としてDNA(デオキシリボ核酸)を含んでなるものである。ここで「含んでなる」とは、所望する製品形態に応じた生理学的に許容されうる担体や併用可能な他の補助成分などの任意成分を含んでいてもよいことを意味する。
【0037】
本発明の角栓除去剤は、洗浄用化粧品(洗顔剤、クレンジング剤)、さらに具体的には角栓(毛穴に詰まった汚れ)除去用の洗顔剤、クレンジング剤として特に好適に用いることができる。ここで、クレンジングとは、メイク等の油汚れ、角栓(毛穴に詰まった汚れ)等を落とすこと意味する。また、洗顔、クレンジング方法に特に制限はなく、通常用いられる方法であればよい。
【0038】
本発明の角栓除去剤が採り得る剤型は、皮膚に適用可能なものであれば特に制限はない。具体的には、例えば、液状、乳剤状、ゲル状、クリーム状、軟膏状、フォーム状、ミスト状、エアロゾル状、固形石鹸状等の剤型で提供することができる。
【0039】
角栓除去剤が含有し得るその他の任意成分としては、特に制限はなく、通常のクレンジング剤や化粧品に配合され得る添加剤等を使用することができる。かかる添加剤としては、例えば、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、酸化防止剤、ビタミン剤、天然抽出物等が挙げられる。これらその他の任意成分の含有量にも、特に制限はなく、所望の剤型等に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、被験物質の濃度(%)は特に明記しない限り質量パーセント(wt%)である。
【0041】
[実施例1]角栓溶解作用
1.被験物質
(1)高分子DNA
高分子DNAとして、日生バイオ株式会社製のDNA-Na(製品名)を用いた。本品は、前記した方法により、サケの精巣(白子)からDNAのNa塩を抽出・精製し、乾燥することにより調製したものである。本品のGPC分析結果を
図1に、保持時間と分子量の関係を表1に示す。分子量目安の12,000はチトクロームC(MW 12,400)の保持時間を基とした。
【0042】
【0043】
上記分析結果より、DNA-Naの分子量による画分は以下のとおりである。
分子量2,000,000~669,000画分(溶出時間25.1分~30.3分未満):10.3%
分子量669,000以下の画分(溶出時間30.3分以降):89.4%
以上のことから、実施例で用いたDNA-Naの分子量2,000,000以下である画分は99.7%である。
【0044】
これを、水で10%に溶解し、それを用時に水で100倍に希釈し、被験液(被験物質の終濃度0.1%)として用いた。
【0045】
(2)加水分解DNA
加水分解DNAとして、日生バイオ株式会社製の加水分解DNA-Na10%水溶液(製品名)を用いた。本品は、前記した方法により、サケの精巣(白子)からDNAのNa塩を抽出し、それを加水分解することにより調製したものである。
本品のGPC分析結果を
図2に、保持時間と分子量の関係を表2に示す。分子量目安の12,000は上記と同様である。
【0046】
【0047】
上記分析結果より、加水分解DNA-Naの分子量による画分は以下のとおりである。
分子量12,000~5,000の画分(溶出時間20分~25分未満):32.0%
分子量5,000以下の画分(溶出時間25分以降):32.4%
以上のことから、実施例で用いた加水分解DNA-Naの分子量12,000以下である画分は64.4%である。
【0048】
これを、用時に水で100倍に希釈し、被験液(被験物質の終濃度0.1%)として用いた。
【0049】
(3)水溶性核タンパク質
水溶性核タンパク質として、日生バイオ株式会社製の白子エキスDNA-Na10%水溶液(製品名)を用いた。本品は、前記した方法により、サケの精巣(白子)を加水分解することにより調製したものである。本品のGPC分析結果を
図3に、保持時間と分子量の関係を表3に示す。分子量目安の12,000は上記と同様である。
【0050】
【0051】
図3に示すとおり、A
280/A
260=0.5789(A
280は280nmにおける吸光度、A
260は260nmにおける吸光度)であり、白子エキスDNA-Naは核酸とタンパク質の混合物であることがわかる。また、本品のDNA含有量は3.3%である。
【0052】
上記分析結果(波長260nmにおける吸光度)より、白子エキスDNA-Naの分子量による画分は以下のとおりである。
分子量12,000~5,000の画分(溶出時間20分~25分未満):0.3%
分子量5,000以下の画分(溶出時間25分以降):99.6%
以上のことから、実施例で用いた白子エキスDNA-Naの分子量12,000以下である画分は99.9%である。
【0053】
これを、用時に水で100倍に希釈し、被験液(被験物質の終濃度0.1%、DNAの終濃度0.033%)として用いた。
【0054】
2.試験方法
コントロールを「水のみ」として、上記3種の被験物質について、次のとおり、角栓溶解評価試験を行った。
【0055】
(1)人工角栓
ケラチンパウダー(ケラチンSHパウダー、一丸ファルコス社製)(40wt%)、コレステロール(日本薬局方コレステロール、日本精化社製)(20wt%)、オリーブ油(オリーブ油リファインド、DSP五協フード&ケミカル社製)(39.9%)、赤色102号(アイゼン社製)(0.1wt%)を加温混合した後、冷却して、人口角栓を調製した。
【0056】
(2)小鼻モデル
シリコン板(20mm×20mm×1.5mm)に直径1mmの穴を25個開けた毛穴モデルに、上記(1)で調製した人工角栓を詰め、これを小鼻モデルとした。
【0057】
(3)溶解試験
室温下で小鼻モデルに被験液を2mL滴下し、シリコン板表面を1分間指の腹で擦った。1分後、被験液を約37℃の流水で30秒間洗浄した。コントロールは「水のみ」で洗浄した。この試験を各被験液、コントロールについて、4回実施した。
【0058】
(4)結果の解析
試験前後に撮影した小鼻モデル画像を画像解析アプリケーションにより解析し、解析値を、次式により、小鼻モデルに残存した人工角栓残存量(a.u.)を求めた。
人工角栓残存率(%)=[試験後の人工角栓残存量(a.u.)/試験前の人工角栓残存量(a.u.)×100]
各試験(4回)で得られた人口角栓残存率の平均値について、unpaired t-test(対応のないt検定)を行った。
【0059】
2.試験結果
各被験物質について、試験前と試験後の人口角栓残存率(%)(平均値±標準偏差)、t検定の結果を表4に示す。
【0060】
【0061】
表4から明らかなとおり、3種の被験物質(高分子DNA、加水分解DNA、水溶性核タンパク質)を用いて、人口角栓を洗浄除去した。この結果から、これら被験物質で洗顔又はクレンジングすると、毛穴に詰まった角栓を落とし、角栓による毛穴の目立ちを抑制すると考えられる。また、これらの被験物質に共通して含有するものはDNA(デオキシリボ核酸)であり、少なくとも該物質は角栓除去作用を有すると考えられる。