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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】双極性外科器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20220126BHJP
【FI】
A61B18/14
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019185195
(22)【出願日】2019-10-08
(62)【分割の表示】P 2018176743の分割
【原出願日】2013-08-27
(65)【公開番号】P2020018884
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2019-10-08
(31)【優先権主張番号】61/695,411
(32)【優先日】2012-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】13/975,486
(32)【優先日】2013-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】13/975,494
(32)【優先日】2013-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514085355
【氏名又は名称】ニコ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】NICO Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】マーク,ジョセフ,エル.
(72)【発明者】
【氏名】カッサム,アミン
(72)【発明者】
【氏名】ドウアティ,ブライアン,シー.
【審査官】家辺 信太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5873877(US,A)
【文献】米国特許第6379351(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0245923(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0216690(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科装置において、
第1の電極通路および第2の電極通路を含む一対の電極通路を有するシャフト部材であって、前記一対の電極通路の各々が前記シャフト部材の遠位端部に開口を有し、前記第1および第2の電極通路が互いに近接して配置されており、さらに、少なくとも一つの吸引ルーメンを有するシャフト部材と、
第1の電極および第2の電極を含み、エネルギーを送達するように構成された一対の電極であって、前記第1および第2の電極の各々の遠位端部が、前記シャフト部材の前記遠位端部から延出して配置されるように、前記第1の電極が前記第1の電極通路に、前記第2の電極が前記第2の電極通路にそれぞれ配設されるように構成されている、一対の電極と、
内部に真空チャンバを備えるスリーブであって、前記シャフト部材が前記真空チャンバを通って延び、前記シャフト部材が、前記真空チャンバと連通している真空開口をさらに含むものであるスリーブと、
前記スリーブに配置されたベント開口と、スライド可能な部材とを有する真空制御弁であって、前記スライド可能な部材が、前記ベント開口の少なくとも一部分を選択的に覆いまたは露出させて、前記真空チャンバから前記シャフト部材を通して送達される吸引圧力を選択的に変化させるように構成されている真空制御弁と、を備えることを特徴とする外科装置。
【請求項2】
請求項1に記載の外科装置において、前記第1および第2の電極が、対向するほぼ平坦な係合面であって、協働して処置経路を画定する係合面を有することを特徴とする外科装置。
【請求項3】
請求項2に記載の外科装置において、前記第1および第2の電極のそれぞれの遠位端における係合面が、前記シャフト部材の遠位端の近くにある両係合面よりも互いに離れて配置されてV字形の処置経路を形成するように、前記係合面が配向されていることを特徴とする外科装置。
【請求項4】
請求項に記載の外科装置において、前記シャフト部材の遠位端から前記第1および第2の電極の遠位端において、前記第1および第2の電極が、互いに離れるよう外側に湾曲しており、前記シャフト部材の外周を越えて延在していることを特徴とする外科装置。
【請求項5】
請求項2に記載の外科装置が、さらに、前記シャフト部材内で前記吸引ルーメンと対向する側に配置された流体ルーメンを備え、前記第1の電極通路および前記第2の電極通路が、前記流体ルーメンと吸引ルーメンとの間に配置されていることを特徴とする外科装置。
【請求項6】
請求項1に記載の外科装置において、前記シャフト部材の遠位端が、さらに、前記シャフト部材の底部に沿って、後方に傾斜した部分を有することを特徴とする外科装置。
【請求項7】
請求項1に記載の外科装置において、前記ベント開口が、広い部分と収束した部分とを有しており、前記ベント開口の広い部分が、前記収束した部分よりも前記シャフト部材の遠位端に近くに配向されていることを特徴とする外科装置。
【請求項8】
請求項1に記載の外科装置において、前記スライド可能な部材が、ばね部材によって前記スリーブの遠位端の方へ付勢されていることを特徴とする外科装置。
【請求項9】
請求項1に記載の外科装置において、前記スライド可能な部材が、前記スリーブの一部を囲むスリーブとして構成されていることを特徴とする外科装置。
【請求項10】
請求項に記載の外科装置が、さらに、本体部材によって画定されたキャップ部材を備え、前記本体部材が、開口した近位端および遠位端と、内部シールマウントとを有し、前記スリーブの遠位端が前記キャップ部材内に収容されて、前記スリーブを閉じていることを特徴とする外科装置。
【請求項11】
請求項10に記載の外科装置において、前記スライド可能な部材が、前記スリーブの支持カラーと前記キャップ部材との間に配置されている。
【請求項12】
請求項1に記載の外科装置において、前記スライド可能な部材が、前記スリーブに自由に取り付けられて前記スリーブ上を浮動可能であり、前記外科装置が下向きに向けられたときに、スライド可能な部材が前記スリーブの遠位端の方に重力で付勢されて、前記ベント開口を完全に露出させることを特徴とする外科装置。
【請求項13】
請求項1に記載の外科装置が、さらに、前記スリーブ内に配置されたフラッシュチャンバを有し、前記シャフト部材が、前記フラッシュチャンバを通って延在し、当該シャフト部材を通って延在する流体ルーメンと連通する潅流開口を含み、前記フラッシュチャンバから前記シャフト部材の遠位端部に流体を送達することを特徴とする外科装置。
【請求項14】
請求項13に記載の外科装置が、前記フラッシュチャンバが、前記スリーブの近位端に配置されたハブ内に形成され、前記ハブが、さらに、前記フラッシュチャンバと連通している少なくとも1の流体開口を有することを特徴とする外科装置。
【請求項15】
請求項14に記載の外科装置が、さらに、前記ハブの近位端に配置された端部フランジを備え、当該端部フランジが、その上に配置された流体ライン保持部材を有することを特徴とする外科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それぞれ参照によりその全開示内容が本明細書に組み入れられる、2012年8月31日に出願の米国仮特許出願第61/695,411号明細書、2012年8月26日出願の米国実用特許出願第13/975,486号明細書、および2013年8月26日出願の米国実用特許出願第13/975,494号明細書の優先権を主張するものとする。
【0002】
本開示は、外科装置に関連し、詳細には、周囲組織への熱の影響を最小限にした、顕微手術適用例、例えば、脳神経外科および脊椎外科手術に適した双極性外科装置を利用する外科装置に関連する。
【背景技術】
【0003】
単極性装置は、使用される頻度によって血管の焼灼および組織の切断のために長年に亘って利用されてきた。単極性装置は、回路を完成させるためにアース経路として患者を使用することによって動作する。しかしながら、この構成は、例えば、脳組織を含む体全体をエネルギーが移動するため、特定の適用例、例えば、脳神経外科手術では有効ではない。
【0004】
双極性焼灼装置も、組織、例えば、血管を凝固および焼灼するために利用されてきた。双極性焼灼装置では、電極の2つの極間にエネルギーを局在させようとして2つの電極を利用して、隣接組織および構造へのエネルギーの送達を最小限にする。しかしながら、双極性焼灼装置の問題の1つは、適用例によって所望の凝固または組織溶着(tissue welding)を達成するために送達されるエネルギーの量を制御する能力である。電極が互いに近くに配置されればされるほど、必要なエネルギーが少なくなる。しかしながら、電極が互いに直接接触すると、エネルギーが目的の組織に送達されず、凝固/焼灼が目的の組織で起こらないため、電極を互いに直接接触させるのは望ましくない。電極が互いに離間しすぎると、凝固を達成するためにより多くのエネルギーが必要となり、側副組織が損傷する恐れがある。
【0005】
特定の適用例、例えば、脳神経外科適用例では、出血している血管の出血を緩和して、特に脳内の非常に重要な構造の周りの側副組織の損傷を防止しようとする際に、可能な限り少量のエネルギーを送達することが望ましい。しかしながら、電極が互いに一定の距離にある双極性焼灼装置の場合、所与の適用例のエネルギーの量は、目的の標的に対して多すぎることがあり、これにより望ましくない側副組織の損傷が起こり得る。
【0006】
場合によっては、電極先端部に発生する熱による炭化の集積が電極に生じる;この炭化は、電極の表面で組織が「調理された」結果である。この集積は、標的組織の凝固または焼灼を達成するためのエネルギー送達の有効性を低下させる。結果として、集積によって生じる抵抗に打ち勝って出血している血管の凝固を達成するために、より高レベルのエネルギーを電極に送達する必要がある。しかしながら、非集積領域のエネルギーレベルが高くなりすぎて、不要な周囲組織の熱損傷が起こる。さらに、導電経路が変更されて、意図しない経路に流れることがあり、同様に不要な周囲組織の熱損傷が起こる。
【0007】
側副組織に熱損傷をもたらし得る電極表面での組織の「調理」を防止するよう、電極先端部での熱集積を低減するために個々の電極に密閉冷却通路を設けることが提案された。しかしながら、従来、これらの電極は、内部に冷却通路を収容するために比較的大きいサイズを有し、従って、有効な冷却を達成するために必要なこのサイズにより、このような電極は、先端部が細い電極の設計にすることができない。実際、これらの大きいサイズにより、このような構成は、2つの理由:(1)血管を繊細に取り扱い、操作するには電極先端部の物理的なサイズが大きすぎること、および(2)手術部位では、多くの場合、処置に使用される窓がわずか数ミリメートルであり、電極先端部が手術日の可視化を妨げることから、繊細な顕微手術、例えば、通路が狭い脳神経外科手術などに適していない。
【0008】
双極性焼灼装置の使用で生じる別の問題は、「スティックション(sticktion)」と呼ばれる現象である。スティックションは、血管が凝固されて、電極が凝固/焼灼血管から除去されるときに起こり、血管の一部が電極に「接着する」。これは、多くの場合、裂傷により血管が再び開いてしまうことになり、血管の再出血が起こる。「スティックション」を軽減するために、特定の材料、例えば、銀、プラチナ、および金を電極に使用することができる。しかしながら、このような材料は、限定的な効果および最小限の恩恵しかないことが証明された。
【0009】
電極先端部の熱を低下させ、これにより組織の集積を減少させ、スティックションを軽減し、さらに側副組織の熱損傷を最小限にする1つの提案された解決策は、手術部位に外部から生理食塩水を滴下することである。しかしながら、このアプローチは、多くの場合、流体の送達のために手術現場にもう1人の人間を必要とする。加えて、最小侵襲性顕微手術では、手術用通路および続く標的が比較的小さく、従って、外部からの滴下がもう1人の人間にとって困難であり、手術現場に同時に器具および手が多すぎて手術部位での可視化が妨げられるため、凝固するべき目的の組織に対して凝固装置を使用する外科医にとって視覚的に困難である。さらに、外部滴下を行う助手にとって、電極先端部および手術部位内の必要な位置に任意の精度で流体を送達するのは困難である。
【0010】
別の既知の双極性凝固装置は、双極性鉗子であり、2つの電極の互いの距離を使用者が変更することができる。これらの装置の一部の変形では、装置の鉗子の脚を介して流体を供給することができる。鉗子の本体を通る流体の送達に対応するために、装置は比較的大きくなければならず、このため、顕微手術通路アプローチに適さなくなる。加えて、流体の送達が電極先端部の近位側であるため、むしろ、この従来技術の設計は、流体を、鉗子の各脚の本体に沿って手術部位まで流すことに依存する。顕微手術通路アプローチでは、多くの場合、進入路は、鉗子装置の脚を辿る流体を助ける平面ではない。従って、流体は、電極先端部および手術部位に同時に直接送達されるように必ずしも構成する必要がない。
【0011】
双極性装置を用いる典型的な処置で起こる別の問題は、組織の集積によって遠位先端部でのエネルギー送達が変動することである。より詳細には、電極先端部の組織の集積は、電気回路、即ち、双極性装置および取り付けられた双極性生成装置内の抵抗を変化させる。結果として、典型的な処置では、外科医は、処置が進行するにつれて双極性装置の有効性の変化を補償するよう、凝固生成装置の出力を調整する、即ち、上げるように外科助手に頻繁に指示する必要がある。処置中のある時点で、双極性装置のエネルギー送達による効果的な凝固の有効性および/または能力の低下は、もはや凝固生成装置の単純な調整では回復させることができなくなる、または外科医が、凝固生成装置に必要な連続的な調整に不満を感じることになる。この不満により、外科医は、手術野から双極性装置を除去して、手術室看護師に電極先端部を清掃してもらわなければならない。さらに、電極先端部が清掃されている間は、凝固装置が使用されている組織/血管の出血が続き、患者にリスクを与える。あるいは、追加の双極性凝固装置が利用可能な場合は、手術室看護師が、凝固生成装置に取り付けられた電気コードから双極性装置を取り外し、別の双極性装置と交換することができる。双極性装置の手術野からの取り外しおよび清掃、または別の双極性装置との交換が、処置の間ずっと繰り返される。
【0012】
しかしながら、外科医が清掃された双極性装置を手にすると、外科医は、外科助手に凝固生成装置の出力を再び調整させる、即ち、出力を下げさせなければならない。清掃された双極性装置が使用される際は、凝固生成装置の出力の「上昇および低下」と清掃のためまたは新しい双極性装置にするための双極性装置の交換との指示の順番が、全処置に亘って続けられる。このプロセスは、非効率であり、失血を増大させて患者の安全を損ない、かつ処置の期間を長くする。
【0013】
血管は、それぞれサイズが異なる。従って、目的の血管へのエネルギーの送達を最大にするためには、原因の血管に可能な限り近づいて跨るようにして側副エネルギーの散逸を最小限にすることが望ましい。しかしながら、固定された平行電極は、異なるサイズの血管に容易には対応することができず、多くの場合、血管を跨ぐため組織に食い込んでしまう(従って、側副組織を熱損傷させる)。
【0014】
現在、双極性装置も、特に同様に狭い通路の下で作業する必要がある顕微手術中に視線の問題がある。より詳細には、双極性装置が通路の下に配置されるときに、この装置の電極シャフトおよび/またはハンドルまたは使用者自身の手が視界を妨げるため、双極性装置の電極端部を、目的の領域と同時に見ることができない。顕微手術の要望に対応するためにバヨネット設計(bayonet design)が利用されているが、狭い通路の顕微手術アプローチでは効果が限られている。
【0015】
現在利用可能な双極性凝固装置(および単極性装置)の別の問題は、活発な出血部を検出して起源が未知である出血部に対処するために手術野内の視界を制御する能力である。必要とされるものは、使用者が手術野をはっきりと見て出血部の位置を特定するよう、疑わしい出血部の位置から血液を押しのけるために全領域を潅流する能力、ならびに手術野から余分な流体を吸引して領域をはっきりと見えるようにして使用者が原因の血管を凝固できるようにすると共に、血管の凝固/焼灼の最中にあらゆる側副組織の損傷を最小限にする能力を提供する単一装置である。
【0016】
本開示の例示的な実施形態を、添付の図面を参照して以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、双極性外科器具を含む外科システムを例示している。
図2図2Aは、双極性外科器具の遠位端部の第1の例示的な構成を示す図1の領域2の拡大図である。図2Bは、双極性外科器具の遠位端部の第2の例示的な構成を示す図1の領域2の拡大図である。図2Cは、双極性外科器具の遠位端部の第3の例示的な構成を示す図1の領域2の拡大図である。図2Dは、双極性外科器具の遠位端部の第4の例示的な構成を示す図1の領域2の拡大図である。図2Eは、双極性外科器具の遠位端部の第5の例示的な構成を示す図1の領域2の拡大図である。図2Fは、図2Eに示されている双極性外科器具の遠位端部の近位方向からの拡大端面図である。図2Gは、双極性外科器具の遠位端部の第5の例示的な構成を示す図1の領域2の拡大図である。図2Hは、双極性外科器具の遠位端部の第6の例示的な構成を示す図1の領域2の拡大図である。図2Iは、図2Hに例示されている双極性外科器具の遠位端部の例示的な構成の拡大側断面図である。図2Jは、図2Hに例示されている双極性外科器具の遠位端部の例示的な構成の拡大側図である。図2Kは、図2Hに例示されている双極性外科器具の遠位端部の例示的な構成の上面図である。図2Lは、双極性外科器具の遠位端部の例示的な構成の上面図である。図2Mは、図2Lに示されている構成の側面図である。図2Nは、やや変更された図2Kおよび図2Lに示されている構成の斜視図である。
図3図3Aは、図1の双極性外科器具のシャフト部材の例示的な構成である。図3Bは、図1の双極性外科器具のシャフト部材の代替の例示的な構成である。
図4図4Aは、図1の双極性外科器具のシャフト部材の第3の代替の例示的な構成である。図4Bは、図1の双極性外科器具のシャフト部材の第4の代替の例示的な構成である。
図5図5は、双極性外科器具の部分分解組立分解図である。
図6図6は、図5の双極性外科器具の断面図である。
図7図7Aは、図5の双極性外科器具の近位端部を示す図6の領域7Aの拡大図である。図7Bは、図5の双極性外科器具の近位端部の拡大側面斜視図である。
図8図8は、図1の極性外科器具のベント機構を示す図1の領域8の拡大図である。
図9図9Aは、双極性器具の代替の構成の組立分解図である。図9Bは、図9Aの双極性器具のシャフト部材の近位端面図である。
図10図10Aは、図9Aの双極性器具の水平断面図である。図10Bは、図9Aの双極性器具の近位端部の拡大斜視断面図である。
図11図11は、図9Aの双極性器具の遠位端部の斜視図である。
図12図12は、図9Aの双極性器具のスリーブの近位端部の斜視図である。
図13図13は、ベント開口および流体接続が代替の向きである図9Aの組み立てられた双極性器具の斜視図である。
図14図14Aは、双極性器具が流体システムに作動的に接続された外科システムの斜視図である。図14Bは、図14Aの円で囲まれた領域14Bの拡大図である。
図15図15Aは、カニューレの長さおよび構成を例示する双極性器具の立面図である。図15Bは、別のカニューレの長さおよび構成を例示する双極性器具の立面図である。図15Cは、さらに別のカニューレの長さおよび構成を例示する双極性器具の立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、以下の説明および添付の図面を参照して、開示される器具および方法の例示的なアプローチを詳細に示す。図面は、一部の可能なアプローチを示しているが、これらの図面は、必ずしも正確な縮尺でなくても良く、特定の特徴は、本開示をより良く例示し説明するために誇張する、排除する、または部分的に分割することもできる。さらに、本明細書に記載される説明は、全てを網羅することを意図するものでも、図面に示され以下の詳細な説明で開示される正確な形態および構成に特許請求の範囲を限定または制限するものでもない。
【0019】
本明細書の説明は、吸引用に構成された双極性凝固外科器具である。加えて、双極性凝固外科器具の一実施形態は、手術野への流体の送達も行う。
【0020】
この外科器具は、既存の真空源に流体接続された真空システムのホースを備え得る既存の真空供給源に接続するように構成することができる。真空供給源は、所定レベルの真空を外科器具の遠位端部に供給することができる。外科器具は、手術中の手術野を含め、遠位端部に供給される真空のレベルを選択的に制御するように構成された吸引制御装置を備えるように構成することができる。
【0021】
図1を参照すると、双極性外科器具10が例示されている。外科器具10は、ハンドピース12、このハンドピース12から遠位側に延びたシャフト部材14、および図2A図2Nに最も良く示されている電極16、116、216、316、416、516、616、674を備えている。吸引ライン18、流体送達ライン20、および焼灼実施ケーブル22が、ハンドピース12に作動的に接続されている。シリンジ24によって例示されている第2の流体供給源も、ハンドピース12に作動的に接続することができる。
【0022】
シャフト部材14は、使用者が選択的に可鍛化可能であるように適切な外科用材料から構成することができる。より詳細には、使用者は、選択的にカスタマイズ可能な外科器具10のためにシャフト部材14を選択的に曲げることもできる。しかしながら、シャフト部材14の材料は、使用者がシャフト部材14を所望の構造に曲げた後にその形状を維持する十分な強度も有していなければならない。適切な外科用材料の例として、限定されるものではないが、ステンレス鋼が挙げられる。
【0023】
ベント開口26は、ハンドピース12の一部に形成することができる。例示的な一実施形態では、ベント開口26は、涙滴形に構成されている。吸引圧力制御弁28は、以下にさらに詳細に説明されるように、シャフト部材14を介して送達される吸引圧力を選択的に変更するためにハンドピース12に作動的に接続することができる。例示的な一実施形態では、吸引圧力制御弁28は、ハンドピース12の一部の周囲に延在するスライド可能なスリーブ32として構成される。しかしながら、吸引圧力制御弁28の他の構成も考えられることを理解されたい。より詳細には、吸引圧力制御弁28が、ベント開口26を覆ってシャフト部材14の遠位端部34に十分な吸引圧力を供給するサイズであれば、任意の構成の吸引圧力制御弁28を利用することができる。スライド可能なスリーブ32の外面は、使用者による摩擦接触を実現するグリップ部材(不図示)を用いて構成することができる。同様に、ハンドピース12の外面も、ハンドピース12の把持を容易にするグリップ部材30を用いて構成することができる。
【0024】
図2A図2Nを参照して、様々な例示的な構成の電極16、116、216、316、416、516、616、および674、ならびにシャフト部材14、514、614、および672について説明する。図2Aは、シャフト部材14の遠位端部34を例示している。この図から分かるように、シャフト部材14は、吸引ルーメン36、およびこのシャフト部材14を貫通して延在し、かつ遠位端部34で開口している流体ルーメン38を備える。電極16は、電極通路40(例えば、図3Bに最も良く示されている)内に密閉され、かつシャフト部材14の遠位端部34から遠位側に延びた接続端部41を備える。図2Aに示されている実施形態では、電極16の接続端部41は、電極通路40内に密閉されている。
【0025】
電極16はそれぞれ、その内部に配置された潅流チューブ42を備え、この潅流チューブ42は、その内部に潅流ルーメン44を画定し、この潅流ルーメン44は、各電極16の遠位先端部46で開口している。潅流ルーメン44は、流体、例えば、生理食塩水を設定流量で送達するように設計されている。より詳細には、潅流ルーメン44の直径は、設定流量で流体を送達するのに適したサイズにすることができる。潅流ルーメン44は、ハンドピース12内の流体送達ライン20に作動的に接続されている。流体送達ライン20は、流体供給源、例えば、生理食塩水に作動的に接続されている。
【0026】
電極16は、互いに離間してこれらの間に処置経路48を形成し、この処置経路48は、吸引ルーメン36から離れる方向に曲がっている。電極16の角度は、遠位先端部46がシャフト部材14の周辺から径方向外向きに延びているため、外科器具10の使用中に視認性を高める役割を果たす。より詳細には、特に顕微手術通路アプローチでは、手術部位での使用者の可視化も改善するために、遠位先端部46は、「つま先上がり(up toe)」構成ではシャフト部材14とは異なる平面にあり、従って、たとえ狭い通路でも、使用者が手術野での作業中に遠位先端部46を見ることができる。曲がった電極16により、使用者が、凝固されるべき組織または血管の表面に平行に電極を配置することもできる。遠位先端部46の視認性が改善されるため、この構成は、組織へのアクセスのしやすさを改善し、使用者が、血管または組織の凝固のために所望の血管を跨ぐように配置することができる。また、使用者が、電極16間の最適な固定距離を維持することができる。
【0027】
吸引ルーメン36は、体液、ならびに遠位先端部46の潅流ルーメン44から出る流体および/または送達ルーメン38から出る流体および物質を吸引して、手術野がはっきり見えるようにする役割を果たす。任意選択の流体ルーメン38は、シリンジ24に作動的に接続することができ、かつ手術野への流体、例えば、生理食塩水または他の流体などの選択的な供給を可能にする。任意選択の流体ルーメン38を設けることにより、使用者は、外科手術中のある時期に流体の送達を制御して、例えば、手術野を選択的にフラッシュする機会が得られる。任意選択の流体ルーメン38は、電極の接続端部41が吸引ルーメン36と流体ルーメン38との間に配置されるように、吸引ルーメン36とは反対側の遠位端部34の部分に配設されている。この構成は、流体ルーメン38から送達される流体が、吸引ルーメン36に即座に吸引されるのを防止する。
【0028】
潅流ルーメン44および任意選択の流体ルーメン38を介した流体送達は、制御された湿潤領域での凝固を可能にする。さらに、潅流ルーメン44からの流体は、電極16間および処置経路48における導体としても機能すると共に、焼灼中に電極16間で発生するあらゆる熱を低減して隣接組織の側副焼けを最小限にする。さらに、遠位先端部46の炭化の集積は、電極16に供給される潅流によって最小限になる。
【0029】
シャフト部材14の遠位端部34の代替の構成が図2Bに例示されている。図2Bのシャフト部材14は、図2Aに示されているシャフト部材と同様に構造にすることができる。電極116は、この電極116が電極通路40内に密閉された接続端部141を備え、かつ遠位先端部146が吸引ルーメン36から離れる方向に曲がっているという点で図2Aの実施形態に示されている電極に類似している。しかしながら、遠位先端部146は、端部キャップ142で閉じられている。さらに、1つ以上の潅流開口144が、電極116内に形成されている。例示的な一構成では、電極116は、複数の潅流開口144を備える。潅流開口144は、電極116内に形成された内部ルーメンに連通している。潅流開口144は、電極116を介して所望の流量の流体を送達するように所定のサイズの直径を有するように構成することもできる。例示的な一構成では、潅流開口144は、流体が送達時に吸引ルーメン38に即座に吸引されないように吸引ルーメン38から離れる方向を向いている。
【0030】
図2Cを参照すると、シャフト部材14の遠位端部34のさらなる代替の構成が示されている。図2Cのシャフト部材14は、図2A図2Bに示されているシャフト部材と同様に構成することができる。電極216は、電極通路240内に配設された接続端部241を備える。電極216は、内部ルーメンを有するのではなく中実部材として構成されているという点で電極16および116とは異なる。電極の遠位端部246は、遠位先端部46、146と同様に、吸引ルーメン36から離れる方向に曲がっている。
【0031】
電極通路240は、電極216の外面と電極通路240の内面243(図3Bに最も良く示されている)との間に間隙が形成されるように電極216の直径よりも僅かに大きい直径を有するように構成されている。この間隙が、電極216に隣接した、手術野に流体を供給する潅流環として機能する。電極通路240のサイズは、自動制御および所定の流量が達成されるように選択される。任意選択の流体ルーメン38が、電極通路240および反対側の吸引ルーメン36から径方向外側に配設されている。
【0032】
シャフト部材14の遠位端部34の別の実施形態が図2Dに示されている。図2Dのシャフト部材14は、図2A図2Cに示されているシャフト部材と概ね同様に構成することができる。電極316は、図2A図2Bに示されている電極と同様に、電極通路40内に密閉された接続端部341を備える。電極316はまた、この電極316が、内部ルーメンを有するのではなく中実部材として構成されているという点で図2Cに示されている構成と同様に構成されている。電極316の遠位先端部346は、遠位先端部46、146、および246と同様に吸引ルーメン36から離れる方向に曲がっている。
【0033】
流体ルーメン38によって潅流が行われる。図2Dに示されている構成では、外科器具10が流体を供給するのが望ましい場合は、流体ルーメン38を必要とする。一構成では、流体ルーメン38は、所望の流量で自動制御されるように所定の直径を有するように選択することができる。
【0034】
シャフト部材14の遠位端部34のさらなる代替の構成が図2E図2Fに示されている。図2Eのシャフト部材14は、図2A図2Dに示されているシャフト部材と概ね同様となるように構成することができる。電極416は、図2A図2Bに示されている電極と同様に、電極通路40内に密閉された接続端部441を備える。電極416はまた、この電極416が、内部ルーメンを有するのではなく中実部材として構成されているという点で図2Cに示されている構成と同様に構成することができる。しかしながら、電極416は、代替として、内部ルーメン、例えば、図2A図2Bに示されている内部ルーメンを有するように構成することができ、かつ図2Aと同様に遠位先端部446に配置された、または図2Bに示されているように電極の長さに沿って配置された潅流ルーメンを備えることができることを理解されたい。電極の遠位先端部446は、遠位先端部46、146、246、346と同様に吸引ルーメン36から離れる方向に曲がっている。さらに、この例示的な構成では、電極416の遠位先端部446はまた、図2Fに最も良く示されているように離れる方向に広がっている。この構成は、電極416の平行な構成によって形成された第1の処置経路部分448aを有する処置経路448を画定する。第2の処置経路部分448bが、第1の処置経路部分448aから外側に広がり、互いに離れるように曲がった電極416によって画定されている。この構成により、焼灼が行われている間の血管450(点線で示されている)の圧縮が可能である。
【0035】
流体ルーメン38によって潅流が行われる。図2Dに示されている構成では、外科器具10が流体を供給するのが望ましい場合は、流体ルーメン38を必要とする。一構成では、流体ルーメン38は、所望の流量で自動制御されるよう、所定の直径を有するように選択しても良いし、または外部の制御された供給源で制御しても良い。
【0036】
シャフト部材514の遠位端部534のさらなる代替の構成が図2Gに示されている。遠位端部534は、吸引ルーメン536、流体ルーメン538、および電極通路540を備えるように構成されている。電極516は、電極通路540内に配設されている。
【0037】
吸引ルーメン536は、電極通路540の下に位置している。吸引ルーメン536は、底壁部分543およびランド領域545の底面552によって画定されている。図2Gから最も良く分かるように、吸引ルーメン536の底壁部分543は、後方に斜めに切断することができる。この構成は、外科装置10の凝固機能の併用中に吸引ルーメン536が閉塞するのを防止する。
【0038】
流体ルーメン538は、電極通路540の上に形成されている。流体ルーメン538は、上壁部分553およびランド領域545の上面554によって画定されている。流体ルーメン538の上壁部分533も、後方に斜めに切断することができる。この構成は、使用者の視野を広げ、使用中の電極516の遠位先端部546の良好な可視化を可能にする。流体ルーメン538は、手術野への流体の選択的な送達を可能にし、これにより、同軸配置として説明される場合も多い、インラインの向き(in-line orientation)で、使用者が追加で必要な全ての流体を手術部位へ送達する能力を高め、この能力を効果的に管理することができる。このような流体の例として、限定されるものではないが、生理食塩水のフラッシュまたは適切な止血剤の送達が挙げられる。しかしながら、流体ルーメン538は、任意選択であり、排除できることを理解されたい。
【0039】
電極通路540は、ランド領域545内に形成されている。例示的な一構成では、電極通路540はそれぞれ、潅流環を形成するように、図2Cに例示されている構造と同様に、電極516の接続端部541の直径よりも大きい直径を有するサイズである。上述のように、電極通路540を介した流体の送達では、流体、例えば、生理食塩水が、エネルギーが供給されている電極516および組織の正確な冷却のために電極516に送達される。この構成は、従来技術の装置で使用される高いエネルギーレベルとは対照的に、凝固を達成するために組織に送達する必要がある低いエネルギーレベルを発生させる。例えば、従来の双極性装置は、必要な凝固効果を達成するために生成装置で設定される25~35単位を使用する。現在の構成は、例えば、約10単位の非常に低い設定を使用することができ、これによりエネルギーの測定が大幅に改善され、組織に送達されるエネルギーによる側副組織の影響が最小限になる。さらに、この構成はまた、エネルギー場の従来の周辺エネルギーの分散を低減する(場合によっては、実質的に解消する)。低いエネルギーの使用とは、側副組織の影響が小さいことを意味する。例えば、神経外科手術を含む特定の外科処置では、エネルギーによる側副への影響を最小限することは、影響を受ける組織の機能を保護する上で非常に重要である。
【0040】
あるいは、電極516は、図2A図2Bおよび図2D図2Eに例示されている構成と同様に、電極通路内に密閉して、これにより潅流環540を排除することができる。このような一構成では、電極516は、図2Aに示されている電極と同様に、潅流ルーメンを備えるように構成することができる。あるいは、流体ルーメン538を介して潅流を行うことができる。
【0041】
電極516も、遠位先端部546を備える。図2Gに例示されている実施形態では、遠位先端部546は、円錐型の外形を形成するように、この遠位先端部546の遠位端部に向かって先細に構成されている。この構成は、可視化を改善すると共に、狭い外科通路内での作業中に電極516の所望の向きを可能にする。さらに、この構成は、非外傷先端部を形成し、これにより使用中に組織または血管を誤って切断する、または刺してしまうリスクが最小限になる。
【0042】
電極516は、接続端部541が互いに平行に配置され、これにより処置経路488aと同様の処置経路が形成されるように配置される。しかしながら、図2E図2Fに例示されている構成と同様に、遠位先端部546は、互いに離れる方向を向くように広がり、これにより処置経路にV字型部分548bが形成される。この構成および向きにより、電極516が血管を跨ぐことができ、これにより周囲組織ではなく、凝固されるべき血管に電極516のエネルギーが集束し、送達される。電極の接続端部541での湾曲により、電極516を、所望に応じて、凝固されるべき血管に平行に配置することができ、これにより、電極516が下側の組織基質に「食い込むこと」によって引き起こされる損傷が最小限になる。
【0043】
図2H図2Kを参照すると、シャフト部材614の遠位端部634のさらなる実施形態が例示されている。シャフト部材614の遠位端部634は、この遠位端部634が、吸引ルーメン636、流体ルーメン638、および図2Gに示されている電極通路と同様の構成を有する電極通路640を備えるという点でシャフト部材514の遠位端部534に類似している。また電極616は、電極516と同様の構成を有し、かつ電極通路640内に配設されている。
【0044】
例えば、吸引ルーメン636は、電極通路640の下に形成されている。吸引ルーメン636は、底壁部分643およびランド領域645の底面652によって画定されている。図2Hおよび図2Iから分かるように、吸引ルーメン636の底壁部分643は、後方に斜めに切断することができる。アンダーカット658が、底壁部分643に連通している。アンダーカット658は、斜めに切断された底壁部分643と協働して吸引ルーメン636が使用中に閉塞するのを防止する。
【0045】
図2L図2Mを参照すると、シャフト部材672の遠位端部670のさらなる代替の構成が示されている。図2Mのシャフト部材672は、遠位端部670が、図2Iに示されている吸引ルーメンと同様の吸引ルーメン、図2Iに示されている流体ルーメンと概ね同様に構成された流体ルーメン、および図2Hに示されている電極通路と同様の構造を有する電極通路を備えるように構成されているという点で、図2H図2Jに示されているシャフト部材と概ね同様に構成することができる。電極674は、図2Hに示されている方式と同様の方式で電極通路内に配設されている。
【0046】
しかしながら、図2L図2Mに示されている構成では、電極674は、協働して処置経路680を画定する概ね対向した係合面676を備えるように構成されている。係合面676は、概ね平面に形成することができる。図2Lに最も良く示されている例示的な一構成では、係合面676は、先端部材678における係合面676が、シャフト部材672のランド領域678に隣接した係合面676よりも互いに対して離れて位置して、概ねV字型の処置経路680が形成されるように向いている。この構成により、電極674が血管を跨ぐことができ、これにより、周囲組織ではなく、凝固するべき血管に電極516のエネルギーが集束し、送達される。さらに、V字型処置経路680はまた、図2Lに点線で示されている異なるサイズの血管を収容するように機能する。例示的な一構成では、先端部材678における係合面676間の距離は、約0.07インチであり、ランド部材678に隣接した係合面676間の距離は、約0.01インチである。
【0047】
図2Mに例示されているように、電極674は、682で湾曲したように構成されている。この構成により、電極674を、所望に応じて、凝固されるべき血管に平行に配置することができ、これにより、電極674が下側の組織基質に「食い込むこと」によって引き起こされる損傷のリスクが最小限になる。
【0048】
上記説明されたように、吸引ルーメンは、電極674が配設される電極通路の下に形成することができる。矢印Aによって示されている吸引は、電極674の下の吸引ルーメンの中に誘導される。吸引ルーメンは、図2Gまたは図2Hに示されているように構成することができ、吸引ルーメンを画定する底壁部分は、斜めに切断することができる。図示されていないが、アンダーカットを設けても良い。
【0049】
図2Hに示されている流体ルーメンと同様の流体ルーメンを設けることもできる。流体ルーメンを画定する上壁部分を斜めに切断することができる。この構成は、使用者の視野を広げ、使用中の電極674の遠位先端部678の良好な可視化を可能にする。この流体ルーメンは、矢印F(図2Mに示されている)によって示されている流体の手術野への選択的な送達を可能にし、これにより、使用者が、追加で必要な全ての流体をインラインの向きで手術部位へ送達する能力を高め、この能力を効果的に管理することができる。同軸構成として共通の平面で潅流、吸引、および凝固を同時に行うことができ、これにより、潅流通路が電極の上にあり、吸引通路が電極の下にあるため、使用者が、電極と同じ平面にある潅流通路から出る潅流の「フラッシュ作用」で手術野を十分に潅流することができ、外科医が、手術野から吸引される流体の量を正確に制御して、実際に出血している血管の源となる部分の視野をはっきりさせることができる。これにより、外科医が、原因の血管を探す際の側副組織に対する盲目的なめり込み、探査、および焼灼により側副組織に損傷を与えることなく、正確かつ厳密に原因の血管を凝固させることができる。
【0050】
ここで図2Nを参照すると、ハンドピース672の遠位端部684のさらなる例示的な構成が例示されている。図2Nの構成は、ランド領域679’が僅かに変更されている点を除き、図2Lおよび図2Mの構成と概ね同様である。従って、同一の要素には、図2L図2Mに示されている構成と同一の参照符号が付されている。
【0051】
ランド領域679’は、流体Fがハンドピース672’の遠位端部684から出るように構成されている流体ルーメンと、A流体を手術部位から吸引するように構成されている吸引ルーメンとの間に配置されている。電極通路686がランド領域679’内に形成され、この電極通路686から電極678が延出している。電極通路686は、前の代替の構成、例えば、図2G図2Hなどの構成に関連して上述されたように、この電極通路686を介して流体を送達できるように電極678の直径よりも大きいサイズである。ランド領域679’は、ハンドピース672’の遠位端部684からさらに延出し、これにより視認性を高めているという点でランド領域679とはさらに異なる。加えて、前面688は、上縁690から下縁692に向かって遠位側に延びるように曲げることができる。図2Nから分かるように、下縁692は、上縁690の遠位側に位置している。
【0052】
ハンドピース672’は、ハンドピース672と同様に構成することができる。あるいは、上壁部分653’および下壁部分642’は、ハンドピース672’の遠位端部684の周囲に僅かな斜面を有するだけでも良い。
【0053】
図3A図3Bを参照すると、シャフト部材の遠位端部の例示的な代替の選択肢が例示されている。より詳細には、図3Aに例示されているように、シャフト部材714の遠位端部734が例示されている。遠位端部734は、概ね平面の端面733を備えるように構成することができる。電極開口40および吸引ルーメン36が、端面733から近位側に延びている。流体ルーメン38も、端面733から近位側に延びている。図3Aに例示されている構成では、流体ルーメン38は、吸引ルーメン36の上に位置し、かつ電極開口40の下でこれらの間に位置する。吸引ルーメン36は、流体ルーメン38の周りに合わせて形成されている。シャフト部材714の外形を減少させて、電極(不図示)の視認性を高めるために、電極開口40の上に位置するシャフト部材714の部分を除去して概ね平面の表面175を形成することができる。
【0054】
図3Bは、シャフト部材814の遠位端部834の別の代替の構成を例示している。この構成では、遠位端部834は、概ね平面の端面833を有するように構成することができる。電極開口40および吸引ルーメン36が、端面733から近位側に延びている。流体ルーメン38も、端面733から近位側に延びており、図2A図2Eに示されている構成と同様に、電極開口40の上、かつこれらの間に位置している。シャフト部材814の外形を減少させて、遠位端部834の視認性を高めるために、シャフト部材814の上面815が、流体ルーメン38の周りに合わせて形成されている。
【0055】
図4Aは、電極516が取り外されたシャフト部材514の遠位端部534の構成を例示している。この図から分かるように、流体ルーメン538は、ランド領域545によって吸引ルーメン536から分離されている。ランド領域545は、電極通路540の周りに合わせて形成されて、サイド通路547a、547bを画定している。サイド通路547a、547bは、電極516の上および電極516に沿った流体の誘導を可能にする。
【0056】
図4Bは、電極616が取り外されたシャフト部材614の遠位端部634の構成を例示している。流体ルーメン638は、図4Aに示されている流体ルーメンと同様に、ランド領域645によって吸引ルーメン636から分離されている。ランド領域645は、電極通路640の周りに合わせて形成されて、サイド通路647a、647bを画定している。サイド通路647a、647bは、電極616の上および電極616に沿った流体の誘導を可能にする。
【0057】
図5は、外科器具10の組立分解図を例示している。図6図7Bは、外科器具10の断面図を例示している。図5を参照すると、外科器具10は、シャフト部材14、キャップ部材60、内部スリーブ62、外部スリーブ64、制御弁28、および電極16(1つだけ図5に示されている)を備える。シャフト部材14は、遠位端部34および近位端部58によって画定されている。潅流開口65が、以下にさらに詳細に説明されるように、シャフト部材14の一部を貫通して形成されている。潅流開口65は、流体供給源と協働するように構成されている。真空リリーフ開口66(図7Bに最も良く示されている)も、シャフト部材14の一部を貫通して形成されている。真空リリーフ開口66は、以下に説明されるように、真空チャンバ82と連通するように構成されている。
【0058】
図6に最も良く示されているキャップ部材60は、開口した近位端部68を有する本体部材67、およびキャップ部材60の遠位端面71から延びたシャフト補強部材70によって画定されている。内部シールマウント72が、遠位端面71から内側に延びている。受容溝74(図8に最も良く示されている)が、近位端部68の近位縁75に形成されている。受容溝74は、さらに詳細に以下に説明されるように、制御弁28のスライド可能なスリーブ32を摩擦保持するように構成されている。
【0059】
内部スリーブ62は、遠位端部76および近位端部77によって画定されている。密閉カラー78が、遠位端部76で内部スリーブ62に固定接続されている。図6に最も良く示されているように、密閉カラー78は、キャップ部材60の内部シールマウント72と協働して、密閉部材79および80(一方のみが図5に示されている)を固定する。密閉部材79は、密閉カラー78と内部シールマウント72との間に配設されている。密閉部材80は、内部シールマウント72とシャフト部材14との間に配設されている。
【0060】
内部スリーブ62は、ベント開口26をさらに備える。以下にさらに詳細に説明されるように、ベント開口26は、スライド可能なスリーブ32と協働してベント開口26を選択的に覆ったり露出させたりして、吸引ルーメン36を介して伝達される吸引レベルを変更する。図6に最も良く示されているように、ベント開口26は、シャフト部材14に形成された真空リリーフ開口66(図7Bに最も良く示されている)に連通した真空チャンバ82と連通している。
【0061】
内部スリーブ62の近位端部77は、外科器具10に流体を導入するための開口84を備える。より詳細には、流体コネクタ85(図6および図7Bに最も良く示されている)が、開口84と協働してシャフト部材14を介して流体を送達するように構成されている。
【0062】
密閉溝86が、外部スリーブ62の外面に形成されている。密閉溝86は、密閉部材87を受容するように構成されている。密閉部材87は、外部スリーブ62と外部スリーブ64との間にシールを形成するように機能する。電極開口88は、内部スリーブの近位端部77を貫通して形成されている。電極開口88により、図6図7Bから分かるように、電極16の接続端部を接続ポート90に接続することができる。近位チャンバ91が、内部スリーブ62の近位端部77に形成されている。径方向内側に延びたリブ92が、近位チャンバ91と真空チャンバ82とを分離している。
【0063】
外科器具10は、内部スリーブ62の近位チャンバ91内に配置された内部取り付け部材94をさらに備える(図6から分かる)。内部取り付け部材94は、第1および第2の密閉溝95、96を有する本体部材97、ならびにスリット99が形成された遠位スリーブ98を備える。電極開口100が、内部取り付け部材94の近位端部に形成されている。電極開口100は、電極開口88に整合して電極16の経路を形成する。密閉部材101および102はそれぞれ、密閉溝96および95内に受容され、内部取り付け部材94と内部スリーブ62との間にシールを形成して、潅流ルーメン44、144、240、540、および640を含む、電極216の周りに配設される、または電極216を貫通する潅流ルーメンのための密閉流体経路を画定する。追加の密閉部材103が、リブ92と内部取り付け部材94の遠位端部との間に配設されている。密閉部材103は、密閉部材102と協働して、流体ルーメン38に連通した流体経路を画定する。
【0064】
外部スリーブ64は、遠位端部104および近位端部105によって画定されている。外部スリーブ64は、グリップ表面を形成するように加工表面を備えることができる。外部スリーブ64の内側部分は、内部スリーブ62の戻り止め(不図示)に係合して外部スリーブ64を内部スリーブ62に固定する受容溝106を備えることができる。外部スリーブ64の近位端部105は、吸引マウント107および電極接続マウント108を備える。
【0065】
吸引マウント107は、内部にチャンバ109を画定している。可撓性ワッシャ110が内部に収容されている。吸引マウント107は、吸引接続マウント111を受容するように構成されている。吸引接続マウント111は、その遠位端部113と近位端部114との間に配置されたフランジ部材112を備える。吸引通路115が、吸引接続マウントを貫通して延在する。吸引接続マウント111の遠位端部114は、チャンバ109を貫通して延在し、かつ吸引マウント107内で選択的に回転するように構成されている。キャップ部材124が、チャンバ109を閉じている。この回転は、使用中に外科医が疲労するのを防止する役割を果たす。より詳細には、作業している外科医の手を困難な位置で回転させて吸引ラインを移動させなくても、吸引接続マウント111に作動的に接続された吸引ラインの重量により、処置中に吸引接続マウント111が回転して自動的に外科医の邪魔にならなくなる。真空グリース(不図示)を、フランジ部材112とチャンバ109内の可撓性ワッシャ110との間に配置して回転を容易にすることができる。吸引マウント107内に取り付けられると、吸引通路115が、内部取り付け部材64に形成された吸引経路116と連通する。
【0066】
吸引経路116は、吸引源から吸引マウント107を介して送達される吸引がシャフト部材14の吸引ルーメン36に連通するようにシャフト部材14を受容する。流体の送達を吸引と分離するために、領域117および118が、開口84の1つに連通した流体チャンバ119の両側の接着剤(不図示)で満たされている。電極ルーメン120(1つが図7Bに示されている)が、シャフト部材14内に取り付けられて、電極16を収容する電極通路40を画定する。流体が電極通路40(例えば、図2C図2G図2I)を介して送達される実施形態では、電極ルーメン120はそれぞれ、潅流開口121を備え、この潅流開口121は、潅流開口65から電極通路40への連通を実現して電極16の周りへの潅流の送達を可能にする。
【0067】
第2の潅流チャンバ122が、内部取り付け部材94の外部遠位面と密閉部材103との間に設けられている。潅流チャンバ122は、内部スリーブ62を介して開口84の1つと連通し、かつ潅流開口65と吸引開口66との間の、シャフト部材14内に形成された開口123と連通している。開口123は、流体ルーメン38と連通し、かつ流体ルーメン38を通る流体の流量を制御するサイズにすることができる。
【0068】
接続ポート90は、電極接続マウント108内に受容される。接続ポート90は、電極16にエネルギーを供給する電源を受容するように構成されている。電極16の近位端部は、エネルギーの供給を容易にするために接続ポート90内に受容されている。
【0069】
流体コネクタ85は、図6に最も良く示されているように、接続端部125、潅流チューブ126、および流体チューブ128を備える。潅流チューブ126は、一方の開口84内に受容されるように構成され、流体チューブ128は、他方の開口84内に受容されるように構成されている。接続端部125は、潅流ライン20およびシリンジ24に接続されたチューブを受容するように構成されている。潅流ライン20からの流体は、潅流ルーメン40を介して送達され、シリンジ24からの流体は、流体ルーメン38を介して送達される。
【0070】
図8を参照すると、制御弁28が例示されており、以下に説明される。制御弁28は、ベント開口26およびスライド可能なスリーブ32を備える。ベント開口26は、真空チャンバ82と連通している。例示的な一構成では、ベント開口26は、涙滴形に構成され、ベント開口26全体が覆われると最大の真空を伝達することができる。しかしながら、スライド可能なスリーブ32は、吸引ルーメン36を介して伝達される吸引を迅速に変更するために、選択的に移動してベント開口26を覆う、または露出させるように構成されている。より詳細には、図8に示されている構成では、最大に吸引することが望ましい場合は、スライド可能なスリーブ32が遠位側に移動してベント開口26を完全に覆う。スリーブ32が涙滴形の最も広い部分(即ち、底部)を超えて前進すると、一定程度の真空が迅速に伝達される。スライド可能なスリーブ32が、涙滴形の先端部(即ち、上部)に近づくと、相当な真空を加えることができる。
【0071】
上記説明されたように、スライド可能なスリーブ32は、受容溝74に摩擦係合してスライド可能なスリーブ32をカラー67に固定するように構成された内部リブ部材(不図示)を備えることができる。吸引圧力を低下させることが望ましい場合は、スライド可能なスリーブ32を近位方向に移動させてベント開口26を少なくとも部分的に露出させ、これにより真空チャンバ82をベントする。スライド可能なスリーブ32が移動して、ベント開口26が完全に露出されると、吸引が吸引ルーメン36に全く伝達されない。この構成は、使用中に使用者が組織を迅速に解放することができ、かつ必要に応じて吸引を弱めることができるという点で有利である。スライド可能なスリーブ32は、そのハンドピース12における位置により、装置を把持している使用者がどの向きからも片手で操作するのが容易であり、使用の容易さも改善される。
【0072】
例示的な一構成では、ベント開口26は涙滴形を有する。この形状により、スライド可能なスリーブ32が近位側に移動するときに制御下で吸引を弱めることができる。しかしながら、ベント開口26の他の形状も利用できることを理解されたい。また、スライド可能なスリーブおよびベント開口の操作の他の構成も利用できると考えられる。さらなる例が、以下に説明される。
【0073】
外科装置200の代替の構成が、図9図12に示されている。図9Aは、外科装置200の組立分解図を例示している。図10Aは、外科装置200の断面図を例示している。外科装置200の遠位先端部は、図2Gに示されている構成に類似しているが、電極の間隔または電極先端部の特定の構成を含むがこれらに限定されない、図2A図2Nに例示されているどの遠位先端部の構成も利用できることを理解されたい。
【0074】
外科装置200は、シャフト部材214、キャップ部材260、スリーブ262、制御弁228、電極216を備える。任意選択の補強部材215も備えることができる。シャフト部材214は、遠位端部234および近位端部258によって画定されている。任意選択の外部スリーブ264も備えることができる。以下にさらに詳細に説明されるように、潅流開口265が、シャフト部材214の一部を貫通して形成されている。潅流開口265は、流体供給源と協働するように構成されている。フラッシュ開口266が、同様にシャフト部材214の一部を貫通して形成され、かつ同様に流体供給源に連通するように構成されている。真空リリーフ開口269(図10Bに最も良く示されている)も同様に、シャフト部材214の一部を貫通して形成されている。真空リリーフ開口269は、図6に示されている構成と同様に、真空チャンバ282(図10A図10B)と連通するように構成されている。
【0075】
図10Aに最も良く示されているキャップ部材260は、開口した近位端部268および遠位端面271を有する本体部材267によって画定されている。内部シールマウント272が、遠位端面271から内側に延びている。
【0076】
スリーブ262は、遠位端部276および近位端部277によって画定されている。例示的な一構成では、第1および第2の支持カラー278a、278bをスリーブ262に固定接続することができる。図10Aに最も良く示されているように、支持カラー278a、278bは、これらの間に取り付けられる外部スリーブ264と協働する。あるいは、第1および第2の支持カラー278a、278bを排除して、外部スリーブ264を、スリーブ262にオーバーモールドすることができる。外部スリーブ264は、本質的に人間工学的にすることができ、その外面にグリップ要素を備える。例示的な一構成では、スリーブ262の遠位端部276は、密閉溝279をさらに備えることができる。密閉溝279は、内部シールマウント272および遠位端面271と協働して、密閉部材280を受容する密閉チャンバを画定する。代替の一構成では、密閉溝が設けられず、密閉部材280が、キャップ部材260が取り付けられた遠位壁面281に支持される。
【0077】
スリーブ262は、ベント開口226をさらに備える。以下にさらに詳細に説明されるように、ベント開口226は、スライド可能なスリーブ232と協働して制御弁228を画定している。スライド可能なスリーブ232は、ベント開口226を選択的に覆ったり露出させたりして、吸引ルーメン36を介して伝達される吸引レベルを変更するように構成されている(例えば、図9Bおよび図11に示されている)。さらに、スリーブ262は、外科処置の必要性によって決まる任意の人間工学的に快適な位置および向きで外科装置を使用者が把持することができ、なお外科医が、何度でも正確に吸引の制御を維持できるように構成されている。ベント開口226は、シャフト部材214に形成された真空リリーフ開口269(図10Bに最も良く示されている)に連通した真空チャンバ282と連通している。例示的な一構成では、ベント開口226は、より効果的にベントを制御できるように涙滴形(図9Aを参照)を有する。
【0078】
例示的な一構成では、ベント開口226の涙滴形は、ベント開口226の最も広い部分がスリーブ262の近位端部277に向くように配置されている。この構成では、スライド可能なスリーブ232は、図10Aに点線で示されているように、ばね部材283によって近位端部277に向かって付勢することができる。この構成では、スライド可能なスリーブ232が、近位端部277に向かって付勢されているため、外科装置200の動作は、真空を伝達しないように付勢されている。しかしながら、スライド可能なスリーブおよびベント開口の相互作用の他の例示的な構成も考えられる、以下にさらに詳細に説明される。
【0079】
例示的な一構成では、スリーブ262の近位端部277は、製造を容易にすることができる一体形成されたハブ部材263を備える。しかしながら、ハブ部材263およびスリーブ262を、この開示から逸脱することなく別個の要素として形成することができることを理解されたい。ハブ部材263は、全体的に中空であり、流体を外科装置200に導入するための流体開口284を備える。例示的な一構成では、流体開口284は、ハブ部材263に設けられた取り付けプレート285を貫通して形成することができる。流体コネクタ(不図示)は、取り付けプレート285に係合し、開口284と協働して流体をシャフト部材214を介して送達するように構成されている。
【0080】
別の例示的な構成(図13に最もよく示されている)では、取り付けプレート285が、ハブ263’から排除されている。流体開口284に接続されたポート288が、ハブ263’を貫通して形成され、このポート288に流体チューブ291aおよび291bを接続することができる。例示的な一構成では、流体チューブ291aおよび291bは、ポート288に直接接着することができる。別の例示的な構成では、ポート288は、上方に延びたホースかかり部(不図示)を備えるように構成することができ、このホースかかり部の上に流体チューブ291aおよび291bを配設することができる。
【0081】
例示的な一構成では、ハブ部材263は、内部取り付け部材294(図9Aを参照)を受容するように構成されたチャンバ287(図12を参照)を内部に画定している。内部取り付け部材294については、以下により詳細に説明される。図10A図10Bから分かるように、チャンバ287は、内部取り付け部材294の径方向に延びた縁303に係合する段部296を備えるように構成することができる。ハブ部材263は、横開口295(図12)をさらに画定することができる。例示的な一構成では、端部フランジ305を近位端部277に配設することができる。例示的な一構成では、端部フランジ305は、横開口295の両側に配設された延長部材306を備える。延長部材306はそれぞれ、開口307を備えることができる。開口307は、流体開口284に結合される適切な流体チューブ(例えば、図13に示されているような)を受容するように構成されている。
【0082】
内部取り付け部材294は、ハブ部材263のチャンバ287内に配置されるように構成されている。内部取り付け部材294は、第1および第2の密閉溝293a、293bならびに遠位スリーブセグメント298を画定する本体部材297を備える。電極開口300が、内部取り付け部材294の外面を貫通して形成されている。電極開口300は、横開口295に整合して電極216の経路を形成する。例示的な一構成では、安定化部材301が、電極開口300内に受容されるように構成されている。別の例示的な構成委では、安定化部材は、内部取り付け部材294と一体に形成されている。安定化部材301は、電極216をシャフト部材214内に固定して、電極216の端部を端部キャプ305に形成された接続マウント290に案内するように構成された取り付け通路302を備える。接続マウント290は、接続ポート(例えば、図13に示されている)を受容して、電極216を、この電極216にエネルギーを供給するための電源に作動的に接続するように構成されている。電極216の近位端部は、エネルギーの送達を容易にするために接続ポート内に受容される。
【0083】
密閉部材309および310はそれぞれ、密閉溝293aおよび293b内に受容されて内部取り付け部材294とスリーブ262との間にシールを形成し、電極216の周りに配置される、または電極216を通る、潅流ルーメン44、144、240、540、および640を含む潅流ルーメンの密閉流体経路を画定する(例えば、図11を参照)。追加の密閉部材311が、リブ292と内部取り付け部材294の遠位端部との間に配置されている。密閉部材311が、密閉部材293bと協働して流体ルーメン38に連通した流体経路を画定する。リブ292は、フラッシュチャンバ326(フラッシュ開口266に連通)と真空チャンバ282とを分離する。
【0084】
シャフトマウント312は、内部取り付け部材294内に受容されている。シャフトマウント312は、全体的に中空である。端部キャップ305は、開口316を有する吸引マウント314を備える。シャフト部材312は、開口316を貫通して配設される。シャフトマウント312は、シャフト部材214の近位端部258、特に、吸引ルーメン36と流体連通している。シャフトマウント312は、適切な吸引源に接続されるように構成されている。シャフトマウント312の外面は、取り付けカラー317を備えることができる。取り付けカラー317は、シャフトマウント312を内部取り付け部材294内に配置すると共に、シャフトマウント312の端部キャップ305に対する回転を可能にする。シール部材319を、端部キャップ305のキャビティ321内のシャフトマウント312の周りに配置することができる。シール部材319は、吸引を吸引ルーメン36に誘導する役割を果たす。安定化部材301に隣接した領域323は、接着剤(不図示)、または吸引を吸引ルーメン36に確実に誘導する他の適切な材料で満たされる。さらに、流体の送達を吸引から分離するために、領域325および327が、図7Bに示され、説明されているものと同様に、開口284および潅流開口265の一方に連通した内部取り付け部材294に形成された流体通路329の両側の接着剤で満たされる。
【0085】
フラッシュチャンバ326は、リブ292と、内部取り付け部材294の径方向に延びた縁303との間に画定されている。フラッシュチャンバ326は、スリーブ262を介して開口284の1つ、およびシャフト部材214内に形成されたフラッシュ開口266に連通している。フラッシュ開口266は、流体ルーメン38に連通している。一実施形態では、流体ルーメン38を通る流体の流量を制御するサイズにすることができる。
【0086】
制御弁288は、ベント開口226およびスライド可能なスリーブ232を備える。ベント開口226は、真空チャンバ282に連通している。スライド可能なスリーブ232は、吸引ルーメン36を介して伝達される吸引を迅速に変更するために、選択的に移動してベント開口226を覆う、または露出させるように構成されている。より詳細には、図10Aに示されている構成では、最大に吸引することが望ましい場合は、スライド可能なスリーブ232が遠位側に移動してベント開口226を完全に覆う。吸引圧力を低下させることが望ましい場合は、スライド可能なスリーブ232を近位方向に移動させてベント開口226を少なくとも部分的に露出させ、これにより真空チャンバ282をベントする。スライド可能なスリーブ232が移動して、ベント開口226が完全に露出されると、吸引が吸引ルーメン36に全く伝達されない。この構成は、使用中に使用者が組織を迅速に解放することができ、かつ必要に応じて吸引を弱めることができるという点で有利である。スライド可能なスリーブ232は、ハンドピース212における位置により、装置を把持している使用者がどの向きからも片手で操作するのが容易であり、使用の容易さも改善される。
【0087】
例示的な一構成では、ベント開口226は涙滴形を有する。この形状により、スライド可能なスリーブ232が近位側に移動するときに制御下で吸引を弱めることができる。しかしながら、ベント開口226の他の形状も利用できることを理解されたい。
【0088】
制御弁228’の代替の構成が図13に示されている。制御弁228’は、スライド可能なスリーブ232およびベント開口226も備える。しかしながら、この構成では、スライド可能なスリーブ232は、ばね機構(例えば、図10Aに点線で示されているような)を用いてスリーブ262の遠位端部276に向かって付勢されるか、またはスリーブ262上を自由に浮動することができる。自由に浮動できる場合、外科装置200’が使用されるときに、遠位端部276が下方に向き、スライド可能なスリーブ262が、遠位端部276に向かって自動的にスライドする。この動きにより、ベント開口226が完全に露出され、これにより真空が全く伝達されなくなる。
【0089】
しかしながら、真空を遠位端部276に伝達するのが望ましい場合は、スライド可能なスリーブ232を近位方向に移動させる。制御弁228’において、ベント開口226は、スライド可能なスリーブ232がベント開口226に対して移動すると涙滴形の最も幅の広い部分が最初に覆われるよう、この最も幅の広い部分が遠位端部276を向くように配置されている。
【0090】
外部部材264が必要ないときは、補強部材215を設けることができる。例示的な一構成では、補強部材215は、シャフト部材214の長さに亘って実質的に延在することができる。より詳細には、補強部材215は、図11に例示視されているように流体ルーメン38内に配設することができる。補強部材215は、シャフト部材214がその形状を保持できるようにするのに役立つ。
【0091】
図9Aおよび図9Bを参照すると、シャフト部材214の近位端部258は、上面に溝322が形成されたランド領域320を備えるように構成されている。溝322は、シャフト部材214の端面324の中に延び、流体開口44(または144、544、644)につながっている。電極216は、流体開口44内に受容されるように構成されている。
【0092】
動作の際は、流体が、開口284に送達されて(この開口に接続された流体チューブを介して)流体通路329に流れ、これにより電極通路40に潅流が誘導される。この方式では、流体が、動作中に電極16、116、216、316、416、516、616、674の周りから出て、定量の潅流が手術部位に供給され、これにより「湿潤領域」が形成される。流体は、(他の開口284に接続された流体チューブを介して)他の開口284から手術野に選択的にさらに供給することができる。他の開口284は、フラッシュチャンバ326に連通している。流体ルーメン38に形成されたフラッシュ開口266は、フラッシュチャンバ326内に配置される。この方式では、追加の流体を、手術部位を強力にフラッシュするために任意選択で流体ルーメン38を介して送達することができ、これにより手術部位の洗浄が可能となると共に、出血源の位置を特定しやすくなる。
【0093】
図13を参照すると、上記説明されたように、スリーブ262’の近位端部277’は、流体開口288を有するハブ263’を備える。流体チューブ291aおよび291bは、流体開口288に直接固着することができる。図10Bに示されているように、一方の流体チューブ291aは、フラッシュ開口266を介してフラッシュチャンバ326に作動的に接続され、他方の流体チューブ291bは、潅流が流体ルーメン38に誘導されるように流体通路329に作動的に接続されている。
【0094】
端部キャップ305’を、この端部キャップ305’が流体開口288に隣接して配置されるまでハブ263’の近位端部に対してスライドさせる。端部キャップ305’は、スリーブ262’と概ね同じ直径である外部スリーブ部分402を備えるように構成されている。ハブ263上の横方向に離間した延長部材306の代わりに、端部キャップ305’は、流体保持部材404を備える。流体保持部材404は、内部に流体チューブ291a、291bを受容するサイズの貫通開口406を備える。図10Bに示されているものと同様に、端部キャップ305’の近位端部に開口が形成されている。この開口は、真空を吸引ルーメン36を介して真空チャンバ282に伝達するために吸引チューブ408に接続されるように構成されている。
【0095】
端部キャップ305’は、その近位端部に配設された接続マウント290’をさらに備える。この接続マウント290’は、端部キャップ305’と一体に形成することができ、かつ接続ポート410を受容して、電極216を、この電極216にエネルギーを供給するための電源に作動的に接続するように構成されている。
【0096】
双極性外科装置500のさらなる代替の構成が、図14A図14Bに示されている。双極性外科装置500は、ハンドピース512、このハンドピース512から遠位側に延びたシャフト部材514、およびこのシャフト部材514から遠位側に延びた電極16、116、216、316、416、516、616、674(図2A図2Nに最も良く示されている)を備えるという点で装置10および200に類似している。吸引ライン518および焼灼実施ケーブル522が、ハンドピース512に作動的に接続されている。
【0097】
しかしながら、この実施形態では、1本の流体送達ライン520が、ハンドピース512に作動的に接続されている。流体送達ライン520は、流体開口584に固定された遠位端部522、およびコネクタ要素526に接続された近位端部524を有する。コネクタ要素524は、2つの入口528aおよび528b、ならびに1つの出口530を備える。流体送達ライン520の近位端部524は、出口530に固着されている。
【0098】
流体ライン591aが、入口538aに接続されている。流体ライン591aの反対側端部は、一方向逆止め弁532に接続することができる。第2の流体ライン593aが、逆止め弁532に接続されている。第2の流体ライン593aは、接続具534で終端している。接続具534は、流体源に接続されるように構成されている。動作の際は、流体源が接続具534に接続されると、流体が、逆止め弁532を介して流体ライン591aに送られ、そしてコネクタ526を介して流体送達ライン520に送達される。次いで、流体は、電極先端部に隣接したシャフト部材514から出るように電極通路40、240に送られる。この構成により、手術部位への流体の連続的な送達または潅流が可能となり、湿潤手術野が得られる。逆止め弁532が一方向逆止め弁であるため、この逆止め弁532を通る流体の逆流が防止される。
【0099】
別の流体ライン591bが、入口528bに接続されている。流体ライン591bは、接続具536で終端している。また接続具536は、第2の流体源に接続されるように構成されている。接続具536が第2の流体源に接続されると、流体が、流体ライン591bおよびコネクタ526を介して流体送達ライン520に送達される。次いで、流体は、電極先端部に隣接したシャフト部材214から出るように電極通路40、240に送られる。しかしながら、第2の流体源は、手術部位を強力にフラッシュするよう、大量の流体を選択的に送達するように構成されている。動作中における手術部位の強力フラッシュは、手術野をはっきりさせて、手術野における出血源の位置を特定できるという利点がある。
【0100】
図14Aおよび図14Bの構成は、シャフト部材214に流体ルーメン38および電極通路40が設けられているのに対して、外科装置500のシャフト部材514にはルーメンしか設けられていないという点で、図10Aおよび図10Bに示されている構成とは異なる。より詳細には、外科装置500の構成では、2つの潅流源から電極通路40を介して送達されて、手術部位で連続的な潅流が行われると共に、同じ電極通路40を介した選択的な強力フラッシュが行われる。従って、この構成では、直径の小さいシャフト514が可能となり、これにより手術部位での視覚化能力が改善される。
【0101】
図15A図15Cは、シャフト514A、514B、514Cの長さが異なる構成を例示している。例えば、図15Aは、図15Bに示されている構成と比較すると短い長さを有する。図15Bに示されている構成では、シャフト部材514Bの長さの増加は、体内の奥深くに位置する手術領域の場合に有利であり得る。図15Cに例示されているように、シャフト部材514Cは、使用者がシャフト部材514Cを所望に曲げることができるように、やや可撓性であるように構成することができる。
【0102】
本明細書で説明される外科器具および方法は、広い適用性を有することを理解されたい。前述の実施形態は、方法および装置の原理ならびに一部の実際の適用例を例示するために選択され説明された。前の説明により、当業者であれば、本方法および装置を、様々な実施形態および考えられる特定の使用に適した様々な変更が加えられた実施形態で利用することができる。特許法の条項に従って、本開示の動作の原理および方法が、例示的な実施形態で説明され例示された。
【0103】
本方法および装置の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定されるものとする。しかしながら、本開示は、その概念または範囲から逸脱することなく、具体的に説明され例示された以外の方法で実施できることを理解されたい。当業者であれば、本明細書で説明示される実施形態の様々な代替案を、添付の特許請求の範囲に規定されている概念および範囲から逸脱することなく、請求項の実施で利用できることを理解されたい。本開示の範囲は、上記説明を参照して決定されるのではなく、添付の特許請求の範囲およびこのような特許請求の範囲内と認められる均等物の全ての範囲を参照して決定されるべきである。本明細書で論じられた分野で将来の進展が起こり、開示されたシステムおよび方法がこのような将来の例に含まれると予測され、意図される。さらに、特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、本明細書に反対を意味する明確な記載がない限り、幅広い妥当な解釈および当業者が理解する通常の意味を有するものとする。特に、単数の冠詞、例えば、「1つの(a)」、「その(the)」、「前記(said)」などの使用は、特許請求の範囲で明確に反対の記載がない限り、1つ以上の示される要素を指すと解釈されるべきである。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を規定し、これらの特許請求の範囲内の方法および装置ならびにそれらの均等物が本発明の範囲に含まれるものとする。要するに、本発明は、変更および変形が可能であり、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されることを理解されたい。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11
図12
図13
図14
図15