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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】スクライブヘッドおよびスクライブ装置
(51)【国際特許分類】
   B28D 5/00 20060101AFI20220126BHJP
   C03B 33/027 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
B28D5/00 Z
C03B33/027
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020024622
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2021126883
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】西尾 仁孝
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/185647(US,A1)
【文献】国際公開第2011/129265(WO,A1)
【文献】特開平7-223829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 5/00
C03B 33/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面にスクライブラインを形成するためのカッターホイールと、
前記カッターホイールを前記基板の表面に対し接近および離間させる移動機構と、
前記移動機構に空気圧を供給する圧力付与部と、を備え、
前記移動機構は、
第1移動子と
第2移動子と、
前記第1移動子および前記第2移動子を所定の間隔で支持する支持部と、
前記第1移動子、前記第2移動子、および前記支持部を収容し、前記第1移動子と前記第2移動子の間の位置に外部に連通する開口を有する筒部と、
前記第1移動子および前記第2移動子の移動を前記カッターホイールに伝達するための伝達部と、を含み、
前記第1移動子および前記第2移動子と前記筒部の内側面との間に隙間を設け、
前記圧力付与部は、前記筒部の内部空間のうち、前記第1移動子に対して前記支持部と反対側の第1空間と、前記第2移動子に対して前記支持部と反対側の第2空間とに、個別に、空気圧を供給する、
ことを特徴とするスクライブヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のスクライブヘッドにおいて、
前記第1移動子および前記第2移動子は球であり、
前記筒部の内側面は円柱形状である、
ことを特徴とするスクライブヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載のスクライブヘッドにおいて、
前記第1移動子および前記第2移動子は同径であり、
前記筒部の内側面の径は一定である、
ことを特徴とするスクライブヘッド。
【請求項4】
請求項2または3に記載のスクライブヘッドにおいて、
前記第1移動子および前記第2移動子は磁性材料により形成され、
前記支持部は、前記第1移動子および前記第2移動子の離間方向の両端に磁石を含む、
ことを特徴とするスクライブヘッド。
【請求項5】
請求項4に記載のスクライブヘッドにおいて、
前記第1移動子および前記第2移動子のそれぞれに対する前記磁石の接触面は、平面である、
ことを特徴とするスクライブヘッド。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載のスクライブヘッドにおいて、
前記伝達部は、前記開口を介して前記支持部に接続される、
ことを特徴とするスクライブヘッド。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載のスクライブヘッドにおいて、
さらに、前記カッターホイールの前記基板に対する荷重を測定する測定部を備える、
ことを特徴とする、スクライブヘッド。
【請求項8】
請求項7に記載のスクライブヘッドにおいて、
前記測定部は、
前記カッターホイールの前記基板に対する荷重を測定するロードセルと、
前記伝達部に連結され、前記ロードセルに当接する当接部材と、を含み、
前記第1空間と前記第2空間との圧力差により前記第1移動子および前記第2移動子が前記第2空間側に移動して前記カッターホイールが前記基板に当接すると、前記ロードセルは前記当接部材から離間する、
ことを特徴とする、スクライブヘッド。
【請求項9】
基板に対してスクライブを行うスクライブ装置であって、
前記基板を戴置する戴置部と、
前記基板にスクライブラインを形成するためのスクライブヘッドと、
前記スクライブヘッドを移動させる移送部と、を備え、
前記スクライブヘッドは、
前記基板の表面にスクライブラインを形成するためのカッターホイールと、
前記カッターホイールを前記基板の表面に対し接近および離間させる移動機構と、
前記移動機構に空気圧を供給する圧力付与部と、を備え、
前記移動機構は、
第1移動子と
第2移動子と、
前記第1移動子および第2移動子を所定の間隔で支持する支持部と、
前記第1移動子、前記第2移動子および前記支持部を収容し、前記第1移動子と前記第2移動子の間の位置に外部に連通する開口を有する筒部と、
前記第1移動子および第2移動子の移動を前記カッターホイールに伝達するための伝達部と、を含み、
前記第1移動子および前記第2移動子と前記筒部の内側面との間に隙間を設け、
前記圧力付与部は、前記筒部の内部空間のうち、前記第1移動子に対して前記支持部と反対側の第1空間と、前記第2移動子に対して前記支持部と反対側の第2空間とに、個別に、空気圧を供給する、
ことを特徴とするスクライブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にスクライブラインを形成するためのスクライブヘッドおよびスクライブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板等の脆性材料基板を分断する分断工程は、基板の表面にスクライブラインを形成するスクライブ工程と、形成されたスクライブラインに沿って基板を分断するブレイク工程とからなる。スクライブ工程では、スクライブヘッドを備えたスクライブ装置が用いられる。
【0003】
以下の特許文献1に開示されているスクライブヘッドは、ベースプレートと、ベースプレートに対して垂直に取り付けられたトッププレートおよびボトムプレートと、スクライビングホイールを保持するチップホルダと、チップホルダを昇降させる昇降機構と、を備える。昇降機構は、サーボモータと、カップリングと、ボールネジと、スライドブロックと、リニアウェイと、から構成される。昇降機構は、トッププレートおよびボトムプレートの間に設けられる。
【0004】
サーボモータのモータ軸には、カップリングを介してボールネジが取り付けられ、ベースプレートにはトッププレートとボトムプレートとの間にスライドブロックがリニアウェイを介して上下動自在に取り付けられている。スライドブロックにはボールネジのナット部が取り付けられ、サーボモータの回転に伴ってスライドブロックを上下動させることができる。スライドブロックの下方には、ボトムプレートを貫通して下向きにチップホルダが設けられている。
【0005】
上記の構成により、特許文献1のスクライブヘッドは、サーボモータが回転駆動するとボールネジが回転して、スライドブロックが上下方向に移動する。これにより、チップホルダに保持されているスクライビングホイールが基板に当接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-025595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、スマートフォン等の機器に用いられる基板として、薄型の基板の需要が高まっている。このような薄型の基板を分断する場合、基板の破損を防止するため、スクライブ荷重は低荷重に調節される。
【0008】
しかし、特許文献1に記載のスクライブヘッドでは、スライドブロックがリニアウェイに上下動自在に支持されているため、サーボモータの駆動時に、スライドブロックとリニアウェイとの間に摩擦抵抗が生じる。この摩擦抵抗により、スクライブ荷重を所定値に調節することが妨げられる。特に、上記した薄型の基板に対して、低荷重に調節することは困難である。
【0009】
かかる課題に鑑み、本発明は、基板に対するカッターホイールの荷重を精度よく調節して、基板にスクライブラインを形成することが可能なスクライブヘッドおよびスクライブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、基板の表面にスクライブラインを形成するスクライブヘッドに関する。本態様に係るスクライブヘッドは、基板の表面にスクライブラインを形成するためのカッターホイールと、前記カッターホイールを前記基板の表面に対し接近および離間させる移動機構と、前記移動機構に空気圧を供給する圧力付与部と、を備え、前記移動機構は、第1移動子と、第2移動子と、前記第1移動子および前記第2移動子を所定の間隔で支持する支持部と、前記第1移動子、前記第2移動子、および前記支持部を収容し、前記第1移動子と前記第2移動子の間の位置に外部に連通する開口を有する筒部と、前記第1移動子および前記第2移動子の移動を前記カッターホイールに伝達するための伝達部と、を含み、前記第1移動子および前記第2移動子と前記筒部の内側面との間に隙間を設け、前記圧力付与部は、前記筒部の内部空間のうち、前記第1移動子に対して前記支持部と反対側の第1空間と、前記第2移動子に対して前記支持部と反対側の第2空間とに、個別に、空気圧を供給する。
【0011】
本態様に係るスクライブヘッドによれば、筒部の内部空間において、第1空間と第2空間との間に圧力差を持たせることにより、カッターホイールに付与される荷重を設定できる。このとき、第1空間および第2空間に供給された空気は、第1移動子および第2移動子と筒部の内側面との間の隙間を通って、筒部の開口から排出される。このように、隙間を空気が通ることにより、第1移動子および第2移動子は、筒部の内側面から離れる方向に圧力を受け、この圧力が均衡した位置に調心される。
【0012】
したがって、第1移動子および第2移動子は、筒部の内側面から離間した状態で調心位置に支持される。このように、第1移動子および第2移動子は、筒部の内側面に対して無接触の状態で支持されるため、移動時に摩擦抵抗を受けない。よって、第1空間と第2空間との間の圧力差によって、カッターホイールの荷重を微細かつ安定的に調節できる。
【0013】
本態様に係るスクライブヘッドにおいて、前記第1移動子および前記第2移動子は球であり、前記筒部の内側面は円柱形状であるよう構成され得る。
【0014】
本態様に係るスクライブヘッドによれば、第1移動子および第2移動子と筒部の内側面との隙間がなだらかに小さくなるため、隙間に空気を円滑に流通させ得る。また、内部空間において、最大径の緯線の全周に亘って隙間を均一にできるため、第1移動子および第2移動子の調心が円滑に行われ、且つ、全周に亘って非接触の状態にできる。よって、第1移動子および第2移動子を、非接触の状態で円滑に移動させ得る。
【0015】
この場合、前記第1移動子および前記第2移動子は同径であり、前記筒部の内側面の径は一定であるよう構成され得る。
【0016】
この構成によれば、第1空間と第2空間が同径であるため、圧力差の調節を容易に行い得る。また、同種の球を第1移動子および第2移動子に使えるので、移動機構の構成を簡素化でき、移動機構の組み立て作業が容易になる。
【0017】
また、前記第1移動子および前記第2移動子は磁性材料により形成され、前記支持部は、前記第1移動子および前記第2移動子の離間方向の両端に磁石を含み得る。
【0018】
この構成によれば、第1移動子および第2移動子が、支持部に対して離間方向に垂直な方向に移動可能となる。このため、支持部が筒部の径方向に移動不能であっても、第1移動子および第2移動子は、隙間に空気が流れることにより、支持部に対して相対的に移動して、調心位置に位置付けられる。
【0019】
よって、第1移動子および第2移動子を円滑かつ適正に調心でき、その結果、第1移動子および第2移動子をより適切に、非接触な状態に設定できる。
【0020】
この場合、前記第1移動子および前記第2移動子のそれぞれに対する前記磁石の接触面は、平面であるよう構成され得る。
【0021】
この構成によれば、第1移動子および第2移動子が磁石に点接触するため、支持部に対して第1移動子および第2移動子が移動しやすくなる。よって、第1移動子および第2移動子と筒部の内側面との隙間を流れる空気からの圧力により、第1移動子および第2移動子を円滑に調心位置に移動させることができる。
【0022】
本態様に係るスクライブヘッドにおいて、前記伝達部は、前記開口を介して前記支持部に接続されるよう構成され得る。
【0023】
本態様に係るスクライブヘッドによれば、筒部に形成されている開口が空気の排出と支持部に対する伝達部の接続に共用されるため、筒部の構成を簡素化できる。
【0024】
本態様に係るスクライブヘッドは、さらに、前記カッターホイールの前記基板に対する荷重を測定する測定部を備えるよう構成され得る。
【0025】
本態様に係るスクライブヘッドによれば、測定部を備えるため、スクライブラインを形成する直前に、カッターホイールの基板に対する荷重を測定できる。よって、スクライブライン形成時におけるスクライブ荷重の信頼度を高めることができる。
【0026】
この場合、前記測定部は、前記カッターホイールの前記基板に対する荷重を測定するロードセルと、前記伝達部に連結され、前記ロードセルに当接する当接部材と、を含み、前記第1空間と前記第2空間との圧力差により前記第1移動子および前記第2移動子が前記第2空間側に移動して前記カッターホイールが前記基板に当接すると、前記ロードセルは前記当接部材から離間するよう構成され得る。
【0027】
この構成によれば、カッターホイールが基板の表面に当接すると、ロードセルは当接部材から離間する。このとき、ロードセルは、当接部材から離間する直前の荷重を測定する。この測定値と予め設定されたスクライブ荷重とを比較することにより、たとえば、圧力付与部から第1空間と第2空間とに適切に空気圧を供給して、適正なスクライブ荷重に補正することができる。これにより、スクライブライン形成時におけるスクライブ荷重の信頼度をより高めることができる。
【0028】
本発明の第2の態様は、基板に対してスクライブを行うスクライブ装置に関する。本態様に係るスクライブ装置は、基板を戴置する戴置部と、前記基板にスクライブラインを形成するためのスクライブヘッドと、前記スクライブヘッドを移動させる移送部と、を備え、前記スクライブヘッドは、基板の表面にスクライブラインを形成するためのカッターホイールと、前記カッターホイールを前記基板の表面に対し接近および離間させる移動機構と、前記移動機構に空気圧を供給する圧力付与部と、を備え、前記移動機構は、第1移動子と第2移動子と、前記第1移動子および第2移動子を所定の間隔で支持する支持部と、前記第1移動子、前記第2移動子および前記支持部を収容し、前記第1移動子と前記第2移動子の間の位置に外部に連通する開口を有する筒部と、前記第1移動子および第2移動子の移動を前記カッターホイールに伝達するための伝達部と、を含み、前記第1移動子および前記第2移動子と前記筒部の内側面との間に隙間を設け、前記圧力付与部は、前記筒部の内部空間のうち、前記第1移動子に対して前記支持部と反対側の第1空間と、前記第2移動子に対して前記支持部と反対側の第2空間とに、個別に、空気圧を供給する。
【0029】
本態様に係るスクライブ装置は、第1の態様と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0030】
以上のとおり、本発明によれば、基板に対するカッターホイールの荷重を精度よく調節して、基板にスクライブラインを形成することが可能なスクライブヘッドおよびスクライブ装置を提供することができる。
【0031】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の1つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、実施形態に係るスクライブ装置の構成を模式的に示す図である。
図2図2は、実施形態に係るスクライブヘッドの構成を示す斜視図である。
図3図3(a)~(c)は、実施形態に係るスクライブヘッドのカッター機構の構成を説明するための図である。図3(a)は、実施形態に係るカッター機構の構成を示す斜視図である。図3(b)は、実施形態に係るスクライブヘッドのカッター機構の一部をX軸正側から見た場合の断面図である。図3(c)は、実施形態に係るスクライブヘッドのカッター機構の一部をY軸正側から見た場合の側面図である。
図4図4は、実施形態に係るスクライブヘッドの移動機構の構成を示す分解斜視図である。
図5図5(a)、(b)は、実施形態に係るスクライブヘッドの移動機構の構成を説明するための図である。図5(a)は、実施形態に係るスクライブヘッドの筒部内に収容されている部材の分解斜視図である。図5(b)は、実施形態に係る移動機構のうち伝達部を、図5(a)とは異なる方向から見た場合の斜視図である。
図6図6(a)、(b)は、実施形態に係るスクライブヘッドの移動機構の構成を説明するための図である。図6(a)は、実施形態に係るスクライブヘッドの移動機構をY軸負側から見た場合の断面図である。図6(b)は、実施形態に係るスクライブヘッドの移動機構の上面図である。
図7図7は、実施形態に係るスクライブヘッドの移動機構の構成を示す斜視図である。
図8図8は、実施形態に係るスクライブヘッドの構成を示す斜視図である。
図9図9(a)、(b)は、実施形態に係るスクライブヘッドの移動機構を説明するための図である。図9(a)は、実施形態に係る移動機構をX軸負側から見た場合の断面図である。図9(b)は、図9(a)の一部を拡大した模式図である。
図10図10は、実施形態に係るスクライブヘッドの構成を示すブロック図である。
図11図11(a)、(b)は、それぞれ、実施形態に係るスクライブヘッドの移動機構の動作を説明するための断面図である。
図12図12(a)、(b)は、それぞれ、実施形態に係るスクライブヘッドの移動機構の動作を説明するための断面図である。
図13図13は、実施形態に係るスクライブヘッドの側面図である。
図14図14(a)、(b)は、それぞれ、実施形態に係るスクライブヘッドの移動機構および測定部の動作を説明するための正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図には、便宜上、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸が付記されている。Z軸は、鉛直方向に平行である。上方および下方は、それぞれZ軸正方向およびZ軸負方向に対応する。
【0034】
また、本実施形態では、基板Fは、X-Y平面に平行に載置されており、カッターホイールが基板Fに接近および離間するように、スクライブヘッドは動作する。以下の説明では、基板Fに接近する方向は、単に「下方」と称され、基板Fから離間する方向は、単に「上方」と称される場合がある。そのため、本実施形態では、スクライブヘッドの各構成が上下方向に移動するとは、基板に対して接近および離間することと同義である。
【0035】
<実施形態>
図1は、スクライブ装置1の構成を模式的に示す図である。
【0036】
図1に示すように、スクライブ装置1は、移動台2と、スクライブヘッド10と、を備えている。移動台2は、ボールネジ3と螺合されている。移動台2は、一対の案内レール4によってY軸方向に移動可能に支持されている。モータの駆動によりボールネジ3が回転することで、移動台2が、一対の案内レール4に沿ってY軸方向に移動する。
【0037】
移動台2の上面には、モータ5が設置されている。モータ5は、上部に位置する載置部6をXY平面で回転させて所定角度に位置決めする。モータ5により水平回転可能な載置部6は、図示しない真空吸着手段を備えている。載置部6上に載置された基板Fは、この真空吸着手段によって、載置部6上に保持される。
【0038】
スクライブ装置1は、移動台2とその上部の載置部6とを跨ぐように、ブリッジ7が支柱8a、8bに架設されている。ブリッジ7には、レール9が取り付けられている。レール9とスクライブヘッド10とは、移送部11を介して接続され、移送部11がレール9をスライド移動することにより、スクライブヘッド10は、X軸方向に移動するように設置されている。
【0039】
スクライブ装置1を用いて基板Fの表面F1にスクライブラインを形成する場合、まず、カッターホイール101が取り付けられたホルダユニット110がスクライブヘッド10に取り付けられる。
【0040】
スクライブ装置1は、スクライブヘッド10を所定の位置に移動させ、カッターホイール101に対して所定の荷重を印加して、基板Fへ接触させる。その後、スクライブ装置1は、スクライブヘッド10をX軸方向に移動させることにより、基板Fにスクライブラインを形成する。
【0041】
スクライブ装置1は、必要に応じて載置部6を回動ないしY軸方向に移動可能である。上記では、スクライブヘッド10がX軸方向に移動し、載置部6がY軸方向に移動すると共に、回転するスクライブ装置1について示したが、スクライブ装置1はスクライブヘッド10と載置部6とが相対的に移動するものであればよい。たとえば、スクライブヘッド10が固定され、載置部6がX軸、Y軸方向に移動し、かつ回転するスクライブ装置1であってもよい。
【0042】
次に、スクライブヘッド10の構成について説明する。
【0043】
図2は、スクライブヘッド10の構成を示す斜視図である。
【0044】
図2に示すように、スクライブヘッド10は、プレート12と、カッター機構100と、移動機構200と、測定部300と、撮像部400と、圧力付与部500と、を備える。なお、測定部300は図8で示され、圧力付与部500は図10で示される。
【0045】
プレート12は、スクライブヘッド10を支持する。スクライブヘッド10は、プレート12に支持された状態で、スクライブ装置1の移送部11(図1参照)に取り付けられる。
【0046】
カッター機構100は、基板Fの表面F1にスクライブラインを形成するカッターホイール101(図3(a)~(c)参照)を保持する。移動機構200は、カッターホイール101を基板Fの表面F1に接近および離間させる。測定部300(図8参照)は、基板Fに対するカッターホイール101の荷重(スクライブ荷重)を測定する。撮像部400は、基板Fと載置部6とを位置合わせするために用いられる。以下、各構成について説明する。
【0047】
図3(a)は、カッター機構100の構成を示す斜視図である。
【0048】
図3(a)に示すように、カッター機構100は、ホルダユニット110と、ジョイント120と、受け部130と、ブロック部材140と、カバー150と、を備える。カッターホイール101は、ホルダユニット110に保持される。
【0049】
図3(b)は、ホルダユニット110およびジョイント120について、Y-Z平面に平行な平面で切断した場合の断面を、X軸正側から見た場合の断面図である。なお、図3(b)では、ジョイント120にホルダユニット110が装着されている部分のみが示されている。また、ホルダユニット110のうち、ジョイント120から突出している部分は側面図で示されている。図3(c)は、ホルダユニット110のうち、ジョイント120から突出している部分について、X-Z平面に平行な平面で切断した場合の断面を、Y軸正側から見た場合の側面図である。
【0050】
図3(b)、(c)に示すように、ホルダユニット110は、上記したカッターホイール101と、ホルダ111と、ピン軸112と、を備える。
【0051】
ホルダ111は、傾斜面111cが形成されている上部111aがジョイント120に装着される。ホルダ111の下部111bには、カッターホイール101を保持するための側壁113a、113bがX軸方向に向かい合って形成されている。側壁113a、113bは、X軸方向から見た場合に、下端に向かって幅が狭くなる台形形状に形成されている。側壁113a、113bとの間に溝114が形成されている。
【0052】
側壁113a、113bの下端には、円形の孔115a、115bが溝114を跨ぐようにして同軸上に形成されている。孔115a、115bの中心軸は、X軸に平行である。孔115a、115bと、カッターホイール101の孔101aとが同一直線上に並ぶように、カッターホイール101を溝114に挿入する。そして、孔115a、115bと、カッターホイール101の孔101aとに、孔101a、孔115a、115bよりも小さい径を有するピン軸112が通される。ピン軸112の両端部のそれぞれは側壁113a、113bで係止される。このようにして、カッターホイール101は、ホルダユニット110に回転可能に保持される。
【0053】
なお、図3(c)では、ピン軸112は一点鎖線で示され、孔115a、115bは、破線で示されている。
【0054】
ホルダ111は、上部111aと下部111bとが一体的に形成されている。または、上部111aと下部111bとが別体であってもよい。
【0055】
図3(b)、(c)に示すように、ジョイント120の下面には、上方(Z軸正側)に向かって開口する円形の穴121が形成されている。穴121の最奥部121aに磁石122が設置されている。また、穴121の内部には、穴121の中心軸G1と垂直な方向に位置決めピン123が設けられる。穴121にホルダ111の上部111aが挿入されることにより、ホルダユニット110がジョイント120に装着される。
【0056】
ホルダ111は、少なくとも上部111aが磁性材料により形成されている。このため、上部111aが穴121に挿入されると、上部111aが磁石122に吸引され、上部111aの傾斜面111cがピン123に当接する。
【0057】
また、中心軸G1を挟んで位置決めピン123とは反対側であってジョイント120の下方に、ホルダ111の上部111aに向かってボルト124が嵌められている。これにより、ホルダ111の傾斜面111cが位置決めピン123に適切に当接する。
【0058】
図3(a)に示すように、受け部130は、筒状の部材であり、下面に孔131が形成されている。孔131にジョイント120が嵌められる。受け部130の上方にブロック部材140が接続部材141を介して設けられている。
【0059】
ブロック部材140には、L字状のカバー150が装着される。カバー150のX軸負側の側面に移動機構200が連結される(図2参照)。
【0060】
図4は、移動機構200の構成を説明するための分解斜視図である。
【0061】
図4に示すように、移動機構200は、筒部210と、第1移動子220と、第2移動子221と、支持部222と、磁石223、224と、伝達部230と、を備えている。
【0062】
筒部210は、矩形状の箱体のX軸負側の側面210aに、Z軸方向に沿って突部211が一体的に設けられた形状である。筒部210は、上面から下面にかけて第1移動子220および第2移動子221を収容するための内部空間212が形成されている。内部空間212を形成する筒部210の内側面212aの形状は円柱形状であり、また、筒部210の内側面212aの径はZ軸方向に沿って一定である。また、筒部210の上面および下面の開口のそれぞれに、蓋213が設けられている。
【0063】
突部211のX軸正側の側面211aの中央部分には、トラック形状の開口214が形成されている。開口214は、内部空間212に連通するように形成されている。これにより、内部空間212は開口214を介して筒部210の外部へと連通している。
【0064】
筒部210のY軸負側の側面210bには、内部空間212に連通する孔210c、210dが形成されている(図7参照)。孔210c、210dに、管501、502が取り付けられている。管501、502は、後述の圧力付与部500(図10参照)から供給される空気圧を筒部210の内部空間212に供給する。
【0065】
図5(a)は、筒部210の内部空間212に収容される各部材の構成を示す分解斜視図である。図5(b)は、図4で示した伝達部230をX軸負側から見た場合の斜視図である。
【0066】
図4図5(a)に示すように、第1移動子220および第2移動子221は、磁性材料から形成される球であり、同一の径となるように形成されている。第1移動子220および第2移動子221の径は、筒部210の内側面212aの径よりも僅かに小さい。
【0067】
支持部222は、第1移動子220および第2移動子221を所定距離だけ離間させて支持する。支持部222は円柱形状の部材であり、Z軸方向の中央部分に、X軸方向に貫通する孔225が形成されている。本実施形態では、支持部222は第1移動子220および第2移動子221の径よりも小さく形成されている。なお、支持部222の径は、筒部210の内側面212aの径よりも小さければ、第1移動子220および第2移動子221の径と同一または大きくても構わない。
【0068】
支持部222の両端には、孔225に連通する円形状の凹部222a、222bが形成されている。凹部222a、222bには、孔225に連通するネジ孔222c、222d(図6(a)参照)が形成されており、磁石223、224は凹部222a、222bに嵌め込まれる。
【0069】
また、支持部222の孔225に後述するピン232(図5(b)参照)を挿入したとき、ピン232を孔225内で止めるために、ネジ226が用いられる。ネジ226は、ネジ孔222d(図6(a)参照)に挿入されてネジ留めされる。
【0070】
磁石223、224は円柱形状であり、磁石223、224のそれぞれに第1移動子220および第2移動子221のそれぞれが接触する。第1移動子220は磁石223の上面223aに接触する。第2移動子221は磁石224の下面224aに接触する。上面223aおよび下面224aは、X-Y平面に平行な面に形成されている。また、磁石223、224のサイズは同一である。
【0071】
図4図5(b)に示すように、伝達部230は、X軸負側の側面に、Z軸方向に延びる溝231が形成されている。溝231の幅および深さは一定である。溝231の幅は、図4の突部211の幅よりも僅かに大きい。溝231の底面231aの中央部分にはピン232が設けられている。ピン232は、支持部222に形成されている孔225に挿入される。このため、ピン232は、孔225の径と同一か若干小さくなるように形成されている。
【0072】
伝達部230は、溝231を挟んで側壁233、234がY軸方向に向かい合って形成されている。溝231のY軸方向の長さは、筒部210の突部211のY軸方向の長さと同一である(図6(b)、図7参照)。
【0073】
次に、移動機構200の組み立て方について説明する。
【0074】
図6(a)は、移動機構200およびプレート12をX-Z平面に平行な平面で切断した場合の断面を、Y軸正側から見た場合の断面図である。
【0075】
図6(a)に示すように、筒部210の内部空間212に支持部222が収容される。このとき、支持部222の孔225が筒部210の開口214から視認されるように、支持部222は内部空間212に収容される。また、支持部222は、支持部222の中心軸が内部空間212の中心軸と一致するように、内部空間212に収容される。
【0076】
このように配置された支持部222の孔225に伝達部230のピン232が挿入される。このとき、ピン232のX軸負側の端部が孔225のX軸負側から突出しないように挿入される。こうして、ピン232が孔225に挿入されると、支持部222のネジ孔222dにネジ226が挿入され、ピン232はネジ226によって孔225内の上方に押し付けられる。これにより、ピン232は支持部222に固定される。よって、ピン232を介して伝達部230と支持部222とが連結される。
【0077】
このようにしてピン232が支持部222の孔225内で固定されると、ピン232のX軸負側の端部が孔225のX軸負側から突出しないため、ピン232は筒部210の内側面212aに接触しない。
【0078】
支持部222が内部空間212に収容されると、磁石223の上面223aが凹部222aから露出するように、支持部222の凹部222aに磁石223が嵌め込まれる。同様に、磁石224の下面224aが凹部222bから露出するように、支持部222の凹部222bに磁石224が嵌め込まれる。
【0079】
磁石223、224が支持部222に設置されると、第1移動子220が内部空間212に収容される。第1移動子220は磁性材料から形成されているため、磁石223に吸引されることにより、磁石223を介して支持部222に支持される。このとき、第1移動子220は磁石223に対してZ軸方向に離間することはない。第2移動子221も同様にして磁石224を介して支持部222に支持される。
【0080】
上記のようにして、第1移動子220、第2移動子221、支持部222、および磁石223、224が筒部210の内部空間212に収容されると、第1移動子220および第2移動子221の全周と内部空間212との間に隙間が形成され、支持部222の全周と内部空間212との間に隙間が形成される。
【0081】
図6(b)は、図6(a)の移動機構200をZ軸正側から見た場合の上面図である。
【0082】
上記のとおり、支持部222の孔225に挿入されたピン232は、孔225から突出しないよう、支持部222のネジ孔222dに挿入されたネジ226で押さえ付けられている(図6(a)参照)。このため、図6(b)に示すように、伝達部230の溝231が筒部210の突部211に嵌まると、筒部210の側面211aと溝231の底面231aとの間に隙間が生じる。このため、伝達部230の側壁233、234と筒部210の側面210aとの間にも隙間が生じる。なお、図6(b)中の矢印は、隙間が形成されている箇所を指している。
【0083】
こうして、筒部210の内部空間212に第1移動子220、第2移動子221、支持部222、および磁石223、224が収容された後、図4に示した2つの蓋213が、内部空間212の上面および下面の開口に装着されて、内部空間212の上面および下面が塞がれる。これにより、図7に示すように、移動機構200の組み立てが完了する。
【0084】
このように、移動機構200が組み立てられると、筒部210のX軸負側の側面がプレート12に取り付けられる。これにより、移動機構200がプレート12に固定される(図2参照)。
【0085】
なお、図6(a)では、ネジ226は支持部222のネジ孔222dに挿入され、ピン232はネジ226で下方から押さえ付けられていたが、ネジ孔222cにネジ226が挿入されてもよい。この場合、ピン232は、ネジ226に上方から押さえ付けられる。または、ネジ孔222c、222dのそれぞれにネジ226が挿入され、ピン232が上下方向から押さえ付けられて、支持部222の孔225内に固定されてもよい。
【0086】
図8は、スクライブヘッド10の構成を示す斜視図である。ただし、説明の便宜上、図8では、カッター機構100および撮像部400は省略されている。
【0087】
図8に示すように、測定部300は、ロードセル310と、当接部材320と、台330と、を備えている。
【0088】
ロードセル310は、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接したとき、カッターホイール101が基板Fに対して付与する荷重(スクライブ荷重)を測定する。ロードセル310の上面には突起311が設けられている。
【0089】
当接部材320は、ロードセル310の突起311に当接するブロック部材である。また、当接部材320は、下面にナット321が設けられている。台330は、ロードセル310が載置される台であり、プレート12に固定されている。
【0090】
なお、図8では、当接部材320のナット321が、ロードセル310の突起311に当接している状態が図示されている。測定部300の動作に関しては、追って図14(a)、(b)を参照して説明する。
【0091】
図2に戻り、撮像部400は、プレート12に装着されている。撮像部400は、基板Fの載置部6における位置決めを行う際に用いられる。撮像部400によって撮像された画像により、ユーザは載置部6に基板Fが適切に位置付けられているかを把握することができる。
【0092】
上記したカッター機構100、移動機構200、および測定部300は、以下のようにして連結される。
【0093】
図4図8に示すように、伝達部230のX軸正側の側面に、カッター機構100のカバー150のX軸負側の側面(図2図3(a)参照)が当接され、伝達部230とカバー150とが図示されないボルトで固定される。これにより、図2に示すように、カッター機構100と移動機構200とが連結される。
【0094】
また、図8に示すように、伝達部230のY軸正側の側面に、当接部材320のY軸負側の側面が当接され、当接部材320のY軸正側の側面に形成されている孔から図示されないボルトが挿入されて、伝達部230と当接部材320とが連結される。
【0095】
こうして、図2に示すように、カッター機構100および当接部材320は、移動機構200の伝達部230に連結される。よって、伝達部230が基板Fに対して上下方向に移動すると、カッター機構100および当接部材320も基板Fに対して上下方向に移動する。図6(a)を参照して説明したとおり、伝達部230は、支持部222にピン232を介して連結されており、支持部222は、第1移動子220および第2移動子221を支持する。したがって、伝達部230の移動は、第1移動子220および第2移動子221の移動に起因する。
【0096】
そこで、第1移動子220および第2移動子221の移動について説明する。
【0097】
図9(a)、(b)は、筒部210の内部空間212における第1移動子220および第2移動子221の移動と、内部空間212に供給される空気の流れ方を説明するための図である。
【0098】
図9(a)は、内部空間212に第1移動子220等が収容された筒部210をY-Z平面に平行な平面で切断した場合の断面を、X軸正側から見た場合の断面図である。なお、図9(a)では、支持部222の孔225に伝達部230のピン232が嵌められている。すなわち、支持部222と伝達部230とが連結されている。また、図9(a)では、管501、502は省略されている。図9(b)は、図9(a)で示された第1移動子220付近を拡大した模式図である。
【0099】
なお、以下の説明では、「第1移動子220に対して支持部222とは反対側」は、「第1移動子220のZ軸正側」を意味し、単に「第1移動子220の上方」または「第1移動子220の上側」と記載される場合がある。また、「第2移動子221に対して支持部222側」は、「第2移動子221のZ軸負側」を意味し、単に「第2移動子221の下方」または「第2移動子221の下側」と記載される場合がある。
【0100】
図9(a)に示すように、筒部210の内部空間212に、第1移動子220、第2移動子221、支持部222、磁石223、224が収容され、伝達部230のピン232が支持部222の孔225に挿入される。このような内部空間212において、第1移動子220に対して支持部222の反対側に配置される第1空間R1と、第2移動子221を介して支持部222と反対側に配置される第2空間R2とに、圧力付与部500(図10参照)から個別に、空気圧が矢印の方向に供給される。
【0101】
図9(b)中の矢印の方向に示すように、圧力付与部500(図10参照)から供給される空気は、管501から孔210cを通り、第1空間R1に供給される。第1空間R1において、第1移動子220と内部空間212(筒部210の内側面212a)との間には隙間が生じている。このため、第1空間R1に供給された空気の一部はこの隙間を通る。また、上記のとおり、筒部210の開口214は内部空間212と連通するように形成されているため、第1移動子220と内部空間212との間の隙間を通った空気は、開口214から筒部210の外部へと排出される。
【0102】
図9(b)は、説明のために、第1移動子220と内部空間212との間の隙間が大きく図示されていたが、実際の隙間の間隔は非常に微小である。よって、第1空間R1に供給された空気のうち、筒部210の外部へと排出される空気は少量である。このため、第1空間R1に圧力付与部500(図10参照)から空気圧が供給されると、第1移動子220が支持部222に向かって押圧される。
【0103】
図9(b)に図示されていないが、第2空間R2に圧力付与部500(図10参照)から空気が供給されると、少量の空気が第2移動子221と内部空間212との間の隙間を通り、開口214から筒部210の外部へと排出される。これと同時に、第2空間R2に圧力付与部500から空気圧が供給されると、第2移動子221は支持部222に向かって押圧される。
【0104】
よって、第1空間R1に供給される空気圧が第2空間R2に供給される空気圧よりも高い場合、第1移動子220に付与される押圧力の方が第2移動子221に付与される押圧力よりも大きいため、第1移動子220は第2移動子221の方に向かって移動する。すなわち、第1移動子220を支持する支持部222および支持部222に支持されている第2移動子221は、第1移動子220とともに下方に移動する。
【0105】
これとは逆に、第2空間R2に供給される空気圧が第1空間R1に供給される空気圧よりも高い場合、第2移動子221に付与される押圧力の方が第1移動子220に付与される押圧力よりも大きいため、第2移動子221は第1移動子220の方に向かって移動する。すなわち、支持部222および支持部222に支持されている第1移動子220は、第2移動子221とともに上方に移動する。
【0106】
このように、圧力付与部500から第1空間R1および第2空間R2に、個別に供給される空気圧の大きさによって、第1移動子220および第2移動子221が内部空間212を上下方向に移動する。
【0107】
第1移動子220および第2移動子221が内部空間212を上下方向に移動すると、支持部222も上下方向に移動する。図2図8を参照して説明したとおり、伝達部230を介して支持部222にカッター機構100が連結されている。よって、第1移動子220および第2移動子221の移動が伝達部230を介してカッター機構100に伝達される。したがって、カッター機構100は、第1移動子220および第2移動子221の移動とともに移動する。
【0108】
このようにカッター機構100が上下方向に移動すると、カッター機構100に保持されているカッターホイール101が基板Fの表面F1に当接する。カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接するとき、カッターホイール101から基板Fに荷重(スクライブ荷重)が付与される。つまり、第1空間R1と第2空間R2に供給される空気圧の圧力差により、カッターホイール101に基板Fに対するスクライブ荷重が生じる。
【0109】
また、伝達部230に測定部300の当接部材320が連結されている。このため、カッター機構100と同様に、当接部材320は、第1移動子220および第2移動子221の移動とともに移動する。
【0110】
また、圧力付与部500から第1空間R1および第2空間R2に供給される空気の一部は、第1移動子220および第2移動子221と筒部210の内側面212aとの間に生じている隙間を通る。このため、第1移動子220および第2移動子221は、筒部210の内側面212aから離れる方向に圧力を受けて、この圧力が均衡した位置に調心される。よって、第1移動子220および第2移動子221は、筒部210の内側面212aから離間した状態で、調心位置に支持される。
【0111】
このように、第1移動子220および第2移動子221は、筒部210の内側面212aと非接触の状態で支持部222に支持されるため、移動時に摩擦抵抗を受けない。このため、第1移動子220および第2移動子221が内部空間212を、第1空間R1と第2空間R2との間の圧力差によって上下方向に移動するとき、摩擦抵抗に妨げられることなく、円滑に移動できる。上記のとおり、第1空間R1と第2空間R2とに供給される空気圧の圧力差により、カッターホイール101に基板Fに対するスクライブ荷重が生じる。したがって、第1空間R1と第2空間R2との圧力差によって、カッターホイール101の基板Fに対するスクライブ荷重を微細かつ安定的に調節できる。
【0112】
図10は、スクライブヘッド10の構成を示すブロック図である。
【0113】
図10に示すように、スクライブヘッド10は、図2に示したプレート12、カッターホイール101、移動機構200、測定部300、および撮像部400と、を備え、さらに、制御部510と、圧力付与部500と、駆動部520と、を備える。
【0114】
圧力付与部500は、図示しない空圧源を含み、筒部210の内部空間212すなわち第1空間R1および第2空間R2に、個別に空気圧を供給する。
【0115】
駆動部520は、プレート12を基板Fに対して上下方向に移動させる。上記したとおり、プレート12には、移動機構200の筒部210および測定部300の台330が固定されている。このため、プレート12が上下方向に移動すると、筒部210、台330、および台330に載置されているロードセル310が上下方向に移動する。
【0116】
制御部510は、CPU等の演算処理回路や、ROM、RAM、ハードディスク等のメモリを含んでいる。制御部510は、メモリに記憶されたプログラムに従って各部を制御する。
【0117】
次に、スクライブヘッド10の動作について、図11(a)~図14を参照して説明する。なお、これらの動作は、図10の制御部510により行われる。
【0118】
図11(a)、(b)、図12(a)、(b)は、プレート12および移動機構200をX-Z平面に平行な面で切断した断面であって、Y軸負側から見た場合の断面を模式的に示した断面図である。
【0119】
また、図13は、基板Fの表面F1にカッターホイール101が当接したときの、スクライブヘッド10をY軸負側から見た場合の側面図である。
【0120】
制御部510が圧力付与部500に、第1空間R1および第2空間R2のそれぞれに略同一の空気圧を供給させた場合、第1移動子220、第2移動子221、および伝達部230は、図11(a)に示すように、Z軸方向において基板Fの表面F1に対して位置M0に位置付けられる。
【0121】
図11(b)に示すように、制御部510が圧力付与部500に、第2空間R2の方が第1空間R1よりも圧力が高くなるように、第1空間R1および第2空間R2に個別に空気圧を供給させた場合、第1空間R1および第2空間R2の圧力差により、第2移動子221は上方に押圧される。よって、第2移動子221および第1移動子220は、上方に移動する。これにより、伝達部230は、基板Fの表面F1に対して位置M0よりも第1空間R1側の位置M1に位置付けられる。
【0122】
図12(a)に示すように、制御部510が圧力付与部500に、第1空間R1の方が第2空間R2よりも圧力が高くなるように、第1空間R1および第2空間R2に個別に空気圧を供給させた場合、第1空間R1および第2空間R2の圧力差により、第1移動子220は下方に押圧される。よって、第1移動子220および第2移動子221は下方に移動する。
【0123】
そして、伝達部230が基板Fの表面F1に対して位置M2に位置付けられる。このとき、図13に示すように、カッター機構100のカッターホイール101が基板Fの表面F1に当接する。このとき、プレート12は、基板Fの表面F1に対してZ軸方向の位置N0に位置付けられている。
【0124】
図13に示すように基板Fの表面F1にカッターホイール101が当接すると、図12(b)に示すように、制御部510は駆動部520にプレート12を基板Fの表面F1に対して位置N0から位置N1に移動させる。プレート12には筒部210が連結されているため、プレート12の移動とともに筒部210も移動する。
【0125】
図14(a)、(b)は、スクライブヘッド10をX軸正側から見た場合を模式的に示した正面図である。ただし、図14(a)、(b)では、カッター機構100および撮像部400は省略されており、プレート12、移動機構200、および測定部300のみ図示されている。
【0126】
図14(a)に示すように、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接するまでの間、当接部材320のナット321がロードセル310の突起311に当接する。この間、ロードセル310はカッターホイール101の荷重を測定する。
【0127】
そして、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接すると(図13参照)、図14(b)に示すように、プレート12が基板Fの表面F1に対して位置N0から下方に移動して位置N1に位置する。プレート12には、ロードセル310を支持する台330が連結されているため、プレート12が移動すると台330も移動する。これにより、台330が支持するロードセル310も移動するため、当接部材320の突起311からロードセル310が離間する。これは、図12(b)の状態に対応する。
【0128】
このように、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接すると、ロードセル310が当接部材320から離間する。すなわち、ロードセル310は、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接するまでの間、カッターホイール101の荷重を測定している。したがって、ロードセル310が当接部材320から離間する直前に測定された荷重は、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接したときの荷重である。すなわち、このときの測定値は、カッターホイール101の基板Fに対するスクライブ荷重である。
【0129】
制御部510は、ロードセル310による測定結果(ロードセル310が当接部材320から離間する直前に測定されたスクライブ荷重)により、予め設定されたスクライブ荷重と比較して、スクライブ荷重を校正する。
【0130】
次に、スクライブ荷重の校正について説明する。
【0131】
所定のスクライブ荷重で基板Fにスクライブラインを形成することが設定された場合、第1空間R1および第2空間R2の圧力差によって得られる推力が所定のスクライブ荷重となるように、制御部510は圧力付与部500に、第1空間R1および第2空間R2に空気圧を供給させる。このような所定のスクライブ荷重を得るために必要な空気圧(圧力付与部500により第1空間R1および第2空間R2に供給される空気圧)は、予め算出することが可能である。
【0132】
しかしながら、理論上計算された空気圧が第1空間R1および第2空間R2に供給されたとしても、たとえば、基板Fの種類やカッターホイール101の仕様や状態等がスクライブ荷重の変動に影響することにより、第1空間R1および第2空間R2の圧力差から所定のスクライブ荷重を得ることができない場合がある。そこで、所定のスクライブ荷重を得るため、予め試験等を繰り返し行うことで、第1空間R1および第2空間R2に供給される空気圧の校正値が算出されたデータテーブルが作成される。このようなデータテーブルは、スクライブヘッド10を制御するための制御部510に記憶される。所定のスクライブ荷重が設定されると、制御部510はデータテーブルを参照して、第1空間R1および第2空間R2に適切な空気圧を圧力付与部500に供給させる。このように、制御部510にデータテーブルが備えられている場合、所定のスクライブ荷重に設定することが可能である。
【0133】
一方、図14(a)に示すように、本実施形態に搭載されているロードセル310は、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接するまでの間、当接部材320に当接された状態で、カッターホイール101の荷重を継続して測定している。
【0134】
そして、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接すると(図13参照)、図14(b)に示すように、ロードセル310と当接部材320とが離間する。このため、ロードセル310から当接部材320が離間する直前に測定された荷重は、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接したときの荷重、すなわち、スクライブ荷重に相当する。
【0135】
制御部510は、このようにして測定されたスクライブ荷重と設定されたスクライブ荷重とを比較して、所定のスクライブ荷重が基板Fに付与されるよう、圧力付与部500に適切な空気圧を供給させる。
【0136】
このように、本実施形態のスクライブヘッド10は、スクライブラインを形成する直前のスクライブ荷重を測定できる。つまり、スクライブラインを形成する際、必ずスクライブ荷重が測定されるため、その都度、適切な圧力が第1空間R1および第2空間R2に供給される。このため、上記したようなデータテーブルは不要である。
【0137】
また、データテーブルを参照してスクライブ荷重が調節されると、スクライブ動作の直前であらためてスクライブ荷重の測定が行われていない場合がある。この場合、基板Fにスクライブ荷重が付与されてはいるが、真に所定のスクライブ荷重が付与されているのか不明である。
【0138】
これに対し、本実施形態のスクライブヘッド10は、スクライブ動作を行う直前のスクライブ荷重が必ず測定される。よって、スクライブ荷重の信頼性が高まり、設定されたスクライブ荷重でスクライブラインを形成することができる。
【0139】
<実施形態の効果>
本実施の形態によれば、以下の効果が奏される。
【0140】
図2図6(a)、(b)に示すように、スクライブヘッド10は、圧力付与部500から第1空間R1および第2空間R2に、個別に、空気圧を供給する。
【0141】
これにより、第1空間R1および第2空間R2の圧力差によって、第1移動子220および第2移動子221が上下方向、つまり、基板Fと反対側が基板F側に移動する。これにより、第1移動子220および第2移動子221と伝達部230を介して連結されているカッター機構100が上下方向に移動する。よって、カッターホイール101は基板Fに対して上下方向に移動する。
【0142】
この場合、第1移動子220および第2移動子221と筒部210の内側面212aとの間に隙間が生じている。このため、第1空間R1および第2空間R2に圧力付与部500から供給された空気は、この隙間を通って開口214から筒部210の外部へ排気される。
【0143】
このように、隙間を空気が通ることにより、第1移動子220および第2移動子221は、筒部210の内側面212aから離れる方向に圧力を受け、この圧力が均衡した位置に調心される。したがって、第1移動子220および第2移動子221は、筒部210の内側面212aから離間した状態で、調心位置に支持される。第1移動子220および第2移動子221は、筒部210の内側面212aに対して非接触の状態で支持されるため、移動している間、摩擦抵抗を受けない。よって、第1移動子220および第2移動子221は、内部空間212を滑らかに移動できる。このため、第1空間R1と第2空間R2との間の圧力差によって、カッターホイール101のスクライブ荷重を微細かつ安定的に調節できる。
【0144】
図5(a)に示すように、第1移動子220および第2移動子221は球であり、筒部210の内部空間212は円柱形状である。
【0145】
この構成により、第1移動子220および第2移動子221と筒部210の内側面212aとの隙間がなだらかに小さくなるため、第1空間R1と第2空間R2とに圧力付与部500から供給される空気を円滑に流通させ得る。また、筒部210の内側面212aの最大径の緯線の全周に亘って隙間を均一にできるため、第1移動子220および第2移動子221の調心が円滑に行われ、且つ、第1移動子220および第2移動子221の全周に亘って非接触の状態にできる。よって、第1移動子220および第2移動子221は、内部空間212を非接触の状態で円滑に上下方向に移動することができる
図5(a)、図6(a)に示すように、第1移動子220および第2移動子221は、同径に形成されており、筒部210の内側面212aの径は一定である。
【0146】
この構成により、第1空間R1および第2空間R2の圧力差の調節が容易になる。また、同種の球を第1移動子220および第2移動子221として使用できるので、移動機構200構成を簡素化でき、組み立て作業が容易にできる。
【0147】
第1移動子220および第2移動子221は磁性材料により形成され、支持部222は第1移動子220および第2移動子221の離間方向の両端に磁石223、224を備える。
【0148】
この構成により、第1移動子220および第2移動子221が、支持部222に対して、離間方向に垂直な方向に移動可能になる。このため、支持部222が筒部210の径方向に移動不能であっても、第1移動子220および第2移動子221は、隙間に空気が流れることにより、支持部222に対して相対的に移動して、調心位置に位置付けられる。よって、第1移動子220および第2移動子221を円滑かつ適正に調心できる。その結果、内部空間212において、第1移動子220および第2移動子221をより適切に非接触な状態に設定できる。
【0149】
図5(a)、図6(a)に示すように、第1移動子220および第2移動子221に対する磁石223の上面223aおよび磁石224の下面224aは平面である。
【0150】
この構成により、第1移動子220および第2移動子221が磁石223、224に点接触するため、支持部222に対して第1移動子220および第2移動子221が移動しやすくなる。よって、第1移動子220および第2移動子221と筒部210の内側面212aとの隙間を流れる空気からの圧力により、第1移動子220および第2移動子221を円滑に調心位置に移動させることができる。
【0151】
図4図6(a)に示すように、伝達部230は開口214を介して支持部222に接続される。
【0152】
この構成により、開口214は、第1空間R1および第2空間R2に供給された空気の排出と、伝達部230の接続とに共用されるため、筒部210の構成を簡素化できる。
【0153】
また、たとえば、第1空間R1の圧力が第2空間R2よりも過剰に高い場合、基板Fの表面F1にカッターホイール101が当接しているのにも関わらず、さらに基板Fにスクライブ荷重が付与されようとする。このような場合、基板Fに過剰にスクライブ荷重が付与されて、基板Fが破損する等の虞がある。
【0154】
しかし、伝達部230のピン232は、開口214の範囲内で移動可能である。つまり、伝達部230の移動が規制される。よって、上記のような場合、第1移動子220および第2移動子221が下方に移動しようとしても、ピン232が開口214の下端に当接するため、第1移動子220および第2移動子221はそれ以上下方への移動することができない。これにより、基板Fに過剰なスクライブ荷重が付与される虞は生じない。
【0155】
図6(a)、(b)に示すように、ピン232がネジ226により支持部222の孔225内で固定されると、ピン232の端部が孔225から突出しないため、ピン232は筒部210の内側面212aに接触しない。また、伝達部230のピン232が支持部222の孔225に挿入されると、筒部210の側面211aと、溝231の底面231aとの間に隙間が生じ、また、伝達部230の側壁233、234と筒部210の側面210aとの間にも隙間が生じるように、伝達部230の溝231が突部211に嵌められる。
【0156】
このような構成により、伝達部230と筒部210との間の接触面積が低減される。このため、第1移動子220および第2移動子221が移動すると、伝達部230も移動するが、伝達部230と筒部210との間の摩擦抵抗が低減される。よって、カッターホイール101のスクライブ荷重をより微細に調節することができる。
【0157】
図12(b)~図14(b)に示すように、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接すると、当接部材320からロードセル310が離間する。ロードセル310は、当接部材320が離間する直前のカッターホイール101の荷重を測定する。この荷重は、カッターホイール101の基板Fに対するスクライブ荷重である。
【0158】
これにより、ユーザが設定したスクライブ荷重値と、ロードセル310が当接部材320から離間する直前に測定したスクライブ荷重値とが異なっていた場合、制御部510は、ロードセル310による測定値に応じて、圧力付与部500に対して第1空間R1および第2空間R2に適切な圧力を供給させる。このようにして、適切なスクライブ荷重が調節される。よって、スクライブ荷重の信頼性が高められた状態で、スクライブヘッド10はスクライブラインを形成することができる。
【0159】
また、スクライブ動作を開始する際、スクライブ荷重が測定される。この測定により、所定のスクライブ荷重が基板Fに付与されるよう、圧力付与部500から第1空間R1および第2空間R2に空気圧が供給される。このため、スクライブ荷重の校正値がデータ化されたデータテーブルをスクライブヘッド10に搭載する必要はない。
【0160】
また、カッターホイールが基板に当接した位置(0点位置)を検出するために、通常、カッターホイールの先端にセンサが設けられる。これにより、基板にカッターホイールが当接するとセンサが基板に接触して、0点位置が検出される。しかしながら、センサが基板に何度も接触するうちに、センサが劣化し、0点位置が正確に検出されない場合がある。このような場合、基板の表面の位置が特定されず、所定のスクライブラインを形成することができない。
【0161】
この点、上記のとおり、本実施形態のスクライブヘッド10では、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接するまでの間、ロードセル310はカッターホイール101の荷重を継続して測定している。そして、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接すると、ロードセル310が当接部材320から離間する。ロードセル310が当接部材320から離間する直前に荷重値が変化する。すなわち、荷重値が変化した時点が、基板Fの表面F1にカッターホイール101が当接した時点であり、このときのカッターホイール101の位置が0点位置である。
【0162】
よって、ロードセル310によりスクライブ荷重が得られると同時に、0点位置が検出される。このように、センサを用いることなく、高精度にカッターホイール101の0点位置を検出することができる。
【0163】
また、カッターホイール101が基板Fの表面F1に当接すると、プレート12が下方に移動し、当接部材320のナット321とロードセル310の突起311とが離間する。
【0164】
これにより、カッターホイール101は基板Fの表面F1に生ずるうねり(凹凸)に追従して上下方向に移動しながら、基板Fにスクライブラインを形成することができる。
【0165】
また、スクライブヘッド10が使用されていない間でも、第2空間R2には常時、圧力付与部500から一定の空気圧が付与され得る。これにより、カッター機構100が常時、上方に位置付けられる。すなわち、カッターホイール101は基板Fや載置部6等に対して常時、上方に位置付けられる。よって、スクライブヘッド10の不使用時、スクライブヘッド10が自重により落下してカッターホイール101が基板Fや載置部6等に衝突して破損することを確実に防止することができる。
【0166】
<変形例>
上記の実施形態では、載置部6が回転して基板Fを回転することにより、スクライブラインの形成方向を90°変更することができるが、変形例として、カッターホイール101自体が90°回転するように構成されてもよい。この場合、図3(a)~(c)に示すカッターホイール101を保持するホルダユニット110が回転可能なように構成される。
【0167】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0168】
1…スクライブ装置
6…載置部
11…移送部
10…スクライブヘッド
100…カッター機構
101…カッターホイール
200…移動機構
210…筒部
212…内部空間
212a…筒部の内側面
214…開口
220…第1移動子
221…第2移動子
222…支持部
223、224…磁石
223a…上面(接触面)
224a…下面(接触面)
225…孔
230…伝達部
232…ピン
300…測定部
310…ロードセル
320…当接部材
500…圧力付与部
F…基板
R1…第1空間
R2…第2空間
図1
図2
図3
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