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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】検査方法および検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20220126BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020199290
(22)【出願日】2020-12-01
【審査請求日】2020-12-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520470213
【氏名又は名称】鈴木 勇祐
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勇祐
(72)【発明者】
【氏名】村井 弘道
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-214734(JP,A)
【文献】国際公開第2011/115142(WO,A1)
【文献】特開2008-229025(JP,A)
【文献】特開2006-177852(JP,A)
【文献】特開平08-075665(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199518(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査面における被検査位置にメッシュ状に近赤外線光を照射した状態で、前記近赤外線光の波長を通過帯域とする帯域通過フィルタを介して、ドローンに搭載したカメラから前記被検査面の法線方向に対して第1角度で前記被検査位置を撮影して第1画像を取得する第1画像取得ステップと、
前記被検査位置にメッシュ状に近赤外線光を照射した状態で、前記近赤外線光の波長を通過帯域とする帯域通過フィルタを介して、ドローンに搭載したカメラから前記被検査面の法線方向に対して前記第1角度とは異なる第2角度で前記被検査位置を撮影して第2画像を取得する第2画像取得ステップと、
前記第1角度をθ1とし、前記第2角度をθ2としたとき、前記第2画像の各画素の明るさを(cosθ1/cosθ2)倍することによって、前記第1角度と前記第2角度の違いに起因する、前記被検査位置における光の反射量の違いを正規化した上で、前記第1画像と前記第2画像との差を算出する差分算出ステップと、を備える検査方法。
【請求項2】
前記第1画像と前記第2画像との差に基づいて前記被検査位置に凹凸が存在するか否かを判定する判定ステップを備える、請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記第1角度は、前記被検査面と正対する角度である、請求項1または2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記第1画像取得ステップおよび前記第2画像取得ステップでは、前記ドローンに搭載した光源から前記被検査位置に光を照射する、請求項1乃至のいずれかに記載の検査方法。
【請求項5】
前記第1画像取得ステップおよび前記第2画像取得ステップでは、前記ドローンに搭載された光学部材を介して前記光源から前記被検査位置に光を照射する、請求項に記載の検査方法。
【請求項6】
被検査面における被検査位置に光を照射する光源と、
前記被検査位置にメッシュ状に近赤外線光が照射された状態で、前記近赤外線光の波長を通過帯域とする帯域通過フィルタを介して、前記被検査面の法線方向に対して第1角度で前記被検査位置を撮影して第1画像を取得するとともに、前記被検査位置にメッシュ状に近赤外線光が照射された状態で、前記近赤外線光の波長を通過帯域とする帯域通過フィルタを介して、前記被検査面の法線方向に対して前記第1角度とは異なる第2角度で前記被検査位置を撮影して第2画像を取得する、ドローンに搭載した1以上のカメラと、
前記第1角度をθ1とし、前記第2角度をθ2としたとき、前記第2画像の各画素の明るさを(cosθ1/cosθ2)倍することによって、前記第1角度と前記第2角度の違いに起因する、前記被検査位置における光の反射量の違いを正規化した上で、前記第1画像と前記第2画像との差を算出する差分算出部と、を備える検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査方法および検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象の表面に凹凸があるか否かの検査をするにあたって、凹凸と黒線のような汚れとを区別するのは容易ではない。この点、特許文献1の表面検査装置によれば、薄鋼板や厚鋼板の表面における凹凸キズと汚れとを識別できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-177852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、より精度よく検査を行える検査方法および検査システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、被検査面における被検査位置に光を照射した状態で、前記被検査面に対して第1角度で前記被検査位置を撮影して第1画像を取得する第1画像取得ステップと、前記被検査位置に光を照射した状態で、前記被検査面に対して前記第1角度とは異なる第2角度で前記被検査位置を撮影して第2画像を取得する第2画像取得ステップと、前記第1角度と前記第2角度の違いに起因する、前記被検査位置における光の反射量の違いを正規化した上で、前記第1画像と前記第2画像との差を算出する差分算出ステップと、を備える検査方法が提供される。
【0006】
検査方法は、前記第1画像と前記第2画像との差に基づいて前記被検査位置に凹凸が存在するか否かを判定する判定ステップを備えてもよい。
【0007】
前記第1角度は、前記被検査面と正対する角度であってもよい。
【0008】
前記第1画像取得ステップおよび前記第2画像取得ステップでは、前記被検査位置に近赤外線光を照射した状態で、前記近赤外線光の波長を通過帯域とする帯域通過フィルタを介して前記被検査位置を撮影することによって、前記第1画像および前記第2画像をそれぞれ取得してもよい。
【0009】
前記第1画像取得ステップおよび前記第2画像取得ステップでは、前記被検査位置にメッシュ状に光を照射してもよい。
【0010】
前記第1画像取得ステップおよび前記第2画像取得ステップでは、移動体に搭載したカメラから撮影することによって前記第1画像および前記第2画像をそれぞれ取得してもよい。
【0011】
前記第1画像取得ステップおよび前記第2画像取得ステップでは、移動体に搭載した光源から前記被検査位置に光を照射してもよい。
【0012】
前記第1画像取得ステップおよび前記第2画像取得ステップでは、前記移動体に搭載された光学部材を介して前記光源から前記被検査位置に光を照射してもよい。
【0013】
本発明の別の態様によれば、被検査面における被検査位置に光を照射する光源と、前記被検査位置に光が照射された状態で、前記被検査面に対して第1角度で前記被検査位置を撮影して第1画像を取得するとともに、前記被検査位置に光が照射された状態で、前記被検査面に対して前記第1角度とは異なる第2角度で前記被検査位置を撮影して第2画像を取得する1以上のカメラと、前記第1角度と前記第2角度の違いに起因する、前記被検査位置における光の反射量の違いを正規化した上で、前記第1画像と前記第2画像との差を算出する差分算出部と、を備える検査システムが提供される。
【発明の効果】
【0014】
撮影角度に起因する被検査位置における光の反射量の違いを正規化するため、精度よく検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】反射面における理想的な拡散反射モデルを模式的に示す図。
図2】本実施形態における測定手法の概略を説明する図。
図3A】被検査位置A-Bに凹凸も黒線もない場合を説明する図。
図3B】被検査位置A-Bに凹凸も黒線もない場合を説明する図。
図4A】被検査位置A-Bに凹凸がある場合を説明する図。
図4B】被検査位置A-Bに凹凸がある場合を説明する図。
図5A】被検査位置A-Bに黒線がある場合を説明する図。
図5B】被検査位置A-Bに黒線がある場合を説明する図。
図6】一実施形態に係る検査システムの概略構成を示すブロック図。
図7】検査システムの処理動作の一例を示すフローチャート。
図8】カメラCx,Cyの配置例を模式的に示す図。
図9】被検査面が移動する場合を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0017】
上述した特許文献1に開示された手法は光切断法を応用したものであって、照射する光のラインの位置ずれをカメラで識別しているが、薄鋼板や厚鋼板といった検査対象における光の反射量が反射角度に依存することを考慮していない。加えて、光切断法においては、照射する光のライン幅より小さな凹凸を検知するのは極めて困難である。そのため、特許文献1の手法では、必ずしも精度よく被検査物における凹凸を検出できるとは限らないことに本願発明者らは気づいた。
【0018】
そこで、本実施形態では、光の反射量が反射角度に依存することを考慮し、より高精度に被検査面の凹凸を検出できるようにした。まずは、その原理を説明する。
【0019】
図1は、反射面における理想的な拡散反射モデルを模式的に示す図である。本明細書では、反射面の法線方向を基準とする角度を「反射面に対する角度」と呼ぶ。なお、前提として、反射量は光の入射角度には依存しない。
【0020】
図示のように、法線方向への反射量は高く、反射面に対する角度θが大きいほど反射量は低くなる。具体的には、法線方向への反射量(光の強度)がI0である場合、反射面に対して角度θをなす方向への反射量(光の強度)はI0cosθとなる(ランベルトの原理)。
【0021】
図2は、本実施形態における測定手法の概略を説明する図である。同図における被検査位置は、被検査面Tにおける点Aと点Bとの間である(以下「被検査位置A-B」という)とする。
【0022】
本実施形態の一例では、被検査位置A-Bに光を照射した状態で、被検査位置A-BをカメラCx,Cyで撮影して2つの画像IMGx,IMGyをそれぞれ取得する。ここで、被検査面Tに対するカメラCx,Cyの撮影角度(カメラCx,Cyの光軸と法線方向とのなす角、以下同じ)は互いに異なる。説明を簡略化するため、カメラCxの撮影角度を0度(すなわち、被検査面Tに正対)とし、カメラCyの撮影角度をθとする。そして、撮影角度が異なる2つの画像を以下のような正規化を行った上で比較することによって、黒線を検出することなく、凹凸を検出できる。
【0023】
なお、本実施形態では、カメラCx,Cyと被検査面Tとの距離が10m程度、カメラCx,Cyの画角が30度程度であることを想定している。この場合、被検査位置A-B間における任意の位置と、カメラCx,Cyとの距離はほぼ一定とみなせる。
【0024】
図3Aおよび図3Bは、被検査位置A-Bに凹凸も黒線もない場合を説明する図である。
【0025】
図3A(a)および図3A(b)は、それぞれ、カメラCx,Cyからの画像IMGx,IMGyにおける被検査位置A-B間に対応する画素の明るさIx,Iyを示している。被検査位置A-B間に凹凸も黒線もない場合、両画像IMGx,IMGyにおける被検査位置A-B間に対応する画素の明るさIx,Iyは一定値である。より具体的には、図1で述べた理由により、画像IMGxにおける明るさIxがI0である場合、画像IMGyにおける明るさIyはI0cosθである。なお、図3Aの符号aで示すベクトルの大きさが明るさI0に対応しており、符号bで示すベクトルの大きさが明るさI0cosθに対応している。
【0026】
図3B(a)は図3A(a)の再掲である。
【0027】
図3B(b)は、図3A(b)に示す画像IMGyにおける被検査位置A-B間に対応する画素の明るさIyを正規化した明るさIy’を示している。ここでの正規化とは、カメラCx,Cyの撮影角度の違いをキャンセルするための処理であり、具体的には明るさIyをcosθで割ることでIy’が算出される。すなわち、Iy’=Iy/cosθである。図3A(b)に示したように、被検査位置A-Bに凹凸も黒線もない場合、明るさIy=I0cosθであるから、明るさIy’=Iy/cosθ=I0である。
【0028】
なお、正規化として、アフィン変換などにより、撮影角度の違いに起因する被検査位置の歪みを正規化する処理をさらに行ってもよい。
【0029】
図3B(c)は、明るさIx,Iy’の差dIを示している。上述したように、被検査位置A-Bに凹凸も黒線もない場合、明るさIx=Iy’=I0であるから、差dI=Ix-Iy’=0となる。
【0030】
このように、被検査位置A-Bに凹凸も黒線もない場合、差dIは0となる。
【0031】
図4Aおよび図4Bは、被検査位置A-Bに凹凸がある場合を説明する図である。図4Aは、被検査位置A-Bのうち、位置A-C間およびD-B間には凹凸も黒線もないが、位置C-Dに凹部(クラック)がある例を示している。説明を簡略化するため、この凹部の断面は位置C-D間の中央である位置Mが最も深い二等辺三角形状としている。
【0032】
図4A(a)はカメラCxからの画像IMGxにおける被検査位置A-B間に対応する画素の明るさIxを示している。位置A-C間および位置D-B間には凹凸も黒線もないので、明るさIxは一定値I0である。
【0033】
位置C-M間では、位置C-Mを含む面に対するカメラCxの撮影角度は法線方向からずれる(0度でなくなる)ため、明るさIxはI0より小さくなる。同様に、位置M-D間でも、位置M-Dを含む面に対するカメラCxの撮影角度は法線方向からずれるため、明るさIxはI0より小さくなる。なお、図4Aの符号cで示すベクトルの大きさが位置C-M間およびM-D間の明るさIxに対応している。
【0034】
図4A(b)はカメラCyからの画像IMGyにおける被検査位置A-B間に対応する画素の明るさIyを示している。位置A-C間および位置D-B間には凹凸も黒線もないので、明るさIyは一定値I0cosθである。
【0035】
位置C-M間では、位置C-Mを含む面に対するカメラCyの撮影角度は法線方向に近づく(θより小さくなる)ため、明るさIyはI0cosθより大きくなる。なお、図4Aの符号dで示すベクトルの大きさが位置C-M間の明るさIyに対応している。
【0036】
位置M-D間では、位置M-Dを含む面に対するカメラCyの撮影角度は法線方向から大きくずれてほとんど90度となる(撮影角度が位置M-Dを含む面とほぼ平行となる)ため、明るさIyはほとんど0となる。
【0037】
図4B(a)は図4A(a)の再掲である。
【0038】
図4B(b)は、図4A(b)に示す画像IMGyにおける被検査位置A-B間に対応する画素の明るさIyを正規化した明るさIy’を示している。同図に示すように、被検査位置A-Bのうち位置A-C間およびD-B間には凹凸も黒線もないため、明るさIy’=Iy/cosθ=I0である。被検査位置A-Bのうち位置C-M間では、明るさIy>I0cosθであるから、Iy’>I0である。被検査位置A-Bのうち位置M-D間では、明るさIy<I0cosθであるから、Iy’<I0である。いずれにしても、位置C-D間では、明るさIy’≠I0である。
【0039】
図4B(c)は、明るさIx,Iy’の差dIを示している。上述したように、被検査位置A-Bのうち位置A-C間およびD-B間では、明るさIx=Iy’=I0であるから、差dI=Ix-Iy’=0となる。一方、凹凸がある位置C-D間は明るさIy’≠I0であるから、差dI≠0となる。
【0040】
このように、被検査位置A-Bのうち、凹凸も黒線もない位置では差dIが0となり、凹凸がある位置では差dIが0でなくなる。よって、差dIに基づいて凹凸があること、および、その位置を特定できる。
【0041】
図5Aおよび図5Bは、被検査位置A-Bに黒線がある場合を説明する図である。図5Aは、被検査位置A-Bのうち、位置A-C間およびD-B間には凹凸も黒線もないが、位置C-Dに黒線がある例を示している。
【0042】
図5A(a)はカメラCxからの画像IMGxにおける被検査位置A-B間に対応する画素の明るさIxを示している。位置A-C間および位置D-B間には凹凸も黒線もないので、明るさIx=I0である。
【0043】
一方、位置C-D間では、黒線によって反射量が低くなる(ここでは1/kになるとする)。よって、明るさIx=I0/kとなる。なお、図5Aの符号eで示すベクトルの大きさが位置C-D間の明るさIx(=I0/k)に対応している。
【0044】
図5A(b)はカメラCyからの画像IMGyにおける被検査位置A-B間に対応する画素の明るさIyを示している。位置A-C間および位置D-B間には凹凸も黒線もないので、明るさIyは一定値I0cosθである。
【0045】
一方、位置C-D間では、黒線によって反射量が1/kになる。よって、明るさIy=I0cosθ/kとなる。なお、図5Aの符号fで示すベクトルの大きさが位置C-D間の明るさIy(=I0cosθ/k)に対応している。
図5B(a)は図5A(a)の再掲である。
【0046】
図5B(b)は、図5A(b)に示す画像IMGyにおける被検査位置A-B間に対応する画素の明るさIyを正規化した明るさIy’を示している。同図に示すように、被検査位置A-Bのうち位置A-C間およびD-B間には凹凸も黒線もないため、明るさIy’=Iy/cosθ=I0である。被検査位置A-Bのうち位置C-D間では、明るさIy=I0cosθ/kであるから、Iy’=I0/kである。
【0047】
図5B(c)は、明るさIx,Iy’の差dIを示している。上述したように、被検査位置A-Bのうち位置A-C間およびD-B間では、明るさIx=Iy’=I0であるから、差dI=Ix-Iy’=0となる。一方、黒線ある位置C-D間は明るさIx=Iy’=I0/kであるから、差dI=0となる。
【0048】
このように、被検査位置A-Bのうち、凹凸も黒線もない位置でも、黒線がある位置でも、いずれにしても差dIが0となる。よって、黒線は検出されない。
【0049】
以上、図3A図5Bを用いて説明したように、本実施形態では、被検査面Tにおける被検査位置A-Bを2つの角度から撮影した2つの画像を、角度の違いに起因する光の反射量の違いを正規化した上で比較する。これにより、黒線を検出することなく、精度よく凹凸を検出できる。
【0050】
図6は、一実施形態に係る検査システムの概略構成を示すブロック図である。
【0051】
検査システムは、上述したカメラCx,Cyに加え、光源LSを備え得る。光源LSは、例えばレーザであって、被検査面における被検査位置に光を照射する。光の種類に特に制限はなく、可視光でもよいが、近赤外光であるのが望ましい。特に屋外で検査を行う場合に、太陽光などの外光の影響を受けにくいためである。この場合、近赤外光の波長を通過帯域とする帯域通過フィルタFx,Fyを介してカメラCx,Cyが撮影を行うのが望ましい。
【0052】
光照射の一例として、検査システムが光学部材OMを備え、光源LSからの光が光学部材OMを介して被検査位置に照射されてもよい。光学部材OMは、例えば、ポリゴンミラーなどのミラーである。光源LSからのレーザ光はコリメートされている。よって、ポリゴンミラーなどの光学部材OMを用いる場合、光源LSから被検査位置への距離において光の拡がりはごく僅かであり、また、被検査位置に到達するまでの光の減衰は無視できる程度である。
【0053】
光照射の別の例として、光学部材OMが、ロッドレンズ、シリンドリカルレンズ、パウエルレンズなどのレンズであって、光源LSからの光が光学部材OMを介して光を拡げられることにより、ラインビームを被検査位置に照射してもよい。仮に光源LSからの光が減衰したとしても、光を意図的に拡げることで検査が可能となる。ラインビームの強度分布が一定となるようレンズ系を設計することにより、被検査位置におけるいずれの点においても一定強度の光が照射される。
【0054】
また、照射する光の形状はライン状に限らず、例えば、互いに直交する複数のライン(縦方向のラインと横方向のライン)から構成されるメッシュ状(格子状)でもよい。メッシュ状とすることで、1度の撮影でより多くの位置を検査できる。
【0055】
なお、被検査位置において照射される光の強度にムラがある場合、強度分布を予め取得してキャリブレーションすることによって、強度ムラの影響を抑制できる。
【0056】
検査システムが移動体1を備え、カメラCx,Cy、光源LS、光学部材OMの一部または全部が移動体1に搭載されてもよい。カメラCx,Cyを移動体1に固定することで、撮影角度を一定に保てる。この場合、カメラCx,Cyは光軸が互いに非平行になるよう配置されるのがよい。移動体1に特に制限はないが、例えば検査対象が道路である場合には車両が好適であり、検査対象が風力発電装置のブレードである場合はドローンが好適である。
【0057】
また、検査システムは検査装置2を備える。検査装置2は、画像取得部21と、正規化部22と、差分算出部23と、判定部24と、制御部25とを有する。これら各部の一部または全部は、ハードウェアで実装されてもよいし、プロセッサが所定のプログラムを実行することによって実現されてもよい。また、検査装置2の各部は、一台の装置に設けられてもよいし、複数の装置に分散して設けられてもよい。
【0058】
画像取得部21は、カメラCxによる撮影で得られた画像IMGxと、カメラCyによる撮影で得られた画像IMGyとを取得する。画像IMGx,IMGyは不図示のディスプレイに表示されてもよい。
【0059】
正規化部22は、カメラCx,Cyによる撮影角度の違いを正規化して、画像IMGyを正規化した正規化画像を生成する。
【0060】
具体的には、正規化部22は、撮影角度の違いに起因する、被検査面における光の反射量の違いを正規化する。さらに具体的には、カメラCxによる撮影角度がθ1で、カメラCyによる撮影角度がθ2である場合、正規化部22は、画像IMGyの各画素の明るさを(cosθ1/cosθ2)倍することによって、正規化画像を生成する。正規化画像は不図示のディスプレイに表示されてもよい。
【0061】
また、正規化部22は撮影角度の違いに起因する被検査位置の歪みを正規化してもよい。具体的には、正規化部22は、画像IMGyに対してアフィン変換を行って、撮影方向を揃えてもよい。
【0062】
差分算出部23は、画像IMGxと正規化画像との差を算出し、差分画像を生成する。すなわち、差分算出部23は、カメラCx,Cyの撮影角度の違いに起因する、被検査位置における光の反射量の違いを正規化した上で、画像IMGxと画像IMGyとの差を算出する。差分画像は不図示のディスプレイに表示されてもよい。
【0063】
判定部24は、差分画像(すなわち、画像IMGxと正規化画像との差)に基づいて、被検査位置に凹凸が存在するか否かを判定する。具体的には、判定部24は、差分画像における明るさと、所定の閾値との比較によって判定を行う。例えば、判定部24は、被検査位置のうち、明るさが閾値未満である画素に対応する位置には凹凸がないと判定し、明るさが閾値以上である画素に対応する位置には凹凸があると判定する。このような判定により、凹凸の有無および凹凸がある場合の位置を検出できる。
【0064】
制御部25はカメラCx,Cyおよび光源LSを制御する。具体的には、制御部25は、カメラCx,Cyによる撮影タイミングや、光源LSによる光照射タイミングを制御する。
【0065】
図7は、検査システムの処理動作の一例を示すフローチャートである。光源LSから被検査位置に光を照射した状態で、カメラCxが所定の撮影角度(例えば正対する角度)で被検査位置を撮影して得られる画像IMGxを画像取得部21が取得する(ステップS21)。また、光源LSから被検査位置に光を照射した状態で、カメラCyが所定の撮影角度(例えば正対から外れた角度)で被検査位置を撮影して得られる画像IMGyを画像取得部21が取得する(ステップS22)。なお、画像IMGx,IMGyの取得は順次に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0066】
続いて、正規化部22は、カメラCxによる撮影角度とカメラCyによる撮影角度を正規化する(ステップS23)。特に、正規化部22は、撮影角度の違いに起因する、被検査位置における光の反射量を正規化し、カメラCyからの画像IMGyを正規化して正規化画像を生成する。そして、差分算出部23はカメラCxからの画像IMGxと正規化画像との差を算出し、差分画像を生成する(ステップS24)。差分画像に基づいて、判定部24は被検査位置に凹凸が存在するか否か、存在する場合にはその位置を判定する。
【0067】
以上述べたように、本実施形態では、互いに異なる撮影角度で被検査位置を撮影して2つの画像を生成し、撮影角度の違いを正規化した上で2つの画像を比較する。そのため、精度よく被検査位置における凹凸を検出できる。
【0068】
なお、図6に示した検査システムの構成および図7に示した検査システムの処理動作は例示にすぎず、種々の変形が可能である。
【0069】
例えば、図8に示すように、2つのカメラCx,Cyの光軸が平行になるよう配置し、画角における異なる位置に被検査位置A-Bが位置するようにしてもよい。
【0070】
また、カメラは1台でもよい。すなわち、被検査位置に光を照射した状態で、カメラを用いてある撮影角度で撮影を行い、続いて、撮影角度を変更して同一カメラを用いて撮影を行ってもよい。あるいは、カメラは固定で被検査面が移動してもよい。すなわち、図9に示すように、被検査面がある場所P1にある時に被検査位置A-Bに光を照射した状態でカメラが撮影を行い、続いて、被検査面が移動して別の場所P2にある時に被検査位置A-Bに光を照射した状態でカメラが撮影を行ってもよい。
【0071】
さらに、図7に示した処理動作の一部を人が行ってもよい。例えば、検査装置2によって生成された差分画像を見ながら、人が凹凸の有無や凹凸の位置を判定してもよい。
【0072】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0073】
Cx,Cy カメラ
LS 光源
OM 光学部材
Fx,Fy 帯域通過フィルタ
1 移動体
2 検査装置
21 画像取得部
22 正規化部
23 差分算出部
24 判定部
25 制御部
【要約】
【課題】より精度よく検査を行える検査方法および検査システムを提供する。
【解決手段】被検査面における被検査位置に光を照射した状態で、前記被検査面に対して第1角度で前記被検査位置を撮影して第1画像を取得する第1画像取得ステップと、前記被検査位置に光を照射した状態で、前記被検査面に対して前記第1角度とは異なる第2角度で前記被検査位置を撮影して第2画像を取得する第2画像取得ステップと、前記第1角度と前記第2角度の違いに起因する、前記被検査位置における光の反射量の違いを正規化した上で、前記第1画像と前記第2画像との差を算出する差分算出ステップと、を備える検査方法が提供される。
【選択図】図7
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9