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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】コアカッター及びそれを用いる切削方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/04 20060101AFI20220126BHJP
   B23B 45/14 20060101ALI20220126BHJP
   B23B 35/00 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
B23B51/04 S
B23B45/14
B23B51/04 Z
B23B35/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020532150
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2019012925
(87)【国際公開番号】W WO2020021771
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2018140174
(32)【優先日】2018-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137845
【氏名又は名称】株式会社ミヤナガ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮永 昌明
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-181589(JP,A)
【文献】実開昭62-111811(JP,U)
【文献】特表2011-506112(JP,A)
【文献】実開平01-071011(JP,U)
【文献】実開昭63-070820(JP,U)
【文献】特開平04-105810(JP,A)
【文献】特開2007-083324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 35/00-51/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴部と、前記胴部の先端から突出するように配置されるチップ状の刃体とを備え、前記胴部がその軸線を回転軸として回転されることで前記刃体が被切削物を切削するよう構成されたコアカッターであって、
前記胴部の先端には、前記胴部の回転方向における前記刃体の前方に前記刃体に隣接して切欠きが形成され、
前記切欠きの前記胴部の先端における周方向に沿った幅が1.0mm以下であり、
前記刃体のすくい角が負の角度であること特徴とする、コアカッター。
【請求項2】
前記刃体は、前記胴部の先端から突出する出代部と、前記胴部の先端よりも基端側に設けられ、前記胴部に固定される被固定部とを含み、
前記切欠きは、その先端から基端までの全域において前記胴部の周方向に沿った幅が1.0mm以下であり、且つ、その基端が前記刃体の被固定部の基端よりも前記胴部の先端側に位置する、請求項1に記載のコアカッター。
【請求項3】
円筒状の胴部と、前記胴部の先端から突出するように配置されるチップ状の刃体とを備え、前記胴部がその軸線を回転軸として回転されることで前記刃体が被切削物を切削するよう構成されたコアカッターであって、
前記胴部の先端には、前記胴部の回転方向における前記刃体の前方に前記刃体に隣接して切欠きが形成され、
前記切欠きの前記胴部の先端における周方向に沿った幅が1.0mm以下であり、
前記刃体は、前記胴部の先端から突出する出代部と、前記胴部の先端よりも基端側に設けられ、前記胴部に固定される被固定部とを含み、
前記切欠きは、先端部と、前記先端部の基端側に連設される主部とを含み、
前記先端部における前記胴部の周方向に沿った幅が1.0mm以下であり、前記主部における前記胴部の周方向に沿った幅が1.0mmよりも大きく、且つ、前記主部の基端が前記刃体の被固定部の基端よりも前記胴部の基端側に位置することを特徴とする、コアカッター。
【請求項4】
前記幅が0.5mm以上0.9mm以下である、請求項1乃至3のいずれかに記載のコアカッター。
【請求項5】
前記幅が0.6mm以上0.8mm以下である、請求項4に記載のコアカッター。
【請求項6】
前記刃体を複数備え、
前記刃体それぞれに対して前記切欠きが形成される、請求項1乃至5のいずれかに記載のコアカッター。
【請求項7】
前記刃体は、第1刃体と第2刃体とを有し、
前記第1刃体の先端と前記胴部の軸線との間の第1距離と、前記第2刃体の先端と前記胴部の軸線との間の第2距離とは互いに異なり、
前記第1刃体と前記第2刃体とは、前記胴部の周方向において交互に配置される、請求項6に記載のコアカッター。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のコアカッターを用いる切削方法であって、
前記コアカッターと、前記コアカッターを先端工具として取り付けるための電動ドリルと、その表面に凹凸を有する被切削物と、を準備する第1ステップと、
前記第1ステップを行ったあとで、前記コアカッターを前記電動ドリルに取り付ける第2ステップと、
前記第1及び前記第2ステップを行ったあとで、前記電動ドリルによって前記コアカッターをその軸線を回転軸として回転させながら、前記コアカッターをその先端側から前記凹凸の立ち上がり部分に対して前記立ち上がり部分が立ち上がる方向に沿って押し当て、前記凹凸の一部を切削する第3ステップと、を備えることを特徴とする、切削方法。
【請求項9】
前記第1ステップにおいて準備される被切削物は、その表面に少なくとも2つの凸部を有し、
前記第1ステップにおいて冶具をさらに準備し、前記冶具は、その底面が前記少なくとも2つの凸部それぞれの上端に当接した状態で前記被切削物に載置可能なベース部と、前記ベース部の上端の中央部に立設された筒状部と、前記コアカッターの胴部の外径寸法に対応して前記ベース部の底面から前記筒状部の上端まで穿設された貫通孔と、を有し、
前記第3ステップにおいて、前記少なくとも2つの凸部の間に前記ベース部の底面側から前記冶具の貫通孔を宛がい、前記少なくとも2つの凸部それぞれの上端に前記ベース部の底面を当接させた状態で前記被切削物に前記冶具を載置し、そのあとで、前記電動ドリルによって前記コアカッターをその軸線を回転軸として回転させながら、前記被切削物に載置された前記冶具の貫通孔に前記冶具の上端側から前記コアカッターを挿入していくことで、前記少なくとも2つの凸部の一部を切削する、請求項8に記載の切削方法。
【請求項10】
前記第3ステップにおいて、前記冶具のベース部のうち前記被切削物の少なくとも2つの凸部の上端に載置された部分を前記少なくとも2つの凸部の上端に固定したうえで、前記冶具の貫通孔に前記冶具の上端側から前記コアカッターを挿入していく、請求項9に記載の切削方法。
【請求項11】
前記第3ステップにおいて、前記冶具のベース部のうち前記被切削物の少なくとも2つの凸部の上端に載置された部分を、足で踏むことにより、前記少なくとも2つの凸部の上端に固定したうえで、前記冶具の貫通孔に前記冶具の上端側から前記コアカッターを挿入していく、請求項10に記載の切削方法。
【請求項12】
前記第3ステップにおいて、前記冶具のベース部のうち前記被切削物の少なくとも2つの凸部の上端に載置された部分を、固定具を用いることにより、前記少なくとも2つの凸部の上端に固定したうえで、前記冶具の貫通孔に前記冶具の上端側から前記コアカッターを挿入していく、請求項10に記載の切削方法。
【請求項13】
円筒状の胴部と、前記胴部の先端から突出するように配置されるチップ状の刃体とを有し、前記胴部の先端には、前記胴部の回転方向における前記刃体の前方に前記刃体に隣接して切欠きが形成され、前記切欠きの前記胴部の先端における周方向に沿った幅が1.0mm以下であり、前記胴部がその軸線を回転軸として回転されることで前記刃体が被切削物を切削するよう構成されたコアカッターと、
前記コアカッターを先端工具として取り付けるための電動ドリルと、
その表面に少なくとも2つの凸部を有する被切削物と、
その底面が前記少なくとも2つの凸部それぞれの上端に当接した状態で前記被切削物に載置可能なベース部と、前記ベース部の上端の中央部に立設された筒状部と、前記コアカッターの胴部の外径寸法に対応して前記ベース部の底面から前記筒状部の上端まで穿設された貫通孔と、を有する冶具と、を準備する第1ステップと、
前記第1ステップを行ったあとで、前記コアカッターを前記電動ドリルに取り付ける第2ステップと、
前記第1及び前記第2ステップを行ったあとで、前記被切削物の少なくとも2つの凸部の間に前記ベース部の底面側から前記冶具の貫通孔を宛がい、前記少なくとも2つの凸部それぞれの上端に前記ベース部の底面を当接させた状態で前記被切削物に前記冶具を載置し、前記冶具のベース部のうち前記少なくとも2つの凸部の上端に載置された部分を、足で踏むことにより、前記少なくとも2つの凸部の上端に固定したうえで、前記電動ドリルによって前記コアカッターをその軸線を回転軸として回転させながら、前記被切削物に載置された前記冶具の貫通孔に前記冶具の上端側から前記コアカッターを挿入していくことで、前記コアカッターをその先端側から前記少なくとも2つの凸部の立ち上がり部分に対して前記立ち上がり部分が立ち上がる方向に沿って押し当て、前記少なくとも2つの凸部の一部を切削する第3ステップと、を備えることを特徴とする、切削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアカッター及びそれを用いる切削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、円筒状の胴部と、当該胴部の先端から突出するように配置されるチップ状の刃体とを備え、胴部がその軸線を回転軸として回転されることで刃体が被切削物を切削するよう構成されたコアカッターが知られている。このようなコアカッターとして、例えば、特許文献1で提案されている木材用ホールカッターがある。
【0003】
特許文献1の木材用ホールカッターは、円筒状の胴部と、当該胴部の先端の開口縁に形成される複数の刃体とを備える。胴部には、切削の際に生じる切り屑を排出するために、複数の刃体それぞれに対応して切欠きが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-25009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1及びその他の従来からあるコアカッターは、一般に、切削の際に生じる切り屑を排出するために、円筒状の胴部の先端において刃体に隣接して切欠きが形成されている。しかし、前記従来からあるコアカッターは、凹凸のある被切削物を切削したとき、前記切欠きが前記凹凸を噛み込んでしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、凹凸のある被切削物を切削する場合であっても、前記凹凸を噛み込んでしまうことを防止することが可能な、コアカッター及びそれを用いる切削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係るコアカッターは、円筒状の胴部と、前記胴部の先端から突出するように配置されるチップ状の刃体とを備え、前記胴部がその軸線を回転軸として回転されることで前記刃体が被切削物を切削するよう構成されたコアカッターであって、前記胴部の先端には、前記胴部の回転方向における前記刃体の前方に前記刃体に隣接して切欠きが形成され、前記切欠きの前記胴部の先端における周方向に沿った幅が1.0mm以下であること特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、切り屑を排出するために胴部に形成される切欠きの前記胴部の先端における周方向に沿った幅が1.0mm以下であり、想定され得る被切削物の凹凸の立ち上がり部分の厚みよりも十分小さい。その結果、凹凸のある被切削物を切削する場合であっても、前記凹凸を噛み込んでしまうことを防止することが可能な、コアカッターを提供することが可能となる。
【0009】
前記刃体のすくい角が負の角度であってもよい。
【0010】
上記構成によれば、刃体の強度が向上される。
【0011】
前記幅が0.5mm以上0.9mm以下であってもよい。
【0012】
上記構成によれば、凹凸の噛み込みを防止することと、切り屑を十分に排出することとをバランス良く行うことが可能となる。
【0013】
前記幅が0.6mm以上0.8mm以下であってもよい。
【0014】
上記構成によれば、凹凸の噛み込みを防止することと、切り屑を十分に排出することとをいっそうバランス良く行うことが可能となる。
【0015】
前記刃体を複数備え、前記刃体それぞれに対して前記切欠きが形成されてもよい。
【0016】
上記構成によれば、複数の刃体で被切削物を切削するので、刃体それぞれにかかる負荷を低減することができる。これにより、刃体それぞれが損傷してしまうことをいっそう抑制することが可能となる。
【0017】
前記刃体は、第1刃体と第2刃体とを有し、前記第1刃体の先端と前記胴部の軸線との間の第1距離と、前記第2刃体の先端と前記胴部の軸線との間の第2距離とは互いに異なり、前記第1刃体と前記第2刃体とは、前記胴部の周方向において交互に配置されてもよい。
【0018】
上記構成によれば、被切削物を刃体の厚み分だけ適切に切削することができるので、被切削物を切削する際に、刃体及び胴部がスムーズに被切削物の厚み方向に進むことが可能となる。
【0019】
前記刃体は、前記胴部の先端から突出する出代部と、前記胴部の先端よりも基端側に設けられ、前記胴部に固定される被固定部とを含み、前記切欠きは、その先端から基端までの全域において前記胴部の周方向に沿った幅が1.0mm以下であり、且つ、その基端が前記刃体の被固定部の基端よりも前記胴部の先端側に位置してもよい。
【0020】
上記構成によれば、凹凸の噛み込みをいっそう防止することが可能となる。
【0021】
前記刃体は、前記胴部の先端から突出する出代部と、前記胴部の先端よりも基端側に設けられ、前記胴部に固定される被固定部とを含み、前記切欠きは、先端部と、前記先端部の基端側に連設される主部とを含み、前記先端部における前記胴部の周方向に沿った幅が1.0mm以下であり、前記主部における前記胴部の周方向に沿った幅が1.0mmよりも大きく、且つ、前記主部の基端が前記刃体の被固定部の基端よりも前記胴部の基端側に位置してもよい。
【0022】
上記構成によれば、凹凸の噛み込みを防止することと、切り屑を十分に排出することとをバランス良く行うことが可能となる。
【0023】
前記課題を解決するために、本発明の一つの側面からの切削方法は、上記いずれかのコアカッターを用いる切削方法であって、前記コアカッターと、前記コアカッターを先端工具として取り付けるための電動ドリルと、その表面に凹凸を有する被切削物と、を準備する第1ステップと、前記第1ステップを行ったあとで、前記コアカッターを前記電動ドリルに取り付ける第2ステップと、前記第1及び前記第2ステップを行ったあとで、前記電動ドリルによって前記コアカッターをその軸線を回転軸として回転させながら、前記コアカッターをその先端側から前記凹凸の立ち上がり部分に対して前記立ち上がり部分が立ち上がる方向に沿って押し当て、前記凹凸の一部を切削する第3ステップと、を備えることを特徴とする。
【0024】
上記構成によれば、本発明の一つの側面からの切削方法は、上記いずれかのコアカッターを用いることで、凹凸のある被切削物を切削する場合であっても、前記凹凸を噛み込んでしまうことを防止することが可能となる。
【0025】
前記第1ステップにおいて準備される被切削物は、その表面に少なくとも2つの凸部を有し、前記第1ステップにおいて冶具をさらに準備し、前記冶具は、その底面が前記少なくとも2つの凸部それぞれの上端に当接した状態で前記被切削物に載置可能なベース部と、前記ベース部の上端の中央部に立設された筒状部と、前記コアカッターの胴部の外径寸法に対応して前記ベース部の底面から前記筒状部の上端まで穿設された貫通孔と、を有し、前記第3ステップにおいて、前記少なくとも2つの凸部の間に前記ベース部の底面側から前記冶具の貫通孔を宛がい、前記少なくとも2つの凸部それぞれの上端に前記ベース部の底面を当接させた状態で前記被切削物に前記冶具を載置し、そのあとで、前記電動ドリルによって前記コアカッターをその軸線を回転軸として回転させながら、前記被切削物に載置された前記冶具の貫通孔に前記冶具の上端側から前記コアカッターを挿入していくことで、前記少なくとも2つの凸部の一部を切削してもよい。
【0026】
上記構成によれば、治具によってコアカッターの径方向における移動が規制されるため、被切削物の凹凸を切削する際にコアカッターが揺動してしまうことを防止することができる。その結果、被切削物に凹凸がある場合であっても、当該被切削物を所望するように切削することが可能となる。
【0027】
前記第3ステップにおいて、前記冶具のベース部のうち前記被切削物の少なくとも2つの凸部の上端に載置された部分を前記少なくとも2つの凸部の上端に固定したうえで、前記冶具の貫通孔に前記冶具の上端側から前記コアカッターを挿入していってもよい。
【0028】
上記構成によれば、被切削物に凹凸がある場合であっても、いっそう確実に、当該被切削物を所望するように切削することが可能となる。
【0029】
例えば、前記第3ステップにおいて、前記冶具のベース部のうち前記被切削物の少なくとも2つの凸部の上端に載置された部分を、足で踏むことにより、前記少なくとも2つの凸部の上端に固定したうえで、前記冶具の貫通孔に前記冶具の上端側から前記コアカッターを挿入していってもよい。
【0030】
例えば、前記第3ステップにおいて、前記冶具のベース部のうち前記被切削物の少なくとも2つの凸部の上端に載置された部分を、固定具を用いることにより、前記少なくとも2つの凸部の上端に固定したうえで、前記冶具の貫通孔に前記冶具の上端側から前記コアカッターを挿入していってもよい。
【0031】
前記課題を解決するために、本発明の他の側面からの切削方法は、円筒状の胴部と、前記胴部の先端から突出するように配置されるチップ状の刃体とを有し、前記胴部がその軸線を回転軸として回転されることで前記刃体が被切削物を切削するよう構成されたコアカッターと、前記コアカッターを先端工具として取り付けるための電動ドリルと、その表面に少なくとも2つの凸部を有する被切削物と、その底面が前記少なくとも2つの凸部それぞれの上端に当接した状態で前記被切削物に載置可能なベース部と、前記ベース部の上端の中央部に立設された筒状部と、前記コアカッターの胴部の外径寸法に対応して前記ベース部の底面から前記筒状部の上端まで穿設された貫通孔と、を有する冶具と、を準備する第1ステップと、前記第1ステップを行ったあとで、前記コアカッターを前記電動ドリルに取り付ける第2ステップと、前記第1及び前記第2ステップを行ったあとで、前記被切削物の少なくとも2つの凸部の間に前記ベース部の底面側から前記冶具の貫通孔を宛がい、前記少なくとも2つの凸部それぞれの上端に前記ベース部の底面を当接させた状態で前記被切削物に前記冶具を載置し、前記冶具のベース部のうち前記少なくとも2つの凸部の上端に載置された部分を、足で踏むことにより、前記少なくとも2つの凸部の上端に固定したうえで、前記電動ドリルによって前記コアカッターをその軸線を回転軸として回転させながら、前記被切削物に載置された前記冶具の貫通孔に前記冶具の上端側から前記コアカッターを挿入していくことで、前記コアカッターをその先端側から前記少なくとも2つの凸部の立ち上がり部分に対して前記立ち上がり部分が立ち上がる方向に沿って押し当て、前記少なくとも2つの凸部の一部を切削する第3ステップと、を備えることを特徴とする。
【0032】
上記構成によれば、本発明の他の側面からの切削方法は、治具によってコアカッターの径方向における移動が規制されるため、被切削物の凹凸を切削する際にコアカッターが揺動してしまうことを防止することができる。また、冶具を足で踏むことで当該冶具を被切削物に対して固定するので、被切削物の凹凸を切削する際に冶具が動いてしまうこともない。その結果、被切削物に凹凸がある場合であっても、当該被切削物を所望するように切削することが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、凹凸のある被切削物を切削する場合であっても、前記凹凸を噛み込んでしまうことを防止することが可能な、コアカッター及びそれを用いる切削方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一実施形態に係るコアカッターを示す図であり、(A)が正面図、(B)が底面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るコアカッターの第1刃体を示す拡大図であり、(A)が正面図、(B)が胴部を高さ方向に沿って切断して当該胴部の周方向に沿って第1刃体を見たときの図である。
図3】本発明の一実施形態に係るコアカッターの第2刃体を示す拡大図であり、(A)が正面図、(B)が胴部を高さ方向に沿って切断して当該胴部の周方向に沿って第2刃体を見たときの図である。
図4】本発明の一実施形態に係る切削方法の第1及び第2ステップを説明するための図である。
図5】本発明の一実施形態に係る切削方法の第1ステップで準備する被切削物の斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係る切削方法の第3ステップを行っている状態の図であり、(A)が斜視図、(B)が被切削物の凸部を高さ方向に沿って切断して当該凸部の長さ方向に沿って第1刃体を見たときの図である。
図7】本発明の一実施形態に係るコアカッターの第1変形例を示す図であり、(A)が正面図、(B)が底面図である。
図8】本発明の一実施形態に係るコアカッターの第1変形例の刃体を示す拡大正面図である。
図9】本発明の一実施形態に係るコアカッターの第2変形例を示す図であり、(A)が正面図、(B)が底面図である。
図10】本発明の一実施形態に係るコアカッターの第2変形例の刃体を示す拡大正面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る切削方法の第1変形例でコアカッターとともに用いる治具を被切削物に載置した状態を示す斜視図である。
図12】本発明の一実施形態に係る切削方法の第1変形例で被切削物を切削している様子を示す概略図である。
図13】本発明の一実施形態に係る切削方法の第2変形例で被切削物を切削している様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施形態に係るコアカッターについて図面を参照して説明する。なお、本実施形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0036】
(コアカッター10)
図1は、本発明の一実施形態に係るコアカッターを示す図であり、(A)が正面図、(B)が底面図である。図1に示すように、本実施形態に係るコアカッター10は、円筒状の胴部20と、当該胴部20の先端から突出するように配置されるチップ状の刃体30とを備える。コアカッター10は、胴部20がその軸線AXを回転軸として回転されることで刃体30が被切削物を切削するよう構成されている。
【0037】
なお、以下の説明において、コアカッター10の先端(図1において下端)と基端(同図において上端)とを結ぶ方向を高さ方向と称することがある。また、コアカッター10の先端側を下側又は低い側と称し、コアカッター10の基端側を上側又は高い側と称することがある。
【0038】
(胴部20)
円筒状の胴部20は、基端面及び先端面それぞれが開放され、中空に形成されている。胴部20は、胴部本体21と、当該胴部本体の21の基端面に連設され、当該胴部本体21と比較して直径寸法が小さい基端部23と、を有する。胴部本体21の先端部は、当該胴部本体21の他の部分と比較して厚み(すなわち、胴部20の径方向に沿った寸法)が大きい。当該胴部本体21の先端部に刃体30が固定される。なお、胴部本体21の直径寸法は、65mm程度であってもよい。
【0039】
(刃体30)
コアカッター10は、刃体30を複数備える。具体的には、刃体30は、第1刃体30aを5つ有し、且つ、第2刃体30bを5つ有する。第1刃体30aと第2刃体30bとは、胴部20の周方向において交互に配置されている。
【0040】
図2は、本実施形態の第1刃体を示す拡大図であり、(A)が正面図、(B)が胴部を高さ方向に沿って切断して当該胴部の周方向に沿って第1刃体を見たときの図である。図2(A)に示すように、第1刃体30aは、胴部20の先端22から突出する出代部31と、胴部20の先端22よりも基端側に設けられ、胴部20に固定される被固定部34とを含む。第1刃体30aの先端32(すなわち、出代部31の先端)は、第1刃体30aを正面視したとき、胴部20の回転方向の前方に向かうに連れてその高さ位置が低くなるように直線状に傾斜する。
【0041】
図2(B)に示すように、第1刃体30aは、胴部20を高さ方向に沿って切断して当該胴部20の周方向に沿って第1刃体30aを見たとき、その先端32から胴部20の外側に向かうに連れてその高さ位置が高くなるように直線状に傾斜する第1下端縁を有する。当該第1下端縁は、胴部20の周方向に沿って(すなわち、図2(B)の紙面手前から奥方向に沿って)延在している。
【0042】
また、第1刃体30aは、胴部20を高さ方向に沿って切断して当該胴部20の周方向に沿って第1刃体30aを見たとき、その先端32から胴部20の内側に向かうに連れてその高さ位置が高くなるように直線状に傾斜する第2下端縁と、当該第2下端縁の内側端から基端側に屈曲して胴部20の内側に向かうに連れてその高さ位置が高くなるように直線状に傾斜する第3下端縁と、をさらに有する。当該第2下端縁及び当該第3下端縁は、それぞれ、胴部20の周方向に沿って(すなわち、図2(B)の紙面手前から奥方向に沿って)延在している。
【0043】
図3は、本実施形態の第2刃体を示す拡大図であり、(A)が正面図、(B)が胴部を高さ方向に沿って切断して当該胴部の周方向に沿って第2刃体を見たときの図である。図3(A)に示すように、第2刃体30bは、胴部20の先端22から突出する出代部36と、胴部20の先端22よりも基端側に設けられ、胴部20に固定される被固定部39とを含む。第2刃体30bの先端37(すなわち、出代部36の先端)は、第2刃体30bを正面視したとき、胴部20の回転方向の前方に向かうに連れてその高さ位置が低くなるように直線状に傾斜する。
【0044】
図3(B)に示すように、第2刃体30bは、胴部20を高さ方向に沿って切断して当該胴部20の周方向に沿って第2刃体30bを見たとき、その先端37から胴部20の外側に同じ高さ位置で直線状に延びる第4下端縁を有する。当該第4下端縁は、胴部20の周方向に沿って(すなわち、図3(B)の紙面手前から奥方向に沿って)延在している。
【0045】
また、第2刃体30bは、胴部20を高さ方向に沿って切断して当該胴部20の周方向に沿って第2刃体30bを見たとき、その先端37から胴部20の内側に向かうに連れてその高さ位置が高くなるように直線状に傾斜する第5下端縁を有する。当該第5下端縁は、胴部20の周方向に沿って(すなわち、図3(B)の紙面手前から奥方向に沿って)延在している。
【0046】
図1に示すように、第1刃体30aの先端32と胴部20の軸線AXとの間の第1距離Dと、第2刃体30bの先端37と胴部20の軸線AXとの間の第2距離Dとは互いに異なる。具体的には、図2(B)と図3(B)とを見比べて分かるように、第1距離Dは、第2距離Dよりも大きい。
【0047】
ここで、図2(A)に示すように、第1刃体30aを正面視したとき、第1刃体30aの先端32の前記回転方向における前端から斜め上方へと延びて切欠き25の前記回転方向における後端に接続される面を、一般に、「すくい面」という。図2(A)に示す二点鎖線は、当該すくい面を上方へと延長したものである。そして、当該すくい面が、第1刃体30aの先端32の前記回転方向における前端を通って高さ方向に延びる一点鎖線で示す垂直面となす角αを、一般に、「すくい角」という。
【0048】
さらに、図2(A)において、第1刃体30aのすくい面が前記垂直面から右回りした位置に存するとき、第1刃体30aのすくい角αが正の角度であるという。一方、第1刃体30aのすくい面が前記垂直面から左回りした位置に存するとき、第1刃体30aのすくい角αが負の角度であるという。なお、上記した「すくい面」及び「すくい角」についての定義は、図3(A)及び後述する図8についても同様である。
【0049】
本実施形態では、図2(A)に示すように、第1刃体30aのすくい角αが負の角度である。同様に、図3(A)に示すように、第2刃体30bのすくい角α´が負の角度である。ここで、すくい角α、α´は、それぞれ、同じ大きさの負の角度である。なお、すくい角α、α´は、それぞれ、第1刃体30a及び第2刃体30bの胴部20に対する取り付け角度によって規定されてもよいし、又は、第1刃体30a及び第2刃体30bそれぞれの先端を砥石で研磨することによって規定されてもよい。
【0050】
なお、胴部本体21の直径寸法が65mm程度である場合、第1刃体30a及び第2刃体30bそれぞれの被固定部34の厚み(すなわち、被固定部34の胴部20の径方向に沿った寸法)は、3.2mm程度であってもよい。また、出代部31の先端32(及び出代部36の先端37)と胴部20の先端22との間の距離は、0.50mm程度であってもよい。
【0051】
(切欠き25)
図2(A)に示すように、胴部20の先端には、胴部20の回転方向における第1刃体30aの前方に当該第1刃体30aに隣接して切欠き25が形成されている。当該切欠き25は、第1刃体30aによる切削で生じる切り屑を排出するために形成される。なお、5つの第1刃体30aそれぞれに対して同様の切欠き25が形成されている。また、図3(A)に示すように、胴部20の先端には、胴部20の回転方向における第2刃体30bの前方に隣接して同様の切欠き25が形成されている。なお、5つの第2刃体30bそれぞれに対して同様の切欠き25が形成されている。
【0052】
切欠き25は、それぞれ、第1刃体30a又は第2刃体30bを正面視したとき、胴部20の先端から基端側に突出した半円状である。切欠き25は、それぞれ、胴部20の先端における周方向に沿った幅Xが1.0mm以下である。なお、当該幅Xが0.5mm以上0.9mm以下であってもよい。また、当該幅Xが0.6mm以上0.8mm以下であってもよい。本実施形態では、切欠き25は、それぞれ、その先端から基端までの全域において胴部20の周方向に沿った幅が1.0mm以下であり、且つ、その基端が刃体30(すなわち、第1刃体30a及び第2刃体30b)の被固定部34、39の基端よりも胴部20の先端側に位置する。
【0053】
(効果)
本実施形態に係るコアカッター10は、切り屑を排出するために胴部20に形成される切欠き25の胴部20の先端における周方向に沿った幅が1.0mm以下であり、想定され得る被切削物の凹凸の立ち上がり部分の厚みよりも十分小さい(この点に関しては後に図5、6に基づき詳細に説明する)。その結果、凹凸のある被切削物を切削する場合であっても、前記凹凸を噛み込んでしまうことを防止することが可能となる。
【0054】
本実施形態に係るコアカッター10は、刃体30(すなわち、第1刃体30a及び第2刃体30b)のすくい角α、α´が負の角度であるので、当該刃体30の強度が向上される。その結果、刃体30が損傷することを抑制することができる。
【0055】
本実施形態に係るコアカッター10は、切欠き25の胴部20の先端における周方向に沿った幅が0.5mm以上0.9mm以下であることで、前記凹凸の噛み込みを防止することと、切り屑を十分に排出することとをバランス良く行うことが可能となる。
【0056】
本実施形態に係るコアカッター10は、切欠き25の胴部20の先端における周方向に沿った幅が0.6mm以上0.8mm以下であることで、前記凹凸の噛み込みを防止することと、切り屑を十分に排出することとをいっそうバランス良く行うことが可能となる。
【0057】
本実施形態に係るコアカッター10は、刃体30を複数備え、当該刃体30それぞれに対して前記切欠き25が形成されている。この構成によれば、複数の刃体30で被切削物を切削するので、刃体30それぞれにかかる負荷を低減することができる。これにより、刃体30それぞれが損傷してしまうことをいっそう抑制することが可能となる。
【0058】
本実施形態では、第1刃体30aの先端32と胴部20の軸線AXとの間の第1距離Dと、第2刃体30bの先端37と胴部20の軸線AXとの間の第2距離Dとは互いに異なり、第1刃体30aと第2刃体30bとは、胴部20の周方向において交互に配置される。この構成によれば、被切削物を刃体30の厚み分だけ適切に切削することができるので、被切削物を切削する際に、刃体30及び胴部20がスムーズに被切削物の厚み方向に進むことが可能となる。
【0059】
本実施形態では、胴部20に形成される切欠き25は、その先端から基端までの全域において胴部20の周方向に沿った幅が1.0mm以下であり、且つ、その基端が刃体30の被固定部34、39の基端よりも胴部20の先端側に位置することで、被切削物の凹凸の噛み込みをいっそう防止することが可能となる。
【0060】
本実施形態では、胴部本体21の先端部は、当該胴部本体21の他の部分と比較して厚みが大きく、当該先端部に刃体30が固定される。これにより、刃体30を厚くしてその耐久性を向上させることが可能となる。また、刃体30の被固定部34と胴部本体21との接触面積を大きくすることができるので、刃体30を胴部20に強固に固定することが可能となる。
【0061】
(切削方法の一例)
次に、図4~7に基づき、上記実施形態に係るコアカッター10を用いる切削方法の一例について説明する。なお、ここで説明する切削方法は、上記実施形態に係るコアカッター10を用いて行われる場合に限定されない。例えば、前記切削方法は、後述するコアカッター10´(図7及び図8参照)、コアカッター10´´(図9及び図10参照)、又はその他のコアカッターを用いて行われてもよい。
【0062】
まず、上記実施形態に係るコアカッター10と、当該コアカッター10を先端工具として取り付けるための電動ドリル100と、その表面に凹凸を有する被切削物Wと、を準備する第1ステップを行う。
【0063】
次に、第1ステップで準備したコアカッター10を電動ドリル100に取り付ける第2ステップを行う。このようにコアカッター10を電動ドリル100に取り付けた様子を図4に示す。また、第1ステップで準備した凹凸のある被切削物Wを図5に示す。
【0064】
図4に示すように、電動ドリル100は、電動ドリル本体110と、取り付けチャック部112と、を有する。まず、コアカッター10には、胴部20の内部空間における軸線AXの位置を延びて、当該胴部20の先端22の開口から突出するように配置されるセンタードリル120と、胴部20の基端部23からセンタードリル120とは反対側に延びるように配置されるシャンク部(図示せず)と、が取り付けられる。そして、電動ドリル100の取り付けチャック部112でシャンク部が把持される。このようにして、図4に示すように、コアカッター10が電動ドリル100に取り付けられる。
【0065】
図5に示すように、被切削物Wは、その表面に4つの凸部Cを有する板状のデッキプレートとして構成される。なお、被切削物Wは金属製である。4つの凸部Cは、互いに平行に被切削物Wの長さ方向に沿って延びる。後述する図6(B)に示すように、4つの凸部Cは、それぞれ、板状のデッキプレートの一部を屈曲させることで形成されている。したがって、4つの凸部Cは、それぞれ、板状のデッキプレートの他の部分と同じ厚みを有し、且つ、底面が開放された中空に形成されている。
【0066】
そして、電動ドリル100によってコアカッター10をその軸線AXを回転軸として回転させながら、コアカッター10をその先端側から凹凸(すなわち、凸部C)の立ち上がり部分Caに対して当該立ち上がり部分Caが立ち上がる方向に沿って押し当てることにより、凹凸の一部(すなわち、凸部Cの一部)を切削する第3ステップを行う。このときの様子を図6に示す。図6(A)は、当該第3ステップを行っている状態を示す斜視図であり、図6(B)は、被切削物Wの凸部Cを高さ方向に沿って切断して当該凸部Cの長さ方向に沿って第1刃体30aを見たときの図である。
【0067】
上記第3ステップのように被切削物Wを切削することで、図6(A)に示すように、切削を行っているとき胴部20の先端22の開口の一部が被切削物Wによって塞がれずに露出する。これにより、当該開口の一部から切削の際に生じる切り屑が排出されるので、上記実施形態で説明したように、切り屑を排出するための切欠き25を従来と比較して小さく形成することが可能となる。また、従来のように、切削の際に生じる切り屑を胴部20の基端側に向かって排出することを目的として、胴部本体21の先端部に刃体30に隣接してギャレット溝を形成する必要もない。これにより、刃体30の被固定部34と胴部本体21との接触面積を大きくすることができるので、刃体30を胴部20に強固に固定することが可能となる。
【0068】
また、図6(B)に示すように、切欠き25の胴部20の先端における周方向に沿った幅が1.0mm以下であり、想定され得る被切削物の凹凸(すなわち、凸部C)の立ち上がり部分の厚みよりも十分小さい。これにより、凹凸のある被切削物Wを切削する場合であっても、切欠き25が当該凹凸を噛み込んでしまうことを防止することが可能となる。
【0069】
(第1変形例)
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0070】
図7及び図8に基づき、本発明の一実施形態に係るコアカッターの第1変形例を説明する。図7は、当該コアカッターの第1変形例を示す図であり、(A)が正面図、(B)が底面図である。図8は、当該コアカッターの第1変形例の刃体を示す拡大正面図である。
【0071】
なお、当該第1変形例のコアカッター10´は、刃体30及び胴部20に形成される切欠き25、並びに胴部本体21がその先端部も含め先端から基端の全域に亘って同じ厚みであることを除いて、上記で説明したコアカッター10と同じ構造を有する。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0072】
図7に示すように、本変形例のコアカッター10´は、胴部20の先端から突出するように配置されるチップ状の刃体30を10個備える。なお、上記で説明した実施形態とは異なり、本変形例の刃体30は、それぞれ、互いに同じ形状を有している。
【0073】
なお、胴部本体21の直径寸法が65mm程度である場合、刃体30それぞれの被固定部34の厚み(すなわち、被固定部34の胴部20の径方向に沿った寸法)は、2.0mm程度であってもよい。また、出代部31の先端32と胴部20の先端22との間の距離は、0.35mm程度であってもよい。
【0074】
図8に示すように、本変形例のコアカッター10´は、胴部20の回転方向における刃体30の後方に当該刃体30に隣接して補助切欠き29が形成される。
【0075】
図8に示すように、本変形例のコアカッター10´は、胴部20の回転方向における刃体30の前方に当該刃体30に隣接して切欠き25が形成され、前記刃体30のすくい角α´´が負の角度であり、且つ、切欠き25の胴部20の先端における周方向に沿った幅が1.0mm以下である。なお、前記幅が0.5mm以上0.9mm以下であってもよい。また、当該幅が0.6mm以上0.8mm以下であってもよい。
【0076】
本変形例の切欠き25は、刃体30を正面視したとき高さ方向に沿って矩形状に延びる先端部26と、当該先端部26の基端側に連設される主部27とを含む。切欠き25の主部27は、当該切欠き25の先端部26の前記回転方向における前端縁の基端から前記回転方向の前方へと突出するように略円弧状に湾曲したあと、刃体30の基端部の前記回転方向の前側の隣接した位置で下方へと突出するように略円弧状に再び湾曲する端縁を有する。
【0077】
そして、当該切欠き25において、先端部26における胴部20の周方向に沿った幅が1.0mm以下であり、主部27における胴部20の周方向に沿った幅が1.0mmよりも大きく、且つ、主部27の基端が刃体30の被固定部34の基端よりも胴部20の基端側に位置する。上記構成によれば、被切削物Wの凹凸の噛み込みを防止することと、切り屑を十分に排出することとをバランス良く行うことが可能となる。
【0078】
(第2変形例)
図9及び図10に基づき、本発明の一実施形態に係るコアカッターの第2変形例を説明する。図9は、当該第2変形例を示す図であり、(A)が正面図、(B)が底面図である。図10は、当該第2変形例の刃体を示す拡大正面図である。なお、当該第2変形例のコアカッター10´´は、刃体30のすくい角を除いて、上記で説明した第1変形例のコアカッター10´と同じ構造を有する。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0079】
図9に示すように、本変形例のコアカッター10´´は、円筒状の胴部20と、当該胴部20の先端から突出するように配置されるチップ状の刃体30と、を備える。なお、本変形例のコアカッター10´´は、上記で説明したコアカッター10(図1~3参照)及びコアカッター10´(図7及び図8参照)と同様に、チップ状の刃体30を10個備える。
【0080】
そして、図10に示すように、本変形例のコアカッター10´´は、胴部20の回転方向における刃体30の前方に当該刃体30に隣接して切欠き25が形成され、前記刃体30のすくい角α´´´が正の角度であり、且つ、切欠き25の胴部20の先端における周方向に沿った幅X´´´が1.0mm以下である。
【0081】
本変形例に係るコアカッター10´´は、刃体30のすくい角α´´´が正の角度であるので、すくい角が負である場合と比較して、切れ味を向上させることが可能となる。なお、切欠き25の胴部20の先端における周方向に沿った幅X´´´が1.0mm以下であることにより奏する効果は、上記実施形態及び第1変形例の場合と同じであるため、ここではその説明を繰り返さない。
【0082】
(切削方法の第1変形例)
つづいて、図11及び図12に基づき、第2変形例に係るコアカッター10´´を用いて行われる切削方法の第1変形例について説明する。図11は、本変形例に係る切削方法でコアカッターとともに用いる治具を被切削物に載置した状態を示す斜視図である。図12は、本変形例に係る切削方法で被切削物を切削している様子を示す概略図である。
【0083】
まず、第2変形例に係るコアカッター10´´と、当該コアカッター10´´を先端工具として取り付けるための電動ドリルと、治具130と、その表面に凹凸を有する被切削物W´と、を準備する。
【0084】
図11に示すように、治具130は、円板状のベース部132と、当該ベース部132の上面の中央部に立設される円筒部134(筒状部)と、を有する。治具130には、ベース部132の底面から円筒部134の上端まで同じ径寸法で貫通する貫通孔138が穿設される。当該貫通孔138の径寸法は、コアカッター10´´の胴部本体21の外径寸法に対応している。具体的には、冶具130の貫通孔138の径寸法は、後述するように当該貫通孔138に対してコアカッター10´´の胴部本体21を当該胴部本体21の径方向への移動を規制しつつ挿入することが可能であるように、コアカッター10´´の胴部本体21の外径寸法よりも僅かに大きい。
【0085】
また、図11に示すように、被切削物W´は、その表面に少なくとも2つの凸部C´(以下、特に必要な場合を除き、単に「2つの凸部C´」又は「一方の凸部C´及び他方の凸部C´」と称する)を有する板状のデッキプレートとして構成される。なお、被切削物W´は金属製である。2つの凸部C´は、互いに平行に被切削物W´の幅方向に沿って延びる。2つの凸部C´は、それぞれ、板状のデッキプレートの一部を屈曲させることで形成されている。したがって、2つの凸部C´は、それぞれ、板状のデッキプレートの他の部分と同じ厚みを有し、且つ、底面が開放された中空であるように形成されている。
【0086】
2つの凸部C´は、それぞれ、被切削物W´の幅方向に見て、その底面を下底とし、その上面を上底とし、且つ、前記下底が前記上底よりも長い台形状である。なお、上記したように、当該凸部C´の底面は開放されている。上記構成によれば、前記台形状における2つの脚が、それぞれ、凸部C´の立ち上がり部分Ca´である。なお、前記台形状は等脚台形である。これにより、被切削物W´の幅方向に見て、1つの凸部C´が有する2つの立ち上がり部分Ca´は、それぞれ、同じ長さである。
【0087】
被切削物W´の幅方向に見て、一方の凸部C´(図11及び図12において左側に存する凸部C´)の下底における一方端(同図において右端)と、他方の凸部C´(同図において右側に存する凸部C´)の下底における他方端(同図において左端)とは、一方の凸部C´の上底(及び他方の凸部C´の上底)と同じ長さの接続部によって接続される。したがって、一方の凸部C´と他方の凸部C´との間には、被切削物W´の天地を逆転させると、一方の凸部C´(及び他方の凸部C´)と同様の台形状となる溝が形成される。
【0088】
次に、治具130を被切削物W´に載置する。このときの状態が図11に示す状態である。図11に示すように、治具130は、そのベース部132の底面の一方側が一方の凸部C´の上面に当接し、且つ、同底面の他方側が他方の凸部C´の上面に当接した状態で(換言すれば、一方の凸部C´と他方の凸部C´との間に形成される溝の上面の一部を覆う状態で)、被切削物W´に載置される。なお、ベース部132の底面と被切削物W´の凸部C´、C´の上面との間には、滑り止め152が配置される。
【0089】
また、被切削物W´の幅方向に見て(すなわち、図12に示すように見て)、治具130の底面における貫通孔138の一方側の縁部(図12において左側の縁部)が、被切削物W´の長さ方向において被切削物W´の溝の底面と同じ位置となるように、且つ、治具130の底面における貫通孔138の他方側の縁部(図12において右側の縁部)が、被切削物W´の長さ方向において他方の凸部C´の立ち上がり部分Ca´の中央部と同じ位置となるように、治具130が被切削物W´に載置される。
【0090】
さらに、図9及び図10に基づき説明したコアカッター10´´を先端工具として電動ドリルに取り付ける。なお、当該電動ドリルは、胴部20の先端22の開口から突出するように配置されるセンタードリル120と、胴部20の基端部23からセンタードリル120とは反対側に延びるように配置されるシャンク部(図示せず)とを除き、図4に基づき説明した電動ドリル100と同じ構造を備える。したがって、ここでは同様となる説明を繰り返さない。
【0091】
本変形例では、電動ドリルの取り付けチャック部で棒状の回転体140が把持され、当該回転体140の先端に設けられる取り付け部142にコアカッター10´´の基端が取り付けられる(図12参照)。このとき、電動ドリルの回転体140は、コアカッター10´´の軸線AXと同一直線上を延びるように配置される。
【0092】
そして、図12に示すように、電動ドリル(の回転体140)によってコアカッター10´´をその軸線AXを回転軸として回転させながら、被切削物W´に載置された冶具130の貫通孔138に当該冶具130の上端側からコアカッター10´´を挿入していく。このとき、本変形例では、冶具130のベース部132のうち被切削物W´の2つの凸部C´、C´の上端に載置された部分を両足S、Sで踏みながら固定しつつ、冶具130の貫通孔138に当該冶具130の上端側からコアカッター10´´を挿入していく。
【0093】
すると、コアカッター10´´の先端部が、回転しながら、治具130の貫通孔138の底面側から突出してくる。そして、コアカッター10´´をその先端側から凹凸(すなわち、他方の凸部C´)の立ち上がり部分Ca´に対して当該立ち上がり部分Ca´が立ち上がる方向に沿って押し当てることにより、凹凸の一部(すなわち、他方の凸部C´の一部)を切削する。なお、ここでいう「コアカッター10´´をその先端側から凸部C´の立ち上がり部分Ca´が立ち上がる方向に沿って押し当てる」とは、コアカッター10´´を押し当てる方向と、凸部C´の立ち上がり部分Ca´が立ち上がる方向と、が互いに平行である場合に限定されず、互いに一定の角度だけ傾いている場合も含まれる。
【0094】
ここで、治具130を用いず、コアカッター10´´及び電動ドリルのみによって他方の凸部C´の立ち上がり部分Ca´を切削する場合について考える。このとき、立ち上がり部分Ca´を切削するために当該立ち上がり部分Ca´にコアカッター10´´の先端を押し当てると、当該立ち上がり部分Ca´が傾斜していること等に起因して、コアカッター10´´が揺動してしまう。したがって、被切削物W´を所望するように切削することが困難である。
【0095】
一方、治具130を用いることで、コアカッター10´´の一部が治具130の貫通孔138内に位置している状態で、他方の凸部C´の立ち上がり部分Ca´にコアカッター10´´の先端が押し当てられる。すなわち、治具130によってコアカッター10´´の径方向における移動が規制されるため、コアカッター10´´が揺動してしまうことを防止することができる。その結果、本変形例に係る切削方法は、凹凸がある被切削物W´を所望するように切削することが可能となる。
【0096】
さらに、本変形例では、ベース部132を両足S、Sで踏みながら固定しつつ切削作業を行うので、いっそう確実に、被切削物W´を所望するように切削することが可能となる。また、ベース部132の底面と被切削物W´の凸部C´、C´の上面との間に滑り止め152を設けているので、よりいっそう確実に、被切削物W´を所望するように切削することが可能となる。
【0097】
(切削方法の第2変形例)
つづいて、図13に基づき、第2変形例に係るコアカッター10´´を用いて行われる切削方法の第2変形例について説明する。図13は、本変形例に係る切削方法で被切削物を切削している様子を示す概略図である。なお、本変形例に係る切削方法は、冶具130を被切削物W´に固定する態様を除いて、上記で説明した第1変形例に係る切削方法と同じである。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0098】
本変形例に係る切削方法では、図12に示すように、冶具130のベース部132のうち被切削物W´の2つの凸部C´、C´の上端に載置された部分をビス154、154(固定具)で固定する。このような態様で冶具130を被切削物W´に固定したうえで、冶具130の貫通孔138に当該冶具130の上端側からコアカッター10´´を挿入していき、被切削物W´の一部を切削してもよい。
【0099】
なお、固定具はビス154、154に限定されず、例えば、互いに重なり合う冶具130の縁部と被切削物W´の縁部とを厚み方向に挟み込むことで、冶具130を被切削物W´に固定するような固定具であってもよいし、或いは、その他の態様の固定具であってもよい。
【0100】
(上記以外の変形例)
上記実施形態及び変形例では、胴部20が、胴部本体21と、当該胴部本体の21の基端面に連設され、当該胴部本体21と比較して直径寸法が小さい基端部23とを有する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、胴部20は、その先端から基端まで同じ直径寸法で形成されてもよい。これにより、胴部本体21を容易に製造することが可能となる。
【0101】
上記実施形態及び変形例では、コアカッター10、10´、10´´が電動ドリル100に取り付けられて回転される場合を説明した。しかし、この場合に限定されず、コアカッター10は、例えば、ドライバードリルに取り付けられてもよいし、振動ドリルに取り付けられてもよいし、或いは、ハンマードリルに取り付けられてもよい。なお、電動ドリルが振動ドリル又はハンマードリルである場合、振動又は打撃を起こさない回転モードで使用することが好ましい。
【0102】
上記では、本発明に係る切削方法の第1及び第2変形例(図12及び図13参照)で、治具130及び被切削物W´が、コアカッター10´´(図9及び図10参照)とともに用いられる場合を説明した。しかし、この場合に限定されず、治具130及び被切削物W´は、例えば、図1~3に基づき説明したコアカッター10とともに用いられてもよいし、又は、図7及び図8に基づき説明したコアカッター10´とともに用いられてもよい。或いは、治具130及び被切削物W´は、上記で説明したコアカッター10、10´、10´´以外のコアカッターとともに用いられてもよい。
【符号の説明】
【0103】
10 コアカッター
20 胴部
21 胴部本体
22 胴部の先端
23 基端部
25 切欠き
26 先端部
27 主部
29 補助切欠き
30 刃体
30a 第1刃体
30b 第2刃体
31 出代部
32 先端
34 被固定部
36 出代部
37 先端
39 被固定部
100 電動ドリル
110 電動ドリル本体
112 取り付けチャック部
120 センタードリル
130 治具
132 ベース部
134 円筒部
138 貫通孔
140 回転体
142 取り付け部
152 滑り止め
154 ビス
α すくい角
第1距離
第2距離
W 被切削物
C 凸部
Ca 立ち上がり部分
S 足
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13