(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】有機発光ダイオード及びそれを備えた表示パネルと表示装置、並びに該有機発光ダイオードの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 51/50 20060101AFI20220126BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220126BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
H05B33/22 B
H01L27/32
H05B33/10
H05B33/14 B
(21)【出願番号】P 2017550700
(86)(22)【出願日】2016-09-30
(86)【国際出願番号】 CN2016101076
(87)【国際公開番号】W WO2018058524
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2019-05-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】512282165
【氏名又は名称】合肥▲シン▼晟光▲電▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】HEFEI XINSHENG OPTOELECTRONICS TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Xinzhan Industrial Park,Hefei,Anhui,230012,P.R.CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】賈 文 斌
(72)【発明者】
【氏名】孫 力
(72)【発明者】
【氏名】許 名 宏
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】下村 一石
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-276583号公報
【文献】特開2010-109364号公報
【文献】特表2005-527090号公報
【文献】特開2010-34484号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B33/22
H01L51/50-51/56
H05B33/10
H05B27/32
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層と、
前記発光層上に位置し、かつ第1電子輸送材料を含む、第1電子輸送層と、
前記第1電子輸送層の、前記発光層から遠位側に位置し、かつ正孔除去材料を含む、正孔除去層と、
前記正孔除去層の、前記第1電子輸送層から遠位側に位置し、かつ第2電子輸送材料を含む、第2電子輸送層と、
前記第2電子輸送層の、前記正孔除去層から遠位側に位置し、かつ電子注入材料を含む電子注入層と、
を備え、
前記正孔除去材料は、前記第1電子輸送層または前記第2電子輸送層中の過剰な正孔によって生じた励起子を、放射減衰によって基底状態へ遷移させることができる第1発光材料を含み、
前記正孔除去材料は、蛍光発光材料又は燐光発光材料であり、
前記正孔除去材料は、ホスト材料と、発光ゲスト材料とを含み、前記発光ゲスト材料の前記ホスト材料に対する比は、1重量%~3重量%であり、
前記第1電子輸送材料と前記第2電子輸送材料は、異なる最低空軌道(LUMO)エネルギーレベルを有する2種類の異なる電子輸送材料であり、
前記ホスト材料のLUMOエネルギーレベルは、前記第1電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルと前記第2電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルとの間にあり、
前記発光層は、第2発光材料を含み、
前記ホスト材料のLUMOエネルギーレベルは、前記第2発光材料のLUMOエネルギーレベルと前記電子注入材料のLUMOエネルギーレベルとの間にある、
有機発光ダイオード。
【請求項2】
前記正孔除去層の厚みは、1nm~5nmである、
請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項3】
前記ホスト材料のLUMOエネルギーレベルは、前記第1電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルの75%~125%であり、
前記ホスト材料のLUMOエネルギーレベルは、前記第2電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルの75%~125%である、
請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項4】
前記ホスト材料のLUMOエネルギーレベルと前記第1電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルとの差は、-0.6eV~0.6eVであり、
前記ホスト材料のLUMOエネルギーレベルと前記第2電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルとの差は、-0.6eV~0.6eVである、
請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項5】
前記第1発光材料と前記第2発光材料は、同じ発光材料を含む、
請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項6】
前記第1発光材料と前記第2発光材料は、異なる発光材料である、
請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項7】
前記第2発光材料は青色発光材料であり、前記第1発光材料は緑色燐光発光材料である、
請求項6に記載の有機発光ダイオード。
【請求項8】
前記第1発光材料は、黄色燐光発光材料である、
請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項9】
前記第1発光材料のLUMOエネルギーレベルは、前記第1電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルの75%~125%であり、
前記第1発光材料のLUMOエネルギーレベルは、前記第2電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルの75%~125%である、
請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項10】
前記第1発光材料のLUMOエネルギーレベルと前記第1電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルとの差は、-0.6eV~0.6eVであり、
前記第1発光材料のLUMOエネルギーレベルと前記第2電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルとの差は、-0.6eV~0.6eVである、
請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の有機発光ダイオードを備えた、表示パネル。
【請求項12】
請求項
11に記載の表示パネルを備えた表示装置。
【請求項13】
発光層を形成することと、
前記発光層上に、第1電子輸送材料を含む第1電子輸送層を形成することと、
前記第1電子輸送層の、前記発光層から遠位側に、正孔除去材料を含む正孔除去層を形成することと、
前記正孔除去層の、前記第1電子輸送層から遠位側に、第2電子輸送材料を含む第2電子輸送層を形成することと、
前記第2電子輸送層の、前記正孔除去層から遠位側に、電子注入材料を含む電子注入層を形成することと、
を含み、
前記正孔除去材料は、前記第1電子輸送層または前記第2電子輸送層中の過剰な正孔によって生じた励起子を、放射減衰によって基底状態へ遷移させることができる第1発光材料を含み、
前記正孔除去材料は、蛍光発光材料又は燐光発光材料であり、
前記正孔除去材料は、ホスト材料と、発光ゲスト材料とを含み、前記発光ゲスト材料の前記ホスト材料に対する比は、1重量%~3重量%であり、
前記第1電子輸送材料と前記第2電子輸送材料は、異なる最低空軌道(LUMO)エネルギーレベルを有する2種類の異なる電子輸送材料であり、
前記ホスト材料のLUMOエネルギーレベルは、前記第1電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルと前記第2電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルとの間にあり、
前記発光層は、第2発光材料を含み、
前記ホスト材料のLUMOエネルギーレベルは、前記第2発光材料のLUMOエネルギーレベルと前記電子注入材料のLUMOエネルギーレベルとの間にある、
有機発光ダイオードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示技術に関し、より詳細には、有機発光ダイオード及びそれを備えた表示パネルと表示装置、並び該有機発光ダイオードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)は通常、陰極と、陽極と、陰極と陽極との間に配置される発光手段とを含んでいる。OLEDは、単一ユニットのOLEDであってもよいし、タンデム式OLEDであってもよい。単一ユニットのOLEDは、正孔注入層と、正孔輸送層と、発光層と、電子輸送層と、電子注入層とを含む発光手段を1つだけ備える。OLEDにおいて、陽極と陰極との間に電界を印加することによって、陰極から電子を発光層に注入するとともに、陽極から正孔を発光層に注入する。その後、電子及び正孔は発光層において再結合し、励起子を発生させる。励起子が基底状態に戻ると、そのエネルギーが光として放出される。
【発明の概要】
【0003】
一態様において、本発明は、発光層と、前記発光層上に位置し、かつ第1電子輸送材料を含む第1電子輸送層と、前記第1電子輸送層の、前記発光層から遠位側に位置し、かつ正孔除去材料を含む正孔除去層と、前記正孔除去層の、前記第1電子輸送層から遠位側に位置し、かつ第2電子輸送材料を含む第2電子輸送層と、を備える有機発光ダイオードであって、前記正孔除去材料は、前記第1電子輸送層または前記第2電子輸送層中の過剰な正孔によって生じた励起子を、放射減衰によって基底状態へ遷移させることができる第1発光材料発光材を含む、有機発光ダイオードを提供する。
【0004】
必要に応じて、前記正孔除去層の厚みは、約1nm~約5nmである。
【0005】
必要に応じて、前記正孔除去材料は、ホスト材料と、発光ゲスト材料とを含む。
【0006】
必要に応じて、前記発光ゲスト材料の前記ホスト材料に対する比は、約1重量%~約3重量%である。
【0007】
必要に応じて、前記有機発光ダイオードは、前記第2電子輸送層の、前記正孔除去層から遠位側に位置し、かつ電子注入材料を含む電子注入層をさらに備え、前記発光層は第2発光材料を含み、前記ホスト材料の最低空軌道(LUMO)エネルギーレベルは、前記第2発光材料のLUMOエネルギーレベルと前記電子注入材料のLUMOエネルギーレベルとの間にある。
【0008】
必要に応じて、前記第1電子輸送材料と前記第2電子輸送材料は、異なるLUMOエネルギーレベルを有する2種類の異なる電子輸送材料であり、前記ホスト材料のLUMOエネルギーレベルは、前記第1電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルと前記第2電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルとの間にある。
【0009】
必要に応じて、前記ホスト材料のLUMOエネルギーレベルは、前記第1電子のLUMOエネルギーレベルの約75%~約125%であり、前記ホスト材料のLUMOエネルギーレベルは、前記第2電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルの約75%~約125%である。
【0010】
必要に応じて、前記ホスト材料のLUMOエネルギーレベルと前記第1電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルとの差は、約-0.6eV~約0.6eVであり、前記ホスト材料のLUMOエネルギーレベルと前記第2電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルとの差は、約-0.6eV~約0.6eVである。
【0011】
必要に応じて、前記発光層は第2発光材料を含み、前記第1発光材料と前記第2発光材料は、同じ発光材料を含む。
【0012】
必要に応じて、前記発光層は第2発光材料を含み、前記第1発光材料と前記第2発光材料は、異なる発光材料である。
【0013】
必要に応じて、前記第2発光材料は青色発光材料であり、前記第1発光材料は緑色燐光発光材料である。
【0014】
必要に応じて、前記第1発光材料は、燐光発光ゲスト材料である。
【0015】
必要に応じて、前記第1発光材料は、黄色燐光発光材料である。
【0016】
必要に応じて、前記第1発光材料は、蛍光発光材料である。
【0017】
必要に応じて、前記第1発光材料のLUMOエネルギーレベルは、前記第1電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルの約75%~約125%であり、前記第1発光材料のLUMOエネルギーレベルは、前記第2電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルの約75%~約125%である。
【0018】
必要に応じて、前記第1発光材料のLUMOエネルギーレベルと前記第1電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルとの差は、約-0.6eV~約0.6eVであり、前記第1発光材料のLUMOエネルギーレベルと前記第2電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルとの差は、約-0.6eV~約0.6eVである。
【0019】
必要に応じて、前記第1電子輸送層と前記第2電子輸送層は、同じ電子輸送材料で製造される。
【0020】
他の一態様において、本発明は、発光層を形成することと、前記発光層上に、第1電子輸送材料を含む第1電子輸送層を形成することと、前記第1電子輸送層の、前記発光層から遠位側に、正孔除去材料を含む正孔除去層を形成することと、前記正孔除去層の、前記第1電子輸送層から遠位側に、第2電子輸送材料を含む第2電子輸送層を形成することと、を含み、前記正孔除去材料は、前記第1電子輸送層または前記第2電子輸送層中の過剰な正孔によって生じた励起子を、放射減衰によって基底状態へ遷移させることができる第1発光材料を含む、有機発光ダイオードの製造方法を提供する。
【0021】
更に他の一態様において、本発明は、本明細書に記述した有機発光ダイオード、または本明細書に記述した方法により製造された有機発光ダイオードを備えた表示パネルを提供する。
【0022】
更に他の一態様において、本発明は、本明細書に記述した表示パネルを備えた表示装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
下記の図面は、開示された各実施形態に基づいて説明するための例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0024】
【
図1】
図1は、従来の有機発光ダイオードの構造及び従来の有機発光ダイオードにおける励起子の無放射減衰経路を示す図である。
【0025】
【
図2】
図2は、幾つかの実施形態における有機発光ダイオードの構造を示す図である。
【0026】
【
図3】
図3は、幾つかの実施形態における有機発光ダイオードの構造及び有機発光ダイオードにおける励起子の放射減衰経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、下記の実施形態を参照し、本発明についてさらに具体的に説明する。なお、本明細書に示された幾つかの実施形態に関する下記の記述は、例示及び説明のためのものに過ぎない。網羅的であることや、開示した特定の形式に限定するように意図するものではない。
【0028】
図1は、従来の有機発光ダイオードの構造及び従来の有機発光ダイオードにおける励起子の無放射減衰経路を示す図である。
図1を参照すると、従来のOLEDは、左から右に向かって、正孔注入層(HIL)と、正孔輸送層(HTL)と、発光層(EML)と、電子輸送層(ETL)と、を備える。該OLEDは、電子注入層(EIL)と、陰極と、陽極とをさらに備えていてもよい。発光層において、電子は有機材料の伝導帯に注入され、正孔は有機材料の価電子帯に注入される。電子と正孔は、有機材料を横切って拡散し、相互に再結合して励起子を形成する。励起子が放射的に減衰することによって画像表示用の光放射が発生する。幾つかの実施形態において、正孔輸送層によって正孔が再結合サイトに輸送され、電子輸送層によって電子が再結合サイトに輸送される。
【0029】
図1に示すように、発光層に輸送注入された正孔が、発光層に輸送注入された電子を超過すると、正孔漏れ電流が発生する。正孔漏れ電流は、発光層から電子輸送層に輸送される。過剰な正孔が電子輸送層中の電子と再結合することによって、電子輸送層において励起子が形成される。電子輸送層内の量子効率は極めて低いので、電子輸送層中の励起子は無放射減衰経路により基底状態へ遷移する。無放射減衰プロセスで発生した熱によって、電子輸送層が不安定になり、OLEDの寿命が縮むことになる。
【0030】
したがって、本発明は、有機発光ダイオード、該有機発光ダイオードを備えた表示パネルと表示装置、並びに該有機発光ダイオードの製造方法に注力されたものであり、従来技術の制限や欠陥による1つまたは複数の問題を実質的に解消する。一態様において、本発明は、有機発光ダイオードを提供する。幾つかの実施形態において、本発明の有機発光ダイオードは、発光層と、発光層上に位置し、かつ第1電子輸送材料を含む第1電子輸送層と、第1電子輸送層の、発光層から遠位側に位置し、かつ正孔除去材料を含む正孔除去層と、正孔除去層の、第1電子輸送層から遠位側に位置し、かつ第2電子輸送材料を含む第2電子輸送層と、を備えた有機発光ダイオードを含む。正孔除去材料は、第1または第2電子輸送層中の過剰な正孔によって生じた励起子を、放射減衰によって基底状態へ遷移させることができる材料である。
【0031】
図2は、幾つかの実施形態における有機発光ダイオードの構造を示す図である。
図2を参照すると、有機発光ダイオードは、第1電子輸送層6と、第2電子輸送層8と、第1電子輸送層6と第2電子輸送層8との間に位置する正孔除去層7と、を備える。具体的には、
図2に示すように、この実施形態における有機発光ダイオードは、ベース基板1と、ベース基板1上に位置する第1電極層2と、第1電極層2の、ベース基板1から遠位側に位置する正孔注入層3と、正孔注入層3の、第1電極層2から遠位側に位置する正孔輸送層4と、正孔輸送層4の、正孔注入層3から遠位側に位置する発光層5と、発光層5の、正孔輸送層4から遠位側に位置する第1電子輸送層6と、第1電子輸送層6の、発光層5から遠位側に位置する正孔除去層7と、正孔除去層7の、第1電子輸送層6から遠位側に位置する第2電子輸送層8と、第2電子輸送層8の、正孔除去層7から遠位側に位置する電子注入層9と、電子注入層9の、第2電子輸送層8から遠位側に位置する第2電極層10と、を備える。必要に応じて、第1電極層2は陽極、第2電極層10は陰極である。
【0032】
図3は、 幾つかの実施形態における有機発光ダイオードの構造及び該有機発光ダイオードにおける励起子の放射減衰経路を示す図である。
図3を参照すると、この実施形態における有機発光ダイオードは、左から右に向かって、正孔注入層(HIL)と、正孔輸送層(HTL)と、発光層(EML)と、第1電子輸送層(ETL1)と、正孔除去層(HSL)と、第2電子輸送層(ETL2)と、を備える。発光層EMLに輸送注入された正孔は、発光層EMLに輸送注入された電子を超過する。過剰な正孔は、発光層EMLから第1電子輸送層ETL1に輸送されて、正孔除去層HSLにたどり着く。正孔除去層HSLにおいて過剰な正孔が電子と再結合することによって、正孔除去層HSLにおいて励起子が形成される。正孔除去層HSL中の励起子は、放射減衰経路により基底状態へ遷移する。エネルギーは、無放射減衰によって熱量として放出されるのではなく、放射減衰によって放出されるので、従来の有機発光ダイオードの無放射減衰による電子輸送層ETL1とETL2の熱劣化が解消される。本発明の有機発光ダイオードによれば、より長い寿命が実現される。
【0033】
正孔除去層は、各種の適切な正孔除去材料により製造することができる。適切な正孔除去材料としては、蛍光発光材料及び燐光発光材料が挙げられるが、これらに限定されない。必要に応じて、蛍光発光材料は、ホスト材料と、蛍光を発光するためのゲスト材料とを含む。必要に応じて、燐光発光材料は、ホスト材料と、燐光を発光するためのゲスト材料とを含む。
【0034】
幾つかの実施形態において、正孔除去材料は、燐光発光材料である。必要に応じて、燐光発光材料は、同じ副画素中の発光層から発光した光と同色の光を発光できるものである。例えば、副画素が赤色副画素である場合、燐光発光材料は赤色燐光発光材料とすることができる。副画素が緑色副画素である場合、燐光発光材料は緑色燐光発光材料とすることができる。副画素が青色副画素である場合、燐光発光材料は青色燐光発光材料とすることができる。場合により、燐光発光材料は、同じ副画素における発光層から発光した光と異なる色の光を発光できるものとしてもよい。例えば、副画素が青色副画素である場合、燐光発光材料は、緑色光(例えば薄緑色の光)を発光するものであってもよい。別の例においては、燐光発光材料は、黄光を発光するものであってもよい。黄色燐光発光材料で製造された正孔除去層は、例えば、赤色の副画素、緑色の副画素、及び青色の副画素に用いられる。
【0035】
幾つかの実施形態において、正孔除去層製造用の発光材料は、ホスト材料と、ゲスト材料とを含む。正孔除去層は、放射減衰経路によって電子輸送層における過剰な正孔による励起子を、基底状態へ遷移させる役割を果たすため、比較的低いドーパント濃度で充分である。必要に応じて、該ドーパント濃度(即ちゲスト材料濃度)は、同じ副画素中の発光層のドーパント濃度よりも低くする。例えば、該ドーパント濃度(即ち正孔除去層中のゲスト材料濃度)は、約1重量%~約5重量%であってもよく、例えば、約1重量%~約2重量%、約2重量%~約3重量%、約3重量%~約4重量%、約1重量%~約3重量%、約3重量%~約5重量%である。
【0036】
幾つかの実施形態において、正孔除去材料は、蛍光発光材料である。必要に応じて、蛍光発光材料は、同じ副画素における発光層から発光した光と同色の光を発光できるものである。例えば、副画素が赤色副画素である場合、蛍光発光材料は赤色蛍光発光材料とすることができる。副画素が緑色副画素である場合、蛍光発光材料は緑色蛍光発光材料とすることができる。副画素が青色副画素である場合、蛍光発光材料は青色蛍光発光材料とすることができる。場合により、蛍光発光材料は、同じ副画素中の発光層から発光した光と異なる色の光を発光できるものであってもよい。
【0037】
幾つかの実施形態において、蛍光発光材料は、ホスト材料と、蛍光を発光するゲスト材料とを含む。必要に応じて、ドーパント濃度(即ちゲスト材料濃度)は、同じ副画素中の発光層のドーパント濃度よりも低くする。例えば、ドーパント濃度(即ち正孔除去層中のゲスト材料濃度)は、約1重量%~約5重量%であってもよく、例えば、約1重量%~約2重量%、約2重量%~約3重量%、約3重量%~約4重量%、約1重量%~約3重量%、約3重量%~約5重量%である。
【0038】
正孔除去材料と電子輸送材料との間で良好なエネルギーレベルマッチングを実現できるように、正孔除去材料を選ぶことができる。具体的には、正孔除去材料の最低空軌道(LUMO)エネルギーレベルが、電子輸送層中の電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルとおおよそマッチするように、正孔除去材料(例えば発光材料および/またはホスト材料)を選ぶことができる。正孔除去材料がホスト材料とゲスト材料とを含む場合、ホスト材料のLUMOエネルギーレベルが電子輸送層中の電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルとおおよそマッチするように、ホスト材料を選ぶことができる。したがって、幾つかの実施形態において、正孔除去材料(例えば発光材料および/またはホスト材料)のLUMOエネルギーレベルは、発光層のLUMOエネルギーレベルと電子注入層のLUMOエネルギーレベルとの間にある。
【0039】
幾つかの実施形態において、正孔除去材料(例えば正孔除去材料のホスト材料)のLUMOエネルギーレベルと電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルとの差は、0.6eV以内(例えば、0.5eV以内、0.4eV以内、0.3eV以内、0.2eV以内)である。幾つかの実施形態において、正孔除去材料(例えば正孔除去材料のホスト材料)のLUMOエネルギーレベルは、電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルの約75%~約125%であり、例えば、電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルの約80%~約120%、約85%~約115%、約90%~約110%、約95%~約105%、または、約99%~約101%である。
【0040】
幾つかの実施形態において、電子輸送材料と正孔除去材料との間で良好なエネルギーレベルマッチングを実現できるように、電子輸送材料(第1電子輸送材料および/または第2電子輸送材料)を選ぶことができる。具体的には、電子輸送材料の最低空軌道(LUMO)エネルギーレベルが正孔除去材料のLUMOエネルギーレベルとおおよそマッチするように、電子輸送材料を選ぶことができる。正孔除去材料がホスト材料とゲスト材料とを含む場合、電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルが正孔除去材料中のホスト材料のLUMOエネルギーレベルとおおよそマッチするように、電子輸送材料を選ぶことができる。
【0041】
例えば、電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルは、典型的には約2.0~約3.5eVである。必要に応じて、比較的低いLUMOエネルギーレベルを有する電子輸送材料を選ぶことができる。必要に応じて、電子輸送材料は、約2.0eV~約2.5eVのLUMOエネルギーレベルを有する。必要に応じて、電子輸送材料は、約2.5eV~約3.0eVのLUMOエネルギーレベルを有する。必要に応じて、電子輸送材料は、約3.0eV~約3.5eVのLUMOエネルギーレベルを有する。必要に応じて、電子輸送材料と正孔除去材料(例えば正孔除去材料のホスト材料)とは、両者ともに約2.0eV~約2.5eVのLUMOエネルギーレベルを有する。必要に応じて、電子輸送材料と正孔除去材料(例えば正孔除去材料のホスト材料)とは、両者ともに約2.5eV~約3.0eVのLUMOエネルギーレベルを有する。必要に応じて、電子輸送材料と正孔除去材料(例えば正孔除去材料のホスト材料)とは、両者ともに約3.0eV~約3.5eVのLUMOエネルギーレベルを有する。
【0042】
幾つかの実施形態において、第1電子輸送層と第2電子輸送層は、同じ電子輸送材料で製造されている。必要に応じて、正孔除去材料(例えば正孔除去材料のホスト材料)のLUMOエネルギーレベルと該同じ電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルとの差は、0.6eV以内(例えば、0.5eV以内、0.4eV以内、0.3eV以内、0.2eV以内)である。必要に応じて、正孔除去材料(例えば正孔除去材料のホスト材料)のLUMOエネルギーレベルは、該同じ電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルの約75%~約125%であり、例えば、該同じ電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルの約80%~約120%、約85%~約115%、約90%~約110%、約95%~約105%、または、約99%~約101%である。
【0043】
幾つかの実施形態において、第1電子輸送層と第2電子輸送層は、異なる電子輸送材料で製造されている。例えば、第1電子輸送層は、第1電子輸送材料で製造され、第2電子輸送層は、第2電子輸送材料で製造されている。必要に応じて、正孔除去材料(例えば正孔除去材料のホスト材料)のLUMOエネルギーレベルと第1電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルとの差は、0.6eV以内(例えば、0.5eV以内、0.4eV以内、0.3eV以内、0.2eV以内)である。必要に応じて、正孔除去材料(例えば正孔除去材料のホスト材料)のLUMOエネルギーレベルと第2電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルとの差は、0.6eV以内(例えば、0.5eV以内、0.4eV以内、0.3eV以内、0.2eV以内)である。必要に応じて、正孔除去材料(例えば正孔除去材料のホスト材料)のLUMOエネルギーレベルは、第1電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルの約75%~約125%であり、例えば、第1電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルの約80%~約120%、約85%~約115%、約90%~約110%、約95%~約105%、または、約99%~約101%である。必要に応じて、正孔除去材料(例えば正孔除去材料のホスト材料)のLUMOエネルギーレベルは、第2電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルの約75%~約125%であり、例えば、第2電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルの約80%~約120%、約85%~約115%、約90%~約110%、約95%~約105%、または、約99%~約101%である。必要に応じて、正孔除去材料(例えば正孔除去材料のホスト材料)のLUMOエネルギーレベルは、第1電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルと第2電子輸送材料のLUMOエネルギーレベルとの間にある。
【0044】
正孔除去層は、任意の適切な厚みに製造することができる。幾つかの実施形態において、正孔除去層の厚みは、約1nm~約5nmであり、例えば、約1nm~約2nm、約2nm~約3nm、約3nm~約4nm、約4nm~約5nmである。正孔除去材料から発光した光が、同じ副画素中の発光層から発光した光と同じ色を有するように、正孔除去材料を選ぶ場合、正孔除去層は、比較的大きな厚みを有していてよい。正孔除去材料から発光した光が、同じ副画素中の発光層から発光した光と異なる色を有するように、正孔除去材料を選ぶ場合、正孔除去層は、比較的小さな厚みを有していてよい。必要に応じて、電子輸送層の厚みは、約10nm~約40nmであり、例えば、約10nm~約20nm、約20nm~約30nm、約30nm~約40nmである。場合により、第1電子輸送層と第2電子輸送層の合計の厚みは、約10nm~約40nmであり、例えば、約10nm~約20nm、約20nm~約30nm、約30nm~約40nmである。必要に応じて、第1電子輸送層の厚みは、約5nm~約25nmであり、例えば、約5nm~約10nm、約10nm~約15nm、約15nm~約20nm、約20nm~約25nmである。必要に応じて、第2電子輸送層の厚みは、約5nm~約25nmであり、例えば、約5nm~約10nm、約10nm~約15nm、約15nm~約20nm、約20nm~約25nmである。必要に応じて、第1電子輸送層の厚みは、約5nm~約25nmであり、第2電子輸送層の厚みは、約35nm~約15nmである。
【0045】
電子輸送層は、各種の適切な電子輸送材料を用いて製造することができる。適切な電子輸送材料の例としては、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、8-ヒドロキシキノリンアルミニウム、8-ヒドロキシキノリン リチウム、ビス(8-ヒドロキシ-2-メチルキノリン)-(4-フェニルフェノキシ) アルミニウム、トリス(8-キノリノラト) アルミニウム、3-(ビフェニル-4-イル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾール、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト) ベリリウム、及び1,3,5-トリス(N-フェニルベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
正孔除去層は、各種の正孔除去材料により製造することができる。幾つかの実施形態において、正孔除去材料は、赤色発光材料を含む。必要に応じて、正孔除去材料は、赤色発光材料(ゲスト材料)用のホスト材料をさらに含む。必要に応じて、赤色発光材料は、赤色蛍光発光材料である。必要に応じて、赤色発光材料は、赤色燐光発光材料である。必要に応じて、ホスト材料は、赤色蛍光発光材料用のホスト材料である。必要に応じて、ホスト材料は、赤色燐光発光材料用のホスト材料である。
【0047】
正孔除去層の製造に用いる赤色蛍光発光材料の例としては、ペリレン誘導体、ユーロピウム錯体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、ポルフィリン誘導体、ナイルレッド、2-(1,1-ジメチルエチル)-6-(2-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1,1,7,7-テトラメチル-1H,5H-ベンゾ(ij)キノリジン-9-イル)エテニル)-4H-ピラン-4H-イリデン)プロパンジニトリル(DCJTB)、及び4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン(DCM)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
正孔除去層の製造に用いる赤色燐光発光材料の例としては、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウムなどの金属の金属錯体が挙げられるが、これらに限定されない。これら金属錯体において、それらの配位子のうち少なくとも1つは、例えばフェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、またはポルフィリン骨格を持つことができる。具体的には、トリス(1-フェニルイソキノリン) イリジウム、ビス[2-(2’-ベンゾ[4,5-α]チエニル)ピリジナト-N,C3’] イリジウム (アセチルアセトネート)(btp2Ir(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-12H,23H-ポルフィリン-白金(II)、ビス[2-(2’-ベンゾ[4,5-α]チエニル)ピリジナト-N,C3’] イリジウム、及びビス(2-フェニルピリジン) イリジウム (アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0049】
幾つかの実施形態において、正孔除去材料は、緑色発光材料を含む。必要に応じて、正孔除去材料は、緑色発光材料(ゲスト材料)用のホスト材料をさらに含む。必要に応じて、緑色発光材料は、緑色蛍光発光材料である。必要に応じて、緑色発光材料は、緑色燐光発光材料である。必要に応じて、ホスト材料は、緑色蛍光発光材料用のホスト材料である。必要に応じて、ホスト材料は、緑色燐光発光材料用のホスト材料である。
【0050】
正孔除去層の製造に用いる緑色蛍光発光材料の例としては、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体、9,10-ビス[(9-エチル-3-カルバゾール)-ビニレニル]-アントラセン、ポリ(9,9-ジヘキシル-2,7-ビニレンフルオレニレン)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(1,4-ジフェニレン-ビニレン-2-メトキシ-5-{2-エチルヘキシルオキシ}ベンゼン)]、及びポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレニレン)-alt-co-(2-メトキシ-5-(2-エトキシルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレン)]が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
正孔除去層の製造に用いる緑色燐光発光材料の例としては、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウムなどの金属の金属錯体が挙げられるが、これらに限定されない。これら金属錯体において、それらの配位子のうち少なくとも1つが、例えばフェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、またはポルフィリン骨格を持つことが好ましい。具体的は、fac-トリス(2-フェニルピリジン) イリジウム(Ir(ppy)3)、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’) イリジウム (アセチルアセトネート)、及びfac-トリス[5-フルオロ-2-(5-トリフルオロメチル-2-ピリジン)フェニル-C,N] イリジウムが挙げられる。
【0052】
幾つかの実施形態において、正孔除去材料は、青色発光材料を含む。必要に応じて、正孔除去材料は、青色発光材料(ゲスト材料)用のホスト材料をさらに含む。必要に応じて、青色発光材料は、青色蛍光発光材料である。必要に応じて、青色発光材料は、青色燐光発光材料である。必要に応じて、ホスト材料は、青色蛍光発光材料用のホスト材料である。必要に応じて、ホスト材料は、青色燐光発光材料用のホスト材料である。
【0053】
正孔除去層の製造に用いる青色蛍光発光材料の例としては、ジスチリル誘導体、フルオランテン誘導体、ピレン誘導体、ペリレンおよびその誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン、4,4’-ビス(9-エチル-3-カルバゾビニレン)-1,1’-ビフェニル(BCzVBi)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,5-ジメトキシベンゼン-1,4-ジイル)]、ポリ[(9,9-ジヘキシルオキシフルオレン-2,7-ジイル)-alt-co-(2-メトキシ-5-{2-エトキシヘキシルオキシ}フェニレン-1,4-ジイル)]、及びポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(エチニルベンゼン)]が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
正孔除去層の製造に用いる青色燐光発光材料の例としては、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウムなどの金属の金属錯体が挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、ビス[4,6-ジフルオロフェニルピリジナト-N,C2’]-ピコリネート-イリジウム、トリス[2-(2,4-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’] イリジウム、ビス[2-(3,5-トリフルオロメチル)ピリジナト-N,C2’]-ピコリネート-イリジウム、及びビス(4,6-ジフルオロフェニルピリジナト-N,C2’) イリジウム (アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0055】
正孔除去層の製造に用いる蛍光発光材料(例えば赤色、緑色または青色の蛍光発光材料)用のホスト材料の例としては、ジスチリルアリーレン誘導体、ナフタセン誘導体、ペリレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアミン誘導体、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)等のキノリノラト系金属錯体、トリフェニルアミンの4量体等のトリアリールアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、シロール誘導体、ジカルバゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ベンゾピラン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、及び4,4’-ビス(2,2’-ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
正孔除去層の製造に用いる燐光発光材料(例えば赤色、緑色または青色の燐光発光材料)用のホスト材料の例としては、3-フェニル-4-(1’-ナフチル)-5-フェニルカルバゾール、及び4,4’-N,N’-ジカルバゾールビフェニル(CBP)等のカルバゾール誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
幾つかの実施形態において、有機発光ダイオードは、第1発光材料を有する正孔除去層と、第2発光材料を有する発光層と、を含む。発光層は、正孔除去層と同じ材料により製造することができ、例えば、第1発光材料と第2発光材料は同じである。必要に応じて、第1発光材料と第2発光材料は、異なる発光材料である。必要に応じて、正孔除去層製造用の第1発光材料は、燐光発光材料である。
【0058】
必要に応じて、第1発光材料は赤色発光材料であり、かつ第2発光材料も赤色発光材料である。必要に応じて、第1発光材料は緑色発光材料であり、かつ第2発光材料も緑色発光材料である。必要に応じて、第1発光材料は青色発光材料であり、かつ第2発光材料も青色発光材料である。必要に応じて、第1発光材料は白色発光材料であり、かつ第2発光材料も白色発光材料である。必要に応じて、第2発光材料は、燐光発光材料である。
【0059】
必要に応じて、正孔除去層の製造に用いる第1発光材料は黄色発光材料であり、かつ発光層の製造に用いる第2発光材料は、赤色発光材料、緑色発光材料、青色発光材料から選ばれた任意の1種であってもよい。必要に応じて、第1発光材料は、黄色燐光発光材料である。
【0060】
必要に応じて、発光層の製造に用いる第2発光材料は青色発光材料であり、かつ正孔除去層の製造に用いる第1発光材料は緑色発光材料(例えば薄緑色の光を発光できる発光材料)である。必要に応じて、第1発光材料は、緑色燐光発光材料である。
【0061】
発光層は、各種の適切な発光材料により製造することができる。例えば、正孔除去材料に関して検討した各種の発光材料は、発光層の製造に用いることができる。幾つかの実施形態において、発光層の製造に用いる第2発光材料は、ホスト材料と、ゲスト材料とを含む。発光層の機能が発光であるため、正孔除去層のドーパント濃度に比べて比較的高いドーパント濃度を用いることができる。必要に応じて、発光層用のドーパント濃度(即ちゲスト材料濃度)は、約1重量%~約10重量%であり、例えば、約1重量%~約5重量%、約5重量%~約10重量%である。
【0062】
電子注入層は、各種の適切な電子注入材料により製造することができる。適切な電子注入材料の例としては、フッ化リチウム、8-ヒドロキシキノリン リチウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
正孔輸送層は、各種の適切な正孔輸送材料により製造することができる。適切な正孔輸送材料の例としては、各種p型の高分子材料や、各種p型の低分子材料、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、及びポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェンとポリ(p-スチレンスルホン酸ナトリウム)とを含む混合物が挙げられるが、これらに制限されない。
【0064】
正孔注入層は、各種の適切な正孔注入材料により製造することができる。適切な正孔注入材料の例としては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、銅フタロシアニン、4,4’,4’’-トリス(N,N‐フェニル‐3‐メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
他の一態様において、本発明は、有機発光ダイオードの製造方法を提供する。幾つかの実施形態において、該方法は、発光層を形成することと、発光層上に、第1電子輸送材料を含む第1電子輸送層を形成することと、第1電子輸送層の、発光層から遠位側に、正孔除去材料を含む正孔除去層を形成することと、正孔除去層の、第1電子輸送層から遠位側に、第2電子輸送材料を含む第2電子輸送層を形成することと、を含む。正孔除去材料は、第1または第2電子輸送層中の過剰な正孔によって生じた励起子を、放射減衰によって基底状態へ遷移させることができる材料である。正孔除去材料のLUMOエネルギーレベルは、第1電子輸送材料および第2輸送材料のLUMOエネルギーレベルとおおよそマッチしている。
【0066】
本発明の有機発光ダイオードは、各種の適切な方法により製造することができる。幾つかの実施形態において、正孔除去層は、気相堆積プロセスにより形成される。例えば、正孔除去層は、第1電子輸送層の、ベース基板から遠位側に、正孔除去材料を気相堆積することによって形成することができる。必要に応じて、気相堆積は成膜チャンバー内で行われる。堆積時間、圧力、および堆積速度を調整することによって、正孔除去層は特定の厚みまたは他の特性を達成する。気相堆積は、必要に応じて、成膜チャンバー内において、5×10-4Pa未満の圧力で行われる。
【0067】
幾つかの実施形態において、正孔除去層は、溶液に基づくプロセスにより形成される。例えば、正孔除去層は、第1電子輸送層の、ベース基板から遠位側に正孔除去材料を塗布して、塗布された基板を製造し、該塗布された基板を乾燥させることによって形成することができる。
【0068】
幾つかの実施形態において、該方法は、ベース基板上に第1電極層を形成する工程と、第1電極層の、ベース基板から遠位側に正孔注入層を形成する工程と、正孔注入層の、第1電極層から遠位側に正孔輸送層を形成する工程と、正孔輸送層の、正孔注入層から遠位側に発光層を形成する工程と、第2電子輸送層の、正孔除去層から遠位側に電子注入層を形成する工程と、電子注入層の、第2電子輸送層から遠位側に第2電極層を形成する工程のうちの1つまたは複数をさらに含む。必要に応じて、第1電極層は陽極であり、第2電極層は陰極である。
【0069】
1つの例示において、該方法は、ベース基板上に第1電極層を形成することと、第1電極層の、ベース基板から遠位側に、正孔注入層を形成することと、正孔注入層の、第1電極層から遠位側に、正孔輸送層を形成することと、正孔輸送層の、正孔注入層から遠位側に、発光層を形成することと、発光層の、正孔輸送層から遠位側に、第1電子輸送層を形成することと、第1電子輸送層の、発光層から遠位側に、正孔除去層を形成することと、正孔除去層の、第1電子輸送層から遠位側に、第2電子輸送層を形成することと、第2電子輸送層の、正孔除去層から遠位側に、電子注入層を形成することと、電子注入層の、第2電子輸送層から遠位側に、第2電極層を形成することと、を含む。
【0070】
正孔除去層は、任意の適切な厚みを有するように形成することができる。幾つかの実施形態において、正孔除去層は、厚みが約1nm~約5nmとなるように形成され、例えば、約1nm~約2nm、約2nm~約3nm、約3nm~約4nm、約4nm~約5nmである。必要に応じて、電子輸送層は、厚みが約10nm~約40nmとなるように形成され、例えば、約10nm~約20nm、約20nm~約30nm、約30nm~約40nmである。必要に応じて、第1電子輸送層は、厚みが約5nm~約25nmとなるように形成され、例えば、約5nm~約10nm、約10nm~約15nm、約15nm~約20nm、約20nm~約25nmである。必要に応じて、第2電子輸送層は、厚みが約5nm~約25nmとなるように形成され、例えば、約5nm~約10nm、約10nm~約15nm、約15nm~約20nm、約20nm~約25nmである。必要に応じて、第1電子輸送層の厚みは、約5nm~約25nmであり、第2電子輸送層の厚みは、約35nm~約15nmである。
【0071】
必要に応じて、第1電子輸送層と第2電子輸送層は、同じ電子輸送材料で製造される。
【0072】
幾つかの実施形態において、正孔除去材料は、ホスト材料と、ゲスト発光材料とを含む。正孔除去層は、気相堆積プロセスにより形成することができる。例えば、堆積プロセスはチャンバー内で行うことができる。ホスト材料とゲスト発光材料はそれぞれ堆積材料容器内に入れられると同時に、チャンバー内に導入される。堆積プロセスにおいて、共堆積プロセスが実行され、例えば、一つの堆積プロセスにおいて、ホスト材料とゲスト発光材料が並行してまたは同時に堆積される。
【0073】
他の一態様において、本発明は、本明細書に記述した有機発光ダイオード、または本発明に記述した方法により製造された有機発光ダイオードを備えた表示パネルを提供する。更に他の一態様において、本発明は、本明細書に記述した表示パネルを備えた表示装置を提供する。適切な表示装置としては、電子ペーパー、携帯電話、タブレットコンピュータ、テレビ、モニタ、ノートブックコンピュータ、デジタルアルバム、GPSなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
本発明の実施形態について、説明及び記述の目的から上記の記述を提供した。それは、網羅的に列挙することや、開示した特定の形式または例示的な実施形態に本発明を限定するように意図するものではない。したがって、上記の記述は、限定的なものではなく、説明的なものであると理解されるべきである。当業者にとっては、多くの修正や変形が自明的であることは、明らかである。これらの実施形態は、本発明の原理及びその最適な形態の実際の適用を説明するために選択及び記述されたものであり、これらにより当業者は、本発明の各実施形態、および特定の用途または意図された実用に適した各種修正を理解できる。本発明の範囲は、添付された請求の範囲及びそれらの均等物によって定義されることが意図されており、特に説明がない限り、全ての用語はその最も広い合理的な意味で解釈される。したがって、「発明」、「本発明」などの用語は、特許請求の範囲を必ずしも具体的な実施形態に限定するものではなく、本発明の実施形態への例示的な参照は、本発明を限定する趣旨ではなく、そのような限定は推測されない。本発明は、添付された請求項の思想及び範囲によってのみ限定される。また、これら請求項は、名詞または要素を伴う「第1」や「第2」などの用語が使用することがある。このような用語は、特定の数字が与えられない限り、命名法の1種として理解されるべきであり、このような命名法によって修飾された要素の数を限定するためのものとして解釈されるべきではない。記述した長所や利点は、何れも本発明の全ての実施形態に適用されるとは限らない。なお、当業者は、添付された請求の範囲によって限定された本発明の範囲から逸脱することなく、記述した実施形態について変更を行うことができる。また、本発明中の全ての要素やコンポーネントは、添付された請求の範囲において明確に記載されているか否かを問わず、公衆に貢献するためのものではない。