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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】変形検出器付き掘削ロッド
(51)【国際特許分類】
   E21B 7/00 20060101AFI20220126BHJP
【FI】
E21B7/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018043192
(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公開番号】P2019157434
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000176512
【氏名又は名称】三谷セキサン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】木谷 好伸
(72)【発明者】
【氏名】酒井 隆男
(72)【発明者】
【氏名】北岡 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 茂治郎
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-191952(JP,A)
【文献】特開2016-223080(JP,A)
【文献】特表平05-508894(JP,A)
【文献】特開2002-220986(JP,A)
【文献】特開2016-125327(JP,A)
【文献】特開2002-371779(JP,A)
【文献】特開2018-033500(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0227780(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削ヘッドと、下端部に前記掘削ヘッドが取り付けられた筒状のロッド本体と、を有し、前記ロッド本体を回転させて前記掘削ヘッドにより地面に杭穴を掘削する掘削ロッドにおいて、
前記ロッド本体は、内壁面に取り付けられて当該ロッド本体の変形を検出する変形検出器を有し、
前記変形検出器は、
前記ロッド本体の内壁面側に配置され、前記ロッド本体の軸線方向に延びる計測ロッドと、
前記内壁面に固定された固定部材側固定部と、前記固定部材側固定部よりも内周側で前記計測ロッドが固定された計測ロッド固定部と、を有する固定部材と、
前記内壁面に固定された支持部材側固定部と、前記支持部材側固定部よりも内周側で前記計測ロッドを当該計測ロッドの計測ロッド軸線方向に移動可能かつ当該ロッド軸線回りに回転可能に支持する計測ロッド支持部と、を有する支持部材と、
前記計測ロッド固定部から前記軸線方向に離間する移動検出位置で前記内壁面と前記計測ロッドとが前記計測ロッド軸線方向で相対移動する移動量を検出する移動量検出器と、
前記計測ロッド固定部から前記軸線方向に離間する回転検出位置で前記内壁面と前記計測ロッドとが前記計測ロッド軸線回りで相対回転する回転量を検出する回転量検出器と、
を備える
ことを特徴とする変形検出器付き掘削ロッド。
【請求項2】
ロッド本体の内壁面に固定されて、前記ロッド本体の軸線方向に延びる長尺状のベース部材を有し、
固定部材側固定部および支持部材側固定部は、前記ベース部材に固定されて、前記ベース部材を介して、前記内壁面に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の変形検出器付き掘削ロッド。
【請求項3】
移動量検出器は、計測ロッドおよびベース部材の一方に固定された移動量検出用磁石と、他方に固定された移動量検出用磁気センサとを備え、
回転量検出器は、前記計測ロッドおよび前記ベース部材の一方に固定された回転量検出用磁石と、他方に固定された回転量検出用磁気センサとを備えることを特徴とする請求項2に記載の変形検出器付き掘削ロッド。
【請求項4】
計測ロッド固定部と移動検出位置との間の第2の移動検出位置でロッド本体の内壁面と計測ロッドとが前記計測ロッド軸線方向で相対移動する第2の移動量を検出する第2の移動量検出器と、
前記計測ロッド固定部と回転検出位置との間の第2の回転検出位置で前記ロッド本体の内壁面と前記計測ロッドとが前記計測ロッド軸線回りで相対回転する第2の回転量を検出する第2の回転量検出器と、を備えることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の変形検出器付き掘削ロッド。
【請求項5】
変形検出器として、内壁面において軸線を間に挟んだ一方側および他方側にそれぞれ配置された複数の前記変形検出器を備えることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の変形検出器付き掘削ロッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既製杭などを埋設する抗穴を掘削するための変形検出器付き掘削ロッドに関する。
【背景技術】
【0002】
抗穴を掘削するための掘削ロッドは特許文献1に記載されている。同文献の掘削ロッドは、掘削ヘッドと、端部に掘削ヘッドが取り付けられるロッド本体と、を有する。掘削ロッドにより杭穴を設ける際には、地上に配置した駆動装置によってロッド本体を当該ロッド本体の軸線回りに回転させて掘削ヘッドにより地面を掘削する。ロッド本体は、筒状である。ロッド本体は、その中空部分に、掘削した杭穴にセメントミルクを流し込むための流通管を同軸に備える場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-223080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
掘削時に掘削ロッドにかかるトルクに関しては計測していないため、トルクが過剰となるとロッド本体に撓みや捩じれなどの変形が発生し、掘削ロッドの破損を招く可能性があった。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ロッド本体の変形を検出できる掘削ロッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、掘削ヘッドと、端部に前記掘削ヘッドが取り付けられた筒状のロッド本体と、を有し、前記ロッド本体を回転させて前記掘削ヘッドにより地面に抗穴を掘削する掘削ロッドにおいて、前記ロッド本体の内壁面に取り付けられて当該ロッド本体の変形を検出する変形検出器を有し、前記変形検出器は、前記内壁面から内周側に離間する位置を前記ロッド本体の軸線方向に延びる計測ロッドと、前記内壁面に固定された固定部材側固定部と、前記固定部材側固定部よりも内周側で前記計測ロッドが固定された計測ロッド固定部と、を有する固定部材と、前記内壁面に固定された支持部材側固定部と、前記支持部材側固定部よりも内周側で前記計測ロッドを当該計測ロッドの計測ロッド軸線方向に移動可能かつ当該ロッド軸線回りに回転可能に支持する計測ロッド支持部と、を有する支持部材と、を備え、前記計測ロッド固定部から前記軸線方向に離間する移動検出位置で前記内壁面と前記計測ロッドとが前記計測ロッド軸線方向で相対移動する移動量を検出する移動量検出器と、前記計測ロッド固定部から前記軸線方向に離間する回転検出位置で前記内壁面と前記計測ロッドとが前記計測ロッド軸線回りで相対回転する回転量を検出する回転量検出器と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ロッド本体には当該ロッド本体の変形を検出する変形検出器が取り付けられている。変形検出器は、ロッド本体の内周壁の内側を軸線方向に延びる計測ロッドを備える。また、計測ロッドは、計測ロッド軸線方向の一部分が固定部材を介してロッド本体(内壁面)に固定されている。従って、掘削ロッドに過剰なトルクが付与されてロッド本体が撓んだ場合には、計測ロッドとロッド本体との接続部となる固定部材の計測ロッド固定部から軸線方向に離間する移動検出位置において、計測ロッドとロッド本体(内周面)との軸線方向への相対移動を検出できる。また、掘削ロッドに過剰なトルクが付与されてロッド本体が捩じれた場合には、計測ロッドとロッド本体との接続部となる固定部材の計測ロッド固定部から軸線方向に離間する回転検出位置において、計測ロッドとロッド本体(内周面)との軸線回りの相対回転を検出できる。従って、変形検出器は、移動検出位置において計測ロッドとロッド本体(内周面)とが相対移動した移動量と、回転検出位置において計測ロッドとロッド本体(内周面)とが相対回転した回転量と、に基づいて、ロッド本体が撓んで捩じれる変形量を取得できる。ここで、変形検出器は筒状のロッド本体の内周側に位置するので、ロッド本体によって外部から保護される。従って、掘削時に、変形検出器が破損することがない。
【0008】
本発明において、前記内壁面に固定されて前記軸線方向に延びる長尺状のベース部材を有し、前記固定部材側固定部および前記支持部材側固定部は、前記ベース部材に固定されて、前記ベース部材を介して、前記内壁面に固定されていることが望ましい。このようにすれば、固定部材および支持部材をロッド本体の内壁面に直接固定する場合と比較して、変形検出器をロッド本体の内周側に設置することが容易となる。
【0009】
本発明において、前記移動量検出器は、前記計測ロッドおよび前記ベース部材の一方に固定された移動量検出用磁石と、他方に固定された移動量検出用磁気センサとを備え、前記回転量検出器は、前記計測ロッドおよび前記ベース部材の一方に固定された回転量検出用磁石と、他方に固定された回転量検出用磁気センサとを備えるものとすることができる。このようにすれば、移動量検出器は、計測ロッドとロッド本体(内周面)とが相対移動する移動量を非接触で検出できる。また、移動量検出器は計測ロッドとロッド本体(内周面)とが相対回転する回転量を非接触で検出できる。従って、ロッド本体に過大な撓みや捩じれが発生した場合でも移動量検出器や回転量検出器が破損することがない。
【0010】
本発明において、前記計測ロッド固定部と前記移動検出位置との間の第2の移動検出位置で前記内壁面と前記計測ロッドとが前記計測ロッド軸線方向で相対移動する第2の移動量を検出する第2の前記移動量検出器と、前記計測ロッド固定部と前記回転検出位置との間の第2の回転検出位置で前記内壁面と前記計測ロッドとが前記計測ロッド軸線回りで相対回転する第2の回転量を検出する第2の前記回転量検出器と、を備えることが望ましい。このようにすれば、計測ロッドとロッド本体との相対的な移動量および回転量を異なる2つの感度で検出できる。すなわち、ロッド本体が撓んだ場合の移動量は、固定部材の計測ロッド固定部から移動検出位置までの軸線方向の距離の長さに比例して大きくなる。従って、移動検出位置よりも計測ロッド固定部からの距離が短い第2の移動検出位置では、掘削ロッドに過大な負荷が加わってロッド本体が撓んだ場合に発生するロッド本体と計測ロッドとの大きな相対移動を検出できる。一方、第2の移動検出位置よりも計測ロッド固定部からの距離が長い移動検出位置では、掘削ロッドに加わる負荷が小さくて、ロッド本体の撓みが小さい場合(ロッド本体と計測ロッドとの相対移動が小さい場合)でも、その移動量を検出できる。同様に、ロッド本体が捩じれた場合の回転量は、固定部材の計測ロッド固定部から回転検出位置までの軸線方向の距離の長さに比例して大きくなる。従って、回転検出位置よりも計測ロッド固定部からの距離が短い第2の回転検出位置では、掘削ロッドに過大な負荷が加わってロッド本体の捩じれが大きい場合に発生するロッド本体と計測ロッドとの大きな相対回転を検出できる。一方、第2の回転検出位置よりも計測ロッド固定部からの距離が長い回転検出位置では、掘削ロッドに加わる負荷が小さくてロッド本体の捩じれが小さい場合(ロッド本体と計測ロッドとの相対回転が小さい場合)でも、その回転量を検出できる。
【0011】
本発明において、前記変形検出器として、前記内壁面において前記軸線を間に挟んだ一方側および他方側にそれぞれ配置された2つの前記変形検出器を備えることが望ましい。このようにすれば、2つの変形検出器のそれぞれによって検出される移動量の差分に基づいて、ロッド本体がいずれの方向に撓んでいるかを取得できる。また、2つの変形検出器のそれぞれによって検出される移動量の差分に基づいて、ロッド本体の曲りの程度を把握できる。
【0012】
本発明において、前記変形検出器として、前記内壁面において前記軸線回りの等角度間隔に配置された4つの前記変形検出器を備えることが望ましい。このようにすれば、4つの変形検出器のそれぞれによって検出される移動量に基づいて、ロッド本体の軸線方向の伸縮を検出できる。また、4つの変形検出器のそれぞれによって検出される回転量に基づいて、ロッド本体の捩じれを精度よく検出できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、掘削ロッドのロッド本体が撓んで捩じれる変形量を、変形検出器が検出する移動量および回転量に基づいて取得できる。ここで、掘削ロッドのロッド本体の変形量を取得できれば、掘削ロッドにかかっている負荷(トルク)を取得できる。従って、掘削時に掘削ロッドにかかる負荷により掘削先端地盤の抵抗の大小が検出でき、ロッド本体が破損することを回避できる。
また、掘削ヘッド直上でロッドにかかる負荷と、掘削電流値及び積算電流値を比較検討することにより、地盤抵抗の変化がより正確に判断でき、支持地盤の出現深度を容易に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を適用した掘削ロッドの使用状態を説明する概略図である。
図2】本発明の掘削ロッドに使用する変形検出器を説明する斜視図である。
図3】変形検出器が備える第1移動量検出器の説明図で、(a)は概略した断面図、(b)は計測した信号の説明図である。
図4】変形検出器が備える第1回転量検出器の説明図で、(a)は概略した断面図、(b)は計測した信号の説明図である。
図5】変形検出器の信号伝送機構の説明図である。
図6】他の実施形態の掘削ロッドの拡大断面図である。
図7】他の実施形態の掘削ロッドの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した掘削ロッドを説明する。
【0016】
1.掘削ロッド1の構成
【0017】
図1は掘削ロッド1の説明図である。掘削ロッド1は、既製杭などを埋設する杭穴2を掘削する際に、杭打ち機3に取り付けられて用いられる。杭打ち機3は地上を鉛直方向に延びるマスト4と、マスト4に昇降自在に取り付けられたオーガー5を備える。掘削ロッド1はオーガー5に取り付けられている。
【0018】
掘削ロッド1は、掘削ヘッド11と、端部に掘削ヘッド11が取り付けられるロッド本体12と、を有する。ロッド本体12の軸線L方向において、掘削ヘッド11が取り付けられている一方側とは反対の他方側の端部はオーガー5に接続されている。オーガー5に接続されたときに、掘削ヘッド11は掘削ロッド1が下端に位置する掘削姿勢1Aとされる。オーガー5が駆動されると、ロッド本体12は軸線L回りに回転し、掘削ヘッド11が地面7を掘削する。
【0019】
ロッド本体12は、円筒状である。ロッド本体12の内壁面12aには当該ロッド本体12の変形を検出する変形検出器15が取り付けられている。図1で、変形検出器15からみて、掘削ロッド1の下端側(すなわち掘削ヘッド11側)をY1方向、掘削ロッド1の上端側(すなわちオーガー5側)をY2方向とする。
ここで、ロッド本体12は、その中空部分に、掘削した杭穴2にセメントミルクを流し込むための小径円筒状の流通管18を同軸に備える場合がある。この場合には、変形検出器15は、ロッド本体12の内壁面12aと流通管18との間に構成される(図6)。
【0020】
2.変形検出器15の構成
【0021】
図2は変形検出器15の説明図である。図2では、変形検出器15の構成が分かるように、ロッド本体12を、点線で示す。図3(a)は、第1移動量検出器31の構成の説明図であり、図3(b)は第1移動量検出器31から出力される信号の説明図である。図3(a)では、第1移動量検出器31を計測ロッド21の計測ロッド軸線L1と直交する方向から見ている。図4(a)は第1回転量検出器32の構成の説明図であり、図4(b)は第1回転量検出器32から出力される信号の説明図である。図4(a)では、第1回転量検出器32を計測ロッド21の計測ロッド軸線L1方向から見ている。図5は変形検出器15からの信号を地上に送信する伝送機構の説明図である。
【0022】
図2に示すように、変形検出器15は、ロッド本体12の内壁面12aから内周側に離間する位置を軸線L方向に延びる計測ロッド21と、計測ロッド21の軸線L1方向(すなわち、軸線L方向)に離間する位置で計測ロッド21を支持する固定部材22および複数の支持部材23、23を備える。計測ロッド21はロッド本体12よりも十分に細い。また、変形検出器15は軸線L1方向に延びる長尺状のベース部材24を有する。ベース部材24は、ロッド本体12の内壁面12aにおいて、軸線L1方向(=軸線L方向)と直交する径方向で計測ロッド21と重なる位置に固定されている。ベース部材24の外側面24a(軸線L1とは反対側に位置する面)はロッド本体12の内壁面12aの形状に対応する円弧形状を備える曲面である。ベース部材24の外側面24aは、ロッド本体12の内壁面12aに密着する状態で固定されている。ベース部材24の内側面24b(軸線L1の側の面)は径方向と直交する平面である。固定部材22および複数の支持部材23は、ベース部材24を介して、内壁面12aに固定されている。なお、変形検出器15の計測ロッド21は、ロッド本体12の内側面12aの変形を計測するので、できるだけロッド本体12の内側面12aに近い位置に配置することが望ましい。
【0023】
ここで、図1に示すように、掘削ロッド1を掘削姿勢1Aとしたとき(すなわち、略鉛直方向に配置してY1方向、Y2方向が略鉛直方向となったとき)に、固定部材22は、ロッド本体12の下端部分(すなわち、Y2方向の端)に位置する(図2)。すなわち、固定部材22は、掘削ヘッド11に近い位置に配置されている。複数の支持部材23、23は固定部材22から上方に離間する位置にある。複数の支持部材23、23は軸線L1方向で互いに離間している。
【0024】
固定部材22は、ベース部材24に固定された固定部材側固定部25と、固定部材側固定部25よりも内周側(ロッド本体12の軸線L側)で計測ロッド21が固定された計測ロッド固定部26とを備える。固定部材22は、ベース部材24を介して、内壁面12aに固定されている。また、計測ロッド21は、計測ロッド軸線L1方向の先端部(掘削姿勢1Aとしたときの下端部)が、固定部材22およびベース部材24を介して、ロッド本体12の内壁面12aに固定されている。
【0025】
各支持部材23、23は、ベース部材24に固定された支持部材側固定部28と、支持部材側固定部28よりも内周側(ロッド本体12の軸線L側)で計測ロッド21を当該計測ロッド21の計測ロッド軸線L1方向に移動可能、かつ、計測ロッド軸線L1回りに回転可能に支持する計測ロッド支持部29と、を備える。支持部材側固定部28は、ベース部材24を介して、ロッド本体12の内壁面12aに固定されている。計測ロッド支持部29は、軸線L1方向に貫通する貫通穴29aを備える。貫通穴29aの直径は計測ロッド21の直径よりも大きく設定されており、これにより、支持部材23は、計測ロッド支持部29によって計測ロッド21を移動可能かつ回転可能に支持する。
【0026】
固定部材22における固定部材側固定部25から計測ロッド固定部26までの寸法H1と、支持部材23における支持部材側固定部28から計測ロッド支持部29までの寸法H2とは同一である。これにより、計測ロッド21はベース部材22の内側面24bから距離H1(=H2)で略平行に配置されるので(図2)、固定部材22および複数の支持部材23は計測ロッド21を全長に亘り、内壁面12aから一定距離だけ離間する位置に支持する。
【0027】
また、変形検出器15は、計測ロッド固定部26から軸線L1方向に離間する移動検出位置Aで、ロッド本体12の内壁面12aと計測ロッド21とが計測ロッド軸線L1方向で相対移動する移動量を検出する第1移動量検出器31を備える。さらに、変形検出器15は、計測ロッド固定部26から軸線L1方向に離間する第1回転検出位置Bで、ロッド本体12の内壁面12aと計測ロッド21とが計測ロッド軸線L1回りで相対回転する回転量を検出する第1回転量検出器32を備える。また、変形検出器15は、計測ロッド固定部26と移動検出位置Aとの間の第2移動検出位置Cで、ロッド本体12の内壁面12aと計測ロッド21とが計測ロッド軸線L1方向で相対移動する第2移動量を検出する第2移動量検出器33を備える。さらに変形検出器15は、計測ロッド固定部26と回転検出位置Bとの間の第2回転検出位置Dで、ロッド本体12の内壁面12aと計測ロッド21とが計測ロッド軸線L1回りで相対回転する第2回転量を検出する第2回転量検出器34とを備える。
【0028】
ここで、第1移動量検出器31と第2移動量検出器33とは、軸線L1方向における設置位置は相違するが、それらの構成は同一である。また、第1回転量検出器32と第2回転量検出器34とは、軸線L1方向における設置位置は相違するが、それらの構成は同一である。従って、以下では、第1移動量検出器31を説明して、第2移動量検出器33の説明を省略する。また、第1回転量検出器32を説明して、第2回転量検出器34の説明は省略する。
【0029】
図3(a)に示すように、第1移動量検出器31は、計測ロッド21に固定された移動量検出用磁石41と、ベース部材24の内側面24bに固定された移動量検出用磁気センサ42と、を備える。移動量検出用磁石41と移動量検出用磁気センサ42とは計測ロッド軸線L1と直交する計測ロッド21の径方向でギャップ37を開けて対向する。移動量検出用磁石41は環状であり、その中心孔41を計測ロッド21が貫通した状態で計測ロッド21に固定されている。移動量検出用磁石41は計測ロッド軸線L1方向で、着磁分極線41aからS極とN極との2極に分割着磁されている。移動量検出用磁気センサ42は、当該移動量検出用磁気センサ42のセンサ面42aと移動量検出用磁石41の着磁分極線41aとが計測ロッド軸線L1方向で相対移動すると、その移動量に対応する信号S1を出力する。
【0030】
例えば、図3(a)に示すように、移動量検出用磁石41の着磁分極線41aが、移動量検出用磁気センサ42のセンサ面42aと正対する位置では、移動量検出用磁気センサ42からの信号S1はゼロとなる。計測ロッド21が計測ロッド軸線L1方向の一方側Q1に移動して着磁分極線41aが計測ロッド軸線L1の一方側Q1に移動すると(図2)、図3(b)に示すように、その移動量に応じて、移動量検出用磁気センサ42からの信号S1はプラス側に増大する。その後、着磁分極線41aのセンサ面42aからの離間が所定の距離を超えると、移動量検出用磁気センサ42からの信号S1は減少に転じる。
一方、計測ロッド21が計測ロッド軸線L1方向の他方側Q2に移動して着磁分極線41aが計測ロッド軸線L1の他方側Q2に移動すると(図2)、その移動量に応じて、移動量検出用磁気センサ42からの信号S1はマイナス側に増大する。その後、着磁分極線41aのセンサ面42aからの離間が所定の距離を超えると、移動量検出用磁気センサ42からの信号S1は減少に転じる。
ここで、計測ロッド21の移動量を検出する第1移動量検出器31の検出範囲は、移動量検出用磁石41の着磁分極線41aがセンサ面42aと正対する位置にある計測ロッド21が、計測ロッド軸線L1方向の一方側Q1および他方側Q2に所定の距離だけ移動する範囲である。なお、ここでは、Q1方向はY1方向と同じであり、計測ロッド21が相対的に原長さを保った状態(移動量検出磁石41が定位置を保った状態)で、ロッド本体12が移動量磁気センサ42と共に伸びた状態である。また、Q2方向はY2方向と同じであり、同様にロッド本体12が移動量磁気センサ42と共に縮んだ状態である(図2)。
【0031】
図4(a)に示すように、第1回転量検出器32は、ホルダ45を介して計測ロッド21固定された回転量検出用磁石46と、ベース部材24の内側面24bに固定された回転量検出用磁気センサ47と、を備える。回転量検出用磁石46は、計測ロッド軸線L1回りの周方向で、着磁分極線46aからN極とS極との2極に分割着磁されている。回転量検出用磁気センサ47は、当該回転量検出用磁気センサ47のセンサ面47aと回転量検出用磁石46の着磁分極線46aとが周方向で相対回転すると、その回転量に対応する信号S2を出力する。
【0032】
例えば、図4(a)に示すように、回転量検出用磁石46の着磁分極線46aがセンサ面47aと正対する位置では、回転量検出用磁気センサ47からの信号S2はゼロとなる。計測ロッド21が、計測ロッド軸線L1回りの一方側R1に回転して(図2)、着磁分極線46aが計測ロッド軸線L1回りの一方側R1に回転すると、図4(b)に示すように、その回転量に応じて、回転量検出用磁気センサ47からの信号S2はプラス側に増大する。その後、着磁分極線46aのロッド軸線L1回りの角度位置が所定の角度位置を超えると、回転量検出用磁気センサ47からの信号S2は減少に転じる。
一方、計測ロッド21が計測ロッド軸線L1回りの他方側R2に回転して(図2)、着磁分極線46aが計測ロッド軸線L1回りの他方側R2に回転すると、その回転量に応じて、回転量検出用磁気センサ47からの信号S2はマイナス側に増大する。その後、着磁分極線46aのロッド軸線L1回りの角度位置が所定の角度位置を超えると、回転量検出用磁気センサ47からの信号S2は減少に転じる。
ここで、計測ロッド21の回転量を検出する第1回転量検出器32の検出範囲は、回転量検出用磁石46の着磁分極線46aがセンサ面47aと正対する位置にある計測ロッド21が、計測ロッド軸線L1回りの一方側R1および他方側R2で所定の角度位置まで回転する範囲である。
【0033】
次に、変形検出器15は、図2および図5に示すように、第1移動量検出器31からの信号S1、第1回転量検出器32からの信号S2、第2移動量検出器33からの信号S1´、第2回転量検出器34からの信号S2´、を地上の上位機器に送信するための信号伝送機構51を備える。図5に示すように、信号伝送機構51は、デジタル通信線52と、第1移動量検出器31からの信号S1および第1回転量検出器32からの信号S2を、デジタル通信線52を介して送信する第1通信部53と、第2移動量検出器33からの信号S1´および第2回転量検出器34からの信号S2´を、デジタル通信線52を介して送信する第2通信部54とを備える。第1通信部53および第2通信部54のそれぞれは、A/D変換器55とデジタル通信制御部56を備える(図5)。
【0034】
第1移動量検出器31からの信号S1、第1回転量検出器32からの信号S2は、第1通信部53において、A/D変換器55に入力されて、アナログ信号S1からデジタル信号に変換される。A/D変換器55から出力されるデジタル信号はデジタル通信制御部56に入力され、デジタル通信制御部56から、デジタル通信線52を介して地上の上位機器に送信される。第2移動量検出器33からの信号S1´、第2回転量検出器34からの信号S2´は、第2通信部54において、A/D変換器55に入力されて、アナログ信号S1からデジタル信号に変換される。A/D変換器55から出力されるデジタル信号はデジタル通信制御部56に入力され、デジタル通信制御部56から、デジタル通信線52を介して地上の上位機器に送信される(図5)。
【0035】
第1通信部53のデジタル通信制御部56は、第1移動量検出器31(移動量検出用磁気センサ42)からの信号S1に基づくデジタル信号、および、第1回転量検出器32(回転量検出用磁気センサ47からの信号S2)に基づくデジタル信号のそれぞれに識別情報を付与して、上位機器に送信する。同様に、第2通信部54のデジタル通信制御部56は、第2移動量検出器33(移動量検出用磁気センサ42)からの信号S1´に基づくデジタル信号、および、第1回転量検出器34(回転量検出用磁気センサ47からの信号S2´)に基づくデジタル信号のそれぞれに識別情報を付与して、上位機器に送信する。
【0036】
本例では、第1通信部53のデジタル通信制御部56は、第1移動量検出器31からの信号S1に基づくデジタル信号にCH1という識別情報を付加し、第1回転量検出器32からの信号S2に基づくデジタル信号にCH2という識別情報を付加する。また、第2通信部54のデジタル通信制御部56は、第2移動量検出器33からの信号S1´に基づくデジタル信号にCH3という識別情報を付加し、第2回転量検出器34からの信号S2´´に基づくデジタル信号にCH4という識別情報を付加する。従って、デジタル通信線52を介して信号を受信した上位機器では、受信した信号が第1移動量検出器31、第1回転量検出器32、第2移動量検出器33、第2回転量検出器34のいずれから出力された信号に基づくデジタル信号であるかを識別できる。
【0037】
なお、デジタル通信線52はロッド本体11内を配線して、地面7上の上位機器に接続される。一般に、掘削ロッド1は、所定長さのロッド本体12の複数本をつないで、地盤の深い位置まで掘削する。したがって、ロッド本体12を上下に連結する際に、簡易に接続できるジョイント(カプラー)で上下のデジタル通信線52、52をつなぐことが望ましい。
【0038】
3.変形検出器15の動作原理
【0039】
次に、変形検出器15の動作原理を説明する。図2に示すように、変形検出器15は、ロッド本体12の内周壁面12aの内側(軸線L側)を軸線L方向に延びる計測ロッド21を備える。また、計測ロッド21は、計測ロッド軸線L1方向の端部が、固定部材22およびベース部材24を介して、ロッド本体12(内壁面12a)に固定されている。
【0040】
ここで、ロッド本体12は、一般に機械構造用炭素鋼鋼管鋼製(STKM13A)であり、機械的な特性として若干の弾性を備えるものである。従って、掘削ロッド1にトルクが付与されてロッド本体12が撓んだ場合には、計測ロッド21とロッド本体12との接続部となる固定部材22の計測ロッド固定部26から軸線L1方向(=軸線L方向)に離間する移動検出位置Aにおいて、計測ロッド21とロッド本体12(内周面)との軸線L1方向への相対移動が検出される。また、掘削ロッド1に過剰なトルクが付与されてロッド本体12が捩じれた場合には、計測ロッド21とロッド本体12との接続部となる固定部材22の計測ロッド固定部26から軸線L1方向に離間する回転検出位置Bにおいて、計測ロッド21とロッド本体12(内周面)との軸線L1回りの相対回転を検出される。従って、変形検出器15は、移動検出位置Aにおいて計測ロッド21とロッド本体12(内周面12a)とが相対移動した移動量と、回転検出位置Bにおいて計測ロッド21とロッド本体12(内周面12a)とが相対回転した回転量と、を検出できる。また、上位機器では、変形検出器15が検出した移動量と回転量とに基づいて、ロッド本体12が撓んで捩じれる変形量を取得できる。
【0041】
また、変形検出器15は、第1移動検出位置Aで移動量を検出する第1移動量検出器31と、軸線L方向で第1移動検出位置Aと計測ロッド固定部26との間に位置する第2移動検出位置Cで移動量を検出する第2移動量検出器33とを備える。従って、計測ロッド21とロッド本体12と相対的な移動量を異なる2つの感度で検出できる。さらに、変形検出器15は、第1回転検出位置Bで回転量を検出する第1回転量検出器32と、軸線L方向で第1回転検出位置Bと計測ロッド固定部26との間に位置する第2回転検出位置Dで回転量を検出する第2回転量検出器34とを備える。従って、計測ロッド21とロッド本体12と相対的な回転量を異なる2つの感度で検出できる。
【0042】
すなわち、ロッド本体12が撓んだ場合の計測ロッド21とロッド本体12との相対的な移動量は、固定部材22の計測ロッド固定部26から移動検出位置までの軸線L方向の距離の長さに比例して大きくなる。従って、移動検出位置Aよりも計測ロッド固定部26からの距離が短い第2移動検出位置Cに配置した第2移動量検出器33が移動量を検出する感度は、第1移動検出位置Aに配置した第1移動量検出器31が移動量を検出する検出感度よりも低い。これにより、第2移動検出位置Cに配置した第2移動量検出器33では、掘削ロッド1に過大な負荷が加わってロッド本体12が撓んだ場合に発生するロッド本体12と計測ロッド21との大きな相対移動を検出できる。一方、第2移動検出位置Cよりも計測ロッド固定部26からの距離が長い移動検出位置Aに配置した第1移動量検出器31では、掘削ロッド1に加わる負荷が小さくてロッド本体12の撓みが小さい場合(ロッド本体12と計測ロッド21との相対移動が小さい場合)でも、その移動量を検出できる。
【0043】
同様に、ロッド本体12が捩じれた場合の回転量は、固定部材22の計測ロッド固定部26から回転検出位置までの軸線L方向の距離の長さに比例して大きくなる。従って、第1回転検出位置Bよりも計測ロッド固定部26からの距離が短い第2回転検出位置Dに配置した第2回転量検出器34が回転量を検出する感度は、第1回転検出位置Bに配置した第1回転量検出器32が回転量を検出する検出感度よりも低い。これにより、第2回転検出位置Dでは、掘削ロッド1に過大な負荷が加わってロッド本体12が捩じれた場合に発生するロッド本体12と計測ロッド21との大きな相対回転を検出できる。一方、第2回転検出位置Dよりも計測ロッド固定部26からの距離が長い第1回転検出位置Bでは、掘削ロッド1に加わる負荷が小さくてロッド本体12の捩じれが小さい場合(ロッド本体12と計測ロッド21との相対回転が小さい場合)でも、その回転量を検出できる。
【0044】
4.掘削ロッド1の作動と作用効果
【0045】
通常の杭穴掘削と同様に、掘削ロッド1を使用して、地面7から掘削ヘッド11で杭穴2を掘削する(図1)。この際、掘削ロッド1の上端であるオーガー5の回転および下降が、掘削ロッド1の下端で掘削ヘッド11に伝わり、掘削ヘッド11は地盤の抵抗を受ける。したがって、地盤によっては(固い地盤や転石など)、掘削ロッド1は、上端と下端との間で、撓みや捻りや圧縮引張などの変形を受けることになる。
【0046】
本例では、ロッド本体12に第1変形検出器15および第2変形検出器15を備えるので、第1移動検出位置Aおよび第2検出位置のそれぞれにおいて計測ロッド21とロッド本体12(内周面)とが相対移動した移動量と、回転検出位置Bにおいて計測ロッド21とロッド本体12(内周面)とが相対回転した回転量とを検出できる。従って、これらの移動量および回転量に基づいて、ロッド本体12が撓んで捩じれる変形量を取得できる。
【0047】
ここで、掘削ロッド1のロッド本体12の変形量を取得できれば、掘削ロッド1にかかっている負荷(トルク)を取得できる。従って、掘削時に掘削ロッド1にかかる負荷によりロッド本体12が破損することを回避できる。また、掘削ロッド1にかかる負荷を積算しておけば、掘削ロッド1の交換時期などを推定できる。
さらに、掘削時に掘削ロッド1にかかっている負荷(トルク)を取得すれば、掘削ロッド1が掘削している地盤の粘度や比重を取得することも可能となる。
【0048】
また、本例では、変形検出器15は筒状のロッド本体12の内周側に取り付けられている。従って、第1変形検出器15および第2変形検出器15はロッド本体12により外側から保護される。よって、掘削時に、変形検出器15が破損することがない。
【0049】
さらに、本例では、第1移動量検出器31および第2移動量検出器33は、計測ロッド21に固定された移動量検出用磁石41と、ベース部材24に固定された移動量検出用磁気センサ42とを備える。第1回転量検出器32および第2回転量検出器34は、計測ロッド21に固定された回転量検出用磁石46と、ベース部材24に固定された回転量検出用磁気センサ47とを備える。これにより、第1移動量検出器31および第2移動量検出器33は、計測ロッド21とロッド本体12(内周面)とが相対移動する移動量を非接触で検出できる。また、第1回転量検出器32および第2回転量検出器34は、計測ロッド21とロッド本体12(内周面)とが相対回転する回転量を非接触で検出できる。従って、ロッド本体12に過大な撓みや捩じれが発生した場合でも第1移動量検出器31、第2移動量検出器33、第1回転量検出器32および第2回転量検出器34が破損することがない。
【0050】
また、本例では、第1移動検出位置Aで移動量を検出する第1移動量検出器31と、第2移動検出位置Cで移動量を検出する第2移動量検出器33とを備え、これら2つの移動量検出器31、33が検出する計測ロッド21とロッド本体12と相対的な移動量の感度が異なる。従って、一つの移動量検出器を設置して、移動量検出器から出力される信号S1のゲインを変化させて感度調整を行う場合と比較して、SN比を大きくすることが容易であり、移動量を精度よく検出できる。
【0051】
同様に、本例では、第1回転検出位置Bで回転量を検出する第1回転量検出器32と、第2回転検出位置Dで回転量を検出する第2回転量検出器34とを備え、これら2つの回転量検出器32、34が検出する計測ロッド21とロッド本体12と相対的な回転量の感度が異なる。従って、一つの回転量検出器を設置して、回転量検出器から出力される信号S2のゲインを変化させて感度調整を行う場合と比較して、SN比を大きくすることが容易であり、回転量を精度よく検出できる。
【0052】
また、既製杭を施工する場合、杭先端を設置する支持地盤の出現深度を確認する必要がある。現状は、地上に配置したオーガー5(駆動装置)によって、掘削ロッド1を当該ロッド本体12の軸線L回りに回転させて掘削ヘッド11により地面7から地盤を掘削するときのオーガー5にかかる掘削抵抗の電流値の変化(地盤が硬くなると電流値は大きくなる)や区間毎の電流値の積算値の変化(地盤が硬くなると積算電流値は大きくなる)により、支持層の到達を判断している。この場合、掘削深度が深くなると、掘削ロッド1の重量が増えたり、掘削ロッド1の全長にかかる摩擦抵抗が大きくなってしまい、これらにより地上7に配置したオーガー5によってロッド本体12を当該ロッド本体12の軸線L回りに回転させるための電流値が大きくなり、先端地盤の掘削に要する電流値等が微妙に変化する場合もあった。このような場合に、ロッド12の変形データ(、第1第2移動量検出器31、33、第1第2回転量検出器32、34からのデータ)を、上記の電流値などと比較検討して、総合的に判断して、より正確に支持地盤を特定できる。
【0053】
5.他の実施形態
【0054】
前記実施形態において、第1移動量検出器31および第2移動量検出器33は、ベース部材24に固定された移動量検出用磁石41と、計測ロッド21に固定された移動量検出用磁気センサ42とを備えてもよい。また、第1回転量検出器32および第1回転量検出器34は、ベース部材24に固定された回転量検出用磁石46と、計測ロッド21に固定された回転量検出用磁気センサ47とを備えてもよい。このようにしても、計測ロッド21とロッド本体12(内周面)とが相対移動する移動量を非接触で検出できる。また、計測ロッド21とロッド本体12(内周面)とが相対回転する回転量を非接触で検出できる。従って、ロッド本体12に過大な撓みや捩じれが発生した場合でも第1移動量検出器31、第1回転量検出器32、第2移動量検出器33、第2回転量検出器34が破損することがない。
【0055】
また、前記実施形態において、ベース部材24を省略して、固定部材22および複数の支持部材23を直接ロータ本体の内壁面12aに固定してもよい。但し、上記の例のように、固定部材22および複数の支持部材23をベース部材24に固定して、ベース部材24を介して内壁面12aに固定すれば、変形検出器15をロッド本体12の内周側に設置することが容易となる。
【0056】
ここで、上記の例では、変形検出器15は、軸線L方向で離間する第1移動量検出器31および第2移動量検出器33を備えるが、いずれか一方の移動量検出器を省略して、移動量検出器を一つにしてもよい。また、移動量検出器の数を増やして、3以上としてもよい。この場合には、例えば、軸線L方向で第1移動検出位置Aと第2移動検出位置Cとの間に第3移動検出位置を設定して第3第動量検出器を配置する。同様に、変形検出器15は、軸線L方向で離間する第1回転量検出器32および第2回転量検出器34を備えるが、いずれか一方の回転量検出器を省略して、回転量検出器を一つにしてもよい。また、回転量検出器の数を増やして、3以上としてもよい。この場合には、例えば、軸線L方向で第1回転検出位置Bと第2回転検出位置Dとの間に第3回転検出位置を設定して、第3移動量検出器を配置する。ここで、移動量検出器および移動量検出器の組を増加させた場合には、信号伝送機構51は、移動量検出器および移動量検出器の組の数に対応する数の通信部を備えるものとする。
【0057】
また、前記実施形態において、変形検出器15として、内壁面12aにおいて軸線Lを間に挟んだ一方側および他方側にそれぞれ配置された2つの変形検出器15を備えるものとすることができる。例えば、軸線L回りで180°離間する位置に2つの変形検出器15を配置することができる。このようにすれば、2つの変形検出器15のそれぞれによって検出される移動量の差分に基づいて、ロッド本体12がいずれの方向に撓んでいるかを取得できる。また、2つの変形検出器15のそれぞれによって検出される移動量の差分に基づいて、ロッド本体12の曲りの程度を把握できる。
【0058】
また、前記実施形態において、変形検出器15として、内壁面12aにおいて軸線L回りの等角度間隔に配置された4つの変形検出器15を備えるものとすることができる。図7は4つの変形検出器15を備える変形例の掘削ロッド60の説明図である。図7では、ロッド本体12を軸線L方向から見ている。また、ロッド本体12を掘削ヘッド11が取り付けられる端部の側から見ている。変形例の掘削ロッド60によれば、4つの変形検出器15のそれぞれによって検出される移動量に基づいて、ロッド本体12の軸線L方向の伸縮を検出できる。また、4つの変形検出器15のそれぞれによって検出される回転量に基づいて、ロッド本体12の捩じれを精度よく検出できる。例えば、4つの変形検出器15のそれぞれによって検出される回転量の平均を取得することにより、ロッド本体12の捩じれを精度よく検出できる。
【0059】
また、前記実施形態において、第1第2移動検出器31、33、第1第2回転量検出器32、34、固定部材22、支持部材23の構成は他の構成とすることもできる(図示していない)。
【符号の説明】
【0060】
1、60 掘削ロッド
1A 掘削ロッドの掘削姿勢
2 杭穴
3 杭打ち機
4 マスト
5 オーガー
7 地面
11 掘削ヘッド
12 ロッド本体
12a ロッド本体の内壁面
15 変形検出器
18 流通管
21 計測ロッド
21、22 固定部材
23 支持部材
24 ベース部材
24a ベース部材の外側面
24b ベース部材の内側面
25 固定部材側固定部
26 計測ロッド固定部
28 支持部材側固定部
29 計測ロッド支持部
29a 貫通穴
31 第1移動量検出器
32 第1回転量検出器
33 第2移動量検出器
34 第2回転量検出器
37 ギャップ
41 移動量検出用磁石
41a 着磁分極線
42 移動量検出用磁気センサ
42a センサ面
43 中心孔(移動量検出用磁石)
45 ホルダ
46 回転量検出用磁石
46a 着磁分極線
47 回転量検出用磁気センサ
47a センサ面
51 信号伝送機構
52 デジタル通信線
53 第1通信部
54 第2通信部
55 A/D変換器
56 デジタル通信制御部
A 第1移動検出位置
B 第1回転検出位置
C 第2移動検出位置
D 第2回転検出位置
L 軸線(ロッド本体軸線)
L1 軸線(計測ロッド軸線)
S1 移動量検出器からの信号
S2 回転量検出器からの信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7