(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】ごみ焼却設備及びごみ焼却設備の制御方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20220126BHJP
F23G 5/00 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
F23G5/50 G ZAB
F23G5/50 C
F23G5/50 H
F23G5/50 N
F23G5/50 Q
F23G5/50 R
F23G5/00 109
(21)【出願番号】P 2016128052
(22)【出願日】2016-06-28
【審査請求日】2019-05-21
【審判番号】
【審判請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 博史
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 陽介
(72)【発明者】
【氏名】向井 健
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏史
(72)【発明者】
【氏名】三島 惇
【合議体】
【審判長】松下 聡
【審判官】山崎 勝司
【審判官】槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-254523(JP,A)
【文献】特開2002-106821(JP,A)
【文献】特開平11-37436(JP,A)
【文献】特開2005-195225(JP,A)
【文献】特開平10-68514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G5/00
F23G5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥部で乾燥させたごみを燃焼部で燃焼させる焼却炉と、
ごみの燃焼によって発生した熱を利用して蒸気を生成するボイラと、
前記焼却炉の前記乾燥部にごみを供給する給じん装置と、
前記乾燥部
に堆積する燃焼前のごみから発生したガスを含む炉内ガスの性状を
前記乾燥部で検出するガス検出装置と、
前記ガス検出装置から取得した炉内ガスの性状に基づいて、前記乾燥部における単位重量あたりの燃焼前のごみが完全燃焼したときに発生する熱量である発熱量を当該ごみの燃焼前に算出し、算出した発熱量に基づいて前記乾燥部におけるごみが燃焼したときに所望の熱量が発生する最適堆積量を算出し、前記乾燥部におけるごみの堆積量が前記最適堆積量となるように前記給じん装置を制御する制御装置と、を備え
、
前記炉内ガスの性状には、前記炉内ガス中におけるH
2
O、CO
2
、及び、COのうち少なくとも2種類の濃度が含まれる、ごみ焼却設備。
【請求項2】
前記焼却炉に空気を供給する空気供給装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記ガス検出装置から取得した炉内ガスの性状に基づいて、前記乾燥部におけるごみが燃焼したときに所望の熱量が発生する最適空気供給量を算出し、前記焼却炉への空気供給量が前記最適空気供給量となるように前記空気供給装置を制御する、請求項1に記載のごみ焼却設備。
【請求項3】
前記制御装置は前記給じん装置の駆動に同期して前記最適堆積量を算出する、請求項1又は2に記載のごみ焼却設備。
【請求項4】
前記乾燥部におけるごみの堆積高さを検出するレベル計をさらに備え、
前記制御装置は、前記レベル計から取得したごみの堆積高さに基づいて、前記乾燥部におけるごみの堆積量が前記最適堆積量となるように前記給じん装置を制御する、請求項1乃至3のうちいずれか一の項に記載のごみ焼却設備。
【請求項5】
前記焼却炉は、少なくとも乾燥部を含む領域において下流部分に
他の部分よりも流路面積の小さい絞り部を有する空気ガス保有空間が形成されており、前記燃焼部で発生した燃焼ガスは前記絞り部を通過して前記ボイラに向かって流れるよう構成されている、請求項1乃至4のうちいずれか一の項に記載のごみ焼却設備。
【請求項6】
乾燥部で乾燥させたごみを燃焼部で燃焼させる焼却炉と、
ごみの燃焼によって発生した熱を利用して蒸気を生成するボイラと、
前記乾燥部
に堆積する燃焼前のごみから発生したガスを含む炉内ガスの性状を
前記乾燥部で検出するガス検出装置と、
前記焼却炉の前記乾燥部にごみを供給する給じん装置と、
前記焼却炉内のごみを搬送するストーカと、
前記ガス検出装置から取得した炉内ガスの性状に基づいて、前記乾燥部における単位重量あたりの燃焼前のごみが完全燃焼したときに発生する熱量である発熱量を当該ごみの燃焼前に算出
し、算出した前記乾燥部におけるごみの発熱量に基づいて、前記給じん装置及び前記ストーカの少なくとも一方を制御する制御装置と、を備え
、
前記炉内ガスの性状には、前記炉内ガス中におけるH
2
O、CO
2
、及び、COのうち少なくとも2種類の濃度が含まれる、ごみ焼却設備。
【請求項7】
乾燥部で乾燥させたごみを燃焼部で燃焼させる焼却炉と、ごみの燃焼によって発生した熱を利用して蒸気を生成するボイラと、前記焼却炉の前記乾燥部にごみを供給する給じん装置と、前記乾燥部
に堆積する燃焼前のごみから発生したガスを含む炉内ガスの性状を
前記乾燥部で検出するガス検出装置と、を備えた、ごみ焼却設備の制御方法であって、
前記ガス検出装置から取得した炉内ガスの性状に基づいて、前記乾燥部における単位重量あたりの燃焼前のごみが完全燃焼したときに発生する熱量である発熱量を当該ごみの燃焼前に算出し、算出した発熱量に基づいて前記乾燥部におけるごみが燃焼したときに所望の熱量が発生する最適堆積量を算出し、前記乾燥部におけるごみの堆積量が前記最適堆積量となるように前記給じん装置を制御
し、
前記炉内ガスの性状には、前記炉内ガス中におけるH
2
O、CO
2
、及び、COのうち少なくとも2種類の濃度が含まれる、制御方法。
【請求項8】
乾燥部で乾燥させたごみを燃焼部で燃焼させる焼却炉と、ごみの燃焼によって発生した熱を利用して蒸気を生成するボイラと、前記乾燥部
に堆積する燃焼前のごみから発生したガスを含む炉内ガスの性状を
前記乾燥部で検出するガス検出装置と、
前記焼却炉の前記乾燥部にごみを供給する給じん装置と、前記焼却炉内のごみを搬送するストーカと、を備えた、ごみ焼却設備の制御方法であって、
前記ガス検出装置から取得した炉内ガスの性状に基づいて、前記乾燥部における単位重量あたりの燃焼前のごみが完全燃焼したときに発生する熱量である発熱量を当該ごみの燃焼前に算出
し、算出した前記乾燥部におけるごみの発熱量に基づいて、前記給じん装置及び前記ストーカの少なくとも一方を制御することを含
み、
前記炉内ガスの性状には、前記炉内ガス中におけるH
2
O、CO
2
、及び、COのうち少なくとも2種類の濃度が含まれる、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はごみ焼却設備及びごみ焼却設備の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラを備えたごみ焼却設備では、ごみの燃焼で発生した熱を用いて蒸気が生成される。ただし、ごみはその内容によって発熱量(単位重量あたりのごみが完全燃焼したときに発生する熱量)が異なることから、同じ重量のごみを燃焼させてもボイラへの入熱量は必ずしも同じにはならない。そこで、特許文献1及び2では、ごみの燃焼によって発生した排ガスの成分や炉内温度を測定し、その測定結果に基づいてボイラの入熱量が一定になるように空気の供給量等を制御する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭55-56514号公報
【文献】特開平9-273732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法は、先に燃焼したごみの燃焼時における測定結果に基づいて、後に燃焼するごみの燃焼を制御するもの(つまり、フィードバック制御)であるため、ごみの内容が刻々と変化する状況下では、ボイラへの安定した入熱は困難である。
【0005】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、ボイラへの安定した入熱が可能なごみ焼却設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るごみ焼却設備は、乾燥部で乾燥させたごみを燃焼部で燃焼させる焼却炉と、ごみの燃焼によって発生した熱を利用して蒸気を生成するボイラと、前記焼却炉の前記乾燥部にごみを供給する給じん装置と、前記乾燥部で発生したガスを含む炉内ガスの性状を検出するガス検出装置と、前記ガス検出装置から取得した炉内ガスの性状に基づいて、前記乾燥部におけるごみが燃焼したときに所望の熱量が発生する最適堆積量を算出し、前記乾燥部におけるごみの堆積量が前記最適堆積量となるように前記給じん装置を制御する制御装置と、を備えている。
【0007】
この構成では、燃焼前のごみから発生するガスの性状に基づいて堆積量を調整し、そのごみが燃焼したときに所望の熱量が発生するよう制御を行っている(つまり、フィードフォワード制御を行っている)。そのため、焼却炉に供給されるごみの内容が刻々と変化しても、ボイラへの安定した入熱が可能となる。
【0008】
上記のごみ焼却設備において、前記焼却炉に空気を供給する空気供給装置をさらに備え、前記制御装置は、前記ガス検出装置から取得した炉内ガスの性状に基づいて、前記乾燥部におけるごみが燃焼したときに所望の熱量が発生する最適空気供給量を算出し、前記焼却炉への空気供給量が前記最適空気供給量となるように前記空気供給装置を制御するようにしてもよい。
【0009】
この構成によれば、乾燥部におけるごみの堆積量のみならず、焼却炉への空気供給量も調整されるため、ボイラへの入熱をより一層安定させることができる。
【0010】
上記のごみ焼却設備において、前記制御装置は前記給じん装置の駆動に同期して前記最適堆積量を算出するようにしてもよい。
【0011】
この構成によれば、ごみが乾燥部に供給されるたびに最適堆積量が算出される。そのため、ごみが乾燥部に供給されることにより状況が変化したとしても、その変化に応じて最適堆積量が算出されるため、最適堆積量の算出を精度よく行うことができる。
【0012】
上記のごみ焼却設備において、前記乾燥部におけるごみの堆積高さを検出するレベル計をさらに備え、前記制御装置は、前記レベル計から取得したごみの堆積高さに基づいて、前記乾燥部におけるごみの堆積量が前記最適堆積量となるように前記給じん装置を制御するようにしてもよい。
【0013】
この構成によれば、ごみの堆積高さから乾燥部におけるごみの堆積量が推定できるため、乾燥部に適切な量のごみを供給することができる。
【0014】
上記のごみ焼却設備において、前記焼却炉は、少なくとも乾燥部を含む領域において下流部分に絞り部を有する空気ガス保有空間が形成されており、前記燃焼部で発生した燃焼ガスは前記絞り部を通過して前記ボイラに向かって流れるよう構成されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、空気ガス保有空間は火炎がほとんど存在しない空間となる。そのため、空気ガス保有空間が炉内ガスを保有することができる結果、炉内ガスの性状の検出が容易となる。
【0016】
また、本発明の他の態様に係るごみ焼却設備は、乾燥部で乾燥させたごみを燃焼部で燃焼させる焼却炉と、ごみの燃焼によって発生した熱を利用して蒸気を生成するボイラと、前記乾燥部で発生したガスを含む炉内ガスの性状を検出するガス検出装置と、前記ガス検出装置から取得した炉内ガスの性状に基づいて、前記乾燥部におけるごみの発熱量を算出する制御装置と、を備える。
【0017】
この構成によれば、乾燥部におけるこみの発熱量を算出することができる。そのため、この発熱量に基づいて、ボイラへ適切な入熱を行えるよう焼却炉に適切な量のごみを供給することができ又は適切な量の空気を供給することができる。
【0018】
上記のごみ焼却設備において、前記焼却炉の前記乾燥部にごみを供給する給じん装置と、前記焼却炉内のごみを搬送するストーカと、をさらに備え、前記制御装置は、算出した前記乾燥部におけるごみの発熱量に基づいて、前記給じん装置及び前記ストーカの少なくとも一方を制御するようにしてもよい。
【0019】
本発明の一態様に係る制御方法は、乾燥部で乾燥させたごみを燃焼部で燃焼させる焼却炉と、ごみの燃焼によって発生した熱を利用して蒸気を生成するボイラと、前記焼却炉の前記乾燥部にごみを供給する給じん装置と、前記乾燥部で発生したガスを含む炉内ガスの性状を検出するガス検出装置と、を備えた、ごみ焼却設備の制御方法であって、前記ガス検出装置から取得した炉内ガスの性状に基づいて、前記乾燥部におけるごみが燃焼したときに所望の熱量が発生する最適堆積量を算出し、前記乾燥部におけるごみの堆積量が前記最適堆積量となるように前記給じん装置を制御する。
【0020】
また、本発明の他の形態に係る制御方法は、乾燥部で乾燥させたごみを燃焼部で燃焼させる焼却炉と、ごみの燃焼によって発生した熱を利用して蒸気を生成するボイラと、前記乾燥部で発生したガスを含む炉内ガスの性状を検出するガス検出装置と、を備えた、ごみ焼却設備の制御方法であって、前記ガス検出装置から取得した炉内ガスの性状に基づいて、前記乾燥部におけるごみの発熱量を算出することを含む。
【0021】
上記の制御方法において、前記ごみ焼却設備は、前記焼却炉の前記乾燥部にごみを供給する給じん装置と、前記焼却炉内のごみを搬送するストーカと、をさらに備えており、算出した前記乾燥部におけるごみの発熱量に基づいて、前記給じん装置及び前記ストーカの少なくとも一方を制御するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
前述のとおり、上記のごみ焼却設備によれば、ボイラへ安定した入熱が可能である。つまり、発電量を一定に保つ際には入熱量を一定に保つことができ、発電量を変化させる際には入熱量を滑らかに変化させてハンチングの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】
図2は、ごみ焼却設備の制御系のブロック図である。
【
図3】
図3は、制御装置による制御のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<ごみ焼却装置の全体構造>
はじめに、実施形態に係るごみ焼却設備100の全体構造について説明する。
図1は、ごみ焼却設備100の概略構成図である。
図1に示すように、ごみ焼却設備100は、焼却炉10と、ボイラ30と、給じん装置40と、空気供給装置50と、制御装置60と、を備えている。
【0025】
焼却炉10では、ごみを搬送しながら焼却を行う。焼却炉10は、上流側から順に、乾燥部11と、燃焼部12と、後燃焼部13と、再燃焼部14と、を有している。本実施形態の焼却炉10は、ごみの燃焼によって発生した燃焼ガスとごみが並行して流れる並行流焼却炉である。ただし、焼却炉10は、燃焼ガスとごみが異なる方向に流れる方式の焼却炉(例えば、中間流焼却炉)であってもよい。
【0026】
乾燥部11は、焼却炉10に供給されたごみを乾燥させる部分である。乾燥部11のごみは、乾燥部11の底面に設けられた乾燥ストーカ15の下から供給される一次空気及び隣接する燃焼部12における燃焼の輻射熱によって乾燥する。その際、熱分解によって乾燥部11のごみからガスが発生する。また、乾燥部11のごみは、乾燥部11の底面に設けられた乾燥ストーカ15によって燃焼部12に向かって搬送される。
【0027】
乾燥部11から燃焼部12にかけての領域には、それらの領域の上部に空気ガス保有空間16が形成されている。空気ガス保有空間16は、その下流部分に他の部分よりも流路面積の小さい絞り部17を有している。この空気ガス保有空間16では、焼却炉10に供給された空気、乾燥部11のごみから発生したガス、及び燃焼部12の上流側部分のごみから発生したガスを含む炉内ガスを保有する。
【0028】
また、乾燥部11には、空気ガス保有空間16が保有する炉内ガスの性状を検出するガス検出装置18が設けられている。本実施形態では、ガス検出装置18を用いて炉内ガス中におけるH2O、CO2、COの濃度を検出する。ガス検出装置18の位置及び数は特に限定されない。例えば、ガス検出装置18は、焼却炉10の両側面(紙面手前側及び紙面奥側の面)に設けられていてもよい。その場合、両ガス検出装置18は互いに異なる高さ位置に設けられていてもよい。さらに、乾燥部11には、乾燥部11におけるごみの堆積高さを検出する超音波式のレベル計19が設けられている。
【0029】
燃焼部12は、乾燥部11で乾燥したごみを燃焼させる部分である。燃焼部12では、ごみが燃焼し火炎が発生する。燃焼部12におけるごみ及び燃焼により発生した灰は、燃焼部12の底面に設けられた燃焼ストーカ20によって後燃焼部13に向かって搬送される。また、燃焼部12で発生した燃焼ガス及び火炎は、絞り部17を通過して後燃焼部13に向かって流れる。なお、燃焼ストーカ20は、乾燥ストーカ15と同じ高さ位置に設けられているが、乾燥ストーカ15よりも低い位置に設けられていてもよい。
【0030】
後燃焼部13は、燃焼部12で燃焼しきれなかったごみ(未燃物)を燃焼させる部分である。前述のとおり、本実施形態では燃焼部12で発生した燃焼ガスが後燃焼部13に向かって流れる。後燃焼部13では、燃焼ガスの輻射熱と一次空気によって、燃焼部12で燃焼しきれなかった未燃物の燃焼が促進される。その結果、未燃物のほとんどが灰となって、未燃物は減少する。なお、後燃焼部13で発生した灰は、後燃焼部13の底面に設けられた後燃焼ストーカ21によってシュート22に向かって搬送される。シュート22に搬送された灰は、ごみ焼却設備100の外部に排出される。なお、本実施形態の後燃焼ストーカ21は、燃焼ストーカ20よりも低い位置に設けられているが、燃焼ストーカ20と同じ高さ位置に設けられていてもよい。
【0031】
再燃焼部14は、未燃ガスを燃焼させる部分である。再燃焼部14は、後燃焼部13から上方に向かって延び、上方に進むにつれて水平方向位置が乾燥部11に近づくように傾斜している。乾燥部11、燃焼部12、及び後燃焼部13で発生した燃焼ガス及び未燃ガス(以下、これらを合わせて「主流ガス」と称する)は、乾燥部11、燃焼部12、及び後燃焼部13に沿って斜め下に向かって流れ、絞り部17を通過した後、V字状に方向転換して再燃焼部14に流入する。絞り部17付近では、主流ガスに二次空気が供給される。これにより、主流ガスは空気と混合及び攪拌され、主流ガスに含まれる未燃ガスが再燃焼部14で燃焼する。
【0032】
ボイラ30は、ごみの燃焼によって発生した熱を利用して蒸気を生成する部分である。ボイラ30は、流路壁に設けられた多数の水管31及び過熱器管32で熱交換を行うことにより蒸気(過熱蒸気)を生成し、生成した蒸気は図外の蒸気タービン発電機に供給されて発電が行われる。安定した発電を行うには、ボイラ30への入熱を安定させる必要がある。つまり、発電量を一定に保つには入熱量を一定に保つ必要があり、発電量を速やかに変化させるにはハンチングが生じないように入熱量を滑らかに変化させる必要がある。
【0033】
給じん装置40は、ごみ投入ホッパ41に投入されたごみを焼却炉10の乾燥部11に供給する装置である。給じん装置40は、ごみ投入ホッパ41の底部分に位置し、水平方向に移動する給じん装置本体42を有している。この給じん装置本体42の移動速度、単位時間あたりの移動回数、移動量(ストローク)、及びストローク端の位置(移動範囲)を制御することにより、乾燥部11に供給するごみの供給量を調整することができる。
【0034】
空気供給装置50は、焼却炉10に空気を供給する装置である。本実施形態の空気供給装置50は、一次空気供給部51と、二次空気供給部52と、排ガス供給部53と、を有している。
【0035】
一次空気供給部51は、乾燥ストーカ15に形成された隙間を介して乾燥部11に一次空気を供給し、燃焼ストーカ20に形成された隙間を介して燃焼部12の上流側部分及び下流側部分のそれぞれに一次空気を供給し、後燃焼ストーカ21に形成された隙間を介して後燃焼部13に一次空気を供給する。また、一次空気供給部51は、各部への一次空気の供給量を調整することができる。なお、一次空気供給部51にヒータ及び空冷壁を設け、各部に供給する一次空気の温度を調整できるようにしてもよい。
【0036】
二次空気供給部52は、焼却炉10の空気ガス保有空間16にその上部(天井部)から二次空気を供給するとともに、絞り部17から主流ガスが方向転換する部分に二次空気を供給する。また、二次空気供給部52は、各部への二次空気の供給量を調整することができる。
【0037】
排ガス供給部53は、ごみ焼却設備100から排出された排ガスを焼却炉10に供給する(再循環させる)。ごみ焼却設備100から排出された排ガスはろ過式集じん器で浄化され、その一部が排ガス供給部53によって燃焼部12の両側面(紙面手前側及び紙面奥側の面)から焼却炉10へ供給される。なお、排ガスが供給される位置は、特に限定されない。例えば、排ガスは焼却炉10の上方(天井部)から供給されてもよく、一方の側面のみから供給されてもよい。排ガスを焼却炉10に供給することで、焼却炉10内の酸素濃度が低下し、燃焼温度の局所的な過上昇を抑えることができる。その結果、NOxの発生を抑えることができる。
【0038】
制御装置60は、CPU、RAM、ROM等によって構成されており、種々の演算を行うとともに、ごみ焼却設備100全体を制御する。
図2は、ごみ焼却設備100の制御系のブロック図である。制御装置60は、ガス検出装置18及びレベル計19と電気的に接続されている。制御装置60は、これらの機器から送信される測定信号に基づいて、炉内ガスの性状及び乾燥部11におけるごみの堆積高さを取得する。また、制御装置60は、給じん装置40及び空気供給装置50と電気的に接続されている。制御装置60は、給じん装置40及び空気供給装置50に制御信号を送信し、各装置を制御する。
【0039】
<制御内容>
次に、制御装置60による制御内容について説明する。
図3は、制御装置60による制御のフロー図である。
【0040】
図3に示すように、制御が開始されると、制御装置60は、ガス検出装置18から乾燥部11で発生したガスを含む炉内ガス(空気ガス保有空間16が保有するガス)の性状(H
2O、CO
2、COの濃度)を取得する(ステップS1)。
【0041】
続いて、制御装置60は、取得した炉内ガスの性状に基づいて、乾燥部11におけるごみの発熱量を算出する(ステップS2)。ここで、ガスの性状とごみの発熱量の関係について説明する。ごみの発熱量は、そのごみに含まれるC(炭素)、H(水素)、及びO(酸素)の量によってほぼ決まる。また、ごみが燃焼すると、ごみに含まれるC、H、Oは互いに結合して、CO、CO2、H2Oになる。そして、焼却炉10の乾燥部11において、ごみが乾燥することによっても熱分解によってCO、CO2、H2Oが発生する。そのため、炉内ガスに含まれるCO、CO2、H2Oのうち少なくとも2種類の成分を測定し、これを蓄積したデータを用いれば、ごみの発熱量を算出することができる。
【0042】
また、CO/CO2を指標として、ごみの発熱量を算出してもよい。ごみに含まれるCの量が多いと、乾燥部11ではCO2に対するCOの割合が大きくなる傾向にある。これは、乾燥部11においてはCがOと十分に結合する段階ではないからである。また、ごみに含まれるCの量が多いと発熱量は大きくなる。そのため、CO/CO2を指標として、ごみの発熱量を算出することができる。
【0043】
本実施形態では、制御装置60には、炉内ガスにおけるH2O、CO2、COの濃度と乾燥部11におけるごみの発熱量との関係を示したマップデータが保存されている。そのため、制御装置60は、ステップS1で取得した炉内ガスの性状及び上記のマップデータに基づいて、乾燥部11におけるごみの発熱量を算出することができる。
【0044】
なお、炉内ガスには、空気供給装置50から供給された空気も含まれる。制御装置60は、空気供給装置50から供給された空気中のH2O、CO2、COの量は把握できるため、これを考慮して乾燥部11におけるごみの発熱量を算出すれば、より正確な値を得ることができる。
【0045】
続いて、制御装置60は、目標入熱量を設定する(ステップS3)。制御装置60は入力された値(焼却炉10へのごみ投入量もしくは発生させたいボイラ発熱量目標値)から目標入熱量を設定してもよく、所定の演算によって算出した値を目標入熱量に設定してもよい。例えば、ボイラ30への入熱量を一定に保つ場合には目標入熱量は一定のままとし、ボイラ30への入熱量を変更する場合には順次目標入熱量を変化させてゆく。
【0046】
続いて、制御装置60は、乾燥部11におけるごみが燃焼したときに発生する熱量が目標入熱量となる最適堆積量及び最適空気供給量を算出する(ステップS4)。ごみが完全燃焼したときに発生する熱量は、そのごみの発熱量と重量の積で表すことができる。そのため、乾燥部11におけるごみが燃焼したときに発生する熱量が目標入熱量となる最適堆積量は、ステップS2で算出したごみの発熱量とステップS3で設定した目標入熱量に基づいて算出することができる。
【0047】
ただし、ごみの燃焼状態は、焼却炉10への空気供給量によって左右されるため、最適空気供給量も算出する。なお、最適空気供給量は、一次空気、二次空気、排ガスのそれぞれについて算出してもよく、空気の供給位置ごとに算出してもよい。例えば、炉内ガスにおけるH2Oの濃度が高い場合には、湿ったごみを速やかに乾燥させるために一次空気の最適空気量が多くなるよう算出されるようにしてもよい。
【0048】
続いて、制御装置60は、レベル計19から乾燥部11におけるごみの堆積高さを取得する(ステップS5)。
【0049】
続いて、制御装置60は、ステップS5で取得したごみの堆積高さに基づいて、乾燥部11におけるごみの堆積量を算出する(ステップS6)。ごみの比重は一定ではないが、ごみの発熱量とごみの比重に相関があるため、ステップS2で算出したごみの発熱量に基づいてごみの比重は算出することができる。このごみの比重に基づけば、乾燥部11におけるごみの堆積量(重量)を算出することができる。
【0050】
続いて、制御装置60は、給じん装置40及び空気供給装置50を制御する(ステップS7)。具体的には、制御装置60は、ステップS4で算出した最適堆積量とステップS6で算出した乾燥部11におけるごみの堆積重量との差を算出し、その差がゼロとなるように又は少なくなるように、給じん装置40を制御して乾燥部11にごみを追加供給する。また、制御装置60は、焼却炉10への空気の供給量がステップS4で算出した最適空気供給量となるように空気供給装置50を制御する。
【0051】
以上のとおり、本実施形態では、燃焼前のごみである乾燥部11におけるごみから発生するガスの性状に基づいて、そのごみが燃焼したときの入熱量が適切な値となるように、乾燥部11におけるごみの堆積量及び焼却炉10への空気供給量を調整している。つまり、本実施形態では、フィードフォワード制御を行っている。そのため、焼却炉10に供給されるごみの内容が刻々と変化しても、ボイラ30への安定した入熱が可能である。
【0052】
なお、上記のステップS7を経た後はステップS1に戻って、ステップS1からS7を繰り返す。つまり、本実施形態では給じん装置40の駆動と最適堆積量の算出が同期して行われる。これにより、ごみが乾燥部11に供給されるたびに最適堆積量が算出されるため、ごみが乾燥部11に供給されることにより状況が変化しても、その変化に応じて最適堆積量が再度算出され、最適堆積量の算出を精度よく行うことができる。
【0053】
なお、上記の実施形態では、炉内ガスの性状及びマップデータに基づいて乾燥部11におけるごみの発熱量を算出している。この発熱量は決まった単位を用いて表すことができる絶対値である。ただし、発熱量の相対的な増減を用いて最適堆積量及び最適空気供給量を算出してもよい。例えば、燃焼によって目標入熱量が得られたごみ(以下、「目標ごみ」と称する)の発熱量及び乾燥部11に位置していたときの堆積量(それぞれ、「目標発熱量」及び「目標堆積量」と称する)を記憶しておき、炉内ガスの性状に基づいて目標発熱量に対する相対的な発熱量を算出し、算出した相対的な発熱量と目標堆積量とに基づいて最適堆積量及び最適空気供給量を算出するようにしてもよい。
【0054】
また、発熱量を求めることなく、最適堆積量及び最適空気供給量を算出してもよい。例えば、基準ごみが乾燥部11に位置していたときの炉内ガスの性状(以下、「基準性状」と称する)及び前述の目標堆積量を記憶しておき、取得した炉内ガスの性状と記憶した基準性状を対比し、対比した結果と目標堆積量に基づいて最適堆積量及び最適空気供給量を算出してもよい。
【0055】
さらに、ステップS2において算出した発熱量を一定時間間隔もしくは給じん装置40が作動するタイミングで記憶し、1つ前のタイミングで算出した発熱量に対する新たにステップS2で算出した発熱量の相対値を用いて最適堆積量及び最適空気供給量を算出してもよい。
【0056】
また、本実施形態の焼却炉10は前述のとおり並行流焼却炉であって、乾燥部11を含む領域において絞り部17を有する空気ガス保有空間16が形成されており、燃焼部12で発生した燃焼ガスは絞り部17を通過してボイラ30に向かって流れるよう構成されている。そのため、空気ガス保有空間16は火炎がほとんど存在しない空間となり、その空間に炉内ガスを保有することができる。その結果、炉内ガスの性状の検出を容易に行うことができる。
【0057】
なお、以上では、焼却炉10が並行流焼却炉である場合について説明したが、焼却炉10が中間流焼却炉であってもよい。中間流焼却炉は一般的に空気ガス保有空間16が形成されていないが、中間流焼却炉であっても乾燥部11で発生したガスを含む炉内ガスの性状を検出することができれば、検出した炉内ガスの性状に基づいてボイラ30への安定した入熱を行うことが可能である。
【0058】
また、以上では、乾燥部11におけるごみの発熱量に基づいて給じん装置40及び空気供給装置50を制御する場合について説明したが、乾燥部11におけるごみの発熱量に基づいて乾燥ストーカ15、燃焼ストーカ20、及び後燃焼ストーカ21の全部又は一部を制御してもよい。ごみは空気と接触することで熱量にかわる。ボイラ30への入熱量を増加させたい場合には、ごみが空気と接触する機会を増やして燃焼を活発にする。具体的には、各ストーカ15、20、21の単位時間当たりの稼働回数を増やすことで、ごみと空気が接触する回数を増やす。または、各ストーカ15、20、21の作動速度を大きくすることで、各ストーカ15、20、21に載っているごみを崩し、ごみの空気と接触する面積を増加させる。一方、ボイラ30への入熱量を抑制したい場合には、各ストーカ15、20、21の単位時間当たりの稼働回数を減らし、又は、動作速度を小さくすればよい。
【0059】
また、以上では、炉内ガスの性状のみに基づいて、乾燥部11におけるごみの発熱量を算出し、最適堆積量及び最適空気供給量を算出する場合について説明したが、炉内ガスの性状と他の要素に基づいて、各量を算出してもよい。例えば、炉内ガスの性状に基づいて算出した乾燥部11におけるごみの発熱量と、ボイラ30で生成された蒸気の流量に基づいて算出したごみの発熱量とに基づいて、最適堆積量及び最適空気供給量を算出してもよい。この場合、炉内ガスの性状に基づいて算出した乾燥部11におけるごみの発熱量は、主として用いられてもよく、補正的に用いられてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 焼却炉
11 乾燥部
12 燃焼部
15 乾燥ストーカ
16 空気ガス保有空間
17 絞り部
18 ガス検出装置
19 レベル計
20 燃焼ストーカ
21 後燃焼ストーカ
30 ボイラ
40 給じん装置
50 空気供給装置
60 制御装置
100 ごみ焼却設備